JP2012031321A - 新規なアゾ化合物、水溶液、インク組成物、インクジェット記録用インク、インクジェット記録方法、インクジェット記録用インクカートリッジ、インクジェット記録物及び着色画像の褪色改良方法 - Google Patents

新規なアゾ化合物、水溶液、インク組成物、インクジェット記録用インク、インクジェット記録方法、インクジェット記録用インクカートリッジ、インクジェット記録物及び着色画像の褪色改良方法 Download PDF

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Abstract

【課題】黒色用インクとして良好な色相を有し、ブロンズ光沢が抑制された安定なインク組成物を提供する。
【解決手段】(a)防腐剤と、(b)式(1)で表されるアゾ化合物を含有する水溶液。
Figure 2012031321

【選択図】なし

Description

本発明は、アゾ化合物、水溶液、インク組成物、インクジェット記録用インク、インクジェット記録方法、インクジェット記録用インクカートリッジ、及びインクジェット記録物に関する。
インクジェット記録方法は、材料費が安価であること、高速記録が可能なこと、記録時の騒音が少ないこと、更にカラー記録が容易であることから、急速に普及し、更に発展しつつある。
インクジェット記録方法には、連続的に液滴を飛翔させるコンティニュアス方式と画像情報信号に応じて液滴を飛翔させるオンデマンド方式が有り、その吐出方式にはピエゾ素子により圧力を加えて液滴を吐出させる方式、熱によりインク中に気泡を発生させて液滴を吐出させる方式、超音波を用いた方式、あるいは静電力により液滴を求引吐出させる方式がある。また、インクジェット記録用インクとしては、水性インク、油性インク、あるいは固体(溶融型)インクが用いられる。
このようなインクジェット記録用インクに用いられる着色剤に対しては、溶剤に対する溶解性あるいは分散性が良好なこと、高濃度記録が可能であること、色相が良好であること、光、熱、環境中の活性ガス(NOx、オゾン等の酸化性ガスの他SOxなど)に対して堅牢であること、水や薬品に対する堅牢性に優れていること、受像材料に対して定着性が良く滲みにくいこと、インクとしての保存性に優れていること、毒性がないこと、純度が高いこと、更には、安価に入手できることが要求されている。しかしながら、これらの要求を高いレベルで満たす着色剤を捜し求めることは、極めて難しい。
特に、良好なブラックの色相を有し、光、湿度、熱に対して堅牢であり、モル吸光係数が高く、文書印刷において文字品位が高いこと、また多孔質の白色無機顔料粒子を含有するインク受容層を有する受像材料上に印字する際には環境中のオゾンなどの酸化性ガスに対して堅牢であるインク組成物が強く望まれている。
したがって、上記の各用途で使用する染料には、共通して次のような性質を具備している必要がある。即ち、色再現性上好ましい吸収特性を有すること、使用される環境条件下における堅牢性、例えば耐光性、耐熱性、耐湿性、オゾンなどの酸化性ガスに対する耐性、その他亜硫酸ガスなどの耐薬品堅牢性が良好であること、モル吸光係数が大きいこと等である。
従来、ブラック染料としてはジスアゾ染料、トリスアゾ染料が一般に使用されてきた。それらのジスアゾ染料、トリスアゾ染料の原料としてフェノール、ナフトール、ナフチルアミン、アニリン等の非ヘテロ環化合物が広く使用されている。これらの原料により得られるジスアゾ染料として、特許文献1や特許文献2等に開示された染料が知られているが、何れも光堅牢性が劣るという問題点を有し、またオゾンなどの酸化性ガスに対する堅牢性は極めて不十分である。
本発明者らは鋭意検討した結果、光、オゾン等の酸化性ガスに対して堅牢な着色剤を開発すべく、従来のフェノール、ナフトール、ナフチルアミン、アニリン等の原料から脱却して、主にヘテロ環化合物を原料として使用するという考えに至った。これまで、ヘテロ環が2個以上含まれるジスアゾ染料、トリスアゾ染料としては、特許文献3、特許文献4、特許文献5等に記載されているが、これらの染料はいずれも繊維を染色する為に開発された所謂染料であって、本発明で求められるような性能、すなわち色再現上好ましい吸収特性を持っているかどうかや、使用される環境条件下における堅牢性(例えば耐光性、耐熱性、耐湿性、特にインクジェット画像形成において問題となるオゾンなどの酸化性ガスに対する耐性、その他亜硫酸ガスなどの耐薬品堅牢性)については一切開示されていないし、ましてやどのような構造が本発明の画像形成に最適であるのかについては全く不明である。またヘテロ環が2個以上含まれる水溶性ジスアゾ染料が記載されている特許文献5の水溶性染料は、水溶性基の数が多くても2個しかないために、水への溶解性が低く、インクジェット用途には適さなかった。
特許文献6には、イオン性親水性基を有する水溶性ジスアゾ色素が記載されている。該水溶性ジスアゾ色素をインク化したところインク中での溶解安定性は改良されたが、インク中での色素安定性(染料が分解)が不十分であり、大幅な改良が必要であった。
特許文献7には、イオン性親水性基を有する水溶性ジスアゾ色素の特定の置換位置に特定の置換基を導入することで、色素構造の会合効果・疎水場効果・立体的効果を制御することで、インク中での色素安定性(染料が分解)が大幅に改良されたが、色素の会合性が促進することにより、該色素を使用したインクを用いて、印字画像を形成すると、著しく画質が低下する(より詳しくは、ブロンズ光沢が発生)課題が挙げられる。
光学濃度が高い記録画像を形成させた場合において、乾燥するにつれて色素の結晶が記録材料表面に析出して、記録画像が光を反射して金属光沢を放つという、いわゆるブロンズ現象が生じるという問題があった。
この現象は、耐水性を向上させるために色素の水溶解性を下げたり、色素構造中に水素結合基のアミノ基を導入したりすることにより、色素の会合性(凝集性)が高まることによって生じやすくなると考えられる。ブロンズ現象の発生によって光を反射するので、記録画像の光学濃度が低下してしまうばかりでなく、記録画像の色相も所望のものとは大きく異なってしまうため、ブロンズ現象抑制はインクジェットインクに要求される性能として重要なものの一つである。
ブロンズ現象抑制の方法としては、特定の含窒素化合物を添加する方法(例えば、特開昭55−120676号、特開昭62−119280号、特開昭64−6072号、特開平1−152176号、特開平2−41369号、特開平5−125311号、特開平6−25575号、特開平6−128515号、特開平6−228476号、特開平6−228483号、特開平6−248212号、特開平7−228810号、特開平7−268261号、特開平8−259865号、特開平9−12944号、特開平9−12946号、特開平9−12949号、特開平10−36735号各公報)、特定のチタン化合物を添加する方法(特開平8−337745号公報)などがこれまでに知られている。但し、これらの添加物を加えることによってブロンズ現象の発生を抑えることはできても、添加物がインクの諸性能及び記録画像の品質を低下させてしまうことが懸念される。例えば、インクにアルカノールアミンを添加した場合、ブロンズ現象は防止できるものの、少量添加しただけでもインクのpHが11以上になってしまい、高pHインクのノズルへの影響のみならず、誤って人体に触れた場合の安全性に欠け、印字品位や記録画像の耐水性なども低下させてしまうことが、特開平8−259865号公報に記載されている。
その他にも、添加物によってインクジェットインクの性能を改善する例として、特開平5−339532号公報、特開2001−254040号公報には、対カチオンがリチウムイオン、4級アンモニウムイオン、4級ホスホニウムイオンである色素以外のアニオン性の添加物を加えることで、色素の対イオンがこれらのイオンでない場合でも溶解性向上による目詰まり防止効果が得られると記載されている。一方、特開平7−26178号公報には、アルカリ金属化合物をインクに添加することによって、色素の会合体の生成が抑制されインクの粘度は上昇しないことが記載されているが、特開平10−36735号公報では、短期間であれば改善効果はあるものの長期間保存した場合には保管安定性に問題があると指摘されている。
このように、添加物を使用することでさまざまな効果が得られるものの、諸性能を維持しながら使用することは難しく、特に色素の溶解性と会合性を考慮する必要がある場合においては、添加物の種類と量の選択が難しいことがわかる。また、イオン性添加物を用いる場合には、その対イオンの及ぼす影響も考慮しなければならない。従って、添加物によらない本質的なブロンズ現象抑制方法を導入することが好ましいと言える。
金属フタロシアニン化合物のイオン性親水性基の対カチオンを変更することによって、インクジェットインクに求められる各種性能を改善する試みは盛んに行われている。例えば、特開平5−339532号公報、特開平6−16982号公報、特開平6−248212号公報、特開平6−322286号公報、特開平7−138511号公報、特開平10−130517号公報などが挙げられる。
金属フタロシアニン色素のイオン性親水性基の対カチオンとしてリチウムイオンが好ましいと記載されている例として、特開昭57−202358号公報、特開昭63−81179号公報、特開昭63−317568号公報、特許第2581769号公報、特許第3163176号公報などが挙げられ、これらはインクの高濃度化、保存安定性、噴射安定性などに効果があると記載されている。一方、特開平7−82499には、対カチオンがリチウムイオンである場合、色素の水溶性が高いために記録画像の耐水性が低くなり好ましくないと記載されている。よって、インクジェットインクに求められる性能を満たすためには、単純に対塩を変更するだけで対処することは困難であることがわかる。
従来より、黒用色素はジスアゾ染料又はトリスアゾ染料が使用されてきているが、これらの染料だけでは青色乃至緑色光に対する吸収が不足して良好な黒色調が得られない事が多い為、これらの青色乃至緑色光を吸収する色補正用の染料が併用されるのが一般的である。このような補正用染料としては、例えば特許文献8や特許文献9に記載されているような染料が提案され、黒色調調整能、発色性、堅牢性、インク保存安定性、耐水性、ノズルの目詰まり等の改良が図られてきた。
しかしながら、従来提案されてきた色補正用染料では、吸収が短波長過ぎる為に多量添加する必要があったり、更に別の色補正用の染料が必要になるなどの黒色調調整能に欠ける問題を抱えていた。
また、青色乃至緑色光を吸収できる染料も一般に知られてはいるが、堅牢性が劣るために光,熱,環境中の活性ガスへの暴露で色相が大きく変化したり、定着性が不十分であった為に高湿下条件で輪郭部が黄色く滲み出すなどの現象が起きるものが殆どで、更なる改良が必要である。
これらの欠点を鑑み、特許文献10には、色補正染料として水溶媒における可視域吸収スペクトルの吸収極大が435nmのトリアジン染料を、ブラック染料に配合することからなるブラックインク組成物が記載されている。
更に特許文献11及び12には、水溶性を上げるために色素母核及びトリアジン環にイオン性親水性基等の置換基を導入することが提案されている。
ところが、一般的な黒染料は570〜620nmの極大吸収を有しており、該色補正染料を用いたとしても、黒色調の調整に重要な補色関係を考慮すると好適な黒色調が得られないことは明らかである。
このことを踏まえ、特許文献13には、色補正色素として水溶媒における可視域吸収スペクトルの吸収最大が440〜540nmである色素を含有することによって、好適な黒色調が得られることが提案されている。
しかしながら、該特許文献に記載されている化合物例は、インクとしての保存安定性に欠け、あるいはインクジェット専用紙に印字した後、高湿度高温度下において著しく色変わり(短波長化)するなどの問題を抱えており、まだ充分な性能を有しているとは言い難い。
また、特許文献14及び15には、画像の堅牢性、特に耐光性と耐オゾンガス性が共に優れた黒色の記録画像を与える黒色色素として、ベンゼン環又はナフタレン環と、ヘテロ環縮環とをアゾ基で結合した非対象型のトリス又はテトラキスアゾ化合物が記載されている。
しかしながら、該特許文献に記載されている化合物例は、インクとしての保存安定性に欠け、あるいはインクジェット専用紙に印字した後、高湿度高温度下において著しく色変わり(短波長化)するなどの問題を抱えており、まだ充分な性能を有しているとは言い難い。
このように、水溶性インクジェットインクに求められているさまざまな性能を同時に満たすようなインクは、未だ見出されていないのが現状である。
欧州特許第0761771号明細書 特許第2716541号公報 ドイツ特許第2743097号明細書 特開昭59−133259号公報 特開昭52−76331号公報 特開2003−306623号公報 特開2005−139427号公報 特開平9−255906号公報 特許第3178200号公報 特開2002−332426号公報 特開2005−298636号公報 国際公開第06/001274号 特開2005−344071号公報 国際公開第07/077931号 特開2009−132794号公報
本発明の目的は、黒色用インクとして良好な色相を有し、記録紙の違いによる記録物の画質のバラツキをなくし、堅牢性に優れた着色画像や着色材料を与え、しかも長期間保存しても物性変化の少ない特にブロンズ光沢が抑制された安定なインクを提供し得る水溶液、及びインク組成物に関する。そしてインクジェットなどの印刷用や、筆記用のインクを提供するとともに、形成した画像の画質低下を伴わない方法画像形成方法(画質低下改良方法)をも提供することにある。
本発明者らは、良好な色相でブロンズ現象が発生しない、光堅牢性及びガス堅牢性(特に、オゾンガス)が高く、インク中で長期間保存しても安定な染料を目指して詳細に検討したところ、芳香族炭化水素環又は置換基を有する芳香族ヘテロ環基と、ヘテロ環と、ヘテロ縮環とをアゾ基で結合した非対称のアゾ化合物により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より詳しくは、特定の置換位置に特定の置換基を有するヘテロ縮環と、特定のヘテロ環を特定の芳香族炭化水素環をアゾ基を介して結合した非対称のアゾ化合物が色素として優れた特性を有し、(1)特定の分光吸収曲線、更に(2)特定の色素構造(特定の置換基種を特定の置換位置に特定の置換基数導入)を有する本発明の一般式(1)で表されるアゾ色素、とりわけ本発明の一般式(2)で表されるアゾ色素、特に本発明の一般式(3)、又は一般式(4)で表されるアゾ色素により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、上記の本発明の課題は、下記の手段によって達せられる。
[1]
(a)防腐剤と、(b)下記一般式(1)で表されるアゾ化合物又はその塩を少なくとも1種とを含有し、(b)の含有量が1質量%〜25質量%である水溶液。
Figure 2012031321
(一般式(1)中、Aはアリール基、又は含窒素5員ヘテロ環基を表す。Gは窒素原子又は−C(R)=を表す。Rは、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換又は無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表す。Y、Y及びYはそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Y、Y及びYは、互いに結合して環を形成しても良い。Mは水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。nは、0、1、又は2を表す。)
[2]
更に、(c)pH調整剤を含有することを特徴とする上記[1]に記載の水溶液。
[3]
前記一般式(1)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(2)で表されるアゾ化合物であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の水溶液。
Figure 2012031321
(一般式(2)中、Gは窒素原子又は−C(R)=を表す。Rは、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換又は無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表す。Rは、1価の置換基を表す。Aはアリール基、又は含窒素5員ヘテロ環基を表す。Mは水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。nは、0、1、又は2を表す。)
[4]
前記一般式(1)又は(2)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(3)で表されるアゾ化合物であることを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の水溶液。
Figure 2012031321
(一般式(3)中、Rは1価の置換基を表す。X、X、X、X、及びX5はそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mは水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。nは、0、1、又は2を表す。)
[5]
前記一般式(1)又は(2)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(4)で表されるアゾ化合物であることを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の水溶液。
Figure 2012031321
(一般式(4)中、Rは、1価の置換基を表す。X、X、X、X、及びX5はそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mは水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。nは、0、1、又は2を表す。)
[6]
前記一般式(1)〜(4)のいずれかで表されるアゾ化合物が、少なくとも3つ以上のイオン性親水性基を有することを特徴とする上記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の水溶液。
[7]
pHが7.0〜9.0であることを特徴とする上記[1]〜[6]のいずれか1項に記載の水溶液。
[8]
上記[1]〜[7]のいずれか1項に記載の水溶液を含有することを特徴とするインク組成物。
[9]
上記[1]〜[7]のいずれか1項に記載の水溶液を含有することを特徴とするインクジェット記録用インク。
[10]
上記[9]に記載のインクジェット記録用インクを用いて、被記録材に着色画像を形成することを特徴とするインクジェット記録方法。
[11]
上記[9]に記載のインクジェット記録用インクを充填したインクジェット記録用インクカートリッジ。
[12]
上記[9]に記載のインクジェット記録用インクを用いて、被記録材に着色画像を形成したインクジェット記録物。
[13]
下記一般式(1)で表されるアゾ化合物又はその塩。
Figure 2012031321
(一般式(1)中、Gは窒素原子又は−C(R)=を表す。Rは、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換又は無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表す。Y、Y、及びYは、それぞれ独立に水素原子又は1価の置換基を表す。Y、Y及びYは、互いに結合して環を形成しても良い。Aはアリール基、又は含窒素5員ヘテロ環基を表す。Mは水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。nは、0、1、又は2を表す。)
[14]
前記一般式(1)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(3)で表されるアゾ化合物であることを特徴とする上記[13]に記載のアゾ化合物又はその塩。
Figure 2012031321
(一般式(3)中、Rは1価の置換基を表す。X、X、X、X、及びX5はそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mは水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。nは、0、1、又は2を表す。)
[15]
前記一般式(1)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(4)で表されるアゾ化合物であることを特徴とする上記[13]に記載のアゾ化合物又はその塩。
Figure 2012031321
(一般式(4)中、Rは、1価の置換基を表す。X、X、X、X、及びX5はそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mは水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。nは、0、1、又は2を表す。)
本発明の水溶液は、貯蔵安定性に優れ、液物性(pH値、吸光度、粘度、表面張力)変化が小さく、析出物の発生が無いことから、インクに有用である。特に、本発明の水溶液を含むインクを用いたインクジェット記録用インク及びインクジェット記録方法は、インク安定性が高く、良好な色相を有し、しかも光及び環境中の活性ガス、特にオゾンガスに対して堅牢性の高い画像を形成することができ、記録紙の違いによる記録物の画質のバラツキをなくし、特に印字画像の画質低下を改良(ブロンズ光沢抑制)できる。
更に、本発明のアゾ化合物は色素として用いることができ、インクに有用である。本発明のアゾ化合物を用いたインクは、インク保存安定性に優れ、かつ色相と堅牢性に優れた着色画像や着色材料を与えることができる。特に、本発明の上記インクを用いたインクジェット記録用インク及びインクジェット記録方法は、インク安定性が高く、良好な色相を有し、しかも光及び環境中の活性ガス、特にオゾンガスに対して堅牢性の高い画像を形成することができ、特に印字画像の画質低下を改良(ブロンズ光沢抑制)できる。
以下に本発明について詳細に説明する。
まず、本発明において、置換基群A’、置換基群J、イオン性親水性基、ハメットの置換基定数σp値について定義する。
(置換基群A’)
