JP2012040610A - アルミニウム合金材を用いた構造体とその接合方法 - Google Patents

アルミニウム合金材を用いた構造体とその接合方法 Download PDF

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Abstract

【課題】接合前後の寸法あるいは形状の変化が殆ど無く、また、ろう材あるいは溶加材のような接合部材を使用することなく被接合部材同士が接合するアルミニウム合金材を用いた構造体とその接合方法を提供する。
【解決手段】アルミニウム合金材を一方の被接合部材とし、他方の被接合材としてアルミニウム合金材、純アルミニウム材及びアルミニウム以外の金属材のいずれかを用い、前記一方の被接合部材と前記他方の被接合部材とを接合部材を用いることなく接合した構造体において、前記一方の被接合部材であるアルミニウム合金材が、Si:1.5%〜5.0%、Mg:0.3%〜2.0%を含有し、残部Al及び不可避不純物からなり、接合前と接合後の当該構造体の寸法および形状が略同一であることを特徴とする構造体。
【選択図】図1

Description

本発明は、接合前後の寸法あるいは形状の変化が殆ど無く、また、ろう材あるいは溶加材のような接合部材を使用することなく被接合部材同士が接合するアルミニウム合金材を用いた構造体とその接合方法に関するものである。
下記の特許文献1非特許文献1に記載されるように、自動車用熱交換器を代表とするブレージング法で製造する構造体は、従来Al-Si合金からなるろう材をクラッドしたブレージング材を用いるか、ろう材を別途塗って、それらをろう付加熱することにより製造されていた。しかし、クラッド材を製造するには各層を別々に製造し、さらにそれを合わせる工程が必要であり、ブレージング材の製造は非常にコストがかかる。また、別途ろう材を塗布する場合もコストがかかっていた。
特開2009−161835公報 アルミニウムブレージングハンドブック(改訂版)、p.20−26、社団法人軽金属溶接構造協会(2003年)
従来、熱交換器を始め各種構造体の製造においては、様々なブレージング法が開発されてきた。例えば車載用熱交換器においては、フィン材を単層で用いる場合はチューブ材にろう材をクラッドしたブレージング材を使用したり、チューブに別途Si粉末やSi含有ろうを塗布したりする必要があった。あるいはタンク材を単層とした場合は表面にろう材をクラッドしたフィン材を使用するのが一般的であった。このようにすべてを単層の材料のみで製造することができず、コストダウンが困難であった。
また、ブレージング法においては、接合部材であるろう材が溶融し、被接合部材の隙間に流動、充填することで接合を可能とする。そのため、熱交換器をはじめとした構造体の設計においては、ろう材が溶融、流動することを考慮することが必要である。例えば、ブレージングシートのろう材のクラッド率が片面5%である場合、ろう材が流動すると最大で10%の寸法変化が生じる可能性がある。しかし、ろう材の流動はろう付加熱時の熱の分布や隙間や接合部の形状に影響されるため均一ではなく、接合前後の寸法変化を正確に予測することが困難である。従って、従来の接合方法を用いた構造体の設計において、接合後の寸法誤差を考慮する必要があるため、精密な寸法精度や清浄な表面品質が要求される構造体の製造には不向きであった。
本発明者らは、鋭意検討の結果、以下の成分を有する被接合部材であるアルミニウム合金材を用いた構造体を、特定の条件で接合し組み立てる場合、ろう材のような接合部材を用いることなく接合することが可能であることを見出したものである。
