JP2011529079A - 癌のペプチド治療剤 - Google Patents

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Abstract

増殖性細胞核抗原の癌特異的アイソフォーム(caPCNA)に対応するペプチド変種は、細胞内タンパク質−タンパク質相互作用を妨げ、それによって、癌の増殖能の低減を引き起こす。細胞透過性のcaPCNA由来ペプチド及びこれらの変種は、癌細胞の増殖を低減させ、現存の癌治療の細胞傷害効果も増大させる、治療用組成物として機能する。これらの組成物は、癌の化学予防にも有用である。
【選択図】 図1

Description

本開示は、ペプチドに基づいた治療用組成物及び癌細胞の増殖を阻害する方法に関する。
増殖性細胞核抗原(PCNA)は、DNA複製、修復、染色体組み換え、細胞周期チェックポイント制御及び他の細胞増殖活性のプロセスにおいて重要な役割を果たす。アダプタータンパク質である複製因子C(RFC)と共に、PCNAは、DNAポリメラーゼデルタ及びイプシロンのドッキングポイントである移動クランプを形成する。酸性と塩基性の両方の等電点(pI)を示す増殖性細胞核抗原(PCNA)の異なるアイソフォームが実証されている。二次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動(2D PAGE)による悪性及び非悪性の両方の乳房細胞及び組織のPCNA(非悪性PCNA又はnmPCNAと呼ばれる)の分析は、悪性細胞のみにおいて存在する酸性形態のPCNAを明らかにした(癌特異的PCNA又はcsPCNA又はcaPCNAと呼ばれる)。2つの形態のPCNAの間における等電点の差は、PCNAペプチドを翻訳後修飾する悪性細胞の能力が変更されたことによりもたらされ、PCNA遺伝子内の遺伝子変化によるものではないと思われる。
PCNAポリペプチドの構造を検査して、caPCNAと、PCNAの非悪性細胞アイソフォームとの構造差を確定する構造研究は、癌細胞においてのみ独自に露出しているcaPCNAタンパク質の領域を明らかにした。癌細胞に独占的に発現しているPCNAアイソフォームに極めて選択的であるような、PCNAの癌特異的アイソフォームの領域に対する抗体が開発された。
増殖性細胞核抗原(PCNA)は、29kDaの核タンパク質であり、細胞周期のS及びG2期の細胞における発現は、このタンパク質を良好な細胞増殖マーカーにする。細胞の生死に関わる多くの分子経路においてもパートナーとなることが示されている。PCNAの、S期核における周期的な出現は、DNA複製における関与を示唆した。PCNAは後に、哺乳類の細胞におけるDNAポリメラーゼ補助因子として、また、インビトロにおけるSV40 DNA複製の必須因子として同定された。PCNAは、DNAスライディングクランプタンパク質として機能すること及び哺乳類細胞におけるDNAポリメラーゼ補助因子として機能することに加えて、転写、細胞周期チェックポイント、クロマチン再構築、組み換え、アポトーシス及び他の形態のDNA修復に関与する多数の他のタンパク質と相互作用する。PCNAの作用の多様性の他に、PCNAの多くの結合パートナーは、それぞれの新世代の細胞による細胞機能の正確な遺伝に寄与することによって結びついている。PCNAは、染色体プロセッシングを調整するマスター分子として作用することができる。
PCNAは、FEN−1、DNAリガーゼ及びDNAメチルトランスフェラーゼのような他の因子と相互作用することも知られている。加えて、PCNAは、複数のDNA修復経路における必須の当事者であることも示された。ミスマッチ認識タンパク質であるMsh2及びヌクレオチド除去修復エンドヌクレアーゼであるXPGのようなタンパク質との相互作用は、DNA合成と異なるプロセスにおけるPCNAの関与を示す。複数のパートナーとの相互作用は、一般に、PCNAが規則正しく強力に好ましい方法で選択的に相互作用することを可能にする機構に依存する。
ポリクローナル及びモノクローナル抗体の生成のために、短い合成ペプチドを用いる方法が使用され、かなりの成功を収めてきた。ペプチドは、化学誘引物質、強力な神経及び呼吸毒、並びにホルモンとして機能することが知られている。ペプチドは、生化学的研究において親和性標的及びプローブとしても使用されており、特定のタンパク質−タンパク相互作用の特徴及び特定の性質を理解する基礎を提供してきた。加えて、ペプチドホルモンは、強力な生理学的効果を発揮し、活性型のホルモンは、大型のタンパク質内に含有されているペプチドである場合もあるし、その生理学的効果の発揮に先だって、前駆体からプロセシングされて放出されるペプチドである場合もある。
ペプチドは、タンパク質−タンパク質相互作用を撹乱するために、これらの相互作用の高度に特異的な競合因子として作用することにより使用されてきた。ペプチド試薬を用いる生化学的研究は、タンパク質−タンパク質相互作用を必要とする細胞機能を撹乱することができる治療薬として、ペプチドの使用を進化させた。したがって、特定のタンパク質−タンパク質相互作用に依存しているアポトーシス及び細胞周期の進行のような特定の細胞プロセスを、これらのタンパク質−タンパク質相互作用が選択的に撹乱される場合に、阻害することができる。タンパク質−タンパク質相互作用に依存しているゲノムDNAの複製も、これらのタンパク質相互作用のペプチド誘導阻害に感受性がある。
インビボでのDNA合成は、一連の複雑なタンパク質−タンパク質相互作用により仲介される無数の生化学的反応に依存している、高度に調節されたプロセスである。細胞分裂は、DNA合成プロセスに依存しており、癌細胞増殖は、癌細胞のゲノムDNAをコピーすることに関与するDNA合成機構の調節及び/又は活性を撹乱するあらゆる作用物質に対して実質的に感受性がある。加えて、乳癌の一つの兆候は、形質転換細胞が侵襲性の高い転移性の表現型を発現するので、ゲノムの不安定性の誘導であることが示された。ゲノムの不安定性は、DNA合成の忠実度を変える、細胞内DNA合成機構における一連の変化を介して生じる。
p21cipタンパク質(PCNAタンパク質と相互作用することが知られている)からのカルボキシル末端の26アミノ酸を利用した研究は、このペプチドが細胞増殖プロセスを撹乱する能力を実証した。このp21のペプチドフラグメントは、PCNAを利用する1つ以上の細胞プロセスを撹乱する潜在力を有し、おそらく、DNA合成プロセス、ならびに他の細胞周期チェックポイント制御の調節及びアポトーシスの誘導に参加する、重要なタンパク質−タンパク質相互作用を妨げる。
このp21のペプチドフラグメントを利用する研究は、非カスパーゼ関連アポトーシス経路を活性化するp21ペプチドの能力を実証した。同様に、p21タンパク質の39アミノ酸ペプチドフラグメントを伴う研究は、インビボでDNA複製を部分的に阻害したが、これは、このp21タンパク質のペプチドフラグメントが、PCNA−p21タンパク質相互作用を安定化し、細胞内のDNA合成活性に減少をもたらすことができることを示唆している。
加えて、細胞周期チェックポイント制御及びDNA合成に関与する他の細胞タンパク質と相互作用しうるような、PCNA分子の特定の領域のモデリングのために、計算化学法が使用されてきた。サイクリンCDK複合体の領域は、細胞増殖に必須である主要な細胞周期チェックポイント制御ポイントを撹乱する標的部位を同定するための、テンプレートとして機能することができる。
細胞増殖を阻害する合成ペプチドの使用、及び細胞増殖の阻害を仲介するために癌特異的PCNAタンパク質を選択的に標的化する方法が、癌を治療するために必要である。caPCNAの抗原部位又は標的部位と相互作用して、癌細胞に特有である特定のタンパク質−caPCNA相互作用を撹乱するペプチド模倣体が望まれる。本明細書に開示されている、caPCNA特異的エピトープに由来するペプチドは、特定の伝統的な化学療法レジメンの細胞傷害効果を有意に増大し、したがって、癌細胞を高度に選択的な方法で死滅させる。
癌特異的(caPCNA)相互作用タンパク質の特定の領域又はドメインに由来するペプチド変種は、細胞タンパク質とPCNAタンパク質とのインビボでの相互作用を妨げ、したがって癌細胞の生存に影響を与える。caPCNAタンパク質のペプチドフラグメントを表す特定のアミノ酸配列は、PCNAの調節活性を撹乱し、続いて、DNA複製、修復、染色体組み換え及び細胞周期チェックポイント制御を含むPCNAを必要とする細胞プロセスの機能の撹乱を介して、癌細胞の増殖を阻害する。
1つ以上の位置でのアミノ酸置換は、caPCNA由来ペプチドの細胞傷害効果を向上させる。細胞内取り込みを増強するタグ又はドメインを有するアミノ酸置換ペプチドを含むcaPCNA由来ペプチドは、caPCNA由来ペプチドの細胞傷害効果を増加する。
悪性細胞の細胞増殖を低減する治療用組成物は、LGIPEQEY、LAIPEQEY、LGIAEQEY、LGIPAQEY、LGIPEAEY、LGIPEQAY、LGIAEAEY、LGIPEAAY、LGIAEQAY及びLGIAEAAYからなる群より選択されるアミノ酸配列を有する、細胞透過性ペプチド分子を含む。一つの実施態様において、ペプチド分子は合成分子である。
悪性細胞の細胞増殖を低減する治療用組成物は、LGIPEQEY、LAIPEQEY、LGIAEQEY、LGIPAQEY、LGIPEAEY、LGIPEQAY、LGIAEAEY、LGIPEAAY、LGIAEQAY及びLGIAEAAYからなる群より選択されるアミノ酸配列から実質的になる、細胞透過性ペプチド分子を含む。
一つの実施態様において、caPCNA由来ペプチド分子は、細胞透過性因子又は細胞内取り込み剤を更に含む。例えば、細胞透過性因子は、アミノ酸配列のRRRRRRR、RRRRRRRR、RRRRRRRRR、RRRRRRRRRR、RRRRRRRRRRR、RQIKIWFQNRRMKWKK、GRKKRRQRRRPPQ、GWTLNSAGYLLGKINLKALAALAKKIL、GRKKRRQRRR、又は表4に提示されている因子の群から選択される、細胞透過性ペプチドである。幾つかの態様において、細胞透過性ペプチドは、caPCNAに由来するペプチド分子と共有結合又は結合している。他の態様において、細胞透過性ペプチドは、ペプチド分子と組み換え的に融合している。特定の実施態様において、細胞透過性ペプチドは、スペーサー配列を更に含む。スペーサー配列は、約1〜10個又は約1〜20個のアミノ酸長さであってもよい。合成スペーサーも、細胞膜を貫通するペプチドの移行を妨げない限り適している。
一つの実施態様において、ペプチドは、未修飾の天然caPCNA由来ペプチドと比較してプロテアーゼ耐性になるように操作される。一つの実施態様において、本明細書に開示されているペプチドは、レトロインベルソ異性体として生成される。
一つの実施態様において、caPCNA由来の移行性ペプチドを含む組成物は、化学療法剤を更に含むことができる。好ましくは、化学療法剤はDNA損傷剤である。DNA損傷剤の例には、例えば、ドキソルビシン、イリノテカン、シクロホスファミド、クロラムブシル、メルファラン、メトトレキセート、シタラビン、フルダラビン、6−メルカプトプリン、5−フルオロウラシル、カペシタビン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン及びこれらの組み合わせが挙げられる。
一つの実施態様において、caPCNA相互作用のペプチドインヒビターを含む組成物を、リポソームとして送達することができる。リポソームは、ナノ粒子を含むこともできる。一つの態様において、caPCNA由来ペプチドを含む医薬組成物の1つ以上の構成成分は、ナノ粒子を更に含むことができる。
癌細胞の増殖を阻害する方法は、
(a)本明細書に開示されているペプチドを含む組成物の治療有効量を得ること;
(b)組成物を、作用物質が癌細胞の集団と接触するように、投与すること;及び
(c)組成物により癌細胞の増殖を阻害すること
を含む。
一つの実施態様において、組成物は静脈内投与される。癌への直接的な送達を含む、任意の投与様式が可能である。化学療法剤を、caPCNA由来ペプチド又はその変種を含む組成物の投与の前に、それと共に、又はその後に、癌患者に投与することができる。一つの実施態様において、放射線療法を、caPCNA由来ペプチド又はその変種を含む組成物の投与の前に、それと共に、又はその後に、投与することもできる。放射線治療には、ビーム放射治療及びラジオアイソトープ治療が含まれる。
