JP2012080829A - 緑化資材及びその製造方法 - Google Patents

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英治 奥田
Yuki Sakakura
裕紀 阪倉
Takaaki Maki
孝昭 牧
Toshiyasu Saruta
年保 猿田
Toshihiro Kurisu
敏浩 栗栖
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Abstract

【課題】外生菌根菌又はアーバスキュラー菌根菌を高密度に保持し、土壌に施用した際に該微生物の効果を十分に発揮させることのできる緑化資材を提供する。
【解決手段】植物炭化物に有機酸、野菜汁、及び果汁のうちの少なくとも1つを添加することによりpH5.0〜8.0とし、これに外生菌根菌及び/又はアーバスキュラー菌根菌を保持させることにより緑化資材を得る。これにより、通常、化学的特性が弱アルカリ性〜アルカリ性である植物炭化物を、弱酸性〜酸性の条件を好む外生菌根菌やアーバスキュラー菌根菌を保持させるための素材として最適なものとすることができる。従って、本発明の緑化資材によれば、外生菌根菌及び/又はアーバスキュラー菌根菌を前記植物炭化物上で効率よく増殖させて高密度に保持することができ、土壌に施用した際にこれらの微生物の効果を安定して発揮させることが可能となる。
【選択図】図1

Description

本発明は、植物と共生する微生物を利用した緑化資材、及びその製造方法に関する。
従来、外生菌根菌をはじめとする共生微生物を宿主植物に共生させることにより、宿主植物の成長促進や、環境ストレスに対する抵抗性の向上、果実の品質向上などの効果が得られることが知られている(例えば特許文献1を参照)。しかし、こうした共生微生物を土壌に直接施用した場合、土壌特性の違いなどにより、安定した効果を得るのが困難であった。また、前記のような共生微生物が土壌中で植物と共生関係を結ぶためには或る程度の菌密度が必要であるが、通常、施用した共生微生物よりも、土壌中に元来生息している他の微生物の方の菌密度が遙かに高いため、共生微生物の機能を十分に発揮させることは難しかった。そのため、こうした共生微生物の働きを利用した緑化資材の開発に当たっては、該共生微生物の増殖及び安定保持に適した素材を見出し、該素材に共生微生物を高密度に保持させることが必要となる。
ところで、木炭や竹炭などの植物炭化物が園芸及び農業分野において土壌改良材等として古くから利用されている。しかしながら、こうした植物炭化物上では、外生菌根菌やアーバスキュラー菌根菌などの共生微生物を高密度に増殖させるのは困難であり、該共生微生物を植物炭化物に保持させて緑化資材を構成しても、その効果を十分に発揮させることができなかった。
特開2007-74986号公報
本発明は、上記の点に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、外生菌根菌又はアーバスキュラー菌根菌を高密度に保持し、土壌に施用した際に該微生物の効果を十分に発揮させることのできる緑化資材を提供することにある。
本発明者は鋭意検討を重ねた結果、植物炭化物のpHを適当な値に調整した上で共生微生物を保持させることによって上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、上記課題を解決するために成された本発明に係る緑化資材は、植物炭化物に酸性の液体を添加することによりpH5.0〜8.0(より望ましくはpH6.0〜7.0)としたものに、外生菌根菌及び/又はアーバスキュラー菌根菌を保持させて成ることを特徴としている。
