JP2012056934A - 抗ノッチ1アゴニスト抗体を含む組織再生治療剤及び該抗体を使用する組織再生治療方法 - Google Patents

抗ノッチ1アゴニスト抗体を含む組織再生治療剤及び該抗体を使用する組織再生治療方法 Download PDF

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Abstract

【課題】、新規な組織再生、特に虚血組織再生治療剤及び組織再生、特に虚血組織再生治療方法を提供することである。
【解決手段】抗ノッチ1アゴニスト抗体を含む組織再生治療剤及び該抗体を使用する組織再生治療方法を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、抗ノッチ1アゴニスト抗体を含む組織再生治療剤及び該抗体を使用する組織再生治療方法に関する。
虚血性疾患に対する新しい治療法として、自家細胞移植による血管再生治療が注目されている。これまでの数多くの基礎研究によって、骨髄中の間葉系細胞や単核球分画に多能性幹細胞や血管内皮前駆細胞が存在すること、またこれらを虚血組織に投与することで、虚血組織に治療的な組織再生及び血管再生がもたらされることが示されている。現在、細胞移植療法は重症下肢虚血をはじめとする様々な虚血性疾患に対して臨床応用されており、その有用性が明らかとなっている。
しかし一方で、非応答者(Non-responder)の存在など、治療の限界も分かってきた。例えば、下肢虚血に対するその治療効果は約60〜70%であり、改善の余地がある。
細胞移植による虚血性疾患の治療機序は、当初、移植細胞中の幹細胞や前駆細胞が組織構成細胞へと分化することが、その主たる機序であると考えられてきた。しかし近年、これらの細胞が局所で分化する頻度は極めて低く、治療効果を十分に説明できないことが明らかとなってきた。これに代わって、移植細胞由来の液性因子による治療機序、すなわちパラクリン作用(paracrine effect)が提唱された。
すなわち、移植された細胞が局所で多様な増殖因子を豊富に分泌し、その結果として組織保護と血管再生がもたらされるものと、現在では広く考えられている。しかし一方で、移植細胞の組織生着率が極めて低いことが明らかとなり、パラクリン作用のみで治療機序を説明しようとすると、大きな矛盾が生じることが認識され始めている。
本発明者らは、末梢血単核球が骨髄単核球に匹敵する強力な血管再生効果をもつことを見出し、その臨床応用を開始した(非特許文献1及び2)。そして、末梢血単核球移植療法が重症下肢虚血症例に対して安全かつ有用な組織再生治療法であることを示してきた。 さらに、末梢血単核球移植による血管再生効果がパラクリン作用によるものではなく、従来報告されていない別の機序によることを報告した(非特許文献3)。すなわち、単核球移植により骨格筋組織の内在性再生能力が増強されて虚血組織における筋組織再生が起こり、その再生過程において筋組織が分泌する血管増殖因子が虚血組織に作用して血管新生を誘導し、それにより筋組織の再構築が促進されることを報告した。
ノッチシグナルは、発生過程や幹細胞における細胞運命決定を調節する細胞内情報伝達経路である。ノッチシグナルは、隣接する細胞間での相互作用を介して、造血、血管、神経、及び体節など様々な組織や器官の分化過程に関与する。ノッチシグナルは、細胞膜上に存在するノッチ受容体に別の細胞の細胞膜上に存在するノッチリガンドが作用することにより惹起される。ノッチ受容体は機能的細胞外ドメイン(NECD)、膜貫通ドメイン(TM)及び細胞内ドメイン(NICD)からなる一回膜貫通タンパク質である。NECDへのノッチリガンドの結合によって、ノッチ受容体は様々な酵素による消化を受ける。NECDは腫瘍壊死因子−α変換酵素(Tumor necrosis factor-converting enzyme: TACE)や ADAM 金属プロテアーゼにより消化されてTM-NICDから離脱する。NECD はノッチリガンドと結合したままで、この複合体は、ノッチリガンドを提供した細胞にエンドサイトーシスにより取り込まれ、再使用又は分解される。一方、NICDは、細胞膜に存在するγ−セクレターゼにより消化され、TMから離脱する。NICDは核内に移行し、CSL ファミリー(CBF1/Su(H)/Lag-1)転写因子複合体と会合し、次いで、標的遺伝子であるMyc、p21、及びHESファミリーを活性化する。
哺乳類においては、現在5種類のノッチリガンドと4種類のノッチ受容体が報告されている。ノッチリガンドとして、具体的には、Delta様メンバー(DLL1、DLL3、DLL4)とJaggedファミリー(Jagged-1、Jagged-2)が知られている。また、ノッチ受容体は、ノッチ1、ノッチ2、ノッチ3、及びノッチ4が知られている。
ノッチシグナルが発生過程や幹細胞における細胞運命決定を調節することから、ノッチシグナルを利用した再生医療を示唆する報告がある(非特許文献4)。
例えば、ノッチリガンドを生体吸収マトリクスに吸着させて障害骨格筋へ投与する方法が示唆されている。しかしながら、この報告にはその効果を実証したデータは開示されておらず、また、虚血性組織に対する治療の記載もない。
