JP2012009879A - 圧電アクチュエータ及び印刷ヘッド - Google Patents

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Abstract

【課題】圧電セラミックスの絶縁抵抗劣化を防止すると共に、長期信頼性を確保する圧電アクチュエータを提供する。
【解決手段】圧電アクチュエータ1は、鉛を含む圧電セラミック層4を一対の電極5,6で挟持するとともに、一対の電極5,6のうち少なくとも一方の電極5が銀を含み、圧電セラミック層4が、鉛と硫黄とを含み、かつ平均径が0.05〜2.5μmの異相を含有している。印刷ヘッドは、圧電アクチュエータ1が、インク吐出孔を有する複数のインク流路が配列された流路部材上に取り付けられた構造を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、Pb、Zr及びTiを含む圧電セラミック層を主成分とする薄層の焼結体からなるアクチュエータ及びその製造方法、並びに文字や画像の印刷に用いるインクジェット記録装置に好適に用いられる圧電アクチュエータ、その製造方法及び印刷ヘッドに関する。
近年、パーソナルコンピューターの普及やマルチメディアの発達に伴って、情報を記録媒体に出力する記録装置として、インクジェット方式の記録装置の利用が急速に拡大している。
かかるインクジェット方式の記録装置には、印刷ヘッドが搭載されており、この種の印刷ヘッドには、インクが充填されたインク流路内に加圧手段としてのヒーターを備え、ヒーターによりインクを加熱、沸騰させ、インク流路内に発生する気泡によってインクを加圧し、インク吐出孔より、インク流として吐出させるサーマルヘッド方式と、インクが充填されるインク流路の一部の壁を変位素子によって屈曲変位させ、機械的にインク流路内のインクを加圧し、インク吐出孔よりインク流として吐出させる圧電方式が一般的に知られている。
圧電方式を利用したインクジェット記録装置に用いられる印刷ヘッドは、例えば図4(a)に示したように、複数の溝がインク流路23aとして並設され、各インク流路23aを仕切る壁として隔壁23bを形成した流路部材23の上に、圧電アクチュエータ21が設けられた構造を有する。
即ち、圧電セラミック層24の一方の主面に内部電極25(共通電極)を形成するとともに、他方の主面に複数の個別電極26を形成し、複数の変位素子27が設けられてなるアクチュエータが、流路部材23の開口部であるインク流路23aの直上に個別電極26を配置するように、アクチュエータと流路部材23とを接着する。
内部電極25と個別電極26との間に電圧を印加して変位素子27を振動させることによりインク流路23a内のインクを加圧し、流路部材23の底面に開口させたインク吐出孔28よりインク滴を吐出するような構造になっている。なお、図4(a)において、10はビア導体である。
また、図4(b)に示すように、圧電セラミック層24上に個別電極26を等ピッチで多数並設し、変位素子27を多数設けた印刷ヘッドを構成する。そして、各変位素子27を独立して制御することにより、インクジェットプリンタの高速化及び高精度化に寄与することが可能である。(特許文献1参照)
上記インクジェットプリンタに用いられる圧電アクチュエータ21の圧電セラミックス層24としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)が用いられる。特許文献2には、PZT中のPbの一部をBa、Sr又はCaで置換し、その組成を制御することによって、Agを含む内部電極と同時焼成しても、高い圧電定数を持ち、緻密な圧電セラミックスが得られることが開示されている。
このような圧電アクチュエータにおいては、圧電セラミックス層と銀を含む内部電極とを同時焼成する場合、焼結段階において、圧電セラミックス層からは鉛が蒸発し、内部電極から圧電セラミックス層へは銀の拡散が起こる事が一般的に知られている。そして、非特許文献1には、銀をドーピングした圧電セラミックスはその量が多いと銀−鉛の低融点化合物が結晶粒界に析出し、絶縁抵抗が低下するという報告がなされている。
すなわち、非特許文献1に記載のように、銀をドーピングした圧電セラミックスを有する圧電アクチュエータでは、電圧を繰り返し印加していくと絶縁抵抗が徐々に低下するため、電流が増大し、発熱する。これによって、更に絶縁劣化が加速され、絶縁破壊が起こる。その結果、圧電アクチュエータの寿命が短く、実用的でないという問題があった。
特開平10−151739号公報 特開2004−137106号公報
