以下、建設機械として油圧ショベルを例にとって本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。なお、本発明は、旋回体を備えた建設機械全般(作業機械を含む)に適用が可能であり、本発明の適用は油圧ショベルに限定されるものではない。例えば、本発明は旋回体を備えたクレーン車等、その他の建設機械にも適用可能である。図1は本発明のハイブリッド式建設機械の一実施の形態を示す側面図、図2は本発明のハイブリッド式建設機械の第1の実施の形態を構成する電動・油圧機器のシステム構成図、図3は本発明のハイブリッド式建設機械の第1の実施の形態のシステム構成及び制御ブロック図である。
図1において、ハイブリッド式油圧ショベルは走行体10と、走行体10上に旋回可能に設けた旋回体20及びショベル機構30を備えている。
走行体10は、一対のクローラ11a,11b及びクローラフレーム12a,12b(図1では片側のみを示す)、各クローラ11a,11bを独立して駆動制御する一対の走行用油圧モータ13、14及びその減速機構等で構成されている。
旋回体20は、旋回フレーム21と、旋回フレーム21上に設けられた、原動機としてのエンジン22と、エンジン22により駆動されるアシスト発電モータ23と、旋回電動モータ25及び旋回油圧モータ27と、アシスト発電モータ23及び旋回電動モータ25に接続される電気二重層キャパシタ24と、旋回電動モータ25と旋回油圧モータ27の回転を減速する減速機構26等から構成され、旋回電動モータ25と旋回油圧モータ27の駆動力が減速機構26を介して伝達され、その駆動力により走行体10に対して旋回体20(旋回フレーム21)を旋回駆動させる。
また、旋回体20にはショベル機構(フロント装置)30が搭載されている。ショベル機構30は、ブーム31と、ブーム31を駆動するためのブームシリンダ32と、ブーム31の先端部近傍に回転自在に軸支されたアーム33と、アーム33を駆動するためのアームシリンダ34と、アーム33の先端に回転可能に軸支されたバケット35と、バケット35を駆動するためのバケットシリンダ36等で構成されている。
さらに、旋回体20の旋回フレーム21上には、上述した走行用油圧モータ13,14、旋回油圧モータ27、ブームシリンダ32、アークシリンダ34、バケットシリンダ36等の油圧アクチュエータを駆動するための油圧システム40が搭載されている。油圧システム40は、油圧を発生する油圧源となる油圧ポンプ41(図2)及び各アクチュエータを駆動制御するためのコントロールバルブ42(図2)を含み、油圧ポンプ41はエンジン22によって駆動される。
次に、油圧ショベルの電動・油圧機器のシステム構成について概略説明する。図2に示すように、エンジン22の駆動力は油圧ポンプ41に伝達されている。コントロールバルブ42は、旋回用の操作レバー装置72(図3参照)からの旋回操作指令(油圧パイロット信号)に応じて、旋回油圧モータ27に供給される圧油の流量と方向を制御する。またコントロールバルブ42は、旋回以外の操作レバー装置73(図3参照)からの操作指令(油圧パイロット信号)に応じて、ブームシリンダ32、アームシリンダ34、バケットシリンダ36及び走行用油圧モータ13,14に供給される圧油の流量と方向を制御する。
電動システムは、上述したアシスト発電モータ23、キャパシタ24及び旋回電動モータ25と、パワーコントロールユニット55及びメインコンタクタ56等から構成されている。パワーコントロールユニット55はチョッパ51、インバータ52,53、平滑コンデンサ54等を有し、メインコンタクタ56はメインリレー57、突入電流防止回路58等を有している。
キャパシタ24からの直流電力はチョッパ51によって所定の母線電圧に昇圧され、旋回電動モータ25を駆動するためのインバータ52、アシスト発電モータ23を駆動するためのインバータ53に入力される。平滑コンデンサ54は、母線電圧を安定化させるために設けられている。旋回電動モータ25と旋回油圧モータ27の回転軸は結合されており、減速機構26を介して旋回体20を駆動する。アシスト発電モータ23及び旋回電動モータ25の駆動状態(力行しているか回生しているか)によって、キャパシタ24は充放電されることになる。
旋回電動モータ25を駆動するインバータ52と旋回電動モータ25との間の電力授受を行うケーブルには、ケーブルを流れる電流I1を検出する電流センサ65が、また、アシスト発電モータ23を駆動するインバータ53とアシスト発電モータ23との間の電力授受を行うケーブルには、ケーブルを流れる電流I2を検出する電流センサ66が、それぞれ設けられている。これらのセンサ65,66は、それぞれがコントローラ80に電気的に接続されている。
また、旋回電動モータ25の内部には、その内部の温度t1を検出する温度センサSe1が、また、旋回電動モータ25を駆動するインバータ52の内部にはその内部の温度t2を検出する温度センサSe2が、それぞれ設けられている。アシスト発電モータ23の内部には、その内部の温度t3を検出する温度センサSe3が、また、アシスト発電モータ23を駆動するインバータ53の内部にはその内部の温度t4を検出する温度センサSe4が、それぞれ設けられている。これらのセンサSe1,Se2,Se3,Se4は、それぞれが、コントローラ80に電気的に接続されている。
コントローラ80は、旋回操作指令信号や、圧力信号及び回転速度信号等(後述)を用いて、コントロールバルブ42、パワーコントロールユニット55に対する制御指令を生成し、旋回油圧モータ27を用いる油圧単独旋回モード、旋回油圧モータ27と旋回電動モータ25とを用いる油圧電動複合旋回モードの切り替え、各モードの旋回制御、電動システムの異常監視、エネルギマネジメント等の制御を行う。
次に、本発明による旋回制御を行うのに必要なデバイスや制御手段、制御信号等を図3を用いてさらに詳細に説明する。
