JP2012039948A - キノコ廃菌床を再利用した菌床 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の目的は、廃菌床を再利用した菌床の製造方法、かかる製造方法により製造した菌床、及び、かかる菌床を用いたキノコの製造方法を提供することにある。
【解決手段】キノコ廃菌床と、170℃以上に加熱されたことのない針葉樹基材とを併用することを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、廃菌床を再利用した菌床の製造方法、かかる製造方法により製造した菌床、及び、かかる菌床を用いたキノコの製造方法に関する。
かつては、キノコの人工栽培といえば、天然の原木を用いた原木栽培が広く行われていたが、近年では、それに代わって菌床栽培が広く普及している。菌床栽培とは、木質基材に栄養源等を混ぜた人工の培地である菌床でキノコを栽培する方法である。菌床栽培は、原木栽培と比較して、より簡便かつ安定的に、しかも短期間でキノコを製造することができるなどの有利な点がある。
菌床の木質基材に使用可能な原料木の種類は、栽培するキノコの種類によって異なるが、ほとんどは広葉樹を用いる。なぜなら、針葉樹には一般に菌糸生育阻害物質が含まれており、針葉樹を菌床の木質基材として利用するには、「6ヶ月程度の堆積散水処理」や「水蒸気蒸留処理」等の処理が必要となるからである。キノコの菌床栽培が普及するにつれて、国産材だけでは必要な量の原料木を賄うことができず、ユーカリ等の広葉樹の輸入、あるいは、木質基材の代替品としてコットンハル(綿実殻)や、コーンコブミール(トウモロコシ穂軸粉砕物)を輸入して、不足分を穴埋めしている。また、木質基材の他の代替品として、ガラスビーズを利用する方法などがあるが、あまり普及していない。
キノコの菌床栽培を行った場合の課題の1つとして、キノコの菌床栽培に使用された後の菌床(以下、「廃菌床」とも表示する。)の有効利用が難しいという点が挙げられる。キノコの中でも、ナメコ、マイタケ、シイタケなどでは、廃菌床が再利用されることもあるが、キノコの生育速度が低下する。また、エノキタケなどでは廃菌床を再利用していない。廃菌床の有効利用が難しいのは、菌床の劣化のためのためである。菌床の劣化の原因として、1つには、(a)木質基材や栄養源の分解・消耗による劣化が挙げられるが、特に大きな原因としては、(b)害菌汚染による劣化や、(c)キノコが産生する生育阻害物質による劣化が挙げられる。再利用しない廃菌床の一部は、肥料や、家畜の敷材に再利用されているものの、コストや労力を考慮すると採算を取るのが難しいため、廃菌床の大部分は結局、産業廃棄物として焼却処分されており、実用上、有効利用がなされているとは言い難い状況にある。
そこで、廃菌床の再利用を図る試みがこれまでにもなされてきた。例えば、特許文献1には、茸の菌床培地に使用した廃培地を攪拌しながら熱風乾燥(特に、200〜400℃、水分10〜40%)して再生培地を得る方法が開示されており、特許文献2には、使用済みのきのこの菌床培地である廃培地を、所要時間水に浸すか蒸気に晒し(特に、60℃のお湯に2時間浸し)、その後廃培地の水分調整を行ってから新たに栄養分を加えて攪拌して再生培地を得る方法が開示されており、特許文献3には、茸栽培に用いた木質の茸用培地を攪拌しながら、遠赤外線を照射して高温乾燥(特に、200〜400℃)させることからなる茸用培地の再生処理方法が記載されている。
一方、菌床への針葉樹の利用に関して、特許文献4には、針葉樹の鋸屑で子実体形成可能なキノコの栽培方法において、重量の20〜80%を飴殻(小豆の絞り粕)で構成した培地基材を調整し、この培地基材に所定量の栄養材を混合し、滅菌処理を施し、ここに種菌を接種して適温適湿で培養し、子実体を発生させ成長させることを特徴とするキノコの栽培方法が記載されている。
しかし、廃菌床と針葉樹基材とを併用して菌床を製造することについては、これまで知られていなかった。