JOURNAL OF MATERIAL SCIENCE 35(2000)5433-5436
本発明の課題は、銀を含む内部電極と鉛を含む圧電セラミックス層とで構成される圧電アクチュエータにおいて、圧電セラミックスの絶縁抵抗の劣化を抑制した圧電アクチュエータ及び印刷ヘッドを提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、鉛を含む圧電セラミック層に特定量の硫黄を含ませることにより、焼成時に圧電セラミックス粒子から析出する鉛と硫黄とが粒界三重点に化合物として析出し、これによって圧電セラミックス粒子二面間に銀―鉛の化合物の析出が抑制され、圧電セラミックス層の絶縁抵抗劣化を抑制することができるという新たな事実を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の圧電アクチュエータは、以下の構成からなる。
(1)鉛を含む圧電セラミック層を一対の電極で挟持するとともに、該一対の電極のうち少なくとも一方の電極が銀を含む圧電アクチュエータにおいて、前記圧電セラミック層が、鉛と硫黄とを含み、かつ平均径が0.05〜2.5μmの異相を含有していることを特徴とする圧電アクチュエータ。
(2)前記圧電セラミック層にバリウム又はストロンチウムを含むことを特徴とする(1)に記載の圧電アクチュエータ。
(3)EPMA波長分散型分析法によって400μm2の領域内で観察される前記異相の数が、1〜5個であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の圧電アクチュエータ。
本発明の印刷ヘッドは、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の圧電アクチュエータが、インク吐出孔を有する複数のインク流路が配列された流路部材上に取り付けられていることを特徴とする。
本発明の上記(1)の構成によれば、鉛を含む圧電セラミック層と銀を含む内部電極とからなる圧電アクチュエータにおいて、前記圧電セラミックス層が鉛と硫黄とを含む異相を含有することにより、絶縁抵抗が劣化するのを抑制でき、製品寿命を長くすることができるという効果がある。また、異相の平均径を0.05〜2.5μmとすることによって、圧電セラミックス粒子の二面間に存在し得る鉛含有の低融点化合物を異相部に集中させる効果をもちつつ、異相のサイズ、分布からくる圧電セラミックス層の圧電特性のバラツキを抑制することができる。
特に、上記(2)の構成によれば、前記異相にバリウム又はストロンチウムを含ませることによって、圧電セラミックス粒子間に析出する鉛を含む低融点化合物を、より選択的に三重点の異相部に集中させることが出来る。これによって、圧電セラミックス粒子二面間に銀―鉛の析出物の生成を防止でき、長期間電圧を印加し続けたとしても、絶縁抵抗を長期間に渡って維持することができる。
上記(3)の構成によれば、異相の数を400μm2の領域内に1〜5個にしておくことによって、圧電セラミックス粒子の二面間に存在し得る鉛含有の低融点化合物を、より異相部に集中させる効果をもちつつ、異相のサイズ、分布からくる圧電セラミックス層の圧電特性のバラツキを、さらに抑制することができる。
本発明の印刷ヘッドによれば、上記圧電アクチュエータを設けたことにより、製品寿命が長くなるという効果がある。
本発明の圧電アクチュエータの一実施形態を示すものであって、(a)は概略破断斜視図、(b)は概略断面図である。 本発明の印刷ヘッドの構造を示すものであって、(a)は概略破断斜視図、(b)は概略断面図である。 本発明の圧電アクチュエータの他の実施形態を示すものであって、(a)は概略破断斜視図、(b)は概略断面図である。 従来の印刷ヘッドの構造を示すものであって、(a)は概略破断斜視図、(b)は概略断面図である。
本発明の圧電アクチュエータは、例えば図1に示したように、基板2の表面に、圧電セラミック層4がAg−Pdからなる内部電極5(内部共通電極)とAuよりなる個別電極6とで挟持されるように設けられた変位素子7が形成されている。
変位素子7を構成する圧電セラミック層4は、少なくともPb、Zr及びTiを含むペロブスカイト型結晶を主成分とすることが重要である。例えば、Aサイト構成元素としてPbを含有し、且つ、Bサイト構成元素としてZr及びTiを含有する結晶であり、このような組成にすることで、高い圧電定数を有する圧電セラミック層4が得られる。
上記ペロブスカイト型結晶として、具体的にはPbZrTiO3を例示できる。また、他の酸化物を混合しても良く、さらに、副成分として、特性に影響がない範囲であれば、Aサイト及び/又はBサイトに他元素を置換しても良い。例えば、副成分としてZn、Sb、Ni及びTeを添加し、Pb(Zn1/3Sb2/3)O3及びPb(Ni1/2Te1/2)O3の固溶体であっても良い。
