JP2012077229A - 耐熱性向上剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】種々の材料と併用することによって、耐熱性を向上させることができる耐熱性向上剤の提供を図ると共に、樹脂や金属などの基材にこの耐熱性向上剤を含有することによって、基材の耐熱性を向上させた耐熱性組成物の提供を図る。
【解決手段】採掘地が宮崎県日之影町の見立礫岩の粉末を含有する耐熱性向上剤を提供する。この耐熱性向上剤に、酸化アルミニウム、酸化亜鉛などの耐熱性を有する無機物系フィラーを配合して用いることができる。また、樹脂、金属、セラミックス、ガラスなどの基材にこの耐熱性向上剤を含有することにより、基材の耐熱性を向上させた耐熱性組成物を得ることができる。
【選択図】なし

Description

本願発明は、耐熱性向上剤、これを含有した耐熱性組成物、並びに耐熱加工方法に関するものである。
耐火材については、従来より種々の提案がなされている。例えば、鋸屑などの木質材料と、ケイ酸ナトリウムとを配合することにより、耐熱性が高いボードを得ることが特許文献1に示されている。具体的には、明ばん石及び粉末ケイ酸ナトリウムを主材とし、これに少量の珪弗化ソーダ、寒水石、珪石を含む硬化剤の適量と、大鋸屑、水ガラス及び水との均一混合物の成形物としたことを特徴とする大鋸屑を用いた遮音性、絶縁性、耐熱性を有する成形材が特許文献1に開示されている。
特許文献2にあっては、20重量%以上の無機繊維と、無機充填材と、木材繊維及び/又は有機繊維と、有機樹脂材料と、10重量%以上の水酸化アルミニウム粉末とを含有していることを特徴とする断熱材料が開示されている。
また、従来の被膜材は耐火性、耐久性、断熱性、保温性からアスベストが主流であったが、現在アスベストを含有する建材の製造は禁止され、その代替品としてロックウール、スラグウール、ガラスウールが使用されるようになったが、これらの代替品も繊維質であることから、これらを塗布する作業時や塗布後の繊維質の飛散、粉塵の発生の問題や健康面において使用が懸念されている。
また、樹脂の耐熱性を向上させるための提案についても、従来よりなされている。例えば、特許文献3では、シリカ等の無機充填材を含有した特定の重合体からなる複合重量体粒子を熱可塑性樹脂に添加し、熱可塑性樹脂の耐熱性を向上させる熱可塑性樹脂用耐熱性向上剤が開示されている。また、特許文献4では、アルミナ等の中性の無機フィラーで表面処理された水酸化マグネシウム等の金属水酸化物を熱可塑性樹脂に添加してなる難燃性を有する耐熱性組成物およびそれを用いてなる樹脂成形体が開示されている。特許文献3では、無機充填材を含有した複合重量体粒子を、特許文献4では、中性の無機フィラーで表面処理した金属水酸化物をそれぞれ熱可塑性樹脂に添加することによって、樹脂の耐熱性を向上させる効果を発揮しているが、両者とも熱可塑性樹脂に添加する前に、無機充填材に各種処理を施す必要があった。
一方、特許文献5〜6に示すように、「見立礫岩」の用途開発に係る提案がなされている。
この「見立礫岩(Mitate conglomerate)」は、宮崎県のみやざきデジタルミュージアムのホームページに示されたとおり、宮崎県日之影町に産する岩石である(非特許文献1参照)。この見立礫岩を用いた発明は、特許文献5は岩盤浴用石材パネルおよびその製造方法に関するものであり、特許文献6は遠赤放出、殺菌材の製造方法及びこの方法によって製造された遠赤放出、殺菌材並びにこの遠赤放出、殺菌材の使用方法に関するものであり、見立礫岩が遠赤外線を放出する特徴を活かした提案であった。
特開平08−208304号公報 特開2002−20635号公報 特公平07−30255号公報 特開2004−51906号公報 特開2008−264220号公報 特開2005−319399号公報
