JP2012047689A - 走査型プローブ顕微鏡 - Google Patents

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Abstract

【課題】測定の目的となる力とは異なる力が測定に与える影響を低減できる走査型プローブ顕微鏡
【解決手段】走査型プローブ顕微鏡100は、カンチレバー103を振動させる励振手段104と、探針103aと試料101との間に働く力を変調させる力変調手段107と、カンチレバー103の変位を検出する変位検出手段111と、変位検出手段111の検出結果に基づいて探針103aと試料101との間に働く力を検出し、試料101の測定対象領域における試料像を生成する試料像生成手段10と、を含み、力変調手段107は、所与の角周波数で探針103aと試料101との間に働く力を変調させて、カンチレバー103にパラメーター共振による振動を生じさせる。
【選択図】図1

Description

本発明は、走査型プローブ顕微鏡に関する。
走査型プローブ顕微鏡は、探針と試料とを接近させた状態で探針を試料に対して相対的に走査する際に、探針から試料へ局所的刺激を発生させ、その刺激に対する試料表面からの局所的応答を測定することによって試料の表面を観察する顕微鏡である。
走査型プローブ顕微鏡は、応答の違いから、走査型トンネル顕微鏡と走査型原子間力顕微鏡とに分別される。走査型トンネル顕微鏡は、探針を金属製探針、刺激をトンネル電圧、それに対する応答をトンネル電流とするものである。走査型原子間力顕微鏡は、探針を力検出用カンチレバー、刺激を原子間力、応答を力によるカンチレバーの変位とするものである。
また、走査型原子間力顕微鏡から派生した顕微鏡として、走査型磁気力顕微鏡(探針:探針部に磁石が付着したカンチレバー、刺激:磁気力)、走査型静電気力顕微鏡(探針:探針部が電極として働くカンチレバー、刺激:静電気力)、走査型磁気共鳴力顕微鏡(探針:探針部に磁石が付着したカンチレバー、刺激:磁気力)(例えば、特許文献1参照)などが開発されている。これらは全て力を応答として観察する顕微鏡と考えられ、走査型原子間力顕微鏡の範疇に属するものである。
走査型原子間力顕微鏡(Scanning Atomic Force Microscope、以下AFMと略記する)には、測定状況の違いから、接触式測定モードと非接触式測定モードの2種類が存在する。接触式測定モードは、探針と試料表面の間に発生する強い斥力を刺激として、探針と試料表面を接触させながら力を観測する方法である。それに対し、非接触式測定モードは、探針と試料表面の間に発生する弱い引力を刺激として、探針と試料を接触させずに力を観測する測定方法である。
AFMは、探針と試料上の原子との間に発生する微弱な原子間力を観測することによって、高い空間分解能を持つ試料表面の凹凸像を提供することができる。AFMの特徴ならびに技術については、例えば、非特許文献1や非特許文献2に記載されている。
ここで、AFMにおける力検出法について説明する。AFMにおいて測定対象となる力は、片持ちバネであるカンチレバーを用いて検出するのが一般的であり、カンチレバー先端に付いたチップに掛かる力Fによってカンチレバーが撓む量xを、あるいはカンチレバー先端に付いたチップに掛かる力fによって誘起されるカンチレバーの振動量Aを、精密な位置変位計で観測して、それぞれF=kx、あるいはf=kA/Qから評価できる。ここでkはバネ定数であり、QはカンチレバーのQ値を表わす。カンチレバー先端に付いたチップに作用する力は、試料表面ともしくはその近傍との相互作用に起因する原子間力、静電気力、磁気力(この場合には、チップは磁性チップであること)などが対象となる。
力検出法を用いたAFMの例として、非特許文献3では、力検出法を用いた磁気共鳴力顕微鏡について記述されている。
図4は、従来の磁気共鳴力顕微鏡の一例を示す機能ブロック図である。磁気共鳴力顕微鏡1000は、試料1001が載ったステージ1002を走査して、各位置でカンチレバー1003に掛かる磁気共鳴力のデータを収集する。そして、磁気共鳴力マップを取得し、適切な画像処理を施して、試料のスピン密度分布の情報を画像化する。以下、力強度を評価するための動作に焦点をあて、説明を続ける。
まず、試料1001に含まれるスピンと、カンチレバー1003の先端に載った磁石との間で磁気力が発生する。その力Fは、カンチレバー1003に作用する。更に、力変調用発振器1006で発生させた変調信号を、ドライバー1005を介して力変調装置1004に供給し、広く知られた磁気共鳴原理に基づき、力変調装置1004を用いて試料1001に含まれる一部のスピンを操作し、磁気力を定常的に変調させる。
