本発明を実施するための形態は、以下の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、明らかになるであろう。但し、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
(実施例1の画像形成装置)
図2は、本発明の実施例1における画像形成装置を示す概略の構成図である。
この画像形成装置1は、被駆動素子(例えば、発光素子として3端子発光素子である発光サイリスタ)を用いた発光素子アレイを有する半導体装置を備えた露光装置(例えば、プリントヘッド)が搭載されたタンデム型電子写真カラープリンタにより構成されており、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)の各色の画像を各々に形成する4つのプロセスユニット10−1〜10−4を有し、これらが記録媒体(例えば、用紙)20の搬送経路の上流側から順に配置されている。各プロセスユニット10−1〜10−4の内部構成は共通しているため、例えば、マゼンタのプロセスユニット10−3を例にとり、これらの内部構成を説明する。
プロセスユニット10−3には、像担持体としての感光体(例えば、感光体ドラム)11が図2中の矢印方向に回転可能に配置されている。感光体ドラム11の周囲には、この回転方向上流側から順に、感光体ドラム11の表面に電荷を供給して帯電させる帯電装置12と、帯電された感光体ドラム11の表面に選択的に光を照射して静電潜像を形成する露光装置としてのプリントヘッド13が配設されている。更に、静電潜像が形成された感光体ドラム11の表面に、マゼンタ(所定色)のトナーを付着させて顕像を発生させる現像器14と、感光体ドラム11上のトナーの顕像を転写した際に残留したトナーを除去するクリーニング装置15が配設されている。なお、これら各装置に用いられているドラム又はローラは、図示しない駆動源からギア等を経由して動力が伝達され回転する。
画像形成装置1の下部には、用紙20を堆積した状態で収納する用紙カセット21が装着され、その上方に、用紙20を1枚ずつ分離させて搬送するためのホッピングローラ22が配設されている。用紙20の搬送方向におけるホッピングローラ22の下流側には、ピンチローラ23,24と共に用紙20を挟持することによってこの用紙20を搬送する搬送ローラ25と、用紙20の斜行を修正し、プロセスユニット10−1に搬送するレジストローラ26とが配設されている。これらのホッピングローラ22、搬送ローラ25及びレジストローラ26は、図示しない駆動源からギア等を経由して動力が伝達され回転する。
プロセスユニット10−1〜10−4の各感光体ドラム11に対向する位置には、それぞれ半導電性のゴム等によって形成された転写ローラ27が配設されている。各転写ローラ27には、感光体ドラム11上に付着されたトナーによる顕像を用紙20に転写する転写時に、各感光体ドラム11の表面電位とこれら各転写ローラ27の表面電位に電位差を持たせるための電位が印加されている。
プロセスユニット10−4の下流には、定着器28が配設されている。定着器28は、加熱ローラとバックアップローラとを有し、用紙20上に転写されたトナーを加圧・加熱することによって定着する装置であり、この下流に、排出ローラ29,30、排出部のピンチローラ31,32、及び用紙スタッカ部33が設けられている。排出ローラ29,30は、定着器28から排出された用紙20を、排出部のピンチローラ31,32と共に挟持し、用紙スタッカ部33に搬送する。これらの定着器28及び排出ローラ29等は、図示しない駆動源からギア等を経由して動力が伝達されて回転する。
このように構成される画像記録装置1は、次のように動作する。
先ず、用紙カセット21に堆積した状態で収納されている用紙20が、ホッピングローラ22によって、上から1枚ずつ分離されて搬送される。続いて、この用紙20は、搬送ローラ25、レジストローラ26及びピンチローラ23,24に挟持されて、プロセスユニット10−1の感光体ドラム11と転写ローラ27の間に搬送される。その後、用紙20は、感光体ドラム11及び転写ローラ27に挟持され、その記録面にトナー像が転写されると同時に感光体ドラム10−1の回転によって搬送される。同様にして、用紙20は、順次プロセスユニット10−2〜10−4を通過し、その通過過程で、各プリントヘッド13により形成された静電潜像を各現像器14によって現像した各色のトナー像が、その記録面に順次転写されて重ね合わされる。
このようにして記録面上に各色のトナー像が重ね合わされた後、定着器28によってトナー像が定着された用紙20は、排出ローラ29,30及びピンチローラ31,32に挟持されて、画像形成装置1の外部の用紙スタッカ部33に排出される。以上の過程を経て、カラー画像が用紙20上に形成される。
(実施例1のプリントヘッド)
図3は、図2中のプリントヘッド13の構成を示す概略の断面図である。図4は、図3中の基板ユニットを示す斜視図である。
図3に示すプリントヘッド13は、ベース部材13aを有し、このベース部材13a上に、図4に示す基板ユニットが固定されている。基板ユニットは、ベース部材13a上に固定されるプリント配線板13bと、このプリント配線板13b上に接着剤等で固定された複数の半導体チップ(以下単に「チップ」という。)13cとにより構成されている。各チップ13cには、自己走査部としての走査回路部100と、主発光部としての発光素子列(例えば、発光サイリスタ列)からなる発光素子アレイ200とが配置されている。各チップ13cにおける図示しない複数の端子と、プリント配線板13b上の図示しない配線パッドとは、ボンディングワイヤ13hにより電気的に接続されている。
複数のチップ13cにおける発光素子アレイ200上には、柱状の光学素子を多数配列してなるレンズアレイ(例えば、ロッドレンズアレイ)13dが配置され、このロッドレンズアレイ13dがホルダ13eにより固定されている。ベース部材13a、プリント配線板13b及びホルダ13eは、クランプ部材13f,13gにより固定されている。
(実施例1のプリンタ制御回路)
図5は、図2の画像形成装置1におけるプリンタ制御回路の構成を示すブロック図である。
このプリンタ制御回路は、画像形成装置1における印刷部の内部に配設された印刷制御部40を有している。印刷制御部40は、マイクロプロセッサ、読み出し専用メモリ(ROM)、随時読み書き可能なメモリ(RAM)、信号の入出力を行う入出力ポート、及びタイマ等によって構成され、図示しない上位コントローラからの制御信号SGl、及びビデオ信号(ドットマップデータを一次元的に配列したもの)SG2等によってプリンタ全体をシーケンス制御して印刷動作を行う機能を有している。印刷制御部40には、プロセスユニット10−1〜10−4の4つのプリントヘッド13、定着器28のヒータ28a、ドライバ41,43、用紙吸引センサ45、用紙排出センサ46、用紙残量センサ47、用紙サイズセンサ48、定着器用温度センサ49、帯電用高圧電源50、及び転写用高圧電源51等が接続されている。ドライバ41には現像・転写プロセス用モータ(PM)42が、ドライバ43には用紙送りモータ(PM)44が、帯電用高圧電源50には現像器14が、転写用高圧電源51には転写ローラ27が、それぞれ接続されている。
このような構成のプリンタ制御回路では、次のような動作を行う。
印刷制御部40は、上位コントローラからの制御信号SGlによって印刷指示を受信すると、先ず、温度センサ49によって定着器28内のヒータ28aが使用可能な温度範囲にあるか否かを検出し、この温度範囲になければヒータ28aに通電し、使用可能な温度まで定着器28を加熱する。次に、ドライバ41を介して現像・転写プロセス用モータ42を回転させ、同時にチャージ信号SGCによって帯電用高圧電源50をオン状態にし、現像器14の帯電を行う。
そして、セットされている図2中の用紙20の有無及び種類が用紙残量センサ47及び用紙サイズセンサ48によって検出され、その用紙20に合った用紙送りが開始される。ここで、用紙送りモータ44はドライバ43を介して双方向に回転させることが可能であり、最初に逆転させて、用紙吸引センサ45が検知するまで、セットされた用紙20を予め設定された量だけ送る。続いて、正回転させて用紙20をプリンタ内部の印刷機構内に搬送する。
印刷制御部40は、用紙20が印刷可能な位置まで到達した時点において、図示しない画像処理部に対してタイミング信号SG3(主走査同期信号、副走査同期信号を含む)を送信し、ビデオ信号SG2を受信する。画像処理部においてページ毎に編集され、印刷制御部40に受信されたビデオ信号SG2は、印刷データとして各プリントヘッド13に転送される。各プリントヘッド13は、それぞれ1ドット(ピクセル)の印刷のために設けられた走査回路部100及び発光素子アレイ200を有している。
ビデオ信号SG2の送受信は、印刷ライン毎に行われる。各プリントヘッド13によって印刷される情報は、負電位に帯電された図示しない各感光体ドラム11上において電位の上昇したドットとして潜像化される。そして、現像器14において、負電位に帯電された画像形成用のトナーが、電気的な吸引力によって各ドットに吸引され、トナー像が形成される。
その後、トナー像は転写ローラ27へ送られ、一方、転写信号SG4によって正電位に転写用高圧電源51がオン状態になり、転写ローラ27は感光体ドラム11と転写ローラ27との間隔を通過する用紙20上にトナー像を転写する。転写されたトナー像を有する用紙20は、ヒータ28aを内蔵する定着器28に当接して搬送され、この定着器28の熱によって用紙20に定着される。この定着された画像を有する用紙20は、更に搬送されてプリンタの印刷機構から用紙排出センサ46を通過してプリンタ外部へ排出される。
印刷制御部40は、用紙サイズセンサ48、及び用紙吸引センサ45の検知に対応して、用紙20が転写ローラ27を通過している間だけ転写用高圧電源51からの電圧を転写ローラ27に印加する。印刷が終了し、用紙20が用紙排出センサ46を通過すると、帯電用高圧電源50による現像器14への電圧の印加を終了し、同時に現像・転写プロセス用モータ42の回転を停止させる。以後、上記の動作を繰り返す。
(実施例1の印刷制御部及びプリントヘッド)
図1は、本発明の実施例1における図5中の印刷制御部40及びプリントヘッド13の概略の回路構成を示すブロック図である。
プリントヘッド13は、図4中のチップ13cに形成された走査回路部100及び発光素子アレイ200を有し、これらが複数の信号線95−1〜95−3を束ねた接続ケーブル95と、この接続ケーブル95の信号線95−1〜95−3に各々対応する接続点96−1〜96−3,97−1〜97−3を有する接続コネクタ96,97とを介して、印刷制御部40に接続されている。
走査回路部100により走査される発光素子アレイ200は、発光素子としての例えば3端子発光素子である複数のPゲート型発光サイリスタ210(=210−1〜210−n)を有し、これらの各発光サイリスタ210のアノードが第1電源(例えば、電源電圧VDD電源)に接続され、カソードがデータとしての駆動電流Ioutを流す共通端子INを介して接続コネクタ97−1に接続され、ゲートが走査回路部100の各出力端子Q1〜Qnに接続されている。各発光サイリスタ210は、アノード・カソード間に電源電圧VDDが印加された状態で、ゲートにトリガ信号(例えば、トリガ電流)が流れると、アノード・カソード間がオン状態になってカソード電流が流れ、発光する素子である。発光サイリスタ210−1〜210−nの総数は、例えば、A4サイズの用紙に1インチ当たり600ドットの解像度で印刷可能なプリントヘッド13の場合、4992個であり、これらが配列されることになる。
