JP2012044998A - 花色の予測方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】花卉の花色を改変する方法を提供する。
【解決手段】花卉の複対立遺伝子H、H又はその両方のエクソン部分に、配列番号4の塩基配列又はそれらの配列と60%以上の同一性を有する若しくはそれらの配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含むレトロトランスポゾンを挿入することを含む、ただし複対立遺伝子H又はHが、フラボノイド生合成の前駆物質でのB環の水酸化に関して3’,5’位の水酸化を制御し、デルフィニジン(Dpn)の生合成に関与する遺伝子である、花卉の花色を改変する方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、花卉の花色発現に重要な役割を演じているフラボノイド3’、5’−ヒドロキシラーゼ(F3’、5’H)の遺伝子、並びに、この遺伝子を利用する花色の予測及び改変方法に関する。より詳しくは、本発明は、フラボノイド生合成に関与し、遺伝する花色遺伝型交配法の育種法に用いることができるF3’、5’H遺伝子構造が含まれる複対立遺伝子、及び/又は、複対立遺伝子にレトロトランスポゾン遺伝子が挿入されたF3’、5’H遺伝子を利用して、開花前の花卉の花色を予測する方法、或いは、花色を改変する方法に関する。
花色発現の発現遺伝子に関する研究は、1980年代の前半より1990年代の後半の約20年間で大きな飛躍を遂げている。花色発現に関わる植物の生合成経路として、フラボノイド生合成がよく知られている。本経路の代謝産物であるフラボノイド中、特に、黄色い色を発現するフラボノール配糖体の色素や、赤から紫、青などの花色発現に重要なアントシアニンの色素は、他の色素と比べると普遍的に存在する。
トウモロコシ、キンギョソウ、ペチュニアの花色発現遺伝子の研究に関して、アントシアニン生合成の酵素をコードする構造遺伝子、例えば、カルコン合成酵素(CHS)、カルコン異性化酵素(CHI)、フラボン3−水酸化酵素(F3H)、フラボノイド3’−水酸化酵素(F3’H)、フラボノイド3’、5’−水酸化酵素(F3’、5’H)などの報告がある。また、アントシアニン生合成を調節する遺伝子、例えば、CHS、DFR、3GT、ANSなどを調節する遺伝子座の報告もある(非特許文献1)。
トルコギキョウの花色発現遺伝子に関して、メッセンジャーRNA(mNA)からコードされるF3’5’H遺伝子(F3’5’−H cDNA)をリンドウ、ペチュニア、ナスの類似遺伝子と比較した報告がある(非特許文献2)。この遺伝子は、紫色の花色を発現するデルフィニジンの生合成に関与することが示されている。
ペチュニアから単離したF3’5’−H cDNA、AK14をプローブとして利用し、トルコギキョウ(Eustoma russelianum)よりF3’5’−H cDNA、TG1を単離したという報告がある。さらに、TG1とAK14をペチュニアとタバコに挿入し、形質転換体植物の花色発現を調査した報告がある(非特許文献3)。さらにまた、フウリンソウ(Campanula medium)より単離したF3’5’−H cDNA、Ka1をタバコに挿入し、形質転換体植物の花色発現を調査し、本遺伝子が遺伝子工学を用いて花色を青色へ改変することのできる最も良好な遺伝子資源であるとの報告がある(非特許文献4)。
ニチニチソウ(Catharanthus roseus)より得られたチトクロームP450依存型フラボノイド水酸化酵素に関する報告がある。また、ペチュニアより得られたCYP75 Hf1 cDNAをプローブにして、ニチニチソウでF3’5’−H cDNAについてスクリーニング(heterologous screening)を行った結果、両者より得られたフラボノイド水酸化酵素は68〜78%の相同性のあることが報告されている(非特許文献5)。
アサガオの花色多形に関して、アサガオの遺伝的表現型の変異は、通常遺伝子にトランスポゾンが挿入され、そのほとんどが改変された結果であるとの記載がある。また、アサガオの花色表現型を決定する遺伝子型が4つの遺伝子座で制御されるというメンデルの法則に従い、それらのなかでもA/a遺伝子座が上位優性(epistasis)であるとの記載がある(非特許文献6)。
トルコギキョウの花色発現に関わる遺伝子群の研究について、カルコン合成酵素(CHS)、カルコン異性化酵素(CHI)、フラボン3−水酸化酵素(F3H)、フラボノイド3’、5’−水酸化酵素(F3’5’H)、ジヒドロフラボノール還元酵素(DFR)、アントシアニン合成酵素(ANS)について、mRNAよりcDNAを合成し、それらの構造を解析したとの報告がある(非特許文献7)。これによると、トルコギキョウのF3’5’H cDNAは、1892bpの長さを持ち、これにより合成可能なフラボノイド3’、5’−水酸化酵素タンパクは510個のアミノ酸配列から成ることの記載がある。
ツルニチニチソウ(Vinca major)の花色発現に関わるフラボノイド3’、5’−水酸化酵素(F3’5’H)の研究に関して、ツルニチニチソウからPCR法により遺伝子クローンされたF3’5’H遺伝子を単離し、VmFH1と命名された。この遺伝子は、翻訳領域又は推定遺伝子領域(open reading frame、ORF)の塩基配列は1518bpであり、885bpと633bpの2つのエクソン(exon)から成る。また、この遺伝子は506個のアミノ酸をコードし、デルフィニジンを生合成できることから、将来、ユリ科植物の青色花改変植物を得るための第一段階の研究であることの記載がある(非特許文献8)。
ブドウ(Vitis vinifera)の果色発現に関わるアントシアニン生合成酵素遺伝子とその調節遺伝子の研究に関して、ブドウの果皮色は、myb−関連遺伝子であるVvmybA1遺伝子で発現し、品種「イタリア」と「ルビーオクヤマ」のクローン遺伝子の構造を解析した結果、VvmybA1遺伝子にはGret1(Grapevine retrotransposon 1)と称するレトロトランスポゾンが含まれていることが分かり、これがVvmybA1遺伝子をコードする上流部分に挿入されている理由から、変異を生じ、野生型の紫色の果皮色から自然に白色様の果皮色が出現したとの記載がある(非特許文献9)。また、ブドウの品種「キャビネットサウヴィニオン(Cabernet Sauvignon)」より4つのフラボノイド3’−水酸化酵素(F3’H)のDNAの遺伝子配列を明らかにしたとの記載がある(非特許文献10)。4つの遺伝子は、それぞれF3’h1、F3’h2、F3’h3、F3’h4と称し、同様の位置に二つのイントロン(intron)が挿入され、アサガオ、ダイズ、アラビドプシスと同様であったとの記載がある(非特許文献10)。
ペチュニア園芸品種のアントシアニジン3−グルコシド−ラムノシル変換酵素(anthocyanidin 3−glucoside−rhamnosyltransferase、RT)の遺伝子に、トランソポゾン様因子が挿入されたとの記載がある。トランソポゾン様因子はdTph3sと称し、これがRT遺伝子の1181bpの位置に挿入されることによって、赤色の花色を発現することができるとの記載がある。さらに、このトランスポゾンの挿入は不安定であり、挿入RT遺伝子から容易に抜け出すことができ、抜け出した後にはRT遺伝子にフットプリントを残し、フットプリントのあるRT遺伝子の方が、トランスポゾン様因子dTph3sが挿入されたRT遺伝子に比べて、赤色花を育種するためにはより利用価値があるとの記載がある(非特許文献11)。
また、ペチュニアのF3’5’Hをコードしている優性型遺伝子Hf1遺伝子と劣性型遺伝子hf1に関して、Hf1遺伝子の第3エクソン(exon)に、突然変異を起こすことのできる2つのトランスポゾン様因子dTph9とrTph1がそれぞれ挿入された遺伝子が、結果として劣性遺伝子であるhf1であることの報告がある(非特許文献12)。
特許文献1に、遺伝子型判定方法に関して、遺伝子にトランスポゾンが挿入された状態の長いDNA断片、遺伝子にトランスポゾンが挿入されたものの抜けた状態又は正常な中くらいの長さのDNA断片及びトランスポゾンのフットプリントに対応する短いDNA断片の長さを電気泳動法によって分析し、その組み合わせにより、これらを区別して、遺伝子型を判定することができることが記載されている。
特許文献2に、ライムギなどのムギ類の新規なトランスポゾン様因子に関して、トランスポゾン様因子は、有用資源植物の分子育種に資するプローブ又はプライマー、更には染色体マーカーを開発するためのツールとして有用であるという記載がある。
特許文献3に、イネのトランスポゾン様DNA及びその利用方法が記載されている。このトランスポゾン様DNAは、イネのフィトクロームA遺伝子のプロモーター領域に存在する(TA/AT)の繰り返し配列からなるマイクロサテライトの解析をする過程で、マイクロサテライト内に391bpから成るDNA断片として見出された。
特許文献4には、レトロトランスポゾン、プロモーター活性を有するDNA断片、及びその利用の記載がある。
特許文献5には、タバコのレトロトランスポゾンを利用した遺伝子破壊法に関して、レトロトランスポゾンを該植物に導入する工程、及び該レトロトランスポゾンが導入された植物を培養することにより再分化させ、形質転換植物を作出する工程を包含する方法が記載されている。
特許文献6には、フラボノイド3’、5’−ヒドロキシラーゼ活性を有する蛋白質及びそれをコードする核酸に関する記載がある。
特許文献7には、フラボノイド生合成をコードする遺伝子配列とその利用に関して、フラボノイド3’−ヒドロキシラーゼ(F3’H)、又はその関連蛋白、これらを利用することによって植物や植物器官の色素発現を制御することが記載されている。
特許文献8には、花色遺伝型交配法が記載されている。特に、フラボノイド生合成のB環の水酸化に関するフラボノイド3’−ヒドロキシラーゼ(F3’H)やフラボノイド3’、5’−ヒドロキシラーゼ(F3’、5’H)、などの遺伝に着目し、その遺伝の分離を調べた結果、ペラルゴニジン(Pgn)、シアニジン(Cyn)、デルフィニジン(Dpn)の生合成に関与するジヒドロフラボノールリダクターゼ(DFR)及びアントシアニジンシンターゼ(AS)の酵素系の遺伝が、それぞれPg/pg、Cy/cy、Dp/dpの遺伝子によって制御されていることと併せて、フラボノイド3’−ヒドロキシラーゼ(F3’H)やフラボノイド3’、5’−ヒドロキシラーゼ(F3’、5’H)の遺伝が4つの複対立遺伝子(multiple allele)によって制御されているという法則を見出し、結果として、遺伝子組み替え、放射線等照射などによる突然変異を起こさせる方法を用いなくても、花卉の色素遺伝子型(pigment genotype)からその花色を自由に創成できること、また、色素前駆体のB環の水酸化に関与するフラボノイド3’−ヒドロキシラーゼ(F3’H)とフラボノイド3’、5’−ヒドロキシラーゼ(F3’、5’H)の酵素反応系には、H、H、H、Hの4つの複対立遺伝子が存在し、これらが3’位の水酸化、5’位の水酸化、3’、5’位の水酸化、及び3’位と3’、5’位の水酸化を制御し、これらの組合せによって色素表現型と花色表現型が決定されることが記載されている。
特開2004−201582 特開2005−73561 特開平11−206374号公報 特開2002−291473 国際公開WO00/71699号パンフレット 特開2000−23686 米国特許出願公開2005081264号明細書 国際公開WO2004/103065号パンフレット