炭素数1〜12の直鎖又は分岐鎖アルキル基、炭素数7〜18の直鎖又は分岐鎖アラルキル基、炭素数2〜12の直鎖又は分岐鎖アルケニル基、炭素数2〜12の直鎖又は分岐鎖アルキニル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルケニル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、2−メチルスルホニルエチル、3−フェノキシプロピル、トリフルオロメチル、シクロペンチル)、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子)、アリール基(例えば、フェニル、4−t−ブチルフェニル、2,4−ジ−t−アミルフェニル)、ヘテロ環基(例えば、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシ基、アミノ基、アルキルオキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、2−メチルスルホニルエトキシ)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、3−t−ブチルオキシカルボニルフェノキシ、3−メトキシカルボニルフェニルオキシ、アシルアミノ基(例えば、アセトアミド、ベンズアミド、4−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)ブタンアミド)、アルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ、ブチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルブチルアミノ)、アリールアミノ基(例えば、フェニルアミノ、2−クロロアニリノ)、ウレイド基(例えば、フェニルウレイド、メチルウレイド、N,N−ジブチルウレイド)、スルファモイルアミノ基(例えば、N,N−ジプロピルスルファモイルアミノ)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、オクチルチオ、2−フェノキシエチルチオ)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ、2−ブトキシ−5−t−オクチルフェニルチオ、2−カルボキシフェニルチオ)、アルキルオキシカルボニルアミノ基(例えば、メトキシカルボニルアミノ)、アルキルスルホニルアミノ基及びアリールスルホニルアミノ基(例えば、メチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、p−トルエンスルホニルアミノ)、カルバモイル基(例えば、N−エチルカルバモイル、N,N−ジブチルカルバモイル)、スルファモイル基(例えば、N−エチルスルファモイル、N,N−ジプロピルスルファモイル、N−フェニルスルファモイル)、スルホニル基(例えば、メチルスルホニル、オクチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−トルエンスルホニル)、アルキルオキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、ブチルオキシカルボニル)、ヘテロ環オキシ基(例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、アゾ基(例えば、フェニルアゾ、4−メトキシフェニルアゾ、4−ピバロイルアミノフェニルアゾ、2−ヒドロキシ−4−プロパノイルフェニルアゾ)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ)、カルバモイルオキシ基(例えば、N−メチルカルバモイルオキシ、N−フェニルカルバモイルオキシ)、シリルオキシ基(例えば、トリメチルシリルオキシ、ジブチルメチルシリルオキシ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(例えば、フェノキシカルボニルアミノ)、イミド基(例えば、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ヘテロ環チオ基(例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、2,4−ジ−フェノキシ−1,3,5−トリアゾール−6−チオ、2−ピリジルチオ)、スルフィニル基(例えば、3−フェノキシプロピルスルフィニル)、ホスホニル基(例えば、フェノキシホスホニル、オクチルオキシホスホニル、フェニルホスホニル)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル)、アシル基(例えば、アセチル、3−フェニルプロパノイル、ベンゾイル)、イオン性親水性基(カルボキシル基、スルホ基など)が挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよく、更なる置換基としては、以上に説明した置換基群A’から選択される基を挙げることができる。
(置換基群J)
例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、アルキル又はアリールスルフィニル基、アルキル又はアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール又はヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基、イオン性親水性基が例として挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよく、更なる置換基としては、以上に説明した置換基群Jから選択される基を挙げることができる。
更に詳しくは、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子が挙げられる。
アルキル基としては、直鎖、分岐、環状の置換若しくは無置換のアルキル基が挙げられ、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えば、アルコキシ基、アルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。詳細には、アルキル基としては、好ましくは、炭素数1から30のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソi−プロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、エイコシル基、2−クロロエチル基、2−シアノエチル基、2―エチルヘキシル基等が挙げられ、シクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数3から30の置換又は無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基等が挙げられ、ビシクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数5から30の置換若しくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基、例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル基等が挙げられる。
アラルキル基としては、置換若しくは無置換のアラルキル基が挙げられ、置換若しくは無置換のアラルキル基としては、炭素原子数が7〜30のアラルキル基が好ましい。例えばベンジル基及び2−フェネチル基を挙げられる。
アルケニル基としては、直鎖、分岐、環状の置換若しくは無置換のアルケニル基が挙げられ、シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を包含する。詳細には、アルケニル基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換又は無置換のアルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基、プレニル基、ゲラニル基、オレイル基等が挙げられ、シクロアルケニル基としては、好ましくは、炭素数3から30の置換若しくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3から30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基、例えば、2−シクロペンテン−1−イル基、2−シクロヘキセン−1−イル基等が挙げられ、ビシクロアルケニル基としては、置換若しくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5から30の置換若しくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基、例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル基等が挙げられる。
アルキニル基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換又は無置換のアルキニル基、例えば、エチニル基、プロパルギル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。
アリール基としては、好ましくは、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリール基、例えば、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基、m−クロロフェニル基、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル基等が挙げられる。
ヘテロ環基としては、好ましくは、5又は6員の置換若しくは無置換の芳香族若しくは非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3から30の5又は6員の芳香族のヘテロ環基、例えば、2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基等が挙げられる。
アルコキシ基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基等が挙げられる。
アリールオキシ基としては、好ましくは、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−t−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基等が挙げられる。
シリルオキシ基としては、好ましくは、炭素数0から20の置換若しくは無置換のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ基、ジフェニルメチルシリルオキシ基等が挙げられる。
ヘテロ環オキシ基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換のヘテロ環オキシ基、例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基等が挙げられる。
アシルオキシ基としては、好ましくは、ホルミルオキシ基、炭素数2から30の置換若しくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
カルバモイルオキシ基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ基、N−n−オクチルカルバモイルオキシ基等が挙げられる。
アルコキシカルボニルオキシ基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えば、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、t−ブトキシカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
アリールオキシカルボニルオキシ基としては、好ましくは、炭素数7から30の置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基等が挙げられる。
アミノ基としては、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基を含み、好ましくは、アミノ基、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアニリノ基、例えば、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基等が挙げられる。
アシルアミノ基としては、好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ基等が挙げられる。
アミノカルボニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアミノカルボニルアミノ基、例えば、カルバモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基等が挙げられる。
アルコキシカルボニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、t−ブトキシカルボニルアミノ基、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。
アリールオキシカルボニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数7から30の置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ基、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。
スルファモイルアミノ基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ基等が挙げられる。
アルキル又はアリールスルホニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルスルホニルアミノ基、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールスルホニルアミノ基、例えば、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基等が挙げられる。
アルキルチオ基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルチオ基、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基等が挙げられる。
アリールチオ基としては、好ましくは、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、m−メトキシフェニルチオ基等が挙げられる。
ヘテロ環チオ基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換又は無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ基、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ基等が挙げられる。
スルファモイル基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N‘−フェニルカルバモイル)スルファモイル基等が挙げられる。
アルキル又はアリールスルフィニル基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換又は無置換のアルキルスルフィニル基、6から30の置換又は無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、p−メチルフェニルスルフィニル基等が挙げられる。
アルキル又はアリールスルホニル基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換又は無置換のアルキルスルホニル基、6から30の置換又は無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、p−メチルフェニルスルホニル基等が挙げられる。
アシル基としては、好ましくは、ホルミル基、炭素数2から30の置換又は無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7から30の置換若しくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数2から30の置換若しくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基、例えば、アセチル基、ピバロイル基、2−クロロアセチル基、ステアロイル基、ベンゾイル基、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル基、2−ピリジルカルボニル基、2−フリルカルボニル基等が挙げられる。
アリールオキシカルボニル基としては、好ましくは、炭素数7から30の置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル基、o−クロロフェノキシカルボニル基、m−ニトロフェノキシカルボニル基、p−t−ブチルフェノキシカルボニル基等が挙げられる。
アルコキシカルボニル基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、n−オクタデシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
カルバモイル基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のカルバモイル基、例えば、カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基等が挙げられる。
アリール又はヘテロ環アゾ基としては、好ましくは炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3から30の置換若しくは無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ等が挙げられる。
イミド基としては、好ましくは、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基等が挙げられる。
ホスフィノ基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、メチルフェノキシホスフィノ基等が挙げられる。
ホスフィニル基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル基、ジオクチルオキシホスフィニル基、ジエトキシホスフィニル基等が挙げられる。
ホスフィニルオキシ基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ基、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ基等が挙げられる。
ホスフィニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ基、ジメチルアミノホスフィニルアミノ基が挙げられる。
シリル基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基等が挙げられる。
(イオン性親水性基)
スルホ基、カルボキシル基、チオカルボキシル基、スルフィノ基、ホスホノ基、ジヒドロキシホスフィノ基などが挙げられる。特に好ましくはスルホ基、カルボキシル基である。またカルボキシル基、ホスホノ基及びスルホ基は塩の状態であってもよく、塩を形成する対イオンの例には、アンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)及び有機カチオン(例、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジウムイオン、テトラメチルホスホニウム)が含まれ、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩が好ましく、リチウム塩又はリチウム塩を主成分とする混合塩が更に好ましく、リチウム塩がもっとも好ましい。
本発明のアゾ化合物が含有するイオン性親水性基の対カチオンは主成分としてリチウムイオンを含む。対カチオンはすべてリチウムイオンでなくてもよいが、上記各インク組成物中のリチウムイオン濃度は、各インク組成物中の対イオン全体に対して、それぞれ50質量%以上とすることが好ましく、より好ましくは75質量%以上、更に好ましくは80質量%であり、特に好ましくは95質量%以上である。
このような存在比率の条件下において、水素イオン、アルカリ金属イオン(例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン)、アルカリ土類金属イオン(例えば、マグネシウムイオン、カルシウムイオンなど)、4級アンモニウムイオン、4級ホスホニウムイオン、スルホニウムイオンなどを対カチオンとして含むことができる。
上記着色剤の対カチオンの種類及び比率については、日本化学会編“新実験化学講座9 分析化学”(1977年 丸善)及び日本化学会編“第4版 実験化学講座15 分析”(1991年 丸善)に、分析方法や元素についての各論が記載されているので、これを参考にして分析方法を選び、分析及び定量することができる。中でもイオンクロマトグラフィー、原子吸光法、誘導結合プラズマ発光分析法(ICP)などの分析法によって決定することが容易である。
対カチオンがリチウムイオンを含む本発明の着色剤を得る方法としては、いずれの方法を使用してもよい。例えば、(1)イオン交換樹脂を用いて対カチオンを別のカチオンからリチウムイオンに変換する方法、(2)リチウムイオンを含む系から酸析又は塩析する方法、(3)対カチオンがリチウムイオンである原料及び合成中間体を用いて着色剤を形成させる方法、(4)対カチオンがリチウムイオンである反応剤を用いて、各色着色剤の官能基変換によってイオン性親水性基を導入する方法、(5)着色剤中のイオン性親水性基の対カチオンが銀イオンである化合物を合成し、これをリチウムハロゲン化物溶液と反応させ析出したハロゲン化銀を除去することで対カチオンをリチウムイオンにする方法、などが挙げられる。
