以下、本発明に係る船舶用燃料切換機能付き燃料供給装置(以下、単に「燃料供給装置」と言うこともある。)の第1実施形態を、図1及び図3を参照して説明する。この船舶用燃料切換機能付き燃料供給装置11は、例えばディーゼル機関12の起動時及び停止時等の所望の場面で、その場面に適した燃料を、複数種類の例えば第1燃料油(例えばA重油)、第2燃料油(例えばC重油)、及び水のうち予め定めたものを選択して作ったり使用することができ、そのような燃料をその所望の場面でディーゼル機関12に供給することができるものである。
つまり、この図1に示す燃料供給装置11による燃料供給パターンの一例として、第2燃料タンク14に貯留されている第2燃料油(例えばC重油)と、水タンク15に貯留されている水とをミキサ19で混ぜて得られたC重油エマルジョンを、循環ライン18で循環させて、この循環ライン18を循環するC重油エマルジョンを、その循環ライン18に接続するディーゼル機関12に供給することができる。
このとき、供給路切換部20は、第2燃料タンク14内の第2燃料(C重油)が、燃料供給ポンプ21の吸込み口に吸い込まれるようにその操作レバーが操作されており、第2供給ライン17の開閉弁22が解放されている。そして、燃料供給ポンプ21、水供給ポンプ23、及び燃料循環ポンプ24が駆動している。
そして、図1に示す燃料供給装置11による燃料供給パターンの他の例として、第1燃料タンク13に貯留されている第1燃料油(例えばA重油)を、循環ライン18で循環させて、この循環ライン18を循環するA重油を、その循環ライン18に接続するディーゼル機関12に供給することもできる。
このとき、供給路切換部20は、第1燃料タンク13内の第1燃料(A重油)が、燃料供給ポンプ21の吸込み口に吸い込まれるようにその操作レバーが操作されており、開閉弁22が閉鎖されている。そして、燃料供給ポンプ21、及び燃料循環ポンプ24が駆動しているが、水供給ポンプ23は、停止している。
また、図1に示す燃料供給装置11による燃料供給パターンの更に他の例として、第2燃料タンク14に貯留されている第2燃料油(例えばC重油)を、循環ライン18で循環させて、この循環ライン18を循環するC重油を、その循環ライン18に接続するディーゼル機関12に供給することもできる。
このとき、供給路切換部20は、第2燃料タンク14内の第2燃料(C重油)が、燃料供給ポンプ21の吸込み口に吸い込まれるように操作レバーが操作されており、開閉弁22が閉鎖されている。そして、燃料供給ポンプ21、及び燃料循環ポンプ24が駆動しているが、水供給ポンプ23は、停止している。
第1燃料タンク13は、第1燃料油を貯留することができるものであり、この第1燃料油は、例えばA重油である。
第2燃料タンク14は、第2燃料油を貯留することができるものであり、この第2燃料は、例えばC重油である。
そして、図1に示すように、第1燃料タンク13及び第2燃料タンク14のそれぞれの出口は、配管25、26を介して供給路切換部20(三方切換え弁)と接続している。この供給路切換部20は、第1燃料タンク13に貯留されているA重油、及び第2燃料タンク14に貯留されているC重油のうち、所望の重油をこの供給路切換部20の後段に接続されている燃料供給ポンプ21の吸込み口に導くように燃料供給路を切換えることができるものである。
燃料供給ポンプ21は、第1燃料タンク13内のA重油、及び第2燃料タンク14内のC重油のうち、供給路切換部20を通って導かれてくる重油をミキサ19に供給すると共に、循環ライン18内の燃料(A重油、C重油又はC重油エマルジョン)に所定の圧力を付与することができるものである。そして、この燃料供給ポンプ21は、供給路切換部20と、ミキサ19の第1入口とを接続する第1供給ライン16(配管)の途中に設けられている。また、この燃料供給ポンプ21は、例えば図示しない電気式モータで駆動される構成と成っている。
また、図1に示すように、この第1供給ライン16の途中であって、燃料供給ポンプ21の下流側に、第1燃料密度検出部27が設けられている。
この第1燃料密度検出部27は、この第1供給ライン16を通って循環ライン18に供給される燃料、例えばA重油やC重油等の燃料の密度を検出することができるものであり、その検出した燃料の密度と対応する密度信号を生成して、後述の制御部28に送信することができる。
水タンク15は、水を貯留することができるものであり、この水タンク15の出口に水供給ポンプ23(水供給部)が接続されている。
