JP2012085381A - インバータ装置 - Google Patents

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義文 蓑輪
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Abstract

【課題】 出力容量に関係なく常に最大またはそれに近い電力変換効率を得ることができるインバータ装置を提供する。
【解決手段】 このインバータ装置は、インバータ回路の電力変換効率ηを算出する変換効率演算回路30と、リップル率制御回路40と、ヒステリシス幅演算回路50とを備えている。リップル率制御回路40は、リップル率αを制御用に出力するものであって、当該リップル率αと上記電力変換効率ηとの関係に基づいて、実質的に最大の電力変換効率ηを実現するリップル率αを決定する機能を有している。ヒステリシス幅演算回路50は、上記リップル率αを用いてヒステリシス幅ΔIH を演算して、それをヒステリシスコンパレータ方式制御回路60u〜60wに供給する。
【選択図】 図2

Description

この発明は、例えば太陽電池、燃料電池等の直流電源からの直流電力を交流電力に変換するものであって、ヒステリシスコンパレータ方式の制御を採用しているインバータ装置に関する。このインバータ装置は、例えば、変換した交流電力を商用の電力系統に連系させる運転(これを連系運転と呼ぶ。以下同様)を行わせること等に用いることができる。
インバータ装置におけるヒステリシスコンパレータ方式の制御は周知である。また、ヒステリシス幅を調整する手段を採用しているインバータ装置は、例えば特許文献1、2に記載されている。
特許文献1に記載のインバータ装置(電力変換装置)は、入力電流または出力電流の大きさに応じて所定の比例定数を乗じてヒステリシス幅を増減して、スイッチング制御を行うものである。具体的には、入力電流または出力電流が大きいときには、ヒステリシス幅を大きくしてスイッチング周波数を下げて、スイッチング損失を低減し、入力電流または出力電流が小さいときには、ヒステリシス幅を小さくしてスイッチング周波数を上げて、低騒音化を図っている。
特許文献2に記載のインバータ装置(電力変換装置)は、特許文献1に記載の装置が有する課題、即ちスイッチング周波数が入力電圧、出力電圧等の変動によって所望の値から変動して電力変換効率が安定しないという課題を解決するために、スイッチング周波数を検出して、検出したスイッチング周波数が指令値に追従するようにヒステリシス幅を調整することによって、電力変換効率を安定化させるものである。
特開平6−6978号公報(段落0014−0015、図2、図3) 特開2007−20262号公報(段落0004−0007、図1)
上記特許文献1に記載のインバータ装置では、上記のように、スイッチング周波数が入力電圧、出力電圧等の変動によって所望の値から変動して電力変換効率が安定しないため、出力容量に関係なく常に最大またはそれに近い電力変換効率を得ることはできない。
上記特許文献2に記載のインバータ装置においても、スイッチング周波数を指令値に追従させて電力変換効率を安定化させることはできても、電力変換効率を常時追い求める制御は行っていないので、出力容量に関係なく常に最大またはそれに近い電力変換効率を得ることはできない。
そこでこの発明は、出力容量に関係なく常に最大またはそれに近い電力変換効率を得ることができるインバータ装置を提供することを主たる目的としている。
この発明に係るインバータ装置は、ブリッジ接続された複数のスイッチング素子を有していて、直流電力を交流電力に変換するインバータ回路と、前記インバータ回路の出力電流を、正弦波の出力電流指令値に対して所定のヒステリシス幅以内に制御するゲート信号を作成して、それを前記インバータ回路の各スイッチング素子に供給するヒステリシスコンパレータ方式制御回路とを備えているインバータ装置において、前記インバータ回路に入力される直流電力および同回路から出力される交流電力を測定し、かつ当該直流電力および交流電力を用いて、前記インバータ回路の電力変換効率を演算して出力する変換効率演算手段と、前記インバータ回路の出力基本波電流に対するリップル電流の割合を意味するリップル率を制御用に出力する手段であって、当該リップル率と前記変換効率演算手段から与えられる前記電力変換効率との関係に基づいて、当該リップル率を所定値ずつ繰り返して変化させることによって、実質的に最大の電力変換効率を実現するリップル率を決定してそれを出力する機能を有しているリップル率制御手段と、前記インバータ回路の出力電流の基本波電流を測定し、かつ当該基本波電流をIB