JP2012031477A - 中空焼結体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 ヒビや膨れの発生を防止できるものでありながら、中子の除去を容易に行うことが可能になる製品焼結体の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の製品焼結体Wの製造方法は、中空状の中子1を成形する中子成形工程3と、中空状の中子1と、この中空状の中子1を内部に備えた金型13との間に焼結材料7を射出成形して射出成形体9を成形する射出成形工程4と、射出成形体9の内部から中空状の中子1を除去する中子除去工程5と、射出成形体9を焼結して焼結体Wを得る焼結工程6と、を備えている。
【選択図】図2

Description

本発明は、中空焼結体の製造方法に関するものである。
セラミックス、金属あるいはこれらの複合材料などから焼結体を成形する際に、粉末射出成形法が利用されることがある。この粉末射出成形法は、焼結可能な粉末に流動性を持たせるために種々の有機化合物および熱可塑性樹脂を添加し、加熱混練の後に混練物を射出成形材料として射出成形し、得られた成形体を焼結することにより、焼結体を製品として製造するものであり、複雑な形状や比較的小さな焼結体を得ることができるため好適に用いられている。
ところで、上述した粉末射出成形法を用いる場合であっても、焼結しようとする製品が内部に中空部分を有するような中空焼結体である場合には、射出成形だけで中空状の射出成形体を得ることは困難である。このような場合は、予め複数に分割された分割体ごとに射出成形と焼結とを行い、焼結後に分割体同士を貼りあわせて中空焼結体を得る方法が採用される。ところが、このような焼結体同士の貼りあわせは、時間を要する機械加工を伴ったり、また貼り合わせで未接合が発生したりして好ましくない。
そこで、このような問題を解決するために、中空部分を型取った中子を用いて中空焼結体を成形する方法が開発されている。
例えば、特許文献1や特許文献2には、予め熱可塑性樹脂で「中実の中子」を成形しておき、この熱可塑性の中子を金型内に配備した後、射出成形材料を射出成形する方法が開示されている。この方法では、射出成形後の加熱脱脂や焼結において熱可塑性の中子が溶解して分解除去されるため、中空焼結体を容易に成形することができる。
その反面、特許文献1や特許文献2の成形方法では、金属粉などで形成された射出成形材料に対して中子は熱可塑性樹脂で形成されているため、両者の熱膨張率には差があることが多い。このように熱膨張率に差がある材料を組み合わせた射出成形体を加熱すると、膨張した「中実の中子」が射出成形体を内側から押して射出成形体にヒビなどが生じさせたり、中子からガスが発生して射出成形体に膨れが生じさせたりして、中空焼結体の不良率が高くなりやすいという問題があった。
そこで、このようなヒビや膨れを低く抑えられる成形方法として、特許文献3〜特許文献5のような方法がさらに開発されている。
例えば、特許文献3の成形方法は、射出成形材料として有機バインダを含む材料を用いるものであり、予め射出成形材料と同じ材料を用いて中子を成形し、成形された中子を加熱脱脂して有機バインダを60〜90%脱脂する。そして、この脱脂された中子を金型内に設置し、脱脂された中子と金型との間に射出成形を行って中空の焼結体を得るものである。このように予め加熱脱脂により有機バインダが除去された中子を用いれば、中子からガスが発生することはなく、寸法精度の良い中空焼結体を成形することができる。
また、特許文献4にはアセタール樹脂のように酸触媒で分解しやすい樹脂を中子を構成する材料に予め混合しておき、射出成形後に射出成形体に含まれる樹脂分を酸触媒雰囲気下で分解(脱バインダ)することにより射出成形体から中子だけを化学的に除去する方法が開示されている。さらに、特許文献5にも、サンドブラストと550℃に加熱された苛性ソーダ溶液を用いて射出成形体からセラミックス製の中子だけを除去する方法が開示されている。
特開平3−72004号公報 特開平3−87302号公報 特開平6−305821号公報 特開平6−108106号公報 特開平11−92803号公報
ところで、特許文献3の方法では、予め中子からバインダの60%以上が脱脂により除去されているために、中子自体の強度が低下してしまうという問題がある。このような強度の低い中子を用いると、射出成形時に中子の中でも薄肉とされた部分に成形圧が加わって中子が破損してしまう虞がある。
また、特許文献4や特許文献5のように中子を化学的に除去する方法では、中子が中実(中が詰まった形)である場合や、中子のサイズが小さく構造が複雑である場合に、酸触媒や苛性ソーダなどが中子の内部に十分に入り込まず、中子を確実に除去できないことがある。また、高温の苛性ソーダなどのように反応性が高い薬剤は焼結体への影響が無視できない。加えて、中子がセラミックス製である場合、焼結体の材質によっては中子と焼結体とが融着してしまい、中子の除去が困難になることがある。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであって、ヒビや膨れの発生を防止できるものでありながら、中子の除去を容易に行うことが可能な中空焼結体の製造方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成するため、本発明は次の技術的手段を講じている。
即ち、本発明の中空焼結体の製造方法は、中空状の中子を成形する中子成形工程と、中空状の中子と、この中空状の中子を内部に備えた金型との間に焼結材料を射出成形して射出成形体を成形する射出成形工程と、射出成形体の内部から中空状の中子を除去する中子除去工程と、射出成形体を焼結して焼結体を得る焼結工程と、を備えていることを特徴とするものである。
本発明者は、中子を予め中空状に成形しておけば、加熱処理や化学処理などで射出成形後に容易に中子を除去でき、中子の膨張に起因するヒビや中子からのガス発生に起因する膨れの発生も防止できるのではないかと考えた。そして、焼結材料を射出成形して射出成形体を成形する射出成形工程の前に、予め中空状の中子を成形する中子成形工程を設けることにより、ヒビや膨れの発生を防止しつつも中子が容易に除去可能となることを知見して本発明を完成させたのである。
