JP2012073170A - 球状弾性表面波素子およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】たとえば、球状基材を加熱しながらその熱を周囲に放出する程度を計測することによってガスの状態の計測を行なう用途において、熱の放出量を増やしたり、球形基材の大きな熱容量による応答速度の低下、あるいは、加熱部分と温度計測を行なう弾性表面波の周回領域の位置的なずれによる計測精度の低下をもたらさない加熱配線付の球状弾性表面波素子およびその製造方法を提供する。
【解決手段】球形基材11を、弾性表面波の周回経路12によって分けられる2つの領域を周回経路以外の領域について削除したリング形状とすることで、球形基材11の熱容量を相対的に小さくするとともに、上記削除によって生じた凹面11a,11bに、加熱用の配線パターン15a,15bを形成することで、加熱領域と弾性表面波の伝搬領域(周回経路12)と3次元的に接近した加熱配線付の球状弾性表面波素子10を構成する。
【選択図】図1
【解決手段】球形基材11を、弾性表面波の周回経路12によって分けられる2つの領域を周回経路以外の領域について削除したリング形状とすることで、球形基材11の熱容量を相対的に小さくするとともに、上記削除によって生じた凹面11a,11bに、加熱用の配線パターン15a,15bを形成することで、加熱領域と弾性表面波の伝搬領域(周回経路12)と3次元的に接近した加熱配線付の球状弾性表面波素子10を構成する。
【選択図】図1
Description
本発明は、弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)の解析によりガスの状態など各種の計測を行なうための球状弾性表面波素子およびその製造方法に関する。
従来、圧電材料で形成されている平坦な表面を有する基材の上記表面上の相互に離れた2つの位置に電気音響変換素子を設けた板状の弾性表面波素子が知られている。電気音響変換素子は通常、たとえば、すだれ状電極のごとき高周波励起/高周波受信手段である。
この従来の弾性表面波素子においては、一方の電気音響変換素子に高周波電流を供給すると、この一方の電気音響変換素子が弾性表面波を基材の表面に発生させ、所定の方向に伝搬させることができる。そして、他方の電気音響変換素子は、上記表面上で一方の電気音響変換素子からの弾性表面波を受信し、受信した弾性表面波に対応した高周波電流を生じさせることができる。
電気音響変換素子がすだれ状電極の場合には、すだれ状電極の複数の電極枝が並んでいる方向がすだれ状電極により発生された弾性表面波が伝搬する方向となり、また上記弾性表面波を効率よく受信する方向となる。
なお、弾性表面波とは、通常のバルク波と呼ばれる縦波や横波と異なり、物質表面にそのエネルギーの多くを集中して伝搬する弾性波である。弾性表面波としては、レーリー波、セザワ波、擬セザワ波、ラブ波等を例示することができ、異方性材料の表面にも存在しえる。
球状弾性表面波素子の周回経路を伝搬する弾性表面波の周回速度や周回に要する時間は、一般には温度依存性を持つことから、その変化を計測することで高精度の温度計として使用できる。この弾性表面波の伝搬状態の変化から温度計測する方法は、現在様々な用途で使用されており、公知の技術である。
従来の板状の弾性表面波素子は、遅延線、発振器のための発振素子および共振素子、周波数選択フィルタ、化学センサ、バイオセンサ、リモートタグ等に使用されている。そして、圧電体の上面の弾性表面波励起手段と弾性表面波検知手段との間の距離を長くとれればとれるほど、弾性表面波素子を利用したこれら種々の装置の精度は高まる。
しかしながら、このような従来の板状の弾性表面波素子においては、平坦な基体上に配置された圧電体が平坦であるために、弾性表面波励起手段が圧電体の上面に励起した弾性表面波は平坦な圧電体の上面に沿い弾性表面波検知手段に向かい伝搬される間に、その伝搬方向に対し直交する方向に拡散してしまい、そのエネルギーを失う。したがって、平坦な圧電体の上面において設定可能な弾性表面波励起手段と弾性表面波検知手段との間の距離は、おのずと限りがある。