上記のように植物炭化物に酸性の液体を添加してpH5.0〜8.0とすることにより、通常、化学的特性が弱アルカリ性〜アルカリ性である植物炭化物を、弱酸性〜中性の条件を好む外生菌根菌やアーバスキュラー菌根菌を保持させるための素材として最適なものとすることができる。このため、本発明の緑化資材によれば、前記のような共生微生物を前記植物炭化物上で効率よく増殖させて高密度に保持することができ、土壌に施用した際に該共生微生物の効果を安定して発揮させることが可能となる。
本発明の実施例1における菌体増殖効果の評価結果を示すグラフ。 本発明の実施例2における菌体増殖効果の評価結果を示すグラフ。 本発明の実施例3における植物育成効果の評価結果を示すグラフ。 本発明の実施例4における植物育成効果の評価結果を示すグラフ。 本発明の実施例5における植物育成効果の評価結果を示すグラフ。 本発明の実施例6における根系再生効果の評価結果を示すグラフであって、(a)は土壌1L当たりの細根量を示し、(b)は菌根形成率を示す。 本発明の実施例7における根系再生効果の評価結果を示すグラフ。 本発明の実施例8における根系再生効果の評価結果を示すグラフであって、(a)は土壌1L当たりの細根量を示し、(b)は菌根形成率を示す。 本発明の実施例9における根系再生効果の評価結果を示すグラフ。
本発明に係る緑化資材は、植物炭化物に酸性の液体を添加することによりpH5.0〜8.0としたものに、外生菌根菌及び/又はアーバスキュラー菌根菌を保持させて成るものである。なお、pHの測定方法はpH電極法による。具体的には、まず、炭化物試料を乾燥重量換算で10グラムはかり取り、200mLの三角フラスコにとる。次に、蒸留水50mLを加えて、ゴム栓をして30分間振とうする。最後に、三角フラスコの内容物を100mLのビーカーに移し、pHメーターを用いてpHを測定する。
前記植物炭化物とは、植物体を加熱して炭化させたものである。本発明における植物炭化物としては、中性からアルカリ性のpH特性を有する一般的な木炭を好適に用いることができる。なお、植物炭化物のpHは炭化温度によって変化するが、本発明における植物炭化物としては炭化温度400℃〜800℃で生成された木炭を用いることが望ましい。一般に、農業用・園芸用の資材として流通している木炭は上記炭化温度で製造され、中性からアルカリ性のpH特性を有している。従って、本発明に係る緑化資材は市販の木炭を利用して容易に製造することができる。なお、本発明における植物炭化物としては、ナラ、ブナ、カシ、クヌギ等の木材を炭化させて成るいわゆる木炭の他、竹炭などの種々の植物の炭化物を用いることもできる。
なお、菌根は主として直径2mm以下の細根に形成される。そこで、前記植物炭化物は、その粒径を2mm〜10mm(より望ましくは2mm〜6mm)とすることが好ましい。これにより、上記のような細根の発根を誘導することができ、菌根の形成効率を向上させることができる。なお、植物炭化物の粒径はふるい分け法により測定することができる。
本発明における酸性の液体としては、酢酸などの有機酸、野菜汁、及び果汁のうちの少なくとも1つを用いることが望ましい。これにより、植物炭化物を共生微生物の増殖に適したpH特性に調整できると共に、菌糸体の増殖促進効果を得ることもできる。なお、前記野菜汁としては、例えば市販の野菜ジュース等を用いることができる。
前記外生菌根菌としては、キシメジ(Tricholomataceae)科、イグチ(Boletaceae)科、テングタケ(Amanitaceae)科、フウセンタケ(Cortinariaceae)科、ヒダハタケ(Paxillaceae)科、ベニタケ(Russulaceae)科、オニイグチ(Strobilomycetaceae)科、アンズタケ(Cantharellaceae)科、イボタケ(Thelephoraceae)科、コツブタケ(Pisolithaceae)科、ニセショウロ(Sclerodermataceae)科、又はイモタケ(Terfeziaceae)科のものを使用することが好ましい。