とし、前記リップル率制御手段から与えられる前記リップル率をαとすると、次式またはそれと数学的に等価の式に従ってヒステリシス幅ΔIH を演算して、それを前記ヒステリシスコンパレータ方式制御回路に前記所定のヒステリシス幅として供給するヒステリシス幅演算手段とを備えていることを特徴としている。
[数1]
ΔIH =IB ・α/2
本願の発明者は、インバータ回路の出力基本波電流に対するリップル電流の割合を意味するリップル率に対する電力変換効率の特性が山型になり、リップル率を変化させる制御を行うことによって、実質的に最大の電力変換効率を実現するリップル率を決定することができることを見出した。この特性を利用して、前記リップル率制御手段は、実質的に最大の電力変換効率を実現するリップル率を決定してそれを出力する。
このリップル率を用いて前記ヒステリシス幅演算手段はヒステリシス幅を演算し、このヒステリシス幅を用いて前記ヒステリシスコンパレータ方式制御回路はインバータ回路のスイッチング素子を制御して出力電流を制御する。
このような作用によって、出力容量に関係なく常に最大またはそれに近い電力変換効率を得ることができる。
前記リップル率制御手段は、前記リップル率を、所定のスイッチング周波数範囲内の最高スイッチング周波数を実現する下限値と最低スイッチング周波数を実現する上限値の範囲内で変化させるものであっても良い。
請求項1に記載の発明によれば、リップル率制御手段によって実質的に最大の電力変換効率を実現するリップル率を決定し、このリップル率を用いてヒステリシス幅演算手段によってヒステリシス幅を演算し、このヒステリシス幅を用いてヒステリシスコンパレータ方式制御回路によってインバータ回路のスイッチング素子を制御して出力電流を制御することができるので、出力容量に関係なく常に最大またはそれに近い電力変換効率を得ることができる。
請求項2に記載の発明によれば次の更なる効果を奏する。即ち、リップル率を上記範囲内で変化させることによって、インバータ回路におけるスイッチング周波数を所定の周波数範囲内に制限することができるので、インバータ回路の出力側に設けられる高調波成分除去用のフィルタの設計等が容易になる。例えば、最低スイッチング周波数が決まるので、上記フィルタのカットオフ周波数の算出が容易になり、フィルタ設計が容易になる。
この発明に係るインバータ装置の一実施形態を示す回路図である。 図1中の制御装置の構成の一例を示すブロック図である。 ヒステリシスコンパレータ方式制御の原理を示す概略図であり、(A)はヒステリシス幅が大きい場合の例を示し、(B)はヒステリシス幅が小さい場合の例を示す。 出力電流波形の一例を示す概略図である。 リップル率に対する電力変換効率の特性をシミュレーションした結果の一例を示す図である。 最大の電力変換効率を実現するリップル率を決定する動作の一例を説明するための図である。 最大の電力変換効率を実現するリップル率を決定する動作の一例を示すフローチャートである。 最大の電力変換効率を実現するリップル率を決定する動作の他の例を示すフローチャートである。
図1に、この発明に係るインバータ装置の一実施形態を示す。この実施形態は3相のインバータ装置であるが、本発明はこれに限られるものではなく、単相のインバータ装置でも良い。
なお、この出願において、電流I、電圧V等の符号に付した添字U、V、Wは、それぞれ、U相、V相、W相を表している。但し、相を特に区別する必要がない場合は、当該添字を省略している場合もある。
このインバータ装置は、直流電源2からの直流電力を3相の交流電力に変換して出力するインバータ回路10と、このインバータ回路10を制御する制御装置20とを備えている。符号3は直流の入力端子、符号17は3相交流の出力端子である。