ここで、変調の周波数をカンチレバー1003の機械的共振角周波数ωに一致させると、カンチレバー1003は振幅A=F/kで共振する。カンチレバー1003が共振する振る舞いは、カンチレバー変位検出器1007で検出される。検出された信号は、変調源である正弦波を参照信号としたロックイン増幅器1008で検波され、カンチレバー1003の振幅値Aが取得され、ロックイン増幅器1008から信号成分として出力される。
磁気共鳴力顕微鏡では、探針と試料とに働く様々な力が存在することを前提として、磁気共鳴力という興味のある力だけを抽出することが求められている。具体的には、図4に示す磁気共鳴力顕微鏡装置1000の力変調装置1004としては、高周波磁場の高周波変調器が選択されている。これによって、試料のスピン磁化が変調され、磁性探針と試料中のスピン磁化との間に働く磁気力だけが変調されている。目的の力だけを抽出したいという要求は、磁気共鳴力顕微鏡に限らず、様々な力の中から目的の力だけを抽出して画像化するケルビン・プローブフォース顕微鏡全般に当てはまる。
しかしながら、目的の力だけを変調するのは難しい。たとえば、磁気共鳴力を抽出する磁気共鳴力顕微鏡装置の例では、何らかの理由で高周波磁場発生器により変調された高周波磁場と磁性探針とが磁気的に相互作用を及ぼし合い、高周波磁場の変調に依ってその磁気力が変調してしまう。このときは、目的の力である試料と磁性探針との磁気共鳴力だけではなく、高周波磁場発生器と磁性探針との磁気力も抽出されてしまう。
目的の力だけを変調することの難しさは、例えば、非特許文献4に記載されている。非特許文献4では、磁気共鳴力以外の寄生的な磁気力が大きく測定に影響を与えることを問題としている。磁気共鳴力をFとすると、Fの独立変数として、高周波周波数強度Bおよび磁場強度Bが存在する。しかしながら、BあるいはBをカンチレバーの固有角周波数ωで変調すると、磁気共鳴力とは無関係の磁気力が、磁気共鳴力に対して100倍程度大きく観測されてしまう結果が得られている。また、BあるいはBをカンチレバーの固有角周波数の1/n倍nは整数で変調しても寄生的な磁気力が無視できない大きさで観測されている。このような課題に対して、非特許文献4では、力について二つの独立変数を非調和で変調させる方法が提案されている。具体的には、磁気共鳴力Fが、2つの独立変数p,pに依存し、かつ下記式(1)を満たし、pとpが何らかの方法で操作できると仮定する。このpの変調角周波数ωとpの変調角周波数ωとが、どちらもωの非整数倍であって、かつ|ω+ω|=ωあるいは|ω−ω|=ωを満たすなら、ωで変調したFのみが抽出できると記載されている。
特開2007−85955号公報
森田清三編著、解説書「走査型プローブ顕微鏡 基礎と未来予測」丸善株式会社(2000) Ernst Meyer, Hans Josef Hug, Roaland Bennewitz Springer ,"Scanning Probe Microscopy The Lab on a Tip"(2004) K. Wago, D. Botkin, C. S. Yannoni and D. Ruger,"Paramagnetic and ferromagnetic resonance imaging with a tip-on-cantilever magnetic resonance force microscope", Appl. Phys. Lett., vol. 72, pp. 2757-2759 (1998) K.J.Bruland, J.Krzystek, J.L.Garbini and J.A.Sidles, "Anharmonic modulation for noise reduction in magnetic resonance force microscopy", Rev. Sci. Instrum. 66 (1995) 2853-2856
しかしながら、非特許文献4に記載されている力について二つの独立変数を非調和で変調させる方法を用いた走査型プローブ顕微鏡によっても、寄生的な力、すなわち測定の目的となる力とは異なる力の影響を完全に取り除くことは難しく、より寄生的な力の影響を低減できる走査型プローブ顕微鏡が望まれている。
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様によれば、測定の目的となる力とは異なる力が測定に与える影響を低減できる走査型プローブ顕微鏡を提供することができる。
