JP2012080844A - 光分解性架橋剤、光分解性ゲル、細胞培養器具、細胞配列・分別装置、細胞配列方法および細胞分別方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリエチレングリコールからなる主鎖2と、主鎖2の両末端側に配置された光分解性のニトロベンジル基3と、ニトロベンジル基3の末端側に配置された活性エステル基4とを含む光分解性架橋剤1。活性エステル基4は、アミノ基またはヒドロキシル基に対する反応性を有する。
【選択図】図1
Description
一方、フォトリソグラフィーや光ディスク等に代表されるように、光を用いた技術は集積回路の製造や情報の記録技術として情報産業の発展に大きく貢献してきた。
光は微小領域に非接触に作用できるという特長を有しており、バイオチップ上の流体や細胞をチップの外部から自在に操作できる可能性を有している。
光照射によって体積変化したり分解したりする材料があれば、マイクロチップ上の流体制御技術および細胞配列を局所的に非接触で実現することが可能になると期待されている(非特許文献1、2を参照)。
また、光応答性ゲルおよび光分解性ゲルにはラジカルが含まれることがあり、細胞や生理活性物質を固定化しようとすると、ラジカルが細胞や生理活性物質にダメージを与えてしまうおそれがある。また、主鎖として使用できる高分子化合物が、ラジカル重合できるモノマーの重合物に限定されるため、その利用が限定されてしまっている。
さらには、タンパク質等を固定化するためには、化学的に活性化することのできる官能基を有するモノマーが必要となるため、製造工程が複雑になるという問題がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、光分解性ゲルの製造が容易であり、かつ適用範囲が広い光分解性架橋剤、光分解性ゲル、細胞培養器具、細胞配列・分別装置、細胞配列方法および細胞分別方法を提供することを目的とする。
(1)ポリエチレングリコールからなる主鎖と、前記主鎖の両末端側に配置された光分解性のニトロベンジル基と、前記ニトロベンジル基の末端側に配置された活性エステル基とを含み、前記活性エステル基が、アミノ基またはヒドロキシル基に対する反応性を有する光分解性架橋剤。
(2)前記活性エステル基は、N−ヒドロキシコハク酸イミドの誘導体である(1)記載の光分解性架橋剤。
(3)前記ポリエチレングリコールのエチレングリコールの平均繰り返し数は4から12の範囲にある(1)または(2)に記載の光分解性架橋剤。
(4)(1)〜(3)のうちいずれか1つに記載の光分解性架橋剤と、分子内に合計2以上のアミノ基またはヒドロキシル基を有する高分子化合物と、を反応させて得られ、前記高分子化合物のアミノ基またはヒドロキシル基が、前記光分解性架橋剤の活性エステル基と縮合して架橋されている光分解性ゲル。
(5)(4)に記載の光分解性ゲルであって、前記高分子化合物が、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、塩基性多糖類、タンパク質、およびこれらのうちいずれかの誘導体からなる群より選択される少なくとも1つである光分解性ゲル。
(6)(5)に記載の光分解性ゲルであって、前記高分子化合物が、分岐型ポリエチレングリコール誘導体である光分解性ゲル。
(7)(4)〜(6)のうちいずれか1つに記載の光分解性ゲルからなる膜が、細胞培養基材の表面に形成されている細胞培養器具。
(8)前記細胞培養基材の少なくとも表面が、ポリスチレンまたは細胞接着性材料からなる(7)に記載の細胞培養器具。
(9)(7)または(8)に記載の細胞培養器具に光を照射する照射部を備え、前記照射部は、光源と、前記光源からの光を前記細胞培養器具の表面の任意の一部領域にのみ照射させる照射領域調整部を有する細胞配列・分別装置。