Holton、T.A.とCornish、E.C.、「Genetics and Biochemistry of Anthocyanin Biosynthesis」、The Plant Cell、1995年、第7巻、第1071−1083頁 Nielson、K.M.とPodivinsky、E.、「cDNA Cloning and Endogenous Expression of a Flavonoid 3’5’−Hydroxylase from Petals of Lisianthus (Eustoma grandiflorum)」、Plant Science、1997年、第129巻、第167−174頁 Shimada、Y.、他5名、「Expression of Chimeric P450 Genes Encoding Flavonoid−3’、5’−Hydroxylase in Transgenic Tobacco and Petunia Plants」、FEBS Letters、1999年、第461巻、第241−245頁 Okinaka、Y.ら、「Selective Accumulation of Delphinidin Derivatives in Tobacco Using a Putative Flavonoid 3’、5’−Hydroxylase cDNA from Campanula medium」、Bioscience Biotechnology and Biochemistry、2003年、第67巻、第161−165頁 Kaltenbach、M.ら「Flavonoid Hydroxylase from Catharanthus roseus: cDNA、Heterologous Expression、 Enzyme Properties and Cell−Type Specific Expression in Plants」、The Plant Journal、1999年、第19巻、第183−193頁 Clegg、M.T.とDurbin、M.L.、「Flower Color Variation: A Model for the Experimental Study of Evolution」、Proceeding of the National Academy of Science Colloquium、2000年、第97巻、第7016−7023頁 Nodaら、「Regulation of Gene Expression Involved in Flavonol and Anthocyanin Biosynthesis during Petal Development in Lisianthus (Eustoma grandiflorum)」、Physiologia Plantarum、2004年、第122巻、第305−313頁 Mori、S.ら、「Heterologous Expression of the Flavonoid 3’、5’−Hydroxylase Gene of Vinca major Alters Flower Color in Transgenic Petunia hybrida」、 Plant Cell Report、2004年、第22巻、第415−421頁 Kobayashi、S.ら、「Association of VvmybA1 Gene Expression with Anthocyanin Production in Grape (Vitis vinifera) Skin−Color Mutants」、 Journal of the Japanese Society of Horticutural Science、2005年、第74巻、第196−203頁 Jeong、S.T.ら、「Expression of the Flavonoid 3’−Hydroxylase and Flavonoid 3’、5’−Hydroxylase Genes and Flavonoid Composition in Grapes (Vitis vinifera)」、Plant Science、2006年、第170巻、第61−69頁 Nakajima、T.ら、「Insertion and Excision of a Transposable Element Governs the Red Floral Phenotype in Commercial Petunias」、Theoretical and Applied Genetics、2005年、第110巻、第1038−1043頁 Matsubara、K.ら、「Two Novel Transposable Elements in a Cytochrome P450 Gene Govern Anthocyanin Biosynthesis of Commercial Petunias」、Gene、2005年、第358巻、第121−126頁
上記の特許文献の中で、遺伝子にトランスポゾン及び/又はレトロトランスポゾンが挿入された遺伝子、並びに遺伝子にトランスポゾンが挿入されたものの抜けた状態でフットプリントを残した遺伝子が明らかにされ、さらに、遺伝子にトランスポゾン及び/又はレトロトランスポゾンを挿入することによって植物の様々な発現を人為的に制御できることが明らかにされたが、花色発現に関わる複対立遺伝子とトランスポゾン及び/又はレトロトランスポゾンとの関係については、記載はなかったし、また、これらのDNA断片の長さを電気泳動法によって分析し、その組み合わせにより、これらを区別して、遺伝子型を判定することは知られていたが、それらの遺伝子型を有する個体及び/又は系統がどのような花色/果色を有するか判定することができなかった。
さらに、これに関連して、トランスポゾン及び/又はレトロトランスポゾンが挿入された遺伝子を保有する遺伝子型が花色に関する遺伝子型育種法で後代にどのように遺伝するか曖昧であり、実用化する場合問題がある。また、非特許文献12に記載されるHf1/hf1で表されたペチュニアの花色素の遺伝について、基本的にメンデルの遺伝の法則に従うはずであるが、hf1遺伝子型には2種類以上存在することの記載があることから、後代の分離に曖昧な点があるため実用化には至っていない。さらに、トランスポゾン及び/又はレトロトランスポゾンが挿入された遺伝子を保有する遺伝子型である個体がどのような花色を有するか、CIELab表色系(CIELab color coordinate system)などを用いて花色を正確に測色・数値化し、遺伝させることが十分ではなかったという問題点もある。
もし花卉の花色発現に関係する複対立遺伝子の遺伝子型を構造的に解明し、これらの遺伝子型と花色との相関が明らかになれば、それらの遺伝子型を判定した上で遺伝する個体がどのような花色を当代及び/又は後代へ発現するか容易に予測することができ、そのような遺伝子型は、花色を予測又は検定するための遺伝子指標(マーカー)として利用できるかもしれない。これによって、複対立遺伝子型について開花を迎えずに早期に判定するだけで、遺伝する当代及び/又は後代の花色をCIELab表色系などの座標軸上の値として容易に予測することができ、開花を迎えずに早期に花色を正確に知ることができると考えられる。
また、もし新規トランスポゾン及び/又はレトロトランスポゾンが挿入された遺伝子を保有する遺伝子型と、花色との関係が明確になれば、CIELab表色系などの座標軸上の値としてより正確に花色を育種する技術として使用できるかもしれない。
本発明者らは、花色発現に関連する5つの複対立遺伝子型の遺伝子構造を明らかにし、それらの構造と当代及び/又は後代に遺伝される花色遺伝を明らかにし、また、CIELab表色系などを用いて花色を正確に測色・数値化した上で、その色素遺伝子型と花色遺伝との関係を明らかにし、花卉の新花色作出について実用的な花色改変法と、及び/又は、花卉の開花を迎えずに早期に遺伝子を検定した上で、複対立遺伝子型を帰属し、遺伝する花色を知ることができる実用的な花色予測法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決するため、花色発現に関連する5つの複対立遺伝子型、すなわちH、H、H、H、Hのいずれか又はその組み合わせからなる遺伝子型を有する花卉品種を用いて、CIELab表色系(CIELab color coordinate system)による花色を測定・数値化し、また、それらの色素表現型を分析し、それらの遺伝子型を帰属した。さらに、帰属された5つの複対立遺伝子型、H、H、H、H、Hのそれぞれについて、フラボノイド3’、5’−ヒドロキシラーゼ(F3’、5’−H)遺伝子の構造を明らかにし、その結果、5つの複対立遺伝子型H、H、H、H、Hは3つのフラボノイド3’、5’−ヒドロキシラーゼ(F3’、5’−H)遺伝子群に分類できることを今回見出した。
発明の概要
本発明は、要約すると、以下の特徴を有する。
(1)図4に示す経路式のフラボノイド生合成の色素前駆物質のB環の水酸化に関わるフラボノイド3',5’-水酸化酵素を含む花卉の酵素反応系の花粉親配偶子及び種子親配偶子由来の複対立遺伝子H、H、H、H及びHの組み合わせを、該複対立遺伝子に対応するフラボノイド3’、5’−ヒドロキシラーゼ遺伝子に基づいて開花前の花卉組織から決定し、遺伝子型H・Pg/pg・Cy/cy・Dp/dpについて花粉親配偶子及び種子親配偶子間の複対立遺伝子の組み合わせと花色との相関に基づいて開花前の花卉の花色を予測する方法であって、ここで、複対立遺伝子Hが、該フラボノイド生合成の前駆物質でのB環の水酸化に関して3’位の水酸化を制御し、ペラルゴニジン(Pgn)とシアニジン(Cyn)の生合成に関与する遺伝子であり、複対立遺伝子Hが該フラボノイド生合成の前駆物質でのB環の水酸化に関して5’位の水酸化を制御し、ペラルゴニジン(Pgn)の生合成に関与する遺伝子であり、複対立遺伝子H又はHが、該フラボノイド生合成の前駆物質でのB環の水酸化に関して3’,5’位の水酸化を制御し、デルフィニジン(Dpn)の生合成に関与する遺伝子であり、並びに、複対立遺伝子Hが該フラボノイド生合成の前駆物質でのB環の水酸化に関して3’、5’位の水酸化を制御し、デルフィニジン(Dpn)の生合成に関与する遺伝子である、前記方法。
(2)複対立遺伝子の組み合わせが、電気泳動により決定される、(1)に記載の方法。
(3)複対立遺伝子H又はHが、配列番号1の塩基配列、その相補的配列、又はそれらの配列と80%以上の同一性を有する若しくはそれらの配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含むDNAである、(1)又は(2)に記載の方法。
(4)複対立遺伝子H又はHが、配列番号2の塩基配列、その相補的配列、又はそれらの配列と80%以上の同一性を有する若しくはそれらの配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含むDNAである、(1)又は(2)に記載の方法。
(5)複対立遺伝子Hが、配列番号3の塩基配列、その相補的配列、又はそれらの配列と80%以上の同一性を有する若しくはそれらの配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含むDNAである、(1)又は(2)に記載の方法。
(6)花卉が、双子葉植物又は単子葉植物から選択される、(1)〜(5)のいずれかに記載の方法。
(7)花卉がトルコギキョウである、(6)に記載の方法。
(8)複対立遺伝子H又はH由来の配列番号1の塩基配列、その相補的配列、又はそれらの配列と80%以上の同一性を有する若しくはそれらの配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含むDNA又はその15塩基以上の断片。
(9)複対立遺伝子H又はH由来の配列番号2の塩基配列又はそれらの配列と80%以上の同一性を有する若しくはそれらの配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含むDNAの第1エクソン配列中に、配列番号4のレトロトランスポゾンの塩基配列又はそれらの配列と60%以上の同一性を有する若しくはそれらの配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列が挿入されている、(8)に記載のDNA又はその15塩基以上の断片。
(10)配列番号4の塩基配列又はそれらの配列と60%以上の同一性を有する若しくはそれらの配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含むレトロトランスポゾン又はその15塩基以上の断片。
(11)複対立遺伝子H由来の配列番号3の塩基配列、その相補的配列、又はそれらの配列と80%以上の同一性を有する若しくはそれらの配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含むDNA又はその15塩基以上の断片。
(12)開花前の花卉の花色を予測するためのキットであって、下記の(a)〜(c)のDNA又はその断片:
(a)複対立遺伝子H又はH由来の配列番号1の塩基配列、その相補的配列、又はそれらの配列と80%以上の同一性を有する若しくはそれらの配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含むDNA、或いは該DNAの15塩基以上の断片、
(b)複対立遺伝子H又はH由来の配列番号2の塩基配列、その相補的配列、又はそれらの配列と80%以上の同一性を有する若しくはそれらの配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含むDNA、或いは該DNAの15塩基以上の断片、並びに、
(c)複対立遺伝子H由来の配列番号3の塩基配列、その相補的配列、又はそれらの配列と80%以上の同一性を有する若しくはそれらの配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含むDNA、或いは該DNAの15塩基以上の断片、
の少なくとも1つをプローブ又はプライマーとして含む、前記キット。
(13)プローブが標識されている、(12)に記載のキット。
(14)前記複対立遺伝子の組み合わせと花色との相関を示す早見表をさらに含む、(12)又は(13)に記載のキット。
(15)花卉の複対立遺伝子H、H又はその両方のエクソン部分に、配列番号4の塩基配列又はそれらの配列と60%以上の同一性を有する若しくはそれらの配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含むレトロトランスポゾンを挿入することを含む、ただし複対立遺伝子H又はHが、フラボノイド生合成の前駆物質でのB環の水酸化に関して3’,5’位の水酸化を制御し、デルフィニジン(Dpn)の生合成に関与する遺伝子である、花卉の花色を改変する方法。
(16)エクソンが第1エクソンである、(15)に記載の方法。
