JP2012058370A - 音響調整支援方法、音響調整支援装置、およびプログラム - Google Patents

音響調整支援方法、音響調整支援装置、およびプログラム Download PDF

Info

Publication number
JP2012058370A
JP2012058370A JP2010199709A JP2010199709A JP2012058370A JP 2012058370 A JP2012058370 A JP 2012058370A JP 2010199709 A JP2010199709 A JP 2010199709A JP 2010199709 A JP2010199709 A JP 2010199709A JP 2012058370 A JP2012058370 A JP 2012058370A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
speaker
influence
acoustic
frequency response
difference
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2010199709A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5671894B2 (ja
Inventor
Takayuki Watanabe
隆行 渡辺
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Yamaha Corp
Original Assignee
Yamaha Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Yamaha Corp filed Critical Yamaha Corp
Priority to JP2010199709A priority Critical patent/JP5671894B2/ja
Publication of JP2012058370A publication Critical patent/JP2012058370A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5671894B2 publication Critical patent/JP5671894B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Circuit For Audible Band Transducer (AREA)

Abstract


【課題】音響調整において空間影響成分と位置影響成分の各々を別個独立に把握し、各々を定量的に調整することを可能にする。
【解決手段】音響システムに含まれるスピーカを音響空間の音の反射面から遠ざけてその音響空間内に配置し、当該スピーカから放射される音のサービスエリア内の遠方の複数の位置にマイクロホンを配置してインパルス応答を計測する。そして、それらインパルス応答から算出される各周波数応答の平均と予め定められた目標特性との差分から空間影響成分を特定する。次いで、当該スピーカを本来の設置位置に配置し、そのサービスエリア内の遠方の複数の位置にマイクロホンを配置してインパルス応答を計測する。そして、それらインパルス応答から算出される周波数応答の平均と上記目標特性との差分から位置影響成分を特定する。
【選択図】図4