特開平6−7030号公報 特開2008−54510号公報 特開2003−143946号公報 特開2001−103837号公報
本発明は、廃菌床を再利用した菌床の製造方法、かかる製造方法により製造した菌床、及び、かかる菌床を用いたキノコの製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、それぞれ単独ではキノコが十分には生育しない、あるいは生育が不安定である「キノコ廃菌床」と、「170℃以上に加熱されたことのない針葉樹基材」とを菌床の基材として併用すると、キノコが安定して十分に生育する菌床が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)キノコ廃菌床、及び、170℃以上に加熱されたことのない針葉樹基材を容器に充填することを特徴とする菌床の製造方法や、
(2)以下の工程(A)及び工程(B)を含むことを特徴とする上記(1)に記載の菌床の製造方法:
工程(A):キノコ廃菌床と、予め170℃以上に加熱されたことのない針葉樹基材とを、100℃以上170℃未満の範囲内の温度で加熱処理する工程:
工程(B):上記工程(A)で得られた加熱処理物を含む組成物を容器に充填して、菌床を調製する工程:や、
(3)菌床に含まれるキノコ廃菌床と、針葉樹基材との重量比が、1:9〜9:1の範囲内であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の菌床の製造方法や、
(4)針葉樹が、マツ科、ヒノキ科、イチイ科、コウヤマキ科、マキ科及びイヌガヤ科からなる群から選択される科に属する針葉樹であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の菌床の製造方法、
に関する。
また、本発明は、
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の菌床の製造方法により製造されることを特徴とする菌床、
に関する。
さらに、本発明は、
(6)上記(5)に記載の菌床に、キノコの種菌を植菌して培養することを特徴とするキノコの製造方法や、
(7)キノコが、食用キノコであることを特徴とする上記(6)に記載のキノコの製造方法や、
(8)食用キノコが、エノキタケ、ブナシメジ、ヒラタケ、エリンギ、ナメコ、マイタケ、シイタケから選択されるキノコであることを特徴とする上記(7)に記載のキノコの製造方法、
に関する。
本発明によれば、これまではキノコの菌床の製造に実用上有効利用なされていなかったキノコ廃菌床や針葉樹を用いて、より簡便かつ低コストで実用的な菌床を製造することができる。
1.本発明の菌床の製造方法
本発明の菌床の製造方法は、「キノコ廃菌床」、及び、「170℃以上に加熱されたことのない針葉樹基材」(以下、「非高温加熱針葉樹基材」とも表示する。)を容器に充填することを含んでいる限り特に制限されない。本発明の作用機序の詳細は不明であるが、キノコ廃菌床と、非高温加熱針葉樹基材とを併用することにより、廃菌床が有する菌糸生育阻害物質と、針葉樹が有する菌糸生育阻害物質とが、何らかの相互作用をすることによって、互いの菌糸生育阻害効果を抑制し合い、その結果、キノコの生育に好適な菌床が製造できるものと考えられる。
上記の「キノコ廃菌床」とは、キノコの菌床栽培に使用された後の菌床であって、木質基材を含む菌床を意味する。かかる菌床である限り、そのキノコの種類や、菌床の種類は特に制限されないが、シイタケの菌床栽培に使用された後の菌床や、ナメコの菌床栽培に使用された後の菌床を例示することができる。かかるキノコ廃菌床は、キノコの菌床栽培を行うことによって製造することもできるし、キノコ栽培業者等から譲り受けることもできる。