(17)花色の改変が、複対立遺伝子H又はHの機能を失い、新たに複対立遺伝子H又はHの機能を獲得することによって生じる、ただし複対立遺伝子Hが、フラボノイド生合成の前駆物質でのB環の水酸化に関して3’位の水酸化を制御し、ペラルゴニジン(Pgn)とシアニジン(Cyn)の生合成に関与する遺伝子であり、複対立遺伝子Hがフラボノイド生合成の前駆物質でのB環の水酸化に関して、ペラルゴニジン(Pgn)の生合成に関与する遺伝子である、(15)又は(16)に記載の方法。
(18)花卉が、双子葉植物又は単子葉植物から選択される、(15)〜(17)のいずれかに記載の方法。
(19)図4に示す経路式のフラボノイド生合成の色素前駆物質のB環の水酸化に関わるフラボノイド3',5’-水酸化酵素を含む花卉の酵素反応系の花粉親配偶子及び種子親配偶子由来の複対立遺伝子H、H、H、H及びHの組み合わせと花色との相関を示す早見表であって、ここで、複対立遺伝子Hが、該フラボノイド生合成の前駆物質でのB環の水酸化に関して3’位の水酸化を制御し、ペラルゴニジン(Pgn)とシアニジン(Cyn)の生合成に関与する遺伝子であり、複対立遺伝子Hが該フラボノイド生合成の前駆物質でのB環の水酸化に関して5’位の水酸化を制御し、ペラルゴニジン(Pgn)の生合成に関与する遺伝子であり、複対立遺伝子H又はHが、該フラボノイド生合成の前駆物質でのB環の水酸化に関して3’,5’位の水酸化を制御し、デルフィニジン(Dpn)の生合成に関与する遺伝子であり、並びに、複対立遺伝子Hが該フラボノイド生合成の前駆物質でのB環の水酸化に関して3’、5’位の水酸化を制御し、デルフィニジン(Dpn)の生合成に関与する遺伝子である、前記早見表。
(20)下記のいずれかである、(19)に記載の早見表。
Figure 2012044998
Figure 2012044998
定義
本明細書中で使用される用語は、以下の定義を有する。
「複対立遺伝子に対応するフラボノイド3’、5’−ヒドロキシラーゼ遺伝子」とは、花卉のフラボノイド3'、5’水酸化に関与し、複対立遺伝子遺伝子座に存在する複数の遺伝的な因子の一部を構成する要素を意味する。
「花卉」とは、フラボノイドを含む花を有する被子植物、特に双子葉植物及び単子葉植物、をいう。
「花色遺伝型交配法」とは、フラボノイドのアントシアニジン色素、すなわちペラルゴニジン(Pgn)、シアニジン(Cyn)及びデルフィニジン(Dpn)、に関する遺伝型育種法において、フラボノイド生合成における前駆物質のB環の水酸化に関わる5つの複対立遺伝子を任意に組み合わせることによって自由に花色を作製するための方法をいう。
「花粉親配偶子」とは、雄性配偶子をいう。一方、「種子親配偶子」とは、雌性配偶子をいう。
「%同一性」とは、対象の複対立遺伝子のDNA配列との配列比較(alignment)を、ギャップを導入して又はギャップを導入しないで行い、対象のDNA配列の全塩基数に対する同一塩基数の百分率(%)をいう。配列比較は、通常、BLAST、FASTAなどのアルゴリズムを利用して行うことができる(例えば、S.F. Altschulら,J. Mol. Biol. 215:403−410(1990);W.R. Pearson D.S. Lipman,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444−2448(1988))。
「ストリンジェントな条件」とは、対象の複対立遺伝子のDNA配列に対してハイブリダイズすることができる条件であって、例えば30〜50℃で、3〜5×SSC、0.1〜1%SDS中で1〜15時間のハイブリダイゼーション、その後の、例えば0.1〜2×SSC、0.1〜1%SDS中、室温〜70℃での洗浄からなる条件をいう。このような条件下で対象の複対立遺伝子のDNA配列にハイブリダイズすることができるDNAは、例えば該複対立遺伝子の変異体又はホモログである。ここで、ホモログは、対象植物とは異なる植物又は植物品種の同族の複対立遺伝子を指す。
本発明により、花色発現に関連する5つの複対立遺伝子の構造が解明された結果、それらの遺伝子型を判定した上で遺伝する個体がどのような花色を当代及び/又は後代へ発現するか容易に予測することができるし、また、開花を迎えずに早期に花色を予測することができる。これによって、花粉親配偶子及び種子親配偶子間の複対立遺伝子の組み合わせと花色との関係を示す早見表の作成が可能となり、これは花色の予測のために便利に利用できる。
さらにまた、本発明により、新規レトロトランスポゾンが見出され、これが挿入された遺伝子を保有する遺伝子型が解明された結果、5つの複対立遺伝子と花色との関係が明確となり、複対立遺伝子へのレトロトランスポゾン挿入を介して花色の改変、特に赤色への改変が可能となった。
各複対立遺伝子H、H、H、H、HのF3’、5’−H DNAバンドの特徴を示す電気泳動図を示す。 複対立遺伝子H、H、H、H、Hより得られたF3’、5’−H DNA遺伝子の構造を模式化した図を示す。 ヘテロ型の複対立遺伝子の組み合わせ、HとH、及び、HとHのF3’、5’−H DNAバンドを示す電気泳動図を示す。 花卉のフラボノイド生合成の経路図を示す。
複対立遺伝子
特許文献8に一部記載されるように、本発明者らは、花色遺伝型が、図4に示す経路式(I)のフラボノイド生合成に関係することを見出した。
図4中、H、H、H、H及びHは、フラボノイド生合成の前駆物質でのB環の水酸化に関与する複対立遺伝子を表わし、ここで、複対立遺伝子Hが、該前駆物質でのB環の水酸化に関して3’位の水酸化を制御し、ペラルゴニジン(Pgn)とシアニジン(Cyn)の生合成に関与する遺伝子であり、複対立遺伝子Hが該前駆物質でのB環の水酸化に関して5’位の水酸化を制御し、ペラルゴニジン(Pgn)の生合成に関与する遺伝子であり、複対立遺伝子H又はHが、該前駆物質でのB環の水酸化に関して3’,5’位の水酸化を制御し、デルフィニジン(Dpn)の生合成に関与する遺伝子であり、並びに、複対立遺伝子Hが該前駆物質でのB環の水酸化に関して3’、5’位の水酸化を制御し、デルフィニジン(Dpn)の生合成に関与する遺伝子である。
さらにまた、図4中、花卉の花色発現に関わる主要アントシアニジン色素のペラルゴニジン(Pgn)、シアニジン(Cyn)、デルフィニジン(Dpn)の遺伝について、Pgn、Cyn、Dpn色素の遺伝子座をそれぞれPg/pg、Cy/cy、Dp/dpとして示した。Pgn、Cyn、Dpnの生合成に関与するジヒドロフラボノールリダクターゼ(DFR)およびアントシアニジンシンターゼ(AS)の酵素系の遺伝が、それぞれPg/pg、Cy/cy、Dp/dpの遺伝子によって制御されている(特許文献8)。
本発明によれば、上記5つの複対立遺伝子H、H、H、H及びHは、該複対立遺伝子によって制御される3つのフラボノイド3'、5’-ヒドロキシラーゼ(F3’、5’-H)遺伝子群に基づいて、HとH、HとH及びHに分類できる。
フラボノイド色素前駆体のB環の水酸化に関与するフラボノイド3'−ヒドロキシラーゼ(F3'H)とフラボノイド3'、5'−ヒドロキシラーゼ(F3'、5'H)の酵素反応系の遺伝子型を、上記のとおり、H、H、H、H、Hの5つの複対立遺伝子で示し、Pg/pgの記号のうち2つを選択し(すなわち、PgPg、Pgpg、pgpgの組合せ記号のうち1つを選択し)、Cy/cyの記号のうち2つを選択し(すなわち、Cycy、Cycy、cycyの組合せ記号のうち1つを選択し)、Dp/dpの記号のうち2つを選択し(すなわち、DpDp、Dpdp、dpdpの組合せ記号のうち1つを選択し)、また、H、H、H、H、Hの記号のうち2つを選択し(すなわち、H、H、H、H、H、H、H、H、H、H、H、H、H、Hの組合せ記号のうち1つを選択し)、花色を決める遺伝子型(色素遺伝子型)をD/d・E/e・H・Pg/pg・Cy/cy・Dp/dpとして表わすことができる。
本発明の3種の遺伝子は、花卉の組織、例えば根、葉、茎、種子などの植物体のあらゆる部分からDNAを抽出し、プライマーを使用するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行い、増幅産物を単離し、その後、配列決定によって得ることができる。すなわち、3種の遺伝子の翻訳領域を夾み、互いに向かい合う15〜30bpのオリゴヌクレオチドをプライマーとし、花卉の組織より抽出したDNAを鋳型としてPCRを行う。このPCRによって、プライマーにはさまれる領域のDNA断片が増幅される。
このようにして、複対立遺伝子HとHが3115bpの塩基配列(配列番号2)を含むこと、複対立遺伝子Hが2498bpの塩基配列(配列番号3)を含むこと、複対立遺伝子H又はHが8525bpの塩基配列(配列番号1)を含み、この配列中に配列番号4の塩基配列を含むレトロトランスポゾン様因子rTeg1(retrotransposon Eustoma grandiflorum 1)が含まれることが判明した(図2参照)。
具体的には、複対立遺伝子型H又はHのフラボノイド3’、5’−ヒドロキシラーゼ(F3’、5’−H)遺伝子の構造は、配列番号2に示す3115bpの塩基配列であり、986bpと1000bpからなる2つのエクソンの間に、1129bpのイントロンを保有した構造である。
また、複対立遺伝子型HのF3’、5’−H遺伝子の構造は、配列番号3に示す2498bpの塩基配列であり、986bpと1000bpからなる2つのエクソンの間に、512bpのイントロンを保有した構造である。
さらにまた、複対立遺伝子型H又はHのF3’、5’−H遺伝子の構造は、配列番号1に示す8525bpの塩基配列であり、991bpと1000bpからなる2つのエクソンの間に1129bpのイントロンを保有し、さらに991bpの第1エクソンの491bpと500bpとの間に5405bpのレトロトランスポゾンが挿入された構造である。
花色の予測法
本発明によれば、開花前の花卉の花色を予測する方法が提供される。この方法は、花粉親及び種子親配偶子間の上記複対立遺伝子H、H、H、H及びHの組み合わせを、該複対立遺伝子のフラボノイド3’、5’−ヒドロキシラーゼ遺伝子に基づいて開花前の花卉組織から決定し、遺伝子型H・Pg/pg・Cy/cy・Dp/dpについて花粉親及び種子親配偶子間の複対立遺伝子の組み合わせと花色との相関に基づいて、開花前の花卉の花色を予測することを含む。
本発明において、花卉とは、フラボノイド(flavonoids)を含む花、果実、種子、葉、すなわち、フラボノイドを含む花弁、萼片、苞、花被、果皮、種皮、葉柄などを有する顕花植物門(Anthophyta)の被子植物門(Angiospermae)であり、被子植物門には双子葉植物綱(Dicotyledoneae)及び単子葉植物綱(Monocotyledoneae)が含まれる。
双子葉植物綱の合弁花亜網(Sympetalae)の花卉として、限定されるものではないが、例えば、キキョウ目(Campanulatae)(キク科(Compositae)、スティリディウム科(Stylidiaceae)、クサトベラ科(Goodeniaceae)、キキョウ科(Campanulacae))、ウリ目(Cucurbitales)(ウリ科(Cucurbitaceae))、アカネ目(Rubiales)(マツムシソウ科(Dipsacaceae)、オミナエシ科(Valerianaceae)、スイカズラ科(Caprifoliaceae)、アカネ科(Rubiaceae))、シソ目(Tubiflorae)(キツネノマゴ科(Acanthaceae)、タヌキモ科(Lentibulariaceae)、イワタバコ科(Gesneriaceae)、ツノゴマ科(Martyniaceae)、ゴマ科(Pedaliaceae)、ノウゼンカズラ科(Bignoniaceae)、ゴマノハグサ科(Scrophulariaceae)、ナス科(Solanaceae)、シソ科(Labiatae)、クマツヅラ科(Verbenaceae)、ムラサキ科(Boraginaceae)、ハゼリソウ科(Hydrophyllaceae)、ハナシノブ科(Polemoniaceae)、ヒルガオ科(Convolvulaceae))、モクセイ目(Contortae)(ガガイモ科(Asclepiadaceae)、キョウチクトウ科(Apocynaceae)、リンドウ科(Gentianaceae)、フジウツギ科(Loganiaceae)、モクセイ科(Oleaceae))、イソマツ目(Plumbaginales)(イソマツ科(Plumbaginaceae))、サクラソウ目(Primulales)(サクラソウ科(Primulaceae)、ヤブコウジ科(Myrsinaceae))、ツツジ目(Ericales)(ツツジ科(Ericaceae)、イチヤクソウ科(Pyrolaceae))、イワウメ目(Diapensiales)(イワウメ科(Diapensiaceae))が挙げられる。
