JP2012009298A - 薄膜の作製方法及び作製装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】スプレー製膜法を利用した薄膜の作製方法の製膜レートを改善する。
【解決手段】(1)溶質を溶媒中に溶解及び/又は分散してなる原料液を噴霧して液滴を形成すること、(2)液滴中の溶媒を揮発させ濃縮すること、及び(3)濃縮された液滴を基板上もしくは基板上に設けられた薄膜の上に堆積させることを順次含む薄膜の作製方法であって、(2)工程が、少なくとも、液滴を温度T℃で加熱して液滴中の溶媒の一部を揮発させること、温度T℃(但しT<T)まで冷却して揮発させた溶媒の少なくとも一部を液化して雰囲気中の揮発溶媒の少なくとも一部を系外に除去すること、及び液滴を温度T℃(但しT<T)で再加熱して液滴中の溶媒の少なくとも一部を揮発させることを順次含むことを特徴とする薄膜の作製方法である。
【選択図】なし

Description

本発明は、有機電界発光素子、太陽電池等の種々のデバイス、及び反射板、偏光板等の種々の光学部材で形成される有機薄膜等の薄膜の作製方法、及びそれに利用される薄膜の作製装置に関する。
近年のネットワークの拡充や生活スタイルの多様化に伴い、フレキシブル性や大面積といった従来のSi半導体では実現困難な付加価値が電子デバイスに求められており、フィルム上に製膜可能な有機エレクトロニクスが注目されている。
有機電界発光素子、太陽電池等の種々の有機デバイスにおいて、性能向上には機能の異なる有機薄膜を積層製膜することが重要になる。薄膜の作製方法として、一般的に真空蒸着法等のドライプロセス、及びスピンコート法等のウェットプロセスが知られている。
前記ドライプロセスは、厚み一定の均一な有機薄膜を積層して製膜することが可能だが、製膜する材料に高エネルギーを加えるため熱的に不安定な有機材料には適用できず、かつ基材もガラスなどの耐熱性のある材料に限定されてしまうため、材料および基材に制約がある。また、多くか真空プロセスであることから生産性が悪いという問題があった。
一方、ウェットプロセスは、フィルムのようなフレキシブル性のある基材上に簡易に製膜できるため、生産性や大面積化などがドライプロセスと比べ格段に向上する。例えば、有機溶媒を塗布液に使用する場合には、Stephen F.Kistler、Petert M.Schwaizer著"LIQUID FILM COATING"(CHAPMAN&HALL社刊 1997) 401頁〜426頁に記載のエクストルージョンコーティング等がよく用いら、積層膜の同時塗布も可能である。しかし、上記コーティングを用いる場合には一定の粘性が必要となるため、有機発光層の材料など、溶媒に溶けにくく、かつバインダー、増粘剤等の添加は性能低下につながるため、非常に固形分濃度の低い希薄溶液しか調製できない場合が多く、非常に低粘度な液を厚く塗布する必要が発生し、結果として均一な塗膜が得られない。また、塗布が可能な場合でも性能向上に必須である積層製膜という点に関し、使用する溶媒によって上層製膜時に下層を溶解し積層製膜が困難になる可能性があり、これを防ぐ為には下層を溶解しない溶媒を使用する必要があるが、溶媒が限定されてしまう結果、その溶媒に溶解する材料しか積層製膜できないことになるため、積層製膜が可能な材料が限定されてしまうといった問題がある。
また、スプレー法を使った有機電界発光素子の作製法(例えば特許文献1)も提案されている。しかし、スプレー法を利用しても、下層が有機膜の場合には、積層膜を作製する際に、上層の溶媒が下層を溶解するという問題を回避するのは困難である。
また、原料液をエアロゾル化し、それを基板上に堆積することで有機薄膜を形成する方法も提案されている(例えば特許文献2)。この方法によれば、ウェットプロセスにもかかわらず、上層の溶媒によって下層を溶解しないで積層製膜が可能なため、ドライプロセス及びウェットプロセスの課題を解決できる可能性がある。
特開2008−243421号公報 特開2004−160388号公報
一方で、上記方法を実際の生産に用いた場合の課題は、乾燥させた液滴の堆積速度、即ち製膜速度の向上である。製膜速度を向上させるには、噴霧した液滴を迅速に乾燥させ、基板上に到達する粒子の供給速度を上げることが重要である。上記特許文献2では、液滴を噴霧するチャンバーを加熱することにより、液滴の乾燥を促進する方法が提案されている。しかし、この方法では、加熱により液滴の乾燥がすすみ、それにつれて雰囲気中の溶媒濃度が上昇すると、乾燥速度が低下してしまうので、液滴の乾燥速度を十分に速めて、生産性を改善することは困難であった。
本発明は、スプレー製膜法の製膜速度の向上を課題とする。より具体的には、本発明は、製膜速度が改善された、スプレー製膜法を利用した薄膜の作製方法、及びそれに用いられる薄膜の作製装置を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明者が種々検討した結果、液滴を加熱して液滴中の溶媒の蒸発を促進した後、一旦冷却して雰囲気中の揮発溶媒を凝縮して液化し、雰囲気中の揮発溶媒の絶対量を低下させ、その後、さらに再加熱を行うことで、液滴中の溶媒の蒸発を再度促進することができること、その結果、乾燥効率を顕著に高めることができ、液滴の供給速度を上げることができるため、製膜速度を向上させることができるとの知見を得た。この知見に基づいて、さらに検討を重ね、本発明を完成するに至った。
即ち、上記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] 下記(1)〜(3)
(1)溶質を溶媒中に溶解及び/又は分散してなる原料液を噴霧して液滴を形成すること、
(2)液滴中の溶媒を揮発させ濃縮すること、
(3)濃縮された液滴を基板上もしくは基板上に設けられた薄膜の上に堆積させること、
を順次含む薄膜の作製方法であって、
(2)工程が、少なくとも、液滴を温度T℃で加熱して液滴中の溶媒の一部を揮発させること、温度T℃(但しT<T)まで冷却して揮発させた溶媒の少なくとも一部を液化して雰囲気中の揮発溶媒の少なくとも一部を系外に除去すること、及び液滴を温度T℃(但しT<T)で再加熱して液滴中の溶媒の少なくとも一部を揮発させることを順次含むことを特徴とする薄膜の作製方法。
[2] (2)工程で、さらに、冷却及び再加熱を少なくとも1回以上繰り返すことを特徴とする[1]の方法。
[3] T℃とT℃との差、及びT℃とT℃との差が、それぞれ10℃以上であることを特徴とする[1]又は[2]の方法。
[4] 溶媒中の水分濃度が1質量%以下であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかの薄膜の作製方法。
[5] 溶質が、有機半導体、有機発光材料、有機電子輸送材料、及び有機正孔輸送材料から選択される少なくとも1種であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかの方法。
[6] (1)〜(3)工程により有機半導体層、発光層、電子輸送層、電子注入層、正孔輸送層、及び正孔注入層のいずれかを形成することを特徴とする[1]〜[5]のいずれかの方法。
[7] [1]〜[6]のいずれかの方法に用いられる薄膜の作製装置であって、
溶質を溶媒中に溶解及び/又は分散してなる原料液を液滴化する、1以上のノズルを備えた液滴形成手段、
前記液滴形成手段に前記原料液を供給する原料液供給手段、
前記液滴形成手段にガスを供給するガス供給手段、
前記液滴形成手段に接続して設けられた液滴を濃縮する液滴濃縮手段、及び
基板を固定する基板ホルダを備え、
液滴濃縮手段が、液滴を、加熱・冷却・再加熱する3つのコンパートメントを少なくとも含むことを特徴とする薄膜の作製装置。
[8] 液滴を冷却するコンパートメントが、液化した溶媒をコンパートメント外に排出する排出機構を備えることを特徴とする[7]の作製装置。
[9] 液滴を冷却するコンパートメントが、液滴を加熱するコンパートメントより径の小さいコンパートメントであることを特徴とする[8]の装置。
[10] 液滴を冷却するコンパートメントが、配管形状を有することを特徴とする[8]又は[9]の装置。
本発明によれば、スプレー製膜法の製膜速度を向上することができる。より具体的には、本発明によれば、製膜速度が改善された、スプレー製膜法を利用した薄膜の作製方法、及びそれに用いられる薄膜の作製装置を提供することができる。