球状弾性表面波素子は、弾性表面波を励起させ伝搬させることができる球形状の基体の表面に対し弾性表面波励起検知手段としてのすだれ状電極を載置し、基体の半径とすだれ状電極により基体の表面に励起させる弾性表面波の周波数および幅(基体の表面を弾性表面波が伝搬する方向に対し基体の表面に沿い直交する方向における弾性表面波の寸法)とを所定の条件に設定することにより、すだれ状電極により基体の表面に励起された弾性表面波を、基体の表面に沿い伝搬する方向に対し基体の表面に沿い直交する方向に無限に拡散させることなく、伝搬させることができ、ひいては繰り返し周回させることができることが明らかにされている。
球形状の基体の表面を弾性表面波が周回する軌跡は、球形状の基体の表面において球形状の基体の最大外周線を含んでいる球面の一部が円環状に連続している領域内にあり、この領域を弾性表面波周回路と呼んでいる。そして、球形状の基体を使用したこのような球状弾性表面波素子は、弾性表面波周回路に沿い弾性表面波周回路の延出方向と交差する方向に拡散することなく弾性表面波を多数回周回させることができる(すなわち、すだれ状電極が弾性表面波を励起させてから弾性表面波周回路を周回する弾性表面波をすだれ状電極が正確に検知することができなくなるまでに弾性表面が周回する回数が多い)ので、周回数の増大に伴う弾性表面波の伝搬速度の減速の程度や弾性表面波の位相の遅れの程度や弾性表面波の強度の減少の程度を精密に測定することができる。
伝搬速度の減速の程度や弾性表面波の位相の遅れの程度や弾性表面波の強度の減少の程度は、球状弾性表面波素子の弾性表面波周回路が接している環境の変化(たとえば、ガス濃度の増加)の程度に対応する。したがって、上述した種々の程度を測定することは球状弾性表面波素子の弾性表面波周回路が接している環境の変化を測定することを意味する。
そのひとつの応用例が、流速計への応用として提案されている。
特許文献1には、球状弾性表面波素子の球形基材の表面、あるいは、それに接触させて加熱するヒータが説明されている。特に、特許文献1では、弾性表面波の周回経路の両側に抵抗加熱のための配線パターンを実装している。球形基材を加熱しながら、周囲のガスの流れに伴って熱が奪われる現象を計測してガスの流速を計測する。
特許文献1には、球状弾性表面波素子の球形基材の表面、あるいは、それに接触させて加熱するヒータが説明されている。特に、特許文献1では、弾性表面波の周回経路の両側に抵抗加熱のための配線パターンを実装している。球形基材を加熱しながら、周囲のガスの流れに伴って熱が奪われる現象を計測してガスの流速を計測する。
用いる計測アルゴリズムは、弾性表面波素子を周回する弾性表面波の周回速度をその位相速度が一定になるための温度調節するためのヒータ電流値を計測する方法がある。あるいは、さらに単純に、一定の電流を流すことで同じ熱量が球状弾性表面波素子に印加される状態を作り、弾性表面波の周回速度の変化から素子温度を計測することで、間接的に周囲のガスによって熱が奪われる量を計測するものである。
これらの加熱配線付の球状弾性表面波素子は、球状弾性表面波素子が高精度の温度計になることが期待されているが、球形基材が大きな熱容量を有しているために、高速の応答を得ることが難しかった。
球形基材の熱容量を小さくするために樽形状の基材を用いることが考えられるが、球形の圧電性基材から樽形状に加工するためには、球形の基材を樹脂などに固定した状態で長時間かけて研磨しなくてはならず、研磨工程で基材に掛かる応力が弾性表面波が伝搬する周回経路の圧電性結晶の表面に微細な亀裂や欠陥を生み、ひいては弾性表面波の励起効率(あるいは検出効率)の低下や、周回経路を弾性表面波が多重周回する過程における弾性表面波の減衰率を大きくしてしまうという課題がある。