油圧ショベルは、エンジン22を始動するためのイグニッションキー70と、作業中止時にパイロット圧遮断弁76をONにして油圧システムの作動を不能とするゲートロックレバー装置71とを備えている。また、油圧ショベルは、上述したコントローラ80と、コントローラ80の入出力に係わる油圧・電気変換装置74a,74bL,74bR、電気・油圧変換装置75a,75b,75c,75d及び油圧単独旋回モード固定スイッチ77を備え、これらは旋回制御システムを構成する。油圧・電気変換装置74a,74bL,74bRはそれぞれ例えば圧力センサであり、電気・油圧変換装置75a,75b,75c,75dは例えば電磁比例減圧弁である。
コントローラ80は、異常監視・異常処理制御ブロック81、エネルギマネジメント制御ブロック82、油圧電動複合旋回制御ブロック83、油圧単独旋回制御ブロック84、制御切替ブロック85等からなる。
全体システムに異常がなく、旋回電動モータ25が駆動可能な状態では、コントローラ80は油圧電動複合旋回モードを選択する。このとき制御切替ブロック85は油圧電動複合旋回制御ブロック83をしており、油圧電動複合旋回制御ブロック83によって旋回アクチュエータ動作が制御される。旋回操作レバー装置72の入力によって発生される油圧パイロット信号は油圧・電気変換装置74aによって電気信号に変換され、油圧電動複合旋回制御ブロック83に入力される。旋回油圧モータ27の作動圧は油圧・電気変換装置74bL,74bRによって電気信号に変換され、油圧電動複合旋回制御ブロック83に入力される。パワーコントロールユニット55内の電動モータ駆動用のインバータから出力される旋回モータ速度信号も油圧電動複合旋回制御ブロック83に入力される。油圧電動複合旋回制御ブロック83は、旋回操作レバー装置72からの油圧パイロット信号と、旋回油圧モータ27の作動圧信号及び旋回モータ速度信号に基づいて所定の演算を行って旋回電動モータ25の指令トルクを計算し、パワーコントロールユニット55にトルク指令EAを出力する。この結果、旋回電動モータ25が駆動する。同時に、旋回電動モータ25が出力するトルク分、油圧ポンプ41の出力トルク及び旋回油圧モータ27の出力トルクを減少させる減トルク指令EB,ECを電気・油圧変換装置75a,75bに出力する。
一方、旋回操作レバー装置72の入力によって発生される油圧パイロット信号はコントロールバルブ42にも入力される。これにより、旋回用スプール61(図4参照)が中立位置からA位置もしくはC位置に切り換えられ油圧ポンプ41の吐出油が旋回油圧モータ27に供給され、旋回油圧モータ27も同時に駆動する。
旋回電動モータ25が加速時に消費するエネルギと減速時に回生するエネルギの差によって、キャパシタ24の蓄電量が増減することになる。これを制御するのがエネルギマネジメント制御ブロック82であり、上述したキャパシタ24の電圧・電流・温度の検出信号を入力し、アシスト発電モータ23に発電またはアシスト指令EDを出すことにより、キャパシタ24の蓄電量を所定の範囲に保つ制御を行う。
パワーコントロールユニット55、旋回電動モータ25、キャパシタ24等の電動システムに故障、異常、警告状態が発生した場合や、キャパシタ24の蓄電量が所定の範囲外になった場合は、異常監視・異常処理制御ブロック81及びエネルギマネジメント制御ブロック82が制御切替ブロック85を切り替えて油圧単独旋回制御ブロック84を選択し、油圧電動複合旋回モードから油圧単独旋回モードへの切替えを行う。基本的に旋回の油圧システムは、旋回電動モータ25と協調して動作するようマッチングされているので、油圧単独旋回制御ブロック84は、旋回駆動特性補正指令EEと旋回パイロット圧補正指令EFをそれぞれ電気・油圧変換装置75c,75dに出力し、旋回油圧モータ27の駆動トルクを増加させる補正と旋回油圧モータ27の制動トルクを増加させる補正を行うことにより、旋回電動モータ25のトルクが無くても旋回操作性が損なわれないような制御を行う。
また、後述する故障、異常状態による油圧単独旋回制御モードからの監視シーケンスにおいては、旋回油圧モータ27の回転数が予め設定された制限規定値を超えないような回転数制御を行う。旋回油圧モータ27の回転数は、旋回体の回転により回転させられる旋回電動モータ25の例えばレゾルバ等から検出される。
油圧単独旋回モード固定スイッチ77は、電動システムの故障時や、特定のアタッチメント装着時など、何らかの理由で、油圧単独旋回モードに固定したい場合に使用するものであり、固定スイッチ77がON位置に操作されると、切替え制御ブロック85は油圧単独旋回制御ブロック84を選択するように固定される。
次に、旋回油圧システムの詳細について図4乃至図12を用いて説明する。図4は本発明のハイブリッド式建設機械の第1の実施の形態における旋回油圧システムの構成を示す油圧回路図である。図4において、図1乃至図3に示す符号と同符号のものは、同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
図3のコントロールバルブ42はアクチュエータごとにスプールと呼ばれる弁部品を備え、操作レバー装置72,73からの指令(油圧パイロット信号)に応じて対応するスプールが変位することで開口面積が変化し、各油路を通過する圧油の流量が変化する。図4に示す旋回油圧システムは、旋回用スプールのみを含むものである。
旋回油圧システムは、旋回油圧モータ27の最大出力トルクが第1トルクとなる第1モードと、旋回油圧モータ27の最大出力トルクが第1トルクより大きな第2トルクとなる第2モードとに変更可能である。以下にその詳細を説明する。
図4において、旋回油圧システムは、前述した油圧ポンプ41及び旋回油圧モータ27と、旋回用スプール61と、旋回用の可変オーバーロードリリーフ弁62a,62bと、旋回補助弁としてのセンタバイパスカット弁63とを備えている。
油圧ポンプ41は可変容量ポンプであり、トルク制御部64aを備えたレギュレータ64を備え、レギュレータ64を動作させることで油圧ポンプ41の傾転角が変わって油圧ポンプ41の容量が変わり、油圧ポンプ41の吐出流量と出力トルクが変わる。図3の油圧電動複合旋回制御ブロック83から電気・油圧変換装置75aに減トルク指令EBが出力されると、電気・油圧変換装置75aは対応する制御圧力をレギュレータ64のトルク制御部64aに出力し、トルク制御部64aは、旋回電動モータ25が出力するトルク分、油圧ポンプ41の最大出力トルクが減少するようトルク制御部64aの設定を変更する。