各色着色剤中のイオン性親水性基としては、イオン性解離基である限りいかなるものであってもよい。好ましいイオン性親水性基としては、スルホ基(塩でもよい)、カルボキシル基(塩でもよい)、水酸基(塩でもよい)、ホスホノ基(塩でもよい)及び4級アンモニウム基、アシルスルファモイル基(塩でもよい)、スルホニルカルバモイル基(塩でもよい)、スルホニルスルファモイル基(塩でもよい)等が含まれる。
好ましくはスルホ基、カルボキシル基、又は水酸基(それらの塩を含む)である。イオン性親水性基が塩の場合、好ましいカウンターカチオンはリチウム又はリチウムを主成分とするアルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム)、アンモニウム、及び有機のカチオン(例えばピリジニウム、テトラメチルアンモニウム、グアニジニウム)混合塩を挙げることができ、その中でもリチウム又はリチウムを主成分とするアルカリ金属混合塩が好ましく、特にスルホ基のリチウム塩、カルボキシ基のリチウム塩が、水酸基のリチウム塩が好ましい。
(ハメットの置換基定数σp値)
本明細書中で用いられるハメットの置換基定数σp値について説明する。
ハメット則はベンゼン誘導体の反応又は平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論ずるために1935年L.P.Hammettにより提唱された経験則であるが、これは今日広く妥当性が認められている。ハメット則に求められた置換基定数にはσp値とσm値があり、これらの値は多くの一般的な成書に見出すことができるが、例えば、J.A.Dean編、「Lange’s Handbook of Chemistry」第12版、1979年(Mc Graw−Hill)や「化学の領域」増刊、122号、96〜103頁、1979年(南光堂)に詳しい。なお、本発明において各置換基をハメットの置換基定数σpにより限定したり説明したりするが、これは上記の成書で見出せる、文献既知の値がある置換基にのみ限定されるという意味ではなく、その値が文献未知であってもハメット則に基づいて測定した場合にその範囲内に含まれるであろう置換基をも含むことはいうまでもない。本発明にかかる化合物はベンゼン誘導体ではないが、置換基の電子効果を示す尺度として、置換位置に関係なくσp値を使用する。本発明においては今後、σp値をこのような意味で使用する。
なお、本発明においては、化合物が塩である場合は、インク中では塩はイオンに解離して存在しているが、便宜上、「塩を含有する」と表現する。
<水溶液>
本発明の水溶液は、(a)防腐剤と、(b)一般式(1)で表されるアゾ化合物又はその塩を少なくとも1種とを含有し、(b)の含有量が1質量%〜25質量%である。(b)の含有量は好ましくは 3質量%〜15質量%であり、より好ましくは5質量%〜12質量%である。(b)の含有量を上記の範囲とすることで水溶液の貯蔵安定性が良好でありかつインクジェット用水溶性インクの調液が容易という効果がある。
本発明の水溶液はpHが7.0〜9.0であることが好ましく、7.5〜8.5であることがより好ましい。pHを上記の範囲とすることで水溶液中のアゾ化合物の高い溶液安定性を付与できることとインクジェット用水溶性インクの調液が容易という効果がある。
本発明の水溶液を「インク原液」と称する場合がある。
以下、本発明についてより詳細に説明する。まず、本発明における一般式の基や置換基について説明する。
〔(a)防腐剤〕
本発明の水溶液は、腐敗による不溶解物の生成が問題となることがある。これを防止するために、水溶液には防腐剤を添加することが好ましい。
本発明に使用可能な防腐剤としては、種々のものが使用可能である。
防腐剤としては、重金属イオンを含有する無機物系の防腐剤(銀イオン含有物など)や塩類をまず挙げることができる。有機系の防腐剤としては、第4級アンモニウム塩(テトラブチルアンモニウムクロリド、セチルピリジニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド等)、フェノール誘導体(フェノール、クレゾール、ブチルフェノール、キシレノール、ビスフェノール等)、フェノキシエーテル誘導体(フェノキシエタノール等)、ヘテロ環化合物(ベンゾトリアゾール、プロキセル(PROXEL)、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン等)、酸アミド類、カルバミン酸、カルバメート類、アミジン・グアニジン類、ピリジン類(ナトリウムピリジンチオン−1−オキシド等)、ジアジン類、トリアジン類、ピロール・イミダゾール類、オキサゾール・オキサジン類、チアゾール・チアジアジン類、チオ尿素類、チオセミカルバジド類、ジチオカルバメート類、スルフィド類、スルホキシド類、スルホン類、スルファミド類、抗生物質類(ペニシリン、テトラサイクリン等)、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、p−ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、及びその塩など種々のものが使用可能である。また、防腐剤としては防菌防微ハンドブック(技報堂:1986)、防菌防黴剤事典(日本防菌防黴学会事典編集委員会編)等に記載のものも使用し得る。
防腐剤としてはフェノール誘導体、ヘテロ環化合物が好ましく、ヘテロ環化合物がより好ましく、ヘテロ環化合物(プロキセルXL−II)が更に好ましい。
防腐剤は単独でも2種以上を組み合わせ水溶液に添加することができる。
これらの化合物は油溶性の構造、水溶性の構造のものなど種々のものが使用可能であるが、好ましくは水溶性の化合物である。
中でも、少なくとも1種の防腐剤が、ヘテロ環化合物であることが好ましい。
本発明では、防腐剤を2種以上併用して使用すると、本発明の効果が更に良好に発揮される。例えば、ヘテロ環化合物と抗生物質の組み合わせ、ヘテロ環化合物とフェノール誘導体との組み合わせ等が好ましく挙げられる。2種の防腐剤を組み合わせる場合の含有量比は、特に限定的ではないが、防腐剤A/防腐剤B=0.01〜100(質量比)の範囲が好ましい。
水溶液への防腐剤の添加量は広い範囲で使用可能であるが、好ましくは、0.001〜10質量%、より好ましくは、0.1〜5質量%である。防腐剤の含有量を上記の範囲とすることで水溶液中の菌の増殖を抑制するという効果がある。
〔(b)一般式(1)で表されるアゾ化合物〕
一般式(1)で表されるアゾ化合物(以下「一般式(1)で表される化合物」と称する場合がある)について説明する。
Figure 2012031321
(一般式(1)中、Aはアリール基、又は含窒素5員ヘテロ環基を表す。Gは窒素原子又は−C(R)=を表す。Rは、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換又は無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表す。Y、Y及びYはそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Y、Y及びYは、互いに結合して環を形成しても良い。Mは水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。nは、0、1、又は2を表す。)
一般式(1)におけるGは窒素原子又は−C(R)=を表す。Rは、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換又は無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表し、カルバモイル基が置換基を有する場合の置換基としてはアルキル基(メチル基、エチル基)、アリール基(フェニル基)を挙げることができる。
、Y、及びYはそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Y、Y、及びYが置換基を表す場合の置換基としては、それぞれ独立に前記置換基群Jを挙げることができる。
一般式(1)において、Y、Y、及びYはそれぞれ独立に、水素原子、イオン性親水性基、置換又は無置換のカルバモイル基、置換又は無置換のスルファモイル基、置換又は無置換のアルキルスルホニルアミノ基、置換又は無置換のアリールスルホニルアミノ基、アシルアミノ基であることが好ましく、水素原子、イオン性親水性基を置換基として有するアルキルスルホニルアミノ基、イオン性親水性基を置換基として有するアリールスルホニルアミノ基、イオン性親水性基を置換基として有するアシルアミノ基であることがより好ましく、水素原子、イオン性親水性基を置換基として有するアリールスルホニルアミノ基、イオン性親水性基を置換基として有するアシルアミノ基であることが特に好ましい。
、Y、及びYが表すカルバモイル基、スルファモイル基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アシルアミノ基が置換基を有する場合の置換基としては、それぞれ独立に、イオン性親水性基(例えば、−COM、−SOM:Mは一価のカウンターカチオン)であることがより好ましい。
、Y、及びYは、互いに結合して環を形成しても良く、Y、Y、及びYは互いに結合して形成する環としては、例えばベンゼン環、ナフタレン環が挙げられ、ベンゼン環であることがこのましい。
、Y、及びYは更に置換基を有していてもよく、更なる置換基としては、水酸基、又はイオン性親水性基を有していてもよいアリール基、ヘテロ環基を挙げることができる。
Aはアリール基、単環又は縮環のヘテロ環基を表す。
アリール基としては、置換若しくは無置換のアリール基が含まれる。更に詳しくは、置換基群Jを有するアリール基が挙げられる。
Aが表すアリール基は、炭素数6〜30の置換若しくは無置換のアリール基が好ましく、置換若しくは無置換のフェニル基がより好ましい。置換基の例としては、前述の置換基の項で述べた基が挙げられ、前記イオン性親水性基又は前記ハメットのσp値が0.3以上の電子求引性基が好ましい。
Aが表すヘテロ環基は、置換若しくは無置換のへテロ環基が含まれる。Aが表すへテロ環基としては、5若しくは6員の、置換若しくは無置換の芳香族若しくは非芳香族のへテロ環化合物から1個の水素原子を取り除いた1価の基が好ましく、炭素数3〜30の5若しくは6員の芳香族へテロ環基がより好ましい。置換基の例としては、前述の置換基Jの項で述べた基が挙げられる。前記へテロ環基の例としては、5員含窒素ヘテロ環基としては、置換位置を限定しないで表すと、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環が挙げられる。
6員含窒素ヘテロ環基としては、置換位置を限定しないで表すと、ピリジン環、ピラゾン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環が挙げられる。
Aは置換基を有するアリール基であることが好ましく、イオン性親水性基又はハメットのσp値が0.3以上の電子求引性基を有するアリール基であることがより好ましく、イオン性親水性基又はハメットのσp値が0.3以上の電子求引性基を有するフェニル基であることが更に好ましい。
一般式(1)におけるイオン性親水性基としては、−SO又は−COが好ましく、−SOがより好ましく、−SOLiが特に好ましい。
前記M及びMはそれぞれ独立に、水素原子又は一価のカウンターカチオンを表し、一価のカウンターカチオンとしては、例えばアンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)及び有機カチオン(例、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジウムイオン、テトラメチルホスホニウム)が挙げられ、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩が好ましく、リチウム塩又はリチウム塩を主成分とする混合塩が更に好ましく、リチウム塩がもっとも好ましい。
一般式(1)で表される化合物として特に好ましい組み合わせは、以下の(イ)〜(ホ)を含むものである。
(イ)Gは窒素原子又は−C(R)=を表し、−C(R)=であることが好ましい。Rは、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換又は無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表し、カルバモイル基(−CONH基)又はシアノ基であることが好ましく、シアノ基であることがより好ましい。
(ロ)Aは置換基を有するアリール基であることが好ましく、イオン性親水性基又はハメットのσp値が0.3以上の電子求引性基を有するアリール基であることがより好ましく、イオン性親水性基を2個有するフェニル基であることが更に好ましい。
(ハ)Y、Y、及びYはそれぞれ独立に、水素原子、イオン性親水性基、置換又は無置換のカルバモイル基、置換又は無置換のスルファモイル基、置換又は無置換のアルキルスルホニルアミノ基、置換又は無置換のアリールスルホニルアミノ基、アシルアミノ基であることが好ましく、水素原子、イオン性親水性基、置換又は無置換のアルキルスルホニルアミノ基、置換又は無置換のアリールスルホニルアミノ基、アシルアミノ基であることがより好ましく、水素原子、イオン性親水性基を置換基として有するアリールスルホニルアミノ基、イオン性親水性基を置換基として有するアシルアミノ基であることが特に好ましい。
、及びYは水素原子を表し、Yはイオン性親水性基を置換基として有するアリールスルホニルアミノ基、イオン性親水性基を置換基として有するアシルアミノ基であることが最も好ましい。
(ニ)イオン性親水性基としては、−SO又は−COが好ましく、−SOがより好ましく、−SOLiが特に好ましい。
(ホ)前記M及びMはそれぞれ独立に、水素原子又は一価のカウンターカチオンを表し、一価のカウンターカチオンとしては、例えばアンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)及び有機カチオン(例、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジウムイオン、テトラメチルホスホニウム)が挙げられ、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩が好ましく、リチウム塩又はリチウム塩を主成分とする混合塩が更に好ましく、リチウム塩がもっとも好ましい。
この構造が好ましい要因としては、一般式(1)のアゾ化合物の水溶性が向上し、良好な色相と着色力及び高い保存安定性を両立することができるアゾ色素構造を電子的・立体的に付与することができることが挙げられる。
その結果、水溶液としての貯蔵安定性が向上し、インクの要求性能である、光堅牢性、熱安定性、湿熱安定性、耐水性、耐ガス性及び又は耐溶剤性が大幅に向上するため、最も好ましい例となる。
上記一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
以下、一般式(2)により表される化合物、又はその塩について詳細に説明する。
Figure 2012031321
(一般式(2)中、Gは窒素原子又は−C(R)=を表す。Rは、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換又は無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表す。Rは、1価の置換基を表す。Aはアリール基、又は含窒素5員ヘテロ環基を表す。Mは水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。nは、0、1、又は2を表す。)
一般式(2)中のG、R及びMの例は、それぞれ独立に上記一般式(1)中のG、R、及びMの例と同義であり、好ましい例も同じである。
一般式(2)中のRが表す1価の置換基としては、置換基群A’を挙げることができ、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアリール基、ヘテロ環基であることが好ましく、イオン性親水性基で置換されたアルキル基、アリール基であることがより好ましい。
上記一般式(2)で表される化合物は、下記一般式(3)で表される化合物であることが好ましい。
以下、一般式(3)により表される化合物、又はその塩について詳細に説明する。
Figure 2012031321
(一般式(3)中、Rは1価の置換基を表す。X、X、X、X、及びX5はそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mは水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。nは、0、1、又は2を表す。)
一般式(3)中のMの例は、それぞれ独立に上記一般式(2)中のMの例と同義であり、好ましい例も同じである。
一般式(3)中のRが表す1価の置換基としては、置換基群A’を挙げることができ、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアリール基、ヘテロ環基であることが好ましく、イオン性親水性基で置換されたアルキル基、アリール基であることがより好ましい。
一般式(3)において、X、X、X、X、及びX5はそれぞれ独立に、水素原子、又は1価の置換基を表す。X、X、X、X、及びX5が置換基を表す場合の置換基としては、前記の置換基Jを挙げることができる。
、X、X、X、及びX5はそれぞれ独立に水素原子、イオン性親水性基、シアノ基、置換又は無置換のアルキルスルホニル基、置換又は無置換のアリールスルホニル基、ニトロ基、置換又は無置換のアルコキシカルボニル基、置換又は無置換のカルバモイル基、置換又は無置換のスルファモイル基であることが好ましく、水素原子、イオン性親水性基、シアノ基、メタンスルホニル基、フェニルスルホニル基、ニトロ基、メトキシカルボニル基、カルバモイル基であることがより好ましく、水素原子、イオン性親水性基、又はシアノ基であることが特に好ましい。
一般式(3)において、X及びXはそれぞれ独立に、水素原子又はイオン性親水性基であることが好ましい。X、X、及びX5はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基群Jのいずれかであることが好ましく、更に、X、X及びX5の少なくとも一つはハメットのσp値が0.3以上の電子求引性基を表すことが好ましい。ハメットの置換基定数σp値の上限としては1.0以下の電子求引性基である。
、X、及びX5の少なくとも一つが、σp値がこの範囲の電子求引性基であれば、アゾ化合物の色相調整と光堅牢性及びオゾンガス堅牢性向上が可能であり、インクジェット記録黒インク用水溶性染料として使用する点で効果を得ることができる。
σp値が0.3以上の電子求引性基の具体例としては、アシル基、アシルオキシ基、カルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ジアルキルホスホノ基、ジアリールホスホノ基、ジアリールホスフィニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホニルオキシ基、アシルチオ基、スルファモイル基、チオシアネート基、チオカルボニル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ハロゲン化アリールオキシ基、ハロゲン化アルキルアミノ基、ハロゲン化アルキルチオ基、σp値が0.3以上の他の電子求引性基で置換されたアリール基、ニトロ基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アゾ基、又はセレノシアネート基が挙げられる。好ましくはシアノ基、メチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、メトキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基であり、より好ましくはシアノ基、メチルスルホニル基、ニトロ基である。
色相、着色力、水溶性の貯蔵安定性の観点から、上記の中でも、X、X3、及びX4の少なくとも一つはイオン性親水性基であることが好ましく、X及びX5が水素原子又はハメットのσp値が0.3以上の電子求引性基であることが好ましく、X3、及びX5が水素原子であって、X、及びXがイオン性親水性基であることがより好ましい。イオン性親水性基としては、−SO又は−CO(M=Li、K、Ca、Mg、Ba)が好ましく、−COがより好ましく、−COLiが特に好ましい。
一般式(3)で表される化合物として特に好ましい組み合わせは、以下の(イ)〜(ホ)を含むものである。
(イ)Aは置換基を有するアリール基であることが好ましく、イオン性親水性基又はハメットのσp値が0.3以上の電子求引性基を有するアリール基であることがより好ましく、イオン性親水性基を2個有するフェニル基であることが更に好ましい。
(ロ)Gは窒素原子又は−C(R)=を表し、−C(R)=であることが好ましい。Rは、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換又は無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表し、カルバモイル基(−CONH基)又はシアノ基であることが好ましく、シアノ基であることがより好ましい。
(ハ)Rが表す1価の置換基としては、置換基群A’を挙げることができ、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアリール基、ヘテロ環基であることが好ましく、イオン性親水性基で置換されたアルキル基、アリール基であることがより好ましい。
(二)イオン性親水性基としては、−SO又は−COが好ましく、−SOがより好ましく、−SOLiが特に好ましい。
(ホ)前記M及びMはそれぞれ独立に、水素原子又は一価のカウンターカチオンを表し、一価のカウンターカチオンとしては、例えばアンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)及び有機カチオン(例、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジウムイオン、テトラメチルホスホニウム)が挙げられ、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩が好ましく、リチウム塩又はリチウム塩を主成分とする混合塩が更に好ましく、リチウム塩がもっとも好ましい。
