以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本実施形態における防水コネクタの斜視図、図2は本実施形態における防水コネクタの分解斜視図、図3は本実施形態におけるコネクタ本体の分解斜視図、図4は本実施形態における第1の圧着端子を示す斜視図、図5は本実施形態における第1のリテーナの斜視図、図6は図5のVI−VI線に沿った断面図、図7は本実施形態における第2のリテーナの斜視図、図8は図1のVIII−VIII線に沿った断面斜視図、図9は図8のIX−IX線に沿った断面図、図10は本実施形態における防水コネクタの第1のシール部材を説明する断面図である。
本実施形態における防水コネクタ1(図1参照)は、例えば、自動車において、電子部品(例えば着座センサや静電容量センサ等)とECU(Electronic Control Unit)等との間を電気的に接続する配線基板30(配線材)に取り付けられるコネクタであり、例えば、その一端が電子部品等に接続された配線基板の他端に取り付けられ、シートの下部に組み込まれて他のコネクタに接続される。なお、図中に示す矢印Aが、当該他のコネクタに対する防水コネクタ1の挿抜方向である。また、本実施形態における防水コネクタ1では、この挿抜方向Aにおいて、他のコネクタと接続する側(図中左側)を先端側1aとし、これとは逆側(図中右側)を後端側1bとする。
防水コネクタ1は、図2に示すように、ハウジング10と、コネクタ本体20と、第2のシール部材80と、を備えている。
ハウジング10は、図2に示すように、コネクタ本体20を収容する部材である。このハウジング10の上部及び下部には、コネクタ本体20の第1及び第2のリテーナ50,60に形成された第1及び第2の爪部57,67(後述)と係合する係合孔11が形成されている。なお、ハウジング10の下部に位置する係合孔11については、図示を省略する。
コネクタ本体20は、図3に示すように、第1のリテーナ50と、第2のリテーナ60と、第1のシール部材70と、を有している。なお、本実施形態における第1及び第2のリテーナ50,60が、本発明の一対のリテーナの一例に相当する。このコネクタ本体20には、同図に示すように、配線基板30が取り付けられている。
配線基板30は、図3に示すように、第1の配線基板31と、第2の配線基板32と、を含んでいる。この第1及び第2の配線基板31,32は、それぞれの端部同士の間に隙間を空けた状態で隣り合うように配置されている。
第1の配線基板31は、絶縁性基板に電気回路パターン(配線)が形成された基板である。第1の配線基板31としては、例えば、フレキシブルプリント配線板(FPC:Flexible Printed Circuit)、リジッドプリント配線板(Rigid Printed Wiring Board)、或いはポリエチレンナフタレート(PEN:Polyethylene Naphthalate)やポリエチレンテレフタレート(PET:Polyethylene Terephthalate)等から構成されるメンブレン等を挙げることができる。また、この第1の配線基板31を、平角導体や丸線からなる配線を絶縁性基板でラミネートしたもので構成してもよく、或いはフレキシブルフラットケーブル(FFC:Flexible Flat Cable)で構成してもよい。
この第1の配線基板31の端部には、図3に示すように、3つの第1の圧着端子41が取り付けられている。第1の圧着端子41は、レセクタプル型の端子であり、ECU等に設けられたれたピン型の端子(不図示)と嵌合するようになっている。なお、第1の圧着端子41をピン型の端子で構成し、レセクタプル型の端子と嵌合させてもよい。
この第1の圧着端子41は、図4に示すように、下板41aと、上板41bと、バレル41cと、を有している。
下板41a及び上板41bは、第1の配線基板31を挟み込む部材である。バレル41cは、下板41aの側部に立設された板状の部材である。本実施形態では、このバレル41cを第1の配線基板31に形成された貫通孔(図4にて点線で示す。)に挿入した後に、上板41bに向かって折り曲げることで、下板41aと上板41bの間に第1の配線基板31を固定(圧着)している。
第2の配線基板32も、第1の配線基板31と同様に、絶縁性基板に電気回路パターン(配線)を形成した基板である。この第2の配線基板32としては、例えば、フレキシブルプリント配線板、リジッドプリント配線板、メンブレン等を挙げることができる。また、この第2の配線基板32を、平角導体や丸線からなる配線を絶縁性基板でラミネートしたもので構成してもよく、或いはフレキシブルフラットケーブルで構成してもよい。