油圧ポンプ41のトルク制御特性を図5に示す。横軸は油圧ポンプ41の吐出圧力、縦軸は油圧ポンプ41の容量を示している。
油圧電動複合旋回モードが選択され、電気・油圧変換装置75aに減トルク指令EBが出力されているときは、電気・油圧変換装置75aは制御圧力を発生しており、このとき制御部64aの設定は、実線PTSより最大出力トルクが減少した実線PTの特性にある(第1モード)。油圧単独旋回モードが選択され、電気・油圧変換装置75aに減トルク指令EBが出力されていないときは、トルク制御部64aは実線PTSの特性に変化し(第2モード)、油圧ポンプ41の最大出力トルクは、斜線で示す面積分、増加する。
図4に戻り、旋回用スプール61はA,B,Cの3位置を持ち、操作レバー装置72からの旋回操作指令(油圧パイロット信号)を受けて中立位置BからA位置又はC位置に連続的に切り替わる。
操作レバー装置72はパイロット油圧源29からの圧力をレバー操作量に応じて減圧する減圧弁を内蔵し、レバー操作量に応じた圧力(油圧パイロット信号)を旋回用スプール61の左右いずれかの圧力室に与える。
旋回用スプール61が中立位置Bにあるときは、油圧ポンプ41から吐出される圧油はブリードオフ絞りを通り、更にセンタバイパスカット弁63を通ってタンクへ戻る。旋回用スプール61がレバー操作量に応じた圧力(油圧パイロット信号)を受けてA位置に切り替わると、油圧ポンプ41からの圧油はA位置のメータイン絞りを通って旋回油圧モータ27の右側に送られ、旋回油圧モータ27からの戻り油はA位置のメータアウト絞りを通ってタンクに戻り、旋回油圧モータ27は一方向に回転する。逆に、旋回用スプール61がレバー操作量に応じた圧力(油圧パイロット信号)を受けてC位置に切り替わると、油圧ポンプ41からの圧油はC位置のメータイン絞りを通って旋回油圧モータ27の左側に送られ、旋回油圧モータ27からの戻り油はC位置のメータアウト絞りを通ってタンクに戻り、旋回油圧モータ27はA位置の場合とは逆方向に回転する。
旋回用スプール61がB位置とA位置の中間に位置しているときは、油圧ポンプ41からの圧油はブリードオフ絞りとメータイン絞りに分配される。このとき、メータイン絞りの入側にはブリードオフ絞りの開口面積とセンタバイパスカット弁63の開口面積に応じた圧力が立ち、その圧力で旋回油圧モータ27に圧油が供給され、その圧力(ブリードオフ絞りの開口面積)に応じた作動トルクが与えられる。また、旋回油圧モータ27からの排出油はそのときのメータアウト絞りの開口面積に応じた抵抗を受けて背圧が立ち、メータアウト絞りの開口面積に応じた制動トルクが発生する。B位置とC位置の中間においても同様である。
操作レバー装置72の操作レバーを中立位置に戻し、旋回用スプール61を中立位置Bに戻したとき、旋回体20は慣性体であるため、旋回油圧モータ27はその慣性で回転を続けようとする。このとき、旋回油圧モータ27からの排出油の圧力(背圧)が旋回用の可変オーバーロードリリーフ弁62a又は62bの設定圧力を超えようとするときは、オーバーロードリリーフ弁62a又は62bが作動して圧油の一部をタンクに逃がすることで背圧の上昇を制限し、オーバーロードリリーフ弁62a又は62bの設定圧力に応じた制動トルクを発生する。
図6は、本発明のハイブリッド式建設機械の一実施の形態における旋回用スプール61のメータイン開口面積特性及びブリードオフ開口面積特性を示す特性図であり、図7は同メータアウト開口面積特性を示す特性図である。
図6において、実線MIがメータイン開口面積特性であり、実線MBがブリードオフ開口面積特性であり、いずれも本実施の形態のものである。二点鎖線MB0は、電動モータを用いない、従来の油圧ショベルにおいて良好な操作性を確保できるブリードオフ開口面積特性である。本実施の形態のブリードオフ開口面積特性MBは、制御域開始点及び終点は従来のものと同一であるが、中間領域では従来のものに比べて開き勝手(大きな開口面積となるよう)に設計されている。
図7において、実線MOが本実施の形態のメータアウト開口面積特性であり、二点鎖線MO0が電動モータを用いない、従来の油圧ショベルにおいて良好な操作性を確保できるメータアウト開口面積特性である。本実施の形態のメータアウト開口面積特性MOは、制御域開始点及び終点は従来のものと同一であるが、中間領域では従来のものに比べて開き勝手(大きな開口面積となるよう)に設計されている。
図8は、油圧パイロット信号(操作パイロット圧)に対する旋回用スプール61のメータイン絞りとセンタバイパスカット弁63との合成開口面積特性を示す図である。
油圧電動複合旋回モードが選択されているときは、旋回駆動特性補正指令EEは出力されていないため、センタバイパスカット弁63は図示の開位置にあり、旋回用スプール61のメータイン絞りとセンタバイパスカット弁63との合成開口面積特性は、図6のブリードオフ開口面積特性MBのみによって決まる点線MBCの特性となる(第1モード)。
油圧単独旋回モードが選択されたときは、前述したように電気・油圧変換装置75cに旋回駆動特性補正指令EEが出力され、電気・油圧変換装置75cは対応する制御圧力をセンタバイパスカット弁63の受圧部に出力し、センタバイパスカット弁63は図示右側の絞り位置に切り換えられる。このセンタバイパスカット弁63の切り換えにより、旋回用スプール61の油圧パイロット信号に対する旋回用スプール61のメータイン絞りとセンタバイパスカット弁63との合成開口面積特性は点線MBCの特性よりも合成開口面積が小さい実線MBSの特性に変更される(第2モード)。この実線MBSの合成開口面積特性は従来の油圧ショベルにおいて良好な操作性を確保できるブリードオフ開口面積特性と同等である。
図9は、油圧電動複合旋回モードでの旋回駆動時における油圧パイロット信号(パイロット圧)、メータイン圧力(M/I圧)、旋回電動モータ25のアシストトルク、上部旋回体20の回転速度(旋回速度)の時系列波形を示す特性図である。パイロット圧0、旋回停止状態から時間T=T1〜T4でパイロット圧最大までランプ状に油圧パイロット信号を増加させた場合の例である。
