以下、添付図面を参照して、本発明に係る表示器および表示装置の実施の形態について説明する。
図1,2に示す表示装置1は、視差による立体視画像を表示可能に構成された3D表示装置(「各視点位置から互いに相違する画像を視認可能に複数の画像を表示可能に構成され」との構成の一例)であって、表示器2および制御部3を備えて構成されている。表示器2は、図3に示すように、その背面側(同図における左側)から前面側(画像を視認する者が存在する側:同図における右側)に向かって、光源11、回折格子パネル12および拡散板13(「光透過パネル」の一例)がこの順で配置されて構成されている。なお、実際の表示装置1では、一例として、表示装置1の前面側における左右81方向の各視点位置に対応して規定された81箇所の視差領域毎に、互いに相違する81種類の「横×縦=1920×1080画素」のRGBカラー画像を視認させることができるよう構成されているが、「表示器」および「表示装置」の構成に関する理解を容易とするために、以下、左右81方向の各視点位置毎の各視差領域から、互いに相違する81種類の「横×縦=1920×1080画素」の単色画像において、互いに対応する81個の画素(表示画素)を視認させるための構成(81種類の単色画像からなる単色画像群における1つの表示画素群を表示するための構成)について説明する。
光源11は、一例として、表示する立体視画像の各表示画素に対応して、平板状の基板の表面に複数の光出射部(LEDなど)が配列されて全体として平板状に形成されている。この場合、光源11において、上記単色画像群のうちの1つの表示画素群(互いに対応する81個の表示画素の集合体)を表示させるための部位には、図4に示すように、「横×縦=9×9=81箇所」の光出射部20A1〜20I9(以下、区別しないときには「光出射部20」ともいう)が設けられている。すなわち、単色画像を表示させる構成の表示器2におけるこの光源11では、1つの単色画像を構成する各表示画素のうちの1つにつき1つの光出射部20が設けられている。この光源11は、制御部3からの制御信号Sに従い、図3に示すように、一例として、そのパネル面F1(上記の基板の基板面と平行な面)に対して垂直で互いに平行な光L1を各光出射部20毎にそれぞれ出射する。また、同図および図2に示すように、この表示器2では、一例として、上記のパネル面F1が、拡散板13のパネル面F3と平行になるように光源11が配置されている。
回折格子パネル12は、図3に示すように、光源11から出射された光L1を回折して光L2を出射する。この場合、回折格子パネル12において、上記単色画像群のうちの1つの表示画素群を表示させるための部位には、図5に示すように、表示すべき立体視画像の表示画素に対応して、「横×縦=9×9=81個」の回折格子30A1〜30I9(以下、区別しないときには「回折格子30」ともいう)が形成されている(各表示画素毎に1つの回折格子が形成された構成の例)。
なお、本明細書において、「1つの回折格子」は、入射した光を回折可能に構成された光学的要素のうちの「1つの光出射部」に対応して規定された部位を意味する。この場合、単色画像を表示させる構成の表示器2におけるこの回折格子パネル12では、上記の光源11における1つの光出射部20に対応して1つの回折格子30が規定されて、1つの単色画像を構成する各表示画素のうちの1つにつき1つの回折格子30が規定されている。なお、図5では、各回折格子30毎の格子の格子ラインを実際の格子の形成ピッチよりも広いピッチで図示している。この回折格子パネル12は、図6に示すように、各回折格子30毎に、光源11からの光L1を予め規定された81方向にそれぞれ回折して光L2を出射するように構成されている。なお、図6では、回折した光L2の出射方向をそれぞれ矢印で図示している。
この場合、この回折格子パネル12は、図3に示すように、一例として、光源11と対向する面(すなわち、回折格子パネル12の背面)に規定された各回折格子30の形成領域毎に拡散板13のパネル面F3に対する回折格子面(詳しくは後述する)の傾きが規定されると共に、各回折格子30の形成領域毎に平面視直線状の互いに平行な複数の凸部31、および平面視直線状の互いに平行な複数の凹部32が所定の形成ピッチで形成された凹凸パターン(格子パターン)が形成され、この凹凸パターンが回折格子30として機能して、光源11からの光L1を予め規定された方向に回折するように構成されている。なお、本例では、回折格子パネル12の背面に形成した凹凸パターンを回折格子30として機能させる構成を採用しているが、回折格子パネル12の前面側(画像を視認する者が存在する側)に凹凸パターンを形成して回折格子として機能させる構成を採用することもできる(図示せず)。
拡散板13は、一例として、光透過性を有する樹脂材料で平板状に形成されたレンチキュラレンズで構成されている。この拡散板13は、図7に示すように、一例として、回折格子パネル12における回折格子30の1つ当りに複数の凸レンズが位置するように(この例では、回折格子30の1つ当りに3つの凸レンズが位置するように)、横方向に長い複数の凸レンズが、その前面側(画像を視認する者が存在する側)に形成されている。これにより、この拡散板13では、回折格子パネル12によって回折された(回折格子パネル12から出射された)光L2が、拡散板13を透過して各凸レンズによって上下方向に拡散されて光L3として出射される。なお、図7では、回折格子パネル12における凹凸パターンの図示を省略している。
また、本明細書では、拡散板13において回折格子パネル12と対向する面(すなわち、拡散板13の背面)を「光透過パネル面」の一例であるパネル面F3とする。この場合、「光透過パネル」としての「拡散板」については、本例とは相違するが、その背面側(回折格子パネル12と対向する面の側)に複数の凸レンズを形成することもできる(図示せず)。このような構成を採用した場合においては、その拡散板における前面を「光透過パネル面」の一例であるパネル面とする。また、「拡散板」に代えて、「拡散板」以外の光透過パネル(例えば、回折格子パネル12等の傷付きや塵埃の付着を防止するための「保護板」や、ノングレア処理が施された「化粧板」)を有する表示器においては、これらの板体の背面および前面のいずれかの板面を「光透過パネル面」とする。
また、本明細書では、回折格子パネル12における回折格子30を構成する各凸部31の突端面における幅方向(図3における上下方向)の各中心線を含む面(図3における各中心31oを含む面)を「回折格子面」の一例である回折格子面F2とする。また、図9に示す回折格子パネル12aや、図10に示す回折格子パネル12bのように、凸部31の断面形状が上記の回折格子パネル12とは相違する場合においても、回折格子30を構成する各凸部31の突端面における幅方向の各中心線を含む面(同図における各中心31oを含む面)を「回折格子面」の一例である回折格子面F2とする。さらに、以下の説明において、上記の中心線、または上記の中心線と平行な線分(図17等において実線Lbで示す線)を格子ラインともいう。
