JP2012051765A - カーボンナノチューブ集合体および製造法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 高品質で特定のカイラリティを持つ単層カーボンナノチューブ集合体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 高品質な2層カーボンナノチューブ集合体に超音波分散処理を施すことで、内層の単層カーボンナノチューブが引き抜かれ、次に単層カーボンナノチューブを密度勾配分離法によって分離することにより、得られる高品質で、特定のカイラリティを持つ単層カーボンナノチューブ。
【選択図】なし

Description

本発明は、カーボンナノチューブ集合体およびその製造法に関する。
単層カーボンナノチューブはグラフェンシートが円筒状に丸まった、直径数nm程度で、長さが数μm程度の物質であり、優れた熱的、化学的安定性や力学的強度のみならず、グラフェンシートの巻き方(構造の違い)に応じて金属性や半導体性の電気的性質を示すことから、ナノテクノロジーの様々な分野への応用が期待されている。
単層カーボンナノチューブを構成するグラフェンシートのカイラリティ(らせん度:(n,m))によって単層カーボンナノチューブはアームチェアー型(n,n)、ジグザグ型(n,0)、キラル型(n,m)に分類される。カイラリティは単層カーボンナノチューブの電気的性質を決定する重要な要素となっており、カイラリティ(n,m)で2n+mが3の倍数の時、単層カーボンナノチューブは金属性を、2n+mが3の倍数でない時、半導体性を示すことがわかっている。
このように、カイラリティによって単層カーボンナノチューブの電気的性質が変化するため、特に電子材料への応用の際には各カイラリティの単層カーボンナノチューブ毎の合成・分離が非常に重要な課題となる。
現在、単層カーボンナノチューブは主としてアーク放電法、レーザーアブレーション法、化学気相成長法(CVD)により合成されている。これらの方法により、単層カーボンナノチューブの直径は、使用する金属触媒や合成温度により、ある程度制御できることが知られているが、現在のところ合成の段階で任意のカイラリティを持つ単層カーボンナノチューブを作り分けることはほぼ不可能である。
そのため近年様々なカイラリティを含む単層カーボンナノチューブの混合物から、特定カイラリティの単層カーボンナノチューブを選択的に単離、精製する手法が開発されている。
特許文献1には単層カーボンナノチューブ混合物の中から超遠心分離法の技術により特定のカイラリティを持つ単層カーボンナノチューブを約90%以上の純度で得ることが開示されている。
また特許文献2、3にはやはり単層カーボンナノチューブ混合物の中から密度勾配分離法により特定のカイラリティを持つ単層カーボンナノチューブを得ることが開示されている。
これら手法はいずれも単層カーボンナノチューブ混合物に対して水中でかなり強力な超音波処理を施し、分散してから特定のカイラリティを持つ単層カーボンナノチューブを分離精製するという共通技術を含む。
しかしながら、これら強力な超音波分散処理を単層カーボンナノチューブに施した場合、単層カーボンナノチューブはそのグラファイト表面、末端部分に欠陥が生じ、高品質な単層カーボンナノチューブが得られないといった課題があった。例えば特許文献2では単層カーボンナノチューブに対して超音波洗浄機にて1時間も分散処理を行っており、このような長時間、超音波処理を行うとグラファイト面に欠陥が生じやすく、品質が大きく低下する。
一方、これまで多層カーボンナノチューブから単層カーボンナノチューブを得る試みがいくつかなされているが、バルクとして、ある程度量の単層カーボンナノチューブを得る方法はこれまで知られていない。
例えば特許文献4には多層カーボンナノチューブを電流発熱し、外層を剥離することが開示されている。しかしながら本手法では多層カーボンナノチューブの一部を剥離し、先鋭化する事を目的としているため、1本もしくはバルク量で単層カーボンナノチューブを得ることについては全く開示していない。
また例えば非特許文献1には多層カーボンナノチューブからAFMを用いて1本の単層カーボンナノチューブを引き抜くことが開示されている。しかしながらこれについても1本の単層カーボンナノチューブを得るのみであるし、単層カーボンナノチューブの品質についてもなんら言及されていない。
特表2005−527455号公報 特開2009−286663号公報 特表2008−531460号公報 特開2003−266399号公報
Proceedings of the National Academy of the Sciences of the United Stetesof America, 102,14155−14158(2005)
本発明は、上記のような事情に鑑みなされたものであり、高品質で特定のカイラリティを持つ単層カーボンナノチューブ集合体およびその製造方法を提供する。
また以上のような高品質でかつ、特定のカイラリティを持つ単層カーボンナノチューブを製造するのに際し、2層カーボンナノチューブの外層と内層を分離し、単層カーボンナノチューブとする方法を提供するものである。
我々は、鋭意検討した結果、高品質な2層カーボンナノチューブ集合体に超音波分散処理を施すことで、内層の単層カーボンナノチューブが引き抜かれることを見出し、この単層カーボンナノチューブを密度勾配分離法によって分離することにより、高品質で、特定のカイラリティを持つ単層カーボンナノチューブが得られることを見出した。
本発明の単層カーボンナノチューブ集合体は、下記(1)および(2)の特性を有する。