上記の「非高温加熱針葉樹基材」とは、170℃以上に加熱されたことのない針葉樹基材を意味する。「非高温加熱針葉樹基材」としては、栽培したときのキノコの生育がより優れていることから、好ましくは160℃以上、より好ましくは140℃以上、さらに好ましくは120℃以上、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは80℃以上、より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは40℃以上に加熱されたことのない針葉樹基材を好適に例示することができる。なお、ある針葉樹基材が、本発明における非高温加熱針葉樹基材であるかどうかは、かかる針葉樹基材とキノコ廃菌床を容器に充填して得られた菌床を利用した場合のキノコの生育の程度が、そのキノコ廃菌床を容器に充填して得られた菌床を利用した場合のキノコの生育の程度より優れているかどうかを確認することによって、調べることができる。すなわち、ある針葉樹基材とキノコ廃菌床を容器に充填して得られた菌床を利用した場合のキノコの生育の程度が、そのキノコ廃菌床を容器に充填して得られた菌床を利用した場合のキノコの生育の程度よりも優れているときには、その針葉樹基材を非高温加熱針葉樹基材と判定することができる。
本発明における針葉樹としては、針葉樹である限り特に制限されないが、マツ科、ヒノキ科、イチイ科、コウヤマキ科、マキ科及びイヌガヤ科からなる群から選択される科に属する針葉樹を好適に例示することができる。上記のマツ科に属する針葉樹としては、アカマツ、クロマツ、ゴヨウマツ、チョウセンゴヨウ、ハイマツ、モンタナマツ等のマツ属に属する針葉樹;カラマツ、ヨーロッパカラマツ、グイマツ、アメリカカラマツ等のカラマツ属に属する針葉樹;モミ、ヨーロッパモミ、トドマツ等のモミ属に属する針葉樹;ヒマラヤスギ等のヒマラヤスギ属に属する針葉樹;クロエゾマツ、アカエゾマツ、ヨーロッパトウヒ、コロラドトウヒ、コーカサストウヒ等のトウヒ属に属する針葉樹;ツガ、コメツガ、カナダツガ等のツガ属に属する針葉樹;を好適に例示することができ、上記のヒノキ科に属する針葉樹としては、ヒノキ、ヌマヒノキ、サワラ、ローソンヒノキ等のヒノキ属に属する針葉樹;レイランドヒノキ等のレイランドヒノキ属に属する針葉樹;ウスカワアリゾナイトスギ等のイトスギ属に属する針葉樹;ビャクシン、ネズ、エンピツビャクシン、コロラドビャクシン等のビャクシン属に属する針葉樹;ウスリーヒバ等のウスリーヒバ属に属する針葉樹;コノテガシワ等のコノテガシワ属に属する針葉樹;クロベ、ニオイヒバ、ベイスギ等のクロベ属に属する針葉樹;アスナロ、ヒバ等のアスナロ属に属する針葉樹;アラスカヒノキ等のクサントキュパリス属に属する針葉樹;スギ、ダイスギ、エンコウスギ等のスギ属に属する針葉樹;コウヨウザン等のコウヨウザン属に属する針葉樹;メタセコイヤ等のメタセコイア属に属する針葉樹;セコイア等のセコイア属に属する針葉樹;セコイアオスギ等のセコイアオスギ属に属する針葉樹;ヌマスギ等のヌマスギ属に属する針葉樹;を好適に例示することができ、上記のイチイ科に属する針葉樹としては、イチイ、ヨーロッパイチイ、メディアイチイ等のイチイ属に属する針葉樹;カヤ等のカヤ属に属する針葉樹;を好適に例示することができ、上記のコウヤマキ科に属する針葉樹としては、コウヤマキ等のコウヤマキ属に属する針葉樹を好適に例示することができ、上記のマキ科に属する針葉樹としては、イヌマキ、ラカンマキ、ナギ等のマキ属に属する針葉樹を好適に例示することができ、上記のイヌガヤ科に属する針葉樹としては、イヌガヤ等のイヌガヤ属に属する針葉樹を好適に例示することができる。これらの針葉樹の中でも、ヒノキ、スギ、アカマツ、カラマツ、トドマツ、エゾマツ(クロエゾマツ、アカエゾマツ)、カヤ等を特に好適に例示することができる。前述の非高温加熱針葉樹基材は、伐採した又は購入した前述の針葉樹から粉砕処理等を行うことにより製造することもできる。
本発明の菌床の製造方法における「容器」としては、その材質や形状等、特に制限はされず、例えば、円柱状、直方体状、立方体状等の形状のビン、箱、袋等を例示することができる。かかる容器は、市販されているものを用いることもできるし、適宜制作することもできる。