また、別の報告には、ノッチリガンド遺伝子を導入した間質細胞(stromal cells)と骨髄由来の血管内皮前駆細胞とをインサート カルチャー システム(insert culture system)を用いて共培養し、血管内皮前駆細胞内のノッチシグナルを増強させた後に当該血管内皮前駆細胞を投与することにより、虚血組織の再生が増強されたことが開示されている(非特許文献5)。
加えて、先行特許文献では、以下が開示されている。
特許文献1では、「ノッチ1レセプターの活性化によって前立腺疾患を緩和する方法」を開示している。
しかし、該文献では、組織再生、特に虚血組織再生については開示又は示唆がない。
特許文献2では、「ノッチ3に特異的に結合しシグナル伝達を活性化させるアゴニスト抗体、及び、該抗体を使用するノッチ3関連疾病又は疾患を治療又は予防する方法」を開示している。
しかし、該文献では、抗ノッチ1アゴニスト抗体の使用及び組織再生、特に虚血組織再生については開示又は示唆がない。
特表2004−524269号公報 特表2010−506596号公報
ミナミノ(Minamino T.)ら、「Peripheral-blood or bone-marrow mononuclear cells for therapeutic angiogenesis」、ランセット(Lancet)、2002年、第360巻、p.2083-2084。 タテノ(Tateno K.)ら、「Application of hematopoietic cells to therapeutic angiogenesis」、カレント ファーマシューティカル デザイン(Current Pharmaceutical Design)、2006年、第12巻、p. 557-563。 タテノ(Tateno K.)ら、「Critical Roles of Muscle-Secreted Angiogenic Factors in Therapeutic Neovascularization」、サーキュレーション リサーチ(Circulation Research)、2006年、第98巻、p.1197-1202。 カールソン(Carlson M.E.)ら、「Notch signaling pathway and tissue engineering」、フロンティアズ イン バイオサイエンス(Frontiers in Bioscience)、2007年、第12巻、p.5143-5156。 クウォン(Kwon S-M.)ら、「Specific Jagged-1 Signal From Bone Marrow Microenvironment Is Required for Endothelial Progenitor Cell Development for Neovascularization」、サーキュレーション(Circulation)、2008年、第118巻、p.157-165。
虚血器官や虚血組織の機能的回復に対する細胞移植療法の有効性は確立されつつある。しかしながら、治療に反応しない患者の割合は、老齢者例を含め、少なくない。
また、本発明者らは、Jagged-1遺伝子導入細胞移植による、虚血組織再生の改善に成功した。しかし、遺伝子治療では法規制に対処する必要があり、さらに患者本人から遺伝子導入が可能な細胞を採取することが困難である。
よって、本発明の課題は、新規な組織再生、特に虚血組織再生治療剤及び組織再生、特に虚血組織再生治療方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために、抗ノッチ1アゴニスト抗体が虚血組織の血流改善効果及び/又は筋組織再生改善効果を有することを新規に見出した。
そして、抗ノッチ1アゴニスト抗体を含む組織再生治療剤及び該抗体を使用する組織再生治療方法を完成した。
すなわち、本発明は以下の通りである。
「1.抗ノッチ1アゴニスト抗体及び/又は該抗体の機能的等価物を有効成分として含む組織再生治療剤。
2.前記抗体の機能的等価物は、前記抗ノッチ1アゴニスト抗体と80%以上のアミノ酸相同性を有し、かつ該抗体と実質的同質のノッチシグナル活性を有することを特徴とする前項1に記載の組織再生治療剤。
3.前記再生治療剤の適用が、以下のいずれか1であることを特徴とする前項1又は2に記載の組織再生治療剤。
(1)糖尿病
(2)閉塞性動脈硬化症
(3)バージャー病
(4)虚血性心疾患
4.前記組織が虚血組織であることを特徴とする前項1〜3のいずれか1に記載の組織再生治療剤。
5.抗ノッチ1アゴニスト抗体を有効成分として含む組織再生治療剤。
6.抗ノッチ1アゴニスト抗体が、以下より選ばれる抗体であることを特徴とする、前項5記載の組織再生治療剤。
(1)HMN1-12
(2)MHN1-128
(3)MHN1-420
7.前記再生治療剤の適用が、以下のいずれか1であることを特徴とする前項5又は6に記載の組織再生治療剤。
(1)糖尿病
(2)閉塞性動脈硬化症
(3)バージャー病
(4)虚血性心疾患
8.前記組織が虚血組織であることを特徴とする前項5〜7のいずれか1に記載の組織再生治療剤。
9.抗ノッチ1アゴニスト抗体及び/又は該抗体の機能的等価物を哺乳動物に投与する工程を含む、組織再生治療方法。
10.前記抗体の機能的等価物は、前記抗ノッチ1アゴニスト抗体と80%以上のアミノ酸相同性を有し、かつ該抗体と実質的同質のノッチシグナル活性を有することを特徴とする前項9に記載の組織再生治療方法。
11.前記再生治療の適用が、以下のいずれか1であることを特徴とする前項9又は10に記載の組織再生治療方法。