なお、前記焼結材料が有機バインダを含む場合には、中空焼結体の製造方法には前記射出成形体を加熱して射出成形体から有機バインダを除去する加熱脱脂工程が備えられるのが好ましい。そして、この加熱脱脂工程を有する場合には、前記中子除去工程として、前記加熱脱脂工程における加熱を利用して、前記射出成形体の内部から中空状の中子を除去するものを採用することができる。
また、前記中子成形工程は、周囲が壁面で囲まれた空洞を内部に備えた中空状の中子を成形するものであるのが好ましい。例えば、このような中子成形工程としては、レーザを用いた三次元造形法によって前記中子を中空状に成形するものを挙げることができる。
本発明の中空焼結体の製造方法によれば、中空焼結体(製品焼結体)のヒビや膨れの発生を防止できるものでありながら、中子の除去を容易に行うことが可能になる。
(a)は本発明の製造方法で成形される中空焼結体を正面から見た図であり、(b)は中空焼結体をその軸心に沿って切断した場合の断面図である。また、(c)は本発明の製造方法で成形される中空の中子を正面から見た図であり、(d)は中空の中子をその軸心に沿って切断した場合の断面図である。 中空焼結体の製造方法の工程を示すフローチャートである。 中空焼結体の製造方法における中子成形工程以降の処理手順を示す図である。 中子成形工程の処理手順を示す図である(三次元造形法)。 中子成形工程の処理手順を示す図である(分割金型を用いた方法)。 中子成形工程の処理手順を示す図である(ガスアシスト射出成型法)。
以下、本発明に係る中空焼結体の製造方法を図面に基づき説明する。
中空焼結体としては、さまざまな形状のものが挙げられるが、本実施形態では、外形が円錐台形状で、内部に円筒状の部分2aと球状の部分2bとを組み合わせたような中空部2を備えた中空焼結体を製造する製造方法を例に挙げて本発明を説明する。
なお、本発明の製造方法で製造される中空焼結体を、以下「製品焼結体W」と呼ぶ。
また、以下の実施の形態の説明では、
(1)製品焼結体Wの製造方法の説明
(2)中空状の中子1の製造方法の説明
(3)製品焼結体Wや中空状の中子1を形成するに最適な材料の説明
を順を追って述べる。
(1)製品焼結体の製造方法
まず、本発明に係る製品焼結体Wの製造方法について説明する。
図1(a)及び(b)に示されるように、第1実施形態の製品焼結体W(中空焼結体)の外形は、その軸心を上下方向に向けたような略円錐台形状となっている。製品焼結体Wの内部には中空部2が形成されている。この中空部2は、製品焼結体Wの上面の開口及び下面の開口から製品焼結体Wの中心に向かって上下方向に伸びる円筒状の部分2aと、この円筒状の部分2aにおける上下方向の中途側に組み合わされた球状の部分2bとからなっている。製品焼結体Wは、上下の開口(円筒状の部分2a)に比べて奥(球状の部分2b)の方が広幅になっていて、内部の中空部2を中子1を用いて成形した後で上下の開口から中子1を外に引き抜こうとしても、径が大きな球状の部分2bが開口に引っかかって中子1を物理的に取り出すことが困難になるような形状となっている。
特に、製品焼結体が小さいもの(例えば高さが0.5mm〜2mm、横幅が0.5mm〜2mm)である場合は、射出成形体9自体が脆く、射出成形後の中子1の取り出しも非常に難しくなる。
そこで、本発明の製造方法では、図2に示すように、以下に示す中子成形工程3、射出成形工程4、中子除去工程5及び焼結工程6という4つの製造工程を設けて、焼結の前に中子1を確実に除去することで製品焼結体Wを製造している。
特に、本発明の製造方法で特徴となる点は、射出成形工程4の前に中子成形工程3を設けている点であり、この中子成形工程3で中空状の中子1を成形して、射出成形後の中子除去工程5で中子1を容易に除去できるようにしている点である。
なお、製品焼結体Wを構成する焼結材料7が後述する有機バインダ8を含む場合には、射出成形体9を加熱して有機バインダ8を除去する加熱脱脂工程10が設けられ、この加熱脱脂工程10の加熱を利用して中子1を除去する中子除去工程5が行われる。
次に、本発明の製造方法を構成する各工程について詳しく説明する。
図2に示すように、中子成形工程3は、中空状の中子1を成形する工程である。
この中子成形工程3で成形される中空状の中子1は、図1(c)や図1(d)に示すように、周囲が壁面で囲まれた空洞11を内部に備えていて、言うなれば、花瓶のような薄肉の形状を有するものとなっている。
このように中子1の内部を空洞11として中子1を中空状にすれば、中子除去工程5において加熱や化学処理などを短時間行うだけで容易に中子1を除去できる。また、このような中空状の中子1は、加熱時に膨張して射出成形体9に対してヒビを発生させたり、ガスを発生して膨れを発生させたりすることもない。
上述した中子1は、製品焼結体Wの内部の中空部2に合わせた外形を有しており、またその内部は空洞11とされている。この中空状の中子1は、後述する加熱脱脂工程10で加えられる加熱で溶解可能な熱可塑樹脂の微粉末12から形成されており、これらの微粉末12を用いて十分に溶解可能な厚みに形成されている。また、中空状の中子1は、射出成形後に加熱溶融や化学的な溶解により除去しやすいように、あるいは射出成形に加わる成形圧力に耐えられるように、その厚みが局部的に薄く(厚く)されていてもよいし、内部に補強用のリブを備えていても良い。
図2及び図3に示すように、射出成形工程4は、中空状の中子1と、この中空状の中子1を内部に備えた金型13との間に焼結材料7を射出成形して射出成形体9を成形する工程である。
金型13は、内部が空洞とされた筺状に形成されており、この内部の空洞が中空状の中子1を収容可能な収容部14とされている。金型13は左右に分割可能とされており、一方の金型13には収容部14に焼結材料7を流し入れる流入口15が形成されている。
金型13の収容部14は、中空状の中子1を収容可能なサイズに形成されている。収容部14の高さは中子1と同じ高さとされており、また収容部14の幅は製品焼結体Wの肉厚の分だけ中子1より広幅となっている。