双子葉植物綱の離弁花亜網(Archichlamydeae)の花卉として、例えば、限定されるものではないが、テンニンカ目(Myrtiflorae)(アカバナ科(Onagraceae)、ノボタン科(Melastomataceae)、フトモモ科(Myrtacear)、シクンシ科(Combretaceae)、ザクロ科(Punicaceae)、ミソハギ科(Lythraceae)、グミ科(Elaegnaceae)、ジンチョウゲ科(Thymelaeaceae))、ツバキ目(Parietales)(シュウカイドウ科(Begoniaceae)、トケイソウ科(Passifloraceae)、ハンニチバナ科(Cistaceae)、スミレ科(Violaceae)、ツバキ科(Camelliaceae))、アオイ目(Malvales)(アオイ科(Malvacaeae)、ホルトノキ科(Elaeocarpaceae))、クロウメモドキ目(Rhamnales)(ブドウ科(Vitaceae)、クロウメモドキ科(Rhamnaceae))、ムクロジ目(Sapindales)(ツリフネソウ科(Balsaminaceae)、トチノキ科(Hippocastanaceae)、カエデ科(Aceraceae)、ニシキギ科(Celastraceae)、モチノキ科(Aquifoliaceae)、ウルシ科(Anacardiaceae))、フウロソウ目(Geraniales)(トウダイグサ科(Euphorbiaceae)、ヒメハギ科(Polygalaceae)、ミカン科(Rutaceae)、アマ科(Linaceae)、フウロソウ科(Geraniaceae)、カタバミ科(Oxalidaceae))、バラ目(Rosales)(マメ科(Leguminosae)、バラ科(Rosaceae)、マンサク科(Hamamelidaceae)、トベラ科(Pittosporaceae)、ユキノシタ科(Saxifragaceae)、ベンケイソウ科(Crassulaceae))、サラセニア目(Sarraceniales)(サラセニア科(Sarraceniaceae)、ウツボカズラ科(Nepenthaceae)、モウセンゴケ科(Droseraceae))、ケシ目(Papaverales)(アブラナ科(Brassicaseae)、フウチョウソウ科(Capparidaceae)、ケシ科(Papaveraceae))、キンポウゲ目(Ranunculales)(クスノキ科(Lauraceae)、メギ科(Berberidaceae)、キンポウゲ科(Ranunculaceae)、アケビ科(Lardizabalaceae)、スイレン科(Nymphaeaceae)、バンレイシ科(Annonaceae)、モクレン科(Magnoliaceae))、アカザ目(Centrospermae)(ナデシコ科(Caryophyllaceae)、オシロイバナ科(Nyctaginaceae))、タデ目(Polygonales)(タデ科(Polygonaceae))、イラクサ目(Urticales)(クワ科(Moraceae))、ヤマモモ目(Myricales)(ヤマモモ科(Myricaceae))が挙げられる。
単子葉植物網の花卉として、限定されるものではないが、例えば、ラン目(Orchidales)(ラン科(Orchidaceae))、ショウガ目(Scitaminea)(カンナ科(Cannaceae)、ショウガ科(Zingiberaceae)、バショウ科(Musaceae))、ユリ目(Liliiflorae)(アヤメ科(Iridaceae)、ヒガンバナ科(Amaryllidaceae)、ユリ科(Liliaceae))、ツユクサ目(Commelinales)(ミズアオイ科(Pontederiaceae)、ツユクサ科(Commelinaceae)、パイナップル科(Bromeliaceae)、サトイモ目(Arales)(サトイモ科(Araceae))が挙げられる。
本発明において、上記5つの複対立遺伝子型の組み合わせは、3種類のフラボノイド3’、5’−ヒドロキシラーゼ遺伝子に基づいて開花前の花卉組織から決定される。
上記3種類のフラボノイド3’、5’−ヒドロキシラーゼ遺伝子を得るために、レトロトランスポゾン様因子rTeg1の挿入部位を挟み込む、5’→3’向きの塩基配列に対応した第1のプライマーと、3’→5’向きの塩基配列に対応した第2のプライマーを用いてPCRを行うことができる。そのためのプライマーは、例えば以下のものである。
第1のプライマー:
5’−CTCAGACCTCTGTTACCTCAGTCAG−3’(配列番号5)
第2のプライマー:
3’−AGAAACTGAACTCTCATCC−5’(配列番号6)
増幅されたDNAは、電気泳動で分離することができ、電気泳動ゲル上のバンドとして検出される。ゲル上のバンドは、ゲルから単離可能で、単離されたDNA断片はサイクルシークエンシング法によるプライマーウォーキングなど、通常行われている塩基配列決定の方法に従って、全塩基配列を決定できる。DNA断片の塩基配列が決定されたとき、その断片にトランスポゾン様DNAが挿入されていれば、そのトランスポゾンの配列と挿入位置も決定される。
例えば、トルコギキョウの品種あすかの紅から抽出したDNAを鋳型として用い、上記に示されたオリゴヌクレオチドをプライマーとして用い、PCRを行って、PCR産物をアガロースゲルによる電気泳動を行った場合には、約8kbpのDNA断片が得られる。このDNA断片をアガロースゲルから抽出して、サイクルシークエンシング法によるプライマーウォーキングによって全塩基配列を決定すると、配列番号1に示す8525bpの塩基配列からなるトランスポゾン様DNAが含まれることが判明した。
例えばトルコギキョウの品種ロイヤルバイオレットから抽出したDNAを用い、上記に示されたオリゴヌクレオチドをプライマーとして用い、PCRを行って、PCR産物をアガロースゲルによる電気泳動を行った場合には約2.5kbpのDNA断片が得られる。このDNA断片をアガロースゲルから抽出して、サイクルシークエンシング法によるプライマーウォーキングによって全塩基配列を決定すると、配列番号3に示す2498bpの塩基配列からなるDNAが含まれることが判明した。
例えば、トルコギキョウの品種メロウラベンダーから抽出した抽出したDNAを用い、上記に示されたオリゴヌクレオチドをプライマーとして用い、PCRを行って、PCR産物をアガロースゲルによる電気泳動を行った場合には約3kbpのDNA断片が得られる。このDNA断片をアガロースゲルから抽出して、サイクルシークエンシング法によるプライマーウォーキングによって全塩基配列を決定すると、配列番号2に示す3115bpの塩基配列からなるDNAが含まれることが判明した。
したがって、本発明によれば、上記複対立遺伝子型を決める3種類のフラボノイド3’、5’−ヒドロキシラーゼ遺伝子は、以下のものである。
(1)複対立遺伝子型Hを表わす、該フラボノイド生合成の前駆物質でのB環の水酸化に関して3’位の水酸化を制御しペラルゴニジン(Pgn)とシアニジン(Cyn)の生合成に関与するDNAであって、配列番号1の塩基配列、その相補的配列、又はそれらの配列と80%以上の同一性を有する若しくはそれらの配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含むDNA、或いは、
複対立遺伝子型Hを表わす、該フラボノイド生合成の前駆物質でのB環の水酸化に関して5’位の水酸化を制御し、ペラルゴニジン(Pgn)の生合成に関与するDNAであって、配列番号1の塩基配列、その相補的配列、又はそれらの配列と80%以上の同一性を有する若しくはそれらの配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含むDNA。
(2)複対立遺伝子H又はHを表わす、該フラボノイド生合成の前駆物質でのB環の水酸化に関して3’,5’位の水酸化を制御し、デルフィニジン(Dpn)の生合成に関与するDNAであって、配列番号2の塩基配列、その相補的配列、又はそれらの配列と80%以上の同一性を有する若しくはそれらの配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含むDNA。
(3)複対立遺伝子型Hを表わす、該フラボノイド生合成の前駆物質でのB環の水酸化に関して3’、5’位の水酸化を制御し、デルフィニジン(Dpn)の生合成に関与するDNAであって、配列番号3の塩基配列、その相補的配列、又はそれらの配列と80%以上の同一性を有する若しくはそれらの配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含むDNA。
上記(1)〜(3)のDNAにおいて、該DNAには、上記のフラボノイド生合成に関与する活性を有するという条件で、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の塩基配列或いはその相補的配列と通常60%以上、好ましくは70%以上、75%以上、より好ましくは80%以上、85%以上、さらに好ましくは90%以上、95%以上又は98%以上の同一性を有するDNAも包含される。
また、そのようなDNAには、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の塩基配列或いはその相補的配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含むDNAも包含される。ストリンジェントな条件は、上記定義のとおりであり、すなわち、以下のものに特に限定されないが、例えば30〜50℃で、3〜5×SSC、0.1〜1%SDS中で1〜15時間のハイブリダイゼーション、その後の、例えば0.1〜2×SSC、0.1〜1%SDS中、室温〜70℃での洗浄からなる条件をいう。ここで、1×SSCとは、150mM塩化ナトリウム及び15mMクエン酸ナトリウムを含む水溶液(pH7.2)である。ストリンジェントな条件の他の例は、例えばSambrookら, Molecular Cloning, A Laboratory Mannual, Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989に記載されており、その開示を本発明でも利用しうるものとする。
上記の80%以上の同一性を有するDNA、或いは、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAは、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の塩基配列或いはその相補的配列の突然変異体、それとは異なる植物又は植物品種のホモログなどを含む。
本発明の方法では、開花前の花卉の組織、例えば葉、根、茎などの任意の部位からDNAを抽出し、必要であればPCR法により該DNAを増幅し、DNAをサイズ分離する。DNAのサイズは、例えばトルコギキョウの場合8525bp(配列番号1)、3115bp(配列番号2)、2498bp(配列番号3)であり、これらは、後述の実施例6又は図3ではそれぞれEf3、Ef2、Ef1と称される。これらの特定のDNAサイズは、あくまでも例示であり、もし植物の種類が異なれば、それらのサイズも相違するかもしれないが、本発明では、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の塩基配列或いはその相補的配列と一次構造及び活性の点で類似する限り、いかなるDNAサイズも許容しうる。
DNAの抽出は、花卉の組織を微塵切りにし、これを適当なバッファー中でホジナイズしたのち、フェノール法などの公知のDNA抽出法にて、全DNAを抽出する。このためには、市販のDNA抽出キットを使用してもよく、そのようなキットの例は、Plant Genomics DNA Miniキット(バイオジーン社)などである。
全DNAから対象のDNAをサイズ分離するために、例えば電気泳動、サザンハイブリダイゼーションなどを利用することができる。電気泳動の場合、ゲルは、通常、アガロースゲルが好ましい。
対象DNAを電気泳動で検出する場合、対象DNAを予めPCR法で増幅することが好ましい。PCRのためのプライマーは、配列番号1、2及び3の5’末端側配列及び3’末端側配列はいずれも同じ配列を有するため、同一の正方向プライマーと逆方向プライマーを設計、作製し、使用することができる。植物種によっては、配列番号1、2及び3の塩基配列から設計されたプライマー配列が、例えば5’末端又は3’末端の配列の相違のために、使用できない場合もあるかもしれないが、そのような場合には、植物種の組織からDNAを抽出し、配列番号1、2及び3の塩基配列との同一性を考慮して作製したランダムなプライマーを用いてPCR増幅し、増幅されたDNAについて塩基配列を決定することを通して、適切なプライマー配列を決めることができる。或いは、GenBankなどの配列データバンクを介して、対象DNA配列に関して種々の植物種の関連配列を検索し、得られた配列に基づいてプライマー配列を決めることができる。プライマーのサイズは、例えば15〜50塩基、好ましくは17〜25塩基である。
PCR条件は、目的の対象DNAが増幅可能な限り限定されないが、例えば94〜95℃で10秒〜1分間の変性、50〜65℃で10秒〜1分間のアニーリング、72℃で30秒〜10分の伸長反応を1サイクルとし、20〜50サイクル反応を行うことを含む。PCRに際しては、耐熱性逆転写酵素(例えばTaqポリメラーゼなど)、dNTP(ここで、NはA,T,G及びCである)、Mg2+を含有するバッファーなどが用いられる。
対象DNAをサザンハイブリダイゼーションで検出する場合、植物の組織から抽出された全DNAを、上記のように電気泳動にかけてサイズ分離したのち、アルカリ処理し、ナイロンなどのメンブランに転写し、標識プローブを用いて対象DNAを検出する。プローブは、下記の(1)〜(3)のDNA又はその断片の少なくとも1つである。