この第2の配線基板32の端部には、図3に示すように、2つの第2の圧着端子42が取り付けられている。なお、この第2の圧着端子42は、第1の圧着端子41と同一構造となっており、下板と、上板と、バレルと、を有している。この第2の圧着端子42も、下板と上板の間に第2の配線基板32を挟み込んだ状態で、バレルが折り曲げられて、第2の配線基板32に圧着されている。
本実施形態における配線基板30は、2枚の配線基板31,32を含んでいるが、特に限定されず、配線基板30を1枚の配線基板で構成してもよい。例えば、5つの第1の圧着端子41を端部に取り付けた第1の配線基板31のみで配線基板30を構成してもよい。さらに、第1及び第2の圧着端子41,42の数も、特に限定されず、防水コネクタ1と接続される他のコネクタの端子数に応じて適宜設定することができる。
第1のリテーナ50は、図3に示すように、第2のリテーナ60と間に配線基板30を挟み込み、第2のリテーナ60と共に、防水コネクタ1の挿抜時に印加される力を受け止める。
この第1のリテーナ50において配線基板30と対向する第1の対向面51には、図5及び図6に示すように、第1の端子収容部52と、第1の内側溝53と、第1の突起54と、が形成されている。一方、第1のリテーナ50において、防水コネクタ1の挿抜方向Aに沿った面のうち、第1の対向面51とは反対側に位置する第1の外側面55には、第1の爪部57が形成されている。また、第1のリテーナ50の第1の外側面55及び第1の側面50d,50eには、第1の外側溝56が連続的に形成されている。なお、この第1の側面50d,50eは、図5に示すように、第1のリテーナ50において防水コネクタ1の挿抜方向Aに沿った面のうち、第1の対向面51と第1の外側面55とに交差した面である。
第1の端子収容部52は、図5に示すように、防水コネクタ1の挿抜方向Aに沿って形成された凹部であり、第1及び第2の圧着端子41,42のそれぞれの上板41aと下板41bとバレル41cとを収容する。本実施形態では、第1のリテーナ50の図中左側の部分に3つの第1の端子収容部52が配置されており、3つの第1の圧着端子41を収容する。一方、第1のリテーナ50において、図中右側の部分には、2つの第1の端子収容部52が配置されており、2つの第2の圧着端子42を収容する。
第1の内側溝53は、図5に示すように、第1の対向面51において、挿抜方向Aに対して略垂直方向に沿って形成されている。第1の内側溝53は、第1の側面50d,50eで開口しており、その開口53bを介して溶融した第1のシール部材70が流れ込むようになっている。因みに、この第1の内側溝53は、開口53bを介して第1の外側溝56と連通している。また、第1の内側溝53は、第2のリテーナ60の第2の内側溝63と合わさることで、溶融した第1のシール部材70が充填される内側収容部91を形成する。
ここで、本実施形態における第1のリテーナ50では、図6に示すように、防水コネクタ1の挿抜方向Aにおいて、第1の内側溝53よりも先端側1a(図1参照)を第1の先端部50aとし、第1の内側溝53よりも後端側1b(図1参照)を第1の後端部50bとする。
また、第1のリテーナ50において、第1の先端部50aと第1の後端部50bとは、第1の内側溝53(内側収容部91)が形成された第1の連結部50cによって部分的に連結されている。すなわち、本実施形態では、第1の連結部50c同士の間に第1の欠損部58(後述)が形成されている。
ここで、防水コネクタ1が組み立てられた状態では、図9及び図10に示すように、側部シール部70c及び欠損シール部70dが、第1の連結部50cの第1の外側面55に回り込み、第1の連結部50cが、内側シール部70a、外側シール部70b、側部シール部70c及び欠損シール部70dによって囲繞された状態となる。なお、内側シール部70a、外側シール部70b、側部シール部70c及び欠損シール部70dについては後述する。
第1の突起54は、図5及び図6に示すように、第1の内側溝53の底面53aから内側収容部91に向かって突出し、上端で配線基板30と当接する。本実施形態では、第1の内側溝53内に複数の第1の突起54が形成されており、第1の内側溝53において第1の欠損部58が形成された箇所を除いて、第1の突起54同士の間にはリブが形成されている。
第1の外側溝56は、図5及び図6に示すように、第1のリテーナ50の第1の外側面55及び第1の側面50d,50eに、挿抜方向Aに対して実質的に垂直方向に形成されている。また、第1の外側溝56は、開口53bを介して第1の内側溝53と連通している。
この第1の外側溝56は、第2のリテーナ60の第2の外側溝66と合わさって、第1及び第2のリテーナ50,60の外側面55,65及び側面50d,50e,60d,60eで第1のシール部材70を受け入れる外側収容部92を形成する。
第1の爪部57は、図6に示すように、第1の後端部50bの第1の外側面55に形成された凸状部分であり、上述したハウジング10の係合孔11に入り込むようになっている。これにより、コネクタ本体20がハウジング10に固定される。