(1)糖尿病
(2)閉塞性動脈硬化症
(3)バージャー病
(4)虚血性心疾患
12.前記組織が虚血組織であることを特徴とする前項9〜11のいずれか1に記載の組織再生治療方法。
13.抗ノッチ1アゴニスト抗体を哺乳動物に投与する工程を含む、組織再生治療方法。
14.抗ノッチ1アゴニスト抗体が、以下より選ばれる抗体であることを特徴とする、前項13記載の組織再生治療方法。
(1)HMN1-12
(2)MHN1-128
(3)MHN1-420
15.前記再生治療の適用が、以下のいずれか1であることを特徴とする前項13又は14に記載の組織再生治療方法。
(1)糖尿病
(2)閉塞性動脈硬化症
(3)バージャー病
(4)虚血性心疾患
16.前記組織が虚血組織であることを特徴とする前項13〜15のいずれか1に記載の組織再生治療剤。」
本発明の抗ノッチ1アゴニスト抗体を含む組織再生治療剤及び該抗体を使用する組織再生治療方法は、虚血組織の血流改善効果及び/又は筋組織再生効果を示した。
加えて、該治療剤及び該治療方法は、従来のJagged-1遺伝子導入細胞移植による虚血組織再生の改善方法とは異なり、品質管理も容易であり、法規制の問題も少ない。
抗マウスノッチ1アゴニスト抗体投与による虚血組織中のノッチシグナル増強効果の確認(実施例1)。図中「NICD」及び「HLI」は、それぞれ、「ノッチ受容体細胞内ドメイン」及び「後肢虚血」を意味する。 抗ノッチ1アゴニスト抗体を投与することによる虚血組織の血流改善効果の確認。縦軸は非虚血後肢の血流に対する虚血後肢の血流の比(Laser Doppler Index)を示す(実施例2)。 抗ノッチ1アゴニスト抗体を投与することによる虚血組織の筋組織再生改善の確認(実施例3)。 抗ヒトノッチ1アゴニスト抗体によるヒト組織中のノッチシグナルの増強効果の確認(実施例4)。
(本発明の組織再生治療剤及び組織再生治療方法)
本発明は、組織再生治療剤及び組織再生治療方法に関する。本発明に係る組織再生方法は、組織、特に虚血組織において該組織内に存在する細胞のノッチシグナルを活性化することを特徴とする。
(組織再生)
本発明の組織再生とは、筋組織再生、血管組織再生、神経組織再生等を対象とする。
特に、本発明の組織再生では、虚血により障害を生じた組織を、虚血部位において再構築することを意味する。具体的には、虚血により障害を生じた骨格筋や心筋などの筋組織、あるいは血管組織を、虚血部位において再構築することを意味する。
なお、虚血による組織障害の治療とは、虚血により障害を生じた組織を再生し、その組織の機能を回復させる処置をいう。
(虚血)
虚血とは、臓器や組織の血流が様々な原因により局所的に低下した状態をいう。虚血に陥った場合、正常な循環の回復、すなわち再灌流が短時間のうちにおこらなければ組織の崩壊が生じる。虚血が解除され再灌流が開始しても、充分な灌流が回復しないためにさらに障害が進行することがある。虚血はその原因により、血管内又は血管自体の変化による閉塞性虚血、及び、血管痙攣による痙攣性虚血に分けることができる。虚血により十分な血液の供給が保たれず臓器や組織に損傷が与えられる病気は虚血性疾患と呼ばれ、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患、下肢虚血を示す閉塞性動脈硬化症、バージャー病などを例示できる。
また、糖尿病は虚血性疾患ではないが、虚血性心疾患や閉塞性動脈硬化症を合併することが知られている。
(虚血組織)
虚血組織とは、血流が低下した状態にある組織をいう。虚血組織においては、血流の低下に伴って組織の崩壊が認められる。
(ノッチシグナル)
ノッチシグナルとは、細胞膜上に存在するノッチ受容体の活性化により細胞内に生じる情報伝達経路をいう。ノッチ受容体の活性化とは、ノッチ受容体が細胞内にシグナルを伝達しない状態から、何らかの刺激を受けてシグナルを伝達する状態に変化することをいう。ノッチ受容体の活性化は、生理的にはノッチリガンドが該受容体に作用することにより生じる。一般的には、細胞の細胞膜上に発現されたノッチリガンドがノッチ受容体に作用することにより、該受容体の活性化が惹き起こされることが知られている。ノッチ受容体は機能的細胞外ドメイン(NECD)、膜貫通ドメイン(TM)及び細胞内ドメイン(NICD)からなる一回膜貫通タンパク質である。ノッチ受容体の活性化により、NICDは、細胞膜に存在するγ−セクレターゼにより消化され、TMから離脱する。NICDは核内に移行し、CSL ファミリー(CBF1/Su(H)/Lag-1)転写因子複合体と会合し、次いで、標的遺伝子であるMyc、p21、HES ファミリーを活性化する。ノッチシグナルは、ノッチ受容体の活性化によるこのような一連の情報伝達過程を包含する。
(ノッチシグナルの活性化)
ノッチシグナルを活性化するとは、ノッチシグナルを発生させること、ノッチシグナルを促進すること、及び/又はノッチシグナルを増強することをいう。ノッチシグナルの活性化は、例えば、ノッチリガンドを用いてノッチ受容体を活性化することにより実施できる。ノッチリガンドは、哺乳動物ではデルタ様メンバーであるDLL1、DLL3、及びDLL4とJagged ファミリーであるJagged-1及びJagged-2が知られている。
