JP2012049070A - 電極用粉末材料、その製造方法及び高分子形燃料電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、カソードとして用いた場合、酸素還元分解活性が高く、アノードとして用いた場合、CO被毒耐性に優れた電極用粉末材料、その製造方法及び高分子形燃料電池を提供することを課題とする。
【解決手段】Ptからなるコア部12と、コア部12を覆うように形成され、Ce又はZrの金属酸化物からなるシェル部13とからなるコアシェル構造を有するナノ粒子14と、導電性カーボンからなる微粒子15と、を有する電極用粉末材料11であって、電極用粉末材料11の組成式がX×Pt/Y×金属酸化物/Z×導電性カーボンであり、モル比(Y/X)が0.001以上0.2以下、モル比(Y/Z)が0.0001以上0.15以下、前記金属酸化物が非晶質又は一部が結晶質とされており、前記Ce又はZrが3価又は4価のカチオンであり、前記3価のカチオンが80体積%以上含まれている電極用粉末材料を用いることによって前記課題を解決できる。
【選択図】図2

Description

本発明は、電極用粉末材料、その製造方法及び高分子形燃料電池に関する。特に、高分子形燃料電池用電極、ダイレクトメタノール形燃料電池用電極や各種センサー用電極などに利用されるPt/M酸化物(M:CeまたはZr)/導電性カーボン系コアシェルカソード材料、アノード材料およびその製造方法に関する。
Pt/導電性カーボン電極は、高分子形燃料電池用カソード及びアノード材料として用いられ、自動車のガスリンエンジンに代わる燃料電池エンジンの主要な構成要素として利用されている他、家庭用燃料電池などへの応用が行われている。
その他の用途としては、燃料に液体メタノール燃料を用いるダイレクトメタノール形燃料電池用カソード材料及びアノード材料としての開発も産業界において活発に進められている。
また、すでに酸素センサーをはじめとした、各種センサー用の電極としても、大量に利用されている。
こうした、カソード上とアノード上では、異なる電極反応が進行する。カソード表面では、外部から印加される電位を変化させることで、電極内のフェルミレベルがあがり、吸着物質に対して電子を与える反応(還元反応)が進行する。
一方、アノード表面では、同じように、外部から印加される電位を変化させることで、電極内のフェルミレベルがさがり、吸着物質から電子を奪う反応(酸化反応)が進行する。
こうした電極反応は、電極活物質に電位を印加した際、電極活物質のフェルミレベルを押し上げるか、または、押し下げる効果がデバイス内に働くことにより、異なる電極反応が生じるものであり、白金(Pt)という、ひとつの電極活物質を用いて、Ptをカソードにも、アノードにも使えるようになる理由でもある。
燃料電池やセンサーにこの電極を用いる場合、電極活物質と電極担体との界面の構造が、電極の性能を大きく変化させることが知られており、界面や表面の設計が重要である。
従来、多くの電極活物質が試されてきたが、高分子形燃料電池用電極として、Pt電極がもっとも高い性能を示す電極として、開発が進められてきた。
しかし、このPt電極をカソードとして用いる場合、カソード表面では、吸着酸素に電子を与え、還元的に酸素を分解する際に、Pt表面もわずかに酸化されるために、このPt表面の酸化層を電気化学的に除去したのち、酸素分解活性を生じさせる必要があるうえ、酸素の還元的分解反応がきわめて遅い反応であることから、大きなロスが生じ、好ましいものではなかった。
一方、Pt電極をアノードとして用いる場合、吸着した水素から電子を奪い、プロトンにすることで、燃料電池内固体電解質に供給したり、センサなどの働きを示すことが可能であるが、この際、ガス中に5ppm以上の一酸化炭素(CO)が存在すると、この共存したCOが白金表面に強く吸着し、白金アノードの性能を著しく低下させることが知られている(非特許文献1)。
家庭用に燃料電池を普及させるためには、高性能でかつ、安価な燃料電池の作成が必要不可欠である。
その観点から、従来のPt/導電性カーボンよりも、カソードとしては、酸素還元分解活性が高く、アノードとしては、CO被毒耐性に優れたカソード材料及びアノード材料の開発が強く望まれてきた。
この問題を解決するために、カソード材料開発では、Pt/導電性カーボンカソード材料に、金属鉄(Fe)を分散させることで、酸素還元分解活性を高める試み(非特許文献2)や、酸化ニオブ(NbO)上にPt粒子を担持する試み(非特許文献3)がなされている。
こうして得られたPtFe/導電性カーボンカソード材料は、確かに、それまでのPt/導電性カーボンカソード材料を超える高い性能を示すものの、Feが酸性溶液に触れることで、すぐに酸化鉄(FeOまたはFe)に変わるので、高分子形固体電解質内から流出する酸性溶液の影響で、長期安定性が期待できないという問題点があり、酸化ニオブ(NbO)上にPt粒子を担持する電極触媒においては、用いる担体のニオブが通常の5価のニオブ酸化物でなく、4価のニオブを担体としていることから、大変高価な材料を特別に用いる必要があるので実用的ではないという欠点を有しており、こうしたPt/第2成分/導電性カーボンからなる電極材料は、いまだ実用化がなされていない。
一方、アノード材料開発においては、Pt/導電性カーボンアノード材料に、金属ルテニウム(Ru)や、金属コバルト(Co)、金属鉄(Fe)、金属マンガン(Mn)などの金属元素を分散固溶させた合金電極を用いる試みがなされている(非特許文献4)。
こうしたPtベースの合金を用いた場合、合金成分であるRu、Co、Fe、またはMnといった金属へ、Ptの電子が引き寄せられ、Ptのd電子欠陥が増大することで、Pt表面上において、COが吸着しても、PtとCOとの間の強固な結合ができない状態をつくり、あわせて、合金成分であるRu、Co、Fe、またはMnといった元素上で、活性な水酸基(OH基)が、共存する水との反応で生じることで、このOH基を用いて、COをCOに転化することも可能になり、Ptの高い電極活性を低下させることなく、長期間燃料電池を利用することが可能になると考えられてきた。
しかし、添加するRu金属やCo金属は高価であるとともに、Pt合金表面におけるCO耐性はいまだ十分に高いものではなく、他の安価な酸化鉄や酸化マンガンといった化合物も、RuやCoほどの高いCO耐性を示すにいたっていないため、こうしたPt/第2成分/導電性カーボンからなるアノード材料は、いまだ実用化がなされていない。
また、図4は、従来の電極用材料の別の一例を示す概略図である。図4に示すように、従来の電極用材料51は、導電性カーボンからなる粒子55と、白金からなる粒子52と、金属酸化物からなる粒子53とから構成されている。このような構成としても、上記課題を解決することはできなかった。
M.Watanabe,etal.,Denki Kagaku,38巻,927頁−932頁,1970年、電気化学協会発行. Takao Toda,Hiroshi Igarashi, Hiroyuki Uchida,and Masahiro Watanabe,Journal of The Electrochemical Society,Vol.146(10),pp.3750−3756(1999). K.Sasaki,L.Zhang,and R.R.Adzic,Physical Chemistry Chemical Physics, Vol.10,pp.159−167(2008). 渡辺政廣、触媒(Catalysis and Catalyst)、44巻、3号、182頁−188頁、2002年、触媒学会発行
以上述べたように、従来のPt/導電性カーボン系カソード材料、Pt/第2成分/導電性カーボン系カソード材料、Pt/導電性カーボン系アノード材料及びPt/第2成分/導電性カーボン系アノード材料は、電極触媒活性や価格の面など、いくつかの点で困難な問題があった。
本発明は、カソードとして用いた場合、酸素還元分解活性が高く、アノードとして用いた場合、CO被毒耐性に優れた電極用粉末材料、その製造方法及び高分子形燃料電池を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記、従来技術の問題点に鑑み、鋭意検討を続けた結果、セリア(CeO)またはジルコニア(ZrO)の表面活性を高めたうえで、この表面活性の高いCeOまたはZrO上に、ナノサイズのPtを担持した電極活物質を、導電性カーボン上に分散させ、さらに、電気化学的な処理を施すことで、白金をコアとし、Ce酸化物またはZr酸化物をシェルとするコアシェル構造を作ることができ、その結果、得られた電極をカソード材料として用いる場合、酸素還元分解活性を向上させることができ、アノード材料として用いる場合、そのアノード表面におけるCO被毒耐性を改善することができるなど、極めて優れた電極活性を有するカソード材料またはアノード材料が作製できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の上記課題を解決するための解決手段として講じた技術的構成は、以下(1)から(10)に記載する通りである。
(1) Ptからなるコア部と、前記コア部を覆うように形成され、Ce又はZrの金属酸化物からなるシェル部とからなるコアシェル構造を有するナノ粒子と、導電性カーボンからなる微粒子と、を有する電極用粉末材料であって、前記電極用粉末材料の組成式がX×Pt/Y×金属酸化物/Z×導電性カーボンであり、金属酸化物とPtのモル比(Y/X)が0.001以上0.2以下であり、金属酸化物と導電性カーボンのモル比(Y/Z)が0.0001以上0.15以下であり、前記金属酸化物が非晶質とされ、又はその非晶質の一部が結晶質とされており、前記Ce又はZrが3価又は4価のカチオンであり、前記3価のカチオンが80体積%以上含まれていることを特徴とする電極用粉末材料。
(2) Pt2価が10体積%以上30体積%以下であり、Pt−Ce結合量又はPt−Zr結合量が5体積%以上40体積%以下であることを特徴とする(1)に記載の電極用粉末材料。
(3) 前記ナノ粒子の大きさが1nm以上100nm以下であり、前記微粒子の大きさが0.1μm以上10μm以下であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の電極用粉末材料。
(4) 組成式がX×Pt/Y×金属酸化物/Z×導電性カーボンであり、金属酸化物とPtのモル比(Y/X)が0.001以上0.2以下であり、金属酸化物と導電性カーボンのモル比(Y/Z)が0.0001以上0.15以下である電極用粉末材料の製造方法であって、電極用粉末材料の組成が上記条件を満たすように調製した所定の濃度のCe又はZrの金属イオンを有する第1の溶液を、炭酸アンモニウム水溶液又は炭酸水素アンモニウム水溶液中に滴下して、沈殿物の金属酸化物粉末を有する第2の溶液を形成する工程と、前記第2の溶液を乾燥後、仮焼して得られた金属酸化物粉末を塩化白金酸水溶液中に分散してから、前記塩化白金酸水溶液を再度乾燥して得られた沈殿物を焼成して、Pt含有金属酸化物粉末を形成する工程と、前記Pt含有金属酸化物粉末に、電極用粉末材料の組成が上記条件を満たすように、所定の濃度の導電性カーボンを加えてから、酸性溶液中で酸化還元電位を複数回印加して、電極用粉末材料を形成する工程と、を有することを特徴とする電極用粉末材料の製造方法。
(5) 前記Pt含有金属酸化物粉末を形成する工程において、前記仮焼が酸素ガス雰囲気下行われ、前記焼成が水素ガス雰囲気下行われることを特徴とする(4)に記載の電極用粉末材料の製造方法。
(6) 前記第1の溶液が、硝酸セリウム水溶液又はオキシ塩化ジルコニウム水溶液であることを特徴とする(4)又は(5)に記載の電極用粉末材料の製造方法。
(7) 前記第2の溶液の乾燥の前に、前記第2の溶液を温度300〜900℃で、25〜50時間保持することを特徴とする(4)〜(6)のいずれかに記載の電極用粉末材料の製造方法。
(8) 前記水素ガス雰囲気下の焼成温度が300〜500℃であることを特徴とする(4)〜(7)のいずれかに記載の電極用粉末材料の製造方法。
(9) 前記酸性溶液中での酸化還元電位が0〜1.0Vであり、印加回数が10〜30であることを特徴とする(4)〜(8)のいずれかに記載の電極用粉末材料の製造方法。
(10) 高分子固体電解質からなる基材と、前記基材の一面に形成された第1の電極と、他面に形成された第2の電極とを有する高分子形燃料電池であって、前記第1の電極と前記第2の電極のいずれか又は両方が(1)〜(3)のいずれかに記載の電極用粉末材料からなることを特徴とする高分子形燃料電池。
本発明の電極用粉末材料は、Ptからなるコア部と、前記コア部を覆うように形成され、Ce又はZrの金属酸化物からなるシェル部とからなるコアシェル構造を有するナノ粒子と、導電性カーボンからなる微粒子と、を有する電極用粉末材料であって、前記電極用粉末材料の組成式がX×Pt/Y×金属酸化物/Z×導電性カーボンであり、金属酸化物とPtのモル比(Y/X)が0.001以上0.2以下であり、金属酸化物と導電性カーボンのモル比(Y/Z)が0.0001以上0.15以下であり、前記金属酸化物が非晶質とされ、又はその非晶質の一部が結晶質とされており、前記Ce又はZrが3価又は4価のカチオンであり、前記3価のカチオンが80体積%以上含まれている構成なので、ナノサイズのPtが完全にCe又はZr金属酸化物で覆われた電極用粉末材料とすることができるので、この材料をカソードとして用いた場合、酸素還元分解活性が高く、アノードとして用いた場合、CO被毒耐性に優れたものとすることができる。
本発明の電極用粉末材料の製造方法は、組成式がX×Pt/Y×金属酸化物/Z×導電性カーボンであり、金属酸化物とPtのモル比(Y/X)が0.001以上0.2以下であり、金属酸化物と導電性カーボンのモル比(Y/Z)が0.0001以上0.15以下である電極用粉末材料の製造方法であって、電極用粉末材料の組成が上記条件を満たすように調製した所定の濃度のCe又はZrの金属イオンを有する第1の溶液を、炭酸アンモニウム水溶液又は炭酸水素アンモニウム水溶液中に滴下して、沈殿物の金属酸化物粉末を有する第2の溶液を形成する工程と、前記第2の溶液を乾燥後、仮焼して得られた金属酸化物粉末を塩化白金酸水溶液中に分散してから、前記塩化白金酸水溶液を再度乾燥して得られた沈殿物を焼成して、Pt含有金属酸化物粉末を形成する工程と、前記Pt含有金属酸化物粉末に、電極用粉末材料の組成が上記条件を満たすように、所定の濃度の導電性カーボンを加えてから、酸性溶液中で酸化還元電位を複数回印加して、電極用粉末材料を形成する工程と、を有する構成なので、カソード材料として用いた場合、酸素還元分解活性が高く、アノード材料として用いた場合、CO被毒耐性に優れた電極用粉末材料を容易に製造できる。また、製造コストを低減できる。
本発明の高分子形燃料電池は、高分子固体電解質からなる基材と、前記基材の一面に形成された第1の電極と、他面に形成された第2の電極とを有する高分子形燃料電池であって、前記第1の電極と前記第2の電極のいずれか又は両方が(1)〜(3)のいずれかに記載の電極用粉末材料からなる構成なので、カソード材料として用いた場合、酸素還元分解活性が高く、アノード材料として用いた場合、CO被毒耐性に優れた電極を備えた高分子形燃料電池を製造できる。
本発明は、上記の特有な合成条件を満たすプロセスによって、コアシェル構造(コア部:白金、シェル部:セリウム酸化物(CeまたはCeO)またはジルコニウム酸化物(ZrまたはZrO)を作製することで、従来のPt/導電性カーボン電極(カソードまたはアノード)や、Pt/第2成分/導電性カーボン電極(カソード及びアノード)より、燃料電池などに利用可能な電極(カソード及びアノード)特性を大幅に改良することに成功したものであり、今後、燃料電池を始め、各種センサー等において使用され、それらの性能アップと、優れた性能の長期安定性に大いに寄与するものと期待される。
とりわけ、近年注目されている高分子形燃料電池の小型化や高出力化には大いに寄与するものと期待され、産業界におけるその利用価値は極めて大きいし、重大である。
本発明の高分子形燃料電池の一例を示す概略図である。 本発明の電極用粉末材料の一例を示す概略図である。 本発明の電極用粉末材料の製造方法の一例を示す製造工程図である。 従来の電極用粉末材料の一例を示す概略図である。 制限視野電子回折図(A)と高分解能透過電子顕微鏡観察イメージ(B)である。 カソード性能評価図である。 Koutecky−Levichプロットである。 燃料電池出力性能比較図(運転温度:70℃)である。 燃料電池内のCO導入による低下挙動のグラフである。 比較例6の「燃料電池内のCO導入による低下挙動のグラフ」である。
(本発明の実施形態)
以下、添付図面を参照しながら、本発明の電極用粉末材料、その製造方法及び高分子形燃料電池について説明する。
<高分子形燃料電池>
まず、本発明の実施形態である高分子形燃料電池について説明する。
図1は、本発明の実施形態である高分子形燃料電池の一例を示す概略図である。
図1に示すように、本発明の実施形態である高分子形燃料電池21は、高分子固体電解質からなる基材22と、基材22の一面22aに塗布された第1の電極23と、他面22bに形成された第2の電極24とを有する。第1の電極23と第2の電極24は、それぞれ別の配線により抵抗部25に接続されている。
基材22は、板状又は棒状部材が用いられている。また、基材22の高分子固体電解質としては、特に限定されず、例えば、ナフィオン膜を用いることができる。
第1の電極23と第2の電極24は、例えば、それぞれカソード電極、アノード電極とする。
この構成とすることにより、例えば、アノード電極側から吸収したHガスを、アノード電極においてHに変換し、高分子固体電解質内を移動させ、カソード電極側で、カソード電極側から吸収したOガスと反応させてHOを生成する過程により、抵抗部25で起電力を発生させることができる。
本発明の実施形態である高分子形燃料電池21は、第1の電極23と第2の電極24のいずれか又は両方が、本発明の実施形態である電極用粉末材料11からなる。
第1の電極23と第2の電極24のいずれか又は両方の材料として、本発明の実施形態である電極用粉末材料11を用いることにより、酸素還元分解活性が高く、CO被毒耐性に優れた電極を備えた高分子形燃料電池とすることができる。
<電極用粉末材料>
次に、本発明の実施形態である電極用粉末材料について説明する。
図2は、本発明の実施形態である電極用粉末材料の一例を示す概略図である。
図2に示すように、電極用粉末材料11は、ナノ粒子14と、微粒子15とから構成されている。
ナノ粒子14は、Ptからなるコア部12と、コア部12を覆うように形成され、Ce又はZrの金属酸化物からなるシェル部13とからなるコアシェル構造(ナノシェル構造ともいう)を有している。
コア部12は略球状とされている。しかし、これに限られるものではなく、膜状であってもよい。シェル部13は、非晶質または非晶質と結晶質の混合物からなるCeまたはZrの金属酸化物の膜からなり、コア部12を完全に覆うように形成されることを要する。
これまでのPtと第2成分の酸化物からなる電極の多くは、ナノサイズのPt微粒子と、酸化物ナノ粒子が接触することで界面をつくり、この界面近傍が電極活性サイトとなっていたが、このような電極構造では、界面形成にかかわらないPt表面や酸化物表面が多量に、電極触媒中に存在することになり、電極性能を十分に向上させる結果にはつながらなかった。