"みやざきデジタルミュージアム"、[online]、宮崎県、[平成22年10月1日検索]、インターネット<URL:http://www.miyazaki-archive.jp/d-museum/search/search/detail/?id=434>
本願発明は、種々の材料と併用することによって、樹脂や金属、植物などの基材の耐熱性を向上させることができる耐熱性向上剤の提供を目的とする。また、基材にこの耐熱性向上剤を含有することによって、基材の耐熱性を向上させた耐熱性組成物を提供することを目的とする。さらに、この耐熱性向上剤を塗布基材上に塗布して被膜を形成させる耐熱性加工方法を提供することを目的とする。
また、本願発明の他の目的は、繊維質の飛散や粉塵の発生が少なく、人的環境や生活環境に配慮した安全な耐熱性組成物、及び耐熱性向上剤を用いた耐熱性加工方法を提供することにある。
本願発明者は、見立礫岩について鋭意研究した結果の知見に基づき本願発明を完成させたものであり、特に、見立礫岩の粉末を用いることによって、6000℃もの耐熱性を発揮させることができることを知見して本願発明を完成させたものである。
本願の請求項1の発明は、採掘地が宮崎県日之影町の見立礫岩の粉末を含有したことを特徴とする耐熱性向上剤を提供する。
本願の請求項2の発明は、請求項1に記載の耐熱性向上剤と、耐熱性を有する無機物系フィラーとが含有されたことを特徴とする耐熱性向上剤を提供する。
本願の請求項3の発明は、上記無機物系フィラーが、酸化アルミニウムと酸化亜鉛であることを特徴とする請求項2に記載の耐熱性向上剤を提供する。
本願の請求項4の発明は、請求項1〜3に記載の耐熱性向上剤と、樹脂、金属、セラミックス、ガラスからなる群から選択される少なくとも1種とを含有したことを特徴とする耐熱性組成物を提供する。
本願発明に係る見立礫岩の粉末は、他の無機物系フィラーと併用することによって、その耐熱性を向上させることができる。この無機物フィラーは特に種類は限定されないが、例えば、珪藻土、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、ホウ酸などのホウ素系難燃剤、ケイ酸ナトリウム、水酸化アルミニウムを示すことができる。また、この耐熱性向上剤を樹脂、金属、セラミックス、ガラス、植物、繊維及び紙などの基材に配合することによって、その耐熱性を向上させた耐熱性組成物を得ることができる。また、本願発明の耐熱性向上剤を塗布基材上に塗布することにより、塗布基材の耐熱性を向上させることができ、この耐熱性向上剤を耐熱・耐火被膜材としても使用することができる。
本願発明による耐熱性向上剤及び耐熱性組成物は、ホルムアルデヒドなどの有害物質やアスベスト、ロックウール、スラグウール、ガラスウールなどの繊維質を含まず、有害物質を発散、放出することや、繊維質の飛散や粉塵の発生がほとんどなく、この耐熱性向上剤及び耐熱性組成物の製造時やこの耐熱性向上剤を塗布基材上に塗布する作業時において、作業環境は安全である。また、この耐熱性組成物やこの耐熱性向上剤を塗布された塗布基材を建材に使用した場合においても、シックハウス症候群などの症状を引き起こす心配はなく、人的環境、生活環境に対しても安全である。よって、この耐熱性向上剤及び耐熱性組成物は、人的環境、生活環境、作業環境に対して安全である。
以下に、本願発明に係る耐熱性向上剤について説明する。
本願発明に係る耐熱性向上剤に含有される見立礫岩は、宮崎県西臼杵郡日之影町見立で採掘される花崗岩のれきを含む礫岩で、大崩山を中心としたマグマの熱変成を受けてホルンフェルス化しているものである。この見立礫岩は、「天照石」「天降石」とも呼ばれるもので、昔から不思議な石として地元で語り継がれており、透過波長であるテラヘルツ(10の12乗ヘルツ)光線と呼ばれるパワーを発するとも言われている。よって、この「見立礫岩」の記載は、単に採掘地を特定したものではなく、特殊な作用効果を発揮する岩石を特定するものである。表1に宮崎県工業試験所による見立礫岩の成分分析結果を示す。見立礫岩は自然石であるため、全ての見立礫岩がこの成分分析結果に一致するものではないが、表1に示すように、見立礫岩には、二酸化ケイ素及び酸化アルミニウムが多く含まれている。また、この見立礫岩は、遠赤外線を放出する他、種々の特性を備えていると考えられるが、未だ未解明な点が多く、本願発明にあっても、この成分分析に表れる各成分の配合のみから予想される以上の耐熱性を発揮した。この見立礫岩は、粉体にして用いられるもので、望ましくは250メッシュより微細な粉体とする。粒子を細かくすることは、可能な限り望ましいものである。