この場合、図3に示すように、この表示器2では、回折格子パネル12における各回折格子30の回折格子面F2が、その回折格子30に対する光L1の入射方向に対して傾くように(回折格子面F2の法線と光L1の入射方向とが非平行となるように)回折格子30が配設されている。具体的には、一例として、この表示器2では、光源11からの光L1が拡散板13のパネル面F3の法線と平行な向きに光源11から出射され、この光L1が、拡散板13のパネル面F3に対して傾けられている回折格子30の回折格子面F2に斜めに入射するように構成されている。
より具体的には、一例として、この表示器2では、図2,3に示すように、光源11のパネル面F1と、拡散板13のパネル面F3とが互いに平行となるように光源11および拡散板13が配置されている。また、光源11は、そのパネル面F1の法線と平行な向きに光L1を出射するように構成されている。さらに、図3に示すように、この表示器2では、回折格子パネル12における各回折格子30の回折格子面F2が、拡散板13のパネル面F3や光源11のパネル面F1と非平行となるようにパネル面F3,F1に対して傾けられている。なお、本例では、光源11のパネル面F1と拡散板13のパネル面F3とが平行となるように光源11および拡散板13を配置したが、両パネル面F1,F3が非平行となるように光源11および拡散板13を配置することもできる。
また、本例の回折格子パネル12では、前述したように、回折格子パネル12が光源11および拡散板13の間に配設されると共に、その状態において、拡散板13のパネル面F3との間に生じさせるべき傾斜角度に応じて各回折格子30の形成領域を傾斜させ、その傾斜面に各凸部31や各凹部32を形成している。また、図11に示すように、この回折格子パネル12では、1次回折光L2bおよび−1次回折光L2cのいずれか一方が回折格子パネル12から出射しないようにパネル面F3,F1に対する回折格子面F2の傾斜角が規定されて各回折格子30が形成されている。また、この回折格子パネル12では、各回折格子30に対する光源11からの光L1の回折入射角θ(図8参照:後述する「αy」+「δy」)が、後述するブラッグ角θBとなるように、各凸部31の形成ピッチや、パネル面F3,F1に対する回折格子面F2の傾斜角が規定されて各回折格子30が形成されている。
この場合、図8に示すように、回折格子の格子間隔(回折格子における格子の形成ピッチ:この例では、各凸部31の形成ピッチ)をdとしたときに、「2d・sinθ=nλ」との式を満たす状態において回折光の光量が多くなる(回折光である光L2が強くなる)ことが知られている。なお、本明細書では、上記の「2d・sinθ=nλ」との式を満たす回折入射角θを「ブラッグ角(θB)」という。この場合、上記の条件式における「n」は回折光の次数を表し、「λ」は、光L1,L2の波長を表している。また、同図は、格子ラインと垂直に交差する向きで回折格子パネル12を切断した断面を図示している。なお、本明細書においては、「凸部31の延在方向(図8に示す実線Laの向き)と入射光(図8における光L1)の入射方向とのなす角度における各回折格子30の格子ラインに対して回折格子面F2内において直交する向きの成分」を「回折入射角θ」という。
このように、光源11からの光L1の回折入射角θがブラッグ角θBとなるように形成された各回折格子30では、1次回折光L2bおよび−1次回折光L2cのいずれか一方の光量が十分に多くなる(いずれか一方の強度が十分に高まる)ため、その回折格子30による回折効率を十分に向上させることができる。なお、一例として、「n=1」の光L2(すなわち、1次回折光)を立体視画像の視認に利用する場合、「d=λ」となるように凸部31を形成した回折格子30では、上記の式により、「θ=30°」となる。
一方、制御部3は、表示器2に表示させるべき立体視画像の画像データに応じて光源11に制御信号Sを出力することにより、光源11における各光出射部20を、立体視画像の各表示画素の明るさに応じて点灯させる。なお、実際の表示装置1には、外部装置から出力された画像データや画像信号を処理する画像処理部等を備え、制御部3は、画像処理部によって処理されたデータや信号に基づいて表示器2に立体視画像を表示させるが、「表示器」および「表示装置」についての理解を容易とするために、表示器2および制御部3以外の構成要素に関する説明および図示を省略する。
この表示装置1(表示器2)では、光源11からの光L1を回折格子パネル12の各回折格子30によって回折して左右81方向に振り分けると共に、各回折格子30によって左右方向に振り分けられた光L2を拡散板13によって上下方向に拡散させることで、左右81方向の各視差領域毎に上下方向における視域を拡げる構成(左右方向においては、互いに相違する視差画像が視認され、上下方向においては、同一の視差画像が視認されるように表示させる構成)が採用されている。具体的には、この表示装置1による立体視画像の表示に際しては、制御部3が表示器2の光源11に制御信号Sを出力することにより、各光出射部20を、表示すべき立体視画像の各表示画素の明度に応じた明るさで点灯させる。
この際には、図3に示すように、光源11の各光出射部20から出射された各光L1が回折格子パネル12の回折格子30にそれぞれ入射して回折される結果、各回折格子30から光L2(回折光)がそれぞれ出射される。この際に、この表示装置1では、回折格子パネル12における各回折格子30が、各光L2を出射すべき方向に応じて、格子ラインの傾き、回折格子面F2の傾き、および凸部31の形成ピッチ等が規定されて形成されている。これにより、図6に示すように、各回折格子30からの光L2は、所定の間隔で左右81方向に放射状に拡がるように回折格子パネル12からそれぞれ出射される。
また、この表示器2では、前述したように、回折格子パネル12における各回折格子30の回折格子面F2が拡散板13のパネル面F3に対して非平行となるようにパネル面F3に対して回折格子面F2が傾けられている。したがって、この表示器2では、光源11からの光L1が回折格子パネル12の回折格子30において回折されたときに、1次回折光L2b(または、−1次回折光L2c)の強度が十分に強くなる。このため、光源11からの光L1の利用効率が十分に向上すると共に、その光量が十分に多い1次回折光L2b(または、−1次回折光L2c)を立体視画像を視認させるための光として使用することで、その1次回折光L2b(または、−1次回折光L2c)に対応する表示画素が十分に明るく視認される。
なお、この表示器2の回折格子パネル12では、前述したように、1次回折光L2bおよび−1次回折光L2cのいずれか一方が回折格子パネル12から出射しないように各回折格子30が形成されている。したがって、図11に示すように、この例では、1次回折光L2b(または、−1次回折光L2c)と、少量の0次回折光L2aだけが拡散板13に入射することとなる。