インバータ回路10は、3相ブリッジ接続された六つのスイッチング素子S1 〜S6 を有している。各スイッチング素子S1 〜S6 は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor )であるが、これに限られるものではない。各スイッチング素子S1 〜S6 には、通常は図示例のように、負荷インダクタンスに蓄えられているエネルギーを直流電源に帰還させるための帰還ダイオード(還流ダイオード、環流ダイオード、フリーホイールダイオードとも呼ぶ)D1 〜D6 が逆向きに並列接続されている。
インバータ回路10の入力側には、平滑コンデンサ8、インバータ回路10に入力される直流電圧VDCを測定する直流の電圧検出器(略称DCPT)4および直流電流IDCを測定する直流の電流検出器(略称DCCT)6が設けられており、これらの測定情報は制御装置20に供給される。
インバータ回路10の出力部は、この例では、高調波成分除去用のフィルタを構成する三つのリアクトル14および三つのコンデンサ16を経由して、負荷の一例である商用3相の電力系統18に接続されている。但し、負荷はこの電力系統18に限られるものではない。各リアクトル14は各相に直列に接続されており、各コンデンサ16は各相間に並列に接続されている。インバータ回路10の各相の出力電流IU 、IV 、IW は変流器12を用いて測定され、出力電圧である線間電圧VUV、VVW、VWUは図示しない計器用変圧器等を用いて測定され、これらの測定情報は制御装置20に供給される。
制御装置20は、インバータ回路10の各相の出力電流IU 、IV 、IW を、外部から与えられる正弦波の出力電流指令値IC に対して所定のヒステリシス幅以内に制御するゲート信号G1 〜G6 を作成して、それをインバータ回路10の各スイッチング素子S1 〜S6 にそれぞれ供給するヒステリシスコンパレータ方式制御回路を有している。この制御装置20の構成の一例を図2に示す。
この制御装置20は、ローパスフィルタ22〜24、変換効率演算回路30、リップル率制御回路40、ヒステリシス幅演算回路50およびヒステリシスコンパレータ方式制御回路60u、60v、60wを有している。
まずヒステリシスコンパレータ方式制御回路60u、60v、60wについて説明すると、これらはいずれも公知のものである。U相用のヒステリシスコンパレータ方式制御回路60uを例に説明すると、このヒステリシスコンパレータ方式制御回路60uは、加算器62、減算器63、比較器64、65およびゲート信号作成回路66を有している。比較器64と65とでヒステリシスコンパレータを構成している。
加算器62は、ヒステリシス幅演算回路50から与えられるヒステリシス幅ΔIH (具体的にはΔIHU)を用いて、次式に従って、ヒステリシス上限値IHUを演算して出力する。
[数2]
HU=IC +ΔIHU
減算器63は、上記ヒステリシス幅ΔIH (具体的にはΔIHU)を用いて、次式に従って、ヒステリシス下限値ILUを演算して出力する。
[数3]
LU=IC −ΔIHU
比較器64は、変流器12を用いて計測したインバータ回路10の出力電流IU と、加算器62からのヒステリシス上限値IHUとを比較して、出力電流IU がヒステリシス上限値IHUよりも大きくなるとスイッチング素子S1 をオフさせかつスイッチング素子S2 をオンさせるゲート信号G1 、G2 をゲート信号作成回路66から出力させるような信号を出力する。
比較器65は、上記出力電流IU と、減算器63からのヒステリシス下限値ILUとを比較して、出力電流IU がヒステリシス下限値ILUよりも小さくなるとスイッチング素子S1 をオンさせかつスイッチング素子S2 をオフさせるゲート信号G1 、G2 をゲート信号作成回路66から出力させるような信号を出力する。
