JP2012054140A - 触媒担持担体の製造方法および電極触媒の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】発電性能に優れた燃料電池を構成する電極触媒用の触媒担持担体の製造方法と、この方法で得られた触媒担持担体を使用してなる電極触媒の製造方法を提供する。
【解決手段】導電性担体1の表面に担持させるべき量の触媒金属を含む触媒金属塩2を複数の分割量に分け、分散溶媒W内に、分割量の触媒金属塩2と、導電性担体1と、を投入し、攪拌して分割量の触媒金属2aを含む溶液を生成する第1の工程、
触媒金属塩2から触媒金属2aを還元させて導電性担体1の表面に触媒金属2aを担持させ、加熱処理する第2の工程、第2の工程を触媒金属塩2の全分割量分だけ繰り返して、触媒担持担体10を製造する、触媒担持担体の製造方法である。
【選択図】図3

Description

本発明は、燃料電池用の電極触媒を形成する触媒担持担体の製造方法と、この方法で製造された触媒担持担体を使用してなる電極触媒の製造方法に関するものである。
固体高分子型燃料電池の燃料電池セルは、イオン透過性の電解質膜と、該電解質膜を挟持するアノード側およびカソード側の各電極触媒層(電極触媒)と、から膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)を成し、各電極触媒層の外側にガス流れの促進と集電効率を高めるためのガス拡散層(GDL)が設けられて電極体(MEGA:MEAとGDLの接合体)を成し、このガス拡散層の外側にセパレータが配されて燃料電池セルが形成されている。実際には、これらの燃料電池セルが発電性能に応じた基数だけ積層され、燃料電池スタックが形成されることになる。
上記する従来の触媒層の形成方法は、たとえば、テフロンシート(テフロン:登録商標、デュポン社)等の基材表面に、触媒を担持した触媒担持担体、高分子電解質(アイオノマ)、分散溶媒を含んだ触媒溶液(触媒インク)を塗工し、次いで該触媒溶液表面をホットプレート等で乾燥させること(湿式塗工法)で、触媒層が形成されている。なお、この塗工作業においては、スプレーで塗布する方法やドクターブレードを使用する方法などがある。
ところで、燃料電池の発電性能向上の重要な要素である、電極触媒の効率もしくは活性を上げるべく、これを電極触媒の製造方法からのアプローチで達成せんとする技術が種々公開されており、その一つとして、特許文献1に開示の電極の製造方法を挙げることができる。この製造方法は、有機カルボン酸と白金との塩又は錯体等を含有し、溶液中の白金の量が全金属量の20モル%以上であって、かつ遊離の有機カルボン酸の濃度が100g/L以下である溶液を触媒担体に含浸させた後に、還元処理と加熱処理を実施する方法である。そして、この製造方法によれば、白金または白金合金微粒子が担体上に均一かつ高分散で担持された触媒を容易に得ることができる、としている。
しかし、この公開技術も従来の製法と同様に、担持させる触媒金属の全量と導電性担体と、を分散溶媒内で分散させることに代わりはない。ここで、カーボン等からなる導電性担体表面には、官能基(−COOH基)等の吸着サイトが存在し、この吸着サイトに触媒金属が担持されるものである。すなわち、官能基の数を超えた量の触媒金属を担持させようとしても、この余分量の触媒金属は担持する相手方の官能基が存在しないことから、たとえば凝集した状態で導電性担体表面に付着するのみであることが本発明者等によって特定されている。
このように触媒金属の凝集塊においては、その内部の触媒金属が発電に寄与できないことから、結果として触媒利用率の低下を招き、所望の発電性能が得られない原因の一つとなっている。
特開2007−324092号公報
本発明は、上記する問題に鑑みてなされたものであり、最終的に導電性担体表面に担持させる量(担持させたい量)の触媒金属を効果的に分散担持でき、もって、発電性能に優れた燃料電池を構成する電極触媒用の触媒担持担体を製造する方法と、この方法で得られた触媒担持担体を使用してなる電極触媒の製造方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成すべく、本発明による触媒担持担体の製造方法は、導電性担体表面に担持させる量の触媒金属を含む触媒金属塩を複数の分割量に分け、分散溶媒内に、前記分割量の触媒金属塩と、導電性担体と、を投入し、攪拌して分割量の触媒金属を含む溶液を生成する第1の工程、触媒金属塩から触媒金属を還元させて導電性担体表面に触媒金属を担持させ、加熱処理する第2の工程、第2の工程を触媒金属塩の全分割量分だけ繰り返して、触媒担持担体を製造するものである。