油圧電動複合旋回モードが選択されているときは、図8の点線MBCで示したように旋回用スプール61のメータイン絞りとセンタバイパスカット弁63との合成開口面積特性は図6のブリードオフ開口面積特性MBのみによって決まる特性となるため、従来に比べてブリードオフ絞りの開口面積が大きい分、本実施の形態の方がメータイン圧力(M/I)は低くなる。メータイン圧力は旋回油圧モータ27の作動トルク(加速トルク)に相当するので、メータイン圧力が低くなった分だけ加速トルクを旋回電動モータ25により付与する必要がある。図8では力行側のアシストトルクを正としている。本実施の形態では、旋回電動モータ25のアシストトルクと旋回用スプール61によって発生するメータイン圧力に由来する加速トルクの合計値が、従来型の油圧ショベルで発生する加速トルクと概等しくなるように制御する。これにより旋回体20の旋回速度は従来型の油圧ショベルと同等の加速フィーリングを有することが可能となる。
一方、油圧単独旋回モードが選択されたときは、旋回用スプール61のメータイン絞りとセンタバイパスカット弁63との合成開口面積特性は、図8の点線MBCよりも合成開口面積が小さいから実線MBSの特性に変更されるため、旋回用スプール61によって発生するメータイン圧力は、図9に示す従来の油圧ショベルで得られる実線のメータイン圧力まで上昇し、旋回用スプール61によって発生するメータイン圧力に由来する加速トルクが、従来型の油圧ショベルで発生する加速トルクと概等しくなるように制御される。これにより旋回体20の旋回速度は従来型の油圧ショベルと同等の加速フィーリングを有することが可能となる。
また、旋回油圧モータ27単独で旋回可能であるということは、旋回油圧モータ27の最大出力トルクの方が、旋回電動モータ25の最大出力トルクよりも大きいということである。このことは、油圧電動複合旋回モードにおいて、万一、旋回電動モータ25が意図しない動きをしたとしても油圧回路が正常ならば、それほど危険な動きにならないことを意味し、本発明は安全性においても有利である。
図10は、油圧パイロット信号(操作パイロット圧)に対する旋回用スプール61のメータアウト開口面積特性を示す特性図である。
油圧電動複合旋回モードが選択されているときは、旋回パイロット圧補正指令EFは出力されていないため、旋回用スプール61のメータアウト開口面積特性は図7のメータアウト開口面積特性MOと同様の変化を示す点線MOCの特性となる(第1モード)。
油圧単独旋回モードが選択されたときは、前述したように図3の電気・油圧変換装置75d(図4の電気・油圧変換装置75dL,75dR)旋回パイロット圧補正指令EFが出力され、電気・油圧変換装置75dは操作レバー装置72で生成された油圧パイロット信号(操作パイロット圧)を減圧補正する。この油圧パイロット信号の補正により、旋回用スプール61の油圧パイロット信号に対するメータアウト開口面積特性は、図10の点線MOCの特性に対し中間領域における開口面積が減少した実線MOSの特性に変更される(第2モード)。この実線MOSの開口面積特性は従来の油圧ショベルにおいて良好な操作性を確保できるメータアウト開口面積特性と同等である。
図11は、油圧電動複合旋回モードでの旋回制動停止時における油圧パイロット信号(パイロット圧)、メータアウト圧力(M/O圧)、旋回電動モータ25のアシストトルク、旋回体20の回転速度(旋回速度)の時系列波形を示す特性図である。パイロット圧最大、最高旋回速度から時間T=T5〜T9でパイロット圧0までランプ状に油圧パイロット信号を低減させた場合の例である。
油圧単独旋回モードが選択されているときは、図10の点線MOCで示したように旋回用スプール61の油圧パイロット信号に対するメータアウト開口面積特性は図7のメータアウト開口面積特性MOと同様に変化する特性となるため、図7に示したように従来に比べてメータアウト絞りの開口面積が大きい分、本実施の形態の方がメータアウト圧力(M/O圧)は低くなる。メータアウト圧力はブレーキトルク(制動トルク)に相当するので、メータアウト圧力が低くなった分だけブレーキトルクを電動モータ25により付与する必要がある。図11では回生側のアシストトルクを負としている。本実施の形態では、旋回電動モータ25のアシストトルクと旋回用スプール61によって発生するメータアウト圧力に由来するブレーキトルクの合計値が従来型の油圧ショベルで発生するブレーキトルクと概等しくなるように制御する。これにより旋回体20の旋回速度は従来型の油圧ショベル同等の減速フィーリングを有することが可能となる。
一方、油圧単独旋回モードが選択されたときは、旋回用スプール61の油圧パイロット信号に対するメータアウト開口面積特性は、図11の点線MOCの特性に対し中間領域における開口面積が減少した実線MOSの特性に変更されるため、旋回用スプール61によって発生するメータアウト圧力は、図11に示す従来の油圧ショベルで得られる実線のメータアウト圧力まで上昇し、旋回用スプール61によって発生するメータアウト圧力に由来するブレーキトルクが、従来型の油圧ショベルで発生するブレーキトルクと概等しくなるように制御され、旋回体20の旋回速度は従来型の油圧ショベル同等の減速フィーリングを有することが可能となる。
図12は、旋回用の可変オーバーロードリリーフ弁62a,62bのリリーフ圧特性を示す図である。
油圧電動複合旋回モードが選択され、図3の電気・油圧変換装置75b(図4の電・油圧変換装置75bL,75bR)に減トルク指令ECが出力されているときは、電気・油圧変換装置75bは制御圧力を生成し、その制御圧力が可変オーバーロードリリーフ弁62a,62bの設定圧力減少側に作用し、可変オーバーロードリリーフ弁62a,62bのリリーフ特性はリリーフ圧がPmax1である実線SRの特性となる(第1モード)。油圧単独旋回モードが選択され、電気・油圧変換装置75b(図4の電気・油圧変換装置75bL,75bR)に減トルク指令ECが出力されていないときは、電気・油圧変換装置75bは制御圧力を生成しないため、可変オーバーロードリリーフ弁62a,62bのリリーフ特性は、リリーフ圧がPmax1からPmax2に上昇した実線SRSの特性となり(第2モード)、制動トルクは、リリーフ圧が高くなった分、増加する。
