JP2012069310A - 電極の製造方法および電極製造装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】集電体と活物質とを積層してなる電極の製造技術において、立体的構造を有し、しかも高密度な活物質層を形成することが可能な技術を提供する。
【解決手段】集電体11の表面に活物質材料を含む塗布液をライン状に塗布し、ライン状パターン121からなる活物質層を形成する。これを高圧チャンバ41に設置し、アルゴンガス供給源43から高圧アルゴンガスを導入する。ライン状パターン121を加圧することで、ライン状パターン121内の空隙や気泡が潰れて活物質層が高密度化される。ライン状パターン121の表面が高圧ガスにより均等に加圧されるので、パターンが潰れずに立体的構造が維持される。
【選択図】図6
【解決手段】集電体11の表面に活物質材料を含む塗布液をライン状に塗布し、ライン状パターン121からなる活物質層を形成する。これを高圧チャンバ41に設置し、アルゴンガス供給源43から高圧アルゴンガスを導入する。ライン状パターン121を加圧することで、ライン状パターン121内の空隙や気泡が潰れて活物質層が高密度化される。ライン状パターン121の表面が高圧ガスにより均等に加圧されるので、パターンが潰れずに立体的構造が維持される。
【選択図】図6
Description
この発明は、例えば電池用電極のように集電体と活物質とを積層してなる構造を有する電極を製造する技術に関するものである。
例えばリチウムイオン電池のような化学電池に用いられる電極では、高出力の電池を得るためには高密度の活物質層を形成することが効果的である。これを実現するために、例えば特許文献1に記載の技術では、集電体となる金属箔の表面に活物質材料を含むスラリーを塗布し、これを乾燥させた後、プレスロール装置に通して加圧し圧縮することで活物質の高密度化を図っている。
また近年では、活物質層の表面積を増大させて電池のさらなる特性の向上を図るべく、活物質層の表面が所定の立体的構造を持つ電極も考案されている。例えば特許文献2に記載の技術では、スパッタリング法や真空蒸着法により、ワイヤーメッシュを介して集電体表面に活物質材料を堆積させることにより、集電体表面から突出した立体的構造を有する活物質層を形成している。
このような立体的構造を持つ活物質層を有する電極に対しては、上記した特許文献1に記載のような加圧技術を適用することができない。というのは、プレスロールによる加圧では活物質の突出部分が押しつぶされてしまい、立体的構造を維持することができないからである。そのため、特許文献2に記載の技術では、立体的構造により活物質層の表面積の増大が図られているものの、活物質層自体を高密度化させることが困難である。
このことから、活物質層に立体的構造を持たせてその表面積を拡大しつつ、しかも活物質層の高密度化を図る技術が求められるが、そのような技術についてはこれまで確立されるに至っていない。
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、集電体と活物質とを積層してなる電極の製造技術において、立体的構造を有し、しかも高密度な活物質層を形成することが可能な技術を提供することを目的とする。
この発明にかかる電極の製造装置は、上記目的を達成するため、集電体の表面に、該集電体に接する面と異なる表面が凹凸形状を有する活物質層を形成する活物質層形成工程と、前記活物質層の表面を大気圧よりも高圧の高圧流体によって加圧する加圧工程とを備えることを特徴としている。
このように構成された発明では、高圧流体によって活物質層の表面に均等な圧力が加わるため、活物質層の凹凸形状、すなわち立体的構造を維持したまま活物質層の高密度化を図ることが可能である。そのため、この発明によれば、立体的構造を有し、しかも高密度な活物質層を持つ電極を製造することが可能である。
この発明における加圧工程では、例えば、集電体に活物質層が形成されてなる積層体をチャンバの内部空間で保持するとともに、該チャンバの内部空間を高圧流体で満たすことで活物質層の表面を加圧するようにしてもよい。このようにすると、積層体を収容可能なチャンバと、該チャンバの内部空間を満たすに十分な量の高圧流体とを用意すれば済むので、電極の製造コストを抑えることができる。また、チャンバの内部空間に複数の積層体を収容して高圧流体を導入するようにすれば、さらなるコスト低減および電極製造のスループット向上を図ることができる。
ここで、高圧流体としては例えば不活性ガスを用いることができる。高圧の不活性ガスにより活物質層を加圧することにより、活物質層の組成を変化させることなく高密度化することができる。なお、常圧では不活性のガス種であっても高圧下では活物質を変質させる場合があるので、ガス種としては希ガスが最も好ましい。