この構造が好ましい要因としては、一般式(3)のアゾ化合物の水溶性と水溶液中のアゾ色素の会合性が著しく向上し、特に水溶液中の高い貯蔵安定性向上することが挙げられる。
その結果、長期保存安定性が可能となり、インクの要求性能である、光堅牢性、熱安定性、湿熱安定性、耐水性、耐ガス性及び又は耐溶剤性が大幅に向上するため、最も好ましい例となる。
上記一般式(1)又は(2)で表される化合物は、下記一般式(4)で表される化合物であることが好ましい。
以下、一般式(4)により表される化合物、又はその塩について詳細に説明する。
Figure 2012031321
(一般式(4)中、Rは、1価の置換基を表す。X、X、X、X、及びX5はそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mは水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。nは、0、1、又は2を表す。)
一般式(4)中のR、X、X、X、X、X5、及びMの例は、それぞれ独立に上記一般式(3)中のR、X、X、X、X、X5、及びMの例と同様であり、好ましい例も同じである。
また、本発明は一般式(1)で表されるアゾ化合物にも関し、本発明のアゾ化合物を色素(着色剤)として用いた水溶液及び水溶性インク組成物は、染料や顔料などの色材とそれの分散剤(溶媒など)を含有する組成物を意味し、特に画像形成に好適に使用できる。
Figure 2012031321
(一般式(1)中、Gは窒素原子又は−C(R)=を表す。Rは、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換又は無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表す。Y、Y、及びYは、それぞれ独立に水素原子又は1価の置換基を表す。Y、Y及びYは、互いに結合して環を形成しても良い。Aはアリール基、又は含窒素5員ヘテロ環基を表す。Mは水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。nは、0、1、又は2を表す。)
前記一般式(1)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(2)で表されるアゾ化合物であることが好ましい。
Figure 2012031321
(一般式(2)中、Gは窒素原子又は−C(R)=を表す。Rは、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換又は無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表す。Rは、1価の置換基を表す。Aはアリール基、又は含窒素5員ヘテロ環基を表す。Mは水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。nは、0、1、又は2を表す。)
前記一般式(1)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(3)で表されるアゾ化合物であることも好ましい。
Figure 2012031321
(一般式(3)中、Rは1価の置換基を表す。X、X、X、X、及びX5はそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mは水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。nは、0、1、又は2を表す。)
前記一般式(1)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(4)で表されるアゾ化合物であることが好ましい。
前記一般式(1)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(4)で表されるアゾ化合物であることが好ましい。
Figure 2012031321
(一般式(4)中、Rは、1価の置換基を表す。X、X、X、X、及びX5はそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mは水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。nは、0、1、又は2を表す。)
一般式(1)〜(4)で表される化合物は、水を溶媒として測定した吸収スペクトルの最大吸収波長(λmax)が550nm以上700nm以下であることが好ましく、更に580nm〜650nmであることが特に好ましい。
また、本発明では、一般式(1)〜(4)で表される化合物は少なくとも3つ以上のイオン性親水性基を有することが好ましい。より好ましくはイオン性親水性基を3〜6個有し、更に好ましくはイオン性親水性基を4〜5個有する。これにより本発明のアゾ化合物の水溶性、水溶液貯蔵安定性が向上し、インクジェット記録黒インク用水溶性染料としての要求性能を高いレベルで満足し更にインクジェット記録用インクとして使用した際のインクジェット印画物の画質を更に向上できる点という効果を奏する。
また、本発明では、一般式(1)〜(4)で表される化合物中に同位元素(例えば、2H、3H、13C、15N)を含有していても適用できる。
以下に前記一般式(1)〜(4)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明に用いられる化合物は、下記の例に限定されるものではない。
Figure 2012031321
Figure 2012031321
前記一般式(1)で表されるアゾ化合物は、ジアゾ成分とカプラーとのカップリング反応によって合成することができるが、それらについては、特開2003−306623号や特願2003−353498号に記載がある。
〔(c)pH調整剤〕
本発明の水溶液は、更に、(c)pH調整剤を含有することができる。
pH調整剤としては、中和剤(有機塩基、無機アルカリ)を用いることができる。pH調整剤はインクジェット用インクの保存安定性を向上させる目的で、該インクジェット用インクがpH7.0〜9.0となるように添加するのが好ましく、pH7.5〜8.5となるように添加するのがより好ましい。
本発明の水溶液におけるpH調整剤の含有量としては、インク原液に対し、好ましくは0.05質量%〜20質量%であり、より好ましくは0.1質量%〜10質量%である。pH調整剤の含有量を上記の範囲とすることで所望のpHとすることができる。
pH調整剤としては、塩基性のものとして有機塩基、無機塩基等が、酸性のものとして有機酸、無機酸等が挙げられる。
塩基性化合物としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸水素ナトリウム(重炭酸ナトリウム)、炭酸水素カリウム、、炭酸水素リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸1水素ナトリウムなどの無機化合物やアンモニア水、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ピペリジン、ジアザビシクロオクタン、ジアザビシクロウンデセン、ピリジン、キノリン、ピコリン、ルチジン、コリジン等の有機塩基、安息香酸リチウムやフタル酸カリウム等の有機酸のアルカリ金属塩を使用することも可能である。
酸性化合物としては、塩酸、硫酸、リン酸、ホウ酸、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、リン酸2水素カリウム、リン酸2水素ナトリウム等の無機化合物や、酢酸、酒石酸、安息香酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サッカリン酸、フタル酸、ピコリン酸、キノリン酸等の有機化合物を使用することもできる。
pH調整剤としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウムが好ましく、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素リチウムがより好ましく、炭酸水素リチウムが更に好ましい。
また、本発明には、前記染料とともに他の着色剤を併用して、より好ましい色相に調整してもよい。併用する染料としては、任意の染料が用いられ得る。例えば、イエロー染料では、カップリング成分(以降カプラー成分と呼ぶ)として置換ベンゼン類、置換ナフタレン類、ピラゾロンやピリドン等のようなヘテロ環類、開鎖型活性メチレン化合物類などを有するアリール若しくはヘテリルアゾ染料;例えばカプラー成分として開鎖型活性メチレン化合物類などを有するアゾメチン染料;例えばベンジリデン染料やモノメチンオキソノール染料等のようなメチン染料;例えばナフトキノン染料、アントラキノン染料等のようなキノン系染料などがあり、これ以外の染料種としてはキノフタロン染料、ニトロ・ニトロソ染料、アクリジン染料、アクリジノン染料等を挙げることができる。特に併用して好ましいものは、λmaxが350nmから500nmにある染料(S)であり、前述及び後述のイエロー染料を用いることができるが、中でも、1分子中にアゾ基を2乃至6個有するアゾ染料である。なお、本発明では黄色顔料も用いることができる。
マゼンタ染料では、カプラー成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類、ピリジンやピラジンのようなヘテロ環類、開鎖型活性メチレン化合物類などを有するアリール若しくはヘテリルアゾ染料;例えばカプラー成分として開鎖型活性メチレン化合物類などを有するアゾメチン染料;アントラピリドン染料をあげることができる。特に好ましいものは、発色団にヘテロ環を有するアゾ染料、若しくはアントラピリドン染料である。
シアン染料では、カプラー成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類などを有するアリール若しくはヘテリルアゾ染料;例えばカプラー成分としてフェノール類、ナフトール類、ピロロトリアゾールのようなヘテロ環類などを有するアゾメチン染料;シアニン染料、オキソノール染料、メロシアニン染料などのようなポリメチン染料;ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料などのようなカルボニウム染料;フタロシアニン染料;アントラキノン染料;インジゴ・チオインジゴ染料などを挙げることができる。特に好ましいものは、フタロシアニン染料である。
特に、堅牢性のバランスから酸化電位が1.0Vより貴である染料や、会合性の染料が好ましい。併用する好ましい染料の具体例としては、特願2003-360370号に記載の染料を挙げることができる。
ヘテロ環アゾ染料としては、上記ブラック染料の他に公知のイエロー染料、マゼンタ染料を用いることができる。これらヘテロ環アゾ染料であるイエロー染料、及びマゼンタ染料は、上記特性(酸化電位、会合性)の少なくとも1つを有していることが好ましく、全ての特性を有していることが更に好ましい。これら染料の酸化電位は、1.1V(vs SCE)よりも貴であることが更に好ましく、1.15V(vs SCE)よりも貴であることが特に好ましい。
ヘテロ環アゾ染料であるイエロー染料としては、特開2004−83903号(段落番号[0048]〜[0062])、同2003−277661号(段落番号[0041]〜[0050])、同2003−277662号(段落番号[0042]〜[0047])、米国出願公開US2003/0213405(段落番号[0108])に記載されたものが挙げられる。
本発明の水溶液は、染料が水溶性である場合には、水性媒体に溶解して調製し、染料が油溶性である場合には、親油性媒体及び/又は水性媒体に溶解及び/又は分散させて調製することが好ましい。水性媒体とは、水を主体に含む溶媒であり、所望により水混和性有機溶剤等の有機溶媒が含まれる。この有機溶媒は、粘度低下剤としての機能を有していてもよい。親油性媒体とは、有機溶媒を主体とするものである。
本発明の水溶液の用途は、特に制限はないが、インクジェット用に用いることが好ましい。
〔インク組成物〕
本発明のインク組成物は、上記水溶液を含有する。
一般式(1)で表される化合物のインク組成物中での含有量は、0.2〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましく、1.0〜8.0質量%が特に好ましい。
本発明のインク組成物は、全染料を好ましくは、0.2〜20質量%含有し、より好ましくは、0.5〜10質量%含有し、特に好ましくは1.0〜8.0質量%含有する。
本発明のインク組成物はpH調整剤により、25℃でのインク組成物のpHが7.0〜10.0に調整されていることが好ましく、pHが7.5〜9.5に調整されていることがより好ましい。pHが7.5以上である場合は染料の溶解性が向上してノズルの詰まりを防止できる。また、pHが9.5以下であればインクの長期貯蔵安定性に優れる傾向がある。
インク組成物に用いられるpH調整剤としては、本発明の水溶液に用いたものを挙げることができ、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムが好ましく、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウムがより好ましい。
本発明のインク組成物の用途は、特に制限されるべきものではなく、インクジェットなどの印刷用のインク組成物、感熱記録材料におけるインクシート、電子写真用のカラートナー、LCD、PDPなどのディスプレイやCCDなどの撮像素子で用いられるカラーフィルター、各種繊維の染色のための染色液などの調製に好ましく用いることができるが、特にインクジェット記録用インク組成物が好ましい。
インク組成物の製造方法は、上記水溶液を用いることができる。
インク組成物は、ブラックインクが好適であるが、ブラックインクに制限されるべきものではなく、他の染料あるいは顔料との混合により任意の色のインクを包含することができる。
インク組成物の製造方法は、少なくとも水溶液を用いて上記粘度範囲の所望のインク組成物を作製する工程(以下、調液工程ともいう)を含む。
調液工程とは、上記のようにして得られた水溶液を特定の粘度を有し、かつ所望の用途のインク組成物に調液する工程であり、最終製品であってもよいし、中間製品であってもよい。この調液工程には水溶液を媒体、好ましくは水性媒体で希釈する工程が少なくとも含まれる。油溶性染料を含む水溶液は、この希釈工程で使用する媒体に特に制限はないが、水性媒体中に乳化分散され、水性インク組成物として調製されることが好ましい。当該媒体には、必要な濃度の各種成分が含まれていてもよいし、当該成分を別途水溶液に添加するようにしてもよいし、それら両者を組みあわせてもよい。
本発明により製造されたインク組成物は、染料濃度が高濃度な水溶液を用いて製造されたために通常の方法で製造されたインク組成物よりも染料の溶解性が向上し、ひいては吐出安定性が向上する。
水溶液を作製する際には、濾過により固形分であるゴミを除く工程(濾過工程)を加えることが好ましい。この作業には濾過フィルターを使用するが、このときの濾過フィルターとは、有効径が1μm以下、好ましくは0.3μm以下のフィルターを用いる。フィルターの材質としては種々のものが使用できるが、特に水溶性染料の水溶液の場合には、水系の溶媒用に作製されたフィルターを用いるのが好ましい。中でも特にゴミの出にくい、ポリマー材料で作製されたジャケット型のフィルターを用いるのが好ましい。濾過法としては送液によりジャケットを通過させてもよいし、加圧濾過、減圧濾過のいずれの方法も利用可能である。
本発明では、粘度低下剤を用いていてもよく、上記濾過処理を抵抗なく行うことができる。
水溶液を作製する工程や調液工程において、染料やその他の成分を溶解する方法としては、攪拌による溶解、超音波照射による溶解、振とうによる溶解等種々の方法が使用可能である。中でも特に攪拌法が好ましく使用される。攪拌を行う場合、当該分野では公知の流動攪拌や反転アジターやディゾルバを利用した剪断力を利用した攪拌など、種々の方式が利用可能である。一方では、磁気攪拌子のように、容器底面との剪断力を利用した攪拌法も好ましく利用できる。
次に、本発明の水溶液及びインク組成物に用いられる染料について説明する。この染料としては、特に制限はないが、λmaxが500nmから700nmにあり、かつ吸光度1.0に規格化した希薄溶液の吸収スペクトルにおける半値幅(Wλ,1/2)が100nm以上、好ましくは120nm以上500nm以下、更に好ましくは120nm以上350nm以下である一般式(1)で表されるアゾ化合物を少なくとも1種含むことが好ましい。
この一般式(1)で表されるアゾ化合物単独で、画像品質の高い「(しまりのよい)黒」=観察光源によらず、かつB,G,Rのいずれかの色調が強調されにくい黒を実現できる場合は、この染料を単独で水溶液又はインク組成物の原料として使用することも可能であるが、通常、インク組成物としてはこの染料の吸収が低い領域をカバーする染料と併用するのが一般的である。通常、一般式(1)で表されるアゾ化合物を用いるインク組成物の場合は、イエロー領域に主吸収(λmaxが350nmから500nm)を有する他の染料と併用するのが好ましい。また、更に他の染料と併用してインク組成物を作製することも可能である。
他の染料は、水溶液に用いることができるが、好ましくはインク組成物の調製のときに混合して用いることが保存安定性の観点から好ましい。
本発明においては、1)耐候性に優れること、及び/又は、2)褪色後も黒のバランスが崩れないことを満足するために、下記の条件を満たすようなブラックインク組成物が好ましい。
まず、ブラックインク組成物を用いてJISコード2223の黒四角記号を48ポイントで印字し、これをステータスAフィルター(ビジュアルフィルター)により測定した反射濃度(Dvis)を初期濃度として規定する。ステータスAフィルターを搭載した反射濃度測定機としては、たとえばX−Rite濃度測定機などを挙げることができる。ここで「黒」を濃度測定する場合、標準的な観察反射濃度としてDvisによる測定値を使用する。この印画物を、5ppmのオゾンを常時発生可能なオゾン褪色試験機を用いて強制的に褪色させ、その反射濃度(Dvis)が初期反射濃度値の80%となるまでの時間(t)から強制褪色速度定数(kvis)を「0.8=exp(−kvis・t)」なる関係式から求める。
本発明では該速度定数(kvis)が5.0×10-2[hour-1]以下、好ましくは3.0×10-2[hour-1]以下、更に好ましくは1.0×10-2[hour-1]以下となるようなインク組成物を作製する。
また、ブラックインク組成物を用いてJISコード2223の黒四角記号を48ポイントで印字し、これをステータスAフィルターにより測定した濃度測定値で、DvisではないC(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー)3色の反射濃度(DR,DG,DB)も初期濃度として規定する。ここで、(DR,DG,DB)は、(レッドフィルターによるC反射濃度,グリーンフィルターによるM反射濃度,ブルーフィルターによるY反射濃度)を示す。この印画物を上記の方法に従って5ppmのオゾンを常時発生可能なオゾン褪色試験機を用いて強制的に褪色させ、それぞれの反射濃度(DR,DG,DB)が初期濃度値の80%となるまでの時間からも同様に強制褪色速度定数(kR,kG,kB)を定める。該3つの速度定数を求めて、その最大値と最小値の比(R)を求めた場合(たとえばkRが最大値でkGが最小値の場合、R=kR/kGである)、該比(R)が1.2以下、好ましくは1.1以下、更に好ましくは1.05以下となるようなインク組成物を作製する。
なお、上記で使用した「JISコード2223の黒四角記号を48ポイントで印字した印字物」は、濃度測定に十分な大きさを与えるため、測定機のアパーチャーを十分にカバーする大きさに画像を印字したものである。
また、本発明の水溶液、ひいてはインク組成物に用いられる染料としては、ヘテロ環にアゾ基が結合した染料(以下、「ヘテロ環アゾ染料」ともいう)及び会合性のフタロシアニン染料(以下、ヘテロ環アゾ染料及び該フタロシアニン染料等本発明に用いられる染料を総称して本発明用染料ともいう)が好ましい。本発明は、ヘテロ環アゾ染料又は該フタロシアニン染料を少なくとも1種含むことが好ましいが、他の染料及び/又は顔料を併用してもよい。
また、本発明に用いられる染料としては、酸化電位が1.0V(vsSCE)以上であることが好ましい。
酸化電位の値(Eox)は当業者が容易に測定することができる。この方法に関しては、例えばP.Delahay著“New InstrumentalMethods in Electrochemistry”(1954年 Interscience Publishers社刊)やA.J.Bard他著“Electrochemical Methods”(1980年 JohnWiley & Sons社刊)、藤嶋昭他著“電気化学測定法”(1984年 技報堂出版社刊)に記載されている。
具体的に酸化電位は、過塩素酸ナトリウムや過塩素酸テトラプロピルアンモニウムといった支持電解質を含むジメチルホルムアミドやアセトニトリルのような溶媒中に、被験試料を1×10-2〜1×10-6モル/リットル溶解して、各種ボルタンメトリー(滴下水銀電極を用いるポーラログラフィー、サイクリックボルタンメトリー、回転ディスク電極を用いた方法等)を用いてSCE(飽和カロメル電極)に対する値として測定する。この値は、液間電位差や試料溶液の液抵抗などの影響で、数10ミルボルト程度偏位することがあるが、標準試料(例えばハイドロキノン)を入れて電位の再現性を保証することができる。
なお、本発明では、0.1mol/リットルの過塩素酸テトラプロピルアンモニウムを支持電解質として含むN,N-ジメチルホルムアミド中 (染料の濃度は0.001mol/リットル)で、参照電極としてSCE(飽和カロメル電極)、作用極としてグラファイト電極、対極として白金電極を使用して測定した値(vs SCE)を染料の酸化電位とした。
Eoxの値は試料から電極への電子の移りやすさを表し、その値が大きい(酸化電位が貴である)ほど試料から電極への電子の移りにくい、言い換えれば、酸化されにくいことを表す。化合物の構造との関連では、電子求引性基を導入することにより酸化電位はより貴となり、電子供与性基を導入することにより酸化電位はより卑となる。本発明では、求電子剤であるオゾンとの反応性を下げるために、染料骨格に電子求引性基を導入して酸化電位をより貴とすることが望ましい。
また、本発明に用いられる染料としては、以下の会合性評価方法でε1/ε2が1.1以上が好ましく、1.1〜1.5が更に好ましく、1.2〜1.5が特に好ましい。