ゲート信号作成回路66は、比較器64および65からの信号に基づいて、インバータ回路10の各スイッチング素子S1 、S2 をそれぞれオン・オフさせるゲート信号G1 、G2 を作成して出力する。各ゲート信号G1 、G2 は、論理値1または0を取るパルス信号である。この場合、同じ相のスイッチング素子S1 、S2 はオン・オフ動作が互いに逆になるように、ゲート信号G1 、G2 の論理値は互いに逆にする。より具体的には、電源短絡を避けるために、同じ相のスイッチング素子S1 、S2 はデッドタイムを設けると共にオン・オフ動作が互いに反対になるように制御される。
上記制御によって、図3に示す例のように、上記出力電流IU は出力電流指令値IC に対して所定のヒステリシス幅±ΔIHU以内に収まるように制御される。なお、図3(A)はヒステリシス幅ΔIHUが大きい場合の例を示し、図3(B)はヒステリシス幅ΔIHUが小さい場合の例を示す。(A)の場合は、スイッチング素子S1 、S2 を相対的に低い頻度でオン・オフさせるので、インバータ回路10におけるスイッチング周波数は低くなり、(B)の場合は上記と反対になりスイッチング周波数は高くなる。
V相用のヒステリシスコンパレータ方式制御回路60v、W相用のヒステリシスコンパレータ方式制御回路60wも上記ヒステリシスコンパレータ方式制御回路60uと同様の構成をしており、ヒステリシス幅演算回路50から与えられるヒステリシス幅ΔIH (具体的にはΔIHV、ΔIHW)を用いて、上記ゲート信号G1 、G2 と同様のもので位相が120度遅れたゲート信号G3 、G4 、240度遅れたゲート信号G5 、G6 をそれぞれ作成して、前者をV相のスイッチング素子S3 、S4 に、後者をW相のスイッチング素子S5 、S6 に、それぞれ供給する。
上記ヒステリシスコンパレータ方式制御回路60u、60v、60wによって、インバータ回路10から出力する出力電流IU 、IV 、IW は、出力電流指令値IC に対して所定のヒステリシス幅±ΔIHU、±ΔIHV、±ΔIHW以内に収まるように制御される。これが前述したヒステリシスコンパレータ方式制御の詳細である。
ローパスフィルタ22〜24は、それぞれ、上記出力電流IU 、IV 、IW から基本波(例えば60Hz)の電流IB (具体的にはIBU、IBV、IBW)を抽出して出力する。
変換効率演算回路30は、インバータ回路10に入力される直流電力PDCおよび同回路10から出力される交流電力PACを測定し、かつ当該直流電力PDCおよび交流電力PACを用いて、インバータ回路10の電力変換効率ηを演算して出力する。この変換効率演算回路30および上記ローパスフィルタ22〜24が、この実施形態では、前記変換効率演算手段を構成している。
具体的には、変換効率演算回路30は、この実施形態では、入力演算回路32、出力演算回路33および効率演算回路34を有している。
入力演算回路32は、上記直流電圧VDCおよび直流電流IDCを用いて、次式に従って、インバータ回路10に入力される入力電力PDCを演算して出力する。
[数4]
DC=VDC・IDC
出力演算回路33は、上記線間電圧VUV、VVW、VWUの内の少なくとも二つと、上記出力基本波電流IBU、IBV、IBWの内の少なくとも二つを用いて、3相の出力電力PACを算出して出力する。例えば、ブロンデルの定理に基づいた2電力計法による3相電力の演算を行う。その一例を示すと、次式(これは実際はベクトル式)に従って出力電力PACを演算する。但し次式以外の相電流、線間電圧を用いて出力電力PACを演算しても良い。
[数5]
AC=−VWU・IBU+VVW・IBV
効率演算回路34は、上記入力電力PDCおよび出力電力PACを用いて、次式に従って電力変換効率ηを演算して出力する。
[数6]
η=PAC/PDC×100 [%]
リップル率制御回路40は、インバータ回路10の出力基本波電流に対するリップル電流の割合を意味するリップル率αを制御用に出力する回路であって、当該リップル率αと上記変換効率演算回路30から与えられる電力変換効率ηとの関係に基づいて、当該リップル率αを所定値ずつ繰り返して変化させることによって、実質的に最大の電力変換効率を実現するリップル率αを決定してそれを出力する機能を有している。このリップル率制御回路40が前記リップル率制御手段を構成している。