Figure 2012077229
また、上記見立礫岩を含有する耐熱性向上剤に、耐熱性を有する無機物系フィラーを少なくとも1種類含有して用いることができる。この耐熱性を有する無機物系フィラーとしては、珪藻土、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、ホウ素系難燃剤、水酸化アルミニウムの他、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、ベントナイトなどの鉱物性無機系材料あるいは炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、五酸化アンチモンなどの難燃性を有する無機系材料あるいは変性粘土類成分を例示できる。
上記無機物系フィラーのうち、酸化アルミニウムは、工業的にはアルミナと呼ばれるもので、多くの多形が知られており、代表的なものに、α(アルファ)アルミナとγ(ガンマ)アルミナがある。本願発明に用いられる酸化アルミニウムとしては、γ(ガンマ)アルミナを含む種々の多形であってもよいが、結晶構造が緻密であり、高温で溶解して耐熱性を示す点から、α(アルファ)アルミナを用いることが望ましい。この酸化アルミニウムも、望ましくは250メッシュ以下の粉体とする。粒子を細かくすることは、可能な限り望ましいものである。
前記の酸化亜鉛は、水に不溶な白色の微粒子で耐熱性を示す。
前記のホウ素系難燃剤としては、窒化ホウ素、ホウ砂、無水ホウ砂、ホウ酸、無水ホウ酸、ホウ酸亜鉛等を例示できる。
前記の水酸化アルミニウムは、断熱性のある無機材料として知られており、同様に、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウムを用いることもできる。
前記の珪藻土は、珪藻の殻の化石の堆積物で、主成分は二酸化ケイ素である。珪藻土は優れた耐火性及び耐熱性を有している。
さらに、上記見立礫岩と無機物系フィラーとを含有する耐熱性向上剤に、ケイ酸ナトリウムを配合して用いることができる。このケイ酸ナトリウムは、アルカリケイ酸塩の一種であるケイ酸のナトリウム塩で、メタケイ酸ナトリウムの他、オルトケイ酸ナトリウムや、メタ二ケイ酸ナトリウムなどのポリケイ酸ナトリウムであってもよく、また、アルカリケイ酸塩の濃厚水溶液である水ガラスを用いてもよい。このケイ酸ナトリウムは、日本工業規格JIS K 1408に規定されているように、水あめ状の液体、粉体、結晶体などの性状で供給されるが、そのいずれのものを選択して用いてもよい。
本願発明に係る耐熱性向上剤を、樹脂、金属、セラミックス、ガラス、植物、繊維及び紙からなる群(以下、基材とする。)から選択される少なくとも1種に含有して、耐熱性組成物を製造することができる。基材としては、具体的には、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、耐衝撃性ポリスチレン(PSHI)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル−スチレン(AS)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂やフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂、オレフィン系やエステル系等の熱可塑性エラストマー、アルミニウム等の金属、陶器等のセラミックスやガラス、賦形材として用いることができる廃材、間伐材、樹木、木片、枝などの木材、竹、藁、脱穀皮、樹皮等の植物、植物実、植物葉を含み、天然繊維、化学繊維、動物繊維、合成繊維、混合繊維などの各種繊維、紙から選ばれる少なくとも1種であり、単独で使用しても良いし、また2種以上を任意に組み合わせてもよい。