また、前記アーバスキュラー菌根菌としては、ジャイガスポーラ(Gigaspora)属、ステクロスポーラ(Scutellospora)属、グロマス(Glomus)属、アカウロスポーラ(Acaulospora)属、スクレロシスチス(Sclerocystis)属、又はエンテロスポーラ(Entrophospora)属のものを使用することが好ましい。
なお、外生菌根菌及び/又はアーバスキュラー菌根菌は、本発明の緑化資材の施用対象とする植物の種類や土壌の特性に応じて適当なものを1種類又は2種類以上選択して用いることが望ましい。
上記本発明に係る緑化資材は、植物炭化物に前記酸性の液体と、所定量(例えば植物炭化物と等容積量)の砂を添加して混合し、該混合物を高圧滅菌処理した後に、この滅菌された混合物に予め共生微生物(例えばアーバスキュラー菌根菌)を感染させたアルファルファやソルガムなどの宿主植物を植え付け、所定温度(例えば20〜30℃)で所定期間(例えば約30〜40日間)栽培して前記の混合物中に菌糸を充分に伸長させることによって製造することができる。
また、本発明に係る緑化資材は、植物炭化物に前記酸性の液体と、共生微生物の生存に必要な栄養を含む液体培地とを添加して高圧滅菌処理し、次いで滅菌された該混合物に予め所定の培地を用いて培養した共生微生物(例えば外生菌根菌)を一定量接種し、所定温度(例えば20〜30℃)で所定期間(例えば約30〜40日間)培養し、前記の植物炭化物と液体培地の混合物中に菌糸を充分に伸長させることによって製造することもできる。
なお、上記の培地としては、共生微生物の生育に必要な栄養を含む培地を使用する。例えば、前記植物炭化物に添加する液体培地としては、PDB(Potato Dextrose Broth)培地やMMN(Modified Melin-Norkrans)培地などを用いることができる。また、前記植物炭化物に保持させる前に予め共生微生物を培養するための培地としては、例えば、PDA(Potato Dextrose Agar)培地やMMN培地などを用いることができる。PDB培地は、例えばポテトスターチ4g及びデキストロース20gを精製水1000mLに溶解することで調製することができる。PDA培地は、例えばポテトスターチ4g、デキストロース20g及び寒天20gを精製水1000mLに溶解することで調製可能である。MMN培地は、例えばグルコース 10.0g、酒石酸アンモニウム 1.0g、KHPO 0.5g、MgSO・7HO 0.15g、CaCl・2HO 0.05g、1%FeCl溶液 1.2mL、0.1%塩酸チアミン溶液 0.1mL、マルトエキス(Difco社製) 3.0g、イーストエキス(Difco社製) 2.0gを精製水1000mLに溶解してpH5.5に調整することにより調製可能である。
前記の高圧滅菌処理とは、高温高圧の水蒸気による滅菌処理(いわゆるオートクレーブ滅菌)を意味し、例えば11.8×10Pa(1.2kgf/cm)において121℃の過熱蒸気によって処理を行うことが望ましい。処理時間は滅菌処理を行う対象物質により異なり、植物炭化物と砂の混合物などの培土を高圧滅菌処理する場合には、培土の変質の問題が少なく、且つ滅菌が難しいため、処理時間を30分程度とし、PDB培地やPDA培地などの培地を高圧滅菌処理する場合には、処理時間を長くすると培地成分の変質が起こるため、処理時間を15分程度とする。
上述の方法により緑化資材の内部に伸長した菌糸体は、植物の根があれば直ちに活動を開始して、素早く共生関係を築くことができる。しかしながら、その一方で乾燥や高温に影響されて共生能力が衰える可能性がある。そこで、上記方法によって製造された緑化資材には、更に、前記共生微生物の胞子懸濁液を添加することが望ましい。胞子は発菌して植物に共生するまでに時間を要するという問題があるが、乾燥や高温に耐え、長期間の共生能力を保持できるという利点がある。そこで、上記のように菌糸体と胞子の両方を植物炭化物に保持させることにより、両者の欠点を補完して即効性と効果の安定性を兼ね備えた緑化資材を得ることができる。