本発明で得られるコアシェル構造は、Pt表面を、ほぼすべてシェル部が覆うことで、Pt表面のいたるところに、酸化物の界面を形成させることができ、電極活性の向上に大きく寄与するものと考えられる。
なお、コアシェル構造の原理の検討は後述する。
なお、本発明の実施形態でいうコアシェル構造は、透過型電子顕微鏡を用いてその構造を容易に確認することができる。
電極用粉末材料11の組成式は、X×Pt/Y×金属酸化物/Z×導電性カーボンとされている。ここで、XはPtの組成(モル)であり、Yは金属酸化物の組成(モル)であり、Zは導電性カーボンの組成(モル)である。
また、金属酸化物とPtのモル比(Y/X)は0.001以上0.2以下とされ、金属酸化物と導電性カーボンのモル比(Y/Z)は0.0001以上0.15以下とされている。
上記のY/Xの範囲を上回ると、Pt量が過少となり、PtとCeまたはZrの界面も十分に生成せず、好ましいコアシェル構造が形成されないことから、カソード側においては、酸素の還元分解反応が十分に行われず、アノード側においては、CO耐性の改善が認められず、結果として、燃料電池の発電特性が向上しないことから好ましくない。
また、上記Y/Xの範囲を下回ると、Pt量は足りているが、CeまたはZr分が過少であることから、PtとCeまたはZrの界面も十分に生成せず、好ましいコアシェル構造が形成されないことから、カソード側においては、酸素の還元分解反応が十分に行われず、アノード側においては、CO耐性の改善が認められず、結果として、燃料電池の発電特性が向上しないことから好ましくない。
また、上記のY/Zの範囲を上回ると、コアシェル構造の構成要因であるCe酸化物またはZr酸化物の量は十分であるが、導電性カーボンの量が過少であることから、電極反応のロスが大きくなり、カソード側においては、酸素の還元分解反応が十分に行われず、アノード側においても、CO耐性の向上につながらず、結果として、燃料電池の発電特性の改善につながらないことから好ましくない。
また、上記Y/Zの範囲を下回ると、導電性カーボンの量は十分であるが、コアシェル構造をつくるCe酸化物またはZr酸化物の量が足りないので、うまくコアシェル構造をつくることができず、カソード側においては、酸素の還元分解反応が十分に行われず、アノード側においても、CO耐性の向上につながらず、結果として、燃料電池の発電特性の改善につながらないことから好ましくない。
一方、上記組成式中の金属酸化物はCe酸化物またはZr酸化物を意味するが、この酸化物がCe酸化物の場合にはCeまたはCeOからなり、Zr酸化物の場合にはZrまたはZrOからなり、Pt表面にシェル部として膜状に存在することで、優れた電極特性を示すために、Ptに対するCe酸化物またはZr酸化物量は重要な因子である。
組成式中の導電性カーボン(carbonと記載する場合もある)は、そもそもそれ自身は、まったく電極(カソード、アノード)反応活性に貢献せず、単に、電子の流れを円滑にするための添加剤であることから、導電性カーボン量は、全体の1―30wt%程度あればよく、それより過少に存在した場合は、カソードまたはアノード材料自体の電気抵抗が大きくなり、逆に過剰に存在した場合は、酸素または水素の炭素上での吸着量が大きくなり、電極活性に負の影響を与えるので、全体の1―30wt%程度あることが好ましい。
ただし、Y/Zモル比は、本発明において開発した範囲にない場合、コアシェル構造を形成するうえでの、大きな障害となるので、注意を要する。
また、金属酸化物は非晶質とされ、又はその非晶質の一部が結晶質とされている。
シェル部が完全に結晶化した層からなる場合には、酸素や水素などの反応ガスが、この結晶化したシェル部を容易に通過して、コア部とシェル部の界面に到達することが難しいと考えられるが、シェル部が主として非晶質または非晶質と結晶質の混合物からなる場合には、非晶質部が多量の空隙をもつネットワーク構造となるため、酸素や水素などの反応ガスや反応物質の移動を妨げない効果があるものと考えられる。
また、こうしたシェル部の非晶質性は、透過電子顕微鏡の制限視野電子回折試験の結果得られるパターンから容易に確認することが可能である。
更に、前記Ce又はZrは3価又は4価のカチオンであり、前記3価のカチオンが3価及び4価のカチオン全体に対して80体積%以上含まれている。
金属酸化物がCeまたはZrの酸化物の場合、安定に存在する結晶性酸化物は、すべて4価である。つまり、3価として存在するカチオンは、非晶質部からなると考えてよい。よって、3価が80体積%以上含まれているということは、言い換えれば、非晶質部が80体積%以上(結晶質部が20体積%以下)含まれていることを意味する。
先にふれたように、非晶質部の存在は、透過電子顕微鏡の制限視野電子回折試験の結果得られるパターンから容易に確認することができるが、その存在割合を定量的に知ることは極めて難しい。そこで、3価のカチオンと4価のカチオンの割合を、光電子分光法を用いて識別することで、本発明で開示したコアシェル構造の詳細を容易に確認できる。
よって、本発明では、コアシェル構造の重要な構成要素である非晶質シェル部の割合を、3価と4価の存在割合を用いて、規定することとした。
この3価の割合が、3価及び4価のカチオン全体に対して80体積%を下回る割合で含まれると、結晶質層の割合が多くなりすぎて、反応物質が活性サイトであるコアとシェル部の界面に到達しにくくなるので好ましくない。
また、この3価の割合が、3価及び4価のカチオン全体に対して100体積%であることが理想ではあるが、通常、90体積%以上存在することで十分にその機能は発揮されるもの考えられる。
以上の構成により、Ptからなるコア部12は、完全に金属酸化物からなるシェル部13により覆われる。これにより、この電極用粉末材料を用いて、カソード電極を形成した場合、酸素還元分解活性を高くすることができ、アノードとして用いた場合、CO被毒耐性を優れたものにすることができる。
また、電極用粉末材料11のPt2価は10体積%以上30体積%以下であることが好ましい。
このPt2価の存在割合は、通常の光電子分光法や、放射光を用いた高エネルギー光電子分光法を用いて定量的に測定することができるもので、この範囲を下回るとコア部のPtとシェル部の酸化物層の界面が減るために好ましくない。一方、上記範囲を超えて存在しても、それなりの効果しか期待できないので、30体積%程度存在すれば十分である。
また、Pt−Ce結合量又はPt−Zr結合量が5体積%以上40体積%以下であることが好ましい。
コア部12とシェル部13との界面は、さきのイオン化したPt(2価Pt)以外にも、Pt−Ce結合またはPt−Zr結合をもつ部分からも構成されており、このPt−Ce結合またはPt−Zr結合に由来する部分が、電極活性の大きさに大きく影響を与えていると考えられる。
そこで、PtとCeの結合またはPtとZrの結合に由来する光電子分光法により測定されるPt4fピーク(72.1eV(スピン7/2)と75.3eV(スピン5/2)付近に現れるピーク)から見積もられるPt−Ce結合量またはPt−Zr結合が5体積%以上40体積%以下存在することが好ましい。
このPtとCeの結合やPtとZtの結合に由来するピークも、通常の光電子分光法や、放射光を用いた高エネルギー光電子分光法を用いて定量的に測定することができる。
このPt−Ce結合量またはPt−Zr結合量が、上記範囲を下回ると電極のコア部とシェル部の界面の形成が不十分であり、界面には大きな不整合性がのこり、結果として電極活性を大きく低下させるので好ましくない。一方、この範囲を越えて、Pt−Ce結合またはPt−Zr結合が存在する場合とは、PtとCeまたはPtとZrの合金が生成している場合を除けば、コアシェル構造内では考えにくい量になるので、現実的には、40体積%以下あれば、十分なコアシェル構造が形成されていると考えてよく、コアシェル構造を有する電極の実用的な開発面においても十分な効果が期待できる。
本発明の実施形態である電極用粉末材料11を用いることにより、カソード材料としては、4電子反応を示すようにすることができる。
カソード上では、酸素から過酸化水素をつくる2電子反応と水をつくる4電子反応が存在しうるが、過酸化水素をつくる2電子反応では、燃料電池などの電極反応としては好ましくない。
4電子反応とは、下記式(1)であらわされる電極反応のことであり、先にもふれたように、この反応式で示されるような反応が起こらなければ、燃料電池などの電極としては好ましくない。
さらに、上記式(1)から分かるように、理論電位は約1.2V(vs.RHE)であることから、カソード性能が高い電極は、この値に近い酸素還元反応開始電位を示すことが求められる。
この4電子反応を示すか否かは、電極性能を測定するに際し、電極自体を回転させ、その回転数を変化させながら、電流値を測定するKoutecky−Levichプロットを行うことで容易に判定することができる。
このKoutecky−Levichプロットを詳しく説明すると、今、Iをactivated current,ωを電極の回転数とすると、両者の間には、下記式(2)の関係が成り立つことが知られている。
ここで、B=0.62nFAD02 2/3−1/6O2と定義される物理量であり、F,A,v,D02,CO2の値を用いて計算される。
Fはファラデー定数、Aは測定に用いた電極面積(本明細書内では、0.196cm)、vは動粘性係数(通常1.07×10−2cm−1を用いて計算する)、D02は酸素拡散係数(通常2.16×10−5cm−1を用いて計算する)、CO2は電解質溶液の濃度(本明細書内では、1.03×10−3moll−1として計算)である。
上記Bを求める式の中のnが4に近い値を示す場合、4電子反応であると認定できることが知られていることから、容易に実験から4電子反応であることは確かめることはできる。
一方、アノード材料上では、水素にCOが共存した場合、Ptアノード反応活性が著しく低下してしまう。
従来から使われているPtカソードの場合、800mAの定電流において、5ppmのCOを含む水素ガス中、70℃においてPtアノードを用いた燃料電池を運転した場合、電池電圧が520mV低下することが知られている(実施例及び比較例参照)が、同じ条件下において、この電池電圧の低下が400mV以下であれば、市販のPtカソード材料を用いた燃料電池に比して、十分な大きさの発電特性が得られることから、市販のPtアノード材料に代わるアノードとしては、上記運転条件下において、電池電圧の低下が400mV以下であることが望ましい。
なお、コアシェル構造が、電極性能にあたえる効果については、いまだ十分には解明されていないが、本明細書内で明示したコア部のPtと、この表面を覆うシェル部の酸化物層を共存させることで、その界面に活性の高い層が形成されるものと考えられるので、本特許の請求項に示すようなコアシェル構造を、安定に作製することが好ましい。
また、Ptの4価(PtO)は、電極不活性であるので、表面に4価のPtが現れると、その分だけ活性は低下する傾向にあることから、Pt4価の生成を少なくすることで、さらに一層の電極活性の向上が期待できる。
ただし、コアシェル構造ができないような条件、例えばY/Xの範囲が、本発明の範囲から外れている場合などでは、このPt4価の生成が認められるので、Pt4価の生成を少なくするためにも、コアシェル構造を形成させることが、電極性能向上の観点から重要である。
上記の条件を満たすカソード材料及びアノード材料を作成することで、従来のカソードでは難しい、酸素還元反応開始電位が、090V(vs.RHE)以上であり、かつ4電子反応を示すことを特徴とするカソード材料や、COが燃料水素中に5ppm含まれた場合、通常のPtカソードが800mAにおける電池電位の低下が520mV程度観察されるのに対して、同じく800mAにおける電池電位の低下が、400mV以下に抑えることが可能な燃料電池となる。
ここで、電位の単位として採用されるRHEとは、Reversible Hydrogen Electrodeを意味し、電位を定量的に評価するうえでの指標として一般的に採用されている単位である。
また、電池電位の低下は、一般に、ある電流値において、燃料電池の両極間に生じる電位をもって評価され、この電位の低下が少ないほど、電池としての出力が大きくなるので、実用上、好ましい燃料電池といえる。
さらに、アノード材料の性能を比較する際には、カソードは市販の白金を用いて、電池性能を比較することが好ましいが、燃料電池の場合、出力特性に大きな影響を与えるのは、カソード性能であり、一般的に、アノード性能の良し悪しが、燃料電池出力性能に与える影響は小さいものの、アノード側では、燃料に共存する不純物がもたらす電極反応への被毒効果が、実用上では大きな問題となる。
そこで、カソード性能評価では、電極性能、電池出力の評価が、アノード性能評価では、COなどが一定量、燃料(水素)に共存した場合の、燃料電池電圧低下が、実用上大切な燃料電池用電極評価基準となる。
ナノ粒子14の大きさが1nm以上100nm以下であり、微粒子15の大きさが0.1μm以上10μm以下であることが好ましい。これにより、酸素還元分解活性及びCO被毒耐性に優れたカソード電極材料及び/またはアノード電極材料を容易に形成できる。
<電極用粉末材料の製造方法>
次に、本発明の実施形態である電極用粉末材料の製造方法について説明する。
本発明の実施形態である電極用粉末材料の製造方法は、金属酸化物粉末形成工程(第1工程)と、Pt含有金属酸化物粉末形成工程(第2工程)と、電極用粉末材料形成工程(第3工程)と、を有する。
なお、好ましいコアシェル構造を作製するためには、各工程で、配合比、原料水溶液の濃度、水溶液の温度、得られた電極材料の電気化学的処理条件の管理が極めて重要である。
(金属酸化物粉末形成工程(第1工程))
金属酸化物粉末形成工程(第1工程)は、Ce又はZrの金属イオンを有する第1の溶液を調整してから、前記第1の溶液を炭酸アンモニウム水溶液又は炭酸水素アンモニウム水溶液中に滴下して第2の溶液を調整する工程である。第2の溶液には金属酸化物粉末の沈殿物が形成されている。
まず、出発原料として、例えば、0.7モル/リットルの硝酸セリウム水溶液(純度99.99%)を調製する。
次に、沈殿材として、例えば、2.5モル/リットルの炭酸アンモニウム水溶液(純度99.5%)を調製する。
なお、硝酸セリウム水溶液と炭酸アンモニウム水溶液の量は、これに限られるものではなく、組成式が、X×Pt/Y×Ce酸化物/Z×carbon(ただし、0.001≦Y/X≦0.2、0.0001≦Y/Z≦0.15,Y/X,Y/Zはモル比、MはCeまたはZr、carbonは導電性カーボンを表す)となるような量であればよい。
Ceの酸化物の出発原料として、硝酸セリウム水溶液を用いることが一般的である。
硝酸セリウム水溶液の濃度は、0.5モル/リットル(M)以上3モル/リットル(M)以下であることが望ましい。
3モル/リットル(M)超の場合には、この水溶液を必要量採取して、本発明の電極用粉末材料を作成しようとすると、1次粒子同士が強く凝集して大きな凝集粒子を作製してしまい、その後の電気化学的処理によっても、きれいなコアシェル構造を作製することが難しくなる。一方、0.5モル/リットル(M)未満の場合には、酸化物の収率が低下し、きれいなコアシェル構造をつくることがそれだけ難しくなるだけとなる。よって、使用する硝酸セリウム水溶液の濃度は、0.5モル/リットル(M)以上とすれば良い。
また、Zrの酸化物の出発原料には、一般的には、オキシ塩化ジルコニウム水溶液を用いることが一般的である。オキシ塩化ジルコニウム水溶液は、熱分解が容易で、安価であるためである。
オキシ塩化ジルコニウム水溶液の濃度は、0.1モル/リットル(M)以上1.0モル/リットル(M)以下とすることが好ましい。
1.0モル/リットル(M)超の場合には、1次粒子同士が強く凝集して大きな凝集粒子を作製してしまい、その後の電気化学的処理によっても、きれいなコアシェル構造を作製することが難しくなるうえ、塩素が不純物として大量に残存することにより、電極性能を低下させる要因となる。一方、0.1モル/リットル(M)未満の場合には、酸化物の収率が低下し、きれいなコアシェル構造をつくることがそれだけ難しくなるだけとなる。よって、使用するオキシ塩化ジルコニウム水溶液の濃度は、0.1モル/リットル(M)以上とすることが好ましい。
次に、炭酸アンモニウム水溶液を55℃に熱する。
次に、この加熱した炭酸アンモニウム水溶液を攪拌速度400rpmで十分に攪拌しながら、炭酸アンモニウム水溶液中に、硝酸セリウム水溶液を毎分1ミリリットルの速度で滴下する。これにより、セリウム酸化物前駆体またはジルコニウム酸化物前駆体の沈殿が作製される。
炭酸アンモニウム水溶液の加熱温度は、50℃以上70℃以下が好ましく、53〜60℃がより好ましい。上記の範囲に設定した水溶液を、50℃以上70℃以下の温度に加熱した炭酸アンモニウムまたは炭酸水素アンモニウム水溶液中に滴下して、セリウム酸化物前駆体またはジルコニウム酸化物前駆体を作製することができる。
70℃を超える温度の溶液を用いると、沈殿生成物の凝集が著しくなり、沈殿物を乾燥したのち、焼成して得られるセリウム酸化物またはジルコニウム酸化物の表面活性が高まらず、Ptとのコアシェル構造を作製することが難しくなる。一方、50℃未満の場合には、沈殿物の中に、熱分解に高温を必要とする炭酸塩が共存するようになり、セリウム酸化物やジルコニウム酸化物のみをえるために、1100℃以上の高温を用いることになり、結果として、えられた酸化物が凝集・焼結を起こし、Ptとのコアシェル構造をきれいに作製することが難しくなる。
また、沈澱剤として、炭酸アンモニウム水溶液または炭酸水素アンモニウム水溶液(いずれも濃度0.5モル/リットル(M)以上9モル/リットル(M)以下)を用いることが好ましい。沈澱剤として、炭酸アンモニウム水溶液または炭酸水素アンモニウム水溶液を用いることにより、沈殿に含まれる結晶相が、炭酸塩や水酸化物であると、きわめて小さい前駆体粒子が沈殿中に現れやすくなり、結果としてPtとのコアシェル構造をつくることが容易になり、表面活性の高いセリウム酸化物またはジルコニウム酸化物を作製することができる。また、沈澱剤水溶液の濃度は、つまり、炭酸アンモニウム水溶液または炭酸水素アンモニウム水溶液の濃度は、0.5モル/リットル(M)以上9モル/リットル(M)以下とすることが好ましい。沈殿材水溶液の濃度が9モル/リットル(M)を超える場合には、この水溶液を必要量採取して、本発明の電極用粉末材料を作成しようとすると、沈殿生成物の凝集が大きくなり、いくら乾燥後に粉砕処理を行っても、焼成後に得られるセリウム酸化物やジルコニウム酸化物粒子の表面活性が高まらないことから、電極活性を向上させるために必要なきれいなコアシェル構造が作れない。一方、0.5モル/リットル(M)未満の場合には、酸化物前駆体の収率が少なくなり、コアシェル構造をつくるうえで、実用上好ましくない。
また、攪拌速度は、200〜600rpmとすることが好ましく、300〜500rpmにすることがより好ましい。更にまた、硝酸セリウム水溶液の滴下速度は、毎分0.01ミリリットル〜毎分100ミリリットルとすることが好ましく、毎分0.1ミリリットル〜毎分10ミリリットルにすることがより好ましい。
加熱温度、攪拌速度及び滴下速度の範囲を上記範囲にすれば、沈殿の生成効率を向上させることができる。
(Pt含有金属酸化物粉末形成工程(第2工程))
Pt含有金属酸化物粉末形成工程(第2工程)は、Pt含有金属酸化物粉末を形成する工程であり、仮焼工程と本焼工程とを有する。
