JP2012013253A - 流動層における固体粒子の凝集予測方法 - Google Patents

流動層における固体粒子の凝集予測方法 Download PDF

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Abstract

【課題】燃料を燃焼させた際に、流動層に充填される固体粒子同士の付着による凝集が生じるか否かを予測する方法を提供する。
【解決手段】流動層式の燃焼炉における流動層の固体粒子の凝集を予測する凝集予測方法であって、固体粒子と、燃焼炉に供給する燃料の灰に対応する組成を有する灰材と、を混合した混合材を、燃焼炉の燃焼温度範囲に含まれる温度条件で焼結させて試験片を作成し、試験片について硬度を測定し、試験片の硬度と、燃焼炉で任意の燃料を燃焼させて形成される固体粒子の凝集体の硬度とに基づいて、固体粒子の凝集を予測することを特徴とする。
【選択図】図2

Description

本発明は、流動層における固体粒子の凝集予測方法に関するものであり、詳しくは、燃料を燃焼させた際に、流動層に充填される固体粒子同士の付着による凝集(アグロメレーション)が生じるか否かを予測する方法に関するものである。
従来、流動層式の燃焼炉が知られている。このような燃焼炉は、燃料と、流動層に充填される珪砂などの固体粒子と、の間の熱移動速度が著しく大きいために、高発熱反応を容易に制御できるという特長を有しており、ボイラや焼却炉として利用されている(例えば特許文献1〜3参照)。
特開2005−226930号公報 特開2009―257695号公報 特開平6−58510号公報
上述のような流動層式の燃焼炉を用いて燃料を燃焼させると、珪砂など流動層の固体粒子(ベッド材)が凝集(アグロメレーション)した凝集体が発生する不具合が生じることが知られている。これは、燃料に含まれるNa(ナトリウム)やK(カリウム)などのアルカリ金属成分が、燃焼炉内で析出・溶解し、ベッド材を巻き込みながら凝集することによって生じると考えられている。
アグロメレーションが生じ固体粒子が粗大化すると、流動層の流動不良が生じ、燃焼炉の燃焼効率の低下に繋がる。そのため、アグロメレーションが生じるか否かを予測することは、安定的な運転のためには重要な技術となる。
従来は、特定の燃焼条件において燃料を燃焼させる場合に流動層においてアグロメレーションが生じるか否かは、実際に燃料のサンプルを燃焼させることにより確認していた。しかしこの方法では、燃料が多種に及ぶ場合に、確認作業に大きな労力が必要となっていた。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、燃料を燃焼させた際に、流動層に充填される固体粒子同士の付着による凝集が生じるか否かを予測する方法を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するため、本発明の流動層における固体粒子の凝集予測方法は、流動層式の燃焼炉における流動層の固体粒子の凝集を予測する凝集予測方法であって、前記固体粒子と、前記燃焼炉に供給する燃料の灰に対応する組成を有する灰材と、を混合した混合材を、前記燃焼炉の燃焼温度範囲に含まれる温度条件で焼結させて試験片を作成し、前記試験片について硬度を測定し、前記試験片の硬度と、前記燃焼炉で任意の燃料を燃焼させて形成される前記固体粒子の凝集体の硬度とに基づいて、前記固体粒子の凝集を予測することを特徴とする。
この方法によれば、ある燃料についてアグロメレーションが発生するか否かの確認を、燃焼炉を用いて実際に燃焼試験を行うことなく、灰材を用いて形成する試験片の硬度を確認することで行うことができる。そのため、簡便にアグロメレーションの発生予測を行うことができる。
本発明においては、前記固体粒子と前記灰材とを複数の混合比率で混合して、前記灰材の含有率を異ならせた複数の混合材を作成し、前記複数の混合材をそれぞれ、前記燃焼炉の燃焼温度範囲に含まれる温度条件で焼結させて複数の前記試験片を作成し、前記複数の試験片の各々について前記硬度を測定して、前記試験片中の前記灰材の含有率と前記硬度との対応関係である第1の対応関係を求め、前記第1の対応関係に基づいて、灰の含有率が既知の燃料を燃焼させるときの前記固体粒子の凝集を予測することが望ましい。