また、上述の方法により、それぞれ異なる共生微生物を保持して成る2種類以上の緑化資材を製造し、これらを混合することによって2種類以上の共生微生物を保持して成る緑化資材を製造してもよい。こうした混合資材は、例えばそれぞれ別種の共生微生物と共生する複数種類の植物を一箇所に混植する場合等に好適に用いることができる。
上記のような本発明に係る緑化資材は、樹勢の衰えた樹木又は果樹を活性化するための樹勢回復資材として好適に用いることができる。また、本発明に係る緑化資材は、苗木を植栽する緑化工事や造園工事において、又は花卉、野菜、果樹の育苗時などにおいて肥料の代替又は肥料の一部の代替として用いることもできる。いずれの場合においても、本発明に係る緑化資材は、対象植物(すなわち微生物と共生させようとする植物)が植栽される土壌に混合又は埋設することによって施用される。
本発明に係る緑化資材をクロマツに施用する場合には、上記植物炭化物として炭化温度400℃〜800℃、粒径2〜6mmの木炭を使用し、共生微生物として外生菌根菌を用いることが望ましい。また、本発明に係る緑化資材をアカマツに施用する場合には、上記植物炭化物として炭化温度400℃〜600℃、粒径2〜6mmの木炭を使用し、共生微生物として外生菌根菌を用いることが望ましい。また更に、本発明に係る緑化資材をサクラ属の樹木に施用する場合には、上記植物炭化物として炭化温度400〜800℃、粒径2〜6mmの木炭を使用し、共生微生物としてアーバスキュラー菌根菌を用いることが望ましい。
[外生菌根菌の菌体増殖と資材化]
まず、粒径2〜5mmの木炭(pH8.5)1Lに対して、MMN液体培地を500mL加えて外生菌根菌の生育に必要な栄養分を前記木炭に含浸させた。その際、MMN培地には、10mLの酢酸と10mLの無塩野菜ジュース(カゴメ株式会社製)を遠心分離処理した上清を予め加えておき、これにより、前記木炭のpHを7.0とした。その後、前記液体培地を含む木炭を、121℃、11.8×10Pa(1.2kgf/cm)の条件で15分間、高圧滅菌処理した。一方、予めMMN培地で平板培養したイグチ科の外生菌根菌であるチチアワタケ(Suillus granulatus 1140菌株)(寄託機関:独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、受領番号:FERM AP−22020、受領日:2010年9月16日)のコロニーを5mm角に4片切り取り、前記滅菌処理を行った液体培地を含む木炭に接種して28℃で培養した。これを前記木炭が白色の菌糸で充分に覆われるまで約1ヶ月間培養することにより緑化資材を得た。以下これを実施例1Aの緑化資材と呼ぶ。
また、同様の方法により、ニセショウロ科の外生菌根菌(Scleroderma sp. 1087菌株)を保持させた緑化資材を作成した。以下これを実施例1Bの緑化資材と呼ぶ。
更に、比較例として、木炭の代わりに市販の園芸培土を使用すると共に酢酸及び野菜ジュースを添加しない通常のMMN培地を使用して上記同様の手順により前記外生菌根菌の各菌株を保持した緑化資材を作成した。また更に、別の比較例として酢酸及び野菜ジュースを添加しない通常のMMN培地を用いて上記同様の手順により前記外生菌根菌の各菌株を保持した緑化資材を作成した。
上記実施例1A、1Bに係る緑化資材と各比較例に係る緑化資材における外生菌根菌の菌体増殖効果を評価した結果を図1に示す。なお、ここでは各緑化資材に含まれる菌体の乾燥重量を比較することにより菌体増殖効果を評価した。なお、菌体の乾燥重量は、上記で作成した緑化資材を乾燥器で乾燥させ、その乾燥重量から予め測定しておいた木炭又は園芸培土の乾燥重量を差し引くことによって測定した。