走査回路部100は、印刷制御部40から第1、第2クロック端子CK1,CK2、接続コネクタ96−2,96−3、接続ケーブル95−2,95−3、及び接続コネクタ97−2,97−3を介して供給される2相の第1、第2クロックにより駆動されて、発光素子アレイ200にトリガ電流を流してオン/オフ動作させる回路であり、3端子スイッチ素子(例えば、Pゲート型の自己走査サイリスタ)を用いた複数段の走査回路110(=110−1〜110−n、例えばn=4992)と、第2クロック端子CK2から出力される第2クロックを入力するスタート信号用の第1抵抗120と、走査方向決定用の複数のダイオード130(=130−2〜130−n、例えばn=4992)とを有し、自己走査型シフトレジスタにより構成されている。
自己走査サイリスタを用いた各段の走査回路110(=110−1〜110−n)は、第1端子(例えば、アノード)が第1電源としてのVDD電源に接続された自己走査サイリスタ111(=111−1〜111−n)と、この自己走査サイリスタ111の制御端子(例えば、ゲート)と第2電源(例えば、グランドGND)との間に接続された第2抵抗112(=112−2〜112−n)とにより、それぞれ構成されている。但し、初段の自己走査サイリスタ111−1のゲートとグランドGNDとの間には、第2抵抗112が設けられていない。
奇数段の走査回路110−1,110−3,・・・,110−(n−1)における各自己走査サイリスタ111−1,111−3,・・・,111−(n−1)は、アノードがVDD電源に接続され、第2端子(例えば、カソード)が接続コネクタ97−2、接続ケーブル95−2及び接続コネクタ96−2を介して第1クロック端子CK1に接続されている。初段の自己走査サイリスタ111−1のゲートは、第1抵抗120、接続コネクタ97−3、接続ケーブル95−3及び接続コネクタ96−3を介して第2クロック端子CK2に接続されると共に、初段の出力端子Q1に接続されている。3段目以降の奇数段の自己走査サイリスタ111−3,111−5,・・・,111−(n−1)における各ゲートは、各第2抵抗112(=112−3,112−5,・・・,112−(n−1))を介してグランドGNDに接続されると共に、奇数段の各出力端子Q3,Q5,・・・,Q(n−1)にそれぞれ接続されている。
偶数段の走査回路110−2,110−4,・・・,110−nにおける各自己走査サイリスタ111−2,111−4,・・・,111−nは、アノードがVDD電源に接続され、カソードが接続コネクタ97−3、接続ケーブル95−3及び接続コネクタ96−3を介して第2クロック端子CK2に接続され、ゲートが第2抵抗112(=112−2,112−4,・・・,112−n)を介してグランドGNDに接続されると共に、そのゲートが偶数段の各出力端子Q2,Q4,・・・,Qnにそれぞれ接続されている。
初段の自己走査サイリスタ111−1のゲートは、第1抵抗120、接続コネクタ97−3、接続ケーブル95−3及び接続コネクタ96−3を介して第2クロック端子CK2に接続されている。初段から最終段までの各段の自己走査サイリスタ111−1〜111−nにおけるゲート間は、ダイオード130−2,130−3,・・・,130−nを介してそれぞれ接続されている。各段の自己走査サイリスタ111−1〜111−nにおけるゲート間に接続されたダイオード130−2〜130−nは、発光サイリスタ210−1〜210−nが順次点灯する時の走査方向(例えば、図1において右方向)を決定するために設けられている。
各段の走査回路110における自己走査サイリスタ111は、発光素子アレイ200における発光サイリスタ210と同様なレイヤ構造を有し、且つ同様な回路動作を行う素子であるが、発光サイリスタ210のような発光機能を必要としないので、上層がメタル膜等の非透光性材料で覆われ、遮光して用いられる。
走査回路部100では、印刷制御部40の第1、第2クロック端子CK1,CK2から供給される2相の第1、第2クロックに基づき、自己走査サイリスタ111−1〜111−nが択一的にオン状態となり、このオン状態が発光素子アレイ200に伝達され、発光サイリスタ210−1〜210−nの内から発光すべき発光サイリスタ210−1〜210−nを指令する働きをする。この走査回路部100において、オン状態となる各段の走査回路110における自己走査サイリスタ111のオン状態が、2相の第1、第2クロック毎に隣接自己走査サイリスタ111に伝達され、シフトレジスタと同様の回路動作が行われる構成になっている。
なお、初段の自己走査サイリスタ111−1においては、2段目以降の自己走査サイリスク111−2〜111−nと違って、ゲートとGNDグランドとの間を接続する第2抵抗112が削除されているが、後述するように、これは部品点数を削減するための工夫であって、低コスト化への配慮が不要である場合には、自己走査サイリスタ111−1のゲートとグランドとの間に第2抵抗112を設ける構成とすることもできる。
即ち、初段の自己走査サイリスタ111−1におけるゲートと第2クロック端子CK2との間には、ダイオード130ではなく、第1抵抗120が設けられ、更に、そのゲートとグランドGNDとの間の第2抵抗112が削除されている。そのため、初段の自己走査サイリスタ111−1のゲートとグランドGNDとの間の抵抗を、第2クロック端子CK2側に接続替えすることで、そのゲートと第2クロック端子CK2との間に設けられていたダイオードを省略したものと見ることもできる。このような構成にすることで、以下のような利点がある。
画像形成装置1において、印刷動作を停止している待機状態においては、第1、第2クロック端子CK1,CK2から供給される第1、第2クロックが高レベル(以下「Hレベル」という。)にされるが、自己走査サイリスタ111−1のゲートとグランドGNDとの間に抵抗112を設ける場合には、Hレベルである第2クロック端子CK2から抵抗120及び前記抵抗112を介してグランドGNDに電流が流れ続けてしまう。このような待機時における電流は、無駄な電力消費を引き起こして画像形成装置1の待機時消費電力を増大させることとなって望ましくない。それに加えて、抵抗120及び前記抵抗112を介して流れる電流は、プリントヘッド13の製造後に行われる検査工程におけるリーク電流測定を困難なものとする。
半導体製造プロセスの欠陥に起因して自己走査サイリスタ111−1〜111−nに不具合がある時、μA以下の僅かなリーク電流を生じることがある。これを測定・検出することで不良品を取り除くことが行われるが、前述したような待機状態における消費電流を生じる場合には、前記リーク電流による僅かな電流増加を検出することが困難である。
これに対し、本実施例1の構成においては、自己走査サイリスタ111−1のゲートとグランドGNDとの間に抵抗112を設けていないので、この抵抗112を介して定常的に流れる電流を無くすことが可能となり、待機時消費電力を略ゼロとすることができて省エネルギー効果に優れたものとすることができる。その上、検査工程におけるリーク電流起因の潜在的な不良品を効果的に取り除くことができて、その品質を飛躍的に向上させることができる。
このような走査回路部100を有するプリントヘッド13に接続される印刷制御部40は、複数のデータ駆動回路60と、クロック駆動回路70及びRL微分回路90等とを有している。複数のデータ駆動回路60は、図示しない駆動用矩形波発生回路等から出力される駆動用矩形波の信号である駆動指令信号DRVONに基づいて、複数の発光素子アレイ200を時分割駆動するためのデータとしての駆動電流Ioutを共通端子INに流す回路である。クロック駆動回路70及びRL微分回路90は、図示しない走査用矩形波発生回路等から出力される走査用矩形波の信号である矩形波信号S69−1,S69−2に基づいて、走査回路部100に供給する2相の第1、第2クロックを生成するための回路である。
図1においては、説明を簡略化するために1個のデータ駆動回路60のみが図示されている。複数の発光素子アレイ200は、例えば、総数4992個の発光サイリスタ210−1〜210−nを有し、これらの発光サイリスタ210−1〜210−nが複数の発光サイリスタの組にグループ化され、各グループ毎に設けられたデータ駆動回路60によって、それらが同時並行的に分割駆動が行われる構成になっている。
一例として典型的な設計例を挙げると、発光サイリスタ210(=210−1〜210−n)を192個配列してアレイ化した発光素子アレイ200のチップを図4中のプリント配線板13b上に26個整列する。これにより、プリントヘッド13に必要な総数4992個の発光サイリスタ210−1〜210−nを構成している。この際、データ駆動回路60は前記26個の発光素子アレイ200に対応して設けられ、これらのデータ駆動回路60における出力端子の総数は26である。
一方、クロック駆動回路70及びRL微分回路90は、アレイ化した走査回路部100のチップを駆動するものであるが、単にクロックを生成するのみならず、後述する走査用のサイリスタ(発光サイリスタ210と区別するために単に「サイリスタ」という。)111の点弧エネルギーを制御する必要があり、プリントヘッド13の高速動作のためには、走査回路部100毎に設けることが好ましい。しかし、プリントヘッド13のデータ転送が低速で良い場合には、クロック駆動回路70及びRL微分回路90の出力端子と複数の走査回路部100を並列に接続することで、その回路を共用することができる。
これらのデータ駆動回路60、クロック駆動回路70、RL微分回路90、及び走査回路部100により、本実施例1の駆動装置が構成されている。なお、データ駆動回路60、クロック駆動回路70及びRL微分回路90は、図1においては、印刷制御部40の内部に配置されているが、プリントヘッド13の内部に配置しても良い。
データ駆動回路60は、図示しない駆動用矩形波発生回路等から供給される駆動信号としての駆動指令信号DRVONを反転する相補型MOSトランジスタ(以下「CMOS」という。)からなるCMOSインバータ61と、このCMOSインバータ61の出力端子とデータ端子DAとの間に接続された抵抗62とにより構成されている。CMOSインバータ61は、Pチャネル型MOSトランジスタ(以下「PMOS」という。)61aと、Nチャネル型MOSトランジスタ(以下「NMOS」という。)61bとを有し、これらがVDD電源とグランドGNDとの間に直列に接続されている。
即ち、PMOS61aは、ゲートに駆動指令信号DRVONが入力され、ソースがVDD電源に接続され、ドレーンが抵抗62の一端に接続されている。NMOS61bは、ゲートに駆動指令信号DRVONが入力され、ソースがグランドGNDに接続され、ドレーンが抵抗62の一端に接続されている。抵抗62の他端は、データ端子DAに接続されている。データ端子DAは、接続コネクタ96−1、接続ケーブル95−1、接続コネクタ97−1、及びプリントベッド13側の共通端子INを介して、複数の発光サイリスタ210のカソードと共通に接続され、複数の発光サイリスタ210が順次駆動される時のカソード電流である駆動電流Ioutが流入する端子である。