Description

本発明は、コンサートホールなどの音響空間に設置されるスピーカから放射される音の調整を支援する技術に関する。
劇場や映画館、コンサートホールなどでは、台詞や劇伴音楽、歌唱音声や楽器の演奏音などをスピーカによって拡声し観客席に向けて放射することが一般に行われている。このような場合に、スピーカから放射される音に音響空間の共鳴周波数に対応する周波数成分が多く含まれていると、共鳴現象が発生し、台詞や楽音等が聴き取り難くなることがある。そこで、音響空間内に設置されるスピーカの前段にノッチフィルタなどの各種フィルタを設け、スピーカに与えるオーディオ信号から共鳴現象を引き起こす特定の周波数成分をフィルタ処理によって電気的に除去しておくことが一般に行われている。また、音響空間を区画する各面(壁や天井など)で反射して観客席へ到来する反射音の特性によっては、低音域の音が増大、減少するなどの不具合が生じる場合がある。このため、低音域の音の増大や減少などの不具合を引き起こす周波数成分の強度を上記フィルタ処理によって予め調整しておく、といったことも行われる。
上記各種フィルタ処理を適切に実現するには、スピーカの前段に配置されるフィルタに適切なフィルタ係数を設定しておくなどその設定を適切に調整しておく必要がある。例えば、特定周波数成分の除去をノッチフィルタにより実現する態様においては、以下の要領で算出したフィルタ係数を設定しておくのである。すなわち、上記特定周波数に応じてディップの位置を示す中心周波数を定めるとともに、当該ディップにおける減衰レベルおよび減衰の急峻さを示すQ値等を上記特定周波数成分の強度等に応じて定め、これら中心周波数、減衰レベルおよびQ値をフィルタ処理を規定するパラメータとして上記フィルタ係数を算出するのである。以下、スピーカの前段に設けられるフィルタの設定を適宜調整して当該スピーカから放射される音の音響空間内における周波数応答を調整することを「音響調整」と呼ぶ。
このような音響調整は、スピーカを音響空間に設置する際に専門技術者である音響技術者によって行われることが一般的である。従来、音響調整は、スピーカから放射される音の聴感を頼りに音響技術者のカンや経験に基づいて試行錯誤的に行われることが多かった。しかし、このような態様では、調整結果が音響技術者の技量や感性、体調などに大きく依存する、といった不具合がある。そこで、音響調整を客観的かつ定量的に行うことを可能にする技術が種々提案されており、その一例としては特許文献1〜6に開示されたものが挙げられる。これら特許文献1〜6に開示された技術では、概ね以下の要領で音響調整が実現される。まず、音響空間内に設置したスピーカに所定の入力信号(例えば、インパルス信号)を与えて音を放射させるとともに、当該音を同音響空間に設置されたマイクロホンに収音させる。そして、上記マイクロホンの出力信号にFFTを施して得られる周波数応答(振幅特性または位相特性)と、入力信号に応じた音として観客に聴かせるべき音についての周波数応答(以下、目標特性)との差分を求め、両者の差分が解消されるように音響調整を行うのである。
特許3901648号 特許3920233号 特開2008−252932号公報 特許2530474号 特許2530475号 特許2571091号
特許文献1〜6に開示された技術により求まる差分には、音響空間の広さや形状、当該音響空間の音の反射面の吸音特性など、音響空間全体の空間的特徴に起因した影響を反映した空間影響成分と、スピーカの設置位置近傍の局所的な特徴(例えば、壁の近くに設置されるのであれば、その設置位置近傍の壁の形状や表面の材質、仕上げなど)に起因した影響を反映した位置影響成分とが含まれている。空間影響成分と位置影響成分とは本来別個独立なものであるから、音響調整を行う際には、両者を別個独立に把握し、それら成分毎に別個独立に調整することが音響調整の方法として望ましい。何故ならば、音響空間内のある位置に設置されたスピーカについての音響調整を空間影響成分および位置影響成分の各々に関して別個独立に行うことができれば、例えば、スピーカの設置位置周辺の状況のみに変更が生じたとしたならば、位置影響成分についてのみ再調整を行えば良いからである。同様に、スピーカの設置位置近傍の状況は大きく変化せず、音響空間の空間的な特徴のみが変化したとしたならば、空間影響成分についてのみ再調整を行えば良い。なお、スピーカの設置位置近傍の特徴は大きく変化せず、音響空間の空間的な特徴のみが変化する場合の一例としては、例えば可動式の舞台反射板を有する多目的ホール等の音響空間において、舞台反射板の一部(正面反射板など)を設置した状態で音響調整を行う公演と、同じ音響設備を使用して、スピーカの設置位置は変更せず当該舞台反射板を撤去して幕設備を設置した状態で再度音響調整を行う公演とがある場合(具体的には、オーケストラ演奏と楽曲の解説等を題材とする公演と、通常の幕設備で音響設備を使用するスピーチ主体の公演とを行う場合など)が挙げられる。このように、音響調整の方法としては、空間影響成分および位置影響成分の各々を別個独立に把握し、それら成分毎に別個独立に調整することが望ましいのであるが、特許文献1〜6に開示された技術では、空間影響成分と位置影響成分とを一体のものとして捉えており、両者を別個独立に求めることはできない。
本発明は上記課題に鑑みて為されたものであり、音響調整において空間影響成分と位置影響成分を別個独立に把握し、各々を定量的に調整することを可能にする技術を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、音響空間内の所定の位置に設置されるスピーカの前段に配置されるフィルタの設定を調整し、前記スピーカから放射される音の前記音響空間内での周波数応答を調整する音響調整支援方法であって、前記音響空間の音の反射面から遠ざけて前記スピーカを前記音響空間内に保持してそのサービスエリア内の遠方に配置したマイクロホンにより当該スピーカについての前記反射面の影響を含んだ周波数応答を計測し、計測された周波数応答と前記反射面の影響を含んでいない前記スピーカの周波数応答である目標特性との差分のうち、前記スピーカに与えた入力信号と前記マイクロホンの出力信号との相関が高い周波数帯域における差分を、前記音響空間全体の空間的特徴に起因した影響を反映した空間影響成分として特定する空間影響成分特定ステップと、前記スピーカを前記所定の位置に設置してそのサービスエリア内において遠方または近隣に配置したマイクロホンにより当該スピーカについてその設置位置近傍の反射面の影響を含んだ周波数応答を計測し、当該周波数応答と前記目標特性との差分のうち、前記スピーカに与えた入力信号と前記マイクロホンの出力信号との相関が高い周波数帯域における差分を、前記設置位置近傍の局所的な状況に起因した影響を反映した位置影響成分として特定する位置影響成分特定ステップと、前記空間影響成分と前記位置影響成分の少なくとも一方が解消されるように前記フィルタの設定を調整するフィルタ設定調整ステップとを有することを特徴とする音響調整支援方法、を提供する。
また、上記課題を解決するために本発明は、音響空間内の所定の位置に設置されるスピーカの前段に配置されるフィルタの設定を調整し、前記スピーカから放射される音の前記音響空間内での周波数応答を調整することを支援する音響調整支援装置であって、前記音響空間の音の反射面から遠ざけて保持された前記スピーカに入力信号を与え、そのサービスエリア内において遠方に配置したマイクロホンの出力信号から当該スピーカについての前記反射面の影響を含んだ周波数応答を算出するとともに、当該周波数応答と前記反射面の影響を含んでいない前記スピーカの周波数応答である目標特性との差分を算出する処理と、当該差分のうちで前記スピーカに与えた入力信号と前記マイクロホンの出力信号との相関が高い周波数帯域における差分を、前記音響空間全体の空間的特徴に起因した影響を反映した空間影響成分として利用者が特定することを支援する処理とを実行する空間影響成分特定支援手段と、前記所定の位置に設置された前記スピーカに入力信号を与え、そのサービスエリア内において遠方または近隣に配置したマイクロホンの出力信号から当該スピーカについてその設置位置近傍の反射面の影響を含んだ周波数応答を算出するとともに、当該周波数応答と前記目標特性との差分を算出し、当該差分のうちから前記スピーカに与えた入力信号と前記マイクロホンの出力信号との相関が高い周波数帯域における差分を、前記スピーカの設置位置近傍の局所的な状況に起因した影響を反映した位置影響成分として利用者が特定することを支援する処理とを実行する位置影響成分特定手段と、前記空間影響成分と前記位置影響成分の少なくとも一方が解消されるように前記フィルタの設定を調整するフィルタ設定調整手段とを有することを特徴とする音響調整支援装置、を提供する。なお、本発明の別の態様としては、コンピュータを上記各手段として機能させるプログラムを、CD−ROM(Compact Disk-Read Only Memory)などのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に書き込んで配布したり、インターネットなどの電気通信回線経由のダウンロードにより配布する態様も考えられる。
このような音響調整支援方法および音響調整支援装置によれば音響調整において空間影響成分と位置影響成分を別個独立に把握し、各々を別個独立に定量的に調整することが可能になる。
本発明の一実施形態の音響調整支援装置80を含む音響システム1の構成例を示す図である。 音響空間2におけるスピーカ70−1および70−2の設置位置を説明するための図である。 同音響調整支援装置80の構成例を示すブロック図である。 同音響システム1を用いた音響調整支援方法の手順を示すフローチャートである。 同音響調整方法の目標特性取得ステップSA110における調整対象スピーカとマイクロホン90の配置位置を説明するための図である。 同目標特性取得ステップSA110における調整対象スピーカとマイクロホン90の配置間隔の決め方を説明するための図である。 同音響調整方法の空間影響成分特定ステップSA120における調整対象スピーカとマイクロホン90の配置位置を説明するための図である。 同空間影響成分特定ステップSA120にて得られるインパルス応答の平均と目標特性の対比の仕方を説明するための図である。 同音響調整方法の位置影響成分特定ステップSA130における調整対象スピーカとマイクロホン90の配置位置を説明するための図である。 同位置影響成分特定ステップSA130にて得られるインパルス応答の平均と目標特性の対比の仕方を説明するための図である。 本実施形態の効果を説明するための図である。 本発明の他の実施形態を説明するための図である。 本発明の他の実施形態を説明するための図である。 本発明の他の実施形態を説明するための図である。 本発明の他の実施形態を説明するための図である。 本発明の他の実施形態を説明するための図である。 本発明の他の実施形態を説明するための図である。 本発明の他の実施形態を説明するための図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
(A:第1実施形態)
(A−1:構成)
図1は、この発明の一実施形態の音響調整支援装置80を含む音響システム1の構成例を示す図である。この音響システム1は、コンサートホールなどの音響空間における楽音再生、および、その楽音再生に先立って行われる音響調整を行うためのものである。図1の音源群10には、例えばCD(Compact Disk)ドライブなどの楽音再生装置やステージマイクなどのマイクロホン、音響調整の際に使用する計測用信号であるインパルス信号(或いはホワイトノイズ信号)を発生させるノイズジェネレータなどが含まれる(何れも図示略)。なお、本実施形態では、音響システム1が設置される音響空間がコンサートホールなどの上下、前後および左右を面で区画された閉空間である場合について説明するが、野外音楽堂のような床面だけを有する空間であっても勿論良い。このように床面のみを有する音響空間であってもその床面が音の反射面となるからである。