燃料の種類や燃焼炉への燃料の投入量によって、生じる灰量が異なるが、この方法によれば、予め複数の混合比率で試験片を作成するために、灰量に応じたアグロメレーションの発生予測を行うことができる。
本発明においては、前記灰材とアルカリ金属化合物とを混合して、アルカリ金属成分の含有率を異ならせた複数の調製灰を作成し、前記固体粒子と前記複数の調製灰とをそれぞれ混合した複数の前記混合材を、前記温度条件で焼結させて複数の前記試験片を作成し、前記複数の試験片の各々について前記硬度を測定して、前記試験片中の前記アルカリ金属成分の含有率と前記硬度との対応関係である第2の対応関係を求め、前記第1の対応関係および前記第2の対応関係から、前記試験片の前記硬度が前記閾値を示すときの、前記試験片中の前記灰材の含有率と、前記灰材中のアルカリ金属成分の含有率と、の対応関係である第3の対応関係を求め、前記第3の対応関係に基づいて、灰の含有率と灰中のアルカリ金属成分の含有率が既知の燃料を燃焼させるときの前記固体粒子の凝集を予測することが望ましい。
アグロメレーションは、灰に含まれるNaまたはKなどのアルカリ金属成分が、燃焼炉内で燃料から析出・溶解し、固体粒子(ベッド材)を巻き込みながら凝集することにより生じることが知られている。しかし、燃料中のアルカリ金属成分は、燃料の性状によって含有率が大きく異なるため、アグロメレーションが生じるか否かは、燃料の種類に大きな影響を受け、凝集予測が困難となることが考えられる。
これに対して、本発明の方法では、アグロメレーションが生じるか否かを予測するために、多種の燃料に対応してアルカリ金属成分の含有率を変更した試験片を用い、試験片の硬度を求めることとしている。そのため、予めアルカリ金属成分を異ならせた調製灰を、アルカリ金属成分の含有率が異なる燃料の種類と対応付けることにより、アグロメレーションの発生を良好に予測することができる。
そのため、実際に燃焼炉で燃料を燃焼させ、アグロメレーションが生じるか否かを確かめなくても、燃料の灰の含有率と、灰中のアルカリ金属成分の含有率とが分かれば、求めた第3の対応関係から、流動層において凝集体を形成するか否かを予想できる。したがって、簡便に固体粒子の凝集予測をすることが可能となる。
本発明においては、前記第3の対応関係と、前記燃焼炉で燃焼させる複数種の前記燃料のうち、最も灰中のアルカリ金属成分の含有率が高い燃料における灰の含有率、および灰中のアルカリ金属成分の含有率と、に基づいて、前記燃料に含まれる灰の含有率と灰中のアルカリ金属成分の含有率との対応関係である第4の対応関係を求め、前記第4の対応関係に基づいて、灰の含有率と灰中のアルカリ金属成分の含有率が既知の燃料を燃焼させるときの前記固体粒子の凝集を予測評価することが望ましい。
この方法によれば、第3の対応関係を、実際に燃焼させる燃料のうち、最もアルカリ金属成分の含有率が高い燃料によって算出されたものとして換算し直すこととしている。他の燃料については、アグロメレーションの発生の主原因と考えられるアルカリ金属成分の含有率が換算に用いる燃料よりも低いため、換算に用いる燃料よりもアグロメレーションが発生しにくい燃料であると考えられる。したがって、求められる第4の対応関係を、実際に燃焼させる燃料として想定される複数の燃料を代表させた対応関係として用い、簡便にアグロメレーションの発生予測を行うことが可能となる。
本発明においては、パーム椰子の空果房における灰の含有率および灰中のアルカリ金属成分の含有率に基づいて、前記第4の対応関係を求めることが望ましい。
パーム椰子の空果房(EFB:Empty Fruit Bunch)は、カリウム成分の含有率が非常に高く、実機における燃焼時にアグロメレーションが生じやすい燃料として問題視されているものである。このEFBを基準として用いることで、EFBでアグロメレーションが発生しない条件であれば、灰中のカリウム成分がEFBよりも少ない他の燃料については当然にアグロメレーションが生じないと予測判断ができるものと考えられる。そのため、基準としてふさわしい。