本願発明に係る耐熱性向上剤は、見立礫岩や無機物系フィラー、ケイ酸ナトリウムが配合され、上記基材に含有することによって上記基材の耐熱性を向上させる。本願発明に係る耐熱性向上剤を上記基材に含有することによって、上記基材の耐熱性を向上させた耐熱性組成物を得ることができる。また、上記基材のうち、樹脂や植物、繊維、紙などの可燃性の基材にこの耐熱性向上剤を含有することによって、基材の耐熱性を向上させるとともに基材に難燃性を付与することができる。よって、上記耐熱性向上剤は、可燃性の基材においては、難燃剤としても作用する。
本願発明に係る耐熱性向上剤の各成分は、一例として、粉体質量換算で下記の表2又は表3に示す配合比により配合される。表3の配合比においては、基材50重量部に対し、見立礫岩の粉末1〜2重量部、酸化アルミニウム2〜10重量部、酸化亜鉛1〜5重量部の範囲とすることがより望ましい。基材50重量部に対し、見立礫岩の粉末を単独で5重量部以上配合することによって、後述する実施例18に示すように基材の耐熱性を向上させる効果を有するが、経済的観点から、見立礫岩の粉末を2重量部以下とし、酸化アルミニウムや酸化亜鉛等の無機物系フィラーを配合することによって基材の耐熱性を向上させたものである。上記各成分を粉体にして用いる場合には、望ましくは250メッシュより微細な粉体とする。粒子を細かくすることは、可能な限り望ましいものである。水溶液や分散液など粉体以外の形態で成分を配合する場合には、粉体質量換算で同等の配合量とすればよい。また、配合した耐熱性向上剤の全成分に対して、必要に応じて水で調合し、希釈してもよい。上記調合・希釈に用いられる水は、軟水、硬水、鉱水、精製水、雨水等の種類を問わず、水道水であってもよく浄水器等を通過した水でもよい。望ましくは、pH5.8〜pH8.6の電解水、より望ましくはpH6〜pH8の電解水を用いる。また、本願発明の目的を逸脱しない範囲において、本願発明に係る耐熱性向上剤に着色剤や分散剤等の添加剤を配合してもよい。
Figure 2012077229
Figure 2012077229
本願発明に係る耐熱性向上剤の各成分は、撹拌混合される。撹拌混合する方法には、特に制限はなく、例えば、攪拌槽内に投入されて電動攪拌機等の適宜攪拌機によって攪拌混合してもよい。その際、基材を最初から加えて撹拌混合してもよいし、基材以外の各成分を撹拌混合後に基材を加えてもよい。また、水を加える場合には、各成分が配合された配合物に1度に添加しても良いし、また、複数回に分けて添加しても良い。
本願発明の耐熱性向上剤は、塗布基材上に塗布して耐熱性被膜を形成するものとして用いることもできる。その際、被膜を形成するための樹脂成分等を別途併用することもできる。塗布の方法は、均一な塗布が確保される方法であれば特に限定されるものではなく、刷毛、ローラーによる塗装や、スプレーガンなどの噴霧、コテ、ヘラ、フローコーター、ロールコーター、バキュームコーターなどの工業用塗装機(自動塗装機)を用いた方法など種々の方法を用いることができ、ディッピングなどであってもよい。また、塗布基材の種類は特に制限されず、木材、合成樹脂、コンクリート、金属、紙、ガラスなどを例示でき、用途についても建築物や構築物の他、家具、車両、機械装置などを例示できる。