図1に示す音響システム1においては、音源群10に属する各機器から出力される各オーディオ信号はミキサ20に与えられ、ミキサ20によるミキシングを経て音響調整支援装置80、セレクタ50−1および50−2に与えられる。また、図1のスイッチ30がON状態であれば、ミキサ20から出力されるオーディオ信号はスイッチ30を介してFIR(Finite Impulse Response)フィルタ40にも与えられる。このスイッチ30のON/OFF制御は音響調整支援装置80によって行われる。具体的には、音響調整支援装置80による制御の下、音響システム1を用いて楽音再生を行う場合にはスイッチ30はON状態にされ、音響調整の実行過程ではOFF状態にされる、といった具合である。なお、図1では詳細な図示を省略したが、音源群10から出力されるオーディオ信号がアナログ形式のものである場合には、A/D変換器によるA/D変換を施した後にミキサ20に与えるようにすれば良い。
FIRフィルタ40は例えばDSP(Digital Signal Processor)であり、ミキサ20から与えられるオーディオ信号に特定周波数成分の除去等の調整のためのFIRフィルタ処理を施して各スピーカに与えるオーディオ信号を生成し、出力する。セレクタ50−1および50−2の各々には、FIRフィルタ40から出力されるオーディオ信号とミキサ20から出力されたオーディオ信号とが与えられる。これらセレクタ50−1および50−2の各々は、音響調整支援装置80による制御の下、FIRフィルタ40から出力されたオーディオ信号とミキサ20から出力されたオーディオ信号の何れか一方をアンプ60に出力する。具体的には、音響システム1を用いて楽音等の再生制御を行う場合には、セレクタ50−1および50−2の各々はFIRフィルタ40から与えられるオーディオ信号をアンプ60に出力し、音響調整の実行過程ではミキサ20から与えられるオーディオ信号をアンプ60に出力する。そして、セレクタ50−1および50−2の各々から出力されるオーディオ信号は、アンプ60による増幅を経た後、図示せぬD/A変換器によるD/A変換を経て、スピーカ70−1および70−2の各々に与えられ、音として放射される。なお、本実施形態では、音響調整支援装置80の出力系統がスピーカ70−1と70−2の2系統である場合について説明するが、2系統以外の場合であっても勿論良い。
図1のスピーカ70−1および70−2の各々は指向性を有するスピーカであり、音響空間内の所定の位置に設置される。図2は、音響空間2におけるスピーカ70−1および70−2の各々の設置態様の一例を示す図である。図2に示すように、音響空間2内には、楽音の演奏等が行われるステージ2Aと、観客が着席する観客席群2Bとが設けられている。そして、スピーカ70−1および70−2は、各々のサービスエリア(各スピーカからの直接音が提供される範囲:図2では図示略)によって観客席群2Bが被覆されるように設置される。本実施形態では、ステレオ音像を提供することを目的としているため、観客席群2Bの全体が各スピーカのサービスエリアとなる。スピーカ70−1および70−2は、図2に示すように、各々の指向軸を観客席群2Bの中心Cに向けた状態でステージ2Aの左右の両袖に設置される。この音響システム1においてはFIRフィルタ40に与えるフィルタ係数を適宜調整しておくことで音響調整が完了した楽音再生が実現される。図1の音響調整支援装置80は、例えばパーソナルコンピュータであり、スイッチ30のON/OFF制御、セレクタ50−1および50−2の切り換え制御の他に、ミキサ20やFIRフィルタ40、アンプ60の作動制御を行う。具体的には、音響調整支援装置80は、音響技術者によって与えられる指示に応じて、ミキサ20におけるミキシング比率を調整する処理、FIRフィルタ40に与えるフィルタ係数を算出しその設定を行う処理、およびアンプ60にゲインを設定する処理などを実行する。
本実施形態の音響システム1においては、図1に示すように音響調整支援装置80にはマイクロホン90がさらに接続されている。このマイクロホン90は音響調整支援装置80を用いて音響調整を行う際に利用される。より詳細に説明すると、本実施形態における音響調整では、スイッチ30をOFFにし、さらにミキサ20から与えられるオーディオ信号をスピーカに出力するようにセレクタ50−1および50−2の切り換えを行った後に、音源群10に含まれるノイズジェネレータにインパルス信号を発生させ、このインパルス信号をスピーカ70−1(或いはスピーカ70−2)に与え、このインパルス信号に応じた音を放射させる。このようにしてスピーカ70−1(或いは70−2)から音響空間2内に放射された音はマイクロホン90によって収音される。音響調整支援装置80は、マイクロホン90の出力信号から求めた周波数応答と、上記インパルス信号に応じた音として観客席群2Bにおいて聴取されるべき音についての目標周波数応答(すなわち、目標とする振幅特性または位相特性)との差分を算出し、当該差分が解消されるように上記フィルタ係数を算出してFIRフィルタ40に設定する。これにより音響調整が実現されるのである。なお、以下では、周波数応答として振幅特性を用いる場合について説明する。
図3は、音響調整支援装置80の構成例を示すブロック図である。図3に示すように、音響調整支援装置80は、制御部810、外部機器インタフェース(以下、I/Fと略記)群820、操作部830、表示部840、記憶部850、およびこれら各構成要素間のデータ授受を仲介するバス860を含んでいる。制御部810は、例えばCPU(Central Processing Unit)であり、音響調整支援装置80の制御中枢として機能する。外部機器I/F群820は、USB(Universal Serial Bus)インタフェースやNIC(Network
Interface Card)など外部機器とのデータ授受を行うためのインタフェース装置の集合体である。ミキサ20、スイッチ30、FIRフィルタ40、アンプ60、マイクロホン90、セレクタ50−1および50−2の各々は外部機器I/F群820に含まれる複数のインタフェース装置のうちの適切なものに接続される。操作部830と表示部840は、音響技術者など音響調整支援装置80の利用者に対して各種ユーザインタフェースを提供するためのものである。より詳細に説明すると、操作部830は例えばキーボードであり、複数の操作子を含んでいる。操作部830は、それら操作子に対して為された操作の内容を示すデータを制御部810に引渡す。これにより利用者の行った操作内容が制御部810に伝達される。表示部840は、例えば液晶ディスプレイとその駆動回路(何れも図示略)である。この表示部840には、制御部810による制御の下、音響調整支援装置80の利用を促す各種画面が表示される。
記憶部850は、揮発性記憶部852と不揮発性記憶部854を含んでいる。揮発性記憶部852は例えばRAM(Random Access Memory)であり、各種プログラムを実行する際のワークエリアとして制御部810によって利用される。一方、不揮発性記憶部854は、ハードディスクである。この不揮発性記憶部854には、OS(Operating System)を制御部810に実現させるためのカーネルプログラム(図示略)の他に音響調整支援プログラムが予め格納されている。この音響調整支援プログラムは、音響技術者による音響調整の実行を支援する処理を制御部810に実行させるためのプログラムである。
音響調整支援装置80の電源(図示略)が投入されると、制御部810は、まず、カーネルプログラムを不揮発性記憶部854から揮発性記憶部852に読出し、その実行を開始する。このカーネルプログラムにしたがってOSを実現している状態の制御部810は、操作部830を介して与えられる指示に応じて他のプログラムを実行する。例えば、音響調整支援プログラムの実行指示が操作部830を介して与えられた場合には、制御部810は、音響調整支援プログラムを不揮発性記憶部854から揮発性記憶部852へ読出し、その実行を開始する。この音響調整支援プログラムにしたがって作動している制御部810は、操作部830を介して与えられる指示に応じて、目標特性取得支援処理、空間影響成分特定支援処理、位置影響成分特定支援処理、およびフィルタ係数算出処理の4つの処理を実行する。これら4つの処理の詳細については重複を避けるために本実施形態における音響調整の具体的な方法の説明において明らかにするが、概略は以下の通りである。
目標特性取得支援処理は、目標特性を表わす周波数応答(本実施形態では、振幅特性)の取得を支援する処理である。空間影響成分特定支援処理は、音響技術者による空間影響成分の特定を支援する処理である。前述したように、空間影響成分とは、インパルス信号を与えられた調整対象スピーカ(本実施形態では、スピーカ70−1或いはスピーカ70−2)から放射される音をそのサービスエリアにおいてマイクロホン90により収音して得られるオーディオ信号(マイクロホン90の出力信号)の周波数応答と目標特性との差分のうち、音響空間2の空間的特徴に起因した影響を反映した差分のことである。位置影響成分特定支援処理は、音響技術者による位置影響成分の特定を支援する処理である。前述したように、位置影響成分とは、マイクロホン90の出力信号の周波数応答と目標特性との差分のうち、調整対象スピーカの設置位置近傍の影響を反映した差分のことである。そして、フィルタ係数算出処理は、上記空間影響成分および位置影響成分を個別に解消するようなフィルタ係数を算出し、FIRフィルタ40に設定する処理である。
以上が音響システム1の構成である。
(A−2:本実施形態における音響調整の具体的な実行手順)
次いで、音響システム1を用いた音響調整方法の具体的な実行手順について説明する。
図4は、本実施形態の音響調整方法の手順を示すフローチャートである。図4に示すように、本実施形態の音響調整方法は、目標特性取得ステップSA110、空間影響成分特定ステップSA120、位置影響成分特定ステップSA130、フィルタ係数算出ステップSA140の4つのステップにより構成されている。これら4つのステップのうち、目標特性取得ステップSA110、空間影響成分特定ステップSA120、および位置影響成分特定ステップSA130は、調整対象のスピーカ毎に実行される。以下、スピーカ70−1を調整対象スピーカとした場合を例にとって、図4に示す4つのステップの詳細を説明する。
目標特性取得ステップSA110は、前述した目標特性を取得するステップである。
本実施形態では、調整対象スピーカ本来の周波数応答(すなわち、空間影響成分を含まず、かつ位置影響成分も含まないスピーカが固有に持っている周波数応答)を目標特性とする。これは、調整対象スピーカが固有に有している本来の音響特性で観客席群2Bにおいて楽音等を聴き取れるようにすることを意図しているからである。目標特性取得ステップSA110では、音響技術者は、調整対象スピーカ(すなわち、スピーカ70−1)とマイクロホン90とを音響空間2内の所定の位置に配置し、操作部830を操作して目標特性取得支援処理の実行指示を入力する。なお、目標特性取得ステップSA110における調整対象スピーカおよびマイクロホン90の配置位置については後に詳細に説明する。
操作部830を介して上記実行指示を受け取った制御部810は、目標特性取得支援処理を実行する。制御部810は、まず、スイッチ30をOFFに切り換えるとともに、ミキサ20の出力信号がアンプ60に出力されるようにセレクタ50−1および50−2を切り換え、その後、インパルス信号を出力するように音源群10のノイズジェネレータの作動制御を行う。すると、上記インパルス信号が音としてスピーカ70−1から放射され、この音はインパルス応答としてマイクロホン90によって収音される。制御部810は、マイクロホン90の出力信号を外部機器I/F群820を介して受け取り、当該出力信号(インパルス応答)にFFTを施して周波数応答に変換する。この周波数応答に基づいて目標特性が算出されるのである。