さらに、本実施形態における第1のリテーナ50には、図5及び図6に示すように、第1の外側面55から内側収容部91内に貫通する第1の欠損部58が形成されており、この第1の欠損部58にも第1のシール部材70が充填されるようになっている。
この第1の欠損部58について詳細に説明すると、この第1の欠損部58は、第1の内側溝53の底面53aと第1の外側溝56の底面56aとの間を貫通している。また、この第1の欠損部58は、平面視における外側収容部92と内側収容部91との重複部分Bにおいて、防水コネクタ1の挿抜方向Aの全域に亘って形成されている。本実施形態における第1の欠損部58は、図5に示すように、防水コネクタ1の挿抜方向Aに沿った内側収容部91(第1の内側溝53)の中心線CLを基準として線対称の開口となっている。
以上に説明した第1のリテーナ50は、後述する第1のシール部材70の溶融温度よりも高い耐熱性を有し、且つ第1のシール部材70よりも小さい線膨張係数を有する材料で構成されている。例えば、第1のシール部材70をポリアミド(Polyamide)で構成する場合には、第1のリテーナ50の材料としては、例えばポリブチレンテレフタレート(PBT:Polybutylene Terephtalate)を挙げることができる。
第2のリテーナ60は、図3に示すように、第1のリテーナ50との間で配線基板30を挟み込む部材である。なお、本実施形態では、第2のリテーナ60が第1のリテーナ50と分離しているが、特に限定されない。例えば、第2のリテーナ60を、ヒンジ等を介して第1のリテーナ50と連結させてもよい。
この第2のリテーナ60において、配線基板30と対向する第2の対向面61には、図7に示すように、第2の端子収容部62と、第2の内側溝63と、第2の突起64と、が形成されている。一方、第2のリテーナ60において、防水コネクタ1の挿抜方向Aに沿った面のうち、第2の対向面61とは反対側に位置する第2の外側面65には、第2の爪部67(図3参照)が形成されている。また、第2のリテーナ60の第2の外側面65及び第2の側面60d,60eには、第2の外側溝66が連続的に形成されている。なお、この第2の側面60d,60eは、図7に示すように、第2のリテーナ60において防水コネクタ1の挿抜方向Aに沿った面のうち、第2の対向面61と第2の外側面65とに交差した面である。
第2の端子収容部62は、図7に示すように、第1のリテーナ50の第1の端子収容部52と対向するように、挿抜方向Aに沿って形成された凹部であり、第1の端子収容部52と共に第1及び第2の圧着端子41,42を収容する。
第2の内側溝63は、同図に示すように、第2の対向面61において、第1のリテーナ50の第1の内側溝53と対向するように、挿抜方向Aに対して略垂直方向に沿って形成されている。第2の内側溝63は、第1のリテーナ50の第1の内側溝53と合わさることで、溶融した第1のシール部材70が充填される内側収容部91を形成する。
この第2の内側溝63も、第1の内側溝53と同様に、第2の側面60d,60eで開口しており、その開口63bを介して、溶融した第1のシール部材70が流れ込むようになっている。因みに、この第2の内側溝63は、開口63bを介して第2の外側溝66と連通している。このため、本実施形態の内側収容部91は、第1及び第2のリテーナ50,60の側面50d,50e,60d,60eで外側収容部92と連通する。
ここで、本実施形態における第2のリテーナ60では、図7に示すように、第2の内側溝63よりも先端側1a(図1参照)を第2の先端部60aとし、第2の内側溝63(後述)よりも後端側1b(図1参照)を第2の後端部60bとする。
また、第2のリテーナ60において、第2の先端部60aと第2の後端部60bとは、第2の内側溝63(内側収容部91)が形成された第2の連結部60cによって部分的に連結されている。すなわち、本実施形態では、第2の連結部60c同士の間に第2の欠損部68(後述)が形成されている。
ここで、防水コネクタ1が組み立てられた状態では、図9及び図10に示すように、側部シール部70c及び欠損シール部70dが、第2の連結部60cの第2の外側面65に回り込み、第2の連結部60cが、内側シール部70a、外側シール部70b、側部シール部70c及び欠損シール部70dによって囲繞された状態となる。なお、内側シール部70a、外側シール部70b、側部シール部70c及び欠損シール部70dについては後述する。