その結果、木炭を使用し酢酸及び野菜ジュースを添加せずに作成した緑化資材(図中の「外生菌根菌+通常の木炭」)では菌体がほとんど増殖しないのに対し、実施例1A、1Bの緑化資材では、園芸培土を用いた緑化資材(図中の「外生菌根菌+園芸培土」)に比べて2倍近い菌体量が得られることが確認された。
[アーバスキュラー菌根菌の菌体増殖と資材化]
まず、1プラグ苗当たりの容量が15mLのセルトレイ(東缶興産株式会社製、セルトレイ#72)に、121℃、11.8×10Pa(1.2kgf/cm)の条件で高圧滅菌器(株式会社トミー精工製、BS−325)にて30分間滅菌処理した川砂を7mL入れ、次いでアーバスキュラー菌根菌であるグロマス・アグリゲイツム(Glomus aggregatum OG-105菌株)の胞子液を2mL添加し、更に滅菌した川砂を3mL入れてアルファルファの種子を播種した。これを気温20〜30℃の条件下で適切に栽培管理し、適時に潅水を行った。また、発芽後1週間毎にピータースの液肥(第一園芸社製、NPK:25−5−20)を充分に潅水した。30日間栽培を継続した後、アルファルファの細根を採取し、10%水酸化カリウム水溶液で脱色処理後にトリパンブルー染色液で染色して、顕微鏡を用いてアーバスキュラー菌根菌の共生状況を確認した。
次に、粒径2〜5mmの木炭(pH8.5)に該木炭の容量の40%の酢酸と10%の無塩野菜ジュース(カゴメ株式会社製)を含浸させることにより、該木炭のpHを7.0とした。その後、前記木炭と等容量の川砂を混合し、その混合物を温度121℃、11.8×10Pa(1.2kgf/cm)の条件で30分間高圧滅菌処理した。この混合物を培土として、先にセルトレイで育成したアルファルファを移植した。これを気温20〜30℃の条件下で適切に栽培管理し、適時に潅水を行った。また、発芽後1週間毎にピータースの液肥(第一園芸社製、NPK:25−5−20)を充分に潅水した。30〜40日間栽培を継続し、前述の方法でアルファルファの細根にアーバスキュラー菌根菌が共生していることを確認した。その後、潅水を中止し、植物体を枯死させて培土中での胞子形成を促し、培土を十分に乾燥させることによりアーバスキュラー菌根菌を保持した緑化資材を得た。以下これを実施例2Aの緑化資材と呼ぶ。
また、上記同様の方法によりアーバスキュラー菌根菌(Glomus sp. KANSO-6菌株)を保持した緑化資材を作成した。以下これを実施例2Bの緑化資材と呼ぶ。
更に、比較例として木炭の代わりに市販の園芸培土を使用し、同様の手順(但し、酢酸及び野菜ジュースは添加しない)により前記アーバスキュラー菌根菌の各菌株を保持した緑化資材を作成した。また更に、別の比較例として酢酸及び野菜ジュースを添加しない木炭を用いて上記同様の手順により前記アーバスキュラー菌根菌の各菌株を保持した緑化資材を作成した。
上記実施例2A、2Bの緑化資材と各比較例に係る緑化資材におけるアーバスキュラー菌根菌の菌体増殖効果の評価結果を図2に示す。なお、ここでは乾燥土壌(乾燥資材)100g当たりの胞子数を比較することにより菌体増殖効果を評価した。
その結果、実施例2Aの緑化資材及び実施例2Bの緑化資材のいずれにおいて、比較例の園芸培土を用いた緑化資材(図中の「アーバスキュラー菌根菌+園芸培土」)や、酢酸及び野菜ジュースを添加しない木炭を用いた緑化資材(図中の「アーバスキュラー菌根菌+通常の木炭」)よりも、胞子数が多く、高い菌体増殖効果が得られることが確認された。
[外生菌根菌資材によるクロマツの育成効果]
乾熱滅菌処理を180℃で8時間行ったバーミキュライト(ニッタイ株式会社製)にクロマツの種子を播種した後、適時潅水して大きさの揃った無菌根の実生苗を育成した。次に、121℃、11.8×10Pa(1.2kgf/cm)の条件で30分間の高圧滅菌処理を行った川砂と赤玉土の等量混合培土に、前記クロマツの実生苗を定植し、その際、実施例1Aの緑化資材(外生菌根菌を保持したもの)を、実生苗1本に対して10mLずつ植穴に施用した。この実生苗を、2週間毎にピータースの液肥(NPK:25−5−10)を施用しつつ栽培したところ、栽培60日目には、肥料のみで栽培した苗木(対照区)よりも大きな苗木を得ることができた。図3に栽培60日目における苗木の地上部及び地下部の乾燥重量を示す。なお、同図は、各試験区の苗数を10本ずつとし、上記試験を2回繰り返して行った結果の平均値を示している。
