本発明は、水改質を目的とした成分を所定量、給湯水に添加する機能を備えた給湯装置に関するものである。
従来この種の装置は、目的の成分を含む材料を湯水に添加する水改質手段を、湯沸かし部に水道水を供給する給水経路中、または湯沸かし部で沸いた湯を浴槽へ導く注湯経路中に配設し、給湯水中に、所定の目的の水改質成分を添加する方法が公開されている(例えば、特許文献1参照)。
図14は、特許文献1に記載された従来の給湯装置を示すものである。図14に示すように、水経路中に、水改質手段を組み込んで構成されている。本特許文献1において、水改質手段としては、添加成分を電極(亜鉛陽極1)とした電気分解方式を用い、注湯水が水改質手段を通過中に、電極1、2に通電し、電極1の一部を注湯水中に電気分解させることで、所定濃度の水改質成分を添加することができる。
また、特許文献1以外の他の水改質手段としては、水改質成分を含有した無機化合物を、湯水と接触させて濃度拡散を利用して溶解する手段も用いることができる。
しかしながら、前記従来の構成では、水改質成分は、給水経路または、注湯経路の途中に配設されており、浴槽に注湯される湯水は、毎回水改質手段を通過することとなる。従って、水改質成分なしの湯水を得ることができないだけでなく、給湯装置が設置される家庭ごとに供給される水道水の元圧の違いや、浴室が2階以上に設置されることによる高度差に由来する注湯流量のばらつきに比例して、水改質手段の通過流量が大きく変化するため、目的の成分添加濃度を得ることが困難にもなる。
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、給湯装置を設置する家庭の元水道圧や、設置場所の違いにより注湯流量が異なっても、水改質成分の添加濃度を安定させることができるとともに、給湯水中への水改質成分の添加有無を調整できる給湯装置を提供することを目的とする。
前記従来の課題を解決するために、本発明の給湯装置は、湯水を注湯する注湯経路と、前記注湯経路からの湯水を分流させるように形成した並列分岐経路と、湯水の機能改質成分を添加する水改質手段とを備え、前記並列分岐経路に前記水改質手段を配設したことを特徴とするもので、水改質手段に給湯水が全量通過する構成に対して、一部の湯水だけを水改質手段に通過させるため、元の給湯水量が変動した場合でも、水改質手段に流れる湯水の変動量の絶対値は小さくできるため、水改質成分の添加濃度の変動を抑制できる。
本発明によれば、給湯装置を設置する家庭の元水道圧や、設置場所の違いにより注湯流
量が異なっても、水改質成分の添加濃度を安定させることができるとともに、給湯水中への水改質成分の添加有無を調整できる給湯装置を提供できる。
本発明の実施の形態1における給湯装置の構成図
同実施の形態における水改質回路の詳細図
同実施の形態における電気分解方式を用いた水改質回路の詳細図
同実施の形態における無機化合物の表面の濃度分布および速度境界層を示す図
同実施の形態における水改質手段内の水流量に対する、水改質手段出口の水に含まれる亜鉛濃度を示した溶解度特性図
分岐部間の注湯経路と、水改質手段を含む並列分岐経路の圧力損失比を1:9とした場合の、流量Qと圧力損失Pの関係を示す図
同実施の形態の別の水改質回路例の詳細図
本発明の実施の形態2における水改質回路の詳細図
同実施の形態における2つの異なる分配比ごとの注湯経路と並列分岐経路の流量Qと圧力損失Pの関係を示す図
同実施の形態における水改質手段内の水流量に対する、水改質手段出口の水に含まれる亜鉛濃度を示した溶解度特性図
同実施の形態における水流分配比調整手段の別の配設図
同実施の形態における水流分配比調整手段の別の配設図
同実施の形態における水改質手段の水流方向を地から天の方向に流す構成図
従来の給湯装置の構成図
第1の発明は、湯水を注湯する注湯経路と、前記注湯経路からの湯水を分流させるように形成した並列分岐経路と、湯水の機能改質成分を添加する水改質手段とを備え、前記並列分岐経路に前記水改質手段を配設したことを特徴とする給湯装置で、水改質手段に給湯水が全量通過する構成に対して、一部の湯水だけを水改質手段に通過させるため、元の給湯水量が変動した場合でも、水改質手段に流れる湯水の変動量の絶対値は小さくできることで、水改質成分の添加濃度の変動を抑制できる。
第2の発明は、第1の発明の給湯装置の、前記注湯経路と前記並列分岐経路とを流れる湯水量の分配比を調整する水流分配比調整手段を備えたことを特徴とするもので、水流分配比調整手段により、並列分岐経路への湯水量を任意に増減、および、分配停止することが可能となり、浴槽への注湯時の湯水における水改質成分の添加の有無を、任意に使い分けることができる。
第3の発明は、第1または第2の発明の給湯装置の、前記注湯経路と前記並列分岐経路との分岐部の流路上流側に浴槽水注湯弁を配設し、前記浴槽水注湯弁が開状態のときに、前記水流分配比調整手段を動作させることを特徴とするもので、浴槽の湯張り時に、水改質成分を添加したお湯を注湯することが可能となる。
第4の発明は、第1から第3の発明のいずれかの給湯装置の、前記注湯経路と前記並列分岐経路とを流れる湯水の総量に対する前記並列分岐経路への流量の割合が50%以下となるように、前記水流分配比調整手段は調整することを特徴とするもので、例えば、元水道圧が同一で、予め水改質手段における水通過流量と、通過した水への水改質成分の添加濃度の関係が既知の水改質手段を用い、水流分配比調整手段で並列分岐経路への水の流入比を0から5の範囲で調整することで、浴槽への注湯水の水改質成分を停止するのに加え
、水改質成分の添加濃度を任意に増減させることも可能となる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における給湯装置の構成図を示すものである。図2は、同実施の形態における水改質回路の詳細図を示すものである。
図1において、圧縮機22、給湯熱交換器23、減圧手段24、蒸発器25を冷媒回路26で順に環状に接続してヒートポンプユニット21を構成している。貯湯ユニット27の貯湯タンク28には水が貯留されており、出湯回路30は貯湯タンク28、給湯水ポンプ29、給湯熱交換器23、貯湯タンク28を順に接続する回路である。浴槽水加熱回路35は、貯湯タンク28、風呂熱交換器33、浴槽水加熱ポンプ34、貯湯タンク28を順に接続する回路であり、風呂熱交換器33の他方の回路には浴槽42が接続されている。
浴槽水循環回路41は、浴槽42、浴槽水を搬送する浴槽水ポンプ40、風呂熱交換器33を順に接続する回路である。浴槽水注湯回路39は、貯湯タンク28の水を、浴槽水循環回路41を経由して浴槽42へ注湯する回路である。この回路には貯湯タンク28の高温の水と水道水を混合する浴槽水混合弁36、注湯する水温を検知する温度検知手段37、浴槽水注湯回路39の回路の開閉を行う浴槽水注湯弁38を順に備える。
水改質回路10は、浴槽水注湯弁の下流側の浴槽水注湯回路39内の途中に配設されている回路である。図2に示すように、水改質回路10は、浴槽水注湯回路内の注湯経路11の途中に2ヶ所の分岐部12を設け、両分岐部12を並列分岐経路13で接続し、並列分岐経路13上に水改質手段17を貯湯ユニット27の本体筺体内に収納するように配設したものである。
また、図2に示すように、注湯経路11の管径aに対して、並列分岐経路13の管径bの方を大きくすることで、注湯経路11と、並列分岐経路13の間で圧力損失差を作り、注湯経路11に流れる湯水の一部が並列分岐経路13側に分流し、水改質手段17にて水改質成分を添加された水が再び分岐部12を経て、注湯経路11の湯水と合流し、水改質成分が添加された湯水が浴槽42に注湯される。
尚、水改質手段17は、目的の水改質成分を水に溶解添加できる手段であればよく、図2に示すような、水改質成分を含有した無機化合物15の粒子を収納容器14内に充填し、無機化合物15の下流側にろ過手段16を配設し、無機化合物15と湯水を直接接触させる溶解方式や、
図3に示すような目的成分を電極1、2とし、電極1、2に電源部9から通電して、水に水改質成分を分解溶出させる電気分解方式を用いてもよいが、直接溶解方式の方が、コスト面、コンパクト性、可燃性ガス発生など安全性、消費電力量等の面でメリットが多く、本実施の形態では、溶解方式を前提に説明する。