本発明の触媒担持担体の製造方法は、導電性担体に対して、最終的に担持させたい全量の触媒金属を一度に担持させようとする従来の製法に代わり、該全量を2分、3分等、複数の分割量に分け、分割量の触媒金属ごとに、順次導電性担体表面に還元担持させるようにしたものである。
たとえば、導電性担体表面の官能基の数が、経験則もしくは実測等にておよそ特定できる場合には、この官能基相当の触媒金属量を分割量とし、これを分散溶媒内に導電性担体とともに混合させ、還元担持させるのがよい。すなわち、この還元担持の際に、各官能基(吸着サイトとも称呼でき、導電性担体表面上で触媒金属がケミカルに吸着し易い部位である)に触媒金属が担持され、既述のごとく、余剰分の触媒金属が凝集し、その塊が導電性担体表面に付着するといった課題が生じ得ない。尤も、仮に官能基の数が未知の場合であっても、最終的に担持させたい全量の触媒金属を複数に分割して順次還元担持させることで、従来製法のように、一度に全量の触媒金属を担持させようとする場合に問題となる、上記触媒金属の凝集は格段に低減される。
なお、還元処理の方法は、還元剤を分散溶媒内に投入する方法、加熱処理を実施する方法、もしくはそれらの組み合わせ方法など、任意の方法が適用できる。
そして、分割量分の触媒金属が導電性担体表面の官能基に担持されたら、該導電性担体表面上で吸着サイトから担持された触媒金属を移動させるべく、加熱処理を実施する。なお、移動後の触媒金属は、官能基から離れただけであって、導電性担体表面上で、かつ官能基が存在しない部位でやはり担持されるものである。
この加熱処理により、吸着サイトをフリーな状態とした後に、別途の分割量分の触媒金属を同様の方法で、この吸着サイトである官能基に還元担持させる。この方法によれば、触媒金属の凝集を効果的に抑止しながら、所望量、すなわち最終的に担持させるべき量の触媒金属を、可及的均一に、導電性担体表面に担持させることが可能となる。
本発明者等の検証によれば、上記製造方法にて製造された触媒担持担体を使用して最終的に電極触媒を製造し、この電極触媒を有する燃料電池セルの発電性能(I−V特性)を検証したところ、従来の製造方法で得られた電極触媒を有する燃料電池セルの発電性能に比して、高い発電性能が奏されることが実証されている。
上記方法で得られた触媒担持担体を使用し、触媒担持担体と、高分子電解質を別途の分散溶媒に投入し、攪拌して触媒溶液(触媒インク)を生成する。
そして、生成された触媒溶液は、電解質膜やガス拡散層等の基材にたとえば塗工ブレードにて層状に引き伸ばされて塗膜が形成され、温風乾燥炉等で乾燥することで、アノード側およびカソード側の触媒層(触媒電極)が形成される。
既述するように、本発明の製造方法にて得られた触媒担持担体を使用して触媒インクを生成し、これを使用して得られた電極触媒を有する燃料電池セルは、従来製法による電極触媒を有する燃料電池セルに比してその発電性能が高い。このことは、発電に寄与する触媒が導電性担体表面上で凝集等されることなく、分散して担持されていること、したがって、触媒が有効利用されていることを示すものである。
本発明の導電性担体の製造方法、この方法で製造された導電性担体を使用してなる電極触媒の製造方法で製造された電極触媒を有する燃料電池は、上記のごとき効果を奏するものであることから、近時その生産が拡大しており、車載機器に一層の高性能を要求している電気自動車やハイブリッド車用の燃料電池に好適である。
以上の説明から理解できるように、本発明の触媒担持担体の製造方法と、この方法にて得られた触媒担持担体を使用してなる電極触媒の製造方法によれば、導電性担体表面に担持させるべき量の触媒金属を含む触媒金属塩を複数の分割量に分けて還元担持させ、これを繰り返して触媒金属の全量を導電性担体表面に担持させたことにより、担体表面上に可及的に均一に、しかも、その全量が凝集等することなく分散担持することができ、もって、発電性能に優れた燃料電池に供されるものである。
本発明の触媒担持担体の製造方法の第1の工程を説明した模式図である。 (a)は、本発明の触媒担持担体の製造方法の第2の工程を説明した図であって、触媒金属が還元担持された状態を模式的に示した図であり、(b)は、次いで、加熱処理により、導電性担体の表面上で触媒金属が移動した状態を模式的に示した図である。 (a)は、図2に続いて、第2の工程を繰り返している状態を説明した模式図であり、(b)は、製造された触媒担持担体を模式的に示した図である。