第2の突起64は、図7に示すように、第2の内側溝63の底面63aから内側収容部91に向かって突出し、上端で配線基板30と当接する。また、この第2の突起64は、第1及び第2のリテーナ50,60が配線基板30を挟み込んだ状態で、第1の突起54と対向するように配置されており、第1の突起54との間で配線基板30を挟み込むようになっている。本実施形態では、第2の内側溝63内に複数の第2の突起64が形成されており、第2の内側溝63において第2の欠損部68(後述)が形成された箇所を除いて、第2の突起64同士の間にはリブが形成されている。
第2の外側溝66は、同図に示すように、第2のリテーナ60の第2の側面60d,60e及び第2の外側面65に、挿抜方向Aに対して略垂直方向に形成されている。また、第2の外側溝66は、開口63bを介して第2の内側溝63と連通している。
この第2の外側溝66は、上述のように、第1のリテーナ50の第1の外側溝56と合わさって、第1及び第2のリテーナ50,60の外側面55,65及び側面50d,50e,60d,60eで第1のシール部材70を受け入れる外側収容部92を形成する。
第2の爪部67は、第1の爪部57と同様に、上述したハウジング10の係合孔11に入り込む凸状部分であり、第2の後端60bの第2の外側面65に形成されている(図3参照)。
さらに、本実施形態における第2のリテーナ60には、図7に示すように、第2の外側面65から内側収容部91に貫通する第2の欠損部68が形成されており、この第2の欠損部68にも溶融した第1のシール部材70が充填されるようになっている。
この第2の欠損部68について詳細に説明すると、この第2の欠損部68は、第2の内側溝63の底面63aと第2の外側溝66の底面66aとの間を貫通している。また、この第2の欠損部68は、平面視における内側収容部91と外側収容部92との重複部分Cにおいて、防水コネクタ1の挿抜方向Aの全域に亘って形成されている。
本実施形態における第2の欠損部68は、防水コネクタ1の挿抜方向Aに沿った内側収容部91(第2の内側溝63)の中心線CLを基準として線対称の開口となっている。また、第1及び第2のリテーナ50,60が配線基板30を挟み込んだ状態において、この第2の欠損部68は、第1の欠損部58と相互に対向するように配置されている。
また、本実施形態における第2の欠損部68の大きさは、第1の欠損部58の大きさと実質的に同一となっているが、特に限定されない。例えば、第2の欠損部68を、第1の欠損部58よりも相対的に小さく形成してもよい。
以上に説明した第2のリテーナ60は、第1のリテーナ50と同様に、第1のシール部材70の溶融温度よりも高い耐熱性を有し、且つ第1のシール部材70よりも小さい線膨張係数を有する材料で構成されている。例えば第1のシール部材70をポリアミドで構成する場合には、第2のリテーナ60の材料としては、例えばポリブチレンテレフタレートを挙げることができる。
第1のシール部材70は、図8及び図9に示すように、内側収容部91に充填され、第1のリテーナ50と配線基板30との間、及び、第2のリテーナ60と配線基板30との間をシールしている。また、本実施形態では、第1のシール部材70が、外側収容部92にも収容されている。この第1のシール部材70は、ホットメルトシール材(ホットメルト接着剤)で構成されている。なお、この第1のシール部材70を構成する材料としては、例えばポリアミド等の熱可塑性樹脂材料を用いることができる。
第1のシール部材70は、図9に示すように、内側シール部70aと、外側シール部70bと、側部シール部70cと、欠損シール部70dと、を有している。なお、本実施形態における側部シール部70cと欠損シール部70dが、本発明の接続シール部の一例に相当する。
内側シール部70aは、同図に示すように、内側収容部91内に収容され、配線基板30と第1及び第2のリテーナ50,60との間をシールしている。外側シール部70bは、第1及び第2のリテーナ50,60の外側面55,65に位置する外側収容部92に収容され、側部シール部70cを介して、密着した状態の第1及び第2のリテーナ50,60を固定している。
側部シール部70cは、同図に示すように、第1及び第2のリテーナ50,60の側面50d,50e,60d,60eに位置する外側収容部92に収容されており、第1及び第2のリテーナ50,60の内側溝53,63の開口53b,63bを介して、内側シール部70aと一体的に形成されている。この側部シール部70cは、第1及び第2のリテーナ50,60の外側面55,65に回り込んで外側シール部70bと接続されている。
欠損シール部70dは、同図に示すように、第1及び第2のリテーナ50,60の第1及び第2の欠損部58,68内に収容されており、内側シール部70aと一体的に形成されている。また、この欠損シール部70dは、第1及び第2のリテーナ50,60の外側面55,65に回り込んで外側シール部70bと接続されている。