ヒートポンプユニット21で貯湯タンク28に貯留された水を加熱する運転は、以下のような動作となる。貯湯タンク28の水は、給湯水ポンプ29によって給湯熱交換器23へ搬送され、ヒートポンプサイクル動作によって加熱される。給湯水ポンプ29は給湯熱交換器23で加熱された給湯水の温度が予め決定した温度になる様に、出湯回路30の流量を制御する。
浴槽42への湯張り、並びに、浴槽水の加熱は以下のような動作となる。浴槽水注湯回路39の浴槽水混合弁36は、温度検知手段37で検知する注湯温度がリモコン等(図示せず)で予め設定された温度となるように、高温の水と水道水の混合割合を調整する。所定温度となった浴槽水は、浴槽水注湯回路39、浴槽水循環回路41を順に経由して浴槽42へ流出する。一方、浴槽42の浴槽水を加熱する場合は、貯湯タンク28に貯留された高温の水を、浴槽水加熱ポンプ34によって風呂熱交換器33へ搬送し、浴槽水ポンプ40より搬送された浴槽水を加熱する。風呂熱交換器33で浴槽水を加熱して温度が下がった給湯水は、貯湯タンク28の下部より内部へ流入する。
以上のように構成された給湯装置について、以下その動作、作用を説明する。利用者が浴槽42へ湯はりを行う場合は、リモコン等で湯はり動作の指示操作を行う。リモコン操作後、予め設定された温度に浴槽水混合弁36で調整された水が、浴槽水注湯弁38を閉から開に制御した場合に、浴槽水注湯弁38から、浴槽水注湯回路39内の注湯経路11に湯水が流入し、注湯経路11の管径aに対して、並列分岐経路13の管径bの方を大きくすることで、注湯経路11と、並列分岐経路13間に圧力損失差を作り、注湯経路11に流れる湯水の一部が並列分岐経路13側に分流し、水改質手段17にて水改質成分を添加された水が再び分岐部12を経て、注湯経路11の湯水と合流し、水改質成分が添加された湯水を浴槽42に注湯される。
前記水改質手段17内においては、流入した湯水が収納容器14に充填された無機化合物15の粒子で形成された多孔質の空間を通過する。水には粘性があるため、多孔質の空間を通過する際に無機化合物15の表面から表面近傍の領域には速度境界層が生成される。図4はその速度境界層の状態を示す図である。無機化合物15の表面近傍の速度境界層の流速は小さく、多孔質空間の中心部を通過する流速は大きい分布となる。無機化合物15は水に対して溶解性を持つため、無機化合物15の表面近傍の無機化合物15の表面分子は、表面近傍の水に溶解し、水の溶解濃度が上昇する。表面近傍の水は流速が小さいため、溶解濃度は高い値となる。
これに対して流速の大きい多孔質空間の中心部の流れる水の溶解濃度は低い。このとき、水中に溶解する無機化合物の濃度差が生じた場合は、濃度差に応じて高い方から低い物質が移動する(フィックの法則)ため、表面近傍の水に溶解した無機化合物は濃度の低い中心の水に移動する。この物質拡散の原理を利用することで、無機化合物11を多孔質空間内の水に溶解させることができる。
図5は、無機化合物15として、亜鉛化合物を使用した場合の、前記フィックの法則による、水改質手段17内の水流量に対する、水改質手段17出口の水に含まれる亜鉛濃度を示した溶解度特性グラフである。このグラフにおいて、流量1から2L/minの間で濃度のピークが存在し、2L/min以上では、濃度低下傾向となっている。この特性は、言い換えると、2L/min以上では、前記のフィックの法則による亜鉛化合物の溶解絶対量が水流速に対して飽和しているため、亜鉛濃度が流量の増加に伴い低下していると見なすこともできる。以降の実施の形態では、この図5の亜鉛溶解特性をもとに、動作、作用を説明する。
ここで、給湯装置は、設置される家庭毎に、給水源として使用される水道の水圧差や、浴室が2階以上に設置される等の高度差に起因して、浴槽水注湯回路39に流れる注湯水量が、概ね10から20L/min程度ばらつく。そのため、水改質手段17を注湯経路11に直接配設した場合、最大で△10L/minの流量がばらつき、図5の溶解度特性において、図示していないが、10L/min以上における亜鉛化合物の水への溶解特性は、殆ど0ppmに近いレベルとなることが明らかである。
一方、本発明の給湯装置は、並列分岐経路13に水改質手段17を配設し、注湯経路11に流れる湯水の一部を分流して、水改質手段17に流すことにより、成分濃度を確保することができる。この構成のメリットを図6と用いて説明する。
図6は、分岐部12間の注湯経路11と、水改質手段17を含む並列分岐経路13の圧力損失比を1:9とした場合の、流量Qと圧力損失Pの関係を示すグラフである。圧力損失比が1:9であることから、それぞれの流量分配比は、9:1となり、並列分岐経路13側に全注湯流量の1/10が分流されることとなる。
この図6のグラフからわかるように、圧力損失比(流量分配比)は、流量Qの変動に対しても一定であり、注量経路流量が半分になると、同様に並列分岐経路流量も半分となる。
このことから、給湯装置の設置環境に起因する水改質手段17への流量変化を容易に予想できるだけでなく、注湯総流量が10L/min変化する中で、水改質手段17の変化量を1L/minに抑えることができ、図5の溶解特性の水改質手段17を用いた場合には、水改質手段17出口部での成分濃度を0.5ppm以上確保することでき、この成分添加水を注湯経路11の湯水と混合することで、0.05ppm以上の成分溶解水を浴槽へ注湯することが可能となる。
以上のように、本実施の形態においては、湯水を浴槽42へ注湯する浴槽水注湯回路39と、前記浴槽水注湯回路39を開閉する浴槽水注湯弁38と、注湯水の機能改質成分を添加する水改質手段17と、浴槽水注湯弁38の下流側の注湯経路11上に2ヶ所以上の分岐部12を設け、注湯経路11と並列に、分岐部12間を接続した並列分岐経路13を設け、前記並列分岐経路13上に、水改質手段17を配設した水改質回路10を備えたものであり、浴槽水注湯回路39内の注湯経路11を湯水が流れる際、湯水の一部は、上流側の分岐部12を経て、並列分岐経路13に流入し、水改質手段17を通過した際に、水改質成分を添加させた後、下流側の分岐部12を経て注湯経路11を流れる残りの湯水に再合流される構成とした。
これにより、水改質手段17に給湯水が全量通過する構成に対して、本発明は、一部の湯水だけを水改質手段17に通過させるため、元の注湯水量が変動した場合でも、水改質手段17に流れる湯水の変動量の変動量の絶対値は小さくて済むため、水改質成分の添加濃度の変動を抑制できる。
尚、分岐部12間の注湯経路流量と、水改質手段17を含む並列分岐経路の流量との流量比を作る手段としては、図7に示すように、浴槽水注湯弁38側の注湯経路11の管径より小さい管径の圧損手段18を、分岐部12間に組み込んでも、並列分岐経路13側への分流を作ることができる。
尚、無機化合物を、亜鉛を含む亜鉛化合物(酸化亜鉛、炭酸亜鉛など)とした場合、以下の効果を得ることができる。亜鉛は比較的要求量の多いヒトの必須元素の一つであり、通常の食事からの供給では欠乏しやすく、栄養強化目的で、食品に添加される元素である。これに対しては、浴槽に亜鉛を溶解させた水を供給することで、入浴中に経皮吸収による栄養強化を行うことができる。
また、亜鉛化合物の酸化亜鉛は、薬局方、化粧品原料基準で認可を受けている材料であり、主にヒトの肌の角層に対して収斂作用、消炎作用などの作用を与え、肌の角層の改善を行うこともできる。
また、無機化合物15として用いることが出来る材料は酸化亜鉛以外に、亜鉛化合物として、酸化亜鉛(ZnO)、塩基性炭酸亜鉛(mZnCO3・nZn(OH)2)、水酸化亜鉛(Zn(OH)2)、亜鉛置換型ゼオライト、亜鉛置換型キレート、亜鉛シリカゲル担持物、であり、これらを単一または組み合わせて用いることができる。また、硫酸カルシウム、水酸化マグネシウム、鉄化合物(酸化鉄、水酸化鉄)、酸化銅、酸化ケイ素、二酸化マンガン、水酸化コバルト、酸化チタン、塩化銀、硫酸バリウムを用いることができる。
また、尚、水改質回路10は、浴槽水注湯弁38の下流側としたが、浴槽水注湯弁38が開から閉へ制御された場合は、ウォーターハンマー現象が発生し、上流側の回路に設けている、浴槽水混合弁36、貯湯タンク28等は水道圧以上の水圧負荷を与える。下流側に設けることによって、水改質回路10への水圧負荷が掛からない。