本発明の薄膜の作製方法を実施可能なスプレー製膜装置の一例の模式図である。 本発明の薄膜の作製方法を実施可能なスプレー製膜装置の一例の模式図である。 比較例で使用したスプレー製膜装置の模式図である。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、
下記(1)〜(3)
(1)溶質を溶媒中に溶解及び/又は分散してなる原料液を噴霧して液滴を形成すること、
(2)液滴中の溶媒を揮発させ濃縮すること、
(3)濃縮された液滴を基板上もしくは基板上に設けられた薄膜の上に堆積させること、
を順次含む薄膜の作製方法であって、
(2)工程が、少なくとも、液滴を温度T℃で加熱して液滴中の溶媒の一部を揮発させること、温度T℃(但しT<T)まで冷却して揮発させた溶媒の少なくとも一部を液化して系外に除去すること、及び液滴を温度T℃(但しT<T)で再加熱して液滴中の溶媒の少なくとも一部を揮発させることを順次含むことを特徴とする薄膜の作製方法に関する。
本発明の方法は、(2)工程、即ち噴霧された液滴の濃縮工程において、液滴を、加熱・冷却・再加熱することを含むことを一つの特徴とする。スプレー法の製膜では、溶質を溶媒中に溶解及び/又は分散してなる原料液を噴霧して形成した液滴を乾燥して、溶剤をほぼ蒸発させた状態で基板上に到達させることが、下層を溶媒により溶解する等の問題を生じさせることなく薄膜を形成するという観点で、重要である。液滴を加熱することで、液滴中の溶媒を一部揮発させると、雰囲気中の揮発溶剤の絶対量が高くなる。やがて、当該温度での溶媒の飽和蒸気圧に達してしまうと、その温度では、液滴の乾燥は進行しなくなる。さらに温度を上げて、飽和蒸気圧を高め、乾燥を促進することも考えられるが、有機溶媒の防爆の観点では加熱温度には上限がある。また、液滴の基板到達までの距離を長くすることにより、飽和蒸気圧に達するのを遅延することも考えられるが、装置の大きさにも限界がある。本発明では、加熱により液滴中の溶媒の一部を揮発した後、一旦、冷却することで、雰囲気中の揮発溶媒を一部液化し、それを系外に除去する。これにより、雰囲気中の揮発溶剤の絶対量を低下させることができ、再度、加熱による液滴の乾燥を促進することができるので、冷却工程を経ずに加熱を続ける従来の方法と比較して、乾燥効率を顕著に改善することができる。その結果、液滴の供給速度を上げることができるため、製膜速度を顕著に向上させることができる。
以下、本発明の製造方法の各工程について、詳細に説明する。
(1)液滴形成工程
まず、有機材料を溶媒中に溶解及び/又は分散してなる原料液を噴霧して液滴を形成する。前記原料液の調製に用いられる材料及び溶媒については特に制限はない。所望の物性の有機薄膜を形成するために、種々の材料から選択される。本発明の方法では、材料は過度に高温に曝されないので、耐熱性等について制限はない。高分子材料であっても低分子材料であってもよい。また、金属錯体等であってもよい。よって、材料との親和性等の観点で適するものを、溶媒から選択することができる。噴霧に適する溶媒の好ましい例としては、テトラヒドロフラン、メチエルエチルケトン、トルエン、メタノール、エタノール、ヘキサン、ベンゼン、アセトン、ジエチルエーテル、シクロヘキサノン、クロロベンゼン、クロロホルム等が挙げられる。
使用する有機溶媒中の水分濃度が低いほうが、本発明の効果がより顕著になるので好ましい。具体的には、溶媒中の水分濃度は1質量%以下であるのが好ましく、0.5質量%以下であるのがより好ましく、0.1質量%以下であるのがさらに好ましい。有機溶媒中の水分濃度は、蒸留、吸着、膜透過等の一般的な処理で低下させることができる。
液滴形成工程では、原料液を噴霧し液滴を形成する。液滴化する方法について特に制限はなく、種々の方法を利用することができる。例えば、原料液を、所定のガス圧力及び流量のキャリアガスと混合することで、原料液をキャリアガス中に浮遊した液滴とすることができる。キャリアガスとしては、特に制限はない。空気を利用してもよい。また原料を変質させないためには、不活性ガスが好ましく、窒素、アルゴン、ヘリウム等を利用するのが好ましい。キャリアガスのガス圧及び流量は、レギュレータを利用して制御することができる。また、液滴化は、超音波振動などを利用して実施することもできる。
液滴の粒径については特に制限はないが、一般的には、0.1〜100μm程度であるのが好ましく、1〜10μm程度であるのがより好ましい。また、発生させる液滴の液滴径分布は狭いほど好ましいが、ある程度の分布は避けられない。一般的には、1〜100μmの液滴径分布を有する。噴霧する原料液の濃度に関しても特に制限はないが、有機電子デバイスの有機材料は難溶性のものが多く、一般的には、0.00001〜1質量%が望ましく、0.0001〜0.01質量%がより好ましい。
噴霧する原料液の溶質として使用される材料は、例えば有機EL等の有機電子デバイスの各有機薄膜層の作製に利用される有機材料等から選択することができる。一例は、有機ELの発光層用の有機材料であり、発光材料およびホスト材料用の有機化合物である。以下、有機EL素子の各有機薄膜用の材料であって、本発明の製造方法に、原料液の溶質として利用可能な種々の化合物についての詳細は、後述する。また、2つ以上の溶質を1つの溶媒に溶解して原料液としてもよい。
(2)濃縮工程
次に、前記液滴形成工程で形成された液滴を濃縮する。液滴は、チャンバー等の仕切られた空間に発生させ、所定の形状のチャンバー内部で濃縮された後、チャンバーの開口部から基板方向に噴出させるのが好ましい。
本発明では、チャンバー開口部から液滴を基板方向に噴出する前に、液滴を、加熱・冷却・再加熱して濃縮する。最初の加熱により、液滴中の溶媒が一部雰囲気中に揮発し、固形分濃度の高い小粒径のミストとなる。加熱温度T℃は、原料液の調製に用いた溶媒の沸点以下の温度とするのが好ましい。
本発明では、液滴を加熱温度T℃で加熱した後、続けてT℃(但し、T<T)まで冷却する。温度T℃での加熱では、溶媒蒸発により雰囲気中の揮発溶媒の絶対量が上昇し、乾燥速度が低下する。T℃まで冷却することにより雰囲気中の揮発溶媒の少なくとも一部が凝縮して、液化し、雰囲気中の揮発溶媒の絶対量を低下させることができる。凝縮して液化した溶媒は、系外に除去する。
次に、温度T℃(但し、T<T)で、液滴を再加熱する。上記冷却工程により、雰囲気中の揮発溶媒の絶対量は低下しているので、再加熱することで、液滴中の溶媒の乾燥を顕著に促進することができる。
加熱時の温度T℃、冷却時の温度のT℃、及び再加熱時の温度T℃は、各工程における平均温度であり、各工程において、温度を変動させてももちろんよい。本発明の効果を安定的に得るためには、T℃とT℃との差、及びT℃とT℃との差が、それぞれ10℃以上であるのが好ましく、30℃以上であるのがより好ましく50℃以上であるのがさらに好ましい。TとTとの関係については特に制限はなく、等しい温度であっても、T℃が高くても、T℃が高くてもよい。
濃縮工程では、再加熱後に、さらに冷却・再加熱を1以上繰り替えしてもよい。冷却・再加熱を1以上繰り返すことにより、さらに液滴の乾燥を促進することができる。再冷却時の温度T’及び2度目以降の再加熱温度T’℃はそれぞれ、T℃及びT℃と等しくてもよいし、より低くてもより高くてもよい。
(3)堆積工程
次に、液滴を基板上に堆積させて薄膜を形成する。液滴は基板表面等に堆積し、薄膜となる。上記(2)工程により液滴中の溶媒量は軽減されているので、基板又は基板上の薄膜に液滴が堆積しても、基板又はその上に形成された薄膜の溶解を抑制しつつ、密度の高い薄膜を形成することができる。必要であればさらに乾燥してもよい。乾燥は、基板を支持する部材等から基板に対して熱を供給し、基板面をあらかじめ高温にしておくことによって実施することができる。また、温風を供給することによって乾燥してもよい。乾燥により、形成された膜内に残留する溶媒が除去されるので、好ましい。
本発明の方法により形成される薄膜の厚みについては特に制限はないが、本発明の方法は、特に薄膜の形成に有利であり、特に、0.01〜10μm程度の薄膜の形成に適し、より好ましくは、0.01〜1μm、さらに好ましくは0.01〜0.1μmである。
本発明では、液滴発生方向と同一方向に、即ち基板方向にガスを流してもよい。ガスとして不活性ガスが好ましく、窒素、アルゴン、ヘリウムなどを利用するのが好ましい。ガスを流すことにより、製膜レートを改善することができる
