JP2012088241A - Pc鋼材の遅れ破壊特性評価方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】試験片を試験溶液に浸漬し、前記試験片に一定の荷重を負荷して破断荷重を測定する遅れ破壊特性評価方法において、前記試験溶液は、Clイオン濃度:0.1〜1.0g/l、SO4イオン濃度:0.5〜10g/l、SCNイオン濃度:0.1〜3g/lを含み、温度が45〜55℃、pHが6.5〜7.2、比液量が5〜30ml/cm2であり、表面にノッチを形成した試験片を試験溶液に浸漬し、試験期間中試験溶液と大気を遮断するとともに前記試験片に一定の荷重を負荷し、予め定めた限界時間まで破断が発生しない耐破断限界荷重を測定し、該耐破断限界荷重と平滑試験片の大気中での破断荷重との比を求めて限界荷重比とすることを特徴とするPC鋼材の遅れ破壊特性評価方法。
【選択図】図4
Description
(1)一定の荷重を負荷した試験片を試験溶液に浸漬して遅れ破壊特性を評価するPC鋼材の遅れ破壊特性評価方法において、前記試験溶液は、Clイオン濃度:0.1〜1.0g/l、SO4イオン濃度:0.5〜10g/l、SCNイオン濃度:0.1〜3g/lを含み、温度が45〜55℃、pHが6.5〜7.2であり、表面にノッチを形成した試験片を試験溶液に浸漬し、試験溶液の容量を試験溶液に接触している試験片の表面積で除した比液量を5〜30ml/cm2とし、試験期間中試験溶液と大気を遮断するとともに前記試験片に一定の荷重を負荷し、予め定めた限界時間まで破断が発生しない耐破断限界荷重を測定し、該耐破断限界荷重と平滑試験片の大気中での破断荷重との比を求めて限界荷重比とすることを特徴とするPC鋼材の遅れ破壊特性評価方法。
(2)前記試験片のノッチの最大深さが0.2〜0.5mmであることを特徴とする(1)に記載のPC鋼材の遅れ破壊特性評価方法。
(3)前記予め定めた限界時間を200時間以上とすることを特徴とする(1)又は(2)に記載のPC鋼材の遅れ破壊特性評価方法。
Clイオンは鋼材の腐食促進成分である。Clイオン濃度が、0.1g/l未満では腐食が進行せず、水素の浸入が著しく低下し遅れ破壊が発生しないため破断に至らない。また、1.0g/l超のClイオン濃度を添加しても腐食促進効果が飽和する。したがって、試験溶液のClイオン濃度は、0.1〜1.0g/lとする。
SO4イオンも鋼材の腐食促進成分であり、Clと複合添加することで、より実環境に近い状態の腐食環境となる。SO4イオン濃度が0.5g/l未満では鋼材の腐食が進まず水素が鋼中に侵入せず、遅れ破壊が発生しない。一方、SO4イオン濃度が10g/lを超えると、鋼中に侵入する水素量が多くなり、実環境からの乖離が顕著になる。したがって、試験溶液のSO4濃度は0.5〜10g/lとする。
SCNイオンは触媒的に作用し、鋼材への水素浸入を促進する。SCNイオンはコンクリート内に浸入した水溶液中から検出されることから、本発明では、実環境を再現するために試験溶液に添加する。SCNイオン濃度が0.1g/l未満では鋼材中への水素侵入が少なく、遅れ破壊が発生しない。一方、SCNイオン濃度が3g/lを超えると、鋼材への水素浸入が著しく増加し、実環境と大きく異なる。したがって、SCNイオン濃度は0.1〜3g/lとする。
pHは、鋼材に侵入する水素量及び鋼材の腐食に大きく影響する重要な要因である。本発明者らの検討により、pHを7前後に調整した溶液では約50時間で鋼材に浸入する水素量が飽和し、一定の水素量での遅れ破壊挙動を評価できることが明らかになった。pHが6.5未満では鋼材の水素侵入量が増加して、遅れ破壊特性の優劣の精度が低下する。一方、pHが7.2を超えると鋼材への水素侵入量が大きく低下し、鋼材に侵入する水素量が飽和するまでに長時間を要する。したがって、本発明では、試験溶液のpHを6.5〜7.2とする。
試験溶液温度が低い場合は鋼材への水素浸入が少なくなり、高いと侵入水素量が多くなるとともに試験溶液の蒸発により試験条件が変化する。また、試験溶液温度は、試験片の表面での腐食状況にも影響を及ぼすため、一定の範囲内に制御することが必要である。本発明の試験溶液では、温度が50℃になると、実環境から侵入する水素量に近くなる。また、試験溶液温度が変化すると、評価結果のばらつきが大きくなるため、変動の範囲を10℃以内にすることが必要である。したがって、安定した腐食環境で、一定の速度で試験片に水素を侵入させるため、本発明では、試験溶液の温度範囲を45〜55℃とする。