また、上記ペロブスカイト型結晶におけるAサイト構成元素として、さらにアルカリ土類元素を含有することが望ましい。アルカリ土類元素としてはBa、Sr、Caなどが有り、特にBa、Srが高い変位を得られる点で好ましい。これにより、比誘電率が向上する結果、さらに高い圧電定数を示すことが可能となる。
具体的には、下記式で表される化合物を例示できる。
Figure 2012009879
この他にもマグネシウムニオブ酸鉛(PMN系)、ニッケルニオブ酸鉛(PNN系)等のPb、Zr及びTiを含むペロブスカイト型結晶を用いることができる。
本発明は、圧電セラミックスからなる圧電セラミック層4とAg−Pd等からなる内部電極5とで積層体を構成し、圧電セラミック層4とこれを挟持する一対の電極5,6からなる変位素子7が設けられた圧電アクチュエータ1において、圧電セラミックス層4に平均径が0.3〜2μmの異相を点在させる。
異相の平均径が2μmを越えると、部分的な圧電特性のバラツキとなってしまい、逆に0.3μm未満になると粒界のPbを取り込むには不十分であり、結果的にPbが粒界に残存してしまう。このことから、異相の平均径が0.5〜1μmの範囲であるのがより好ましい。
これにより圧電セラミックス層4とAg−Pdからなる内部電極5を同時焼成した場合、焼結段階で圧電セラミックス粒子間に析出する鉛を含む低融点化合物を、選択的に三重点の異相部に集中させることが出来る。これによって、上記低融点化合物は圧電セラミックス粒子二面間に残存させないようにすることができ、電極で挟持された圧電セラミックス層4間で連続的な絶縁抵抗の劣化しやすい部分を無くすことができることから、長期間電圧を印加し続けたとしても、絶縁抵抗は長期間にわたって劣化することはない。
また、この異相には少なくとも硫黄が含まれる。これは、硫黄は鉛と化合し、液層を作りやすいことに加え、焼結温度900〜1000℃においても安定なことから、圧電セラミックス粒界に残存しやすく好適に働くからである。
更に、前記異相の数は、EPMA波長分散型を用いて、20μm×20μmのエリアを観察したときに、少なくとも1個であるのが好ましい。これにより、より好適に粒界へのPbの析出を抑制し、絶縁抵抗の低下を抑制することが出来るのである。
上述の異相サイズと同様に、前記エリア内に異相が無いと、絶縁抵抗の低下抑制の効果が無く、逆に前記エリア内に異相が3ヶ所以上あると部分的な圧電特性のバラツキとなってしまう。異相の数を前記範囲内にすることによって、絶縁抵抗の低下抑制に効果的に働き、また圧電特性のバラツキも抑制される。従って、このような圧電アクチュエータをインクジェットプリンタヘッドとして利用した場合、安定したインク吐出性能を示し、長期信頼性に優れたインクジェットプリンタヘッドを提供できる。
次に、本発明のアクチュエータ1の製造方法を、具体的にPbZrTiO3系ペロブスカイト型結晶をインクジェットプリンタの印刷ヘッドに応用した場合を例として説明する。
先ず、原料粉末として、Pb23、ZrO2、TiO2、BaCO3、ZnO、SrCO3、Sb23、NiO、TeO2を準備する。これらを、ペロブスカイト型結晶の化学量論組成に相当する組成に調整し、混合する。このとき、BaCO3には不純物としてBaSO4が含まれるものを用い、その量を原料粉末の総量に対して0.02〜0.1質量%含むものを用いる。0.02質量%以下であると異相が形成されないことから絶縁抵抗劣化の抑制効果が無く、逆に0.1質量%以上含有していると異相サイズが大きくなったり、若しく異相の数が増えることから部分的な圧電特性のバラツキとなってしまう。
なお、硫酸塩としてBaSO4以外の他の化合物、例えばK2SO4、Na2SO4、SrSO4、CaSO4、MgSO4などを用いてもよい。硫酸塩は原料粉末に不純物として含まれるものの他、原料粉末に添加してもよい。
ここで、積層体を焼成する場合、ペロブスカイト型結晶の化学量論組成に相当するPb量よりも多く、特にモル比A/Bが1.01〜1.05になるように調整することが、特性バラツキを低減してより優れた圧電特性を発現させる点で好ましい。
モル比A/Bとは、Aサイトにおける全成分のモル数の和をBサイトの全成分のモル数の和で除したものである。A/B比は化学量論のペロブスカイト型の酸化物では1であるのに対して、A/B比が1よりも多い場合には、AサイトがBサイトよりもモル比が多い状態となっており、また、A/B比が1よりも小さい場合には、AサイトよりもBサイトのモル比が多いことを意味する。