(1)所定のカイラリティ(n,m)を主体とすること(ただし、n、mは任意の整数である)
(2)波長633nmのラマン分光分析で測定したGバンドとDバンドの高さの比から求めたラマンG/D比が30以上であること
前記集合体を構成する単層カーボンナノチューブの平均直径は、3nm以下であることが好ましい。
前記カイラリティ(n,m)は、(6,4)または(5,4)であることが好ましい。
本発明の単層カーボンナノチューブ集合体を製造する方法は、2層カーボンナノチューブ集合体の外層と内層を分離することを特徴とする。
この製造方法は、2層カーボンナノチューブ含有分散液に50kW・h/g−CNT以上のエネルギーにて超音波照射することが好ましい。
また、前記超音波照射した後に密度勾配遠心分離により単層カーボンナノチューブ集合体を、所定のカイラリティ(n,m)を主体とする集合体に分離することができる。
本発明の単層カーボンナノチューブは、高品質で、特定のカイラリティを有する。また本発明の製造方法によれば、高品質で、特定のカイラリティを持つ単層カーボンナノチューブを効率的かつ簡便な方法で得ることができる。
図1はカーボンナノチューブ製造例で使用した流動床縦型反応装置の概略図である。 図2(a)〜(f)は実施例1において、超音波照射処理前後のカーボンナノチューブの透過型電子顕微鏡観察で評価した層数および直径分布であり、(a)は処理前の2層カーボンナノチューブの外層と内層の直径分布、(b)は処理前の2層カーボンナノチューブ集合体の外層と内層の直径分布、(c)は処理前の単層カーボンナノチューブの直径分布、(d)は処理後の2層カーボンナノチューブの外層と内層の直径分布、(e)は処理後の2層カーボンナノチューブ集合体の外層と内層の直径分布、(f)は処理後の単層カーボンナノチューブの直径分布である。 図3(a)〜(f)は実施例1において、超音波照射処理前後の単層カーボンナノチューブの透過型電子顕微鏡写真であり、(a)(b)は処理前、(c)〜(f)は処理後の写真である。 図4は実施例1において、密度勾配遠心分離後の層分離した写真である。 図5は密度勾配遠心分離により得られた(6,4)単層カーボンナノチューブの近赤外分光分析チャートである。 図6は比較例1の超音波処理前後で観察した典型的な多層カーボンナノチューブの透過型電子顕微鏡写真である。
カーボンナノチューブは、グラファイトの1枚面を巻いて筒状にした形状を有しており、1層に巻いたものを単層カーボンナノチューブ、多層に巻いたものを多層カーボンナノチューブ、その中で特に2層に巻いたものを2層カーボンナノチューブという。2層カーボンナノチューブは、内層を構成する単層カーボンナノチューブの外側に、外層を構成する他のカーボンナノチューブの層が1層巻かれている。
カーボンナノチューブの形態は、高分解能透過型電子顕微鏡で調べることができる。グラファイトの層は、透過型電子顕微鏡でまっすぐにはっきりと見えるほど好ましいが、グラファイト層は乱れている部分があっても構わない。
ここでいう単層カーボンナノチューブ集合体、2層カーボンナノチューブ集合体、多層カーボンナノチューブ集合体とは、各層数のカーボンナノチューブが主として混入しているカーボンナノチューブ集合体のことを表し、100本中51本以上がそれぞれ単層、2層、多層であるカーボンナノチューブであるものをいう。層数の評価は、透過型電子顕微鏡でカーボンナノチューブの層数が観測できる程度の測定倍率(例えば日本電子製 JEM−2100を使用するなら、測定倍率30万倍から80万倍)で画像を取り込み、画像をA4サイズになる大きさで表示して行う。その時20nmの縮尺が3cmから10cmの大きさになるように画像を取り込んで計測する。1つの視野中でカーボンナノチューブの層数、外径が観測できる全てのカーボンナノチューブについて層数と外径を評価し、本数が100本に到達するまで視野を変えて評価する。1つの試料で100本の計測ができない場合には、新しい試料を用意して同様の評価を行うことによって100本計測する。
単層カーボンナノチューブは、前述のとおりグラファイトの1枚面を巻いて筒状にした形状を有しており、その巻き方に応じてらせん構造が異なるので、一般にカイラリティ(らせん度:(n,m))によって定義されている。
単層カーボンナノチューブ集合体中、(n,m)のカイラリティが主体とは特定の(n,m)のカイラリティを有する単層カーボンナノチューブが50%以上含まれていることを意味する。
単層カーボンナノチューブ集合体中の特定のカイラリティ(n,m)の単層カーボンナノチューブの比率は近赤外分光計測定によって評価が可能である。近赤外分光分析を行うことによって、カイラリティに依存したピークが表れる。波長400nmから1400nm間のピーク全面積に対する特定のカイラリティ(n,m)のピークの面積比をその単層カーボンナノチューブ集合体中の比率と評価する。このような評価を行ったとき、その面積比が50%以上の時、単層カーボンナノチューブ集合体中、(n,m)のカイラリティを有する単層カーボンナノチューブが主体ということができる。その(n,m)のカイラリティが50%以上であれば、それ以外にいくつのカイラリティを有する単層カーボンナノチューブが含まれていても構わない。
カーボンナノチューブの品質の評価の指標として、カーボンナノチューブのラマン分光分析によるラマンG/D比を用いる。ラマン分光分析法で使用するレーザー波長は633nmとする。ラマン分光分析法により得られるラマンスペクトルにおいて1590cm-1付近に見られるピークはグラファイト由来のGバンドと呼ばれ、1350cm-1付近に見られるピークはアモルファスカーボンやグラファイトの欠陥に由来のDバンドと呼ばれる。このGバンド、Dバンドの高さ比、ラマンG/D比が高いカーボンナノチューブほど、グラファイト化度が高く、高品質であることを示している。本発明の単層カーボンナノチューブは非常に品質が高いためにラマンG/D比が30以上であり高品質カーボンナノチューブ集合体であることを示している。ラマンG/D比としては30以上であれば極めて高品質である。上限としてはG/D比が高いほど良いが、実質的に得られる単層カーボンナノチューブとして、200以下が妥当である。