さて、本実施形態の音響調整方法の第1の特徴は、目標特性取得ステップSA110における調整対象スピーカ(本動作例では、スピーカ70−1)とマイクロホン90の音響空間2内における配置態様にある。図5は、目標特性取得ステップSA110における調整対象スピーカとマイクロホン90の配置態様の一例を示す図である。より詳細に説明すると、図5(A)は、同音響空間2を左側から見た透視図であり、図5(B)は同音響空間2を上方から見た透視図である。図5(A)および図5(B)を参照すれば明らかように、目標特性取得ステップSA110では、調整対象スピーカは音響空間2の上下および前後左右の何れの方向の面からの反射音も無視し得る程度にこれら各面から遠ざけて(すなわち、前記音響空間における各反射面からの反射音を無視し得る程度にそれら各面から遠ざけて)音響空間2の上方の面から吊り下げられた中空状態で保持される。なお、本実施形態では、音響空間2の上方の面から吊り下げることにより調整対象スピーカを中空状態に保持したが、脚立等を用い持上げることにより中空状態に保持する態様であっても勿論良い。ここで、調整対象スピーカを音響空間2の各面からどの程度遠ざけるのかについては、各面からの反射音を計測しつつ、それら反射音が十分に小さくなるような距離を適宜実験を行って定めるようにすれば良い。一方、マイクロホン90は、調整対象スピーカと同一水平面上(同軸上)において所定の距離L1を隔てた位置に配置される。
上記所定の距離L1については、調整対象スピーカを点音源と看做せる距離以上であって、かつ調整対象スピーカから放射された直接音の音量と音響空間の各面からの反射音(間接音)の音量とが同等となる距離(所謂クリティカルディスタンス)未満の距離であることが好ましい。その理由は以下の通りである。両者の距離が短すぎて、調整対象スピーカを点音源と看做せないとすると、調整対象スピーカが複数のスピーカユニットで構成されている場合(例えば、高音域の再生を担当するスピーカユニットと低音域の再生を担当するスピーカとで構成されている場合など)には各スピーカユニットの個別の音響特性が顕著に現れることになり、調整対象スピーカ全体を1つとした音響特性が得られなくなる。逆に、両者の間の距離が長すぎると間接音の方が優勢となり、やはり調整対象スピーカ本来のインパルス応答が得られなくなる。故に、上記所定の距離L1は、調整対象スピーカを点音源と看做すことができる距離以上であって、かつクリティカルディスタンス未満の距離であることが好ましいのである。
上記所定の距離L1の好適な値については以下の要領で求めることができる。音響技術者は、まず、マイクロホン90を調整対象スピーカからの距離が次第に遠くなるように複数の位置に順次配置し、それら位置の各々において調整対象スピーカのインパルス応答を制御部810に取得させるとともに、それらインパルス応答を取得した際のインパルス信号(すなわち、スピーカ70−1に与えた入力信号)の周波数応答を算出させ、さらに、当該インパルス信号の周波数応答とその位置にて計測したインパルス応答の周波数応答との相互相関値を制御部810に算出させる。制御部810は、上記各位置において取得したインパルス応答の周波数応答のグラフおよび上記相互相関値のグラフを周波数軸を一致させつつ位置毎に対にして表示部840に表示させる。音響技術者は、表示部840に表示される相互相関値のグラフを参照して上記所定の距離L1を決定する。より詳細に説明すると、音響技術者は、インパルス信号の周波数応答とインパルス応答の周波数応答との相関が全周波数帯域に亘って一定以上に保たれていること(相互相関値が所定の閾値を下回る周波数成分が存在しないこと)を条件に、上記各位置に応じた複数の距離のうちの最長のものを上記所定の距離L1として選択するのである。つまり、本実施形態の音響調整支援装置80は、上記複数の位置の各々において取得したインパルス応答の周波数応答のグラフおよびそのインパルス応答の周波数応答とインパルス信号の周波数応答の相互相関値のグラフを位置毎に対にして表示部840に表示させることで、音響技術者による上記所定の距離L1の決定を支援するのである。なお、本実施形態では、上記所定の距離L1の好適な値を調整対象スピーカのサービスエリア内の複数の位置でインパル応答を計測して求めたが、音響技術者の経験等に基づいて上記所定の距離L1を定めるようにしても勿論良い。
例えば、図6には、スピーカ70−1とマイクロホン90との間の距離を1.5m、1.6m、1.8m、2.0mおよび2.5mとした場合についての相互相関値のグラフcohとインパルス応答から求めた周波数応答のグラフFRとが例示されている。図6においては横軸は周波数を表し(図8、図10〜図18も同様)、相互相関値が所定の閾値を下回る周波数成分が丸印で囲まれている。図6に示す例では、上記距離が1.6m以下であれば、全周波数帯域に亘ってインパルス信号の周波数応答とインパルス応答の周波数応答との相関が一定以上に保たれている。したがって、図6に示す例では、上記所定の距離L1は1.6mと決定されるのである。なお、本実施形態では、インパルス応答の周波数応答のグラフFRおよび相互相関値のグラフcohをマイクロホン90の位置毎に対にして表示部840に表示させる処理を音響調整支援装置80に実行させたが、相互相関値が所定の閾値を下回る周波数成分に丸印を付与する等の処理を音響調整支援装置80に行わせても良い。また、インパルス信号(計測信号)の周波数応答とインパルス応答(スピーカの出力信号)の周波数応答との相関が全周波数帯域に亘って一定以上に保たれている距離のうちの最長のものという判定基準にしたがって上記所定の距離L1を音響調整支援装置80に算出させるようにしても良い。
次いで、上記インパルス応答の周波数応答から目標特性を取得する手順について説明する。本実施形態では、音響技術者は、図5(B)に示すように、マイクロホン90を調整対象スピーカの正面方向(例えば、指向軸方向)に上記所定の距離L1を隔てて配置した場合と、図5(B)にて点線で示すようにマイクロホン90を上記正面方向と所定の角度(例えば、±20°や±40°など)を成す方向に上記所定の距離L1を隔てて配置した場合の各々においてインパルス応答を計測し、それらインンパルス応答の各々についての周波数応答を算出する処理を制御部810に実行させる。制御部810は、それら周波数応答の平均(例えば、周波数毎の加算平均)を算出し、当該平均を表すデータを目標特性を示す目標特性データとして不揮発性記憶部854に書き込む処理を実行する。つまり、本実施形態では、調整対象スピーカから互いに異なる方向に距離L1だけ隔てた複数の位置の各々にマイクロホン90を設置して取得される各インパルス応答の周波数応答の平均が目標特性となるのである。このような処理を行うのは、調整対象スピーカの正面方向の周波数応答のみでは、当該スピーカが実際に音響空間に所定の角度範囲で放射する音の周波数応答を代表しているとは限らず、後述するサービスエリア内での周波数応答との比較を適切に行えないからである。
次いで、空間影響成分特定ステップSA120について説明する。
空間影響成分特定ステップSA120は、空間影響成分を特定するためのステップである。前述したように、空間影響成分とは、インパルス信号を与えられた調整対象スピーカから放射される音をそのサービスエリアにおいて収音して得られるオーディオ信号(インパルス応答)にFFTを施して得られる周波数応答と目標特性との差分のうち、音響空間全体の空間的特徴に起因した影響を反映した成分のことである。本実施形態では、音響上の客観的な特定に適するように空間影響成分を以下のように定義し直す。すなわち、本実施形態では、調整対象スピーカのサービスエリア内の遠方(少なくともクリティカルディスタンス以上)の複数の位置の各々にマイクロホン90を配置して計測される各インパルス応答から算出される各周波数応答の平均と目標特性データの示す目標特性の差分のうち、何れのインパルス応答においてもその周波数応答とインパル信号の周波数応答との相関が高い周波数帯域であって、かつ各インパルス応答から算出された周波数応答において局所的な変化態様(山および谷の現れ方)が共通している周波数帯域における差分、を空間影響成分とするのである。
ここで、調整対象スピーカのサービスエリア内の遠方にマイクロホン90を配置することとしたのは、音響空間の各面からの反射音の影響を充分に反映させて、直接音の影響を低減して相対的に音響空間全体の音響的な特徴を取得するためである。また、調整対象スピーカのサービスエリア内の遠方の複数の位置にマイクロホンを配置して得られる各周波数応答の平均に基づいて空間影響成分を算出するようにしたのは、音響空間2の各方向(上方や後方、左右方向)の面からの反射音の影響を均等に反映させるためである。そして、調整対象スピーカに与えた入力信号とマイクロホン90の出力信号との相関が高い周波数帯域であること、という条件を課したのは、上記入力信号と上記出力信号との一貫性が担保されている周波数帯域を目標特性との比較対象とするためであり、各周波数応答において局所的な変化態様が共通している周波数帯域であること、という条件を課したのは、当該音響空間全体が有する固有の音響的特徴である周波数帯域を抽出して、目標特性との比較対象とするためである。
空間影響成分特定ステップSA120では、上記のように定義し直した空間影響成分が以下の要領で算出される。音響技術者は、まず、目標特性取得ステップSA110における場合と同様に、調整対象スピーカ(スピーカ70−1)とマイクロホン90とを音響空間2内の所定の位置に配置し、操作部830を操作して空間影響成分特定支援処理の実行指示を音響調整支援装置80に与える。制御部810は、目標特性取得支援処理における場合と同様に、スイッチ30をOFFにし、かつミキサ20の出力信号をアンプ60に出力するようにセレクタ50−1および50−2を切り換えて調整対象スピーカのインパルス応答を計測する処理を実行する。すなわち、制御部810は、インパルス信号をノイズジェネレータに発生させ、そのインパルス信号に応じた音を調整対象スピーカに放射させるとともに、マイクロホン90の出力信号にFFTを施してインパルス応答の周波数応答を算出するのである。本実施形態における音響調整方法の第2の特徴は、空間影響成分特定ステップSA120における調整対象スピーカおよびマイクロホン90の配置態様にある。
図7は、空間影響成分特定ステップSA120における調整対象スピーカとマイクロホン90の配置態様の一例を示す図である。より詳細に説明すると、図7(A)は、同音響空間2を左側から見た透視図であり、図7(B)は同音響空間2を上方から見た透視図である。図7(A)および図7(B)を参照すれば明らかように、空間影響成分特定ステップSA120では、調整対象スピーカ(スピーカ70−1)は、マイクロホン90との距離の関係を除いて、目標特性取得ステップSA110における場合と同様な態様で音響空間2に配置される。すなわち、調整対象スピーカは音響空間2の各面の何れからも遠ざかるように音響空間2の上方の面から吊り下げられた中空の状態で配置される。一方、マイクロホン90は、上記のように配置した調整対象スピーカのサービスエリアSA内の遠方の位置(本動作例では、調整対象スピーカから距離L2(L2>クリティカルディスタンス>L1)を隔てた位置)に調整対象スピーカと同軸上に配置される。前述したように、空間影響成分特定ステップSA120では、音響空間2全体の空間的特徴に起因した影響(すなわち、音響空間2において音の反射面と成り得る各面からの反射音の影響)を特定することが目的だからである。
この空間影響成分特定ステップSA120においても、前述した目標特性取得ステップSA110における場合と同様に、音響技術者は調整対象スピーカから見て互いに異なる複数の方向(正面方向や±20°や±40°の角度を為す方向)に距離L2を隔てた位置にマイクロホン90を配置し、それら位置の各々についてのインパルス応答の周波数応答を制御部810に算出させる。一方、制御部810は、上記各周波数応答の他に、インパルス信号(スピーカ70−1に与えた入力信号)の周波数応答とインパルス応答の周波数応答との相互相関値を上記複数の位置の各々について算出し、さらに、上記各インパルス応答の周波数応答の平均を算出する。そして、制御部810は、上記各インパルス応答の周波数応答のグラフと上記相互相関値のグラフとを周波数軸を一致させつつ上記位置毎に対にして表示部840に表示させ、上記各周波数応答の平均と目標特性との差分を算出するべき周波数帯域(以下、比較対象帯域)を音響技術者に指定させるのである。