特許文献2には、弾性表面波の周回経路を除いた領域が平面となる、樽型の球状弾性表面波素子の製造方法が記載されている。球状弾性表面波素子の製造過程で、圧電性結晶球の特にZ軸方向(両極位置)に平面部を持った基材を用いれば、すだれ状電極形成位置を上記平面部の位置を極とした赤道相当位置として容易に割り出すことができることを示している。
特許文献3には、圧電性結晶球を製造した後に、弾性表面波の周回経路以外の領域に圧電性結晶球の部分的なエッチングによって窪みを生成し、コンデンサ等の電子部品を埋め込むことを提案している。
なお、本発明では、電気音響変換素子としてすだれ状電極を使用するとともに、すだれ状電極は球形基材の表面に実装することを前提に説明する。しかし、結晶球とは別個の基材の上にすだれ状電極を形成してすだれ状電極を結晶球の表面に接近することでも球状弾性表面波素子として機能する。本発明では、この場合も「球形結晶球の表面にすだれ状電極を形成する」と表現するものとする。
表面に加熱用配線を有した球状弾性表面波素子は、周囲のガスの流れ等の変化を計測する用途において、その使用が期待されているに関わらず、球形基材の大きな熱容量や、加熱用配線が弾性表面波の伝搬位置と位置的に離れていることから、応答が遅く正確な計測ができなくなるという課題がある。
そこで、本発明は、たとえば、球状基材を加熱しながらその熱を周囲に放出する程度を計測することによってガスの状態の計測を行なう用途において、熱の放出量を増やしたり、球形基材の大きな熱容量による応答速度の低下、あるいは、加熱部分と温度計測を行なう弾性表面波の周回領域の位置的なずれによる計測精度の低下をもたらさない加熱配線付の球状弾性表面波素子およびその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係る球状弾性表面波素子は、球面の一部で形成され前記球面の最大径の外周線を含み円環状に延出している表面領域を含んでおり、前記表面領域に当該表面領域の円環状の延出方向に沿い励起された弾性表面波が前記外周線に沿い周回する基材と、前記基材の前記表面領域に当該表面領域の円環状の延出方向に沿い弾性表面波を励起させる電気音響変換素子と、前記弾性表面波の伝搬する円環状の球形領域を挟む2つの表面領域は互いに接続して貫通していて、この貫通部の少なくとも一部に形成された加熱用の配線パターンとを具備している。
また、本発明の請求項2に係る球状弾性表面波素子は、球面の一部で形成され前記球面の最大径の外周線を含み円環状に延出している表面領域を含んでおり、前記表面領域に当該表面領域の円環状の延出方向に沿い励起された弾性表面波が前記外周線に沿い周回する基材と、前記基材の前記表面領域に当該表面領域の円環状の延出方向に沿い弾性表面波を励起させる電気音響変換素子と、前記弾性表面波の伝搬する円環状の球形領域を挟む2つの表面領域は凹面を有していて、この凹面の少なくとも一部に形成された加熱用の配線パターンとを具備している。
また、本発明の請求項3に係る球状弾性表面波素子の製造方法は、請求項1あるいは請求項2記載の球状弾性表面波素子の製造方法であって、圧電性結晶球の弾性表面波の周回経路領域を少なくとも含む領域を保護膜によって覆う工程と、溶液によるエッチング方法かあるいは反応性真空エッチング方法を用いて、前記圧電性結晶球の周回経路領域以外を取り除くことによって、当該周回経路領域を挟む2つの表面領域にそれぞれ凹面を形成する工程と、前記形成した凹面の少なくとも一部に加熱用の配線パターンを形成する工程と、前記周回経路領域に対し弾性表面波を励起するすだれ状電極を形成する工程とを具備している。
また、本発明の請求項4に係る球状弾性表面波素子の製造方法は、前記形成した2つの凹面は互いに接続して貫通させることを特徴とする。
本発明によれば、たとえば、球状基材を加熱しながらその熱を周囲に放出する程度を計測することによってガスの状態の計測を行なう用途において、熱の放出量を増やしたり、球形基材の大きな熱容量による応答速度の低下、あるいは、加熱部分と温度計測を行なう弾性表面波の周回領域の位置的なずれによる計測精度の低下をもたらさない加熱配線付の球状弾性表面波素およびその製造方法を提供できる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