上記リップル率αは、U相の出力電流IU を例に説明すると、図4に示すように、出力基本波電流IBUに対するリップル電流IR の割合を意味しており、次式で表される。
[数7]
α=IR /IBU×100 [%]
この図4と上記図3(B)とを比べても分るように、U相を例にすると、出力基本波電流IBUは出力電流指令値IC に相当しており、リップル電流IR はヒステリシス幅±ΔIHUに相当している。このことを適用して数7を変形すると次式が得られる。この数8を、相に依存しないように一般化したのが前記数1である。
[数8]
ΔIHU=IBU・α/2
この数1、数8 からも分るように、リップル率αを制御してそれを変化させると、ヒステリシス幅ΔIH が変化し、ひいては前述したように(図3の説明参照)、インバータ回路10におけるスイッチング周波数が変化する。
インバータ回路10におけるスイッチ損失は、例えば下記の非特許文献1にも記載されているように(2/6頁参照)、主に、スイッチング素子S1 〜S6 がオンまたはオフ時に発生するスイッチング損失と、オン状態で電流が流れることにより発生する導通損失の合計である。
非特許文献1:小倉工、伊藤淳一、「インバータの運転方式に応じた総合損失の評価」(SPC-09-184, LD-09-074)、半導体電力変換リニアドライブ合同研究会、2009年12月18日、1/6〜6/6頁
この場合、上記非特許文献1等に記載のような正弦波比較PWMインバータにおいては、1周期中でのスイッチング周波数は一定であり、スイッチング損失はスイッチング周波数に比例する。一方、導通損失はデューティに依存し、スイッチング周波数には殆ど依存しない。
これに対して、この実施形態のように、ヒステリシスコンパレータ方式の制御を採用しているインバータ装置においては、図3にも示したように、1周期中でスイッチング周波数およびデューティが変化する。スイッチング周波数の変化によりスイッチング損失が変化すると共に、デューティも変るため導通割合も変化して、導通損失も変化する。
従って、上述したようにリップル率αを制御して変化させることによってスイッチング周波数が変化すると、周波数ごとのスイッチング損失と導通損失との比率も変るため、両損失の合計損失(即ちスイッチ損失)はリップル率αに対して2次曲線状に変化し、リップル率αに対する電力変換効率ηの特性は2次曲線状の山型になることを本願の発明者は見出した。図5に上記特性のシミュレーション結果の一例を示す。この例ではリップル率αが20%のときに電力変換効率ηが最大になっており、リップル率αが20%より大きくても小さくても電力変換効率ηは低下している。
リップル率制御回路40は、このようなリップル率αに対する電力変換効率ηの特性を利用して、例えば図6に示す例のように、リップル率αを所定値Aずつ繰り返して変化させる(図6の例は所定値Aずつ繰り返して減少させる)ことによって、実質的に最大の電力変換効率ηを実現するリップル率αを決定する機能を有している。この実質的に最大の電力変換効率ηを実現するリップル率αを決定する際のリップル率制御回路40等における動作は、後で図7、図8を参照して詳述する。
再び図2を参照して、ヒステリシス幅演算回路50は、上記ローパスフィルタ22〜24から与えられる出力電流の基本波電流IB (具体的にはIBU、IBV、IBW)および上記リップル率制御回路40から与えられるリップル率αを用いて、上記数1に従って、ヒステリシス幅ΔIH (具体的にはΔIHU、ΔIHV、ΔIHW)を演算して、それを上記ヒステリシスコンパレータ方式制御回路60u、60v、60wにそれぞれ供給する。前述したように上記数1をU相について表したのが上記数8である。V相、W相についてもこれと同様であり、数8中の相を表す添字をそれぞれV、Wとすれば良い。このヒステリシス幅演算回路50および上記ローパスフィルタ22〜24が、この実施形態では、前記ヒステリシス幅演算手段を構成している。
実質的に最大の電力変換効率ηを実現するリップル率αを決定する動作の一例を、図6、図7を参照して説明する。この例は、リップル率αを、その可変範囲の上限値αmax から始めて所定値Aずつ減少させる場合の例である。
