JP2012042251A - Atp法における計測値の処理方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】記計測手段によって計測された計測値を、次の(1)〜(3)の処理手法の1つ又は2つ以上の組み合わせによって処理し、該処理によって特定される前後の計測値と比較して乖離した計測値を除外又は前後の計測値に応じて変換するようにしたことを特徴とする。
(1)有限インパルス応答処理
(2)隣接する計測値の差をサンプリング時間で除した微分係数処理
(3)計測値の有効データ範囲の平均値及び分散からマハラノビス距離を求める処理
【選択図】図1
Description
発光量の計測は、光電子増倍管とコンパレータを組み合わせ、光電子増倍管に入射する光の1光子あたり1パルスを出力するフォトンカウンティング方式の光電子増倍管を使用し、発光の光量をパルスの発生数(単位はcps:Count Per Seconds)として計数する。
これは、ATPを注入する前の予め設定した期間の発光量を計測することによって求められ、その平均値をC1として記録する。
次いで、既知のATP含有量に調整した所定量のATP(以下、「標準ATP」という。)を注入した直後の予め設定した期間のATP発光試薬の発光量を計測し、最初のピーク値をC2とし、前記C1の値を減じて標準ATPの実効発光量を求め、実効発光量を標準ATPのATP濃度K1及び分注量V1で除することで計測感度である単位ATP当たりの発光係数R1を求める(式1)。
次に、C2を計測後、一定時間経過した後の予め設定した期間のATP発光試薬の発光量の平均値C3を記録し、ATP回収工程によって得られた、気中から捕集した空中浮遊菌の生菌に由来するATP(以下、「検査試料の生菌に由来するATP」という。)を注入した直後の予め設定した期間のATP発光試薬の発光量を計測し、最初のピーク値をC4とし、前記C3の値を減じて、検査試料の生菌に由来するATPの実効発光量を求める。(C3の値は、検査試料の生菌に由来するATPを注入する前の予め設定した期間の計測値の平均値となる。)
そして、先に求めた計測感度である単位ATP当たりの発光係数R1を乗じるとともに、検査試料の生菌に由来するATPの分注量V2で除して検査試料の生菌に由来するATPのATP換算量Sを求める(式2)。
さらに、検査試料の生菌に由来するATPのATP換算量Sを一生菌当たりのATP含有量の平均値(約2amol)で除算することにより検査試料の生菌に由来するATP中の平均生菌数を求め、検査試料の生菌に由来するATP中の平均生菌数を捕集した気体試料の体積で除算することにより、単位体積の気体試料に含まれる平均生菌数を求めるようにしている。
R1=(C2−C1)/(K1・V1)・・・(式1)
R1:単位ATP当たりの発光係数(cps/(amol・μL))
C1:ATPを注入する前の予め設定した期間のATP発光試薬の発光量の平均値(cps)
C2:所定量のATPを注入した直後の予め設定した期間のATP発光試薬の発光量の計測値の最初のピーク値(cps)
K1:所定量のATPの濃度(amol)
V1:所定量のATPの分注量(μL)
S=(C4−C3)・R1/V2(amol)・・・(式2)
S:気中から捕集した空中浮遊菌の生菌に由来するATPの換算量(amol)
C3:所定量のATPを注入し、一定時間経過した後の予め設定した期間のATP発光試薬の発光量の平均値(cps)
C4:気中から捕集した空中浮遊菌の生菌に由来するATPを注入した直後の予め設定した期間のATP発光試薬の発光量の計測値の最初のピーク値(cps)
V2:気中から捕集した空中浮遊菌の生菌に由来するATPの分注量(μL)
そして、光電子増倍管(PMT)からなる計測手段による発光量の計測に際して、PMTの光電面近傍での電荷の放電が主要な原因となって、静電気が発生し、前後と大きく乖離した偶発的で継続することのない値(以下、突発値という)が発生する場合がある。
この突発値は、(1)時間的に継続することなく、1秒あるいは2秒程度で本来のデータに戻る。(2)前後のデータと大きく乖離している。(3)発生する時期が特定できない。という特徴があり、ATPの発光量の計測を行うときに突発値が発生すると、上述した平均値C1、C3(背景ノイズの平均値)の値、場合によっては、ATP発光試薬の発光量のピーク値C2、C4の値を正確に測定することができず、空中浮遊菌の菌数を算出するために必要な、発光計数(R1)やATPの換算量(S)を正確に求めることができない場合があるが、従来のATP法においては、計測中に突発値が発生しても、計測値の処理方法としてなんら突発値に対処する計測値の処理方法が採用されていないという問題があった。