図3(a)に示すように、射出成形工程4では、金型13の収容部14に中空状の中子1を収容して、分割された金型13同士を突き合わせて収容部14内に中子1を設置する。そうすると、中子1が金型13の収容部14の上面と下面とに面状態で接触し、金型13の側面と収容部14との間に焼結材料7を射出可能な隙間が水平方向に形成される。
次に、図3(b)に示すように、流入口15から金型13の収容部14内に焼結材料7を流し入れる。収容部14内に流し入れる焼結材料7は、金属材料の粉末、セラミックスの粉末または後述する複合材料の粉末と、有機バインダ8とから構成されており、これらの焼結材料7をバッチ式または連続式の混練機や押出機のような混練設備を用いて予め溶融混練して形成された混練物である。
流入口15から金型13内に流し入れられた焼結材料7は、中空状の中子1と金型13(収容部14)との間に行き渡り、製品焼結体Wの形状に合わせた型取りが行われる。金型13内に注入された焼結材料7は、金型13の冷却に伴って有機バインダ8が硬化し、中空状の中子1と金型13との間に形成された空間の形状に合わせて射出成形体9が成形される。このようにして成形された射出成形体9に対しては、次に中子除去工程5が行われる。
中子除去工程5は、射出成形体9の内部から中空状の中子1を除去する工程である。
図2及び図3に示す如く、第1実施形態の製造方法には射出成形体9から有機バインダ8を加熱して除去する加熱脱脂工程10が設けられており、上述した中子除去工程5は加熱脱脂工程10における加熱を利用して射出成形体9の内部より、熱可塑樹脂の微粉末12を用いて形成された中空状の中子1を溶解して除去する構成となっている。
具体的には、加熱脱脂工程10は、金型13内から、中空状の中子1とこの中子1の周囲に成形された射出成形体9とを一緒に取り出す。このようにして取り出された射出成形体9を、大気雰囲気、減圧雰囲気、真空雰囲気、不活性ガス雰囲気または還元雰囲気に維持された炉内に入れ、有機バインダ8が加熱分解される温度(例えば、300℃〜500℃)以上に加熱する。このようにすると、射出成形体9に含まれる有機バインダ8が熱分解され、射出成形体9から有機バインダ8が脱脂される。
第1実施形態の中子除去工程5は、この加熱脱脂工程10で射出成形体9に加えられる熱を利用して、中空状の中子1をも熱分解し射出成形体9の内部から中子1のみを除去する構成となっている。
なお、第1実施形態の製造方法では、加熱脱脂工程10における加熱を利用して射出成形体9の内部から中空状の中子1を除去する中子除去工程5を用いたが、中子1を除去する方法は加熱によるものに限られない。例えば、中空状の中子1を構成する熱可塑樹脂に有機溶媒に可溶なものを用い、射出成形工程4の後に有機溶媒を用いて中子1を溶解除去する中子除去工程5を実施しても良い。また、中子1を構成する熱可塑樹脂に酸やアルカリに可溶なものを用いる場合には、射出成形工程4後に酸やアルカリを用いて中子1を溶解除去する中子除去工程5を実施しても良い。このような有機溶媒や酸・アルカリを用いた中子除去工程5を実施する場合は、中子除去工程5が加熱脱脂工程10と別工程として設けられていても良い。
上述した中子除去工程5により中子1が除かれた射出成形体9は、焼結工程6で焼結される。焼結工程6で行われる焼結は、焼結材料7によって焼結温度や雰囲気や処理時間がさまざまに変化するが、例えば大気雰囲気、不活性ガス雰囲気、真空雰囲気などのもとであれば1000℃〜2000℃の温度で最高温度域で1時間〜10時間に亘って行われる。このようにして射出成形体9を焼結することで、射出成形体9を構成する焼結材料7の粉末同士が溶融・結着して製品焼結体Wが形成される。
上述したように中空状の中子1を用いて射出成形を行えば、中空状の中子1は中実なものに比べて熱膨張の影響を受けにくく、また加熱しても中子1からガス発生しにくい為、射出成形体9にヒビや膨れが発生することがなくなる。
また、中実なものに比べて内部が空洞とされた中空状の中子1は薄肉であるため、中子除去工程5に必要な時間が短時間で済み、また中子1が除去されずに残ることもない。それゆえ、中子1の除去が困難な場合、例えば製品焼結体Wのサイズが小さい場合や中空のような複雑な形状の場合に好ましく用いられる。
ところで、本発明に係る製造方法で製造される製品焼結体Wとしては、様々なものが考えられるが、切削工具、燃料電池の電極材、スピーカの振動板、スタティックミキサ、自動車などの燃料供給系統に用いられる部材(例えば、燃料インジェクションノズル)などが好適である。
(2)中子の製造方法
次に、中子成形工程3に好適に採用し得る「中空状の中子1の製造方法」について説明する。
まず、中空状の中子1の製造に最も適した方法としては、三次元造型法が挙げられる。
この三次元造型法を用いた中子成形工程3について説明する。
図4に示すように、三次元造型法を利用して中空状の中子1の造型を行う中子成形工程3は、熱可塑樹脂の微粉末12を一定の堆積厚さに堆積し、次に微粉末12の堆積層に対してレーザを照射することで微粉末の堆積層を焼結するものであって、この微粉末の堆積と焼結とを堆積方向に繰り返し連続して行うことで中子1の造型を行うものである。
なお、三次元造型法が採用可能な材料としては、幾つかのものがあるが、その材料の組成などについては、後述することにする。
まず、造型装置16は、互いに距離をあけて配備された左右一対のステージ18、18と、左右のステージ18、18の間に昇降自在に配備されたパーツヘッド19とを有している。左右のステージ18、18は、互いの上面が同じ高さになるように配備されており、それぞれの上面にはステージ18を上下方向に貫通する貫通孔20が形成されている。これらの貫通孔20には、熱可塑樹脂の微粉末12が充填されており、また熱可塑樹脂の微粉末12の下側にはピストン形状のフィーダ21が上下方向に昇降自在に配備されている。
ステージ18の上側には、ステージ18の上面にその外周面が接触可能なローラ17が配備されている。このローラ17は、ステージ18の上面を転動しながら水平に移動可能になっており、左右のステージ18、18間を往来できるようになっている。
