JP2012021874A - 原子炉容器構造及び原子炉の運転方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】炉心11を収納した原子炉容器10A内に、冷却材の液体ナトリウムNaを充填した液面上部に不活性ガス充填空間Gが形成されている有液面構造の上部プレナム14を設けた原子炉容器構造において、上部プレナム14の炉壁10aの内側に、原子炉定常運転時の冷却材液面L3より高い位置まで有底の内筒20を設置することにより、炉壁10aと内筒20との間に形成された冷却材滞留槽22と、液体ナトリウムNa冷却材滞留槽22に供給するとともに、上部プレナム14内から液体ナトリウムNaを回収するナトリウム充填系30と、を備えている。
【選択図】図1
Description
上述した不活性ガスは、上部プレナム14内に充填されている。すなわち、上部プレナム14は、原子炉容器10内における有液面空間となる。
なお、ルーフデッキ15は、原子炉容器10Aの据付部を低温に保つために冷却されている。
図中の符号16は、上部プレナム14内に液体ナトリウムNaを供給して充填するナトリウム充填系である。
これに対し、原子炉の起動時には、炉心11からの加熱を受けて液体ナトリウムNaの温度が上昇するので、体積膨張に伴って液体ナトリウムNaの液位もL2からL3に上昇する。なお、この場合の液位L3は、原子炉定常運転時の冷却材液面となる。
また、特許文献2には、液面熱ラチェット現象の発生を防止するため、原子炉起動時において、原子炉容器内に設置した電磁ポンプを作動させ、冷却材となる液体金属の液位を変化させる高速炉が開示されている。
さらに、原子炉容器10の健全性を確保するためには、起動にかける日数を長くし、炉壁10aが緩やかな温度上昇をするように、ゆっくりと起動する必要がある。しかし、原子炉を発電等の商用運転に使用するような場合には、起動に要する時間を短縮して定格運転時間を可能な限り延長することが望ましい。
このような熱応力に起因する懸念は、起動時のみならず、通常停止時、緊急停止時にも生じるものである。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、原子炉の起動時等に発生する原子炉容器壁面の熱応力を緩和できる原子炉容器構造及び原子炉の運転方法を提供することにある。
本発明に係る原子炉容器構造は、炉心を収納した原子炉容器内に、液体金属の冷却材を充填した液面上部に不活性ガス充填空間が形成されている有液面空間を設けた原子炉容器構造において、前記有液面空間の容器壁面内側に原子炉定常運転時の冷却材液面より高い位置まで有底内筒を設置することにより、前記容器壁面と前記内筒との間に形成された冷却材滞留槽と、前記冷却材を前記冷却材滞留槽に供給するとともに、前記有液面空間内から前記冷却材を回収する冷却材供給・回収系統と、を備えていることを特徴とするものである。
また、たとえば原子炉の起動時には、冷却材滞留槽に充填された冷却材と同量が有液面空間内から回収できるので、冷却材バウンダリ内の冷却材量は所定の充填量に維持できる。
また、たとえば原子炉の起動時には、冷却材滞留槽に充填された冷却材と同量が有液面空間内から回収できるので、冷却材バウンダリ内の冷却材量は所定の充填量に維持できる。
また、上述した本発明は、内筒及び冷却系の改造により実施できるため、追加設備を最小限に抑え、しかも、高い耐熱成立性を有している。
図1に示す実施形態の原子炉容器10Aは、高速増殖炉等の高速炉に適用されるホットベッセルと呼ばれるものであり、炉壁10aの内部空間に炉心11を収納している。この炉心11は、原子炉容器10A内でスカート部12等の据付部により支持されている。
上部プレナム14は、液体金属である液体ナトリウムNa等の冷却材が充填されるとともに、液体ナトリウムNaの液面上部にアルゴン等の不活性ガス充填空間Gが形成される空間であり、原子炉容器10A内に設けた有液面構造の空間領域となる。なお、液体ナトリウムNaは、上述した従来構造と同様に、図示を省略したコールドレグ配管から原子炉容器10の下部プレナム19に流入し、炉心11を下から上に通過する過程で加熱された後に、上部プレナム14からホットレグ配管を通って冷却系に戻される。
この内筒20は、上述した有液面空間の上部プレナム14内において、原子炉定常運転時の冷却材液位L3よりも高い位置まで設けられている。
なお、内筒20の下端部及び内筒底面21は、原子炉トリップ時の熱過渡が厳しい上部プレナム14に隣接することは望ましくないため、隔壁13よりやや下方の中間プレナム18側に設けられている。