比液量は、試験溶液に浸漬している試験片の単位表面積あたりの試験溶液容量である。試験片及び試験槽の形状、使用する試験溶液の容量から、試験溶液に接触している試験片の表面積を算出し、使用している試験溶液の容量を除することにより、比液量を求めることができる。比液量が30ml/cm2を超えると、長時間、連続的に試験片に水素が侵入するため、遅れ破壊特性の優劣の精度が低下する。一方、比液量が5ml/cm2未満であると、短時間で試験片に水素が侵入しなくなり、鋼材中の水素量も減少し、遅れ破壊破断が発生し難くなる。したがって、短時間で、実環境に近い侵入水素量にするためには、試験溶液の比液量を5〜30ml/cm2とすることが必要である。
試験片のノッチ深さは、破断を促進させるために応力集中を再現するため、引張り荷重に対して直角方向に形成する。試験片の円周方向の全周に環状ノッチとしても、部分的にノッチを形成してもかまわない。ノッチ深さが0.2mm未満では、破断時間が2000h以上になること、鋼材によっては負荷荷重を高めても破断せず、遅れ破壊の評価が難しくなることがあるので、ノッチ深さの下限を0.2mmとすると好ましい。一方、0.5mmより深いノッチの場合は短時間で破断するものの、荷重比を変えても破断時間の変化が小さくなり、鋼材の遅れ破壊特性の優劣が判断できなくなることがあるため、0.5mmをノッチ深さの上限とすると好ましい。
本発明では、遅れ破壊特性の評価基準を破断荷重とする。これは、破断時間による評価の場合、時間の経過にともなって鋼材中の水素量が変動し、コンクリート製品の破断の実体とは必ずしも一致した傾向が得られないためである。本発明では、試験片を試験溶液に浸漬し、一定の荷重を負荷して予め定めた一定時間経過後の破断の有無を見極める。負荷荷重を変化させて試験を繰り返し、遅れ破壊が発生しない限界の荷重を求め、耐破断限界荷重とする。予め定めた一定時間を200時間あるいはそれ以上とすれば、耐破断限界荷重を再現性よく評価することが可能である。この耐破断限界荷重を、予め求めた、ノッチを有しない平滑試験片の大気中での破断荷重で除して、限界荷重比として評価する。平滑試験片は平滑であり、大気中で破断を評価するので、全く脆化処理を行わない試験片に相当する。また平滑試験片はノッチを形成した試験片と同一径とすると好ましい。
本発明の試験溶液は、大気に接触すると空気中の二酸化炭素を吸収し、pHが低下する。そのため、遅れ破壊特性を安定して評価するためには、大気と試験溶液を遮断することが好ましい。大気と試験溶液を遮断する方法は特に限定はされないが、試験容器内にアルゴンなどの不活性ガスを充満させる方法、試験溶液の表面をシール材で覆う方法などが挙げられる。例えば、図6に示すように、試験容器の内壁あるいは試験片が貫通可能な形状とし、大気と遮断するために試験溶液表面に浮かせる構造が好ましい。このような構造にすることにより、試験容器の形状を変えることなく、試験片のサイズによる比液量を一定に制御することが可能となるとともに、試験溶液のpHを安定して維持できる。
Claims (3)
- 一定の荷重を負荷した試験片を試験溶液に浸漬して遅れ破壊特性を評価するPC鋼材の遅れ破壊特性評価方法において、前記試験溶液は、Clイオン濃度:0.1〜1.0g/l、SO4イオン濃度:0.5〜10g/l、SCNイオン濃度:0.1〜3g/lを含み、温度が45〜55℃、pHが6.5〜7.2であり、表面にノッチを形成した試験片を試験溶液に浸漬し、試験溶液の容量を試験溶液に接触している試験片の表面積で除した比液量を5〜30ml/cm2とし、試験期間中試験溶液と大気を遮断するとともに前記試験片に一定の荷重を負荷し、予め定めた限界時間まで破断が発生しない耐破断限界荷重を測定し、該耐破断限界荷重と平滑試験片の大気中での破断荷重との比を求めて限界荷重比とすることを特徴とするPC鋼材の遅れ破壊特性評価方法。
- 前記試験片のノッチの最大深さが0.2〜0.5mmであることを特徴とする請求項1記載のPC鋼材の遅れ破壊特性評価方法。
- 前記予め定めた限界時間を200時間以上とすることを特徴とする請求項1又は2に記載のPC鋼材の遅れ破壊特性評価方法。
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