(1)複対立遺伝子H又はH由来の配列番号1の塩基配列、その相補的配列、又はそれらの配列と80%以上の同一性を有する若しくはそれらの配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含むDNA、或いは該DNAの15塩基以上の断片。
(2)複対立遺伝子H又はH由来の配列番号2の塩基配列、その相補的配列、又はそれらの配列と80%以上の同一性を有する若しくはそれらの配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含むDNA、或いは該DNAの15塩基以上の断片。
(3)複対立遺伝子H由来の配列番号3の塩基配列、その相補的配列、又はそれらの配列と80%以上の同一性を有する若しくはそれらの配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含むDNA、或いは該DNAの15塩基以上の断片。
プローブのサイズは、15塩基以上であり、例えば20〜200塩基、25〜100塩基、50〜80塩基などである。また、プローブの標識は、例えば蛍光ラベル化剤、放射性同位元素によって行われる。
本発明においては、上記の手法によって、該アントシアニジン類のフラボノイド生合成の前駆化合物のB環の水酸化に関与する5つの複対立遺伝子型のフラボノイド3’、5’−ヒドロキシラーゼ遺伝子を知ることが可能である。
複対立遺伝子型がHの場合、B環の水酸基が1個と2個を有する4種の前駆物質(ナリンゲニン(naringenin)、エリオディクチオール(eriodictyol)、ジヒドロケンフェロール(dihydrokaempferol)、ジヒドロクエルセチン(dihydroquercetin))を生成し、Hの場合、B環の水酸基を1個有する2種の前駆物質(ナリンゲニン(naringenin)、ジヒドロケンフェロール(dihydrokaempferol))を生成し、Hの場合、B環(B−ring)の水酸基が1〜3個有する6種の前駆物質(ナリンゲニン(naringenin)、エリオディクチオール(eriodictyol)、ペンタヒドロキシフラバノン(pentahydroxyflavanone)、ジヒドロケンフェロール(dihydrokaempferol)、ジヒドロクエルセチン(dihydroquercetin)、ジヒドロミリセチン(dihydromyricetin))を生成するが、これらのフラボノイド3’、5’−水酸化酵素(F3’、5’−H)遺伝子として、配列番号1に示す8525bpの塩基配列の遺伝子が検出される。
複対立遺伝子型がHの場合、B環の水酸基を3個有する2種の前駆物質(ペンタヒドロキシフラバノン(pentahydroxyflavanone)、ジヒドロミリセチン(dihydromyricetin))を生成し、H、Hの場合、B環の水酸基が3個有する2種の前駆物質(ペンタヒドロキシフラバノン(pentahydroxyflavanone)、ジヒドロミリセチン(dihydromyricetin))を生成するが、これらのフラボノイド3’、5’−水酸化酵素(F3’、5’−H)遺伝子として、配列番号2に示す3115bpの塩基配列の遺伝子が検出される。
複対立遺伝子型がHの場合、B環(B−ring)の水酸基が1〜3個有する6種の前駆物質(ナリンゲニン(naringenin)、エリオディクチオール(eriodictyol)、ペンタヒドロキシフラバノン(pentahydroxyflavanone)、ジヒドロケンフェロール(dihydrokaempferol)、ジヒドロクエルセチン(dihydroquercetin)、ジヒドロミリセチン(dihydromyricetin))を生成するが、このフラボノイド3’、5’−水酸化酵素(F3’、5’−H)遺伝子として、配列番号3に示す2498bpの塩基配列の遺伝子が検出される。
すなわち、配列番号1に示す8525bpの塩基配列の遺伝子は、Hの対立遺伝子(allele)の制御に関係し、従って、ナリンゲニン(naringenin)からエリオディクティオール(eriodictyol)並びにジヒドロケンフェロール(dihydrokaempferol)からジヒドロクエルセチン(dihydroquercetin)への生化学的変換(biosynthetic transformation)の制御に関係する。また、8525bpの塩基配列の遺伝子は、Hの対立遺伝子の制御にも関係し、従って、エリオディクティオール(eriodictyol)からペンタヒドロキシフラバノン(pentahydroxyflavanone)並びにジヒドロクエルセチン(dihydroquercetin)からジヒドロミリセチン(dihydromyricetin)への生化学的変換の制御に関係する。
また、配列番号2に示す3115bpの塩基配列の遺伝子は、H及び/又はHの対立遺伝子の制御に関係し、従って、ナリンゲニン(naringenin)からペンタヒドロキシフラバノン(pentahydroxyflavanone)並びにジヒドロケンフェロール(dihydrokaempferol)からジヒドロミリセチン(dihydromyricetin)への生化学的変換の制御に関係する。
さらにまた、配列番号3に示す2498bpの塩基配列の遺伝子は、Hの対立遺伝子の制御に関係し、従って、ナリンゲニン(naringenin)からエリオディクティオール(eriodictyol)とペンタヒドロキシフラバノン(pentahydroxyflavanone)並びにジヒドロケンフェロール(dihydrokaempherol)からジヒドロクエルセチン(dihydroquercetin)とジヒドロミリセチン(dihydromyricetin)への全ての生化学的変換の制御に関係する。
なお、上記の前駆物質の構造を含むPgn、Cyn及びDpnの生合成経路に関しては、村上孝夫、天然物の構造と化学、155〜185頁、廣川書店、1984年に記載されている。
本発明において、例えば、トルコギキョウ花弁の色素遺伝子型(pigment genotype)について、HPg−CyCyDpDpの色素遺伝子型でPgnCyn型の色素表現型(PgnCyn−pigment phenotype)の場合、HPg−CyCyDpDpの遺伝子型でPgnCynDpn型の表現型の場合、及びHPg−CyCyDpDpの遺伝子型でPgn型の表現型の場合、いずれのフラボノイド3’、5’−水酸化酵素(F3’、5’−H)遺伝子も、配列番号1に示す8525bpの塩基配列の遺伝子である。色素遺伝子型の表記において、「−」は、その一つ前に表記された遺伝子(遺伝子及び/又は遺伝子型)に優性的に支配されていることを示し、いずれの遺伝子でも用いることができることを意味する。
例えば、H−−CyCyDpDp、H−−CyCyDpDp、H−−CyCyDpDpの色素遺伝子型でDpn型の色素表現型の場合、いずれのフラボノイド3’、5’−水酸化酵素(F3’、5’−H)遺伝子も、配列番号2に示す3115bpの塩基配列の遺伝子である。色素遺伝子型の表記において、「−−」は、いずれの遺伝子(遺伝子及び/又は遺伝子型)も用いることができることを意味する。
例えば、HpgpgCyCyDpDpの色素遺伝子型でCynDpn型の色素表現型、及び、HPg−CyCyDpDpの色素遺伝子型でPgnCynDpn型の色素表現型の場合、いずれのフラボノイド3’、5’−水酸化酵素(F3’、5’−H)遺伝子も、配列番号3に示す2498bpの塩基配列の遺伝子である。
本発明では、ヘテロ型の遺伝子型をフラボノイド3’、5’−水酸化酵素(F3’、5’−H)遺伝子より同定できる。例えば、HPg−CyCyDpDpの色素遺伝子型でPgnCynDpn型の色素表現型の場合、フラボノイド3’、5’−水酸化酵素(F3’、5’−H)遺伝子は、配列番号1に示す8525bpの塩基配列の遺伝子と配列番号3に示す2498bpの塩基配列の遺伝子とが検出される。例えば、HPg−CyCyDpDpの色素遺伝子型でPgnCynDpn型の色素表現型の場合、フラボノイド3’、5’−水酸化酵素(F3’、5’−H)遺伝子は、配列番号1に示す8525bpの塩基配列の遺伝子と配列番号2に示す3115bpの塩基配列の遺伝子が検出される。
アントシアニジン類では、その構造中のB環の水酸化が異なることでその呈色が決定される。すなわち、B環の4’位に水酸基が1個有するペラルゴニジン(Pgn)はオレンジ色〜朱赤色を呈し、B環の3’、4’位に水酸基が2個有するシアニジン(Cyn)は赤色〜深紅色を呈し、B環の3’、4’、5’位に水酸基が3個有するデルフィニジン(Dpn)は赤紫〜紫色を呈し、これらが共存することによって様々な花色を発現する(本多利雄ら、現代化学、25〜32頁、東京化学同人、1998年)。
本発明において、例えば、トルコギキョウのフラボノイド3’、5’−水酸化酵素(F3’、5’−H)遺伝子が、配列番号1に示す8525bpの塩基配列の遺伝子であれば、赤紫色、赤色、深赤色、紫赤色、淡赤色、ピンク色、白赤色、白色の花を得ることができる。ここで、白色はアントシアニジンを全く含まないことに起因する。トルコギキョウのフラボノイド3’、5’−水酸化酵素(F3’、5’−H)遺伝子が、配列番号2に示す3115bpの塩基配列の遺伝子であれば、淡紫色、紫赤色、紫色、青紫色の花を得ることができる。トルコギキョウのフラボノイド3’、5’−水酸化酵素(F3’、5’−H)遺伝子が、配列番号3に示す2498bpの塩基配列の遺伝子であれば、赤紫色、赤色、紫赤色の花を得ることができる。
トルコギキョウ以外の花卉として、例えば、スイートピー(sweet pea、Lathyrus odoratus)花弁の色素遺伝子型について、HPg−CyCyDpDpでPgnCyn型(PgnCyn表現型)を得ることができる。HpgpgCyCyDpDp、HpgpgCyCyDpDpとH−pgpgCyCyDpDpでCynDpn型(CynDpn表現型)を得ることができる。HpgpgCyCyDpDpでCyn型(Cyn表現型)を得ることができる。H−−CyCyDpDpとH−−CyCyDpDpでDpn型(Dpn表現型)を得ることができる。HpgpgCyCyDpDpで白色の花を得ることができる。色素遺伝子型において、「−」及び「−−」は、上記と同義である。また、Dpn型(Dpn表現型)の色素表現型にはメチル化アントシアニジン(methylated anthocyanidin)であるマルヴィジン(malvidin、Mv)とペチュニジン(petunidin、Pt)を含むが、これらは、いずれもDpn型(Dpn表現型)の色素表現型に包含される。さらに、Cyn型(Cyn表現型)の色素表現型にはメチル化アントシアニジンであるペオニジン(peonidin、Pn)を含むが、これはCyn型(Cyn表現型)の色素表現型に包含される。
さらにまた、例えば、ツツジおよびシャクナゲ花弁の色素遺伝子型について、HpgpgCyCyDpDpでCyn型(Cyn表現型)を得ることができる。HpgpgCyCyDpDp、HpgpgCyCyDpDp、HpgpgCyCyDpDpでCynDpn型(CynDpn表現型)を得ることができる。HpgpgCyCyDpDpで白色の花を得ることができる。なお、PgnDpn型(PgnDpn表現型)は得られない。ツツジ花弁の色素遺伝子型の特徴として、Pgn色素(Pgn表現型)の生合成に関与するジヒドロフラボノールリダクターゼ(DFR)又はアントシアニジンシンターゼ(AS)の発現に関する遺伝子座が劣性のホモ型(recessive homozygote)(pgpg)になっているために、Pgn色素が生成されない。Dpn型(Dpn表現型)の色素表現型にはメチル化アントシアニジンであるマルヴィジン(Mv)とペチュニジン(Pt)を含むが、これらは、いずれもDpn型(Dpn表現型)の色素表現型に包含される。さらに、Cyn型(Cyn表現型)の色素表現型にはメチル化アントシアニジンであるペオニジン(Pn)を含むが、これらはCyn型(Cyn表現型)の色素表現型に包含される。
花卉の花色は、花弁又は萼片、花被、苞、果皮などの有色部分から、50%(v/v)酢酸水溶液又は50%(v/v)酢酸メタノール(methanolic−acetic acid)を用いてアントシアニン(anthocyanin)を抽出し[酢酸の濃度は10〜50%でも可能であり、酢酸の代わりに0.5〜2規定塩酸を用いてもよい]、これを塩酸加水分解して、アントシアニジン(anthocyanidin)を含む加水分解物を得て、これを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などを用いて各種アントシアニジンを分析することによって測定できる(例えばUddinら, Japan Soc. Hort. Sci., 71:40−47, 2002)。
さらに、自殖(self−pollination)や交雑を繰り返して得られた後代の遺伝子型について、優性ホモ型(dominant homozygote)、優性ヘテロ型(dominant heterozygote)、劣性ホモ型(recessive homozygote)などを決定し、花色と色素遺伝子型と3種のフラボノイド3’、5’−水酸化酵素(F3’、5’−H)遺伝子を同定する。これに基づいて、花粉親配偶子及び種子親配偶子間の複対立遺伝子型の組み合わせと花色との相関を示す早見表を作成することができる(例えば、後述実施例7(6)参照)。早見表の例として、例えばトルコギギョウの花色を予測するための早見表(後述の表6及び表7)が挙げられる。