(実施の形態2)
図8は、本発明の第2の実施の形態における水改質回路の詳細図である。尚、第1の実施の形態と同じ構成については、同一符号を付して、説明を省略する。
図8において、19は、水流分配比調整手段であり、上流側の分岐部13に配設されている。水流分配比調整手段19としては、分岐部12から下流の注湯経路11と、水改質手段17を含む並列分岐経路13に流す湯水の分配比率を調整する目的として設置しており、分配比を段階的ないし無段階に調整できる点で、流量調整弁を用いるのが好ましく、さらに予めマイコンにプログラムされた分配比率に自動調整できる点で、モーター等電気動力手段で分配比を調整できる電動式の流量調整弁を用いるのが、さらに好ましい。
以上のように構成された給湯装置について、以下その動作、作用を説明する。浴槽水注湯弁38の下流で、かつ分岐部12に設置された水流分配比調整手段19は、例えば使用者が浴室のリモコンを用いて、水改質成分の添加濃度を増減したい場合に、例えば、水流分配比調整手段19は、分岐部12間の注湯経路11と、水改質手段17を含む並列分岐経路13に流れる湯水の流量比をリモコンの所定の濃度レベル(例えば:濃度うすく)に合わせて調整する。
図9は、2つの異なる分配比ごとの、注湯経路11と並列分岐経路13の流量Qと圧力損失Pの関係を示すグラフである。また、図10の水改質手段17の溶解度特性によると、水改質手段17の流量を増加させることで、水改質手段17出口の成分濃度が下がることが分かる。この溶解特性を用いた場合、初期設定の分配比(注湯経路:並列分岐経路)が、A9:1となっている場合、水流分配比調整手段19を作動させて、分配比を図中Bの6:4とすることで、水改質手段17出口の成分濃度は、およそ0.05ppmとなり、注湯経路の湯水と合流後は、0.02ppmと薄めの添加濃度の湯水を浴槽に注湯可能となる。
図11は、水流分配比調整手段19を並列分岐経路13の水改質手段17の上流側に配設したものであり、図12は、分岐部12間に圧損手段18を配設した水改質回路10の並列分岐経路13に水流分配比調整手段19を配設したものである。本構成における水流分配比調整手段としては、水改質手段17への水流を完全に停止する役割として、流量調整弁以外に、電磁開閉弁を用いてもよい。
上記構成により、浴室からのリモコン操作等で、注湯水への改質成分添加を停止したい場合に、水流分配比調整手段19で、並列分岐経路13の水流を完全に停止することで、水改質手段17への水の浸入をカットし、成分添加なしの湯水を浴槽に注湯することが可能となる。
以上のように本実施の形態の給湯装置は、上流側の分岐部12、または並列分岐経路13、または上流側分岐部12と下流側分岐部12の間に位置する注湯経路の少なくとも1カ所以上に、注湯経路11と並列分岐経路13に流れる湯水量の分配比を調整する水流分配比調整手段19を配設したものであり、水流分配比調整手段19により、並列分岐経路13への湯水量を任意に増減、および分配停止を任意に使い分けることができる。
また、浴槽水注湯弁38が開となっているときに水流分配比調整手段19を作動させ、並列分岐経路13へ湯水を流すものであり、これにより、浴槽への注湯水に対して、水改質成分の添加が可能となり、水改質成分を含有した湯張りが可能となる。
また、水流分配比調整手段19は、浴槽水注湯弁38より流入する湯量の割合を10とした場合、並列分岐経路13への流量の割合を0から5の範囲内としたものであり、これにより、例えば、元水道圧が同一で、予め水改質手段17における水通過流量と、通過した水への水改質成分の添加濃度の関係が既知の水改質手段17を用い、水流分配比調整手段19で並列分岐経路13への水の流入比を0から5の範囲で調整することで、浴槽42への注湯水の水改質成分の添加濃度を任意に増減させることが可能となる。
尚、本発明における水改質手段17に流れる水流方向については、前記実施の形態では、上から下方向、つまり天から地への流れで示しているが、図13に示すように水改質手段17に対して、地から天への流れで構成してもよく、この場合、無機化合物15粒子が水流で持ち上げられて水の流路を確保するため、無機化合物15粒子由来の圧力損失を大幅に低減することが可能となる。
以上のように、本発明にかかる給湯装置は、無機化合物の水への溶解濃度を安定化させることができ、貯湯式給湯機の他、ガス熱源の給湯機にも利用できる。
10 水改質回路
17 水改質手段
19 水流分配比調整手段
21 ヒートポンプユニット
27 貯湯ユニット
28 貯湯タンク
38 浴槽水注湯弁
39 浴槽水注湯回路
41 浴槽水循環回路
42 浴槽
本発明は、水改質を目的とした成分を所定量、給湯水に添加する機能を備えた給湯装置に関するものである。
従来この種の装置は、目的の成分を含む材料を湯水に添加する水改質手段を、湯沸かし部に水道水を供給する給水経路中、または湯沸かし部で沸いた湯を浴槽へ導く注湯経路中に配設し、給湯水中に、所定の目的の水改質成分を添加する方法が公開されている(例えば、特許文献1参照)。
図14は、特許文献1に記載された従来の給湯装置を示すものである。図14に示すように、水経路中に、水改質手段を組み込んで構成されている。本特許文献1において、水改質手段としては、添加成分を電極(亜鉛陽極1)とした電気分解方式を用い、注湯水が水改質手段を通過中に、電極1、2に通電し、電極1の一部を注湯水中に電気分解させることで、所定濃度の水改質成分を添加することができる。
また、特許文献1以外の他の水改質手段としては、水改質成分を含有した無機化合物を、湯水と接触させて濃度拡散を利用して溶解する手段も用いることができる。
しかしながら、前記従来の構成では、水改質成分は、給水経路または、注湯経路の途中に配設されており、浴槽に注湯される湯水は、毎回水改質手段を通過することとなる。従って、水改質成分なしの湯水を得ることができないだけでなく、給湯装置が設置される家
庭ごとに供給される水道水の元圧の違いや、浴室が2階以上に設置されることによる高度差に由来する注湯流量のばらつきに比例して、水改質手段の通過流量が大きく変化するため、目的の成分添加濃度を得ることが困難にもなる。
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、給湯装置を設置する家庭の元水道圧や、設置場所の違いにより注湯流量が異なっても、水改質成分の添加濃度を安定させることができるとともに、給湯水中への水改質成分の添加有無を調整できる給湯装置を提供することを目的とする。
前記従来の課題を解決するために、本発明の給湯装置は、高温湯を貯湯する貯湯タンクと、前記貯湯タンクからの高温湯と水とをリモコン等で設定された所定温度に混合する混合弁と、前記混合弁の下流側に配設した温度検知手段と、前記混合弁にて所定温度に調整された湯水を注湯する注湯経路と、前記注湯経路からの湯水を分流させるように形成した並列分岐経路と、前記並列分岐経路に配設し無機化合物を添加する水改質手段と、前記注湯経路と前記並列分岐経路とを流れる湯水量の分配比を調整する水流分配比調整手段とを備え、前記水流分配比調整手段を動作させて、前記混合弁にて所定温度に調整された湯水の一部を前記並列分岐経路に流入させ、前記水改質手段にて前記無機化合物を溶解させた後、前記無機化合物溶解水を前記注湯経路を流れる湯水に再合流させる構成としたことを特徴とするもので、水改質手段に給湯水が全量通過する構成に対して、一部の湯水だけを水改質手段に通過させるため、元の給湯水量が変動した場合でも、水改質手段に流れる湯水の変動量の絶対値は小さくできるため、水改質成分の添加濃度の変動を抑制できる。
本発明によれば、給湯装置を設置する家庭の元水道圧や、設置場所の違いにより注湯流量が異なっても、水改質成分の添加濃度を安定させることができるとともに、給湯水中への水改質成分の添加有無を調整できる給湯装置を提供できる。
本発明の実施の形態1における給湯装置の構成図
同実施の形態における水改質回路の詳細図
同実施の形態における電気分解方式を用いた水改質回路の詳細図
同実施の形態における無機化合物の表面の濃度分布および速度境界層を示す図