(1)本発明に係る走査型プローブ顕微鏡は、
カンチレバーの先端に取り付けられた探針と試料とを接近させた状態で前記カンチレバーを振動させて前記探針を前記試料に対して非接触で走査し、前記探針と前記試料との間に働く力を変調させながら、前記カンチレバーの変位に基づいて前記探針と前記試料との間に働く力を検出し、前記試料の測定対象領域における試料像を生成する走査型プローブ顕微鏡において、
前記カンチレバーを振動させる励振手段と、
前記探針と前記試料との間に働く力を変調させる力変調手段と、
前記カンチレバーの変位を検出する変位検出手段と、
前記変位検出手段の検出結果に基づいて前記探針と前記試料との間に働く力を検出し、前記試料の測定対象領域における試料像を生成する試料像生成手段と、
を含み、
前記力変調手段は、所与の角周波数で前記探針と前記試料との間に働く力を変調させて、前記カンチレバーにパラメーター共振による振動を生じさせる。
このような走査型プローブ顕微鏡によれば、力変調手段は、所与の角周波数で探針と試料との間に働く力を変調させて、カンチレバーにパラメーター共振による振動を生じさせる。これにより、測定の目的となる力とは異なる力に起因するカンチレバーの共振を抑制することができるため、測定の目的となる力とは異なる力が測定に与える影響を低減できる。したがって、寄生信号が抑制された良好な試料像を得ることができる。
(2)本発明に係る走査型プローブ顕微鏡において、
前記所与の角周波数が、前記カンチレバーの固有角周波数の2倍であってもよい。
このような走査型プローブ顕微鏡によれば、効率よくカンチレバーにパラメーター共振による振動を生じさせることができる。
(3)本発明に係る走査型プローブ顕微鏡において、
前記所与の角周波数は、前記カンチレバーの固有角周波数をω、前記カンチレバーの有効質量をm、前記探針と前記試料との間に働く力をF、時間をtとしたときに、前記探針と前記試料との間の距離zに関する下記運動方程式に関するパラメーター共振定常解であってもよい。
このような走査型プローブ顕微鏡によれば、カンチレバーにパラメーター共振による振動を生じさせることができる。これにより、測定の目的となる力とは異なる力に起因するカンチレバーの共振を抑制することができるため、測定の目的となる力とは異なる力が測定に与える影響を低減できる。したがって、寄生信号が抑制された良好な試料像を得ることができる。
(4)本発明に係る走査型プローブ顕微鏡において、
前記試料像生成手段は、前記変位検出手段の検出結果から得られた前記カンチレバーの振幅値と所望の振幅値とを比較し、比較結果に基づいて前記カンチレバーの振幅値が前記所望の振幅値となるような制御信号を生成し、かつ前記比較結果に基づいて前記探針と前記試料との間に働く力を検出し、
前記励振手段は、前記制御信号に基づいて、前記カンチレバーの振幅値が前記所望の振幅値となるように前記カンチレバーを振動させてもよい。
このような走査型プローブ顕微鏡によれば、容易に、探針と試料との間に働く力を検出できる。
(5)本発明に係る走査型プローブ顕微鏡において、
前記力変調手段は、高周波磁場を前記所与の角周波数で変調して前記測定対象領域に印加し、
前記探針と前記試料との間に働く力は、磁気共鳴力であってもよい。
このような走査型プローブ顕微鏡によれば、試料に関する磁気共鳴特性の物理量分布を得ることができる。
本実施形態に係る走査型プローブ顕微鏡の機能ブロック図。 本実施形態に係る走査型プローブ顕微鏡のカンチレバーを模式的に示す図。 Mathieu方程式の安定領域、不安定領域を示す図。 従来の磁気共鳴力顕微鏡装置の一例を示す機能ブロック図。
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
1. 走査型プローブ顕微鏡
まず、本実施形態に係る走査型プローブ顕微鏡について説明する。図1は、本実施形態に係る走査型プローブ顕微鏡100の機能ブロック図である。本実施形態に係る走査型プローブ顕微鏡は、例えば、走査型原子間力顕微鏡や、走査型原子間力顕微鏡から派生した走査型磁気力顕微鏡、走査型静電気力顕微鏡、走査型磁気共鳴力顕微鏡等として機能する。また、本実施形態に係る走査型プローブ顕微鏡は、探針と試料との間に発生する弱い引力を摂動として、探針と試料を接触させずに目的の力を観測する非接触式測定モードを用いた力検出法により測定を行う。