仮焼工程では、前記第2の溶液を熟成、水洗、乾燥して、Ce又はZrの金属酸化物の粉末を形成してから、前記金属酸化物の粉末を酸素ガス雰囲気下、仮焼する。その後、本焼工程では、前記金属酸化物の粉末を塩化白金酸水溶液中に分散して、攪拌してから、水素ガス雰囲気下、焼成して、Ptを含有した金属酸化物の粉末を形成する。
(仮焼工程)
まず、硝酸セリウム水溶液滴下終了後、前記加熱温度で、例えば、30時間保持して、熟成を行う。これにより、沈殿をより多く得ることができる。
熟成時間は、24時間以上48時間以下とすることが好ましく、28〜40時間にすることがより好ましい。この熟成時間の範囲にすれば、沈殿の生成効率を向上させることができる。
24時間未満の場合には、沈殿物の表面積が高まらず、焼成して得られる酸化物粒子表面の活性が低下し、電極活性を高めるうえで必要なコアシェル構造が十分につくれない。
一方、48時間を超える場合には、沈殿物の表面活性は高まるものの、逆に沈殿生成物の凝集が進み、いくら乾燥後に粉砕処理を行っても、焼成後に得られる酸化物粒子の表面活性が高まらないことから、電極活性を高めるうえで必要なコアシェル構造が十分につくれない。
次に、こうして得られた沈殿生成物の水洗処理とろ過とを交互に3回繰り返す。これにより、原料中に含まれている微量の不純物を除去することができる。
次に、室温近傍の乾燥不活性ガス、例えば、乾燥窒素ガス中において、2日間乾燥して、前駆体粉末を作製する。これにより、凝集をおこさないようにできる。
次に、前駆体粉末を、酸素流通下(毎分150ミリリットル)、400℃の温度で2時間仮焼する。これにより、結晶性セリア粉末(ナノCeO粉末)を作成することができる。
前記仮焼温度は、セリウム酸化物の場合は300℃以上500℃以下とすることが好ましく、ジルコニウム酸化物の場合は、600℃以上950℃以下とすることが好ましい。
上記焼成温度範囲を下回ると、セリウム酸化物前駆体及びジルコニウム酸化物前駆体の熱分解が十分にすすまず、酸化物になりきれない前駆体組成(硝酸基、炭酸基、塩素基を有する化合物)の粒子が共存することになり、カソード活性やアノード活性が高まらない。
一方、上記焼成温度を上回ると、酸化物粒子にはなるものの、粒成長が著しくなり、結果としてうまく、コアシェル構造を作製することができずカソード活性及びアノード活性が低下する。
また、この焼成の際の酸素ガスの流量には特段の制約はないが、あまり早い流速で、大量の流量の酸素を流すことは、安全性、粉末の飛散による収率の低下、などの面から問題があると思われる。そのため、150ml/minから300ml/minの流速で、焼成を行えば十分である。
また、焼成時間は、あまり長時間の焼成を行うことは、粒成長を引き起こすことにつながり好ましくなく、あまり短時間の処理でも、未反応物質が残存し、カソード活性及びアノード活性の低下を引き起こす可能性があるので、1時間以上4時間程度の焼成処理を行うことが好ましい。
なお、得られた粉末がホタル石単一の結晶相からなることをX線回折試験により確認することにより、得られた粉末が結晶性セリア粉末であることを確認できる。
(本焼工程)
次に、このナノCeO粉末を、10ppm以下に水分量を制御したグローブボックスの中で、例えば、0.1モル/リットルの塩化白金酸(HPtCl・6HO)水溶液を蒸留水中に分散した溶液の混合溶液中に分散させる。なお、この混合溶液に導電性カーボン(カーボンブラック)を混合しても良い。
塩化白金酸(HPtCl・6HO)水溶液の濃度は、0.05モル/リットル(M)以上1モル/リットル(M)以下とすることが好ましい。
0.05モル/リットル(M)未満の場合には、活性サイトとなる白金が少ないことから、コアシェル界面の形成量も少なくなり、結果としてカソード活性が低下するので好ましくなく、一方、1モル/リットル(M)を超える場合には、Pt粒子が凝集し、かえってコアシェル構造の形成が阻害され、結果としてカソード材料またはアノード材料の活性が低下するので好ましくない。
電極を作成する場合に用いる導電性カーボン微粉末は、導電性が十分に確保できるものであれば特に制約はない。導電性が十分に確保できるものであれば、Ptとセリウム酸化物間またはPtとジルコニウム酸化物間の反応で形成されたコアシェル構造やコアとシェルの界面で生み出された電子を、電極表面で滞留させることなく、固体電解質を通して対極側に移動させることができるためである。
導電性カーボン微粉末としては、通常、カーボンブラックまたはグラッシーカーボンを用いればよい。カーボンブラックまたはグラッシーカーボンは、期待される電極性能を確認するうえで十分であるためである。
次に、この混合溶液をマグネティック・スターラーで2時間攪拌する。
次に、混合時に用いた溶媒(通常は蒸留水)を、不活性ガス流通下において蒸発させ乾燥させる。
次に、容器を密封し、乾燥用に用意したグローブボックス内に移し、同じく水分量を10ppm以下に制御した乾燥用グローブボックス内で、スターラーを用いて穏やかに攪拌しながら室温において乾燥する。
次に、得られた乾燥粉末を、石英製のU字管に移す。
次に、U字管の口を密封した状態のまま、乾燥用グローブボックスから取り出す。
次に、U字管を電気炉に装填し、ガス導入管に接続する。
次に、ガス導入管からU字管に高純度水素ガスを毎分150ミリリットルの流速で流しながら、400℃、2時間焼成を行い、白金担持セリア粉末を作成する。
前記焼成温度は、300℃以上500℃以下の温度とすることが好ましい。この温度で、水素流通下において仮焼することが好ましい。300℃未満の場合には、HPtCl・6HOの熱分解が不十分なものとなり、不純物が電極表面に残るばかりでなく、PtとCeOまたはPtとZrOの反応によってうまれる、本発明特有のコアシェル構造の形成が阻害され、結果として電極(カソードまたはアノード)特性が低下するので好ましくない。一方、500℃を超える場合には、コアシェル構造の形成よりも、HPtCl・6HOの熱分解により生じる金属Ptの凝集が著しくなり、かえって、有効な活性サイトであるコアとシェルの界面生成が、電極表面において阻害されるので好ましくない。
(電極用粉末材料形成工程(第3工程))
電極用粉末材料形成工程(第3工程)は、電極用粉末材料を形成する工程であり、Pt含有金属酸化物粉末に導電性カーボンを混合してから、硫酸水溶液中で酸化還元電位を複数回印加して、Ptからなるコア部と、前記コア部を覆うように形成され、Ce又はZrの金属酸化物からなるシェル部とからなるコアシェル構造を有するナノ粒子と、導電性カーボンからなる微粒子と、を有する電極用粉末材料とする。
まず、この粉末に導電性カーボン(カーボンブラック)を全体の20wt%加えて、Ptセリア電極粉末を合成する。
なお、このPtセリア電極粉末において、得られた電極表面上のPt2価の割合、Pt−Ce結合量及びCe3価の割合は、放射光を用いた高エネルギー光電子分光法(XPS)を用いて確認することができる
なお、本発明で示したコアシェル構造を作成するうえで重要な点は、上記に示した表面活性の高いセリア粒子、ジルコニア粒子を上記の条件で作成し、上記に示した塩化白金酸水溶液や導電性カーボンを所定の範囲で混合し、焼成するだけでは、不十分であることである。
これらの操作は、コアシェル構造を作成するための前段階として、必要不可欠であるが、さらに、次の工程により、本発明が開示したコアシェル構造の作成が可能になる。
まず、このPtセリア電極粉末を、エタノール中に分散する。
次に、たてよこ3cm×5cm、厚み1mmの白金板の上に、前記Ptセリア電極粉末を分散したエタノール溶液をたらす。
次に、このPt板を0.5Mの硫酸水溶液中に浸漬して、1時間室温において保持する。
次に、0から1.2V(vs.RHE)の範囲において酸化及び還元方向に電位を10サイクル、走引を繰り返して、ナノシェル構造を有する電極用粉末材料を作製する。
このとき用いる硫酸水溶液の濃度は、0.5M程度が好ましく、これより希薄な水溶液の場合(たとえば、0.05Mなど)の場合、均一なコアシェル構造を作成するうえで必要な酸化及び還元方向への電位の走引サイクル回数が多くなり、実用上、それだけ時間と手間がかかることで、製造コストを増加させるので、好ましくない。
また、硫酸水溶液濃度が極めて濃い場合(たとえば10Mなど)、セリアやジルコニアが、酸化及び還元方向への電位の走引サイクル中に、一部溶解してしまい、組成の制御が難しくなる。よって、0.5M程度が好ましい。
また、酸化及び還元方向への電位の走引は、0Vから1.2Vの範囲で行うことが好ましい。この範囲を超えて酸化及び還元方向への電位の走引を繰り返すと、コアシェル構造は形成されるが、サイクルを繰り返す間に、コア部とシェル部のかい離がおこり、結果としてコアシェル構造が壊れてしまうので好ましくない。
また、この範囲内であっても、その範囲があまり狭い場合(たとえば、0Vから0.5V間の走引を繰り返す)、コアシェル構造を作成するうえでの十分な電気化学処理効果が出ないので、結果として不完全かつ不均一にしかコアシェル構造が形成されないため、好ましくない。
よって、実用上は、0Vから1.0Vないし1.2Vの範囲で、酸化及び還元方向への電位の走引を繰り返すことが好ましい。
さらに、上記の電位の範囲で、酸化及び還元方向への電位の走引を繰り返す場合、その繰り返し回数(サイクル数)は、5回から30回程度であることが好ましい。
この範囲を下回ると、コアシェル構造を均一につくることが難しくなり、十分な電極性能向上への効果が期待できず好ましくなく、この範囲を上回っても、それなりの効果しか期待できないので、30回程度のサイクル数で十分である。
制限視野電子線回折と透過電子顕微鏡観察により、電極用粉末材料の組成及び結晶構造を確認できる。
制限視野電子線回折結果から、Ce酸化物が主として非晶質状態であることを確認できる。また、透過電子顕微鏡観察により、コア部であるPtの周囲を、薄いシェル部であるセリウム酸化物層が覆っている様子を観察できる。
電極性能は、電極の電流値のみで規定されるものはなく、カソード反応の場合は、酸素還元反応が開始される電位(On Set Potentialと呼ばれる)が高いことも重要である。
一方、アノード反応の場合は、先にもふれたように、対極に通常の白金カソードを用いて、燃料電池を作製したのち、一定の電流値における電池電位を、燃料である水素のみと、燃料にCOを微量に共存させた場合とで比べ、COを含んだ水素を用いた場合の電池電圧の低下が小さいことも重要である。
カソード反応において、この酸素還元反応開始電位が高いということは、カソード上に吸着した酸素の還元反応が極めて容易に起こることを意味している。
また、高い酸素還元反応開始電位を有するカソード材料を燃料電池用の電極として用いることで、燃料電池を用いて発電を行う場合に生じる、カソード分極損失を低減させ、燃料電池から大きな電流密度ならびに出力をとりだすことが可能になる。
よって、酸素還元反応開始電位は十分に高いものでなければならない。
一方、アノード反応においては、水素の貯蔵や輸送がいまだに難しいことから、天然ガスや都市ガスを改質して水素を製造し、燃料電池へ供給するシステム開発が活発に行われている。
しかし、この場合、燃料から水素を生成する反応における副生成物であるCOが白金電極活性を著しく低下させることから、このCOによる被毒低減に対する効果が高いことが、燃料電池用アノードの開発において極めて重要である。
上述のように、本発明により開示した作成法を用いることで、通常のPt電極では得られない高いカソード性能や高いアノード性能が得られるようになることから、この合成条件を特定し、実施することが、望ましいカソード特性やアノード特性を安定に得るうえで極めて重要である。
本発明の実施形態である電極用粉末材料11は、Ptからなるコア部12と、コア部12を覆うように形成され、Ce又はZrの金属酸化物からなるシェル部13とからなるコアシェル構造を有するナノ粒子14と、導電性カーボンからなる微粒子15と、を有する電極用粉末材料であって、電極用粉末材料の組成式がX×Pt/Y×金属酸化物/Z×導電性カーボンであり、金属酸化物とPtのモル比(Y/X)が0.001以上0.2以下であり、金属酸化物と導電性カーボンのモル比(Y/Z)が0.0001以上0.15以下であり、前記金属酸化物が非晶質とされ、又はその非晶質の一部が結晶質とされており、前記Ce又はZrが3価又は4価のカチオンであり、前記3価のカチオンが80体積%以上含まれている構成なので、ナノサイズのPtが完全にCe又はZr金属酸化物で覆われた電極用粉末材料とすることができるので、この材料をカソードとして用いた場合、カソード雰囲気内においては、通常Pt自身もまた酸化してしまうため、Pt表面に厚い酸化膜ができてしまう。酸素還元反応を起こすためには、まずこの酸化膜を還元的に取り除き、そののちに、酸素還元反応が始まることから、電極表面の活性化(酸化膜除去)のために、電気的なエネルギーが必要になる。しかし、Ptセリアコアシェル電極を用いると、3価のセリアが自ら酸化されることで、Pt表面が酸化されることを防ぐことが可能になり、速やかかつ容易に、酸素還元活性を示すことが可能になり、酸素還元分解活性が高くなる。
一方、アノードとして用いた場合、シェル部の酸化物表面層に、多くのCO分子がトラップされ、あわせて、酸化物表面に吸着している多量の水酸基が、このトラップされたCOを酸化して、COにしてしまう機能が働くうえ、COに比して分子サイズの小さな水素分子は、酸化物シェル部にトラップされず、Pt表面に到達し、アノード反応を円滑に行うことが可能になるので、CO被毒耐性に優れたものとすることができる。
本発明の実施形態である電極用粉末材料11は、Pt2価が10体積%以上30体積%以下であり、Pt−Ce結合量又はPt−Zr結合量が5体積%以上40体積%以下である構成なので、ナノサイズのPtが完全にCe又はZr金属酸化物で覆うことができるので、この材料をカソード材料として用いた場合、酸素還元分解活性が高く、アノード材料として用いた場合、CO被毒耐性に優れたものとすることができる。
本発明の実施形態である電極用粉末材料11は、ナノ粒子14の大きさが1nm以上100nm以下であり、微粒子15の大きさが0.1μm以上10μm以下である構成なので、酸素還元分解活性が高く、アノード材料として用いた場合、CO被毒耐性に優れた電極を容易に形成することができる。
本発明の実施形態である電極用粉末材料の製造方法は、組成式がX×Pt/Y×金属酸化物/Z×導電性カーボンであり、金属酸化物とPtのモル比(Y/X)が0.001以上0.2以下であり、金属酸化物と導電性カーボンのモル比(Y/Z)が0.0001以上0.15以下である電極用粉末材料の製造方法であって、電極用粉末材料の組成が上記条件を満たすように調製した所定の濃度のCe又はZrの金属イオンを有する第1の溶液を、炭酸アンモニウム水溶液又は炭酸水素アンモニウム水溶液中に滴下して、沈殿物の金属酸化物粉末を有する第2の溶液を形成する工程S1と、前記第2の溶液を乾燥後、仮焼して得られた金属酸化物粉末を塩化白金酸水溶液中に分散してから、前記塩化白金酸水溶液を再度乾燥して得られた沈殿物を焼成して、Pt含有金属酸化物粉末を形成する工程S2と、前記Pt含有金属酸化物粉末に、電極用粉末材料の組成が上記条件を満たすように、所定の濃度の導電性カーボンを加えてから、酸性溶液中で酸化還元電位を複数回印加して、電極用粉末材料を形成する工程S3と、を有する構成なので、カソードとして用いた場合、カソード雰囲気内においては、通常Pt自身もまた酸化してしまうため、Pt表面に厚い酸化膜ができてしまう。酸素還元反応を起こすためには、まずこの酸化膜を還元的に取り除き、そののちに、酸素還元反応が始まることから、電極表面の活性化(酸化膜除去)のために、電気的なエネルギーが必要になる。しかし、Ptセリアコアシェル電極を用いると、3価のセリアが自ら酸化されることで、Pt表面が酸化されることを防ぐことが可能になり、速やかかつ容易に、酸素還元活性を示すことが可能になり、酸素還元分解活性が高くなる。
一方、アノードとして用いた場合、シェル部の酸化物表面層に、多くのCO分子がトラップされ、あわせて、酸化物表面に吸着している多量の水酸基が、このトラップされたCOを酸化して、COにしてしまう機能が働くうえ、COに比して分子サイズの小さな水素分子は、酸化物シェル部にトラップされず、Pt表面に到達し、アノード反応を円滑に行うことが可能になるので、CO被毒耐性に優れた電極用粉末材料を容易に製造できる。また、製造コストを低減できる。
本発明の実施形態である電極用粉末材料の製造方法は、Pt含有金属酸化物粉末を形成する工程S2において、前記仮焼が酸素ガス雰囲気下行われ、前記焼成が水素ガス雰囲気下行われる構成なので、カソードとして用いた場合、酸素還元分解活性が高く、アノードとして用いた場合、CO被毒耐性に優れた電極用粉末材料を容易に製造できる。また、製造コストを低減できる。
本発明の実施形態である電極用粉末材料の製造方法は、第1の溶液が硝酸セリウム水溶液又はオキシ塩化ジルコニウム水溶液である構成なので、Ce又はZrの濃度を容易に設定することができ、カソードとして用いた場合、酸素還元分解活性が高く、アノードとして用いた場合、CO被毒耐性に優れた電極用粉末材料を容易に製造できる。また、製造コストを低減できる。
本発明の実施形態である電極用粉末材料の製造方法は、前記第2の溶液の乾燥の前に、前記第2の溶液を温度300〜900℃で、25〜50時間保持する構成なので、カソードとして用いた場合、酸素還元分解活性が高く、アノードとして用いた場合、CO被毒耐性に優れた電極用粉末材料を容易に製造できる。また、製造コストを低減できる。
本発明の実施形態である電極用粉末材料の製造方法は、前記水素ガス雰囲気下の焼成温度が300〜500℃である構成なので、カソードとして用いた場合、酸素還元分解活性が高く、アノードとして用いた場合、CO被毒耐性に優れた電極用粉末材料を容易に製造できる。また、製造コストを低減できる。
本発明の実施形態である電極用粉末材料の製造方法は、前記酸性溶液中での酸化還元電位が0〜1.0Vであり、印加回数が10〜30である構成なので、ナノサイズのPtが完全にCe又はZr金属酸化物で覆うコアシェル構造を容易に形成することができ、カソードとして用いた場合、酸素還元分解活性が高く、アノードとして用いた場合、CO被毒耐性に優れた電極用粉末材料を容易に製造できる。また、製造コストを低減できる。
本発明の実施形態である高分子形燃料電池21は、高分子固体電解質からなる基材22と、基材22の一面22aに形成された第1の電極23と、他面22bに形成された第2の電極24とを有する高分子形燃料電池であって、第1の電極23と第2の電極24のいずれか又は両方が先に記載の電極用粉末材料11からなる構成なので、カソードとして用いた場合、カソード雰囲気内においては、通常Pt自身もまた酸化してしまうため、Pt表面に厚い酸化膜ができてしまう。酸素還元反応を起こすためには、まずこの酸化膜を還元的に取り除き、そののちに、酸素還元反応が始まることから、電極表面の活性化(酸化膜除去)のために、電気的なエネルギーが必要になる。しかし、Ptセリアコアシェル電極を用いると、3価のセリアが自ら酸化されることで、Pt表面が酸化されることを防ぐことが可能になり、速やかかつ容易に、酸素還元活性を示すことが可能になり、酸素還元分解活性が高くなる。