クロック駆動回路70は、図示しない走査用矩形波発生回路等から出力される第1、第2の走査信号としての矩形波信号S69−1,S69−2をそれぞれ駆動する第1及び第2出力バッファ80−1,80−2と、この第1及び第2出力バッファ80−1,80−2の出力側にそれぞれ接続された2相の第1、第2クロックパルス出力用の第1、第2出力端子CK1R,CK2Rとを有している。
第1及び第2出力バッファ80−1,80−2は、同一の回路構成であって、例えば、CMOSインバータを縦続に接続する構成を用いることができるが、より好ましくは、その出力状態としてHレベル状態、低レベル(以下「Lレベル」という。)状態の他、ハイ(高)インピーダンス(以下「Hi−Z」という。)状態とすることが可能なスリーステート型の出力バッファ構成とすることが望ましい。スリーステート型の第1及び第2出力バッファ80−1,80−2では、制御信号C1,C2がHレベルの時には、出力端子の論理レベルが入力端子の論理レベルと等しく、制御信号C1,C2がLレベルの時には、出力端子がHi−Z状態となる。このようなスリーステート型の第1及び第2出力バッファ80−1,80−2を用い、出力信号のHレベルからLレベル、あるいは、LレベルからHレベルの信号遷移の途中にHi−Z出力状態をおくことで、自己走査サイリスタ111のゲートトリガに適した駆動信号波形を発生させることができる。
第1、第2出力端子CK1R,CK2Rには、出力側に第1、第2クロック端子CK1,CK2を有するRL微分回路90が接続されている。RL微分回路90は、第1出力端子CK1R及び第1クロック端子CK1間に接続された抵抗91と、第2出力端子CK2R及び第2クロック端子CK2間に接続された抵抗92と、第1クロック端子CK1及び第2クロック端子CK2間に直列に接続されたインダクタ93及び抵抗94とにより構成されている。
インダクタ93は、例えば、高透磁率を備えたフェライト材料の表層又は内装に厚膜配線層を設け、インダクタ電極の一端から他端に貫通するように配線を形成したフェライトビーズ等を用いることができる。
RL微分回路90の出力側の第1、第2クロック端子CK1,CK2の内、第1クロック端子CK1は、接続コネクタ96−2、接続ケーブル95−2及び接続コネクタ97−2を介して走査回路部100に接続され、第2クロック端子CK2は、接続コネクタ96−3、接続ケーブル95−3及び接続コネクタ97−3を介して走査回路部100に接続されている。
なお、図1においては、抵抗91,92を設けているが、クロック駆動回路70の駆動能力によっては、抵抗91,92の抵抗値を略ゼロとすることができて、その場合には抵抗91,92を省略することも可能である。同様に、抵抗94を省略することもできる。
(実施例1の発光サイリスタ)
図6(a)〜(c)は、図1中の発光サイリスタ210を示す構成図である。
図6(a)は、発光サイリスタ210の回路シンボルを示し、アノードA、カソードK、及びゲートGの3つの端子を有している。
図6(b)は、発光サイリスタ210の断面構造を示す図である。発光サイリスタ210は、例えば、P型GaAsウェハ基材を用い、公知のMO−CVD(Metal Organic-Chemical Vapor Deposition)法により、GaAsウェハ基材の上層に所定の結晶をエピタキシャル成長させることで製造される。
即ち、図示しない所定のバッファ層をエピタキシャル成長させた後、AlGaAs材料にP型不純物を含ませたP型層211と、N型不純物を含ませ成層したN型層212と、P型不純物を含ませたP型層213と、N型不純物を含ませ成層したN型層214とを順に積層させたPNPNの4層構造からなるウェハを形成する。次いで、公知のエッチング法を用い、図示しない溝部を形成することで、素子分離を行う。又、前記エッチングの過程で、P型層213の一部を露出させ、この露出領域に金属配線を形成してゲートGを形成する。同様に、最上層となるN型層214の一部を露出させ、この露出領域に金属配線を形成してカソードKを形成する。更に、GaAs基材の裏面部に相当するP型層211の底面に、金属電極を形成してアノードAを形成する。
図6(c)は、図6(b)と対比させて描いた発光サイリスタ210の等価回路図である。発光サイリスタ210は、PNPトランジスタ(以下「PNPTR」という。)221とNPNトランジスタ(以下「NPNTR」という。)222とからなり、PNPTR221のエミッタが発光サイリスタ210のアノードAに相当し、NPNTR222のベースが発光サイリスタ210のゲートGに相当し、NPNTR222のエミッタが発光サイリスタ210のカソードKに相当している。又、PNPTR221のコレクタは、NPNTR222のベースに接続され、PNPTR221のベースが、NPNTR222のコレクタに接続されている。
なお、図6に示す発光サイリスタ210では、GaAsウェハ基材上にAlGaAs層を構成したものであるが、これに限定されるものではなく、GaP、GaAsP、AlGaInP、InGaAsPといった材料を用いるものであっても良く、更には、サファイヤ基板上にGaNやAlGaN、InGaNといった材料を成膜したものであっても良い。
(実施例1の印刷制御部及びプリントヘッドの概略動作)
図1において、例えば、印刷制御部40内の駆動指令信号DRVONがLレベルの場合、データ駆動回路60におけるCMOSインバータ61を構成するPMOS61aがオン状態、NMOS61bがオフ状態となり、抵抗62を介してデータ端子DAがHレベルとなる。そのため、接続コネクタ96−1、接続ケーブル95−1及び接続コネクタ97−1を介して、プリントヘッド13側の共通端子IN及び各発光サイリスタ210のカソードがHレベルに上昇する。この結果、各発光サイリスタ210のアノード・カソード間電圧は略0Vとなって、そこに流れる駆動電流Ioutがゼロとなり、発光サイリスタ210−1〜210−nが全て非発光状態となる。
これに対し、駆動指令信号DRVONがHレベルの場合、CMOSインバータ61を構成するPMOS61aがオフ状態、NMOS61bがオン状態となって、抵抗62を介してデータ端子DAがLレベルとなる。この結果、接続コネクタ96−1、接続ケーブル95−1及び接続コネクタ97−1を介して共通端子INも略GND電位(≒0V)となり、各発光サイリスタ210のアノード・カソード間に略電源電圧VDDが印加される。
この際、発光サイリスタ210−1〜210−nの内、第2クロック端子CK2から抵抗120を介して供給される第2クロックのHレベルでシフト動作を開始する走査回路部100により、発光指令されている発光サイリスタ210のゲートのみを選択的にHレベルとすることで、この発光サイリスタ210のゲートにトリガ電流を生じ、発光指令されているサイリスタ210がターンオンすることになる。ターンオンした発光サイリスタ210のカソードに流れる電流は、データ端子DAに流入する電流(即ち、駆動電流Iout)であり、発光サイリスタ210は発光状態となってその駆動電流Ioutの値に応じた発光出力を生じる。
即ち、発光サイリスタ210−1〜210−nの動作を考えるにあたり、走査回路部100の各段の走査回路110−1〜110−nにおけるオンしているサイリスタ111(=111−1〜111−n)に着目すると、発光サイリスタ210のアノードには電源電圧VDDが印加されており、そのカソードがLレベルにされると、発光サイリスタ210のアノード・カソード間には電圧が印加される。一方、走査回路部100における各段のサイリスタ111のゲートと、各発光サイリスタ210のゲートとがそれぞれ接続されているため、サイリスタ111のゲート・カソード間にも電圧が印加されることになる。この時、発光サイリスタ210−1〜210−nの内、走査回路部100により発光指令されている発光サイリスタ210のゲートのみを選択的にHレベルとすることで、この発光サイリスタ210のゲートにはトリガ電流を生じ、発光指令されている発光サイリスタ210がターンオンすることになる。この際、発光サイリスタ210のカソードに流れる電流は、データ端子DAに流入する駆動電流Ioutであって、前記発光サイリスタ210が発光状態になってその駆動電流Ioutの値に応じた発光出力を生じる。
(実施例1の印刷制御部及びプリントヘッドの詳細動作)
図7は、図1のプリントヘッド13及び印刷制御部40の詳細な動作を示すタイミングチャートである。
この図7では、図2の画像形成装置1での印刷動作時における1ライン走査において、図1の発光サイリスタ210−1〜210−n(例えば、n=6)を順次点灯させる場合の動作波形が示されている。
本実施例1のように、サイリスタ111を用いた走査回路部100の場合、クロック端子CK1,CK2から供給される2相のクロックが用いられ、この2相のクロックは、出力端子CK1R,CK2Rを備えたクロック駆動回路70によって駆動される。
図7のタイミングチャートにおいて、左端部に示す状態においては、制御信号C1,C2がHレベルとなり、図示しない走査用矩形波発生回路等から出力された矩形波信号S69−1,S69−2が出力バッファ80−1,80−2でそれぞれ駆動され、これらの出力端子CK1R,CK2Rから出力されるクロックパルスがそれぞれHレベルとされる。
クロック駆動回路70の出力端子CK1Rは、抵抗91を介してクロック端子CK1と接続され、更に、出力端子CK2Rも、抵抗92を介してクロック端子CK2と接続されている。そのため、図7のタイミングチャートの左端部に示す状態においては、奇数組のサイリスタ111−1,111−3,111−5と偶数組のサイリスタ111−2,111−4,111−6とのいずれもそのカソードがHレベルとされ、オフ状態となっている。又、駆動指令信号DRVONはLレベルとなっており、CMOSインバータ61の出力電位がHレベルであって、抵抗62、データ端子DA、接続コネクタ96−1、接続ケーブル95−1、接続コネクタ97−1、及び共通端子INを介して、発光サイリスタ210−1〜210−6のカソードもまたHレベルとなって、これらの発光サイリスタ210−1〜210−6がオフ状態にある。
以下、1段目、2段目走査回路110−1,110−2における各サイリスタ111−1,111−2のターンオン過程(1)、(2)を説明する。
(1) 1段目走査回路110−1におけるサイリスタ111−1のターンオン過程
図7の時刻t1において、出力バッファ80−1の出力端子CK1RがHレベルからLレベルに立ち下がる。これに伴い、クロック端子CK1の電位が、a部に示すようにLレベルに立ち下がり、奇数組のサイリスタ111−1,111−3,111−5のカソード電位がLレベルとなる。時刻t1においては、出力バッファ80−2の出力端子CK2RがHレベルとされており、クロック端子CK2から抵抗120、及びサイリスタ111−1のゲート・カソード間を通り、クロック端子CK1に至る経路に電流を生じ、この電流をトリガ電流としてサイリスタ111−1がターンオンすることになる。
典型的な設計例では、サイリスタ111−1をオンさせようとする時、ゲート・カソード間電圧が約1.6Vである。又、電源電圧VDDは3.3Vであって、前記クロック端子CK2のHレベルの電位が電源電圧VDDと略等しく、サイリスタ111−1にゲート電流を生じさせるのに十分な値となっている。そのため、サイリスタ111−1をターンオンさせようとする時、このカソードには後述するようなアンダシュート波形を与える必要がない。