得られる単層カーボンナノチューブの直径は細いほど好ましい。直径が細いほどカーボンナノチューブの長軸方向への電流が流れやすく、直径が太いと電流が拡散しやすくなるためである。単層カーボンナノチューブの平均直径は、好ましくは5nm以下であり、より好ましくは3nm以下、更に好ましくは2nm以下である。平均直径は上述した透過型電子顕微鏡観測によって層数を数えた方法で100本の直径を測定し、得られた結果から算出した算術平均値のことである。
本発明において、単層カーボンナノチューブのカイラリティ(n,m)は、好ましくは(6,4)または(5,4)であるとよい。カイラリティが(6,4)であると、単層カーボンナノチューブの電気的性質が半導体性になると共に、単層カーボンナノチューブの直径を約0.68nmと細くすることができる。またカイラリティが(5,4)であると、単層カーボンナノチューブの電気的性質が半導体性になると共に、単層カーボンナノチューブの直径を約0.62nmとさらに細くすることができる。
本発明では高品質で、特定のカイラリティを持った単層カーボンナノチューブを製造する方法として2層カーボンナノチューブを構成する外層と内層を分離して単層カーボンナノチューブを製造する方法を開示するものである。
2層カーボンナノチューブの外層とは2つの層のうち外側の層のことであり、外層の平均直径(2層カーボンナノチューブの平均外径とも言う)は7nm以下が好ましい。より好ましくは5nm以下であり、さらに好ましくは3nm以下である。下限としては1nm以上である。2層カーボンナノチューブの外径が細くなると必然的に内層を構成する単層カーボンナノチューブの平均直径も細くなる。2層カーボンナノチューブの外径の平均は上述した透過型電子顕微鏡観測によって層数を数えた方法で100本の直径を測定し、得られた100本の直径から算出した算術平均値のことである。
本発明において、2層カーボンナノチューブの外層と内層を分離する方法として、好ましくは超音波照射法を用いる。ここで超音波照射はある一定以上のエネルギーを与える必要がある。ここで言う超音波エネルギーとは単位重量(1g)のカーボンナノチューブ(g−CNT)に対して出力(W)と超音波処理時間(h)を乗じた値を与えた超音波のエネルギーとする。
超音波の周波数は特に限定しない。通常20kHz以上であれば、特に問題ない。超音波出力としては0.5Wから1000Wが用いられる。好ましくは0.8Wから800Wである。超音波の出力は出力密度(W/cm2)に超音波照射面の面積(cm2)を乗じても算出可能である。超音波の出力密度としては0.5W/cm2から100W/cm2が用いられる。好ましくは0.8W/cm2から50W/cm2である。超音波照射面の面積としては0.1cm2から100cm2が用いられる。好ましくは0.5cm2から50cm2である。
超音波処理時間としては特に限定しない。カーボンナノチューブに与えるエネルギーが重要であるため、高い出力の超音波照射機を使用した場合は短時間でも構わないし、低い出力の超音波照射機を用いたときには長時間処理を行う。通常1時間から100時間程度であり、好ましくは5時間から48時間程度である。
ここではカーボンナノチューブに与えるエネルギーが重要であり、2層カーボンナノチューブの外層から内層が分離するのに十分なエネルギーであれば特に制限はないが、2層カーボンナノチューブ1g当たりの超音波エネルギーで、50kW・h/(g−CNT)以上が好ましい。より好ましくは、70kW・h/(g−CNT)以上であり、さらに好ましくは90kW・h/(g−CNT)以上である。上限としては、分離したい単層カーボンナノチューブの品質を損なわない程度であれば、特に制限はないが、好ましくは300kW・h/(g−CNT)以下、より好ましくは250kW・h/(g−CNT)以下である。かかるエネルギーは用いる2層カーボンナノチューブの品質に応じて適宜設定することができる。
超音波照射機については特に限定しない。超音波洗浄機のような装置や投げ込み型の超音波ホモジナイザー等、所定のエネルギーを付与する超音波照射がなされれば特に限定しない。
超音波の出力密度なども装置によって異なるが、照射エネルギーとして換算することで所定以上のエネルギーを与えることができれば特に限定しない。
超音波照射時に界面活性剤などのカーボンナノチューブ分散剤を添加することが好ましい。界面活性剤等を添加しないと、カーボンナノチューブ同士のバンドル、絡まりなどが存在し、2層カーボンナノチューブの外層と内層の分離が効率的に進行しない。界面活性剤としてはドデシルスルホン酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等を利用することができる。さらに好ましくはコール酸ナトリウムである。
超音波処理時の2層カーボンナノチューブの処理濃度は特に限定しない。ただし、装置に対してあまりに多量を処理する場合は均一性の点で問題が生じることがあるため、撹拌や循環など2層カーボンナノチューブ含有分散液の均一性を保持する必要がある。またあまりに高濃度であるとカーボンナノチューブが分散しないという問題があるし、低濃度であると効率が悪いという問題がある。通常2層カーボンナノチューブ含有分散液の濃度は0.001wt%から10wt%である。より好ましくは0.005wt%から1wt%であり、さらに好ましくは0.01wt%から0.5wt%である。