これにより油圧電動複合旋回モードが選択されたときは、可変オーバーロードリリーフ弁62a,62bのリリーフ圧はPmax2より低いPmax1に設定されるため、操作レバー装置72の操作レバーを中立位置に戻したときに、旋回油圧モータ27からの排出油の圧力(背圧)は可変オーバーロードリリーフ弁62a,62bの低めの設定圧力であるPmax1まで上昇し、旋回電動モータ25のアシストトルクと可変オーバーロードリリーフ弁62a又は62bによって発生する背圧に由来するブレーキトルクの合計値が従来型の油圧ショベルで発生するブレーキトルクと概等しくなるように制御され、旋回体20の旋回速度は従来型の油圧ショベル同等の減速フィーリングを有することが可能となる。
また、油圧単独旋回モードが選択されたときは、可変オーバーロードリリーフ弁62a,62bのリリーフ圧はPmax1より高いPmax2に設定されるため、操作レバー装置72の操作レバーを中立位置に戻した場合に、旋回油圧モータ27からの排出油の圧力(背圧)は可変オーバーロードリリーフ弁62a,62bの高めの設定圧力であるPmax2まで上昇し、可変オーバーロードリリーフ弁62a又は62bによって発生する背圧に由来するブレーキトルクが、従来型の油圧ショベルで発生するブレーキトルクと概等しくなるように制御され、旋回体20の旋回速度は従来型の油圧ショベル同等の減速フィーリングを有することが可能となる。
次に、コントローラ80の異常監視・異常処理制御ブロック81による油圧電動複合旋回モードと油圧単独旋回制御モードとを切り替えるシーケンスについて図13及び図14を用いて説明する。
図13にコントローラ80の異常監視・異常処理制御ブロック81による油圧電動複合旋回モードから油圧単独旋回制御モードへの切り替えシーケンスを示す。
異常監視・異常処理制御ブロック81は、電動モータ25、キャパシタ24、パワーコントロールユニット55等の電動システムに故障、異常、警告状態が発生した場合に、そのことを知らせる信号(以下エラー信号という)が通知されたかどうかを判定し(ステップS100)、エラー信号が通知されると、それが緊急対応を要するエラー信号であるかどうかを更に判定する(ステップS110)。モード切り替え時には、油圧システムのバルブの切り替え動作等により軽いショックが生じる可能性があるので、エラー信号の内容が深刻ではなく、直ちに切替える緊急性がない場合は、モード切換可能なタイミングかどうかを判定し(ステップS120)、旋回体20の動作及び旋回用の操作レバー装置72の入力が行われてないタイミング、あるいは、旋回体20以外の装置である走行、フロントの動作及びそれらの操作レバー装置73の入力も含めて、操作がまったく行われていないアイドリング時等に切替えを行う(ステップS130)。インバータの過電流異常等、システムを損傷させる恐れや重大な故障や災害に繋がる恐れがある異常については、操作中であっても、直ちに電動システムを停止させ、油圧単独旋回モードに切替える(ステップS110→S130)。
図14にコントローラ80の異常監視・異常処理制御ブロック81による油圧単独旋回制御モードから油圧電動複合旋回モードへの復帰シーケンスを示す。
異常監視・異常処理制御ブロック81は、図13のフローチャートで示す処理によって油圧単独旋回制御モードへ切り替えた場合、まず、油圧単独旋回制御中に所定のエラー信号解消処理を行う(ステップS150)。次いで、エラー信号が解消したかどうかを判定し(ステップS160)、エラー信号解消処理によって、あるいは自然にエラー信号が解消された場合は、更にモード切換可能なタイミングかどうかを判定し(ステップS170)、旋回動作及び操作が行われてないタイミング、あるいは、フロントも含め操作がまったく行われていないアイドリング時等に油圧電動複合旋回モードへの切り替え(復帰動作)を行う(ステップS180)。
次に、本発明のハイブリッド式建設機械の第1の実施の形態の油圧ショベルの故障、異常状態による油圧単独旋回制御モードからの監視シーケンスについて図15乃至図19を用いて説明する。図15は本発明のハイブリッド式建設機械の第1の実施の形態の油圧ショベルの故障、異常状態からの監視シーケンス(その1)を示すフローチャート図、図16は図15に示す監視シーケンスに適用する油圧モータの回転数と制限温度との関係の一例を示す特性図である。
図15は、図13のコントローラ80の異常監視・異常処理制御ブロック81による油圧電動複合旋回モードから油圧単独旋回制御モードへの切り替え後の監視シーケンスを示している。
まず、図15のステップ(S201)では、温度信号t1,t2と旋回油圧モータ27の回転数信号rとが読み込まれる。具体的には、温度センサSe1とSe2とから検出された旋回電動モータ25の内部温度信号t1と旋回電動モータ25を駆動するインバータ52の内部温度信号t2と旋回体20の回転により回転させられる旋回電動モータ27の例えばレゾルバ等から検出される回転数rとが読み込まれる。
次のステップ(S202)では、ステップ(S201)で取り込んだ温度信号が高くないかのチェックが行われる。具体的には、予め設定され記憶された旋回油圧モータ27の回転数rに対する温度信号t1,t2の制限値特性と、ステップ(S201)で読み込まれた各検出信号とを比較する。図16に旋回油圧モータ27の回転数rと温度信号t1,t2との制限値特性の一例を示す。図16において、taは旋回油圧モータ27の最大回転数rmにおける制限値温度を、tbは旋回油圧モータ27の停止必要温度を、raは旋回油圧モータ27の停止必要温度tbにおける最大許容回転数をそれぞれ示す。また線分ABが回転数制御の制限値特性を示す。
例えば、図16において、旋回油圧モータ27の回転数がr0の場合、本ステップ(S202)において、温度信号t1,t2が制限値特性上のt0より低ければ、NOと判断され、高ければYESと判断される。
このステップ(S202)でNOと判断された場合には、先のステップ(S201)に戻り演算が繰り返される。
ステップ(S202)でYESと判断された場合には、ステップ(S203)に進み旋回油圧モータ27の回転数を下げるためにエンジン22の回転数制限制御が行われる。具体的には、上述した制限値特性上の温度より温度信号t1,t2が低くなるところまで、旋回油圧モータ27の回転数rを下げるためにエンジン22の回転数を下げる制御が行われる。この際、オペレータには、温度信号t1,t2が制限特性値を超えた旨がモニタ等の表示或いは音声で報知される。