時刻t2において、駆動指令信号DRVONがHレベルに立ち上がり、これがCMOSインバータ61で反転され、抵抗62を介してデータ端子DAがLレベルに遷移する。これにより、共通端子INを介して、発光サイリスタ210−1のアノード・カソード間には、電源電圧VDDと略等しい電圧が印加される。この時、サイリスタ111−1はオンしているので、このサイリスタ111−1のゲートに対してゲート電位を共有している発光サイリスタ210−1がオン状態となり、このカソードには、b部に示すように駆動電流Ioutを生じ、この駆動電流Ioutの値に応じた発光出力を生じる。
時刻t3において、駆動指令信号DRVONがLレベルに立ち下がり、これがCMOSインバータ61で反転され、抵抗62を介してデータ端子DAがHレベルに遷移する。これにより、共通端子INを介して、発光サイリスタ210−1のアノード・カソード間電圧が略ゼロとなってこの発光サイリスタ210−1がオフし、c部に示すように駆動電流Ioutが略ゼロとなる。
本例では、発光サイリスタ210−1を発光させて、図2の感光体ドラム11上に潜像を形成することができる。この時の露光エネルギー量は、駆動電流Ioutの値に応じて定まる発光パワーと露光時間(=時刻t3−時刻t2)との積であり、発光サイリスタ210−1等に製造ばらつきに起因する発光効率の差があったとしても、前記露光時間を発光サイリスタ210毎に調整することで、露光エネルギー量のばらつきを補正することができる。又、発光サイリスタ210−1を発光させる必要のない場合には、時刻t2から時刻t3の間の駆動指令信号DRVONをLレベルのままとする。このように、駆動指令信号DRVONによって発光サイリスタ210の発光の有無もまた制御することができる。
(2) 2段目走査回路110−2におけるサイリスタ111−2のターンオン過程
時刻t4において、制御信号C2がLレベルとなり、出力バッファ80−2の出力端子CK2RがHi−Z状態になる。このHi−Z状態は、図7においてHレベルとLレベルの間の中間電位に横破線で示されている。
ここで、時刻t4の直前において、出力端子CK2RがHレベルであり、出力端子CK1RがLレベルとなっているので、出力端子CK2Rから抵抗92,94、インダクタ93、抵抗91、及び出力端子CK1R(Lレベル)に至る経路で、電流を生じていた。ところが、時刻t4の直後に、出力端子CK2RがHi−Z状態となって前記電流が遮断されるため、インダクタ93に逆起電圧を生じ、クロック端子CK2にはd部に示すように、横線で示されるGND電位以下のアンダシュート波形を生じる。
この時、サイリスタ111−2に着目すると、このアノード電位は電源電圧VDDであり、典型的な設計例では3.3Vとされる。一方、ダイード130−2のアノードは、サイリスタ111−1のゲートに接続されており、このサイリスタ111−1がオン状態になっているため、そのゲート電位は電源電圧VDDに近接したHレベルである。そのため、サイリスタ111−1のゲートからダイオード130−2のアノード・カソード間を通り、サイリスタ111−2のゲート・カソード間を経由してクロック端子CK2に至る電流が流れ、この電流をトリガ電流としてサイリスタ111−2がターンオンすることになる。
時刻t5において、出力バッファ80−2の出力端子CK2RがLレベルとされ、前記サイリスタ111−2のカソード電流の定常的な流入経路が確保される。ここで、時刻t5と相前後して、出力バッファ80−1の出力端子CK1RがHレベルとされ、抵抗91を介してクロック端子CK1もHレベルとなる。これにより、サイリスタ111−1のカソード電位が上昇して、このアノード・カソード間電圧が急激に減少し、このサイリスタ111−1がターンオフする。
時刻t6において、駆動指令信号DRVONがHレベルに立ち上がり、これがCMOSインバータ61で反転され、抵抗62を介してデータ端子DAがLレベルに遷移する。データ端子DAがLレベルに遷移すると、発光サイリスタ210−2のアノード・カソード間には、電源電圧VDDと略等しい電圧が印加される。前述したように、時刻t6において、サイリスタ111−2はオン状態にあり、サイリスタ111−1がオフ状態となっている。このように、サイリスタ111−2はオンしているので、このゲートに対してゲート電位を共有している発光サイリスタ210−2がオンし、このカソードにはe部に示すように駆動電流Ioutを生じ、この駆動電流Ioutの値に応じた発光出力を生じる。
次いで、時刻t7において、駆動指令信号DRVONがLレベルに立ち下がり、これがCMOSインバータ61で反転され、抵抗62を介してデータ端子DAがHレベルに遷移する。これにより、発光サイリスタ210−2のアノード・カソード間電圧は略ゼロとなってこの発光サイリスタ210−2がオフし、f部に示すように駆動電流Ioutが略ゼロとなる。
以下同様にして、出力バッファ80−1,80−2における出力端子CK1R,CK2R電位の遷移と駆動指令信号DRVONのオン、オフとが順に発生し、発光サイリスク210−3〜210−6を順次点灯することができる。
(図7中のアンダシュート波形の説明)
図8(a)、(b)は、図1中のクロック駆動回路70内のスリーステート型の第1、第2出力バッファ80−1,80−2、RL微分回路90、及び走査回路110−1,110−2と図7中のタイミングチャートとの要部を示す図であり、同図(a)は要部の回路図、及び、同図(b)は要部の電圧波形図である。
図8(a)において、クロック駆動回路70を構成するスリーステート型の第1及び第2出力バッファ80−1,80−2の内、スリーステート型の第1出力バッファ80−1は、制御信号C1を反転するインバータ81−1と、制御信号C1及び矩形波信号S69−1の否定論理積を求める2入力の否定論理積回路(以下「NAND回路」という。)82−1と、インバータ81−1の出力信号及び矩形波信号S69−1の否定論理和を求める2入力の否定論理和回路(以下「NOR回路」という。)83−1とを有し、これらのNAND回路82−1及びNOR回路83−1の出力側に、第1スイッチ素子(例えば、第1導電型MOSトランジスタとしてのPMOS)84−1、第2スイッチ素子(例えば、第2導電型MOSトランジスタとしてのNMOS)85−1、ダイオード84−1a、及び第1ダイオード85−1aが接続されている。
PMOS84−1は、ゲートがNAND回路82−1の出力端子に接続され、ソースが第1電源(例えば、VDD電源)に接続され、ドレーンが第1出力端子CK1Rに接続されている。NMOS85−1は、ゲートがNOR回路83−1の出力端子に接続され、ドレーンが第1出力端子CK1Rに接続され、ソースが第2電源(例えば、グランドGND)に接続されている。ダイオード84−1aは、カソードがVDD電源に接続され、アノードが第1出力端子CK1Rに接続されている。ダイオード85−1aは、カソードが第1出力端子CK1Rに接続され、アノードがグランドGNDに接続されている。
なお、2つのダイオード84−1a,85−1aの内、一方のダイオード84−1aは動作上不要であるが、PMOS84−1及びNMOS85−1を製造する際に、そのサブストレート及びドレーン間に寄生ダイオードとして形成される。
スリーステート型の第2出力バッファ80−2は、第1出力バッファ80−1と同一の回路であり、制御信号C2を反転するインバータ81−2と、制御信号C2及び矩形波信号S69−2の否定論理積を求める2入力のNAND回路82−2と、インバータ81−2の出力信号及び矩形波信号S69−1の否定論理和を求める2入力のNOR回路83−2とを有し、これらのNAND回路82−2及びNOR回路83−2の出力側に、第3スイッチ素子(例えば、PMOS)84−2、第4スイッチ素子(例えば、NMOS)85−2、ダイオード84−2a、及び、第2ダイオード85−2aが接続されている。
PMOS84−2は、ゲートがNAND回路82−2の出力端子に接続され、ソースがVDD電源に接続され、ドレーンが第2出力端子CK2Rに接続されている。NMOS85−2は、ゲートがNOR回路83−2の出力端子に接続され、ドレーンが第2出力端子CK2Rに接続され、ソースがグランドGNDに接続されている。ダイオード84−2aは、カソードがVDD電源に接続され、アノードが第2出力端子CK1Rに接続されている。ダイオード85−2aは、カソードが第2出力端子CK1Rに接続され、アノードがグランドGNDに接続されている。
第1出力バッファ80−1と同様に、2つのダイオード84−2a,85−2aの内、一方のダイオード84−2aは動作上不要であるが、PMOS84−2及びNMOS85−2を製造する際に、そのサブストレート及びドレーン間に寄生ダイオードとして形成される。
第1出力バッファ80−1及び第2出力バッファ80−2は、同一の動作を行うので、例えば、第1出力バッファ80−1の動作を以下説明する。
第1出力バッファ80−1において、制御信号C1がHレベル、及び矩形波信号S69−1がLレベルであって、NAND回路82−1及びNOR回路83−1の出力端子が共にHレベルの場合、PMOS84−1がオフ状態、NMOS85−1がオン状態となって、出力端子CK1RがLレベルとなる。制御信号C1及び矩形波信号S69−1が共にHレベルであって、NAND回路82−1及びNOR回路83−1の出力端子が共にLレベルの場合、PMOS84−1がオン状態、NMOS85−1がオフ状態となって、出力端子CK1RがHレベルとなる。又、制御信号C1がLレベルの場合、NAND回路82−1の出力端子がHレベル、NOR回路83−1の出力端子がLレベルであって、PMOS84−1及びNMOS85−1が共にオフ状態となって、出力端子CK1RがHi−Z状態となる。
図1を用いて説明したように、サイリスタ111−1は、アノードがVDD電源に接続され、カソードがクロック端子CK1と接続され、更にそのクロック端子CK1が抵抗91を介して出力端子CK1Rに接続されている。サイリスタ111−2は、アノードがVDD電源に接続され、カソードがクロック端子CK2に接続され、更にそのクロック端子CK2が抵抗92を介して出力端子CK2Rに接続されている。クロック端子CK1,CK2間は、インダクタ93及び抵抗94を介して接続されている。サイリスタ111−1のゲートは、抵抗120を介してクロック端子CK2に接続されている。
前述したように、サイリスタ111−1のターンオン過程においては、そのゲートが電源電圧VDDと略等しいHレベルとなり、クロック端子CK2をLレベルにすることで、サイリスタ111−2にゲート電流を生じさせて、このサイリスタ111−2をターンオンすることができる。
次に、サイリスタ111−2のターンオン過程を考える。
これは、図7及び図8(b)のタイミングチャートの時刻t4の直前の場合に相当するものであって、出力バッファ80−2の出力端子CK2RがHレベル、出力バッファ80−1の出力端子CK1RがLレベルになっている。
時刻t4の直前においては、図8(a)の実線矢印で示す向きに電流I1を生じる。電流I1は、VDD電源、PMOS84−2、出力端子CK2R、抵抗92,94、インダクタ93、抵抗91、及びNMOS85−1を経由してグランドGNDに至る経路を通る。