水供給ポンプ23は、水タンク15内の水をミキサ19に供給することができるものであり、水タンク15の出口と、ミキサ19の第2入口とを接続する第2供給ライン17(配管)の途中に設けられている。そして、この水供給ポンプ23は、例えば電気式モータで駆動される構成と成っている。
また、図1に示すように、この第2供給ライン17の途中であって、水供給ポンプ23の下流側に、開閉弁22が設けられている。この開閉弁22は、第2供給ライン17を閉じることができ、これによって水がミキサ19に流入しないようにすることができる。
次に、図1に示す循環ライン18について説明する。この循環ライン18は、環状に接続された配管で形成され、水を含む水エマルジョン燃料や、水を含まない燃料がこの循環ライン18を反時計方向に流れるように構成されている。この循環ライン18によって、循環ライン18を循環する水エマルジョン燃料や、水を含まない燃料を、循環ライン18に接続するディーゼル機関12に供給することができる。この循環ライン18には、ミキサ19、第2燃料密度検出部29、燃料循環ポンプ24、ディーゼル機関12、及びリターンチャンバ30が設けられている。
ミキサ19は、燃料供給ポンプ21によって供給されてくる第2燃料(C重油)と、水供給ポンプ23によって供給されてくる水とを混合して撹拌することによって、C重油エマルジョンを作ることができるものである。このミキサ19で作られたC重油エマルジョンは、ミキサ19の下流に設けられている第2燃料密度検出部29に供給される。また、このミキサ19には、水が供給されずにA重油又はC重油のみが供給され、この供給されたA重油又はC重油を下流の第2燃料密度検出部29に供給することができる。
第2燃料密度検出部29は、循環ライン18を通って循環する燃料、例えばA重油、C重油、又はC重油エマルジョン等の燃料の密度を検出することができるものであり、その検出した燃料の密度と対応する密度信号を生成して、後述の制御部28に送信することができる。
燃料循環ポンプ24は、循環ライン18内のC重油エマルジョン等の燃料を所定の圧力に昇圧して循環させることができるものであり、この燃料循環ポンプ24は、例えば電気式モータで駆動される構成と成っている。
ディーゼル機関12は、循環ライン18に接続され、この循環ライン18を流れるC重油エマルジョン又はA重油等の燃料が供給されるように構成されている。そして、ディーゼル機関12には、燃料噴射ポンプ(図示せず)が設けられ、この燃料噴射ポンプは、循環ライン18から供給されるC重油エマルジョン等の燃料を噴射圧力まで昇圧して、ディーゼル機関12の燃料噴射弁から機関12の燃焼室に噴射することができるものである。
リターンチャンバ30は、ディーゼル機関12で消費されなかったC重油エマルジョン等の燃料を、循環ライン18を通じてミキサ19に戻すために設けられた部屋である。
次に、図1に示す制御部28を説明する。この制御部28は、中央演算処理装置で構成され、記憶部に予め記憶されている所定のプログラムに従って、種々の演算や処理を行うことができるものである。そして、この制御部28は、図1に示すように、燃料供給ポンプ21、燃料循環ポンプ24、水供給ポンプ23、供給路切換弁、第1燃料密度検出部27、第2燃料密度検出部29、開閉弁22、及びディーゼル機関12等と電気的に接続されており、これらの動作を制御することができる。また、制御部28は、それらから送られてきた信号を演算したり処理することができ、更に、それらに対して所定の動作を行わせることができる。
また、この制御部28は、図には示さないが、判定部、供給方法出力部、第3インターロック部(第2インターロック部)、及び第4インターロック部を備えている。
判定部は、ディーゼル機関12に供給されている燃料油が、第1燃料油(A重油)であるか否か、及び第2燃料油(C重油)であるか否かを判定することができるものである。
つまり、判定部は、図1に示す第1燃料密度検出部27から制御部28に送信されてくる密度信号に基づいて、第1供給ライン16を通って循環ライン18に供給される燃料が、A重油であるか否か、C重油であるか否か、及びC重油エマルジョンであるか否か等の判定をすることができる。
また、この判定部は、図1に示す第2燃料密度検出部29から制御部28に送信されてくる密度信号に基づいて、循環ライン18を通ってディーゼル機関12に供給される燃料が、A重油であるか否か、C重油であるか否か、及びC重油エマルジョンであるか否か等の判定をすることもできる。