一方、アノードとして用いた場合、シェル部の酸化物表面層に、多くのCO分子がトラップされ、あわせて、酸化物表面に吸着している多量の水酸基が、このトラップされたCOを酸化して、COにしてしまう機能が働くうえ、COに比して分子サイズの小さな水素分子は、酸化物シェル部にトラップされず、Pt表面に到達し、アノード反応を円滑に行うことが可能になるので、CO被毒耐性に優れた電極を備えた高分子形燃料電池とすることができる。
本発明の実施形態である電極用粉末材料、その製造方法及び高分子形燃料電池は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で、種々変更して実施することができる。本実施形態の具体例を以下の実施例で示す。しかし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
組成式X×Pt/Y×Ce酸化物/Z×carbonにおいて、Y/X=0.002、Y/Z=0.0005となるように、出発原料として、0.7モル/リットルの硝酸セリウム(純度99.99%)と2.5モル/リットルの炭酸アンモニウム水溶液(純度99.5%)を調製し、55℃に熱した炭酸アンモニウム水溶液中に、攪拌速度400rpmにおいて十分に攪拌しながら、硝酸セリウム水溶液を毎分1ミリリットルの速度で滴下して沈殿を作製した。
硝酸セリウム水溶液滴下終了後、55℃の温度で、30時間熟成を行った。
こうして得られた沈殿は、水洗処理とろ過とを交互に3回繰り返したのち、乾燥窒素ガス中において、2日間乾燥し、前駆体粉末を作製した。前駆体粉末は引き続き、酸素流通下(毎分150ミリリットル)において、400℃の温度で2時間仮焼して、結晶性セリア粉末を作成し、ホタル石単一の結晶相からなることをX線回折試験により確認した。
そののち、このナノCeO粉末を、10ppm以下に水分量を制御したグローブボックスの中で、0.1モル/リットルの塩化白金酸水溶液を蒸留水中に分散した溶液の混合溶液中に分散させ、マグネティック・スターラーで2時間攪拌したのち、容器を密封し、乾燥用に用意したグローブボックス内に移し、同じく水分量を10ppm以下に制御した乾燥用グローブボックス内で、スターラーを用いて穏やかに攪拌しながら室温において乾燥し、得られた乾燥粉末を、石英製のU字管に移したのち、U字管の口を密封した状態のまま、乾燥用グローブボックスから取り出し、電気炉に装填し、ガス導入管に接続後、高純度水素ガスを毎分150ミリリットルの流速で流しながら、400℃、2時間焼成を行い、白金担持セリア粉末を作成し、この粉末に導電性カーボン(カーボンブラック)を全体の20wt%加えることで、白金セリア電極粉末を合成した。
こうして得られた電極表面上のPtの価数は、放射光を用いた高エネルギー光電子分光法を用いて観察し、その割合を定量したところ、すべてのPt(金属Pt,2価Ptおよび4価Pt)に対して、Pt2価の割合は、12体積%の値を示し、一方で、4価のPtは観察されなかった。また、Pt−Ce結合量は10体積%であった。
くわえて、Ce3価の割合は、Ce3価とCe4価の合計に対して、ほぼ100体積%であることを、XPSを用いたCe3dスペクトルの解析から確認した。
さらに、この電極粉末を、エタノール中に分散したのち、たてよこ3cm×5cm、厚み1mmの白金板の上にたらし、そののち、0.5Mの硫酸水溶液中に浸漬して、1時間室温において保持したのち、0から1.2V(vs.RHE)の範囲において酸化及び還元方向に電位を10サイクル、走引を繰り返し、ナノシェル構造を有する電極粉末を作製した。
得られた粉末から得られた制限視野電子線回折結果と、同じくこの粉末を用いて行った透過電子顕微鏡観察結果を、それぞれ、図5(A)及び図5(B)に示す。
図5(A)には、Ceに由来すると考えられるブロードなリング状のシグナルが観察されており、このことは、Ce3+が非晶質状態で存在することを意味している。
そのほかには、Ptに由来するリングが観察されており、このことから、Ce酸化物は主として、非晶質状態であることが分かる。
さらに、図5(B)の高分解能電子顕微鏡観察結果からは、コア部である白金の周囲を、薄いシェル部であるセリウム酸化物層が覆っている様子が、明瞭に観察される。
図6には、こうして得られた電極粉末をカソードとして用いた場合のカソード電極特性評価結果を示す。
カソード性能評価の際は、実施例1の電極活物質を、濃度1モル/リットルのHSO水溶液中において、電極表面に、毎分5ミリリットルで酸素を吹きこみながら、金電極を2000rpmの速度で回転させ、毎分10mVの走査速度で、ボルタンメトリーにより、カソード触媒活性の評価を行った。
図6から、酸素還元反応は、0.96V(vs.RHE)から始まり、同じ手法で測定した白金電極の特性(0.806V(vs.RHE))とくらべて大きな改善が認められた。
同時に、電極反応機構を示すKoutecky−Levichプロットからもとめたn値は4.1であり、4電子反応であることも確認した(図7)。
この際、電極の回転数は1500rpmから3000rpmまで、500rpmずつ変化させ、Koutecky−Levichプロットを行った。
さらに、実施例1で得られたカソード電極と、比較のために用いた市販の白金カソード電極の性能を、運転温度70℃、100%水蒸気加湿環境下における燃料電池の出力性能比較により、比較検討した結果(図8)、大きな出力特性の改善が確認できた。
また、この電極活物質をアノードとして用いた場合のアノード特性結果を評価する目的で、アノード側に、実施例1のアノード材料を用い、対極であるカソード側には、市販の白金カソード(Johnson Mattey,HISPEC 3000)を用いて、燃料に水素のみを用いた場合の、800mAにおける定常電位を測定し、その後、この燃料にCOを5ppm混合した混合ガスを燃料ガスとして用いて、同じく800mAの一定電流において定常電位を測定した結果を図9に示す。なお、具体的には、測定開始20分後に5ppmCOガスを含んだ水素ガスを導入した。
この測定結果から、水素のみにおいては、715mVの電池電圧が観察されていたが、COを5ppm含む燃料ガスに切り替えた後には、200mVの電池電圧の低下が確認された。
一方、市販の白金アノード(Johnson Mattey,HISPEC 3000)を用いて、同様な試験を行ったところ、COを5ppm含む燃料ガスに切り替えたあとの電池電圧の低下は、520mVと大きなものであったことから(図10)、実施例1の電極活物質が、CO共存ガスを用いても優れたアノード特性を示すことが分かった。なお、図10は100%加湿雰囲気内において測定を行って得られた結果である。また、測定開始20分後に5ppmCOガスを含んだ水素ガスを導入した。電流値は800mAであり、運転温度は70℃である。
実施例1の作製条件及び評価結果を、表1に示した。
(実施例2)
組成式X×Pt/Y×Ce酸化物/Z×carbonにおいて、Y/X=0.18、Y/Z=0.13となるように、出発原料として、2.0モル/リットルの硝酸セリウム(純度99.99%)と8モル/リットルの炭酸アンモニウム水溶液(純度99.5%)を調製し、65℃に熱した炭酸アンモニウム水溶液中に、攪拌速度400rpmにおいて十分に攪拌しながら、硝酸セリウム水溶液を毎分1ミリリットルの速度で滴下して沈殿を作製した。
硝酸セリウム水溶液滴下終了後、65℃の温度で、45時間熟成を行った。
こうして得られた沈殿は、水洗処理とろ過とを交互に3回繰り返したのち、乾燥窒素ガス中において、2日間乾燥し、前駆体粉末を作製した。前駆体粉末は引き続き、酸素流通下(毎分150ミリリットル)において、320℃の温度で2時間仮焼して、結晶性セリア粉末を作成し、ホタル石単一の結晶相からなることをX線回折試験により確認した。
そののち、このナノCeO粉末を、10ppm以下に水分量を制御したグローブボックスの中で、0.8モル/リットルの塩化白金酸水溶液を蒸留水中に分散した溶液の混合溶液中に分散させ、マグネティック・スターラーで2時間攪拌したのち、容器を密封し、乾燥用に用意したグローブボックス内に移し、同じく水分量を10ppm以下に制御した乾燥用グローブボックス内で、スターラーを用いて穏やかに攪拌しながら室温において乾燥し、得られた乾燥粉末を、石英製のU字管に移したのち、U字管の口を密封した状態のまま、乾燥用グローブボックスから取り出し、電気炉に装填し、ガス導入管に接続後、高純度水素ガスを毎分150ミリリットルの流速で流しながら、480℃、2時間焼成を行い、白金担持セリア粉末を作成し、この粉末に導電性カーボン(カーボンブラック)を全体の20wt%加えることで、白金セリア電極粉末を合成した。
こうして得られた電極表面上のPtの価数は、放射光を用いた高エネルギー光電子分光法を用いて観察し、その割合を定量したところ、すべてのPt(金属Pt,2価Ptおよび4価Pt)に対して、Pt2価の割合は、27体積%の値を示し、一方で、4価のPtは観察されなかった。
また、Pt−Ce結合量は36体積%であった。くわえて、Ce3価の割合は、90体積%であることを、XPSのCe3dスペクトルの観察結果から確認した。さらに、この電極粉末を、エタノール中に分散したのち、たてよこ3cm×5cm、厚み1mmの白金板の上にたらし、そののち、0.5Mの硫酸水溶液中に浸漬して、1時間室温において保持したのち、0から1.2V(vs.RHE)の範囲において酸化及び還元方向に電位を30サイクル、走引を繰り返し、ナノシェル構造を有する電極粉末を作製した。得られた粉末から得られた制限視野電子線回折試験を行った結果、実施例1の図5(A)で示した結果同様、Ceに由来すると考えられるブロードなリング状のシグナルと、Ce4+(CeO)に由来する線幅の狭いリング状のシグナルが観察されており、非晶質と結晶質の混合状態であることが分かった。
さらに、高分解能電子顕微鏡観察結果からは、実施例1の図5(B)同様、コア部である白金の周囲を、薄いシェル部であるセリウム酸化物層が覆っている様子が、明瞭に観察された。
さらに、こうして得られた電極粉末をカソードとして用いた場合のカソード電極特性評価を、実施例1の実験方法に準拠して行った結果、実施例1の図6と同様な電極特性曲線が観察され、その結果から見積もられた酸素還元反応開始電位は、0.99V(vs.RHE)であり、同じ手法で測定した白金電極の特性(0.806V(vs.RHE))とくらべて、大きな改善が認められた。同時に、実施例1と同じ方法を用いて、電極反応機構を示すKoutecky−Levichプロットをした、その図の傾きからもとめたn値は4.05であり、4電子反応であることも確認した。
さらに、実施例2で得られたカソード電極と、比較のために用いた市販の白金カソード電極の性能を、運転温度70℃、100%水蒸気加湿環境下における燃料電池の出力性能比較により、比較検討した結果、実施例1と同様に、大きな出力特性の改善が確認できた。
また、この電極活物質をアノードとして用いた場合のアノード特性結果を評価する目的で、アノード側に、実施例2のアノード材料を用い、実施例1の実験方法と同じ方法で、アノードのCO被毒耐性を測定評価した結果、水素のみをアノードガスとして用いた場合には、740mV程度の電池電圧が観察されていたが、COを5ppm含む燃料ガスをアノードガスに用いた後は、170mVの電池電圧の低下が確認された。一方、市販の白金アノード(Johnson Mattey,HISPEC 3000)を用いて、同様な試験を行ったところ、COを5ppm含む燃料ガスに切り替えたあとの電池電圧の低下は、520mVと大きなものであったことから(図10)、実施例2の電極活物質が、CO共存ガスを用いても優れたアノード特性を示すことが分かった。
実施例2で得られた結果を、表2に示した。
(実施例3)
組成式X×Pt/Y×Zr酸化物/Z×carbonにおいて、Y/X=0.002、Y/Z=0.0005となるように、出発原料として、0.2モル/リットルのオキシ塩化ジルコニウム水溶液(純度99.9%)と2.5モル/リットルの炭酸水素アンモニウム水溶液(純度99.5%)を調製し、55℃に熱した炭酸水素アンモニウム水溶液中に、攪拌速度400rpmにおいて十分に攪拌しながら、硝酸セリウム水溶液を毎分1ミリリットルの速度で滴下して沈殿を作製した。硝酸セリウム水溶液滴下終了後、55℃の温度で、28時間熟成を行った。
こうして得られた沈殿は、水洗処理とろ過とを交互に3回繰り返したのち、乾燥窒素ガス中において、2日間乾燥し、前駆体粉末を作製した。前駆体粉末は引き続き、酸素流通下(毎分150ミリリットル)において、650℃の温度で2時間仮焼して、結晶性ジルコニア粉末を作成し、ジルコニア単一の結晶相(単斜相ジルコニアと正方相ジルコニア)からなることをX線回折試験により確認した。
そののち、このナノジルコニア粉末を、10ppm以下に水分量を制御したグローブボックスの中で、0.1モル/リットルの塩化白金酸水溶液を蒸留水中に分散した溶液の混合溶液中に分散させ、マグネティック・スターラーで2時間攪拌したのち、容器を密封し、乾燥用に用意したグローブボックス内に移し、同じく水分量を10ppm以下に制御した乾燥用グローブボックス内で、スターラーを用いて穏やかに攪拌しながら室温において乾燥し、得られた乾燥粉末を、石英製のU字管に移したのち、U字管の口を密封した状態のまま、乾燥用グローブボックスから取り出し、電気炉に装填し、ガス導入管に接続後、高純度水素ガスを毎分150ミリリットルの流速で流しながら、350度、2時間焼成を行い、白金担持ジルコニア粉末を作成し、この粉末に導電性カーボン(カーボンブラック)を全体の20wt%加えることで、白金ジルコニア電極粉末を合成した。
こうして得られた電極表面上のPtの価数は、放射光を用いた高エネルギー光電子分光法を用いて観察し、その割合を定量したところ、すべてのPt(金属Pt,2価Ptおよび4価Pt)に対して、Pt2価の割合は、14体積%の値を示し、一方で、4価のPtは観察されなかった。
また、Pt−Zr結合量は12体積%であった。くわえて、Zr3価の割合は、Zr3価とZr4価の合計に対して、ほぼ100体積%であることを、XPSを用いたZr3dスペクトルの解析から確認した。
さらに、この電極粉末を、エタノール中に分散したのち、たてよこ3cm×5cm、厚み1mmの白金板の上にたらし、そののち、0.5Mの硫酸水溶液中に浸漬して、1時間室温において保持したのち、0から1.0V(vs.RHE)の範囲において酸化及び還元方向に電位を10サイクル、走引を繰り返し、ナノシェル構造を有する電極粉末を作製した。
得られた粉末から得られた制限視野電子線回折試験を行った結果、実施例1の図5(A)で示した結果同様、Zrに由来すると考えられるブロードなリング状のシグナルが観察されており、このことは、Zr3+が非晶質状態で存在することを意味している。そのほかには、Ptに由来するリングが観察されており、このことから、Zr酸化物は主として、非晶質状態であることが分かる。
さらに、高分解能電子顕微鏡観察結果からは、実施例1の図5(B)同様、コア部である白金の周囲を、薄いシェル部であるジルコニウム酸化物層が覆っている様子が、明瞭に観察された。
さらに、こうして得られた電極粉末をカソードとして用いた場合のカソード電極特性評価を、実施例1の実験方法に準拠して行った結果、実施例1の図6と同様な電極特性曲線が観察され、その結果から見積もられた酸素還元反応開始電位は、0.98V(vs.RHE)であり、同じ手法で測定した白金電極の特性(0.806V(vs.RHE))とくらべて、大きな改善が認められた。同時に、実施例1と同じ方法を用いて、電極反応機構を示すKoutecky−Levichプロットをした、その図の傾きからもとめたn値は4.1であり、4電子反応であることも確認した。
さらに、実施例3で得られたカソード電極と、比較のために用いた市販の白金カソード電極の性能を、運転温度70℃、100%水蒸気加湿環境下における燃料電池の出力性能比較により、比較検討した結果、実施例1と同様に、大きな出力特性の改善が確認できた。
また、この電極活物質をアノードとして用いた場合のアノード特性結果を評価する目的で、アノード側に、実施例3のアノード材料を用い、実施例1の実験方法と同じ方法で、アノードのCO被毒耐性を測定評価した結果、水素のみをアノードガスとして用いた場合には、710mV程度の電池電圧が観察されていたが、COを5ppm含む燃料ガスをアノードガスに用いた後は、210mVの電池電圧の低下が確認された。一方、市販の白金アノード(Johnson Mattey,HISPEC 3000)を用いて、同様な試験を行ったところ、COを5ppm含む燃料ガスに切り替えたあとの電池電圧の低下は、520mVと大きなものであったことから(図10)、実施例2の電極活物質が、CO共存ガスを用いても優れたアノード特性を示すことが分かった。
実施例3で得られた結果を、表3に示した。
(実施例4)
組成式X×Pt/Y×Zr酸化物/Z×carbonにおいて、Y/X=0.18、Y/Z=0.13となるように、出発原料として、0.8モル/リットルのオキシ塩化ジルコニウム水溶液(純度99.9%)と8モル/リットルの炭酸水素アンモニウム水溶液(純度99.5%)を調製し、65℃に熱した炭酸水素アンモニウム水溶液中に、攪拌速度400rpmにおいて十分に攪拌しながら、硝酸セリウム水溶液を毎分1ミリリットルの速度で滴下して沈殿を作製した。
硝酸セリウム水溶液滴下終了後、65℃の温度で、45時間熟成を行った。
こうして得られた沈殿は、水洗処理とろ過とを交互に3回繰り返したのち、乾燥窒素ガス中において、2日間乾燥し、前駆体粉末を作製した。前駆体粉末は引き続き、酸素流通下(毎分150ミリリットル)において、900℃の温度で2時間仮焼して、結晶性ジルコニア粉末を作成し、ジルコニア単一の結晶相(単斜相ジルコニアと正方相ジルコニア)からなることをX線回折試験により確認した。
そののち、このナノジルコニア粉末を、10ppm以下に水分量を制御したグローブボックスの中で、0.8モル/リットルの塩化白金酸水溶液を蒸留水中に分散した溶液の混合溶液中に分散させ、マグネティック・スターラーで2時間攪拌したのち、容器を密封し、乾燥用に用意したグローブボックス内に移し、同じく水分量を10ppm以下に制御した乾燥用グローブボックス内で、スターラーを用いて穏やかに攪拌しながら室温において乾燥し、得られた乾燥粉末を、石英製のU字管に移したのち、U字管の口を密封した状態のまま、乾燥用グローブボックスから取り出し、電気炉に装填し、ガス導入管に接続後、高純度水素ガスを毎分150ミリリットルの流速で流しながら、450度、2時間焼成を行い、白金担持ジルコニア粉末を作成し、この粉末に、導電性カーボンを全体の20wt%加えることで、白金ジルコニア電極粉末を合成した。
こうして得られた電極表面上のPtの価数は、放射光を用いた高エネルギー光電子分光法を用いて観察し、その割合を定量したところ、すべてのPt(金属Pt,2価Ptおよび4価Pt)に対して、Pt2価の割合は29体積%の値を示し、一方で、4価のPtは観察されなかった。また、Pt−Zr結合量は37体積%であった。くわえて、Zr3価の割合は、92体積%であることを、XPSを用いたZe3dスペクトルの観察結果から確認した。
さらに、この電極粉末を、エタノール中に分散したのち、たてよこ3cm×5cm、厚み1mmの白金板の上にたらし、そののち、0.5Mの硫酸水溶液中に浸漬して、1時間室温において保持したのち、0から1.1V(vs.RHE)の範囲において酸化及び還元方向に電位を30サイクル、走引を繰り返し、ナノシェル構造を有する電極粉末を作製した。