以下、図1〜3を参照して本発明の触媒担持担体の製造方法を概説する。なお、図示例は、最終的に各導電性担体表面に担持させるべき量の触媒金属を2つに分けた形態を示しているが、3つ以上に分けて第2の工程を繰り返す形態であってもよい。
図1は、本発明の触媒担持担体の製造方法の第1の工程を説明した模式図であり、図2aは、第2の工程を説明した図であって、触媒金属が還元担持された状態を模式的に示した図であり、図2bは、次いで、加熱処理により、触媒担持担体の表面上で触媒金属が移動した状態を模式的に示した図である。さらに、図3aは、図2に続いて、第2の工程を繰り返している状態を説明した模式図であり、図3bは、製造された触媒担持担体を模式的に示した図である。
まず、第1の工程では、容器Y内に収容された分散溶媒Wへ、所定量の導電性担体1と、各導電性担体1に最終的に担持されるべき触媒金属量の半分量の触媒金属を含む触媒金属塩2を投入し、十分に混合して溶液を得る。
ここで、導電性担体1の表面の官能基の数が、経験則もしくは実測等にておよそ特定できている場合には、導電性担体1ごとに官能基相当の触媒金属量を分割量とし(したがって、官能基の基数に導電性担体の数を掛け合わせた量が触媒金属の分割量となる)、これを分散溶媒W内に導電性担体1とともに混合させ、還元担持させるのがよく、たとえば、これら経験則もしくは実測の結果として、上記半分量が設定されている。
攪拌混合されてできる溶液を、加熱処理、もしくは、溶液内への還元剤の投入などによって触媒金属塩2から触媒金属2aを導電性担体1の表面に還元担持させ、図2aで示すような触媒担持担体の中間体10’が得られる。
図2aで示す触媒担持担体の中間体10'において、触媒担持担体1の表面で触媒金属2aが還元担持される、もしくは還元担持され易い部位は、官能基が存在する部位である吸着サイト1aである。上記するように、導電性担体1の表面で官能基の基数がおよそ特定されている場合には、各吸着サイト1aに触媒金属2aが担持され、製造された中間体10’表面に、余剰の触媒金属の凝集塊は存在しない。
次に、図2bで示すごとく、この中間体10’を加熱処理することにより、吸着サイト1aに存在していた触媒金属2aを導電性担体1の表面上で移動させ(X方向)、吸着サイトをフリーな状態として、別途の導電性担体の中間体10”を得る(第2の工程)。
第2の工程で導電性担体の中間体10”が得られたら、図3aで示すごとく、分散溶媒W内に、第1の工程で得られた、導電性担体1とその表面の特に吸着サイト1aに担持された触媒金属2aとからなる中間体10’を投入し、残りの半分量の触媒金属塩2を投入し、十分に混合攪拌し、触媒金属塩2から触媒金属2bを導電性担体1の表面に還元担持させることで、図3bで示すような触媒担持担体10が得られる。
この図3bで示す触媒担持担体10では、先行して還元担持された触媒金属2aが吸着サイト1aから移動していることで、該吸着サイト1aはフリーな状態となっており、この吸着サイト1aに触媒金属2bが還元担持されるようになる。
同図からも明らかなように、得られる触媒担持担体10は、最終的に担持されるべき量の触媒金属2a,2bが分散して担持されるものであり、触媒金属の凝集塊が導電性担体1の表面に付着しないものとなる。したがって、所期量の触媒金属が均一に分散担持され、活性に優れた触媒層用の触媒担持担体が得られることとなる。
ここで、上記する導電性担体1としては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーなどの炭素材料のほか、炭化ケイ素などに代表される炭素化合物などを挙げることができ、触媒金属塩2を形成する触媒金属としては、たとえば、白金や白金合金、パラジウム、ロジウム、金、銀、オスミウム、イリジウムなどのうちのいずれか一種を使用することができ、好ましくは白金または白金合金を使用するのがよい。さらに、この白金合金としては、たとえば、白金と、アルミニウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、ガリウム、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、バナジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、チタンおよび鉛のうちの少なくとも一種との合金を挙げることができる。