超音波処理時の分散媒は特に限定しない。カーボンナノチューブが分散すればよいが、通常は水を用いる。
また分散中は温度が上昇する傾向があるが、分散媒が蒸発すると処理中の濃度が変わってしまうため、氷冷など分散液の温度をある程度保持した方が単層カーボンナノチューブが安定して得られる。通常は分散液の温度として0℃から60℃であり、好ましくは10℃から50℃である。
上記超音波分散処理を施すことにより、2層カーボンナノチューブの外層と内層が分離した単層カーボンナノチューブ混合物が得られる。この内層から得られた単層カーボンナノチューブは分散時に外層に包まれていたために、超音波照射による欠陥が生成することなく品質が高い単層カーボンナノチューブが得られる。このようにして得られた単層カーボンナノチューブ混合物を密度勾配遠心分離法により、特定のカイラリティを持つ単層カーボンナノチューブに分離することが可能である。
密度勾配遠心分離法とは密度勾配溶液を作製し、その中に超音波分散処理を施した単層カーボンナノチューブ分散液を注入し、遠心機を用いて遠心分離することで各カイラリティに単層カーボンナノチューブを分類する手法である。
超音波分散処理を施した単層カーボンナノチューブは密度勾配遠心分離を施す前に1000G程度の低加重にて遠心分離を用いて、大きな凝集塊を沈殿させ取り除いてもよいし、分散後そのままの分散液を用いても構わない。
密度勾配遠心分離法では界面活性剤を用いて単層カーボンナノチューブを孤立分散することが重要である。2層カーボンナノチューブの外層と内層を分離するとき、2層カーボンナノチューブを界面活性剤などの分散剤で分散、内層と外層の分離を行うが、その際に利用した界面活性剤をそのまま用いても良いし、新たに添加しても良い。界面活性剤としてはドデシルスルホン酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等を利用することができる。さらに好ましくはコール酸ナトリウムである。これら界面活性剤で単層カーボンナノチューブが包まれると親水性となり、水系溶媒に分散しやすくなる。これと同時に、界面活性剤の単層カーボンナノチューブへの吸着(巻きつき方)が直径又はカイラル角に依存するため、単層カーボンナノチューブのカイラリティ(n,m)によって、界面活性剤によってミセル化した単層カーボンナノチューブの比重が異なる。従って密度勾配媒体の中に配置して超遠心を施すことによって、ミセル化した単層カーボンナノチューブが等密度帯へ移動し分離される。
密度勾配遠心分離法では密度勾配プロファイル及び界面活性剤の選択が重要である。密度勾配プロファイルはミセル化した単層カーボンナノチューブの密度勾配媒体中での移動度を決める。密度勾配プロファイルを決めるため、使用する密度勾配調整剤としてイオディキサノール、しょ糖、スクロース、塩化セシウム等が用いられる。好ましくはイオディキサノールを用いる。イオディキサノールの密度勾配を例えば、0%から90%へと調製することで勾配を付けることが可能である。好ましくは0%から60%であり、さらに好ましくは20%から40%の勾配である。
このように密度勾配を作製した媒体中に界面活性剤で分散した単層カーボンナノチューブを注入する。単層カーボンナノチューブ分散液の濃度は0.01mg/mLから100mg/mLが好ましい。より好ましくは0.05mg/mLから50mg/mLであり、さらに好ましくは0.1mg/mLから20mg/mLである。注入するカーボンナノチューブの量としては媒体量の1/1000000から1/1が好ましい。より好ましくは1/500000から1/10であり、さらに好ましくは1/100000から1/100である。
密度勾配を作製した媒体中に界面活性剤で分散した単層カーボンナノチューブを注入した後、遠心分離を行う。この時、加える加重は10000Gから1000000Gが好ましい。より好ましくは50000Gから500000Gであり、さらに好ましくは100000Gから300000Gである。このような加重をかけ、1時間以上100時間以下の遠心分離処理を実施する。より好ましくは5時間以上80時間以下であり、さらに好ましくは10時間以上70時間以下である。
このような密度勾配遠心分離を行うと、単層カーボンナノチューブがカイラリティと界面活性剤の種類に依存して、所定のカイラリティの等密度帯へ移動することで肉眼で色が識別できる層ができ、この層をピペット等で抽出することでカイラリティ選択的な単層カーボンナノチューブを得ることが可能である。
得られる単層カーボンナノチューブのカイラリティは当初用いる2層カーボンナノチューブのカイラリティに依存する。得られる単層カーボンナノチューブのカイラリティとしては様々であるが、例えば(5,4)、(8,2)、(7,5)、(6,4)、(9,1)、(8,3)、(6,5)、(7,6)、(8,4)等がある。
本発明の単層カーボンナノチューブは2層カーボンナノチューブに対してかなり強力な超音波処理を施して、内層と外層を分離することで得られるが、この2層カーボンナノチューブとして、品質の高いものを用いて、分離することにより、超音波処理を施しても品質の高い単層カーボンナノチューブが得られるのである。また、分離のしやすさ、あるいは長さを損なわずに分離し得る観点から直線性の高い2層カーボンナノチューブであることがより好ましい。
このような品質の高い2層カーボンナノチューブの製造方法については特に制限はないが、ラマンG/D比が高く、また直線性に優れ、外径の細い2層カーボンナノチューブが簡便に製造できる方法として、例えば以下のようにして製造することが可能である。