また、本願発明の耐熱性向上剤を、上記基材のうち、木材チップや大鋸屑などと混合して板状の耐熱性組成物である耐熱材を製造することもできる。製造に際しては、表2に記載の各成分と水とを混合し、形成金型や木枠などに注入し加圧圧縮する。加圧圧縮方法は特に限定されない。押圧後乾燥することによって硬化する。乾燥には、自然乾燥法、通風乾燥法、強制乾燥法または加熱乾燥法のいずれもが使用できる。耐熱材の大きさや厚みは、用意できる金型の大きさなどによって変更して実施され得る。大きさは成形型の可能な範囲で適宜変更できるが、縦300〜2000mm、横300〜2000mm、厚さ2〜50mmの大きさを例示できる。なお、耐熱材の形状は、曲線を有するものや凹凸を有するものなど、任意の形に成形することが可能である。本願発明の効果を奏することを限度として、他の助材や着色成分を配合することもでき、また、表面に種々の装飾を施すことも可能である。
上記の耐熱材は、従来のケイ酸ナトリウムを用いた耐火ボードと比較して、水に対して十分な耐久性を備えたものである。従来のケイ酸ナトリウムを用いた耐火ボードは、これが配置される環境により、特に水分、湿気、湿度に影響され、耐火ボードから被膜材が溶け出して劣化する場合があった。また、この耐熱材に増量材、骨材を混入することにより、アスベスト、ロックウール、スラグウール、ガラスウールなどを含有した耐火材、断熱材、被膜材および吹き付け材の代替品にもなる。
上記の耐熱材の製造方法の一例を説明する。自転式の攪拌槽を備えた攪拌装置の投入口から攪拌槽内に粉粒体状の各成分を投入して、攪拌槽を自転させて配合物を十分に攪拌する。次に、同攪拌槽を開いて、水を噴霧することによって供給し、さらに攪拌する。攪拌終了後、有底の型枠内に攪拌混合された配合物を注入する。同型枠内で平板状に均らして、加圧装置によって型枠の上部開口から加圧圧縮し、乾燥室にて乾燥、硬化する。
上記の耐熱材は、単独の一枚のみを使用することもできるが、複数枚を接合して用いてもよい。また、他の板材と併用することもできる。これらの板材には、木質板、合成樹脂板、金属板、各種耐熱板等を例示できる。
本願発明に係る耐熱性向上剤は、各種基材に含有させて基材の耐熱性を向上させるものとして、また、木材、合成樹脂、コンクリート、金属などの塗布基材上に塗布して耐熱性被膜を形成する被膜材として用いることができる。さらに、本願発明に係る耐熱性向上剤を含有した耐熱性組成物は、耐熱性が要求される各種部材への幅広い使用が可能である。
以下、実施例を参照しつつ本願発明をより具体的に説明する。ただし、これらの実施例などは本願発明の一態様にすぎず、本願発明はこれらの実施例に限定して理解されるべきではない。
(実施例1)
表4に示す粉粒体状の各配合物を、回転攪拌装置の攪拌槽内に投入して、攪拌槽を回転させてこれらの配合物を満遍なく攪拌させる。この攪拌槽を開いて水を噴霧機で噴霧することにより供給した。さらに十分に攪拌した後、有底の型枠内に攪拌混合された配合物を注入した。同型枠内で平板状に均らして、加圧装置によって型枠の上部開口から加圧圧縮し、乾燥室にて乾燥、硬化させ、厚さ15mm、縦200mm、横200mmの平板状の耐熱材aを得た。配合した水は、表4の配合物総量100重量部に対して、水20重量部であった。
Figure 2012077229
実施例1について耐火試験を行なった。その試験方法と結果を以下に示す。
(実施例1に対する試験)
実施例1の耐熱材aを表面に配位し、その裏側に45mmの間隔を隔ててポリプロピレン発泡体bを配位した。両者a、b間のスペーサとして、厚み15mmの木材で、矩形状の筒状体c(外法寸法は180mm×180mm)を形成し、両者a、bにネジ止めした。
実験方法は、耐熱材aの表面から80mm離した場所にバーナーを固定設置し、筒状体cの内部空間に温度計を差込み、バーナーで燃焼させた時の耐熱材aの状態と温度を測定した。また、実験開始30分後より、耐熱材aとバーナーとの距離を50mmにした。耐熱材aの表面状態の目視結果を表5に表す。
実験の結果から、着火直後から中心部の温度が上昇するも、耐熱材aの表面が燃焼することなく、木材である筒状体cが燃焼することもなかった。また、実験開始30分後より耐熱材aとバーナーとの距離を縮め中心部が赤くなるも燃焼することはなかった。実験終了後、実験に使用した耐熱材aを確認しても、本願発明の耐熱材aは表面が若干炭化しただけで、燃焼することはなかった。