(10)光の照射により分解する光分解性ゲルを含む細胞培養器具を使用し、前記光分解性ゲルが、光分解性架橋剤と、分子内に合計2以上のアミノ基またはヒドロキシル基を有する高分子化合物と、を反応させて得られ、前記高分子化合物のアミノ基またはヒドロキシル基が、前記光分解性架橋剤の活性エステル基と縮合して架橋されており、前記細胞培養器具の一部領域にのみ前記光を照射することにより前記一部領域の光分解性ゲルを選択的に分解することによって、前記一部領域の細胞とそれ以外の領域にある細胞とを分別する細胞分別方法。
(11)光の照射により分解する光分解性ゲルを含む細胞培養器具を使用し、前記光分解性ゲルが、光分解性架橋剤と、分子内に合計2以上のアミノ基またはヒドロキシル基を有する高分子化合物と、を反応させて得られ、前記高分子化合物のアミノ基またはヒドロキシル基が、前記光分解性架橋剤の活性エステル基と縮合して架橋されており、
前記細胞培養器具の一部領域にのみ前記光を照射することにより前記一部領域の光分解性ゲルを選択的に分解することによって、前記一部領域に細胞を配列する細胞配列方法。
ラジカル重合を利用してゲル化される従来の光応答性ゲルおよび光分解性ゲルの製造工程は、重合の際に酸素が存在すると重合反応を阻害し、ゲル化が進行しない。この現象は特に薄膜状のゲルを調製する際に顕著になる。一方、本発明の光分解性架橋剤では、架橋反応時に酸素の影響を全く受けないため、このような重合反応阻害は起こらない。
ラジカル重合反応を利用する場合も無酸素雰囲気条件で反応を行えば薄膜状のゲルを調製することが可能となるかもしれないが、その場合には無酸素条件下で重合反応を行わせるための設備が必要となり、製造工程が複雑になる。
一方、本発明の光分解性架橋剤を用いると、無酸素雰囲気条件が必要ないため、薄膜状のゲルの製造工程が簡略であり、効率的かつ低コストで光分解性ゲルを調製できる。
また、本発明では、架橋反応にラジカル重合を利用しないため、ラジカルによってダメージを受けやすい物質を混合した状態で光分解性ゲルを調製することが可能となる。従って、光分解性ゲルを広範な用途、例えば細胞や生理活性物質を固定化する用途にも使用できる。また、ラジカル重合に対応できないモノマーの重合物も高分子化合物として使用できることから、高分子化合物の選択範囲が広いという利点もある。
本発明の光分解性架橋剤は、ポリエチレングリコールからなる主鎖と、主鎖の両末端側に配置された光分解性のニトロベンジル基と、ニトロベンジル基の末端側に配置された活性エステル基とを含む。
主鎖を構成するポリエチレングリコールのエチレングリコールの平均繰り返し数は、4から12の範囲にあることが好ましい。
前記活性エステル基は、N−ヒドロキシコハク酸イミドの誘導体であることが好ましい。
光分解性のニトロベンジル基は、産業用の水銀ランプやレーザーによって発生する紫外線や可視光を照射することにより分解できることが好ましい。
式(1)に示す光分解性架橋剤1は、ポリエチレングリコール(PEG)からなる主鎖2と、この主鎖2の両末端側に配置された光分解性のニトロベンジル基3、3と、ニトロベンジル基3、3の末端側に配置された活性エステル基4、4とからなる。
図2および図3に示すように、主鎖2はポリエチレングリコール(PEG)である。ニトロベンジル基3は、アミド結合部5(―NHCO―)を介して主鎖2に結合している。
本発明の光分解性架橋剤は、高分子化合物と反応させることによって、光分解性ゲルを生成する。
高分子化合物は、分子内に合計2以上のアミノ基またはヒドロキシル基を有する水溶性高分子が好ましく、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、塩基性多糖類、タンパク質、およびこれらのうちいずれかの誘導体からなる群より選択される少なくとも1つが好ましい。
なかでも、分岐型のポリエチレングリコールまたはその誘導体を用いると、網目構造が形成されやすく、ゲル化が進行しやすくなるため好ましい。分岐型ポリエチレングリコール(または誘導体)の分岐数は3以上が好ましい。特に、4分岐型のポリエチレングリコール(または誘導体)は入手しやすいため好適である。
ポリエチレングリコール(または誘導体)は、末端にアミノ基を有することが望ましい。
ポリエチレングリコール(または誘導体)の分子量は1万から4万の範囲にあることが好ましい。