音響技術者は、音響調整支援装置80の表示部840の表示内容を参照し、上記比較対象帯域を以下の要領で指定する。音響技術者は、まず、上記複数の位置の各々に関して算出された相互相関係数のグラフを参照し、インパルス応答の周波数応答とインパルス信号の周波数応答との相関が一定以上に保たれている周波数帯域に注目する。次いで、音響技術者は、上記複数の位置の各々におけるインパルス応答の周波数応答のグラフを参照し、当該注目周波数帯域における局所的な変化態様を比較し、局所的な変化態様が共通している周波数帯域を比較対象帯域と指定する。例えば、図8(A)に示す例では、サービスエリアSA内の4つの位置(何れも調整対象スピーカから距離L2を隔てた位置)P1〜P4の各々において計測したインパルス応答から算出された周波数応答のグラフFRと相互相関係数cohのグラフとが示されており、上記のようにして指定される比較対象帯域が網掛けで示されている。
上記のようにして比較対象帯域が指定されると、制御部810は、上記複数の位置の各々におけるインパルス応答から求めた各周波数応答の平均を算出し、さらに、当該比較対象帯域における目標特性データの示す目標特性と上記平均との差分を算出する。そして、制御部810は、目標特性を示すグラフTFR、上記平均を示すグラフMFRおよび上記差分を示すグラフDEFを周波数軸を一致させて表示部840に表示させるとともに(図8(B)参照)、上記差分を表すデータを空間影響成分を表す空間影響成分データとして不揮発性記憶部854へ書き込む。つまり、本実施形態の音響調整支援装置80は、インパルス応答から求めた周波数応答のグラフFRと上記相互相関値のグラフcohとを上記位置毎に対にして表示部840に表示させる(図8(A)参照)ことで、音響技術者による比較対象帯域の指定を支援し、その指定結果に基づいて空間影響成分を算出するのである。また、音響技術者は、表示部840に表示される上記3つのグラフ(図8(B)参照)から、空間影響成分を把握することができるのである。なお、本実施形態では、比較対象帯域を音響技術者に指定させたが、同様の判定基準(インパルス応答の周波数応答とインパルス信号の周波数応答との相関が一定以上に保たれている周波数帯域であって、かつ、各インパルス応答の周波数応答における局所的な変化態様が共通している周波数帯域であること)にしたがって比較対象帯域を決定する処理を制御部810に実行させても勿論良い。
次いで、位置影響成分特定ステップSA130について説明する。前述したように位置影響成分特定ステップSA130は、位置影響成分を特定するためのステップである。本実施形態では、位置影響成分を、調整対象スピーカのサービスエリアにおける遠方の位置または同サービスエリア内における調整対象スピーカの近隣の位置から選んだ互いに異なる複数の位置の各々にマイクロホン90を配置してインパルス応答を計測し、それらインパル応答の各々から算出される周波数応答の平均と目標特性データの示す目標特性との差分のうち、上記複数の位置の各々におけるインパルス応答の計測の何れにおいてもインパルス信号の周波数応答とインパルス応答に周波数応答との相関が高い周波数帯域であって、かつ各インパル応答の周波数応答における局所的な変化態様が共通している周波数帯域における差分、と定義し直す。空間影響成分を定義し直したことと同じ理由によるものである。なお、上記位置影響成分の新たな定義において、調整対象スピーカのサービスエリア内における遠方の位置または同サービスエリア内における調整対象スピーカの近隣の位置のうちから選択した互いに異なる複数の位置にマイクロホン90を配置してインパルス応答を計測することとしたのは、直接音と各面からの反射音(間接音)のうちの何れか一方に偏ってその影響が反映されないようにするためである。
上記のように定義し直した位置影響成分は以下の要領で算出される。音響技術者は、まず、調整対象のスピーカ(すなわち、スピーカ70−1)とマイクロホン90とを音響空間2内の所定の位置に配置し、操作部830を操作して位置影響成分特定支援処理の実行指示を音響調整支援装置80に与える。制御部810は、目標特性取得処理(或いは空間影響成分特定支援処理)の実行指示を与えられた場合と同様に、スイッチ30をOFFにし、さらにミキサ20の出力信号をアンプ60に出力するようにセレクタ50−1および50−2を切り換えて調整対象スピーカのインパルス応答を計測する処理を実行する。
本実施形態における音響調整方法の第3の特徴は、位置影響成分特定ステップSA130における調整対象スピーカおよびマイクロホン90の配置態様にある。図9は、位置影響成分特定ステップSA130における調整対象スピーカおよびマイクロホン90の配置態様の一例を示す図である。より詳細に説明すると、図9(A)は、同音響空間2を左側から見た透視図であり、図9(B)は同音響空間2を上方から見た透視図である。この位置影響成分特定ステップSA130におけるスピーカ70−1の配置位置は、音響空間2における本来の設置位置(具体的には、ステージ2Aの右袖側)である。この位置影響成分特定ステップSA130では、調整対象スピーカを本来の位置に設置した場合におけるその設置位置近傍の局所的な状況(調整対象スピーカが壁の近くに設置されるのであれば、当該壁の形状や表面の材質、仕上げなど)に起因した影響(すなわち、調整対象スピーカの設置位置近傍の反射面からの反射音の影響)を特定することを目的としているからである。一方、マイクロホン90は上記のように設置されたスピーカ70−1のサービスエリアSA内の客席位置に配置される。本実施形態では、図9(B)に示すように、サービスエリアSA内の位置であってスピーカ70−1からの距離や方向が互いに異なる4つの客席位置M−1〜M−4の各々にマイクロホン90を配置し、それら4つの客席位置の各々においてインパルス応答の計測が行われる。
以降、制御部810は、空間影響成分特定支援処理における場合と同様に、上記各位置にて計測したインパルス応答から算出した周波数応答のグラフFRと相互相関値のグラフcohとを周波数軸を一致させつつ位置毎に対にして表示部840に表示させ(図10参照)、比較対象帯域を音響技術者に指定させる。一方、音響技術者は、空間影響成分特定ステップSA120における場合と同様に、インパルス信号の周波数応答とインパル応答の周波数応答との相関、および各インパル応答から算出した周波数応答における局所的な変化態様に基づいて比較対象帯域を指定する。図10に示す例では、比較対象帯域として指定された周波数帯域が網掛けで示されている。そして、制御部810は、上記のようにして比較対象帯域が指定されると、当該比較対象帯域における目標特性データの示す目標特性と上記各インパルス応答の周波数応答の平均との差分を算出し、目標特性を示すグラフ、上記平均を示すグラフおよび上記差分を示すグラフを周波数軸を一致させて表示部840に表示させるとともに、上記差分を表すデータを位置影響成分を表す位置影響成分データとして不揮発性記憶部854へ書き込む。
つまり、本実施形態の音響調整支援装置80は、インパルス応答の周波数応答のグラフと上記相互相関値のグラフcohとを周波数軸を一致させつつ上記位置毎に対にして表示部840に表示させることで、音響技術者による比較対象帯域の指定を支援し、その指定結果に基づいて位置影響成分を算出するのである。また、音響技術者は、表示部840に表示される上記3つのグラフ(目標特性を示すグラフ、各インパルス応答の周波数応答の平均を示すグラフ、および両者の差分を示すグラフ)から、位置影響成分を把握することができるのである。なお、位置影響成分の特定における比較対象帯域の指定に関しても、音響技術者による判定基準(インパルス応答の周波数応答とインパルス信号の周波数応答との相関が一定以上に保たれている周波数帯域であって、かつ、各インパルス応答の周波数応答における局所的な変化態様が共通している周波数帯域であること)と同様の基準に基づいて制御部810に実行させるようにしても良い。
位置影響成分特定ステップSA130に後続して実行されるフィルタ係数算出ステップSA140においては、音響技術者は操作部830を操作してフィルタ係数算出処理の実行を制御部810に指示する。このフィルタ係数算出処理では、制御部810は、空間影響成分特定ステップSA120にて特定された空間影響成分、および位置影響成分特定ステップSA130にて特定された位置影響成分の各々を解消するようなフィルタ係数を空間影響成分データおよび位置影響成分データに基づいて算出し、FIRフィルタ40に設定する。例えば、空間影響成分データおよび位置影響成分データの各々が表す差分のグラフを符号反転させて結合させたグラフを包絡線とするように、各タップの中心周波数、増幅レベルおよび増幅の急峻さを調整して上記フィルタ係数を算定し、そのフィルタ係数をFIRフィルタ40に設定する、といった具合である。
図11は、目標特性のグラフTFRと調整対象スピーカ(スピーカ70−1)のインパルス応答から算出された周波数応答のグラフとを描画した図である。図11(A)には本音響調整方法のフィルタ係数算出ステップSA140の実行前の状態の周波数応答のグラフFRが目標特性のグラフTFRとともに描画されており、図11(B)には同ステップの実行後の状態の周波数応答のグラフFR´が目標特性のグラフTFRとともに描画されている。図11(A)および図11(B)を参照すれば明らかように、本音響調整方法を実行することによって、20Hzから200Hzまでの周波数帯域について目標特性と実際に計測されたインパルス応答の周波数応答とのずれが減少するように改善していることが判る。また、本実施形態では、音響調整を実現するためのフィルタとしてFIRフィルタを用いたため、IIRフィルタを用いる場合に比較して位相特性に問題が生じ難いといった利点もある。
また、このフィルタ係数算出ステップSA140においては、常に、空間影響成分と位置影響成分の両者に基づいてフィルタ係数を算出する必要はなく、何れか一方のみに基づいてフィルタ係数を算出するようにしても勿論良い。例えば、空間影響成分特定ステップSA120において表示部840に表示される差分のグラフから空間影響成分が無視し得るほどに小さいと把握される場合には、フィルタ係数算出ステップSA140において音響技術者は、位置影響成分データのみに基づいてフィルタ係数を算出することを操作部830を操作して音響調整支援装置80に指示すれば良い。同様に、位置影響成分が無視し得るほど小さいと把握される場合には、音響技術者は空間影響成分データのみに基づいてフィルタ係数を算出することを操作部830を操作して音響調整支援装置80に指示すれば良い。このように本実施形態によれば、スピーカを音響空間2に設置して音を放射させる場合における空間影響成分と位置影響成分とを各々別個に把握し、それら成分毎に別個独立に音響調整を行うことが可能になる。
(B:他の実施形態)
上述した第1実施形態では、音響空間2内のステージ2Aの両袖に設置されるスピーカの音響調整を行う場合について説明したが、例えば、音響空間の入隅部(窪んだコーナー部分)に設置されるスピーカや、音響空間の壁面に直付けされるスピーカ(すなわち、剛壁を背後にした状態で設置されるスピーカ)、正面にリブ格子や幕などの遮蔽物が配置された状態で設置されるスピーカの音響調整に本発明を適用しても良いことは勿論である。
(B−1:音響空間の入隅部に設置されるスピーカの音響調整への適用)
音響空間の入隅部にスピーカを設置した場合、スピーカから放射される音のうちの低音域(具体的には、50〜200Hz)の音はスピーカの筐体の背後に回り込み、当該スピーカの設置位置である入隅部の壁面によって反射されてサービスエリアに向かう。このため、サービスエリア内で計測されるインパルス応答から算出される周波数応答は目標特性に比較して低音域の強度が大きくなっていることが一般的である。以下、図12〜図16を参照し、音響空間の入隅部に設置されるスピーカの音響調整に本発明を適用した場合の効果(すなわち、上記低音域における目標特性との差分の解消)について説明する。