さらに、分散溶媒Wとしては、水のほか、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、プロピレンカーボネート、酢酸エチルや酢酸ブチルなどのエステル類、芳香族系あるいはハロゲン系の種々の溶媒を挙げることができ、さらには、これらを単独で、もしくは混合液として使用することができる。
製造された触媒担持担体10を、分散溶媒W内に投入し、さらに、高分子電解質を投入して、超音波ホモジナイザー、ビーズミル、ボールミルなどを使用して攪拌等することにより、触媒溶液(触媒インク)が生成される。
この高分子電解質としては、プロトン伝導性ポリマーである、有機系の含フッ素高分子を骨格とするイオン交換樹脂、例えばパーフルオロカーボンスルフォン酸樹脂、スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルエーテルスルホン、スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリスルフィド、スルホン化ポリフェニレン等のスルホン化プラスチック系電解質、スルホアルキル化ポリエーテルエーテルケトン、スルホアルキル化ポリエーテルスルホン、スルホアルキル化ポリエーテルエーテルスルホン、スルホアルキル化ポリスルホン、スルホアルキル化ポリスルフィド、スルホアルキル化ポリフェニレンなどのスルホアルキル化プラスチック系電解質などを挙げることができる。なお、市販素材としては、ナフィオン(Nafion)(登録商標、デュポン社製)やフレミオン(Flemion)(登録商標、旭硝子株式会社製)などを使用することができる。
生成された触媒溶液は、基材である電解質膜、ガス拡散層、支持フィルムのいずれか一種に塗工等され、温風乾燥、ホットプレス等されることによって基材表面に触媒層(電極触媒)が形成される。ここで、この電解質膜は、たとえば、スルホン酸基やカルボニル基を持つフッ素系イオン交換膜、置換フェニレンオキサイドやスルホン化ポリアリールエーテルケトン、スルホン化ポリアリールエーテルスルホン、スルホン化フェニレンスルファイドなどの非フッ素系のポリマーなどから形成されるものである。また、ガス拡散層は、ポリアクリロニトリルからの焼成体、ピッチからの焼成体、黒鉛及び膨張黒鉛等の炭素材やこれらのナノカーボン材料、ステンレススチール、モリブデン、チタン等から形成されるものである。さらに、支持フィルムは、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体フィルム、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体フィルム、ポリフッ化ビニリデンフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどを挙げることができ、これらの素材からなるシートを2層以上積層して基材としてもよい。なお、市販素材としては、テフロンシート(テフロン:登録商標、デュポン社)などから形成されるものである。
[発電性能実験とその結果]
本発明者等は、本発明の製造方法で得られた触媒担持担体を使用して触媒溶液を生成し、これを使用して形成された触媒層を具備する燃料電池セル(実施例)と、従来の製造方法にて製造された触媒層を具備する燃料電池セル(比較例)を試作し、双方の発電性能比較をおこなった。
本発明の製造方法にて触媒担持担体を得る具体的な内容を説明すると、市販の導電性担体であるケッチェンEC(ケッチェンブラックインターナショナル製)5.0gを純水1.2L(リットル)に加えて分散させ、この分散液に、最終的に担持させたい白金量:5.0gの半分量である白金2.5gを含むヘキサヒドロキソ白金硝酸(白金塩、触媒金属塩)の溶液と、ナフィオン溶液(アイオノマ、高分子電解質溶液)と、をナフィオン/カーボン重量比で0.1となるように滴下し、十分に攪拌した。そして、この溶液に0.1Nアンモニア約100mLを添加し、溶液pHを約10として水酸化物を形成し、カーボン表面に析出させ、さらに、エタノールを用いて90℃でヘキサヒドロキソ白金硝酸から白金を還元して分散液を濾過し、得られた粉末を100℃で10時間真空乾燥させた。そして、乾燥後の粉末を窒素雰囲気下、300℃で1時間熱処理をおこない、熱処理後の粉末と、白金2.5gを含むヘキサヒドロキソ白金硝酸(白金塩、触媒金属塩)の溶液を分散液内で混合し、白金の還元担持をおこない、窒素雰囲気下、300℃で1時間熱処理をおこなって触媒担持担体を得た。この方法で得られた触媒担持担体粉末の白金担持密度は、廃液分析の結果、白金50質量%であった。