次いで、時刻t4の直後において、制御信号C2がLレベルになり、PMOS84−2がオフ状態に遷移して出力端子CK2RがHi−Z状態になる。これにより、インダクタ93には図8(a)中の+極性及び−極性の向きに逆起電圧を生じ、破線矢印にて示す向きの電流I2を生じる。電流I2の経路は、インダクタ93の+極性から抵抗91、及びNMOS85−1を経由してグランドGNDに至り、グランドGNDからダイオード85−2a、及び抵抗92,94を経由してインダクタ93の−極性に戻る第2の電流経路である。
この第2の電流経路に着目すると、ダイオード85−2aのアノードがグランドGNDに接続されているので、出力端子CK2Rの電位は、GND電位よりもダイオード85−2aの順電圧分低い電位となり、クロック端子CK2の電位は、ダイオード85−2aの順電圧よりも抵抗92の両端に生じる電圧降下分だけ更に低い電位となることが判る。この結果、一点鎖線矢印にて示すように、VDD電源からオン状態にあるサイリスタ111−1のアノード・ゲート間、ダイオード130−2、及びサイリスタ111−2のゲート・カソード間を通ってクロック端子CK2に至る経路に電流I3を生じ、サイリスタ111−2のゲート・カソード間に生じるゲート電流がトリガ電流となってサイリスタ111−2がターンオンする。
図8(b)は以上の過程を示す波形図であって、出力端子CK2RがHレベルからHi−Z状態に遷移する時、クロック端子CK2には、d部に示すように急峻に立ち下がったアンダシュート部を生じて、GND電位よりも電圧Vp分低くすることができる。
典型的な設計例では、電源電圧VDDが3.3Vであり、ダイオード130−2の順電圧Vfを約1.6V、サイリスタ111−2のゲート・カソード間に生じるPN接合の順電圧Vgkもまた1.6Vである。又、オン状態にあるサイリスタ111−1のゲート電位は、電源電圧VDDに略等しい3.3Vである。一点鎖線の矢印経路に電流I3を生じさせるためには、
Vf+Vgk<VDD+Vp
であることを必要としている。この時、図8(b)に示すクロック端子CK2の電位波形にアンダシュート部dが無く、Vp=0Vであると、
Vf+Vgk=l.6V+l.6V=3.2V
となって電源電圧VDDと同程度の値なので、サイリスタ111−2をターンオンさせるに十分なゲートトリガ電流を得ることができない。
これに対し、本実施例1のように、例えば前記アンダシュート波形として電圧Vp=0.6Vといった値を与えることで、
VDD+Vp=3.3V+0.6V=3.9V
となり、前記電圧が先に試算したダイオード等の順電圧の加算値よりも大きく、サイリスタ111−2をターンオンさせるに十分なゲートトリガ電流を発生できるようになる。しかも、図8(b)のd部に示したように、クロック端子CK2の電位波形はこの前縁が急峻に立ち下がる形状を有しているので、サイリスタ111−2のターンオン動作を高速に行える効果を得ることができる。
(実施例1の変形例1)
図9は、本発明の実施例1における図1の変形例1である印刷制御部40及びプリントヘッド13Aの概略の回路構成を示すブロック図であり、図1中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
本変形例1では、実施例1と同様の印刷制御部40を有している。印刷制御部40には、実施例1と同様の複数の接続コネクタ96(=96−1〜96−3)、接続ケーブル95(=95−1〜95−3)及び接続コネクタ97(=97−1〜97−3)を介して、実施例1のプリントヘッド13とは異なる構成のプリントヘッド13Aが接続されている。本変形例1のプリントヘッド13Aは、実施例1と同様の走査回路部100と、実施例1の発光素子アレイ200とは異なる構成の発光素子アレイ200Aとを有している。
発光素子アレイ200Aは、複数の2端子発光素子(例えば、LED)210A(=210A−1〜210A−n)を有し、これらの各LED210Aのアノードが走査回路部100の各出力端子Q1〜Qnに接続され、カソードが駆動電流Ioutを流す共通端子INを介して接続コネクタ97−1に接続されている。各LED210Aは、アノード・カソード間に所定電圧が印加されると、オン状態になってカソード電流が流れ、発光する素子である。LED210A−1〜210A−nの総数nは、実施例1と同様に、例えば、A4サイズの用紙に1インチ当たり600ドットの解像度で印刷可能なプリントヘッド13Aの場合、4992個であり、これらが配列されることになる。
このような構成の印刷制御部40及びプリントヘッド13Aでは、以下のように動作する。
例えば、データ駆動回路60において、駆動指令信号DRVONがLレベルの場合、これがCMOSインバータ61により反転され、抵抗62を介してデータ端子DAがHレベルとなる。そのため、接続コネクタ96−1、接続ケーブル95−1及び接続コネクタ97−1を介して、プリントヘッド13A側の共通端子IN及び各LED210AのカソードがHレベルに上昇する。この結果、LED210A−1〜210A−nが全て非発光状態になる。
これに対し、駆動指令信号DRVONがHレベルの場合、これがCMOSインバータ61により反転され、抵抗62を介してデータ端子DAがLレベルとなる。この結果、接続コネクタ96−1、接続ケーブル95−1及び接続コネクタ97−1を介して共通端子INも略GND電位(≒0V)となる。この際、LED210A−1〜210A−nの内、走査回路部100により、発光指令されているLED210Aのアノードのみを選択的にHレベルとすることで、発光指令されているLED210Aがオン状態になる。オン状態のLED210Aのカソードに流れる電流は、データ端子DAに流入する電流(即ち、駆動電流Iout)であり、LED210Aが発光状態となってその駆動電流Ioutの値に応じた発光出力を生じる。
このように、本変形例1では、実施例1とほぼ同様に動作する。
(実施例1の変形例2)
図8(a)のクロック駆動回路70において、第1、第2出力バッファ80−1,80−2中のダイオード84−1a,84−2a,85−1a,85−2aは、PMOS84−1,84−2及びNMOS85−1,85−2の寄生ダイオードによりそれぞれ構成されているが、例えば、PMOS84−1,84−2及びNMOS85−1,85−2を他のトランジスタ等のスイッチ素子によりそれぞれ構成する場合、寄生ダイオードに代えて、通常のダイオードにより、ダイオード84−1a,84−2a,85−1a,85−2aをそれぞれ構成しても良い。
又、通常のダイオードで構成されるダイオード84−1a,84−2aは、電流I2を流す電流経路において不要であるので、これらのダイオード84−1a,84−2aを省略しても良い。これにより、回路素子数を削減できる。
(実施例1及び変形例1、2の効果)
本実施例1及び変形例1、2によれば、次の(a)、(b)のような効果がある。
(a) 従来構成の走査回路部の駆動においては、例えば、図1のRL微分回路90に相当する箇所にCR微分回路をそれぞれ設けて、図8(b)のd部においてアンダシュート波形を生成し、2個のクロック端子CK1,CK2から2相のクロックを出力している。この際、CR微分回路においては、直流成分を伝達することができないので、2個のクロック端子CK1,CK2に対して各2個の出力端子CK1R,CK2R(=合計4個の出力端子)、即ち、転送クロック当たり2個で合計4個の出力端子が必要であった。
これに対し、本実施例1や変形例1、2によれば、第2クロック端子CK2から出力される第2クロックが第1抵抗120を介して初段の走査回路110−1に印加されると、走査回路部100が発光素子アレイ200,200Aに対する走査を開始するので、スタート信号が不要になってスタート信号用端子を削減できると共に、回路構成を簡単化できる。更に、クロック駆動回路70の出力端子CK1R,CK2Rから出力される第1、第2クロックパルスをRL微分回路90で微分して、図8(b)のd部におけるアンダシュート波形を生成しているので、クロック駆動回路70における出力端子CK1R,CK2Rの数が転送クロック当たり1個で良く、従来構成と比べて所要端子の数を半減することができる。又、図1に示すRL微分回路90は1つでよく、インダクタ93も1素子のみ設ければよい。これにより、プリントヘッド13,13Aにおけるデータ転送速度を向上できることは勿論のこと、クロック駆動回路70の出力端子CK1R,CK2Rの数の減少によって、回路規模の削減と、これによる低コスト化も期待できる。
(b) 本実施例1や変形例1、2の画像形成装置1によれば、プリントヘッド13,13Aを採用しているので、スペース効率及び光取り出し効率に優れた高品質の画像形成装置1を提供することができる。即ち、プリントヘッド13,13Aを用いることにより、本実施例1や変形例1、2のフルカラーの画像形成装置1に限らず、モノクロ、マルチカラーの画像形成装置においても効果が得られるが、特に、露光装置としてのプリントヘッド13,13Aを数多く必要とするフルカラーの画像形成装置1において一層大きな効果が得られる。
本発明の実施例2における画像形成装置1では、主として、プリントヘッド13Bの回路構成が、実施例1のプリントヘッド13と異なるので、以下、その異なる部分について説明する。
(実施例2の印刷制御部及びプリントヘッド)
図10は、本発明の実施例2における印刷制御部40及びプリントヘッド13Bの概略の回路構成を示すブロック図であり、実施例1を示す図1中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
本実施例2のプリントヘッド13Bは、実施例1とは異なる構成の走査回路部100B及び発光素子アレイ200Bを有し、これらが実施例1と同様の複数の接続ケーブル95(=95−1〜95−3)及び複数の接続コネクタ96(=96−1〜96−3),97(=97−1〜97−3)を介して、実施例1と同様の印刷制御部40に接続されている。
走査回路部100Bにより走査される発光素子アレイ200Bは、3端子発光素子としての例えば複数のNゲート型の発光サイリスタ210B(=210B−1〜210B−n,・・・)を有し、これらの各発光サイリスタ210Bのアノードが駆動電流Ioutを流す共通端子INを介して接続コネクタ97−1に接続され、カソードが第1電源(例えば、グランドGND)に接続され、ゲートが走査回路部100Bの各出力端子Q1〜Qnに接続されている。発光サイリスタ210B−1〜210B−nの総数nは、実施離1と同様に、例えば、A4サイズの用紙に1インチ当たり600ドットの解像度で印刷可能なプリントヘッド13Bの場合、4992個であり、これらが配列されることになる。
走査回路部100Bは、印刷制御部40から接続コネクタ96−2,96−3、接続ケーブル95−2,95−3及び接続コネクタ97−2,97−3を介して供給される2相の第1、第2クロックにより駆動され、発光素子アレイ200Bにトリガ電流を流してオン/オフ動作させる回路であり、Nゲート型の自己走査サイリスタを用いた複数段の走査回路110B(=110B−1〜110B−n、例えばn=4992)と、第2クロック端子CK2から出力される第2クロックを入力するスタート信号用の第1抵抗120Bと、複数のダイオード130B(=130B−2〜130B−n、例えばn=4992)とを有し、自己走査型シフトレジスタにより構成されている。