担体に鉄を担持した粉末状の触媒を、反応器内で炭素含有化合物と500〜1200℃で接触させる。反応器は、上記カーボンナノチューブが得られる限りどの様なものを用いても構わないが、均質なカーボンナノチューブが得られるという点で縦型反応器を用いるのが好ましい。縦型反応器とは、例えば図1に例示するように、鉛直方向(以下「縦方向」称する場合もある)に設置された反応器を有し、該反応器の一方の端部から他方の端部に向けた方向に炭素含有化合物が流通し、この炭素含有化合物が、カーボンナノチューブ製造用触媒で形成される触媒層を通過する態様で流通し得る機構を備えたものである。反応器は、例えば管形状を有する反応器を好ましく用いることができる。なお、上記において、鉛直方向とは、鉛直方向に対して若干傾斜角度を有する方向をも含む(例えば水平面に対し90°±15°、好ましくは90°±10°)。最も好ましいのは鉛直方向である。なお、炭素含有化合物の供給部および排出部は、必ずしも反応器の端部である必要はなく、炭素含有化合物が、その流通過程で触媒層を通過すればよい。
触媒は、縦型反応器中、反応器の水平断面方向全面に存在させた状態にあるのが好ましい。このようにすることにより、触媒と炭素含有化合物を有効に接触させることができる。横型反応器の場合、このような状態にするには、重力がかかる関係上、触媒を左右から挟み込む必要がある。しかし、カーボンナノチューブの生成反応の場合、反応するに従って触媒上にカーボンナノチューブが生成して、触媒の体積が増加するので、左右から触媒を挟みこむ方法よりも縦型反応器中、反応器の水平断面方向全面に存在させた状態にある方が好ましい。本発明では反応器を縦型にし、反応器内にガスが透過できる台を設置して、その上に触媒を置くことによって、触媒を両側から挟みこむことなく、反応器の断面方向に均一に触媒を存在させることができる。本発明において、触媒を縦型反応器の水平断面方向全面に存在させた状態とは、水平断面方向に全体に触媒が広がっていて触媒底部の台が見えない状態を言う。反応器は耐熱性であることが好ましく、石英製、アルミナ製等の耐熱材質からなることが好ましい。
反応器内に設置された触媒層の下部、もしくは上部から炭素含有化合物を通過させて、触媒と接触させ、反応させることによりカーボンナノチューブを生成する。触媒と炭素含有化合物とを接触させる温度は、500〜1200℃である。温度は、600〜950℃がより好ましく、さらに好ましくは700℃〜900℃の範囲である。温度が低すぎると、カーボンナノチューブの収率が悪くなる。また温度が高すぎると、使用する反応器の材質に制約があると共に、カーボンナノチューブ同士の接合が始まり、カーボンナノチューブの形状のコントロールが困難になる。炭素含有化合物を接触させながら反応器を反応温度にしてもよいし、熱による前処理終了後、反応器を反応温度にしてから、炭素含有化合物の供給を開始しても良い。
鉄を担持する担体は、マグネシアが好ましい。触媒である鉄を、担体であるマグネシアに担持させることにより、鉄の粒径をコントロールしやすく、また高密度で鉄が存在しても高温下でシンタリングが起こりにくい。そのため、高品質なカーボンチューブを効率よく多量に合成することができる。さらに、マグネシアは酸性水溶液に溶けるので、酸性水溶液で処理するだけでマグネシアおよび鉄の両者を取り除くこともできるため、精製工程を簡便化することができる。
マグネシアは、市販品を使用しても良いし、合成したものを使用しても良い。マグネシアの好ましい製法としては、金属マグネシウムを空気中で加熱する、水酸化マグネシウムを850℃以上に加熱する、炭酸水酸化マグネシウム3MgCO3・Mg(OH)2・3H2Oを950℃以上に加熱する等の方法がある。
触媒に担持する鉄は、0価の状態とは限らない。反応中は0価の金属状態になっていると推定できるが、広く鉄を含む化合物または鉄種でよい。例えば、ギ酸鉄、酢酸鉄、トリフルオロ酢酸鉄、クエン酸アンモニウム鉄、硝酸鉄、硫酸鉄、ハロゲン化物鉄などの有機塩または無機塩、エチレンジアミン4酢酸錯体やアセチルアセトナート錯体のような錯塩などが用いられる。また鉄は微粒子であることが好ましい。微粒子の粒径は0.5〜10nmであることが好ましい。鉄が微粒子であると外径の細いカーボンナノチューブが生成しやすい。
マグネシアに鉄を担持させる方法は、特に限定されない。例えば、担持したい鉄の塩を溶解させた非水溶液(例えばエタノール溶液)中または水溶液中に、マグネシアを含浸し、攪拌や超音波照射などにより充分に分散混合した後、乾燥させる方法(含浸法)を用いることができる。さらに空気、酸素、窒素、水素、不活性ガスおよびそれらの混合ガスから選ばれたガス中または真空中で高温(300〜1000℃)で加熱することにより、マグネシアに鉄を担持させてもよい。
鉄担持量は、多いほどカーボンナノチューブの収量が上がるが、多すぎると鉄の粒子径が大きくなり、生成するカーボンナノチューブが太くなる。鉄担持量が少ないと、担持される鉄の粒子径が小さくなり、外径が細く、かつ外径分布も比較的狭いカーボンナノチューブが得られるが、収率が低くなる傾向がある。最適な鉄担持量は、マグネシアの細孔容量や外表面積、担持方法によって異なるが、マグネシアに対して0.1〜20重量%の鉄を担持することが好ましい。
カーボンナノチューブを生成させる反応の前に、触媒に熱による前処理を行ってもよい。熱による前処理の時間は、特に限定しないが、長すぎるとマグネシア上で金属の凝集が起こり、それに伴い外径の太いカーボンナノチューブが生成することがあるので、120分以内が好ましい。前処理の温度は、触媒活性が発揮されれば反応温度以下でも構わないし、反応温度と同じでも、反応温度以上でも構わない。熱による前処理を行うことにより、触媒をより活性な状態にすることもある。熱による前処理、およびカーボンナノチューブを生成させる反応は、減圧もしくは大気圧で行うことが好ましい。