一方、比較例の触媒担持担体の製造に関し、市販の導電性担体であるケッチェンEC(ケッチェンブラックインターナショナル製)5.0gを純粋1.2L(リットル)に加えて分散させ、この分散液に、最終的に担持させたい全量の白金5.0gを含むヘキサヒドロキソ白金硝酸(白金塩、触媒金属塩)の溶液を滴下し、十分に攪拌した。そして、この溶液に0.1Nアンモニア約100mLを添加し、溶液pHを約10として水酸化物を形成し、カーボン表面に析出させ、さらに、エタノールを用いて90℃でヘキサヒドロキソ白金硝酸から白金を還元して分散液を濾過し、得られた粉末を100℃で10時間真空乾燥させた。そして、乾燥後の粉末を窒素雰囲気下、300℃で1時間熱処理をおこない、触媒担持担体を得た。この方法で得られた触媒担持担体粉末の白金担持密度も実施例のものと同様、廃液分析の結果、白金50質量%であった。
上記する実施例の触媒担持担体、比較例の触媒担持担体を使用して、以下、同様の方法で触媒層を製造した。具体的には、それぞれ調整された触媒担持担体を蒸留水に加え、さらに、エタノールやエチレングリコールもしくはプロピレングリコールなどを加え、高分子電解質であるナフィオンをさらに加えた。なお、少なくとも、実施例の触媒担持担体は、既に、図1bで示すようにカーボン表面に高分子電解質からなる薄膜が形成されているが、ここであらたに添加されるナフィオンは、触媒担持担体を形成する高分子電解質からなる皮膜同士を繋ぎ、触媒層として連続したプロトンパスを形成するために供されるものである。
そして、上記溶液を十分に攪拌し、超音波照射やビーズミルなどによる分散処理をおこない、実施例、比較例双方の触媒溶液(触媒インク)を生成した。
生成された触媒インクをテフロン等の基材上に塗布し、乾燥させて触媒層を得、これを電解質膜(ナフィオン)のアノード、カソードの両極にホットプレスによって熱圧着し、テフロンを剥がして膜電極接合体を得、これを用いて実施例および比較例双方の燃料電池セルを試作した。
初期段階での触媒性能を比較するべく、初期電圧測定を次のように実施した。まず、燃料電池セルのセル温度を80℃に設定し、カソード側電極に加温バブラを通過させや加湿空気をRH40%、ストイキ比7.5で提供するとともに、アノード側電極に加温バブラを通過させや加湿水素をRH40%、ストイキ比7.5で提供し、電子負荷を用いて電流電圧特性(I−V特性)を測定した。なお、各電極の白金量は、ともに0.3mg/cmとしている。
実験の結果、比較例の燃料電池セルの発電性能は、0.782(V/(0.2A/cm))であったのに対して、実施例のそれは0.793(V/(0.2A/cm))であり、1.5%程度もの発電性能の向上が確認された。この実験結果より、触媒担持担体の製造に際し、最終的に担持させたい触媒金属の全量を複数に分割し、分割量の触媒金属ごとに導電性担体表面上へ還元担持させることで、導電性担体表面上に触媒金属の凝集塊が存在しない、したがって、触媒活性の高い導電性担体が得られ、これが燃料電池セルの発電性能向上に繋がることが実証された。
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
1…導電性担体、1a…吸着サイト(官能基部位)2…触媒金属塩、2a,2b…触媒金属(触媒)、10’,10”…触媒担持担体の中間体、10…触媒担持担体

Claims (3)

  1. 導電性担体表面に担持させる量の触媒金属を含む触媒金属塩を複数の分割量に分け、分散溶媒内に、前記分割量の触媒金属塩と、導電性担体と、を投入し、攪拌して分割量の触媒金属を含む溶液を生成する第1の工程、
    触媒金属塩から触媒金属を還元させて導電性担体表面に触媒金属を担持させ、加熱処理する第2の工程、
    第2の工程を触媒金属塩の全分割量分だけ繰り返して、触媒担持担体を製造する触媒担持担体の製造方法。
  2. 前記第2の工程では、導電性担体表面の吸着サイトに分割量の前記触媒金属が担持され、前記加熱処理によって触媒金属を導電性担体表面上で該吸着サイトから移動させ、次工程で担持される別途の触媒金属が該吸着サイトに担持される請求項1に記載の触媒担持担体の製造方法。
  3. 請求項1または2に記載の製造方法で製造された触媒担持担体と、高分子電解質を別途の分散溶媒に投入し、攪拌して触媒溶液を生成する電極触媒の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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