一方、表示器2から出射された1次回折光L2b(または、−1次回折光L2c)および0次回折光L2a(以下、これらを総称して「光L2」ともいう)は、図3,7に示すように、拡散板13を構成するレンチキュラレンズによって上下方向に拡散されて、両図および図2に示すように、表示器2(表示装置1)の前方に向かって光L3として出射される。この際に、上記の各光L3は、回折格子パネル12の各回折格子30による回折によって光源11からの光L1が所定の間隔で左右81方向に放射状に拡けられると共に、回折格子パネル12からの光L2が拡散板13によってそれぞれ上下方向に拡散された光として出射される。これにより、表示装置1の前方における左右81方向の各位置毎に、上下方向の所定の高さ範囲内において、各視点位置に対応する画像(各光L3を表示画素とする画像)が視認される。
したがって、画像を視認する者の左目および右目が互いに相違する視差領域(視点位置)に位置している状態では、左目によって視認される視差画像と、右目によって視認される視差画像とが視差領域の位置に応じて相違しているため、表示されている画像が立体視画像として認識される(両眼視差によって立体視画像として認識される)。また、画像を視認する者が表示装置1(表示器2)に表示されている画像を視認しながら、図2に示す矢印A1,A2の向き(左右方向)で各視差領域(各視点位置)に順次移動することにより、表示装置1(表示器2)に表示されている画像が、運動視差によって立体視画像として認識される。
次に、上記の表示器2における回折格子パネル12の回折格子面F2および拡散板13のパネル面F3と、光源11からの光L1および回折格子パネル12によって回折された光L2との関係について、図12〜24を参照しつつ、具体的に説明する。
上記の表示器2では、拡散板13におけるパネル面F3の法線L13(光透過パネルにおける光透過パネル面の法線)と、回折格子パネル12における各回折格子30の回折格子面F2に入射する光L1の入射方向とのなす角度におけるX成分(拡散板13における左右方向に対応する成分であって、光L1が入射する側の面から見たときに、光L1の入射方向がパネル面F3に対して斜め右向きに交差する状態の角度をプラスとし、光L1の入射方向がパネル面F3に対して斜め左向きに交差する状態の角度をマイナスとする角度)を「αX(図12,13参照)」とし、
拡散板13におけるパネル面F3の法線L13(光透過パネルにおける光透過パネル面の法線)と、回折格子パネル12における各回折格子30の回折格子面F2に入射する光L1の入射方向とのなす角度におけるY成分(拡散板13における上下方向に対応する成分であって、光L1が入射する側の面から見たときに、光L1の入射方向がパネル面F3に対して斜め下向きに交差する状態の角度をプラスとし、光L1の入射方向がパネル面F3に対して斜め上向きに交差する状態の角度をマイナスとする角度)を「αY(図12,14参照)」とし、
パネル面F3の法線L13に対する回折格子面F2の法線L12の傾き角におけるX成分(拡散板13における左右方向に対応する成分であって、光L1が入射する側の面から見たときに、回折格子面F2の法線L12がパネル面F3に対して斜め左向きに交差する状態の角度をプラスとし、回折格子面F2の法線L12がパネル面F3に対して斜め右向きに交差する状態の角度をマイナスとする角度)を「γX(図15参照)」とし、
パネル面F3の法線L13に対する回折格子面F2の法線L12の傾き角におけるY成分(拡散板13における上下方向に対応する成分であって、光L1が入射する側の面から見たときに、回折格子面F2の法線L12がパネル面F3に対して斜め上向きに交差する状態の角度をプラスとし、回折格子面F2の法線L12がパネル面F3に対して斜め下向きに交差する状態の角度をマイナスとする角度)を「γY(図16参照)」とし、
回折格子30における各格子の回折格子面F2内におけるペリスト回転角(光L1が入射する側の面から見たときに、各格子の格子ライン(図17において実線Lbで示すライン)が水平の状態(図17において実線Lcで示すラインと平行な状態)を0度とし、各格子の格子ラインが左下がりとなる回転角をプラスとし、各格子の格子ラインが右下がりとなる回転角をマイナスとする角度)を「ε(図17参照)」としたときに、
回折格子面F2の法線L12と、回折格子面F2に入射する光L1の入射方向とのなす角度におけるx成分(回折格子30における各格子の格子ラインの延在方向(ペリスト回転角が0度の回折格子30が形成された回折格子面F2においては、左右方向)に対応する成分であって、光L1が入射する側の面から見たときに、回折格子面F2に対して光L1が斜め右向き(ペリスト回転角が0度の回折格子30の場合の方向)に入射する状態の角度をプラスとし、回折格子面F2に対して光L1が斜め左向き(ペリスト回転角が0度の回折格子30の場合の方向)に入射する状態の角度をマイナスとする角度)である「αx(図18,19参照)」、および、回折格子面F2の法線L12と、回折格子面F2に入射する光L1の入射方向とのなす角度におけるy成分(回折格子30における各格子の格子ラインに対して回折格子面F2内において直交する方向(ペリスト回転角が0度の回折格子30が形成された回折格子面F2においては、下方向)に対応する成分であって、光L1が入射する側の面から見たときに、回折格子面F2に対して光L1が斜め下向き(ペリスト回転角が0度の回折格子30の場合の方向)に入射する状態の角度をプラスとし、回折格子面F2に対して光L1が斜め上向き(ペリスト回転角が0度の回折格子30の場合の方向)に入射する状態の角度をマイナスとする角度)である「αy(図18,20参照)」は、次の2つの式で表される。
αx=tan−1(tan(αX+γX)・cosε)+tan−1(tan(αY+γY)・sin(−ε))
αy=tan−1(tan(αX+γX)・sinε)+tan−1(tan(αY+γY)・cosε)
また、光L1の波長を「λ」とし、回折格子30の格子間隔(回折格子30における格子の形成ピッチ:この例では、凸部31の形成ピッチ)を「d(図21参照)」とし、
回折格子面F2の法線L12に対する各凸部31の延在方向(図21において実線Laで示す方向)の傾き角におけるy成分(回折格子30における各格子の格子ラインに対して回折格子面F2内において直交する方向(ペリスト回転角が0度の回折格子30が形成された回折格子面F2においては、上下方向)に対応する成分であって、光L1が入射する側の面から見たときに、回折格子面F2に対して凸部31の延在方向が斜め上向きで交差する状態の角度をプラスとし、回折格子面F2に対して凸部31の延在方向が斜め下向きで交差する状態の角度をマイナスとする角度)を「δy(図21,22参照)」としたときに、