パーツヘッド19の上方には、炭酸ガスレーザのレーザガン22と、パーツヘッド19の上面に堆積した微粉末に対してレーザガン22で発生したレーザを照射する照射ミラー23とが配備されている。照射ミラー23は図示しない制御装置からの制御信号に基づいて、パーツヘッド19の上面に堆積した微粉末のうち任意部分の微粉末のみを焼結して焼結層24を形成することができるようになっており、例えばCADの断面形状データに従って制御装置から制御信号を照射ミラー23に送って断面形状データの通りの形状に焼結層24を形成できるようになっている。
上述の造型装置16と熱可塑樹脂の微粉末12とを用いて中空状の中子1を製造する際は、以下の手順に従って製造する。
まず、左ステージ18の貫通孔20のフィーダ21を上方に向かって移動させると、フィーダ21の上側に載せられた熱可塑樹脂の微粉末12がせり上がり、左ステージ18の上面に微粉末12が山盛り状に供給される。
図4(a)に示すように、ローラ17を転動させながら左ステージ18から右ステージ18に向かって水平に移動させる。そうすると、左ステージ18の上面に山盛り状に供給された微粉末12がローラ17に均されてパーツヘッド19の上面に広がり、パーツヘッド19の上面に微粉末12が均一な厚さ(0.1μmから0.2μmの厚み)で堆積する。
図4(b)に示されるように、レーザガン22で発生したレーザを照射ミラー23に導き、中空状の中子1の断面形状データに従って制御装置から制御信号を照射ミラー23に送って照射ミラー23を動かしながら微粉末12を焼結する。そうすると、パーツヘッド19の上面に堆積された微粉末12のうち中空状の中子1の断面形状に沿った部分だけにレーザが照射され、レーザの照射部分に焼結層24が形成される。
図4(c)に示されるように、レーザの照射が終了した後は、パーツヘッド19を堆積層の厚みの分だけ下降させる。そして、右ステージ18の貫通孔20のフィーダ21を上方に向かって移動させると、フィーダ21の上側に載せられた熱可塑樹脂の微粉末12がせり上がり、右ステージ18の上面に微粉末12が山盛り状に供給される。
図4(d)に示されるように、ローラ17を転動させながら右ステージ18から左ステージ18に向かって水平に移動させる。そうすると、右ステージ18の上面に山盛り状に供給された微粉末12がローラ17に均されてパーツヘッド19の上面に広がり、焼結が終了した堆積層の上面にパーツヘッド19の下降距離の厚み分だけ微粉末12が堆積する。
図4(e)に示されるように、焼結が終了した堆積層の上面にさらに堆積した堆積層に対して図4(b)の場合と同様にレーザを照射し微粉末12の焼結を行う。
図4(f)に示されるように、上述の図4(a)〜図4(e)までの手順を断面形状データの数(断面スライス数)だけ繰り返す。焼結が終了すると、未焼結の微粉末12をエアーなどで飛ばして、適宜洗浄等を行うことで中空状の中子1が得られる。
上述した三次元造型法を用いることにより、中空の中子1を短時間に成形することが容易になる。また、内部が空洞11である中空状の中子1は、射出成形工程4において大きな成形圧が加わった場合に破損し易いため、内部に補強用のリブを形成するのが好ましい。このような場合であっても、三次元造型法であれば補強リブを容易に形成できて有利である。
上述した三次元造型法を用いた中子成形工程3は、CADの三次元データに基づいて所望の形状を容易に得ることができ、また内部に空洞11があるような複雑な形状の中子1であっても簡単に形成することができる。例えば、三次元造型法を用いれば、中子1の肉厚を局部的に厚く(薄く)することも可能であり、金型13を用いた射出成形に比べて複雑な形状を得ることもできる。
また、上述した三次元造型法を用いた中子成形工程3は、射出成形工程4の金型13に合わせて中子1の形状を変化することも容易であり、金型13の形状が変化した際にも中子1の形状を自由に変更して設計変更に柔軟に対応することができる。
ところで、中空状の中子1の製造方法としては、以下に述べる方法も採用可能である。
例えば、図5に示すように、中空状の中子1を複数に分割(図例では2分割)した部材毎に射出成形し、射出成形された部材を貼り合わして中子1とすることもできる。この方法では、複数に分割した部材毎に分割金型25を用いる必要がある。
具体的には、上述した分割金型25を用いた中子成形工程3は、以下の手順で行われる。
図5(a)に示すように、まず中空状の中子1を半割した場合の左半分側の分割部材1Lを射出成形する。この左半分側の分割部材1Lの射出成形には、中子1の左半分側の外側形状を型取った雌金型26と、中子1の左半分側の内側形状を型取った雄金型27とが用いられる。互いに衝き合わされた雌金型26と雄金型27との間に、湯口28から予め溶融混練された熱可塑樹脂の微粉末12を注入し、中子1の左半分側の分割部材1Lを射出成形する。
図5(b)に示すように、中子1の左半分側の分割部材1Lと同様な手順で中子1の右半分側の分割部材1Rを射出成形する。
図5(c)に示すように、射出成形された中子1の左半分側の分割部材1Lと右半分側の分割部材1Rとを、超音波融着、熱圧着、接着剤などを用いて接合する。そうすると、図5(d)に示すような中空状の中子1が得られる。
このようにして得られた中空状の中子1を用いて、射出成形工程4、中子除去工程5、焼結工程6を行うことで、製品焼結体Wを成形することができる。
この方法で製造された中空状の中子1は、前述した三次元造型法で得られるものより表面平滑性に優れた中子1を得ることができる。それゆえ、製品焼結体Wを表面平滑性良く成形できるという利点を備えている。
一方、図6に示すように、中空中子1をガスアシストによる射出成形法により成形することもできる。
具体的には、ガスアシストの射出成形法による中子成形工程3は、以下の手順で行われる。
図6(a)に示すように、中子1の外側形状を型取った一対の金型29、30を用意し、これらの金型同士を衝き合わせる。
図6(b)に示すように、互いに衝き合わされた両金型29、30の間に、湯口31から予め溶融混練された熱可塑樹脂の微粉末12を注入する。このとき、湯口31から、注入される熱可塑樹脂の内側に、高圧のアシストガス32を同時に注入するようにする。