[外生菌根菌資材によるアカマツの育成効果]
乾熱滅菌処理を180℃で8時間行ったバーミキュライト(ニッタイ株式会社製)にアカマツの種子を播種した後、適時潅水して大きさの揃った無菌根の実生苗を育成した。次に、121℃、11.8×10Pa(1.2kgf/cm)の条件で30分間の高圧滅菌処理を行った川砂と赤玉土の等量混合培土に、前記アカマツの実生苗を定植し、その際、キシメジ科の外生菌根菌であるホンシメジ(Lyophyllum shimeji 273菌株)(寄託機関:独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、受領番号:FERM AP−22019、受領日:2010年9月16日)を保持させた緑化資材(これを実施例4の緑化資材と呼ぶ)を、実生苗1本に対して10mLずつ植穴に施用した。なお、この実施例4の緑化資材は実施例1Aの緑化資材と同様の方法により作成した。この実生苗を、2週間毎にピータースの液肥(NPK:25−5−10)を施用しつつ栽培したところ、栽培60日目には、肥料のみで栽培した苗木(対照区)よりも大きな苗木を得ることができた。図4に栽培60日目における苗木の地上部及び地下部の乾燥重量を示す。なお、同図は、各試験区の苗数を10本ずつとし、上記試験を2回繰り返して行った結果の平均値を示している。
[アーバスキュラー菌根菌資材によるカスミザクラの育成効果]
乾熱滅菌処理を180℃で8時間行ったバーミキュライト(ニッタイ株式会社製)にカスミザクラの種子を播種した後、適時潅水して大きさの揃った無菌根の実生苗を育成した。次に、121℃、11.8×10Pa(1.2kgf/cm)の条件で30分間の高圧滅菌処理を行った川砂と赤玉土の等量混合培土に、前記カスミザクラの実生苗を定植し、その際、実施例2A又は2Bの緑化資材(アーバスキュラー菌根菌を保持したもの)を、上記実生苗1本に対し10mLずつ植穴に施用した。この実生苗を、2週間毎にピータースの液肥(NPK:25−5−10)を施用しつつ栽培したところ、栽培60日目には、実施例2A、2Bのいずれの緑化資材を施用した区においても肥料のみで栽培した苗木(対照区)よりも大きな苗木を得ることができた。図5に栽培60日目における苗木の地上部及び地下部の乾燥重量を示す。なお、同図は、各試験区の苗数を20本ずつとして上記試験を行った結果の平均値を示している。
[外生菌根菌資材によるクロマツの根系再生効果]
予め育成したクロマツの根系範囲内に実施例1Aの緑化資材を1L施用し、該緑化資材による根系再生効果及び菌根形成効果を確認した。具体的には、容量30Lのプランターの中央にクロマツを定植してその両側の2箇所に円筒形の穴を穿設し、これらの穴に前記緑化資材を0.5Lずつ施用して栽培を行った。
また、緑化資材に代わって堆肥を施用したクロマツ(対照区1)と、赤玉土と川砂の等量混合物を施用したクロマツ(対照区2)についても同様に栽培を行った。
6ヶ月間栽培を継続した後に、前記緑化資材、堆肥、又は赤玉土と川砂の混合物を土壌から掘り起こし、その中に含まれるクロマツの細根を洗い出して乾燥させ、その乾燥重量を測定した。その結果、図6(a)に示すように、実施例1Aの緑化資材を施用した区では、前記対照区1と比べると3倍以上、対照区2と比べると6倍以上の細根が資材中に侵入・増殖しており、高い根系再生効果が認められた。