また、本発明では、基板には部分的にまたは全体に電位をかけてもよい。基板に電位をかけることで、液滴との間に電位差をもたせると、基板の液滴に対する吸引力が高まり、液滴が他の部分に付着するのを軽減でき、製膜レートを改善できる。また、基板に、電位を与えることで有機薄膜密度を調整することもできる。液滴が帯電している態様では、基板には、液滴と逆の電位を与えるのが好ましく、電位差を生じるように、具体的には、液滴が電位している電荷とは逆の電位を与えるのが好ましい。
なお、上記した通り、基板に、部分的に電位をかけて、所望のパターン状・画像状の有機薄膜を形成することもできる。
液滴は基板表面に堆積し、有機薄膜となる。必要であればさらに乾燥してもよい。乾燥は、基板を支持する部材等から基板に対して熱を供給し、基板面をあらかじめ高温にしておくことによって実施することができる。また、温風を供給することによって乾燥してもよい。乾燥により、形成された膜内に残留する溶媒が除去されるので、好ましい。
液滴を堆積させる基板の材質についても特に制限はない。例えば、金属、金属酸化物、ガラス、シリコン等の無機材料からなる基板であっても、高分子材料等の有機材料からなる基板であってもよい。また、いずれも、無機材料及び/又は有機材料を含む層を有していてもよく、当該層上に液滴を堆積させて有機薄膜を形成してもよい。例えば、ITO薄膜、PTPDES−2、PEDOT−PSS、TPD,NPD等の表面上に、有機薄膜を形成してもよい。
図1に本発明を実施可能な薄膜の作製装置の一例の断面模式図を示す。
図1の製膜装置は、開口部aを有するチャンバー12を備え、並びに基板14を支持するホルダ16を備える。チャンバー12は、チャンバーの開口部aから液滴を噴霧するための機構を備えていて、具体的には、二流体ノズル18を備え、それぞれ、シリンジポンプ20から供給される原料液と、ガスボンベ22からレギュレータ24によって流量を制御されて供給されるガス(例えば、Nガス)とが、二流体ノズル18の内部でそれぞれ混合され、液滴として、チャンバー12内部に噴霧されるように構成されている。
チャンバー12は、3つのコンパートメント12a、12b及び12cからなり、この順で液滴が通過し、基板14に到達するように構成されている。コンパートメント12a、12b及び12cの内部の温度は制御可能になっている。コンパートメント12a及び12cは、液滴中の溶媒の少なくとも一部が揮発する温度T℃及びT℃でそれぞれ加熱可能に温度制御され、並びにコンパートメント12bは、雰囲気中の揮発溶媒の少なくとも一部が凝縮して液化する温度T℃まで冷却可能に温度制御される。温度制御は、例えば、各コンパートメント外側周囲に設けられたヒータや、その外側周囲の流路を熱水・熱風、又は冷却水・冷風を通すことにより、実施可能である。
チャンバー12のコンパートメント12a、12b及び12cを通過することで、液滴は濃縮され、濃縮液滴が、開口部aから噴出し、ホルダ16によって支持された基板14の被堆積面に堆積し、膜が形成される。
噴霧された液滴は、コンパートメント12a、12b及び12cを通過することにより、各コンパートメント内で加熱、冷却及び再加熱されているので、乾燥が促進され、溶質密度の高い粒子となって基板14上に堆積する。
さらに、基板14を加熱する手段を備えていると、残留溶媒がさらに除去され、形成される薄膜の密度がさらに向上するので好ましい。例えば、基板を支持する基板ホルダ16から基板に対して熱を供給し、基板面をあらかじめ高温にしておくことによって実施することができる。また、温風を供給することによって乾燥してもよい。
図2に本発明を実施可能な薄膜の作製装置の他の例の断面模式図を示す。図1中の各部材と同一の部材には同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。
図2の製膜装置は、チャンバー12’が、コンパートメント12a、12b、12c、12b’及び12c’から構成される。コンパートメント12a、12b、12c、12b’及び12c’の内部の温度は制御可能になっている。コンパートメント12a、12c及び12c’は、液滴中の溶媒の少なくとも一部が揮発する温度T℃、T℃及びT’℃でそれぞれ加熱可能に温度制御され、並びにコンパートメント12b及び12b’は、雰囲気中の揮発溶媒の少なくとも一部が凝縮して液化する温度T及びT’℃までそれぞれ冷却可能に温度制御される。温度制御の手段については、図1の薄膜作製装置と同様の例が挙げられる。図2の薄膜作製装置では、噴霧された液滴は、コンパートメント12a、12b及び12cを通過することにより、加熱、冷却及び再加熱され、乾燥が促進され、さらに、コンパートメント12b’及び12c’を通過することにより、再冷却及び再々加熱されて、さらに乾燥が促進され、溶質密度がより高い粒子となって、基板14上に堆積する。
図1及び図2中のコンパートメント12b及び12b’はそれぞれ、コンパートメント12aと比較して、径の小さい形状であるのが好ましく、配管形状であるのがより好ましい。かかる形状とすることで、効率的に冷却して、雰囲気中の溶媒の液化を促進することができる。また、コンパートメント12b及び12b’は、液化した溶媒を系外に排出する機構を備えているのが好ましい。系外に排出する機構としては、コンパートメント12b(又は12b’)の内部、あるいはコンパートメント12b(又は12b’)と12c(又は12c’)との間に、ドレン用フランジを接続し、コンパートメント壁面につたっている凝縮した溶媒滴を、フランジを通して回収する機構等、一般的なものを利用することができる。
但し、本発明の方法を実施可能な製膜装置の例は、図1及び図2に示す例に限定されるものではない。例えば、各チャンバー内のノズルの数は、2以上であってもよい。また、製膜装置は、基板に電位を与える電圧印加手段、チャンバー内部に噴霧方向に沿って不活性ガス等を送風する送風手段、チャンバー内部のガスを排出する排出口等を有していてもよい。
本発明の作製方法は、蒸着のようなドライプロセスには適さない有機材料(有機分子を配位子として有する錯体も含む)の薄膜を形成するのに有用である。特に、有機半導体、有機発光材料、有機電子輸送材料、及び有機正孔輸送材料等の有機電子デバイス用の材料は、難溶性の有機化合物が多いので、それらの材料の薄膜を形成するのに有用である。また、本発明の方法は、高い表面平滑性が求められる、有機電子デバイスの有機半導体層、発光層、電子輸送層、電子注入層、正孔輸送層、及び正孔注入層の作製において、特に有用である。
例えば、本発明の方法を、有機ELの発光層の形成に利用する態様では、原料の溶質には、発光材料およびホスト材料用の有機化合物が用いられる。以下、有機EL素子の発光層用の材料を例に挙げて、原料液の溶質として利用可能な種々の化合物について説明する。
(i) 発光材料
有機EL用の発光材料としては、蛍光発光材料及び燐光発光材料が知られている。本発明の作製方法では、いずれの発光材料も溶質として用いることができる。
(a) 燐光発光材料
燐光発光材料としては、一般に、遷移金属原子又はランタノイド原子を含む金属錯体を挙げることができる。
遷移金属原子としては、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、及び白金が挙げられ、より好ましくは、レニウム、イリジウム、及び白金であり、更に好ましくはイリジウム、白金である。
ランタノイド原子としては、例えばランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、およびルテシウムが挙げられる。これらのランタノイド原子の中でも、ネオジム、ユーロピウム、及びガドリニウムが好ましい。
錯体の配位子としては、例えば、G.Wilkinson等著,Comprehensive Coordination Chemistry,Pergamon Press社1987年発行、H.Yersin著,「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」Springer−Verlag社1987年発行、山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社1982年発行等に記載の配位子などが挙げられる。