塩基性多糖類としては、キトサンが好ましい。
前記アミノ基は光分解性架橋剤の活性エステル基とアミド結合を形成し、前記ヒドロキシル基は活性エステル基とエステル結合を形成する。これによって、網目構造が形成され、ゲル化が進行し、光分解性ゲルが生成する。
本発明では、架橋反応を促進させるための添加剤は特に必要ないため、高分子化合物と光分解性ゲルとを混合するだけで架橋反応が起こり、ゲル化が進行する。また、反応時の温度は常温でよい。
また、本発明における架橋反応は溶存酸素の影響を受けないため、薄膜状のゲルの形成が容易である。
高分子化合物の使用量は、例えば4分岐型のポリエチレングリコール(または誘導体)の場合、光分解性ゲル中に7.5重量%以上含有されるように設定することができる。
光分解性架橋剤1と、高分子化合物6とを反応させることによって、光分解性ゲル10を生成させる。
高分子化合物6は、末端にアミノ基を有する4分岐型のポリエチレングリコール誘導体である。
これによって、高分子化合物6は、光分解性架橋剤1を介して他の高分子化合物6と結合し、網目構造を有する光分解性ゲル10が生成する。
具体的には、図4(a)に示すように、ニトロベンジル基3は、例えば波長330〜380nmの紫外線などの光の照射により、破線位置で分解可能である。図4(b)は、この分解反応を模式的に示すものである。
ニトロベンジル基3は、アミド結合部5のアミノ基との間の結合が切断され、ニトロソベンジル基3’となる。なお、ニトロベンジル基の構造によっては、前期光照射によりニトロベンジル基3と活性エステル基4との結合が切断されることもある。
ラジカル重合を利用してゲル化される従来の光応答性ゲルおよび光分解性ゲルの製造工程は、重合の際に酸素が存在すると重合反応を阻害し、ゲル化が進行しない。この現象は特に薄膜状のゲルを調製する際に顕著になる。一方、本発明の光分解性架橋剤では、架橋反応時に酸素の影響を全く受けないため、このような重合反応阻害は起こらない。
ラジカル重合反応を利用する場合も無酸素雰囲気条件で反応を行えば薄膜状のゲルを調製することが可能となるかもしれないが、その場合には無酸素条件下で重合反応を行わせるための設備が必要となり、製造工程が複雑になる。
一方、本発明の光分解性架橋剤を用いると、無酸素雰囲気条件が必要ないため、薄膜状のゲルの製造工程が簡略であり、効率的かつ低コストで光分解性ゲルを調製できる。
また、本発明では、架橋反応にラジカル重合を利用しないため、ラジカルによってダメージを受けやすい物質を混合した状態で光分解性ゲルを調製することが可能となる。従って、光分解性ゲルを広範な用途、例えば細胞や生理活性物質を固定化する用途にも使用できる。また、ラジカル重合に対応できないモノマーの重合物も高分子化合物として使用できることから、高分子化合物の選択範囲が広いという利点もある。
図7は、本発明の細胞配列・分別装置の一例であって、細胞培養器具11を保持する保持台12と、細胞培養器具11に光を照射する照射部13を備えている。
照射部13は、光源(図示略)と、細胞培養器具11の表面の任意の一部領域にのみ光照射する照射領域調整部14と、パソコンなどの制御部15とを有する。
照射領域調整部14は、所定のパターン16をなす光を細胞培養器具11に照射することができる。パターン16は表示装置17に表示される。
照射領域調整部14は、レンズ19、ミラー20、レンズ21を経て、細胞培養器具11の任意の領域に光18を照射できる。細胞培養器具11の表面の任意形状の一部領域にのみ光18を照射することもできるし、全領域に光18を照射することもできる。
光源としては、光分解性架橋剤を分解させ得るものが選択され、例えば紫外線、可視光等の光を照射できるもの(例えば紫外線ランプ、可視光ランプ等)が使用できる。
光の波長域は、例えば200〜1000nmを例示できる。特に300〜600nm、なかでも350〜400nmは好適である。照射エネルギーは、通常は0.01〜1000J/cm2、好ましくは0.1〜100J/cm2、より好ましくは1〜10J/cm2である。