染料の会合性は次のようにして評価出来る。0.01mmol/Lの染料溶液を光路長1cmのセルを使用して測定した時の、溶液吸収スペクトルの分子吸光係数(ε1)と、20mmol/Lの染料溶液を光路長5μmのセルを使用して測定したときの、溶液吸収スペクトルの分子吸光係数(ε2)との比、ε1/ε2が、染料の会合性の指標となる。この数値が大きい程、染料は会合をし易い。この値が1.1以上である染料は、染料の会合により、耐オゾン性、耐光性に優れた性能を示す。
上記、染料溶液に用いる溶媒は、染料が水溶性であれば、脱イオン水等の比抵抗値が18MΩ・cm以上の超純水を用い、染料が油溶性であれば、均一溶液とする場合は、染料が可溶な有機溶媒を用いるか、又は水溶性染料の場合と同様の超純水中への分散物、又は乳化物として測定を行う。
本発明に用いることができる染料の例としては以下を挙げることができる。染料は、単独でも色調を整えるために複数組み合わせて使用される。また、本発明のイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各々のインク原液から得られるインク組成物は、単色の画像形成のみならず、フルカラーの画像形成に用いることができる。フルカラー画像を形成するために、各色についてそれぞれ濃淡2色のインク組成物を用いることもできる。更には、レッド、グリーン、ブルー、更にバイオレットと言った中間色調のインク組成物を用いることもできる。本発明のインク組成物は、フルカラーの画像を得るためのインクセットを構成することができる。あるいは、該インク組成物は、インクセットの一部を構成することができる。すなわち、インクセットを構成するために本発明以外の任意のインク組成物と本発明のインク組成物とを組み合わせても良い。
また、本発明のインク組成物には、前記染料とともにフルカラーの画像を得るため、色調を整えるために、他の着色剤を併用してもよい。
本発明におけるインクセットに用いることのできる着色剤、又は前記染料と併用できる着色剤としては、各々任意のものを使用する事が出来る。併用することができる染料の例としては今までに述べてきた染料及び、以下を挙げることができる。
イエロー染料としては、例えばカップリング成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類、ピラゾロン類、ピリドン類、開鎖型活性メチレン化合物類を有するアリール若しくはヘテリルアゾ染料;例えばカップリング成分として開鎖型活性メチレン化合物類を有するアゾメチン染料;例えばベンジリデン染料やモノメチンオキソノール染料等のようなメチン染料;例えばナフトキノン染料、アントラキノン染料等のようなキノン系染料などがあり、これ以外の染料種としてはキノフタロン染料、ニトロ・ニトロソ染料、アクリジン染料、アクリジノン染料等を挙げることができる。これらの染料は、クロモフォアの一部が解離して初めてイエローを呈するものであってもよく、その場合のカウンターカチオンはアルカリ金属や、アンモニウムのような無機のカチオンであってもよいし、ピリジニウム、4級アンモニウム塩のような有機のカチオンであってもよく、更にはそれらを部分構造に有するポリマーカチオンであってもよい。
マゼンタ染料としては、例えばカップリング成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類を有するアリール若しくはヘテリルアゾ染料;例えばカップリング成分としてピラゾロン類、ピラゾロトリアゾール類を有するアゾメチン染料;例えばアリーリデン染料、スチリル染料、メロシアニン染料、オキソノール染料のようなメチン染料;ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料のようなカルボニウム染料、例えばナフトキノン、アントラキノン、アントラピリドンなどのようなキノン系染料、例えばジオキサジン染料等のような縮合多環系色素等を挙げることができる。これらの染料は、クロモフォアの一部が解離して初めてマゼンタを呈するものであってもよく、その場合のカウンターカチオンはアルカリ金属や、アンモニウムのような無機のカチオンであってもよいし、ピリジニウム、4級アンモニウム塩のような有機のカチオンであってもよく、更にはそれらを部分構造に有するポリマーカチオンであってもよい。
シアン染料としては、例えばインドアニリン染料、インドフェノール染料のようなアゾメチン染料;シアニン染料、オキソノール染料、メロシアニン染料のようなポリメチン染料;ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料のようなカルボニウム染料;フタロシアニン染料;アントラキノン染料;例えばカップリング成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類を有するアリール若しくはヘテリルアゾ染料、インジゴ・チオインジゴ染料を挙げることができる。これらの染料は、クロモフォアの一部が解離して初めてシアンを呈するものであってもよく、その場合のカウンターカチオンはアルカリ金属や、アンモニウムのような無機のカチオンであってもよいし、ピリジニウム、4級アンモニウム塩のような有機のカチオンであってもよく、更にはそれらを部分構造に有するポリマーカチオンであってもよい。
また、直接染料、酸性染料、食用染料、塩基性染料、反応性染料等の水溶性染料を併用することもできる。なかでも好ましいものとしては、
C.I. ダイレクトレッド1、2、4、9、11、23、26、31、37、39、62、63、72、75、76、79、80、81、83、84、87、89、92、95、111、173、184、207、211、212、214、218、21、223、224、225、226、227、232、233、240、241、242、243、247、254、C.I. ダイレクトバイオレット7、9、47、48、51、66、90、93、94、95、98、100、101
C.I. ダイレクトイエロー4、8、9、11、12、27、28、29、33、35、39、41、44、50、53、58、59、68、86、87、93、95、96、98、100、106、108、109、110、120、130、132、142、144、157、161、163
C.I. ダイレクトブルー1、10、15、22、25、55、67、68、71、76、77、78、80、84、86、87、90、98、106、108、109、151、156、158、159、160、168、189、192、193、194、199、200、201、202、203、207、211、213、214、218、225、229、236、237、244、248、249、251、252、264、270、280、288、289、290、291
C.I. ダイレクトブラック9、17、19、22、32、51、56、62、69、77、80、91、94、97、108、112、113、114、117、118、121、122、125、132、146、154、166、168、173、199
C.I. アシッドレッド1、8、35、42、52、57、62、80、81、82、87、94、111、114、115、118、119、127、128、131、143、144、151、152、154、158、186、245、249、254、257、261、263、266、289、299、301、305、336、337、361、396、397
C.I. アシッドバイオレット5、34、43、47、48、90、103、126
C.I. アシッドイエロー17、19、23、25、39、40、42、44、49、50、61、64、76、79、110、127、135、143、151、159、169、174、190、195、196、197、199、218、219、222、227、C.I. アシッドブルー9、25、40、41、62、72、76、78、80、82、87、92、106、112、113、120、127:1、129、138、143、175、181、185、205、207、220、221、230、232、247、249、258、260、264、271、277、278、279、280、288、290、326
C.I. アシッドブラック7、24、29、48、52:1、172
C.I. リアクティブレッド3、6、13、17、19、21、22、23、24、29、35、37、40、41、43、45、49、55、63、106、107、112、113、114、126、127、128、129、130、131、137、160、161、174、180
C.I. リアクティブバイオレット1、3、4、5、6、7、8、9、16、17、22、23、24、26、27、33、34
C.I. リアクティブイエロー2、3、13、14、15、17、18、23、24、25、26、27、29、35、37、41、42
C.I. リアクティブブルー2、3、5、7、8、10、13、14、15、17、18、19、21、25、26、27、28、29、38、82、89、158、182、190、203、216、220、244
C.I. リアクティブブラック4、5、8、14、21、23、26、31、32、34
C.I. ベーシックレッド12、13、14、15、18、22、23、24、25、27、29、35、36、38、39、45、46
C.I. ベーシックバイオレット1、2、3、7、10、15、16、20、21、25、27、28、35、37、39、40、48
C.I. ベーシックイエロー1、2、4、11、13、14、15、19、21、23、24、25、28、29、32、36、39、40
C.I. ベーシックブルー1、3、5、7、9、22、26、41、45、46、47、54、57、60、62、65、66、69、71
C.I. ベーシックブラック8、
等が挙げられる。
上記式で表される染料以外に、下記各公報に記載の染料も好ましく用いることができる。
特開平10−130557号、特開平9−255906号、特開平6−234944号、特開平7−97541号、EP 982371号、WO 00/43450、WO 00/43451、WO 00/43452、WO 00/43453、WO 03/106572、WO 03/104332、特開2003−238862号、特開2004−83609号、特開2002−302619号、特開2002−327131号、特開2002−265809号、WO 01/48090、WO 04/087815、WO 02/90441、WO 03/027185、WO 04/085541、特開2003−321627号、特開2002−332418号、特開2002−332419号、WO 02/059215、WO 02/059216、WO 04/087814、WO 04/046252、WO 04/046265、米国特許第6652637号、WO 03/106572、WO 03/104332、WO 00/58407、特許第3558213号、特許第3558212号、特許第3558211号、特開2004−285351号、WO 04/078860、特開2004−323605号、WO 04/104108。
更に、本発明は、顔料を染料と共に併用することもできる。
本発明に用いることのできる顔料としては、市販のものの他、各種文献に記載されている公知のものが利用できる。文献に関してはカラーインデックス(The Society of Dyers and Colourists編)、「改訂新版顔料便覧」日本顔料技術協会編(1989年刊)、「最新顔料応用技術」CMC出版(1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版(1984年刊)、W. Herbst, K. Hunger共著によるIndustrial Organic Pigments (VCH Verlagsgesellschaft、1993年刊)等がある。具体的には、有機顔料ではアゾ顔料(アゾレーキ顔料、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料)、多環式顔料(フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、インジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料等)、染付けレーキ顔料(酸性又は塩基性染料のレーキ顔料)、アジン顔料等があり、無機顔料では、黄色顔料のC.I.Pigment Yellow 34, 37, 42, 53など、赤系顔料のC.I.Pigment Red 101, 108など、青系顔料のC.I.Pigment Blue 27, 29,17:1など、ブラック系顔料のC.I.Pigment Black 7,マグネタイトなど、白系顔料のC.I.Pigment White 4,6,18,21などを挙げることができる。
画像形成用に好ましい色調を持つ顔料としては、青ないしシアン顔料ではフタロシアニン顔料、アントラキノン系のインダントロン顔料(たとえばC.I.Pigment Blue 60など)、染め付けレーキ顔料系のトリアリールカルボニウム顔料が好ましく、特にフタロシアニン顔料(好ましい例としては、C.I.Pigment Blue 15:1、同15:2、同15:3、同15:4、同15:6などの銅フタロシアニン、モノクロロないし低塩素化銅フタロシアニン、アルニウムフタロシアニンでは欧州特許860475号に記載の顔料、C.I.Pigment Blue 16である無金属フタロシアニン、中心金属がZn、Ni、Tiであるフタロシアニンなど、中でも好ましいものはC.I.Pigment Blue 15:3、同15:4、アルミニウムフタロシアニン)が最も好ましい。
赤ないし紫色の顔料では、アゾ顔料(好ましい例としては、C.I.Pigment Red 3、同5、同11、同22、同38、同48:1、同48:2、同48:3、同48:4、同49:1、同52:1、同53:1、同57:1、同63:2、同144、同146、同184)など、中でも好ましいものはC.I.Pigment Red 57:1、同146、同184)、キナクリドン系顔料(好ましい例としてはC.I.Pigment Red 122、同192、同202、同207、同209、C.I.Pigment Violet 19、同42、なかでも好ましいものはC.I.Pigment Red 122)、染め付けレーキ顔料系のトリアリールカルボニウム顔料(好ましい例としてはキサンテン系のC.I.Pigment Red 81:1、C.I.Pigment Violet 1、同2、同3、同27、同39)、ジオキサジン系顔料(例えばC.I.Pigment Violet 23、同37)、ジケトピロロピロール系顔料(例えばC.I.Pigment Red 254)、ペリレン顔料(例えばC.I.Pigment Violet 29)、アントラキノン系顔料(例えばC.I.Pigment Violet 5:1、同31、同33)、チオインジゴ系(例えばC.I.Pigment Red 38、同88)が好ましく用いられる。
黄色顔料としては、アゾ顔料(好ましい例としてはモノアゾ顔料系のC.I.Pigment Yellow 1, 3, 74, 98、ジスアゾ顔料系のC.I.Pigment Yellow 12, 13, 14, 16, 17, 83、総合アゾ系のC.I.Pigment Yellow 93, 94, 95, 128, 155、ベンズイミダゾロン系のC.I.Pigment Yellow 120, 151, 154, 156, 180など、なかでも好ましいものはベンジジン系化合物を原料に使用しなもの)、イソインドリン・イソインドリノン系顔料(好ましい例としてはC.I.Pigment Yellow 109, 110, 137, 139など)、キノフタロン顔料(好ましい例としてはC.I.Pigment Yellow 138など)、フラパントロン顔料(例えばC.I.Pigment Yellow 24など)が好ましく用いられる。
ブラック顔料としては、無機顔料(好ましくは例としてはカーボンブラック、マグネタイト)やアニリンブラックを好ましいものとして挙げることができる。
この他、オレンジ顔料(C.I.Pigment Orange 13, 16など)や緑顔料(C.I.Pigment Green 7など)を使用してもよい。
本発明に使用できる顔料は、上述の裸の顔料であってもよいし、表面処理を施された顔料でもよい。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤やエポキシ化合物、ポリイソシアネート、ジアゾニウム塩から生じるラジカルなど)を顔料表面に結合させる方法などが考えられ、次の文献や特許に記載されている。
(1)金属石鹸の性質と応用(幸書房)
(2)印刷インキ印刷(CMC出版 1984)
(3)最新顔料応用技術(CMC出版 1986)
(4)米国特許5,554,739号、同5,571,311号
(5)特開平9−151342号、同10−140065号、同10−292143号、同11−166145号
特に、上記(4)の米国特許に記載されたジアゾニウム塩をカーボンブラックに作用させて調製された自己分散性顔料や、上記(5)の日本特許に記載された方法で調製されたカプセル化顔料は、インク組成物中に余分な分散剤を使用することなく分散安定性が得られるため特に有効である。
本発明においては、顔料は更に分散剤を用いて分散されていてもよい。分散剤は、用いる顔料に合わせて公知の種々のもの、例えば界面活性剤型の低分子分散剤や高分子型分散剤を用いることができる。分散剤の例としては特開平3−69949号、欧州特許549486号等に記載のものを挙げることができる。また、分散剤を使用する際に分散剤の顔料への吸着を促進するためにシナジストと呼ばれる顔料誘導体を添加してもよい。
本発明に使用できる顔料の粒径は、分散後で0.01〜10μmの範囲であることが好ましく、0.05〜1μmであることが更に好ましい。
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造時に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、縦型あるいは横型のアジテーターミル、アトライター、コロイドミル、ボールミル、3本ロールミル、パールミル、スーパーミル、インペラー、デスパーサー、KDミル、ダイナトロン、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986)に記載がある。
本発明に用いられる水溶性染料としては特開2002−371214号公報に記載のマゼンタ染料、特開2002−309118号公報に記載のフタロシアニン染料、特開2003−12952号及び同2003−12956号公報中の水溶性フタロシアニン染料等に記載の染料を用いることも好ましい。
本発明のインク組成物は、媒体中、好ましくは水性媒体に染料を含有する。水性媒体は、水、若しくは水に必要に応じて水混和性有機溶剤などの溶剤が添加される。なお、水混和性有機溶剤は前述したようにインク原液における粘度低下剤であってもよい。
本発明において用いることができる上記水混和性有機溶剤は、当該分野ではインクジェット記録用インク組成物の乾燥防止剤、浸透促進剤、湿潤剤などの機能を有する材料であり、主に高沸点の水混和性有機溶媒が使用される。このような化合物としては、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール)、グリコール誘導体(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングルコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングルコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングルコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル)、アミン(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン)及びその他の極性溶媒(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、アセトン)が挙げられる。なお、前記水混和性有機溶剤は、2種類以上を併用してもよい。
この中でも、アルコール系溶媒が特に好ましい。また、本発明のインク組成物では沸点150℃以上の水混和性有機溶剤を含むことが好ましく、例えば、上記した中から選択される2−ピロリドン等が挙げられる。
これらの水混和性有機溶剤は、総量でインク組成物中に5〜60質量%含有することが好ましく、特に好ましくは10〜45質量%である。
本発明のインク組成物に界面活性剤を含有させ、インク組成物の液物性を調整することで、インク組成物の吐出安定性を向上させ、画像の耐水性の向上や印字したインク組成物の滲みの防止などに優れた効果を持たせることができる。
界面活性剤としては、例えばドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルオキシスルホン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤、セチルピリジニウムクロライド、トリメチルセチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド等のカチオン性界面活性剤や、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンナフチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のノニオン性界面活性剤などが挙げられる。中でも特にノニオン系界面活性剤が好ましく使用される。
界面活性剤の含有量はインク組成物に対して0.001〜20質量%、好ましくは0.005〜10質量%、更に好ましくは0.01〜5質量である。
染料が油溶性染料の場合は、該油溶性染料を高沸点有機溶媒中に溶解させたインク原液を、水性媒体中に乳化分散させることによって本発明のインク組成物を調製することができる。
本発明に用いられる高沸点有機溶媒の沸点は150℃以上であるが、好ましくは170℃以上である。