第2のシール部材80は、図2及び図8に示すように、コネクタ本体20(第1及び第2のリテーナ50,60)を包囲し、ハウジング10とコネクタ本体20との間をシールしている。この第2のシール部材80としては、例えば、Oリングやゴムパッキン、封止樹脂等を挙げることができる。
この第2のシール部材80では、図8に示すように、ハウジング10と接触する外周面に溝81が形成されており、ハウジング10との密着性の向上が図られている。また、第2のシール部材80では、同図に示すように、コネクタ本体20(第1のシール部材70)と接触する内周面にリング状に連なった凸部82が形成されており、コネクタ本体20との位置ずれが抑制されると共に、コネクタ本体20との密着性の向上が図られている。
次に、本実施形態における防水コネクタ1の作用について説明する。
本実施形態における防水コネクタ1では、第1及び第2のリテーナ50,60で配線基板30を挟み込むことで機械的に補強されている。なお、本実施形態では、第1及び第2のリテーナ50,60が合わさることで、一つの補強部材として機能する。
また、ホットメルトシール材からなる第1のシール部材70が、配線基板30と第1及び第2のリテーナ50,60との間をシールし、防水コネクタ1(特に圧着端子41,42部分)の防水を図っている。
このように第1のシール部材70で防水コネクタ1内をシールする際には、配線基板30を挟み込んだ状態の第1及び第2のリテーナ50,60を、金型(不図示)にセットし、少なくとも内側収容部91内に、加熱され溶融した第1のシール部材70(ホットメルトシール材)を充填させ、冷して固化させる。なお、第1のシール部材70がポリアミドで構成されている場合には、第1のシール部材70を溶融させる際の加熱温度として185℃程度を例示できる。
ここで、第1及び第2のリテーナ50,60と配線基板30との間に充填した第1のシール部材70の固化に伴って第1のシール部材とリテーナ(特に対向面)の間に生じる熱応力や、防水コネクタ使用時の温度変化に伴う熱応力の変化による疲労によって、第1のシール部材とリテーナとの密着が弱くなることがある。このため、防水コネクタの防水性能を十分に向上させることができない場合があった。
また、防水コネクタの端子数を増加させたり、防水コネクタに幅の広い配線基板を組み込む場合には、防水コネクタに大型のリテーナを用いる必要がある。この場合には、リテーナが第1のシール部材の収縮に追従するように変形し難く、リテーナと第1のシール部材との密着がより弱くなり易い傾向にある。
これに対して、本実施形態における防水コネクタ1では、図9に示すように、外側収容部92に収容された側部シール部70cが第1及び第2のリテーナ50,60の外側面55,65に回り込んでいる。
また、本実施形態における防水コネクタ1では、同図に示すように、第1及び第2のリテーナ50,60に第1及び第2の欠損部58,68が形成され、この第1及び第2の欠損部58,68内に収容された欠損シール部70dも外側面55,65に回り込んでいる。
そして、側部シール部70cと内側シール部70aとが一体的に形成されており、欠損シール部70dと内側シール部70aとが一体的に形成されている。
このため、本実施形態では、内側シール部70a、側部シール部70c及び欠損シール部70dが収縮する際には、外側面55,65に回り込んだ側部シール部70c及び欠損シール部70dが、第1及び第2のリテーナ50,60を内側シール部70aに向かって引き寄せる。
一方、第1及び第2のリテーナ50,60は、第1及び第2の欠損部58,68が形成されていることで、剛性が弱くなっており、内側シール部70aや側部シール部70c及び欠損シール部70dの収縮に追従して変形し易くなっている。
このため、本実施形態における防水コネクタ1では、第1及び第2のリテーナ50,60と第1のシール部材70との間の熱応力(図9中の矢印で示す。)が低下し、第1及び第2のリテーナ50,60(第1及び第2の内側溝53,63の底面53a,63a)と第1のシール部材70(内側シール部70a)とが、強い密着状態で維持される。これにより、防水性能の向上を図ることができる。また、防水コネクタの端子数の増加等によってリテーナが大型化する場合には、上述の効果が特に顕著である。
また、上述のように、本実施形態における防水コネクタ1は、防水性能の向上が図られており、特に冷熱サイクル(−40℃〜85℃を繰り返し印加する)下における耐久性が向上しているので、防水コネクタ1自体の寿命が長くなっている。
このように、第1のシール部材70は、図10に示すように、内側シール部70aと、側部シール部70cと、欠損シール部70dと、を有していれば上述の作用効果を奏する。したがって、第1のシール部材70は、外側シール部70bを有していなくともよいが、第1のシール部材70が外側シール部70bを有していることで、さらに、次のような効果を奏する。