本発明の菌床の製造方法に用いるキノコ廃菌床と、針葉樹基材との重量比としては、本発明の菌床が得られる限り特に制限されないが、栽培したときのキノコの生育がより優れていることから、キノコ廃菌床と、針葉樹基材との重量比(乾燥重量)を好ましくは1:9〜9:1の範囲内、より好ましくは2:8〜8:2の範囲内、さらに好ましくは3:7〜7:3の範囲内とすることを好適に例示することができる。
本発明の菌床の製造方法では、キノコ廃菌床、及び、非高温加熱針葉樹基材以外に、任意成分を容器に充填してもよい。かかる任意成分としては、キノコ菌の栄養源を好適に例示することができ、かかる栄養源としては、コメ糠、フスマ、トウモロコシ糠、小麦粉等の穀類粉末の他、カルシウム塩、貝殻、木酢液、ビール酵母粕などを好適に例示することができる。かかる栄養源を用いると、キノコの生育を向上させることができる。かかる栄養源の添加量としては、本発明の菌床が得られる限り特に制限されないが、栽培したときのキノコの生育がより優れていることから、キノコ廃菌床及び針葉樹基材の合計と、栄養源との重量比(乾燥重量)として、好ましくは2:1〜15:1の範囲内、より好ましくは3:1〜8:1の範囲内とすることを好適に例示することができる。また、他の任意成分として、水分を容器に充填してもよい。充填する水分の量は、栽培するキノコの性質に合わせて適宜調節することができるが、例えば菌床の含水率として50〜80%とすることが好ましく、55〜75%とすることがより好ましい。
本発明の菌床の製造方法の好適な態様として、以下の工程(A)及び工程(B)を含む製造方法を例示することができる。
工程(A):キノコ廃菌床と、予め170℃以上に加熱されたことのない針葉樹基材とを、100℃以上170℃未満の範囲内の温度で加熱処理する工程:
工程(B):上記工程(A)で得られた加熱処理物を含む組成物を容器に充填して、菌床を調製する工程:
上記の工程(A)における加熱処理としては、本発明の菌床が得られる限り特に制限されないが、好ましくは100℃以上160℃未満の範囲内、より好ましくは100℃以上150℃未満の範囲内、さらに好ましくは100℃以上140℃未満の範囲内、より好ましくは105℃以上135℃未満の範囲内、さらに好ましくは110℃以上130℃未満の範囲内の温度での加熱処理を好適に例示することができる。工程(A)における加熱処理の時間としては、本発明の菌床が得られる限り特に制限されないが、好ましくは5分間〜3時間の範囲内、より好ましくは7分間〜2時間の範囲内、さらに好ましくは10分間〜90分間の範囲内、より好ましくは10分間〜60分間の範囲内、さらに好ましくは15分間〜30分間の範囲内の時間を好適に例示することができる。
上記工程(A)に記載されているような加熱処理を行うと、栽培したときのキノコの生育がより優れていることから好ましい。かかる加熱処理の目的は問わないが、菌床の滅菌処理は目的の1つとして好適に含まれる。菌床の滅菌処理は、栽培したときのキノコの生育が安定するため好ましい。菌床の滅菌処理を兼ねる場合の加熱処理としては、高圧蒸気滅菌処理を好適に例示することができる。
また、上記工程(A)における加熱処理としては、キノコ廃菌床と、非高温加熱針葉樹基材とを別々に加熱処理してもよいし、キノコ廃菌床と、非高温加熱針葉樹基材とを予め混合してから加熱処理してもよいが、栽培したときのキノコの生育がより優れていることから、キノコ廃菌床と、非高温加熱針葉樹基材とを予め混合してから加熱処理することを好適に例示することができる。キノコ廃菌床と、非高温加熱針葉樹基材とを別々に加熱処理した場合は、その後、混合することが好ましく、中でも、クリーンベンチ内で混合することがより好ましい。