Figure 2012077229
(実施例2)
前記の表4に示す配合物に水20重量%を加えたものを攪拌し、厚さ0.3mmのステンレス板表面に塗布し、4mm厚の被膜を得た。
(実施例2に対する試験)
実施例2に係る被膜体を、財団法人近畿高エネルギー加工技術研究所にて、プラズマ(約6000℃)で焼き切る実験を行なった。実験方法は+−の電流移動をするように設備し、裏面のステンレス部分から照射した。結果は、ステンレス面は燃焼し切断され黒く焦げたが、本願発明に係る耐熱性向上剤で形成された被膜面は燃焼の跡が見られなかった。このことから、本願発明に係る耐熱性向上剤は耐火被膜材としても充分な効果を発揮することが確認された。特に、6000℃の耐火性能は、従来の耐火材の常識を覆すものであった。
(実施例1、実施例3〜実施例12)
表6と表7に示す各成分を配合し、実施例1と同じ方法によって、厚さ13mm、縦200mm、横200mmの平板状の耐熱材を得た。
(実施例1、実施例3〜実施例12に対する試験)
これらの実施例に対する試験を行い、その結果を表6と表7に示した。
「耐火性」の試験については、各実施例の耐熱材の表面から60mmの位置に、バーナーの火炎口を配位し、火炎温度約1200℃のバーナーの火炎を、当該耐熱材に約1分間当てて、その燃焼の有無を確認した。
×…燃焼した
△…耐熱材の表面が、強く炭化した(指で触ると、炭が落ちる)
○…耐熱材の表面が、少し炭化した(指で触ると、炭が指先に着く)
◎…耐熱材の表面が、炭化しなかった(指で触れても、炭が指先に着かない)
「結合性」の試験については、各実施例の耐熱材を水の中に12時間浸漬し、その変化の程度を視認で確認した。
×…溶けた(全体が溶けた)
△…ふやけた(厚みが約1.5〜2.5倍に膨れた)
○…少しふやけた(厚みが1.2倍程度に膨れた)
◎…ふやけなかった(全く変化なし)
(比較例1〜7)
実施例1、実施例3〜実施例8の比較のために、これらの成分中の見立礫岩を長石(福島産の長石)の粉末に置換したものを上記実施例1と同様の方法で作製し、これを比較例1〜7とした。これらの比較例1〜7の成分、「耐火性」及び「結合性」に関する試験結果を、表6において実施例1、実施例3〜実施例8の隣に表示した。なお比較例に用いた長石は、金属およびアルカリ土類金属などのアルミノケイ酸塩を主成分とする三次元構造のテクトケイ酸塩の一種であり、地殻中に普遍的に存在する鉱物で、もっとも存在量が多く、ほとんどの岩石(火成岩、変成岩、堆積岩)に含まれる造岩鉱物であり、特に花崗岩には60%前後含まれ、玄武岩にも50%前後含まれると言われるものである。
これらの実施例及び比較例から、見立礫岩の粉末を配合したものは、配合しないものや長石を配合したものに比して耐熱性が改善されたことが確認された。また、水に対する結合性についても、見立礫岩の粉末を配合したものは、配合しないものや長石を配合したものに比して、改善の傾向を示した。
Figure 2012077229
Figure 2012077229
(実施例13〜実施例18)
表8に示す各成分を、次の示す方法により、厚さ5mm、縦130mm、横90mmの平板状の試験片を得た。なお、基材は全てポリプロピレン(PP)ペレットである。
まず表8に示す基材をバーナーで下底を加熱されたステンレスボウルに投入し、基材を溶融させた。次に、基材以外の表8に示す粉粒体状の各成分をステンレスボウルに投入し、これらの配合物を満遍なく攪拌した後、有底の型枠内に攪拌混合された配合物を注入し、同型枠内で平板状に均らして、そのまま冷却したものを試験片とした。
実施例13〜実施例18について燃焼試験を行なった。その試験方法と結果を以下に示す。
(実施例13〜実施例18に対する試験)
各実施例の試験片を水平に保持し、その片端にバーナー(火炎温度約1200℃)の火炎の先端が当たるようにバーナーを配位した。試験片の片端に5秒間接炎し、5秒間離す操作を5回繰り返し、その自己消火性の有無を確認し、以下のように評価した。結果を表8に表す。