各段の走査回路110B(=110B−1〜110B−n)は、第1端子(例えば、カソード)が第1電源(例えば、グランドGND)に接続されたサイリスタ111B(=111B−1〜111B−n)と、この各サイリスタ111Bの制御端子(例えば、ゲート)及び第2電源(例えば、VDD電源)間に接続された複数の第2抵抗112B(=112B−2〜112B−n)とにより、それぞれ構成されている。但し、実施例1と同様に、初段のサイリスタ111B−1のゲートとVDD電源との間には、第2抵抗112Bが設けられていない。
奇数段の走査回路110B−1,110B−3,・・・,110B−(n−1)における各サイリスタ111B−1,111B−3,・・・,111B−(n−1)は、第2端子(例えば、アノード)が接続コネクタ97−2、接続ケーブル95−2及び接続コネクタ96−2を介して第1クロック端子CK1に接続され、カソードがグランドGNDに接続されている。初段のサイリスタ111B−1のゲートは、第1抵抗120B、接続コネクタ97−3、接続ケーブル95−3及び接続コネクタ96−3を介して第2クロック端子CK2に接続されると共に、初段の出力端子Q1に接続されている。3段目以降の奇数段のサイリスタ111B−3,111B−5,・・・,111B−(n−1)における各ゲートは、各第2抵抗112B(=112B−3,112B−5,・・・,112B−(n−1))を介してVDD電源に接続されると共に、奇数段の各出力端子Q3,Q5,・・・,Q(n−1)にそれぞれ接続されている。
偶数段の走査回路110B−2,110B−4,・・・,110B−nにおける各サイリスタ111B−2,111B−4,・・・,111B−nは、アノードが接続コネクタ97−3、接続ケーブル95−3及び接続コネクタ96−3を介して第2クロック端子CK2に接続され、カソードがグランドGNDに接続され、ゲートが第2抵抗112B(=112B−2,112B−4,・・・,112B−n)を介してVDD電源に接続されると共に、そのゲートが偶数段の各出力端子Q2,Q4,・・・,Qnにそれぞれ接続されている。
初段から最終段までの各段のサイリスタ111B−1〜111B−nにおけるゲート間は、ダイオード130B(=130B−2,130B−3,・・・,130B−n)を介してそれぞれ接続されている。各段のサイリスタ111B−1〜111B−nのゲート間に接続されたダイオード130B−2〜130B−nは、発光サイリスタ210B−1〜210B−nが順次点灯する時の走査方向(例えば、図10において右方向)を決定するために設けられている。
各段の走査回路110Bにおけるサイリスタ111Bは、発光素子アレイ200Bにおける発光サイリスタ210Bと同様なレイヤ構造を有し、且つ同様な回路動作を行う素子であるが、実施例1と同様に、発光サイリスタ210Bのような発光機能を必要としないので、上層がメタル膜等の非透光性材料で覆われ、遮光して用いられる。
走査回路部100Bでは、実施例1と同様に、印刷制御部40の第1、第2クロック端子CK1,CK2から供給される2相の第1、第2クロックに基づき、サイリスタ111B−1〜111B−nが択一的にオン状態となり、このオン状態が発光素子アレイ200Bに伝達され、発光サイリスタ210B−1〜210B−nの内から発光すべき発光サイリスタ210B−1〜210B−nを指令する働きをする。この走査回路部100Bにおいて、オン状態となる各段の走査回路110Bにおけるサイリスタ111Bのオン状態が、2相の第1、第2クロック毎に隣接サイリスタ111Bに伝達され、シフトレジスタと同様の回路動作が行われる構成になっている。
実施例1と同様に、初段のサイリスタ111B−1においては、2段目以降のサイリスタ111B−2〜111B−nと違って、ゲートとVDD電源との間を接続する第2抵抗112Bが削除されているが、後述するように、これは部品点数を削減するための工夫であって、低コスト化への配慮が不要である場合には、サイリスタ111B−1のゲートとVDD電源との間に第2抵抗112Bを設ける構成とすることもできる。
即ち、初段のサイリスタ111B−1におけるゲートと第2クロック端子CK2との間には、ダイオード130Bではなく、第1抵抗120Bが設けられ、しかも、そのゲートとVDD電源との間の第2抵抗112Bが削除されている。そのため、初段のサイリスタ111B−1のゲートとVDD電源との間の抵抗を、第2クロック端子CK2側に接続替えすることで、そのゲートと第2クロック端子CK2との間に設けられていたダイオードを省略したものと見ることもできる。このような構成にすることで、以下のような利点がある。
画像形成装置1において、印刷動作を停止している待機状態においては、第1、第2クロック端子CK1,CK2から供給される第1、第2クロックがLレベルにされるが、サイリスタ111B−1のゲートとVDD電源との間に抵抗112Bを設ける場合には、VDD電源側から前記抵抗112B及び抵抗120Bを介して、Lレベルである第2クロック端子CK2側に電流が流れ続けてしまう。このような待機時における電流は、無駄な電力消費を引き起こして画像形成装置1の待機時消費電力を増大させることとなって望ましくない。それに加えて、待機時に抵抗120Bを介して流れる電流は、プリントヘッド13Bの製造後に行われる検査工程におけるリーク電流測定を困難なものとする。
半導体製造プロセスの欠陥に起因してサイリスタ111B−1〜111B−nに不具合がある時、μA以下の僅かなリーク電流を生じることがある。これを測定・検出することで不良品を取り除くことが行われるが、前述したような待機状態における消費電流を生じる場合には、前記リーク電流による僅かな電流増加を検出することが困難である。
これに対し、本実施例2の構成においては、サイリスタ111B−1のゲートとVDD電源との間に抵抗112Bを設けていないので、この抵抗112Bを介して定常的に流れる電流を無くすことが可能となり、待機時消費電力を略ゼロとすることができて省エネルギー効果に優れたものとすることができる。その上、検査工程におけるリーク電流起因の潜在的な不良品を効果的に取り除くことができて、その品質を飛躍的に向上させることができる。
このような走査回路部100Bを有するプリントヘッド13Bに接続される印刷制御部40は、実施例1とは異なる駆動用矩形波の信号である負論理の駆動指令信号DRVON−Nに基づいて、複数の発光素子アレイ200Bを時分割駆動するための実施例1と同様の複数のデータ駆動回路60と、走査用の矩形波信号S62−1,S62−2に基づいて、走査回路部100Bに供給する2相の第1、第2クロックを生成するための実施例1と同様のクロック駆動回路70及びRL微分回路90等とを有している。
図10においては、実施例1の図1と同様に、説明を簡略化するために1個のデータ駆動回路60のみが図示されている。複数の発光素子アレイ200Bは、例えば、総数4992個の発光サイリスタ210B−1〜210B−nを有し、これらの発光サイリスタ210B−1〜210B−nが複数の発光サイリスタの組にグループ化され、各グループ毎に設けられたデータ駆動回路60によって、それらが同時並行的に分割駆動が行われる構成になっている。
一例として典型的な設計例を挙げると、実施例1と同様に、発光サイリスタ210B(=210B−1〜210B−n)を192個配列してアレイ化した発光素子アレイ200Bのチップを図4中のプリント配線板13b上に26個整列する。これにより、プリントヘッド13Bに必要な総数4992個の発光サイリスタ210B−1〜210B−nを構成している。この際、データ駆動回路60は前記26個の発光素子アレイ200Bに対応して設けられ、これらのデータ駆動回路60における出力端子の総数は26である。
一方、クロック駆動回路70及びRL微分回路90は、実施例1と同様に、アレイ化した走査回路部100Bのチップを駆動するものであるが、単にクロックを生成するのみならず、サイリスタ111Bの点灯エネルギーを制御する必要があり、プリントヘッド13Bの高速動作のためには、走査回路部100B毎に設けることが好ましい。しかし、プリントヘッド13Bのデータ転送が低速で良い場合には、クロック駆動回路70及びRL微分回路90の出力端子と複数の走査回路部100Bを並列に接続することで、その回路を共用することができる。
これらのデータ駆動回路60、クロック駆動回路70、RL微分回路90、及び走査回路部100Bにより、本実施例2の駆動装置が構成されている。なお、データ駆動回路60、クロック駆動回路70及びRL微分回路90は、図10においては、印刷制御部40の内部に配置されているが、プリントヘッド13Bの内部に配置しても良い。
(実施例2の発光サイリスタ)
図11(a)〜(c)は、図10中のNゲート型の発光サイリスタ210Bを示す構成図である。
図11(a)は、Nゲート型の発光サイリスタ210Bの回路シンボルを示し、アノードA、カソードK、及びゲートGの3つの端子を有している。
図11(b)は、発光サイリスタ210Bの断面構造を示す図である。発光サイリスタ210Bは、例えば、N型GaAsウェハ基材を用い、実施例1の発光サイリスタ210とほぼ同様に、公知のMO−CVD法により、GaAsウェハ基材の上層に所定の結晶をエピタキシャル成長させることで製造される。
即ち、図示しないN型GaAsウェハ基材上に、所定のバッファ層をエピタキシャル成長させた後、AlGaAs材料にN型不純物を含ませたN型層231と、P型不純物を含ませ成層したP型層232と、N型不純物を含ませたN型層233と、P型不純物を含ませ成膜したP型層234とを順に積層させたPNPNの4層構造からなるウェハを形成する。更に、公知のエッチング法により、図示しない溝部を形成することで、素子分離を行う。
又、前記エッチングの過程で、N型層233の一部を露出させ、この露出領域に金属配線を形成してゲートGを形成する。同様に、最上層となるP型層234の一部を露出させ、この露出領域の一部に金属配線を形成してアノードAを形成する。更に、N型GaAsウェハ基材の裏面部であるN型層231の底面にも、この全面に金属電極を形成してカソードKを形成する。
図11(c)は、図11(b)と対比させて描いた発光サイリスタ210Bの等価回路図である。発光サイリスタ210Bは、PNPTR241とNPNTR242とからなり、PNPTR241のエミッタが発光サイリスタ210BのアノードAに相当し、PNPTR241のベースが発光サイリスタ210BのゲートGに相当し、NPNTR242のエミッタが発光サイリスタ210BのカソードKに相当している。又、PNPTR241のコレクタは、NPNTR242のベースに接続され、PNPTR241のベースが、NPNTR242のコレクタに接続されている。
なお、図11に示す発光サイリスタ210Bでは、GaAsウェハ基材上にAlGaAs層を形成したものであるが、これに限定されるものではなく、GaP、GaAsP、AlGaInP、InGaAsPといった材料を用いるものであっても良く、更には、サファイヤ基板上にGaNやAlGaN、InGaNといった材料を成膜したものであっても良い。
(実施例2の印刷制御部及びプリントヘッドの概略動作)