上記の工程(B)としては、上記工程(A)で得られた加熱処理物を含む組成物を容器に充填して、菌床を調製する工程である限り特に制限されない。かかる組成物には、上記工程(A)で得られた加熱処理物以外にも、前述のキノコ菌の栄養源等の任意成分が好適に含まれる。かかる任意成分は、上記工程(A)における加熱処理を経なくてもよいが、キノコ廃菌床や、非高温加熱針葉樹基材と別々に、あるいは、これらの一方又は両方と共に加熱処理を経ることが好ましい。
2.本発明の菌床
本発明の菌床としては、前述の本発明の菌床の製造方法により製造される菌床である限り特に制限されない。かかる菌床は、これまではキノコの菌床の製造に実用上有効利用なされていなかったキノコ廃菌床や針葉樹を用いて、より簡便かつ低コストで製造し得る実用的な菌床である。
3.本発明のキノコの製造方法
本発明のキノコの製造方法としては、本発明の菌床に、キノコの種菌を植菌して培養することを特徴とするキノコの製造方法である限り特に制限されない。培養条件は、培養するキノコに応じて、温度、湿度、栄養源、培養日数等、好ましい条件を選択することができ、キノコの種菌は市販されているものを使用することができる。本明細書中の「キノコ」としては、食用キノコを好適に例示することができ、中でも、エノキタケ、ブナシメジ、ヒラタケ、エリンギ、ナメコ、マイタケ、シイタケをより好適に例示することができる。なお、本発明の菌床に植菌して培養するキノコの種類と、廃菌床に使用されたキノコの種類とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
以下に実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定される
ものではない。
[菌床の作製、及び、菌糸培養試験]
本発明の菌床を用いて菌糸が実際に生育するかどうかを確認するために、以下の菌糸培養試験を行った。まず始めに、以下の表1の「菌床の製造に用いた基材の種類」に示される基材を混合し、その混合物をそれぞれシャーレに約3mmの厚さで敷き詰めた。これらの菌床をオートクレーブで121℃15分間殺菌し、次いで放冷して、培養試験用の菌床No.1〜8の菌床をそれぞれ得た。尚、菌床は重量換算で木質基材85%に米糠15%を加えた。また、含水率は65%に調整した。
Figure 2012039948
菌床No.1〜8の菌床の中央に、白金匙でナメコ菌をそれぞれ植菌し、インキュベーター(温度20℃、湿度70〜80%に維持)内で1週間培養した。その間の菌糸の生育状況を経過観察し、「菌糸の水平方向への伸び」、「菌糸の菌床中への伸び」、「気中菌糸の伸び」について、「−」:菌糸が死滅、又は、ごく僅かな伸長、「+」:旺盛ではないが菌糸が十分に伸長、「++」:菌糸が旺盛に伸長、の3段階で評価した。なお、この菌糸培養試験は、各菌床につき、3連で行った。これらの菌糸培養試験の評価結果を前述の表1に示す。
表1の結果から分かるように、非加熱廃菌床を単独で基材に用いた菌床(菌床No.1)や、170℃加熱廃菌床を単独で基材に用いた菌床(菌床No.2)や、非加熱ヒノキを単独で基材に用いた菌床(菌床No.3)では菌糸がほとんど伸長しない、あるいは伸長が不安定であったにもかかわらず、非加熱廃菌床と非加熱ヒノキとの混合物を基材に用いた本発明の菌床では、きわめて意外なことに、菌糸が安定して十分に伸長し、あるいは旺盛に伸長した(菌床No.6〜8参照)。なお、170℃加熱ヒノキを単独で基材に用いた菌床(菌床No.4)では、非加熱ヒノキを単独で基材に用いた菌床(菌床No.3)とは異なり、菌糸が伸長する場合もあったが、非加熱廃菌床と170℃加熱ヒノキとの混合物を基材に用いた菌床(菌床No.5)では、菌糸がほとんど伸長しない、あるいは伸長が不安定であった。