例えば、フタル酸エステル類(例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジシクロへキシルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、デシルフタレート、ビス(2,4−ジ−tert−アミルフェニル)イソフタレート、ビス(1,1−ジエチルプロピル)フタレート)、リン酸又はホスホンのエステル類(例えば、ジフェニルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、ジオクチルブチルホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェート、トリ−2−エチルヘキシルホスフェート、トリドデシルホスフェート、ジ−2−エチルヘキシルフェニルホスフェート)、安息香酸エステル酸(例えば、2−エチルヘキシルベンゾエート、2,4−ジクロロベンゾエート、ドデシルベンゾエート、2−エチルヘキシル−p−ヒドロキシベンゾエート)、アミド類(例えば、N,N−ジエチルドデカンアミド、N,N−ジエチルラウリルアミド)、アルコール類又はフェノール類(イソステアリルアルコール、2,4−ジ−tert−アミルフェノールなど)、脂肪族エステル類(例えば、コハク酸ジブトキシエチル、コハク酸ジ−2−エチルヘキシル、テトラデカン酸2−ヘキシルデシル、クエン酸トリブチル、ジエチルアゼレート、イソステアリルラクテート、トリオクチルシトレート)、アニリン誘導体(N,N−ジブチル−2−ブトキシ−5−tert−オクチルアニリンなど)、塩素化パラフィン類(塩素含有量10%〜80%のパラフィン類)、トリメシン酸エステル類(例えば、トリメシン酸トリブチル)、ドデシルベンゼン、ジイソプロピルナフタレン、フェノール類(例えば、2,4−ジ−tert−アミルフェノール、4−ドデシルオキシフェノール、4−ドデシルオキシカルボニルフェノール、4−(4−ドデシルオキシフェニルスルホニル)フェノール)、カルボン酸類(例えば、2−(2,4−ジ−tert−アミルフェノキシ酪酸、2−エトキシオクタンデカン酸)、アルキルリン酸類(例えば、ジ−2(エチルヘキシル)リン酸、ジフェニルリン酸)などが挙げられる。高沸点有機溶媒は油溶性染料に対して質量比で0.01〜3倍量、好ましくは0.01〜1.0倍量で使用できる。
これらの高沸点有機溶媒は単独で使用しても、数種の混合〔例えばトリクレジルホスフェートとジブチルフタレート、トリオクチルホスフェートとジ(2−エチルヘキシル)セバケート、ジブチルフタレートとポリ(N−t−ブチルアクリルアミド)〕で使用してもよい。
本発明において用いられる高沸点有機溶媒の前記以外の化合物例及び/又はこれら高沸点有機溶媒の合成方法は例えば米国特許第2,322,027号、同第2,533,514号、同第2,772,163号、同第2,835,579号、同第3,594,171号、同第3,676,137号、同第3,689,271号、同第3,700,454号、同第3,748,141号、同第3,764,336号、同第3,765,897号、同第3,912,515号、同第3,936,303号、同第4,004,928号、同第4,080,209号、同第4,127,413号、同第4,193,802号、同第4,207,393号、同第4,220,711号、同第4,239,851号、同第4,278,757号、同第4,353,979号、同第4,363,873号、同第4,430,421号、同第4,430,422号、同第4,464,464号、同第4,483,918号、同第4,540,657号、同第4,684,606号、同第4,728,599号、同第4,745,049号、同第4,935,321号、同第5,013,639号、欧州特許第276,319A号、同第286,253A号、同第289,820A号、同第309,158A号、同第309,159A号、同第309,160A号、同第509,311A号、同第510,576A号、東独特許第147,009号、同第157,147号、同第159,573号、同第225,240A号、英国特許第2,091,124A号、特開昭48−47335号、同50−26530号、同51−25133号、同51−26036号、同51−27921号、同51−27922号、同51−149028号、同52−46816号、同53−1520号、同53−1521号、同53−15127号、同53−146622号、同54−91325号、同54−106228号、同54−118246号、同55−59464号、同56−64333号、同56−81836号、同59−204041号、同61−84641号、同62−118345号、同62−247364号、同63−167357号、同63−214744号、同63−301941号、同64−9452号、同64−9454号、同64−68745号、特開平1−101543号、同1−102454号、同2−792号、同2−4239号、同2−43541号、同4−29237号、同4−30165号、同4−232946号、同4−346338号等に記載されている。
上記高沸点有機溶媒は、油溶性染料に対し、質量比で0.01〜3.0倍量、好ましくは0.01〜1.0倍量で使用する。
本発明では、油溶性染料や高沸点有機溶媒は、水性媒体中に乳化分散されることが好ましい。乳化分散の際、乳化性の観点から場合によっては低沸点有機溶媒を用いることができる。低沸点有機溶媒としては、常圧で沸点約30℃以上150℃以下の有機溶媒である。例えばエステル類(例えばエチルアセテート、ブチルアセテート、エチルプロピオネート、β−エトキシエチルアセテート、メチルセロソルブアセテート)、アルコール類(例えばイソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、セカンダリーブチルアルコール)、ケトン類(例えばメチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン)、アミド類(例えばジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン)、エーテル類(例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン)等が好ましく用いられるが、これに限定されるものではない。
乳化分散は、高沸点有機溶媒と場合によっては低沸点有機溶媒の混合溶媒に染料を溶かした油相を、水を主体とした水相中に分散し、油相の微小油滴を作るために行われる(この油層をインク原液としてもよいし、油層を該水相に分散したものをインク原液としてもよい)。この際、水相、油相のいずれか又は両方に、界面活性剤、湿潤剤、染料安定化剤、乳化安定剤、防腐剤、防黴剤等の成分を必要に応じて添加することができる。
乳化法としては水相中に油相を添加する方法が一般的であるが、油相中に水相を滴下して行く、いわゆる転相乳化法も好ましく用いることができる。なお、染料が水溶性で、成分が油溶性の場合にも前記乳化法を適用し得る。
乳化分散する際には、種々の界面活性剤を用いることができる。例えば脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤が好ましい。また、アセチレン系ポリオキシエチレンオキシド界面活性剤であるSURFYNOLS(AirProducts&Chemicals社)も好ましく用いられる。また、N,N−ジメチル−N−アルキルアミンオキシドのようなアミンオキシド型の両性界面活性剤等も好ましい。更に、特開昭59−157,636号の第(37)〜(38)頁、リサーチ・ディスクロージャーNo.308119(1989年)記載の界面活性剤として挙げたものも使うことができる。
また、乳化直後の安定化を図る目的で、上記界面活性剤と併用して水溶性ポリマーを添加することもできる。水溶性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミドやこれらの共重合体が好ましく用いられる。また多糖類、カゼイン、ゼラチン等の天然水溶性ポリマーを用いるのも好ましい。更に染料分散物の安定化のためには実質的に水性媒体中に溶解しないアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、ビニルエステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、オレフィン類、スチレン類、ビニルエーテル類、アクリロニトリル類の重合により得られるポリビニルやポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレア、ポリカーボネート等も併用することができる。これらのポリマーは−SO3 -、−COO-を含有していること好ましい。これらの実質的に水性媒体中に溶解しないポリマーを併用する場合、高沸点有機溶媒の20質量%以下用いられることが好ましく、10質量%以下で用いられることがより好ましい。
乳化分散により油溶性染料や高沸点有機溶媒を分散させて水性インク組成物とする場合、特に重要なのはその粒子サイズのコントロールである。インクジェットにより画像を形成した際の、色純度や濃度を高めるには平均粒子サイズを小さくすることが必須である。体積平均粒径で好ましくは1μm以下、より好ましくは5〜100nmである。
前記分散粒子の体積平均粒径及び粒度分布の測定方法には静的光散乱法、動的光散乱法、遠心沈降法のほか、実験化学講座第4版の417〜418ページに記載されている方法を用いるなど、公知の方法で容易に測定することができる。例えば、インク組成物中の粒子濃度が0.1〜1質量%になるように蒸留水で希釈して、市販の体積平均粒径測定機(例えば、マイクロトラックUPA(日機装(株)製))で容易に測定できる。更に、レーザードップラー効果を利用した動的光散乱法は、小サイズまで粒径測定が可能であり特に好ましい。
体積平均粒径とは粒子体積で重み付けした平均粒径であり、粒子の集合において、個々の粒子の直径にその粒子の体積を乗じたものの総和を粒子の総体積で割ったものである。体積平均粒径については「高分子ラテックスの化学(室井 宗一著 高分子刊行会)」の119ページに記載がある。
また、粗大粒子の存在も印刷性能に非常に大きな役割を示すことが明らかになった。即ち、粗大粒子がヘッドのノズルを詰まらせる、あるいは詰まらないまでも汚れを形成することによってインク組成物の不吐出や吐出のヨレを生じ、印刷性能に重大な影響を与えることが分かった。これを防止するためには、インク組成物にした時にインク組成物1μl中で5μm以上の粒子を10個以下、1μm以上の粒子を1000個以下に抑えることが重要である。
これらの粗大粒子を除去する方法としては、公知の遠心分離法、精密濾過法等を用いることができる。これらの分離手段は乳化分散直後に行ってもよいし、乳化分散物に湿潤剤や界面活性剤等の各種成分を加えた後、インクカートリッジに充填する直前でもよい。
平均粒子サイズを小さくし、かつ粗大粒子を無くす有効な手段として、機械的な乳化装置を用いることができる。
乳化装置としては、簡単なスターラーやインペラー撹拌方式、インライン撹拌方式、コロイドミル等のミル方式、超音波方式など公知の装置を用いることができるが、高圧ホモジナイザーの使用は特に好ましいものである。
高圧ホモジナイザーは、米国特許4533254号、特開平6−47264号等に詳細な機構が記載されているが、市販の装置としては、ゴーリンホモジナイザー(A.P.V GAULIN INC.)、マイクロフルイダイザー(MICROFLUIDEX INC.)、アルティマイザー(株式会社スギノマシン)等がある。
また、近年になって米国特許5720551号に記載されているような、超高圧ジェット流内で微粒子化する機構を備えた高圧ホモジナイザーは本発明の乳化分散に特に有効である。この超高圧ジェット流を用いた乳化装置の例として、DeBEE2000(BEE INTERNATIONAL LTD.)があげられる。
高圧乳化分散装置で乳化する際の圧力は50MPa以上であり、好ましくは60MPa以上、更に好ましくは180MPa以上である。
例えば、撹拌乳化機で乳化した後、高圧ホモジナイザーを通す等の方法で2種以上の乳化装置を併用するのは特に好ましい方法である。また、一度これらの乳化装置で乳化分散した後、湿潤剤や界面活性剤等の成分を添加した後、カートリッジにインク組成物を充填する間に再度高圧ホモジナイザーを通過させる方法も好ましい方法である。
高沸点有機溶媒に加えて低沸点有機溶媒を含む場合、乳化物の安定性及び安全衛生上の観点から低沸点溶媒を除去するのが好ましい。低沸点溶媒を除去する方法は溶媒の種類に応じて各種の公知の方法を用いることができる。即ち、蒸発法、真空蒸発法、限外濾過法等である。この低沸点有機溶剤の除去工程は乳化直後、できるだけ速やかに行うのが好ましい。
なお、インクジェット用インク組成物の調製方法については、特開平5−148436号、同5−295312号、同7−97541号、同7−82515号、同7−118584号の各公報に詳細が記載されていて、本発明のインク組成物の調製にも利用できる。
本発明のインク組成物には、インク組成物に種々の機能を付与するための機能性成分を含有させることができる。例えば、機能性成分としては、前記した各種溶媒、インク組成物の噴射口での乾操による目詰まりを防止するための乾燥防止剤、インク組成物を紙によりよく浸透させるための浸透促進剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、分散剤、分散安定剤、防黴剤、防錆剤、pH調整剤、消泡剤、キレート剤等が挙げられ、本発明のインク組成物は、これらを適宜選択して適量使用することができる。これら機能性成分は一種の化合物で一つ又は二つ以上の機能を発揮し得るものも含む。従って、以下の機能性成分の配合割合において、機能が重複する場合の機能性成分の取り扱いは、その化合物を各機能性成分に独立に算入させるものとする。
本発明に使用される乾燥防止剤としては水より蒸気圧の低い水溶性有機溶剤が好ましい。具体的な例としてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、アセチレングリコール誘導体、グリセリン、トリメチロールプロパン等に代表される多価アルコール類、エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノエチル(又はブチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、2−ピロリドン、N−メチルー2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−エチルモルホリン等のヘテロ環類、スルホラン、ジメチルスルホキシド、3−スルホレン等の含硫黄化合物、ジアセトンアルコール、ジエタノールアミン等の多官能化合物、尿素誘導体が挙げられる。これらのうちグリセリン、ジエチレングリコール等の多価アルコールがより好ましい。また上記の乾燥防止剤は単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。これらの乾燥防止剤はインク組成物中に10〜50質量%含有することが好ましい。
本発明に使用される浸透促進剤としてはエタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、1,2−ヘキサンジオール等のアルコール類やラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウムやノニオン性界面活性剤等を用いることができる。これらはインク組成物中に10〜30質量%含有すれば充分な効果があり、印字の滲み、紙抜け(プリントスルー)を起こさない添加量の範囲で使用するのが好ましい。
本発明で画像の保存性を向上させるために使用される紫外線吸収剤としては特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンゾオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤も用いることができる。
本発明では、画像の保存性を向上させるために使用される酸化防止剤として、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。有機の褪色防止剤としてはハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類などがあり、金属錯体としてはニッケル錯体、亜鉛錯体などがある。より具体的にはリサーチディスクロージャーNo.17643の第VIIのIないしJ項、同No.15162、同No.18716の650頁左欄、同No.36544の527頁、同No.307105の872頁、同No.15162に引用された特許に記載された化合物や特開昭62−215272号公報の127頁〜137頁に記載された代表的化合物の一般式及び化合物例に含まれる化合物を使用することができる。
本発明に使用される防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライト、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。これらは、インク組成物中に0.02〜5.00質量%使用するのが好ましい。
本発明のインク組成物の伝導度は0.01〜10S/mの範囲である。中でも好ましい範囲は伝導度が0.05〜5S/mの範囲である。
伝導度の測定方法は、市販の飽和塩化カリウムを用いた電極法により測定可能である。
伝導度は主に水系溶液中のイオン濃度によってコントロール可能である。塩濃度が高い場合、限外濾過膜などを用いて脱塩することができる。また、塩等を加えて伝導度調節する場合、種々の有機物塩や無機物塩を添加することにより調節することができる。
無機物塩としては、ハロゲン化物カリウム、ハロゲン化物ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸1水素ナトリウム、ホウ酸、リン酸2水素カリウム、リン酸2水素ナトリウム等の無機化合物や、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酒石酸カリウム、酒石酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、サッカリン酸カリウム、フタル酸カリウム、ピコリン酸ナトリウム等の有機化合物を使用することもできる。
また、後述される水性媒体の成分を選定することによっても伝導度を調整し得る。
本発明のインク組成物の粘度は、25℃において1〜30mPa・sであることが好ましい。更に好ましくは2〜15mPa・sであり、特に好ましくは2〜10mPa・sである。30mPa・sを超えると記録画像の定着速度が遅くなり、吐出性能も低下する。1mPa・s未満では、記録画像がにじむために品位が低下する。
粘度の調製はインク溶剤の添加量で任意に調製可能である。インク溶剤として例えば、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエタノールアミン、2−ピロリドン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテルなどがある。
また、粘度調整剤を使用してもよい。粘度調整剤としては、例えば、セルロース類、ポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマーやノニオン系界面活性剤等が挙げられる。更に詳しくは、「粘度調製技術」(技術情報協会、1999年)第9章、及び「インクジェットプリンタ用ケミカルズ(98増補)−材料の開発動向・展望調査−」(シーエムシー、1997年)162〜174頁に記載されている。
液体の粘度測定法はJISのZ8803に詳細に記載されているが、市販品の粘度計にて簡便に測定することができる。例えば、回転式では東京計器のB型粘度計、E型粘度計がある。本発明では山一電機の振動式VM−100A−L型により25℃にて測定した。粘度の単位はパスカル秒(Pa・s)であるが、通常はミリパスカル秒(mPa・s)を用いる。
本発明で用いるインク組成物の表面張力は動的・静的表面張力のいずれも、25℃において20〜50mN/mであることが好ましく、20〜40mN/mであることが更に好ましい。表面張力が50mN/mを超えると吐出安定性、混色時のにじみ、ひげ等印字品質が著しく低下する。また、インク組成物の表面張力を20mN/m以下にすると吐出時、ハード表面へのインク組成物の付着等により印字不良となる場合がある。
表面張力を調整する目的で、前記カチオン、アニオン、ノニオン系並びにベタイン系の各種界面活性剤を添加することができる。また、界面活性剤は2種以上を併用することができる。
静的表面張力測定法としては、毛細管上昇法、滴下法、吊環法等が知られているが、本発明においては、静的表面張力測定法として、垂直板法を用いている。
ガラス又は白金の薄い板を液体中に一部分浸して垂直に吊るすと、液体と板との接する長さに沿って液体の表面張力が下向きに働く。この力を上向きの力で釣り合わせて表面張力を測定することが出来る。
また、動的表面張力測定法としては、例えば、「新実験化学講座、第18巻、界面とコロイド」[(株)丸善、p.69〜90(1977)]に記載されるように、振動ジェット法、メニスカス落下法、最大泡圧法などが知られており、更に、特開平3−2064号公報に記載されるような液膜破壊法が知られているが、本発明においては、動的表面張力測定法として、バブルプレッシャー差圧法を用いている。以下、その測定原理と方法について説明する。
撹拌して均一となった溶液中で気泡を生成すると、新たな気−液界面が生成され、溶液中の界面活性剤分子が水の表面に一定速度で集まってくる。バブルレート(気泡の生成速度)を変化させたとき、生成速度が遅くなれば、より多くの界面活性剤分子が泡の表面に集まってくるため、泡がはじける直前の最大泡圧が小さくなり、バブルレートに対する最大泡圧(表面張力)が検出出来る。好ましい動的表面張力測定としては、大小二本のプローブを用いて溶液中で気泡を生成させ、二本のプローブの最大泡圧状態での差圧を測定し、動的表面張力を算出する方法を挙げることができる。
本発明のインク組成物中における不揮発性成分は、インク組成物の全量の10〜70質量%であることがインク組成物の吐出安定性やプリント画質、画像の各種堅牢性や印字後の画像の滲みと印字面のべたつき低減の点で好ましく、20〜60質量%であることがインク組成物の吐出安定性や印字後の画像の滲みの低減の点で更に好ましい。
ここで、不揮発性成分とは、1気圧のもとでの沸点が150℃以上の液体や固体成分、高分子量成分を意味する。インクジェット用インク組成物の不揮発性成分は、染料、高沸点溶媒、必要により添加されるポリマーラテックス、界面活性剤、染料安定化剤、防黴剤、緩衝剤などであり、これら不揮発性成分の多くは、染料安定化剤以外ではインク組成物の分散安定性を低下させ、また印字後にもインクジェット受像紙上に存在するため、受像紙での染料の会合による安定化を阻害し、画像部の各種堅牢性や高湿度条件下での画像の滲みを悪化させる性質を有している。