供給方法出力部は、第1供給ライン16を通る燃料油が、完全な(混合のない)(以下、単に「完全な」と言うこともある。)第2燃料油(C重油)であると判定部が判定し、かつ、循環ライン18を通る燃料油が、第2燃料油(C重油)であると判定部が判定したときに、第2燃料油(C重油)に水を混合すべき旨の第2エマルジョン信号を出力することができるものである。
ただし、上記のように判定部が、第1供給ライン16及び循環ライン18を通る燃料油が、第2燃料油(C重油)であると判定したときに、第2燃料油(C重油)に水を混合すべき旨の第2エマルジョン信号を出力するのは、例えば予め、オペレータがこの燃料供給装置11を操作して、ディーゼル機関12にC重油エマルジョンを供給するように設定してあり、図1に示す供給路切換部20が切換えられて、第2燃料タンク14内のC重油が第1供給ライン16に供給されている状態となっている場合である。
従って、オペレータがこの燃料供給装置11を操作して、ディーゼル機関12に水を含まないC重油のみを供給するように設定している場合は、第1供給ライン16を通る燃料油が、第2燃料油(C重油)であると判定部が判定し、かつ、循環ライン18を通る燃料油が、第2燃料油(C重油)であると判定部が判定したときでも、第2エマルジョン信号を出力しないようになっている。
この第2エマルジョン信号は、第2燃料油(C重油)に水を混合すべき旨の信号であり、具体的には、図1に示す第2供給ライン17の開閉弁22を自動的に開放すると共に、水供給ポンプ23を自動的に駆動して水をミキサ19に供給する信号である。更に、この第2エマルジョン信号によって、表示部(図示せず)には、開閉弁22を開放すると共に、水供給ポンプ23を駆動する旨の表示が行なわれるようにもなっている。
また、このときに、表示部には、第1供給ライン16を通る燃料が完全なC重油であることを第1燃料密度検出部27が検出している旨、及び循環ライン18を通る燃料が完全なC重油であることを第2燃料密度検出部29が検出している旨を表示することができる。
ここで、第1供給ライン16及び循環ライン18の両方を通る燃料油が、第2燃料油(C重油)であると判定部が判定するまで待って、第1供給ライン16及び循環ライン18を通る燃料油が、第2燃料油(C重油)であると判定部が判定したときに、水を循環ライン18に供給すべき旨の第2エマルジョン信号を出力するようにしているのは、第1供給ライン16及び循環ライン18のいずれか一方にでも、A重油が残存している状態で、循環ライン18に水を供給することを確実に防止するためである。A重油に水が添加剤なしで混合されると、ディーゼル機関12や燃料供給系統(循環ライン18等)に悪影響を及ぼすからである。
このように、この船舶用燃料切換機能付き燃料供給装置11によると、今、ディーゼル機関12に供給されている燃料油が、第1燃料油(例えばA重油)であるか否か、及び第2燃料油(例えばC重油)であるか否かを判定部が判定することができる構成であるので、ディーゼル機関12に対して、適切な水エマルジョン燃料等の所定の燃料油を供給することができる。従って、ディーゼル機関12や燃料供給系統に不測の障害が発生することを確実に防止できる。
ただし、この燃料供給装置11では、供給方法出力部が第2エマルジョン信号を出力したときに、第2供給ライン17の開閉弁22を自動的に開放すると共に、水供給ポンプ23を自動的に駆動して水をミキサ19に供給する構成としたが、これに代えて、表示部に表示されている「開閉弁22を開放すると共に、水供給ポンプ23を駆動する旨」の表示をオペレータが見て、オペレータがそれらの操作を行うようにしてもよい。
このようにすると、オペレータは、表示部の表示を見て、第1供給ライン16及び循環ライン18の両方を通る燃料が、第2燃料油(C重油)であることを確認することができ、この状態で、第2燃料油(C重油)に水を混合するための操作を行うことができる。よって、確実に第2燃料油(C重油)に水を混合して作られたC重油エマルジョンがディーゼル機関12に供給されるようにすることができる。
次に、制御部28が備える第3インターロック部(第2インターロック部)について、図3を参照して説明する。この第3インターロック部(第2インターロック部)を備える図1に示す船舶用燃料切換機能付き燃料供給装置11は、図3の1.(1)に記載しているように、水を含まない第1燃料油(A重油)がディーゼル機関12に供給されている状態から、第2燃料油(C重油)及び水を含むC重油エマルジョンをディーゼル機関12に供給する状態に切換えることができるものである。