なお、光を細胞培養基材の一部領域にのみ照射させるための構成としては、DMDに限らず、液晶シャッターアレイ、光空間変調素子、所定形状のフォトマスク等も採用できる。
次に、光分解性ゲルを用いた細胞培養器具を使用し、細胞培養器具表面に細胞を配列する方法の第1の例について説明する。
この細胞配列方法では、細胞培養基材の表面に光分解性ゲルからなる膜が形成された細胞培養器具を使用する。
細胞培養基材の構成材料としては、プラスチック、ガラス、改質ガラス、金属等を挙げることができる。
プラスチックとして好適なものとしては、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂(例えばポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA))、ポリビニルピリジン系樹脂(ポリ(4−ビニルピリジン)、4−ビニルピリジン−スチレン共重合体等)、シリコーン系樹脂(例えばポリジメチルシロキサン樹脂)、ポリオレフィン系樹脂(例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂)、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET))、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂等がある。
細胞培養基材は、細胞培養に一般的に用いられる細胞培養ディッシュもしくはマイクロプレートと同様の構造の基材が好ましい。
細胞培養基材は、少なくとも表面が、ポリスチレンまたは細胞接着性材料からなることが好ましい。
具体例としては、例えば、造血幹細胞、骨髄系幹細胞、神経幹細胞、皮膚幹細胞などの体性幹細胞や胚性幹細胞、人工多能性幹細胞がある。
また、好中球、好酸球、好塩基球、単球、リンパ球(T細胞、NK細胞、B細胞等)等の白血球や、血小板、赤血球、血管内皮細胞、リンパ系幹細胞、赤芽球、骨髄芽球、単芽球、巨核芽球および巨核球等の血液細胞、内皮系細胞、上皮系細胞、肝実質細胞、膵ラ島細胞等のほか、研究用に樹立された各種株化細胞も本発明の対象となり得る。
細胞接着性が高い材料、例えばポリスチレンからなる細胞培養基材31の表面に光分解性ゲルの反応溶液を塗布し、光分解性ゲル層32を形成して細胞培養器具30を得る。
光分解性ゲル層32の厚さは、100nm〜10μmが好ましい。
細胞培養器具30の光分解性ゲル層32の表面の一部である領域A1に光を照射し、領域A1の光分解性ゲル層32を分解させる。この領域A1の光分解性ゲルは可溶化し、洗浄により細胞培養基材31表面から除去される。
細胞培養器具30の表面に細胞34を播種すると、光分解性ゲル層32が失われた領域A1の細胞培養基材31表面にのみ細胞34は付着する。
細胞培養基材31表面に付着しなかった細胞34は、培地や緩衝液等により洗浄すること等によって細胞培養器具30から除去することができる。これによって、領域A1に細胞34を選択的に配列することができる。
細胞接着性が低い材料、例えばガラス、シリコーン樹脂等からなる細胞培養基材41の表面に、細胞接着性タンパク質からなるコート層42を形成する。
細胞接着性タンパク質は、ファイブロネクチン、コラーゲン、ゼラチン、ラミニンからなる群から選択された少なくとも1つであることが望ましい。
コート層42の表面に光分解性ゲルの反応溶液を塗布し、光分解性ゲル層32を形成して細胞培養器具40を得る。
細胞培養器具40の光分解性ゲル層32の表面の一部である領域A1に光を照射し、領域A1の光分解性ゲル層32を分解させる。この領域A1の光分解性ゲルは可溶化し、洗浄により除去される。
細胞培養器具40の表面に細胞34を播種すると、光分解性ゲル層32が失われた領域A1のコート層42表面にのみ細胞34は付着する。
コート層42表面に付着しなかった細胞34は、培地や緩衝液等により洗浄すること等によって細胞培養器具40から除去することができる。これによって、領域A1に細胞34を選択的に配列することができる。
細胞培養基材31の表面に光分解性ゲル層32を形成し、その表面に細胞接着性材料からなるコート層52を形成して細胞培養器具50を得る。