×…自己消火性なし
○…自己消火性あり:火炎消化時間が11〜60秒以内
◎…自己消火性あり:火炎消化時間が1〜10秒以内
なお、試験実施中に落ちてきた滓が燃焼した場合は、自己消火性なし×とした。
(比較例8〜比較例13)
実施例13〜実施例18の比較のために、これらの成分中の見立礫岩を長石(福島産の長石)の粉末に置換したもの、石英の粉末に置換したもの、または見立礫岩の粉末を配合しなかったものを上記実施例13〜実施例18と同様の方法で作製し、これを比較例8〜比較例13とした。これらの比較例8〜比較例13の成分及び燃焼試験の結果を、表8に示す。なお比較例10〜比較例11に用いた長石は、比較例1〜比較例7で用いた長石と同じものである。また、比較例12〜比較例13に用いた石英は、二酸化ケイ素からなる造岩鉱物で、長石についで産出量が多いものである。火成岩、変成岩、堆積岩の何れにもしばしば含まれるが、花崗岩などの火成岩に多く含まれるものである。
これらの実施例及び比較例から、見立礫岩の粉末を配合したものは、見立礫岩の粉末を配合しないものや石英の粉末を配合したものと比較して、基材の自己消火性、つまり、耐熱性及び難燃性を向上させることが示された。また、実施例18と比較例8とを比較して、基材に対して見立礫岩の粉末を単独で配合した場合においても、基材の耐熱性及び難燃性を向上させることが確認された。さらに、見立礫岩の粉末と無機物系フィラーである酸化アルミニウムと酸化亜鉛とを配合したものは、長石の粉末と酸化アルミニウムと酸化亜鉛とを配合したものと比較して、基材の耐熱性及び難燃性を向上させることが示された。よって、見立礫岩の粉末を配合した耐熱性向上剤は、ポリプロピレン(PP)基材の耐熱性及び難燃性を向上させることが確認された。特に、見立礫岩の粉末と無機物系フィラーである酸化アルミニウムと酸化亜鉛とを配合した耐熱性向上剤は、ポリプロピレン(PP)基材の耐熱性及び難燃性を向上させることが確認された。また、基材であるポリプロピレン(PP)50重量部に対して、上記耐熱性向上剤を最大10重量部前後の少量の配合で、基材の耐熱性及び難燃性を向上させることが確認された。
Figure 2012077229
(実施例19〜実施例22、比較例14〜比較例17)
次に、基材をポリプロピレン(PP)ペレットから、ポリエチレン(PE)、耐衝撃性ポリスチレン(PSHI)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂の各ペレットに替えたものを、上記実施例13〜実施例18と同様の方法で作製し、これを実施例19〜実施例22とした。実施例19〜実施例22においても、実施例13〜実施例18と同様の燃焼試験を行った。表9に、これらの実施例19〜実施例22の各成分及び試験結果を示す。また、比較例として、これらの成分中の見立礫岩を長石(福島産の長石)の粉末に置換したもの、または見立礫岩の粉末を配合しなかったものを上記実施例19〜実施例22と同様の方法で作製し、これを比較例14〜比較例17とした。これらの比較例14〜比較例17の各成分及び燃焼試験の結果を、表9に示す。
これらの実施例及び比較例から、見立礫岩の粉末と無機物系フィラーである酸化アルミニウムと酸化亜鉛とを配合したものは、見立礫岩の粉末を配合しないものや見立礫岩に置き換えて長石を配合したものと比較して、基材である樹脂の種類を問わず、基材の自己消火性、つまり耐熱性及び難燃性を向上させることが示された。見立礫岩の粉末を配合した実施例と、長石の粉末を配合した比較例との「自己消火性」に関する評価が同じものがあるが、例えば、基材としてPSHIを用いた実施例20の火炎消火時間は35秒、同じく基材としてPSHIを用いた比較例16の火炎消火時間は55秒となっており、見立礫岩の粉末を配合した実施例20の方が長石の粉末を配合した比較例16よりも火炎消火時間が短く、基材として他の樹脂を用いた実施例と比較例とを比較しても同様の結果であった。よって、見立礫岩の粉末と酸化アルミニウムと酸化亜鉛とを配合した耐熱性向上剤は、基材である樹脂の種類を問わず基材の耐熱性及び難燃性を向上させることが確認された。また、実施例13〜実施例18と同様、基材である各樹脂50重量部に対して、上記耐熱材向上剤を最大10重量部前後の少量の配合で、基材の耐熱性及び難燃性を向上させることが確認された。