本発明においては、前記試験片の硬度と、前記燃焼炉に形成される複数の前記凝集体の硬度のうち最も低いものと、に基づいて、前記固体粒子の凝集を予測することが望ましい。
この方法によれば、凝集体の硬度のうち最も低いものの実測値を閾値として用いることで、より信頼性が高い予測評価を行うことが可能となる。
本発明においては、前記試験片または前記凝集体を、ラトラ試験器が備える回転籠に入れ、該回転籠を回転させることにより前記試験片または前記凝集体を崩壊させ、前記硬度として、崩壊させた後に前記回転籠内に残存する前記試験片の重量を、崩壊前の前記試験片の重量で割った値である膠着度を求めることが望ましい。
流動層内で生じた凝集体は、流動しながら全方位的に圧力が加わることで崩壊し、または当該圧力で崩壊しない場合には凝集体として残存する。対して、ラトラ試験器を用いると、試験片を持ち上げ、落下する際に加わる応力によって徐々に試験片を崩壊させる。この落下の際に加わる応力は、試験片に対して確率的に全方位から加わるため、例えば、試験片を固定して一方向から圧力を加えることによる試験片の崩壊試験などと比べ、より実機の挙動に近い応力の加わり方となる。そのため、ラトラ試験器を用いると、より実機の挙動に近い崩壊のさせ方によって試験片の崩壊しやすさ(硬度)を測定することができ、信頼性の高い試験とすることが可能となる。
本発明においては、試験に用いる灰材として、以下の2通りのものを用いることができる。まず、本発明においては、前記灰材として、前記燃料を灰化した燃焼灰を用いることが可能である。
この方法によれば、実際に燃焼させる燃料の灰を用いて試験片を作成するため、後述の試験の信頼性が高まる。このような灰材は、燃料に含まれる灰成分が十分に多い場合に有効である。
または、前記燃料の灰として、前記燃料の灰の組成に基づき、構成成分の含有率が一致するように金属塩または金属酸化物を用いて作成した模擬灰を用いることもできる。
この方法によれば、実際に燃料がなくても、灰分の組成さえ分かっていれば試験が可能であるため、固体粒子の凝集予測を効率良く行うことが可能となる。このような灰材は、例えばバイオマスのように灰分が少ない燃料について固体粒子の凝集予測を行う場合に効果的である。
本発明によれば、燃料を燃焼させた際に、流動層に充填される固体粒子同士の付着による凝集が生じるか否かを良好に予測することが可能となる。
流動層でのアグロメレーションで生じる凝集体を示す図である。 本発明の固体粒子の凝集予測方法の手順を示すフローチャートである。 灰の焼結を行うための焼結ボートを説明する概略斜視図である。 ラトラ試験器を示す概略斜視図である。 試験片中のカリウム成分の含有率と膠着度との関係を示したグラフである。 限界膠着度を示す灰分率と灰中のカリウム分との関係を示したグラフである。 限界膠着度を示す燃料中の灰分率とカリウム分との関係を示したグラフである。
以下、図1〜図7を参照しながら、本発明の実施形態に係る固体粒子の凝集予測方法について説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせてある。
本方法では、ボイラや焼却炉などに用いる流動層式の燃焼炉において、流動層のベッド材である固体粒子同士の凝集が生じるか否かを、実機を用いて実際に燃焼させることなく予測する。この固体粒子の凝集体は、例えば図1に示すようなものである。固体粒子が粗大化すると、流動層の流動不良が生じ、燃焼炉の燃焼効率の低下に繋がる。そこで、本発明により得られる予測結果を、燃焼炉における燃料量や燃焼条件の調製などに役立つ情報として用いる。
図2は、本実施形態の凝集予測方法の手順を説明するフローチャートである。以下、図に示すフローチャートに従って順に説明する。本実施形態では、燃料としてバイオマスを用いて説明する。
まず、燃料の灰組成を分析する(ステップS1)。ここで「灰」とは、燃料を完全燃焼させた後の残分を指す。具体的には、バイオマスや家庭ゴミなどの廃棄物や石炭などの燃料を燃焼させた後に残る無機質である。