具体的な配位子としては、好ましくは、ハロゲン配位子(好ましくは塩素配位子)、芳香族炭素環配位子(例えば、シクロペンタジエニルアニオン、ベンゼンアニオン、またはナフチルアニオンなど)、含窒素ヘテロ環配位子(例えば、フェニルピリジン、ベンゾキノリン、キノリノール、ビピリジル、またはフェナントロリンなど)、ジケトン配位子(例えば、アセチルアセトンなど)、カルボン酸配位子(例えば、酢酸配位子など)、アルコラト配位子(例えば、フェノラト配位子など)、一酸化炭素配位子、イソニトリル配位子、シアノ配位子であり、より好ましくは、含窒素ヘテロ環配位子である。
上記金属錯体は、化合物中に遷移金属原子を一つ有してもよいし、また、2つ以上有するいわゆる複核錯体であってもよい。
異種の金属原子を同時に含有していてもよい。
これらの中でも、発光材料の具体例としては、例えば、US6303238B1、US6097147、WO00/57676、WO00/70655、WO01/08230、WO01/39234A2、WO01/41512A1、WO02/02714A2、WO02/15645A1、WO02/44189A1、特開2001−247859、特開2002−302671、特開2002−117978、特開2002−225352、特開2002−235076、特開2003−123982、特開2002−170684、EP 1211257、特開2002−226495、特開2002−234894、特開2001−247859、特開2001−298470、特開2002−173674、特開2002−203678、特開2002−203679、特開2004−357791、特開2006−256999等の特許文献に記載の燐光発光化合物などが挙げられる。
(b)蛍光発光材料
蛍光性の発光性ドーパントとしては、一般には、ベンゾオキサゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、スチリルベンゼン、ポリフェニル、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、ナフタルイミド、クマリン、ピラン、ペリノン、オキサジアゾール、アルダジン、ピラリジン、シクロペンタジエン、ビススチリルアントラセン、キナクリドン、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン、シクロペンタジエン、スチリルアミン、芳香族ジメチリディン化合物、縮合多環芳香族化合物(アントラセン、フェナントロリン、ピレン、ペリレン、ルブレン、又はペンタセンなど)、8−キノリノールの金属錯体、ピロメテン錯体や希土類錯体に代表される各種金属錯体、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン、およびこれらの誘導体などを挙げることができる。
(ii) ホスト材料
有機EL素子の発光層のホスト材料としては、正孔輸送性ホスト材料及び電子輸送性ホスト材料が知られている。本発明の作製方法では、いずれのホスト材料も溶質として用いることができる。
(a)電子輸送性ホスト材料
電子輸送性ホスト材料としては、耐久性向上、駆動電圧低下の観点から、電子親和力Eaが2.5eV以上3.5eV以下であることが好ましく、2.6eV以上3.4eV以下であることがより好ましく、2.8eV以上3.3eV以下であることが更に好ましい。
また、耐久性向上、駆動電圧低下の観点から、イオン化ポテンシャルIpが5.7eV以上7.5eV以下であることが好ましく、5.8eV以上7.0eV以下であることがより好ましく、5.9eV以上6.5eV以下であることが更に好ましい。
このような電子輸送性ホストとしては、具体的には、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾ−ル、オキサゾ−ル、オキサジアゾ−ル、フルオレノン、アントラキノジメタン、アントロン、ジフェニルキノン、チオピランジオキシド、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン、ジスチリルピラジン、フッ素置換芳香族化合物、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン、およびそれらの誘導体(他の環と縮合環を形成してもよい)、8−キノリノ−ル誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾ−ルやベンゾチアゾ−ルを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体等を挙げることができる。
電子輸送性ホストとして好ましくは、金属錯体、アゾール誘導体(ベンズイミダゾール誘導体、イミダゾピリジン誘導体等)、アジン誘導体(ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体等)であり、中でも、耐久性の点から金属錯体化合物が好ましい。
金属錯体化合物は金属に配位する少なくとも1つの窒素原子または酸素原子または硫黄原子を有する配位子をもつ金属錯体がより好ましい。
金属錯体中の金属イオンは特に限定されないが、好ましくはベリリウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、ガリウムイオン、亜鉛イオン、インジウムイオン、錫イオン、白金イオン、またはパラジウムイオンであり、より好ましくはベリリウムイオン、アルミニウムイオン、ガリウムイオン、亜鉛イオン、白金イオン、またはパラジウムイオンであり、更に好ましくはアルミニウムイオン、亜鉛イオン、白金イオン、またはパラジウムイオンである。
前記金属錯体中に含まれる配位子としては種々の公知の配位子が有るが、例えば、「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」、Springer−Verlag社、H.Yersin著、1987年発行、「有機金属化学−基礎と応用−」、裳華房社、山本明夫著、1982年発行等に記載の配位子が挙げられる。
前記配位子として、好ましくは含窒素ヘテロ環配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数3〜15であり、単座配位子であっても2座以上の配位子であっても良い。
好ましくは2座以上6座以下の配位子である。
また、2座以上6座以下の配位子と単座の混合配位子も好ましい。
配位子としては、例えばアジン配位子(例えば、ピリジン配位子、ビピリジル配位子、ターピリジン配位子などが挙げられる)、ヒドロキシフェニルアゾール配位子(例えば、ヒドロキシフェニルベンズイミダゾール配位子、ヒドロキシフェニルベンズオキサゾール配位子、ヒドロキシフェニルイミダゾール配位子、ヒドロキシフェニルイミダゾピリジン配位子などが挙げられる。)、アルコキシ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ配位子(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシ、2,4,6−トリメチルフェニルオキシ、4−ビフェニルオキシなどが挙げられる。)、
ヘテロアリールオキシ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、およびキノリルオキシなどが挙げられる。)、アルキルチオ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ配位子(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロアリールチオ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、および2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、シロキシ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数3〜25、特に好ましくは炭素数6〜20であり、例えば、トリフェニルシロキシ基、トリエトキシシロキシ基、およびトリイソプロピルシロキシ基などが挙げられる。)、芳香族炭化水素アニオン配位子(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜25、特に好ましくは炭素数6〜20であり、例えばフェニルアニオン、ナフチルアニオン、およびアントラニルアニオンなどが挙げられる。)、芳香族ヘテロ環アニオン配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数2〜25、特に好ましくは炭素数2〜20であり、例えばピロールアニオン、ピラゾールアニオン、ピラゾールアニオン、トリアゾールアニオン、オキサゾールアニオン、ベンゾオキサゾールアニオン、チアゾールアニオン、ベンゾチアゾールアニオン、チオフェンアニオン、およびベンゾチオフェンアニオンなどが挙げられる。)、インドレニンアニオン配位子などが挙げられ、好ましくは含窒素ヘテロ環配位子、アリールオキシ配位子、ヘテロアリールオキシ基、またはシロキシ配位子であり、更に好ましくは含窒素ヘテロ環配位子、アリールオキシ配位子、シロキシ配位子、芳香族炭化水素アニオン配位子、または芳香族ヘテロ環アニオン配位子である。