また、各区のクロマツにおける菌根形成率を測定したところ、図6(b)に示すように、実施例1Aの緑化資材を施用した区では、対照区1、2に比べて多くの菌根が形成されており、実施例1Aの資材により、細根量だけでなく菌根量も増加することが確認された。なお、上記の菌根形成率は、細根における全根端数を計数し、そのうち根端が外生菌根化している箇所の割合を算出して菌根形成率とした。つまり、菌根形成率=(外生菌根化した根端数/細根の全根端数)×100とした。なお、図6(a)、(b)は、いずれも各試験区のクロマツを6本ずつとし、上記試験を2回繰り返して行った結果の平均値を示している。
[資材の粒子径による影響]
様々な粒径の木炭を用いて実施例1Aの緑化資材を作成し、これを前記実施例6と同様に、予め育成したクロマツの根系範囲内に1L施用し、3ヶ月間栽培を継続した後に資材中に侵入・増殖した直径2mm以下の細根量を測定した。その結果、図7に示すように、粒径2〜10mmの木炭を用いた緑化資材を施用したものでは、赤玉土と川砂の等量混合物を施用したもの(対照区)に比べて、細根量が5〜7倍に増加しており、高い根系再生効果が認められた。一方、粒径が1mm以下や15mm以上の木炭を用いた緑化資材では、粒径2〜10mmの木炭を使用したものに比べて細根量が減少する傾向が認められた。なお、同図は、各試験区のクロマツを6本ずつとし、上記試験を2回繰り返して行った結果の平均値を示している。
[アーバスキュラー菌根菌資材によるソメイヨシノの根系再生効果]
予め育成したソメイヨシノの根系範囲内に実施例2Aの緑化資材を1L施用して6ヶ月間栽培を継続し、該緑化資材による根系再生効果及び菌根形成効果を確認した。また、緑化資材に代わって堆肥を施用したソメイヨシノ(対照区1)と、赤玉土と川砂の等量混合物を施用したソメイヨシノ(対照区2)についても根系再生効果及び菌根形成効果を確認した。なお、上記緑化資材、堆肥、及び赤玉土と川砂の混合物の施用、並びに根系再生効果の評価は、実施例6と同様の方法によって行った。但し、菌根形成効果の評価、すなわち菌根形成率の測定は、「ワーキング ウィズ マイコリザ イン フォレストリ− アンド アグリカルチャー(Working with mycorrhizas in forestry and agriculture)」、(1996年、オーストラリアン センター フォー インターナショナル アグリカルチュラル リサーチ(Australian Centre for International Agricultural Research)発行)の182頁〜184頁に記載の方法により行った。
その結果、図8(a)に示すように、実施例2Aの緑化資材を施用した区では、直径2mm以下の細根量が前記対照区1と比べて2倍近くに、対照区2と比べると5倍以上になっており、高い根系再生効果が認められた。また、図8(b)に示すように、実施例2Aの緑化資材を適用した区では、対照区1、2に比べて多くの菌根が形成されており、実施例2Aの資材により、細根量だけでなく菌根量も増加することが確認された。なお、図8(a)、(b)は、各試験区のソメイヨシノを6本ずつとし、上記試験を2回繰り返して行った結果の平均値を示している。
[資材の粒子径による影響]
様々な粒径の木炭を用いて実施例2Aの緑化資材を作成し、これを前記実施例8と同様に、予め育成したソメイヨシノの根系範囲内に1L施用し、3ヶ月間栽培を継続した後に資材中に侵入・増殖した直径2mm以下の細根量を測定した。その結果、図9に示すように、粒径2〜10mmの木炭を用いた緑化資材を施用したものでは、赤玉土と川砂の等量混合物を施用したもの(対照区)に比べて、細根量が5〜7倍に増加しており、根系再生効果が認められた。一方、粒径が1mm以下や15mm以上の木炭を用いた緑化資材では、粒径2〜10mmの木炭を使用したものに比べて細根量が減少する傾向が認められた。なお、同図は、各試験区のソメイヨシノを6本ずつとし、上記試験を2回繰り返して行った結果の平均値を示している。

Claims (11)