すなわち、請求項1に記載の第1の発明は、アルミニウム合金材を一方の被接合部材とし、他方の被接合部材としてアルミニウム合金材、純アルミニウム材及びアルミニウム以外の金属材のいずれかを用い、前記一方の被接合部材と前記他方の被接合部材とを接合部材を用いることなく接合した構造体において、前記一方の被接合部材であるアルミニウム合金材が、Fe:0.1質量%〜1.0質量%(以下、質量%は単に%と記す。)、Mn:0.3%〜1.8%およびSi、Mn、Feの含有量(質量%)をそれぞれS、M、Fとしたとき、1.2≦S−0.3×(M+F)≦3.5の関係を満足するSiを含有し、残部Alおよび不可避的不純物からなり、接合前と接合後の当該構造体の寸法および形状が略同一であることを特徴とする構造体である。
請求項2記載の第2の発明は、請求項1に記載の構造体において、前記一方の被接合部材であるアルミニウム合金材の成分としてさらにZn:0.1%〜0.8%、Mg:0.1%〜0.8%、Cu:0.3%〜0.8%、Ti:0.05%〜0.2%、V:0.05%〜0.2%、Be:0.0001%〜0.01%、Sr:0.0001%〜0.01%、Bi:0.0001%〜0.01%、Na:0.0001%〜0.01%、Ca:0.0001%〜0.01%のうち1種または2種以上含むことを特徴とする構造体である。
請求項3記載の第3の発明は、請求項1または請求項2に記載の構造体において、前記一方の被接合部材であるアルミニウム合金材の接合後に長径3μm以上の球状の共晶組織が断面で500個/mm以下存在することを特徴とする構造体である。
請求項4記載の第4の発明は、請求項1〜請求項3に記載の構造体の接合方法において、前記一方の被接合部材であるアルミニウム合金材の全質量に対する当該アルミニウム合金材内に生成する液相の質量の比が0%を超え35%以下となる温度で接合することを特徴とする構造体の接合方法である。
請求項5記載の第5の発明は、請求項4に記載の構造体の接合方法において、前記一方の被接合部材であるアルミニウム合金材の固相線温度と液相線温度の差が10℃以上であることを特徴とする構造体の接合方法である。
請求項6記載の第6の発明は、請求項4または請求項5に記載の構造体の接合方法において、接合前に対する接合後の寸法変化が5%以下であることを特徴とする構造体の接合方法である。
本発明に係るアルミニウム合金材を用いた構造材は、当該アルミニウム合金材内部に一部生成した液相を利用して接合を行うものであり、本アルミニウム合金材を使用することで、単層材でも接合が可能となり、チューブ、タンク、フィン、プレートなどを組み合わせた構造材を、ブレージング材を使用せずに製造することができる。単層材を使用できるため、従来の2層以上のクラッド材を用いていた熱交換器などと比較して極めて安価に構造体を得ることができる。
また、ろう材等の接合部材を利用することなく接合を行うため、接合前後での寸法、形状変化が殆どなく、熱交換器等の設計精度が向上するとともに、精密な寸法精度が要求される構造体を量産製造することが可能である。
ろうの染み出しのメカニズムを示す模式図である。 接合後の一方の被接合部材のチューブ長手方向に平行な断面における球状共晶組織の金属組織写真である。 実施例のテストピースに用いたチューブ形状の模式図である。 実施例1の3段積みのテストピース(ミニコア)の外観図である。 接合率、ならびに、接合による変形率を測定するための試料を示す斜視図である。 接合率、ならびに、接合による変形率の測定方法の説明図である。
以下に、本発明の詳細な説明を示す。
本発明に用いる被接合部材であるアルミニウム合金材は、Fe:0.1%〜1.0%とMn:0.3%〜1.8%およびSi、Mn、Feの含有量をそれぞれS、M、Fとして1.2≦S−0.3×(M+F)≦3.5の関係を満足するSiを含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金である。
該アルミニウム合金材を成形してチューブ、タンクなどの構造体を作製し、600℃程度の温度に熱処理を行うと、該アルミニウム合金材の内部の一部から液相が生成し、それが材料表面に染み出してきて接合が可能となる。