例えば、燃料に占める灰分を、JIS−M8812(石炭類及びコークス類−工業分析方法)に規定される方法に準拠して、燃料を815℃で恒量となるまで燃焼させることにより調製し、JIS準拠の方法を用いて灰分の組成を求める。灰分の組成は、灰分を構成する金属化合物または無機物を酸化物として換算した値で算出される。
検出対象である元素は、Si(ケイ素)、Al(アルミニウム)、Ti(チタン)、Na、K、Mg(マグネシウム)、Fe(鉄)、Mn(マンガン)、S(硫黄)、P(リン)を例示することができる。もちろん、これら以外の元素を検出対象として含めることで、精度良く灰分の組成を求めることとしても良い。
次いで、燃料に含まれる灰分の割合(含有率)を測定する(ステップS2)。上述のJIS準拠の方法を用いて調製する灰分の質量を、試料である燃料に対する質量分率で表し、これを灰分とする。
次いで、固体粒子の凝集予測のための試験に用いる試験片を作成する。試験片は、ステップS2で得られる灰分の割合に基づいて、以下の2種の方法により調製した灰(灰原料)を用いて作成する。
まず、燃料に含まれる灰分の割合が大きい場合は、燃料を上述のJIS準拠の方法を用いて灰化し、灰を調製する(ステップS3)。この場合、実際に燃焼させる燃料の灰を用いて試験片を作成するため、後述の試験の信頼性が高まる。
また、燃料に含まれる灰分の割合が小さい場合は、ステップS1で求めた灰分の組成に基づいて、灰の代替品(模擬灰)を調製する(ステップS4)。
模擬灰は、灰分を構成する金属を、灰分の組成に基づいて、金属酸化物または金属塩の形で混合することにより調製する。このようにして模擬灰を調製する場合、バイオマスのように灰分が少ない燃料についても、後述の試験を行うことができる。また、実際に燃料がなくても、灰分の組成さえ分かっていれば試験が可能であるため、固体粒子の凝集予測を効率良く行うことが可能となる。
次いで、灰または模擬灰に、NaまたはKの酸化物または塩を添加することで、灰分に含まれるNa,またはK成分の含有率を調製した灰(調製灰)を作成する(ステップS5)。
アグロメレーションは、灰に含まれるNaまたはKなどのアルカリ金属成分が、燃焼炉内で燃料から析出・溶解し、ベッド材を巻き込みながら凝集することにより生じることが知られている。また、アグロメレーションは、アルカリ金属成分のうちNa成分とK成分とでは、K成分のほうが凝集に強い影響を及ぼすことが知られている。
また、このアルカリ金属成分は、燃料の性状によって含有率が大きく異なる。例えば家庭ゴミでは、食べ残しが多く含まれる場合と食べ残しが少ない場合とでは、食事の味付けに用いる塩分に起因してNa成分の含有率が異なる。また、カリウム(K)は、植物の育成には欠かせず、肥料の主要物質として付加されるため、バイオマスには多くのK成分が含まれる。
すなわち、アグロメレーションが生じるか否かは、燃料の種類に大きな影響を受けることとなる。そのため、アグロメレーションが生じるか否かを予測するために、多種の燃料に対応した予測データを有することが望ましい。したがって、本発明では、灰組成におけるNa成分またはK成分の比率を調製した調製灰を作成する。
次いで、灰または模擬灰と、実機の流動層で用いる固体粒子とを、合計を100とし、灰または模擬灰の添加分だけ固体粒子を減量して所定の割合で混合し、得られた混合物を電気炉にて焼結して、試験片を作成する(ステップS6)。
具体的には、図3に示すような焼結ボート1に上記混合物を入れ、実機の燃焼炉における燃焼条件に対応した温度条件で焼結させることで、焼結物Xを得る。得られる焼結物Xを所定の長さ(例えば1cm)に分割することで試験片を作成する。
焼結ボート1の容量は種々のものを用いることができ、例えば、長辺L:12cm、短辺W:2cm、深さD:1cmの半円筒状の形状を有するものを用いることができる。
次いで、ステップS6で得られた試験片について、崩壊のしやすさを測定する(ステップS7)。ここでは、金属圧粉体のラトラ試験法(日本粉末冶金工業会規格:JSPM標準4−69)に基づいて上記試験片を用いた測定を行い、得られる測定結果から算出する値を用いて、試験片の崩壊のしやすさを求める方法について説明する。