本発明においてノッチシグナルの活性化は、好ましくは虚血組織内で実施される。例えば、虚血組織内に存在する筋芽細胞のノッチシグナルを活性化する。筋芽細胞は、未分化な、骨格筋細胞、心筋細胞、又は平滑筋細胞を意味する。未分化とは、形態的及び機能的な特定の特徴を有さない状態をいう。すなわち、未分化な、骨格筋細胞、心筋細胞、又は平滑筋細胞とは、形態的及び機能的に骨格筋細胞、心筋細胞、又は平滑筋細胞としての特定の特徴を有さない細胞であって、何らかの刺激、例えばノッチシグナルの活性化などにより、これら細胞の形態及び機能を獲得し得る細胞をいう。
虚血組織において該組織内に存在する細胞、好ましくは筋芽細胞のノッチシグナルを活性化することにより、虚血組織において筋組織の再生が起こり、その再生過程において筋組織が分泌する血管増殖因子が虚血組織に作用して血管新生を誘導し、それにより筋組織の再構築が促進される。
(組織再生治療剤及び組織再生治療方法の適用)
本発明の組織再生治療剤及び組織再生治療方法は、虚血組織を伴う疾患の治療に有用である。虚血組織を伴う疾患として、糖尿病、閉塞性動脈硬化症、バージャー病、及び狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患を例示できる。好ましくは糖尿病、閉塞性動脈硬化症、バージャー病などで認められる下肢虚血組織における組織再生に適用される。
本発明の「哺乳動物」は、ヒト、家畜、非ヒト霊長類、運動競技用動物(競馬ウマ)、又はペット用動物、例えばイヌ、ウマ、ネコ、ウシ等を含む、哺乳類として類別されるいかなる動物も対象とする。
(抗ノッチ1アゴニスト抗体)
本発明の「抗ノッチ1アゴニスト抗体」は、ノッチシグナルを活性化できる抗体であれば特に限定されない。
前記抗体は、ポリクローナル抗体、ポリクローナル抗体を含む抗血清又はモノクローナル抗体のいずれのタイプも含み、また、これらの抗体のフラグメント{Fab、F(ab′)2又はFab′等}をも含むものである。なお、好ましくは、前記抗体は、モノクローナル抗体であることが好ましい。さらに、前記抗体は、ヒト化抗体にすることが好ましい。
本発明で使用する抗ノッチ1アゴニスト抗体としては、例えば、HMN1-12(Purified Anti-mouse Notch 1 Antibody:八木田が樹立)、MHN1-33(Purified Anti-human Notch 1 Antibody:八木田が樹立)、MHN1-128(Purified Anti-human Notch 1 Antibody:八木田が樹立)、MHN1-420(Purified Anti-human Notch 1 Antibody:八木田が樹立)及びMHN1-519(Purified Anti-human Notch 1 Antibody:八木田が樹立)等を例示することができる。
これらの抗体の中で、マウスを対象とする場合は、HMN1-12が好ましく、ヒトを対象とする場合は、MHN1-128 又はMHN1-420が好ましい。
(抗ノッチ1アゴニスト抗体の機能的等価物)
本発明の「抗ノッチ1アゴニスト抗体の機能的等価物」は、抗ノッチ1アゴニスト抗体と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上のアミノ酸相同性を有し、かつ該抗体と実質的同質のノッチシグナル活性を有する化合物を意味する。
なお、「実質的同質のノッチシグナル活性を有する」とは、抗ノッチ1アゴニスト抗体のノッチシグナル活性作用を有することを意味し、その程度が該抗体のノッチシグナル活性作用と比較して強くても弱くてもよい。
{本発明の抗体作製に使用する免疫原(抗原)}
本発明の抗体を産出させるための免疫原として、哺乳動物由来、特に好ましくはヒト又はマウス由来のノッチ受容体、特に機能的細胞外ドメイン(NECD)のアミノ酸配列の全部又は一部を含むペプチドを用いることができる。
さらに、該ペプチドで表されるアミノ酸配列に1ないし数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入もしくは付加、又は修飾を施すことにより得られるアミノ酸配列からなるペプチドを免疫原として使用することもできる。
加えて、抗原の由来は、治療対象の哺乳動物と同一とすることが好ましい。例えば、治療対象がヒト場合には、抗原の由来はヒト由来のノッチ受容体、特に機能的細胞外ドメイン(NECD)のアミノ酸配列の全部又は一部が好ましい。
(免疫原となるペプチドの合成)
ペプチドの製造は、遺伝子工学的手法、化学合成、及び無細胞タンパク質合成により実施できる。ペプチドは、製造された後に、さらに精製して用いることができる。
ペプチドの製造は、該ペプチドをコードする遺伝子の塩基配列情報又はアミノ酸配列に基づいて一般的な遺伝子工学的手法{サムブルック(Sambrook)ら編、「モレキュラークローニング,ア ラボラトリーマニュアル 第2版」、1989年、コールドスプリングハーバーラボラトリー;村松正實編、「ラボマニュアル遺伝子工学」、1988年、丸善株式会社;ウルマー(Ulmer, K.M.)、「サイエンス(Science)」、1983年、第219巻、p. 666-671;エールリッヒ(Ehrlich, H.A.)編、「PCRテクノロジー,DNA増幅の原理と応用」、1989年、ストックトンプレス}により実施できる。
ペプチドの製造は、また、一般的な化学合成法により製造できる。ペプチドの化学合成方法として、例えば、固相合成方法や液相合成方法等が知られているがいずれも利用できる。