癌治療において癌細胞を感作する方法は、
(a)LGIPEQEY、LAIPEQEY、LGIAEQEY、LGIPAQEY、LGIPEAEY、LGIPEQAY、LGIAEAEY、LGIPEAAY、LGIAEQAY及びLGIAEAAYの群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチド分子を含む組成物の治療有効量を、組成物が癌細胞の集団と接触して癌細胞を感作するように、投与すること;並びに
(b)化学療法剤又は放射線治療を投与して、癌細胞の増殖を阻害すること
を含む。
癌の化学予防の方法は、
(a)LGIPEQEY、LAIPEQEY、LGIAEQEY、LGIPAQEY、LGIPEAEY、LGIPEQAY、LGIAEAEY、LGIPEAAY、LGIAEQAY及びLGIAEAAYの群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチド分子を含む組成物を含む化学予防剤を、PCNCの癌特異的アイソフォーム(caPCNA)を発現する可能性のある癌細胞の集団に組成物が接触するように、投与すること;並びに
(b)caPCNAアイソフォームを発現する細胞が悪性状態に形質転換する又は腫瘍を発生するのを予防すること
を含む。
一つの実施態様において、化学予防剤は、一つの癌型に対して危険性が高いと考慮される個体に投与される。一つの実施態様において、化学予防剤は、前癌性細胞を有する個体に投与される。
caPCNA由来ペプチド(例えばアミノ酸配列LGIPEQEYを有するペプチド)の構造又は配列情報に基づいて、caPCNA細胞相互作用に特異的なインヒビターを得るために、合理的薬剤設計の方法論を用いることもできる。一つの実施態様において、薬剤は、細胞内タンパク質に由来するペプチドフラグメントである。一つの実施態様において、細胞内タンパク質はcaPCNAと相互作用することが知られている。
増殖性細胞核抗原の癌特異的アイソフォーム(caPCNA)を発現する悪性細胞のインビボ細胞増殖を低減するための治療用組成物では、組成物は、ポリアルギニン配列を含む細胞透過性ペプチド配列と共に、アミノ酸配列LGIPEQEYを有するペプチド分子を含む。一つの実施態様において、細胞を経たペプチド取り込みを促進するペプチドドメインは、R9(非アルギニンタグ)である。
増殖性細胞核抗原の癌特異的アイソフォーム(caPCNA)を発現する悪性細胞のインビボ細胞増殖を低減するためのリポソーム組成物では、組成物は、1つ以上のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列R9−LGIPEQEYを含むペプチド分子、又はその機能的に同等な構造若しくはそのペプチド模倣体を含み、ここでR9は、化学的に結合しているか又は組み換え融合タンパク質の一部である。
本明細書に開示されている1つの以上の組成物と共に使用されるのに適した細胞表面標的化因子は、HER2/neu、エストロゲンレセプター、プロゲステロンレセプター、上皮増殖因子レセプター(EGFR)の群から選択される。
caPCNA由来ペプチドを発現する組み換え細胞であり、ここでペプチドは、癌細胞のタンパク質−タンパク質相互作用を選択的に撹乱する。一つの実施態様において、caPCNA由来ペプチドは、1つ以上のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列LGIPEQEYを含む。
1つ以上のアミノ酸置換を有し、ペプチド移行配列を有するアミノ酸配列LGIPEQEYを含む、合成ペプチドである。
1つ以上のアミノ酸が置換されている、その他の適切なPCNA由来ペプチドインヒビターとしては、1つ以上のアミノ酸置換を有する、QLGIPEQEYSC、VEQLGIPEQEY、LGIPEQEYSCVVK、LGIPEQEYSCVVKMPSG、EQLGIPEQEY、QLGIPEQEY、LGIPEQEYSCVVKMPS、LGIPEQEYSCVVKMP、LGIPEQEYSCVVKM、LGIPEQEYSCVV、LGIPEQEYSCV、LGIPEQEYSC、QLGIPEQEYSC、LGIPEQEYS、並びに、1つ以上のアミノ酸置換を有するLGIPEQEYに隣接する付加NH及びCOOH末端アミノ酸と、R9のような細胞透過性配列との組み合わせ、が挙げられる。
本明細書に開示されているペプチドを発現することができる複製欠損ウイルス発現ベクター(例えば、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルス及び他)も、適切な送達系である。
(関連出願の相互参照)
本出願は、その全体が参照として本明細書に組み込まれている、2008年7月24日出願の米国特許出願第61/083,393号の優先権を主張する。
図1は、caPCNA由来ペプチドインヒビターについて、予想される作用様式、及びDNA損傷剤の存在下での癌の増殖阻害における役割を図示する。 図2は、(A)R9、caペプチド(126−133)及びR9−caペプチドの細胞傷害効果を示す。U937細胞をそれぞれのペプチドの漸増量で処理し、アポトーシスのレベルを、フローサイトメトリーで評価した。(B)ドキソルビシンとR9−caペプチドとを組み合わせた細胞傷害性を示す。U937細胞を25μMのR9−caペプチド及び漸増濃度のドキソルビシンで処理した。ドキソルビシンのIC50(太線)は、25μMのR9−caペプチドを添加すると、140nMから110nMに減少する。 図3は、R9−caペプチドの核局在化を示す。U937細胞をFITC−R9−caペプチドで処理し、サイトスピンにより被覆スライド上に収集した。DAPI染色された核(左側)及びFITC−R9−caペプチド(右側)の蛍光画像を重ね合わせると(中央)、R9−caペプチドの細胞内取り込み及び核局在化を示した。四角形は無傷細胞を示す。 図4は、FEN−1とPCNAの構造的相互作用を示す。左側:PCNAモノマーA及びCの分子表面が示されている。FEN−1モノマーX及びZのaa330〜380が、ワイヤフレーム表現で示されている。右側:PCNA/FEN−1相互作用において保存されている強力な疎水的相互作用の領域のクローズアップである。aa126とaa133は、FEN−1がPCNAと相互作用する腔の端部を形成する。 図5は、結合ポケットにおけるaa126−133ペプチドの相互作用を示す。 図6は、FEN−1を取り囲むポケットにおけるアミノ酸126−133の配向を示す。PCNAの分子表面提示により作り出された腔に適合するFEN−1のX及びZ鎖の一部である。PCNAペプチド126−133のそれぞれのアミノ酸の位置が示されている。右側のチャートに、それぞれのアミノ酸がアラニンに置換されたときの細胞傷害性の変化を列挙する。 図7は、PCNAの結合パートナーの保存残基を示す。左側:多様なペプチド/タンパク質の配列保存、及びPCNAのaa126−133により部分的に作り出された腔に結合する5つのアミノ酸配列である。右側:腔に示されたPCNA結合パートナーの保存配列のオーバーレイである。最も保存されている残基が表及び図の両方に示されている。
本明細書に開示される方法及び組成物は、癌細胞において重要な細胞機能を選択的に撹乱する、caPCNAペプチド変種と、そのペプチド模倣体、その機能的類似体に関する。これらのペプチドには少なくとも2つの作用様式がある。例えば、caPCNA由来ペプチド変種は、caPCNAと競合してcaPCNA相互作用タンパク質と結合する、あるいは、caPCNA相互作用タンパク質上の相互作用を撹乱する部位に結合する。
caPCNAタンパク質配列に由来する特定のペプチド変種は、癌細胞におけるDNA複製、修復、細胞周期制御、アポトーシス、転写、又は染色体組み換えに関与する幾つかの細胞タンパク質の結合を阻止する能力を有する。これらの細胞タンパク質へのcaPCNAの結合は、ペプチドがこれらのタンパク質とPCNAの天然に生じる結合部位において競合することが可能である場合に撹乱される。PCNAとPCNAに結合する又は相互作用するタンパク質との天然の相互作用を撹乱することによって、PCNAを動員する正常な細胞機能が撹乱される。この重要な細胞機構の撹乱は、caPCNA由来ペプチド変種を、それ自体で、又は例えば癌治療薬のような他の分子と組み合わせて、細胞傷害性となるようにする。これらのペプチドは、単独で又は他の癌治療剤と組み合わされて、有用な癌化学療法剤であるか、又は特定の抗癌化学療法剤の薬力学的効果の増強剤である。本明細書に開示されているペプチドインヒビターは、腫瘍細胞を、DNAを損傷する化学療法剤に対して感作し、また、癌薬に対して一般に耐性である腫瘍をより反応性にする。
本明細書で使用されるとき、用語「感作」は、治療目的において、一般に、所定の時間(例えば、24、48、72時間)内に一群の癌細胞(例えば、腫瘍)の50%を死滅させるために必要とされる増殖阻害剤又は細胞傷害剤(例えば、ドキソルビシン)の量を低下させることのできる、本明細書に開示されているペプチドの能力を意味する。
用語「前癌性」又は「前悪性」は、一般に、組織(臓器)内に癌の発生に関連することが知られている又は関連すると考えられていて、組織構造における形態的変化であると認識可能であってもなくてもよい状態のことを意味する。加えて、腫瘍組織に見出されるいくらかの割合の癌細胞と関連することが知られている遺伝子発現(又はタンパク質の特定のアイソフォームの発現)における初期の分子変化は、癌形質転換プロセスを受けているこれらの組織の細胞内における、容易に識別できる形態変化よりも先に生じうる。したがって、特定の遺伝子及び/又はタンパク質の発現パターンの初期変化は、癌の発生をもたらす分子レベルの形質転換プロセスに関連する最初の事象であることができる。これらの初期変化は、これら自体では、訓練された個体(病理学者)の光学顕微鏡レベルで認識できる程度にまでは細胞及び/又は組織の形態に変化を誘導しないので、分子レベルでしか認識することができない。
本明細書で使用されるとき、用語「増大」又は「増大する」は、治療目的において、一般に、ある治療剤の薬力学的効果(効能と呼ばれる)の向上を意味する。したがって、用語「増大」は、ペプチドが、ある治療剤(例えば、ドキソルビシン)と共に投与されたとき、治療剤単独と比較して、治療剤の効能を上昇させて、同じ時間単位(例えば、24、48又は72時間)にわたってより多くの癌細胞の数の死滅をもたらすペプチドの能力を意味する。
増殖性細胞核抗原(PCNA)タンパク質に由来するペプチド変種とは、本明細書において、DNA損傷剤(例えば、ドキソルビシン)と共に、それらの薬剤の多様な癌細胞を治療するための治療効果を増強するように作用する能力を有するもののことであると特定される。caPCNAに基づいたペプチドインヒビターの、予想される作用様式と、DNA損傷剤の存在下での癌増殖の阻害におけるそれらの役割とを例示する図1を参照すること。本ペプチドは、PCNA内のアミノ酸配列に由来し、例えばアミノ酸126−133を包含して、且つ1つ又は複数のアミノ酸突然変異を含む。
caPCNA由来のペプチド変種及びペプチド模倣体は、新規の抗癌治療剤を表し、また、現行の癌療法に対して腫瘍細胞を促進又は感作する。
本明細書に開示されているペプチド配列は、癌細胞において一意的にほどけている可能性があるcaPCNAの領域を標的化する。したがって、本明細書に開示されているペプチドは、以下の細胞プロセス:DNA複製、修復、組み換え、転写、細胞周期チェックポイント制御及びアポトーシス、の少なくとも1つに関与するPCNA内のアミノ酸配列と相互作用する特定のタンパク質の活性を調節するcaPCNAと競合する能力によって、腫瘍細胞を選択的に標的化するように設計される。
本明細書に開示されているペプチドは、標準的ペプチド合成手順及び装置を使用して合成されてか、又は商業的に入手することもできる(例えば、United Biochemical Research Co., Seattle WA)。少なくとも1つのアミノ酸置換を含むヒトPCNA分子のアミノ酸126−133(LGIPEQEY)、続いて、細胞内へのペプチドの取り込みを促進するための細胞透過性ペプチド(CPP)配列、例えばポリアルギニン配列を有する、caPCNA由来ペプチドは、癌細胞をインビトロで選択的に阻害する。
