JP2012031477A - 中空焼結体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の製品焼結体Wの製造方法は、中空状の中子1を成形する中子成形工程3と、中空状の中子1と、この中空状の中子1を内部に備えた金型13との間に焼結材料7を射出成形して射出成形体9を成形する射出成形工程4と、射出成形体9の内部から中空状の中子1を除去する中子除去工程5と、射出成形体9を焼結して焼結体Wを得る焼結工程6と、を備えている。
【選択図】図2
Description
例えば、特許文献1や特許文献2には、予め熱可塑性樹脂で「中実の中子」を成形しておき、この熱可塑性の中子を金型内に配備した後、射出成形材料を射出成形する方法が開示されている。この方法では、射出成形後の加熱脱脂や焼結において熱可塑性の中子が溶解して分解除去されるため、中空焼結体を容易に成形することができる。
例えば、特許文献3の成形方法は、射出成形材料として有機バインダを含む材料を用いるものであり、予め射出成形材料と同じ材料を用いて中子を成形し、成形された中子を加熱脱脂して有機バインダを60〜90%脱脂する。そして、この脱脂された中子を金型内に設置し、脱脂された中子と金型との間に射出成形を行って中空の焼結体を得るものである。このように予め加熱脱脂により有機バインダが除去された中子を用いれば、中子からガスが発生することはなく、寸法精度の良い中空焼結体を成形することができる。
また、特許文献4や特許文献5のように中子を化学的に除去する方法では、中子が中実(中が詰まった形)である場合や、中子のサイズが小さく構造が複雑である場合に、酸触媒や苛性ソーダなどが中子の内部に十分に入り込まず、中子を確実に除去できないことがある。また、高温の苛性ソーダなどのように反応性が高い薬剤は焼結体への影響が無視できない。加えて、中子がセラミックス製である場合、焼結体の材質によっては中子と焼結体とが融着してしまい、中子の除去が困難になることがある。
即ち、本発明の中空焼結体の製造方法は、中空状の中子を成形する中子成形工程と、中空状の中子と、この中空状の中子を内部に備えた金型との間に焼結材料を射出成形して射出成形体を成形する射出成形工程と、射出成形体の内部から中空状の中子を除去する中子除去工程と、射出成形体を焼結して焼結体を得る焼結工程と、を備えていることを特徴とするものである。
中空焼結体としては、さまざまな形状のものが挙げられるが、本実施形態では、外形が円錐台形状で、内部に円筒状の部分2aと球状の部分2bとを組み合わせたような中空部2を備えた中空焼結体を製造する製造方法を例に挙げて本発明を説明する。
なお、本発明の製造方法で製造される中空焼結体を、以下「製品焼結体W」と呼ぶ。
(1)製品焼結体Wの製造方法の説明
(2)中空状の中子1の製造方法の説明
(3)製品焼結体Wや中空状の中子1を形成するに最適な材料の説明
を順を追って述べる。
まず、本発明に係る製品焼結体Wの製造方法について説明する。
図1(a)及び(b)に示されるように、第1実施形態の製品焼結体W(中空焼結体)の外形は、その軸心を上下方向に向けたような略円錐台形状となっている。製品焼結体Wの内部には中空部2が形成されている。この中空部2は、製品焼結体Wの上面の開口及び下面の開口から製品焼結体Wの中心に向かって上下方向に伸びる円筒状の部分2aと、この円筒状の部分2aにおける上下方向の中途側に組み合わされた球状の部分2bとからなっている。製品焼結体Wは、上下の開口(円筒状の部分2a)に比べて奥(球状の部分2b)の方が広幅になっていて、内部の中空部2を中子1を用いて成形した後で上下の開口から中子1を外に引き抜こうとしても、径が大きな球状の部分2bが開口に引っかかって中子1を物理的に取り出すことが困難になるような形状となっている。
そこで、本発明の製造方法では、図2に示すように、以下に示す中子成形工程3、射出成形工程4、中子除去工程5及び焼結工程6という4つの製造工程を設けて、焼結の前に中子1を確実に除去することで製品焼結体Wを製造している。