まず、第1の実施形態について説明する。
まず、第1の実施形態について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る球状弾性表面波素子の構成を概略的に示すものである。図1において、球状弾性表面波素子10は、たとえば、水晶からなる基材11を備えている。基材11は、本実施形態では直径が3.3mmの水晶を使用した。水晶によりなる基材11は、水晶の単結晶基材を球形に加工した後に、弾性表面波の伝搬経路を除く両極近傍の領域をエッチングによって削除した水晶基材を用い、水晶のZ軸を地軸として赤道近傍を弾性表面波の周回経路12とする。
なお、三方晶系圧電性単結晶を用いて球形基材11を作る場合には、Z軸を結晶方位を地軸とする赤道に沿って(Z軸シリンダ経路と呼称される)弾性表面波の周回経路を形成できるが、たとえば、ニオブ酸リチウムやタンタル酸リチウムなど多くの圧電結晶でZ軸シリンダ経路以外の経路で弾性表面波が周回することが知られており、本実施形態は弾性表面波の多重周回が可能で、その周回速度が温度依存性を有していればよく、赤道に沿った経路以外を除外するものではない。
赤道にそって弾性表面波が周回するように、すだれ状電極13を赤道にその電極枝が赤道に垂直になる方向に形成している。すだれ状電極13の周期は、励起あるいは検出する弾性表面波の周波数を決定するが、本実施形態では150MHzの弾性表面波を励起するために21ミクロンの周期にすだれ状電極13を形成する。
基材11は、エッチングによって、周回経路12を挟む2つの表面領域にそれぞれ凹面11a,11bが形成されているとともに、これら凹面11a,11bを互いに接続する貫通孔14が形成されている。
凹面11a,11bには、抵抗加熱用の配線パターン15a,15bが形成されている。配線パターン15a,15bは、薄膜であり、真空製膜で数百ミクロン程度から数十ミクロンの厚さの薄膜を形成して後にフォトリソプロセスを用いてパターン形成し、抵抗加熱による加熱用配線(ヒータ)として使用する。加熱用電源16を接続して加熱を行ないながら、その温度上昇あるいは平衡に達する際の温度を計測することで、周囲へ放射する熱量に影響する環境変化を計測することができる。
本実施形態に使用する圧電性結晶の基材11は温度が変わると、弾性表面波の周回速度が変わる温度依存性を持った圧電性結晶基材であることが求められる。たとえば、水晶球を用いた球状弾性表面波素子の温度依存性は室温付近で25ppm/度であり、ランガサイト結晶球を使用した場合は40ppm/度である。温度依存性が高いほど正確に弾性表面波の周回速度から温度を計測できる。
次に、第1の実施形態に係る弾性表面波素子10の製造方法について図2〜図8を用いて具体的に説明する。
球形基材は、Z軸を水晶の旋光性を利用した方法に基づいて判別することが知られている(たとえば、特許文献2参照)。そこで、材料として用いる水晶球21のZ軸方位が判明したら、図2に示すように、Z軸に平行な球の中心を通る直線を地軸22として、その赤道が弾性表面波の周回経路12となる領域23に、図3に示すように、水晶を融解するフッ酸に対して耐性を持つレジスト膜24を形成する。
周回経路領域23へのレジスト膜24の形成は、水晶球21の全体にレジスト膜を被膜形成した後に、フォトリソプロセスによって周回経路領域23以外の領域のレジスト膜を除去してもよいし、インクジェット法にしたがって形成する方法でも構わない。たとえば、幅1mmにわたって周回経路領域23に相当する赤道付近の球形表面近傍をレジストコートする。
次に、図4に示すように、容器25内のフッ酸溶液26中に、レジスト膜24を形成した水晶球21を浸漬して、弾性表面波の周回経路領域23をのぞく領域の除去を行なう。一般に、結晶材料のエッチングは異方性エッチングとなり、たとえば、3回対称の方向で異なるエッチング速度で進む(図5参照)。なお、本実施形態の説明では、簡単のために説明図において異方性については表現せずに説明を行なうものとする。