このように、ディーゼル機関12に供給される燃料を、A重油からC重油エマルジョンに切換える場面として、例えば船舶の停泊状態からディーゼル機関12を起動させるときがある。ここで、船舶を停泊させるときに、A重油をディーゼル機関12に供給しているのは、図1に示すディーゼル機関12、第1供給ライン16、及び循環ライン18内にA重油が供給されて、ディーゼル機関12が長時間停止しても、この粘度の小さいA重油は固まらず、ディーゼル機関12を比較的容易に起動させることができるからである。これに対して、粘度の大きいC重油では、ディーゼル機関12を起動させることが困難となる。
そして、起動時にC重油エマルジョンを供給するのは、ディーゼル機関12の排気中のNOX削減、及び燃料費の低減のためである。
上記の燃料切換えの手順は、今、第1燃料タンク13内のA重油が燃料供給ポンプ21に供給されるように供給路切換部20が設定されている。よって、まず、手動により、又は自動的に供給路切換部20を操作して、第2燃料タンク14内のC重油が燃料供給ポンプ21に供給されるようにする(図3の1.(1)(a)参照)。つまり、A重油は、機関12で消費されるから、このように供給路切換部20を操作することによって、第1供給ライン16及び循環ライン18内の燃料油を、A重油からC重油に入れ換えることができる。このように、第1供給ライン16及び循環ライン18内の燃料油を、A重油からC重油に入れ換える理由は、各ライン16、18内に残存するA重油に水が混入しないようにするためである。
次に、第1及び第2燃料密度検出部27、29は、第1供給ライン16及び循環ライン18を通る燃料油がいずれも完全なC重油になったときに、その旨の密度信号を出力する。そして、判定部が、ディーゼル機関12に供給される重油がC重油であると判定し、この判定結果に基づいて、第2燃料油(C重油)に水を混合すべき旨の第2エマルジョン信号を、供給方法出力部が出力する。(図3の1.(1)(b)参照)。
しかる後に、手動により、又は自動的に開閉弁22を開放すると共に、水供給ポンプ23を駆動して水をミキサ19に供給する(図3の1.(1)(c)参照)。このようにして、供給燃料をA重油からC重油エマルジョンに切換えることができる。
ここで、第3インターロック部(第2インターロック部)は、第1及び第2燃料密度検出部27、29が、第1供給ライン16及び循環ライン18を通る燃料油がいずれも完全なC重油である旨の密度信号を出力したことを条件として(図3の1.(1)(b))、手動により、又は自動的に開閉弁22を開放できるようにすると共に、手動により、又は自動的に水供給ポンプ23を駆動して水をミキサ19に供給できるようにすることができる(図3の1.(1)(c))。
従って、第1及び第2燃料密度検出部27、29は、第1供給ライン16及び循環ライン18を通る燃料油の少なくとも一方が完全なC重油である旨の密度信号を出力していないとき(例えば第1及び第2燃料密度検出部27、29が、第1供給ライン16及び循環ライン18を通る燃料油の少なくとも一方がA重油が混合している旨の密度信号を出力しているとき)、オペレータの誤操作によって、又は機械の誤動作によって、水(添加剤を含まない)がディーゼル機関12に供給されることを(例えば開閉弁22が開放されると共に、水供給ポンプ23が駆動されることを)、第3インターロック部(第2インターロック部)によって禁止することができる。これによって、ディーゼル機関12や燃料供給系統に不測の障害が発生することを確実に防止できる。
次に、制御部28が備える第4インターロック部ついて、図3を参照して説明する。この第4インターロック部を備える図1に示す船舶用燃料切換機能付き燃料供給装置11は、図3の1.(2)に記載しているように、第2燃料油(C重油)及び水を含むC重油エマルジョンをディーゼル機関12に供給する状態から、水を含まない第1燃料油(A重油)がディーゼル機関12に供給されている状態に切換えることができるものである。
このように、ディーゼル機関12に供給される燃料を、C重油エマルジョンからA重油に切換える場面として、例えば船舶を停泊させるためにディーゼル機関12を停止するときがある。船舶を停泊させるときに、A重油をディーゼル機関12に供給する理由は、上記の通りである。