同実施の形態における水改質手段内の水流量に対する、水改質手段出口の水に含まれる亜鉛濃度を示した溶解度特性図
分岐部間の注湯経路と、水改質手段を含む並列分岐経路の圧力損失比を1:9とした場合の、流量Qと圧力損失Pの関係を示す図
同実施の形態の別の水改質回路例の詳細図
本発明の実施の形態2における水改質回路の詳細図
同実施の形態における2つの異なる分配比ごとの注湯経路と並列分岐経路の流量Qと圧力損失Pの関係を示す図
同実施の形態における水改質手段内の水流量に対する、水改質手段出口の水に含まれる亜鉛濃度を示した溶解度特性図
同実施の形態における水流分配比調整手段の別の配設図
同実施の形態における水流分配比調整手段の別の配設図
同実施の形態における水改質手段の水流方向を地から天の方向に流す構成図
従来の給湯装置の構成図
第1の発明は、高温湯を貯湯する貯湯タンクと、前記貯湯タンクからの高温湯と水とをリモコン等で設定された所定温度に混合する混合弁と、前記混合弁の下流側に配設した温度検知手段と、前記混合弁にて所定温度に調整された湯水を注湯する注湯経路と、前記注湯経路からの湯水を分流させるように形成した並列分岐経路と、前記並列分岐経路に配設し無機化合物を添加する水改質手段と、前記注湯経路と前記並列分岐経路とを流れる湯水量の分配比を調整する水流分配比調整手段とを備え、前記水流分配比調整手段を動作させて、前記混合弁にて所定温度に調整された湯水の一部を前記並列分岐経路に流入させ、前記水改質手段にて前記無機化合物を溶解させた後、前記無機化合物溶解水を前記注湯経路を流れる湯水に再合流させる構成としたことを特徴とする給湯装置で、水改質手段に給湯水が全量通過する構成に対して、一部の湯水だけを水改質手段に通過させるため、元の給湯水量が変動した場合でも、水改質手段に流れる湯水の変動量の絶対値は小さくできることで、水改質成分の添加濃度の変動を抑制できる。
また、水流分配比調整手段により、並列分岐経路への湯水量を任意に増減、および、分配停止することが可能となり、浴槽への注湯時の湯水における水改質成分の添加の有無を、任意に使い分けることができる。
第2の発明は、第1の発明の給湯装置の、前記注湯経路と前記並列分岐経路との分岐部の流路上流側に浴槽水注湯弁を配設し、前記浴槽水注湯弁が開状態のときに、前記水流分配比調整手段を動作させることを特徴とするもので、浴槽の湯張り時に、水改質成分を添加したお湯を注湯することが可能となる。
第3の発明は、第1または第2の発明のいずれかの給湯装置の、前記注湯経路と前記並列分岐経路とを流れる湯水の総量に対する前記並列分岐経路への流量の割合が50%以下となるように、前記水流分配比調整手段は調整することを特徴とするもので、例えば、元水道圧が同一で、予め水改質手段における水通過流量と、通過した水への水改質成分の添加濃度の関係が既知の水改質手段を用い、水流分配比調整手段で並列分岐経路への水の流入比を0から5の範囲で調整することで、浴槽への注湯水の水改質成分を停止するのに加え、水改質成分の添加濃度を任意に増減させることも可能となる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における給湯装置の構成図を示すものである。図2は、同実施の形態における水改質回路の詳細図を示すものである。
図1において、圧縮機22、給湯熱交換器23、減圧手段24、蒸発器25を冷媒回路26で順に環状に接続してヒートポンプユニット21を構成している。貯湯ユニット27の貯湯タンク28には水が貯留されており、出湯回路30は貯湯タンク28、給湯水ポンプ29、給湯熱交換器23、貯湯タンク28を順に接続する回路である。浴槽水加熱回路35は、貯湯タンク28、風呂熱交換器33、浴槽水加熱ポンプ34、貯湯タンク28を順に接続する回路であり、風呂熱交換器33の他方の回路には浴槽42が接続されている。
浴槽水循環回路41は、浴槽42、浴槽水を搬送する浴槽水ポンプ40、風呂熱交換器33を順に接続する回路である。浴槽水注湯回路39は、貯湯タンク28の水を、浴槽水循環回路41を経由して浴槽42へ注湯する回路である。この回路には貯湯タンク28の高温の水と水道水を混合する浴槽水混合弁36、注湯する水温を検知する温度検知手段3
7、浴槽水注湯回路39の回路の開閉を行う浴槽水注湯弁38を順に備える。
水改質回路10は、浴槽水注湯弁の下流側の浴槽水注湯回路39内の途中に配設されている回路である。図2に示すように、水改質回路10は、浴槽水注湯回路内の注湯経路11の途中に2ヶ所の分岐部12を設け、両分岐部12を並列分岐経路13で接続し、並列分岐経路13上に水改質手段17を貯湯ユニット27の本体筺体内に収納するように配設したものである。
また、図2に示すように、注湯経路11の管径aに対して、並列分岐経路13の管径bの方を大きくすることで、注湯経路11と、並列分岐経路13の間で圧力損失差を作り、注湯経路11に流れる湯水の一部が並列分岐経路13側に分流し、水改質手段17にて水改質成分を添加された水が再び分岐部12を経て、注湯経路11の湯水と合流し、水改質成分が添加された湯水が浴槽42に注湯される。
尚、水改質手段17は、目的の水改質成分を水に溶解添加できる手段であればよく、図2に示すような、水改質成分を含有した無機化合物15の粒子を収納容器14内に充填し、無機化合物15の下流側にろ過手段16を配設し、無機化合物15と湯水を直接接触させる溶解方式や、図3に示すような目的成分を電極1、2とし、電極1、2に電源部9から通電して、水に水改質成分を分解溶出させる電気分解方式を用いてもよいが、直接溶解方式の方が、コスト面、コンパクト性、可燃性ガス発生など安全性、消費電力量等の面でメリットが多く、本実施の形態では、溶解方式を前提に説明する。
ヒートポンプユニット21で貯湯タンク28に貯留された水を加熱する運転は、以下のような動作となる。貯湯タンク28の水は、給湯水ポンプ29によって給湯熱交換器23へ搬送され、ヒートポンプサイクル動作によって加熱される。給湯水ポンプ29は給湯熱交換器23で加熱された給湯水の温度が予め決定した温度になる様に、出湯回路30の流量を制御する。
浴槽42への湯張り、並びに、浴槽水の加熱は以下のような動作となる。浴槽水注湯回路39の浴槽水混合弁36は、温度検知手段37で検知する注湯温度がリモコン等(図示せず)で予め設定された温度となるように、高温の水と水道水の混合割合を調整する。所定温度となった浴槽水は、浴槽水注湯回路39、浴槽水循環回路41を順に経由して浴槽42へ流出する。一方、浴槽42の浴槽水を加熱する場合は、貯湯タンク28に貯留された高温の水を、浴槽水加熱ポンプ34によって風呂熱交換器33へ搬送し、浴槽水ポンプ40より搬送された浴槽水を加熱する。風呂熱交換器33で浴槽水を加熱して温度が下がった給湯水は、貯湯タンク28の下部より内部へ流入する。
以上のように構成された給湯装置について、以下その動作、作用を説明する。利用者が浴槽42へ湯はりを行う場合は、リモコン等で湯はり動作の指示操作を行う。リモコン操作後、予め設定された温度に浴槽水混合弁36で調整された水が、浴槽水注湯弁38を閉から開に制御した場合に、浴槽水注湯弁38から、浴槽水注湯回路39内の注湯経路11に湯水が流入し、注湯経路11の管径aに対して、並列分岐経路13の管径bの方を大きくすることで、注湯経路11と、並列分岐経路13間に圧力損失差を作り、注湯経路11に流れる湯水の一部が並列分岐経路13側に分流し、水改質手段17にて水改質成分を添加された水が再び分岐部12を経て、注湯経路11の湯水と合流し、水改質成分が添加された湯水を浴槽42に注湯される。
前記水改質手段17内においては、流入した湯水が収納容器14に充填された無機化合物15の粒子で形成された多孔質の空間を通過する。水には粘性があるため、多孔質の空間を通過する際に無機化合物15の表面から表面近傍の領域には速度境界層が生成される
。図4はその速度境界層の状態を示す図である。無機化合物15の表面近傍の速度境界層の流速は小さく、多孔質空間の中心部を通過する流速は大きい分布となる。無機化合物15は水に対して溶解性を持つため、無機化合物15の表面近傍の無機化合物15の表面分子は、表面近傍の水に溶解し、水の溶解濃度が上昇する。表面近傍の水は流速が小さいため、溶解濃度は高い値となる。