また、活物質層形成工程では、例えば活物質材料を含む塗布液を集電体層の表面に部分的に塗布して活物質層を形成するようにしてもよい。このようにすると、集電体層の表面に立体的な構造を有する活物質層を形成することができ、塗布方法を適宜に選択することで、微細な凹凸パターンの活物質層を形成することも可能である。また、塗布液には活物質材料以外の材料も含まれているので、塗布により形成された活物質層は比較的低密度なものとなりがちである。したがって、本発明による加圧の効果が特に顕著である。このように、塗布による活物質層の形成とその加圧とを組み合わせることは、特に微細パターンを有し高密度な活物質層を形成するのに好適であり、表面積が広く高密度な活物質層を形成することが可能である。
この場合、例えば、活物質層形成工程の後、加圧工程の前に、集電体に塗布された塗布液を乾燥させる乾燥工程を備えてもよい。活物質層を加圧する前に液体成分を予め除去しておpくことにより、加圧による高密度化の効果を高めることができる。
例えば、乾燥工程では、集電体に塗布された塗布液の周囲雰囲気を塗布時の気圧よりも低い気圧に減圧するようにしてもよい。このような減圧乾燥により、短時間で塗布液の液体成分を除去することができるほか、塗布液内部に不可避的に含まれる気泡を活物質層内部から排除することができるので、加圧による高密度化の効果をさらに高めることができる。
また、この発明においては、例えば、加圧工程と、加圧工程の後に活物質層の表面に加わる圧力を低減させる減圧工程とを交互に複数回実行するようにしてもよい。このように加圧および減圧を交互に繰り返すことで、活物質層内部の空隙を潰して活物質層をより高密度化させることができる。この場合において、減圧工程は大気圧以下にまで減圧することを要するものではない。
また、この発明にかかる電極製造装置は、上記目的を達成するため、集電体の表面に活物質層が形成されてなる積層体を収容可能な内部空間を有するチャンバと、高圧流体により前記チャンバの内部空間の圧力を大気圧よりも増大させる加圧手段とを備えることを特徴としている。
このように構成された発明では、上記した電極の製造方法の発明と同様に、チャンバ内に収容された積層体に形成された活物質層の表面を均等な圧力で加圧することにより、立体的構造を有し、しかも高密度な活物質層を持つ電極を製造することが可能である。
ここで、加圧手段は、例えば、積層体を収容したチャンバの内部空間に高圧流体を導入するように構成されてもよい。このような装置構成は比較的簡単なものであり、このような簡単な装置で高密度な活物質層を持つ電極を製造することができるので、特性の良好な電極を低コストで製造することが可能である。
この発明の電極製造装置では、例えば、集電体の表面に活物質層の材料物質を含む塗布液を塗布する塗布手段をさらに備えるようにしてもよい。前記したように、塗布による活物質層の形成とその加圧とを組み合わせることによって、立体的構造を有して表面積が大きく、しかも高密度の活物質層を形成することができ、特性の良好な電極を製造することが可能である。
本発明によれば、集電体表面に形成された活物質層の表面を高圧流体によって均等に加圧するので、立体的構造を失うことなく、しかも高密度な活物質層を有する電極を製造することができる。
図1はこの発明にかかる電極製造装置の一実施形態を示す図である。この電極製造装置100では、センターロボット2を挟んで塗布ユニット3と加圧ユニット4とが対向配置されるとともに、これらを制御する制御部6が設けられている。この電極製造装置100は、後述するリチウムイオン二次電池モジュールの電極を製造するための装置であり、より詳しくは、電極を構成する集電体を外部から受け入れて、その表面に活物質層を形成して電極を製造する装置である。処理対象物たるワークの外部との受け渡しおよび塗布ユニット3と加圧ユニット4との間でのワークの移動についてはセンターロボット2が担っている。
図2は図1の電極製造装置を利用して製造される電池の一例を示す図である。より詳しくは、図2(a)は図1の電極製造装置100によって製造される電極を利用して製造されるリチウムイオン二次電池モジュール1の概観斜視図であり、図2(b)はその断面構造を示す図である。このリチウムイオン二次電池モジュール1は、負極集電体11の上に負極活物質層12、固体電解質層13、正極活物質層14および正極集電体15を順番に積層した構造を有している。この明細書では、X、YおよびZ座標方向をそれぞれ図2(a)に示すように定義する。