上記の燃料切換えの手順は、今、第2燃料タンク14内のC重油が燃料供給ポンプ21に供給されるように供給路切換部20が設定されていると共に、水タンク15内の水がミキサ19に供給されている。よって、まず、手動により、又は自動的に水供給ポンプ23を停止すると共に、開閉弁22を閉鎖して、ミキサ19への水の供給を停止させる(図3の1.(2)(a)参照)。つまり、C重油エマルジョンは、機関12で消費されるから、このようにすることによって、循環ライン18内の燃料油を、C重油エマルジョンからC重油に切換えることができる。このように、循環ライン18内の燃料油を、C重油エマルジョンからC重油に入れ換える理由は、ライン18内に残存するC重油エマルジョンにA重油が混入しないようにするためである。
次に、第1及び第2燃料密度検出部27、29は、第1供給ライン16及び循環ライン18を通る燃料油がいずれも完全なC重油になったときに、その旨の密度信号を出力する。そして、判定部が、ディーゼル機関12に供給される重油がC重油であると判定する(図3の1.(2)(b)参照)。
しかる後に、手動により、又は自動的に供給路切換部20を操作して、第1燃料タンク13内のA重油が燃料供給ポンプ21に供給されるようにする(図3の1.(2)(c)参照)。このようにして、供給燃料をC重油エマルジョンからA重油に切換えることができる。
ここで、第4インターロック部は、第1及び第2燃料密度検出部27、29が、第1供給ライン16及び循環ライン18を通る燃料油がいずれも完全なC重油である旨の密度信号を出力したことを条件として(図3の1.(2)(b))、手動により、又は自動的に供給路切換部20を操作して、第1燃料タンク13内のA重油が燃料供給ポンプ21に供給されるようにすることができる(図3の1.(2)(c))。
従って、第1及び第2燃料密度検出部27、29は、第1供給ライン16及び循環ライン18を通る燃料油の少なくとも一方が完全なC重油である旨の密度信号を出力していないとき(例えば第1及び第2燃料密度検出部27、29が、第1供給ライン16及び循環ライン18を通る燃料油の少なくとも一方が完全なC重油ではない旨の密度信号を出力しているとき)、オペレータの誤操作によって、又は機械の誤動作によって、A重油がディーゼル機関12に供給されることを(例えば供給路切換部20が操作されて、第1燃料タンク13内のA重油が燃料供給ポンプ21に供給されることを)、第4インターロック部によって禁止することができる。これによって、ディーゼル機関12や燃料供給系統に不測の障害が発生することを確実に防止できる。
次に、本発明に係る船舶用燃料切換機能付き燃料供給装置(以下、単に「燃料供給装置」と言うこともある。)の第2実施形態を、図2及び図3を参照して説明する。この図2に示す第2実施形態の燃料供給装置32は、図1に示す第1実施形態の燃料供給装置11において、更に、添加剤タンク33、添加剤供給ポンプ34、及び開閉弁35を設けたものである。
添加剤タンク33は、例えば界面活性剤等の液体の添加剤を貯留することができるものであり、この添加剤タンク33の出口に添加剤供給ポンプ34が接続されている。
添加剤供給ポンプ34は、添加剤タンク33内の添加剤をミキサ19に供給することができるものであり、添加剤タンク33の出口と、ミキサ19の第2入口とを接続する第2供給ライン17(配管)の途中に設けられている。そして、この添加剤供給ポンプ34は、例えば電気式モータで駆動される構成と成っている。
また、図2に示すように、この第2供給ライン17の途中であって、添加剤供給ポンプ34の下流側の配管36に開閉弁35が設けられている。この開閉弁36は、添加剤供給ポンプ34の吐出口と接続する配管36を閉じることができ、これによって添加剤がミキサ19に流入しないようにするためのものである。
そして、図2に示すように、水供給ポンプ23の下流側の配管37に、開閉弁22が設けられている。この開閉弁22は、図1に示す第1実施形態と同様に、水供給ポンプ23の吐出口と接続する配管37を閉じることができ、これによって水がミキサ19に流入しないようにするためのものである。
また、図2に示すように、制御部28には、添加剤供給ポンプ34、及び開閉弁35が電気的に接続されており、制御部28は、これらの動作を制御することができる。
更に、この制御部28は、第1実施形態の制御部28が備える判定部等を備え、更に、第5インターロック部、第6インターロック部(第1インターロック部)、第7インターロック部、第8インターロック部(第2インターロック部)を備えている。
ただし、これ以外は、図1に示す第1実施形態の燃料供給装置11と同等の構成であり同様に作用するので、同等部分を同一の図面符号で示し、それらの詳細な説明を省略する。