このようなエッチング処理により、図5に示すように、周回経路12を挟む2つの表面領域にそれぞれ凹面11a,11bが形成され、かつ、これら凹面11a,11bを互いに接続する貫通孔14が形成されたリング状の基材11が形成される。
次に、図6に示すように、周回経路領域23のレジスト膜24の剥膜を行ない、その後、周回経路12上へのすだれ状電極13の形成を行なう。すだれ状電極13の形成はよく知られるように、周回経路12の上に金属薄膜を形成し、フォトリソグラフィ方法にしたがってパターン形成を行なう。
すだれ状電極13は、少なくとも弾性表面波の周回経路12の領域にアルミ薄膜(1000Å)、あるいは、クロム(500Å)と金(1000Å)の多層薄膜を真空成膜によって成膜後、フォトリソグラフィ方法にしたがってパターン化して生成した。すだれ状電極13は、2つの電極取出部(図示省略)を有している。
次に、図7、図8に示すように、前記エッチング処理によって生じた凹面11a,11bに、クロム薄膜をスパッタによって形成することで抵抗加熱用の配線パターン15a,15bを形成する。なお、配線パターン15a,15bの形状や膜厚は、使用する加熱用途にしたがって設計を行なえばよい。
本実施形態において、リング状の基材11は、球形状と比較して3分の1以下の水晶基材の体積となり、熱容量が小さくなる。加熱用の配線パターン15a,15bに加熱用電源16から電流を流して発熱させ、その際の弾性表面波素子10の温度上昇を弾性表面波の周回速度の計測によって行なうことができる。
これにより、圧電性結晶球の比熱も小さく、より高速に加熱や冷却が可能で、もって周囲のガスとの熱の送受が圧電性結晶基材11の温度に正確に反映する。つまり、周囲のガスの状況をより正確かつ高速に計測できる。
また、特許文献1に示す方法に比較して、樽型よりさらに熱容量の小さな、リング状の圧電性基材11を製造することが可能である利点を有する。また、特許文献1に記載の方法では、弾性表面波の周回経路の表面形状が球形表面から歪む障害がでるが、本実施形態では、まず圧電性結晶球を大量に作製した後に、不要な部分のエッチングを行なうために安定した製造が可能となる。
さらに、前記エッチング処理によって生じた凹面11a,11bに、弾性表面波の励起検出用のすだれ状電極13の電極取出部(端子)を形成することが望まれる。弾性表面波の周回経路12にすだれ状電極13の電極結線を行なうことは、弾性表面波の周回を妨害することが明らかである。
なお、エッチング処理によって生じた凹面11a,11bに形成する加熱用の配線パターン15a,15bは、図1に示すような単純な形状でもよいし、蛇行形状に形成してもよい。蛇行形状に形成することで、抵抗値の増大と発熱分布の均一化やその分布の均一化のための制御が可能である。
本実施形態は、加熱した基材11の熱放射の応答を高める効果があることは明らかで、その効果は、熱放射の速度を利用する他の用途についても同様の応答速度の向上として期待される。
次に、第2の実施形態について説明する。
なお、前述した第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明は省略し、異なる部分についてだけ説明する。
なお、前述した第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明は省略し、異なる部分についてだけ説明する。
第2の実施形態は、前述した第1の実施形態の球状弾性表面波素子よりもさらに熱容量を小さくしたものであり、以下、その製造方法について図9〜図15を用いて具体的に説明する。
材料として用いる水晶球21は、図9に示すように、直径が3.3mmのランガサイト球をもとに作製したものである。まず、図10に示すように、周回経路12となる領域23に樹脂モールド31を形成した後、研磨により両極を取り除くことで、図11に示すような樽形状の結晶基材32を製作する。この場合、Z軸シリンダ経路近傍を0.7mmの厚さ残している。