ペプチドの精製及び/又は分離は、その物理的性質、化学的性質等を利用した各種分離操作方法により実施できる。分離操作方法として、硫酸アンモニウム沈殿、限外ろ過、ゲルクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー及び透析法等の公知の方法を例示できる。これら方法は単独で又は適宜組合せて使用できる。
(免疫方法)
上記記載の免疫原となる精製したペプチド又は部分ペプチドを、リン酸緩衝液(PBS)などの適当な緩衝液中に溶解あるいは懸濁したものを抗原液として使用する。抗原液は通常抗原物質を50〜500μg/mL程度含む濃度に調製すればよい。また、ペプチド単独だけでは抗原性が低い場合には、アルブミンやキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)などの適当なキャリアータンパク質に架橋して用いることができる。
当該抗原で免疫感作する動物(被免疫動物)は、マウス、ラット、ハムスター、ウマ、ヤギ、ウサギなどが例示される。好ましくはマウス、より好ましくはBALB/cマウスである。
上記被免疫動物の抗原への応答性を高めるため、前記抗原溶液をアジュバントと混合して投与することができる。ここで使用可能なアジュバントは、フロイント完全アジュバント(FCA)、フロイント不完全アジュバント(FIA)、Ribi(MPL)、Ribi(TDM)、Ribi(MPL+TDM)。百日咳ワクチン(Boredetella pertussis vaccine)、ムラミルジペプチド(MDP)、アルミニウムアジュバント(ALUM)、及びこれらの組合せが例示されるが、初回免疫時にFCA、追加免疫時にFIAやRibiアジュバントを使用する組合せが特に好ましい。
免疫方法は、使用する抗原の種類やアジュバント混合の有無などにより、注射部位、スケジュールなどを適宜変化させることができるが、例えば、被免疫動物としてマウスを用いる場合は、アジュバント混合抗原液0.05〜1ml(抗原物質10〜200μg)を腹腔内、皮下、筋肉内又は(尾)静脈内に注射し、初回免疫から約4〜21日毎に1〜4回追加免疫を行い、さらに約1〜4週間後に最終免疫を行う。抗原量を多くして腹腔内注射することで、当該抗原溶液をアジュバントを使用せずに投与することもできる。抗体価は追加免疫の約5〜10日後に採血して調べる。抗体価の測定は、後述の抗体価アッセイに準じ、通常行われる方法で行うことができる。最終免疫より約3〜5日後、該免疫動物から脾細胞を分離して抗体産生細胞を得る。
(モノクローナル抗体の作製)
モノクローナル抗体は、自体公知の方法、例えばケーラーとミルシュタインの方法(Kohler G, Milstein C. (1975) Continuous cultures of fused cells secreting antibody of predefined specificity. Nature 256, 495−497.)にしたがって作製することができる。
例えば、免疫動物から抗体産出細胞を含む組織(例えば、脾臓又はリンパ節)を回収し、該抗体産出細胞と自体抗体の腫瘍細胞(例えば、骨腫瘍細胞)とを融合させることによってハイブリドーマを作製し、次いでハイブリドーマをクローン化した後、所望の抗体を産出しているハイブリドーマを選別し、このハイブリドーマの培養液から抗体を回収する。
骨髄腫細胞として、マウス、ラット、ヒトなど由来のものが使用され、例えばマウスミエローマP3X63-Ag8、P3X63-Ag8-U1、P3NS1-Ag4、SP2/o-Ag14、P3X63-Ag8・653などの株化骨髄腫細胞が例示される。骨髄腫細胞には免疫グロブリン軽鎖を産生しているものがあり、これを融合対象として用いると、抗体産生細胞が産生する免疫グロブリン重鎖とこの軽鎖とがランダムに結合することがあるので、特に免疫グロブリン軽鎖を産生しない骨髄腫細胞、例えばP3X63-Ag8・653やSP2/o-Ag14などを用いることが好ましい。
抗体産生細胞と骨髄腫細胞とは、同種動物、特に同系統の動物由来であることが好ましい。骨髄腫細胞の保存方法は自体公知の手法に従って行えばよく、例えばウマ、ウサギもしくはウシ胎児血清を添加した一般的な培地で継代培養したものについて凍結により保存される。また細胞融合には対数増殖期の細胞を用いるのが好ましい。
(ハイブリドーマの作製)
抗体産生細胞と骨髄腫細胞とを融合させてハイブリドーマを作製する方法は、ポリエチレングリコール(PEG)を用いる方法、センダイウイルスを用いる方法、電気融合装置を用いる方法などが例示される。例えばPEG法の場合、約30〜60%のPEG(平均分子量1,000〜6,000)を含む適当な培地又は緩衝液中に脾細胞と骨髄腫細胞を1〜10:1、好ましくは5〜10:1の混合比で懸濁し、温度約25〜37℃、pH6〜8の条件下で、約30秒〜3分間程度反応させればよい。反応終了後、細胞を洗浄しPEG溶液を除いて培地に再懸濁し、マイクロタイタープレート中に播種して培養を続ける。
融合操作後の細胞は選択培地で培養して、ハイブリドーマの選択を行う。選択培地は、親細胞株を死滅させ、融合細胞のみが増殖しえる培地であり、通常ヒポキサンチン−アミノプテリン−チミジン(HAT)培地が使用される。ハイブリドーマの選択は、通常融合操作の1〜7日後に、培地の一部、好ましくは約半量を選択培地と交換し、さらに2、3日毎に同様の培地交換を繰り返しながら培養することにより行う。顕微鏡観察によりハイブリドーマのコロニーが生育しているウエルを確認する。