次に、この図2に示す燃料供給装置32が使用することができる燃料供給パターンの一例を説明する。この燃料供給装置32は、第1実施形態の燃料供給パターンを使用することができ、更に、第1燃料タンク13に貯留されている第1燃料油(例えばA重油)と、水タンク15に貯留されている水と、添加剤タンク33に貯留されている添加剤とをミキサ19で混ぜて得られたA重油エマルジョンを、循環ライン18で循環させて、この循環ライン18を循環するA重油エマルジョンを、その循環ライン18に接続するディーゼル機関12に供給することができる。
このとき、供給路切換部20は、第1燃料タンク13内の第1燃料(A重油)が、燃料供給ポンプ21の吸込み口に吸い込まれるようにその操作レバーが操作されており、第2供給ライン17の開閉弁22、35が解放されている。そして、燃料供給ポンプ21、水供給ポンプ23、添加剤供給ポンプ34、及び燃料循環ポンプ24が駆動している。
次に、制御部28が備える第5インターロック部、及び第6インターロック部(第1インターロック部)ついて、図3を参照して説明する。これらのインターロック部を備える図2に示す船舶用燃料切換機能付き燃料供給装置32は、図3の2.(3)に記載しているように、C重油エマルジョンがディーゼル機関12に供給されている状態から、A重油エマルジョンをディーゼル機関12に供給する状態に切換えることができるものである。
このように、ディーゼル機関12に供給される燃料を、C重油マルジョンからA重油エマルジョンに切換える場面として、例えば船舶がSOX規制海域(SECA)に進入するときがある。そして、このように、ディーゼル機関12に供給される燃料を、C重油マルジョンからA重油エマルジョンに切換えるのは、SOXが排ガス中に含まれて排出されないようにするためである。つまり、SOXの排出量は、燃料油に含まれるS(硫黄)分に依存し、SOX排出量の制限が厳しい規制海域(SECA)では、S分含有量の高いC重油では規制を満たせず、A重油や軽油に切換える必要がある。このSECAは、主に、沿岸域に設定されている。
上記の燃料切換えの手順は、今、第2燃料タンク14内のC重油が燃料供給ポンプ21に供給されるように供給路切換部20が設定されていると共に、水タンク15内の水がミキサ19に供給されている。よって、まず、手動により、又は自動的に水供給ポンプ23を停止すると共に、開閉弁22を閉鎖して、ミキサ19への水の供給を停止させる(図3の2.(3)(a)参照)。つまり、C重油エマルジョンは、機関12で消費されるから、このようにすることによって、循環ライン18内の燃料油を、C重油エマルジョンからC重油に切換えることができる。このように、循環ライン18内の燃料油を、C重油エマルジョンからC重油に入れ換える理由は、ライン18内に残存するC重油エマルジョンにA重油が混入しないようにするためである。
次に、第1及び第2燃料密度検出部27、29は、第1供給ライン16及び循環ライン18を通る燃料油がいずれも完全なC重油になったときに、その旨の密度信号を出力する。そして、判定部が、ディーゼル機関12に供給される重油がC重油であると判定する。(図3の2.(3)(b)参照)。
このように、判定部がC重油であると判定したときに、手動により、又は自動的に供給路切換部20を操作して、第1燃料タンク13内のA重油が燃料供給ポンプ21に供給されるようにする(図3の2.(3)(c)参照)。
次に、第1及び第2燃料密度検出部27、29は、第1供給ライン16及び循環ライン18を通る燃料油がいずれも完全なA重油になったときに、その旨の密度信号を出力する。そして、判定部が、ディーゼル機関12に供給される燃料油がA重油であると判定し、この判定結果に基づいて、第1燃料油(A重油)に水及び添加剤を混合すべき旨の第1エマルジョン信号を、供給方法出力部が出力する。(図3の2.(3)(d)参照)。
しかる後に、手動により、又は自動的に開閉弁22、35を開放すると共に、水供給ポンプ23及び添加剤供給ポンプ34を駆動して、水及び添加剤をミキサ19に供給する(図3の2.(3)(e)参照)。このようにして、供給燃料をC重油エマルジョンからA重油エマルジョンに切換えることができる。
ここで、第5インターロック部は、第1及び第2燃料密度検出部27、29が、第1供給ライン16及び循環ライン18を通る燃料油がいずれも完全なC重油である旨の密度信号を出力したことを条件として(図3の2.(3)(b))、手動により、又は自動的に供給路切換部20を操作して、第1燃料タンク13内のA重油が燃料供給ポンプ21に供給されるようにすることができる(図3の2.(3)(c))。