インビトロ方法論を伴う特定の実施態様において、caPCNAペプチド変種の取り込みは、このペプチドを、癌細胞と共に、ジメチルスルホキシド(DMSO)の存在下、リン酸緩衝食塩水(PBS)中又は0.2〜2%のDMSOを含有する培地中のいずれかにおいて、血清なしで約4〜24時間インキュベーションすることにより、開始した。これらのペプチドの取り込みは、リポソーム製剤へのペプチドの封入、続く癌細胞との37℃で約4〜24時間のインキュベーションによっても、効果的に仲介される。これらのペプチドは、ドキソルビシンのような化学治療剤の細胞傷害効果も増大した。
本明細書で使用されるとき、用語「薬剤」には、核酸、タンパク質、タンパク質フラグメント、ペプチド、合成ペプチド、ペプチド模様薬、その類似体、小型分子、インヒビター、及び、タンパク質−タンパク質相互作用又は細胞プロセスに影響を与えることができるような、任意の化学、有機、又は生物有機分子が含まれる。
用語「caPCNAペプチド変種」又は「ペプチド変種」は、配列がcaPCNAに由来し、置換突然変異若しくは欠失突然変異のような1つ以上の突然変異を含むような、ペプチド若しくはアミノ酸類似体、又はそれらの組み合わせを意味する。例えば、PCNAのアミノ酸126−133を表すLGIPEQEYは、例えば、アミノ酸G、P、Q及び最後から二番目のEがアラニン(A)のようなアミノ酸で置換されていることができる、caPCNA由来配列である。したがって、LXIXEXYはペプチド変種であり、ここでX1−4は、独立して又は集合的に置換されていることができる。一つの実施態様において、XはAであり、XはPであり、XはQであり、そしてXはEである。別の実施態様において、XはGであり、XはAであり、XはQであり、そしてXはEである。別の実施態様において、XはGであり、XはPであり、XはAであり、そしてXはEである。別の実施態様において、XはGであり、XはPであり、XはQであり、そしてXはAである。別の実施態様において、XはGであり、XはAであり、XはAであり、そしてXはAである。「caPCNAペプチド変種」又は「ペプチド変種」は、5〜10個、5〜50個、7〜50個、8〜20個、8〜25個、8〜30個、8〜40個、8〜50個のアミノ酸長さの範囲であることができる。例えば、「caPCNAペプチド変種」又は「ペプチド変種」は、caPCNAからの約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45又は50個の連続アミノ酸から実質的になることができ、ここで1つ以上のアミノ酸は置換されている。「caPCNAペプチド変種」又は「ペプチド変種」は、「caPCNAペプチド変種」又は「ペプチド変種」を細胞膜を貫通して透過又は移行させることができるペプチド移行ドメイン又は配列を、更に含むことができる。「caPCNAペプチド変種」又は「ペプチド変種」は、また、親油性に影響を与えるように修飾されて、癌細胞へのペプチド送達を増強する。ペプチドは、合成することも(「合成ペプチド」)、組み換え技術により産生することも(「組み換えペプチド」)、遺伝子発現技術を使用してインビボで発現させることもできる。これらのペプチドを操作して、caPCNA−タンパク質相互作用の阻害における効能に有意な影響を与えることなく、インビボ安定性を増加すること(例えば、プロテアーゼ耐性にすることによりペプチド安定性を増加すること)もできる。本明細書に開示されているペプチドの阻害活性に実質的に影響を与えない挿入、欠失、置換、アミノ酸修飾を含む突然変異は、範囲内である。1つ以上の突然変異を有する126−133配列LGIPEQEYから実質的になるペプチドは、本明細書に開示されているペプチド変種の阻害機能に著しく影響を与えない他の異種配列を含むことができる。
本明細書に開示されているペプチドは、癌細胞よりも悪性細胞を死滅させる特異性を示す。例えば、本明細書に開示されているペプチドは、実質的に特異的であり、非悪性細胞と比較した場合、50%を超えて、好ましくは60%又は70%又は80%又は90%又は95%を超えて、悪性癌細胞を優先的に死滅させる。
「ペプチド変種」又は「ペプチド誘導体」はまた、PCNA又はPCNA相同体の一部と同様である領域のアミノ酸配列を有するが、1つ以上のアミノ酸側基、α炭素原子、末端アミノ基又は末端カルボン酸基の少なくとも1つの化学修飾を更に有するような分子も意味する。化学修飾には、化学的部分の付加、新たな結合の作成、及び化学的部分の除去が含まれる。アミノ酸側基の修飾には、リシン、εアミノ基のアシル化、アルギニン、ヒスチジン又はリシンのNアルキル化、グルタミン酸又はアスパラギン酸のカルボン酸基のアルキル化及びグルタミン又はアスパラギンの脱アミド化が含まれる。末端アミノ酸の修飾には、デスアミノ、N低級アルキル、N−ジ−低級アルキル及びNアシル修飾が含まれる。末端カルボキシ基の修飾には、アミド、低級アルキルアミド、ジアルキルアミド及び低級アルキルエステル修飾が含まれる。低級アルキルはC1〜C4アルキルである。更に、1つ以上の側基又は末端基を、通常の技能を持ったタンパク質化学者には既知の保護基により保護することができる。アミノ酸のα炭素を、モノ−又はジ−メチル化することができる。
アミノ酸残基を、本明細書に開示されているペプチド変種の阻害機能に実質的に影響を与えることなく同様の側鎖を有する別のアミノ酸残基で置換することができる点において、本ペプチドが上記に記載されたペプチドと実施的に同様であってもよいことを、当業者は認識する。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸の群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシンであり、脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸の群は、 セリン及びトレオニンであり、アミド含有側鎖を有するアミノ酸の群は、アスパラギン及びグルタミンであり、芳香族側鎖を有するアミノ酸の群は、フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファンであり、塩基性側鎖を有するアミノ酸の群は、リシン、アルギニン及びヒスチジンであり、硫黄含有側鎖を有するアミノ酸の群は、システイン及びメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換基には、バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リシン−アルギニン、アラニン−バリン及びアスパラギン−グルタミンが含まれる。したがって、本明細書に開示されているペプチドインヒビターは、ペプチドの阻害機能に実質的に影響を与えることなく、1つ以上の保存的アミノ酸置換を有することができる。
caPCNA由来ペプチドの非天然産の変種は、組み換え技術又は化学合成を使用して容易に生成することができる。そのような変種は、開示されているペプチドのアミノ酸配列に、欠失、付加及び置換を含むが、これらに限定されない。例えば、1つの置換の部類は、保存的アミノ酸置換である。そのような置換は、開示されているcaPCNA由来ペプチドにおける所定のアミノ酸を同様の特性を有する別のアミノ酸で置換することである。保存的置換として典型的に許容されるものは、脂肪族アミノ酸Ala、Val、Leu及びIleのうちの互いの置換、ヒドロキシル残基Ser及びThrの取り換え、酸性残基Asp及びGluの交換、アミド残基Asn及びGlnの置換、塩基性残基のLys及びArgの交換、並びに芳香族残基Phe及びTyrの置換である。可能なアミノ酸置換のリストは、本明細書の表5に提示されている。
用語「変種」は、天然配列ペプチドといくらか異なるアミノ酸配列、すなわち、1つ以上のアミノ酸が、同じ特性及び立体配座の役割を有する別のものに置換されている保存的アミノ酸置換により、天然配列と異なるアミノ酸配列、を有するペプチドを意味する。アミノ酸配列変種は、天然アミノ酸配列のアミノ酸配列内の特定の位置に置換、欠失及び/又は挿入を有する。
PCNA由来ペプチド変種はまた、癌細胞に存在する細胞表面レセプターのリガンドと、融合させるか、そうでなければ結合させることもできる。リガンドは更に、切断可能であってもよく、それによって、ペプチド変種(インヒビター)が、腫瘍特異的リガンドを使用して腫瘍細胞を標的化できるが、ペプチド変種が腫瘍細胞に自由に進入できるように、腫瘍環境に存在するプロテアーゼにより切断される。例えば、細胞増殖のマーカーであるヒトトランスフェリンレセプター(hTfR)は、治療剤の標的として使用され、口腔癌、肝癌、膵癌、前立腺癌及び他の癌において少なくとも100倍多く発現する(Lee et al., (2001) “Receptor mediated uptake of peptides that bind the human transferrin receptor” Eur. J. Biochem., 268: 2004-2012)。HAIYPRH及びTHRPPMWSPVWPというペプチドは、hTfRに特異的に結合し、これらのペプチドは、hTfRを関連巨大分子で標的化することができた(Lee、上記)。これらのペプチドは、天然リガンドのTfと重複しない部位に結合し、hTfR陽性細胞の飲食作用経路を巨大分子で標的化することにインビボにおいて有用である(Lee、上記)。そのようなペプチドを使用して、PCNA由来ペプチドを標的化して、ペプチド送達を増強することも、特異的送達を更に増強することもできる。
用語「細胞透過性因子」又は「細胞膜担体」又は「細胞透過性要素」は、因子がcaPCNA相互作用を阻害するペプチド変種の能力に実質的に影響を与えない限り、細胞膜を変位する本明細書に開示されているペプチド変種の能力を増強するペプチドを含む任意の成分を意味する。場合により、細胞透過性因子は、哺乳類細胞における非飲食作用及び非分解経路を介して作動する。これらの因子には、細胞透過性ペプチド(CPP)又は細胞透過性ペプチドが含まれうる。caPCNA由来ペプチドに結合又は融合するのに適した細胞透過性ペプチド又はペプチドドメインの例には、例えば、ポリアルギニン(R6−R21)のような特定のタンパク質の伝達ドメインに由来する小型多塩基性ペプチド、アンテナペディア(AnTp)ホモドメインの第3へリックス、RYIRSタグ配列及び本明細書の表4に提示されているものが挙げられる。
一つの実施態様において、細胞膜透過性担体は、ペプチド、好ましくはアルギニン豊富ペプチドである(例えば、Futaki S. et al., (2001) “Arginine-rich peptides. An abundant source of membrane-permeable peptides having potential as carriers for intracellular protein delivery” J. Biol. Chem., 276, 5836)。細胞膜透過性担体ペプチドの多数のアルギニン残基は、6個を超えるアルギニン、好ましくは7、8、9、10、11、12、13、14又は15個のアルギニン残基、を含有することができる。アルギニン豊富ペプチドのアルギニン残基は、連続している必要はない。当業者は、適切な数のアルギニン残基を有する適切なアルギニン豊富ペプチドをどのように選択するかを知っている。
より多くの細胞外プロテアーゼ周囲腫瘍組織を使用して、本明細書に開示されているインヒビター(「積荷」)を送達するために、ペプチドヘアピンを使用することもできる(参照として本明細書に組み込まれている、US2007/0041904を参照すること)。作成物は、ポリアニオン性セグメントに共有結合していて、アニオン性ドメインのタンパク質分解性切断によってのみ実質的に内部移行するような、ポリアルギニンペプチドを含む。標的にされるプロテアーゼは癌細胞上に過剰発現している可能性があるので、内部移行は、正常細胞と比較して腫瘍細胞で起こる可能性が高い。細胞透過性ペプチド(CPP)(例えば、ポリアルギニンに基づいたもの)が負の帯電した残基から構成される阻害ドメインに融合している場合、これらの細胞会合は阻止される。ポリカチオン性とポリアニオン性のドメインの間のリンカーの(通常はプロテアーゼによる)切断が、CPP部分を放出し、目的の結合ペプチド(「積荷」)を腫瘍細胞のような細胞に結合させて進入させるので、そのような融合は、活性化可能なCPP(ACPP)と呼ばれる。