得られた混合粉末を用いて、ロールコーター法、スリットコーターなどの一般的なテープ成形法により、圧電セラミック層と有機組成物からなるテープの成形を行い、グリーンシートを作製する。このグリーンシートには、Pbの含有量が、上記ペロブスカイト型結晶の化学量論組成に相当するPb量よりも多いため、焼成後の磁器の組成バラツキを大幅に低減でき、本発明のアクチュエータ1を得るために重要である。
グリーンシートの一部には、その表面に内部電極5及び個別電極6を印刷法等により形成する。また、所望により、グリーンシートの一部にビアホールを形成し、その内部にビア導体10を挿入してもよい。
次いで、所望のグリーンシートを積層して積層体を作製し、さらに該グリーンシートと実質的に同一組成の圧電セラミックスに有機組成物を加えた拘束シートを、上記積層体の両面若しくは片面に配置し、加圧密着を行う。
加圧密着後の積層体を、焼成炉の内部に配置し、高濃度酸素雰囲気下で焼成温度が900℃以上、特に940〜1000℃で焼成して圧電セラミックス1を得ることができる。
加圧密着後のグリーンシートの生密度は、4.2g/cm2以上、特に4.5g/cm2以上であることが、内部からのPb蒸発を低減するため、Pbの組成バラツキを更に容易に抑制することができることから好ましい。
また、焼成時の酸素雰囲気における酸素濃度は98%以上、特に99%以上であることが好ましい。これによって、鉛酸化物の分解を抑制でき、よりPbの蒸発量を低減し、組成のバラツキを抑制する効果があり、アクチュエータとして変位バラツキをより小さくすることが可能となる。
ここで、異相のサイズ及び分布の確認方法としては、積層断面、或いは積層平面方向に1μmダイヤモンド砥粒にて鏡面加工した後、カーボン蒸着を形成し、EPMA波長分散型の分析を行った。倍率5000倍にて分析エリアを20×20μmとし、10ヶ所の硫黄マッピングを行い、存在数を算出した。また、異相部分のSEM、TEM観察により異相サイズを測定した。
本発明の印刷ヘッドは、流路部材と、該流路部材の上に設けられた上記のアクチュエータとを具備し、前記アクチュエータを構成する前記変位素子の変位によって前記流路部材に設けられたインク流路に充填されたインクを吐出させるものである。
本発明の印刷ヘッドの一例を図2(a)を用いて説明する。複数の溝であるインク流路13aが隔壁13bによって仕切られた構造を有する流路部材13が、本発明のアクチュエータ1に接着されている。即ち、流路部材13の表面に、圧電アクチュエータ1の基板2が接着剤によって接着されている。圧電アクチュエータ1には、前記したように複数の変位素子7が設けられている。そして、各変位素子7が流路部材13の開口部であるインク流路13a上に位置するように圧電アクチュエータ1が流路部材13上に積層されている。
変位素子7は、圧電セラミック層4の一方の主面に内部電極5(共通電極)を、他方の主面に個別電極6を形成し、圧電セラミック層4を一対の電極5、6によって挟持した構造となっている。
また、変位素子7の内部電極5及び個別電極6は、外部の駆動回路に電気的に接続されており、駆動回路より内部電極15と個別電極6との間に電圧を印加すると、図2(b)に示したように、電圧が印加されて変位した変位素子7に対応するインク流路13a内のインクを加圧し、流路部材13の一端面に開口させたインク吐出孔18よりインク滴を吐出することができる。
なお、本発明の印刷ヘッドは、図2(b)に示したように、圧電アクチュエータ1に複数の変位素子7,7…が配列されており、個々の変位素子7が独立に制御され、個々に変位が行なわれる。このような構成を採用することにより、高速で高精度なインク吐出を安定して行うことができ、鮮明な画像を高速で実現するプリンタに好適な印刷ヘッドを実現することができる。
また、本発明の圧電アクチュエータは、図3(a)および(b)に示すように、複数の圧電セラミック層4,41と内部電極5,61、51とが積層された基板2′(圧電積層体)の表面に個別電極6が形成されたものであってもよい。このような圧電アクチュエータ1′も、前記した圧電アクチュエータ1と同様にしてインクヘッドに好適に適用される。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
原料粉末として高純度のPb23、ZrO2、TiO2、BaCO3、ZnO、SrCO3、Sb23、NiO、TeO2の各原料粉末を、焼結体が下記式で表される組成となるように、所定量秤量し、さらに、この組成に対して表1に示す量比の過剰Pbを添加した。
Figure 2012009879