従って、第1及び第2燃料密度検出部27、29は、第1供給ライン16及び循環ライン18を通る燃料油の少なくとも一方が完全なC重油である旨の密度信号を出力していないとき(例えば第1及び第2燃料密度検出部27、29が、第1供給ライン16及び循環ライン18を通る燃料油の少なくとも一方が完全なC重油ではない旨の密度信号を出力しているとき)、オペレータの誤操作によって、又は機械の誤動作によって、A重油がディーゼル機関12に供給されることを(例えば供給路切換部20が操作されて、第1燃料タンク13内のA重油が燃料供給ポンプ21に供給されることを)、第5インターロック部によって禁止することができる。これによって、ディーゼル機関12や燃料供給系統に不測の障害が発生することを確実に防止できる。
そして、第6インターロック部(第1インターロック部)は、第1及び第2燃料密度検出部27、29が、第1供給ライン16及び循環ライン18を通る燃料油がいずれも完全なA重油である旨の密度信号を出力したことを条件として(図3の2.(3)(d))、手動により、又は自動的に開閉弁22、35を開放できるようにすると共に、手動により、又は自動的に水供給ポンプ23及び添加剤供給ポンプ34を駆動して水及び添加剤をミキサ19に供給できるようにすることができる(図3の2.(3)(e))。
従って、第1及び第2燃料密度検出部27、29は、第1供給ライン16及び循環ライン18を通る燃料油の少なくとも一方が完全なA重油である旨の密度信号を出力していないとき(例えば第1及び第2燃料密度検出部27、29が、第1供給ライン16及び循環ライン18を通る燃料油の少なくとも一方がC重油エマルジョンやC重油が混合している旨の密度信号を出力しているとき)、オペレータの誤操作によって、又は機械の誤動作によって、水及び添加剤がディーゼル機関12に供給されることを(例えば開閉弁22、35が開放されると共に、水供給ポンプ23及び添加剤供給ポンプ34が駆動されることを)、第6インターロック部(第1インターロック部)によって禁止することができる。これによって、ディーゼル機関12や燃料供給系統に不測の障害が発生することを確実に防止できる。
次に、制御部28が備える第7インターロック部、及び第8インターロック部(第2インターロック部)ついて、図3を参照して説明する。これらのインターロック部を備える図2に示す船舶用燃料切換機能付き燃料供給装置32は、図3の2.(4)に記載しているように、A重油エマルジョンがディーゼル機関12に供給されている状態から、C重油エマルジョンをディーゼル機関12に供給する状態に切換えることができるものである。
このように、ディーゼル機関12に供給される燃料を、A重油マルジョンからC重油エマルジョンに切換える場面として、例えば船舶がSOX規制海域(SECA)から離脱するときである。そして、このように、ディーゼル機関12に供給される燃料を、A重油マルジョンからC重油エマルジョンに切換えるのは、単価の低いC重油を極力使用するためである。
上記の燃料切換えの手順は、今、第1燃料タンク13内のA重油が燃料供給ポンプ21に供給されるように供給路切換部20が設定されていると共に、水及び添加剤がミキサ19に供給されている。よって、まず、手動により、又は自動的に水供給ポンプ23及び添加剤供給ポンプ34を停止すると共に、開閉弁22、35を閉鎖して、ミキサ19への水及び添加剤の供給を停止させる(図3の2.(4)(a)参照)。このようにすることによって、循環ライン18内の燃料油を、A重油エマルジョンからA重油に切換えることができる。このように、循環ライン18内の燃料油を、A重油エマルジョンからA重油に入れ換える理由は、ライン18内に残存するA重油エマルジョンにC重油が混入しないようにするためである。
次に、第1及び第2燃料密度検出部27、29は、第1供給ライン16及び循環ライン18を通る燃料油がいずれも完全なA重油になったときに、その旨の密度信号を出力する。そして、判定部が、ディーゼル機関12に供給される重油がA重油と判定する。(図3の2.(4)(b)参照)。
このように、判定部がA重油であると判定したときに、手動により、又は自動的に供給路切換部20を操作して、第2燃料タンク14内のC重油が燃料供給ポンプ21に供給されるようにする(図3の2.(4)(c)参照)。
次に、第1及び第2燃料密度検出部27、29は、第1供給ライン16及び循環ライン18を通る燃料油がいずれも完全なC重油になったときに、その旨の密度信号を出力する。そして、判定部が、ディーゼル機関12に供給される重油がC重油と判定し、この判定結果に基づいて、第2燃料油(C重油)に水を混合すべき旨の第2エマルジョン信号を、供給方法出力部が出力する。(図3の2.(4)(d)参照)。