図1に本発明の接合メカニズムである液相の染み出しを模式的に示す。固相線温度より高い温度に加熱されると金属間化合物等の偏析の多い結晶粒界がまず溶融し、次いでマトリクス(アルミニウム材料中で、金属間化合物を除いた部分)中に分散するSi粒子周辺が溶融する。Siの添加量が多いと分散するSi粒子の数が多く、マトリクス内部に多くの球状の液相が存在することになる。加熱温度が高くなると球状の液相は体積を増すが、直接粒界に触れるかあるいは固体内でのSi拡散によって粒界に液相が移動する。これが粒界を伝って材料表面に染み出し、他方の被接合部材との隙間に充填されて接合が可能となる。液相が外部に流出すると球状の液相は次第に収縮していき、最後は消滅する。一方、球状に溶融した液相が外部に染み出さず残存すると冷却後は図2に示すように球状の共晶組織がマトリクスの結晶粒内に多数分散した組織となる。
材料の強度は未溶融のマトリクスと液相に寄与しない金属間化合物が担っている。そのため、本発明に係る構造体は接合の前後で寸法や形状の変化が殆どない。
Si粒子の量はSi添加量が多いほど多くなるが、Fe、Mnが共存する場合、Fe、Mn系の金属間化合物にSiが取り込まれる。そのため接合に有効に機能するSi粒子の量はSi、Fe、Mnの添加量(それぞれ、質量%でS、F、Mとする)に依存する。すなわち液相が染み出して接合を可能とするためには1.2≦S−0.3×(M+F)≦3.5の関係式を満たす量のSiが必要となる。「S−0.3×(M+F)」の値が1.2未満の場合は充分な液相の染み出しが無く、接合が不完全となる場合が多い。一方、3.5を越えるとアルミニウム合金材中のSi粒子が多くなり、液相の生成量が多くなるため、加熱中の材料強度が極端に低下し、構造体の形状維持が困難となる。従って、Si、Mn、Fe量を上記の式で規定する。なお、染み出す液相の量は板厚が厚く、加熱温度が高いほど多くなるが、加熱時に必要とする液相の量は構造体の形状に依存するので、必要に応じてSi量や接合温度を調整することが望ましい。例えば板厚が厚い部材や、加熱時に高温になりやすい部材ではこの値を低めに設定したほうが良好な接合結果が得られる。
Fe及びMnの個別の設定は、Fe:0.1%〜1.0%、Mn:0.3%〜1.8%とする。Feは不純物として入っている他、添加することによって強度増大、再結晶粒の微細化の効果がある。0.1%未満にするとこの効果が小さいばかりでなく、高純度の地金を使用する必要があり、コストがかかる。一方、1.0%を超えるとカソードとなる晶出物が増え、耐食性が悪化する。したがってFe量は0.1%〜1.0%と規定する。Mnは耐食性を下げずに強度を高めることができるが、その添加量が0.3%未満の場合は加熱時の強度低下が大きく、形態の保持が困難となる。一方、1.8%を超えると晶出物が粗大化しやすく、成形性、耐食性が悪化する。したがってMn量は0.3%〜1.8%と規定する。
本発明のアルミニウム合金材としての基本的な機能を果たすためにはSi量を規定すればよいが、さらに耐食性や強度を向上させるためには、他の元素を単独、もしくは複数添加すると良い。以下に各選択添加元素について述べる。
Znは耐食性を向上させるために有効である。Znはマトリクス中にほぼ均一に固溶しているが、液相が生じるとその中に溶け出して、液相内にZnが濃化する。液相が表面に染み出すと、その部分はZn濃度が上昇するため、犠牲陽極作用によって耐食性が向上する。この効果はZn量0.1%未満では小さく、0.8%を超えるとマトリクスに残存するZn量が多くなり、表面との電位差が不十分となり、有効な犠牲防食が働かない。したがって、Znは0.1%〜0.8%添加することが望ましい。