生育しているハイブリドーマが所望の抗体を産生しているかどうかを知るには、培養上清を採取して抗体価アッセイを自体公知の方法により行えばよい。
さらに限界希釈法、軟寒天法、蛍光励起セルソーターを用いた方法などにより単一クローンを分離する。
ハイブリドーマが産生する抗体の免疫グロブリンサブクラスを調べるためには、該ハイブリドーマを一般的な条件で培養し、その培養上清中に分泌された抗体を市販の抗体クラス・サブクラス判定用キットなどを用いて分析することにより知ることができる。
(モノクローナル抗体の取得方法)
ハイブリドーマからのモノクローナル抗体の取得方法は、必要量やハイブリドーマの性状などによって適宜選択することができる。例えば、該ハイブリドーマを移植したマウス腹水から取得する方法、細胞培養により培養上清から取得する方法などが例示される。マウス腹腔内で増殖可能なハイブリドーマであれば、腹水から数mg/mLの高濃度のモノクローナル抗体を得ることができる。インビボで増殖できないハイブリドーマは細胞培養の培養上清から取得する。
細胞培養によるモノクローナル抗体の取得は、抗体産生量はインビボより低いが、マウス腹腔内に含まれる免疫グロブリンや他の夾雑物質の混入が少なく、精製が容易であるという利点がある。
抗体を、ハイブリドーマを移植したマウス腹腔内から取得する場合、例えば、予めプリスタン(2, 6, 10, 14-テトラメチルペンタデカン)などの免疫抑制作用を有する物質を投与したBALB/cマウスの腹腔内へハイブリドーマ(約106個以上)を移植し、約1〜3週間後に貯留した腹水を採取する。異種ハイブリドーマ(例えばマウスとラット)の場合には、ヌードマウス、放射線処理マウスを使用することが好ましい。
細胞培養上清から抗体を取得する場合、例えば、細胞維持に用いられる静置培養法の他に、高密度培養方法あるいはスピンナーフラスコ培養方法などの培養法を用い、当該ハイブリドーマを培養し抗体を含有する培養上清を得る。
腹水や培養上清からのモノクローナル抗体の精製は、自体公知の方法により行うことができる。例えば、免疫グロブリンの精製法として従来既知の硫酸アンモニウムや硫酸ナトリウムを用いた塩析による分画法、ポリエチレングリコール分画法、エタノール分画法、DEAEイオン交換クロマトグラフィー法、ゲル濾過法などを応用することで、容易に達成される。
さらに、モノクローナル抗体が、マウスIgGである場合には、プロテインA結合単体あるいは抗マウスイムノグロブリン結合単体を用いたアフィニティークロマトグラフィー法により精製することが可能であり、簡便である。
ヒト化抗体は、ヒト以外の哺乳動物、例えばマウス抗体の相補性決定領域(CDR; complementarity determining region)をヒト抗体の相補性決定領域へ移植したものであり、その一般的な遺伝子組換え手法も自体公知である。
(抗ノッチ1アゴニスト抗体の選抜方法)
上記で得られた抗ノッチ1抗体から抗ノッチ1アゴニスト抗体の選抜方法は、実施例1及び実施例4で示したように、NICD (ノッチ受容体細胞内ドメイン)の発現量(ノッチシグナル活性作用)を指標として選抜する。該発現量が高いことは、ノッチシグナル活性作用が高い抗体と考えられる。
(組織再生治療剤)
本発明の「組織再生治療剤」は、少なくとも有効成分として、抗ノッチ1アゴニスト抗体及び/又は該抗体の機能的等価物を含む。
さらに、治療等(予防も含む)の目的に応じて、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、腸溶剤、液剤、注射剤(液剤、懸濁剤)又は遺伝子療法に用いる形態などの各種の形態に、常法にしたがって調製することができる。
加えて、充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤及び賦形剤も含むことができる。その他、安定化剤、殺菌剤、緩衝剤、等張化剤、キレート剤、界面活性剤、及びpH調整剤等を適宜使用することもできる。
(組織再生治療剤の使用方法及び組織再生治療方法)
本発明の組織再生治療剤の摂取量及び組織再生治療方法における有効成分としての抗ノッチ1アゴニスト抗体の投与量は、本発明の効果が得られるものであれば特に限定されるものではなく、含有される成分の有効性、投与形態、投与経路、疾患の種類、対象の性質(体重、年齢、病状及び他の医薬の使用の有無等)、及び担当医師の判断等に応じて適宜選択される。本発明の組織再生治療剤は、1日1〜数回に分けて投与又は摂取することができ、数日又は数週間に1回の割合で間欠的に投与又は摂取してもよい。
患者に投与される有効成分としての抗ノッチ1アゴニスト抗体量は、一般的には、患者の体重につき0.001mg/kg〜200mg/kgであり、好ましくは患者の体重につき0.01/kg〜20mg/kgであり、より好ましくは患者の体重につき1mg/kg〜10mg/kgである。
更に、本発明の抗体の投与量及び投与の頻度は、例えば脂質化のような修飾によって、抗体の取込み及び組織透過性を増強することによって減少されてもよい。少なくとも数日にわたって繰り返される投与について、状況に応じて、治療は疾患症状の所望の抑制が生じるまで継続される。しかしながら、他の投与計画が有効な場合がある。この治療の進行度は、従来技術及びアッセイにより容易にモニターされる。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例により限定されるものではない。