すなわち、この外側シール部70bが、側部シール部70c及び欠損シール部70dを介して内側シール部70aと接続されることで、第1のシール部材70が収縮する際には、側部シール部70c及び欠損シール部70dに加えて、この外側シール部70bが、第1及び第2のリテーナ50,60の外側面55,65を押圧する。
このため、第1及び第2のリテーナ50,60が内側シール部70aの収縮に追従するように、さらに変形し易くなっており、第1及び第2のリテーナ50,60と第1のシール部材70との間の熱応力がさらに低下する。これにより、本実施形態における防水コネクタ1では、第1及び第2のリテーナ50,60と第1のシール部材70とが、強い密着状態で維持され、効果的に防水性能の向上を図ることができる。
また、第1の欠損部58は、図5及び図6に示すように、第1のリテーナ50において、平面視における内側収容部91と外側収容部92との重複部分Bを貫通している。さらに、第1の欠損部58は、この重複部分Bにおいて、防水コネクタ1の挿抜方向Aの全域に亘って形成されている。同様に、第2の欠損部68も、図7に示すように、第2のリテーナ60において、平面視における内側収容部91と外側収容部92との重複部分Cを貫通している。さらに、第2の欠損部68は、この重複部分Cにおいて、防水コネクタ1の挿抜方向Aの全域に亘って形成されている。
このように第1及び第2の欠損部58,68を、防水コネクタ1の挿抜方向Aに沿って広範囲に形成することで、第1及び第2のリテーナ50,60と第1のシール部材70との強い密着性を広範囲に亘って確保することができる。
また、本実施形態では、図9に示すように、第1の欠損部58と、第2の欠損部68と、が相互に対向している。このため、本実施形態における防水コネクタ1では、第1及び第2のリテーナ50,60が、内側収容部91においても、第1のシール部材70を介して配線基板30を挟みこんでいる。これにより、第1のリテーナ50と第1のシール部材70との間の熱応力と、第2のリテーナ60と第1のシール部材70との間の熱応力と、が配線基板30を中心として線対称に生じるので、配線基板30の歪みや撓みを抑制することができる。
これに加えて、第1の欠損部58と第2の欠損部68とが、実質的に同じ大きさとなっていることで、第1のリテーナ50と第1のシール部材70との間の熱応力と、第2のリテーナ60と第1のシール部材70との間の熱応力と、が実質的に同一となる。これにより、配線基板30の歪みや撓みをより抑制することができる。
本実施形態では、第1及び第2の突起54,64が、内側収容部91内で配線基板30を挟み込んでいるので、溶融した第1のシール部材70を内側収容部91内に充填する際に、配線基板30の姿勢が安定する。
また、防水コネクタ1に急激な温度変化(冷熱サイクル)が印加された場合に、第1のシール部材70と配線基板30との接触面が相互にずれて、両者の密着が弱くなる恐れがある。これに対しても、本実施形態のように、第1及び第2の突起54,64が配線基板30を挟み込むことで、第1のシール部材70と配線基板30との接触面のずれを抑制でき、その結果、両者の密着状態が保持される。
また、本実施形態では、第1及び第2の欠損部58,68が、防水コネクタ1の挿抜方向Aにおける内側収容部91の中心線CLを基準として線対称となっている。このため、本実施形態における防水コネクタ1は、挿抜時に印加される力をバランス良く受け止めることができ、防水コネクタ1の挿抜時における第1及び第2のリテーナ50,60の変形を抑制することができる。
図11〜図16は本実施形態における第1及び第2のリテーナの変形例を示す斜視図、図17は本実施形態における防水コネクタの変形例を示す断面図、図18は図17に示す防水コネクタのリテーナの断面図、図19は本実施形態における防水コネクタの変形例の第1のシール部材を説明する断面図である。
本実施形態では、第1のリテーナ50に第1の欠損部58が形成され、第2のリテーナ60にも第2の欠損部68が形成されているが、特に限定されず、少なくとも一方のリテーナに欠損部が形成されていればよい。
例えば、図11に示すように、第1のリテーナ501のみに第1の欠損部58を形成し、第2のリテーナ601には、欠損部を形成しなくともよい。この場合においても、第1のリテーナ501と配線基板との密着状態が維持され、防水コネクタ1における防水性能の向上が図られる。
また、本実施形態では、第1及び第2の欠損部58,68が「開口」となっているが、特に限定されない。例えば、図12に示すように、第1及び第2のリテーナ502,602の第1及び第2の欠損部581,681を「切り欠き」としてもよい。