得られた粉末から得られた制限視野電子線回折試験を行った結果、実施例1の図5(A)で示した結果同様、Zrに由来すると考えられるブロードなリング状のシグナルと、Zr4+(ZrO)に由来する線幅の狭いリング状のシグナルが観察されており、非晶質と結晶質の混合状態であることが分かった。
さらに、高分解能電子顕微鏡観察結果からは、実施例1の図5(B)同様、コア部である白金の周囲を、薄いシェル部であるジルコニウム酸化物層が覆っている様子が、明瞭に観察された。
さらに、こうして得られた電極粉末をカソードとして用いた場合のカソード電極特性評価を、実施例1の実験方法に準拠して行った結果、実施例1の図6と同様な電極特性曲線が観察され、その結果から見積もられた酸素還元反応開始電位は、1.05V(vs.RHE)であり、同じ手法で測定した白金電極の特性(0.806V(vs.RHE))とくらべて、大きな改善が認められた。
同時に、実施例1と同じ方法を用いて、電極反応機構を示すKoutecky−Levichプロットをした、その図の傾きからもとめたn値は4.0であり、4電子反応であることも確認した。
さらに、実施例4で得られたカソード電極と、比較のために用いた市販の白金カソード電極の性能を、運転温度70℃、100%水蒸気加湿環境下における燃料電池の出力性能比較により、比較検討した結果、実施例1と同様に、大きな出力特性の改善が確認できた。
また、この電極活物質をアノードとして用いた場合のアノード特性結果を評価する目的で、アノード側に、実施例4のアノード材料を用い、実施例1の実験方法と同じ方法で、アノードのCO被毒耐性を測定評価した結果、水素のみをアノードガスとして用いた場合には、750mV程度の電池電圧が観察されていたが、COを5ppm含む燃料ガスをアノードガスに用いた後は、190mVの電池電圧の低下が確認された。
一方、市販の白金アノード(Johnson Mattey, HISPEC 3000)を用いて、同様な試験を行ったところ、COを5ppm含む燃料ガスに切り替えたあとの電池電圧の低下は、520mVと大きなものであったことから(図10)、実施例4の電極活物質が、CO共存ガスを用いても優れたアノード特性を示すことが分かった。
実施例4で得られた結果を、表4に示した。
(比較例1)
組成式X×Pt/Y×Ce酸化物/Z×carbonにおいて、Y/X=0.0006、Y/Z=0.00007となるように、出発原料として、0.7モル/リットルの硝酸セリウム(純度99.99%)と2.5モル/リットルの炭酸アンモニウム水溶液(純度99.5%)を調製し、55℃に熱した炭酸アンモニウム水溶液中に、攪拌速度400rpmにおいて十分に攪拌しながら、硝酸セリウム水溶液を毎分1ミリリットルの速度で滴下して沈殿を作製した。
硝酸セリウム水溶液滴下終了後、55℃の温度で、30時間熟成を行った。
こうして得られた沈殿は、水洗処理とろ過とを交互に3回繰り返したのち、乾燥窒素ガス中において、2日間乾燥し、前駆体粉末を作製した。前駆体粉末は引き続き、酸素流通下(毎分150ミリリットル)において、400℃の温度で2時間仮焼して、結晶性セリア粉末を作成し、ホタル石単一の結晶相からなることをX線回折試験により確認した。
そののち、このナノCeO粉末を、10ppm以下に水分量を制御したグローブボックスの中で、0.1モル/リットルの塩化白金酸水溶液を蒸留水中に分散した溶液の混合溶液中に分散させ、マグネティック・スターラーで2時間攪拌したのち、容器を密封し、乾燥用に用意したグローブボックス内に移し、同じく水分量を10ppm以下に制御した乾燥用グローブボックス内で、スターラーを用いて穏やかに攪拌しながら室温において乾燥し、得られた乾燥粉末を、石英製のU字管に移したのち、U字管の口を密封した状態のまま、乾燥用グローブボックスから取り出し、電気炉に装填し、ガス導入管に接続後、高純度水素ガスを毎分150ミリリットルの流速で流しながら、400℃、2時間焼成を行い、白金担持セリア粉末を作成した。
このとき用いた導電性カーボン(カーボンブラック)は、全体の20wt%加えることで、白金セリア電極粉末を合成した。
こうして得られた電極表面上のPtの価数は、放射光を用いた高エネルギー光電子分光法を用いて観察し、その割合を定量したところ、すべてのPt(金属Pt,2価Ptおよび4価Pt)に対して、Pt2価の割合は3体積%の値を示し、4価のPtは7体積%存在し、Pt−Ce結合量は検出限界以下であった。
くわえて、Ce3価およびCe4価のピークは、XPSでは確認されず、いずれも検出限界以下であった。
さらに、この電極粉末を、エタノール中に分散したのち、たてよこ3cm×5cm、厚み1mmの白金板の上にたらし、そののち、0.5Mの硫酸水溶液中に浸漬して、1時間室温において保持したのち、0から1.2V(vs.RHE)の範囲において酸化及び還元方向に電位を10サイクル、走引を繰り返し、ナノシェル構造を有する電極粉末を作製した。得られた粉末から得られた制限視野電子線回折試験を行った結果、実施例1の図5(A)で示したような、Ceに由来すると考えられるブロードなリング状のシグナルの存在は不明瞭であり、セリアの存在が極めてわずかなものであることが確認された。さらに、高分解能電子顕微鏡観察結果からは、実施例1の図5(B)同様、コア部である白金は確認されるものの、その周囲を覆うはずの薄いシェル部であるセリウム酸化物層は、明瞭には観察できなかった。
さらに、こうして得られた電極粉末をカソードとして用いた場合のカソード電極特性評価を、実施例1の実験方法に準拠して行った結果、実施例1の図6と同様な電極特性曲線が観察され、その結果から見積もられた酸素還元反応開始電位は、0.81V(vs.RHE)であり、同じ手法で測定した白金電極の特性(0.806V(vs.RHE))とくらべて、大きな改善が認められなかった。
同時に、実施例1と同じ方法を用いて、電極反応機構を示すKoutecky−Levichプロットをした、その図の傾きからもとめたn値は4.1であり、4電子反応であることは確認した。
さらに、比較例1で得られたカソード電極と、比較のために用いた市販の白金カソード電極の性能を、運転温度70℃、100%水蒸気加湿環境下における燃料電池の出力性能比較により、比較検討した結果、実施例1とは異なり、大きな出力特性の改善は認められなかった。
また、この電極活物質をアノードとして用いた場合のアノード特性結果を評価する目的で、アノード側に、比較例1のアノード材料を用いて、実施例1の実験方法と同じ方法で、アノードのCO被毒耐性を測定評価した結果、水素のみをアノードガスとして用いた場合には、580mV程度と比較的低い電池電圧が観察され、COを5ppm含む燃料ガスをアノードガスに用いた後は、490mVの大きな電池電圧の低下が確認された。一方、市販の白金アノード(Johnson Mattey,HISPEC 3000)を用いて、同様な試験を行ったところ、COを加える前の初期電池電圧は高いものの、COを5ppm含む燃料ガスに切り替えたあとの電池電圧の低下は、520mVと大きなものであった(図6)。
これらの結果を比較すると、比較例2の電極活物質には、CO共存ガスを用いては、従来の白金電極の欠点を補うような、アノード特性の改善が認められなかった。
比較例1で得られた結果を、表5に示した。
(比較例2)
組成式X×Pt/Y×Ce酸化物/Z×carbonにおいて、Y/X=0.3、Y/Z=0.25となるように、出発原料として、2.0モル/リットルの硝酸セリウム(純度99.99%)と8モル/リットルの炭酸アンモニウム水溶液(純度99.5%)を調製し、65℃に熱した炭酸アンモニウム水溶液中に、攪拌速度400rpmにおいて十分に攪拌しながら、硝酸セリウム水溶液を毎分1ミリリットルの速度で滴下して沈殿を作製した。硝酸セリウム水溶液滴下終了後、65℃の温度で、45時間熟成を行った。
こうして得られた沈殿は、水洗処理とろ過とを交互に3回繰り返したのち、乾燥窒素ガス中において、2日間乾燥し、前駆体粉末を作製した。前駆体粉末は引き続き、酸素流通下(毎分150ミリリットル)において、320℃の温度で2時間仮焼して、結晶性セリア粉末を作成し、ホタル石単一の結晶相からなることをX線回折試験により確認した。
そののち、このナノCeO粉末を、10ppm以下に水分量を制御したグローブボックスの中で、0.8モル/リットルの塩化白金酸水溶液を蒸留水中に分散した溶液の混合溶液中に分散させ、マグネティック・スターラーで2時間攪拌したのち、容器を密封し、乾燥用に用意したグローブボックス内に移し、同じく水分量を10ppm以下に制御した乾燥用グローブボックス内で、スターラーを用いて穏やかに攪拌しながら室温において乾燥し、得られた乾燥粉末を、石英製のU字管に移したのち、U字管の口を密封した状態のまま、乾燥用グローブボックスから取り出し、電気炉に装填し、ガス導入管に接続後、高純度水素ガスを毎分150ミリリットルの流速で流しながら、480℃、2時間焼成を行い、白金担持セリア粉末を作成した。この際用いた導電性カーボン(カーボンブラック)の量は、全体の20wt%として、白金セリア電極粉末を合成した。
こうして得られた電極表面上のPtの価数は、放射光を用いた高エネルギー光電子分光法を用いて観察し、その割合を定量したところ、すべてのPt(金属Pt,2価Ptおよび4価Pt)に対して、Pt2価の割合は4体積%の値を示し、4価のPtは5体積%存在し、Pt−Ce結合量は2体積%であった。くわえて、Ce3価の割合は68体積%であることもXPSのCe3dスペクトルの観察結果から確認した。
さらに、この電極粉末を、エタノール中に分散したのち、たてよこ3cm×5cm、厚み1mmの白金板の上にたらし、そののち、0.5Mの硫酸水溶液中に浸漬して、1時間室温において保持したのち、0から1.2V(vs.RHE)の範囲において酸化及び還元方向に電位を10サイクル、走引を繰り返し、ナノシェル構造を有する電極粉末を作製した。得られた粉末から得られた制限視野電子線回折試験を行った結果、実施例1の図5(A)で示したような、Ceに由来すると考えられるブロードなリング状のシグナルは不明瞭となり、かつCe4+(CeO)に由来する線幅の狭いリング状のシグナルの存在が確認された。このことから、非晶質セリアの存在割合は大きくなく、結晶質セリアが主であること考えられた。さらに、高分解能電子顕微鏡観察結果からは、実施例1の図5(B)と同様な、コア部である白金は確認されるものの、その周囲を覆うはずの薄いシェル部であるセリウム酸化物層は、均一には観察できなかった。
さらに、こうして得られた電極粉末をカソードとして用いた場合のカソード電極特性評価を、実施例1の実験方法に準拠して行った結果、実施例1の図6と同様な電極特性曲線が観察され、その結果から見積もられた酸素還元反応開始電位は、0.81V(vs.RHE)であり、同じ手法で測定した白金電極の特性(0.806V(vs.RHE))とくらべて、大きな改善が認められなかった。同時に、実施例1と同じ方法を用いて、電極反応機構を示すKoutecky−Levichプロットをした、その図の傾きからもとめたn値は4.1であり、4電子反応であることは確認した。
さらに、比較例2で得られたカソード電極と、比較のために用いた市販の白金カソード電極の性能を、運転温度70℃、100%水蒸気加湿環境下における燃料電池の出力性能比較により、比較検討した結果、実施例1とは異なり、大きな出力特性の改善は確認できなかった。
また、この電極活物質をアノードとして用いた場合のアノード特性結果を評価する目的で、アノード側に、比較例2のアノード材料を用い、実施例1の実験方法と同じ方法で、アノードのCO被毒耐性を測定評価した結果、水素のみをアノードガスとして用いた場合には、690mV程度電池電圧が観察されたが、COを5ppm含む燃料ガスをアノードガスに用いた後は、490mVの大きな電池電圧の低下が確認された。一方、市販の白金アノード(Johnson Mattey,HISPEC 3000)を用いて、同様な試験を行ったところ、COを加える前の初期電池電圧は高いものの、COを5ppm含む燃料ガスに切り替えたあとの電池電圧の低下は、520mVと大きなものであった(図10)。これらの結果を比較すると、比較例2の電極活物質には、CO共存ガスを用いては、従来の白金電極の欠点を補うような、アノード特性の改善が認められなかった。
比較例2で得られた結果を、表6に示した。
(比較例3)
組成式X×Pt/Y×Zr酸化物/Z×carbonにおいて、Y/X=0.0006、Y/Z=0.00007となるように、出発原料として、0.2モル/リットルのオキシ塩化ジルコニウム水溶液(純度99.9%)と2.5モル/リットルの炭酸水素アンモニウム水溶液(純度99.5%)を調製し、55℃に熱した炭酸アンモニウム水溶液中に、攪拌速度400rpmにおいて十分に攪拌しながら、硝酸セリウム水溶液を毎分1ミリリットルの速度で滴下して沈殿を作製した。硝酸セリウム水溶液滴下終了後、55℃の温度で、28時間熟成を行った。
こうして得られた沈殿は、水洗処理とろ過とを交互に3回繰り返したのち、乾燥窒素ガス中において、2日間乾燥し、前駆体粉末を作製した。前駆体粉末は引き続き、酸素流通下(毎分150ミリリットル)において、650℃の温度で2時間仮焼して、ジルコニア粉末を作成し、正方晶ジルコニアと単斜晶ジルコニアからなるジルコニア単一の結晶相からなることをX線回折試験により確認した。
そののち、このZrO粉末を、10ppm以下に水分量を制御したグローブボックスの中で、0.1モル/リットルの塩化白金酸水溶液を蒸留水中に分散した溶液の混合溶液中に分散させ、マグネティック・スターラーで2時間攪拌したのち、容器を密封し、乾燥用に用意したグローブボックス内に移し、同じく水分量を10ppm以下に制御した乾燥用グローブボックス内で、スターラーを用いて穏やかに攪拌しながら室温において乾燥し、得られた乾燥粉末を、石英製のU字管に移したのち、U字管の口を密封した状態のまま、乾燥用グローブボックスから取り出し、電気炉に装填し、ガス導入管に接続後、高純度水素ガスを毎分150ミリリットルの流速で流しながら、350℃、2時間焼成を行い、白金担持ジルコニア粉末を作成した。この際用いた導電性カーボン(カーボンブラック)の量は、全体の20wt%とすることで、白金ジルコニア電極粉末を合成した。
こうして得られた電極表面上のPtの価数は、放射光を用いた高エネルギー光電子分光法を用いて観察し、その割合を定量したところ、すべてのPt(金属Pt,2価Ptおよび4価Pt)に対して、Pt2価の割合は1体積%の値を示し、4価のPtは5体積%存在し、Pt−Zr結合量は2体積%であった。くわえて、Zr3価の割合は、XPSの検出限界以下であった。
さらに、この電極粉末を、エタノール中に分散したのち、たてよこ3cm×5cm、厚み1mmの白金板の上にたらし、そののち、0.5Mの硫酸水溶液中に浸漬して、1時間室温において保持したのち、0から1.0V(vs.RHE)の範囲において酸化及び還元方向に電位を10サイクル、走引を繰り返し、ナノシェル構造を有する電極粉末を作製した。得られた粉末から得られた制限視野電子線回折試験を行った結果、実施例1の図5(A)で示したような、Zrに由来すると考えられるブロードなリング状のシグナルやZr4+(ZrO)に由来する線幅の狭いリング状のシグナルの存在は不明瞭であり、ジルコニウム酸化物の存在が極めてわずかなものであることが確認された。さらに、高分解能電子顕微鏡観察結果からは、実施例1の図5(B)と同様な、コア部である白金は確認されるものの、その周囲を覆うはずの薄いシェル部であるジルコニウム酸化物層は、均一かつ明瞭には観察できなかった。
さらに、こうして得られた電極粉末をカソードとして用いた場合のカソード電極特性評価を、実施例1の実験方法に準拠して行った結果、実施例1の図6と同様な電極特性曲線が観察されたが、その結果から見積もられた酸素還元反応開始電位は、0.81V(vs.RHE)であり、同じ手法で測定した白金電極の特性(0.806V(vs.RHE))とくらべて、大きな改善が認められなかった。同時に、実施例1と同じ方法を用いて、電極反応機構を示すKoutecky−Levichプロットをした、その図の傾きからもとめたn値は4.1であり、4電子反応であることは確認した。
さらに、比較例3で得られたカソード電極と、比較のために用いた市販の白金カソード電極の性能を、運転温度70℃、100%水蒸気加湿環境下における燃料電池の出力性能比較により、比較検討した結果、実施例1とは異なり、大きな出力特性の改善は確認できなかった。
また、この電極活物質をアノードとして用いた場合のアノード特性結果を評価する目的で、アノード側に、比較例3のアノード材料を用い、実施例1の実験方法と同じ方法で、アノードのCO被毒耐性を測定評価した結果、水素のみをアノードガスとして用いた場合には、690mV程度電池電圧が観察されたが、COを5ppm含む燃料ガスをアノードガスに用いた後は、500mVの大きな電池電圧の低下が確認された。一方、市販の白金アノード(Johnson Mattey,HISPEC 3000)を用いて、同様な試験を行ったところ、COを加える前の初期電池電圧は高いものの、COを5ppm含む燃料ガスに切り替えたあとの電池電圧の低下は、520mVと大きなものであった(図10)。これらの結果を比較すると、比較例2の電極活物質には、CO共存ガスを用いては、従来の白金電極の欠点を補うような、アノード特性の改善が認められなかった。
比較例3で得られた結果を、表7に示した。
(比較例4)
組成式X×Pt/Y×Zr酸化物/Z×carbonにおいて、Y/X=0.3、Y/Z=0.3となるように、出発原料として、0.8モル/リットルのオキシ塩化ジルコニウム水溶液(純度99.9%)と8モル/リットルの炭酸水素アンモニウム水溶液(純度99.5%)を調製し、65℃に熱した炭酸アンモニウム水溶液中に、攪拌速度400rpmにおいて十分に攪拌しながら、硝酸セリウム水溶液を毎分1ミリリットルの速度で滴下して沈殿を作製した。硝酸セリウム水溶液滴下終了後、65℃の温度で、45時間熟成を行った。
こうして得られた沈殿は、水洗処理とろ過とを交互に3回繰り返したのち、乾燥窒素ガス中において、2日間乾燥し、前駆体粉末を作製した。前駆体粉末は引き続き、酸素流通下(毎分150ミリリットル)において、900℃の温度で2時間仮焼して、ジルコニア粉末を作成し、その粉末が正方晶ジルコニアと単斜晶ジルコニアからなるジルコニア単一相からなることをX線回折試験により確認した。
そののち、このZrO粉末を、10ppm以下に水分量を制御したグローブボックスの中で、0.8モル/リットルの塩化白金酸水溶液を蒸留水中に分散した溶液の混合溶液中に分散させ、マグネティック・スターラーで2時間攪拌したのち、容器を密封し、乾燥用に用意したグローブボックス内に移し、同じく水分量を10ppm以下に制御した乾燥用グローブボックス内で、スターラーを用いて穏やかに攪拌しながら室温において乾燥し、得られた乾燥粉末を、石英製のU字管に移したのち、U字管の口を密封した状態のまま、乾燥用グローブボックスから取り出し、電気炉に装填し、ガス導入管に接続後、高純度水素ガスを毎分150ミリリットルの流速で流しながら、450度、2時間焼成を行い、白金担持ジルコニア粉末を作成した。この時用いた導電性カーボン(カーボンブラック)粉末量は、全体の20wt%として、白金ジルコニア電極粉末を合成した。
こうして得られた電極表面上のPtの価数は、放射光を用いた高エネルギー光電子分光法を用いて観察し、その割合を定量したところ、すべてのPt(金属Pt,2価Ptおよび4価Pt)に対して、Pt2価の割合は4体積%の値を示し、4価のPtは6体積%存在し、Pt−Zr結合量は1体積%であった。Zr3価の割合は、57体積%であった。