本発明においては高分子量化合物を含有することも可能である。ここで高分子量化合物とは、インク組成物中に含まれている数平均分子量が5000以上のすべての高分子化合物を指す。これらの高分子化合物としては水性媒体中に実質的に溶解する水溶性高分子化合物や、ポリマーラテックス、ポリマーエマルジョンなどの水分散性高分子化合物、更には補助溶剤として使用する多価アルコールに溶解するアルコール可溶性高分子化合物などが挙げられるが、実質的にインク組成物中に均一に溶解又は分散するものであれば、いずれも本発明における高分子量化合物に含まれる。
水溶性高分子化合物の具体例としては、ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドなどのポリアルキレンオキサイド、ポリアルキレンオキサイド誘導体等の水溶性高分子、多糖類、デンプン、カチオン化デンプン、カゼイン、ゼラチンなどの天然水溶性高分子、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミドやこれらの共重合体などの水性アクリル樹脂、水性アルキッド樹脂,分子内に−SO3 -、−COO-基を有し、実質的に水性媒体中に溶解する水溶性高分子化合物が挙げられる。
また、ポリマーラテックスとしては、スチレン−ブタジエンラテックス、スチレン−アクリルラテックスやポリウレタンラテックスなどが挙げられる。更に、ポリマーエマルジョンとしては、アクリルエマルジョンなどが挙げられる。
これらの水溶性高分子化合物は単独でも2種以上併用して用いることもできる。
水溶性高分子化合物は、すでに述べたように粘度調整剤として、吐出特性の良好な粘度領域にインク組成物の粘度を調節するために使用されるが,その添加量が多いとインク組成物の粘度が高くなってインク組成物の吐出安定性が低下し、インク組成物が経時したときに沈殿物によってノズルがつまり易くなる。
粘度調整剤の高分子化合物の添加量は、添加する化合物の分子量にもよるが(高分子量のものほど添加量は少なくて済む)、インク組成物全量に対して添加量を0〜5質量%、好ましくは0〜3質量%、より好ましくは0〜1質量%である。
また本発明では分散剤、分散安定剤として上述のカチオン、アニオン、ノニオン系並びにベタイン系の各種界面活性剤、消泡剤としてフッ素系、シリコーン系化合物やEDTAに代表されるキレート剤等も必要に応じて使用することができる。
本発明に好適に用いられる印字媒体である反射型メディアについて更に説明する。反射型メディアとしては、記録紙及び記録フィルム等が挙げられる。記録紙及び記録フィルムにおける支持体はLBKP、NBKP等の化学パルプ、GP、PGW、RMP、TMP、CTMP、CMP、CGP等の機械パルプ、DIP等の古紙パルプ等からなり、必要に応じて従来の公知の顔料、バインダー、サイズ剤、定着剤、カチオン剤、紙力増強剤等の添加剤を混合し、長網抄紙機、円網抄紙機等の各種装置で製造されたもの等が使用可能である。支持体としては、これらの支持体の他に合成紙、プラスチックフィルムシートのいずれであってもよく、支持体の厚みは10〜250μm、坪量は10〜250g/mが望ましい。
支持体にそのまま受像層及びバックコート層を設けて本発明のインク組成物並びにインクセットの受像材料としてもよいし、デンプン、ポリビニルアルコール等でサイズプレスやアンカーコート層を設けた後、受像層及びバックコート層を設けて受像材料としてもよい。更に支持体には、マシンカレンダー、TGカレンダー、ソフトカレンダー等のカレンダー装置により平坦化処理を行ってもよい。
支持体としては、両面をポリオレフィン(例、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブテン及びそれらのコポリマー)やポリエチレンテレフタレートでラミネートした紙及びプラスチックフイルムがより好ましく用いられる。ポリオレフィン中に、白色顔料(例、酸化チタン、酸化亜鉛)又は色味付け染料(例、コバルトブルー、群青、酸化ネオジウム)を添加することが好ましい。
支持体上に設けられる受像層には、多孔質材料や水性バインダーが含有される。また、受像層には顔料を含むのが好ましく、顔料としては、白色顔料が好ましい。白色顔料としては、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、クレー、珪藻土、合成非晶質シリカ、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、二酸化チタン、硫化亜鉛、炭酸亜鉛等の無機白色顔料、スチレン系ピグメント、アクリル系ピグメント、尿素樹脂、メラミン樹脂等の有機顔料等が挙げられる。特に好ましくは、多孔性の白色無機顔料がよく、特に細孔面積が大きい合成非晶質シリカ等が好適である。合成非晶質シリカは、乾式製造法(気相法)によって得られる無水珪酸及び湿式製造法によって得られる含水珪酸のいずれも使用可能である。
上記顔料を受像層に含有する記録紙としては、具体的には、特開平10−81064号、同10−119423、同10−157277、同10−217601、同11−348409、特開2001−138621、同2000−43401、同2000−211235、同2000−309157、同2001−96897、同2001−138627、特開平11−91242、同8−2087、同8−2090、同8−2091、同8−2093、同8−174992、同11−192777、特開2001−301314などに開示されたものを用いることができる。
受像層に含有される水性バインダーとしては、ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、デンプン、カチオン化デンプン、カゼイン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアルキレンオキサイド、ポリアルキレンオキサイド誘導体等の水溶性高分子、スチレンブタジエンラテックス、アクリルエマルジョン等の水分散性高分子等が挙げられる。これらの水性バインダーは単独又は2種以上併用して用いることができる。本発明においては、これらの中でも特にポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコールが顔料に対する付着性、インク受容層の耐剥離性の点で好適である。
受像層は、顔料及び水性バインダーの他に媒染剤、耐水化剤、耐光性向上剤、耐ガス性向上剤、界面活性剤、硬膜剤その他の添加剤を含有することができる。
受像層中に添加する媒染剤は、不動化されていることが好ましい。そのためには、ポリマー媒染剤が好ましく用いられる。
ポリマー媒染剤については、特開昭48−28325号、同54−74430号、同54−124726号、同55−22766号、同55−142339号、同60−23850号、同60−23851号、同60−23852号、同60−23853号、同60−57836号、同60−60643号、同60−118834号、同60−122940号、同60−122941号、同60−122942号、同60−235134号、特開平1−161236号の各公報、米国特許2484430号、同2548564号、同3148061号、同3309690号、同4115124号、同4124386号、同4193800号、同4273853号、同4282305号、同4450224号の各明細書に記載がある。特開平1−161236号公報の212〜215頁に記載のポリマー媒染剤を含有する受像材料が特に好ましい。同公報記載のポリマー媒染剤を用いると、優れた画質の画像が得られ、かつ画像の耐光性が改善される。
耐水化剤は、画像の耐水化に有効であり、これらの耐水化剤としては、特にカチオン樹脂が望ましい。このようなカチオン樹脂としては、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン、ポリエチレンイミン、ポリアミンスルホン、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物、カチオンポリアクリルアミド等が挙げられる。これらのカチオン樹脂の含有量は、インク受容層の全固形分に対して1〜15質量%が好ましく、特に3〜10質量%であることが好ましい。
耐光性向上剤、耐ガス性向上剤としては、フェノール化合物、ヒンダードフェノール化合物、チオエーテル化合物、チオ尿素化合物、チオシアン酸化合物、アミン化合物、ヒンダードアミン化合物、TEMPO化合物、ヒドラジン化合物、ヒドラジド化合物、アミジン化合物、ビニル基含有化合物、エステル化合物、アミド化合物、エーテル化合物、アルコール化合物、スルフィン酸化合物、糖類、水溶性還元性化合物、有機酸、無機酸、ヒドロキシ基含有有機酸、ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、トリアジン化合物、ヘテロ環化合物、水溶性金属塩、有機金属化合物、金属錯体等があげられる。
これらの具体的な化合物例としては、特開平10−182621号、特開2001−260519号、特開2000−260519号、特公平4−34953号、特公平4−34513号、特公平4−34512号、特開平11−170686号、特開昭60−67190号、特開平7−276808号、特開2000−94829号、特表平8−512258号、特開平11−321090号等に記載のものがあげられる。
界面活性剤は、塗布助剤、剥離性改良剤、スベリ性改良剤あるいは帯電防止剤として機能する。界面活性剤については、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載がある。
界面活性剤の代わりに有機フルオロ化合物を用いてもよい。有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。有機フルオロ化合物の例には、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれる。有機フルオロ化合物については、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭61−20994号、同62−135826号の各公報に記載がある。
硬膜剤としては特開平1−161236号公報の222頁、特開平9−263036号、特開平10−119423号、特開2001−310547号に記載されている材料などを用いることができる。
その他の受像層に添加される添加剤としては、顔料分散剤、増粘剤、消泡剤、染料、蛍光増白剤、防腐剤、pH調整剤、マット剤等が挙げられる。なお、インク受容層は1層でも2層でもよい。
記録紙及び記録フィルムには、バックコート層を設けることもでき、この層に添加可能な成分としては、白色顔料、水性バインダー、その他の成分が挙げられる。
バックコート層に含有される白色顔料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂等の有機顔料等が挙げられる。
バックコート層に含有される水性バインダーとしては、スチレン/マレイン酸塩共重合体、スチレン/アクリル酸塩共重合体、ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、デンプン、カチオン化デンプン、カゼイン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子、スチレンブタジエンラテックス、アクリルエマルジョン等の水分散性高分子等が挙げられる。バックコート層に含有されるその他の成分としては、消泡剤、抑泡剤、染料、蛍光増白剤、防腐剤、耐水化剤等が挙げられる。
インクジェット記録紙及び記録フィルムの構成層(バック層を含む)には、ポリマー微粒子分散物を添加してもよい。ポリマー微粒子分散物は、寸度安定化、カール防止、接着防止、膜のひび割れ防止のような膜物性改良等の目的で使用される。ポリマー微粒子分散物については、特開昭62−245258号、同62−136648号、同62−110066号の各公報に記載がある。ガラス転移温度が低い(40℃以下の)ポリマー微粒子分散物を媒染剤を含む層に添加すると、層のひび割れやカールを防止することができる。また、ガラス転移温度が高いポリマー微粒子分散物をバック層に添加しても、カールを防止できる。
本発明のインク組成物は、インクジェット記録以外の用途に使用することもできる。例えば、ディスプレイ画像用材料、室内装飾材料の画像形成材料及び屋外装飾材料の画像形成材料などに使用が可能である。
ディスプレイ画像用材料としては、ポスター、壁紙、装飾小物(置物や人形など)、商業宣伝用チラシ、包装紙、ラッピング材料、紙袋、ビニール袋、パッケージ材料、看板、交通機関(自動車、バス、電車など)の側面に描画や添付した画像、ロゴ入りの洋服、等各種の物を指す。本発明の染料をディスプレイ画像の形成材料とする場合、その画像とは狭義の画像の他、抽象的なデザイン、文字、幾何学的なパターンなど、人間が認知可能な染料によるパターンをすべて含む。
室内装飾材料としては、壁紙、装飾小物(置物や人形など)、照明器具の部材、家具の部材、床や天井のデザイン部材等各種の物を指す。本発明の染料を画像形成材料とする場合、その画像とは狭義の画像の他、抽象的なデザイン、文字、幾何学的なパターンなど、人間が認知可能な染料によるパターンをすべて含む。
屋外装飾材料としては、壁材、ルーフィング材、看板、ガーデニング材料屋外装飾小物(置物や人形など)、屋外照明器具の部材等各種の物を指す。本発明の染料を画像形成材料とする場合、その画像とは狭義の画像のみならず、抽象的なデザイン、文字、幾何学的なパターンなど、人間が認知可能な染料によるパターンをすべて含む。
以上のような用途において、パターンが形成されるメディアとしては、紙、繊維、布(不織布も含む)、プラスチック、金属、セラミックス等種々の物を挙げることができる。染色形態としては、媒染、捺染、若しくは反応性基を導入した反応性染料の形で色素を固定化することもできる。この中で、好ましくは媒染形態で染色されることが好ましい。
インク原液又はインク組成物の製造において、染料などの添加物の溶解工程等に超音波振動を加えることもできる。
超音波振動とは、インク組成物が記録ヘッドで加えられる圧力によって気泡を発生することを防止するため、記録ヘッドで受けるエネルギーと同等かそれ以上の超音波エネルギーを予めインク組成物の製造工程中に加えて気泡を除去しておくものである。
超音波振動は、通常、振動数20kHz以上、好ましくは40kHz以上、より好ましくは50kHzの超音波である。また超音波振動により液に加えられるエネルギーは、通常、2×107J/m3以上、好ましくは5×107J/m3以上、より好ましくは1×108J/m3以上である。また、超音波振動の付与時間としては、通常、10分〜1時間程度である。
超音波振動を加える工程は、染料を媒体に投入以降であれば何時行っても効果を示す。完成後のインク組成物を一旦保存した後に超音波振動を加えても効果を示す。しかし、染料を媒体中に溶解及び/又は分散する際に超音波振動を付加することが、気泡除去の効果がより大きく、なおかつ超音波振動により色素の媒体への溶解及び/又は分散が促進されるので好ましい。
即ち、上記少なくとも超音波振動を加える工程は、染料を媒体中に溶解及び/又は分散する工程中でもその工程後であってもいずれの場合にも行うことができる。換言すれば、上記少なくとも超音波振動を加える工程は、インク組成物調製後に製品となるまでの間に任意に1回以上行うことができる。
実施の形態としては媒体中に溶解及び/又は分散する工程は、前記染料を全媒体の一部分の媒体に溶解する工程と、残余の媒体を混合する工程とを有することが好ましく、上記少なくともいずれかの工程に超音波振動を加えることが好ましく、染料を全媒体の一部分の媒体に溶解する工程に少なくとも超音波振動を加えることが更に好ましい。
上記残余の溶媒を混合する工程は、単独工程でも複数工程でもよい。
また、本発明によるインク組成物製造に加熱脱気あるいは減圧脱気を併用することは、インク組成物中の気泡除去の効果を上げるので好ましい。加熱脱気工程あるいは減圧脱気工程は、残余の媒体を混合する工程と同時又はその後に実施することが好ましい。
超音波振動を加える工程における、超音波振動発生手段としては、超音波分散機等の公知の装置が挙げられる。
本発明のインク原液又はインク組成物を作製する際には、更に調液した後に行われる、濾過により固形分であるゴミを除く工程が重要である。この作業には濾過フィルターを使用するが、このときの濾過フィルターとは、有効径が1μm以下、好ましくは0.3μm以下0.05μm以上、特に好ましくは0.3μm以下0.25μm以上のフィルターを用いる。フィルターの材質としては種々のものが使用できるが、特に水溶性染料のインク組成物の場合には、水系の溶媒用に作製されたフィルターを用いるのが好ましい。中でも特にゴミの出にくい、ポリマー材料で作製されたフィルターを用いるのが好ましい。濾過法としては送液によりフィルターを通過させてもよいし、加圧濾過、減圧濾過のいずれの方法も利用可能である。
この濾過後には溶液中に空気を取り込むことが多い。この空気に起因する泡もインクジェット記録において画像の乱れの原因となることが多いため、前述の脱泡工程を別途設けることが好ましい。脱泡の方法としては、濾過後の溶液を静置してもよいし、市販の装置などを用いた超音波脱泡や減圧脱泡等種々の方法が利用可能である。超音波による脱泡の場合は、好ましくは30秒〜2時間、より好ましくは5分〜1時間程度脱泡操作を行うとよい。
これらの作業は、作業時におけるゴミの混入を防ぐため、クリーンルーム若しくはクリーンベンチなどのスペースを利用して行うことが好ましい。本発明では特にクリーン度としてクラス1000以下のスペースにおいてこの作業を行うことが好ましい。ここで「クリーン度」とは、ダストカウンターにより測定される値を指す。
本発明におけるインク組成物の記録材料上への打滴体積は0.1pl以上100pl以下である。打滴体積の好ましい範囲は0.5pl以上50pl以下であり、特に好ましい範囲は2pl以上50pl以下である。
〔インクジェット記録方法、インクジェット記録用インクカートリッジ、インクジェット記録装置及びインクジェット記録物〕
本発明のインクジェット記録方法は、インクジェット記録用インクを用いて、被記録材(記録材料)に着色画像(単に画像と称する場合がある)を形成する方法である。
本発明では、本発明のインク組成物若しくはインクセットを使用して、インクジェットプリンターにより画像記録を行う方法であれば、インクジェットの記録方式に制限はなく、公知の方式、例えば静電誘引力を利用してインク組成物を吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインク組成物に照射して放射圧を利用してインク組成物を吐出させる音響インクジェット方式、及びインク組成物を加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット(登録商標))方式等に用いられる。
インクジェット記録方法には、フォトインクと称する濃度の低いインク組成物を小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインク組成物を用いて画質を改良する方式や無色透明のインク組成物を用いる方式が含まれる。インク組成物の打滴体積の制御は主にプリントヘッドにより行われる。
例えばサーマルインクジェット方式の場合、プリントヘッドの構造で打滴体積を制御することが可能である。すなわち、インク室、加熱部、ノズルの大きさを変えることにより、所望のサイズで打滴することができる。またサーマルインクジェット方式であっても、加熱部やノズルの大きさが異なる複数のプリントヘッドを持たせることで、複数サイズの打滴を実現することも可能である。
ピエゾ素子を用いたドロップオンデマンド方式の場合、サーマルインクジェット方式と同様にプリントヘッドの構造上打滴体積を変えることも可能であるが、後述するようにピエゾ素子を駆動する駆動信号の波形を制御することにより、同じ構造のプリントヘッドで複数のサイズの打滴を行うことができる。
本発明のインク組成物を、記録材料へ打滴するときの吐出周波数は1KHz以上であることが好ましい。
写真のように、高画質の画像を記録するためには、小さいインク滴で鮮鋭度の高い画像を再現するため、打滴密度を600dpi(1インチあたりのドット数)以上とする必要がある。
一方、インク組成物を複数のノズルを有するヘッドで打滴するにあたり、記録紙とヘッドが互いに直交する方向に移動して記録するタイプでは同時に駆動できるヘッドの数は数十から200程度であり、ラインヘッドと呼ばれるヘッドが固定されたタイプでも数百であるという制約がある。これは駆動電力に制約があることや、ヘッドでの発熱が画像に影響を及ぼすため、多数のヘッドノズルを同時に駆動できないためである。
ここで駆動周波数を高くすることにより、記録速度を上げることが可能である。
打滴周波数を制御するには、サーマルインクジェット方式の場合、ヘッドを加熱するヘッド駆動信号の周波数を制御することで可能である。
ピエゾ方式の場合、ピエゾを駆動する信号の周波数を制御することで可能である。
ピエゾヘッドの駆動に関して説明する。プリントすべき画像信号はプリンタ制御部により、打滴サイズ、打滴速度、打滴周波数が決定され、プリントヘッドを駆動する信号が作成される。駆動信号はプリントヘッドに供給される。ピエゾを駆動する信号により打滴サイズ、打滴速度、打滴周波数が制御される。ここで打滴サイズと打滴速度は駆動波形の形状と振幅で決定され、周波数は信号の繰返し周期で決定される。
この打滴周波数を10kHzに設定すると、100マイクロ秒ごとにヘッドは駆動され、400マイクロ秒で1ラインの記録が終了する。記録紙の移動速度を400マイクロ秒に1/600インチすなわち約42ミクロン移動するように設定することにより、1.2秒に1枚の速度でプリントすることが出来る。
本発明に用いる印刷装置の構成、プリンタの構成に関しては、たとえば特開平11−170527に開示されるような様態が好適である。また、インクカートリッジに関しては、たとえば特開平5−229133に開示されるものが好適である。吸引及びその際に印字ヘッドを覆うキャップ等の構成に関しては、たとえば特開平7−276671に開示されるものが好適である。また、ヘッド近傍には特開平9−277552に開示されるような気泡を排除するためのフィルタを備えることが好適である。
また、ノズルの表面は特開2002−292878号公報に記載されるような撥水処理を施すことが好適である。用途としては、コンピュータと接続されるプリンタであってもよいし、写真をプリントすることに特化した装置であってもよい。
本発明に適用されるインクジェット記録方法は、インク組成物を記録材料へ打滴するときの平均打滴速度が2m/sec以上、好ましくは5m/sec以上であることが好ましい。
打滴速度を制御するには、ヘッドを駆動する波形の形状と振幅を制御することにより行う。