次に、ステップ(S204)では、ステップ(S201)と同様に、温度信号t1,t2と旋回油圧モータ27の回転数信号rが読み込まれる。
次のステップ(S205)では、ステップ(S204)で取り込んだ温度信号が異常に高くないかのチェックが行われる。具体的には、ステップ(S204)で読み込まれた温度信号t1,t2と旋回油圧モータ27の停止必要温度tbとを比較する。
このステップ(S205)でNOと判断された場合には、先のステップ(S201)に戻り演算が繰り返される。
ステップ(S205)でYESと判断された場合には、ステップ(S206)に進み温度信号t1,t2が停止必要温度を超えた旨がモニタ等の表示或いは音声でオペレータに報知される。
次に、ステップ(S207)では、旋回油圧モータ27及びエンジン22を停止させてもよいタイミングかどうかのチェックが行われる。具体的には、旋回体20の旋回停止の可否や、旋回油圧モータの回転が高速でないことなどが判断される。その他にもエンジン22停止で車体に不都合が起こらないか判断される。
このステップ(S207)でNOと判断された場合には、先のステップ(S204)に戻り演算が繰り返される。
ステップ(S207)でYESと判断された場合には、旋回油圧モータ27を停止させるためにエンジン22を停止状態に制御する。この際、温度信号t1,t2が停止必要温度値を超えたことにより、エンジン22が停止する旨をモニタ等の表示或いは音声でオペレータに報知する。
図17は本発明のハイブリッド式建設機械の第1の実施の形態の油圧ショベルの故障、異常状態からの監視シーケンス(その2)を示す。図15にて説明した監視シーケンス(その1)は、旋回電動モータ25の内部温度信号t1と旋回電動モータ25を駆動するインバータ52の内部温度信号t2とを監視することで、油圧単独旋回制御モードにおける電動システムの不測の事故を防止しているが、監視シーケンス(その2)は、旋回電動モータ25を駆動するインバータ52と旋回電動モータ25との間の電力授受を行うケーブル等に設けた電流センサ65が検出する電流I1を監視するものである。
まず、図17のステップ(S301)では、電流信号I1と旋回油圧モータ27の回転数信号rとが読み込まれる。具体的には、電流センサ65から検出された旋回電動モータ25を駆動するインバータ52と旋回電動モータ25との間の電流I1が読み込まれる。
次のステップ(S302)では、ステップ(S301)で取り込んだ電流信号が異常に高くないかのチェックが行われる。具体的には、ステップ(S301)で読み込まれた電流信号I1と予め設定されている旋回油圧モータ27の停止必要電流設定値Itとを比較する。
このステップ(S302)でNOと判断された場合には、先のステップ(S301)に戻り演算が繰り返される。
ステップ(S302)でYESと判断された場合には、ステップ(S303)に進み電流信号I1が停止必要電流値を超えた旨がモニタ等の表示或いは音声でオペレータに報知される。
次に、ステップ(S304)では、旋回油圧モータ27を停止させるためにエンジン22を停止させてもよいタイミングかどうかのチェックが行われる。具体的には、旋回体20の旋回停止の可否や、旋回油圧モータの回転が高速でないことなどが判断される。
このステップ(S304)でNOと判断された場合には、先のステップ(S301)に戻り演算が繰り返される。
ステップ(S304)でYESと判断された場合には、旋回油圧モータ27を停止させるためにエンジン22を停止状態に制御する。この際、電流信号I1が停止必要電流値を超えたことにより、エンジン22が停止する旨をモニタ等の表示或いは音声でオペレータに報知する。
図18は本発明のハイブリッド式建設機械の第1の実施の形態の油圧ショベルの故障、異常状態からの監視シーケンス(その3)を示す。図15にて説明した監視シーケンス(その1)は、旋回電動モータ25の内部温度信号t1と旋回電動モータ25を駆動するインバータ52の内部温度信号t2とを監視することで、油圧単独旋回制御モードにおける電動システムの不測の事故を防止しているが、監視シーケンス(その3)は、アシスト発電モータ23の内部温度信号t3とアシスト発電モータ23を駆動するインバータ53の内部温度信号t4とを監視することで、原動機22で駆動される電動システムの不測の事故を防止している。監視シーケンス(その3)は、原動機通常動作可能状態から開始され、必要に応じては、原動機22を停止させるものである。
まず、図18のステップ(S401)では、温度信号t3,t4とアシスト発電モータ23の回転数信号r1とが読み込まれる。具体的には、温度センサSe3とSe4とから検出されたアシスト発電モータ23の内部温度信号t3とアシスト発電モータ23を駆動するインバータ53の内部温度信号t4とエンジン22により回転させられるアシスト発電モータ23の例えばレゾルバ等から検出される回転数r1とが読み込まれる。
次のステップ(S402)では、ステップ(S401)で取り込んだ温度信号が高くないかのチェックが行われる。具体的には、予め設定され記憶されたアシスト発電モータ23の回転数r1に対する温度信号t3,t4制限値特性と、ステップ(S401)で読み込まれた各検出信号とを比較する。図16と同様な制限値特性が記憶されている。
このステップ(S402)でNOと判断された場合には、先のステップ(S401)に戻り演算が繰り返される。
ステップ(S402)でYESと判断された場合には、ステップ(S403)に進みアシスト発電モータ23の回転数制限制御が行われる。具体的には、上述した制限値特性上の温度より温度信号t3,t4が低くなるところまで、アシスト発電モータ23の回転数r1を下げるために、エンジン22の回転数を下げる制御が行われる。この際、オペレータには、温度信号t3,t4が制限特性値を超えた旨がモニタ等の表示或いは音声で報知される。
次に、ステップ(S404)では、ステップ(S401)と同様に、温度信号t3,t4とアシスト発電モータ23の回転数信号r1が読み込まれる。
次のステップ(S405)では、ステップ(S404)で取り込んだ温度信号が異常に高くないかのチェックが行われる。具体的には、ステップ(S404)で読み込まれた温度信号t3,t4とアシスト発電モータ23の停止必要温度tb1とを比較する。