そして、ATP発光試薬の発光量の計測において計測できる最小計測値は、計測手段の内部ノイズと計測値との間に有意な差が認識できる値となるが、背景光として計測する値は、PMTの他に発光試薬と試料を反応させる容器の自家発光の光としての計数値と、容器に生じる誘電分極を含む静電気を光電子増倍管が検出する計数値との合計値となり、これら背景光のノイズ(背景ノイズ)が大きくなるとATP発光試薬の発光量の計測において計測できる最小計測値が大きくなり、精密な計測(ダイナミックレンジの広い計測)を行うことができないという問題があった。
(1)有限インパルス応答処理
(2)隣接する計測値の差をサンプリング時間で除した微分係数処理
(3)計測値の有効データ範囲の平均値及び分散からマハラノビス距離を求める処理
このATP法における計測値の処理方法は、計測手段によって計測した所定量のATPを注入した後のATP発光試薬の生物発光反応による発光量の計測値の最初のピーク値Bから所定量のATPを注入する前の予め設定した期間Aの計測値の平均値を減じた値と、検査試料の生菌に由来するATPを注入した後のATP発光試薬の生物発光反応による発光量の計測値の最初のピーク値Dから検査試料の生菌に由来するATPを注入する前の予め設定した期間Cの計測値の平均値を減じた値とを比較して、検査試料の生菌の数を算出するようにしたATP法における計測値の処理方法であって、計測手段によって計測された計測値を、次の(1)〜(3)の処理手法の1つ又は2つ以上の組み合わせによって処理し、処理によって特定される前後の計測値と比較して乖離した計測値を除外又は前後の計測値に応じて変換するようにしている。
(1)有限インパルス応答フィルタによる処理
(2)隣接する計測値の差をサンプリング時間で除した微分係数処理
(3)計測値の有効データ範囲の平均値及び分散からマハラノビス距離を求める処理
対数変換は必ずしも行う必要はないが、対数変換を行うことによって周知の通り、取り扱う値の処理の利便性が向上し、広いレンジで背景ノイズから突発値を特定し、処理(分離等)することができる。
特に、単純なフィルタリング処理では分離することが困難なATPの発光反応の前後に発生することがある、尖頭値がATPの発光反応のピーク値の2倍前後の突発値に対して有効に処理することができる。
有限インパルス応答フィルタは、カットオフ周波数を、サンプリング周波数の10分の1の周波数よりも低い周波数を直流を含めて遮断し、それよりも高い周波数だけを通過させる設定にする。
一般式としては、
g(m)=Σh(k)・f(m−k)(K=0→p)・・・(式3)
f(m):入力データ
g(m):出力データ
h(k):フィルタ計数
として表される。
これにより、サンプリング周波数1Hzであれば、0.1Hz以上だけを通過させることとなる。このとき、フィルタ次数は、高次数とすることが望ましいが、高次数にした場合、計算時間の遅延、メモリの大量消費という問題が生じることとなるため、25次以上で31次以下程度が望ましい。
これを(データ個数−フィルタ長)まで繰り返した後、着目範囲で基準値との比較を行うが、高域通過フィルタを通した突発値の特徴として、突発値の発生点で正の突出した値になり、正の突出した値の前後に負の突出した値が対称に発生することとなる。
このため、基準値との比較は、連続する正の突発値及び負の突発値の両方が基準値と比較して基準値以上又は基準値以下であれば突発値の処理を行う。
これにより、突発値として特定された計測値を、前後の計測値に応じた最適な値に置き換えて、計測値から突発値を分離することができる。
このグラフからも明らかなように、正の突出した値の前後に負の突出した値が対称に発生し、突発値を容易に特定し、処理することができる。
なお、有限インパルス応答フィルタ処理では、フィルタ次数の1/2に相当する遅延は、補正した結果に対して元のデータとフィルタ計算後の突発値を比較するようにしている。