次に、図12に示すように、周回経路12となる領域23およびその周縁部に対してレジストコート33を行なう。その後、図13に示すように、容器34内のエッチング液35中に、レジストコート33を形成した結晶基材32を浸漬して、エッチング処理を行なう。この場合、地軸22に沿って貫通させて貫通孔14を形成している。貫通孔14の直径は2mmである。
このようなエッチング処理により、図14に示すように、周回経路12を挟む2つの表面領域にそれぞれ凹面11a,11bが形成されるとともに、これら凹面11a,11bの開口部周縁に所定幅の平面部36a,36bが形成され、かつ、これら凹面11a,11bを互いに接続する貫通孔14が形成されたリング状の基材11が形成される。
次に、図14に示すように、周回経路12上へのすだれ状電極13の形成を行なう。次に、図15に示すように、前記エッチング処理によって生じた凹面11a,11bの開口部周縁に形成された平面部36a,36bに、クロム薄膜をスパッタによって形成することで抵抗加熱用の配線パターン15a,15bを形成する。また、平面部36a,36bに弾性表面波の励起検出用のすだれ状電極13の電極取出部(端子)を形成する。
なお、貫通孔14の大きさは、大きい方がより結晶基材の11熱容量を小さくできることから望まれるが、大きくすると結晶基材11そのものの剛性が弱くなり、加熱用の配線パターン15a,15bとの結線プロセスや、すだれ状電極13との結線プロセスで結晶基材11に圧力が掛かる方法だと結晶基材11そのものの破壊に繋がる。さらに、弾性表面波の波長に比較して例えば20倍以上の厚さが弾性表面波の周回経路12の幅にわたってないと、弾性表面波の伝搬自体を阻害することから問題が生じる。
本実施形態では、150MHzの水晶結晶中の代表的な波長は約21ミクロンであり、420ミクロンの幅を残すために、[3300マイクロメートル−(420マイクロメートル×2)=2480マイクロメートル]により、2480マイクロメートル以上の直径を持った貫通孔14を設けることは、弾性表面波素子10として動作しなくなる。このように、周回経路12の肉厚を薄くする限度については、弾性表面波の周波数や伝搬モード、結晶材料についても考慮して弾性表面波が伝搬可能な大きさに選べばよい。
平面部36a,36bに電極取出部を位置させることには次のような利点がある。すなわち、プリント配線板への実装や、超音波結線機を用いて結線する際に、基材11にかかる圧力や超音波振動が結晶材を破壊することを防ぐよう、平面のテーブルに基材11を設置して上方から圧力や超音波振動を印加できる。
次に、第3の実施形態について説明する。
なお、前述した第2の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明は省略し、異なる部分についてだけ説明する。
なお、前述した第2の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明は省略し、異なる部分についてだけ説明する。
第3の実施形態は、放熱部分を広くもった加熱用の配線パターンを有した球状弾性表面波素子の例であり、以下、その製造方法について図16〜図17を用いて具体的に説明する。
前述した第2の実施形態において、エッチング工程におけるエッチング時間を比較的短くすることで、基材11を作成する。すなわち、凹面11a,11bを互いに接続する貫通孔14が形成されるよりも前に、エッチング液35から結晶基材32を引き上げて洗浄を行なうことで、凹面11a,11b間を貫通せずに、薄い基材膜37を残した形状に基材11を形成することができる。
このように形成された薄い基材膜37の両面に加熱用の配線パターン15a,15bを形成する。このように構成することにより、熱容量が小さいだけでなく、熱の放熱領域の大きな結晶基材11を作ることが可能である。