花色については、CIELab表色系(CIELab color coordinate system)などを用いて花色を正確に測色・数値化することができる。
したがって、花卉の3種のフラボノイド3’、5’−水酸化酵素(F3’、5’−H)遺伝子を測定し、上記配偶子間で5つの複対立遺伝子型H、H、H、H及びHの組み合わせを決定することによって、上記のような早見表を用いて、開花前の花卉の花色を予測することができる。
キットとDNA
本発明はさらに、開花前の花卉の花色を予測するためのキットも提供する。
キットには、下記の(1)〜(3)のDNA又はその断片:
(1)複対立遺伝子H又はH由来の配列番号1の塩基配列、その相補的配列、又はそれらの配列と80%以上の同一性を有する若しくはそれらの配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含むDNA、或いは該DNAの15塩基以上の断片、
(2)複対立遺伝子H又はH由来の配列番号2の塩基配列、その相補的配列、又はそれらの配列と80%以上の同一性を有する若しくはそれらの配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含むDNA、或いは該DNAの15塩基以上の断片、並びに、
(3)複対立遺伝子H由来の配列番号3の塩基配列、その相補的配列、又はそれらの配列と80%以上の同一性を有する若しくはそれらの配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含むDNA、或いは該DNAの15塩基以上の断片、
の少なくとも1つをプローブ又はプライマーとして含む。
プライマーのサイズは、例えば15〜50塩基、好ましくは17〜25塩基である。
プローブのサイズは、15塩基以上であり、例えば20〜200塩基、25〜100塩基、50〜80塩基などである。
プローブは、好ましくは、例えば蛍光ラベル化剤、放射性同位元素などのラベル化剤によって標識されている。蛍光ラベル化剤には、例えばローダミン、フルオレサミン、ダンシル、それらの誘導体、Cyダイなどが含まれ、一方、放射性同位元素には、例えば32P、35Sなどが含まれる。
本発明のキットには、上記複対立遺伝子型の組み合わせと花色との相関を示す早見表をさらに含むことができる。また、キットには、PCR用の酵素やバッファー、ハイブリダイゼーション用の試薬やバッファーなどをさらに含むことができる。
本発明のキットは、プローブを用いてサザンハイブリダイゼーションを行い、複対立遺伝子型の検定や花色の予測が可能である。
本発明はさらに、以下のDNA又はその断片を提供する。
(4)複対立遺伝子H又はH由来の配列番号1の塩基配列、その相補的配列、又はそれらの配列と80%以上の同一性を有する若しくはそれらの配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含むDNA、或いは15塩基以上のその断片。
このDNAは、複対立遺伝子H又はH由来の配列番号2の塩基配列又はそれらの配列と80%以上の同一性を有する若しくはそれらの配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含むDNAの第1エクソン配列中に、配列番号4のレトロトランスポゾンの塩基配列又はそれらの配列と60%以上の同一性を有する若しくはそれらの配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列が挿入されたDNAである。
(5)配列番号4の塩基配列又はそれらの配列と60%以上の同一性を有する若しくはそれらの配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含むレトロトランスポゾン、或いは15塩基以上のその断片。
(6)複対立遺伝子H又はH由来の配列番号2の塩基配列、その相補的配列、又はそれらの配列と80%以上の同一性を有する若しくはそれらの配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含むDNA、或いは15塩基以上のその断片。
(7)複対立遺伝子H由来の配列番号3の塩基配列、その相補的配列、又はそれらの配列と80%以上の同一性を有する若しくはそれらの配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含むDNA、或いは15塩基以上のその断片。
本発明の上記(4)〜(7)のDNA又はその断片は、プローブとして用いて蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)を行うことにより、トルコギキョウなどの花卉の染色体の検出を行うこともまた可能である。また、プローブ及び/又はプライマーとして用いて、種々の植物種から本発明の配列番号1、2又は3の塩基配列を有するDNAに相当するホモログを得ることが可能であるし、また染色体マッピングなどに応用することも可能である。さらにまた、プライマーとして用いてPCRを行うと、ゲノム中より種々のDNA断片が増幅されるが、このような断片は、染色体と同様に扱うことができるので、DNA多型から染色体マッピングが可能であり、従って、そのようなプライマーを用いることで、新たな染色体マーカーや遺伝子マーカーを開発することも可能となる。さらにまた、上記DNAを遺伝子組換えなどの技術に用いることで、人為的な形質改変も可能となる。
レトロトランスポゾン
本発明者らは、上述したように、配列番号1に示す複対立遺伝子H又はHの塩基配列において、その第1エクソン中にレトロトランスポゾン(rTeg1;配列番号4)を含むことを見出した(図2)。また、このレトロトランスポゾン配列が挿入される前の配列は複対立遺伝子H又はHであることも判明した。
本発明のレトロトランスポゾンは、配列番号4の塩基配列と通常60%以上、好ましくは70%以上、75%以上、より好ましくは80%以上、85%以上、さらに好ましくは90%以上、95%以上又は98%以上の同一性を有する、レトロトランスポゾン活性を有するDNAも包含する。このようなDNAは、トルコギキョウの品種間の突然変異体、リンドウ科の近縁種のホモログなどを包含する。
ここで、「レトロトランスポゾン活性」とは、他の遺伝子に挿入されたとき、その遺伝子の機能を改変する或いは不活性化する活性をいう。
本発明のレトロトランスポゾンを他の遺伝子、特に複対立遺伝子H又はHに挿入させることによって、その遺伝子の機能を改変することも可能である。例えばフラボノイド3’、5’−水酸化酵素(F3’5’H)遺伝子にレトロトランスポゾンを挿入することで、紫の花色を赤に改変させることも可能である。
すなわち、本発明はさらに、花卉の複対立遺伝子H、H又はその両方のエクソン部分に、配列番号4の塩基配列又はそれらの配列と60%以上の同一性を有する若しくはそれらの配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含むレトロトランスポゾンを挿入することを含む、花卉の花色を改変する方法を提供する。
本発明では、上記エクソンは、第1エクソンであることが好ましい。
花色の改変は、レトロトランスポゾンの挿入のために、複対立遺伝子H又はHの機能が失われ、その代わりに新たに複対立遺伝子H又はHの機能が獲得されることによって生じる。
本発明で使用可能な花卉には、上に例示したような双子葉植物及び単子葉植物が含まれる。
本発明のトランスポゾンによる形質転換は、双子葉植物及び単子葉植物の一般的な形質転換法を用いて行うことができる。ベクターとしては、好ましくは、バイナリーベクター(例えば、pBI101、pBI121など)が使用される。このベクターには、T-DNA領域の左側ボーダー(LB)と右側ボーダー(RB)の間に、上記の配列番号4の塩基配列又はそれらの配列と60%以上の同一性を有する若しくはそれらの配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含むレトロトランスポゾン配列が挿入される。ベクターには、さらに細菌での選択用のカナマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子などの選択マーカー、植物での選択用のネオマイシンホスホトランスフェラーゼII(NPTII)、ジヒドロ葉酸レダクターゼなどの選択マーカー、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)プロモーターなどのプロモーターなどを含むことができる。形質転換は、アグロバクテリウム法(アセトシリンゴンの使用を含む)、パーティクルガン法、マイクロインジェクション法、エレクトロポレーション法などによって行うことができる。アグロバクテリウムの例は、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(例えば、EHA105、EHA101など)を含む。これによって、レトロトランスポゾン配列は、相同組換えによって植物ゲノムに組み込まれる。形質転換は、カルスや多芽体などに対して実施され、通常の植物培養法を介して植物体にまで再生される。植物の遺伝子工学に関しては、例えば松橋通生ら監訳、ワトソン・組換えDNAの分子生物学、第2版、丸善、1994年;島本功ら監修、植物細胞工学シリーズ15、モデル植物の実験プロトコール、遺伝学的手法からゲノム解析まで、秀潤社などの記載を利用することができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例によって限定されないものとする。
[実施例1]トルコギキョウの葉から複対立遺伝子H、H、H、H、HのF3’、5’−H DNAの確認
トルコギキョウの5系統の成葉から、Plant Genomic DNA Miniキット(バイオジーン社)を使用し、DNAを抽出した。レトロトランスポゾン挿入部位を挟み込む形で下記の2種類のプライマー組を設計した。
プライマー組R:
GTACTTAAAGGTAGGCAGCTGTGGATACCTCCCTATAGACGAGAAGCC(配列番号7)
プライマー組L:
GTACTTAAAGGTAGGCAGCTGTGGCCTCTTGCTGCTATGGTCACTC(配列番号8)
PCRはGeneAmp9700システム(ABI社)を使用して行った。反応液20μl中には10ng DNA、0.5units TAKARA EXTaq HS(タカラバイオ社)、0.2mMdNTPs、2μl10×EXTaqバッファー、0.4μMプライマーが含まれる。PCR条件は、95℃で10秒間の変性、62℃で30秒間のアニーリング、72℃で3分の伸長反応を1サイクルとし、45サイクル反応させた。反応後、1%アガロースゲルS(ニッポンジーン社)上の電気泳動によりバンドの確認を行った。その結果を図1に示す。HとHは約8kbの同様のバンド、HとHは約3kbの同様のバンド、Hは2.5kbのバンドを示すことが分かる(図1)。図1中、プライマー組Rを用いて検出したバンドが右(R)、プライマー組Lを用いて検出したバンドが左のバンド(L)である。
[実施例2]トルコギキョウの葉から複対立遺伝子H及びHに関わるF3’、5’−H DNAの構造の確認
実施例1の結果、花弁にデルフィニジンが存在しない系統では、全ての系統で、レトロトランスポゾンの挿入を示す約8kbのバンドが観察された。これに対して、デルフィニジンが存在する系統では、2〜2.5kbのバンドのみが存在する場合と、2〜2.5kbのバンドと8kbのバンドの両方が存在する場合があった。これらのバンドの配列はダイレクトシークエンス法によって決定した。具体的には、得られたバンドからQIAEXIIgel−purification kits(Qiagen)を使用してDNAを抽出した。抽出された断片DNAはプライマーウォーキング法による塩基配列の決定に供された。シークエンス反応はBig Dye Terminator Ver.3によるサイクルシークエンスを採用した。反応液20μl中には10〜100ng DNA、2μlBig Dye Terminator Ver.3プレミックス、1.5μl 10×Taqバッファー(ニッポンジーン社)、100ngDNA、3.2pmプライマーが含まれる。サイクルシークエンス反応の条件は、96℃で10秒間の変性、50℃で5秒間のアニーリング、60℃で4分間の伸長反応を1サイクルとし、25サイクル反応させた。反応後、反応産物をエタノール/酢酸ナトリウム沈殿により精製し、鹿児島大学フロンティアサイエンス研究推進センター(鹿児島)のDNAシークエンス解析サービスに依頼し、末端から約500bp程度の配列を決定した。決定された配列をもとにプライマーを設計し、再び、サイクルシークエンシングによる配列決定を進め、最終的に全長の配列を決定した。
この結果を図2に示す。複対立遺伝子H及びHに関わるF3’、5’−H DNAの構造は配列番号1に示す8525bpの塩基配列の遺伝子であることが分かる。また、レトロトランスポゾンの構造は、配列番号4に示す5405bpの塩基配列の遺伝子であることが分かる(図2)。