図10において、例えば、印刷制御部40内の駆動指令信号DRVON−NがHレベルの場合、データ駆動回路60におけるCMOSインバータ61を構成するPMOS61aがオフ状態、NMOS61bがオン状態となり、抵抗62を介してデータ端子DAがLレベルとなる。そのため、接続コネクタ96−1、接続ケーブル95−1及び接続コネクタ97−1を介して、プリントヘッド13B側の共通端子IN及び各発光サイリスタ210BのアノードがLレベルになる。この結果、各発光サイリスタ210Bのアノード・カソード間電圧は略0Vとなって、そこに流れる駆動電流Ioutがゼロとなり、発光サイリスタ210B−1〜210B−nが全て非発光状態となる。
これに対し、駆動指令信号DRVON−NがLレベルの場合、CMOSインバータ61を構成するPMOS61aがオン状態、NMOS61bがオフ状態となって、抵抗62を介してデータ端子DAがHレベルとなる。この結果、接続コネクタ96−1、接続ケーブル95−1及び接続コネクタ97−1を介して共通端子INも電源電圧VDDに略等しい電位にまで上昇し、各発光サイリスタ210Bのアノード・カソード間に略電源電圧VDDが印加される。
この際、発光サイリスタ210B−1〜210B−nの内、走査回路部100Bにより、発光指令されている発光サイリスタ210Bのゲートのみを選択的にLレベルとすることで、この発光サイリスタ210Bのゲートにはトリガ電流を生じ、発光指令されている発光サイリスタ210Bがターンオンすることになる。ターンオンした発光サイリスタ210Bのアノードに流れる電流は、データ端子DAから供給される電流(即ち、駆動電流Iout)であり、発光サイリスタ210Bは発光状態となってその駆動電流Ioutの値に応じた発光出力を生じる。
即ち、発光サイリスタ210B−1〜210B−nの動作を考えるにあたり、走査回路部100Bの各段の走査回路110B−1〜110B−nにおけるオンしているサイリスタ111B(=111B−1〜111B−n)に着目すると、発光サイリスタ210BのカソードがグランドGNDに接続されており、そのアノードがHレベルにされると、発光サイリスタ210Bのアノード・カソード間には電圧が印加される。一方、走査回路部100Bにおける各段のサイリスタ111Bのゲートと、各発光サイリスタ210Bのゲートとがそれぞれ接続されているため、サイリスタ111Bのアノード・ゲート間にも電圧が印加されることになる。この時、発光サイリスタ210B−1〜210B−nの内、走査回路部100Bにより発光指令されている発光サイリスタ210Bのゲートのみを選択的にLレベルとすることで、この発光サイリスタ210Bのゲートにはトリガ電流を生じ、発光指令されている発光サイリスタ210Bがターンオンすることになる。この際、発光サイリスタ210Bのアノードに流れる電流は、データ端子DAから供給される駆動電流Ioutであって、前記発光サイリスタ210Bが発光状態になってその駆動電流Ioutの値に応じた発光出力を生じる。
(実施例2の印刷制御部及びプリントヘッドの詳細動作)
図12は、図10のプリントヘッド13B及び印刷制御部40の詳細な動作を示すタイミングチャートである。
この図12では、実施例1の図7と同様に、図2の画像形成装置1での印刷動作時における1ライン走査において、図10の発光サイリスタ210B−1〜210B−n(例えば、n=6)を順次点灯させる場合の動作波形が示されている。
図12のタイミングチャートにおいて、左端部に示す状態においては、制御信号C1,C2がHレベルとなり、走査用矩形波信号S62−1,S62−2が出力バッファ80−1,80−2でそれぞれ駆動され、これらの出力端子CK1R,CK2Rから出力されるクロックパルスがそれぞれLレベルとされる。
クロック駆動回路70の出力端子CK1Rは、抵抗91を介してクロック端子CK1と接続され、更に、出力端子CK2Rも、抵抗92を介してクロック端子CK2と接続されている。そのため、図12のタイミングチャートの左端部に示す状態においては、奇数組のサイリスタ111B−1,111B−3,111B−5と偶数組のサイリスタ111B−2,111B−4,111B−6とのいずれもそのアノードがLレベルとされ、オフ状態となっている。又、駆動指令信号DRVON−NはHレベルとなっており、CMOSインバータ61の出力電位がLレベルであって、抵抗62、データ端子DA、接続コネクタ96−1、接続ケーブル95−1、接続コネクタ97−1、及び共通端子INを介して、発光サイリスタ210B−1〜210B−6のアノードもまたLレベルとなり、これらの発光サイリスタ210B−1〜210B−6がオフ状態にある。
以下、1段目、2段目走査回路110B−1,110B−2における各サイリスタ111B−1,111B−2のターンオン過程(1)、(2)を説明する。
(1) 1段目走査回路110B−1におけるサイリスタ111B−1のターンオン過程
図12の時刻t1において、出力バッファ80−1の出力端子CK1RがHレベルとされ、それに応じてクロック端子CK1の電位が、a部に示すようにHレベルに立ち上がる。この時、出力バッファ80−2の出力端子CK2RはLレベルとされ、クロック端子CK2もLレベル状態にある。
電源電圧VDDは、典型的な設計例では3.3Vとされ、サイリスタ111B−1のアノード電位もまた3.3Vに略等しい。一方、サイリスタ111B−1のゲートは、抵抗120Bを介してクロック端子CK2に接続されているので、VDD電源からサイリスタ111B−1のアノード・ゲート間を通り、抵抗120Bを経由してクロック端子CK2に至る経路に電流が流れ、この電流をトリガ電流としてサイリスタ111B−1はターンオンすることになる。
時刻t2において、駆動指令信号DRVON−NがLレベルに立ち下がり、これがCMOSインバータ61で反転され、抵抗62を介してデータ端子DAがHレベルに遷移する。これにより、発光サイリスタ210B−1のアノード・カソード間には電源電圧VDDと略等しい電圧が印加される。この時、サイリスタ111B−1はオンしているので、このサイリスタ111B−1のゲートに対してゲート電位を共有している発光サイリスタ210B−1がオンし、この発光サイリスタ210B−1のアノードには、b部に示すように駆動電流Ioutを生じ、この駆動電流Ioutの値に応じた発光出力を生じる。
時刻t3において、駆動指令信号DRVON−NがHレベルに立ち上がり、これがCMOSインバータ61で反転され、抵抗62を介してデータ端子DAがLレベルに遷移する。これにより、発光サイリスタ210B−1のアノード・カソード間電圧は略ゼロとなってこの発光サイリスタ210B−1がオフし、c部に示すように駆動電流Ioutが略ゼロとなる。
本例では、発光サイリスタ210B−1を発光させて、図2中の感光体ドラム11上に潜像を形成することができる。この時の露光エネルギー量は、駆動電流Ioutの値に応じて定まる発光パワーと露光時間(時刻t3−時刻t2)との積であり、発光サイリスタ210B−1等に製造ばらつきに起因する発光効率の差があったとしても、前記露光時間を発光サイリスタ210B−1毎に調整することで、露光エネルギー量のばらつきを補正することができる。又、発光サイリスタ210B−1を発光させる必要のない場合には、時刻t2から時刻t3の間の駆動指令信号DRVON−NをHレベルのままとする。このように、駆動指令信号DRVON−Nによって発光サイリスタ210Bの発光の有無もまた制御することができる。
(2) 2段目走査回路110B−2におけるサイリスタ111B−2のターンオン過程
時刻t4において、制御信号C2をLレベルにして出力バッファ80−2の出力端子CK2RがHi−Z状態になる。この時刻t4の直前においては、出力バッファ80−1の出力端子CK1RがHレベル、出力バッファ80−2の出力端子CK2RがLレベルであり、出力端子CK1Rから抵抗91、インダクタ93、及び抵抗94,92を経由して出力端子CK2Rに至る経路に電流を生じている。時刻t4の直後には、出力端子CK2RがHi−Z状態とされ、前記経路の電流が遮断されることで、インダクタ93には逆起電圧を生じ、クロック端子CK2の電位は、d部に示すように電源電圧VDD以上に上昇してオーバシュート波形を生じる。
この時、サイリスタ111B−2に着目して考える。電源電圧VDDは、典型的な設計例では3.3Vとされ、前記オーバシュート波形を生じることで、サイリスタ111B−2のアノード電位が3.3Vを超える値となる。一方、ダイオード130B−2のカソードは、サイリスタ111B−1のゲートに接続されており、サイリスタ111B−1がオン状態となっているため、このゲート電位がGND電位に近接したLレベルである。そのため、クロック端子CK2から、サイリスタ111B−2のアノード・ゲート端子間を通り、ダイオード130B−2のアノード・カソード間、サイリスタ111B−1のゲート・カソード間を経由してグランドGNDに至る電流が流れ、この電流をトリガ電流としてサイリスタ111B−2がターンオンすることになる。
時刻t5において、出力バッファ80−2の出力端子CK2RがHレベルとされ、サイリスタ111B−2のアノード電流を継続させる。時刻t5と相前後して、出力バッファ80−1の出力端子CK1RはLレベルとされ、サイリスタ111B−1がターンオフする。次いで、時刻t6において、駆動指令信号DRVON−NがLレベルに立ち下がり、これがCMOSインバータ61で反転され、抵抗62を介してデータ端子DAがHレベルに遷移する。データ端子DAがHレベルに遷移すると、発光サイリスタ210B−2のアノード・カソード間には電源電圧VDDと略等しい電圧が印加される。
前述したように、時刻t6においては、サイリスタ111B−2がオン状態にあり、サイリスタ111B−1がオフ状態になっている。このように、サイリスタ111B−2がオンしているので、このサイリスタ111B−2のゲートに対してゲート電位を共有している発光サイリスタ210B−2がオンし、このカソードには、e部に示すように駆動電流Ioutを生じ、この駆動電流Ioutの値に応じた発光出力を生じる。
次いで、時刻t7において、駆動指令信号DRVON−NがHレベルに立ち上がり、これがCMOSインバータ61で反転され、抵抗62を介してデータ端子DAがLレベルに遷移する。これにより、発光サイリスタ210B−2のアノード・カソード間電圧は略ゼロとなって発光サイリスタ210B−2がオフし、f部に示すように駆動電流Ioutが略ゼロとなる。
以下同様に、出力バッファ80−1,80−2における出力端子CK1R,CK2R電位の遷移と、駆動指令信号DRVON−Nのオン、オフとが順に発生して、発光サイリスタ210B−3〜210B−8を順次点灯することができる。
図12を用いて詳細に説明したように、クロック端子CK1,CK2から出力される第1、第2クロックは異なる位相をもって同様波形が繰り返す形状を備えており、これらのクロック波形が、奇数組のサイリスタ111B−1,111B−3,111B−5,111B−7と、偶数組のサイリスタ111B−2,111B−4,111B−6,111B−8とに順次入力されることで、サイリスタ111B−1,111B−2,111B−3,111B−4,111B−5,111B−6,111B−7,111B−8,111B−9が順次オンしていく。
(図12中のオーバシュート波形の説明)
図13(a)、(b)は、図10中のクロック駆動回路70内のスリーステート型の第1、第2出力バッファ80−1,80−2、RL微分回路90、及び走査回路110B−1,110B−2と図12中のタイミングチャートとの要部を示す図であり、同図(a)は要部の回路図、及び、同図(b)は要部の電圧波形図である。