Figure 2012077229
(実施例23〜実施例24、比較例18〜比較例19)
表10に示す各成分を、次の示す方法により、実施例23においては、厚さ3mm、縦50mm、横40mmの楕円形平板状の試験片を、実施例24、比較例18及び比較例19においては、厚さ3.5mm、縦100mm、横60mmの平板状の試験片を得た。なお、基材は、ジュースやビール充填用のアルミ缶、又は99.9%アルミニウムである。
まず、ステンレスボウルに表10に示す基材を投入したのちガスコンロにかけ、さらに上部からバーナーで加熱し、基材を溶融させた。次に、基材以外の表10に示す粉粒体状の各成分をステンレスボウルに投入し、これらの配合物を満遍なく攪拌した後、有底の型枠内に攪拌混合された配合物を注入し、同型枠内で平板状に均らして、そのまま冷却したものを試験片とした。また、比較例として、これらの成分中の見立礫岩を長石(福島産の長石)の粉末に置換したもの、または見立礫岩の粉末を配合しなかったものを上記実施例と同様の方法で作製した。
実施例23〜実施例24及び比較例18〜比較例19について耐熱性試験を行なった。その試験方法と結果を以下に示す。
(実施例23〜実施例24及び比較例18〜比較例19に対する試験)
各実施例の試験片を略45度傾斜するように立て掛けて保持し、各試験片の表面中央部から70mmの位置に、バーナーの火炎口を配位し、火炎温度約1800℃のバーナーの火炎を、当該試験片に1分間当てた。その後、バーナーの火炎を試験片から離し、各試験片の表面中央部をステンレス製のへらで押さえつけた。結果を表10に表す。
×…基材が1分以内に溶融した。
△…基材が1分間は溶融せず。へらで押さえつけると、試験片が曲がった。
○…基材が1分間は溶融せず。へらで押さえつけると試験片は曲がらなかったが、試験片に押さえつけたへらの跡が付いた。
◎…基材が1分間は溶融せず。へらで押さえつけると試験片は曲がらず、試験片に押さえつけたへらの跡が付かなかった。
これらの実施例及び比較例から、見立礫岩の粉末と無機物系フィラーである酸化アルミニウムと酸化亜鉛とを配合した耐熱性向上剤は、基材がアルミニウムのような金属においても、基材に含有することによって基材の耐熱性を向上させることが確認された。また、見立礫岩の粉末と酸化アルミニウムと酸化亜鉛とを配合したものは、見立礫岩の粉末を配合しないものや見立礫岩に置き換えて長石を配合したものと比較して、基材の耐熱性を向上させることが示された。よって、見立礫岩の粉末と酸化アルミニウムと酸化亜鉛とを配合した耐熱性向上剤は、基材の耐熱性を向上させることが確認された。また、基材であるアルミ缶もしくは99.9%アルミニウム50重量部に対して、上記耐熱材向上剤を最大10重量部前後の少量の配合で、基材の耐熱性を向上させることが確認された。
Figure 2012077229

Claims (4)

  1. 採掘地が宮崎県日之影町の見立礫岩の粉末を含有したことを特徴とする耐熱性向上剤。
  2. 請求項1に記載の耐熱性向上剤と、耐熱性を有する無機物系フィラーとが含有されたことを特徴とする耐熱性向上剤。
  3. 上記無機物系フィラーが、酸化アルミニウムと酸化亜鉛であることを特徴とする請求項2に記載の耐熱性向上剤。
  4. 請求項1〜3に記載の耐熱性向上剤と、樹脂、金属、セラミックス、ガラスからなる群から選択される少なくとも1種とを含有したことを特徴とする耐熱性組成物。
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