図2(b)に示すように、負極活物質層12はY方向に沿って延びるライン状のパターン121がX方向に一定間隔を空けて多数並んだ、ラインアンドスペース構造となっている。各ライン状パターン121の寸法としては、その幅、高さとも例えば20μmないし200μmとすることができる。
一方、固体電解質層13は固体電解質によって形成された連続する薄膜であり、上記のように負極集電体11上に負極活物質層12が形成されてなる積層体表面の凹凸に倣う(追従する)ように、該積層体上面のほぼ全体を一様に覆っている。固体電解質層13の厚さについては任意であるが、正負の活物質層間が確実に分離され、また内部抵抗が許容値以下となるような厚さであることが必要である。例えば20μmないし50μmとすることができる。なお、表面積を増大させるために設けた負極活物質層12の凹凸の意義を滅却しない、という観点からは、固体電解質層13の厚さt13が負極活物質層12の凹凸の高低差t12よりも小さいことが望ましい。
また、正極活物質層14は、その下面側は固体電解質層13上面の凹凸に倣った凹凸構造を有するが、その上面は略平坦となっている。正極活物質層14の厚さとしては、例えば20μmないし100μmとすることができる。そして、このように略平坦に形成された正極活物質層14の上面に正極集電体15が積層されて、リチウムイオン二次電池モジュール1が形成される。このリチウムイオン二次電池モジュール1に適宜タブ電極が設けられたり、複数のモジュールが積層されてリチウムイオン二次電池が構成される。
ここで、各層を構成する材料としては、リチウムイオン電池の構成材料として公知のものを用いることが可能であり、負極集電体11、正極集電体15としては、例えば銅箔、アルミニウム箔をそれぞれ用いることができる。また、正極活物質としては例えばLiCoO2(LCO)を主体とするものを、負極活物質としては例えばLi4Ti5O12(LTO)を主体としたものをそれぞれ用いることができる。また、固体電解質層13としては、例えばポリエチレンオキサイドとポリスチレンとの共重合体を用いることができる。なお、各機能層の材質についてはこれらに限定されるものではない。
このような構造を有するリチウムイオン二次電池モジュール1は、薄型で折り曲げ容易である。また、負極活物質層12を図示したような凹凸を有する立体的構造として、その体積に対する表面積を大きくしているので、薄い固体電解質層13を介した正極活物質層14との対向面積を大きく取ることができ、高効率・高出力が得られる。このように、上記構造を有するリチウムイオン二次電池は小型で高性能を得ることができるものである。
次に、上記したリチウムイオン二次電池モジュール1を製造する方法について説明する。従来、この種のモジュールは各機能層に対応する薄膜材料を積層することによって形成されてきたが、この製造方法ではモジュールの高密度化に限界がある。以下に説明する製造方法では、少ない工程で、上記のような優れた構造を持つリチウムイオン二次電池モジュール1を製造することが可能である。
図3はこの実施形態におけるリチウムイオン二次電池モジュールの製造方法を示すフローチャートである。この製造方法では、まず負極集電体11となる金属箔、例えば銅箔を準備する。薄い銅箔はその搬送や取り扱いが難しいので、例えば片面をガラス板や樹脂シート等のキャリアに適宜の固定方法で固定し搬送性を高めておくことが好ましい。以下の処理においては、このように銅箔をキャリアに固定したものを処理対象物たるワークとする(ステップS101)。
続いて、こうして準備されたワークを図1の電極製造装置100に搬入する(ステップS102)。具体的には、負極集電体11を上に向けた状態のワークを電極製造装置100のステージ(図示省略)に載置する。そして電極製造装置100により電極形成処理を実行し(ステップS103)、負極集電体11および負極活物質層12からなる負極電極をまず形成する。
図4は図1の電極製造装置による電極形成処理を示すフローチャートである。電極製造装置100では、センターロボット2が、外部から搬入されるワークを受け取り、これをまず塗布ユニット3に搬入する(ステップS201)。塗布ユニット3は、搬入されたワークの負極集電体11に負極活物質材料を含む塗布液をノズルスキャン法により塗布して負極活物質層12を形成する(ステップS202)。
図5は塗布ユニットによる負極活物質層形成の様子を模式的に示す図である。より詳しくは、図5(a)は塗布ユニット3により実行される、ノズルスキャン法による塗布の様子をX方向から見た図、図5(b)および図5(c)は同じ様子をそれぞれY方向、斜め上方から見た図である。ノズルスキャン法によって塗布液を基材に塗布する技術は公知であり、本方法においてもそのような公知技術を適用することが可能であるので、装置構成については説明を省略する。
塗布液としては、例えば、前記した負極活物質を含む有機系LTO材料(有機・無機複合材料)を用いることができる。塗布液には、負極活物質の他に、導電助剤としてのアセチレンブラックまたはケッチェンブラック、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンラバー(SBR)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、溶剤としてのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)などを混合したものを用いることができる。なお、負極活物質材料としては上記したLTOの他に例えば黒鉛、金属リチウム、SnO2、合金系などを用いることが可能である。
塗布ユニット3には、上記有機系LTO材料を塗布液として吐出するための吐出口312を有する吐出ノズル311をY方向に沿って複数配設されたシリンジポンプ31が設けられている。一方、搬入されたワークWは、例えばガラス板からなるキャリア10に負極集電体となる銅箔11が固定されたものである。吐出ノズル311をワークWの上方に配置し、吐出口312から一定量の塗布液31pを吐出させながら、吐出ノズル311を銅箔11に対し相対的に矢印方向Dnに一定速度で走査移動させる。
こうすることで、銅箔11上には塗布液31pがY方向に沿ったライン状に塗布される。シリンジポンプ31に複数の吐出ノズル311を設けることで1回の走査移動で複数のストライプを形成することができ、必要に応じて走査移動を繰り返すことで、銅箔11の全面にライン状に塗布液を塗布することができる。これにより、銅箔11の上面に負極活物質によるライン状パターン121が形成される。
この時点では、負極活物質層12を構成する各ライン状パターン121は塗布直後で溶剤成分が残留し、また内部に気泡を含むなど多孔質で低密度な状態である。また溶剤の揮発後も液体成分の離脱に伴う空隙が残る。この状態ではリチウムイオンの収蔵力が低く、電池として高容量を得ることができない。そこで、負極活物質層12をより高密度化すべく、ワークWを加圧ユニット4に移動させ(ステップS203)、加圧処理を行う。この時点でのワークWは、キャリア10上に、負極集電体11に負極活物質層12を形成してなる負極電極を固定したものである。
図6は加圧ユニットの構成を示す図である。加圧ユニット4は、内部空間SPにワークWを収容可能な高圧チャンバ41を備えている。高圧チャンバ41の内部には、ワークWを載置するためのステージ42が設けられている。高圧チャンバ41のインレット411には、制御弁431を介して不活性ガス源としてのアルゴンガス供給源43が接続されている。制御部6からの制御指令によって制御弁431が開かれると、アルゴンガス供給源43から高圧のアルゴンガスが高圧チャンバ41内に導入される。
また、高圧チャンバ41のアウトレット412には、3つの制御弁441,442,443が接続されている。制御弁441は真空ポンプ45に接続されており、制御部6からの制御指令によって制御弁441が開かれると高圧チャンバ41の内部空間SPが減圧される。また、制御弁442は図示しないガス回収部に接続されており、制御部6からの制御指令によって制御弁442が開かれると高圧チャンバ41内のガスがガス回収部に回収される。さらに、制御弁443は高圧チャンバ41内を大気圧に解放するリークバルブとして機能する。
このように構成された加圧ユニット4では、高圧チャンバ41に搬入されたワークWが負極活物質によるライン状パターン121を上に向けてステージ42に載置される。この時点では負極活物質層12内に溶剤が残留している可能性がある。液体成分が残留していると加圧による圧縮効果が低くなる。そこで、まず真空ポンプ45によりチャンバ内部空間SPを減圧し溶剤を揮発させる減圧乾燥を行う(ステップS204)。これによりチャンバ内の酸素を低減させる作用もある。続いて、アルゴンガス供給源43から高圧のアルゴンガスを高圧チャンバ41内に導入する(ステップS205)。アルゴンガスの圧力としては、例えば15MPa程度である。
図7は加圧による効果を示す図である。高圧チャンバ41内にワークWを載置し内部空間SPを高圧のアルゴンガスで満たすことにより、図7(a)に示す矢印のように、負極集電体11上に形成された負極活物質のライン状パターン121は高圧ガスにより周囲から均等な圧力で押圧される。これにより、ライン状パターン121の内部の空隙や気泡が潰れパターンが圧縮される。その結果、図7(b)に示すように、ライン状パターン121が収縮して高密度化される。パターンには均等に圧力が加わるため、ライン状パターン121が倒壊することはない。
加圧した状態を一定期間(例えば2分程度)保持した後、制御弁442を開いて高圧チャンバ41内の高圧アルゴンガスをガス回収部に回収してから、制御弁443を開いてチャンバ内の圧力を大気圧に解放して(ステップS206)、ワークWを搬出する(ステップS207)。
こうして形成された電極は、負極集電体11たる銅箔の表面に互いに平行な複数のライン状パターン121からなる負極活物質層12が形成されたものであり、加圧により圧縮されて高密度化されている。このため、同じ体積では圧縮前の活物質に比べて電極としての容量が向上している。負極活物質層12を構成するライン状パターン121の表面は高圧ガスによって均等に加圧されているため、パターンが潰れず、活物質の体積に対して表面積が大きい立体的構造が維持されている。
図3に戻って、この実施形態におけるリチウムイオン二次電池モジュールの製造方法の説明を続ける。上記のようにして形成された負極電極については(ステップS103)、固体電解質層を介して他方極の正極電極と積層されることにより電池として機能するようになる。その製造方法については任意であるが、例えば次のようにすることができる。
上記のようにして形成された負極電極の負極活物質層12側の表面に、固体電解質層13を形成する(ステップS104)。固体電解質層13については、例えば固体電解質材料を含む塗布液を負極電極に塗布することにより形成することができる。塗布方法は任意であるが、負極活物質層12表面の凹凸に倣った凹凸を有する薄膜状の固体電解質層を形成するのに適した公知の塗布方法としては、スピンコート法やスプレーコート法などがある。また、例えばノズルスキャン法やナイフコート法により、負極活物質層12表面の凹凸を覆い隠すような固体電解質層を形成してもよい。
この場合の塗布液としては、前記した高分子電解質材料、例えばポリエチレンオキサイドとポリスチレンとの共重合体、支持塩としての例えばLiPF6(六フッ化リン酸リチウム)および溶剤としての例えばジエチレンカーボネートなどを混合したものを用いることができる。
続いて、こうして形成された固体電解質層13の表面に正極活物質層14を形成する(ステップS105)。その形成方法も特に限定されないが、例えば負極活物質層と同様に、正極活物質材料を含む塗布液の塗布によることができる。塗布方法としては、ノズルスキャン法、ナイフコート法およびバーコート法などを用いることができる。
正極活物質を含む塗布液としては、例えば、前記した正極活物質と、導電助剤としての例えばアセチレンブラック、結着剤としてのSBR、分散剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)および溶剤としての純水などを混合した水系LCO材料を用いることができる。正極活物質材料としては、上記したLCOの他、LiNiO2またはLiFePO4、LiMnPO4、LiMn2O4、またLiMeO2(Me=MxMyMz;Me、Mは遷移金属、x+y+z=1)で代表的に示される化合物、例えばLiNi1/3Mn1/3Co1/3O2、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2などを用いることができる。
さらに、こうして形成された正極活物質層14の上面に金属箔、例えばアルミニウム箔を積層して正極集電体層15を形成する(ステップS106)。このとき、先のステップS105で形成された正極活物質層14が硬化しないうちに、その上面に正極集電体15を重ねることが望ましい。こうすることで、正極活物質層14と正極集電体15とを互いに密着させて接合することができる。また正極活物質層14の上面は平らに均されているので、正極集電体15を隙間なく積層することが容易となっている。
この時点では、負極活物質層12については加圧により高密度化されているものの、正極活物質層14については塗布直後の低密度の状態のままである。そこで、正極活物質層14についても高密度化すべく加圧を行うが、負極活物質層12は既に加圧により圧縮され、しかもその表面を覆って固体電解質層13および正極活物質層14が形成されているため、ここでの加圧によってパターン形状が崩れるおそれは低い。したがって、正極活物質層14の加圧については、公知の加圧技術、例えばロールプレス技術を適用することができる(ステップS107)。もちろん加圧ユニット4により加圧を行ってもよい。
以上のようにして製造されるリチウムイオン二次電池モジュール1は、前記した通り、薄型で折り曲げ容易であり、電気化学特性の良好なものである。特に、正負の活物質層が加圧により高密度化されており、小さい体積で高容量の電池を構成することができる。
そして、このモジュールを用いて構成される電池は有機溶剤を含まない全固体電池であり、取り扱いが容易であるとともに、小型で優れた性能を有するものである。このような電池は、電気自動車、電動アシスト自転車、電動工具、ロボットなどの機械類や、パーソナルコンピュータ、携帯電話や携帯型音楽プレイヤー、デジタルカメラやビデオカメラなどのモバイル機器、スマートICカード、ゲーム機、ポータブル型の測定機器、通信機器や玩具など各種の電子機器に使用することが可能である。
以上説明したように、この実施形態では、高圧チャンバ41が本発明の「チャンバ」として機能しており、アルゴンガス供給源43と制御弁431とが一体として本発明の「加圧手段」として機能している。また、この実施形態では、高圧アルゴンガスが本発明の「高圧流体」に相当している。また、この実施形態では、塗布ユニット3が本発明の「塗布手段」として機能している。
また、この実施形態の電極形成処理(図4)におけるステップS201ないしS202が本発明の「活物質層形成工程」に相当する一方、ステップS205が本発明の「加圧工程」に相当している。また、ステップS204が本発明の「乾燥工程」に相当している。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、負極活物質材料を含む塗布液を負極集電体11に塗布した後、乾燥のための減圧およびパターン収縮のための加圧をこの順にそれぞれ1回ずつ行っているが、これに限定されず、例えば次のようにしてもよい。
図8は電極形成処理における減圧・加圧プロセスの例を示す図である。横軸を時刻、縦軸を加圧チャンバ41内の圧力としてチャンバ内圧力の変化を表すと、上記実施形態では、図8に実線で示すように、ワーク搬入時の大気圧からこれより低圧の圧力P1までいったん減圧されて塗布液の減圧乾燥が行われる。その後、チャンバ内圧が大気圧よりも高圧の圧力P2まで上昇し、この状態が一定期間維持されて負極活物質層に対する加圧処理が行われた後、圧力が解放されて大気圧に戻る。
これに対して、図8に破線で示すように、加圧後にチャンバ内圧をいったん圧力P3まで減圧してから再び加圧する、というプロセスを1回または複数回繰り返すようにしてもよい。塗布液(負極活物質層)に対する加圧工程と減圧工程とを交互に行うことによって、内部に残留する空隙や気泡などをより確実に押し潰し、活物質層のさらなる高密度化を図ることが可能となる。この場合において、加圧後の減圧時におけるチャンバ内圧P3については、負極活物質層に対して十分な圧力変化を与えることができれば足り、特に大気圧と関連付けて設定する必要はない。すなわち、このときの圧力P3は、大気圧と同等、これよりも高圧、低圧のいずれであってもよい。また、加圧時のチャンバ内圧P2については、繰り返しの度ごとに同じ圧力とする必然性はなく、例えば後工程ほど圧力を高めるようにしてもよい。
また、上記実施形態では、負極集電体層12を加圧する前に減圧乾燥により塗布液の乾燥を行っているが、この工程は必須のものではない。例えば、塗布液が十分乾燥した状態でワークが加圧ユニット4へ搬入される場合には、この工程を省略することができる。この場合、加圧前に加圧チャンバ41内の酸素を不活性ガスによりパージする工程を加えてもよい。
また、乾燥工程は減圧によるものに限定されず、例えばワークWをホットプレートに載置し加熱乾燥を行ってもよい。この場合、塗布ユニット3または加圧ユニット4に設けられたワーク載置用のステージをホットプレートとして使用することも可能である。
また、上記実施形態では、高圧チャンバ41に導入する高圧流体として加圧されたアルゴンガスを使用しているが、高圧流体はこれに限定されず、例えば乾燥空気や各種の不活性ガスを用いることが可能である。ただし、乾燥空気や、常温常圧では不活性ガスとして扱われる窒素ガスについては、高圧下では電極を構成する材料と化学反応を起こし変質させてしまう可能性があるため、高圧流体のガス種としては希ガスが望ましい。
また、加圧された液体を高圧流体として用いてもよいが、この場合、液体が電極材料を溶解させる成分を含まないことが必要であり、また加圧終了後のワークからの液体の除去についても考慮する必要がある。
また、上記実施形態では、本発明にかかる製造方法によりまず負極電極を製造し、これを用いて電池の製造を行っているが、これに代えて、正極電極を本発明の製造方法により形成し、これに他の機能層を積層することで電池を製造してもよい。また、正極電極、負極電極のそれぞれを本発明の製造方法により製造し、これらを電解質層を介して対向させることで電池を製造するようにしてもよい。
また、上記実施形態の説明に用いた各機能層の塗布方法はその例を示したものに過ぎず、本発明にかかる電極および電池の製造方法がこれらの塗布方法によるものに限定されるものではない。また、固体電解質層および正極活物質層については塗布により形成されるものに限定されない。
また、上記実施形態で例示した集電体、活物質、電解質等の材料はその一例を示したものであってこれに限定されず、リチウムイオン電池の構成材料として用いられる他の材料を使用してリチウムイオン電池を製造する場合においても、本発明の製造方法を好適に適用することが可能である。また、リチウムイオン電池に限らず、他の材料を用いた化学電池全般の製造に本発明を適用することが可能である。
この発明は、リチウムイオン二次電池のような化学電池用電極および該電極を含む電池を製造する技術に特に好適に適用することができる。
3 塗布ユニット(塗布手段)
4 加圧ユニット
11 負極集電体
12 負極活物質層
13 電解質層
14 正極活物質層
15 正極集電体
41 高圧チャンバ(チャンバ)
43 アルゴンガス供給源(加圧手段)
431 制御弁(加圧手段)
S201〜S202 活物質層形成工程
S205 加圧工程
S204 乾燥工程
4 加圧ユニット
11 負極集電体
12 負極活物質層
13 電解質層
14 正極活物質層
15 正極集電体
41 高圧チャンバ(チャンバ)
43 アルゴンガス供給源(加圧手段)
431 制御弁(加圧手段)
S201〜S202 活物質層形成工程
S205 加圧工程
S204 乾燥工程
Claims (10)
- 集電体の表面に、該集電体に接する面と異なる表面が凹凸形状を有する活物質層を形成する活物質層形成工程と、
前記活物質層の表面を大気圧よりも高圧の高圧流体によって加圧する加圧工程と
を備えることを特徴とする電極の製造方法。 - 前記加圧工程では、前記集電体に前記活物質層が形成されてなる積層体をチャンバの内部空間で保持するとともに、該チャンバの内部空間を前記高圧流体で満たすことで前記活物質層の表面を加圧する請求項1に記載の電極の製造方法。
- 前記高圧流体は不活性ガスである請求項1または2に記載の電極の製造方法。
- 前記活物質層形成工程では、活物質材料を含む塗布液を前記集電体層の表面に部分的に塗布して前記活物質層を形成する請求項1ないし3のいずれかに記載の電極の製造方法。
- 前記活物質層形成工程の後、前記加圧工程の前に、前記集電体に塗布された前記塗布液を乾燥させる乾燥工程を備える請求項4に記載の電極の製造方法。
- 前記乾燥工程では、前記集電体に塗布された前記塗布液の周囲雰囲気を塗布時の気圧よりも低い気圧に減圧する請求項5に記載の電極の製造方法。
- 前記加圧工程と、前記加圧工程の後に前記活物質層の表面に加わる圧力を低減させる減圧工程とを、交互に複数回実行する請求項1ないし6のいずれかに記載の電極の製造方法。
- 集電体の表面に活物質層が形成されてなる積層体を収容可能な内部空間を有するチャンバと、
高圧流体により前記チャンバの内部空間の圧力を大気圧よりも増大させる加圧手段と
を備えることを特徴とする電極製造装置。 - 前記加圧手段は、前記積層体を収容した前記チャンバの内部空間に前記高圧流体を導入する請求項8に記載の電極製造装置。
- 前記集電体の表面に前記活物質層の材料物質を含む塗布液を塗布する塗布手段を備える請求項8または9に記載の電極製造装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2010211643A JP2012069310A (ja) | 2010-09-22 | 2010-09-22 | 電極の製造方法および電極製造装置 |
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JP2010211643A JP2012069310A (ja) | 2010-09-22 | 2010-09-22 | 電極の製造方法および電極製造装置 |
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JP (1) | JP2012069310A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2018014249A (ja) * | 2016-07-21 | 2018-01-25 | 日産自動車株式会社 | 電極の製造方法 |
-
2010
- 2010-09-22 JP JP2010211643A patent/JP2012069310A/ja not_active Withdrawn
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2018014249A (ja) * | 2016-07-21 | 2018-01-25 | 日産自動車株式会社 | 電極の製造方法 |
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