これに対して流速の大きい多孔質空間の中心部の流れる水の溶解濃度は低い。このとき、水中に溶解する無機化合物の濃度差が生じた場合は、濃度差に応じて高い方から低い物質が移動する(フィックの法則)ため、表面近傍の水に溶解した無機化合物は濃度の低い中心の水に移動する。この物質拡散の原理を利用することで、無機化合物11を多孔質空間内の水に溶解させることができる。
図5は、無機化合物15として、亜鉛化合物を使用した場合の、前記フィックの法則による、水改質手段17内の水流量に対する、水改質手段17出口の水に含まれる亜鉛濃度を示した溶解度特性グラフである。このグラフにおいて、流量1から2L/minの間で濃度のピークが存在し、2L/min以上では、濃度低下傾向となっている。この特性は、言い換えると、2L/min以上では、前記のフィックの法則による亜鉛化合物の溶解絶対量が水流速に対して飽和しているため、亜鉛濃度が流量の増加に伴い低下していると見なすこともできる。以降の実施の形態では、この図5の亜鉛溶解特性をもとに、動作、作用を説明する。
ここで、給湯装置は、設置される家庭毎に、給水源として使用される水道の水圧差や、浴室が2階以上に設置される等の高度差に起因して、浴槽水注湯回路39に流れる注湯水量が、概ね10から20L/min程度ばらつく。そのため、水改質手段17を注湯経路11に直接配設した場合、最大で△10L/minの流量がばらつき、図5の溶解度特性において、図示していないが、10L/min以上における亜鉛化合物の水への溶解特性は、殆ど0ppmに近いレベルとなることが明らかである。
一方、本発明の給湯装置は、並列分岐経路13に水改質手段17を配設し、注湯経路11に流れる湯水の一部を分流して、水改質手段17に流すことにより、成分濃度を確保することができる。この構成のメリットを図6と用いて説明する。
図6は、分岐部12間の注湯経路11と、水改質手段17を含む並列分岐経路13の圧力損失比を1:9とした場合の、流量Qと圧力損失Pの関係を示すグラフである。圧力損失比が1:9であることから、それぞれの流量分配比は、9:1となり、並列分岐経路13側に全注湯流量の1/10が分流されることとなる。
この図6のグラフからわかるように、圧力損失比(流量分配比)は、流量Qの変動に対しても一定であり、注量経路流量が半分になると、同様に並列分岐経路流量も半分となる。
このことから、給湯装置の設置環境に起因する水改質手段17への流量変化を容易に予想できるだけでなく、注湯総流量が10L/min変化する中で、水改質手段17の変化量を1L/minに抑えることができ、図5の溶解特性の水改質手段17を用いた場合には、水改質手段17出口部での成分濃度を0.5ppm以上確保することでき、この成分添加水を注湯経路11の湯水と混合することで、0.05ppm以上の成分溶解水を浴槽へ注湯することが可能となる。
以上のように、本実施の形態においては、湯水を浴槽42へ注湯する浴槽水注湯回路39と、前記浴槽水注湯回路39を開閉する浴槽水注湯弁38と、注湯水の機能改質成分を
添加する水改質手段17と、浴槽水注湯弁38の下流側の注湯経路11上に2ヶ所以上の分岐部12を設け、注湯経路11と並列に、分岐部12間を接続した並列分岐経路13を設け、前記並列分岐経路13上に、水改質手段17を配設した水改質回路10を備えたものであり、浴槽水注湯回路39内の注湯経路11を湯水が流れる際、湯水の一部は、上流側の分岐部12を経て、並列分岐経路13に流入し、水改質手段17を通過した際に、水改質成分を添加させた後、下流側の分岐部12を経て注湯経路11を流れる残りの湯水に再合流される構成とした。
これにより、水改質手段17に給湯水が全量通過する構成に対して、本発明は、一部の湯水だけを水改質手段17に通過させるため、元の注湯水量が変動した場合でも、水改質手段17に流れる湯水の変動量の変動量の絶対値は小さくて済むため、水改質成分の添加濃度の変動を抑制できる。
尚、分岐部12間の注湯経路流量と、水改質手段17を含む並列分岐経路の流量との流量比を作る手段としては、図7に示すように、浴槽水注湯弁38側の注湯経路11の管径より小さい管径の圧損手段18を、分岐部12間に組み込んでも、並列分岐経路13側への分流を作ることができる。
尚、無機化合物を、亜鉛を含む亜鉛化合物(酸化亜鉛、炭酸亜鉛など)とした場合、以下の効果を得ることができる。亜鉛は比較的要求量の多いヒトの必須元素の一つであり、通常の食事からの供給では欠乏しやすく、栄養強化目的で、食品に添加される元素である。これに対しては、浴槽に亜鉛を溶解させた水を供給することで、入浴中に経皮吸収による栄養強化を行うことができる。
また、亜鉛化合物の酸化亜鉛は、薬局方、化粧品原料基準で認可を受けている材料であり、主にヒトの肌の角層に対して収斂作用、消炎作用などの作用を与え、肌の角層の改善を行うこともできる。
また、無機化合物15として用いることが出来る材料は酸化亜鉛以外に、亜鉛化合物として、酸化亜鉛(ZnO)、塩基性炭酸亜鉛(mZnCO3・nZn(OH)2)、水酸化亜鉛(Zn(OH)2)、亜鉛置換型ゼオライト、亜鉛置換型キレート、亜鉛シリカゲル担持物、であり、これらを単一または組み合わせて用いることができる。また、硫酸カルシウム、水酸化マグネシウム、鉄化合物(酸化鉄、水酸化鉄)、酸化銅、酸化ケイ素、二酸化マンガン、水酸化コバルト、酸化チタン、塩化銀、硫酸バリウムを用いることができる。
また、尚、水改質回路10は、浴槽水注湯弁38の下流側としたが、浴槽水注湯弁38が開から閉へ制御された場合は、ウォーターハンマー現象が発生し、上流側の回路に設けている、浴槽水混合弁36、貯湯タンク28等は水道圧以上の水圧負荷を与える。下流側に設けることによって、水改質回路10への水圧負荷が掛からない。
(実施の形態2)
図8は、本発明の第2の実施の形態における水改質回路の詳細図である。尚、第1の実施の形態と同じ構成については、同一符号を付して、説明を省略する。
図8において、19は、水流分配比調整手段であり、上流側の分岐部13に配設されている。水流分配比調整手段19としては、分岐部12から下流の注湯経路11と、水改質手段17を含む並列分岐経路13に流す湯水の分配比率を調整する目的として設置しており、分配比を段階的ないし無段階に調整できる点で、流量調整弁を用いるのが好ましく、さらに予めマイコンにプログラムされた分配比率に自動調整できる点で、モーター等電気
動力手段で分配比を調整できる電動式の流量調整弁を用いるのが、さらに好ましい。
以上のように構成された給湯装置について、以下その動作、作用を説明する。浴槽水注湯弁38の下流で、かつ分岐部12に設置された水流分配比調整手段19は、例えば使用者が浴室のリモコンを用いて、水改質成分の添加濃度を増減したい場合に、例えば、水流分配比調整手段19は、分岐部12間の注湯経路11と、水改質手段17を含む並列分岐経路13に流れる湯水の流量比をリモコンの所定の濃度レベル(例えば:濃度うすく)に合わせて調整する。
図9は、2つの異なる分配比ごとの、注湯経路11と並列分岐経路13の流量Qと圧力損失Pの関係を示すグラフである。また、図10の水改質手段17の溶解度特性によると、水改質手段17の流量を増加させることで、水改質手段17出口の成分濃度が下がることが分かる。この溶解特性を用いた場合、初期設定の分配比(注湯経路:並列分岐経路)が、A9:1となっている場合、水流分配比調整手段19を作動させて、分配比を図中Bの6:4とすることで、水改質手段17出口の成分濃度は、およそ0.05ppmとなり、注湯経路の湯水と合流後は、0.02ppmと薄めの添加濃度の湯水を浴槽に注湯可能となる。
図11は、水流分配比調整手段19を並列分岐経路13の水改質手段17の上流側に配設したものであり、図12は、分岐部12間に圧損手段18を配設した水改質回路10の並列分岐経路13に水流分配比調整手段19を配設したものである。本構成における水流分配比調整手段としては、水改質手段17への水流を完全に停止する役割として、流量調整弁以外に、電磁開閉弁を用いてもよい。