このナトリウム充填系30は、冷却材滞留槽22に液体ナトリウムNaを供給して充填する充填流路31と、上部プレナム14内から液体ナトリウムNaを吸入して回収する回収流路32とに分岐している。なお、分岐後の充填流路31及び回収流路32には、それぞれ充填時及び回収時に開操作する仕切弁33,34が設置されている。また、充填流路31の下端は内筒底面21近傍まで達し、必要に応じて冷却材滞留槽22の液体ナトリウムNaを回収できる。
回収流路32は、原子炉の起動時等において、上部プレナム14内に充填されている液体ナトリウムNaから、冷却材滞留槽22へ供給して充填した供給量と同量の液体ナトリウムNaを回収するために使用される。このとき、仕切弁34のみが開とされ、上部プレナム14内の液体ナトリウムNaが充填流路31から供給した量と同量吸引され、液体ナトリウムNaの貯蔵タンク等に回収される。
図2は、原子炉起動前の冷却材液位を示している。この場合、液体ナトリウムNaは、冷却材バウンダリには所定量充填されており、凍結防止のために200℃程度まで加熱されている。このとき、上部プレナム14内の液位(原子炉容器10Aの底面から液面までの高さ)はL1であり、冷却材滞留槽22の液面は上部プレナム14の液位よりやや高くなっている。
この結果、上部プレナム14内の液位はL1からL1−を経て、図5に示す液位L2に低下する。この操作により、冷却材バウンダリに充填されている液体ナトリウムNaの充填量は、当初の所定量から変動することはない。
図6は、図5の液位状態から原子炉の起動操作を開始した場合(原子炉起動時)の液位を示している。この場合、原子炉の起動により液体ナトリウムNaが温度上昇するので、冷却材バウンダリの液体ナトリウムNaが温度上昇に伴って膨張する。この結果、上部プレナム14内の液位L2からL2+に上昇するとともに、冷却材滞留槽22の液体ナトリウムNaが溢流して上部プレナム14内に流下する。
図8は、原子炉を停止した場合の液位が示されている。この場合、液体ナトリウムNaは温度降下に伴い収縮するので、上部プレナム14内の液位は定常運転時の液位L3から降下し液位L3−を経て、最終的には凍結防止の加熱温度まで低下し、図2に示す原子炉起動前の冷却材液位L1となる。
この結果、原子炉起動時において、原子炉容器10Aの炉壁10aと接する液体ナトリウムNaの液面高さは、原子炉起動時の温度変化により膨張しても、冷却材滞留槽22の上端と常に一致して一定に保たれる。
このため、原子炉の供用期間中に起動・停止を繰り返しても、原子炉容器10Aに対して繰り返し発生する熱応力を低減できるので、起動のたびに原子炉容器10Aの径が縮む変形(液面ラチェット)やクリープ疲労による破損の問題を低減または解消することができる。
また、液体ナトリウムNaの液位を一定に保つことができると、上述した起動時のみならず、通常停止時や緊急停止時においても、液面近傍部の熱応力を小さくするなど、熱応力に起因する懸念を軽減することができる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、たとえば冷却材や不活性ガスの種類、冷却材充填系の構成や充填・回収手順など、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
10a 炉壁
11 炉心
12 スカート部
13 隔壁
14 上部プレナム
15 ルーフデッキ
20 内筒
21 内筒底面
22 冷却材滞留槽
30 ナトリウム(Na)充填系
31 充填流路
32 回収流路
33,34 仕切弁
Claims (2)
- 炉心を収納した原子炉容器内に、液体金属の冷却材を充填した液面上部に不活性ガス充填空間が形成されている有液面空間を設けた原子炉容器構造において、
前記有液面空間の容器壁面内側に原子炉定常運転時の冷却材液面より高い位置まで有底内筒を設置することにより、前記容器壁面と前記内筒との間に形成された冷却材滞留槽と、
前記冷却材を前記冷却材滞留槽に供給するとともに、前記有液面空間内から前記冷却材を回収する冷却材供給・回収系統とを備えていることを特徴とする原子炉容器構造。 - 請求項1に記載の原子炉容器構造を備えている原子炉の運転方法において、
前記冷却材滞留槽の上端まで前記冷却材を供給するとともに、前記有液面空間内に充填されている前記冷却材から前記冷却材滞留槽への供給量と同量を回収する準備工程を備えていることを特徴とする原子炉の運転方法。
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