このステップ(S405)でNOと判断された場合には、先のステップ(S401)に戻り演算が繰り返される。
ステップ(S405)でYESと判断された場合には、ステップ(S406)に進み温度信号t3,t4が停止必要温度を超えた旨がモニタ等の表示或いは音声でオペレータに報知される。
次に、ステップ(S407)では、エンジン22を停止させてもよいタイミングかどうかのチェックが行われる。具体的には、エンジン22の停止の可否や、建設機械の作業環境が安全であることなどが判断される。
このステップ(S407)でNOと判断された場合には、先のステップ(S404)に戻り演算が繰り返される。
ステップ(S407)でYESと判断された場合には、アシスト発電モータ23を停止するためにエンジン22を停止状態に制御する。この際、温度信号t3,t4が停止必要温度値を超えたことにより、エンジン22が停止する旨をモニタ等の表示或いは音声でオペレータに報知する。
図19は本発明のハイブリッド式建設機械の第1の実施の形態の油圧ショベルの故障、異常状態からの監視シーケンス(その4)を示す。図18にて説明した監視シーケンス(その3)は、アシスト発電モータ23の内部温度信号t3とアシスト発電モータ23を駆動するインバータ53の内部温度信号t4とを監視することで、原動機22で駆動される電動システムの不測の事故を防止しているが、監視シーケンス(その4)は、アシスト発電モータ23を駆動するインバータ53とアシスト発電モータ23との間の電力授受を行うケーブル等に設けた電流センサ66が検出する電流I2を監視するものである。
まず、図19のステップ(S501)では、電流信号I2とアシスト発電モータ23の回転数信号r1とが読み込まれる。具体的には、電流センサ66から検出されたアシスト発電モータ23を駆動するインバータ53とアシスト発電モータ23との間の電流I2が読み込まれる。
次のステップ(S502)では、ステップ(S501)で取り込んだ電流信号が異常に高くないかのチェックが行われる。具体的には、ステップ(S501)で読み込まれた電流信号I2と予め設定されているアシスト発電モータ23の停止必要電流設定値It2とを比較する。
このステップ(S502)でNOと判断された場合には、先のステップ(S501)に戻り演算が繰り返される。
ステップ(S502)でYESと判断された場合には、ステップ(S503)に進み電流信号I2が停止必要電流値を超えた旨がモニタ等の表示或いは音声でオペレータに報知される。
次に、ステップ(S504)では、エンジン22を停止させてもよいタイミングかどうかのチェックが行われる。具体的には、エンジン22の停止の可否や、建設機械の作業環境が安全であることなどが判断される。
このステップ(S504)でNOと判断された場合には、先のステップ(S501)に戻り演算が繰り返される。
ステップ(S504)でYESと判断された場合には、アシスト発電モータ23を停止するためにエンジン22を停止状態に制御する。この際電流信号I2が停止必要電流値を超えたことにより、エンジン22が停止する旨をモニタ等の表示或いは音声でオペレータに報知する。
上述した本発明の第1の実施の形態によれば、旋回体20の駆動に電動モータを用いたハイブリッド式建設機械において、旋回電動モータ25、インバータ52、蓄電装置24等の電動システムが故障して旋回油圧モータ27単独で旋回体20を駆動する場合であっても、電動システムの温度と電流を監視し得るので、電動システムから発生する不測の事故を防止することができる。また、電動システムが故障した後も、監視する電動システムの温度と電流が一定の範囲内であれば、旋回体20を旋回油圧モータ27単独で駆動し続けられるので、オペレータは安心して長時間の作業を実施できる。この結果、ハイブリッド式建設機械の稼働効率を向上させることができる。
次に、本発明のハイブリッド式建設機械の第2の実施の形態の油圧ショベルについて図20を用いて説明する。図20は本発明のハイブリッド式建設機械の第2の実施の形態を構成する電動・油圧機器のシステム構成図である。なお、図20において、図1乃至図19に示す符号と同符号のものは同一部分又は相当する部分であるので、その部分の説明を省略する。
本実施の形態は、電動システムになんらかの異常や故障が生じた場合に故障箇所を切り離すことを目的としたものである。具体的には、第1の実施の形態のパワーコントロールユニット55において、旋回電動モータ駆動用インバータ52の出力ケーブルが接続されたソケット型のコネクタ93と内部接続されていないソケット型のダミーコネクタ95とを設け、旋回電動モータ25に一端が接続された動力ケーブル59の他端側に設けたプラグ型のコネクタ92を通常時には、ソケット型のコネクタ93に接続している。
また、同様に第1の実施の形態のパワーコントロールユニット55において、アシスト発電モータ駆動用インバータ53の出力ケーブルが接続されたソケット型のコネクタ91と内部接続されていないソケット型のダミーコネクタ94とを設け、アシスト発電モータ23に一端が接続された動力ケーブル60の他端側に設けたプラグ型のコネクタ90を通常時には、ソケット型のコネクタ91に接続している。
本実施の形態において、例えば、電動システムに何らかの異常や故障、特にモータ以外の箇所に短絡故障等が生じた場合には、アシスト発電モータ23用のプラグ型のコネクタ90をパワーコントロールユニット55側のソケット型のコネクタ91から取外し、アシスト発電モータ23用のダミーコネクタ94に接続する。同様に旋回電動モータ25についても旋回電動モータ25用のプラグ型のコネクタ92をパワーコントロールユニット55側のソケット型のコネクタ93から取外し、旋回電動モータ25用のダミーコネクタ95に接続する。これにより、アシスト発電モータ23,旋回電動モータ25とパワーコントロールユニット55とを完全に切り離すことが出来るため、アシスト発電モータ23,旋回電動モータ25の発電エネルギの回生は起こらなくなる。
また、ダミーコネクタ94,95には、図示しないキャップが設けてあるので、このキャップをソケット型のコネクタ91,93の外側に付け替えることにより、ソケット型のコネクタ91,93の活電部が保護できると共に防塵/防水機能を確保することができる。