上記構成により、浴室からのリモコン操作等で、注湯水への改質成分添加を停止したい場合に、水流分配比調整手段19で、並列分岐経路13の水流を完全に停止することで、水改質手段17への水の浸入をカットし、成分添加なしの湯水を浴槽に注湯することが可能となる。
以上のように本実施の形態の給湯装置は、上流側の分岐部12、または並列分岐経路13、または上流側分岐部12と下流側分岐部12の間に位置する注湯経路の少なくとも1カ所以上に、注湯経路11と並列分岐経路13に流れる湯水量の分配比を調整する水流分配比調整手段19を配設したものであり、水流分配比調整手段19により、並列分岐経路13への湯水量を任意に増減、および分配停止を任意に使い分けることができる。
また、浴槽水注湯弁38が開となっているときに水流分配比調整手段19を作動させ、並列分岐経路13へ湯水を流すものであり、これにより、浴槽への注湯水に対して、水改質成分の添加が可能となり、水改質成分を含有した湯張りが可能となる。
また、水流分配比調整手段19は、浴槽水注湯弁38より流入する湯量の割合を10とした場合、並列分岐経路13への流量の割合を0から5の範囲内としたものであり、これにより、例えば、元水道圧が同一で、予め水改質手段17における水通過流量と、通過した水への水改質成分の添加濃度の関係が既知の水改質手段17を用い、水流分配比調整手段19で並列分岐経路13への水の流入比を0から5の範囲で調整することで、浴槽42への注湯水の水改質成分の添加濃度を任意に増減させることが可能となる。
尚、本発明における水改質手段17に流れる水流方向については、前記実施の形態では、上から下方向、つまり天から地への流れで示しているが、図13に示すように水改質手段17に対して、地から天への流れで構成してもよく、この場合、無機化合物15粒子が水流で持ち上げられて水の流路を確保するため、無機化合物15粒子由来の圧力損失を大
幅に低減することが可能となる。
以上のように、本発明にかかる給湯装置は、無機化合物の水への溶解濃度を安定化させることができ、貯湯式給湯機の他、ガス熱源の給湯機にも利用できる。
10 水改質回路
17 水改質手段
19 水流分配比調整手段
21 ヒートポンプユニット
27 貯湯ユニット
28 貯湯タンク
38 浴槽水注湯弁
39 浴槽水注湯回路
41 浴槽水循環回路
42 浴槽
本発明は、水改質を目的とした成分を所定量、給湯水に添加する機能を備えた給湯装置に関するものである。
従来この種の装置は、目的の成分を含む材料を湯水に添加する水改質手段を、湯沸かし部に水道水を供給する給水経路中、または湯沸かし部で沸いた湯を浴槽へ導く注湯経路中に配設し、給湯水中に、所定の目的の水改質成分を添加する方法が公開されている(例えば、特許文献1参照)。
図14は、特許文献1に記載された従来の給湯装置を示すものである。図14に示すように、水経路中に、水改質手段を組み込んで構成されている。本特許文献1において、水改質手段としては、添加成分を電極(亜鉛陽極1)とした電気分解方式を用い、注湯水が水改質手段を通過中に、電極1、2に通電し、電極1の一部を注湯水中に電気分解させることで、所定濃度の水改質成分を添加することができる。
また、特許文献1以外の他の水改質手段としては、水改質成分を含有した無機化合物を、湯水と接触させて濃度拡散を利用して溶解する手段も用いることができる。
しかしながら、前記従来の構成では、水改質成分は、給水経路または、注湯経路の途中に配設されており、浴槽に注湯される湯水は、毎回水改質手段を通過することとなる。従って、水改質成分なしの湯水を得ることができないだけでなく、給湯装置が設置される家
庭ごとに供給される水道水の元圧の違いや、浴室が2階以上に設置されることによる高度差に由来する注湯流量のばらつきに比例して、水改質手段の通過流量が大きく変化するため、目的の成分添加濃度を得ることが困難にもなる。
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、給湯装置を設置する家庭の元水道圧や、設置場所の違いにより注湯流量が異なっても、水改質成分の添加濃度を安定させることができるとともに、給湯水中への水改質成分の添加有無を調整できる給湯装置を提供することを目的とする。
前記従来の課題を解決するために、本発明の給湯装置は、高温湯を貯湯する貯湯タンクと、前記貯湯タンクからの高温湯と水とをリモコン等で設定された所定温度に混合する混合弁と、前記混合弁の下流側に配設した温度検知手段と、前記混合弁にて所定温度に調整された湯水を浴槽水循環回路を経由して浴槽に注湯する注湯経路と、前記注湯経路からの湯水を分流させるように形成した並列分岐経路と、前記並列分岐経路に配設し酸化亜鉛を添加する水改質手段と、前記注湯経路と前記並列分岐経路とを流れる湯水量の分配比を調整する水流分配比調整手段とを備え、前記水流分配比調整手段を動作させて、前記混合弁にて所定温度に調整された湯水の一部を前記並列分岐経路に流入させ、前記水改質手段にて前記酸化亜鉛を溶解させた後、前記酸化亜鉛溶解水と前記注湯経路の湯水との再合流水を、前記浴槽水循環回路を経由して前記浴槽に注湯するとともに、前記並列分岐経路に、1L/min以上2L/min以下の流量の湯水を流入させる構成としたことを特徴とするもので、水改質手段に給湯水が全量通過する構成に対して、一部の湯水だけを水改質手段に通過させるため、元の給湯水量が変動した場合でも、水改質手段に流れる湯水の変動量の絶対値は小さくできるため、水改質成分の添加濃度の変動を抑制できる。
本発明によれば、給湯装置を設置する家庭の元水道圧や、設置場所の違いにより注湯流量が異なっても、水改質成分の添加濃度を安定させることができるとともに、給湯水中への水改質成分の添加有無を調整できる給湯装置を提供できる。
本発明の実施の形態1における給湯装置の構成図
同実施の形態における水改質回路の詳細図
同実施の形態における電気分解方式を用いた水改質回路の詳細図
同実施の形態における無機化合物の表面の濃度分布および速度境界層を示す図
同実施の形態における水改質手段内の水流量に対する、水改質手段出口の水に含まれる亜鉛濃度を示した溶解度特性図
分岐部間の注湯経路と、水改質手段を含む並列分岐経路の圧力損失比を1:9とした場合の、流量Qと圧力損失Pの関係を示す図
同実施の形態の別の水改質回路例の詳細図
本発明の実施の形態2における水改質回路の詳細図
同実施の形態における2つの異なる分配比ごとの注湯経路と並列分岐経路の流量Qと圧力損失Pの関係を示す図
同実施の形態における水改質手段内の水流量に対する、水改質手段出口の水に含まれる亜鉛濃度を示した溶解度特性図
同実施の形態における水流分配比調整手段の別の配設図
同実施の形態における水流分配比調整手段の別の配設図
同実施の形態における水改質手段の水流方向を地から天の方向に流す構成図
従来の給湯装置の構成図
第1の発明は、高温湯を貯湯する貯湯タンクと、前記貯湯タンクからの高温湯と水とをリモコン等で設定された所定温度に混合する混合弁と、前記混合弁の下流側に配設した温度検知手段と、前記混合弁にて所定温度に調整された湯水を浴槽水循環回路を経由して浴槽に注湯する注湯経路と、前記注湯経路からの湯水を分流させるように形成した並列分岐経路と、前記並列分岐経路に配設し酸化亜鉛を添加する水改質手段と、前記注湯経路と前記並列分岐経路とを流れる湯水量の分配比を調整する水流分配比調整手段とを備え、前記水流分配比調整手段を動作させて、前記混合弁にて所定温度に調整された湯水の一部を前記並列分岐経路に流入させ、前記水改質手段にて前記酸化亜鉛を溶解させた後、前記酸化亜鉛溶解水と前記注湯経路の湯水との再合流水を、前記浴槽水循環回路を経由して前記浴槽に注湯するとともに、前記並列分岐経路に、1L/min以上2L/min以下の流量の湯水を流入させる構成としたことを特徴とする給湯装置で、水改質手段に給湯水が全量通過する構成に対して、一部の湯水だけを水改質手段に通過させるため、元の給湯水量が変動した場合でも、水改質手段に流れる湯水の変動量の絶対値は小さくできることで、酸化亜鉛の添加濃度の変動を抑制できる。
また、水流分配比調整手段により、並列分岐経路への湯水量を任意に増減、および、分配停止することが可能となり、浴槽への注湯時の湯水における酸化亜鉛の添加の有無を、任意に使い分けることができる。