細胞接着性材料としては、細胞接着性タンパク質もしくは細胞接着性ペプチドが好ましい。細胞接着性タンパク質は、ファイブロネクチン、コラーゲン、ゼラチン、ラミニンからなる群から選択された少なくとも1つであることが望ましい。細胞接着性ペプチドは、アルギニン−グリシン−アスパラギン酸というアミノ酸配列(RGD配列)を有することが望ましい。
細胞培養器具50のコート層52の表面の一部である領域A1に光を照射し、領域A1の光分解性ゲル層32を分解させる。この領域A1の光分解性ゲルは可溶化し、洗浄により細胞培養基材31表面から除去される。領域A1では、光分解性ゲル層32上のコート層52とともに、これに付着した細胞34も細胞培養基材31表面から剥離する。
剥離した細胞34は、培地や緩衝液等により洗浄すること等によって細胞培養器具50から選択的に除去することができる。
これによって、領域A1の細胞34と、それ以外の細胞34を分別することができる。
細胞接着性が高い材料、例えばポリスチレンからなる細胞培養基材31の表面に、光分解性ゲルと細胞接着性タンパクとを含むコート層62を形成して細胞培養器具60を得る。
コート層62は、光分解性ゲルと細胞接着性タンパクとを混合した混合材料であってもよいし、光分解性ゲルと細胞接着性タンパクとが化学的に結合した材料(例えばアミド結合によって化学的に結合した材料)であってもよい。
細胞培養器具60の表面に細胞34を播種すると、コート層62表面に細胞34が付着する。
細胞培養器具60のコート層62の表面の一部である領域A1に光を照射し、領域A1のコート層62の光分解性ゲルを分解させる。この領域A1の光分解性ゲルは可溶化し、洗浄により細胞培養基材31表面から除去される。領域A1では、コート層62とともに、これに付着した細胞34も細胞培養基材31表面から剥離する。
剥離した細胞34は、培地や緩衝液等により洗浄すること等によって細胞培養器具50から選択的に除去することができる。
これによって、領域A1の細胞34と、それ以外の細胞34を分別することができる。
また、領域A1にのみの光照射によって細胞34の分別を行うため、目的の細胞を精度よく分別することができる。
(光分解性ゲルの反応溶液の組成)
アミノ末端4分岐型PEG(MW:10000)10mM(10w/v%)
光分解性架橋剤 20mM
溶媒(リン酸緩衝液(少量のDMSOを含む))
光照射前の光分解性ゲルの状態を図12(a)に示し、光照射後の光分解性ゲルの状態を図12(b)に示す。
図12(a)および図12(b)より、光照射前では、容器35底部の光分解性ゲル36は水37に溶解していないが、光照射後の光分解性ゲルは水に溶解したことが確認された。
この結果より、光照射によって光分解性ゲルが可溶化したことが確認された。
(光分解性ゲルの反応溶液の組成)
アミノ末端4分岐型PEG(MW:10000)1mM(1w/v%)
光分解性架橋剤 2mM
溶媒 (DMSO/MeOH(容積比10:90))
図7に示す細胞配列・分別装置を用い、図13に示すように、細胞培養器具30の光分解性ゲル層表面の一部である領域A1に波長365nmの紫外線を照射した後(照射時間5秒)、CHO細胞34を播種した。付着しなかった細胞は緩衝液を用いた洗浄により除去した。
図13(a)は、細胞培養器具30を示す写真であり、図13(b)は要部を拡大した写真である。
これらの結果より、光照射した領域A1にのみ細胞34を付着させることができたことがわかった。
実施例2で用いたのと同様の光分解性ゲル溶液を、ポリスチレンからなる細胞培養基材(細胞培養ディッシュ)(直径35mm)の表面に塗布し、溶媒を蒸発させることによって、細胞培養基材の表面に薄膜状の光分解性ゲル層を形成した。
フィブロネクチン0.1mg/mLリン酸緩衝液溶液を細胞培養基材に入れ、常温で1時間振とうした後、表面を洗浄した。これによって、細胞培養基材表面の薄膜状の光分解性ゲル層の上に、細胞接着性タンパク質(フィブロネクチン)からなるコート層が形成された細胞培養器具50を得た。
細胞培養器具50の表面(コート層表面)に細胞34を播種した。