(式中、x=0.04、y=0.02、a=0.075、b=0.005、c=0.4.2である。)
ここで、BaCO3原料粉末には、BaSO4を0.01質量%〜0.15質量%含むものを準備し、比較評価した。
上記の調製された粉体をボールミルにより湿式で20時間混合し、しかる後、この混合物を脱水、乾燥した。その後、900℃で3時間仮焼し、得られた仮焼物を再びボールミルで湿式粉砕した。得られた粉砕物に有機バインダー、水、分散剤と可塑剤とを混合し、スラリーを作製し、薄いグリーンシートを成形するために一般的に用いられるロールコーター法によりグリーンシートを作製した。このとき、焼成後の厚さが表に示すサイズになるように予めグリーンシートの収縮率を考慮した
この後、金型を用いて上記グリーンシートを矩形状に打ち抜き、複数枚の矩形状シートを用意した。次に、この矩形状シート面に、内部電極及び個別電極をAg−Pdからなる電極用ペーストを用いてスクリーン印刷にて電極をグリーンシート表面に塗布した。
次いで、電極を塗布したグリーンシート及び電極を塗布していないグリーンシートを、図1に示す構造になるように、即ち基板の表面に複数の変位素子が形成されるように重ね、熱を加えて圧着し、積層アクチュエータ成形体を製作した。
最後に、この成形体を400℃で脱脂した後、1000℃で2時間の焼成を行い、圧電セラミックス積層体である圧電アクチュエータを得た。
ここで、異相のサイズ及び分布を確認する為に、積層断面、積層平面方向に1μmダイヤモンド砥粒にて鏡面加工した後、カーボン蒸着を形成し、EPMA波長分散型(装置名;JXA−8600M)を用いて分析を行った。分析方法は、倍率5000倍にて分析エリアを20×20μmとし、10ヶ所の硫黄マッピングを行い、存在数を求めた。また、異相部分のSEM(装置名;日本電子製JSM−6340F)観察により異相サイズを求めた。さらに、TEM(装置名;JEOL製2010F)分析により圧電セラミックス粒子の2面間の粒界成分を分析した。
次に、上記で得たアクチュエータの圧電特性のバラツキをインピーダンスアナライザー(装置名;HP製インピーダンスアナライザー4194a)にて測定した。ここでは、各素子の共振、反共振周波数、容量値からd31定数を算出し、20素子分のバラツキを平均値で除したものを百分率表示した。
また、温度60℃の環境下で10KHz、50Vで電圧を印加し続け、そのときの絶縁抵抗の経時変化を絶縁抵抗計を用いて確認した。そして10億回の変位振動をさせ続けた時の絶縁抵抗値変化を確認し、変化の有無を判断した。これらの試験結果を表1に示した。
Figure 2012009879
表1によると、EPMA波長分散型の分析において、基準のエリア内に鉛、硫黄を含む異相が確認されない試料Aについては、圧電セラミックス粒子二面間のTEM観察において、鉛のアモルファス層が確認された。また、絶縁抵抗の経時変化においても抵抗値の低下が確認された。
一方、本発明の試料B〜Lについては、圧電セラミックス粒子二面間のTEM観察においても粒界に析出相は確認されず、絶縁抵抗の経時変化も確認されなかった。特に、試料B,D,E,F,G,H,Jにおいては、圧電特性のバラツキも小さく、変位振動の安定したアクチュエータであることが確認できた。
1・・・圧電アクチュエータ
2・・・基板
4・・・圧電セラミック層
5・・・内部電極
6・・・個別電極
7・・・変位素子
13・・・流路部材
13a・・・インク流路
13b・・・隔壁
18・・・吐出孔
19・・・ノズル板

Claims (4)

  1. 鉛を含む圧電セラミック層を一対の電極で挟持するとともに、該一対の電極のうち少なくとも一方の電極が銀を含む圧電アクチュエータにおいて、
    前記圧電セラミック層が、鉛と硫黄とを含み、かつ平均径が0.05〜2.5μmの異相を含有していることを特徴とする圧電アクチュエータ。
  2. 前記圧電セラミック層にバリウム又はストロンチウムを含むことを特徴とする請求項1に記載の圧電アクチュエータ。
  3. EPMA波長分散型分析法によって400μm2の領域内で観察される前記異相の数が、1〜5個であることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧電アクチュエータ。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の圧電アクチュエータが、インク吐出孔を有する複数のインク流路が配列された流路部材上に取り付けられていることを特徴とする印刷ヘッド。
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