そうすると、注入された高圧のアシストガス32が、内部から熱可塑性樹脂を金型29、30の内面に押し付けるようになり、図6(c)に示すような中空状の射出成形体9を成形することができる。
この方法で製造された中空状の中子1は、前述した三次元造型法で得られるものより表面平滑性に優れた中子1を継ぎ目なく得ることができ、また分割金型25を用いた射出成形のように金型を多く用いないため、成形に必要な工程数が減って製造工程が簡略化でき、表面平滑性に優れた製品焼結体Wを安価に得ることができるという利点を備えている。
(3)製品焼結体や中子を形成するに最適な材料
最後に、本発明に係る製品焼結体W、本発明に係る中子1(中空中子1)に最適な材料に関する説明を行う。
なお、以下述べる材料に関しては、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
すなわち、製品焼結体Wの製造方法で用いられる焼結材料7、有機バインダ8及び熱可塑性樹脂には、次のようなものを用いればよい。
製品焼結体Wは、焼結材料7を焼結して形成されている。この焼結材料7は、金属材料の粉末、セラミックスの粉末、または金属炭化物や金属窒化物を含む複合材料(例えば、サーメット)の粉末と、粉末同士を結合させて後述する射出成形体9の保形を可能とする有機バインダ8と、を有している。
焼結材料7として用いられる金属材料の粉末としては、鉄(鋼)、チタン、銅、ニッケル、クロム、タングステン等の金属若しくはこれらの金属を含む合金(例えば、ステンレス)の粉末を用いることができる。金属材料の粉末は、その重量平均粒径が1μm〜30μm、好ましくは3μm〜20μmとされるのが良い。金属材料の粉末の重量平均粒径を1μm以上、好ましくは3μm以上とすることで、有機バインダ8の配合量を抑えることが可能となり、バインダを多量に配合した製品焼結体Wに起こりやすい変形、例えば割れまたは膨れ等を防止することも可能となる。
また、金属材料の粉末の重量平均粒径を30μm以下、好ましくは20μm以下にすることにより、金属材料の粉末と有機バインダ8とが成形時などに分離することを抑えられ、緻密さと強度とを併せ持った製品焼結体Wを得ることが可能となる。
焼結材料7として用いられるセラミックスの粉末には、酸化物、窒化物または炭化物などのセラミックスの粉末が用いられる。酸化物のセラミックスにはアルミナやジルコニアを含むものが、また窒化物セラミックスには窒化珪素や窒化アルミを含むものが、さらに炭化物のセラミックスとしては炭化珪素を含むものが好適に用いられる。
上述したセラミックスの粉末には、例えばサイアロン(Si-Al-O-N系セラミックス)のように酸化物、窒化物または炭化物などの粉末がそれぞれ混合されたものを用いても良い。また、これらのセラミックスの粉末には、焼結後の密度や強度等の向上を目的として、酸化イットリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化セリウム等の粉末を適宜添加することもできる。
また、セラミックスの粉末は、その重量平均粒径が5μm以下、好ましくは0.01μm〜2.0μm以下とされるのが良い。セラミックスの粉末の重量平均粒径を5μm以下、好ましくは2.0μm以下とすることで、十分な密度を備えた製品焼結体Wを得ることが可能となる。
焼結材料7として用いられる複合材料の粉末は、炭化タングステン、窒化チタンまたは炭化チタンの粉末に、コバルトやニッケル等の添加物を添加した材料などを用いることができる。これらのコバルトやニッケル等の添加物を添加することにより、製品焼結体Wの強度や密度を適宜調節することが可能となる。
これらの炭化タングステン、窒化チタンまたは炭化チタンの粉末は、その重量平均粒径が5μm以下、好ましくは3μm以下とされるのが良い。重量平均粒径を5μm以下、好ましくは3μm以下とすることで、製品焼結体Wの強度や密度を向上させることが可能となるからである。また、複合材料に添加されるコバルト、ニッケル等の添加物は、製品焼結体Wの密度向上のためにその重量平均粒径が10μm以下、好ましくは5μm以下とされるのが好ましい。
なお、上述した金属材料、セラミックス材料及び複合材料に用いられる重量平均粒径は、レーザ回折・散乱法を用いた粒度分布測定装置によって得られるものであり、粒度分布測定装置で測定される粒度分布に基づいて算術計算した場合の重量累積50%の平均径を意味している。
有機バインダ8は、母材成分と、熱可塑成分とで構成されている。
母材成分は、ポリスチレン、ポリブチルメタクリレート、ポリオキシメチレン、ポリプロピレン、スチレンアクリル共重合体、アモルファスポリオレフィン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・メチルアクリレート共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ブチルアクリレート共重合体、エチレングリシジルメタクリレート共重合体より選ばれる少なくとも1種類以上からなる樹脂である。
熱可塑成分は、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、高級脂肪酸、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、カルナバワックス、モンタン系ワックス、ウレタン化ワックス、無水マレイン酸変性ワックスより選ばれる少なくとも1種類以上からなる有機化合物である。
有機バインダ8は、加熱により上述した熱可塑成分が溶解して可塑状態となり、冷却する際に接着力を発揮して粉体の粒子同士を結着する機能を備えている。
上述した熱可塑樹脂の微粉末12は、熱可塑性樹脂のマトリクス成分に、マトリクス成分の溶解を促進する溶解促進成分を溶融混合した後、微粉末に調整したものである。