Mgは加熱後、時効硬化するため強度向上の効果が特に大きいが、0.1%未満ではMgSiの時効硬化がほとんど起こらず添加の効果が現れない。また、0.8%を超えて添加すると、接合にフラックスを用いた場合、該フラックスと反応して、高融点の化合物を形成するため著しく接合性が低下する。なお、Mgを添加した場合は、Mgのゲッター作用によってフラックスを用いずに接合をおこなうことも可能であるが、この場合、接合部の密着性をより厳しく管理することが望ましい。Mgの添加量は0.1%〜0.8%とするのが好ましい。
Cuは固溶して強度向上させるが、0.3%未満では強度向上効果がほとんど見られず、0.8%を超えると耐食性が低下する。従って、Cuの添加量は0.3〜0.8%とするのが好ましい。
TiおよびVは固溶して強度向上させる他に、層状に分布して板厚方向の腐食の進展を防ぐ効果がある。この効果は0.05%未満ではほとんど見られず、0.2%を越えると巨大晶出物が発生し、成形性、耐食性を阻害する。従って、Ti、Vの添加量はそれぞれ0.05〜0.2%とするのが好ましい。
また、必要に応じてBe:0.0001%〜0.01%、Sr:0.0001%〜0.01%、Bi:0.0001%〜0.01%、Na:0.0001%〜0.01%、Ca:0.0001%〜0.01%を添加しても良いが、これらの微量元素はSi粒子の微細分散、液相流動性向上等によって接合性を改善することができる。規定範囲以下ではその効果が小さく、規定範囲を超えると耐食性低下などの弊害を生じる場合がある。
なお、上記Zn、Mg、Cu、Ti、V、Be、Sr、Bi、Na、Caは1種又は2種以上を添加しても良いが、各添加成分のいずれもが上記成分範囲内にあることを必要とする。
本発明に係るアルミニウム合金材を製造するにあたっては、通常のDC鋳造、均質化処理、熱間圧延、冷間圧延、焼鈍を行えばよく、用途に応じて調質をおこなう。通常はエロージョン防止のためにH1nないしはH2n調質とするが、形状や使用方法によっては軟質材を使用しても良い。また、DC鋳造法ではなく双ロールまたはベルトキャスターなどを用いた連続鋳造法を行ってもよく、その場合はSi粒子が微細で密に分布するため、液相が生成しやすく良好な接合性が得られる。
本発明に係る構造体を製造する場合、上記組成を有する一方の被接合部材であるアルミニウム合金材と他方の被接合部材を組み合わせ、加熱処理を施す。その際に加熱雰囲気は窒素で置換した非酸化性雰囲気等が好ましい。また、非腐食性フラックスを使用することでさらに良好な接合性を得ることができる。加熱条件としては、本発明に係るアルミニウム合金材内部に液相が生成する固相線温度以上液相線温度以下であり、かつ該アルミニウム合金材内部に生成する液相量が多くなり、強度が低下して形状を維持できなくなる温度以下の温度で、0〜10分程度保持する。本発明に係る上記アルミニウム合金の場合、580℃〜620℃で3〜10分程度とすれば良いが、組成によって加熱条件を調整し、冷却後に長径3μm以上の球状共晶組織が、断面で500個/mm以下存在するようにするのが好ましい。
本発明の場合、前述のSi粒子周辺が球状に溶融した部分がマトリクス内にある程度残存し、図2に示すように球状の共晶組織がマトリクスの結晶粒内に多数分散した組織となる。この球状共晶組織が少ないほど、染み出した液相量が多かったことなる。良好な接合性と接合時の材料強度のバランスが取れた場合、接合後に長径3μm以上の球状共晶組織が断面で500個/mm以下であることを見出した。この球状共晶組織が500個/mmを超える場合、接合に寄与した液相が少なく、接合性が低下することになる。例えば被接合部材であるアルミニウム合金材の板厚が厚い場合や、接合時の温度が高温になりやすい部分に配置されたアルミニウム合金部材ではSi量を低く設定しても充分な液相量が確保できる。従って、接合後の組織を観察し、球状共晶組織の数密度を測定し、断面で500個/mm以下であるように予め被接合部材であるアルミニウム合金材の成分範囲で調整することで、良好な接合性を得ることができる。なお、断面とは、アルミニウム合金材の任意の断面であり、例えば厚さ方向に沿った断面でもよく、板材と平行な断面でもよい。