走査型プローブ顕微鏡100は、図1に示すように、ステージ102と、探針103a付きカンチレバー103と、カンチレバー励振器104と、力変調装置107と、カンチレバー変位検出器111と、制御回路10と、を含む。制御回路10は、カンチレバー励振用ドライバー105と、位相器106と、力変調装置107を駆動するためのドライバー108と、位相器109と、周波数タブラ110と、交流実効値測定器112と、利得増幅器113と、を含む。
試料101は、特に限定されず、例えば、走査型プローブ顕微鏡100が走査型磁気力顕微鏡である場合、磁気材料や磁気記録媒体などであり、走査型プローブ顕微鏡100が走査型磁気共鳴力顕微鏡である場合、高分子や有機物、生物試料(細胞、蛋白質、DNA)などである。
ステージ102には、試料101が載置される。ステージ102は、例えば、カンチレバー103の先端に取り付けられた探針103aに対して、試料101を相対的に走査する3次元アクチュエーターとしての機能を有する。ステージ102は、試料101を2次元的に走査してもよく、また、3次元的に走査してもよい。なお、探針103aに対して試料101を相対的に走査できれば、探針103aを固定して試料101を走査しても、試料101を固定して探針103aを走査してもよい。
カンチレバー103は、先端に探針103aを備えた力検出用てこである。カンチレバー103は、探針103a先端と探針103a先端のごく近傍にある試料101の一部との間に発生する相互作用により変位する。カンチレバー103は、カンチレバー励振器104によって励振される。なお、カンチレバー103の振動方向(変位方向)は、ステージ102の試料101が載置される載置面(XY平面)に対する法線方向(Z軸方向)である。
探針103aは、探針103a先端と探針103a先端のごく近傍にある試料101の一部との間に相互作用を発生させる。探針103aは、例えば磁石である。この場合、当該相互作用は、磁気的相互作用(磁気力)となる。すなわち、走査型プローブ顕微鏡100は、例えば、走査型磁気力顕微鏡や走査型磁気共鳴力顕微鏡として機能する。また、探針103aは、例えば、電極である。この場合、当該相互作用は、電気的相互作用(静電気力)である。すなわち、走査型プローブ顕微鏡100は、例えば、走査型静電気力顕微鏡として機能する。
カンチレバー励振器104は、利得増幅器113によって生成された制御信号に基づいてカンチレバー103を振動させるアクチュエーターである。すなわち、カンチレバー励振器104は、カンチレバー103を振動させる励振手段である。
カンチレバー変位検出器111は、カンチレバー103の変位を検出し、電気信号に変換する。すなわち、カンチレバー変位検出器111は、カンチレバー103の変位を検出する変位検出手段である。カンチレバー変位検出器111の変位検出信号は、交流実効値測定器112および利得増幅器113に供給される。カンチレバー変位検出器111としては、例えば、光ファイバー干渉計や光てこ法測定器などを用いることができる。
力変調装置107は、探針103aと試料101との間に働く力を変調させる。すなわち力変調装置107は、力変調手段である。力変調装置107は、所与の角周波数で探針103aと試料101との間に働く力を変調させて、カンチレバー103にパラメーター共振による振動を生じさせる。ここで、パラメーター励振(共振)とは、例えば、振り子の糸の長さや重力加速度の周期的な変化により振幅が増大する物理現象である。走査型プローブ顕微鏡100が走査型磁気共鳴力顕微鏡である場合、力変調装置107は、試料101が磁気共鳴を起こすのに適した周波数を持つ高周波磁場を変調して測定対象領域に印加する。これにより、探針103aと試料101との間に働く磁気共鳴力を変調できる。
図2は、探針103aの付いたカンチレバー103を模式的に示す図である。カンチレバー103には試料101が近接しており、探針103a先端と、探針103a先端のごく近傍にある試料の一部とがなんらかの相互作用=Fを及ぼし合っている。さらにその相互作用は、試料101と探針103aとの間の距離に依存する。因って下記式(2)に示す相互作用の勾配gが有限である。なお、zはカンチレバー103の変位である。
相互作用Fは、例えば探針103aや試料101が磁性を帯びているなら磁気的相互作用となる。このとき力変調装置107として変調コイルなどを準備すればその磁気相互作用を変調させることができる。相互作用Fは、例えば探針103aや試料101が電荷を帯びているなら電気的相互作用となる。このとき力変調装置107として電極などを準備すればその電気的相互作用を変調させることができる。変調の周波数をカンチレバー103の固有角周波数ωの2倍に設定する。またこの変調によって発生する変調された力勾配の振幅を、下記式(3)とする。