マトリクス成分に用いられる熱可塑性樹脂としては、ポリアセタール樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレンアクリル共重合体樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレンブチルメタクリレート共重合体樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリ乳酸樹脂などを用いることができる。
また、溶解促進成分には、パラフィンワックス、モンタン酸系ワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、カルナバワックス、ウレタン化ワックス、無水マレイン酸変性ワックスなどを用いることができる。これらのマトリクス成分及び溶解促進成分は、上述したものの中から複数を選んでも良い。
熱可塑樹脂の微粉末12は、射出成形体9の成形性(転写精度)を良好にするために、その重量平均粒径が100μm以下、好ましくは70μm以下とされるのが良い。このような100μm以下、好ましくは70μm以下の微粉末は、混練設備でマトリクス成分と溶解促進成分とを溶融混練し、この混練された材料を5mm以下のペレットにし、さらにペレットを冷凍粉砕し、冷凍粉砕物を平均粒径100ミクロン以下に篩い分けする方法で得ることができる。
また、別の方法としては、熱可塑樹脂と、この熱可塑樹脂よりも低融点の水溶性高分子とを混練設備を用いて溶融混練し、混練物を水中に投入して水溶性高分子だけを水に溶かし、水に不溶な熱可塑性樹脂の粒子だけを濾過し、濾過した熱可塑性樹脂の粒子を平均粒径100μm以下に篩い分けする方法で得ることもできる。
出願人は、上述した「三次元造形法」、「分割金型法」、「(ガスアシストによる)射出成型法」を用いて中子1を作成した上で、作成した中子1を用い製品焼結体Wを製造することで、ヒビや膨れの発生防止といった効果や中子1の容易な除去が容易に行えるといった効果を確認している。
次に、実施例及び比較例を用いて、本発明の製品焼結体Wの製造方法をさらに詳しく説明する。
[実施例1]
まず、三次元造形法を用いてPP(ポリプロピレン)の熱可塑樹脂の微粉末12から厚み0.3mmの中子1を、内部が中空となるように成形した。
次に、加圧ニーダ中に、金属材料の粉末としてSUS316Lの粉末と、有機バインダ8として有機バインダAを配合したものを投入した。その後、加圧ニーダ中でSUS316Lの粉末と有機バインダAとを180℃×60分間に亘って混練した。ニーダで混練された混練物を造粒装置(ペレタイザ)で、直径3mmφ×長さ6mmのペレットに加工し、焼結材料Aを得た。
上述した中空状の中子1を金型13内に設置し、中子1と金型13との間に予め成形温度180℃に混練溶融された焼結材料Aを注入しつつ、中子1の周囲に射出成形体9を成形した。得られた射出成形体9を脱脂温度600℃に加熱された窒素ガス中で加熱脱脂工程10を行った。この加熱脱脂工程10の加熱を利用して、射出成形体9の内部に保持された中子1も除去された。最後に、加熱脱脂(中子1除去)が終了した射出成形体9を、焼結温度1370℃のアルゴンガス中に保持して焼結を行った。
<焼結材料A>
SUS316Lの粉末 58 vol%
有機バインダA 42 vol%
<有機バインダA>
(a)ポリスチレン 25.0 vol%
(b)ポリプロピレン 20.0 vol%
(c)パラフィンワックス(融点:60℃) 40.0 vol%
(d)ポリプロピレンワックス 10.0 vol%
(e)ステアリン酸 5.0 vol%
得られた製品焼結体Wについては、内部の中空とされた部分の表面を観察した。表1に示すように、実施例1については、製品焼結体Wにクラックや膨れが見られず、またRmaxが3μm以下と平滑な表面を備えた製品焼結体Wを得ることができた。
[実施例2]
分割された中子1の外形に合わせて形成された分割金型25内に、PS(ポリスチレン)の熱可塑樹脂の微粉末12を注入して射出成形を行い、射出成形された部材同士を貼り合わして中空状の中子1を成形した。
なお、焼結材料7は実施例1と同じであり、また中子成形工程3以降の工程、すなわち射出成形工程4、中子除去工程5(加熱脱脂工程10)、焼結工程6も実施例1と同様の条件で行った。
表1に示すように、実施例2についても、製品焼結体Wにクラックや膨れが見られず、またRmaxが10μm以下の製品焼結体Wを得ることができた。
[実施例3]
中空状の中子1については、実施例2と同じポリスチレンの微粉末12から、ガスアシストによる射出成形法により成形した。ガスアシスト法により得られた射出成形体9の平均肉厚は2mm程度であった。得られた中子1を用いて実施例1と同様の射出成形体9を成形した。成形された射出成形体9は、実施例1に準じた加熱脱脂工程10(中子除去工程5)、焼結工程6を経て製品焼結体Wとした。
表1に示すように、実施例3についても、製品焼結体Wにクラックや膨れが見られず、またRmaxが10μm以下の製品焼結体Wを得ることができた。
[実施例4]
まず、実施例1同様に三次元造形法を用いてPP(ポリプロピレン)の熱可塑樹脂の微粉末12から厚み0.3mmの中子1を、内部が中空となるように成形した。
次に、加圧ニーダ中に、セラミックス材料の粉末としてアルミナの粉末と、有機バインダ8として有機バインダBを配合して投入した。その後、加圧ニーダ中でアルミナの粉末と有機バインダBとを160℃×60分間に亘って混練した。ニーダで混練された混練物を造粒装置(ペレタイザ)で、直径3mmφ×長さ6mmのペレットに加工し、焼結材料Bを得た。
上述した中空状の中子1を金型13内に設置し、中子1と金型13との間に予め成形温度170℃に混練溶融された焼結材料Bを注入しつつ、中子1の周囲に射出成形体9を成形した。得られた射出成形体9を脱脂温度500℃に加熱された空気中で加熱脱脂工程10を行った。この加熱脱脂工程10の加熱を利用して、射出成形体9の内部に保持された中子1も除去された。最後に、加熱脱脂(中子除去)が終了した射出成形体9を、焼結温度1600℃の空気中に保持して焼結を行った。
<焼結材料B>
アルミナの粉末 60 vol%
有機バインダB 40 vol%
<有機バインダB>
(a)エチレン酢酸ビニル共重合体 25.0 vol%
(b)ポリブチルメタクリレート 30.0 vol%