細胞への異種化合物の輸送の前の、ポリカチオン、カチオン性ポリマー及び/又はカチオン性ペプチドによる細胞の前処理も有用である(例えば、参照として本明細書に組み込まれている、2006/0083737を参照すること)。
核局在化配列(NLS)、例えば、VQRKRQKLMP、SKKKKIKV及びGRKRKKRTも、本明細書に開示されているペプチド変種を腫瘍細胞に輸送するのに有用である。他のNLXを、例えばNair et al., (2003), NLSdb: database of nuclear localization signals, Nucl. Acids Res., 31:397-399から得ることができる(http://cubic .bioc xolumbia.edu/db/NLSdb/も参照すること)。
幾つかの実施態様において、本明細書に開示されているペプチド変種は、細胞膜透過性担体と結合し、場合によりスペーサーを含む。例えば、5〜9個のアルギニン残基を有するポリアルギニンペプチドは更に、非アルギニンに基づいたスペーサーペプチド又は非標準アミノ酸若しくはアミノ酸類似体を有するスペーサーを含んでもよい。スペーサーは、一般に、付加的な長さを提供して、例えば本明細書に開示されているペプチド変種の機能又は輸送に対する立体障害を最小限にする。スペーサーは、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15個又はそれ以上のアミノ酸を含むことができる。スペーサーとしての使用に適したアミノ酸には、例えばグリシンが含まれる。
caPCNAペプチド変種及び細胞透過性ペプチドは、結合されるタンパク質を生物学的に活性にできる方法であれば、当該技術において既知の任意の適切な方法で、化学的結合により結合される。一つの態様において、結合特異性を増加する一つの方法は、架橋されるポリペプチドの一方又は両方において1回のみ又は数回見出される官能基と、直接化学結合することである。例えば、多くのタンパク質において、チオール基を含有する唯一のタンパク質アミノ酸であるシステインは、数回しか生じない。また、例えば、ポリペプチドがリシン残基を含有しない場合、第一級アミンに特異的な架橋試薬は、そのポリペプチドのアミノ末端に対して選択的である。結合特異性を増加するこの手法の利用における成功は、ポリペプチドが、分子の生物学的活性を失うことなく変更されうる分子の領域に、適度に希少であり反応性の残基を有することを必要とする。あるいは、修飾残基を有する合成ペプチドを、結合に対する特異性が増強されるように、合成することができる。
システイン残基が、架橋反応におけるそれらの参加が生物学的活性を妨げる可能性があるようなポリペプチド配列の部分に存在する場合は、それらを置換してもよい。システイン残基が置換される場合、典型的には、ポリペプチドの折り畳みにもたらされる変化を最小限にすることが望ましい。ポリペプチドの折り畳みにおける変化は、置換が化学的及び立体的にシステインと同様である場合に最小限である。これらの理由から、システインを置換するものとしては、セリンが好ましい。システイン残基が導入される場合、アミノ又はカルボキシ末端かその近傍に導入することが好ましい。目的のポリペプチドが化学的合成によるか又は組み換えDNAの発現により産生されるかのいずれの場合でも、従来の方法をそのようなアミノ酸配列修飾に利用することができる。
2つの構成成分の結合は、カップリング剤又は結合剤を介して実施することができる。適切な分子間架橋試薬には、例えば、J−スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)若しくはN,N′−(1,3−フェニレン)ビスマレイミド(両方とも、スルフヒドリル基に対して高度に特異的であり、非可逆的結合を形成する);N,N′−エチレン−ビス−(ヨードアセトアミド)、又は6〜11個の炭素メチレン架橋を有する他の試薬(スルフヒドリル基に対して比較的特異性がある);及び1,5−ジフルオ−2,4−ジニトロベンゼン(アミノ基及びチロシン基と非可逆的結合を形成する)が含まれる。他の架橋試薬には、p,p′−ジフルオロ−m,m′−ジニトロジフェニルスルホン(アミノ基及びフェノール基と非可逆的架橋を形成する);ジメチルアジプイミデート(アミノ基に対して特異的である);フェノール−1,4−ジスルホニルクロリド(主にアミノ基と反応する);ヘキサメチレンジイソシアネート若しくはジイソチオシアネート又はアゾフェニル−p−ジイソシアネート(主にアミノ基と反応する);グルタルアルデヒド(幾つかの異なる側鎖と反応する)並びにジスジアゾベンジジン(主にチロシン及びヒスチジンと反応する)が含まれる。
架橋試薬は、ホモ二官能性、すなわち、同じ反応を有する2つの官能基であってもよい。適切なホモ二官能架橋試薬は、ビスマレイミドヘキサン(「BMH」)である。架橋試薬はヘテロ二官能性であってもよい。ヘテロ二官能架橋試薬は、2つの異なる官能基、例えばアミン反応基及びチオール反応基を有し、それぞれ遊離アミン及びチオールを有する2つのタンパク質を架橋する。ヘテロ二官能架橋試薬の例は、スクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(「SMCC」)、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(「MBS」)、及びMBSの延長鎖類似体であるスクシンイミド4−(p−マレイミドフェニル)ブチレート(「SMPB」)である。これらの架橋剤のスクシンイミジル基は、第一級アミンと反応し、チオール反応性マレイミドは、システイン残基のチオールと共有結合を形成する。スルホネート基のような親水性部分を架橋試薬に付加して、その水溶性を向上させることができる。スルホ−MBS及びスルホ−SMCCは、水溶性を持つように修飾された架橋試薬の例である。
多くの架橋試薬は、細胞条件下では非切断性であってもよい結合体を生じる。しかし、幾つかの架橋試薬は、ジスルフィドのような、細胞条件下で切断可能な共有結合を含有する。例えば、Traut試薬、ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)(「DSP」)及びN−スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(「SPDP」)は、周知の切断性架橋剤である。切断性架橋剤の使用は、標的細胞に送達された後、輸送ポリペプチドから積荷部分が分離することを可能にする。直接ジスルフィド結合を使用することもできる。
上記に考察されたものを含む多数の架橋試薬は、市販されている。詳細な仕様説明書は、商業供給者から容易に入手可能である。タンパク質架橋及び結合体調製についての一般的な参照は、Wong, Chemistry of protein conjugation and cross-linking, CRC Press (1991)である。
化学架橋は、スペーサーアームの使用を含むことができる。スペーサーアームは、分子内柔軟性を提供するか又は結合体部分の間の分子内距離を調整し、それによって、生物学的活性の保存に役立つことができる。スペーサーアームは、スペーサーアミノ酸を含むポリペプチド部分の形態、例えばプロリンであることができる。あるいは、スペーサーアームは、「長鎖SPDP」(Pierce Chem. Co., Rockford, IL, Cat. No. 21651 H)のように、架橋試薬の一部であることができる。
あるいは、キメラペプチドを、大規模産生及び精製に適した既知の宿主細胞に発現させることができるような、細胞透過性配列及びcaPCNAペプチド変種配列を含む融合ペプチドとして、産生することができる。本明細書に記載されている融合ペプチドは、上記に記載された標準的組み換えDNA技術に類似した方法により又は容易に適合させた方法により、形成及び使用することができる。
天然ペプチド(L型のもの)を、天然のプロテアーゼによる分解に付すことができ、本明細書に開示されているペプチドは、ペプチドのD型のもの及び/又は「レトロインベルソ異性体」を含むように調製することができる。この場合において、本明細書に開示されているcaPCNAペプチド変種のペプチドの短フラグメント、及び変種のレトロインベルソ異性体が調製される。caPCNAペプチド変種は、1つ以上のLアミノ酸、Dアミノ酸、又は両方の組み合わせを有することができる。例えば、多様な実施態様において、ペプチドは、Dレトロインベルソペプチドである。用語「レトロインベルソ異性体」は、配列の方向が逆転し、それぞれのアミノ酸残基のキラリティーが逆転している、直鎖ペプチドの異性体を意味する。例えば、Jameson et al., Nature, 368, 744-746 (1994); Brady et al., Nature, 368, 692-693 (1994)を参照すること。Dエナンチオマーを逆合成と組み合わせた全体的な結果は、それぞれのアミド結合におけるカルボニル及びアミノ基の位置が交換されおり、一方、それぞれのアルファ炭素における側鎖基の位置が保存されていることである。特に明確な記述のない限り、任意の所定のLアミノ酸配列は、対応する天然Lアミノ酸配列と逆の配列を合成することによって、Dレトロインベルソペプチドにすることができると予測される。
適切な化学療法剤には、例えば、シクロホスファミド(CYTOXAN(商標))、カペシタビン(XELODA(商標))、クロラムブシル(LEUKERAN(商標))、メルファラン(ALKERAN(商標))、メトトレキセート(RHEUMATREX(商標))、シタラビン(CYTOSAR-U(商標))、フルダラビン(FLUDARA(商標))、6−メルカプトプリン(PURINETHOL(商標))、5−フルオロウラシル(ADRUCIL(商標))、パクリタキセル(TAXOL(商標))、ドセタール、アブラキサン、ドキソルビシン(ADRIAMYCIN(商標))、イリノテカン (CAMPTOSAR(商標))、シスプラチン (PLATINOL(商標))、カルボプラチン (PARAPLATIN(商標))、オキサリプラチン、タモキシフェン(NOLVADEX(商標))、ビカルタミド(CASODEX(商標))、アナストロゾール(ARIMIDEX(商標))、エキセメスタン、レトロゾール、イマチニブ(GLEEVEC(商標))、リッキシマブ (RITUXAN(商標))、トラツズマブ(HERCEPTIN(商標))、ゲムツズマブ、オゾガマイシン、インターフェロン−アルファ、トレチノイン (RETIN-A(商標)、AVITA(商標)、RENOVA(商標))、三塩化二ヒ素、ベバシズマブ(AVASTIN(商標))、ボルテゾミブ(VELCADE(商標))、セツキシマブ(ERBITUX(商標))、エルロチニブ(TARCEVA(商標))、ゲフィチニブ(IRESSA(商標))、ゲムシタビン(GEMZAR(商標))、レナリドミド(REVLIMID(商標))、ソラフェニブ、スニチニブ(SUTENT(商標))、パニツムマブ(VECTIBIX(商標))、ペガスパルガーゼ(ONCASPAR(商標))及びトシツモマブ(BEXXAR(商標))、並びにこれらのプロドラッグ若しくは前駆体、又はそれらの組み合わせが含まれる。
増殖阻害剤の例には、G1停止及びM期停止を誘導する薬剤のような、細胞周期進行を(S期以外の場所で)阻止する薬剤が挙げられる。伝統的なM期ブロッカーには、ビンカ(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、タキサン、並びにドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド及びブレオマイシンのようなトポイソメラーゼIIインヒビターが含まれる。G1期を停止する薬剤は、また、S期停止まで波及し、例えば、タモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキセート、5−フルオロウラシル及びara−CのようなDNAアルキル化剤である。