ここで、所定量のATP発光の場合、数値が徐々に小さくなるため、FIRフィルタ処理した結果は、発光開始の点から2〜3秒間は大きな値を示すが、この突出した値は非対称となり、正の突出した値の後に、負の突出した値は表れない。
微分係数法による突発値の処理は、図5に示すフロー図に沿って行われるもので、隣接する2つの計測値の差をサンプリング時間で除したものを微分係数として計算する。
突発値が発生した点での微分係数は、正の大きな値と負の大きな値とが対となって出現する。これに対して、所定量のATPの注入にあわせて急激に発光反応が進む場合、正のピーク値は、2秒〜3秒に亘って発生し、発光の減衰は半減期が数分以上のグロー発光では、正の2秒〜3秒のピーク値の後に負の大きな値は現れることはないが、突発値は正と負の大きな値が対で現れる。
このため、微分係数が、正とそれに続く負の突発的な値として基準値を超えるか否かを判定することで、突発値を特定することができる。
突発値として特定した計測値の処理は、有限インパルス応答フィルタによる突発値の処理と同様に、突発値の前後の計測値の中間値に置き換えるようにしている。
計測値の中に突発値が含まれる場合には、グラフに示すように、正の大きな値と負の大きな値とが対となって出現する。
対数距離法による突発値の処理は、図7に示すフロー図に沿って行われるもので、最初に有効データ範囲を決定する。
有効データの範囲は、特に限定するものではないが、本実施例においては、所定量のATPを注入する前の予め設定した期間(背景ノイズ)の計測に対する処理の場合は、予め設定した期間となり、例えば、所定量のATPを注入する前の30秒の期間(図1に示す期間Aの範囲)とする。
そして、所定量のATPを注入した後のATP発光試薬の生物発光反応による発光量の計測に対する処理の場合は、計測値がピーク値を超えてから20秒間の期間(図1に示すピーク値Bから20秒の範囲)とする。
また、検査試料の生菌に由来するATPを注入する前の予め設定した期間(背景ノイズ)の計測に対する処理の場合は、所定量のATPの場合と同様に、予め設定した期間となり、例えば、検査試料の生菌に由来するATPを注入する前の30秒の期間(図1に示す期間Cの範囲)とし、検査試料の生菌に由来するATPを注入した後のATP発光試薬の生物発光反応による発光量の計測に対する処理の場合は、ATPを注入した後の20秒間の期間(図1に示すピーク値Dから20秒の範囲)とする。
一方、終点は、計測データの最後から前方に向かって計測値の検索を行い、基準値を超える値を有効範囲の終点として有効データ範囲を決定する。
平均値は式4、分散は式5から、一般的な統計量として求められ、マハラノビス距離は式6によって求められる。
また、ATP発光試薬の生物発光反応による発光量の計測値に関しても、半減期が数分で指数関数的に減衰する発光量の計測値は、片対数グラフで直線的に減衰し、半減期の数分に対して30秒程度の期間で見れば突発値として現れる計測値と距離で分離することができ、突発値とATP発光試薬の生物発光反応による発光量の計測値のピーク値とを区別することができる。
距離は正の値だけとなるため、平均値に対して一定以上距離の離れたデータを突発値として処理することができる。
これに対して、微分係数法では、単独に出現する突発値の特定には有効であるが、所定量又は検査試料の生菌に由来するATPの注入に同期した立ち上がり部分に突発値が重畳した場合、突出値とATP発光試料のピーク値(尖頭値)の差が少ない場合には、それらを区別して、突発値を分離することが困難となる。
このATP法における計測値の処理方法は、所定量のATP又は検査試料の生菌に由来するATPを注入する前の予め設定した期間の発光量の計測値の分散と、発光量の計測期間のうち任意の移動平均期間における発光量の計測値の分散とを比較し、移動平均期間の計測値の分散の方が小さい場合には、前記予め設定した期間の発光量の計測値を、移動平均区間の値に置き換え、移動平均期間の計測値の分散の方が大きい場合には、両者の分散の比に応じて、前記予め設定した期間の発光量の計測値を、計測値と移動平均期間の計測値との間の値に置き換えるようにしている。
これによって、背景ノイズを低減し、発光量の計測のダイナミックレンジを拡張することができる。
まず、背景光の領域を特定し(図1に示す、期間A及び期間C)、係る領域における計測値の平均値及び分散を求める。
平均値は式7、分散は式8によって求められる。