加えて、以下の全ての実験工程は、動物実験の適正な実施に向けたガイドライン(日本学術会議2006年6月1日)及び国立大学法人 千葉大学 動物実験実施規程を厳重に順守して行った。
(抗ノッチ1アゴニスト抗体によるノッチシグナルの増強効果の確認)
抗マウスノッチ1アゴニスト抗体を組織に投与すると、該組織中のノッチシグナルが増強するかどうかを確認した。詳細は、以下の通りである。
{マウス後肢虚血(HLI:Hind limb ischemia)モデルの作製}
8〜12週のC57BL/6マウス(SLC Japanより購入)を使用して、公知の方法{参照:タテノ(Tateno K.)ら、「Critical Roles of Muscle-Secreted Angiogenic Factors in Therapeutic Neovascularization」、サーキュレーション リサーチ(Circulation Research)、2006年、第98巻、p.1197-1202}によりマウス後肢虚血モデルを作製した。
(抗ノッチ1アゴニスト抗体の投与)
抗マウスノッチ1アゴニスト抗体(HMN1-12:本発明者である八木田博士からの提供)100μgを、後肢虚血モデル作製手術後3〜5日のマウス後肢虚血モデルの虚血筋に直接投与した。アイソタイプコントロールとして、同量のハムスターIgGを、後肢虚血モデル作製手術後3〜5日のマウス後肢虚血モデルの虚血筋に直接投与した。
(ノッチシグナル増強の確認)
ノッチシグナルの増強を確認するために、前記抗ノッチ1アゴニスト抗体0μg,25μg,100μg及び400μgを投与されたマウス後肢虚血モデルを所定の方法で屠殺し、さらに非虚血および虚血筋の筋核抽出物タンパク質を回収した。さらに、該タンパク質を、活性化ノッチ1を特異的に検出できる抗体{ NICD (ノッチ受容体細胞内ドメイン);Val 1744, Cell Signaing社}を用いたウエスタンブロットで解析した。
(ノッチシグナルの増強効果の確認結果)
前記ウエスタンブロットの解析結果を図1に示す。図1から明らかなように、抗ノッチ1アゴニスト抗体25μgを投与した非虚血筋組織(図中:sham 25)並びに、抗ノッチ1アゴニスト抗体25μg,100μ及び400μgを投与した虚血組織(図中:HLI 25, 100, 400)は、コントロール(図中:0)と比較して、NICD (ノッチ受容体細胞内ドメイン)が多く発現していることがわかる。
以上により、抗ノッチ1アゴニスト抗体投与により組織、特に虚血組織中のノッチシグナルを増強することができる。
(抗ノッチ1アゴニスト抗体による血流改善効果の確認)
抗ノッチ1アゴニスト抗体を投与することにより、組織、特に虚血組織の血流が改善されるかどうかを確認した。詳細は、以下の通りである。
(血流改善効果の確認)
実施例1で作製した抗ノッチ1アゴニスト抗体投与済みのマウスを、該投与から28日後に所定の方法で屠殺した。さらに、該マウスの虚血組織における血流回復の評価は、後肢灌流をレーザー ドップラー パーフュージョン イメイザー システム(laser Doppler perfusion imager (LDPI) system、 Moor Instruments社製)を用いて測定することにより実施し、非虚血後肢に対する虚血後肢の血流比(Laser Doppler Index)で表した。
なお、コントロールとして、同量のハムスターIgGを投与したマウスも上記同様に血流回復の評価をした。
前記血流回復の評価結果を図2に示す。図2から明らかなように、抗ノッチ1アゴニスト抗体を投与した虚血組織(図中:右棒)は、コントロール(図中:左棒)と比較して、血流が改善されていることがわかる。
以上により、抗ノッチ1アゴニスト抗体投与により組織、特に虚血組織中の血流を改善させることができる。
(抗ノッチ1アゴニスト抗体による筋組織再生効果の確認)
抗ノッチ1アゴニスト抗体を投与することにより、組織、特に虚血組織の筋組織再生が改善されるかどうかを確認した。詳細は、以下の通りである。
(血流改善効果の確認)
実施例1で作製した抗ノッチ1アゴニスト抗体投与済みのマウスを、該投与から28日後に所定の方法で屠殺した。さらに、該マウスの筋組織再生の評価は、マウスをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で全身灌流後に虚血後肢より内転筋を採取し、その凍結切片を作成してヘマトキシリン・エオジン染色並びに他の免疫学的染色を施し、盲検にて観察することにより実施した。
なお、筋組織は高倍率下にて、中心部に核がある再生筋原線維により主に構成される組織(C)と壊死線維を含む組織(N)に分類し、これら組織学的特性を有する領域を低倍率で撮影した後、NIH−イメージ ソフトウエアを用いて測定した。筋再生領域は、C/(C+N)を算出して得られた値で表した。
なお、コントロールとして、同量のハムスターIgGを投与したマウスも上記同様に筋再生領域を算出した。
前記筋組織再生の評価結果を図3に示す。図3から明らかなように、抗ノッチ1アゴニスト抗体を投与した虚血組織(図中:右棒)は、コントロール(図中:左棒)と比較して、筋組織再生が改善されていることがわかる。