一つの実施態様において、化学療法剤の投与量は、本開示のペプチドと共に使用される場合、単剤療法に使用される投与量よりも低くなることができる。例えば、本開示のcaPCMAペプチドと同時投与される(前に、又は間に、又は後で)場合のドキソルビシンでは、投与量は、標準用量より25%又は35%又は50%又は60%又は75%又は80%低くなることができる。他の要因に応じて、投与量は、300mg/m2〜500mg/m2の範囲であることができる。他の適切な用量は、それより低くなることができ、例えば、20mg/m2、50mg/m2、100mg/m2、150mg/m2若しくは200mg/m2であるか又はそれより高くなることができ、400mg/m2、450mg/m2、500mg/m2、550mg/m2若しくは600mg/m2である。
本明細書に開示されているペプチドは、放射線療法(DNA損傷性である全ての形態の電離放射線を含む)及び他の任意の形態の癌療法を受けている癌患者にも適している。放射線治療に使用される放射線の量は、グレイ(Gy)で測定され、治療される癌の種類及び病期によって変わることができる。治療の場合では、固形上皮腫瘍に典型的な線量は、約60〜80Gyであり、一方、リンパ腫は、約20〜40Gyで治療される。放射線の予防(補助)線量は、典型的には、1.8〜2Gyの分割でおよそ45〜60Gyである(例えば、それぞれ乳癌、頭部癌及び頸部癌)。患者が化学療法又は他の任意の療法を受けているかどうか、放射線治療が外科手術の前に投与されるのか又は後に投与されるのか、及び外科手術の成功の度合い、を含む、多くの他の要因が、線量を選択する場合に放射線腫瘍医により考慮される。成人に対する典型的な分割スケジュールは、1日あたり1.8〜2又は約3Gyである。本発明のペプチドが放射線療法と組み合わせて使用される場合、放射線の線量を、例えば10%、20%、30%、40%、50%、60%及び75%低減することができる。放射線療法を行う様式には、例えば、従来の外部ビーム放射線療法(2DXRT)、3次元原体照射療法(3DCRT)、定位放射線療法、画像誘導放射線治療(IGRT)及び強度変調放射線治療(IMRT)が含まれる。
エネルギー性イオン化粒子(プロトン又は炭素イオン)を使用する粒子療法(プロトン療法)も適している。放射線同位体療法(RIT)には、腫瘍組織を標的化するために放射線同位体を使用することを含む。例には、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212及びLuの放射性同位体が挙げられる。
放射線免疫療法には、抗体のような生物学的製剤及び放射性同位体の使用が含まれる。イブリツモマブチウキセタン(Zevalin(商標))は、イットリウム90の分子と結合しているモノクローナル抗体抗CD20である。トシツモマブヨウ素131(Bexxar(商標))は、モノクローナル抗体抗CD20に結合しているヨウ素の分子である。
本明細書に開示されているペプチドインヒビターは、特定の癌療法、例えば化学療法又は放射線療法の前に、その間に、及びその後に投与することができる適切な増強剤である。
「小型分子」は、本明細書において、約500ダルトン未満の分子量を有することを意味する。
本明細書に開示されているペプチドを使用した治療に適した癌には、グリア芽細胞腫、神経膠腫、星状細胞腫、髄膜腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、黒色腫、結腸癌、肺癌、腺癌、子宮頸癌、卵巣癌、膀胱癌、リンパ芽球腫、白血病、骨肉腫、乳癌、肝癌、腎腫、副腎癌又は前立腺癌、食道癌のような多様な形態の悪性腫瘍が含まれるが、これらに限定されないことが理解されるべきである。悪性細胞がcsPCNAアイソフォームを発現する場合、本明細書に開示されている組成物は、caPCNAアイソフォームと1つ以上のタンパク質との相互作用を撹乱することができる。癌の転移も、本明細書に開示されているペプチドインヒビターにより治療される。癌性又は前悪性又は前癌性のいずれかの細胞も、癌特異的PCNAアイソフォームを発現してれば、細胞集団を低減することや化学予防に適している。
ペプチド配列を模倣する非ペプチド化合物は、当該技術において知られている(非ペプチド小型分子模倣体を同定する方法を記載している、Meli et al. J. Med. Chem., 49:7721-7730 (2006))。ペプチド配列を模倣する非ペプチド化合物の合成も、当該技術において知られている(例えば、Eldred et al. J. Med. Chem., 37:3882, (1994); Ku et al. J. Med. Chem., 38:9, (1995); Meli et al. J. Med. Chem., 49:7721-7730 (2006)を参照すること)。caPCNAに結合する、本明細書に開示されているcaPCNA由来ペプチド又はその変種を模倣するそのような非ペプチド化合物は、本発明に包含される。
用語「ペプチド模倣体」又は「ペプチドの模倣体」は、非天然アミノ酸のような非ペプチド要素を含む、小型タンパク質様鎖(ペプチド)を有する化合物を意味する。ペプチド模倣体は、特定の変化を誘導又は実行するために、標的タンパク質に結合させる目的で設計及び合成される。一般に、ペプチド模倣体は、模倣又は拮抗するように設計された母体ペプチド構造の主な相互作用を模倣又は拮抗することで機能する。ペプチド模倣体は、通常、酵素的に切断可能なペプチド結合のような、伝統的なペプチド特性を有さない。ペプチド模倣体の設計及び合成について入手可能な多様な技術の概説には、例えば、al-Obeidi et al., (1998), “Peptide and peptidomimetic libraries. Molecular diversity and drug design” Mol Biotechnol.; 9(3):205-23;及びHouben-Weyl: Synthesis of Peptides and Peptidomemetics, Thieme Medical Publishers, 4th edition (2003)を参照すること。
本明細書で使用されるとき、用語「ペプチドの模倣体」、「ペプチド模倣体」及び「ペプチド類似体」は、互いに交換可能に使用され、これらの用語は、本明細書に開示されているcaPCNAペプチド又はその変種と実質的に同じ構造及び/又は機能特性を有するような、合成化合物を意味する。模倣体は、合成された非天然のアミノ酸類似体から完全に構成されていてもよいし、部分的に天然のペプチドアミノ酸と、部分的に非天然のアミノ酸類似体とのキメラ分子であってもよい。模倣体は、天然アミノ酸の保存的置換を、そのような置換が模倣体の構造及び/又は阻害若しくは結合活性を実質的に変更しない限り、任意の量で組み込むこともできる。ある模倣体が本開示の範囲内であるか、すなわち、その構造及び/又は機能が実施的に変更されていないかどうか、は日常的な実験によって決定されるであろう。したがって、ある模倣体組成物は、caPCNA仲介細胞増殖を特異的に阻害することができる限り、範囲内である。
ポリペプチド模倣体組成物は、非天然構造成分の任意の組み合わせを含有することができ、これらは典型的には、以下の3つの構造群である:a)天然のアミド結合(「ペプチド結合」)以外の残基結合基;b)天然のアミノ酸残基の代わりの非天然残基;又はc)二次構造的模倣を誘導する、すなわち二次構造(例えばベータターン、ガンマターン、ベータシート、アルファヘリックス立体構造など)を誘導若しくは安定化させる残基。
あるポリペプチドの残基の全て又は幾つかが天然ペプチド結合以外の化学的手段によって結合される場合、そのポリペプチドは模倣体であると特徴決定することができる。個別のペプチド模倣残基を、ペプチド結合、他の化学的結合、又はカップリング手段、例えばグルタルアルデヒド、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、二官能性マレイミド、N,N=ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)又はN,N=ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)などにより結合することができる。伝統的なアミノ酸結合(「ペプチド結合」)の代替案となることができる結合基には、例えば、ケトメチレン(例えば−C=O−NH−−の代わりに−C=O−CH)、アミノメチレン(CH−−NH)、エチレン、オレフィン(CH=CH)、エーテル(−CH−O)、チオエーテル(CH−S)、テトラゾール(CN)、チアゾール、レトロアミド、チオアミド、又はエステルが含まれる(例えば、Spatola (1983) in Chemistry and Biochemistry of Amino Acids, Peptides and Proteins, Vol. 7, pp 267-357, A Peptide Backbone Modifications, Marcell Dekker, NYを参照すること)。
あるポリペプチドを、天然産のアミノ酸残基の代わりに、全て又は幾つかの非天然の残基を含有することによって、模倣体であると特徴決定することもできる。非天然残基は、科学及び特許文献において十分に記載されており、幾つかの例示的な非天然組成物が天然アミノ酸残基の模倣体として有用である。
別の実施態様において、caPCNA相互作用を撹乱することができるペプチドには、1つ以上のアミノ酸置換を含むアミノ酸配列を有するペプチドであって、LGIPEQEYのNH末端に約+3連続又は不連続付加アミノ酸を含み、LGIPEQEYのCOOH末端に約+9連続又は不連続アミノ酸を含むようなペプチドが含まれる。例えば、これらのペプチドの幾つかは、アミノ酸配列のQLGIPEQEYSC(+1−NH2末端、+2−COOH末端)、VEQLGIPEQEY(+3−NH2末端)、LGIPEQEYSCVVK(+5−COOH末端)、LGIPEQEYSCVVKMPSG(+9−COOH末端)、EQLGIPEQEY(+2−NH2末端)、QLGIPEQEY(+1−NH2末端)、LGIPEQEYSCVVKMPS(+8−COOH末端)、LGIPEQEYSCVVKMP(+7−COOH末端)、LGIPEQEYSCVVKM(+6−COOH末端)、LGIPEQEYSCVV(+4−COOH末端)、LGIPEQEYSCV(+3−COOH末端)、LGIPEQEYSC(+2−COOH末端)、LGIPEQEYS(+1−COOH末端)、並びに、LGIPEQEYに隣接する付加NH末端アミノ酸及び付加COOH末端アミノ酸の組み合わせを含む。csPCNA特異的抗体を生成するペプチドの特異性に影響を与えない置換を含むアミノ酸突然変異は、本開示の範囲内である。ペプチドにおける1つ以上のアミノ酸残基を、アミノ酸類似体、又は非天然若しくは非標準アミノ酸で置き換えることができる。
caPCNA由来ペプチド変種の投与量は、ペプチドの効能、ペプチドのインビボでの安定性、投与様式、治療される癌の性質、患者の体重、年齢、及び当業者により一般的に考慮される他の要因によって決まる。例えば、caPCNA由来ペプチド変種薬の投与量は、約0.1〜10.0マイクログラム(mcg)/kg体重又は約0.2〜1.0mcg/kg体重又は約0.5〜5.0mcg/kg体重又は約10.0〜50.0mcg/kg体重の範囲であることができる。毒性効果及び腫瘍死滅能力に応じて、投与量は、約1.0〜10.0mg/kg体重及び0.1〜1.0mg/kg体重の範囲であることもできる。被験者に投与されるインヒビターの量は、インヒビターの種類、被験者及び特定の投与様式に応じて変更することができるし、変更されるであろう。当業者は、投与量を、Goodman & Goldman's The Pharmacological Basis of Therapeutics, Ninth Edition (1996), Appendix II, pp. 1707-1711からの指針や、Goodman & Goldman's The Pharmacological Basis of Therapeutics, Tenth Edition (2001), Appendix II, pp. 475-493からの指針によっても決定できることを理解する。