図4は、ラトラ試験法に用いるラトラ試験器2を示す概略斜視図である。ラトラ試験器2は、本体3と、直径100mm、長さ115mmの円筒状の金網(目開き1mm#)で構成された回転籠4と、本体3と回転籠4とを接続し、回転籠4を中心軸周りに回転させる回転軸5と、を有している。
ラトラ試験器は、次のようにして用いる。まず、回転籠4の内部に予め重量を測定した試験片を投入し、設定部6で回転時間の設定を行ったのちに、スタートボタン7を押して回転をスタートさせる。そうすると、回転籠4内で試験片が崩壊し、回転籠4の網目を介して試験片を構成する灰または固体粒子が落下する。
次いで、落下する灰や固体粒子を通過物受皿8で採取して秤量して、単位試験時間内に崩壊した量を求め、試験前の試験片の重量との差分から、試験後の試験片の重量を算出する。なお、試験中は、回転籠4はカバー9で覆われており、灰および固体粒子の飛散を防いでいる。
このようにして行う崩壊試験において試験片が崩壊する様子は、流動層内で凝集体が崩壊する挙動と類似している。すなわち、流動層内で生じた凝集体は、流動しながら全方位的に圧力が加わることで崩壊し、または当該圧力で崩壊しない場合には凝集体として残存する。これに対してラトラ試験器を用いると、回転籠4の回転に伴って内部に配置された試験片が持ち上がり、落下する際に加わる応力によって、徐々に試験片を崩壊させる。
この落下の際に加わる応力は、試験片に対して確率的に全方位から加わるため、例えば、試験片を固定して一方向から圧力を加えることによる試験片の崩壊試験などと比べ、より実機における応力の加わり方に近いものとなる。そのため、ラトラ試験器を用いると、より実機の挙動に近い崩壊のさせ方によって試験片の崩壊しやすさ(硬度)を測定することができ、信頼性の高い試験とすることが可能となる。
このようなラトラ試験器を用いた崩壊試験により得られる値から、試験片の硬度の指標である「膠着度」を算出する。膠着度とは、次の式(1)で示される値である。膠着度が大きい試験片はラトラ試験器を用いた崩壊試験で崩壊しにくく、膠着度が小さい試験片は崩壊しやすい試験片であることを示している。
[数1]
膠着度=(試験後の試験片の重量)/(試験前の試験片の重量) …(1)
このようにして求められる膠着度を、複数の灰添加量で作成した各試験片に対して行う。
次いで、求めた膠着度に基づき、流動層においてアグロメレーションが発生するか否かについて示す、燃料に含まれる灰分の量と灰分中の組成との関係を求める(ステップS8)。
まず第1に、求めた膠着度と、試験片中のアルカリ金属との関係を求める。図5は、焼結温度850℃としたときの膠着度の結果を示すグラフである。図は、K成分を調製した調製灰について示したものであり、横軸に試験片中のK成分の重量含有率(KO換算濃度[%])、縦軸に測定した膠着度を示している。
なお、図5に示される、試験片中の灰分の含有率と膠着度との関係は、本発明における第1の対応関係を示すものであり、試験片中のK成分の含有率と膠着度との関係は、本発明における第2の対応関係を示すものである。
上述のように、アグロメレーションにはNaまたはKなどのアルカリ金属の影響が強く、燃料中にはアルカリ金属のなかでもNa、Kが多く含まれる。そのため、本発明の凝集予測方法においては、灰中のNaまたはKについて着目し、灰中のNa、Kの含有率の大小から、アグロメレーションが生じるか否かの判断を行う。
また、用いる流動層式の燃焼炉において、所定の運転条件下で実際に形成された凝集体について膠着度を測定し、最も小さい膠着度を「限界膠着度」とする。試験片の膠着度と、実機における燃焼試験で得られる凝集体の膠着度と、の対応関係を予め求めることで、限界膠着度に対応する凝集体の膠着度を、閾値として用いることができる試験片の限界膠着度とする。試験片の崩壊試験による値がこの限界膠着度よりも小さければ、当該所定の運転条件では凝集体が生じないと判断する指標として用いる。これは以下のような考え方に基づく。
上述のように、アグロメレーションによって生じる凝集体は、燃料に含まれるNa成分またはK成分が、固体粒子を巻き込みながら凝集することにより形成される。一方、試験片は、実際の燃焼炉の温度と同じ温度条件で焼結させており、その構造は、灰に含まれるNa成分またはK成分が燃焼炉の温度と同じ温度で溶融し、これらのアルカリ金属成分以外の無機物を互いに巻き込みながら凝集することにより形作られていると考えることができる。