回折格子面F2の法線L12と、回折格子面F2から出射する光L2の出射方向とのなす角度におけるx成分(回折格子30における各格子の格子ラインの延在方向(ペリスト回転角が0度の回折格子30が形成された回折格子面F2においては、左右方向)に対応する成分であって、光L1が入射する側の面から見たときに、回折格子面F2から斜め左向き(ペリスト回転角が0度の回折格子30の場合の方向)に光L2が出射する状態の角度をプラスとし、回折格子面F2から斜め右向き(ペリスト回転角が0度の回折格子30の場合の方向)に光L2が出射する状態の角度をマイナスとする角度)である「βx(図23,19参照)」、および、回折格子面F2の法線L12と、回折格子面F2から出射する光L2の出射方向とのなす角度におけるy成分(回折格子30における各格子の格子ラインに対して回折格子面F2内において直交する方向(ペリスト回転角が0度の回折格子30が形成された回折格子面F2においては、上下方向)に対応する成分であって、光L1が入射する側の面から見たときに、回折格子面F2から斜め上向き(ペリスト回転角が0度の回折格子30の場合の方向)に光L2が出射する状態の角度をプラスとし、回折格子面F2から斜め下向き(ペリスト回転角が0度の回折格子30の場合の方向)に光L2が出射する状態の角度をマイナスとする角度)である「βy(図23,20参照)」は、次の2つの式で表される。
βx=−αx
βy=sin−1{(nλ−d・sin(αy+δy))/d}+δy
また、パネル面F3の法線L13と、回折格子面F2から出射する光L2の出射方向とのなす角度におけるX成分(拡散板13における左右方向に対応する成分であって、光L2が拡散板13に入射する側の面から見たときに、光L2の出射方向が拡散板13に対して斜め左向きに交差する状態の角度をプラスとし、光L2の出射方向が拡散板13に対して斜め右向きに交差する状態の角度をマイナスとする角度)である「βX(図24,13参照)」、および、パネル面F3の法線L13と、回折格子面F2から出射する光L2の出射方向とのなす角度におけるY成分(拡散板13における上下方向に対応する成分であって、光L2が拡散板13に入射する側の面から見たときに、光L2の出射方向が拡散板13に対して斜め上向きに交差する状態の角度をプラスとし、光L2の出射方向が拡散板13に対して斜め下向きに交差する状態の角度をマイナスとする角度)である「βY(図24,14参照)」は、次の2つの式で表される。
βX=tan−1(tanβx・cosε)+tan−1(tanβy・sinε)+γX
βY=tan−1(tanβx・sin(−ε))+tan−1(tanβy・cosε)+γY
したがって、表示器2の設計に際しては、上記の「βX」および「βY」が所望の角度となるように、上記の6つの式に基づき、光源11から出射する光L1(回折格子パネル12に入射させる光L1)の「λ」に応じて、「αX」、「αY」、「ε」、「d」、「γX」、「γY」、「δy」を適宜調整すればよい。この場合、回折入射角θ(αy+δy)の絶対値が0°よりも大きくなるほど、−1次回折光L2c(または、1次回折光L2b)が減少し、後述する条件を満たすと出射しなくなる。また、−1次回折光L2c(または、1次回折光L2b)の減少に伴って1次回折光L2b(または、−1次回折光L2c)が増加する。
なお、図12〜14,18〜20,23,24では、上記の各説明事項における「X成分」、「Y成分」、「x成分」および「y成分」等について理解を容易とするために、回折格子面F2に対する光L1の入射方向と、回折格子面F2からの光L2の出射方向やパネル面F3に対する光L2の入射方向との関係を、表示器2内における実際の光の進路とは相違する状態で図示している。また、図12〜14,18〜20,23,24では、一例として「ペリスト回転角ε=0°」で、かつ「パネル面F3の法線L13に対する回折格子面F2の法線L12の傾き角におけるX成分γX=0°」の例を図示している。
続いて、表示装置1(表示器2)によってカラー画像を表示するための構成について、図面を参照して説明する。なお、上記の単色画像を表示するための表示装置1(表示器2)の構成と区別するために、カラー画像を表示可能な表示装置1(表示器2)については、表示装置1C(表示器2C)ともいう。また、表示器2Cにおける光源11や回折格子パネル12については、前述した表示器2における光源11や回折格子パネル12と区別するために、光源11cおよび回折格子パネル12cともいう。さらに、その他の構成要素において単色画像表示用の表示装置1(表示器2)と同様の機能を有する構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
この種の表示装置によってカラー画像を表示させる場合、カラー画像を構成する各表示画素毎に、複数の色光(一例として、R=Red =赤色、G=Green =緑色、B=Blue=青色の3色の色光:以下、単に「R,G,B」ともいう)を合成することによって各表示画素の色を任意の色として視認させる。この場合、1つの表示画素を表示するためのR,G,B,の各色光を同一の回折格子における回折格子面に入射させたときには、回折現象の波長依存性に起因して、波長λが相違する各色光の回折角度が相違する状態(すなわち、回折格子面からの回折光の出射角度が相違する状態)となる。
このため、1つの表示画素として視認されるべきR,G,B各色の1次回折光L2bx(または、−1次回折光L2cx)が互いに相違する向きに出射される結果、そのような表示画像で構成される画像を見たときに、色滲みが生じた状態に見えることがある。また、立体像表示装置1xから遠く離れた位置においては、1つの表示画素として視認されるべきR,G,B各色の1次回折光L2bx(または、−1次回折光L2cx)のうちのいずれか一色分だけしか視認できない状態となり、このような状態においては、カラー画像を表示させているにも拘わらず、赤色の単色画像、緑色の単色画像、または青色の単色画像として視認される事態を招くおそれもある。このため、カラー画像の表示に際しては、各表示画素を構成する各色光が実質的に同一方向に向けて出射されるように表示器を構成する必要がある。
一方、図25に示すように、カラー画像を表示するための表示装置1Cの表示器2Cは、回折格子パネル12cにおける各回折格子30毎の回折格子面F2の傾斜角度や、回折格子パネル12cにおける各回折格子30毎の凸部31の形成ピッチを、回折すべき色光の波長に応じて互いに相違させることにより、上記の問題点を克服している。なお、実際の表示装置1C(表示器2C)では、一例として、表示装置1Cの前面側における左右81方向の各視点位置毎の各視差領域から、各方向に応じて互いに相違する81種類の「横×縦=1920×1080画素」のRGBカラー画像を視認させることができるよう構成されているが、左右81方向の各視点位置毎の各視差領域用のRGBカラー画像のうちの1つの表示画素を視認させるための構成について説明する。
この場合、表示器2Cにおける光源11cは、一例として、図26に示すように、光L1R(赤色の色光)を出射する光出射部20(光出射部20A1R〜20I9R:赤色のサブピクセル:以下、これらを区別しないときには「光出射部20R」ともいう)、光L1G(緑色の色光)を出射する光出射部20(光出射部20A1G〜20I9G:緑色のサブピクセル:以下、これらを区別しないときには「光出射部20G」ともいう)、および光L1B(青色の色光)を出射する光出射部20(光出射部20A1B〜20I9B:青色のサブピクセル:以下、これらを区別しないときには「光出射部20B」ともいう)がこの順で左右方向に並んで設けられ、1つの光出射部20R、1つの光出射部20Gおよび1つの光出射部20Bによって、カラー画像を構成する1つの表示画素(以下、「カラー表示画素」ともいう)を視認させるための各色光を出射するように構成されている。すなわち、カラー画像を表示させる構成の表示器2Cにおけるこの光源11cでは、1つのカラー画像を構成する各表示画素のうちの1つを構成する各色の副画素(サブピクセル)毎に1つの光出射部20(光出射部20R,20G,20Bのいずれか)が設けられている。