本明細書に開示されている組成物の投与は、通常の技能を有する医師により有効であることが知られている、任意の経路を介して実施することができる。非経口経路には、静脈内、筋肉内、皮下及び腹腔内投与経路が含まれる。本明細書に開示されている組成物の静脈内、筋肉内及び皮下投与経路が適している。非経口投与では、本明細書に開示されているペプチドを、リン酸緩衝食塩水(PBS)、又はヒト被験者への投与においてFDA基準を満たした、任意の適切な発熱物質無含有医薬品等級緩衝剤、と組み合わせることができる。本明細書で使用されるとき、「薬学的に許容される担体」には、所望の特定の投与形態に適した、あらゆる、溶媒、希釈剤、又は他の液体ビヒクル、分散又は懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘又は乳化剤、防腐剤、などが含まれる。Remington's Pharmaceutical Sciences, 20th Edition, A. R. Gennaro(Williams and Wilkins, Baltimore, MD, 2000)は、医薬組成物を配合するのに使用される多様な担体及びその調製のための既知の技術を開示する。本明細書に記載されている組成物の溶液又は懸濁液は、注射用水、食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒のような滅菌希釈剤;EDTAのようなキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩のような緩衝剤;及び、塩化ナトリウム又はデキストロースのような浸透圧を調整する薬剤、も含むことができる。組成物の非経口調合剤を、この分野の標準的な実施に従って、ガラス又はプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジ、又は多回用量バイアルに封入することができる。本明細書に開示されている組成物を、再構成のためにバイアルに含有されている凍結乾燥滅菌粉末として保存することができ、再構成前の製品は−20℃で保存することができる。
非経口的に、すなわち静脈内、筋肉内などに投与される薬剤は、水、食塩水のような滅菌希釈剤;グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール又は他の合成溶媒のような薬学的に許容されるポリオール;ベンジルアルコール、メチルパラベン、クロロブタノール、フェノール、チメロサールなどのような抗菌及び/又は抗真菌剤;アスコルビン酸又は重亜硫酸ナトリウムのような酸化防止剤;エチレンジアミン四酢酸のようなキレート剤;醋酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩のような緩衝剤;並びに/或いは塩化ナトリウム、デキストロース、又は、マンニトール若しくはソルビトール等のポリアルコールのような浸透圧を調節する薬剤、を含むことができる。溶液のpHを、塩酸又は水酸化ナトリウムのような酸又は塩基で調整することができる。経口投与用の調合剤は、一般に、不活性希釈剤又は食用担体を含む。これらには、微晶質セルロース、トラガカントガム又はゼラチンのような薬学的に適合される結合剤;デンプン又はラクトースのような賦形剤;アルギン酸、プリモゲル又はトウモロコシデンプンのような崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム又はステロートのような潤滑剤;コロイド二酸化ケイ素のような滑剤;スクロース又はサッカリンのような甘味剤;及び/或いはペパーミント、サリチル酸メチル又はカンキツ類香料のような風味剤が含まれうる。経口調合剤を、ゼラチンカプセルに封入することや、錠剤に圧縮することや、液体担体として調製することができる。吸入による投与では、薬剤は、一般に、適切な噴射剤、例えば二酸化炭素のようなガスを含有する加圧容器若しくはディスペンサー、又は噴霧器から、エアロゾル噴霧の形態で送達される。局所(例えば、経皮又は経粘膜)投与では、一般に、透過される関門に適した浸透剤が調合剤に含まれる。経粘膜投与は、鼻噴霧剤又は坐剤の使用を介して達成することができ、経皮投与は、当該技術において一般に知られている軟膏剤、膏薬、ゲル剤、パッチ剤又はクリーム剤を介することができる。
本明細書に開示されているペプチド及び他の組成物を、任意の適切な方法により投与することができる。例えば、ペプチド組成物を食塩水又は適切な緩衝剤に希釈して、静脈内に直接投与することができる。例えば、ペプチド組成物をリポソームに封入して、任意の適切な方法により静脈内投与することができる。例えば、ペプチド組成物を、当業者に既知の延長放出薬剤送達系により送達することができる。腫瘍を標的化する他の様式も適している。例えば、US特許出願公開第2005/0008572号(Prokop et al.)(この開示は参照として本明細書に組み込まれる)は、ナノ粒子腫瘍標的化及び治療に関する方法及び組成物を開示している。US特許出願公開第2003/0212031号(Huang et al.)(この開示は参照として本明細書に組み込まれる)は、安定した脂質含有薬剤送達複合体及びそれらの製造方法を開示している。
本明細書に開示されているペプチドを発現することができる複製欠損ウイルス発現ベクター(例えば、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルス及び他)も、適切な送達系である。レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、アルファウイルスベクター、セムリキ森林ウイルスに基づいたベクター、シンドビスウイルスに基づいたベクターのような、他の核酸送達系も有用である(Schlesinger and Dubensky (1999) Curr. Opin. Biotechnol. 5:434-439及びYing et al. (1999) Nat. Med. 5(7):823-827を参照すること)。
本明細書に開示されているcaPCNA由来ペプチドは、適切なウイルスベクターにより発現される。PCNA遺伝子のcDNA配列は、例えば、参照として組み込まれているTravali et al., (1989), J. Biol. Chem. 264 (13), 7466-7472において、また、例えばNM_002592及びNM_182649のような幾つかのGenBank登録において見出される。PCR及び部位特異的突然変異誘発技術に基づいた標準的クローニング法を使用して、癌細胞に変種ペプチドを発現するために、caPCNA領域のコード領域において1つ以上のAla置換又は他の保存的突然変異を操作する。
加えて、用語「薬学的有効量」又は「治療有効量」は、ある患者、例えば乳癌を有する患者、を治療するのに有効な量(用量)を意味する。例えば、インビトロ試験条件下において、適切な用量は、少なくとも50%の癌細胞を死滅させる。また「薬学的有効量」は、1用量若しくは任意の投与量又は経路を、単独で又は他の治療剤と組み合わせて摂取したとき、所望の治療効果を与える量として解釈されうることが、本明細書において理解されるべきである。本開示の場合では、「薬学的有効量」は、例えば、caPCNA及び1つ以上のその相互作用パートナーの阻害を(例えば、完全に若しくは部分的に)抑制すること又は腫瘍増殖を低減すること又は癌細胞増殖を低減することができるcaPCNA由来ペプチド変種の量として理解することができる。
以下の実施例は例示的であり、本開示の範囲を制限することを意図しない。
〔実施例〕
==実施例1==
<乳癌細胞に対する細胞透過性caPCNA由来ペプチド変種の細胞傷害効果>
乳癌細胞に導入されたcaPCNA由来ペプチド(表1及び表2)は、パートナータンパク質との結合においてPCNAと競合し、それによって、全長PCNAがそれらと相互作用するのを阻害する。このペプチドは、PCNAのドメイン間連結ループ(IDCL)の一部を表し、正確なDNA複製及び修復を実施するのに必要であるポリメラーゼδ、色素性乾皮症G群(XPG)又はFEN−1のようなタンパク質との結合において、PCNAと競合する。DNAを正確に複製及び修復する細胞の能力の減少は、最終的にアポトーシス細胞死をもたらす。このことは、DNA複製及び修復の機能不全をもたらす可能性があり、結果的に癌細胞の死をもたらす。
非アルギニン結合caPCNA由来ペプチド(R9−caペプチド)を使用して、caPCNA相互作用を撹乱する効果を試験した。1群の細胞透過性ペプチドは、細胞内取り込みにおいて正に帯電したアミノ酸に依存する。ポリアルギニンは、細胞内取り込みの促進においてポリリシン及びポリヒスチジンよりも効率的であることが示された。具体的には、Dアルギニン配列は、Lアルギニン配列よりも効率的である。したがって、D非アルギニン結合caペプチドを、配列RRRRRRRRRCCLGIPEQEY(R9−caペプチド)により作成した。
U937単球性リンパ腫細胞は、懸濁液中で増殖するが、この細胞株は、非常に急速に増殖し、再現性の高い結果を提供するので、治療ペプチド評価に使用するためのモデルとなる細胞株であることが示された。ウエスタンブロット分析は、この細胞株が、PCNAの酸性(caPCNA)と塩基性(nmPCNA)のアイソフォームを両方とも含有することを示した。最初に、R9配列単独がU937細胞に細胞傷害効果を有するかを試験した。U937細胞を、100μMまでのR9配列で24時間処理した。R9配列は、これらの細胞においてアポトーシスを促進しなかった(図2A)。次に細胞を、増量濃度の非結合caペプチドで処理して、N末端アルギニン配列がなく、細胞傷害活性を有さないことを確実にした。200μMまでのcaペプチドをU937細胞に24時間加えた。caペプチド単独では、細胞傷害活性を有さなかった(図2A)。
R9−caペプチドの細胞内取り込み及び核局在化を試験するために、N末端フルオレセインイソチオシアネート(FITC)残基を結合して、ペプチドの細胞内局在を顕微鏡下で可視化できるようにした。U937細胞を、10μMのFITC−R9−caペプチドで24時間処理した。次に細胞をサイトスピンによりポリ−L−リシン被覆スライド上に収集し、二本鎖DNAと複合体を形成して核の位置を示すDNA染色染料である4′−6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)を含有する培地を載せた。Leica DM500蛍光顕微鏡を使用して、染色を可視化した。図2Bは、DAPI染色核(青色)及びFITC標識R9−caペプチド(緑色)が実際に重複していることを表し、これは、R9−caペプチドが細胞により内部移行し、核に到達可能であったことを示す。
R9配列がペプチドの細胞内取り込みを促進したことが確立されると、増量のR9−caペプチドをU937細胞に加えて、ペプチドの取り込みが細胞傷害効果を有するかを決定した。20μMを超えるR9−caペプチド濃度は、アポトーシス細胞の顕著な増加を誘導することが観察され、ほぼ93%の細胞が50uMのR9−caペプチドの存在下でアポトーシス性であった(図2A)。
R9−caペプチドの核局在化を示す図3を参照すること。U937細胞をFITC−R9−caペプチドで処理し、サイトスピンにより被覆スライド上に収集した。DAPI染色核(左側)及びFITC−R9−caペプチド(右側)の蛍光画像を重ね合わせると(中央)、細胞内取り込み及びR9−caペプチドの核局在化を示した。四角形は無傷細胞を示す。
R9−caペプチドの細胞傷害性がPCNAペプチド配列それ自体に起因することを確認するために、同じ8個のアミノ酸を使用するスクランブルペプチドであるR9スクランブルを調製した(表3)。R9スクランブルによるU937細胞の処理は、細胞傷害性をほとんどもたらさなかった(表3)。これらのデータは、R9−caペプチドの細胞傷害性がcaPCNAペプチド配列に起因し、ペプチドの取り込みによるあらゆる潜在的な細胞損傷に起因しないことを示した。
caペプチドをU937と共に24時間インキュベートしたが、アポトーシスの増加は検出されなかった。大部分のペプチドは細胞の中に受動的に移動しないので、非アルギニンリンカーをcaペプチドのN末端部分に結合して、R9−caペプチドを作成した。R9−caペプチドの蛍光可視化は、細胞内取り込みが生じること及びペプチドが核に配置されうることを明らかにした。R9配列単独を細胞毒性について試験すると、アポトーシスの増加を引き起こさなかった。しかし、R9−caペプチドは、特に20μMを超える濃度でアポトーシスに顕著な増加を引き起こし、50μMでは、ほぼ100%の細胞死を引き起こした。caペプチドのアミノ酸配列をスクランブルしてR9リンカーに結合し、R9スクランブルを作成したとき、細胞傷害性は検出されなかった。