そして、移動平均期間の計測値の分散の方が小さい場合には、特定した背景光の領域の計測値を、移動平均区間の値に置き換える。
また、移動平均期間の計測値の分散の方が大きい場合には、両者の分散の比に応じて、特定した背景光の領域の計測値を、式9によって求められる計測値と移動平均期間の計測値との間の値に置き換える。
一方、ベースラインである背景光に近い領域では計数a(i)はゼロに近くなり、推定値は単純平均に値に近づくこととなる。
標準ATPを注入した後の2秒以内に尖頭値に達する発光で背景光から大きく乖離した発光反応のデータでは、推定値は計測値とほぼ同じ値となっているが、背景光の部分では期間の移動平均に置換することができる。
背景光部分と信号成分であるATPの発光部分のデータの分離には、背景光のノイズに信号が埋没しないようにすることが必要となり、ノイズ部分の平均値にノイズの標準偏差の2倍〜3倍の値を加算した値以上の信号成分が無いとデータの信頼性の観点から分離が困難となる。
そのため、ノイズ部分の標準偏差を、移動平均により1/2〜1/3に低減することで発光量の計測の感度を同一としながら最小計測値の検出限界を、ノイズの標準偏差の低減率に比例して低減させることができ、発光量の計測のダイナミックレンジを拡張することができる。
図11は、ATP法における計測値の処理方法における突発値処理手法と背景光の分散低減方法の両方を行う場合のフローを示す。
この場合、突発値の処理を先に行い、その後で背景光の低減を行う。これは、適応化平滑化法ではベースラインから離れた突発値に対してはフィルタ処理効果がないため、突発値を先に処理する必要がある。
B ピーク値
C 期間(背景光の領域)
D ピーク値
Claims (4)
- 計測手段によって計測した所定量のATPを注入した後のATP発光試薬の生物発光反応による発光量の計測値の最初のピーク値から所定量のATPを注入する前の予め設定した期間の計測値の平均値を減じた値と、検査試料の生菌に由来するATPを注入した後のATP発光試薬の生物発光反応による発光量の計測値の最初のピーク値から検査試料の生菌に由来するATPを注入する前の予め設定した期間の計測値の平均値を減じた値とを比較して、検査試料の生菌の数を算出するようにしたATP法における計測値の処理方法において、前記計測手段によって計測された計測値を、次の(1)〜(3)の処理手法の1つ又は2つ以上の組み合わせによって処理し、該処理によって特定される前後の計測値と比較して乖離した計測値を除外又は前後の計測値に応じて変換するようにしたことを特徴とするATP法における計測値の処理方法。
(1)有限インパルス応答処理
(2)隣接する計測値の差をサンプリング時間で除した微分係数処理
(3)計測値の有効データ範囲の平均値及び分散からマハラノビス距離を求める処理 - 特定した計測値を、該計測値の前後の計測値の中間値に置き換えるようにしたことを特徴とする請求項1記載のATP法における計測値の処理方法。
- 計測手段によって計測した所定量のATPを注入した後のATP発光試薬の生物発光反応による発光量の計測値の最初のピーク値から所定量のATPを注入する前の予め設定した期間の計測値の平均値を減じた値と、検査試料の生菌に由来するATPを注入した後のATP発光試薬の生物発光反応による発光量の計測値の最初のピーク値から検査試料の生菌に由来するATPを注入する前の予め設定した期間の計測値の平均値を減じた値とを比較して、検査試料の生菌の数を算出するようにしたATP法における計測値の処理方法において、所定量のATP又は検査試料の生菌に由来するATPを注入する前の予め設定した期間の発光量の計測値の分散と、発光量の計測期間のうち任意の移動平均期間における発光量の計測値の分散とを比較し、移動平均期間の計測値の分散の方が小さい場合には、前記予め設定した期間の発光量の計測値を、移動平均区間の値に置き換え、移動平均期間の計測値の分散の方が大きい場合には、両者の分散の比に応じて、前記予め設定した期間の発光量の計測値を、該計測値と移動平均期間の計測値との間の値に置き換えるようにしたことを特徴とするATP法における計測値の処理方法。
- 請求項1又は2記載のATP法における計測値の処理方法と、請求項3記載のATP法における計測値の処理方法を併用することを特徴とするATP法における計測値の処理方法。
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