(c)パラフィンワックス(融点:60℃) 30.0 vol%
(d)フタル酸ジオクチル 10.0 vol%
(e)ステアリン酸 5.0 vol%
得られた製品焼結体Wについては、実施例1同様に、内部の中空とされた部分の表面を観察した。表1に示すように、実施例4についても、製品焼結体Wにクラックや膨れが見られず、またRmaxが0.3μm以下の製品焼結体Wを得ることができた。
[実施例5]
分割された中子1の外形に合わせて形成された分割金型25内に、PS(ポリスチレン)の熱可塑樹脂を注入して射出成形を行い、射出成形された部材同士を貼り合わして中空状の中子1を成形した。
なお、焼結材料7は実施例4と同じであり、また中子成形工程3以降の工程、すなわち射出成形工程4、中子除去工程5(加熱脱脂工程10)、焼結工程6も実施例4と同様にして行った。
表1に示すように、実施例5についても、焼結体にクラックや膨れが見られず、またRmaxが1μm以下の焼結体を得ることができた。
[実施例6]
中空状の中子1については、実施例5と同じポリスチレン微粉末12から、ガスアシストによる射出成形法により成形した。ガスアシスト法により得られた射出成形体9の平均肉厚は2mm程度であった。得られた中子1を用いて実施例4と同様の射出成形体9を成形した。成形された射出成形体9は、実施例1に準じた加熱脱脂工程10(中子除去工程5)、焼結工程6を経て製品焼結体Wとした。
表1に示すように、実施例6についても、製品焼結体Wにクラックや膨れが見られず、またRmaxが1μm以下の製品焼結体Wを得ることができた。
[実施例7]
まず、実施例5同様に、分割された中子1の外形に合わせて形成された分割金型25内に、PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)の熱可塑樹脂の微粉末12を注入して射出成形を行い、射出成形された部材同士を貼り合わして中空状の中子1を成形した。
次に、加圧ニーダ中に、セラミックス材料の粉末としてアルミナの粉末と、有機バインダ8としてバインダ組成Cを配合して投入した。その後、加圧ニーダ中でアルミナの粉末と有機バインダCとを160℃×60分間に亘って混練した。ニーダで混練された混練物を造粒装置(ペレタイザ)で、直径3mmφ×長さ6mmのペレットに加工し、焼結材料Cを得た。
上述した中空状の中子1を金型13内に設置し、中子1と金型13との間に予め成形温度170℃に混練溶融された焼結材料Cを注入しつつ、中子1の周囲に射出成形体9を成形した。得られた射出成形体9を、20℃に温度調節されたアセトン中に12時間に亘って浸漬させた後、脱脂温度500℃に加熱された空気中で加熱脱脂工程10を行った。この加熱脱脂工程10における有機溶媒(アセトン)への浸漬と加熱とを利用して、射出成形体9の内部に保持された中子1も除去された。最後に、加熱脱脂(中子除去)が終了した射出成形体9を、焼結温度1600℃の空気中に保持して焼結を行った。
<焼結材料C>
アルミナの粉末 60 vol%
有機バインダC 40 vol%
<有機バインダC>
(a)ポリエチレン 25.0 vol%
(b)ポリプロピレン 25.0 vol%
(c)パラフィンワックス(融点:46℃) 40.0 vol%
(d)ステアリン酸 10.0 vol%
表1に示すように、実施例7についても、製品焼結体Wにクラックや膨れが見られず、またRmaxが1μm以下の製品焼結体Wを得ることができた。
[実施例8]
まず、実施例4と同様に三次元造形法を用いてPOM(ポリアセタール樹脂)の熱可塑樹脂の微粉末12から厚み0.3mmの中子1を、内部が中空となるように成形した。
次に、加圧ニーダ中に、金属材料の粉末としてチタンの粉末と、有機バインダ8としてバインダ組成Dを配合して投入した。その後、加圧ニーダ中でチタンの粉末と有機バインダDとを180℃×60分間に亘って混練した。ニーダで混練された混練物を造粒装置(ペレタイザ)で、直径3mmφ×長さ6mmのペレットに加工し、焼結材料7を得た。
上述した中空状の中子1を金型13内に設置し、中子1と金型13との間に予め成形温度180℃に混練溶融された焼結材料7を注入しつつ、中子1の周囲に射出成形体9を成形した。得られた射出成形体9を脱脂温度600℃に加熱されたアルゴン中で加熱脱脂工程10を行った。この加熱脱脂工程10の加熱を利用して、射出成形体9の内部に保持された中子1も除去された。最後に、加熱脱脂(中子除去)が終了した射出成形体9を、焼結温度1200℃の真空中に保持して焼結を行った。
<焼結材料D>
チタン粉末 65体積%
有機バインダD 35体積%
<有機バインダD>
(a)ポリスチレン 25.0vol%
(b)ポリプロピレン 20.0vol%
(c)パラフィンワックス(融点:60℃) 40.0vol%
(d)ポリプロピレンワックス 10.0vol%
(e)ステアリン酸 5.0vol%
表1に示すように、実施例8についても、製品焼結体Wにクラックや膨れが見られず、またRmaxが12μm以下の製品焼結体Wを得ることができた。
[実施例9]
実施例9は、実施例1と同じ条件で中子成形工程3、射出成形工程4、加熱脱脂工程10、焼結工程6を行ったものである。実施例9が実施例1と異なっている点は、中子1を構成する熱可塑性樹脂にポリプロピレン系の複合樹脂材料を用いている点である。この複合樹脂材料は、ポリプロピレン(85vol%)、パラフィンワックス(10vol%)、ステアリン酸アミド(5vol%)を有しており、その平均粒径は50μmとされている。
表1に示すように、実施例9に示す製造方法で成形された製品焼結体Wについても、製品焼結体Wにクラックや膨れが見られなかった。
[実施例10]
実施例10は、実施例2と同じ条件で中子成形工程3、射出成形工程4、加熱脱脂工程10、焼結工程6を行ったものである。実施例10が実施例2と異なっている点は、中子1を構成する熱可塑性樹脂に実施例9と同じポリプロピレン系の複合樹脂材料を用いている点である。
表1に示すように、実施例10に示す製造方法で成形された製品焼結体Wについても、製品焼結体Wにクラックや膨れが見られなかった。
[比較例1]