なお、製品焼結体Wを構成する焼結材料7が後述する有機バインダ8を含む場合には、射出成形体9を加熱して有機バインダ8を除去する加熱脱脂工程10が設けられ、この加熱脱脂工程10の加熱を利用して中子1を除去する中子除去工程5が行われる。
図2に示すように、中子成形工程3は、中空状の中子1を成形する工程である。
この中子成形工程3で成形される中空状の中子1は、図1(c)や図1(d)に示すように、周囲が壁面で囲まれた空洞11を内部に備えていて、言うなれば、花瓶のような薄肉の形状を有するものとなっている。
上述した中子1は、製品焼結体Wの内部の中空部2に合わせた外形を有しており、またその内部は空洞11とされている。この中空状の中子1は、後述する加熱脱脂工程10で加えられる加熱で溶解可能な熱可塑樹脂の微粉末12から形成されており、これらの微粉末12を用いて十分に溶解可能な厚みに形成されている。また、中空状の中子1は、射出成形後に加熱溶融や化学的な溶解により除去しやすいように、あるいは射出成形に加わる成形圧力に耐えられるように、その厚みが局部的に薄く(厚く)されていてもよいし、内部に補強用のリブを備えていても良い。
金型13は、内部が空洞とされた筺状に形成されており、この内部の空洞が中空状の中子1を収容可能な収容部14とされている。金型13は左右に分割可能とされており、一方の金型13には収容部14に焼結材料7を流し入れる流入口15が形成されている。
図3(a)に示すように、射出成形工程4では、金型13の収容部14に中空状の中子1を収容して、分割された金型13同士を突き合わせて収容部14内に中子1を設置する。そうすると、中子1が金型13の収容部14の上面と下面とに面状態で接触し、金型13の側面と収容部14との間に焼結材料7を射出可能な隙間が水平方向に形成される。
図2及び図3に示す如く、第1実施形態の製造方法には射出成形体9から有機バインダ8を加熱して除去する加熱脱脂工程10が設けられており、上述した中子除去工程5は加熱脱脂工程10における加熱を利用して射出成形体9の内部より、熱可塑樹脂の微粉末12を用いて形成された中空状の中子1を溶解して除去する構成となっている。
なお、第1実施形態の製造方法では、加熱脱脂工程10における加熱を利用して射出成形体9の内部から中空状の中子1を除去する中子除去工程5を用いたが、中子1を除去する方法は加熱によるものに限られない。例えば、中空状の中子1を構成する熱可塑樹脂に有機溶媒に可溶なものを用い、射出成形工程4の後に有機溶媒を用いて中子1を溶解除去する中子除去工程5を実施しても良い。また、中子1を構成する熱可塑樹脂に酸やアルカリに可溶なものを用いる場合には、射出成形工程4後に酸やアルカリを用いて中子1を溶解除去する中子除去工程5を実施しても良い。このような有機溶媒や酸・アルカリを用いた中子除去工程5を実施する場合は、中子除去工程5が加熱脱脂工程10と別工程として設けられていても良い。
また、中実なものに比べて内部が空洞とされた中空状の中子1は薄肉であるため、中子除去工程5に必要な時間が短時間で済み、また中子1が除去されずに残ることもない。それゆえ、中子1の除去が困難な場合、例えば製品焼結体Wのサイズが小さい場合や中空のような複雑な形状の場合に好ましく用いられる。
ところで、本発明に係る製造方法で製造される製品焼結体Wとしては、様々なものが考えられるが、切削工具、燃料電池の電極材、スピーカの振動板、スタティックミキサ、自動車などの燃料供給系統に用いられる部材(例えば、燃料インジェクションノズル)などが好適である。
次に、中子成形工程3に好適に採用し得る「中空状の中子1の製造方法」について説明する。
この三次元造型法を用いた中子成形工程3について説明する。
図4に示すように、三次元造型法を利用して中空状の中子1の造型を行う中子成形工程3は、熱可塑樹脂の微粉末12を一定の堆積厚さに堆積し、次に微粉末12の堆積層に対してレーザを照射することで微粉末の堆積層を焼結するものであって、この微粉末の堆積と焼結とを堆積方向に繰り返し連続して行うことで中子1の造型を行うものである。