図12、図13および図14は、各々広さの違う音響空間の入隅部に設置されるスピーカの音響調整に本発明を適用した場合の効果を説明するための図である。より具体的には、図12に示す例における音響空間が最も広く(具体的には、500席の平土間の講堂)、次に図13に示す例における音響空間が広く(収容人員200人程度の講堂)、図14に示す例における音響空間が最も狭く(具体的には、収容人員10人程度の会議室)なっている。なお、図12〜図14に示す例では、空間影響成分の補正は省略されており、位置影響成分のみの補正が行われている。
図12に示す例では、前述した位置影響成分特定ステップSA130において調整対象スピーカのサービスエリア内の互いに異なる8点にマイクロホン90を設置し、それら各点におけるインパルス応答を計測して位置影響成分を特定しその補正を行った。図12を参照すれば明らかように、調整対象帯域の全域に亘って目標特性との差分が解消されていることが判る。なお、調整対象帯域とは、位置影響成分の補正により振幅レベルが調整される周波数帯域のことであり、目標特性との差分が小さいなどの理由により周波数成分の除外が行われない限り、位置影響成分特定ステップSA130にて特定される比較対象帯域と一致する。
図13に示す例では、位置影響成分特定ステップSA130において調整対象スピーカのサービスエリア内の互いに異なる4点にマイクロホン90を設置し、それら各点におけるインパルス応答を計測して位置影響成分を特定しその補正を行った。図13に示す例では、調整対象帯域に属する周波数成分のうち調整後のグラフにおいて丸印で示した周波数成分に関しては目標特性との差分が若干残っているが、その他の周波数成分に関しては目標特性との差分が略解消されている。図12に示す例と比較して図13に示す例では、インパルス応答の測定点が少なくなっている。したがって、インパルス応答の測定点を増加させれば(例えば、図12に示す例と同様に8点とするなど)、図13の調整後のグラフにおいて丸印を付与した周波数成分についても目標特性との差分を縮小することができると考えられる。また、図13に示す例では、補正対象とした周波数帯域よりも高域側に目標特性とのずれが認められるが、これはスピーカの設置位置近傍の入隅部以外からの特定部位の反射音に起因したものであり、空間影響成分および位置影響成分の何れからも独立した制御不可能なものである(相互相関値が著しく低い周波数帯域)。
図14に示す例では、位置影響成分特定ステップSA130において調整対象スピーカのサービスエリア内の互いに異なる5点にマイクロホン90を設置し、それら各点におけるインパルス応答を計測して位置影響成分を特定しその補正を行った。図14に示す例では、補正対象の周波数帯域に属する周波数成分のうち調整後のグラフにおいて丸印で示した周波数成分に関しては目標特性との差分が若干残っているが、その他の周波数成分に関しては目標特性との差分が略解消されている。図14の調整後のグラフにおいて丸印を付与した差分はハムノイズに起因したもの(換言すれば、位置影響成分とは無関係なもの)であった。したがって、図14に示す例においても、目標特性との差分のうち位置影響成分は充分に解消されていると考えられる。
以上説明したように、音響空間の入隅部に設置されるスピーカの音響調整に本発明を適用すれば、その音響空間の広狭に関わらず、上記入隅部を構成する壁面からの反射音に起因した低音域の増強を適切に抑え、低音域における目標特性との差分を解消することができるのである。
図15および図16は、スピーカの設置先の音響空間が例えば倉庫などの音響的な配慮が払われていない空間であり、かつその音響空間の入隅部に設置されるスピーカの音響調整に本発明を適用した場合の効果を説明するための図である。なお、図15に示す例と図16に示す例とでは、調整対象のスピーカの機種が異なっており、各々におけるインパルス応答の計測点は4点ずつである。図15および図16を参照すれば明らかように、調整対象帯域以外では入隅部以外からの反射音による影響が残っているものの、調整対象帯域においては概ね目標特性との差分が解消されている。つまり、音響空間の入隅部に設置されるスピーカの音響調整に本発明を適用すれば、その音響空間が倉庫などの音響的な配慮が払われていない空間であっても、上記入隅部を構成する壁面からの反射音に起因した低音域の増強を適切に抑え、低音域における目標特性との差分を解消することができ、また、設置されるスピーカの機種が異なっても同様の効果が得られるのである。
(B−2:剛壁を背後にした状態で音響空間に設置されるスピーカの音響調整への適用)
剛壁を背後にした状態でスピーカを音響空間に設置する場合においても、入隅部に設置した場合と同様にインパルス応答の周波数応答における低音域の強度が大きくなり、目標特性との間にずれが生じる場合がある。図17は、剛壁を背後にした状態で音響空間に設置されるスピーカの音響調整に本発明を適用した場合の効果を説明するための図である。図17に示す例では図13に示す例における音響空間の壁面にスピーカを直付けされている。この図17では、音響調整の実行前と実行後の夫々について、当該スピーカのサービスエリア内の互いに異なる4点で計測したインパル応答から算出した周波数応答の平均のグラフと目標特性のグラフとが図示されている。図17を参照すれば明らかように、調整対象帯域よりもやや高域側に反射音による影響が残っているものの、調整対象帯域においては概ね目標特性との差分が解消されていることが判る。このように、剛壁を背後にした状態で音響空間に設置されるスピーカに関しても、そのスピーカの音響調整に本発明を適用することによって、低音域の増強を適切に抑え、低音域における目標特性との差分を解消することができるのである。
(B−3:音響空間の入隅部に設置され、かつ前面に遮蔽物が置かれるスピーカの音響調整への適用)
図18は、音響空間の入隅部に設置され、かつ前面に遮蔽物(図18に示す例では、リブ格子)が設置されたスピーカの音響調整に本発明を適用した場合の効果を説明するための図である。図18に示すように、調整前の状態においては、入隅部にスピーカが設置されていることに起因した影響が50〜100Hzの低音域に現れており、2kHz以上の高音域にはリブ格子の設置による影響が現れている。このため、図18に示す例では、上記低音域および高音域の各々を調整対象帯域としている。図18に示す調整後の状態を参照すれば明らかなように、上記2つの調整対象帯域の何れにおいても概ね目標特性との差分が解消されていることが判る。このように、正面に遮蔽物が配置された状態で音響空間の入隅部に設置されるスピーカに関しても、そのスピーカの音響調整に本発明を適用することによって、入隅部を構成する壁面からの反射音に起因した低音域の増強と遮蔽物に起因した高音域の増強とを適切に抑え、両音域における目標特性との差分を解消することができるのである。
(C:変形)
以上本発明の各実施形態について説明したが、以下に述べる変形を加えても勿論良い。
(1)上述した実施形態では、音響調整専用のマイクロホン90を音響調整支援装置80に接続したが、音源群10に含まれるマイクロホンを用いて音響調整を行っても勿論良い。また、上述した実施形態では、音響空間2に2台のスピーカを設置する場合について説明したが3台以上のスピーカを音響空間2に設置しても良く、また、スピーカを1台だけ音響空間2に設置しても勿論良い。また、上述した実施形態では、音響空間2に設置されるスピーカを用いて音響調整を行った。しかし、スピーカが音響空間2の所定の位置に既に固定されており、その取り外しが困難である場合には、当該スピーカと同一機種のスピーカを用いて音響調整を行っても良い。また、上述した第1実施形態では、目標特性取得ステップSA110、空間影響成分特定ステップSA120および位置影響成分特定ステップSA130の各々において調整対象スピーカのインパルス応答を計測する際に、調整対象スピーカと同一水平面上にマイクロホン90を配置した。これは、音響空間2において聴者が着席する観客席群2Bが平面上に広がっていることを反映させたものである。したがって、音響空間2内に観客席群が立体的に配置されている場合(例えば、2階席や3階席が設けられている場合)には、インパルス応答の計測点(すなわち、マイクロホン90の配置位置)を鉛直方向に複数設定するようにしても良い。
(2)上述した実施形態では、空間影響成分および位置影響成分の特定に先立って目標特性を取得する目標特性取得ステップSA110を実行した。しかし、スピーカの工場出荷時点で無響室(或いは簡易無響室)においてそのスピーカ本来のインパルス応答を計測しておき、CD−ROM(Compact Disk-Read Only Memory)やメモリスティック(登録商標)などのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に当該インパルス応答(或いは当該インパル応答から算出した周波数応答)を示すデータを書き込んで配布しても良い。このようにして配布される記録媒体を音響調整支援装置80に接続し、上記データを目標特性データとして不揮発性記憶部854に書き込む処理を制御部810に実行させるようにすれば、目標特性取得ステップSA110の実行を省くことができる。また、上述した実施形態では、空間影響成分の特定を行った後に位置影響成分の特定を行ったが、位置影響成分の特定を先に行っても勿論良い。
(3)上述した実施形態の空間影響成分特定ステップSA120においては、音響空間の音の反射面の何れからも遠ざけて保持した調整対象スピーカのサービスエリア内の遠方の複数の位置にマイクロホン90を配置してその配置位置毎にインパルス応答を計測して空間影響成分を特定した。しかし、上記インパルス応答の計測を上記サービスエリア内の遠方の一箇所の位置においてのみ行い、そのインパル応答から空間影響成分を算出するようにしても良い。具体的には、上記サービスエリア内の遠方の一箇所の位置において測定したインパル応答から算出した周波数応答とインパルス信号から算出した周波数応答とを比較し、両者の相関が高い周波数帯域を比較対象帯域とする。そして、上記インパルス応答から算出した周波数応答と目標特性との差分のうち、上記比較対象帯域における差分を空間影響成分とするのである。このような態様によれば、上記サービスエリア内の複数の位置で計測したインパルス応答に基づいて空間影響成分を特定する態様に比較して高い特定精度が得られないといった欠点があるものの、手軽に空間影響成分を特定することができる、といった利点がある。また、位置影響成分についても同様に、音響空間内の所定の位置に設置されたスピーカのサービスエリア内の遠方または近隣の一箇所においてのみインパル応答を計測し、そのインパル応答から位置影響成分を算出するようにしても良い。
(4)上述した実施形態では、本発明の特徴を顕著に示す目標特性取得支援処理、空間影響成分特定支援処理、および位置影響成分特定支援処理を音響調整支援装置80の制御部810に実行させる音響調整支援プログラムが予め同不揮発性記憶部854に格納されていた。しかし、CD−ROMなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に上記音響調整支援プログラムを書き込んで配布しても良く、また、インターネットなどの電気通信回線経由のダウンロードにより上記音響調整支援プログラムを配布しても良い。このようにして配布される音響調整支援プログラムを一般的なコンピュータにインストールし、その制御部を当該音響調整支援プログラムにしたがって作動させることで、そのコンピュータ装置を本実施形態の音響調整支援装置として機能させることが可能になるからである。
1…音響システム、2…音響空間、2A…ステージ、2B…観客席群、10…音源群、20…ミキサ、30…スイッチ、40…FIRフィルタ、50−1,50−2…セレクタ、60…アンプ、70−1,70−2…スピーカ、80…音響調整支援装置、90…マイクロホン、810…制御部、820…外部機器I/F群、830…操作部、840…表示部、850…記憶部、852…揮発性記憶部、854…不揮発性記憶部、860…バス。