さらに、この電極粉末を、エタノール中に分散したのち、たてよこ3cm×5cm、厚み1mmの白金板の上にたらし、そののち、0.5Mの硫酸水溶液中に浸漬して、1時間室温において保持したのち、0から1.1V(vs.RHE)の範囲において酸化及び還元方向に電位を30サイクル、走引を繰り返し、ナノシェル構造を有する電極粉末を作製した。
得られた粉末から得られた制限視野電子線回折試験を行った結果、実施例1の図5(A)で示したような、Zrに由来すると考えられるブロードなリング状のシグナルは不明確であり、Zr4+(ZrO)に由来する線幅の狭いリング状のシグナルが観察された。このことから、非晶質ジルコニアの存在は、主たるものではないと考えられた。
さらに、高分解能電子顕微鏡観察結果からは、実施例1の図5(B)と同様な、コア部である白金は確認されるものの、その周囲を覆うはずの薄いシェル部であるジルコニウム酸化物層は、不均一かつ不明瞭なものであった。
さらに、こうして得られた電極粉末をカソードとして用いた場合のカソード電極特性評価を、実施例1の実験方法に準拠して行った結果、実施例1の図6と同様な電極特性曲線が観察され、その結果から見積もられた酸素還元反応開始電位は、0.81V(vs.RHE)であり、同じ手法で測定した白金電極の特性(0.806V(vs.RHE))とくらべて、大きな改善が認められなかった。同時に、実施例1と同じ方法を用いて、電極反応機構を示すKoutecky−Levichプロットをした、その図の傾きからもとめたn値は4.1であり、4電子反応であることは確認した。
さらに、比較例2で得られたカソード電極と、比較のために用いた市販の白金カソード電極の性能を、運転温度70℃、100%水蒸気加湿環境下における燃料電池の出力性能比較により、比較検討した結果、実施例1とは異なり、大きな出力特性の改善は確認できなかった。
また、この電極活物質をアノードとして用いた場合のアノード特性結果を評価する目的で、アノード側に、比較例4のアノード材料を用い、実施例1の実験方法と同じ方法で、アノードのCO被毒耐性を測定評価した結果、水素のみをアノードガスとして用いた場合には、6000mV程度電池電圧が観察されたが、COを5ppm含む燃料ガスをアノードガスに用いた後は、495mVの大きな電池電圧の低下が確認された。
一方、市販の白金アノード(Johnson Mattey,HISPEC 3000)を用いて、同様な試験を行ったところ、COを加える前の初期電池電圧は高いものの、COを5ppm含む燃料ガスに切り替えたあとの電池電圧の低下は、520mVと大きなものであった(図10)。これらの結果を比較すると、比較例2の電極活物質には、CO共存ガスを用いては、従来の白金電極の欠点を補うような、アノード特性の改善が認められなかった。
比較例4で得られた結果を、表8に示した。
(実施例5)
組成式X×Pt/Y×Ce酸化物/Z×carbonにおいて、Y/X=0.18、Y/Z=0.0005となるように、出発原料として、2.0モル/リットルの硝酸セリウム(純度99.99%)と2.5モル/リットルの炭酸アンモニウム水溶液(純度99.5%)を調製し、55℃に熱した炭酸アンモニウム水溶液中に、攪拌速度400rpmにおいて十分に攪拌しながら、硝酸セリウム水溶液を毎分1ミリリットルの速度で滴下して沈殿を作製した。硝酸セリウム水溶液滴下終了後、55℃の温度で、45時間熟成を行った。
こうして得られた沈殿は、水洗処理とろ過とを交互に3回繰り返したのち、乾燥窒素ガス中において、2日間乾燥し、前駆体粉末を作製した。前駆体粉末は引き続き、酸素流通下(毎分150ミリリットル)において、400℃の温度で2時間仮焼して、結晶性セリア粉末を作成し、ホタル石単一の結晶相からなることをX線回折試験により確認した。
そののち、このナノCeO粉末を、10ppm以下に水分量を制御したグローブボックスの中で、0.8モル/リットルの塩化白金酸水溶液を蒸留水中に分散した溶液の混合溶液中に分散させ、マグネティック・スターラーで2時間攪拌したのち、容器を密封し、乾燥用に用意したグローブボックス内に移し、同じく水分量を10ppm以下に制御した乾燥用グローブボックス内で、スターラーを用いて穏やかに攪拌しながら室温において乾燥し、得られた乾燥粉末を、石英製のU字管に移したのち、U字管の口を密封した状態のまま、乾燥用グローブボックスから取り出し、電気炉に装填し、ガス導入管に接続後、高純度水素ガスを毎分150ミリリットルの流速で流しながら、450度、2時間焼成を行い、白金担持セリア粉末を作成し、この粉末に導電性カーボン(カーボンブラック)を全体の20wt%加えることで、白金セリア電極粉末を合成した。
こうして得られた電極表面上のPtの価数は、放射光を用いた高エネルギー光電子分光法を用いて観察し、その割合を定量したところ、すべてのPt(金属Pt,2価Ptおよび4価Pt)に対して、Pt2価の割合は、24体積%の値を示し、一方で、4価のPtは観察されなかった。また、Pt−Ce結合量は32体積%であった。くわえて、Ce3価の割合は、85体積%であることを、XPSのCe3dスペクトルの観察結果から確認した。さらに、この電極粉末を、エタノール中に分散したのち、たてよこ3cm×5cm、厚み1mmの白金板の上にたらし、そののち、0.5Mの硫酸水溶液中に浸漬して、1時間室温において保持したのち、0から1.2V(vs.RHE)の範囲において酸化及び還元方向に電位を30サイクル、走引を繰り返し、ナノシェル構造を有する電極粉末を作製した。得られた粉末から得られた制限視野電子線回折試験を行った結果、実施例1の図5(A)で示した結果同様、Ceに由来すると考えられるブロードなリング状のシグナルとCe4+(CeO)に由来する線幅の狭いリング状のシグナルが観察されており、非晶質と結晶質の混合状態であることが分かった。さらに、高分解能電子顕微鏡観察結果からは、実施例1の図5(B)同様、コア部である白金の周囲を、薄いシェル部であるセリウム酸化物層が覆っている様子が、明瞭に観察された。
さらに、こうして得られた電極粉末をカソードとして用いた場合のカソード電極特性評価を、実施例1の実験方法に準拠して行った結果、実施例1の図6と同様な電極特性曲線が観察され、その結果から見積もられた酸素還元反応開始電位は、0.95V(vs.RHE)であり、同じ手法で測定した白金電極の特性(0.806V(vs.RHE))とくらべて、大きな改善が認められた。同時に、実施例1と同じ方法を用いて、電極反応機構を示すKoutecky−Levichプロットをした、その図の傾きからもとめたn値は4.0であり、4電子反応であることも確認した。
さらに、実施例5で得られたカソード電極と、比較のために用いた市販の白金カソード電極の性能を、運転温度70℃、100%水蒸気加湿環境下における燃料電池の出力性能比較により、比較検討した結果、実施例1と同様に、大きな出力特性の改善が確認できた。
また、この電極活物質をアノードとして用いた場合のアノード特性結果を評価する目的で、アノード側に、実施例5のアノード材料を用い、実施例1の実験方法と同じ方法で、アノードのCO被毒耐性を測定評価した結果、水素のみをアノードガスとして用いた場合には、720mV程度の電池電圧が観察されていたが、COを5ppm含む燃料ガスをアノードガスに用いた後は、205mVの電池電圧の低下が確認された。一方、市販の白金アノード(Johnson Mattey, HISPEC 3000)を用いて、同様な試験を行ったところ、COを5ppm含む燃料ガスに切り替えたあとの電池電圧の低下は、520mVと大きなものであったことから(図10)、実施例5の電極活物質が、CO共存ガスを用いても優れたアノード特性を示すことが分かった。
実施例5で得られた結果を、表9に示した。
(実施例6)
組成式X×Pt/Y×Ce酸化物/Z×carbonにおいて、Y/X=0.006、Y/Z=0.13となるように、出発原料として、2.0モル/リットルの硝酸セリウム(純度99.99%)と8モル/リットルの炭酸アンモニウム水溶液(純度99.5%)を調製し、60℃に熱した炭酸アンモニウム水溶液中に、攪拌速度400rpmにおいて十分に攪拌しながら、硝酸セリウム水溶液を毎分1ミリリットルの速度で滴下して沈殿を作製した。硝酸セリウム水溶液滴下終了後、60℃の温度で、30時間熟成を行った。
こうして得られた沈殿は、水洗処理とろ過とを交互に3回繰り返したのち、乾燥窒素ガス中において、2日間乾燥し、前駆体粉末を作製した。前駆体粉末は引き続き、酸素流通下(毎分150ミリリットル)において、400℃の温度で2時間仮焼して、結晶性セリア粉末を作成し、ホタル石単一の結晶相からなることをX線回折試験により確認した。
そののち、このナノCeO粉末を、10ppm以下に水分量を制御したグローブボックスの中で、0.5モル/リットルの塩化白金酸水溶液を蒸留水中に分散した溶液の混合溶液中に分散させ、マグネティック・スターラーで2時間攪拌したのち、容器を密封し、乾燥用に用意したグローブボックス内に移し、同じく水分量を10ppm以下に制御した乾燥用グローブボックス内で、スターラーを用いて穏やかに攪拌しながら室温において乾燥し、得られた乾燥粉末を、石英製のU字管に移したのち、U字管の口を密封した状態のまま、乾燥用グローブボックスから取り出し、電気炉に装填し、ガス導入管に接続後、高純度水素ガスを毎分150ミリリットルの流速で流しながら、480℃、2時間焼成を行い、白金担持セリア粉末を作成し、この粉末に導電性カーボン(カーボンブラック)を全体の20wt%加えることで、白金セリア電極粉末を合成した。
こうして得られた電極表面上のPtの価数は、放射光を用いた高エネルギー光電子分光法を用いて観察し、その割合を定量したところ、すべてのPt(金属Pt,2価Ptおよび4価Pt)に対して、Pt2価の割合は、15体積%の値を示し、一方で、4価のPtは観察されなかった。また、Pt−Ce結合量は23体積%であった。くわえて、Ce3価の割合は、90体積%であることを、XPSのCe3dスペクトルの観察結果から確認した。さらに、この電極粉末を、エタノール中に分散したのち、たてよこ3cm×5cm、厚み1mmの白金板の上にたらし、そののち、0.5Mの硫酸水溶液中に浸漬して、1時間室温において保持したのち、0から1.2V(vs.RHE)の範囲において酸化及び還元方向に電位を20サイクル、走引を繰り返し、ナノシェル構造を有する電極粉末を作製した。得られた粉末から得られた制限視野電子線回折試験を行った結果、実施例1の図5(A)で示した結果同様、Ceに由来すると考えられるブロードなリング状のシグナルとCe4+(CeO)に由来する線幅の狭いリング状のシグナルが観察されており、非晶質と結晶質の混合状態であることが分かった。さらに、高分解能電子顕微鏡観察結果からは、実施例1の図5(B)同様、コア部である白金の周囲を、薄いシェル部であるセリウム酸化物層が覆っている様子が、明瞭に観察された。
さらに、こうして得られた電極粉末をカソードとして用いた場合のカソード電極特性評価を、実施例1の実験方法に準拠して行った結果、実施例1の図6と同様な電極特性曲線が観察され、その結果から見積もられた酸素還元反応開始電位は、0.92V(vs.RHE)であり、同じ手法で測定した白金電極の特性(0.806V(vs.RHE))とくらべて、大きな改善が認められた。同時に、実施例1と同じ方法を用いて、電極反応機構を示すKoutecky−Levichプロットをした、その図の傾きからもとめたn値は4.1であり、4電子反応であることも確認した。
さらに、実施例6で得られたカソード電極と、比較のために用いた市販の白金カソード電極の性能を、運転温度70℃、100%水蒸気加湿環境下における燃料電池の出力性能比較により、比較検討した結果、実施例1と同様に、大きな出力特性の改善が確認できた。
また、この電極活物質をアノードとして用いた場合のアノード特性結果を評価する目的で、アノード側に、実施例6のアノード材料を用い、実施例1の実験方法と同じ方法で、アノードのCO被毒耐性を測定評価した結果、水素のみをアノードガスとして用いた場合には、720mV程度の電池電圧が観察されていたが、COを5ppm含む燃料ガスをアノードガスに用いた後は、200mVの電池電圧の低下が確認された。一方、市販の白金アノード(Johnson Mattey,HISPEC 3000)を用いて、同様な試験を行ったところ、COを5ppm含む燃料ガスに切り替えたあとの電池電圧の低下は、520mVと大きなものであったことから(図10)、実施例2の電極活物質が、CO共存ガスを用いても優れたアノード特性を示すことが分かった。
実施例6で得られた結果を、表10に示した。
(比較例5)
組成式X×Pt/Y×Ce酸化物/Z×carbonにおいて、Y/X=0.0005、Y/Z=0.0005となるように、出発原料として、0.8モル/リットルの硝酸セリウム(純度99.99%)と2.5モル/リットルの炭酸アンモニウム水溶液(純度99.5%)を調製し、55℃に熱した炭酸アンモニウム水溶液中に、攪拌速度400rpmにおいて十分に攪拌しながら、硝酸セリウム水溶液を毎分1ミリリットルの速度で滴下して沈殿を作製した。硝酸セリウム水溶液滴下終了後、55℃の温度で、45時間熟成を行った。
こうして得られた沈殿は、水洗処理とろ過とを交互に3回繰り返したのち、乾燥窒素ガス中において、2日間乾燥し、前駆体粉末を作製した。前駆体粉末は引き続き、酸素流通下(毎分150ミリリットル)において、400℃の温度で2時間仮焼して、結晶性セリア粉末を作成し、ホタル石単一の結晶相からなることをX線回折試験により確認した。
そののち、このナノCeO粉末を、10ppm以下に水分量を制御したグローブボックスの中で、0.1モル/リットルの塩化白金酸水溶液を蒸留水中に分散した溶液の混合溶液中に分散させ、マグネティック・スターラーで2時間攪拌したのち、容器を密封し、乾燥用に用意したグローブボックス内に移し、同じく水分量を10ppm以下に制御した乾燥用グローブボックス内で、スターラーを用いて穏やかに攪拌しながら室温において乾燥し、得られた乾燥粉末を、石英製のU字管に移したのち、U字管の口を密封した状態のまま、乾燥用グローブボックスから取り出し、電気炉に装填し、ガス導入管に接続後、高純度水素ガスを毎分150ミリリットルの流速で流しながら、400℃、2時間焼成を行い、白金担持セリア粉末を作成した。このとき用いた導電性カーボン(カーボンブラック)は、全体の20wt%加えることで、白金セリア電極粉末を合成した。
こうして得られた電極表面上のPtの価数は、放射光を用いた高エネルギー光電子分光法を用いて観察し、その割合を定量したところ、すべてのPt(金属Pt,2価Ptおよび4価Pt)に対して、Pt2価の割合は3体積%の値を示し、4価のPtは8体積%存在し、Pt−Ce結合量は検出限界以下であった。くわえて、Ce3価及び4価も検出限界以下であった。
さらに、この電極粉末を、エタノール中に分散したのち、たてよこ3cm×5cm、厚み1mmの白金板の上にたらし、そののち、0.5Mの硫酸水溶液中に浸漬して、1時間室温において保持したのち、0から1.2V(vs.RHE)の範囲において酸化及び還元方向に電位を30サイクル、走引を繰り返し、ナノシェル構造を有する電極粉末を作製した。得られた粉末から得られた制限視野電子線回折試験を行った結果、実施例1の図5(A)で示したような、Ceに由来すると考えられるブロードなリング状のシグナルの存在は不明瞭であり、セリアの存在が極めてわずかなものであることが確認された。さらに、高分解能電子顕微鏡観察結果からは、実施例1の図5(B)同様、コア部である白金は確認されるものの、その周囲を覆うはずの薄いシェル部であるセリウム酸化物層は、明瞭には観察できなかった。
さらに、こうして得られた電極粉末をカソードとして用いた場合のカソード電極特性評価を、実施例1の実験方法に準拠して行った結果、実施例1の図6と同様な電極特性曲線が観察され、その結果から見積もられた酸素還元反応開始電位は、0.81V(vs.RHE)であり、同じ手法で測定した白金電極の特性(0.806V(vs.RHE))とくらべて、大きな改善が認められなかった。同時に、実施例1と同じ方法を用いて、電極反応機構を示すKoutecky−Levichプロットをした、その図の傾きからもとめたn値は4.1であり、4電子反応であることは確認した。
さらに、比較例5で得られたカソード電極と、比較のために用いた市販の白金カソード電極の性能を、運転温度70℃、100%水蒸気加湿環境下における燃料電池の出力性能比較により、比較検討した結果、実施例1とは異なり、大きな出力特性の改善は認められなかった。
また、この電極活物質をアノードとして用いた場合のアノード特性結果を評価する目的で、アノード側に、比較例5のアノード材料を用いて、実施例1の実験方法と同じ方法で、アノードのCO被毒耐性を測定評価した結果、水素のみをアノードガスとして用いた場合には、590mV程度と比較的低い電池電圧が観察され、COを5ppm含む燃料ガスをアノードガスに用いた後は、480mVの大きな電池電圧の低下が確認された。一方、市販の白金アノード(Johnson Mattey,HISPEC 3000)を用いて、同様な試験を行ったところ、COを加える前の初期電池電圧は高いものの、COを5ppm含む燃料ガスに切り替えたあとの電池電圧の低下は、520mVと大きなものであった(図6)。これらの結果を比較すると、比較例5の電極活物質には、CO共存ガスを用いては、従来の白金電極の欠点を補うような、アノード特性の改善が認められなかった。
比較例5で得られた結果を、表11に示した。
(比較例6)
組成式X×Pt/Y×Ce酸化物/Z×carbonにおいて、Y/X=0.005、Y/Z=0.00007となるように、出発原料として、0.8モル/リットルの硝酸セリウム(純度99.99%)と2.5モル/リットルの炭酸アンモニウム水溶液(純度99.5%)を調製し、55℃に熱した炭酸アンモニウム水溶液中に、攪拌速度400rpmにおいて十分に攪拌しながら、硝酸セリウム水溶液を毎分1ミリリットルの速度で滴下して沈殿を作製した。硝酸セリウム水溶液滴下終了後、55℃の温度で、45時間熟成を行った。
こうして得られた沈殿は、水洗処理とろ過とを交互に3回繰り返したのち、乾燥窒素ガス中において、2日間乾燥し、前駆体粉末を作製した。前駆体粉末は引き続き、酸素流通下(毎分150ミリリットル)において、400℃の温度で2時間仮焼して、結晶性セリア粉末を作成し、ホタル石単一の結晶相からなることをX線回折試験により確認した。
そののち、このナノCeO粉末を、10ppm以下に水分量を制御したグローブボックスの中で、0.1モル/リットルの塩化白金酸水溶液を蒸留水中に分散した溶液の混合溶液中に分散させ、マグネティック・スターラーで2時間攪拌したのち、容器を密封し、乾燥用に用意したグローブボックス内に移し、同じく水分量を10ppm以下に制御した乾燥用グローブボックス内で、スターラーを用いて穏やかに攪拌しながら室温において乾燥し、得られた乾燥粉末を、石英製のU字管に移したのち、U字管の口を密封した状態のまま、乾燥用グローブボックスから取り出し、電気炉に装填し、ガス導入管に接続後、高純度水素ガスを毎分150ミリリットルの流速で流しながら、400℃、2時間焼成を行い、白金担持セリア粉末を作成した。このとき用いた導電性カーボン(カーボンブラック)は、全体の20wt%加えることで、白金セリア電極粉末を合成した。