なお、図6、図7における各符号の添字0は初期値を表し、添字n(自然数)はn番目の、n−1はそれの1回前の制御サイクルを表している。また、図6、図7の説明においては、説明を簡略化するために、U相、V相、W相を一括して扱っており、それらを表す添字は省略している。これらのことは、図8においても同様である。
まず、リップル率制御回路40においてリップル率αの初期値α0 を上記上限値αmax にして(ステップ100)、この初期値α0 を用いてヒステリシス幅演算回路50においてヒステリシス幅ΔIH0を上記数1に従って演算して出力し(ステップ101)、このヒステリシス幅ΔIH0を用いてヒステリシスコンパレータ方式制御回路60u、60v、60wによってインバータ回路10を制御して出力電力PACを出力する(ステップ102)。そして、そのときの電力変換効率η0 を変換効率演算回路30によって演算して出力する(ステップ103)。この電力変換効率η0 を算出するのは、それをステップ111で用いるためである。
次に、リップル率αを、初期値α0 (=αmax )から所定値Aを引いたαn =α0 −Aにし(ステップ104)、このリップル率αn がリップル率αの可変範囲の下限値αmin より大きいか否かを判断し(ステップ105)、大きければこのリップル率αn をそのまま採用し(ステップ106)、大きくなければ下限値αmin をリップル率αn とし(ステップ107)、このようにして得られたリップル率αn を用いて上記ステップ101〜103と同様の処理を行って電力変換効率ηn を演算する(ステップ108〜110)。
次に、上記電力変換効率ηn が1回前の電力変換効率ηn-1 (これの初期値はη0 )よりも大きいか否かを判断し(ステップ111)、大きければ(即ち電力変換効率ηが上昇していれば)、リップル率αn を1回前のリップル率αn-1 から所定値Aを引いたαn =αn-1 −Aにし(ステップ112)、大きくなければ(即ち電力変換効率ηが変化しないかまたは低下していれば)、リップル率αn を1回前のリップル率αn-1 にして、このリップル率αn を最終のものとして決定する(ステップ113)。
そして、上記ステップ105〜112を繰り返すことによって、最終的にはステップ113に進み、リップル率αn を決定する。このリップル率αn が、実質的に最大の(換言すれば、最大またはほぼ最大の)電力変換効率ηを実現するリップル率である。このリップル率αn を決定した後は、それを用いてヒステリシス幅演算回路50においてヒステリシス幅ΔIH を算出し、それを用いてヒステリシスコンパレータ方式制御回路60u、60v、60wによってインバータ回路10を制御して交流電力を出力する。
なお、図6においては、図を分かりやすくするために、上記所定値Aを大きくして、電力変換効率ηが最大付近のリップル率αn とαn-1 とで電力変換効率ηにある程度の差があるように図示しているが、所定値Aを小さくすれば両効率ηに殆ど差はなくなるので、上記ステップ113のようにして、1回前のリップル率αn-1 を、最大の電力変換効率ηを実現するリップル率αn として決定しても、実用上は差し支えない。必要であれば、上記所定値Aを小さくすれば良い。
上記所定値Aを小さくすれば、上記のように制御の精度は向上するけれども、制御が遅くなる。逆に、上記所定値Aを大きくすれば、制御は速くなるけれども、制御の精度は低下する。これらの兼ね合いから、上記所定値Aの値を決めれば良い。例えば、上記所定値Aは、3%〜5%程度にすれば良い。
図8に示す例のように、リップル率αを、その可変範囲の下限値αmin から始めて所定値Aずつ増加させても良い。この場合の図7との相違点は、ステップ100a、104a、105a、107a、112aである。
ステップ100aでは、リップル率αの初期値α0 を上記下限値αmin にする。ステップ104aでは、リップル率αn を、初期値α0 (=αmin )に所定値Aを加えたαn =α0 +Aにする。ステップ105aでは、このリップル率αn が可変範囲の上限値αmax よりも小さいか否かを判断する。ステップ107aでは、上限値αmax をリップル率αn とする。ステップ112aでは、リップル率αn を、1回前のリップル率αn-1 にAを加えたαn =αn-1 +Aにする。これら以外は図7と同じであり、この図8の例も、図7の例と同様の作用効果を奏する。