  1. 植物炭化物に酸性の液体を添加することによりpH5.0〜8.0としたものに、外生菌根菌及び/又はアーバスキュラー菌根菌を保持させて成ることを特徴とする緑化資材。
  2. 前記植物炭化物の粒径が2mm〜10mmであることを特徴とする請求項1に記載の緑化資材。
  3. 上記酸性の液体が有機酸、野菜汁、及び果汁のうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項1又は2に記載の緑化資材。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の緑化資材に、前記外生菌根菌及び/又はアーバスキュラー菌根菌の胞子体懸濁液を添加して成ることを特徴とする緑化資材。
  5. クロマツの樹勢回復のために施用される緑化資材であって、請求項1〜4のいずれかに記載の緑化資材において前記植物炭化物を粒径が2〜6mm、炭化温度が400℃〜800℃の木炭とし、外生菌根菌を保持させたことを特徴とする緑化資材。
  6. アカマツの樹勢回復のために施用される緑化資材であって、請求項1〜4のいずれかに記載の緑化資材において前記植物炭化物を粒径が2〜6mm、炭化温度が400℃〜600℃の木炭とし、外生菌根菌を保持させたことを特徴とする緑化資材。
  7. サクラの樹勢回復のために施用される緑化資材であって、請求項1〜4のいずれかに記載の緑化資材において前記植物炭化物を粒径が2〜6mm、炭化温度が400℃〜800℃の木炭とし、アーバスキュラー菌根菌を保持させたことを特徴とする緑化資材。
  8. 前記外生菌根菌が、キシメジ(Tricholomataceae)科、イグチ(Boletaceae)科、テングタケ(Amanitaceae)科、フウセンタケ(Cortinariaceae)科、ヒダハタケ(Paxillaceae)科、ベニタケ(Russulaceae)科、オニイグチ(Strobilomycetaceae)科、アンズタケ(Cantharellaceae)科、イボタケ(Thelephoraceae)科、コツブタケ(Pisolithaceae)科、ニセショウロ(Sclerodermataceae)科及びイモタケ(Terfeziaceae)科のいずれか1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の緑化資材。
  9. 前記アーバスキュラー菌根菌が、ジャイガスポーラ(Gigaspora)属、ステクロスポーラ(Scutellospora)属、グロマス(Glomus)属、アカウロスポーラ(Acaulospora)属、スクレロシスチス(Sclerocystis)属及びエンテロスポーラ(Entrophospora)属のいずれか1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の緑化資材。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の緑化資材を製造する方法であって、前記植物炭化物に前記酸性の液体と砂を添加して混合し、該混合物を高圧滅菌処理した後、予め外生菌根菌及び/又はアーバスキュラー菌根菌を感染させた宿主植物を該混合物に植え付け、該混合物中に前記外生菌根菌及び/又はアーバスキュラー菌根菌の菌糸を伸長させることを特徴とする緑化資材の製造方法。
  11. 請求項1〜9のいずれかに記載の緑化資材を製造する方法であって、前記植物炭化物に前記酸性の液体と前記外生菌根菌及び/又はアーバスキュラー菌根菌の生育に必要な栄養を含む液体培地を添加して高圧滅菌処理した後、予め別途培養した外生菌根菌及び/又はアーバスキュラー菌根菌を前記植物炭化物に接種して培養し、菌糸を伸長させることを特徴とする緑化資材の製造方法。
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