第2の発明は、第1の発明の給湯装置の、前記注湯経路と前記並列分岐経路との分岐部の流路上流側に浴槽水注湯弁を配設し、前記浴槽水注湯弁が開状態のときに、前記水流分配比調整手段を動作させることを特徴とするもので、浴槽の湯張り時に、酸化亜鉛を添加したお湯を注湯することが可能となる。
第3の発明は、第1または第2の発明のいずれかの給湯装置の、前記注湯経路と前記並列分岐経路とを流れる湯水の総量に対する前記並列分岐経路への流量の割合が50%以下となるように、前記水流分配比調整手段は調整することを特徴とするもので、例えば、元水道圧が同一で、予め水改質手段における水通過流量と、通過した水への水改質成分の添加濃度の関係が既知の水改質手段を用い、水流分配比調整手段で並列分岐経路への水の流入比を0から5の範囲で調整することで、浴槽への注湯水の酸化亜鉛の添加を停止するのに加え、酸化亜鉛の添加濃度を任意に増減させることも可能となる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における給湯装置の構成図を示すものである。図2は、同実施の形態における水改質回路の詳細図を示すものである。
図1において、圧縮機22、給湯熱交換器23、減圧手段24、蒸発器25を冷媒回路26で順に環状に接続してヒートポンプユニット21を構成している。貯湯ユニット27の貯湯タンク28には水が貯留されており、出湯回路30は貯湯タンク28、給湯水ポンプ29、給湯熱交換器23、貯湯タンク28を順に接続する回路である。浴槽水加熱回路35は、貯湯タンク28、風呂熱交換器33、浴槽水加熱ポンプ34、貯湯タンク28を順に接続する回路であり、風呂熱交換器33の他方の回路には浴槽42が接続されている。
浴槽水循環回路41は、浴槽42、浴槽水を搬送する浴槽水ポンプ40、風呂熱交換器33を順に接続する回路である。浴槽水注湯回路39は、貯湯タンク28の水を、浴槽水循環回路41を経由して浴槽42へ注湯する回路である。この回路には貯湯タンク28の高温の水と水道水を混合する浴槽水混合弁36、注湯する水温を検知する温度検知手段37、浴槽水注湯回路39の回路の開閉を行う浴槽水注湯弁38を順に備える。
水改質回路10は、浴槽水注湯弁の下流側の浴槽水注湯回路39内の途中に配設されている回路である。図2に示すように、水改質回路10は、浴槽水注湯回路内の注湯経路11の途中に2ヶ所の分岐部12を設け、両分岐部12を並列分岐経路13で接続し、並列分岐経路13上に水改質手段17を貯湯ユニット27の本体筺体内に収納するように配設したものである。
また、図2に示すように、注湯経路11の管径aに対して、並列分岐経路13の管径bの方を大きくすることで、注湯経路11と、並列分岐経路13の間で圧力損失差を作り、注湯経路11に流れる湯水の一部が並列分岐経路13側に分流し、水改質手段17にて水改質成分を添加された水が再び分岐部12を経て、注湯経路11の湯水と合流し、水改質成分が添加された湯水が浴槽42に注湯される。
尚、水改質手段17は、目的の水改質成分を水に溶解添加できる手段であればよく、図2に示すような、水改質成分を含有した無機化合物15の粒子を収納容器14内に充填し、無機化合物15の下流側にろ過手段16を配設し、無機化合物15と湯水を直接接触させる溶解方式や、図3に示すような目的成分を電極1、2とし、電極1、2に電源部9から通電して、水に水改質成分を分解溶出させる電気分解方式を用いてもよいが、直接溶解方式の方が、コスト面、コンパクト性、可燃性ガス発生など安全性、消費電力量等の面でメリットが多く、本実施の形態では、溶解方式を前提に説明する。
ヒートポンプユニット21で貯湯タンク28に貯留された水を加熱する運転は、以下のような動作となる。貯湯タンク28の水は、給湯水ポンプ29によって給湯熱交換器23へ搬送され、ヒートポンプサイクル動作によって加熱される。給湯水ポンプ29は給湯熱交換器23で加熱された給湯水の温度が予め決定した温度になる様に、出湯回路30の流量を制御する。
浴槽42への湯張り、並びに、浴槽水の加熱は以下のような動作となる。浴槽水注湯回路39の浴槽水混合弁36は、温度検知手段37で検知する注湯温度がリモコン等(図示せず)で予め設定された温度となるように、高温の水と水道水の混合割合を調整する。所定温度となった浴槽水は、浴槽水注湯回路39、浴槽水循環回路41を順に経由して浴槽42へ流出する。一方、浴槽42の浴槽水を加熱する場合は、貯湯タンク28に貯留された高温の水を、浴槽水加熱ポンプ34によって風呂熱交換器33へ搬送し、浴槽水ポンプ40より搬送された浴槽水を加熱する。風呂熱交換器33で浴槽水を加熱して温度が下がった給湯水は、貯湯タンク28の下部より内部へ流入する。
以上のように構成された給湯装置について、以下その動作、作用を説明する。利用者が浴槽42へ湯はりを行う場合は、リモコン等で湯はり動作の指示操作を行う。リモコン操作後、予め設定された温度に浴槽水混合弁36で調整された水が、浴槽水注湯弁38を閉から開に制御した場合に、浴槽水注湯弁38から、浴槽水注湯回路39内の注湯経路11に湯水が流入し、注湯経路11の管径aに対して、並列分岐経路13の管径bの方を大きくすることで、注湯経路11と、並列分岐経路13間に圧力損失差を作り、注湯経路11に流れる湯水の一部が並列分岐経路13側に分流し、水改質手段17にて水改質成分を添加された水が再び分岐部12を経て、注湯経路11の湯水と合流し、水改質成分が添加された湯水を浴槽42に注湯される。
前記水改質手段17内においては、流入した湯水が収納容器14に充填された無機化合物15の粒子で形成された多孔質の空間を通過する。水には粘性があるため、多孔質の空間を通過する際に無機化合物15の表面から表面近傍の領域には速度境界層が生成される。図4はその速度境界層の状態を示す図である。無機化合物15の表面近傍の速度境界層の流速は小さく、多孔質空間の中心部を通過する流速は大きい分布となる。無機化合物15は水に対して溶解性を持つため、無機化合物15の表面近傍の無機化合物15の表面分子は、表面近傍の水に溶解し、水の溶解濃度が上昇する。表面近傍の水は流速が小さいため、溶解濃度は高い値となる。
これに対して流速の大きい多孔質空間の中心部の流れる水の溶解濃度は低い。このとき、水中に溶解する無機化合物の濃度差が生じた場合は、濃度差に応じて高い方から低い物質が移動する(フィックの法則)ため、表面近傍の水に溶解した無機化合物は濃度の低い中心の水に移動する。この物質拡散の原理を利用することで、無機化合物11を多孔質空間内の水に溶解させることができる。
図5は、無機化合物15として、亜鉛化合物を使用した場合の、前記フィックの法則による、水改質手段17内の水流量に対する、水改質手段17出口の水に含まれる亜鉛濃度を示した溶解度特性グラフである。このグラフにおいて、流量1から2L/minの間で濃度のピークが存在し、2L/min以上では、濃度低下傾向となっている。この特性は、言い換えると、2L/min以上では、前記のフィックの法則による亜鉛化合物の溶解絶対量が水流速に対して飽和しているため、亜鉛濃度が流量の増加に伴い低下していると見なすこともできる。以降の実施の形態では、この図5の亜鉛溶解特性をもとに、動作、作用を説明する。
ここで、給湯装置は、設置される家庭毎に、給水源として使用される水道の水圧差や、浴室が2階以上に設置される等の高度差に起因して、浴槽水注湯回路39に流れる注湯水量が、概ね10から20L/min程度ばらつく。そのため、水改質手段17を注湯経路11に直接配設した場合、最大で△10L/minの流量がばらつき、図5の溶解度特性において、図示していないが、10L/min以上における亜鉛化合物の水への溶解特性は、殆ど0ppmに近いレベルとなることが明らかである。
一方、本発明の給湯装置は、並列分岐経路13に水改質手段17を配設し、注湯経路11に流れる湯水の一部を分流して、水改質手段17に流すことにより、成分濃度を確保することができる。この構成のメリットを図6と用いて説明する。
図6は、分岐部12間の注湯経路11と、水改質手段17を含む並列分岐経路13の圧力損失比を1:9とした場合の、流量Qと圧力損失Pの関係を示すグラフである。圧力損失比が1:9であることから、それぞれの流量分配比は、9:1となり、並列分岐経路13側に全注湯流量の1/10が分流されることとなる。