また、本発明の菌床における針葉樹基材として、ヒノキ以外の針葉樹(スギ、アカマツ)の基材も用いうるかどうかを確認するために、以下の菌糸培養試験を行った。なお、コントロールの1つとして、広葉樹(ブナ)を用いた試験も行った。まず始めに、以下の表2の「菌床の製造に用いた基材の種類」に示される基材を混合し、その混合物をそれぞれシャーレに約3mmの厚さで敷き詰めた。これらの菌床をオートクレーブで121℃15分間殺菌し、次いで放冷して、培養試験用の菌床No.9〜22の菌床をそれぞれ得た。なお、以下の表2のNo.18、20、22については、非加熱廃菌床と、木製基材とを別々にオートクレーブした後で、クリーンベンチ内でそれらを混合した菌床(後混)についても得た。
Figure 2012039948
菌床No.9〜22菌床の中央に、白金匙でナメコ菌をそれぞれ植菌し、インキュベーター(温度25℃、湿度95%に維持)内で1週間培養した。その間の菌糸の生育状況を経過観察し、「菌糸の水平方向への伸び」について、「−」:菌糸が死滅、又は、ごく僅かな伸長、「+」:旺盛ではないが菌糸が十分に伸長、「++」:菌糸が旺盛に伸長、の3段階で評価した。なお、この菌糸培養試験は、各菌床につき、3連で行った。これらの菌糸培養試験の評価結果を前述の表2に示す。
表2の結果から分かるように、非加熱廃菌床を単独で基材に用いた菌床(菌床No.9)や、170℃加熱廃菌床を単独で基材に用いた菌床(菌床No.10)や、非加熱ヒノキを単独で基材に用いた菌床(菌床No.11)や、非加熱スギを単独で基材に用いた菌床(菌床No.17)や、非加熱アカマツを単独で基材に用いた菌床(菌床No.19)では菌糸がほとんど伸長しない、あるいは伸長が不安定であったにもかかわらず、非加熱廃菌床と非加熱針葉樹(ヒノキ、スギ又はアカマツ)との混合物を基材に用いた菌床では、きわめて意外なことに、菌糸が安定して十分に伸長し、あるいは旺盛に伸長した(菌床No.14〜16、18、20参照)。なお、170℃加熱ヒノキを単独で基材に用いた菌床(菌床No.12)では、非加熱ヒノキを単独で基材に用いた菌床(菌床No.11)とは異なり、菌糸が伸長する場合もあったが、非加熱廃菌床と170℃加熱ヒノキとの混合物を基材に用いた菌床(菌床No.13)では、菌糸がほとんど伸長しない、あるいは伸長が不安定であった。また、広葉樹である非加熱ブナを単独で基材に用いた菌床(菌床No.21)では、針葉樹を単独で基材に用いた菌床(菌床No.11、17、19参照)とは異なり、菌糸は十分に伸長し、非加熱廃菌床と併用しても、菌糸の伸長の程度はそれほど変わらなかった(菌床No.22参照)。なお、廃菌床を単独で基材に用いた菌床(菌床No.9〜10)や、加熱ヒノキを基材に用いた菌床(菌床No.12〜13)では、培養中に青カビが発生した。しかし、本発明の菌床(菌床No.14〜16、18、20)では、青カビは発生しなかった。
単独で基材用いても菌糸がほとんど伸長しない、あるいは伸長が不安定であった廃菌床と非加熱ヒノキとを混合することにより、菌糸が安定して十分に生育する菌床が得られる理由は定かではないが、廃菌床が有する菌糸生育阻害物質と、ヒノキ、スギ、アカマツ等の針葉樹が有する菌糸生育阻害物質とが、何らかの相互作用をすることによって、互いの菌糸生育阻害効果を抑制し合っていると考えられる。
[子実体発生試験]
本発明の菌床を用いた培養により、子実体が実際に発生するかどうかを確認するために、以下の子実体発生試験を行った。まず始めに、上記実施例1と同様に、菌床No.1〜8の菌床を作製した。菌床No.1〜8の菌床の中央に、白金匙でナメコ菌(Pholiota nameko)をそれぞれ植菌し、インキュベーター(温度20℃、湿度70〜80%に維持)内で30〜40日間培養した。培養後に、各菌床におけるナメコ菌の子実体の状況を観察し、子実体の発生の程度について、「−」:子実体の発生がほとんど見られない、「+」:子実体の発生が十分に見られる、「++」:子実体の発生が旺盛に見られる、の3段階で評価した。それらの評価の結果を表3に示す。
Figure 2012039948