こうして得られた電極表面上のPtの価数は、放射光を用いた高エネルギー光電子分光法を用いて観察し、その割合を定量したところ、すべてのPt(金属Pt,2価Ptおよび4価Pt)に対して、Pt2価の割合は2体積%の値を示し、4価のPtは10体積%存在し、Pt−Ce結合量は検出限界以下であった。くわえて、Ce3価及びCe4価も検出限界以下であった。
さらに、この電極粉末を、エタノール中に分散したのち、たてよこ3cm×5cm、厚み1mmの白金板の上にたらし、そののち、0.5Mの硫酸水溶液中に浸漬して、1時間室温において保持したのち、0から1.2V(vs.RHE)の範囲において酸化及び還元方向に電位を30サイクル、走引を繰り返し、ナノシェル構造を有する電極粉末を作製した。得られた粉末から得られた制限視野電子線回折試験を行った結果、実施例1の図5(A)で示したような、Ceに由来すると考えられるブロードなリング状のシグナルの存在は不明瞭であり、セリアの存在が極めてわずかなものであることが確認された。さらに、高分解能電子顕微鏡観察結果からは、実施例1の図5(B)同様、コア部である白金は確認されるものの、その周囲を覆うはずの薄いシェル部であるセリウム酸化物層は、明瞭には観察できなかった。
さらに、こうして得られた電極粉末をカソードとして用いた場合のカソード電極特性評価を、実施例1の実験方法に準拠して行った結果、実施例1の図6と同様な電極特性曲線が観察され、その結果から見積もられた酸素還元反応開始電位は、0.81V(vs.RHE)であり、同じ手法で測定した白金電極の特性(0.806V(vs.RHE))とくらべて、大きな改善が認められなかった。同時に、実施例1と同じ方法を用いて、電極反応機構を示すKoutecky−Levich プロットをした、その図の傾きからもとめたn値は4.0であり、4電子反応であることは確認した。
さらに、比較例6で得られたカソード電極と、比較のために用いた市販の白金カソード電極の性能を、運転温度70℃、100%水蒸気加湿環境下における燃料電池の出力性能比較により、比較検討した結果、実施例1とは異なり、大きな出力特性の改善は認められなかった。
また、この電極活物質をアノードとして用いた場合のアノード特性結果を評価する目的で、アノード側に、比較例6のアノード材料を用いて、実施例1の実験方法と同じ方法で、アノードのCO被毒耐性を測定評価した結果、水素のみをアノードガスとして用いた場合には、610mV程度の電池電圧が観察され、COを5ppm含む燃料ガスをアノードガスに用いた後は、490mVの大きな電池電圧の低下が確認された。一方、市販の白金アノード(Johnson Mattey,HISPEC 3000)を用いて、同様な試験を行ったところ、COを加える前の初期電池電圧は高いものの、COを5ppm含む燃料ガスに切り替えたあとの電池電圧の低下は、520mVと大きなものであった(図10)。これらの結果を比較すると、比較例6の電極活物質には、CO共存ガスを用いては、従来の白金電極の欠点を補うような、アノード特性の改善が認められなかった。
比較例6で得られた結果を、表12に示した。
(比較例7)
組成式X×Pt/Y×Ce酸化物/Z×carbonにおいて、Y/X=0.15、Y/Z=0.25となるように、出発原料として、0.8モル/リットルの硝酸セリウム(純度99.99%)と2.5モル/リットルの炭酸アンモニウム水溶液(純度99.5%)を調製し、55℃に熱した炭酸アンモニウム水溶液中に、攪拌速度400rpmにおいて十分に攪拌しながら、硝酸セリウム水溶液を毎分1ミリリットルの速度で滴下して沈殿を作製した。硝酸セリウム水溶液滴下終了後、55℃の温度で、45時間熟成を行った。
こうして得られた沈殿は、水洗処理とろ過とを交互に3回繰り返したのち、乾燥窒素ガス中において、2日間乾燥し、前駆体粉末を作製した。前駆体粉末は引き続き、酸素流通下(毎分150ミリリットル)において、400℃の温度で2時間仮焼して、結晶性セリア粉末を作成し、ホタル石単一の結晶相からなることをX線回折試験により確認した。
そののち、このナノCeO粉末を、10ppm以下に水分量を制御したグローブボックスの中で、0.1モル/リットルの塩化白金酸水溶液を蒸留水中に分散した溶液の混合溶液中に分散させ、マグネティック・スターラーで2時間攪拌したのち、容器を密封し、乾燥用に用意したグローブボックス内に移し、同じく水分量を10ppm以下に制御した乾燥用グローブボックス内で、スターラーを用いて穏やかに攪拌しながら室温において乾燥し、得られた乾燥粉末を、石英製のU字管に移したのち、U字管の口を密封した状態のまま、乾燥用グローブボックスから取り出し、電気炉に装填し、ガス導入管に接続後、高純度水素ガスを毎分150ミリリットルの流速で流しながら、400℃、2時間焼成を行い、白金担持セリア粉末を作成した。このとき用いた導電性カーボン(カーボンブラック)は、全体の20wt%加えることで、白金セリア電極粉末を合成した。
こうして得られた電極表面上のPtの価数は、放射光を用いた高エネルギー光電子分光法を用いて観察し、その割合を定量したところ、すべてのPt(金属Pt,2価Ptおよび4価Pt)に対して、Pt2価の割合は3体積%の値を示し、4価のPtは16体積%存在し、Pt−Ce結合量は2体積%であった。くわえて、Ce3価の割合は54体積%であった。
さらに、この電極粉末を、エタノール中に分散したのち、たてよこ3cm×5cm、厚み1mmの白金板の上にたらし、そののち、0.5Mの硫酸水溶液中に浸漬して、1時間室温において保持したのち、0から1.2V(vs.RHE)の範囲において酸化及び還元方向に電位を30サイクル、走引を繰り返し、ナノシェル構造を有する電極粉末を作製した。得られた粉末から得られた制限視野電子線回折試験を行った結果、実施例1の図5(A)で示したような、Ceに由来すると考えられるブロードなリング状のシグナルの存在は不明瞭であり、Ce4+(CeO)に由来する線幅の狭いリング状のシグナルの存在が確認された。このことから、非晶質セリアの存在割合は大きくなく、結晶質セリアが主であると考えられた。さらに、高分解能電子顕微鏡観察結果からは、実施例1の図5(B)同様、コア部である白金は確認されるものの、その周囲を覆うはずの薄いシェル部であるセリウム酸化物層は、均一には観察できなかった。
さらに、こうして得られた電極粉末をカソードとして用いた場合のカソード電極特性評価を、実施例1の実験方法に準拠して行った結果、実施例1の図6と同様な電極特性曲線が観察され、その結果から見積もられた酸素還元反応開始電位は、0.81V(vs.RHE)であり、同じ手法で測定した白金電極の特性(0.806V(vs.RHE))とくらべて、大きな改善が認められなかった。同時に、実施例1と同じ方法を用いて、電極反応機構を示すKoutecky−Levichプロットをした、その図の傾きからもとめたn値は4.1であり、4電子反応であることは確認した。
さらに、比較例7で得られたカソード電極と、比較のために用いた市販の白金カソード電極の性能を、運転温度70℃、100%水蒸気加湿環境下における燃料電池の出力性能比較により、比較検討した結果、実施例1とは異なり、大きな出力特性の改善は認められなかった。
また、この電極活物質をアノードとして用いた場合のアノード特性結果を評価する目的で、アノード側に、比較例7のアノード材料を用いて、実施例1の実験方法と同じ方法で、アノードのCO被毒耐性を測定評価した結果、水素のみをアノードガスとして用いた場合には、590mV程度と比較的低い電池電圧が観察され、COを5ppm含む燃料ガスをアノードガスに用いた後は、480mVの大きな電池電圧の低下が確認された。一方、市販の白金アノード(Johnson Mattey,HISPEC 3000)を用いて、同様な試験を行ったところ、COを加える前の初期電池電圧は高いものの、COを5ppm含む燃料ガスに切り替えたあとの電池電圧の低下は、520mVと大きなものであった(図10)。これらの結果を比較すると、比較例7の電極活物質には、CO共存ガスを用いては、従来の白金電極の欠点を補うような、アノード特性の改善が認められなかった。
比較例7で得られた結果を、表13に示した。
(比較例8)
組成式X×Pt/Y×Ce酸化物/Z×carbonにおいて、Y/X=0.3、Y/Z=0.10となるように、出発原料として、2.0モル/リットルの硝酸セリウム(純度99.99%)と8.0モル/リットルの炭酸アンモニウム水溶液(純度99.5%)を調製し、55℃に熱した炭酸アンモニウム水溶液中に、攪拌速度400rpmにおいて十分に攪拌しながら、硝酸セリウム水溶液を毎分1ミリリットルの速度で滴下して沈殿を作製した。硝酸セリウム水溶液滴下終了後、55℃の温度で、45時間熟成を行った。
こうして得られた沈殿は、水洗処理とろ過とを交互に3回繰り返したのち、乾燥窒素ガス中において、2日間乾燥し、前駆体粉末を作製した。前駆体粉末は引き続き、酸素流通下(毎分150ミリリットル)において、400℃の温度で2時間仮焼して、結晶性セリア粉末を作成し、ホタル石単一の結晶相からなることをX線回折試験により確認した。
そののち、このナノCeO粉末を、10ppm以下に水分量を制御したグローブボックスの中で、0.1モル/リットルの塩化白金酸水溶液を蒸留水中に分散した溶液の混合溶液中に分散させ、マグネティック・スターラーで2時間攪拌したのち、容器を密封し、乾燥用に用意したグローブボックス内に移し、同じく水分量を10ppm以下に制御した乾燥用グローブボックス内で、スターラーを用いて穏やかに攪拌しながら室温において乾燥し、得られた乾燥粉末を、石英製のU字管に移したのち、U字管の口を密封した状態のまま、乾燥用グローブボックスから取り出し、電気炉に装填し、ガス導入管に接続後、高純度水素ガスを毎分150ミリリットルの流速で流しながら、400℃、2時間焼成を行い、白金担持セリア粉末を作成した。このとき用いた導電性カーボン(カーボンブラック)は、全体の20wt%加えることで、白金セリア電極粉末を合成した。
こうして得られた電極表面上のPtの価数は、放射光を用いた高エネルギー光電子分光法を用いて観察し、その割合を定量したところ、すべてのPt(金属Pt,2価Ptおよび4価Pt)に対して、Pt2価の割合は3体積%の値を示し、4価のPtは13体積%存在し、Pt−Ce結合量は2体積%であった。くわえて、Ce3価の割合は、62体積%であった。
さらに、この電極粉末を、エタノール中に分散したのち、たてよこ3cm×5cm、厚み1mmの白金板の上にたらし、そののち、0.5Mの硫酸水溶液中に浸漬して、1時間室温において保持したのち、0から1.2V(vs.RHE)の範囲において酸化及び還元方向に電位を30サイクル、走引を繰り返し、ナノシェル構造を有する電極粉末を作製した。得られた粉末から得られた制限視野電子線回折試験を行った結果、実施例1の図5(A)で示したような、Ceに由来すると考えられるブロードなリング状のシグナルの存在は不明瞭であり、Ce4+(CeO)に由来する線幅の狭いリング状のシグナルの存在が確認された。このことから、非晶質セリアの存在割合は大きくなく、結晶質セリアが主であると考えられた。さらに、高分解能電子顕微鏡観察結果からは、実施例1の図5(B)同様、コア部である白金は確認されるものの、その周囲を覆うはずの薄いシェル部であるセリウム酸化物層は、均一には観察できなかった。
さらに、こうして得られた電極粉末をカソードとして用いた場合のカソード電極特性評価を、実施例1の実験方法に準拠して行った結果、実施例1の図6と同様な電極特性曲線が観察され、その結果から見積もられた酸素還元反応開始電位は、0.82V(vs.RHE)であり、同じ手法で測定した白金電極の特性(0.806V(vs.RHE))とくらべて、大きな改善が認められなかった。同時に、実施例1と同じ方法を用いて、電極反応機構を示すKoutecky−Levichプロットをした、その図の傾きからもとめたn値は4.0であり、4電子反応であることは確認した。
さらに、比較例8で得られたカソード電極と、比較のために用いた市販の白金カソード電極の性能を、運転温度70℃、100%水蒸気加湿環境下における燃料電池の出力性能比較により、比較検討した結果、実施例1とは異なり、大きな出力特性の改善は認められなかった。
また、この電極活物質をアノードとして用いた場合のアノード特性結果を評価する目的で、アノード側に、比較例8のアノード材料を用いて、実施例1の実験方法と同じ方法で、アノードのCO被毒耐性を測定評価した結果、水素のみをアノードガスとして用いた場合には、590mV程度の電池電圧が観察され、COを5ppm含む燃料ガスをアノードガスに用いた後は、480mVの大きな電池電圧の低下が確認された。一方、市販の白金アノード(Johnson Mattey,HISPEC 3000)を用いて、同様な試験を行ったところ、COを加える前の初期電池電圧は高いものの、COを5ppm含む燃料ガスに切り替えたあとの電池電圧の低下は、520mVと大きなものであった(図10)。これらの結果を比較すると、比較例8の電極活物質には、CO共存ガスを用いては、従来の白金電極の欠点を補うような、アノード特性の改善が認められなかった。
比較例8で得られた結果を、表14に示した。
(比較例9)
組成式X×Pt/Y×Ce酸化物/Z×carbonにおいて、Y/X=0.25、Y/Z=0.00005となるように、出発原料として、0.8モル/リットルの硝酸セリウム(純度99.99%)と2.5モル/リットルの炭酸アンモニウム水溶液(純度99.5%)を調製し、55℃に熱した炭酸アンモニウム水溶液中に、攪拌速度400rpmにおいて十分に攪拌しながら、硝酸セリウム水溶液を毎分1ミリリットルの速度で滴下して沈殿を作製した。硝酸セリウム水溶液滴下終了後、55℃の温度で、45時間熟成を行った。
こうして得られた沈殿は、水洗処理とろ過とを交互に3回繰り返したのち、乾燥窒素ガス中において、2日間乾燥し、前駆体粉末を作製した。前駆体粉末は引き続き、酸素流通下(毎分150ミリリットル)において、400℃の温度で2時間仮焼して、結晶性セリア粉末を作成し、ホタル石単一の結晶相からなることをX線回折試験により確認した。
そののち、このナノCeO粉末を、10ppm以下に水分量を制御したグローブボックスの中で、0.1モル/リットルの塩化白金酸水溶液を蒸留水中に分散した溶液の混合溶液中に分散させ、マグネティック・スターラーで2時間攪拌したのち、容器を密封し、乾燥用に用意したグローブボックス内に移し、同じく水分量を10ppm以下に制御した乾燥用グローブボックス内で、スターラーを用いて穏やかに攪拌しながら室温において乾燥し、得られた乾燥粉末を、石英製のU字管に移したのち、U字管の口を密封した状態のまま、乾燥用グローブボックスから取り出し、電気炉に装填し、ガス導入管に接続後、高純度水素ガスを毎分150ミリリットルの流速で流しながら、400℃、2時間焼成を行い、白金担持セリア粉末を作成した。このとき用いた導電性カーボン(カーボンブラック)は、全体の20wt%加えることで、白金セリア電極粉末を合成した。
こうして得られた電極表面上のPtの価数は、放射光を用いた高エネルギー光電子分光法を用いて観察し、その割合を定量したところ、すべてのPt(金属Pt,2価Ptおよび4価Pt)に対して、Pt2価の割合は1体積%の値を示し、4価のPtは7体積%存在し、Pt−Ce結合量は検出限界以下であった。くわえて、Ce3価及び4価も検出限界以下であった。
さらに、この電極粉末を、エタノール中に分散したのち、たてよこ3cm×5cm、厚み1mmの白金板の上にたらし、そののち、0.5Mの硫酸水溶液中に浸漬して、1時間室温において保持したのち、0から1.2V(vs.RHE)の範囲において酸化及び還元方向に電位を30サイクル、走引を繰り返し、ナノシェル構造を有する電極粉末を作製した。得られた粉末から得られた制限視野電子線回折試験を行った結果、実施例1の図5(A)で示したような、Ceに由来すると考えられるブロードなリング状のシグナルの存在は不明瞭であり、セリアの存在が極めてわずかなものであることが確認された。さらに、高分解能電子顕微鏡観察結果からは、実施例1の図5(B)同様、コア部である白金は確認されるものの、その周囲を覆うはずの薄いシェル部であるセリウム酸化物層は、明瞭には観察できなかった。
さらに、こうして得られた電極粉末をカソードとして用いた場合のカソード電極特性評価を、実施例1の実験方法に準拠して行った結果、実施例1の図6と同様な電極特性曲線が観察され、その結果から見積もられた酸素還元反応開始電位は、0.82V(vs.RHE)であり、同じ手法で測定した白金電極の特性(0.806V(vs.RHE))とくらべて、大きな改善が認められなかった。同時に、実施例1と同じ方法を用いて、電極反応機構を示すKoutecky−Levich プロットをした、その図の傾きからもとめたn値は4.1であり、4電子反応であることは確認した。
さらに、比較例9で得られたカソード電極と、比較のために用いた市販の白金カソード電極の性能を、運転温度70℃、100%水蒸気加湿環境下における燃料電池の出力性能比較により、比較検討した結果、実施例1とは異なり、大きな出力特性の改善は認められなかった。
また、この電極活物質をアノードとして用いた場合のアノード特性結果を評価する目的で、アノード側に、比較例9のアノード材料を用いて、実施例1の実験方法と同じ方法で、アノードのCO被毒耐性を測定評価した結果、水素のみをアノードガスとして用いた場合には、590mV程度と比較的低い電池電圧が観察され、COを5ppm含む燃料ガスをアノードガスに用いた後は、490mVの大きな電池電圧の低下が確認された。一方、市販の白金アノード(Johnson Mattey,HISPEC 3000)を用いて、同様な試験を行ったところ、COを加える前の初期電池電圧は高いものの、COを5ppm含む燃料ガスに切り替えたあとの電池電圧の低下は、520mVと大きなものであった(図10)。これらの結果を比較すると、比較例9の電極活物質には、CO共存ガスを用いては、従来の白金電極の欠点を補うような、アノード特性の改善が認められなかった。
比較例9で得られた結果を、表15に示した。
(比較例10)
組成式X×Pt/Y×Ce酸化物/Z×carbonにおいて、Y/X=0.0005、Y/Z=0.25となるように、出発原料として、0.8モル/リットルの硝酸セリウム(純度99.99%)と2.5モル/リットルの炭酸アンモニウム水溶液(純度99.5%)を調製し、55℃に熱した炭酸アンモニウム水溶液中に、攪拌速度400rpmにおいて十分に攪拌しながら、硝酸セリウム水溶液を毎分1ミリリットルの速度で滴下して沈殿を作製した。硝酸セリウム水溶液滴下終了後、55℃の温度で、45時間熟成を行った。
こうして得られた沈殿は、水洗処理とろ過とを交互に3回繰り返したのち、乾燥窒素ガス中において、2日間乾燥し、前駆体粉末を作製した。前駆体粉末は引き続き、酸素流通下(毎分150ミリリットル)において、400℃の温度で2時間仮焼して、結晶性セリア粉末を作成し、ホタル石単一の結晶相からなることをX線回折試験により確認した。
そののち、このナノCeO粉末を、10ppm以下に水分量を制御したグローブボックスの中で、0.1モル/リットルの塩化白金酸水溶液を蒸留水中に分散した溶液の混合溶液中に分散させ、マグネティック・スターラーで2時間攪拌したのち、容器を密封し、乾燥用に用意したグローブボックス内に移し、同じく水分量を10ppm以下に制御した乾燥用グローブボックス内で、スターラーを用いて穏やかに攪拌しながら室温において乾燥し、得られた乾燥粉末を、石英製のU字管に移したのち、U字管の口を密封した状態のまま、乾燥用グローブボックスから取り出し、電気炉に装填し、ガス導入管に接続後、高純度水素ガスを毎分150ミリリットルの流速で流しながら、400℃、2時間焼成を行い、白金担持セリア粉末を作成した。このとき用いた導電性カーボン(カーボンブラック)は、全体の20wt%加えることで、白金セリア電極粉末を合成した。