この場合の第1の欠損部581は、同図に示すように、第1の内側溝53の両端に実質的に同じ大きさで形成された第1及び第2の切り欠き581a,581bを含んでいる。第2の欠損部681も、第2の内側溝63の両端に実質的に同じ大きさで形成された第3及び第4の切り欠き681a,681bを含んでいる。なお、第1の切り欠き581aと第3の切り欠き681aとは、実質的に同じ大きさであり、相互に対向している。同様に、第2の切り欠き581bと第4の切り欠き681bとは、実質的に同じ大きさであり、相互に対向している。なお、ここでいう「両端」とは、防水コネクタ1の挿抜方向Aと略垂直方向における端同士を意味する。
このような第1及び第2のリテーナ502,602を組み込んだ防水コネクタにおける第1のシール部材では、側部シール部と、切り欠き581a,581b,681a,681b内に収容される欠損シール部と、が一体的に形成される。このように一体となった側部シール部及び欠損シール部が、外側面に回り込み、第1及び第2のリテーナ502,602を内側シール部に向かって引き寄せる。
一方、第1及び第2のリテーナ502,602は、切り欠き581a,581b,681a,681bが形成されていることで、剛性が弱くなっており、内側シール部や欠損シール部の収縮に追従して変形し易くなっている。
このため、第1及び第2のリテーナ502,602と第1のシール部材との間の熱応力が低下し、第1及び第2のリテーナ502,602と第1のシール部材とのシール状態が強固な状態で維持される。
また、欠損シール部に加えて、外側シール部が、第1及び第2のリテーナ502,602の外側面を押圧するので、第1及び第2のリテーナ502,602と第1のシール部材との間に生じる熱応力がさらに低下する。
さらに、第1及び第2のリテーナ502,602では、第1及び第2の欠損部581,681が、相互に対向している。このため、第1及び第2のリテーナ502,602が、内側収容部91内においても、第1のシール部材を介して配線基板を挟み込むので、配線基板に歪みや撓みが生じるのを抑制することができる。
また、第1及び第2のリテーナ502,602では、第1及び第2の欠損部581,681が、防水コネクタ1の挿抜方向Aにおける内側収容部91の中心線CLを基準として線対称となっている。このため、本実施形態における防水コネクタ1は、挿抜時に印加される力をバランスよく受け止めることができ、防水コネクタ1の挿抜時における第1及び第2のリテーナ502,602の変形を抑制することができる。
また、図13に示すように、第1のリテーナ503の第1の欠損部582を、大きさの異なる第1及び第2の切り欠き582a,682bで構成してもよい。例えば、図中左側に位置する第1の切り欠き582aを、比較的大きく形成し、図中右側に位置する第2の切り欠き582bを、第1の切り欠き582aに対して相対的に小さく形成してもよい。
また、第2のリテーナ603についても、同図に示すように、第2の欠損部682を、大きさの異なる第3及び第4の切り欠き682a,682bで構成してもよい。例えば、図中左側に位置する第3の切り欠き682aを、第1の切り欠き582aと対向するように、比較的大きく形成し、図中右側に位置する第4の切り欠き682bを、第2の切り欠き582bと対向するように、比較的小さく形成してもよい。
このような第1及び第2のリテーナ503,603では、第1及び第2の欠損部582,682が相互に対向している。このため、第1及び第2のリテーナ503,603が、内側収容部91内においても、第1のシール部材を介して配線基板を挟み込むので、配線基板に歪みや撓みが生じるのを抑制することができる。
また、図14に示すように、第1の欠損部583と第2の欠損部683を、切り欠きで構成し、第1及び第2のリテーナ504,604が合わさった状態において、防水コネクタ1の挿抜方向Aにおける内側収容部91の中心線CLを基準として線対称となるように配置してもよい。このような第1及び第2のリテーナ504,604を防水コネクタ1組み込んでも、防水コネクタ1の挿抜時における第1及び第2のリテーナ504,604の変形を抑制しつつ、防水性能の向上を図ることができる。
なお、同図において、第1の欠損部583が2つの切り欠きで構成され、第2の欠損部683も2つの切り欠きで構成されているが、特に限定されない。例えば、第1の欠損部583を1つの切り欠きで構成し、第2の切り欠き683も一つの切り欠きで構成してもよい。
また、図15に示すように、第1の欠損部584を、第1の開口584aと、第1及び第2の切り欠き584b,584cと、で構成してもよい。同様に、第2の欠損部684を、第2の開口684aと、第3及び第4の切り欠き684b,684cと、で構成してもよい。
この場合には、同図に示すように、第1のリテーナ505において、第1の開口584aを第1の内側溝53の中央部分に配置し、第1及び第2の切り欠き584b,584cを第1の内側溝53の両端に配置する。同様に、第2のリテーナ605においても、第2の開口684aを第2の内側溝63の中央部分に配置し、第3及び第4の切り欠き684b,684cを第2の内側溝63の両端に配置する。なお、ここでいう「両端」とは、防水コネクタ1の挿抜方向Aと略垂直方向における端同士を意味する。