表3の結果から分かるように、非加熱廃菌床を単独で基材に用いた菌床(菌床No.1)や、非加熱ヒノキを単独で基材に用いた菌床(菌床No.3)では子実体の発生がほとんど見られなかったにもかかわらず、廃菌床と非加熱ヒノキとの混合物を基材に用いた菌床では、子実体の発生が十分に見られ、あるいは旺盛に見られた(菌床No.6〜8参照)。なお、前述の実施例1で調べた菌糸の生育状況に関しては、菌床No.7の菌床(非加熱廃菌床(50%)と非加熱ヒノキ(50%)との混合物を基材に用いた菌床)が最も優れていたが(前述の表1参照)、子実体の発生の程度に関しては、菌床No.8の菌床(非加熱廃菌床(70%)と非加熱ヒノキ(30%)との混合物を基材に用いた菌床)が最も優れていた(表3参照)。
以上の実施例1と実施例2の結果から、非加熱廃菌床と非加熱針葉樹とを基材として併用することによって、廃菌床を再利用し得ること、すなわち、実用的な菌床を作製し得ることが示された。さらに、ナメコ及びヒラタケの子実体の形成について、菌床No.7の菌床を用いた場合と、広葉樹菌床(非加熱ブナ菌床)を用いた場合で比較したところ、いずれのキノコの子実体の形成スピード及び形成率についても、両菌床で差は全く見られなかった。したがって、本発明の菌床は、広葉樹菌床とほぼ同等に用いることができることが示された。
[他種キノコの菌糸培養試験]
本発明の菌床が、前述の実施例1〜2で用いたナメコ菌以外のキノコについても、利用可能であるかどうかを調べるために、以下の菌糸培養試験を行った。まず始めに、上記実施例1と同様の方法で、菌床No.7の菌床(瓶状)を5つ作製した。これらの菌床の水分を調整した後、ヒラタケ、ブナシメジ、エノキタケ、マイタケ、エリンギをそれぞれ植菌し、温度と湿度を適切に維持しながらインキュベーターで培養した。キノコの種類によって、菌糸の生育速度に多少の違いはあったが、植菌から30〜40日後には、各キノコとも、菌糸が容器全体に蔓延し、子実体(キノコ)が発生した。
以上の結果から、本発明の菌床は、ナメコ以外のキノコに対しても、有効であることが示された。さらに、本発明の菌床に関する以上の結果を、広葉樹菌床(非加熱ブナ菌床)を用いた場合の結果と比較したところ、上記5種の菌糸の生育に差は見られなかった。したがって、本発明の菌床は、広葉樹菌床とほぼ同等に用いることができることが示された。
本発明は、キノコ廃菌床の菌床への再利用の分野や、針葉樹基材の菌床への有効利用の分野に好適に利用することができる。

Claims (8)

  1. キノコ廃菌床、及び、170℃以上に加熱されたことのない針葉樹基材を容器に充填することを特徴とする菌床の製造方法。
  2. 以下の工程(A)及び工程(B)を含むことを特徴とする請求項1に記載の菌床の製造方法。
    工程(A):キノコ廃菌床と、予め170℃以上に加熱されたことのない針葉樹基材とを、100℃以上170℃未満の範囲内の温度で加熱処理する工程:
    工程(B):上記工程(A)で得られた加熱処理物を含む組成物を容器に充填して、菌床を調製する工程:
  3. 菌床に含まれるキノコ廃菌床と、針葉樹基材との重量比が、1:9〜9:1の範囲内であることを特徴とする請求項1又は2に記載の菌床の製造方法。
  4. 針葉樹が、マツ科、ヒノキ科、イチイ科、コウヤマキ科、マキ科及びイヌガヤ科からなる群から選択される科に属する針葉樹であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の菌床の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の菌床の製造方法により製造されることを特徴とする菌床。
  6. 請求項5に記載の菌床に、キノコの種菌を植菌して培養することを特徴とするキノコの製造方法。
  7. キノコが、食用キノコであることを特徴とする請求項6に記載のキノコの製造方法。
  8. 食用キノコが、エノキタケ、ブナシメジ、ヒラタケ、エリンギ、ナメコ、マイタケ、シイタケから選択されるキノコであることを特徴とする請求項7に記載のキノコの製造方法。
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