なお、同図、および後に参照する図27〜34では、赤色(R)に関連する要素については「R」の符号を付し、緑色(G)に関連する要素については「G」の符号を付し、青色(B)に関連する要素については「B」の符号を付して図示している。また、上記の光源11cでは、1つの表示画素を視認させるための各色光を出射する光出射部20R,20G,20Bが左右方向に隣接するように配置されているが、後述する回折格子パネル12cにおける各光L1R,L1G,L1B用の各回折格子30を、各光出射部20R,20G,20Bの位置に合わせて配置することで、1つの表示画素を視認させるための各色光を出射する光出射部20R,20G,20Bを任意の位置に配置することもできる(図示せず)。
また、図27に示すように、回折格子パネル12cは、光源11cの各光出射部20Rから出射された光L1Rを回折するための回折格子30(回折格子30A1R〜30I9R:以下、これらを区別しないときには「回折格子30R」ともいう)、各光出射部20Gから出射された光L1Gを回折するための回折格子30(回折格子30A1G〜30I9G:以下、これらを区別しないときには「回折格子30G」ともいう)、および各光出射部20Bから出射された光L1Bを回折するための回折格子30(回折格子30A1B〜30I9B:以下、これらを区別しないときには「回折格子30B」ともいう)がこの順で左右方向に並んで設けられ、1つの回折格子30R、1つの回折格子30Gおよび1つの回折格子30Bによって、1つのカラー表示画素を視認させるための各色光をそれぞれ回折するように構成されている(1つの表示画素を表示するための各色光毎に1つの回折格子が形成された構成の例)。
なお、前述したように、本明細書において、「1つの回折格子」とは、入射した光を回折可能に構成された光学的要素のうちの「1つの光出射部」に対応して規定された部位を意味する。この場合、カラー画像を表示させる構成の表示器2Cにおけるこの回折格子パネル12cでは、上記の光源11cにおける1つの光出射部20(光出射部20R,20G,20Bのいずれか)に対応して1つの回折格子30(回折格子30R,30G,30Bのいずれか)が規定されて、1つのカラー画像を構成する各表示画素のうちの1つを構成する各色の副画素毎に1つの回折格子30(回折格子30R,30G,30Bのいずれか)が規定されている。
この場合、1つのカラー表示画素を視認させるための各色光を拡散板13から左右方向において同じ向きに出射するための回折格子パネル12cの構成としては、以下の2つの構成のうちのいずれかを採用することができる。1つ目の構成の回折格子パネル12cとしては、1つのカラー表示画素を表示するための光L1R,L1G,L1Bをそれぞれ回折する回折格子30R,30G,30Bについて、拡散板13のパネル面F3に対する回折格子面F2の傾きを互いに等しくすると共に、回折すべき光L1の波長λが短い回折格子30における格子の形成ピッチd(凸部31の形成ピッチd)よりも、回折すべき光L1の波長λが長い回折格子30における格子の形成ピッチd(凸部31の形成ピッチd)の方が大きくなるように形成する。
具体的には、図28に示すように、回折格子30Rの回折格子面F2のパネル面F3に対する傾きと、回折格子30Gの回折格子面F2のパネル面F3に対する傾きと、各回折格子30Bの回折格子面F2のパネル面F3に対する傾きとを互いに等しくすると共に、図29に示すように、光L1Bよりも波長λが短い光L1Gを回折する回折格子30Gにおける凸部31の形成ピッチdが、回折格子30Bにおける凸部31の形成ピッチdよりも大きくなり、かつ、光L1Gよりも波長λが短い光L1Rを回折する回折格子30Rにおける凸部31の形成ピッチdが、回折格子30Gにおける凸部31の形成ピッチdよりも大きくなるように回折格子30R,30G,30Bを形成して回折格子パネル12cを構成する。
より具体的には、図32に示す実施例1の表示器2C(表示装置1C)、および図33に示す実施例2の表示器2C(表示装置1C)では、81個のカラー表示画素A1〜I9のうちの1つを視認させるための光L1R,L1G,L1Bを回折する回折格子30R,30G,30Bに関し、パネル面F3に対する回折格子面F2の傾き(γXおよびγY)が互いに等しく、かつ、回折すべき光L1の波長λが短い回折格子30における凸部31の形成ピッチdよりも、回折すべき光L1の波長λが長い回折格子30における凸部31の形成ピッチdの方が大きくなるように回折格子パネル12cが形成されて配置されている。なお、実施例1,2の表示器2C(表示装置1C)における「d」、「γX」および「γY」以外の各種パラメータについては、図32,33に示すとおりのため、詳細な説明を省略する。また、図32〜34では、81個のカラー表示画素A1〜I9のうちのカラー表示画素A1,C3,E5,G7,I9の5つのみに関する各種パラメータを図示している。
この場合、図32に示すように、実施例1の表示器2C(表示装置1C)では、カラー表示画素A1〜I9のうちの1つを視認させるための光L1R,L1G,L1Bを回折する回折格子30R,30G,30Bにおける回折格子面F2のパネル面F3に対する傾きが互いに等しいものの、その回折格子30R,30G,30Bの傾きは、カラー表示画素A1〜I9のうちの他の1つを視認させるための光L1R,L1G,L1Bを回折する回折格子30R,30G,30Bにおける回折格子面F2のパネル面F3に対する傾きとは相違している(「1つの表示画素を表示するための複数種類の色光をそれぞれ回折する各回折格子が、光透過パネル面に対する回折格子面の傾きが互いに等しく、かつ、回折すべき色光の波長が短い回折格子における格子の形成ピッチよりも、回折すべき色光の波長が長い回折格子における格子の形成ピッチの方が大きくなるように形成されている」との構成の一例)。
これに対して、図33に示すように、実施例2の表示器2C(表示装置1C)では、すべての回折格子30R,30G,30Bにおける回折格子面F2のパネル面F3に対する傾きが互いに等しくなっている(「1つの表示画素を表示するための複数種類の色光をそれぞれ回折する各回折格子が、光透過パネル面に対する回折格子面の傾きが互いに等しく、かつ、回折すべき色光の波長が短い回折格子における格子の形成ピッチよりも、回折すべき色光の波長が長い回折格子における格子の形成ピッチの方が大きくなるように形成されている」との構成の他の一例であって、かつ、「すべての回折格子における回折格子面の光透過パネル面に対する傾きが互いに等しくなるように形成されている」との構成の一例))。