図13(a)において、クロック駆動回路70は、実施例1と同様に、インバータ81−1、NAND回路82−1及びNOR回路83−1からなるスリーステート型の第1出力バッファ80−1と、インバータ81−2、NAND回路82−2及びNOR回路83−2からなるスリーステート型の第2出力バッファ80−2とを有している。
第1出力バッファ80−1において、NAND回路82−1の出力端子に、第1スイッチ素子(例えば、第1導電型MOSトランジスタとしてのPMOS)84−1のゲートが接続され、NOR回路83−1の出力端子に、第2スイッチ素子(例えば、第2導電型MOSトランジスタとしてのNMOS)85−1のゲートが接続されている。PMOS84−1は、ソースが第2電源(例えば、VDD電源)に接続され、ドレーンが第1出力端子CK1Rに接続されている。NMOS85−1は、ドレーンが第1出力端子CK1Rに接続され、ソースが第1電源(例えば、グランドGND)に接続されている。VDD電源と第1出力端子CK1Rとの間には、第1ダイオード84−1aが接続されている。更に、第1出力端子CK1RとグランドGNDとの間にも、ダイオード85−1aが接続されている。
同様に、第2出力バッファ80−2において、NAND回路82−2の出力端子に、第3スイッチ素子(例えば、第1導電型MOSトランジスタとしてのPMOS)84−2のゲートが接続され、NOR回路83−2の出力端子に、第4スイッチ素子(例えば、第2導電型MOSトランジスタとしてのNMOS)85−2のゲートが接続されている。PMOS84−2は、ソースが第2電源(例えば、VDD電源)に接続され、ドレーンが第2出力端子CK2Rに接続されている。NMOS85−2は、ドレーンが第2出力端子CK2Rに接続され、ソースが第1電源(例えば、グランドGND)に接続されている。VDD電源と第2出力端子CK2Rとの間には、第2ダイオード84−2aが接続されている。更に、第2出力端子CK2RとグランドGNDとの間にも、ダイオード85−2aが接続されている。
なお、第1出力バッファ80−1における2つのダイオード84−1a,85−1aは、この内の一方のダイオード85−1aが動作上不要であるが、PMOS84−1及びNMOS85−1を製造する際に、そのサブストレート及びドレーン間に寄生ダイオードとして形成される。同様に、第2出力バッファ80−2における2つのダイオード84−2a,85−2aは、この内の一方のダイオード85−2aが動作上不要であるが、PMOS84−2及びNMOS85−2を製造する際に、そのサブストレート及びドレーン間に寄生ダイオードとして形成される。
第1出力バッファ80−1及び第2出力バッファ80−2は、同一の動作を行うので、例えば、第1出力バッファ80−1の動作を以下説明する。
第1出力バッファ80−1において、実施例1と同様に、制御信号C1がHレベル、及び矩形波信号S69−1がLレベルであって、NAND回路82−1及びNOR回路83−1の出力端子が共にHレベルの場合、PMOS84−1がオフ状態、NMOS85−1がオン状態となって、出力端子CK1RがLレベルとなる。制御信号C1及び矩形波信号S69−1が共にHレベルであって、NAND回路82−1及びNOR回路83−1の出力端子が共にLレベルの場合、PMOS84−1がオン状態、NMOS85−1がオフ状態となって、出力端子CK1RがHレベルとなる。又、制御信号C1がLレベルの場合、NAND回路82−1の出力端子がHレベル、NOR回路83−1の出力端子がLレベルであって、PMOS84−1及びNMOS85−1が共にオフ状態となり、出力端子CK1RがHi−Z状態となる。
図10を用いて説明したように、サイリスタ111B−1は、カソードがグランドGNDに接続され、アノードがクロック端子CK1に接続され、更にそのクロック端子CK1が抵抗91を介して出力端子CK1Rに接続されている。サイリスタ111B−2は、カソードがグランドGNDに接続され、アノードがクロック端子CK2に接続され、更にそのクロック端子CK2が抵抗92を介して出力端子CK2Rに接続されている。クロック端子CK1,CK2間は、インダクタ93及び抵抗94を介して接続されている。サイリスタ111B−1のゲートとサイリスタ111B−2のゲートとの間には、ダイオード130B−2が接続されている。
例えば、出力端子CK1RがHレベル、出力端子CK2RがLレベルとなっている場合を考える。
これは、図12及び図13(b)のタイミングチャートの時刻t4の直前の状態に対応している。この時、図13(a)の実線矢印で示す向きに電流I1を生じる。電流I1は、VDD電源、PMOS84−1、出力端子CK1R、抵抗91、インダクタ93、抵抗94,92及びNMOS85−2を経由してグランドGNDに至る経路を通る。
次いで、図12及び図13(b)における時刻t4の直後において、制御信号C2がLレベルになり、NMOS85−2がオフ状態に遷移して出力端子CK2RがHi−Z状態になる。これにより、電流I1が遮断され、インダクタ93には図13(a)中の+極性及び−極性の向きに逆起電圧を生じ、破線矢印にて示す向きの電流I2を生じる。電流I2の経路は、インダクタ93の+極性、抵抗94,92、及びダイオード84−2aを経由してVDD電源に至り、更に、VDD電源からPMOS84−1、出力端子CK1R、及び抵抗91を経由してインダクタ93の−極性に戻る第2の電流経路である。
この時、ダイオード84−2aのカソードがVDD電源に接続されているので、出力端子CK2Rの電位は、電源電圧VDDよりもダイオード84−2aの順電圧分高い電位となり、クロック端子CK2の電位は、ダイオード84−2aの順電圧よりも抵抗92の両端に生じる電圧降下分だけ更に高い電位となることが判る。この結果、一点鎖線矢印にて示すように、クロック端子CK2からサイリスタ111B−2のアノード・ゲート間を通り、ダイオード130B−2、及びサイリスタ111B−1のゲート・カソード間を経由してグランドGNDに至る経路に電流I3を生じ、サイリスタ111B−2のアノード・ゲート間にトリガ電流が流れて、サイリスタ111B−2はターンオンする。
図13(b)は以上の過程を示す波形図であって、出力端子CK2RがLレベルからHi−Z状態に遷移する時、クロック端子CK2には、d部に示すように急峻に立ち上がるオーバシュート部を生じて電源電圧VDDよりも電圧Vp分高くすることができる。
典型的な設計例では、電源電圧VDDが3.3Vであり、ダイオード120B−2の順電圧Vfを約1.6V、サイリスタ111B−1のアノード・ゲート間に生じるPN接合の順電圧Vagもまた1.6Vとすると、前記経路に電流I3を生じさせるためには、
Vf+Vag<VDD+Vp
であることを必要としている。この時、図13(b)に示すクロック端子CK2の電位波形にオーバシュート部dが無く、Vp=0Vであると、
Vf+Vag=l.6V+l.6V=3.2V
となって電源電圧VDDと同程度の値なので、サイリスタ111B−2をターンオンさせるに十分なゲートトリガ電流を得ることができない。
これに対し、本実施例2のように、例えば前記オーバシュート波形として電圧Vp=0.6Vといった値を与えることで、
VDD+Vp=3.3V+0.6V=3.9V
となり、前記電圧が先に試算したダイオード等の順電圧の加算値よりも大きく、サイリスタ111B−2をターンオンさせるに十分なゲートトリガ電流を期待することができる。又、クロック端子CK2の電位波形は、d部に示すようにその前縁が急峻に立ち上がる波形を有しており、サイリスタ111B−2のターンオン動作を高速にする効果を備えている。
(実施例2の変形例)
実施例1における図9の変形例1と同様に、図10の発光素子アレイ200Bを構成する複数の発光サイリスタ210B(=210B−1〜210B−n)に代えて、2端子発光素子としての例えば複数のLEDを設け、これらの各LEDのアノードを共通端子INに接続し、各LEDのカソードを走査回路部100Bの各出力端子Q1〜Qnにそれぞれ接続しても良い。
このような構成のプリントヘッドでは、例えば、データ端子DAがLレベルになると、共通端子INに接続された複数のLEDが全て非発光状態となる。これに対し、データ端子DAがHレベルになり、走査回路部100Bにより、発光指令されているLEDのカソードのみを選択的にLレベルとすることで、発光指令されているLEDがオン状態になる。オン状態のLEDのアノードに流れる電流は、データ端子DAから供給される駆動電流Ioutであり、LEDは発光状態となってその駆動電流Ioutの値に応じた発光出力を生じる。
このように、本変形例では、実施例2とほぼ同様に動作する。
(実施例2及び変形例の効果)
本実施例2及びこの変形例によれば、次の(a)、(b)のような効果がある。
(a) 本実施例2やこの変形例によれば、第2クロック端子CK2から出力される第2クロックが第1抵抗120Bを介して初段の走査回路110B−1に印加されると、走査回路部100Bが発光素子アレイ200Bに対する走査を開始するので、スタート信号が不要になってスタート信号用端子を削減できると共に、回路構成を簡単化できる。更に、クロック駆動回路70の出力端子CK1R,CK2Rから出力される第1、第2クロックパルスをRL微分回路90で微分して、図13(b)のd部におけるオーバシュート波形を生成しているので、実施例1と同様に、クロック駆動回路70における出力端子CK1R,CK2Rの数がクロック当たり1個で良く、従来構成と比べて所要端子の数を半減することができる。これにより、プリントヘッド13Bにおけるデータ転送速度を向上できることは勿論のこと、クロック駆動回路70の出力端子CK1R,CK2Rの数の減少によって、回路規模の削減と、これによる低コスト化も期待できる。
(b) 本実施例2やこの変形例の画像形成装置1によれば、プリントヘッド13Bを採用しているので、実施例1の効果(b)と同様の効果が得られる。
(実施例1、2の他の変形例)
本発明は、上記実施例1、2やその変形例に限定されず、その他の種々の利用形態や変形が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の(I)、(II)のようなものがある。
(I) 実施例1、2及びこの変形例において、光源として用いられる発光サイリスタ210,210B及びLED210Aに適用した場合について説明したが、本発明は、サイリスタをスイッチング素子として用い、このスイッチング素子に例えば直列に接続された他の素子(例えば、有機エレクトロルミネセンス素子(以下「有機EL素子」という。)、表示素子等)への電圧印加制御を行う場合にも適用可能である。例えば、有機EL素子のアレイで構成される有機ELプリントヘッドを備えたプリンタ、表示素子の列を有する表示装置等において利用することができる。
(II) 表示素子(例えば、列状あるいはマトリクス状に配列された表示素子)の駆動(即ち、電圧印加の制御)のためスイッチング素子としても用いられるサイリスタにも適用可能である。又、本発明は、3端子構造を備えたサイリスタの他、第1と第2の2つのゲートを備えた4端子サイリスタSCS(Semiconductor Controlled Switch)の場合にも適用可能である。