以上のようにこのインバータ装置によれば、リップル率制御回路40によって実質的に最大の電力変換効率を実現するリップル率αを決定し、このリップル率αを用いてヒステリシス幅演算回路50によってヒステリシス幅ΔIHU、ΔIHV、ΔIHWを演算し、このヒステリシス幅を用いてヒステリシスコンパレータ方式制御回路60u、60v、60wによってインバータ回路10のスイッチング素子S1 〜S6 を制御して出力電流IU 、IV 、IW を制御することができるので、出力容量に関係なく常に最大またはそれに近い電力変換効率ηを得ることができる。
なお、上記リップル率αの下限値αmin を、インバータ回路10における(即ちスイッチング素子S1 〜S6 の)所定のスイッチング周波数範囲内の最高スイッチング周波数を実現するものとし、上記リップル率αの上限値αmax を、同スイッチング周波数範囲内の最低スイッチング周波数を実現するものとして、上記リップル率制御回路40を、このような下限値αmin と上限値αmax の範囲内でリップル率αを変化させるものにしても良い。
そのようにすると、インバータ回路10におけるスイッチング周波数を所定の周波数範囲内に制限することができるので、インバータ回路10の出力側に設けられる高調波成分除去用のフィルタ(これは上記リアクトル14およびコンデンサ16で構成されている)の設計等が容易になる。例えば、最低スイッチング周波数が決まるので、上記フィルタのカットオフ周波数の算出が容易になり、フィルタ設計が容易になる。
上記実施形態は、3相のインバータ装置であるが、この発明はそれに限られるものではなく、単相のインバータ装置にももちろん適用することができる。
10 インバータ回路
20 制御装置
30 変換効率演算回路
40 リップル率制御回路
50 ヒステリシス幅演算回路
60u、60v、60w ヒステリシスコンパレータ方式制御回路
η 電力変換効率
α リップル率
ΔIH ヒステリシス幅

Claims (2)

  1. ブリッジ接続された複数のスイッチング素子を有していて、直流電力を交流電力に変換するインバータ回路と、
    前記インバータ回路の出力電流を、正弦波の出力電流指令値に対して所定のヒステリシス幅以内に制御するゲート信号を作成して、それを前記インバータ回路の各スイッチング素子に供給するヒステリシスコンパレータ方式制御回路とを備えているインバータ装置において、
    前記インバータ回路に入力される直流電力および同回路から出力される交流電力を測定し、かつ当該直流電力および交流電力を用いて、前記インバータ回路の電力変換効率を演算して出力する変換効率演算手段と、
    前記インバータ回路の出力基本波電流に対するリップル電流の割合を意味するリップル率を制御用に出力する手段であって、当該リップル率と前記変換効率演算手段から与えられる前記電力変換効率との関係に基づいて、当該リップル率を所定値ずつ繰り返して変化させることによって、実質的に最大の電力変換効率を実現するリップル率を決定してそれを出力する機能を有しているリップル率制御手段と、
    前記インバータ回路の出力電流の基本波電流を測定し、かつ当該基本波電流をIB とし、前記リップル率制御手段から与えられる前記リップル率をαとすると、次式またはそれと数学的に等価の式に従ってヒステリシス幅ΔIH を演算して、それを前記ヒステリシスコンパレータ方式制御回路に前記所定のヒステリシス幅として供給するヒステリシス幅演算手段とを備えていることを特徴とするインバータ装置。
    ΔIH =IB ・α/2
  2. 前記リップル率制御手段は、前記リップル率を、所定のスイッチング周波数範囲内の最高スイッチング周波数を実現する下限値と最低スイッチング周波数を実現する上限値の範囲内で変化させるものである請求項1記載のインバータ装置。
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