本発明に係る構造体を製造するための接合方法においては、被接合部材であるアルミニウム合金材の全質量に対する当該アルミニウム合金材内に生成する液相の質量の比(以下、液相率と記す。)が0%を超え35%以下となる温度で接合する必要がある。液相率が35%を超えると、生成する液相の量が多過ぎて、接合加熱時にアルミニウム合金材は大きく変形してしまい形状を保てなくなる。一方、液相が生成しなければ接合ができないので液相率は0%より多いことが必要である。ただし、液相が少ないと接合が困難となる場合があるため、好ましい液相率は5〜35%である。さらに、この5〜35%の範囲の液相率を30秒以上3600秒以下保つことにより、一層確実な接合を得ることができる。
加熱中における実際の液相率を測定することは、極めて困難である。そこで、本発明で規定する液相率は状態図を利用して組成と温度の平衡計算によって求めるものとする。具体的には、平衡状態図計算ソフト(Thermo−Calc;Thermo−Calc Software AB社製)によって合金組成と加熱時の最高到達温度から計算される。
上記の条件を満たすことで必要な接合特性を得ることできるが、中空部があり、比較的脆弱な構造体を形成する場合においては、構造体内に発生する応力が高すぎると構造を維持できない場合がある。特に液相率が大きい場合は比較的小さな応力に留めたほうが良好な形状を維持できる。液相が生成する被接合部材内に発生する応力のうちの最大値をP(kPa)、液相率をV(%)とした場合、P≦460−12Vの条件を満たせば、非常に安定した接合が得られる。なお、両被接合部材から液相が発生する場合は、両被接合部材各々に対して、各々の応力P、液相率Vを用いてP≦460−12Vを算出し、両被接合部材ともこの式を同時に満たすように接合を行う。各被接合部材内の各部位に発生する応力は、形状と荷重から求められる。例えば、構造計算プログラムなどを用いて計算する。
接合部の圧力と同様に接合部の表面形態も接合性に影響を与え、両面が平滑なほうがより安定した接合が得られる。本発明においては、接合前の両被接合部材の接合面の表面の凹凸から求められる算術平均うねりWa1とWa2の和が、Wa1+Wa2≦10(μm)を満たす場合には、更に十分な接合が得られる。なお、算術平均うねりWa1、Wa2は、JISB0633で規定されるものであり、波長が25〜2500μmの間で凹凸となるようカットオフ値を設定し、レーザー顕微鏡やコンフォーカル顕微鏡で測定されたうねり曲線から求められる。
また、本発明に係る接合方法では、液相を生成するアルミニウム合金材の固相線温度と液相線温度の差を10℃以上とするのが好ましい。固相線温度を超えると液相の生成が始まるが、固相線温度と液相線温度の差が小さいと、固体と液体が共存する温度範囲が狭くなり、発生する液相の量を制御することが困難となる。従って、この差を10℃以上とするのが好ましい。例えば、この条件を満たす組成を有する2元系の合金としては、Al−Si系合金、Al−Cu系合金、Al−Mg系合金、Al−Zn系合金、Al−Ni系合金などが挙げられ、これら共晶型合金は固液共存領域を大きく有するので本接合方法に有利である。しかしながら、他の全率固溶型、包晶型、偏晶型などの合金であっても、固相線温度と液相線温度の差が5℃以上であるなら接合が可能となる。また、上記の2元系合金は主添加元素以外の添加元素を含有することができ、実質的には3元系や4元系合金、更に5元以上の多元系の合金も含まれる。例えばAl−Si−Mg系やAl−Si−Cu系、Al−Si−Zn系、Al−Si−Cu−Mg系などが挙げられる。