まず、造型装置16は、互いに距離をあけて配備された左右一対のステージ18、18と、左右のステージ18、18の間に昇降自在に配備されたパーツヘッド19とを有している。左右のステージ18、18は、互いの上面が同じ高さになるように配備されており、それぞれの上面にはステージ18を上下方向に貫通する貫通孔20が形成されている。これらの貫通孔20には、熱可塑樹脂の微粉末12が充填されており、また熱可塑樹脂の微粉末12の下側にはピストン形状のフィーダ21が上下方向に昇降自在に配備されている。
パーツヘッド19の上方には、炭酸ガスレーザのレーザガン22と、パーツヘッド19の上面に堆積した微粉末に対してレーザガン22で発生したレーザを照射する照射ミラー23とが配備されている。照射ミラー23は図示しない制御装置からの制御信号に基づいて、パーツヘッド19の上面に堆積した微粉末のうち任意部分の微粉末のみを焼結して焼結層24を形成することができるようになっており、例えばCADの断面形状データに従って制御装置から制御信号を照射ミラー23に送って断面形状データの通りの形状に焼結層24を形成できるようになっている。
まず、左ステージ18の貫通孔20のフィーダ21を上方に向かって移動させると、フィーダ21の上側に載せられた熱可塑樹脂の微粉末12がせり上がり、左ステージ18の上面に微粉末12が山盛り状に供給される。
図4(d)に示されるように、ローラ17を転動させながら右ステージ18から左ステージ18に向かって水平に移動させる。そうすると、右ステージ18の上面に山盛り状に供給された微粉末12がローラ17に均されてパーツヘッド19の上面に広がり、焼結が終了した堆積層の上面にパーツヘッド19の下降距離の厚み分だけ微粉末12が堆積する。
図4(f)に示されるように、上述の図4(a)〜図4(e)までの手順を断面形状データの数(断面スライス数)だけ繰り返す。焼結が終了すると、未焼結の微粉末12をエアーなどで飛ばして、適宜洗浄等を行うことで中空状の中子1が得られる。
ところで、中空状の中子1の製造方法としては、以下に述べる方法も採用可能である。
例えば、図5に示すように、中空状の中子1を複数に分割(図例では2分割)した部材毎に射出成形し、射出成形された部材を貼り合わして中子1とすることもできる。この方法では、複数に分割した部材毎に分割金型25を用いる必要がある。
図5(a)に示すように、まず中空状の中子1を半割した場合の左半分側の分割部材1Lを射出成形する。この左半分側の分割部材1Lの射出成形には、中子1の左半分側の外側形状を型取った雌金型26と、中子1の左半分側の内側形状を型取った雄金型27とが用いられる。互いに衝き合わされた雌金型26と雄金型27との間に、湯口28から予め溶融混練された熱可塑樹脂の微粉末12を注入し、中子1の左半分側の分割部材1Lを射出成形する。
図5(c)に示すように、射出成形された中子1の左半分側の分割部材1Lと右半分側の分割部材1Rとを、超音波融着、熱圧着、接着剤などを用いて接合する。そうすると、図5(d)に示すような中空状の中子1が得られる。
この方法で製造された中空状の中子1は、前述した三次元造型法で得られるものより表面平滑性に優れた中子1を得ることができる。それゆえ、製品焼結体Wを表面平滑性良く成形できるという利点を備えている。
具体的には、ガスアシストの射出成形法による中子成形工程3は、以下の手順で行われる。
図6(a)に示すように、中子1の外側形状を型取った一対の金型29、30を用意し、これらの金型同士を衝き合わせる。
そうすると、注入された高圧のアシストガス32が、内部から熱可塑性樹脂を金型29、30の内面に押し付けるようになり、図6(c)に示すような中空状の射出成形体9を成形することができる。
最後に、本発明に係る製品焼結体W、本発明に係る中子1(中空中子1)に最適な材料に関する説明を行う。
なお、以下述べる材料に関しては、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
すなわち、製品焼結体Wの製造方法で用いられる焼結材料7、有機バインダ8及び熱可塑性樹脂には、次のようなものを用いればよい。