そのため、凝集体と試験片とは、いずれも固体粒子(無機物)をアルカリ金属成分で凝集させてなるものであり、両者の挙動は互いに類似している。したがって、試験片の膠着度と、実機における燃焼試験で得られる凝集体の膠着度と、の対応関係を予め求めることで、「限界膠着度」をステップS8における判断指標として用いることが可能となる。
発明者は、実機の燃焼試験で得られる凝集体の膠着度と、当該凝集体が生じた際の燃料の灰について上記と同様の方法で作成した試験片の膠着度と、が絶対値においてほぼ一致するという対応関係を、予め実験的に確かめている。そのため、実機の燃焼試験で得られた凝集体の限界膠着度を、試験片の限界膠着度とみなして採用することができる。
一例として、図5では、限界膠着度が0.38であることとして示している。限界膠着度を参照すると、各々の灰分の含有率の試験片について、各々の試験片を構成する灰中にどの程度の量までK成分を含むことが可能であるかが分かる(図中、一点鎖線で示す線とグラフとの交点を参照)。
なお、図5で示した限界膠着度0.38は一例であり、燃焼炉の形状、運転条件、流動層の固体粒子の粒度などに応じて変化する値である。上述の限界膠着度は、炉外形:500×250×4000mm、燃焼温度:700〜800℃、空気比:1.2、空塔速度:1.6〜2.9m/s、使用ベッド材:4号珪砂(平均直径1mm)、の条件下において、流動層で形成された凝集体を測定して得られた値を元にしている。
例えば、限界膠着度は、用いるベッド材の粒度が大きくなると低下し、粒度が小さくなると増加する傾向があるため、用いるベッド材に応じて適宜測定する必要がある。また、空気比が高くなると、燃焼しやすい条件となるため炉内温度が上がりやすく、結果として限界膠着度が上がる傾向にある。
次いで第2に、限界膠着度を示す試験片中の灰分の含有率と、灰中に含まれるK成分の含有率との関係を求める。図6は、図5に示された、限界膠着度を示す灰分の含有率と灰中に含まれるK成分の含有率との関係をグラフ化したものである。図は、横軸に試験片作成時の混合物に添加した灰量(灰添加量[%])、縦軸に添加した灰に含まれるK成分の含有率(%、KO換算)を示している。
なお、図6に示される、試験片中の灰分の含有率と試験片中のK成分の重量含有率との関係は、本発明における第3の対応関係を示すものである。
次いで第3に、上記図6の横軸に示した試験片中の灰分の含有率が、実際に燃焼させる燃料由来であればどの程度の量に対応するか換算し、燃料中の灰分の含有率と、灰中に含まれるK成分の含有率との関係を求める。
ここでは、バイオマスのなかでも特に灰中のK成分の含有率が高いパーム椰子の空果房(EFB:Empty Fruit Bunch)を基準として換算した。EFBは、K成分の含有率が高いことから実機における燃焼時にアグロメレーションが生じやすい燃料として問題視されているものである。このEFBを基準として用いることで、灰中のK成分がEFBよりも少ない(アグロメレーションが発生し難い)他の燃料についても、アグロメレーションが生じるか否かの予測判断ができるものと考えられる。
EFBは、実測値で灰分の含有率4.8%、灰中K成分の含有率47.4%の組成を有している。この値を用いて、図6の縦軸の値を固定し、横軸の値をEFBを燃料としたときの燃料中の灰分として算出した。これにより、図7に示すグラフを得ることができる。
なお、図7に示される、燃料中の灰分の重量含有率と、燃料灰中のK成分の重量含有率(灰中KO[%])との関係は、本発明における第4の対応関係を示すものである。
次いで、図7に示したグラフを用いて、各種の燃料を燃料させたときに流動層でアグロメレーションが生じるか否かを評価する(ステップS9)。