図14(c)は光照射後の状態を示す。領域A1にある細胞34(34a)は、大きさが変化していることから、凝集していると考えられる。
図14(d)は、図14(c)に示す状態の細胞培養器具50に、わずかに振動を与えた後の状態を示す写真である。図14(d)では、図14(c)に対して細胞34(34a)の位置が変化していることから、細胞34(34a)は、凝集するとともに、細胞培養器具50の表面から遊離した状態となったと考えられる。
これらの結果より、光照射によって、細胞34を剥離させることができたことがわかった。
Claims (11)
- ポリエチレングリコールからなる主鎖と、前記主鎖の両末端側に配置された光分解性のニトロベンジル基と、前記ニトロベンジル基の末端側に配置された活性エステル基とを含み、前記活性エステル基が、アミノ基またはヒドロキシル基に対する反応性を有することを特徴とする光分解性架橋剤。
- 前記活性エステル基は、N−ヒドロキシコハク酸イミドの誘導体であることを特徴とする請求項1記載の光分解性架橋剤。
- 前記ポリエチレングリコールのエチレングリコールの平均繰り返し数は4から12の範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の光分解性架橋剤。
- 請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の光分解性架橋剤と、分子内に合計2以上のアミノ基またはヒドロキシル基を有する高分子化合物と、を反応させて得られ、
前記高分子化合物のアミノ基またはヒドロキシル基が、前記光分解性架橋剤の活性エステル基と縮合して架橋されていることを特徴とする光分解性ゲル。 - 請求項4に記載の光分解性ゲルであって、前記高分子化合物が、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、塩基性多糖類、タンパク質、およびこれらのうちいずれかの誘導体からなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とする光分解性ゲル。
- 請求項5に記載の光分解性ゲルであって、前記高分子化合物が、分岐型ポリエチレングリコール誘導体であることを特徴とする光分解性ゲル。
- 請求項4〜6のうちいずれか1項に記載の光分解性ゲルからなる膜が、細胞培養基材の表面に形成されていることを特徴とする細胞培養器具。
- 前記細胞培養基材の少なくとも表面が、ポリスチレンまたは細胞接着性材料からなることを特徴とする請求項7に記載の細胞培養器具。
- 請求項7または8に記載の細胞培養器具に光を照射する照射部を備え、
前記照射部は、光源と、前記光源からの光を前記細胞培養器具の表面の任意の一部領域にのみ照射させる照射領域調整部を有することを特徴とする細胞配列・分別装置。 - 光の照射により分解する光分解性ゲルを含む細胞培養器具を使用し、
前記光分解性ゲルが、光分解性架橋剤と、分子内に合計2以上のアミノ基またはヒドロキシル基を有する高分子化合物と、を反応させて得られ、前記高分子化合物のアミノ基またはヒドロキシル基が、前記光分解性架橋剤の活性エステル基と縮合して架橋されており、
前記細胞培養器具の一部領域にのみ前記光を照射することにより前記一部領域の光分解性ゲルを選択的に分解することによって、前記一部領域の細胞とそれ以外の領域にある細胞とを分別することを特徴とする細胞分別方法。 - 光の照射により分解する光分解性ゲルを含む細胞培養器具を使用し、
前記光分解性ゲルが、光分解性架橋剤と、分子内に合計2以上のアミノ基またはヒドロキシル基を有する高分子化合物と、を反応させて得られ、前記高分子化合物のアミノ基またはヒドロキシル基が、前記光分解性架橋剤の活性エステル基と縮合して架橋されており、
前記細胞培養器具の一部領域にのみ前記光を照射することにより前記一部領域の光分解性ゲルを選択的に分解することによって、前記一部領域に細胞を配列することを特徴とする細胞配列方法。
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