このとき、カンチレバーの変位zについて、以下の運動方程式(4)が成り立つ。
ここで、mはカンチレバー103の有効質量、ωはカンチレバーの固有角周波数、QはカンチレバーのQ値、kはカンチレバーのバネ定数、Fapは、カンチレバー励振器104によってカンチレバー103に与えられる力を表す。
変位zは、カンチレバー変位検出器111(図1参照)により検出可能である。そしてこのzを用いて、Fapが下記式(5)を成り立つようにフィードバックを掛けてFapを作り出すことができる。
具体的には、観察された時系列データz(t)に対して、位相をπ/2ずらした信号を準備し、zに対する増幅率は、zの発振が得られさらにzの振幅が所望の値になるように調整する。このとき、zに関する運動方程式から、以下の式(6)が導き出される。
この式(6)は、下記式(7)に示すMathieu方程式に対して、ω=2ω、ε=0、δ=(1/mω )|g|のときに対応し、Mathieuが述べるように、振動数ωのパラメーター共振解が期待できる。
ここで、パラメーター共振解が得られる位相εの領域は、ゼロを中心に狭い。Mathieuの考察によると、|ε|<|δ|ω/2である。すなわち、たとえ力勾配の変調が発生したとしても、その変調位相がゼロ近傍に設定されていなければパラメーター共振が生まれない。変調位相がゼロ近傍にされた力のみが対象となってパラメーター共振が生じる。したがって、測定の目的となる力とは異なる力に起因するカンチレバー103の共振を抑制することができる。
勾配gが有限となってパラメーター共振定常解がzの振動に加われば、zの振幅が増す。そして、Fapを小さく調整して、zの振幅を所望の値に戻す。すなわち、Fapの調整量が未知の相互作用の勾配gに依存する値として記録される。
制御回路10は、カンチレバー変位検出器111の検出結果に基づいて、カンチレバー励振器104を制御するための制御信号および力変調装置107を制御するための制御信号を生成する。さらに、制御回路10は、カンチレバー変位検出器111の検出結果に基づいて、探針103aと試料101との間に働く力を検出し、試料101の測定対象領域における試料像を生成する。すなわち、制御回路10は、試料像生成手段である。なお、制御回路10の詳細については後述する。
ここで、試料像とは、探針103aによって検出された探針103aと試料101との間の力に依存する物理量の分布である。例えば、走査型プローブ顕微鏡100が、走査型磁気力顕微鏡として機能する場合、試料像は、試料に関する磁気特性の物理量分布である。また、走査型プローブ顕微鏡100が、走査型磁気共鳴力顕微鏡として機能する場合、試料像は、試料に関する磁気共鳴特性の物理量分布である。また、走査型プローブ顕微鏡100が、走査型静電気力顕微鏡として機能する場合、試料像は、試料に関する電気特性の物理量分布である。また、試料101の測定対象領域とは、走査型プローブ顕微鏡100の測定の対象となる試料101の領域をいう。
2. 走査型プローブ顕微鏡の動作
次に、本実施形態に係る走査型プローブ顕微鏡の動作について説明する。
走査型プローブ顕微鏡100は、試料101が載置されたステージ102をXY方向に走査して、各位置(X,Y)で探針103a付きカンチレバー103に掛かる力勾配(力)のデータを、利得増幅器113の増幅率として収集して画像化する。以下に手順を説明する。
まず、力変調装置107を駆動するためのドライバー108をOFFにして、力変調をゼロに設定する。そして、以下に述べるカンチレバー103の自己励振ループをONにする。カンチレバー103を安定して励振するための自己励振ループは、例えば、"Frequency modulation detection using high-Q cantilevers for enhanced force microscope sensitivity", T.R.Albrecht, P.Grutter, D.Horne and D.Rugar, J. Appl. Phys. 69(1991)668-673で提案されている。