このように、すべての回折格子30R,30G,30Bにおける回折格子面F2のパネル面F3に対する傾きを互いに等しくする場合には、全体として平板状に形成した回折格子パネルの全体を拡散板13のパネル面F3に対して傾ける構成(図示せず)を採用することができる。また、すべての回折格子30R,30G,30Bにおける回折格子面F2のパネル面F3に対する傾きを互いに等しくする場合に、回折格子パネルを複数のパネルに分割して、各パネル毎に同じ傾斜角で回折格子30R,30G,30Bを形成する構成(図示せず)を採用することにより、表示器全体としての厚みを十分に薄くすることができる。
この実施例1,2の表示器2C(表示装置1C)では、図32,33に示すように、1つのカラー表示画素を視認させるために回折格子パネル12c(各回折格子面F2)から出射される光L2(光L2R,L2G,L2B:図25参照)の出射角度(βXおよびβY)が互いに等しくなっている。したがって、実施例1,2の表示器2C(表示装置1C)では、これら光L2R,L2G,L2Bが拡散板13によって上下方向に拡散されつつ、光L3R,L3G,L3Bとして表示器2C(表示装置1C)の前方に向かって左右方向において同じ向きに出射されることとなる。
2つ目の構成の回折格子パネル12cとしては、1つのカラー表示画素を表示するための前記光L1R,L1G,L1Bをそれぞれ回折する回折格子30R,30G,30Bについて、格子の形成ピッチd(凸部31の形成ピッチd)が互いに等しく、かつ、回折すべき光L1の波長λが短い回折格子30における回折格子面F2の拡散板13におけるパネル面F3に対する傾きよりも、回折すべき光L1の波長λが長い回折格子30における回折格子面F2のパネル面F3に対する傾きの方が大きくなるように形成する。
具体的には、図31に示すように、回折すべき光L1の波長λの相違に拘わらず、回折格子30R,30G,30Bにおける凸部31の形成ピッチdを互いに等しくすると共に、図30に示すように、光L1Bよりも波長λが短い光L1Gを回折する回折格子30Gにおける回折格子面F2のパネル面F3に対する傾きが、回折格子30Bにおける回折格子面F2のパネル面F3に対する傾きよりも大きくなり、かつ、光L1Gよりも波長λが短い光L1Rを回折する回折格子30Rにおける回折格子面F2のパネル面F3に対する傾きが、回折格子30Gにおける回折格子面F2のパネル面F3に対する傾きよりも大きくなるように各回折格子30R,30G,30Bを形成して回折格子パネル12cを構成する。なお、「回折格子面F2のパネル面F3に対する傾きが大きい」とは、前述した「γX」および「γY」の少なくとも一方が大きいことを意味する。
より具体的には、図34に示す実施例3の表示器2C(表示装置1C)では、81個のカラー表示画素A1〜I9のうちの1つを視認させるための光L1R,L1G,L1Bを回折する回折格子30R,30G,30Bに関し、凸部31の形成ピッチdが互いに等しく、かつ、回折すべき光L1の波長λが短い回折格子30における回折格子面F2のパネル面F3に対する傾き(γXおよびγYの少なくとも一方)よりも、回折すべき光L1の波長λが長い回折格子30における回折格子面F2のパネル面F3に対する傾き(γXおよびγYの少なくとも一方)の方が大きくなるように回折格子パネル12cが形成されて配置されている。この場合、実施例3の表示器2C(表示装置1C)は、波長λが長い回折格子30ほど回折格子面F2のパネル面F3に対する傾きが大きくなっている構成の例であって、この例では、波長λが長い回折格子30ほど「γY」が大きくなっている。なお、実施例3の表示器2C(表示装置1C)における「d」、「γX」および「γY」以外の各種パラメータについては、図34に示すとおりのため、詳細な説明を省略する。
この実施例3の表示器2C(表示装置1C)では、1つのカラー表示画素を視認させるために回折格子パネル12c(各回折格子面F2)から出射される光L2(光L2R,L2G,L2B:図25参照)の出射角度(βXおよびβY)が互いに等しくなっている。したがって、実施例3の表示器2C(表示装置1C)では、これら光L2R,L2G,L2Bが拡散板13によって上下方向に拡散されつつ、光L3R,L3G,L3Bとして表示器2C(表示装置1C)の前方に向かって左右方向において同じ向きに出射されることとなる。
したがって、回折格子パネル12cとして、上記実施例1または実施例2の表示器2C(表示装置1C)における回折格子パネル12cと同様の構成、および上記実施例3の表示器2C(表示装置1C)における回折格子パネル12cと同様の構成のいずれを採用した場合においても、1つのカラー表示画素を視認させるための各色光が拡散板13から左右方向において同じ向きに出射される。
なお、図32〜34に示すように、上記実施例1〜3の表示器2C(表示装置1C)における回折格子パネル12cでは、いずれも、「|(−λ−d・sin(αy+δy))/d|≧1」との条件を満たしている。このような条件を満たす回折格子パネル12cでは、−1次回折光L2cが回折格子パネル12cから出射しないため、−1次回折光L2cの回折格子パネル12cからの出射(拡散板13への入射)に起因して、立体視画像(カラー画像)像がぼやける事態が生じるのが回避されている。また、1次回折光L2bを回折格子パネル12cから出射させないようにするには、「|(λ−d・sin(αy+δy))/d|≧1」との条件を満たすように構成すればよい。このような条件を満たすように構成することで、1次回折光L2bの回折格子パネル12cからの出射(拡散板13への入射)に起因して、立体視画像(カラー画像)像がぼやける事態が生じるのが回避される。
また、上記実施例1の表示器2C(表示装置1C)における回折格子パネル12cでは、各回折格子30R,30G,30Bに対する光L1R,L1G,L1Bの回折入射角θがブラッグ角θBとなるように構成されている。したがって、立体視画像(カラー画像)の視認のために使用される1次回折光L2bの光量が十分に多くなっている(1次回折光L2bの強度が十分に強くなっている)。
この場合、上記実施例1〜3の表示器2C(表示装置1C)では、回折格子パネル12cにおける各回折格子30R,30G,30Bによって光源11からの光L1を回折することで左右方向の各視差領域に向けて回折格子パネル12cから光L2を出射し(左右方向の各視差領域からの画像の視認を可能とし)、この光L2を拡散板13によって上下方向に拡散させることで、各視差領域毎の上下方向における視域を拡げる(上下方向の所定の視域内における画像の視認を可能とする)構成が採用されている。言い換えれば、上記実施例1〜3の表示器2C(表示装置1C)では、拡散板13によって光L2を拡散させない「左右方向」については、回折格子パネル12cにおける各回折格子30R,30G,30B毎のペリスト回転角εを、ε=0°を含む範囲で適宜規定することで、光L2を左右方向の任意の方向に出射させる構成が採用されている。