金属錯体電子輸送性ホスト材料の例としては、例えば特開2002−235076、特開2004−214179、特開2004−221062、特開2004−221065、特開2004−221068、特開2004−327313等に記載の化合物が挙げられる。
前記電子輸送性ホスト材料としては、具体的には、例えば、以下の材料を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
Figure 2012009298
Figure 2012009298
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電子輸送層ホスト材料としては、E−1〜E−6、E−8、E−9、E−10、E−21、またはE−22が好ましく、E−3、E−4、E−6、E−8、E−9、E−10、E−21、またはE−22がより好ましく、E−3、E−4、E−8、E−9、E−21、またはE−22が更に好ましい。
(b) 正孔輸送性ホスト材料
正孔輸送性ホスト材料としては、耐久性向上、駆動電圧低下の観点から、イオン化ポテンシャルIpが5.1eV以上6.4eV以下であることが好ましく、5.4eV以上6.2eV以下であることがより好ましく、5.6eV以上6.0eV以下であることが更に好ましい。
また、耐久性向上、駆動電圧低下の観点から、電子親和力Eaが1.2eV以上3.1eV以下であることが好ましく、1.4eV以上3.0eV以下であることがより好ましく、1.8eV以上2.8eV以下であることが更に好ましい。
このような正孔輸送性ホスト材料としては、具体的には、例えば、以下の材料を挙げることができる。
ピロール、インドール、カルバゾール、アザインドール、アザカルバゾール、ピラゾール、イミダゾール、ポリアリールアルカン、ピラゾリン、ピラゾロン、フェニレンジアミン、アリールアミン、アミノ置換カルコン、スチリルアントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベン、シラザン、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマチオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、有機シラン、カーボン膜、及びそれらの誘導体等が挙げられる。
中でも、インドール誘導体、カルバゾール誘導体、アザインドール誘導体、アザカルバゾール誘導体、芳香族第三級アミン化合物、チオフェン誘導体が好ましく、特に分子内にインドール骨格、カルバゾール骨格、アザインドール骨格、アザカルバゾール骨格および/または芳香族第三級アミン骨格を複数個有するものが好ましい。
前記正孔輸送性ホスト材料としての具体的化合物としては、例えば下記のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
Figure 2012009298
Figure 2012009298
Figure 2012009298
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本発明の薄膜の作製方法は、有機EL素子等の有機電子デバイスの作製に利用可能である。以下、本発明の方法により作製可能な有機EL素子の一例の構成について、詳細に説明する(以下、本発明の有機EL素子と表現する)。
本発明の有機EL素子は基板上に陰極と陽極を有し、両電極の間に発光層を含む複数の有機化合物層を有する。更に発光層の両側には有機化合物層が隣接して構成される。
発光層に隣接している有機化合物層と電極の間には、更に有機化合物層を有していてもよい。
発光素子の性質上、陽極及び陰極のうち少なくとも一方の電極は、透明であることが好ましい。
通常の場合、陽極が透明である。
本発明における有機化合物層の積層の態様としては、陽極側から、正孔輸送層、発光層、電子輸送層の順に積層されている態様が好ましい。
更に、正孔輸送層と発光層との間、又は、発光層と電子輸送層との間には、電荷ブロック層等を有していてもよい。
本発明の有機電界発光素子における有機化合物層の好適な態様は、陽極側から順に、少なくとも、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔ブロック層、電子輸送層、及び電子注入層、を有する態様である。
尚、発光層と電子輸送層との間に正孔ブロック層を有した場合には、発光層と隣接する有機化合物層は、陽極側が正孔輸送層になり、陰極側が正孔ブロック層となる。
また、陽極と正孔輸送層との間に、正孔注入層を有してもよく、陰極と電子輸送層との間には、電子注入層を有してもよい。
尚、各層は複数の二次層に分かれていてもよい。
<基板>
有機EL素子の基板としては、発光層から発せられる光を散乱又は減衰させない基板であることが好ましい。その具体例としては、ジルコニア安定化イットリウム(YSZ)、ガラス等の無機材料、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、およびポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の有機材料が挙げられる。
例えば、基板としてガラスを用いる場合、その材質については、ガラスからの溶出イオンを少なくするため、無アルカリガラスを用いることが好ましい。
また、ソーダライムガラスを用いる場合には、シリカなどのバリアコートを施したものを使用することが好ましい。
有機材料の場合には、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、及び加工性に優れていることが好ましい。
基板の形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、発光素子の用途、目的等に応じて適宜選択することができる。
一般的には、基板の形状としては、板状であることが好ましい。
基板の構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、また、単一部材で形成されていてもよいし、2以上の部材で形成されていてもよい。
基板は、無色透明であっても、有色透明であってもよいが、有機発光層から発せられる光を散乱又は減衰等させることがない点で、無色透明であることが好ましい。
基板には、その表面又は裏面に透湿防止層(ガスバリア層)を設けることができる。
透湿防止層(ガスバリア層)の材料としては、窒化珪素、酸化珪素などの無機物が好適に用いられる。透湿防止層(ガスバリア層)は、例えば、高周波スパッタリング法などにより形成することができる。
熱可塑性基板を用いる場合には、更に必要に応じて、ハードコート層、アンダーコート層などを設けてもよい。
<陽極>
陽極は、通常、有機化合物層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
前述のごとく、陽極は、通常透明陽極として設けられる。
陽極の材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、導電性化合物、又はこれらの混合物が好適に挙げられる。
陽極材料の具体例としては、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル等の金属、さらにこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、及びこれらとITOとの積層物などが挙げられる。
この中で好ましいのは、導電性金属酸化物であり、特に、生産性、高導電性、透明性等の点からはITOが好ましい。