図7の曲線は、850℃の焼結温度において限界膠着度を呈する燃料中の灰分の含有率と灰中のK成分の含有率との関係を示すものであり、ある燃料の灰分の含有率と灰中のK成分の含有率について図7のグラフ上にプロットしたときに、曲線よりも左側(原点側)の領域にプロットするならば、当該燃料は850℃の燃焼温度においてアグロメレーションを生じないと判断でき、曲線よりも右側の領域にプロットするならば、当該燃料は850℃の燃焼温度においてアグロメレーションを生じるおそれがあると判断できる。
燃料として木屑、コーヒー滓、バガス(サトウキビ搾汁後の残渣)を想定し、これらの灰分の含有率と、各々の灰中のK成分の含有率と、を図7のグラフにプロットすると、図に示すように、いずれもグラフの曲線よりも原点側の領域にプロットされる。すなわち、これらの燃料を850℃で燃焼させても、アグロメレーションは発生しないものと予測することができる。
以上のようにして、アグロメレーションの発生の有無を予測する。
以上のような構成の固体粒子の凝集予測方法によれば、実際に燃焼炉で燃料を燃焼させ、アグロメレーションが生じるか否かを確かめなくても、燃料の灰の含有率と、灰中のアルカリ金属成分の含有率とが分かれば、図7に示すような対応関係(第4の対応関係)から、流動層において凝集体を形成するか否かを予想できる。したがって、簡便に固体粒子の凝集予測をすることが可能となる。
なお、本実施形態においては、ラトラ試験器を用いて膠着度を求め指針として用いたが、これに限らず、凝集体の硬度と試験片の硬度とを、相関が得られるデータとして求めることができれば、他の方法を用いることとしても構わない。例えば、凝集体および試験片を圧縮して崩壊強度を求める試験を、本実施形態のラトラ試験器を用いた崩壊試験に代えて用いることとしても良い。
また、本実施形態においては、850℃の温度条件で調製灰を焼結させ試験片を作成し、燃料中の灰分と灰分中のK成分の含有率との対応関係を求めることとしたが、他にも複数の温度条件で同様に試験片を作成し、対応関係を求めることとしても良い。例えば、図7において850℃の温度条件における結果の他の温度条件について示す場合には、温度条件を上げると、図7に示されている曲線よりも原点側(左側)に対応関係を示す曲線が引かれ、温度条件を下げると、図7に示されている曲線よりも右側に対応関係を示す曲線が引かれる。
このようにすると、燃焼炉の運転条件を変更した場合においても、容易に固体粒子の凝集予測を行うことができる。
また、本実施形態においては、図7に示す第4の対応関係まで求めて凝集予測を行うこととしたが、これに限らず、図6に示す第3の対応関係や、図5に示す第2の対応関係を用いて凝集予測を行うこととしても良い。また、図5に示す第1の対応関係を用いても、試験片の膠着度を基準となる膠着度と比較することで、凝集予測を行うことが可能である。
もちろん、図7に示す第4の対応関係を用いると、燃料の種類によらず灰分の含有率と灰の組成(灰中アルカリ金属含有率)を知ることで凝集予測ができるため、簡便で好ましい。
また、本実施形態においては、複数のアルカリ金属の含有率の調製灰を用いて膠着度を測定し凝集予測を行うこととしたが、調製灰としてアルカリ金属の含有率が1種のみであったとしても、基準となる膠着度と比較することで、当該アルカリ金属の含有率を有する灰(燃料)について凝集予測を行うことが可能である。
また、本実施形態においては、EFBの灰の含有率と、灰中のアルカリ金属成分の含有率と、の対応関係を用いて図7のグラフを求めたが、これに限らず、他の燃料についてのデータを用いることとしても良い。
また、本実施形態においては、主として灰中のK成分について着目して凝集予測を行ったが、他にもNa成分に着目して凝集予測を行うこととしても良く、さらには、K成分とNa成分との両方に着目して凝集予測を行うこととしても良い。このような場合には、K成分の代わりに着目するアルカリ金属成分の含有率を変更した試験片を作成し、図5〜図7に対応した関係を求めることとすると良い。
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
1…焼結ボート、2…ラトラ試験器、3…本体、4…回転籠、5…回転軸、6…設定部、7…スタートボタン、8…通過物受皿、9…カバー、

Claims (9)

  1. 流動層式の燃焼炉における流動層の固体粒子の凝集を予測する凝集予測方法であって、