このような構成の実施例1〜3の表示器2C(表示装置1C)では、回折格子面F2の傾き角における上下方向(拡散板13が光を拡散させる方向)の成分であるγYを、γY≠0°となるように各回折格子30R,30G,30Bの回折格子面F2を傾けることで、αy≠0としている。これにより、画像を視認できる範囲を左右方向に拡げるための回折格子パネル12cにおいて、ペリスト回転角ε=0や、ペリスト回転角εの絶対値が小さい各種ペリスト回転角εの回折格子30R,30G,30Bであっても、各回折格子30R,30G,30Bにおいて−1次回折光L2c(または、1次回折光L2b)を十分に減少させつつ、回折格子パネル12cからの光L2の出射方向を左右方向に十分に拡げることが可能となっている。
なお、前述した単色画像表示用の表示器2(表示装置1)においても、回折格子面F2の傾き角における上下方向(拡散板13が光を拡散させる方向)の成分であるγYを、γY≠0°となるように各回折格子30の回折格子面F2を傾けることで、αy≠0とすることにより、回折格子パネル12において、ペリスト回転角ε=0や、ペリスト回転角εの絶対値が小さい各種ペリスト回転角εの回折格子30であっても、各回折格子30において−1次回折光L2c(または、1次回折光L2b)を十分に減少させつつ、回折格子パネル12からの光L2の出射方向を左右方向に十分に拡げることが可能となっている。
このように、この表示器2(2C)によれば、回折格子パネル12(12c)に形成した各回折格子30のうちの少なくとも一部の回折格子30における回折格子面F2が拡散板13のパネル面F3に対して非平行となるように回折格子面F2をパネル面F3に対して傾けたことにより、拡散板13のパネル面F3に対して垂直に交差する向き(パネル面F3の法線と平行な向き)に光源11から出射される光L1が回折格子パネル12(12c)に入射する構成を採用した場合においても、回折格子パネル12(12c)から出射される−1次回折光L2c(または、1次回折光L2b)の光量を十分に減少させる(−1次回折光L2c(または、1次回折光L2b)の強度を十分に低下させる)か、または、回折格子パネル12(12c)からの−1次回折光L2c(または、1次回折光L2b)の出射をなくして、1次回折光L2b(または、−1次回折光L2c)の光量を十分に増加させる(1次回折光L2b(または、−1次回折光L2c)の強度を十分に強める)ことができる。したがって、この表示器2(2C)によれば、光源11からの光L1の利用効率を十分に向上させることができる。
また、この表示器2Cによれば、1つの表示画素を表示するための複数種類の色光をそれぞれ回折する各回折格子30R,30G,30Bが、パネル面F3に対する回折格子面F2の傾きが互いに等しく、かつ、回折すべき色光の波長が短い回折格子30における格子の形成ピッチよりも、回折すべき色光の波長が長い回折格子30における格子の形成ピッチの方が大きくなるように回折格子パネル12cを形成したことにより、1つの表示画素を、波長が相違する複数の色光(この例では、R,G,Bの3色の色光)によって表示する場合に、回折格子パネル12cから出射される各色光の出射方向(回折格子パネル12cからの各色光の出射角度)を同一方向(同一角度)に揃えることができる。したがって、この表示器2Cによれば、表示したカラー画像に色滲みが生じたり、単色画像として視認されたりする事態を回避して、鮮明なカラー画像として視認させることができる。
さらに、この表示器2Cによれば、すべての回折格子30R,30G,30Bにおける回折格子面F2のパネル面F3に対する傾きが互いに等しくなるように回折格子パネル12cを形成したことにより、回折格子パネル12cの設計および製造を容易に行うことができる結果、表示器2Cの製造コストを十分に軽減することができる。
また、この表示器2Cによれば、1つの表示画素を表示するための複数種類の色光をそれぞれ回折する各回折格子30R,30G,30Bが、格子の形成ピッチが互いに等しく、かつ、回折すべき色光の波長が短い回折格子30における回折格子面F2のパネル面F3に対する傾きよりも、回折すべき色光の波長が長い回折格子30における回折格子面F2のパネル面F3に対する傾きの方が大きくなるように回折格子パネル12cを形成したことにより、1つの表示画素を、波長が相違する複数の色光(この例では、R,G,Bの3色の色光)によって表示する場合に、回折格子パネル12cから出射される各色光の出射方向(回折格子パネル12cからの各色光の出射角度)を同一方向(同一角度)に揃えることができる。したがって、この表示器2Cによれば、表示したカラー画像に色滲みが生じたり、単色画像として視認されたりする事態を回避して、鮮明なカラー画像として視認させることができる。
さらに、本発明に係る表示器2(2C)によれば、−1次回折光L2cおよび1次回折光L2bのいずれか(この例では、−1次回折光L2c)が回折格子パネル12(12c)から出射しないように回折格子パネル12(12c)を形成したことにより、回折格子パネル12(12c)から出射された−1次回折光L2cの存在に起因して、いわゆるゴースト像が表示される事態を招くことなく、鮮明な画像を表示させることができる。
また、この表示器2(2C)によれば、回折格子パネル12(12c)によって回折された光L2を上下方向に拡散させる拡散板13を光透過パネルとして備えたことにより、表示器2(2C)の前方において、表示器2(2C)に表示される画像を視認することができる範囲を上下方向に十分に拡げることができる。
さらに、この表示器2(2C)によれば、各回折格子30に対する光源11(11c)からの光L1の回折入射角θがブラッグ角θBとなるように回折格子パネル12(12c)を構成したことにより、1次回折光L2b(または、−1次回折光L2c)の光量が十分に高くなる(1次回折光L2b(または、−1次回折光L2c)の強度が十分に強くなる)結果、光源11からの光L1の利用効率を十分に向上させることができる。
また、この表示装置1(1C)によれば、表示器2(2C)と、光源11(11c)の点灯を制御して表示器2(2C)に画像を表示させる制御部3とを備えて構成したことにより、光源11からの光L1の利用効率を十分に向上させることができる結果、全域に亘って鮮明な画像を表示することができる。
なお、表示器および表示装置の構成は、上記の表示器および表示装置の構成に限定されない。例えば、平面視直線状の互いに平行な複数の凸部31、および平面視直線状の互いに平行な複数の凹部32が所定の形成ピッチで形成された凹凸パターン(格子パターン)を回折格子30として機能させる構成の回折格子パネル12を備えた表示器2(2C)および表示装置1(1C)を例に挙げて説明したが、「回折格子」は、平面視直線状の互いに平行な複数の凸部、および平面視直線状の互いに平行な複数の凹部で構成された凹凸パタン(格子パターン)が形成されたものに限定されない。一例として、図35,36に示す回折格子パネル12dにおける回折格子30aのように、互いに交差することのない平面視曲線状の複数の凸部、および互いに交差することのない平面視曲線状の複数の凹部で構成された凹凸パターン(格子パターン)を形成して「回折格子」として機能させる構成を採用することができる。この場合、両図では、一例として、凸部の幅方向の中心を実線(曲線)で図示している。