陽極は、例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、陽極を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って、前記基板上に形成することができる。
例えば、陽極の材料として、ITOを選択する場合には、陽極の形成は、直流又は高周波スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等に従って行うことができる。
本発明の有機電界発光素子において、陽極の形成位置としては特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができる。
この場合、陽極は、基板における一方の表面の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
なお、陽極を形成する際のパターニングとしては、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
陽極の厚みとしては、陽極を構成する材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常、10nm〜50μm程度であり、50nm〜20μmが好ましい。
陽極の抵抗値としては、10Ω/□以下が好ましく、10Ω/□以下がより好ましい。
陽極が透明である場合は、無色透明であっても、有色透明であってもよい。
透明陽極側から発光を取り出すためには、その透過率としては、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。
なお、透明陽極については、沢田豊監修「透明電極膜の新展開」シーエムシー刊(1999)に詳述があり、ここに記載される事項を本発明に適用することができる。
耐熱性の低いプラスティック基材を用いる場合は、ITO又はIZOを使用し、150℃以下の低温で製膜した透明陽極が好ましい。
<陰極>
陰極は、通常、有機化合物層に電子を注入する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
陰極を構成する材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物などが挙げられる。
具体例としてはアルカリ金属(たとえば、Li、Na、K、Cs等)、アルカリ土類金属(たとえばMg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、およびイッテルビウム等の希土類金属などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、2種以上を好適に併用することができる。
これらの中でも、陰極を構成する材料としては、電子注入性の点で、アルカリ金属やアルカリ土類金属が好ましく、保存安定性に優れる点で、アルミニウムを主体とする材料が好ましい。
アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、アルミニウムと0.01質量%〜10質量%のアルカリ金属又はアルカリ土類金属との合金若しくはこれらの混合物(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金など)をいう。
なお、陰極の材料については、特開平2−15595号公報、特開平5−121172号公報に詳述されており、これらの公報に記載の材料は、本発明においても適用することができる。
陰極の形成方法については、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。
例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、前記した陰極を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って形成することができる。
例えば、陰極の材料として、金属等を選択する場合には、その1種又は2種以上を同時又は順次にスパッタ法等に従って行うことができる。
陰極を形成するに際してのパターニングは、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
本発明において、陰極形成位置は特に制限はなく、有機化合物層上の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
また、陰極と前記有機化合物層との間に、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のフッ化物、酸化物等による誘電体層を0.1nm〜5nmの厚みで挿入してもよい。
この誘電体層は、一種の電子注入層と見ることもできる。
誘電体層は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等により形成することができる。
陰極の厚みは、陰極を構成する材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常10nm〜5μm程度であり、50nm〜1μmが好ましい。
また、陰極は、透明であってもよいし、不透明であってもよい。
なお、透明な陰極は、陰極の材料を1nm〜10nmの厚さに薄く製膜し、更にITOやIZO等の透明な導電性材料を積層することにより形成することができる。
<有機化合物層>
本発明における有機化合物層について説明する。
本発明の有機EL素子は、発光層を含む少なくとも一層の有機化合物層を有しており、発光層以外の他の有機化合物層としては、正孔輸送層、電子輸送層、電荷ブロック層、正孔注入層、電子注入層等の各層が挙げられる。これらの有機化合物層のうち、一以上の層が、本発明の作製方法より作製される。
−有機化合物層の形成−
本発明の有機電界発光素子において、有機化合物層を構成する各層は、本発明に示す装置以外にも、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、湿式塗布方式、転写法、印刷法、インクジェット方式等いずれによっても好適に形成することができる。本発明の作製方法により形成することが好ましい。
−正孔注入層、正孔輸送層−
正孔注入層、正孔輸送層は、陽極又は陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。本発明の作製方法により形成することが好ましい。
本発明の正孔注入層、正孔輸送層に使用できる材料としては、特に限定はなく、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。
具体的には、ピロール誘導体、カルバゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、フタロシアニン系化合物、ポルフィリン系化合物、チオフェン誘導体、有機シラン誘導体、カーボン、フェニルアゾール、フェニルアジンを配位子に有する金属錯体、等を含有する層であることが好ましい。
本発明の有機EL素子の正孔注入層あるいは正孔輸送層には、電子受容性ドーパントを含有させることができる。
正孔注入層、あるいは正孔輸送層に導入する電子受容性ドーパントとしては、電子受容性で有機化合物を酸化する性質を有すれば、無機化合物でも有機化合物でも使用できる。
具体的には、無機化合物は塩化第二鉄や塩化アルミニウム、塩化ガリウム、塩化インジウム、五塩化アンチモンなどのハロゲン化金属、五酸化バナジウム、および三酸化モリブデンなどの金属酸化物などが挙げられる。
有機化合物の場合は、置換基としてニトロ基、ハロゲン、シアノ基、トリフルオロメチル基などを有する化合物、キノン系化合物、酸無水物系化合物、フラーレンなどを好適に用いることができる。
この他にも、特開平6−212153、特開平11−111463、特開平11−251067、特開2000−196140、特開2000−286054、特開2000−315580、特開2001−102175、特開2001−160493、特開2002−252085、特開2002−56985、特開2003−157981、特開2003−217862、特開2003−229278、特開2004−342614、特開2005−72012、特開2005−166637、特開2005−209643等に記載の化合物を好適に用いることが出来る。