この第1及び第2のリテーナ505,605では、第1の欠損部584と、第2の欠損部684と、が相互に対向する。このため、第1及び第2のリテーナ505,605が、内側収容部内においても、第1のシール部材を介して配線基板を挟み込むので、配線基板に歪みや撓みが生じるのを抑制することができる。
また、第1及び第2の欠損部584,684が、防水コネクタ1の挿抜方向Aにおける内側収容部91の中心線CLを基準として線対称となる。このため、このような第1及び第2のリテーナ505,605を防水コネクタ1に組み込むことでも、防水コネクタ1の挿抜時における第1及び第2のリテーナ505,605の変形を抑制しつつ、防水性能の効果的な向上を図ることができる。
また、図16に示すように、第1及び第2の欠損部585,685を、複数の円形状の開口で構成してもよい。この場合においても、第1の欠損部585を構成する複数(本例では5つ)の開口と、第2の欠損部685を構成する複数(本例では5つ)の開口と、を防水コネクタ1の挿抜方向Aにおける内側収容部91の中心線CLを基準として線対称となるように形成する。また、第1の欠損部584を構成する複数の開口と、第2の欠損部684を構成する複数の開口と、を相互に対向させるように配置する。
このような第1及び第2の欠損部585,685が形成された第1及び第2のリテーナ506,606を防水コネクタ1に組み込むことでも、防水コネクタ1の挿抜時における第1及び第2のリテーナ506,606の変形を抑制しつつ、防水性能の効果的な向上を図ることができる。
なお、同図に示す例では、第1及び第2の欠損部585,685に、比較的大きい開口と、比較的小さい開口を、混在させているが、特に限定されない。複数の開口を全て同一の大きさとしてもよい。また、開口の形状も特に限定されない。
さらに、本実施形態では、第1及び第2のリテーナ50,60に第1及び第2の欠損部58,68をそれぞれ形成することで、防水コネクタ1の防水性能の向上を図っているが、特にこれに限定されない。
例えば、図17及び図18に示すように、欠損部に代えて第1のリテーナ507に、第1の外側面55と内側収容部91の底面91aとの間の肉厚を部分的に薄くした第1の薄肉部59を形成し、第2のリテーナ607にも、第2の外側面65と内側収容部91の底面91aとの間の肉厚を部分的に薄くした第2の薄肉部69を形成してもよい。なお、ここでいう内側収容部91の底面91aとは、第1及び第2の突起やリブを除いた第1及び第2の内側溝53,63の底面53a,63aである。また、この防水コネクタ1Aにおける第1のシール部材70は、内側シール部70aと、外側シール部70bと、側部シール部70cと、で構成される。
このような第1及び第2のリテーナ507,607を組み込んだ防水コネクタ1Aでは、側部シール部70cが第1及び第2のリテーナ507,607を内側シール部70aに向かって引き寄せる。なお、本例では、この側部シール部70cが本発明の接続シール部の一例に相当する。
この場合には、第1及び第2のリテーナ507,607において第1及び第2の薄肉部59,69が比較的弱い剛性となるため、この第1及び第2の薄肉部59,69が第1のシール部材70の収縮に追従して変形し易くなる。このため、第1及び第2のリテーナ507,607と第1のシール部材70との密着を維持することができ、これにより防水性能の向上を図ることができる。
なお、本例の防水コネクタ1Aにおける第1のシール部材70は、図19に示すように、内側シール部70aと、側部シール部70cと、を含んでいれば上述の効果を奏する。従って、第1のシール部材70は、外側シール部70bを含んでいなくともよいが、第1のシール部材70が外側シール部70bを含んでいることで、次のような効果を奏する。
すなわち、側部シール部70cに加えて、外側シール部70bが、第1及び第2のリテーナ507,607の外側面55,65を押圧するので、第1及び第2のリテーナ507,607が第1のシール部材70の収縮に追従してさらに変形し易くなる。このため、第1及び第2のリテーナ507,607と第1のシール部材70との強い密着を維持することができ、効果的に防水性能の向上を図ることができる。
なお、同図に示す例では、第1及び第2のリテーナ507,607に第1及び第2の薄肉部59,69を形成したが、一方のリテーナのみに薄肉部を形成してもよい。例えば、第1のリテーナ507のみに第1の薄肉部59を形成し、第2のリテーナ607には、薄肉部を形成しなくともよい。
なお、以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。