Claims (5)

  1. 音響空間内の所定の位置に設置されるスピーカの前段に配置されるフィルタの設定を調整し、前記スピーカから放射される音の前記音響空間内での周波数応答を調整する音響調整支援方法であって、
    前記音響空間の音の反射面から遠ざけて前記スピーカを前記音響空間内に保持してそのサービスエリア内の遠方に配置したマイクロホンにより当該スピーカについての前記反射面の影響を含んだ周波数応答を計測し、計測された周波数応答と前記反射面の影響を含んでいない前記スピーカの周波数応答である目標特性との差分のうち、前記スピーカに与えた入力信号と前記マイクロホンの出力信号との相関が高い周波数帯域における差分を、前記音響空間全体の空間的特徴に起因した影響を反映した空間影響成分として特定する空間影響成分特定ステップと、
    前記スピーカを前記所定の位置に設置してそのサービスエリア内において遠方または近隣に配置したマイクロホンにより当該スピーカについてその設置位置近傍の反射面の影響を含んだ周波数応答を計測し、当該周波数応答と前記目標特性との差分のうち、前記スピーカに与えた入力信号と前記マイクロホンの出力信号との相関が高い周波数帯域における差分を、前記設置位置近傍の局所的な状況に起因した影響を反映した位置影響成分として特定する位置影響成分特定ステップと、
    前記空間影響成分と前記位置影響成分の少なくとも一方が解消されるように前記フィルタの設定を調整するフィルタ設定調整ステップと、
    を有することを特徴とする音響調整支援方法。
  2. 前記空間影響成分特定ステップにおいては、前記音響空間の音の反射面から遠ざけて保持された前記スピーカのサービスエリア内の遠方の複数の位置に前記マイクロホンを配置して反射面の影響を含んだ周波数応答をマイクロホンの配置位置毎に計測し、それら周波数応答の平均と前記目標特性との差分のうち、前記スピーカに与えた入力信号と前記マイクロホンの出力信号との相関が高い周波数帯域であって、かつ前記各周波数応答において局所的な変動態様が共通している周波数帯域における差分を、前記空間影響成分として特定し、
    前記位置影響成分特定ステップにおいては、前記所定の位置に設置された前記スピーカのサービスエリア内において遠方または近隣の複数の位置にマイクロホンを配置して前記スピーカの設置位置近傍の反射面の影響を含んだ周波数応答をマイクロホンの配置位置毎に計測し、それら周波数応答の平均と前記目標特性との差分のうち、前記スピーカに与えた入力信号と前記マイクロホンの出力信号との相関が高い周波数帯域であって、かつ前記各周波数応答において局所的な変動態様が共通している周波数帯域における差分を、前記位置影響成分として特定する
    ことを特徴とする請求項1に記載の音響調整支援方法。
  3. 前記スピーカは音響空間内の所定の位置に固定されており、前記空間影響成分特定ステップにおいては、前記スピーカに換えて前記スピーカと同一機種のスピーカを前記音響空間の音の反射面から遠ざけて保持して前記空間影響成分を特定することを特徴とする請求項1または2に記載の音響調整支援方法。
  4. 音響空間内の所定の位置に設置されるスピーカの前段に配置されるフィルタの設定を調整し、前記スピーカから放射される音の前記音響空間内での周波数応答を調整することを支援する音響調整支援装置であって、
    前記音響空間の音の反射面から遠ざけて保持された前記スピーカに入力信号を与え、そのサービスエリア内において遠方に配置したマイクロホンの出力信号から当該スピーカについての前記反射面の影響を含んだ周波数応答を算出するとともに、当該周波数応答と前記反射面の影響を含んでいない前記スピーカの周波数応答である目標特性との差分を算出する処理と、当該差分のうちで前記スピーカに与えた入力信号と前記マイクロホンの出力信号との相関が高い周波数帯域における差分を、前記音響空間全体の空間的特徴に起因した影響を反映した空間影響成分として利用者が特定することを支援する処理とを実行する空間影響成分特定支援手段と、
    前記所定の位置に設置された前記スピーカに入力信号を与え、そのサービスエリア内において遠方または近隣に配置したマイクロホンの出力信号から当該スピーカについてその設置位置近傍の反射面の影響を含んだ周波数応答を算出するとともに、当該周波数応答と前記目標特性との差分を算出し、当該差分のうちから前記スピーカに与えた入力信号と前記マイクロホンの出力信号との相関が高い周波数帯域における差分を、前記スピーカの設置位置近傍の局所的な状況に起因した影響を反映した位置影響成分として利用者が特定することを支援する処理とを実行する位置影響成分特定手段と、
    前記空間影響成分と前記位置影響成分の少なくとも一方が解消されるように前記フィルタの設定を調整するフィルタ設定調整手段と、
    を有することを特徴とする音響調整支援装置。
  5. コンピュータを、
    音響空間内の所定の位置に設置されるスピーカであって、前記音響空間の音の反射面から遠ざけて保持されているスピーカに入力信号を与え、そのサービスエリア内において遠方に配置したマイクロホンの出力信号から当該スピーカについての前記反射面の影響を含んだ周波数応答を算出するとともに、当該周波数応答と前記反射面の影響を含んでいない前記スピーカの周波数応答である目標特性との差分を算出する処理と、当該差分のうちで前記スピーカに与えた入力信号と前記マイクロホンの出力信号との相関が高い周波数帯域における差分を、前記音響空間全体の空間的特徴に起因した影響を反映した空間影響成分として利用者が特定することを支援する処理とを実行する空間影響成分特定支援手段と、
    前記所定の位置に設置された前記スピーカに入力信号を与え、そのサービスエリア内において遠方または近隣に配置したマイクロホンの出力信号から当該スピーカについてその設置位置近傍の反射面の影響を含んだ周波数応答を算出するとともに、当該周波数応答と前記目標特性との差分を算出し、当該差分のうちから前記スピーカに与えた入力信号と前記マイクロホンの出力信号との相関が高い周波数帯域における差分を、前記設置位置近傍の局所的な状況に起因した影響を反映した位置影響成分として利用者が特定することを支援する処理とを実行する位置影響成分特定手段と、
    前記空間影響成分と前記位置影響成分の少なくとも一方が解消されるように、前記スピーカの前段に設置されるフィルタの設定を調整するフィルタ設定調整手段、
    として機能させることを特徴とするプログラム。
JP2010199709A 2010-09-07 2010-09-07 音響調整支援方法、音響調整支援装置、およびプログラム Expired - Fee Related JP5671894B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010199709A JP5671894B2 (ja) 2010-09-07 2010-09-07 音響調整支援方法、音響調整支援装置、およびプログラム