[実施例3]トルコギキョウの葉から複対立遺伝子H及びHに関わるF3’、5’−H DNAの構造の確認
実施例1と同じ方法で、Hをホモで持つ系統からDNAを抽出し、トルコギキョウのフラボノイド3’、5’−水酸化酵素(F3’、5’−H)遺伝子の翻訳領域全てを挟み込む形でプライマー(5’−GGCCGCATTCTTACCAAGAT−3’(配列番号9)及び5’−TAGAAACATGGACGAACTCC−3’(配列番号10)のDNA配列を有するオリゴヌクレオチド)を設計した。実施例1及び2と同じ方法でPCRを行い、電気泳動のバンドからDNAを抽出し、塩基配列を決定した。
この結果を図2に示す。複対立遺伝子H及びHに関わるF3’、5’−H DNAの構造は、配列番号2に示す3115bpの塩基配列の遺伝子であることが分かる(図2)。
[実施例4]トルコギキョウの葉から複対立遺伝子Hに関わるF3’、5’−H DNAの構造の確認
実施例3と同じ方法で、H約をホモで持つ系統からDNAを抽出しPCRを行い、電気泳動のバンドからDNAを抽出し、塩基配列を決定した。この結果を図2に示す。複対立遺伝子Hに関わるF3’、5’−H DNAの構造は、配列番号3に示す2498bpの塩基配列の遺伝子であることが分かる(図2)。
[実施例5]複対立遺伝子H、H、H、H、HのF3’、5’−H DNAが翻訳する蛋白質の構造
(1)複対立遺伝子H、Hに関わる、配列番号1に示す8525bpの塩基配列のF3’、5’−H DNAが翻訳する蛋白質の構造
複対立遺伝子H、Hに関わる、配列番号1に示す8525bpの塩基配列から予測されるアミノ酸配列の検討を行った結果、下記の2つの蛋白質、一つは136個のアミノ酸配列を有する蛋白質と、もう一つは386個のアミノ酸配列を有する蛋白質の、2種類を翻訳することが分かった。
MAVGNGVLLHIAASLMLFFHVQKLVQYLWMNSRRHRLPPGPIGWPVLGALRLLGTMPHVALANMAKKYGPVMYLKVGSCGLAVASTPEAAKAFLKTLDMNFSNRPPNAGATHLAYNAQDMVFADYGPRWKLLRKLC(配列番号11);
MKNVMFPSNKLSNIHILGGKALQGWEEVRKKELGYMLYAMAESGRHGQPVVVSEMLTYAMANMLGQVMLSKRVFGSQGSESNEFKDMVVELMTVAGYFNIGDFIPSIAWMDLQGIQGGMKRLHKKFDALLTRLLEEHTASAHERKGSPDFLDFVVANGDNSEGERLQTVNIKALLLNMFTAGTDTSSSVIEWALAELLKNPIILRRAQEEMDGVIGRDRRFLEADISKLPYLQAICKEAFRKHPSTPLNLPRIASQACEVNGHYIPKGTRLSVNIWAIGRDPSVWENPNEFNPDRFLERKNAKIDPRGNDFELIPFGAGRRICAGTRLGILLVEYILGTLVHSFVWELPSSVIELNMDESFGLALQKAVPLAAMVTPRLPLHIYSP(配列番号12)
(2)複対立遺伝子H、Hに関わる、配列番号2に示す3115bpの塩基配列のF3’、5’−H DNAが翻訳する蛋白質の構造
複対立遺伝子H、Hに関わる、配列番号2に示す3115bpの塩基配列から予測されるアミノ酸配列の検討を行った結果、下記の510個のアミノ酸配列を有する蛋白質を翻訳することが分かった。この蛋白質のアミノ酸配列構造は、非特許文献7のそれと一致した。
MAVGNGVLLHIAASLMLFFHVQKLVQYLWMNSRRHRLPPGPIGWPVLGALRLLGTMPHVALANMAKKYGPVMYLKVGSCGLAVASTPEAAKAFLKTLDMNFSNRPPNAGATHLAYNAQDMVFADYGPRWKLLRKLSNIHILGGKALQGWEEVRKKELGYMLYAMAESGRHGQPVVVSEMLTYAMANMLGQVMLSKRVFGSQGSESNEFKDMVVELMTVAGYFNIGDFIPSIAWMDLQGIQGGMKRLHKKFDALLTRLLEEHTASAHERKGSPDFLDFVVANGDNSEGERLQTVNIKALLLNMFTAGTDTSSSVIEWALAELLKNPIILRRAQEEMDGVIGRDRRFLEADISKLPYLQAICKEAFRKHPSTPLNLPRIASQACEVNGHYIPKGTRLSVNIWAIGRDPSVWENPNEFNPDRFLERKNAKIDPRGNDFELIPFGAGRRICAGTRLGILLVEYILGTLVHSFVWELPSSVIELNMDESFGLALQKAVPLAAMVTPRLPLHIYSP(配列番号13)
(3)複対立遺伝子Hに関わる、配列番号3に示す2498bpの塩基配列のF3’、5’−H DNAが翻訳する蛋白質の構造
複対立遺伝子Hに関わる、配列番号3に示す2498bpの塩基配列から予測されるアミノ酸配列の検討を行った結果、下記の510個のアミノ酸配列を有する蛋白質を翻訳することが分かった。
MAVGNGVLLHIAASLMLFFHVQKLVQYLWMNSRRHRLPPGPIGWPVLGALPLLGTMPHVALANMAKKYGPVMYLKVGSCGLAVASTPEAAKAFLKTLDMNFSNRPPNAGATHLAYNAQDMVFADYGPRWKLLRKLSNIHILGGKALQGWEEVRKKELGYMLYAMAESGRHGQPVVVSEMLTYAMANMLGQVMLSKRVFGSQGSESNEFKDMVVELMTVAGYFNIGDFIPSIAWMDLQGIQGGMKRLHKKFDALLTRLLEEHTASAHERKGSPDFLDFVVANRDNSEGERLHTVNIKALLLNMFTAGTDTSSSVIEWALAELLKNPIILKRAQEEMDGVIGRDRRFLEADISKLPYLQAICKEAFRKHPSTPLNLPRIASQACEVNGHYIPKGTRLSVNIWAIGRDPSLWENPNEFNPDRFLERKNAKIDPRGNDFELIPFGAGRRICAGTRLGILLVEYILGTLVHSFDWELPSSVIELNMDEPFGLALQKAVPLAAMVTPRLPLHIYCP(配列番号14)
(4)配列番号4に示す5405bpの塩基配列のレトロトランスポゾンDNA(rTeg1)が翻訳する蛋白質の構造
配列番号4に示す5405bpの塩基配列から予測されるアミノ酸配列の検討を行った結果、下記の1591個のアミノ酸配列を有する蛋白質を翻訳することが分かった。
MSETSPNPQEPKTESSVHTTPGDLALQVAQILKDSLGSTPSQSITLPENLNVAVKLTGNNYSLWSRIIYRAILGRGRQYHLTGTPPPPLPTDPRFSRWEQDDNSVFTWILQNVDASMINNVSRYPTAKALWDGLALTYGSRGDSLQVFDLHRKANNIRQGDDTLEACWNNLQDIWVSIDTLDTNPMKCPEDISLYNQKMQEFRLYQFLTAVSDRFETEKKELLKRTPLPNVEAAFFEFKRAESQAGLIKHGPSEQISSLGIGQGLTVKPATGKGRGKGTDRSMNTIRSNNASSRMDKSNLLCEHCGKKGHSREKCFQIHGYPEWWEGKRITTGQGKTAAARTPGEGVSSNEAQMTGESREEEEQNRENPRAQGNSAAAGMGLGENPSPNPPFKSIFTPHAPHFSVLSPDPLSSSDIIFPSPSSLNFSPPSPQSSHRANMVQHTSEFTDQPHTFPISRLDTHTSPKYPFSPQPPPGLSHHIRVTPSQWIFDCGATDTMTFDPTDLLTQSPPLKSHVETASGDTIPVQASGPITITPDITLQNCLLVPSLSTKLLSISQLTKALDCVVLMYPSFCLLQDIRTQAIIGRGTENGGLYYVDAVVQHGSSNLATGTVTRQIWLWHRRLGHPSFSYLQKLFPTLFSRTLPPLTCDTCLRAKQPRATYRSNNTRVNKVFSLIHSDVWGPSPHSTPCGFKYFVIFVDDCSRMTWLYILRHKSEVATKFVEFYHMIHTQYSSTIQILRTDNGGEYFAGALQQFFRDNGIIHQTTCPDTPEQNGVAERKNRTLLEMTRALMLESSVPRFLWPEAVSTATYLSNRLPTVTLNHQTPLDVLASQTLIPSLLTLPPKVFGCTVFIHISKTHRDKLDPCAEKCVFVGYASTQKGYRCYNPRTRQIHVTLNCVFLETEFFFGTHPRSQGEIATDGYLDWLPNLSWSVADPTRQVVEPACTIAPSDNMDSIPVPTNDIPRENVLQQVNESIHDDTGSPVPFSSPPFVPNTTLDDSLTTSIAIPDPSSELDHTNPCVKEQGRTLPPRKTRGVPPDRYSPTKIARATLYPVSTSRKNLGHAAKAFFTQICSEKIPRTVDEACSQSNWRDAMIMEMDALNKNNTWERCQLPPGKRTVGCRWVFTVKYKADGTIERHKARLVAKGYTQTYGVDYSETFSPVARIDTIRVLFAIAATENWPLHQFDVKNAFLHGTLKEEVFMDPPPGFSKEFLPGQVCKLNRALYGLKQSPRAWFGRFTQAMKKDGYRQSNADHTLFIKRQGSLVTCLIIYVDDMIITGNDANEISRLRDYLFTQFEMKDLGGLKYFLGIEVLRSAEGIYISQRKYILDLLTEVGLLDAKPADTPMVQNHKLDIVQGAASADREQYQRLVGKLIYLSHTRPDIAYAVGVVSQFMHSPQKHHLEAVFRIMRYLKGTPGRGLLFKNNGHLNIEAYTDADWAGSQIDRRSTSGYFTLVGGNVVTWRSKKQKVVALSSAEAEYRGIVKGVSEVLWIRKLLQELGFPVTDPTCLMCDNKASISISENPVQHDRTKHVEIDRHFVKEKIEDGIIALPHVRSEDQLADILTKAVNGRIFEFILRKLNIVDPTIQLEGEC(配列番号15)
[実施例6]トルコギキョウの葉からヘテロ型複対立遺伝子のF3’、5’−H DNAの確認
紫とピンク色の花色を有する4系統のトルコギキョウの葉からF3’、5’−H DNAの遺伝子を抽出した。DNAの抽出、PCR、電気泳動は実施例1の方法に従った。PCRのプライマーは実施例1の図1の(R)のプライマーを用いた。
その結果を図3に示す。H、H、Hをホモで有する個体ではそれぞれ、Hホモでは配列番号1に示す8525bpの塩基配列、Hホモでは配列番号2に示す3115bpの塩基配列、Hホモでは配列番号3に示す2498bpの塩基配列に対応するそれぞれのバンドEf3、Ef2、Ef1が現れた。HとHの複対立遺伝子をヘテロ型で有する系統の電気泳動のバンドは、配列番号1に示す8525bpの塩基配列と、配列番号2に示す3115bpの塩基配列に対応する各バンドEf3とEf2を示し、一方、HとHの複対立遺伝子をヘテロ型で有する系統の電気泳動のバンドは、配列番号1に示す8525bpの塩基配列と、配列番号3に示す2498bpの塩基配列に対応する各バンドEf3とEf1を示すことが分かる(図3)。Mと1Kはマーカーを示す。
[実施例7]トルコギキョウの色素表現型、色素遺伝子型の帰属、花色測色とF3’、5’−H DNAバンドの検出
(1)トルコギキョウ市販品種の調査
園芸品種‘あすかの舞姫’、‘あずまの粧’、‘キングオブスノー’の品種について、特許文献8に記載の花色遺伝型交配法を用いて、CIELab表色系を用いて花色を測定し、高速液体クロマトグラフィーを用いてアントシアニジンの色素表現型を分析した。また、前記した実施例と同様にフラボノイド3’、5’−水酸化酵素(F3’、5’−H) DNAバンドを測定した。その結果を表1に示す。
Figure 2012044998
覆輪系の‘あすかの舞姫’と‘あずまの粧’は、共に色素表現型がPgnCyn型であったこと、及び、共に配列番号1に示す8525bpの塩基配列に対応するバンドEf3を検出したことから、色素遺伝子型がddEeHPg−CyCyDpDpであることが分かる。‘あすかの舞姫’と‘あずまの粧’は、共に赤色の花色を示した。
また、覆輪系の‘あすかの舞姫'は、明度が35.1と比較的暗く、彩度は63.1と大変鮮やかな花色を有する。また、色素角は1.5度と赤色方向の色であった。‘あずまの粧'は、明度が65.3と明るく、彩度は35.3と鮮やかな花色である。また、色素角は−1.0度と赤色方向の色であった。
八重系の‘キングオブスノー’の品種2について、色素表現型がPgn型であったこと、及び、配列番号1に示す8525bpの塩基配列に対応するバンドEf3を検出したことから、色素遺伝子型がDdeeHPg−CyCyDpDpであることが分かる。
一方、八重系の‘キングオブスノー’の品種9及び11については、色素表現型がDpn型であったこと、及び、配列番号2に示す3115bpの塩基配列に対応するバンドEf2を検出したことから、色素遺伝子型がDdeeHPg−CyCyDpDpであることが分かる。