なお、固相線温度と液相線温度の差は大きくなるほど適切な液相量に制御するのが容易になる。従って、固相線温度と液相線温度の差に上限は特に設けない。
本発明においては、接合前後において構造体の寸法や形状が殆ど変化しない。これは前述のメカニズムに従い、接合に寄与する液相が被接合部材であるアルミニウム合金材内部に生成するものの、マトリクスや液相の生成に寄与しない金属間化合物により、加熱中に被接合部材の形状が維持されるためである。従って、本発明における接合前後の寸法変化は5%以下とする。5%以下であれば、寸法精度の良好な構造体を製造することが可能である。
なお、本発明に係る構造体の耐食性を向上させるために、表面にZn溶射やZn置換フラックス塗布を行っても良く、さらに加熱処理後にクロメート処理やノンクロメート処理などの表面処理を実施して耐食性向上を図っても良い。
本発明材を用いることによって、多くの接合部を有し、かつ寸法精度のよい構造体を得ることができる。例えば本発明に係るアルミニウム合金板でチューブとタンクを作製し、さらに単層のフィン(ベアフィン)と組み合わせ、所定の加熱を施すことで、すべて単層材で構成される熱交換器とすることができる。また板をプレス成形し、積層することでラミネートタイプの熱交換器も製造することができる。その他、積層構造をもったオイルクーラー、埋め込みフィンを持ったヒートシンクなどにも応用することができる。このようなすべて単層材からなる構造体は高温での剛性が従来材より低下する場合があるので、加熱の際は、鉄などの高温に耐える材質のジグにセットするとより寸法精度の高いものを得ることができる。
以下に、本発明を本発明例と比較例に基づいて詳細に説明する。
(本発明例1〜9および比較例10〜22)
表1に示すT1〜22までの組成の材料を80mm×200mm×200mmの金型で鋳造し、面削、加熱し3mm厚まで熱間圧延した。その後、0.4mmまで冷間圧延し、中間焼鈍後、0.3mmまでさらに冷間圧延して供試材とした。供試材の算術平均うねりWaは約0.5μmであった。なお、表1において「−」は検出限界以下であることを示す。
表2には、所定の加熱温度での平衡液相率も示した。なお、平行液相率は、Thermo−Calcによる計算値である。
供試材を曲げて図3に示す幅18mm、高さ3mm、長さ60mmのチューブとした。これにF1(表1)の組成で、算術平均うねりWaが0.3μmで板厚0.07mmのフィン材を高さ7mm、ピッチ3mmにコルゲート成形したものと組み合わせ、ステンレス製のジグに組み込み、図4に示す3段積みのテストピース(ミニコア)を作製した。このミニコアの場合、ステンレスジグとアルミニウムの熱膨張率の差でろう付け時には約4Nの圧縮荷重が生じ、接合面積から計算すると約の接合面には約10kPaの応力が生じていることになる。
Figure 2012040610
このミニコアを非腐食性の弗化物系フラックスの10%懸濁液に浸漬、乾燥後、窒素雰囲気の炉中で接合加熱処理を行った。加熱処理の工程は、600℃まで昇温しその温度で3分保持した後、窒素雰囲気中で300℃まで冷却とした。なお、昇温速度は、520℃以上において10℃/分とした。その後、完成したミニコアについて外観からチューブのつぶれの有無を確認するとともにミニコアの中央段のフィンとの接合部50箇所を調べ、完全に接合している箇所の比率(接合率)を測定した。なお、ここではチューブのつぶれを有りと判断する基準を、チューブの高さが1.5mm以下になっていた場合とした。
さらに同じ箇所の断面組織を観察し、長径3μm以上の球状共晶組織の数密度を測定した。
さらにつぶれずに完成したミニコアについてはCASS試験を500h、1000h行い、チューブを貫通する腐食の有無、フィン剥がれの有無を確認した。表2に結果を示す。
Figure 2012040610