焼結材料7として用いられる金属材料の粉末としては、鉄(鋼)、チタン、銅、ニッケル、クロム、タングステン等の金属若しくはこれらの金属を含む合金(例えば、ステンレス)の粉末を用いることができる。金属材料の粉末は、その重量平均粒径が1μm〜30μm、好ましくは3μm〜20μmとされるのが良い。金属材料の粉末の重量平均粒径を1μm以上、好ましくは3μm以上とすることで、有機バインダ8の配合量を抑えることが可能となり、バインダを多量に配合した製品焼結体Wに起こりやすい変形、例えば割れまたは膨れ等を防止することも可能となる。
焼結材料7として用いられるセラミックスの粉末には、酸化物、窒化物または炭化物などのセラミックスの粉末が用いられる。酸化物のセラミックスにはアルミナやジルコニアを含むものが、また窒化物セラミックスには窒化珪素や窒化アルミを含むものが、さらに炭化物のセラミックスとしては炭化珪素を含むものが好適に用いられる。
焼結材料7として用いられる複合材料の粉末は、炭化タングステン、窒化チタンまたは炭化チタンの粉末に、コバルトやニッケル等の添加物を添加した材料などを用いることができる。これらのコバルトやニッケル等の添加物を添加することにより、製品焼結体Wの強度や密度を適宜調節することが可能となる。
有機バインダ8は、母材成分と、熱可塑成分とで構成されている。
上述した熱可塑樹脂の微粉末12は、熱可塑性樹脂のマトリクス成分に、マトリクス成分の溶解を促進する溶解促進成分を溶融混合した後、微粉末に調整したものである。
マトリクス成分に用いられる熱可塑性樹脂としては、ポリアセタール樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレンアクリル共重合体樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレンブチルメタクリレート共重合体樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリ乳酸樹脂などを用いることができる。
熱可塑樹脂の微粉末12は、射出成形体9の成形性(転写精度)を良好にするために、その重量平均粒径が100μm以下、好ましくは70μm以下とされるのが良い。このような100μm以下、好ましくは70μm以下の微粉末は、混練設備でマトリクス成分と溶解促進成分とを溶融混練し、この混練された材料を5mm以下のペレットにし、さらにペレットを冷凍粉砕し、冷凍粉砕物を平均粒径100ミクロン以下に篩い分けする方法で得ることができる。
次に、実施例及び比較例を用いて、本発明の製品焼結体Wの製造方法をさらに詳しく説明する。
まず、三次元造形法を用いてPP(ポリプロピレン)の熱可塑樹脂の微粉末12から厚み0.3mmの中子1を、内部が中空となるように成形した。
次に、加圧ニーダ中に、金属材料の粉末としてSUS316Lの粉末と、有機バインダ8として有機バインダAを配合したものを投入した。その後、加圧ニーダ中でSUS316Lの粉末と有機バインダAとを180℃×60分間に亘って混練した。ニーダで混練された混練物を造粒装置(ペレタイザ)で、直径3mmφ×長さ6mmのペレットに加工し、焼結材料Aを得た。
<焼結材料A>
SUS316Lの粉末 58 vol%
有機バインダA 42 vol%
<有機バインダA>
(a)ポリスチレン 25.0 vol%
(b)ポリプロピレン 20.0 vol%
(c)パラフィンワックス(融点:60℃) 40.0 vol%
(d)ポリプロピレンワックス 10.0 vol%
(e)ステアリン酸 5.0 vol%
得られた製品焼結体Wについては、内部の中空とされた部分の表面を観察した。表1に示すように、実施例1については、製品焼結体Wにクラックや膨れが見られず、またRmaxが3μm以下と平滑な表面を備えた製品焼結体Wを得ることができた。
分割された中子1の外形に合わせて形成された分割金型25内に、PS(ポリスチレン)の熱可塑樹脂の微粉末12を注入して射出成形を行い、射出成形された部材同士を貼り合わして中空状の中子1を成形した。