また、八重系の‘キングオブスノー’の品種10については、色素表現型がDpn型であったこと、及び、配列番号2に示す3115bpの塩基配列と配列番号1に示す8525bpの塩基配列に対応するバンドEf2とEf3を同時に検出したことから、色素遺伝子型がDdeeHPg−CyCyDpDpであることが分かる。
‘キングオブスノー'は、明度が88〜92の範囲であって大変明るく、彩度は4〜10の範囲でありほぼ白色の花色を有する。また、色素角は93〜106度の範囲であって、黄色方向の色であった、肉眼では大変薄いクリーム色の花色であった。
このように、従来では、八重系の‘キングオブスノー’の品種9〜11の品種群で、花色遺伝型交配法により、ヘテロ型かホモ型か見分けることができなかったが、DNAバンドを検出することによって、複対立遺伝子型について、品種9及び11はHのホモ型、品種10はHのヘテロ型であることを見分けることが可能である。これら4種の‘キングオブスノー’の品種は、色素の蓄積が少なかったことからほとんどの品種がクリーム色の「白色」を示した。
(2)トルコギキョウ市販品種の自殖後代Sの調査
園芸品種‘あすかのそよ風(ASY17系統)’、‘アクロポリスホワイト(AW3系統)’、‘キャンディーオーキッド(CAO24系統)’、‘パピオンローズピンク(PRP5系統)’の品種を自殖し、後代Sについて、特許文献8に記載の花色遺伝型交配法を用いて、CIELab表色系を用いて花色を測定し、高速液体クロマトグラフィーを用いてアントシアニジンの色素表現型を分析した。また、前記の実施例と同様にフラボノイド3’、5’−水酸化酵素(F3’、5’−H) DNAバンドを測定した。その結果を表2に示す。
Figure 2012044998
‘あすかのそよ風’の自殖後代SのASY17−13系統はEf2とEf3の二つのバンドを検出し(赤紫色を示し)、ASY17−22系統はEf3のバンド(赤色)を検出した。この結果、‘あすかのそよ風’の色素遺伝子型はddeeHPg−CyCyDpDpであることが分かる。‘あすかのそよ風’の自殖後代S1のASY17−13系統は、大変鮮やかで(85.2)、赤紫色の花色(−21.7)であった。一方、ASY17−22系統は、やや鮮やかで(40.3)、赤色の花色(−1.3)であった。
‘アクロポリスホワイト’の自殖後代Sは、花色の分離がAW3−8系統と同様であり、Ef2のバンドを検出したことから、‘アクロポリスホワイト’の色素遺伝子型はddE−H−−CyCyDpDpであることが分かる。‘アクロポリスホワイト’の品種は色素蓄積が少ないことから、クリーム色の「白色」を示した。‘アクロポリスホワイト’の自殖後代S1のAW3−8系統は、CIELab測定の結果、大変明るく(92.5)、黄色方向の花色(107.0)を示した。
‘キャンディーオーキッド’の自殖後代Sは花色が分離したことから、その3種のCAO24系統を分析した。その結果、CAO24−5(クリーム色の「白色」を示した)とCAO24−6(赤色花)はEf3のバンドを検出し、一方CAO24−20(紫赤色花)はEf1のバンドを検出したことから、‘キャンディーオーキッド’の色素遺伝子型はddeeHPg−CyCyDpDpであることが分かる。‘キャンディーオーキッド’の自殖後代S1は花色が分離したことから、その3種のCAO24系統を分析した。CIELab測定の結果、CAO24−5は黄色方向の色(104.0)で、大変明るい色(90.6)を有し、CAO24−6は赤色方向の色(−3.5)で、やや鮮やかな色(23.1)を有し、CAO24−20はやや鮮やかな色(30.1)であり、赤紫色方向の色(−27.1)であった。
‘パピオンローズピンク’の自殖後代Sのは花色が分離したことからその3種のPRP5系統を分析した。その結果、PRP5−2(赤色花)とPRP5−15(赤色花)はEf3のバンドを検出し、一方PRP5−1(赤紫色花)はEf1のバンドを検出したことから、‘キャンディーオーキッド’の色素遺伝子型はddeeHPg−CyCyDpDpであることが分かる。 ‘パピオンローズピンク’のPRP5−2とPRP5−15は、明るさは明るく(61.3,55.6)、鮮やかさはやや鮮やか(39.7,49.0)であり、両者赤色方向の花色(−3.2,−5.6)であった。、一方、PRP5−1の明るさと鮮やかさ(58.4、44.6)は、前2者と同様であったが、色相は赤紫色方向の色(−14.7)を示した。
(3)トルコギキョウ野生型交雑種の調査
トルコギキョウ野生型交雑種:Eustoma grandiflorum アリゾナ系統(AZ3(Dp)7)、Eustoma grandiflorum テキサス系統(TX34)の自殖後代S〜Sについて、特許文献8に記載の花色遺伝型交配法を用いて、CIELab表色系を用いて花色を測定し、高速液体クロマトグラフィーを用いてアントシアニジンの色素表現型を分析した。また、前記した実施例と同様にフラボノイド3’、5’−水酸化酵素(F3’、5’−H) DNAバンドを測定した。その結果を表3に示す。
Figure 2012044998
Eustoma grandiflorumアリゾナ系統AZ3(Dp)7−6の花色は紫赤色であり、Ef2のバンドを検出した。色素表現型がDpn型であったことから、Eustoma grandiflorum アリゾナ系統AZ3(Dp)7−6の色素遺伝子型はddeeH−−CyCyDpDpであることが分かる。アリゾナ系統AZ3(Dp)7−6の花色は非常に暗く(26.7)、鮮やかさはとても鮮やか(82.7)で、色相は赤紫色方向の花色(−23.1)であった。
Eustoma grandiflorum テキサス系統TX34の5系統は、すべて赤色の花であり、Ef3のバンドであった。色素表現型がPgnCyn型であったことから、Eustoma grandiflorum テキサス系統TX34の5系統の色素遺伝子型はすべてddeeHPgPgCyCyDpDpであることが分かる。テキサス系統TX34の5系統は、明るさは概ね67〜85の値の範囲で明るく、鮮やかさは14〜38の値の範囲であまり鮮やかではないかやや鮮やかな範囲であり、色相は−7〜4度の範囲であり、従って、5系統の色相は概ね赤色方向の色であった。
(4)トルコギキョウ野生型交雑種の自殖後代Sの調査
トルコギキョウ野生型交雑種:Eustoma grandiflorum テキサス系統(TX61)の自殖後代Sについて、特許文献8に記載の花色遺伝型交配法を用いて、CIELab表色系を用いて花色を測定し、高速液体クロマトグラフィーを用いてアントシアニジンの色素表現型を分析した。また、前記した実施例と同様にフラボノイド3’、5’−水酸化酵素(F3’、5’−H) DNAバンドを測定した。その結果を表4に示す。
Figure 2012044998
TX61−2は、紫赤色の花色であり、Ef1のバンドであった。色素表現型がCynDpn型であったことから、TX61−2の色素遺伝子型はddeeHpgpgCyCyDpDpであることが分かる。
TX61−1は、紫赤色の花色であり、Ef1とEf3の2つのバンドを検出した。色素表現型がCynDpn型であったことから、TX61−1の色素遺伝子型はddeeHpgpgCyCyDpDpであることが分かる。
TX61−8及びTX61−11は、赤紫色の花色であり、Ef1とEf3の2つのバンドを検出した。色素表現型がPgnCynDpn型であったことから、TX61−8及びTX61−11の色素遺伝子型はddeeHPg−CyCyDpDpであることが分かる。
TX61−3、TX61−5、TX61−6、TX61−9、TX61−15の5系統は、いずれも赤色の花色であり、Ef3のバンドであった。色素表現型がCynDpn型であったことから、TX61−2の色素遺伝子型はddeeHpgpgCyCyDpDpであることが分かる。TX61の系統では、複対立遺伝子型がHを保有するものは概ね紫色から紫赤色の色相角(h)を示し(−23度〜−34度の値)、複対立遺伝子型がHTのホモ型になっているものは、概ね赤色の色相角(−1度〜4度の値)を示した。
(5)トルコギキョウ市販品種の自殖後代Sの調査
園芸品種‘ロイヤルバイオレット(RV10CR41系統)’、‘あすかの舞姫(AM1A系統)’、‘あずまの粧(AY2A9系統)’を自殖し、後代Sについて、特許文献8に記載の花色遺伝型交配法を用いて、CIELab表色系を用いて花色を測定し、高速液体クロマトグラフィーを用いてアントシアニジンの色素表現型を分析した。また、前記した実施例と同様にフラボノイド3’、5’−水酸化酵素(F3’、5’−H) DNAバンドを測定した。その結果を表5に示す。
Figure 2012044998
‘ロイヤルバイオレット’のRV10CR41の2系統は、赤紫(hが−23.5度)〜紫赤色(hが−29.7度)の花色であり、いずれもEf2のバンドであった。色素表現型がDpn型であったことから、RV10CR41の2系統の色素遺伝子型はddeeH−−CyCyDpDpであることが分かる。
‘あすかの舞姫’のAM1Aの3系統は、いずれも赤色(hが−2.2〜2.8度の範囲)の花色であり、Ef3のバンドであった。色素表現型がPgnCyn型であったことから、AM1Aの3系統の色素遺伝子型はddE−HPg−CyCyDpDpであることが分かる。
‘あずまの粧’のAY2A9の2系統は、いずれも赤色(hが−1.3と−4.3度)の花色であり、Ef3のバンドであった。色素表現型がPgnCyn型であったことから、AY2A9−12及びAY2A9−19の2系統の色素遺伝子型はそれぞれ、ddeeHPg−CyCyDpDp及びddE−HPg−CyCyDpDpであることが分かる。
(6)早見表の作成
トルコギキョウを例にとりながら、各複対立遺伝子の組み合わせから花色とフラボノイド3’、5’−水酸化酵素(F3’、5’−H)遺伝子に対応する3つのバンド、Ef1、Ef2、Ef3を知ることのできる早見表を、表6及び表7に示す。行には花粉親の配偶子を示し、列には種子親の配偶子を示す。表6は、Pg/pg、Cy/cy及びDp/dpで示される遺伝子座がPgPgCyCyDpDp又はPgpgCyCyDpDpで表される場合の組み合わせ表であり、表7は、Pg/pg、Cy/cy及びDp/dpで示される遺伝子座がpgpgCyCyDpDpで表される場合の組み合わせ表である。
例えば、一つの複対立遺伝子Hともう一つの複対立遺伝子Hが受精し、その組み合わせがHとなった場合は、表6からその色素表現型はPgnCynDpnであり、その花色は紫赤色であり、したがって、フラボノイド3’、5’−水酸化酵素(F3’、5’−H)遺伝子に対応するバンドは、Ef2とEf3の2つであることをこの早見表より速やかに知ることができる。
一方、フラボノイド3’、5’−水酸化酵素(F3’、5’−H)遺伝子に対応するバンドがEf2とEf3の2つで、花色が紫色で、その色素表現型がDpn型である場合、複対立遺伝子型の組み合わせが、H又はHのいずれかであることをこの早見表より速やかに知ることができる。
Figure 2012044998
Figure 2012044998
今回、花色遺伝子型交配法に記載の5つの複対立遺伝子型の遺伝子の構造を明らかにできた。また、それらの構造と当代及び/又は後代に遺伝される花色遺伝を明らかにできた。さらに、CIELab表色系などを用いて花色を正確に測色・数値化した上で、その色素遺伝子型と花色遺伝と遺伝子との関係を明らかにできた。これらの知見によって、本発明は、花卉の新花色作出のための実用的花色改変法と、及び/又は、花卉の開花を迎えずに早期に遺伝子を検定した上で、複対立遺伝子型を帰属し、遺伝する花色を知ることのできる、優れた実用的花色予測法を提供する。
配列番号5 人工配列の説明:プライマー
配列番号6 人工配列の説明:プライマー
配列番号7 人工配列の説明:プライマー
配列番号8 人工配列の説明:プライマー
配列番号9 人工配列の説明:プライマー
配列番号10 人工配列の説明:プライマー

Claims (4)

  1. 花卉の複対立遺伝子H、H又はその両方のエクソン部分に、配列番号4の塩基配列又はそれらの配列と60%以上の同一性を有する若しくはそれらの配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含むレトロトランスポゾンを挿入することを含む、ただし複対立遺伝子H又はHが、フラボノイド生合成の前駆物質でのB環の水酸化に関して3’,5’位の水酸化を制御し、デルフィニジン(Dpn)の生合成に関与する遺伝子である、花卉の花色を改変する方法。
  2. エクソンが第1エクソンである、請求項1に記載の方法。
  3. 花色の改変が、複対立遺伝子H又はHの機能を失い、新たに複対立遺伝子H又はHの機能を獲得することによって生じる、ただし複対立遺伝子Hが、フラボノイド生合成の前駆物質でのB環の水酸化に関して3’位の水酸化を制御し、ペラルゴニジン(Pgn)とシアニジン(Cyn)の生合成に関与する遺伝子であり、複対立遺伝子Hがフラボノイド生合成の前駆物質でのB環の水酸化に関して、ペラルゴニジン(Pgn)の生合成に関与する遺伝子である、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 花卉が、双子葉植物又は単子葉植物から選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
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