本発明例1〜9はいずれも本発明で限定する条件を満たしており、80%以上の良好な接合率が得られており、球状共晶組織の数も0〜500個/mmの範囲にあった。また、CASS試験500h後はいずれの材料もチューブの貫通、フィン剥がれが無く、良好な耐食性を有していた。さらにZnを所定の範囲で添加した実施例3、4、6、9はCASS1000hでも貫通腐食がなく、より耐食性が優れていた。さらに、チューブ潰れもなかった。
一方、発明範囲を外れた組成を有する比較例10〜22は球状共晶組織の数は0〜500個/mmの範囲にあったものの何らかの不具合が生じた。比較例10、11は「S−0.3×(M+F)」の値が1.2より小さく、接合加熱中に液相が生じなかったため、フィンの接合がなされなかった。一方、この値が3.5を超えている比較例12、13は加熱時に形状が保持できず、チューブ潰れが生じた。Fe、Mnがそれぞれ発明範囲以上である比較例14、15はCASS500hで貫通する腐食が生じており、耐食性に劣っていた。Mgが発明範囲を超えている比較例16は接合率が60%で、接合性に劣っていた。Znが発明範囲を超えている比較例17はCASS 500hでフィン剥がれが生じており、耐食性に劣っていた。Ti、Vが発明範囲を超えている比較例18、19は粗大な金属間化合物が生じており、そこを起点としてCASS 500hで貫通する腐食が生じた。Be、Sr、Bi、Na、Caなどの微量元素が発明範囲を超えている比較例20〜22はCASS 500hで貫通する腐食が生じており、耐食性が劣っていた。
(本発明例23〜37および比較例38〜44)
表1に示すT1〜T4、T6、T7、T10〜T14、T17の組成の材料を80mm×200mm×200mmの金型で鋳造し、面削、加熱し3mm厚まで熱間圧延した。その後、1.5mmまで冷間圧延し、中間焼鈍後、1.0mmまでさらに冷間圧延して供試材とした。
この圧延板を切り出し、端面をフライスにより平滑にしたものを組み合わせて、図5に示す接合試験片を作製した。試験片の上板と中板には、表1に示す組成のアルミニウム合金板を用い、下板には純アルミニウム板(A1070)を用いた。上板と中板のアルミニウム合金板は同一組成である。これら例は、同一組成のアルミニウム合金材同士の接合である。この接合試験片の接合面には、フッ化物系の非腐食性フラックスを塗布した。図5(a)に示すように、下板に中板と上板を順次重ね、重ね合わせたものの上下に板厚1mmのステンレス板の治具を配するようにした。次いで、図5(b)に示すように、上下のステンレス板と側面に2本のステンレス線を架け渡して端部をそれぞれ縛り、下板、中板及び上板からなる試験片を固定して試料とした。なお、図5(a)に記載の数字は、部材の寸法(単位:mm)を表わす。
上記の試料を、窒素雰囲気中で所定の温度(580〜620℃)まで昇温し、その温度に3分間保持した。昇温速度は、520℃以上において、10℃/分とした。
接合後の試験片を、図6(a)に示す観察断面が得られるように切断した。図6(b)に示すように、上板と中板は接合部1及び接合部2で接合されている。接合部1(2)の一部拡大図を6(c)に示す。上板と中板に接合界面が見られない部分が、接合されている部分であり、接合界面(図の横線)が見られる部分が、接合されていない未接合の部分である。接合率は、下記式(1)で定義される。
接合率(%)={(L1+L2)/2L0}×100 (1)
ここで、L1は接合部1において接合されている部分の長さ、L2は接合部2において接合されている部分の長さ、L0は接合部1と接合部2において、それぞれ接合されるべき長さである。
図6(d)に、試験片の天井部を示す。aは試験片の天井部の接合前の長さ、a1は試験片の天井部上側の接合後における湾曲長さ、a2は試験片の天井部下側の接合後における湾曲長さを表わす。下記式(2)で定義される変形率をもって、接合前に対する接合後の寸法変化(変形率)とした。
変形率(%)={(a1+a2)/2a}×100 (2)