カンチレバー変位検出器111において、カンチレバー103の振動の振る舞いz(t)が計測される。z(t)は、例えば、波形が正弦波である交流信号である。利得増幅器113では、z(t)の振幅と所望の振幅値Aを比較し、z(t)の振幅が所望の振幅値Aになるように、z(t)の振幅値が小さいときは入力z(t)に対して増幅率を上げて出力し、z(t)の振幅値が大きいときは入力z(t)に対して増幅率を下げて出力する。z(t)の振幅は、交流実効値測定器112で実効値として測定される。移相器106では、入力されたz(t)の時系列データ(制御信号)に対して、位相をπ/2遅延時間π/2ωだけ遅らせて出力する。これにより、z(t)の振動位相を相互作用F(t)の変調位相に対してπ/2ずらすことができる。カンチレバー励振器用ドライバー105では、移相器106から出力された信号でカンチレバー103が励振できるように、カンチレバー励振器104へ位相器106からの信号を増幅して出力する。上記のループによって、カンチレバー103の振幅値が一定値=Aとなるように保たれる。以後、利得増幅器113の増幅率を記録し続ける。
次に、力変調装置107を駆動するためのドライバー108をONにする。周波数ダブラ110では、z(t)の振動データAsin(ωt)に対して2倍の周波数を持った振動データAsin(2ωt)に変換される。この信号が、力変調装置を駆動するためのドライバー108で増幅されて、力変調装置107で試料101に力変調を作用させる。力変調装置107を駆動するためのドライバー108で増幅された場合、力変調装置107において信号出力に遅延が発生する場合が多い。移相器109では、この遅延時間を補正し、z(t)の振動位相とF(t)の変調位相とが同期するように位相を調整する。
次に、ステージ102を走査して、試料101の表面近傍の測定したい局所的な部分を、カンチレバー103の先端の探針103aへ近づける。このとき、力変調装置107に由来する力勾配|g|が有限であれば、力勾配が発生した直後には、パラメーター共振が生じ、カンチレバー103の振幅が増加する。自己励振ループは、カンチレバー103の振幅をAとするように、利得増幅器113が増幅率を低下させて、カンチレバー励振器104へ出力する力を自動的に軽減する。
上述したステージ102の走査および利得増幅器113によるカンチレバー103の振動の制御を繰り返して、利得増幅器113の増幅率を記録し続ける。この利得増幅器113の増幅率は、探針103aと試料101との間に働く力に対応しており、利得増幅器113の増幅率を記録し続けることは、探針103aと試料101との間に働く力を記録し続けることになる。このようにして、利得増幅器113の増幅率から試料101の測定対象領域における試料像を生成する。
本実施形態に係る走査型プローブ顕微鏡によれば、力変調装置107は、カンチレバー103の固有角周波数ωの2倍の角周波数で探針103aと試料101との間に働く力を変調させて、カンチレバー103にパラメーター共振による振動を生じさせる。これにより、測定の目的となる力とは異なる力に起因するカンチレバー103の共振を抑制することができるため、測定の目的となる力とは異なる力が測定に与える影響を低減できる。したがって、測定の目的となる力とは異なる力による寄生信号が抑制された良好な試料像(物理量分布)を得ることができる。
本実施形態に係る走査型プローブ顕微鏡によれば、制御回路10は、カンチレバー変位検出器111の検出結果から得られたカンチレバー103の振幅値と所望の振幅値とを比較し、比較結果に基づいてカンチレバー103の振幅値が所望の振幅値となるような制御信号を生成し、かつ比較結果に基づいて探針103aと試料101との間に働く力を検出し、カンチレバー励振器104は、制御信号に基づいて、カンチレバー103の振幅値が所望の振幅値となるようにカンチレバー103を振動させる。これにより、容易に、探針103aと試料101との間に働く力を検出できる。
3. 変形例
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
例えば、上述した図1に示す走査型プローブ顕微鏡100では、探針103aと試料101との間に発生する力Fを変調させる角周波数ωが、カンチレバー103の固有角周波数ωの2倍である場合について説明したが、角周波数ωはこれに限定されない。角周波数ωは、例えば、式(6)に示す運動方程式に関するパラメーター共振定常解であってもよい。これにより、カンチレバー103にパラメーター共振による振動を生じさせることができる。