これらの電子受容性ドーパントは、単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
電子受容性ドーパントの使用量は、材料の種類によって異なるが、正孔輸送層材料に対して0.01質量%〜50質量%であることが好ましく、0.05質量%〜20質量%であることが更に好ましく、0.1質量%〜10質量%であることが特に好ましい。
正孔注入層、正孔輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、各々500nm以下であることが好ましい。
正孔輸送層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜300nmであるのがより好ましく、10nm〜200nmであるのが更に好ましい。
また、正孔注入層の厚さとしては、0.1nm〜500nmであるのが好ましく、0.5nm〜300nmであるのがより好ましく、1nm〜200nmであるのが更に好ましい。
正孔注入層、正孔輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
−電子注入層、電子輸送層−
電子注入層、電子輸送層は、陰極又は陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。本発明の作製方法により形成することが好ましい。
電子注入層、電子輸送層に使用できる材料として特に限定は無く、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。
具体的には、ピリジン誘導体、キノリン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、フタラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、トリアジン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、シロールに代表される有機シラン誘導体、等を含有する層であることが好ましい。
本発明の有機EL素子の電子注入層あるいは電子輸送層には、電子供与性ドーパントを含有させることができる。
電子注入層、あるいは電子輸送層に導入される電子供与性ドーパントとしては、電子供与性で有機化合物を還元する性質を有していればよく、Liなどのアルカリ金属、Mgなどのアルカリ土類金属、希土類金属を含む遷移金属や還元性有機化合物などが好適に用いられる。
金属としては、特に仕事関数が4.2eV以下の金属が好適に使用でき、具体的には、Li、Na、K、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、Cs、La、Sm、Gd、およびYbなどが挙げられる。
また、還元性有機化合物としては、例えば、含窒素化合物、含硫黄化合物、含リン化合物などが挙げられる。
この他にも、特開平6−212153、特開2000−196140、特開2003−68468、特開2003−229278、特開2004−342614等に記載の材料を用いることが出来る。
これらの電子供与性ドーパントは、単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
電子供与性ドーパントの使用量は、材料の種類によって異なるが、電子輸送層材料に対して0.1質量%〜30質量%であることが好ましく、0.1質量%〜20質量%であることが更に好ましく、0.1質量%〜10質量%であることが特に好ましい。
電子注入層、電子輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、各々500nm以下であることが好ましい。
電子輸送層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
また、電子注入層の厚さとしては、0.1nm〜200nmであるのが好ましく、0.2nm〜100nmであるのがより好ましく、0.5nm〜50nmであるのが更に好ましい。
電子注入層、電子輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
−ホールブロック層−
ホールブロック層は、陽極側から発光層に輸送された正孔が、陰極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明の作製方法により形成することが好ましい。
発光層と陰極側で隣接する有機化合物層として、ホールブロック層を設けることができる。
ホールブロック層を構成する化合物の例としては、BAlq等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、BCP等のフェナントロリン誘導体、等が挙げられる。
ホールブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
ホールブロック層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
−電子ブロック層−
電子ブロック層は、陰極側から発光層に輸送された電子が、陽極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明の作製方法により形成することが好ましい。
発光層と陽極側で隣接する有機化合物層として、電子ブロック層を設けることができる。
電子ブロック層を構成する化合物の例としては、例えば前述の正孔輸送材料として挙げたものが適用できる。
電子ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
ホールブロック層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
<保護層>
本発明において、有機EL素子全体は、保護層によって保護されていてもよい。
保護層に含まれる材料としては、水分や酸素等の素子劣化を促進するものが素子内に入ることを抑止する機能を有しているものであればよい。
その具体例としては、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Ti、Ni等の金属、MgO、SiO、SiO、Al、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe、Y、TiO等の金属酸化物、SiN、SiN等の金属窒化物、MgF、LiF、AlF、CaF等の金属フッ化物、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリウレア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質等が挙げられる。
保護層の形成方法については、特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシ)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法、コーティング法、印刷法、転写法を適用できる。また、保護層は、本発明の作製方法により形成してもよい。
<封止>
さらに、本発明の有機電界発光素子は、封止容器を用いて素子全体を封止してもよい。
また、封止容器と発光素子の間の空間に水分吸収剤又は不活性液体を封入してもよい。
水分吸収剤としては、特に限定されることはないが、例えば、酸化バリウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、五酸化燐、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化銅、フッ化セシウム、フッ化ニオブ、臭化カルシウム、臭化バナジウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト、および酸化マグネシウム等を挙げることができる。
不活性液体としては、特に限定されることはないが、例えば、パラフィン類、流動パラフィン類、パーフルオロアルカンやパーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等のフッ素系溶剤、塩素系溶剤、およびシリコーンオイル類が挙げられる。
<駆動>