なお、焼結材料7は実施例1と同じであり、また中子成形工程3以降の工程、すなわち射出成形工程4、中子除去工程5(加熱脱脂工程10)、焼結工程6も実施例1と同様の条件で行った。
表1に示すように、実施例2についても、製品焼結体Wにクラックや膨れが見られず、またRmaxが10μm以下の製品焼結体Wを得ることができた。
中空状の中子1については、実施例2と同じポリスチレンの微粉末12から、ガスアシストによる射出成形法により成形した。ガスアシスト法により得られた射出成形体9の平均肉厚は2mm程度であった。得られた中子1を用いて実施例1と同様の射出成形体9を成形した。成形された射出成形体9は、実施例1に準じた加熱脱脂工程10(中子除去工程5)、焼結工程6を経て製品焼結体Wとした。
表1に示すように、実施例3についても、製品焼結体Wにクラックや膨れが見られず、またRmaxが10μm以下の製品焼結体Wを得ることができた。
まず、実施例1同様に三次元造形法を用いてPP(ポリプロピレン)の熱可塑樹脂の微粉末12から厚み0.3mmの中子1を、内部が中空となるように成形した。
次に、加圧ニーダ中に、セラミックス材料の粉末としてアルミナの粉末と、有機バインダ8として有機バインダBを配合して投入した。その後、加圧ニーダ中でアルミナの粉末と有機バインダBとを160℃×60分間に亘って混練した。ニーダで混練された混練物を造粒装置(ペレタイザ)で、直径3mmφ×長さ6mmのペレットに加工し、焼結材料Bを得た。
<焼結材料B>
アルミナの粉末 60 vol%
有機バインダB 40 vol%
<有機バインダB>
(a)エチレン酢酸ビニル共重合体 25.0 vol%
(b)ポリブチルメタクリレート 30.0 vol%
(c)パラフィンワックス(融点:60℃) 30.0 vol%
(d)フタル酸ジオクチル 10.0 vol%
(e)ステアリン酸 5.0 vol%
得られた製品焼結体Wについては、実施例1同様に、内部の中空とされた部分の表面を観察した。表1に示すように、実施例4についても、製品焼結体Wにクラックや膨れが見られず、またRmaxが0.3μm以下の製品焼結体Wを得ることができた。
分割された中子1の外形に合わせて形成された分割金型25内に、PS(ポリスチレン)の熱可塑樹脂を注入して射出成形を行い、射出成形された部材同士を貼り合わして中空状の中子1を成形した。
なお、焼結材料7は実施例4と同じであり、また中子成形工程3以降の工程、すなわち射出成形工程4、中子除去工程5(加熱脱脂工程10)、焼結工程6も実施例4と同様にして行った。
表1に示すように、実施例5についても、焼結体にクラックや膨れが見られず、またRmaxが1μm以下の焼結体を得ることができた。
中空状の中子1については、実施例5と同じポリスチレン微粉末12から、ガスアシストによる射出成形法により成形した。ガスアシスト法により得られた射出成形体9の平均肉厚は2mm程度であった。得られた中子1を用いて実施例4と同様の射出成形体9を成形した。成形された射出成形体9は、実施例1に準じた加熱脱脂工程10(中子除去工程5)、焼結工程6を経て製品焼結体Wとした。
表1に示すように、実施例6についても、製品焼結体Wにクラックや膨れが見られず、またRmaxが1μm以下の製品焼結体Wを得ることができた。
まず、実施例5同様に、分割された中子1の外形に合わせて形成された分割金型25内に、PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)の熱可塑樹脂の微粉末12を注入して射出成形を行い、射出成形された部材同士を貼り合わして中空状の中子1を成形した。
次に、加圧ニーダ中に、セラミックス材料の粉末としてアルミナの粉末と、有機バインダ8としてバインダ組成Cを配合して投入した。その後、加圧ニーダ中でアルミナの粉末と有機バインダCとを160℃×60分間に亘って混練した。ニーダで混練された混練物を造粒装置(ペレタイザ)で、直径3mmφ×長さ6mmのペレットに加工し、焼結材料Cを得た。
<焼結材料C>
アルミナの粉末 60 vol%
有機バインダC 40 vol%
<有機バインダC>