接合率が95%以上を◎、90%以上95%未満を○、80%以上90%未満を△、80%未満を×と判定した。また、変形率が3%以下を◎、3%を超え5%以下を○、5%を超え8%以下を△、8%を超えるものを×と判定した。
表3に結果及び所定の温度での平衡液相率も示した。なお、平衡液相率は、Thermo−Calcによる計算値である。
Figure 2012040610
本発明例23〜37はいずれも本発明で規定する条件を全て満たしており、接合率、変形率のいずれも合格であった。
比較例38、39では、「S−0.3×(M+F)」の値が規定量に満たないので、液相が生成せず、接合がなされなかった。
比較例40、41、42では、「S−0.3×(M+F)」の値が規定量を超えおり、生成する液相が過剰となり、被接合部材が形状を維持できず、大きく変形してしまった。特に比較例42では完全に形状が崩れてしまい、接合率を測定することも不可能であった。
比較例43では、Fe含有量が発明範囲以上であったため大きく変形してしまった。
比較例44では、Zn含有量が発明範囲以上であったため大きく変形してしまった。
本発明により、接合前後の寸法あるいは形状の変化が殆ど無く、また、ろう材あるいは溶加材のような接合部材を使用することなく被接合部材同士が接合するアルミニウム合金材を用いた構造体とその接合方法が達成され、工業上顕著な効果を奏するものである。
a・・試験片の天井部の接合前の長さ
a1・・試験片の天井部上側の接合後における湾曲長さ
a2・・試験片の天井部下側の接合後における湾曲長さ

Claims (6)

  1. アルミニウム合金材を一方の被接合部材とし、他方の被接合部材としてアルミニウム合金材、純アルミニウム材及びアルミニウム以外の金属材のいずれかを用い、前記一方の被接合部材と前記他方の被接合部材とを接合部材を用いることなく接合した構造体において、前記一方の被接合部材であるアルミニウム合金材が、Fe:0.1質量%〜1.0質量%(以下、質量%は単に%と記す。)、Mn:0.3%〜1.8%およびSi、Mn、Feの含有量(質量%)をそれぞれS、M、Fとしたとき、1.2≦S−0.3×(M+F)≦3.5の関係を満足するSiを含有し、残部Alおよび不可避的不純物からなり、接合前と接合後の当該構造体の寸法および形状が略同一であることを特徴とする構造体。
  2. 請求項1に記載の構造体において、前記一方の被接合部材であるアルミニウム合金材の成分としてさらに、Zn:0.1%〜0.8%、Mg:0.1%〜0.8%、Cu:0.3%〜0.8%、Ti:0.05%〜0.2%、V:0.05%〜0.2%、Be:0.0001%〜0.01%、Sr:0.0001%〜0.01%、Bi:0.0001%〜0.01%、Na:0.0001%〜0.01%、Ca:0.0001%〜0.01%のうち1種または2種以上含むことを特徴とする構造体。
  3. 請求項1または請求項2に記載の構造体において、前記一方の被接合部材であるアルミニウム合金材の接合後に長径3μm以上の球状の共晶組織が断面で500個/mm以下存在することを特徴とする構造体。
  4. 請求項1〜請求項3に記載の構造体の接合方法において、前記一方の被接合部材であるアルミニウム合金材の全質量に対する当該アルミニウム合金材内に生成する液相の質量の比が0%を超え35%以下となる温度で接合することを特徴とする構造体の接合方法。
  5. 請求項4に記載の構造体の接合方法において、前記一方の被接合部材であるアルミニウム合金材の固相線温度と液相線温度の差が10℃以上であることを特徴とする構造体の接合方法。
  6. 請求項4または請求項5に記載の構造体の接合方法において、接合前に対する接合後の寸法変化が5%以下であることを特徴とする構造体の接合方法。
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