さらに、凹凸を多数作り表面積を増やすことも容易であり、図18〜図20にその例を示す。これは、レジスト膜を多数の島状パターンに形成すれば作製することができる。図18〜図19は、周回経路12を挟む2つの表面領域にそれぞれ複数の環状の凹部41a,41b,42a,42bを形成した場合を示し、図20は、周回経路12を挟む2つの表面領域にそれぞれ複数の円状の凹部43a〜43f,44a〜44fを形成した場合を示している。いずれの場合も、複数の凹部の全てか選択した所定の凹部の内部に加熱用の配線パターンを形成すればよい。
以上説明したように上記実施形態によれば、球形基材11を、弾性表面波の周回経路12によって分けられる2つの領域を周回経路以外の領域について削除したリング形状とすることで、球形基材11の熱容量を相対的に小さくするとともに、上記削除によって生じた凹面11a,11bに、加熱用の配線パターン15a,15bを形成することで、加熱領域と弾性表面波の伝搬領域(周回経路12)と3次元的に接近した加熱配線付の球状弾性表面波素子10を提供できる。
このように構成された球状弾性表面波素子10によれば、球状弾性表面波素子10が加熱用の配線パターン15a,15bを有して自身を加熱しながら、周囲のガスの流速などの熱の漏出の程度を弾性表面波の周回速度の変化に基づく温度計測を高速かつ正確に行なうことが可能になる。
さらに、周囲のガスとの熱交換効率をよくすることは、周囲のガスの状況をより高精度に、かつ、高速に温度変化に反映させることになるので、周囲のガスの計測素子として高感度になる。
10…球状弾性表面波素子、11…基材、11a,11b…凹面、12…周回経路、13…すだれ状電極(電気音響変換素子)、14…貫通孔、15a,15b…加熱用の配線パターン、16…加熱用電源、21…水晶球、22…地軸、23…周回経路領域(周回経路となる領域)、24…レジスト膜、25…容器、26…フッ酸溶液、31…樹脂モールド、32…結晶基材、33…レジストコート、34…容器、35…エッチング液、41a,41b,42a,42b,43a〜43f,44a〜44f…凹部。
Claims (4)
- 球面の一部で形成され前記球面の最大径の外周線を含み円環状に延出している表面領域を含んでおり、前記表面領域に当該表面領域の円環状の延出方向に沿い励起された弾性表面波が前記外周線に沿い周回する基材と、
前記基材の前記表面領域に当該表面領域の円環状の延出方向に沿い弾性表面波を励起させる電気音響変換素子と、
前記弾性表面波の伝搬する円環状の球形領域を挟む2つの表面領域は互いに接続して貫通していて、この貫通部の少なくとも一部に形成された加熱用の配線パターンと、
を具備したことを特徴とする球状弾性表面波素子。 - 球面の一部で形成され前記球面の最大径の外周線を含み円環状に延出している表面領域を含んでおり、前記表面領域に当該表面領域の円環状の延出方向に沿い励起された弾性表面波が前記外周線に沿い周回する基材と、
前記基材の前記表面領域に当該表面領域の円環状の延出方向に沿い弾性表面波を励起させる電気音響変換素子と、
前記弾性表面波の伝搬する円環状の球形領域を挟む2つの表面領域は凹面を有していて、この凹面の少なくとも一部に形成された加熱用の配線パターンと、
を具備したことを特徴とする球状弾性表面波素子。 - 請求項1あるいは請求項2記載の球状弾性表面波素子の製造方法であって、
圧電性結晶球の弾性表面波の周回経路領域を少なくとも含む領域を保護膜によって覆う工程と、
溶液によるエッチング方法かあるいは反応性真空エッチング方法を用いて、前記圧電性結晶球の周回経路領域以外を取り除くことによって、当該周回経路領域を挟む2つの表面領域にそれぞれ凹面を形成する工程と、
前記形成した凹面の少なくとも一部に加熱用の配線パターンを形成する工程と、
前記周回経路領域に対し弾性表面波を励起するすだれ状電極を形成する工程と、
を具備したことを特徴とする球状弾性表面波素子の製造方法。 - 前記形成した2つの凹面は互いに接続して貫通させることを特徴とする請求項3記載の球状弾性表面波素子の製造方法。
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