さらに、旋回電動モータ25に一端が接続された動力ケーブル59の他端側に設けたプラグ型のコネクタ92とアシスト発電モータ23に一端が接続された動力ケーブル60の他端側に設けたプラグ型のコネクタ90との両方が、その他のいずれのコネクタとも非装着の場合であっても、第1の実施の形態における監視制御手段は、これら電動モータ25,27の内部温度と回転数を監視する機能を有している。
上述した本発明の第2の実施の形態によれば、旋回体20の駆動に電動モータを用いたハイブリッド式建設機械において、旋回電動モータ25、インバータ52、蓄電装置24等の電動システムが故障して旋回油圧モータ27単独で旋回体20を駆動する場合であっても、電動システムの温度と電流を監視し得るとともに、電動モータとインバータとを電気的に絶縁するので、電動システムから発生する不測の事故を防止することができる。また、電動システムが故障した後も、監視する電動システムの温度と電流が一定の範囲内であれば、旋回体を油圧モータ単独で駆動し続けられるので、オペレータは安心して長時間の作業を実施できる。この結果、ハイブリッド式建設機械の稼働効率を向上させることができる。
次に、本発明のハイブリッド式建設機械の第3の実施の形態の油圧ショベルについて図21を用いて説明する。図21は本発明のハイブリッド式建設機械の第3の実施の形態を構成する電動・油圧機器のシステム構成図である。なお、図21において、図1乃至図20に示す符号と同符号のものは同一部分又は相当する部分であるので、その部分の説明を省略する。
図2に示した第1の実施の形態では、コントローラ80の一部にインバータ制御回路を設けていたが、本実施の形態ではその構成に代え、インバータ52,53の内部にインバータ制御回路52a,53aをそれぞれ設けたものである。また、第1の実施の形態では、コントローラ80が温度センサSe1,Se2,電流センサ65,66からの検出信号による各種処理を行っていたが、本実施の形態においては、インバータ制御回路52a,53aにおいて、これらの処理が行われる。
次に、本発明のハイブリッド式建設機械の第4の実施の形態の油圧ショベルについて図22を用いて説明する。図22は本発明のハイブリッド式建設機械の第4の実施の形態を構成する電動・油圧機器のシステム構成図である。なお、図22において、図1乃至図21に示す符号と同符号のものは同一部分又は相当する部分であるので、その部分の説明を省略する。
図2に示した第1の実施の形態では、エンジン22の駆動軸に連結されたアシスト発電モータ23を用いていたが、本実施の形態では、その構成に代え、油圧ポンプ41の吐出油によって駆動される油圧モータ101と、この油圧モータ101の駆動軸に連結された電動モータ100を用いたものである。また、蓄電デバイスとしては、電気二重層キャパシタ24以外に、リチウムイオンキャパシタ、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池等、あらゆる蓄電デバイスが使用可能であり、図18に示す実施の形態では、リチウムイオン電池等のバッテリ103を用いた構成としている。
次に、本発明のハイブリッド式建設機械の第5の実施の形態の油圧ショベルについて図23を用いて説明する。図23は本発明のハイブリッド式建設機械の第5の実施の形態を構成する電動・油圧機器のシステム構成図である。なお、図23において、図1乃至図22に示す符号と同符号のものは同一部分又は相当する部分であるので、その部分の説明を省略する。
本実施の形態では、キャパシタ24の初期充電を行うために、オルタネータ110及び電装用バッテリ111を含む電装系バッテリラインからDC/DCコンバータ112を用いて昇圧する構成としたものである。ただし、この場合、キャパシタ24に余剰エネルギが生じたときに電装系バッテリラインに自由にエネルギを逃がすことができないため、エネルギマネジメント制御部82は、旋回動作の加減速のみでキャパシタ蓄電量をある程度一定化するよう制御する必要がある。
次に、本発明のハイブリッド式建設機械の第6及び第7の実施の形態の油圧ショベルについて図24及び図25を用いて説明する。図24は本発明のハイブリッド式建設機械の第6の実施の形態を構成する電動・油圧機器のシステム構成図、図25は本発明のハイブリッド式建設機械の第7の実施の形態を構成する電動・油圧機器のシステム構成図である。なお、図24及び図25において、図1乃至図23に示す符号と同符号のものは同一部分又は相当する部分であるので、その部分の説明を省略する。
これまでの実施の形態では、原動機としてエンジン22を用いた油圧ショベルを示したが、他の原動機、例えば、電動モータを用いた油圧ショベルに本発明を適用しても問題はない。図24に示す実施の形態では、商用交流電源121からの交流電力で駆動される電動モータ120を用いた油圧ショベル、図25に示す実施の形態では、大容量バッテリ130で駆動される電動モータ120を用いた油圧ショベルのシステム構成図を示す。図24に示す実施の形態では、図23の実施の形態と同様、キャパシタ24の初期充電を行うために、商用交流電源121からDC/DCコンバータ122を用いて昇圧する。
原動機として電動モータ120を使用した油圧ショベルに対して本発明を適用するときに注意すべきことは、電力ラインやパワーコントロールユニットを旋回用電動モータと原動機用電動モータとで共用すると、これらの故障が起きた場合に、油圧単独旋回モードでの動作すらできなくなる可能性があることである。
図24に示す実施の形態では、メイン電動モータ120を三相交流誘導モータとし、商用電源121の三相交流によって直接駆動し、キャパシタ24に蓄電されたエネルギを用いる旋回用電動モータ25とは、別個のパワー供給ラインとしている。図25に示す実施の形態では、パワーコントロールユニット132,133をメインと旋回とで別とし、旋回電動モータ25や旋回用パワーコントロールユニット133に短絡故障等の異常が生じた場合は、旋回電動部遮断リレー134によって切り離すことにより、油圧単独旋回モードでの動作が可能な構成としている。
以上において、本発明を油圧ショベルに適用した場合の実施の形態を説明したが、油圧ショベル以外の旋回体を有する建設機械全般に本発明は適用可能である。