比較例1は、実施例1と同様の金属粉末(SUS316Lの粉末)および有機バインダ8(有機バインダA)を用いて、内部が中実とされた中子1を射出成形法で成形したものである。
表1に示すように、比較例1に示す製造方法で成形された製品焼結体Wについては、製品焼結体Wの中空部分に放射状の大きなクラックが生じていた。脱脂後の成形体についても内部の観察を行ったところ、同じく放射状の大きなクラックが生じており、クラックに関しては200度以下の加熱脱脂で既に生じていることが確認された。これは中子1が中実であると、中子1を構成するポリプロピレン樹脂が熱により膨張し、射出成形体9が膨張した中子1に押されてクラックが発生したと考えられる。
[比較例2]
比較例2は、実施例7と同様のセラミックス粉末(アルミナの粉末)および有機バインダ8(有機バインダC)を用いて、内部が中実とされた中子1を射出成形法で成形したものである。
表1に示すように、比較例2に示す製造方法で成形された製品焼結体Wについては、中子1がポリメタクリル酸メチル樹脂を用いて中実に成形されており肉厚があるため、アセトン中に12時間に亘って浸漬させても中子1の溶解が十分にしなかった。なお、比較例2では、アセトンへの浸漬時間を24時間まで伸ばしても、ポリメタクリル酸メチル樹脂の溶解が完了していない。これは、溶媒として用いたアセトンに接する中子1の表面積が小さく、溶解が十分に進行しなかったためであると考えられる。
[比較例3]
比較例3は、実施例8と同様の金属粉末(チタンの粉末)および有機バインダ8(有機バインダD)を用いて、内部が中実とされた中子1を射出成形法で成形したものである。
表1に示すように、比較例3に示す製造方法で成形された製品焼結体Wについては、製品焼結体Wの中空部分に放射状の大きなクラックが生じていた。脱脂後の成形体についても内部の観察を行ったところ、同じく放射状の大きなクラックが生じており、クラックに関しては220度以下の加熱脱脂で既に生じていることが確認された。これは中子1が中実であると、中子1を構成するポリアセタール樹脂が熱により膨張し、射出成形体9が膨張した中子1に押されてクラックが発生したと考えられる。
[比較例4]
比較例4は、実施例8と同じPOM(ポリアセタール樹脂)の熱可塑樹脂の微粉末12に、実施例4の焼結材料7と同じアルミナの粉末を混合した材料を用いて、内部が中実とされた中子1を射出成形法で成形したものである。
表1に示すように、比較例4に示す製造方法で成形された製品焼結体Wについては、製品焼結体Wの中空部分に放射状の大きなクラックが生じていた。また、アルミナと有機バインダ8との複合材料からなる中子1は600℃の脱脂を行っても、アルミナが残留し、取り除くことが困難であった。
上述した実施例と比較例との比較から、中子1を中空にすることで加熱脱脂時に中子1の除去が容易にとなり、製品焼結体Wに発生するヒビやクラックが抑えられることがわかる。また、セラミックスのような加熱脱脂でも溶解しない材料で中子1を成形すると、加熱や脱脂だけでは中子1の除去が十分に行えなくなり、中子除去工程5に手間がかかることがわかる。この点から、中子1は熱可塑性樹脂を用いて中空状に成形されるのが好ましいと考えられる。
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、発明の本質を変更しない範囲で各部材の形状、構造、材質、組み合わせなどを適宜変更可能である。
例えば、上記実施形態では、ローラ17で均された堆積層に対して炭酸ガスレーザを照射する製造装置を例示した。しかし、レーザの種類は炭酸ガスレーザに限定されない。例えば半導体レーザや赤外線レーザなどを用いることもできる。また、ローラ17に代えてワイパのような部材を用いて堆積層を形成することもできる。
なお、上記実施形態では、中子1として円筒状の部分と球状の部分とを組み合わせたような空洞11を有するものを用いたが、中子1の形状は例示したものに限られない。例えば、周囲が壁面で囲まれた空洞11を内部に備えたものであって、外部から隔離されたような閉じられた空洞11を内部に備えた中子1を成形することも可能である。
1 中子(中空中子)
1L中子の左半分側
1R中子の右半分側
2 製品焼結体の中空部
2a中空部の円筒状の部分
2b中空部の球状の部分
3 中子成形工程
4 射出成形工程
5 中子除去工程
6 焼結工程
7 焼結材料
8 有機バインダ
9 射出成形体
10 加熱脱脂工程
11 空洞
12 熱可塑性樹脂の微粉末
13 金型(焼結体成形用)
14 収容部
15 流入口
16 (三次元造型法の)造型装置
17 ローラ
18 ステージ
19 パーツヘッド
20 貫通孔
21 フィーダ
22 レーザガン
23 照射ミラー
24 焼結層
25 分割金型
26 雌金型
27 雄金型
28 湯口
29 ガスアシスト法の金型(中子成形用)
31 湯口
32 アシストガス
W 製品焼結体

Claims (4)

  1. 中空状の中子を成形する中子成形工程と、
    中空状の中子と、この中空状の中子を内部に備えた金型との間に焼結材料を射出成形して射出成形体を成形する射出成形工程と、
    射出成形体の内部から中空状の中子を除去する中子除去工程と、
    射出成形体を焼結して焼結体を得る焼結工程と、
    を備えた製品焼結体の製造方法。
  2. 前記焼結材料が有機バインダを含む場合には、前記射出成形体を加熱して射出成形体から有機バインダを除去する加熱脱脂工程を備えていて、
    前記中子除去工程は、前記加熱脱脂工程における加熱を利用して、前記射出成形体の内部から中空状の中子を除去することを特徴とする請求項1に記載の製品焼結体の製造方法。
  3. 前記中子成形工程は、周囲が壁面で囲まれた空洞を内部に備えた中空状の中子を成形することを特徴とする請求項1又は2に記載の製品焼結体の製造方法。
  4. 前記中子成形工程は、レーザを用いた三次元造形法によって前記中子を中空状に成形することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の製品焼結体の製造方法。
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