なお、前述したように、本明細書において、「1つの回折格子」とは、入射した光を回折可能に構成された光学的要素のうちの「1つの光出射部」に対応して規定された部位を意味する。この場合、平面視曲線状の凸部や平面視曲線状の凹部が格子パターンとして形成された回折格子パネルでは、光源における1つの光出射部(前述した光源11における1つの光出射部20、または、前述した光源11cにおける光出射部20R,20B,20Gのうちの1つに対応する要素:つまり、単色画像を表示するための光源においては、1つの単色画像を構成する各表示画素のうちの1つに対応する光を出射する光学的要素であり、カラー画像を表示するための光源においては、1つの単色画像を構成する各表示画素のうちの1つにおける各色光に対応する各副画素のうちの1つに対応する光を出射する光学的要素)に対応して1つの回折格子30a(両図において荒い破線で区切った方形状の領域)が規定され、この回折格子30a毎に、光透過パネル面(一例として、拡散板13のパネル面F3)に対する回折格子面F2の傾きが規定されている。
なお、平面視曲線状の凸部や平面視曲線状の凹部を格子パターンとして形成した回折格子30aでは、図36に示すように、一例として、格子としての凸部が回折格子30aの一端部(例えば、同図における左端部)と交差する交点P1と、凸部が回折格子30aの他端部(この例では、同図における右端部)と交差する交点P2とを結んだ実線Lcを格子ラインとする。このような構成の回折格子パネル12dにおいても、回折格子30a毎に光透過パネル面(拡散板13のパネル面F3)に対する回折格子面F2の傾きを規定することで、前述した回折格子パネル12(12c)等と同様にして、光源11からの光L1の利用効率を十分に向上させることができる。
また、例えば、各回折格子30の形成領域毎に複数の凸部31および複数の凹部32が所定の形成ピッチで形成された凹凸パターンが形成され、この凹凸パターンが回折格子30として機能して、光源11からの光L1を予め規定された方向に回折するように構成された回折格子パネル12(12c)を有する表示器2(2C)および表示装置1(1C)を例に挙げて説明したが、回折格子パネル12(12c)に代えて、図37〜39に示す回折格子パネル12e〜12gのいずれかによって光源11からの光L1を予め規定された方向に回折するように構成することもできる。
この場合、回折格子パネル12e〜12gは、前述した回折格子パネル12(12c)における凸部31および凹部32からなる格子パターン(凹凸パターン)に代えて、複数の凸部31aおよび複数の凹部(スリット)32aからなる格子パターンが形成されて、この格子パターンが回折格子30bとして機能して、光源11からの光L1を予め規定された方向に回折するように構成されている。なお、この回折格子パネル12e〜12gにおいて、前述した回折格子パネル12(12c)の各要素と同様の要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
この場合、図37,38に示すように、回折格子パネル12e,12fの回折格子30bでは、凸部31aの延在方向(同図における実線Laの方向)が、その回折格子面F2に対して垂直に交差する向き(回折格子面F2の法線と平行な向き:δy=0°」となっている。したがって、この回折格子パネル12e,12gの回折格子30bは、δy=0°の回折格子パネル12(12c)の回折格子30と同様に機能する。一方、図39に示すように、回折格子パネル12gの回折格子30bでは、凸部31aの延在方向(同図における実線Laの方向)が、その回折格子面F2に対して斜めに交差する向き(回折格子面F2の法線と非平行な向き:δy≠0°」となっている。したがって、この回折格子パネル12gの回折格子30bは、δy≠0°の回折格子パネル(例えば、図21に示す回折格子パネル12)の回折格子と同様に機能する。
さらに、光源11(11c)を一体的に備えて構成した表示器2(2C)を例に挙げて説明したが、「表示器」の構成はこれに限定されない。例えば、外部装置としての「光源」から出射された光を回折格子パネルによって回折して光透過パネルを透過させる構成の表示器(図示せず)においても、その表示器における回折格子パネルを、上記の表示器2(2C)における回折格子パネル12(12c)等と同様に構成することができる。
また、「視差による立体視画像」を表示する利用形態を例に挙げて説明したが、「表示器」および「表示装置」によって表示する「画像」はこれに限定されない。例えば、複数種類の2次元画像(一例として、ニュース番組の画像、教育番組の画像、およびアニメーション番組の画像)を「互いに相違する画像」として「表示器」に表示させる利用形態を採用することができる。このような利用形態においては、一例として、「表示器」に向かって左側から「ニュース番組の画像」を視認させ、「表示器」に向かって正面から「教育番組の画像」を視認させ、「表示器」に向かって右側から「アニメーション番組の画像」を視認させることで、1台の「表示装置」によって、3人の視聴者に対してそれぞれ相違する画像を視認させることができる。
さらに、RGBカラー画像を表示可能に構成した表示器2C(表示装置1C)を例に挙げて説明したが、RGBカラー画像以外の、各種のカラー画像を表示可能に「表示器」および「表示装置」を構成することもできる。このような構成を採用する場合においては、カラー画像を構成する各色光毎の表示画素毎に、上記のγXやγY、およびdなどを適宜調整すればよい。また、光出射部としてのLEDを備えた光源11(11c)を例に挙げて説明したが、「光源」は、これに限定されず、有機ELや、CRT、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイおよび表面伝導型電子放出素子ディスプレイ(SED)などの各種光出射装置を備えて構成することができる。この場合、単色画像を表示するための表示装置に上記の各種光出射装置を使用する場合には、光出射装置において、1つの単色画像を構成する各表示画素のうちの1つに対応する光を出射するための光学的要素が「光出射部」に相当し、カラー画像を表示するための表示装置に上記の各種光出射装置を使用する場合には、光出射装置において、1つのカラー画像を構成する各表示画素のうちの1つにおける各色の副画素のうちの1つに対応する光を出射するための光学的要素が「光出射部」に相当する。
また、「光透過パネル」としての拡散板13を備えて構成した表示器2(2C)を例に挙げて説明したが、拡散板13に代えて、「回折格子パネル」等の傷付きや塵埃の付着を防止するための「保護板」や、ノングレア処理が施された「化粧板」を配設して「表示器」を構成することもできる。この場合、拡散板13のような回折格子パネルからの光を上下方向に拡散させる光透過パネルを用いないときには、回折格子パネルにおける回折格子の数を適宜増やして、左右方向だけでなく、上下方向の各視点位置(上下方向の各視差領域)においても互いに相違する視差画像を表示させる構成を採用することができる。