触媒と炭素含有化合物の接触を減圧で行う場合は、真空ポンプなどで反応系を減圧にすることができる。また大気圧で前処理や反応を行う場合は、炭素含有化合物と希釈ガスを混合した、混合ガスとして触媒と接触させてもよい。
希釈ガスとしては、特に限定されないが、酸素ガス以外のものが好ましく使用される。酸素は爆発の可能性があるので通常使用しないが、爆発範囲外であれば使用しても構わない。希釈ガスとしては、窒素、アルゴン、水素、ヘリウム等が好ましく使用される。これらのガスは、炭素含有化合物の線速や濃度のコントロールおよびキャリヤガスとして効果がある。水素は、触媒金属の活性化に効果があるので好ましい。アルゴンの如き分子量が大きいガスは、アニーリング効果が大きく、アニーリングを目的とする場合には好ましい。特に窒素およびアルゴンが好ましい。
使用する炭素含有化合物は、G/D比の高い2層カーボンナノチューブ集合体が得られるならば、特に限定されないが、好ましくは炭化水素または酸素含有炭素化合物を使うとよい。炭化水素は芳香族であっても、非芳香族であってもよい。芳香族の炭化水素では、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、アントラセンまたはこれらの混合物などを使用することができる。また、非芳香族の炭化水素では、例えばメタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、エチレン、プロピレンもしくはアセチレン、またはこれらの混合物等を使用することができる。酸素含有炭素化合物としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールのごときアルコール類;アセトンのごときケトン類;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドのごときアルデヒド類;トリオキサン、ジオキサン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテルのごときエーテル類;酢酸エチルなどのエステル類;一酸化炭素またはこれらの混合物であってもよい。これらの中でも、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパンおよびプロピレンから選ばれた化合物が純度の高いカーボンナノチューブを得られる点で好ましい炭素含有化合物である。特にメタンを用いるとグラファイト化度の高い2層カーボンナノチューブが得られるので好ましい。これらは常温、常圧中で気体であるため、ガスとして供給量を規定して反応に供しやすい。他の炭素含有化合物は常圧で反応を行う場合、気化などの工程を追加する必要がある。
以上のように生成したカーボンナノチューブを気相中で酸化処理すると優先的に単層カーボンナノチューブやアモルファスカーボンが焼成され、除去される。それによって、ラマンG/D比の高い2層カーボンナノチューブが選択的に得られる。
カーボンナノチューブの気相中での酸化処理方法は、酸化性を有する気体の存在下にカーボンナノチューブ集合体をさらす工程である。上記酸化性の気体とは、処理温度にカーボンナノチューブ集合体をさらしたときに、カーボンナノチューブ集合体に対して酸化性を示す気体であれば特に制限はないが、一酸化炭素、二酸化炭素、オゾン、酸素、または空気などが挙げられる。気体の組成は、これらの気体の混合気体であっても、その他カーボンナノチューブ集合体に対して酸化性を示さない気体(不活性ガス)が混合されていてもかまわない。
気相中での酸化処理は、カーボンナノチューブの燃焼ピークよりあまりにも低い温度で焼成処理を行った場合、単層カーボンナノチューブは焼成されず、除去されない場合が多いため、カーボンナノチューブ集合体を示差熱分析したときのカーボンナノチューブの燃焼ピーク温度−50℃以上の温度で行うのがより好ましい。また、カーボンナノチューブは、通常石英管を反応管として合成される場合が多く、この場合は、酸化処理の温度は、1200℃以下であるのが好ましく、より好ましくは1000℃以下でおこなうのが好適である。酸化処理を1200℃を越える温度でおこなう場合は、使用する装置の材質を、それに耐えるように選択することが望ましい。また、カーボンナノチューブの燃焼ピーク温度よりあまりにも高い温度で酸化処理を行うと、今度は生成カーボンナノチューブ全てが焼成されて消失してしまう。よってカーボンナノチューブの燃焼ピーク温度付近で酸化処理するのが好ましく、カーボンナノチューブの燃焼ピーク温度±25℃付近で酸化処理するのがより好ましい。
酸化処理は電気炉でおこなっても良いし、カーボンナノチューブ合成後に、反応器内を空気雰囲気または空気の濃度を不活性ガスで低くしておこなってもよい。酸化処理は、電気炉でおこなう場合には通常約10g程度で行い、それに満たない少量の場合は、可能な量で行う。酸化処理時間は特に限定されない。通常は1時間から10時間の間で行うことが好ましい。
この様にして合成された2層カーボンナノチューブは好適な条件下ではラマンG/D比が30から200、より好適な条件下では40から200、更に好適な条件下では50から200である2層カーボンナノチューブを製造可能である。
また上記好ましい態様により得られる2層カーボンナノチューブを用いることで品質の高い(6,4)、(5,4)、(7,5)などを主体とする単層カーボンナノチューブが得られる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、下記の実施例は例示のために示すものであって、いかなる意味においても、本発明を限定的に解釈するものとして使用してはならない。