更に、表6に示されているように、caPCNA阻害ペプチドは、非悪性細胞と比較して、癌細胞の死滅において実質的に特異的であった。U937細胞を用いた研究が我々の乳癌の研究と直接関係することを実証するため、R9−caペプチドに対する乳癌細胞株(MCF7)及び非悪性乳腺細胞株(MCF−10A)の相対的感受性を決定した。R9−caペプチドを非悪性(MCF 10A)及び悪性(MCF 7)乳腺細胞における細胞傷害効果について評価した(表6)。細胞を50μMのR9−caペプチドで48時間処理し、細胞死の程度をフローサイトメトリーにより評価した。R9−caペプチドは、非悪性乳腺細胞(MCF 10A)よりも悪性乳腺細胞(MCF 7)に対しておよそ5倍細胞傷害性があることが観察された。乳癌細胞における有意なレベルの細胞傷害性は、例えば観察されたXPGタンパク質へのcaPCNAの優先的な結合により示されているように、これらの細胞におけるcaペプチドと特定のDNA修復タンパク質との結合相互作用の増強に起因する可能性があり、これらの細胞におけるDNA修復に阻害をもたらし、最終的に細胞死をもたらす。
したがって、この実施例は、R9−caペプチドが1つ以上の結合パートナーとのcaPCNA相互作用を選択的に撹乱し、細胞死をもたらすことを実証した。
==実施例2==
<R9−caペプチドが、ドキソルビシンの作用を増大し、腫瘍細胞を化学療法に対して感作する>
R9−caペプチドは癌細胞の死滅に効果的であるので、ペプチドとDNA損傷化学療法剤との組み合わせが、使用される薬剤の濃度の低下を可能にするかを試験した。ドキソルビシンは、多くの種類の固形腫瘍及び急性白血病の治療に使用されるDNA損傷剤である。非常に効果的な薬剤であるが、その主な副作用の1つは心筋症である。ドキソルビシンが心臓に対して引き起こす損傷のせいで、一人の患者は、500mg/m2未満の生涯総用量しか摂取することができない。細胞傷害用量のR9−caペプチドと組み合わせた低用量のドキソルビシンが、高濃度のドキソルビシン単独と同じ量で細胞死を引き起こすことができるならば、有害な副作用を低減する可能性のある、少量でのドキソルビシンの使用が可能になる。U937細胞を、漸増濃度のドキソルビシンと共に25μMのR9−caペプチドで24時間処理した。R9−caペプチドとドキソルビシンの組み合わせは、ドキソルビシンの半阻害濃度50(IC50)をおよそ140nMから110nMに低減する(図2B)。ドキソルビシンと組み合わせたR9−caペプチドの有する効果は、濃度が低くなるとより顕著になると思われる。U937細胞を100nMのドキソルビシンで処理すると、30%の細胞死が達成されるが、25μMのR9−caペプチドと組み合わせた場合、同じレベルの細胞傷害性を達成するために25nMのドキソルビシンしか必要ではない。25μMのR9−caペプチドがドキソルビシンと組み合わせて投与される場合、IC50に大きな低減はないが、必要なドキソルビシンの量におけるあらゆる低減は、薬剤が患者に対して有する有害な副作用を潜在的に低減することができる。
caPCNAアイソフォームを発現する細胞の種類(例えば、乳房、結腸、肺、白血病など)は、caPCNA由来ペプチドに対して感受性があるが、それは、これらのペプチドのコア構造が、caPCNAアイソフォーム内の特有の構造に似ている(そしてこの構造は、caPCNAアイソフォーム内の8個のアミノ酸(126〜133)の伸展における1つ以上の酸性アミノ酸の翻訳後修飾の欠失のせいで、非悪性(nm)PCNAアイソフォームには存在しない)からである。これらのペプチドに対する白血病細胞及び神経芽細胞腫細胞の感受性を試験した。結腸癌細胞、子宮頸癌細胞、卵巣癌細胞、前立腺癌細胞、肺癌細胞、食道感細胞、肝癌細胞、膵癌細胞、乳癌細胞、黒色腫癌細胞(及び他の形態の癌)は、全てcaPCNAアイソフォームを発現する。したがって、これらの種類の癌の全て及びcaPCNAを発現する他の任意の癌の種類は、これらの癌細胞に対するcaPCNA由来ペプチド又はその変種の細胞傷害効果に対して感受性がある。
したがって、R9−caペプチド(又は本明細書に開示されている他の任意のcaPCNA由来ペプチド若しくはその変種)は、単独の又は他のDNA損傷剤と組み合わせた治療剤として有用である。ドキソルビシンのような化学療法剤での治療によりもたらされる有害な副作用は、薬剤がR9−caペプチドと組み合わせて使用される場合に実質的に低減される。この実施例は、R9−caペプチドがDNA損傷剤の細胞傷害効果を増大することができ、また、耐性腫瘍を癌治療剤及び放射線治療に対して感受性にする可能性を実証している。
==実施例3==
<R9−caペプチドの細胞傷害作用における相互作用アミノ酸の同定>
PCNAの癌関連エピトープも、PCNAの可動IDCL領域の一部である。PCNAのこの領域は、不規則構造を有すると考慮される。タンパク質における不規則構造は、通常、タンパク質−タンパク質相互作用部位と関連する。R9−caペプチドの細胞傷害作用は、このペプチドが、全長PCNAの結合パートナーと相互作用すること及びPCNA結合を介して生じる正常なプロセスを阻害することを示す。R9−caペプチド配列のどのアミノ酸が、ペプチドをこれらのタンパク質に結合するのに必要であるかを決定するために、それぞれのアミノ酸を個別にアラニンに突然変異させたペプチド作成物を生成した(表3)。caPCNAのアラニン突然変異ペプチドをそれぞれ使用して、U937細胞を24時間処理した。タンパク質結合に重要であるアミノ酸は、アラニンで置換された場合、細胞傷害性の減少を示すと推定される。結合にとって重要ではないアミノ酸は、非置換ペプチドと同様の細胞傷害レベルを示すと予測される。それぞれのアラニン置換R9結合caペプチドの潜在的な細胞傷害効果の比較のため、U937細胞を30μMのペプチドで処理した。これは、R9−caペプチドがほぼ50%の細胞死をもたらす濃度であった(図2A)。この研究の結果を表3に示す。位置aa126又はaa133にアラニン置換を含有するペプチドは、ほとんど細胞傷害活性を示さないことが観察され、したがって、ペプチドの活性にとって重要であると思われる。アミノ酸位置128にアラニン置換を有するペプチドは、細胞傷害性の減少を示したが、位置126又は133の置換において観察された程には至らなかった。驚くべきことに、アミノ酸位置129、131又は132のアラニン置換は、ペプチドの細胞傷害活性を有意に増加したことが観察された。
したがって、この実施例は、caPCNA由来ペプチドにおけるアミノ酸置換が、治療用途の多様なペプチド変種を提供することを実証している。
==実施例4==
<細胞傷害性に対する観察されたcaペプチドアラニン置換効果の分子モデリング>
アラニン置換caペプチドの観察された細胞傷害効果と、PCNAパートナーによる代替ペプチドの認識に影響を与える能力との潜在的な関係を洞察する力を得るために、インシリコ分子モデリング研究を実施した。これらの研究を実施するために、PCNAと既知の結合パートナーFEN−1との相互作用をモデル化した。FEN−1は、X線結晶構造が実際に知られている、数少ないPCNA結合パートナーのうちの1つであり、したがってモデリング研究を促進する。3つのFEN−1分子に結合しているPCNAホモ三量体の結晶構造を開発した。
それぞれのFEN−1分子は、対応するPCNAモノマーに異なる配向で結合し、PCNA分子A、B及びCは、FEN−1分子X、Y及びZにそれぞれ結合する。それぞれのFEN−1モノマーの配向における差は、対応するPCN/FEN−1モノマー対A−XとC−Zが重なる場合に明確に示される。しかし、FEN−1のX及びZ鎖の両方のC末端尾部領域(aa330〜380)は、PCNAのIDCL部分と相互作用する。(図5を参照すること。)この複合体を90°回転させ、PCNA分子を空間充填モデルとして表した場合、aa126〜133ペプチドが、腔の領域において相互作用するFEN−1アミノ酸残基の周りに適合する腔を形成することが明らかとなった(図6)。この腔には、アラニン突然変異分析によりR9−caペプチドの細胞傷害活性に重要であることが示されたアミノ酸である(表3)、PCNAのaa126及びaa133が隣接していた。腔との関係において、aa126〜133のアミノ酸R群に注目すると、aa126、aa128及びaa133が腔の方向を向き、PCNA/FEN−1相互作用のために接触ポイントを提供していることが明らかである(図7)。しかし、aa127及びaa130のR群は、ポケットと反対の方向を向き、PCNA/FEN−1結合に関与しているとは思われない(図7)。アラニン突然変異分析により細胞傷害活性の増強が示されたアミノ酸のうち、aa129及びaa131は腔の方向を向き、aa132は腔と反対の方向を向いている。これらのアミノ酸を突然変異させてアラニンとする場合、立体配座に変化が生じ、これは腔を結合パートナーの周囲にさらに密接させ、それによってより強力な相互作用を作り出すことができる。
FEN−1がこの研究にモデルとして使用されているが、aa123〜133により形成される腔は、PCNAと多くのそのパートナーとの結合にとっても重要である。図7は、幾つかのPCNA結合パートナー及びPCNAとの相互作用に使用される保存的配列を提示する。それぞれのペプチド又はタンパク質のうちの5個アミノ酸のコンセンサス結合配列を、相互作用することが報告されているPCNA空間充填モデルに適合させたとき、caペプチドにより形成されたポケット領域に全て重なった。PCNAとその結合パートナーとの間に他の多くのアミノ酸相互作用ポイントがあるが、caペプチド領域により形成された腔は、正確な結合のため及び相互作用により生じる細胞プロセスの開始のために必要でありうる。
インシリコ分子モデリングを実施して、R9−caペプチド細胞傷害性に対するPCNAアミノ酸配列の寄与を更に調査した。aa126〜133の位置を、FEN−1に結合したPCNAの結晶構造から決定した。この分析は、PCNAのaa126〜133が、幾つかのPCNAの結合パートナーの保存的5アミノ酸配列が適合する腔を形成することを明らかにした。アラニン突然変異分析によりR9−caペプチド活性にとって重要であることが決定されたアミノ酸は、腔の方を向いていてPCNAと結合パートナーに接触ポイントを提供する可能性のあるアミノ酸(aa126、aa128、及びaa133)と同じものであった。R9−caペプチドの細胞傷害活性にとって重要ではないアミノ酸は、ポケットと反対の方向を向き、PCNAとパートナー(aa127及び130)の結合に参加しないと思われる。細胞傷害性に増加を引き起こすアミノ酸のうち、aa129及びaa131は、ポケットの方向を向き、aa132は、ポケットと反対の方向を向いている。
R9−caペプチドにより示される細胞傷害性は、このペプチドがPCNAの結合パートナーのおとりとして作用することによって引き起こされると考えられる。このペプチドは、全長PCNAのIDCLを模倣するので、XPG、ポリメラーゼδ及びFEN−1のようなタンパク質に結合することができ、したがって、それらが無傷のPCNAに結合するのを妨げる。ペプチドによるこれらのタンパク質の隔離は、正確なDNA複製及び修復を妨げ、細胞死をもたらす。R9−caペプチドの特定のアミノ酸(aa126、aa128及びaa133)の突然変異は、PCNAの結合パートナーにより認識される能力を減少し、PCNA−パートナー相互作用を撹乱するペプチドの能力を低減し、したがって細胞死の減少をもたらす。アミノ酸129、131及び132のアラニンへの突然変異は、立体配座に変化を引き起こすことができ、それはペプチドが潜在的なパートナーとより密接に結合することを可能にし、したがって細胞傷害性の増加を引き起こす。
==実施例5==
<caPCNAペプチド及びその変種を使用する化学予防>
caPCNAペプチド及びその変種は、化学予防のために化学予防剤として使用されるが、この場合、本ペプチドは例えば前癌性細胞の癌性細胞又は検出可能な腫瘍への形質転換を制限するのに効果的である。caPCNA由来ペプチド又はその変種の、癌細胞を選択的に死滅させるが、非癌細胞の生存力に対しては最小限の効果しか及ぼさないという能力のために、これらのペプチド又は変種は、発癌を防止するのに有用である。この手法は、PCNAの癌特異的アイソフォーム(caPCNA)の発現が、悪性表現型をもたらす細胞の形質転換プロセスにおける比較的初期の事象であるので、caPCNAと1つ以上の結合パートナーとの相互作用を初期段階で阻止することは、効果的な化学予防をもたらすという観察に基づいている。