(a)ポリエチレン 25.0 vol%
(b)ポリプロピレン 25.0 vol%
(c)パラフィンワックス(融点:46℃) 40.0 vol%
(d)ステアリン酸 10.0 vol%
表1に示すように、実施例7についても、製品焼結体Wにクラックや膨れが見られず、またRmaxが1μm以下の製品焼結体Wを得ることができた。
まず、実施例4と同様に三次元造形法を用いてPOM(ポリアセタール樹脂)の熱可塑樹脂の微粉末12から厚み0.3mmの中子1を、内部が中空となるように成形した。
次に、加圧ニーダ中に、金属材料の粉末としてチタンの粉末と、有機バインダ8としてバインダ組成Dを配合して投入した。その後、加圧ニーダ中でチタンの粉末と有機バインダDとを180℃×60分間に亘って混練した。ニーダで混練された混練物を造粒装置(ペレタイザ)で、直径3mmφ×長さ6mmのペレットに加工し、焼結材料7を得た。
上述した中空状の中子1を金型13内に設置し、中子1と金型13との間に予め成形温度180℃に混練溶融された焼結材料7を注入しつつ、中子1の周囲に射出成形体9を成形した。得られた射出成形体9を脱脂温度600℃に加熱されたアルゴン中で加熱脱脂工程10を行った。この加熱脱脂工程10の加熱を利用して、射出成形体9の内部に保持された中子1も除去された。最後に、加熱脱脂(中子除去)が終了した射出成形体9を、焼結温度1200℃の真空中に保持して焼結を行った。
<焼結材料D>
チタン粉末 65体積%
有機バインダD 35体積%
<有機バインダD>
(a)ポリスチレン 25.0vol%
(b)ポリプロピレン 20.0vol%
(c)パラフィンワックス(融点:60℃) 40.0vol%
(d)ポリプロピレンワックス 10.0vol%
(e)ステアリン酸 5.0vol%
表1に示すように、実施例8についても、製品焼結体Wにクラックや膨れが見られず、またRmaxが12μm以下の製品焼結体Wを得ることができた。
実施例9は、実施例1と同じ条件で中子成形工程3、射出成形工程4、加熱脱脂工程10、焼結工程6を行ったものである。実施例9が実施例1と異なっている点は、中子1を構成する熱可塑性樹脂にポリプロピレン系の複合樹脂材料を用いている点である。この複合樹脂材料は、ポリプロピレン(85vol%)、パラフィンワックス(10vol%)、ステアリン酸アミド(5vol%)を有しており、その平均粒径は50μmとされている。
表1に示すように、実施例9に示す製造方法で成形された製品焼結体Wについても、製品焼結体Wにクラックや膨れが見られなかった。
実施例10は、実施例2と同じ条件で中子成形工程3、射出成形工程4、加熱脱脂工程10、焼結工程6を行ったものである。実施例10が実施例2と異なっている点は、中子1を構成する熱可塑性樹脂に実施例9と同じポリプロピレン系の複合樹脂材料を用いている点である。
表1に示すように、実施例10に示す製造方法で成形された製品焼結体Wについても、製品焼結体Wにクラックや膨れが見られなかった。
比較例1は、実施例1と同様の金属粉末(SUS316Lの粉末)および有機バインダ8(有機バインダA)を用いて、内部が中実とされた中子1を射出成形法で成形したものである。
表1に示すように、比較例1に示す製造方法で成形された製品焼結体Wについては、製品焼結体Wの中空部分に放射状の大きなクラックが生じていた。脱脂後の成形体についても内部の観察を行ったところ、同じく放射状の大きなクラックが生じており、クラックに関しては200度以下の加熱脱脂で既に生じていることが確認された。これは中子1が中実であると、中子1を構成するポリプロピレン樹脂が熱により膨張し、射出成形体9が膨張した中子1に押されてクラックが発生したと考えられる。
比較例2は、実施例7と同様のセラミックス粉末(アルミナの粉末)および有機バインダ8(有機バインダC)を用いて、内部が中実とされた中子1を射出成形法で成形したものである。