こうして得られた電極表面上のPtの価数は、放射光を用いた高エネルギー光電子分光法を用いて観察し、その割合を定量したところ、すべてのPt(金属Pt,2価Ptおよび4価Pt)に対して、Pt2価の割合は2体積%の値を示し、4価のPtは9体積%存在し、Pt−Ce結合量は検出限界以下であった。くわえて、Ce3価及びCe4価も検出限界以下であった。
さらに、この電極粉末を、エタノール中に分散したのち、たてよこ3cm×5cm、厚み1mmの白金板の上にたらし、そののち、0.5Mの硫酸水溶液中に浸漬して、1時間室温において保持したのち、0から1.2V(vs.RHE)の範囲において酸化及び還元方向に電位を30サイクル、走引を繰り返し、ナノシェル構造を有する電極粉末を作製した。得られた粉末から得られた制限視野電子線回折試験を行った結果、実施例1の図5(A)で示したような、Ceに由来すると考えられるブロードなリング状のシグナルの存在は不明瞭であり、セリアの存在が極めてわずかなものであることが確認された。さらに、高分解能電子顕微鏡観察結果からは、実施例1の図5(B)同様、コア部である白金は確認されるものの、その周囲を覆うはずの薄いシェル部であるセリウム酸化物層は、明瞭には観察できなかった。
さらに、こうして得られた電極粉末をカソードとして用いた場合のカソード電極特性評価を、実施例1の実験方法に準拠して行った結果、実施例1の図6と同様な電極特性曲線が観察され、その結果から見積もられた酸素還元反応開始電位は、0.82V(vs.RHE)であり、同じ手法で測定した白金電極の特性(0.806V(vs.RHE))とくらべて、大きな改善が認められなかった。同時に、実施例1と同じ方法を用いて、電極反応機構を示すKoutecky−Levichプロットをした、その図の傾きからもとめたn値は4.1であり、4電子反応であることは確認した。
さらに、比較例10で得られたカソード電極と、比較のために用いた市販の白金カソード電極の性能を、運転温度70℃、100%水蒸気加湿環境下における燃料電池の出力性能比較により、比較検討した結果、実施例1とは異なり、大きな出力特性の改善は認められなかった。
また、この電極活物質をアノードとして用いた場合のアノード特性結果を評価する目的で、アノード側に、比較例10のアノード材料を用いて、実施例1の実験方法と同じ方法で、アノードのCO被毒耐性を測定評価した結果、水素のみをアノードガスとして用いた場合には、590mV程度の電池電圧が観察され、COを5ppm含む燃料ガスをアノードガスに用いた後は、480mVの大きな電池電圧の低下が確認された。一方、市販の白金アノード(Johnson Mattey,HISPEC 3000)を用いて、同様な試験を行ったところ、COを加える前の初期電池電圧は高いものの、COを5ppm含む燃料ガスに切り替えたあとの電池電圧の低下は、520mVと大きなものであった(図10)。これらの結果を比較すると、比較例6の電極活物質には、CO共存ガスを用いては、従来の白金電極の欠点を補うような、アノード特性の改善が認められなかった。
比較例10で得られた結果を、表16に示した。
(比較例11)
組成式X×Pt/Y×Ce酸化物/Z×carbonにおいて、Y/X=0.002、Y/Z=0.0005となるように、出発原料として、0.8モル/リットルの硝酸セリウム(純度99.99%)と2.5モル/リットルの炭酸アンモニウム水溶液(純度99.5%)を調製し、55℃に熱した炭酸アンモニウム水溶液中に、攪拌速度400rpmにおいて十分に攪拌しながら、硝酸セリウム水溶液を毎分1ミリリットルの速度で滴下して沈殿を作製した。硝酸セリウム水溶液滴下終了後、55℃の温度で、45時間熟成を行った。
こうして得られた沈殿は、水洗処理とろ過とを交互に3回繰り返したのち、乾燥窒素ガス中において、2日間乾燥し、前駆体粉末を作製した。前駆体粉末は引き続き、酸素流通下(毎分150ミリリットル)において、400℃の温度で2時間仮焼して、結晶性セリア粉末を作成し、ホタル石単一の結晶相からなることをX線回折試験により確認した。
そののち、このナノCeO粉末を、10ppm以下に水分量を制御したグローブボックスの中で、0.1モル/リットルの塩化白金酸水溶液を蒸留水中に分散した溶液の混合溶液中に分散させ、マグネティック・スターラーで2時間攪拌したのち、容器を密封し、乾燥用に用意したグローブボックス内に移し、同じく水分量を10ppm以下に制御した乾燥用グローブボックス内で、スターラーを用いて穏やかに攪拌しながら室温において乾燥し、得られた乾燥粉末を、石英製のU字管に移したのち、U字管の口を密封した状態のまま、乾燥用グローブボックスから取り出し、電気炉に装填し、ガス導入管に接続後、高純度水素ガスを毎分150ミリリットルの流速で流しながら、400℃、2時間焼成を行い、白金担持セリア粉末を作成した。このとき用いた導電性カーボン(カーボンブラック)は、全体の20wt%加えることで、白金セリア電極粉末を合成した。
こうして得られた電極表面上のPtの価数は、放射光を用いた高エネルギー光電子分光法を用いて観察し、その割合を定量したところ、すべてのPt(金属Pt,2価Ptおよび4価Pt)に対して、Pt2価の割合は2体積%の値を示し、4価のPtは10体積%存在し、Pt−Ce結合量は検出限界以下であった。くわえて、Ce3価及びCe4価も検出限界以下であった。
さらに、この電極粉末を、エタノール中に分散したのち、たてよこ3cm×5cm、厚み1mmの白金板の上にたらし、そののち、0.5Mの硫酸水溶液中に浸漬して、1時間室温において保持したのち、0から0.5V(vs.RHE)の範囲において酸化及び還元方向に電位を30サイクル、走引を繰り返し、ナノシェル構造を有する電極粉末を作製した。得られた粉末から得られた制限視野電子線回折試験を行った結果、実施例1の図5(A)で示したような、Ceに由来すると考えられるブロードなリング状のシグナルの存在は不明瞭であり、セリアの存在が極めてわずかなものであることが確認された。さらに、高分解能電子顕微鏡観察結果からは、実施例1の図5(B)同様、コア部である白金は確認されるものの、その周囲を覆うはずの薄いシェル部であるセリウム酸化物層は、明瞭には観察できなかった。
さらに、こうして得られた電極粉末をカソードとして用いた場合のカソード電極特性評価を、実施例1の実験方法に準拠して行った結果、実施例1の図6と同様な電極特性曲線が観察され、その結果から見積もられた酸素還元反応開始電位は、0.81V(vs.RHE)であり、同じ手法で測定した白金電極の特性(0.806V(vs.RHE))とくらべて、大きな改善が認められなかった。同時に、実施例1と同じ方法を用いて、電極反応機構を示すKoutecky−Levichプロットをした、その図の傾きからもとめたn値は4.1であり、4電子反応であることは確認した。
さらに、比較例11で得られたカソード電極と、比較のために用いた市販の白金カソード電極の性能を、運転温度70℃、100%水蒸気加湿環境下における燃料電池の出力性能比較により、比較検討した結果、実施例1とは異なり、大きな出力特性の改善は認められなかった。
また、この電極活物質をアノードとして用いた場合のアノード特性結果を評価する目的で、アノード側に、比較例11のアノード材料を用いて、実施例1の実験方法と同じ方法で、アノードのCO被毒耐性を測定評価した結果、水素のみをアノードガスとして用いた場合には、600mV程度の電池電圧が観察され、COを5ppm含む燃料ガスをアノードガスに用いた後は、490mVの大きな電池電圧の低下が確認された。一方、市販の白金アノード(Johnson Mattey,HISPEC 3000)を用いて、同様な試験を行ったところ、COを加える前の初期電池電圧は高いものの、COを5ppm含む燃料ガスに切り替えたあとの電池電圧の低下は、520mVと大きなものであった(図10)。これらの結果を比較すると、比較例11の電極活物質には、CO共存ガスを用いては、従来の白金電極の欠点を補うような、アノード特性の改善が認められなかった。
比較例11で得られた結果を、表17に示した。
(比較例12)
組成式X×Pt/Y×Ce酸化物/Z×carbonにおいて、Y/X=0.002、Y/Z=0.0005となるように、出発原料として、0.8モル/リットルの硝酸セリウム(純度99.99%)と2.5モル/リットルの炭酸アンモニウム水溶液(純度99.5%)を調製し、55℃に熱した炭酸アンモニウム水溶液中に、攪拌速度400rpmにおいて十分に攪拌しながら、硝酸セリウム水溶液を毎分1ミリリットルの速度で滴下して沈殿を作製した。硝酸セリウム水溶液滴下終了後、55℃の温度で、45時間熟成を行った。
こうして得られた沈殿は、水洗処理とろ過とを交互に3回繰り返したのち、乾燥窒素ガス中において、2日間乾燥し、前駆体粉末を作製した。前駆体粉末は引き続き、酸素流通下(毎分150ミリリットル)において、400℃の温度で2時間仮焼して、結晶性セリア粉末を作成し、ホタル石単一の結晶相からなることをX線回折試験により確認した。
そののち、このナノCeO粉末を、10ppm以下に水分量を制御したグローブボックスの中で、0.1モル/リットルの塩化白金酸水溶液を蒸留水中に分散した溶液の混合溶液中に分散させ、マグネティック・スターラーで2時間攪拌したのち、容器を密封し、乾燥用に用意したグローブボックス内に移し、同じく水分量を10ppm以下に制御した乾燥用グローブボックス内で、スターラーを用いて穏やかに攪拌しながら室温において乾燥し、得られた乾燥粉末を、石英製のU字管に移したのち、U字管の口を密封した状態のまま、乾燥用グローブボックスから取り出し、電気炉に装填し、ガス導入管に接続後、高純度水素ガスを毎分150ミリリットルの流速で流しながら、400℃、2時間焼成を行い、白金担持セリア粉末を作成した。このとき用いた導電性カーボン(カーボンブラック)は、全体の20wt%加えることで、白金セリア電極粉末を合成した。
こうして得られた電極表面上のPtの価数は、放射光を用いた高エネルギー光電子分光法を用いて観察し、その割合を定量したところ、すべてのPt(金属Pt,2価Ptおよび4価Pt)に対して、Pt2価の割合は2体積%の値を示し、4価のPtは2体積%存在し、Pt−Ce結合量は検出限界以下であった。くわえて、Ce3価及びCe4価も検出限界以下であった。
さらに、この電極粉末を、エタノール中に分散したのち、たてよこ3cm×5cm、厚み1mmの白金板の上にたらし、そののち、0.5Mの硫酸水溶液中に浸漬して、1時間室温において保持したのち、0から1.2V(vs.RHE)の範囲において酸化及び還元方向に電位を1サイクル、走引を繰り返し、ナノシェル構造を有する電極粉末を作製した。得られた粉末から得られた制限視野電子線回折試験を行った結果、実施例1の図5(A)で示したような、Ceに由来すると考えられるブロードなリング状のシグナルの存在は不明瞭であり、セリアの存在が極めてわずかなものであることが確認された。さらに、高分解能電子顕微鏡観察結果からは、実施例1の図5(B)同様、コア部である白金は確認されるものの、その周囲を覆うはずの薄いシェル部であるセリウム酸化物層は、明瞭には観察できなかった。
さらに、こうして得られた電極粉末をカソードとして用いた場合のカソード電極特性評価を、実施例1の実験方法に準拠して行った結果、実施例1の図6と同様な電極特性曲線が観察され、その結果から見積もられた酸素還元反応開始電位は、0.81V(vs.RHE)であり、同じ手法で測定した白金電極の特性(0.806V(vs.RHE))とくらべて、大きな改善が認められなかった。同時に、実施例1と同じ方法を用いて、電極反応機構を示すKoutecky−Levichプロットをした、その図の傾きからもとめたn値は4.0であり、4電子反応であることは確認した。
さらに、比較例12で得られたカソード電極と、比較のために用いた市販の白金カソード電極の性能を、運転温度70℃、100%水蒸気加湿環境下における燃料電池の出力性能比較により、比較検討した結果、実施例1とは異なり、大きな出力特性の改善は認められなかった。
また、この電極活物質をアノードとして用いた場合のアノード特性結果を評価する目的で、アノード側に、比較例12のアノード材料を用いて、実施例1の実験方法と同じ方法で、アノードのCO被毒耐性を測定評価した結果、水素のみをアノードガスとして用いた場合には、600mV程度の電池電圧が観察され、COを5ppm含む燃料ガスをアノードガスに用いた後は、490mVの大きな電池電圧の低下が確認された。一方、市販の白金アノード(Johnson Mattey,HISPEC 3000)を用いて、同様な試験を行ったところ、COを加える前の初期電池電圧は高いものの、COを5ppm含む燃料ガスに切り替えたあとの電池電圧の低下は、520mVと大きなものであった(図10)。これらの結果を比較すると、比較例12の電極活物質には、CO共存ガスを用いては、従来の白金電極の欠点を補うような、アノード特性の改善が認められなかった。
比較例12で得られた結果を、表18に示した。
以上の実施例、比較例を総合すると、本発明の特許請求の範囲で規定した組成式で規定されるカソード材料およびアノード材料であって、電極活物質表面に、白金2価、Pt−Ce結合またはPt−Zr結合をそれぞれ特定の値において有してなるコアシェル構造をもつ場合、その範囲外に比し極めて高いカソード活性またはアノード活性を有することが明らかにされた。
すなわち、このデータによると特許請求の範囲で規定した各要件事項は、それぞれ格別意義のある事項を規定したものと言える。
近年、温暖化対策の一環として二酸化炭素削減が叫ばれる一方、高まるエネルギー需要に応えるために、家庭用高出力小型燃料電池の開発が活発に進められている。
こうした家庭用小型燃料電池の開発には、高い発電性能を発現させるために必要な、高性能カソード材料またはアノード材料の研究、開発が必要不可欠である。
本発明は、まさにこのニーズに対応した新規カソード材料および新規アノード材料を提供するもので、今後大いに利用されることが期待される。
また、本発明の優れた特性を有する電極用粉末材料は、極めて多角的且つ基本的な観点に立脚してナノレベルのコアシェル構造を形成させることで新たな知見を得、その上で開発することに成功したものであるところから、極めて安定した品質が保証され、今後は、燃料電池のみならず、各種技術分野において優れた電極用粉末材料として供され、且つ利用されるものと期待される。
とくに、白金使用量の少ない高性能電極開発に本手法や材質は適用可能であることからその利用範囲は広く、新産業創出へと発展することが期待される。
本発明の電極用粉末材料は、カソードとして用いた場合、酸素還元分解活性が高く、アノードとして用いた場合、CO被毒耐性に優れたものであり、高分子形燃料電池用電極、ダイレクトメタノール形燃料電池用電極や各種センサー用電極などに利用でき、燃料電池産業等において利用可能性がある。
11…電極用粉末材料、12…コア部、13…シェル部、14…ナノ粒子、15…微粒子、21…高分子形燃料電池、22…基材、22a…一面、22b…他面、23…第1の電極、24…第2の電極、25…抵抗部、51…電極用材料、52…Pt、53…酸化物、55…微粒子、S1…金属酸化物粉末形成工程、S2…Pt含有金属酸化物粉末形成工程、S3…電極用粉末材料形成工程。

Claims (10)

  1. Ptからなるコア部と、前記コア部を覆うように形成され、Ce又はZrの金属酸化物からなるシェル部とからなるコアシェル構造を有するナノ粒子と、導電性カーボンからなる微粒子と、を有する電極用粉末材料であって、
    前記電極用粉末材料の組成式がX×Pt/Y×金属酸化物/Z×導電性カーボンであり、金属酸化物とPtのモル比(Y/X)が0.001以上0.2以下であり、金属酸化物と導電性カーボンのモル比(Y/Z)が0.0001以上0.15以下であり、
    前記金属酸化物が非晶質とされ、又はその非晶質の一部が結晶質とされており、
    前記Ce又はZrが3価又は4価のカチオンであり、前記3価のカチオンが80体積%以上含まれていることを特徴とする電極用粉末材料。
  2. Pt2価が10体積%以上30体積%以下であり、Pt−Ce結合量又はPt−Zr結合量が5体積%以上40体積%以下であることを特徴とする請求項1に記載の電極用粉末材料。
  3. 前記ナノ粒子の大きさが1nm以上100nm以下であり、前記微粒子の大きさが0.1μm以上10μm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電極用粉末材料。
  4. 組成式がX×Pt/Y×金属酸化物/Z×導電性カーボンであり、金属酸化物とPtのモル比(Y/X)が0.001以上0.2以下であり、金属酸化物と導電性カーボンのモル比(Y/Z)が0.0001以上0.15以下である電極用粉末材料の製造方法であって、
    電極用粉末材料の組成が上記条件を満たすように調製した所定の濃度のCe又はZrの金属イオンを有する第1の溶液を、炭酸アンモニウム水溶液又は炭酸水素アンモニウム水溶液中に滴下して、沈殿物の金属酸化物粉末を有する第2の溶液を形成する工程と、
    前記第2の溶液を乾燥後、仮焼して得られた金属酸化物粉末を塩化白金酸水溶液中に分散してから、前記塩化白金酸水溶液を再度乾燥して得られた沈殿物を焼成して、Pt含有金属酸化物粉末を形成する工程と、
    前記Pt含有金属酸化物粉末に、電極用粉末材料の組成が上記条件を満たすように、所定の濃度の導電性カーボンを加えてから、酸性溶液中で酸化還元電位を複数回印加して、電極用粉末材料を形成する工程と、を有することを特徴とする電極用粉末材料の製造方法。
  5. 前記Pt含有金属酸化物粉末を形成する工程において、前記仮焼が酸素ガス雰囲気下行われ、前記焼成が水素ガス雰囲気下行われることを特徴とする請求項4に記載の電極用粉末材料の製造方法。
  6. 前記第1の溶液が、硝酸セリウム水溶液又はオキシ塩化ジルコニウム水溶液であることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の電極用粉末材料の製造方法。
  7. 前記第2の溶液の乾燥の前に、前記第2の溶液を温度300〜900℃で、25〜50時間保持することを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の電極用粉末材料の製造方法。
  8. 前記水素ガス雰囲気下の焼成温度が300〜500℃であることを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載の電極用粉末材料の製造方法。
  9. 前記酸性溶液中での酸化還元電位が0〜1.0Vであり、印加回数が10〜30であることを特徴とする請求項4〜8のいずれか1項に記載の電極用粉末材料の製造方法。
  10. 高分子固体電解質からなる基材と、前記基材の一面に形成された第1の電極と、他面に形成された第2の電極とを有する高分子形燃料電池であって、
    前記第1の電極と前記第2の電極のいずれか又は両方が請求項1〜3のいずれか1項に記載の電極用粉末材料からなることを特徴とする高分子形燃料電池。
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