以上により、抗ノッチ1アゴニスト抗体投与により組織、特に虚血組織中の筋組織再生を改善させることができる。
(抗ヒトノッチ1アゴニスト抗体によるノッチシグナルの増強効果の確認)
抗ヒトノッチ1アゴニスト抗体がヒト細胞中のノッチシグナルを増強するかどうかを確認した。詳細は、以下の通りである。
(ノッチシグナル増強の確認)
HEK293T細胞(ヒト胎児腎臓細胞)を、1000倍濃縮した2種類の抗ヒトノッチ1アゴニスト抗体(MHN1-128、MHN1-420:本発明者である八木田博士からの提供)と一晩培養した。該培養後、各細胞を溶解緩衝液中ではがし、核タンパク質画分を回収した。該タンパク質を、活性化ノッチ1を特異的に検出できる抗体(cleaved Notch-1 rabbit mAb, Cell Signaling社 ♯4147)を用いたウエスタンブロットで解析した。
上記方法と同様にアイソタイプコントロールを使用してHEK293T細胞を処理し、ウエスタンブロットで解析した。
(ノッチシグナルの増強効果の確認結果)
ウエスタンブロット解析結果のうちMHN1-128の抗ヒトノッチ1アゴニスト抗体を使用した結果を代表例として図4に示す。図4から明らかなように、抗ノッチ1アゴニスト抗体を投与した画分は、アイソタイプコントロール画分と比較して、NICD (ノッチ受容体細胞内ドメイン)が多く発現していることがわかる。
加えて、MHN1-420の抗ヒトノッチ1アゴニスト抗体も同様な結果を得ることができた(図面なし)。
なお、Ponceau染色により、各サンプルのタンパク量が同等であることを確認している。
以上により、抗ヒトノッチ1アゴニスト抗体投与によりヒト細胞中のノッチシグナルを増強することができる。
(総論)
上記実施例1〜4の結果により、抗ノッチ1アゴニスト抗体を組織、特に虚血組織に投与することにより、該組織中のノッチシグナルを増強するだけでなく、血流改善及び/又は筋組織再生改善を行うことができる。
本発明では、抗ノッチ1アゴニスト抗体を含む組織再生治療剤及び該抗体を使用する組織再生治療方法を提供することができる。

Claims (16)

  1. 抗ノッチ1アゴニスト抗体及び/又は該抗体の機能的等価物を有効成分として含む組織再生治療剤。
  2. 前記抗体の機能的等価物は、前記抗ノッチ1アゴニスト抗体と80%以上のアミノ酸相同性を有し、かつ該抗体と実質的同質のノッチシグナル活性を有することを特徴とする請求項1に記載の組織再生治療剤。
  3. 前記再生治療剤の適用が、以下のいずれか1であることを特徴とする請求項1又は2に記載の組織再生治療剤。
    (1)糖尿病
    (2)閉塞性動脈硬化症
    (3)バージャー病
    (4)虚血性心疾患
  4. 前記組織が虚血組織であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の組織再生治療剤。
  5. 抗ノッチ1アゴニスト抗体を有効成分として含む組織再生治療剤。
  6. 抗ノッチ1アゴニスト抗体が、以下より選ばれる抗体であることを特徴とする、請求項5記載の組織再生治療剤。
    (1)HMN1-12
    (2)MHN1-128
    (3)MHN1-420
  7. 前記再生治療剤の適用が、以下のいずれか1であることを特徴とする請求項5又は6に記載の組織再生治療剤。
    (1)糖尿病
    (2)閉塞性動脈硬化症
    (3)バージャー病
    (4)虚血性心疾患
  8. 前記組織が虚血組織であることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1に記載の組織再生治療剤。
  9. 抗ノッチ1アゴニスト抗体及び/又は該抗体の機能的等価物を哺乳動物に投与する工程を含む、組織再生治療方法。
  10. 前記抗体の機能的等価物は、前記抗ノッチ1アゴニスト抗体と80%以上のアミノ酸相同性を有し、かつ該抗体と実質的同質のノッチシグナル活性を有することを特徴とする請求項9に記載の組織再生治療方法。
  11. 前記再生治療の適用が、以下のいずれか1であることを特徴とする請求項9又は10に記載の組織再生治療方法。
    (1)糖尿病
    (2)閉塞性動脈硬化症
    (3)バージャー病
    (4)虚血性心疾患
  12. 前記組織が虚血組織であることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1に記載の組織再生治療方法。
  13. 抗ノッチ1アゴニスト抗体を哺乳動物に投与する工程を含む、組織再生治療方法。
  14. 抗ノッチ1アゴニスト抗体が、以下より選ばれる抗体であることを特徴とする、請求項13記載の組織再生治療方法。
    (1)HMN1-12
    (2)MHN1-128
    (3)MHN1-420
  15. 前記再生治療の適用が、以下のいずれか1であることを特徴とする請求項13又は14に記載の組織再生治療方法。
    (1)糖尿病
    (2)閉塞性動脈硬化症
    (3)バージャー病
    (4)虚血性心疾患
  16. 前記組織が虚血組織であることを特徴とする請求項13〜15のいずれか1に記載の組織再生治療剤。
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