本発明の有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、又は直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。
本発明の有機電界発光素子の駆動方法については、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号の各公報、特許第2784615号、米国特許5828429号、同6023308号の各明細書、等に記載の駆動方法を適用することができる。
本発明の発光素子は、種々の公知の工夫により、光取り出し効率を向上させることができる。
例えば、基板表面形状を加工する(例えば微細な凹凸パターンを形成する)、基板・ITO層・有機層の屈折率を制御する、基板・ITO層・有機層の膜厚を制御すること等により、光の取り出し効率を向上させ、外部量子効率を向上させることが可能である。
本発明の発光素子は、陽極側から発光を取り出す、いわゆる、トップエミッション方式であってもよい。
上記では、有機電界発光素子の構成について説明したが、本発明の方法は、有機太陽電池、有機電界効果型トランジスタ等の他の有機電子デバイスの薄膜の作製にも、勿論利用することができる。また、反射板、偏光板等の種々の光学部材用の薄膜の作製方法としても利用することができる。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
図1〜図3のいずれかに示すスプレー製膜装置と同様の構成の装置を用いて、2流体ノズルで原料液を液滴化し、液滴をチャンバー内で濃縮させ、濃縮液滴を基板上に堆積することで製膜を行った。なお、図3の装置は、チャンバー12”が冷却可能なコンパートメントを有さない、液滴を加熱することのみ可能な装置である。
ITOガラス(Aldrich製、30〜60Ω/□)を準備し、中性洗剤・純水でそれぞれ5分間ほど超音波洗浄を行った後、窒素ブロアーで基板に付着した水分を除去し、さらに加熱して乾燥した。その後、2質量%までシクロヘキサノンで希釈した下記に示すPTPDES−2の溶解溶液を、ITOガラス表面に2000rpmという回転数でスピンコートし、50nmの厚みの膜を形成し、これを基板として用いた。このPTPDES−2からなる層は、正孔輸送層として機能し、テトラヒドロフラン(THF)に溶解する。
Figure 2012009298
次に、この基板を、図1〜図3に示した各装置の基板ホルダ(図中16)にセットした。チャンバー内は図1及び図2に示すように加熱部(図中、12a、12c及び12c’)・冷却部(図中12b図中12b’)が存在し、それぞれ流入させる水を下記表に示す温度に設定し、かつ基板ホルダに流れる水の温度を50℃に設定した。なお、図3の装置には、冷却部が存在せず、加熱部のみから構成されている。いすれの装置でも、チャンバーの下部の開口部は10mmに設定し、開口部から基板までの距離を10mmに設定した。
噴霧する原料液として、高分子発光材料として用いられる、以下に示すPoly[2−methoxy−5− (2−ethylhexyloxy)−1,4−phenylenevinylene](MEH−PPV)を、THFを溶媒として0.001質量%で希釈して使用した。なお、下記表中の実施例1〜4及び比較例1〜3では、THFとして、Aldrich製のTHFを蒸留及び膜分離による脱水処理により、水分量を軽減したものを使用して調製した原料液を用いた。一方、実施例5及び6では、Aldrich製のTHFをそのまま用いた。
Figure 2012009298
2流体ノズル(図中18)には、原料液・及び窒素ガスを流入し、平均液滴径(SMD)が3μmになるようにエア流量を10L/min.、送液量を1〜10ml/min.の範囲で設定した。なお、2流体ノズルとしてAtomax社製AM−6を使用し、送液量はHarvard社製シリンジポンプ(図中20)、エア流量はAtomax社製レギュレータ(図中24)を使用した。
なお、チャンバー(図中12)内の溶媒ガス濃度は、防爆の観点から20%LEL以下になるよう、吸排気のバランスを設定した。
作製した各薄膜を光学顕微鏡及びSEMで観察し、以下の基準で評価した。
○:液滴が乾燥し、粒子形状で基板上に堆積している状態である、
×:液滴の乾燥が不十分であり、基板上に濡れ広がった状態で堆積している状態である。
また、溶液内の水分量は、カールフィッシャー水分計を用いて測定した。
Figure 2012009298
本発明の実施例1〜6では、液滴の濃縮工程において冷却工程を実施していない比較例1と比較して、単位時間当たりの送液量を多くしても乾燥が十分に進行し、溶質濃度が高められた粒子の堆積が可能であったことが理解できる。特に、実施例3、5及び6を比較すると、水分量の少ない溶媒を用いた実施例3で、その効果が顕著であることが理解できる。さらに、再加熱後に、再冷却及び再々加熱を実施した実施例4では、乾燥が特に促進されていることが理解できる。
一方、比較例2及び3では、液滴の濃縮工程において、温度変化させているものの、冷却温度45℃では、雰囲気中の揮発溶媒は液化せず、その結果、再加熱しても乾燥が促進されず、製膜レートは、温度50℃で加熱を続けた比較例1と同様であり、改善されていないことが理解できる。
12 チャンバー
12a 加熱コンパートメント
12b、12b’ 冷却コンパートメント
12c、12c” 再加熱コンパートメント
14 基板
16 基板ホルダ
18 二流体ノズル
20 シリンジポンプ
22 ガスボンベ
24 レギュレータ

Claims (10)

  1. 下記(1)〜(3)
    (1)溶質を溶媒中に溶解及び/又は分散してなる原料液を噴霧して液滴を形成すること、
    (2)液滴中の溶媒を揮発させ濃縮すること、
    (3)濃縮された液滴を基板上もしくは基板上に設けられた薄膜の上に堆積させること、
    を順次含む薄膜の作製方法であって、
    (2)工程が、少なくとも、液滴を温度T℃で加熱して液滴中の溶媒の一部を揮発させること、温度T℃(但しT<T)まで冷却して揮発させた溶媒の少なくとも一部を液化して雰囲気中の揮発溶媒の少なくとも一部を系外に除去すること、及び液滴を温度T℃(但しT<T)で再加熱して液滴中の溶媒の少なくとも一部を揮発させることを順次含むことを特徴とする薄膜の作製方法。
  2. (2)工程で、さらに、冷却及び再加熱を少なくとも1回以上繰り返すことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. ℃とT℃との差、及びT℃とT℃との差が、それぞれ10℃以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
  4. 溶媒中の水分濃度が1質量%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の薄膜の作製方法。
  5. 溶質が、有機半導体、有機発光材料、有機電子輸送材料、及び有機正孔輸送材料から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. (1)〜(3)工程により有機半導体層、発光層、電子輸送層、電子注入層、正孔輸送層、及び正孔注入層のいずれかを形成することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法に用いられる薄膜の作製装置であって、
    溶質を溶媒中に溶解及び/又は分散してなる原料液を液滴化する、1以上のノズルを備えた液滴形成手段、
    前記液滴形成手段に前記原料液を供給する原料液供給手段、
    前記液滴形成手段にガスを供給するガス供給手段、
    前記液滴形成手段に接続して設けられた液滴を濃縮する液滴濃縮手段、及び
    基板を固定する基板ホルダを備え、
    液滴濃縮手段が、液滴を、加熱・冷却・再加熱する3つのコンパートメントを少なくとも含むことを特徴とする薄膜の作製装置。
  8. 液滴を冷却するコンパートメントが、液化した溶媒をコンパートメント外に排出する排出機構を備えることを特徴とする請求項7に記載の作製装置。
  9. 液滴を冷却するコンパートメントが、液滴を加熱するコンパートメントより径の小さいコンパートメントであることを特徴とする請求項8に記載の装置。
  10. 液滴を冷却するコンパートメントが、配管形状を有することを特徴とする請求項8又は9に記載の装置。
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