Mathieu方程式(式(7)参照)に関するωのパラメーター共振定常解については、たとえば「非線形力学」戸田盛和、渡辺慎介共著 共立出版社(1984年)に示されている。図3は、Mathieu方程式の安定領域、不安定領域を示す図である。ただし、ω=ω/√α(αが正の時ωは振動数を、αが負の時ωは減衰率の定数を表す)、β=(ω/ω)・δである。図3に示すパラメーターα、β平面内において、「安定」とされた領域でωのパラメーター共振定常解が得られる。安定とされる適当なαを選んで、力変調周波数ωをω/√αに選んでも構わない。この際、周波数ダブラ110は、1/√α倍に周波数が変換されるように変更される。例えば、角周波数ω=nω(nは2以上の整数)の関係を満たせば、カンチレバー103にパラメーター共振を生じさせることができる。なお、角周波数ωは、カンチレバー103の固有角周波数ωの2倍であることが好ましい。これにより、効率よくカンチレバー103にパラメーター共振による振動を生じさせることができる。
また、例えば、探針103aと試料101との間に発生する力Fが、2つの独立変数pとpに依存しており、この2つの独立変数pとpを制御してパラメーター共振を生じさせてもよい。カンチレバー103の探針103aと試料101との間に発生する力Fが、2つの独立変数pとpに依存し、かつ下記式(8)を満たす場合に、pとpを何らかの方法で操作する。
具体的には、たとえば、Fとして磁気力を考え、Fが外部磁場Hと温度Tとに依存してF=cH/T(cは定数)と記述できる場合などである。このpの変調角周波数ωとpの変調角周波数ωとが、どちらもωの非整数倍であって、かつ|ω+ω|=2ω、あるいは|ω−ω|=2ωを満たすなら、力勾配gがカンチレバー103にωでパラメーター共振を生じさせることができる。この時は、図1に示す走査型プローブ顕微鏡において一種類の力変調を設けるために設置された力変調装置107、力変調装置107を駆動するためのドライバー108、移相器109、周波数ダブラ110、をpとpの変調のために2式用意すればよい。
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
100 走査型プローブ顕微鏡、101 試料、102 ステージ、
103 カンチレバー、103a 探針、104 カンチレバー励振器、
105 カンチレバー励振用ドライバー、106 移相器、107 力変調装置、
108 ドライバー、109 移相器、110 周波数ダブラ、
111 カンチレバー変位検出器、112 交流実効値測定器、
113 自動利得増幅器

Claims (5)

  1. カンチレバーの先端に取り付けられた探針と試料とを接近させた状態で前記カンチレバーを振動させて前記探針を前記試料に対して非接触で走査し、前記探針と前記試料との間に働く力を変調させながら、前記カンチレバーの変位に基づいて前記探針と前記試料との間に働く力を検出し、前記試料の測定対象領域における試料像を生成する走査型プローブ顕微鏡において、
    前記カンチレバーを振動させる励振手段と、
    前記探針と前記試料との間に働く力を変調させる力変調手段と、
    前記カンチレバーの変位を検出する変位検出手段と、
    前記変位検出手段の検出結果に基づいて前記探針と前記試料との間に働く力を検出し、前記試料の測定対象領域における試料像を生成する試料像生成手段と、
    を含み、
    前記力変調手段は、所与の角周波数で前記探針と前記試料との間に働く力を変調させて、前記カンチレバーにパラメーター共振による振動を生じさせる、走査型プローブ顕微鏡。
  2. 請求項1において、
    前記所与の角周波数が、前記カンチレバーの固有角周波数の2倍である、走査型プローブ顕微鏡。
  3. 請求項1において、
    前記所与の角周波数は、前記カンチレバーの固有角周波数をω、前記カンチレバーの有効質量をm、前記探針と前記試料との間に働く力をF、時間をtとしたときに、前記探針と前記試料との間の距離zに関する下記運動方程式に関するパラメーター共振定常解である、走査型プローブ顕微鏡。
  4. 請求項1ないし3のいずれか1項において、
    前記試料像生成手段は、前記変位検出手段の検出結果から得られた前記カンチレバーの振幅値と所望の振幅値とを比較し、比較結果に基づいて前記カンチレバーの振幅値が前記所望の振幅値となるような制御信号を生成し、かつ前記比較結果に基づいて前記探針と前記試料との間に働く力を検出し、
    前記励振手段は、前記制御信号に基づいて、前記カンチレバーの振幅値が前記所望の振幅値となるように前記カンチレバーを振動させる、走査型プローブ顕微鏡。
  5. 請求項1ないし4のいずれか1項において、
    前記力変調手段は、高周波磁場を前記所与の角周波数で変調して前記測定対象領域に印加し、
    前記探針と前記試料との間に働く力は、磁気共鳴力である、走査型プローブ顕微鏡。
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