<参考例>
[カーボンナノチューブ製造用触媒調製例]
クエン酸アンモニウム鉄(緑色)(和光純薬工業社製)2.459gをメタノール(関東化学社製)500mLに溶解した。この溶液に、軽質マグネシア(岩谷社製)を100g加え、室温で60分間攪拌し、40℃から60℃で攪拌しながら減圧乾燥してメタノールを除去し、軽質マグネシア粉末に金属塩が担持された触媒を得た。
[カーボンナノチューブ製造例]
図1に示した流動床縦型反応装置でカーボンナノチューブを合成した。図1は前記流動床縦型反応装置の概略図である。
反応器100は内径32mm、長さは1200mmの円筒形石英管である。中央部に石英焼結板101を具備し、石英管下方部には、不活性ガスおよび原料ガス供給ライン104、上部には排ガスライン105および、触媒投入ライン103を具備する。さらに、反応器100を任意温度に保持できるように、反応器100の円周を取り囲む加熱器106を具備する。加熱器106には装置内の流動状態が確認できるよう点検口107が設けられている。
触媒12gを取り、密閉型触媒供給器102から触媒投入ライン103を通して、石英焼結板101上に上述した[カーボンナノチューブ製造用触媒調製例]で得られた触媒108をセットした。次いで、原料ガス供給ライン104からアルゴンガスを1000mL/分で供給開始した。反応器内をアルゴンガス雰囲気下とした後、温度を850℃に加熱した(昇温時間30分)。
850℃に到達した後、温度を保持し、原料ガス供給ライン104のアルゴン流量を2000mL/分に上げ、石英焼結板上の固体触媒の流動化を開始させた。加熱炉点検口107から流動化を確認した後、さらにメタンを95mL/分(メタン濃度4.5vol%)で反応器に供給開始した。該混合ガスを90分供給した後、アルゴンガスのみの流通に切り替え、合成を終了させた。
加熱を停止させ室温まで放置し、室温になってから反応器から触媒とカーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブ集合体を取り出した。
この触媒付きカーボンナノチューブ集合体の示差熱分析による燃焼ピーク温度は456℃であった。
この触媒付きカーボンナノチューブ集合体23.4gを磁性皿(150φ)に取り、予め446℃まで加熱しておいたマッフル炉(ヤマト科学社製、FP41)にて大気下、446℃で2時間加熱した後、マッフル炉から取り出した。次に、触媒を除去するため、カーボンナノチューブ集合体を6Nの塩酸水溶液に添加し、室温で1時間攪拌した。濾過して得られた回収物を、さらに6Nの塩酸水溶液に添加し、室温で1時間攪拌した。これを濾過し、数回水洗した後、濾過物を120℃のオーブンで一晩乾燥することでマグネシアおよび金属が除去されたカーボンナノチューブ集合体を57.1mg得ることができた。上記工程を繰り返し、以下の実施例の工程に供した。
一方、マッフル炉で消失した炭素量を調べるため、マッフル炉で加熱していない触媒付きのカーボンナノチューブ集合体5.2gを6Nの塩酸水溶液に添加し、室温で1時間攪拌した。濾過して得られた回収物を、さらに6Nの塩酸水溶液に添加し、室温で1時間攪拌した。これを濾過し、数回水洗した後、濾過物を120℃のオーブンで一晩乾燥してカーボンナノチューブ集合体が107.2mg得られた。これを基に換算すると、マッフル炉中での炭素の消失量は88%であった。
また、この様にしてマッフル炉で酸化処理されたカーボンナノチューブ集合体を高分解能透過型電子顕微鏡で観察した。この時の層数評価のサンプルは以下のように準備した。カーボンナノチューブ0.5mgとエタノール2mLを2mLサンプル瓶に入れ、超音波バス(ULTRASONIC CLEANER yamato 2510を使用)を用いて、15分間超音波照射をおこなった。カーボンナノチューブが分散したエタノール溶液をマイクログリッド(STEM 150Cuグリッド、カーボン補強済、グリッドピッチ150μm)上に滴下して乾燥した。この様に試料の塗布されたグリッドを透過型電子顕微鏡(日本電子製、JEM−2100)に設置し、測定を行った。測定倍率は40万倍で行った。加速電圧は80kVである。得られた測定像から100本のカーボンナノチューブの層数と直径を測定した。90本以上が2層カーボンナノチューブであり、残りは単層カーボンナノチューブと多層カーボンナノチューブであった。測定された2層カーボンナノチューブ集合体の外層の直径分布(Do)と内層の直径分布(Di)、2層カーボンナノチューブ集合体全体の外層と内層の直径分布(Dio)および単層カーボンナノチューブの直径分布(Ds)をそれぞれ図2(a)〜(c)に示す。さらに得られたカーボンナノチューブの透過型電子顕微鏡観察を行った。典型的なカーボンナノチューブを図3(a)、(b)に示す。また2層カーボンナノチューブの外層の平均直径は1.6nm、内層の平均直径は0.8nmであった。
また、この時のカーボンナノチューブの波長633nmによるラマン分光分析の結果、ラマンG/D比は75であった。
下記の実施例中、カーボンナノチューブの合成と各種物性評価は以下の方法で行った。
[ラマン分光分析によるカーボンナノチューブの性状評価]
共鳴ラマン分光計(ホリバ ジョバンイボン製 INF-300)に粉末試料を設置し、633nmのレーザー波長を用いて測定を行った。測定に際しては3箇所、別の場所にて分析を行い、ラマンG/D比はその相加平均で表した。
[近赤外分光分析によるカーボンナノチューブのカイラリティ評価]