    前記固体粒子と、前記燃焼炉に供給する燃料の灰に対応する組成を有する灰材と、を混合した混合材を、前記燃焼炉の燃焼温度範囲に含まれる温度条件で焼結させて試験片を作成し、
    前記試験片について硬度を測定し、
    前記試験片の硬度と、前記燃焼炉で任意の燃料を燃焼させて形成される前記固体粒子の凝集体の硬度とに基づいて、前記固体粒子の凝集を予測することを特徴とする凝集予測方法。
  2. 前記固体粒子と前記灰材とを複数の混合比率で混合して、前記灰材の含有率を異ならせた複数の混合材を作成し、
    前記複数の混合材をそれぞれ、前記燃焼炉の燃焼温度範囲に含まれる温度条件で焼結させて複数の前記試験片を作成し、
    前記複数の試験片の各々について前記硬度を測定して、前記試験片中の前記灰材の含有率と前記硬度との対応関係である第1の対応関係を求め、
    前記第1の対応関係に基づいて、灰の含有率が既知の燃料を燃焼させるときの前記固体粒子の凝集を予測することを特徴とする請求項1に記載の凝集予測方法。
  3. 前記灰材とアルカリ金属化合物とを混合して、アルカリ金属成分の含有率を異ならせた複数の調製灰を作成し、
    前記固体粒子と前記複数の調製灰とをそれぞれ混合した複数の前記混合材を、前記温度条件で焼結させて複数の前記試験片を作成し、
    前記複数の試験片の各々について前記硬度を測定して、前記試験片中の前記アルカリ金属成分の含有率と前記硬度との対応関係である第2の対応関係を求め、
    前記第1の対応関係および前記第2の対応関係から、前記試験片の前記硬度が前記閾値を示すときの、前記試験片中の前記灰材の含有率と、前記灰材中のアルカリ金属成分の含有率と、の対応関係である第3の対応関係を求め、
    前記第3の対応関係に基づいて、灰の含有率と灰中のアルカリ金属成分の含有率が既知の燃料を燃焼させるときの前記固体粒子の凝集を予測することを特徴とする請求項2に記載の凝集予測方法。
  4. 前記第3の対応関係と、前記燃焼炉で燃焼させる複数種の前記燃料のうち、最も灰中のアルカリ金属成分の含有率が高い燃料における灰の含有率、および灰中のアルカリ金属成分の含有率と、に基づいて、前記燃料に含まれる灰の含有率と灰中のアルカリ金属成分の含有率との対応関係である第4の対応関係を求め、
    前記第4の対応関係に基づいて、灰の含有率と灰中のアルカリ金属成分の含有率が既知の燃料を燃焼させるときの前記固体粒子の凝集を予測評価することを特徴とする請求項3に記載の凝集予測方法。
  5. パーム椰子の空果房における灰の含有率および灰中のアルカリ金属成分の含有率に基づいて、前記第4の対応関係を求めることを特徴とする請求項4に記載の凝集予測方法。
  6. 前記試験片の硬度と、前記燃焼炉に形成される複数の前記凝集体の硬度のうち最も低いものと、に基づいて、前記固体粒子の凝集を予測することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の凝集予測方法。
  7. 前記試験片または前記凝集体を、ラトラ試験器が備える回転籠に入れ、該回転籠を回転させることにより前記試験片または前記凝集体を崩壊させ、
    前記硬度として、崩壊させた後に前記回転籠内に残存する前記試験片の重量を、崩壊前の前記試験片の重量で割った値である膠着度を求めることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の凝集予測方法。
  8. 前記灰材として、前記燃料を灰化した燃焼灰を用いることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の凝集予測方法。
  9. 前記灰材として、前記燃料の灰の組成に基づき、灰中の構成成分の含有率が一致するように金属塩または金属酸化物を用いて作成した模擬灰を用いることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の凝集予測方法。
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