表1に示すように、比較例2に示す製造方法で成形された製品焼結体Wについては、中子1がポリメタクリル酸メチル樹脂を用いて中実に成形されており肉厚があるため、アセトン中に12時間に亘って浸漬させても中子1の溶解が十分にしなかった。なお、比較例2では、アセトンへの浸漬時間を24時間まで伸ばしても、ポリメタクリル酸メチル樹脂の溶解が完了していない。これは、溶媒として用いたアセトンに接する中子1の表面積が小さく、溶解が十分に進行しなかったためであると考えられる。
比較例3は、実施例8と同様の金属粉末(チタンの粉末)および有機バインダ8(有機バインダD)を用いて、内部が中実とされた中子1を射出成形法で成形したものである。
表1に示すように、比較例3に示す製造方法で成形された製品焼結体Wについては、製品焼結体Wの中空部分に放射状の大きなクラックが生じていた。脱脂後の成形体についても内部の観察を行ったところ、同じく放射状の大きなクラックが生じており、クラックに関しては220度以下の加熱脱脂で既に生じていることが確認された。これは中子1が中実であると、中子1を構成するポリアセタール樹脂が熱により膨張し、射出成形体9が膨張した中子1に押されてクラックが発生したと考えられる。
比較例4は、実施例8と同じPOM(ポリアセタール樹脂)の熱可塑樹脂の微粉末12に、実施例4の焼結材料7と同じアルミナの粉末を混合した材料を用いて、内部が中実とされた中子1を射出成形法で成形したものである。
上述した実施例と比較例との比較から、中子1を中空にすることで加熱脱脂時に中子1の除去が容易にとなり、製品焼結体Wに発生するヒビやクラックが抑えられることがわかる。また、セラミックスのような加熱脱脂でも溶解しない材料で中子1を成形すると、加熱や脱脂だけでは中子1の除去が十分に行えなくなり、中子除去工程5に手間がかかることがわかる。この点から、中子1は熱可塑性樹脂を用いて中空状に成形されるのが好ましいと考えられる。
例えば、上記実施形態では、ローラ17で均された堆積層に対して炭酸ガスレーザを照射する製造装置を例示した。しかし、レーザの種類は炭酸ガスレーザに限定されない。例えば半導体レーザや赤外線レーザなどを用いることもできる。また、ローラ17に代えてワイパのような部材を用いて堆積層を形成することもできる。
1L中子の左半分側
1R中子の右半分側
2 製品焼結体の中空部
2a中空部の円筒状の部分
2b中空部の球状の部分
3 中子成形工程
4 射出成形工程
5 中子除去工程
6 焼結工程
7 焼結材料
8 有機バインダ
9 射出成形体
10 加熱脱脂工程
11 空洞
12 熱可塑性樹脂の微粉末
13 金型(焼結体成形用)
14 収容部
15 流入口
16 (三次元造型法の)造型装置
17 ローラ
18 ステージ
19 パーツヘッド
20 貫通孔
21 フィーダ
22 レーザガン
23 照射ミラー
24 焼結層
25 分割金型
26 雌金型
27 雄金型
28 湯口
29 ガスアシスト法の金型(中子成形用)
31 湯口
32 アシストガス
W 製品焼結体
Claims (4)
- 中空状の中子を成形する中子成形工程と、
中空状の中子と、この中空状の中子を内部に備えた金型との間に焼結材料を射出成形して射出成形体を成形する射出成形工程と、
射出成形体の内部から中空状の中子を除去する中子除去工程と、
射出成形体を焼結して焼結体を得る焼結工程と、
を備えた製品焼結体の製造方法。 - 前記焼結材料が有機バインダを含む場合には、前記射出成形体を加熱して射出成形体から有機バインダを除去する加熱脱脂工程を備えていて、
前記中子除去工程は、前記加熱脱脂工程における加熱を利用して、前記射出成形体の内部から中空状の中子を除去することを特徴とする請求項1に記載の製品焼結体の製造方法。 - 前記中子成形工程は、周囲が壁面で囲まれた空洞を内部に備えた中空状の中子を成形することを特徴とする請求項1又は2に記載の製品焼結体の製造方法。
- 前記中子成形工程は、レーザを用いた三次元造形法によって前記中子を中空状に成形することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の製品焼結体の製造方法。
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