紫外−可視−近赤外分光光度計(日本分光社製V−570)に単層カーボンナノチューブ分散液を設置し、測定を行った。
<実施例1>
参考例で得た2層カーボンナノチューブ集合体(3mg)と1wt%のコール酸ナトリウム・1水和物(Sigma−Aldrich社製)の水溶液20mLとを混合した分散液を、超音波ホモジナイザー(Sonifire 450D、Branson、出力密度20W/cm2、超音波照射面積1.27cm2)で18時間、氷水で冷却して処理した。この時の超音波照射量は152.4kW・h/(g−CNT)であった。
透過型電子顕微鏡観察を行ったところ、単層カーボンナノチューブが全体の51%となり、2層カーボンナノチューブから内層に相当する単層カーボンナノチューブが引き抜かれ、内層と外層が分離されたことがわかった。超音波処理後(分散後)の2層カーボンナノチューブ集合体の外層の直径分布(Do)と内層の直径分布(Di)、2層カーボンナノチューブ集合体全体の外層と内層の直径分布(Dio)および単層カーボンナノチューブの直径分布(Ds)を図2(d)〜(f)に示す。超音波処理前後の単層カーボンナノチューブと2層カーボンナノチューブの各直径分布から、超音波処理(分散処理)により直径が2層カーボンナノチューブの外層の直径と内層の直径に相当する広い範囲に渡って単層カーボンナノチューブ(SWCNT)が増えていることがわかった。この時得られたカーボンナノチューブの透過型電子顕微鏡観察を行ったところ、図3(c)〜(f)に示すように種々の直径を有する単層カーボンナノチューブが観察された。これは2層カーボンナノチューブの内層が外層と分離し、それぞれ観測されたものと考えられる。
イオディキサノール(第一化学薬品社製Optiprep)を用いて、20%から40%の密度勾配体を作製し、そこに上記カーボンナノチューブ分散サンプル1mLを密度勾配遠心法に掛けた。197000Gにて12時間超遠心分離することで図4に示す層分離ができた。分離した層のうち、図4の矢印で示す(5,4)主体と(6,4)主体の部分をそれぞれピペットで分取した後、フィルターろ過、水洗することで単層カーボンナノチューブを得た。本サンプルを重水に分散した。
紫外−可視−近赤外分光光度計を用いて、得られた単層カーボンナノチューブのカイラリティおよびその比率を評価した。比率については波長400nmから1400nm間のピーク全面積に対する特定のカイラリティ(n,m)のピークの面積比をその単層カーボンナノチューブ集合体中の比率と評価した。その結果、カイラリティ(6,4)が主体(約60%)の単層カーボンナノチューブ(図5)、カイラリティ(5,4)が主体(約60%)の単層カーボンナノチューブが得られた。ラマンG/D比はカイラリティ(6,4)が35、カイラリティ(5,4)が32であった。
<比較例1>
2層カーボンナノチューブ集合体の代わりに、多層カーボンナノチューブ(CCVD法にて製造、単層カーボンナノチューブおよび2層カーボンナノチューブを含まない100%多層カーボンナノチューブ)を用いた以外は実施例1と同様に操作を行った。多層カーボンナノチューブを含む分散液の超音波照射処理により、多層カーボンナノチューブ集合体の層数の一部が剥離したものが高分解能透過型電子顕微鏡で観察することができた。図6に比較例1の多層カーボンナノチューブにおける超音波照射処理前後の透過型電子顕微鏡観察写真を示した。しかし、この多層カーボンナノチューブから内部の単層カーボンナノチューブが抜けたものは得られなかった。
100 反応器
101 石英焼結板
102 密閉型触媒供給器
103 触媒投入ライン
104 原料ガス供給ライン
105 排ガスライン
106 加熱器
107 点検口
108 触媒

Claims (7)

  1. 下記(1)および(2)の特性を有する単層カーボンナノチューブ集合体。
    (1)所定のカイラリティ(n,m)を主体とすること(ただし、n、mは任意の整数である)
    (2)波長633nmのラマン分光分析で測定したGバンドとDバンドの高さの比から求めたラマンG/D比が30以上であること
  2. 単層カーボンナノチューブの平均直径が3nm以下であることを特徴とする請求項1記載の単層カーボンナノチューブ集合体。
  3. 前記カイラリティ(n,m)が(6,4)であることを特徴とする請求項1または2記載の単層カーボンナノチューブ集合体。
  4. 前記カイラリティ(n,m)が(5,4)であることを特徴とする請求項1または2記載の単層カーボンナノチューブ集合体。
  5. 2層カーボンナノチューブ集合体の外層と内層を分離し単層カーボンナノチューブ集合体を製造する方法。
  6. 前記2層カーボンナノチューブ集合体の外層と内層を分離する方法が、カーボンナノチューブ含有分散液に50kW・h/g−CNT以上のエネルギーにて超音波照射することである請求項5記載の単層カーボンナノチューブ集合体を製造する方法。
  7. 前記超音波照射した後に密度勾配遠心分離により単層カーボンナノチューブ集合体を、所定のカイラリティ(n,m)を主体とする集合体に分離することを特徴とする請求項6に記載の単層カーボンナノチューブ集合体を製造する方法。
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WO2018168833A1 (ja) * 2017-03-15 2018-09-20 東洋インキScホールディングス株式会社 多層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブの製造方法、分散液、樹脂組成物、および塗膜

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