この図6のグラフからわかるように、圧力損失比(流量分配比)は、流量Qの変動に対しても一定であり、注量経路流量が半分になると、同様に並列分岐経路流量も半分となる。
このことから、給湯装置の設置環境に起因する水改質手段17への流量変化を容易に予想できるだけでなく、注湯総流量が10L/min変化する中で、水改質手段17の変化量を1L/minに抑えることができ、図5の溶解特性の水改質手段17を用いた場合には、水改質手段17出口部での成分濃度を0.5ppm以上確保することでき、この成分添加水を注湯経路11の湯水と混合することで、0.05ppm以上の成分溶解水を浴槽
へ注湯することが可能となる。
以上のように、本実施の形態においては、湯水を浴槽42へ注湯する浴槽水注湯回路39と、前記浴槽水注湯回路39を開閉する浴槽水注湯弁38と、注湯水の機能改質成分を添加する水改質手段17と、浴槽水注湯弁38の下流側の注湯経路11上に2ヶ所以上の分岐部12を設け、注湯経路11と並列に、分岐部12間を接続した並列分岐経路13を設け、前記並列分岐経路13上に、水改質手段17を配設した水改質回路10を備えたものであり、浴槽水注湯回路39内の注湯経路11を湯水が流れる際、湯水の一部は、上流側の分岐部12を経て、並列分岐経路13に流入し、水改質手段17を通過した際に、水改質成分を添加させた後、下流側の分岐部12を経て注湯経路11を流れる残りの湯水に再合流される構成とした。
これにより、水改質手段17に給湯水が全量通過する構成に対して、本発明は、一部の湯水だけを水改質手段17に通過させるため、元の注湯水量が変動した場合でも、水改質手段17に流れる湯水の変動量の変動量の絶対値は小さくて済むため、水改質成分の添加濃度の変動を抑制できる。
尚、分岐部12間の注湯経路流量と、水改質手段17を含む並列分岐経路の流量との流量比を作る手段としては、図7に示すように、浴槽水注湯弁38側の注湯経路11の管径より小さい管径の圧損手段18を、分岐部12間に組み込んでも、並列分岐経路13側への分流を作ることができる。
尚、無機化合物を、亜鉛を含む亜鉛化合物(酸化亜鉛、炭酸亜鉛など)とした場合、以下の効果を得ることができる。亜鉛は比較的要求量の多いヒトの必須元素の一つであり、通常の食事からの供給では欠乏しやすく、栄養強化目的で、食品に添加される元素である。これに対しては、浴槽に亜鉛を溶解させた水を供給することで、入浴中に経皮吸収による栄養強化を行うことができる。
また、亜鉛化合物の酸化亜鉛は、薬局方、化粧品原料基準で認可を受けている材料であり、主にヒトの肌の角層に対して収斂作用、消炎作用などの作用を与え、肌の角層の改善を行うこともできる。
また、無機化合物15として用いることが出来る材料は酸化亜鉛以外に、亜鉛化合物として、酸化亜鉛(ZnO)、塩基性炭酸亜鉛(mZnCO3・nZn(OH)2)、水酸化亜鉛(Zn(OH)2)、亜鉛置換型ゼオライト、亜鉛置換型キレート、亜鉛シリカゲル担持物、であり、これらを単一または組み合わせて用いることができる。また、硫酸カルシウム、水酸化マグネシウム、鉄化合物(酸化鉄、水酸化鉄)、酸化銅、酸化ケイ素、二酸化マンガン、水酸化コバルト、酸化チタン、塩化銀、硫酸バリウムを用いることができる。
また、尚、水改質回路10は、浴槽水注湯弁38の下流側としたが、浴槽水注湯弁38が開から閉へ制御された場合は、ウォーターハンマー現象が発生し、上流側の回路に設けている、浴槽水混合弁36、貯湯タンク28等は水道圧以上の水圧負荷を与える。下流側に設けることによって、水改質回路10への水圧負荷が掛からない。
(実施の形態2)
図8は、本発明の第2の実施の形態における水改質回路の詳細図である。尚、第1の実施の形態と同じ構成については、同一符号を付して、説明を省略する。
図8において、19は、水流分配比調整手段であり、上流側の分岐部13に配設されて
いる。水流分配比調整手段19としては、分岐部12から下流の注湯経路11と、水改質手段17を含む並列分岐経路13に流す湯水の分配比率を調整する目的として設置しており、分配比を段階的ないし無段階に調整できる点で、流量調整弁を用いるのが好ましく、さらに予めマイコンにプログラムされた分配比率に自動調整できる点で、モーター等電気動力手段で分配比を調整できる電動式の流量調整弁を用いるのが、さらに好ましい。
以上のように構成された給湯装置について、以下その動作、作用を説明する。浴槽水注湯弁38の下流で、かつ分岐部12に設置された水流分配比調整手段19は、例えば使用者が浴室のリモコンを用いて、水改質成分の添加濃度を増減したい場合に、例えば、水流分配比調整手段19は、分岐部12間の注湯経路11と、水改質手段17を含む並列分岐経路13に流れる湯水の流量比をリモコンの所定の濃度レベル(例えば:濃度うすく)に合わせて調整する。
図9は、2つの異なる分配比ごとの、注湯経路11と並列分岐経路13の流量Qと圧力損失Pの関係を示すグラフである。また、図10の水改質手段17の溶解度特性によると、水改質手段17の流量を増加させることで、水改質手段17出口の成分濃度が下がることが分かる。この溶解特性を用いた場合、初期設定の分配比(注湯経路:並列分岐経路)が、A9:1となっている場合、水流分配比調整手段19を作動させて、分配比を図中Bの6:4とすることで、水改質手段17出口の成分濃度は、およそ0.05ppmとなり、注湯経路の湯水と合流後は、0.02ppmと薄めの添加濃度の湯水を浴槽に注湯可能となる。
図11は、水流分配比調整手段19を並列分岐経路13の水改質手段17の上流側に配設したものであり、図12は、分岐部12間に圧損手段18を配設した水改質回路10の並列分岐経路13に水流分配比調整手段19を配設したものである。本構成における水流分配比調整手段としては、水改質手段17への水流を完全に停止する役割として、流量調整弁以外に、電磁開閉弁を用いてもよい。
上記構成により、浴室からのリモコン操作等で、注湯水への改質成分添加を停止したい場合に、水流分配比調整手段19で、並列分岐経路13の水流を完全に停止することで、水改質手段17への水の浸入をカットし、成分添加なしの湯水を浴槽に注湯することが可能となる。
以上のように本実施の形態の給湯装置は、上流側の分岐部12、または並列分岐経路13、または上流側分岐部12と下流側分岐部12の間に位置する注湯経路の少なくとも1カ所以上に、注湯経路11と並列分岐経路13に流れる湯水量の分配比を調整する水流分配比調整手段19を配設したものであり、水流分配比調整手段19により、並列分岐経路13への湯水量を任意に増減、および分配停止を任意に使い分けることができる。
また、浴槽水注湯弁38が開となっているときに水流分配比調整手段19を作動させ、並列分岐経路13へ湯水を流すものであり、これにより、浴槽への注湯水に対して、水改質成分の添加が可能となり、水改質成分を含有した湯張りが可能となる。
また、水流分配比調整手段19は、浴槽水注湯弁38より流入する湯量の割合を10とした場合、並列分岐経路13への流量の割合を0から5の範囲内としたものであり、これにより、例えば、元水道圧が同一で、予め水改質手段17における水通過流量と、通過した水への水改質成分の添加濃度の関係が既知の水改質手段17を用い、水流分配比調整手段19で並列分岐経路13への水の流入比を0から5の範囲で調整することで、浴槽42への注湯水の水改質成分の添加濃度を任意に増減させることが可能となる。
尚、本発明における水改質手段17に流れる水流方向については、前記実施の形態では、上から下方向、つまり天から地への流れで示しているが、図13に示すように水改質手段17に対して、地から天への流れで構成してもよく、この場合、無機化合物15粒子が水流で持ち上げられて水の流路を確保するため、無機化合物15粒子由来の圧力損失を大幅に低減することが可能となる。
以上のように、本発明にかかる給湯装置は、無機化合物の水への溶解濃度を安定化させることができ、貯湯式給湯機の他、ガス熱源の給湯機にも利用できる。
10 水改質回路
17 水改質手段
19 水流分配比調整手段
21 ヒートポンプユニット
27 貯湯ユニット
28 貯湯タンク
38 浴槽水注湯弁
39 浴槽水注湯回路
41 浴槽水循環回路
42 浴槽