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010199709A JP5671894B2 (ja) 2010-09-07 2010-09-07 音響調整支援方法、音響調整支援装置、およびプログラム

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2012058370A true JP2012058370A (ja) 2012-03-22
JP5671894B2 JP5671894B2 (ja) 2015-02-18

Family

ID=46055562

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2010199709A Expired - Fee Related JP5671894B2 (ja) 2010-09-07 2010-09-07 音響調整支援方法、音響調整支援装置、およびプログラム

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5671894B2 (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015139060A (ja) * 2014-01-21 2015-07-30 キヤノン株式会社 音場補正装置及びその制御方法、プログラム
CN111142837A (zh) * 2019-12-26 2020-05-12 惠州视维新技术有限公司 基于电视机显示模式的发声方法、装置、设备及存储介质
CN113727240A (zh) * 2020-05-26 2021-11-30 南宁富桂精密工业有限公司 声音播放调整方法及可携式装置

Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH06266377A (ja) * 1993-03-16 1994-09-22 Matsushita Electric Ind Co Ltd 音場補正装置
JPH0738987A (ja) * 1993-07-22 1995-02-07 Yamaha Corp 音響特性補正装置
JP2000099039A (ja) * 1998-09-17 2000-04-07 Matsushita Electric Ind Co Ltd 拡声音の明瞭度改善方法及び装置
JP2008263562A (ja) * 2007-04-16 2008-10-30 Yamaha Corp 音響特性補正システム
JP2008294620A (ja) * 2007-05-23 2008-12-04 Yamaha Corp 音場補正装置
JP2009522884A (ja) * 2006-01-03 2009-06-11 エスエルエイチ オーディオ エイ/エス 部屋の中のスピーカーを等化する方法とシステム

Patent Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH06266377A (ja) * 1993-03-16 1994-09-22 Matsushita Electric Ind Co Ltd 音場補正装置
JPH0738987A (ja) * 1993-07-22 1995-02-07 Yamaha Corp 音響特性補正装置
JP2000099039A (ja) * 1998-09-17 2000-04-07 Matsushita Electric Ind Co Ltd 拡声音の明瞭度改善方法及び装置
JP2009522884A (ja) * 2006-01-03 2009-06-11 エスエルエイチ オーディオ エイ/エス 部屋の中のスピーカーを等化する方法とシステム
JP2008263562A (ja) * 2007-04-16 2008-10-30 Yamaha Corp 音響特性補正システム
JP2008294620A (ja) * 2007-05-23 2008-12-04 Yamaha Corp 音場補正装置

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015139060A (ja) * 2014-01-21 2015-07-30 キヤノン株式会社 音場補正装置及びその制御方法、プログラム
CN111142837A (zh) * 2019-12-26 2020-05-12 惠州视维新技术有限公司 基于电视机显示模式的发声方法、装置、设备及存储介质
CN111142837B (zh) * 2019-12-26 2023-09-19 惠州视维新技术有限公司 基于电视机显示模式的发声方法、装置、设备及存储介质
CN113727240A (zh) * 2020-05-26 2021-11-30 南宁富桂精密工业有限公司 声音播放调整方法及可携式装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP5671894B2 (ja) 2015-02-18

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US9264834B2 (en) System for modifying an acoustic space with audio source content
US9955262B2 (en) Device and method for driving a sound system and sound system
Eargle Handbook of recording engineering
JP5533248B2 (ja) 音声信号処理装置および音声信号処理方法
US8094826B2 (en) Method and system for equalizing a loudspeaker in a room
JP2569872B2 (ja) 音場制御装置
US7369663B2 (en) Method of creating reverberation by estimation of impulse response
JP7352291B2 (ja) 音響装置
Zotter et al. A beamformer to play with wall reflections: The icosahedral loudspeaker
US9100767B2 (en) Converter and method for converting an audio signal
DK2839678T3 (en) Audio system optimization
JP5671894B2 (ja) 音響調整支援方法、音響調整支援装置、およびプログラム
Bartlett Stereo microphone techniques
US20040196983A1 (en) Reverberation apparatus controllable by positional information of sound source
Aspöck et al. Benchmark for room acoustical simulation (bras)
Abel et al. A feedback canceling reverberator
CN113766395A (zh) 音信号处理方法、音信号处理装置及音信号处理程序
JP2003122378A (ja) オーディオ再生装置
US10812902B1 (en) System and method for augmenting an acoustic space
Brereton et al. The Virtual Singing Studio: A loudspeaker-based room acoustics simulation for real-time musical performance
Frey et al. Acoustical impulse response functions of music performance halls
JP2018173442A (ja) 効果付与装置及び効果付与プログラム
Ahnert et al. Room Acoustics and Sound System Design
Cabrera et al. The measurement of directional stage support in a drama theatre: Quantifying the acoustic effect of a set
JP2021131432A (ja) 音信号処理方法および音信号処理装置

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20130724

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20140724

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20140805

RD13 Notification of appointment of power of sub attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7433

Effective date: 20140926

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20140926

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20141125

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20141208

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees