JP2012065625A - 魚類仔魚の光波長制御飼育方法 - Google Patents

魚類仔魚の光波長制御飼育方法 Download PDF

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泰典 石橋
Yoshiteru Tsutsumi
吉輝 堤
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Abstract

【課題】難種苗生産魚種仔魚の摂餌環境を改善して生残率を向上させる。
【解決手段】難種苗生産魚種の仔魚を感受性の高い波長のLED光(マグロ類仔魚は、主波長として460〜610nmの緑色を含むLED光;ブリ類仔魚は、主波長として530〜750nmの赤色を含むLED光)で飼育する。
【選択図】なし

Description

本発明は、魚類仔魚の光波長制御飼育方法に関する。
マグロ類、ブリ類、ハタ類等は難種苗生産魚種と称され、それらの養殖における発生初期の飼育が困難で、産業規模の大量生産がなされていない。例えば、従来方式では、成功例でも20t水槽に10万尾程度の卵を収容し、飼育10日目で0.5〜3万尾程度(生残率5〜30%)の仔魚が生産されるにすぎなかった。これらの魚種では、発生初期の摂餌が飼育環境よって大きく変化することが知られており、大量生産のためには、摂餌環境の改善が必要である。
一方、魚類の摂餌には、色調や光が影響することが知られており、特許文献1には、魚類の養殖における摂餌性を向上させるために、飼料に青色系、白色系の摂餌を誘引する色とすることが提案されている。また、特許文献2には、マグロの摂餌行動を誘引するために、飼料に490〜640nmを主波長とする光を反射または発する領域の色で飼料を着色することが提案されている。
特開2005−052030号公報 特開2009−207407号公報
本発明は、難種苗生産魚種の、特に発生初期の摂餌環境を改善した、産業規模の大量生産可能な飼育方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するため、クロマグロやカンパチの光受容感覚を調べ、摂餌に及ぼす影響を調べたところ、マグロ類では緑色、ブリ類では赤色に感受性が高く、その環境で生残率の高くなる傾向を示すことが判明し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)難種苗生産魚種の仔魚を、感受性の高い波長のLED光で飼育することを特徴とする魚類仔稚魚の光波長制御飼育方法;
(2)マグロ類仔魚を、主波長として460〜610nmの緑色を含むLED光で飼育する上記(1)記載の方法;および
(3)ブリ類仔魚を、主波長として530〜750nmの赤色を含むLED光で飼育する上記(1)記載の方法;
を提供するものである。
植物では特定色のLED光を用いた栽培がなされているが、魚類でも発育初期には魚種によって色の感受性が異なることから、感受性の高い特定のLED光を使用することにより、難種苗生産魚種の生産性を高めることが可能である。
光情報は、青、緑、赤色等の視細胞によって認知され、色覚が生じる。本発明者らは、クロマグロ仔魚の視細胞を調べた結果、飼育10日目頃までは主に緑色の視細胞のみが発達しており、単色光で物を認識していることを見出した。単色の光しか認識していなければ、他の波長の光はあまり感知していないことになる。多くの海産魚種では、発育初期に単色の光しか認識していない可能性が高い。したがって、魚種の視覚特性に応じた青、緑、赤色等のLED光で仔魚を飼育すれば、摂餌や成長に効果が期待される。
本発明の魚類仔稚魚の光波長制御飼育方法は、マグロ類、ブリ類、ハタ類等の難種苗生産魚種の仔魚を、それが認識できる単色の光を主波長として含むLED光で照射し、飼育するものである。飼育自体は、公知の光照射飼育方法と同様に行うことができ、光源としては、所定の波長の公知の商業的に入手できるLEDを用いることができる。
例えば、マグロ類仔魚は、主波長として460〜610nmの緑色を含むLED光で飼育する。また、ブリ類仔魚は、主波長として530〜750nmの赤色を含むLED光で飼育する。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
仔魚期の初期には、視覚が十分に発達していないことから、飼育光源の波長が魚の生残率等に影響する可能性が高い。しかし、仔魚期の光源波長の影響を詳細に調べた報告はほとんどみられない。そこで、各種光源波長の下でクロマグロ仔魚を飼育し、摂餌量、成長、生残率等に及ぼす影響を検討した。
実験I
3〜9日令の仔魚を、遮光室内で460nmの青色、530nmの緑色、630nmの赤色、450〜680nmの白色光をそれぞれ照射した8L容水槽に4.5時間放置し、腸管ワムシ数を測定した。各試験区の水槽には、側線感覚細胞を閉塞するストレプトマイシン硫酸塩を予め投与した。
その結果、白色および緑色区の仔魚の摂餌量は、他の色のそれよりも増加する傾向を示した。
実験II
卵を上記と同波長の青色、緑色、赤色および白色光をそれぞれ照射した遮光室内の200L水槽に収容し、生残率、成長、腸管ワムシ数等を調べた。
結果を表1に示す。
Figure 2012065625
表1に示すごとく、飼育期間中の平均摂餌量は、白色および緑色区の仔魚で高い値を示した。また、試験終了時の全長は、白色および緑色区の仔魚で高く、青色および赤色区のそれよりも顕著に増加した。さらに、生残率は、緑色区の仔魚が最も高くなった。
実験III
卵を上記と同波長の緑色および白色光をそれぞれ照射した200L水槽に収容し、生残率、成長、腸管ワムシ数等を測定した。ただし、各水槽を遮光するシートを除き、低照度の蛍光灯が設置された室内で実験した。
結果を表2に示す。
Figure 2012065625
表2に示すごとく、緑色および白色区の飼育期間中の平均摂餌量はほぼ同等の値を示した。一方、試験終了時の体長は白色区が緑色区よりも若干優れたが、生残率は逆の傾向を示し、平均値で10%程度の違いが見られた。
以上の結果、赤色光と青色光の環境下では仔魚の摂餌量が減り、成長や生残率が低下すること、緑色光源は、白色と同等か、それ以上の効果を示すことが示唆された。
また、クロマグロやカンパチの仔魚を白、青、緑および赤色のLED下で飼育し、成長、生残率、摂餌量等に及ぼす影響を調べたところ、マグロ類では緑色、ブリ類では赤色に感受性が高く、その環境で摂餌率、成長、生残率の高くなることが示された。
仔魚期の初期には、視覚が十分に発達していないことから、飼育光源の波長が魚の生残率等に影響する可能性が高い。しかし、仔魚期の光源波長の影響を詳細に調べた報告はほとんどみられない。そこで、各種光源波長の下でカンパチ仔魚を飼育し、摂餌量、成長、生残率等に及ぼす影響を検討した。
実験I
0〜7日令の仔魚を、遮光室内で460nmの青色、530nmの緑色、630nmの赤色、450〜680nmの白色光をそれぞれ照射した遮光室内の200L水槽に収容し、生残率、成長、腸管ワムシ数等を調べた。
その結果,飼育期間中の平均摂餌量は、赤色区の仔魚で高くなる傾向を示した。また、試験終了時の生残率は、赤色区の仔魚が他の試験区よりも全ての期間で高くなった。
結果を表3に示す。
Figure 2012065625
以上の結果、緑色光と青色光の環境下では仔魚の摂餌量が減り、成長や生残率が低下すること、赤色光源は、白色と同等か、それ以上の効果を示すことが示唆された。
また、クロマグロやカンパチの仔魚を白、青、緑および赤色のLED下で飼育し、成長、生残率、摂餌量等に及ぼす影響を調べたところ、マグロ類では緑色、ブリ類では赤色に感受性が高く、その環境で摂餌率、成長、生残率の高くなることが示された。
以上記載したごとく、難種苗生産魚種の仔魚を感受性の高い波長のLED光で飼育することにより、難種苗生産魚種の仔魚の生産性を高めることができ、産業規模の大量生産が可能となる。

Claims (3)

  1. 難種苗生産魚種の仔魚を感受性の高い波長のLED光で飼育することを特徴とする魚類仔稚魚の光波長成制御飼育方法。
  2. マグロ類仔魚を、主波長として460〜610nmの緑色を含むLED光で飼育する請求項1記載の方法。
  3. ブリ類仔魚を、主波長として530〜750nmの赤色を含むLED光で飼育する請求項1記載の方法。
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