また複数の駆動波形を使い分けることにより、同じヘッドで複数のサイズの打滴を行うことができる。
以下に、本発明のインクを用いてインクジェットプリントをするのに用いられる記録紙及び記録フィルムについて説明する。
記録紙及び記録フィルムにおける支持体は、LBKP、NBKP等の化学パルプ、GP、PGW、RMP、TMP、CTMP、CMP、CGP等の機械パルプ、DIP等の古紙パルプ等からなり、必要に応じて従来公知の顔料、バインダー、サイズ剤、定着剤、カチオン剤、紙力増強剤等の添加剤を混合し、長網抄紙機、円網抄紙機等の各種装置で製造されたもの等が使用可能である。これらの支持体の他に合成紙、プラスチックフィルムシートのいずれであってもよく、支持体の厚みは10〜250μm、坪量は10〜250g/m2が望ましい。支持体には、そのままインク受容層及びバックコート層を設けてもよいし、デンプン、ポリビニルアルコール等でサイズプレスやアンカーコート層を設けた後、インク受容層及びバックコー卜層を設けてもよい。更に支持体には、マシンカレンダー、TGカレンダー、ソフトカレンダー等のカレンダー装置により平坦化処理を行ってもよい。本発明では支持体としては、両面をポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブテン及びそれらのコポリマー)でラミネートした紙及びプラスチックフィルムがより好ましく用いられる。ポリオレフィン中に、白色顔料(例えば、酸化チタン、酸化亜鉛)又は色味付け染料(例えば、コバルトブルー、群青、酸化ネオジウム)を添加することが好ましい。
本発明のインクジェット記録物は、上記した本発明のインクジェット記録用インクを用いて被記録材に着色画像を形成されてなる。ここで、画像の形成は、前記したインクジェット記録装置を用いたインクジェット記録方法を採用することによって、好適に得られる。
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、割合、機器、操作等は本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特に断りのない限り「%」及び「部」は、「質量%」及び「質量部」を表し、分子量とは質量平均分子量のことを示す。
〔合成例1〕
DYE−01の合成スキームを下記に示す。
Figure 2012031321
(1)中間体(B−01)の合成:
中間体(A−01)94.3gに酢酸アンモニウム102g、アセト酢酸エチル83mLを加え、内温80℃になるように加熱し、2時間攪拌した。内温40℃まで冷却した後、エタノール150mL、ジエチルエーテル150mLを加え、ろ過し、エタノール100mL、ジエチルエーテル100mLでかけ洗いした。得られた固体を水900mLに懸濁させ、1Mの水酸化カリウム水溶液を670mL加え、20分間攪拌した。12N塩酸水を加えpHを6.4にした後、室温にて30分間攪拌し、析出している結晶を濾別した。水1Lで洗浄後、70℃で乾燥して中間体(B−01)の白色結晶126.6gを得た。
(2)中間体(C−01)の合成:
クロロスルホン酸29.8mLを内温5℃に冷却し、内温が5〜8℃になるように中間体(B−01)10gを分割添加した。内温5℃にて3時間攪拌し、反応液を得た。別途、水200mLを内温10℃に冷却し、この中に、上述の反応液を内温が10〜20℃になるように滴下した。析出している結晶を濾別し、水20mL、イソプロピルアルコール20mLで洗浄後、30℃で乾燥して中間体(C−01)の白色結晶10.1gを得た。
(3)中間体(B−1)の合成:
チオ尿素12.5gと水120mlの中に原料(A−1;和光純薬品)40gを添加し、70℃で5時間攪拌した。析出した結晶を濾別し、5%NaOH溶液400mlを加え、室温で3時間攪拌した後、濾過し、中間体(B−11)の黄色結晶を35.5g得た。
(4)中間体(C−1)の合成:
還元鉄57.0g、塩化アンモニウム5.0g、水35ml及びイソプロピルアルコール250mlを30分還流し、中間体(B−1)22.0gを添加し、1時間還流攪拌した。濾過した後、濃縮し、中間体(C−1)の黄色結晶を15.0g得た。
(5)中間体(D−1)の合成
中間体(C−1)9.6gをアセトン125mLに加え内温50℃で攪拌し溶解させた。氷浴で内温を4℃まで冷却後無水酢酸5.6gを15分で滴下した。室温まで昇温後、水50mLを添加し、アセトンを減圧下で留去した。結晶を濾別後50mLの水で2回洗浄し、80℃で6時間乾燥させ中間体(D−1)の白色結晶を9.9g得た。
(6)中間体(F−11)の合成
中間体(E−1) 4.3gを水 43mLに添加し室温で攪拌した。12N塩酸 4.0mLを滴下後、内温4℃まで冷却した。そこへ亜硝酸ナトリウム 0.9gの水溶液 3mLを滴下し5℃以下で2時間攪拌した。その後、尿素 0.1gを加え内温4℃で15分撹拌しジアゾニウム溶液を得た。
別途、中間体(D−1) 2.4gと酢酸リチウム 8.6gをメタノール55mLとジメチルアセトアミド 3.5mLに溶かし内温5℃以下まで冷却した。ジアゾニウム溶液を内温5℃以下で5分かけて滴下した。1.5時間撹拌した後、塩化リチウム 15.0gを添加し、続いてイソプロピルアルコール 150mLを滴下した。結晶を濾別後イソプロピルアルコール100mLで洗浄した。80℃で乾燥後、中間体(F−11)の茶色結晶を5.4g得た。
(7)DYE−01の合成:
中間体(F−11)5.0gをリン酸20mLに加え、内温40℃にて30分間攪拌し完溶させた。その後、内温3℃まで冷却し、内温5℃以下を保つように、ニトロシル硫酸の43重量%硫酸溶液2.69gを3分かけて滴下した。内温5℃にて1時間攪拌し、ジアゾニウム塩溶液を得た。別に、中間体(C−01)1.93gをメタノール40mLとジメチルアセトアミド40mLの混合溶媒に溶解させ、氷冷して内温を5℃まで冷却した。この溶液に上述のジアゾニウム塩溶液を内温が10℃以下になるように分割添加し、内温5℃にて2時間攪拌した後、塩化リチウム40g、イソプロピルアルコール80mLを添加し、12時間静置した。結晶を濾別後、イソプロピルアルコール90mLで洗浄した。結晶に水90mLを加え、室温でイソプロピルアルコール450mLを滴加した。結晶を濾別後、水30mLを加え、4Mの水酸化リチウム水溶液を加えpHを8.3にした。この溶液にイソプロピルアルコール200mLを滴下し、析出した結晶を濾別した。得られた結晶をゲルクロマトグラムにて精製し(溶媒 メタノール:水=7:3)、(DYE−01)の緑色結晶を0.73g得た。
[水溶液の調製]
本発明の水溶液を、ここでは「インク原液」と称する。
[実施例1]
本発明の化合物(DYE−01)100gを超純水900gに室温で撹拌しながら溶解後、分割添加して溶解後、防腐剤(プロセキセルXL−2:フジフイルムイメージングカララント社製)を固形分として0.1gを添加した。引き続き、0.2μmのメンブランフィルターを用いて不要物のろ過を行い、インク原液−1を得た。
[実施例2]
炭酸水素リチウム0.1gを超純水900gに室温で撹拌しながら溶解後、引き続き、本発明の化合物(DYE−01)100gを室温で撹拌しながら分割添加して溶解後、防腐剤(プロセキセルXL−2:フジフイルムイメージングカララ)を固形分として0.1gを添加した。引き続き、0.2μmのメンブランフィルターを用いて不要物のろ過を行い、インク原液−2を得た。
[比較例1]
本発明の化合物(DYE−01)の代わりに下記化合物(DYE−11)を用いた以外は、実施例−1と同様の操作を行い、比較インク原液−1を得た。
Figure 2012031321
[比較例2]
本発明の化合物(DYE−01)の代わりに下記化合物(DYE−12)を用いた以外は、実施例−1と同様の操作を行い、比較インク原液−2を得た。
Figure 2012031321
上記、実施例1〜2、比較例1〜2で作成したインク原液をそれぞれ60℃で1週間保管した。強制熱経時試験前後のそれぞれのインク原液の液物性変化を下表1に示す。
pH値変化に関しては、インク原液調液直後のpH値(液温25℃)と強制熱経時試験(7日間)後のpH値(液温25℃)の値を基に、以下のような水準を設定した。
A:強制熱経時試験前後のpH値の差が、0.3未満
B:強制熱経時試験前後のpH値の差が、0.3以上0.5未満
C:強制熱経時試験前後のpH値の差が、0.5以上0.7未満
D:強制熱経時試験前後のpH値の差が、0.7以上
ABS値変化に関しては、インク原液調液直後のインク原液を1/5000に超純水で希釈後のABS(吸光度)値と強制熱経時試験(7日間)後インク原液を1/5000に超純水で希釈後のABS値を基に、以下のような水準を設定した。
A:強制熱経時試験前後のABS値の差が、0.05未満
B:強制熱経時試験前後のABS値の差が、0.05以上0.10未満
C:強制熱経時試験前後のABS値の差が、0.10以上0.15未満
D:強制熱経時試験前後のABS値の差が、0.15以上
Figure 2012031321
〔インク組成物の調製〕
以下の表2に示した組成に基づき、各成分を常温において30分間攪拌した後、得られた溶液を目開き1.0μmのメンブランフィルターを用いて濾過することにより各インク組成物を得た。なお表2中において、各成分の数値はインク組成物の質量を100%とした場合の各成分の重量%を示し、更に水の量を示す「残」は、水以外の成分とあわせて合計100%になる量を示す。
表2中、ブラック染料としては、本発明のアゾ色素の例として下記一般式(BLACK−1)、(BLACK−2)で表される化合物を用いた。また、色相の調整の観点で補色用染料として下記式(YELLOW−1)、(YELLOW−2)で表される化合物を併用した。
(BLACK−1):
Figure 2012031321
(BLACK−2):
Figure 2012031321
(YELLOW−1):
Figure 2012031321
(YELLOW−2):
Figure 2012031321
(YELLOW−3):
Figure 2012031321
比較例として本発明のアゾ色素以外の例としては、下記一般式(BLACK−3)を用いた。
(BLACK−3):
Figure 2012031321
Figure 2012031321
インクジェットプリンターPM−A700(セイコーエプソン株式会社製)を使用し、更に表2に示した実施例11〜16(インク液B−01、B−02、B−03、B−04、B−05、B−06)及び比較例11〜13(B−11、B−12、及びインクカートリッジブラック;ICBK32)のインクジェット用インクを用いて、各インクをPM−A700のブラックインクのカートリッジに装填し、インクジェット専用記録媒体:(1){写真用紙<光沢>(商品名、セイコーエプソン株式会社製)}、(2){写真用紙クリスピア<高光沢>(商品名、セイコーエプソン株式会社製)}、(3){富士フイルム インクジェットペーパー「画彩」写真仕上げPro(商品名、富士写真フイルム株式会社製)、(4){プロフェッショナルフォトペーパー PT−101(商品名、キャノン販売株式会社)に、OD値が0.7〜1.8(2.0)になるように階段状に濃度が変化した画像パターンを印字させ、画像堅牢性(耐光性・耐オゾンガス性)並びに画像品質(ブロンズ光沢)の評価を行った。
〔耐オゾン性試験方法〕
オゾンガス濃度が5ppm(25℃;60%RH)に設定された条件下で記録物を3日間、オゾンガスに曝露した。オゾンガス濃度は、APPLICS製オゾンガスモニター(モデル:OZG−EM−01)を用いて設定した。曝露開始から一定期間経過ごとに、反射濃度計(X−Rite310TR)を使用して各印刷物に記録されている各色のOD値を測定した。なお、前記反射濃度は、0.7、1.0及び1.8(2.0)の3点で測定した。
得られた結果から次式:ROD(%)=(D/D0)×100を用いて光学濃度残存率(ROD)を求めた。
(式中、Dは曝露試験後のOD値、D0は曝露試験前のOD値を表す。)
更に、上記試験の結果に基づき、下記の判定基準を用いて、記録物に記録された各色の耐オゾン性をA〜Dにランク付けた。
[判定基準]
評価A:試験開始から3日後のRODが、何れの濃度でも85%以上である。
評価B:試験開始から3日後のRODが、何れか1点の濃度が85%未満になる。
評価C:試験開始から3日後のRODが、何れか2点の濃度が85%未満になる。
評価D:試験開始から3日後のRODが、全ての濃度で85%未満になる。
本試験においては、オゾンに長時間曝露してもRODの低下が少ない記録物が優れる。得られた結果を表3に示した。
また、各色の耐オゾン性試験の結果から、以下の判定基準を用い、それぞれのインクとしての耐オゾン性のランク付けを行った。
[判定基準]
評価A:耐オゾン性試験結果が、全てAである。
評価B:耐オゾン性試験結果が、反射濃度3点のうち1点についてBであり、残りの2点については全てAである。
評価C:耐オゾン性試験結果が、反射濃度3点のうち1点についてCであり、残りの2点については全てA又はBである。
評価D:耐オゾン性試験結果が、反射濃度3点のうち1点についてDである。
本評価において評価Aが最も優れ、次に評価Bが優れる。得られた結果を表3に「インクの耐オゾン性」として示した。
Figure 2012031321
〔耐光性試験方法〕
ウェザーメーター(アトラス社製)を使用し、画像にキセノン光(10万ルックス)を7日間照射した。照射開始から一定期間経過ごとに、反射濃度計(X−Rite310TR)を使用して各印刷物に記録されている各色のOD値を測定した。なお、前記反射濃度は、0.7、1.0及び1.8(2.0)の3点で測定した。
得られた結果から次式:ROD(%)=(D/D0)×100を用いて、光学濃度残存率(ROD)を求めた。
(式中、Dは曝露試験後のOD値、D0は曝露試験前のOD値を表す。)
更に、上記試験の結果に基づき、下記の判定基準を用いて、記録物に記録された各反射濃度の耐光性をA〜Dにランク付けた。
[判定基準]
評価A:試験開始から7日後のRODが、何れの濃度でも85%以上である。
評価B:試験開始から7日後のRODが、何れか1点の濃度が85%未満になる。
評価C:試験開始から7日後のRODが、何れか2点の濃度が85%未満になる。
評価D:試験開始から7日後のRODが、全ての濃度で85%未満になる。
本試験においては、光に長時間曝露してもRODの低下が少ない記録物が優れる。得られた結果を表4に示した。
Figure 2012031321
更に以下のブロンズ(記録物の画質)評価及び耐湿性評価を行った。
〔ブロンズ評価〕
実施例1〜2のインクについて、インクジェット専用記録媒体;(1){写真用紙<光沢>(商品名、セイコーエプソン株式会社製)}、(2){写真用紙クリスピア<高光沢>(商品名、セイコーエプソン株式会社製)}、(3){富士フイルム インクジェットペーパー「画彩」写真仕上げPro(商品名、富士写真フイルム株式会社製)、(4){プロフェッショナルフォトペーパー PT−101(商品名、キャノン販売株式会社)に、1平方インチ当たり1.5〜2.2mgの打ち込み量になるようにBLACKのベタ印字を行い、得られた印刷物を、光沢度計(PG−1M、日本電色工業株式会社製)を用いて測定し(測定角度60度)、光沢度を求めた。
印字は、20℃40%RHと35℃60%RHの2つの環境下で行った。得られた光沢度と以下の式に基づいて計算した上昇値をブロンズ現象発生の程度を判定する基準とし、以下の判定基準に基づいて判定を行った。
上昇値=光沢度(印刷物)−光沢度(記録媒体)
[判定基準]
評価A:15未満
評価B:15以上35未満
評価C:35以上55未満
評価D:55以上
得られた結果を、表5に「ブロンズ光沢」として示した。
Figure 2012031321

Claims (15)

  1. (a)防腐剤と、(b)下記一般式(1)で表されるアゾ化合物又はその塩を少なくとも1種とを含有し、(b)の含有量が1質量%〜25質量%である水溶液。
    Figure 2012031321
    (一般式(1)中、Aはアリール基、又は含窒素5員ヘテロ環基を表す。Gは窒素原子又は−C(R)=を表す。Rは、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換又は無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表す。Y、Y及びYはそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Y、Y及びYは、互いに結合して環を形成しても良い。Mは水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。nは、0、1、又は2を表す。)
  2. 更に、(c)pH調整剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の水溶液。
  3. 前記一般式(1)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(2)で表されるアゾ化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水溶液。
    Figure 2012031321

    (一般式(2)中、Gは窒素原子又は−C(R)=を表す。Rは、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換又は無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表す。Rは、1価の置換基を表す。Aはアリール基、又は含窒素5員ヘテロ環基を表す。Mは水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。nは、0、1、又は2を表す。)
  4. 前記一般式(1)又は(2)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(3)で表されるアゾ化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の水溶液。
    Figure 2012031321
    (一般式(3)中、Rは1価の置換基を表す。X、X、X、X、及びX5はそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mは水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。nは、0、1、又は2を表す。)
  5. 前記一般式(1)又は(2)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(4)で表されるアゾ化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の水溶液。
    Figure 2012031321
    (一般式(4)中、Rは、1価の置換基を表す。X、X、X、X、及びX5はそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mは水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。nは、0、1、又は2を表す。)
  6. 前記一般式(1)〜(4)のいずれかで表されるアゾ化合物が、少なくとも3つ以上のイオン性親水性基を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の水溶液。
  7. pHが7.0〜9.0であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の水溶液。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の水溶液を含有することを特徴とするインク組成物。
  9. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の水溶液を含有することを特徴とするインクジェット記録用インク。
  10. 請求項9に記載のインクジェット記録用インクを用いて、被記録材に着色画像を形成することを特徴とするインクジェット記録方法。
  11. 請求項9に記載のインクジェット記録用インクを充填したインクジェット記録用インクカートリッジ。
  12. 請求項9に記載のインクジェット記録用インクを用いて、被記録材に着色画像を形成したインクジェット記録物。
  13. 下記一般式(1)で表されるアゾ化合物又はその塩。
    Figure 2012031321
    (一般式(1)中、Gは窒素原子又は−C(R)=を表す。Rは、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換又は無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表す。Y、Y、及びYは、それぞれ独立に水素原子又は1価の置換基を表す。Y、Y及びYは、互いに結合して環を形成しても良い。Aはアリール基、又は含窒素5員ヘテロ環基を表す。Mは水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。nは、0、1、又は2を表す。)
  14. 前記一般式(1)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(3)で表されるアゾ化合物であることを特徴とする請求項13に記載のアゾ化合物又はその塩。
    Figure 2012031321
    (一般式(3)中、Rは1価の置換基を表す。X、X、X、X、及びX5はそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mは水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。nは、0、1、又は2を表す。)
  15. 前記一般式(1)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(4)で表されるアゾ化合物であることを特徴とする請求項13に記載のアゾ化合物又はその塩。
    Figure 2012031321
    (一般式(4)中、Rは、1価の置換基を表す。X、X、X、X、及びX5はそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mは水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。nは、0、1、又は2を表す。)
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