しかる後に、手動により、又は自動的に開閉弁22を開放すると共に、水供給ポンプ23を駆動して水をミキサ19に供給する(図3の2.(4)(e)参照)。このようにして、供給燃料を切換えることができる。
ここで、第7インターロック部は、第1及び第2燃料密度検出部27、29が、第1供給ライン16及び循環ライン18を通る燃料油がいずれも完全なA重油である旨の密度信号を出力したことを条件として(図3の2.(4)(b))、手動により、又は自動的に供給路切換部20を操作して、第2燃料タンク14内のC重油が燃料供給ポンプ21に供給されるようにすることができる(図3の2.(4)(c))。
従って、第1及び第2燃料密度検出部27、29は、第1供給ライン16及び循環ライン18を通る燃料油の少なくとも一方が完全なA重油である旨の密度信号を出力していないときは(例えば第1及び第2燃料密度検出部27、29が、第1供給ライン16及び循環ライン18を通る燃料油の少なくとも一方が完全なA重油ではない旨の密度信号を出力しているときは)、オペレータの誤操作によって、又は機械の誤動作によって、C重油がディーゼル機関12に供給されることを(例えば供給路切換部20が操作されて、第2燃料タンク14内のC重油が燃料供給ポンプ21に供給されることを)、第7インターロック部によって禁止することができる。これによって、ディーゼル機関12や燃料供給系統に不測の障害が発生することを確実に防止できる。
そして、第8インターロック部(第2インターロック部)は、第1及び第2燃料密度検出部27、29が、第1供給ライン16及び循環ライン18を通る燃料油がいずれも完全なC重油である旨の密度信号を出力したことを条件として(図3の2.(4)(d))、手動により、又は自動的に開閉弁22を開放できるようにすると共に、手動により、又は自動的に水供給ポンプ23を駆動して水をミキサ19に供給できるようにすることができる(図3の2.(4)(e))。
従って、第1及び第2燃料密度検出部27、29は、第1供給ライン16及び循環ライン18を通る燃料油の少なくとも一方が完全なC重油である旨の密度信号を出力していないとき(例えば第1及び第2燃料密度検出部27、29が、第1供給ライン16及び循環ライン18を通る燃料油の少なくとも一方がA重油エマルジョンやA重油が混合している旨の密度信号を出力しているとき)、オペレータの誤操作によって、又は機械の誤動作によって、水がディーゼル機関12に供給されることを(例えば開閉弁22が開放されると共に、水供給ポンプ23が駆動されることを)、第8インターロック部(第2インターロック部)によって禁止することができる。これによって、ディーゼル機関12や燃料供給系統に不測の障害が発生することを確実に防止できる。
ただし、上記各実施形態において、第1燃料油であるA重油の密度、及び第2燃料油であるC重油の密度は、それぞれ例えば約0.87g/cm3、及び約0.96g/cm3である。
そして、図1に示す第1実施形態では、第1燃料密度検出部27が第1供給ライン16を通る燃料油が完全なC重油である旨の密度信号を出力し、かつ、第2燃料密度検出部29が循環ライン18を通る燃料油が完全なC重油である旨の密度信号を出力したときに、判定部が、ディーゼル機関12に供給される重油がC重油と判定する構成としたが、これ以外の構成としてもよい。
例えば、図1に示す第1燃料密度検出部27を省略して、第2燃料密度検出部29が循環ライン18を通る燃料油が完全なC重油である旨の密度信号を出力したときに、判定部が、ディーゼル機関12に供給される重油がC重油と判定する構成とすることができる。
また、第1燃料密度検出部27を省略したときは、供給路切換部20の弁を操作するための操作レバーの操作位置を検出するためのレバー位置検出部(リミットスイッチや光電スイッチ等)を設けてもよい。つまり、判定部が、このレバー位置検出部が出力する位置検出信号に基づいて、第1供給ライン16を通って循環ライン18に供給される重油がA重油であるか、又はC重油かを判定するようにしてもよい。
更に、上記実施形態において、完全な(混合のない)A重油、及び完全な(混合のない)C重油というのは、第1及び第2燃料密度検出部27、29が検出した燃料油の密度が、予め定めたA重油の密度の範囲内にあるということ、及び予め定めたC重油の密度の範囲内にあるということである。