検出可能な腫瘍量又は悪性表現型を発生する前の初期段階でcaPCNAアイソフォームを発現することができる任意の組織は、本明細書に開示されているcaPCNAペプチド及びその変種を使用する化学予防治療に適している。本明細書に開示されているcaPCNA由来ペプチド又は変種の毒性に応じて、当業者は、有効な化学予防治療計画を実施する投与範囲を容易に認識し、最適化する。例えば、本明細書に開示されているcaPCNA由来ペプチド及び変種が正常な細胞に対して有意な毒性がない場合、癌と診断された患者に一般的に使用されるより高い用量が、高危険度の個体における化学予防に使用される。本明細書に開示されているcaPCNA由来ペプチド及び変種がいくらか毒性である場合、毒性に応じて、癌治療用量と比較して比較的低い投与量が化学予防治療に使用される。加えて、投与量は、例えば、癌の種類、個体が治療される病期、送達様式及び個体の年齢、身体全体の健康のような他の任意の臨床データに応じて変わることができる。
例えば、caPCNA発現は、慢性骨髄性白血病(CML)患者において、疾患の急性期への形質転換から3年が経過している病期において容易に観察される。したがって、caPCNAペプチド及びその変種は、これらの種類の初期形質転換細胞に対して、臨床的に認識又は検出される癌の発生の前に、それらの生存力を低減することもできる。
一般に、caPCNA由来ペプチド又は変種は、caPCNAアイソフォームを発現する可能性があって癌性になる可能性があるような初期形質転換細胞の数を排除又は低減するために、適切な方法により投与される。この種類の予防投与は、上皮由来(例えば、多様な腺癌)若しくは中皮由来(例えば、多様な肉腫)を含む良く知られている種類の癌を有するような「高危険度」群に属する個体、及び/又は職場若しくは家庭若しくは地域環境由来の多様な環境毒物に暴露された個体、及び/又は癌の治療を受け、疾患の再発(すなわち、再発の発生)がモニタリングされている個体の臨床管理に有用である。癌細胞又は形質転換プロセスを受けている細胞のみがcaPCNAアイソフォームを発現するので、caPCNA由来ペプチド及び変種に感受性のある形質転換細胞が、選択的に標的化されて死滅する一方、非形質転換細胞の生存力は、caPCNA由来ペプチド又はその変種によって実質的に影響を受けないと思われる。
caPCNA由来ペプチド及び変種を化学予防剤として使用することの臨床的利益の長期的な基準としては、例えば、特定の悪性腫瘍を発生する「高危険度」の患者の数を減少すること、原発性癌病変部の切除後の癌再発の数を低減すること、個体が家庭、職場又は地域環境において遭遇する癌性又は突原変異誘発性物質への暴露によりもたらされる腫瘍の発生の数を低減すること、及び無関係の癌を治療する薬剤の化学療法投与によりもたらされる二次性腫瘍の発生の数を低減することが含まれる。
例えば、非癌細胞と思われる細胞におけるp16INK4(Bean et al., (2007), Clin. Cancer Res.; 13(22), 6834-41)及びcaPCNAの両方の共発現は、化学予防における前癌性又は前悪性細胞の同定のためのマーカーとして機能する。例えば、タンパク質p16INK4の発現は、このタンパク質の発現が、p16INK4を発現する細胞の癌表現型への形質転換より先に生じることを示す。形質転換プロセスの初期に生じる個々の分子変化は、これらの細胞が癌細胞になる素因である場合があり、遺伝子発現におけるそのような変化の同定は、形態的に未だ認識されていない初期段階の形質転換事象の指標(マーカー)である。したがって、形質転換事象に関連する初期の分子変更は、形質転換プロセスを始めた細胞の形態に対しては識別可能な効果を有さないものの、それでもなお、癌細胞への形質転換を受けるように仕向けられている。caPCNAの発現が悪性形質転換プロセスと普遍的に関連するので(現在まで試験された全ての癌細胞がcaPCNAアイソフォームを発現するので)、場合によっては、乳癌上皮細胞に近接する(1cm以内)導管内の正常な乳腺上皮細胞の1つ以上も、caPCNAを発現するであろう。p16INK4の、caPCNA発現細胞における共発現、及び非発現細胞における不在は、形質転換プロセスのマーカーとして機能することができる。そのようなcaPCNAを発現する「正常」細胞は、本明細書に開示されている組成物を、caPCNA発現「正常」細胞を悪性になる前に選択的に死滅させるために使用するのに適した標的である。
したがって、本明細書に開示されているcaPCNA由来ペプチド又は変種は、初期段階でcaPCNAアイソフォームを発現する可能性がある組織の種類における癌の全体的な発生を低減するための、実行可能な化学予防的選択肢を提供する。開業医又は臨床医は、caPCNA特異的検出法、例えば国際特許出願公報第2006/116631号に開示されているcaPCNA特異的抗体を使用して又は国際特許出願公報第2007/002574号(両公報の内容は、その全体が参照として本明細書に組み込まれる)に開示されているcaPCNAアイソフォーム翻訳後修飾に基づいて、個体又は組織生検がcaPCNAを発現しているかを容易に決定することができる。
表1 アミノ酸126〜133の領域を含有する例示的なcaPCNAペプチドドメイン
126〜133配列を含有する領域は、下線により示されている。
表2 R9結合caPCNA由来ペプチドのアミノ酸配列
表3 R9結合caPCNAペプチドの細胞傷害効果
R9は、ポリアルギニン配列、例えば9個の連続アルギニン残基を含む細胞透過性ペプチドを意味する。caPCNAペプチドのアラニン置換は、細胞傷害作用に影響を与える。U937細胞を、アラニン置換ペプチド及びスクランブルペプチドでそれぞれ処理し、細胞死%をフローサイトメトリーで評価した。スクランブルペプチド、及びaa126又はaa133の位置でのアラニン置換は、細胞傷害活性の低減を示す。aa129、aa131又はaa132での置換は、ペプチドの細胞傷害性に増加を引き起こす。中立の変化をもたらす置換には、aa127及びaa130が含まれる。aa128での置換は、細胞傷害作用に減少をもたらすが、aa126又はaa133のレベルまでではない。
表4 細胞浸透性又は細胞透過性のペプチド
上記に提示されたペプチドは、合成することができるか又は市販されており(例えば、AnaSpec, San Jose, CA)、本明細書に開示されているペプチド変種とのカップリングのためのNH部分を有する。
表5 例示的なアミノ酸保存的置換のリスト
表6 R9−caペプチドによる癌細胞の優先的死滅

Claims (36)

  1. LGIPEQEY、LAIPEQEY、LGIAEQEY、LGIPAQEY、LGIPEAEY、LGIPEQAY、LGIAEAEY、LGIPEAAY、LGIAEQAY、LGIAEAAYからなる群より選択されるアミノ酸配列を含む細胞透過性ペプチド分子を含む、悪性細胞の細胞増殖を低減するための治療用組成物。
  2. ペプチド分子が合成分子である、請求項1記載の組成物。
  3. ペプチド分子が細胞透過性因子を更に含む、請求項1記載の組成物。
  4. 細胞透過性因子が、アミノ酸配列のRRRRRRR、RRRRRRRR、RRRRRRRRR、RRRRRRRRRR、RRRRRRRRRRR、RQIKIWFQNRRMKWKK、GRKKRRQRRRPPQ、GWTLNSAGYLLGKINLKALAALAKKIL、及びGRKKRRQRRRからなる群より選択される、細胞透過性ペプチドである、請求項3記載の組成物。
  5. 細胞透過性ペプチドが、ペプチド分子と共有結合又は結合している、請求項4記載の組成物。
  6. 細胞透過性ペプチドが、ペプチド分子と組み換え的に融合している、請求項4記載の組成物。
  7. 細胞透過性ペプチドが、スペーサー又はリンカー配列を更に含む、請求項4記載の組成物。
  8. ペプチド分子が核局在化配列を更に含む、請求項1記載の組成物。
  9. ペプチドがプロテアーゼ耐性である、請求項1記載の組成物。
  10. ペプチドがレトロインベルソ異性体である、請求項1記載の組成物。
  11. 化学療法剤を更に含む、請求項1記載の組成物。
  12. 化学療法剤がDNA損傷剤である。請求項11記載の組成物。
  13. DNA損傷剤が、ドキソルビシン、イリノテカン、シクロホスファミド、クロラムブシル、メルファラン、メトトレキセート、シタラビン、フルダラビン、6−メルカプトプリン、5−フルオロウラシル、カペシタビン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項12記載の組成物。
  14. 悪性細胞がcaPCNAアイソフォームを発現する、請求項1記載の組成物。
  15. 悪性細胞が、乳癌、結腸癌、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、及び白血病からなる群より選択される、請求項14記載の組成物。
  16. リポソームを含む、請求項1記載の組成物。
  17. 組成物が細胞表面標的化因子を含む、請求項1記載の組成物。
  18. 細胞表面標的化因子が、HER2、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、EGFRからなる群より選択される、請求項17記載の組成物。
  19. 悪性細胞に接触させるために、請求項1記載の治療用組成物の治療有効量を投与することを含む、悪性細胞の細胞増殖を低減するための、請求項1記載の治療用組成物の使用方法。
  20. 組成物が静脈内投与される、請求項19記載の使用方法。
  21. 組成物が腫瘍内に送達される、請求項19記載の使用方法。
  22. 組成物が細胞透過性因子を含む、請求項19記載の使用方法。
  23. 細胞透過性因子が、アミノ酸配列のRRRRRRR、RRRRRRRR、RRRRRRRRR、RRRRRRRRRR、RRRRRRRRRRR、RQIKIWFQNRRMKWKK、GRKKRRQRRRPPQ、GWTLNSAGYLLGKINLKALAALAKKIL、及びGRKKRRQRRRからなる群より選択される、細胞透過性ペプチドである、請求項22記載の使用方法。
  24. 化学療法剤を投与することを更に含む、請求項19記載の使用方法。
  25. 化学療法剤がDNA損傷剤である。請求項24記載の使用方法。
  26. DNA損傷剤が、ドキソルビシン、イリノテカン、シクロホスファミド、クロラムブシル、メルファラン、メトトレキセート、シタラビン、フルダラビン、6−メルカプトプリン、5−フルオロウラシル、カペシタビン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項25記載の使用方法。
  27. 放射線療法を投与することを更に含む、請求項19記載の使用方法。
  28. 放射線療法が、ビーム放射治療及びラジオアイソトープ治療からなる群より選択される、請求項27記載の使用方法。
  29. 化学療法又は放射線療法が、組成物の投与の前に投与されるか、又は組成物の投与と共に投与される、請求項27又は28記載の使用方法。
  30. 組成物の治療有効量と、化学療法剤又は放射線療法とを投与することを含む、癌細胞を癌治療に対して感作又は促進するための、請求項1記載の治療用組成物の使用方法。
  31. 化学療法剤がDNA損傷剤である。請求項28記載の使用方法。
  32. 組成物が細胞透過性因子を含む、請求項28記載の使用方法。
  33. 細胞透過性因子が、アミノ酸配列のRRRRRRR、RRRRRRRR、RRRRRRRRR、RRRRRRRRRR、RRRRRRRRRRR、RQIKIWFQNRRMKWKK、GRKKRRQRRRPPQ、及びGWTLNSAGYLLGKINLKALAALAKKILからなる群より選択される、細胞透過性ペプチドである、請求項30記載の使用方法。
  34. 癌特異的増殖性細胞核抗原(caPCNA)アイソフォームを発現する細胞が、悪性状態へ形質転換すること、又は腫瘍を発生することを予防するための、癌の化学予防用の医薬としての請求項1記載の組成物の使用方法。
  35. 化学予防剤が、一つの癌型に対して危険度が高いと考慮される個体に投与される、請求項34記載の使用方法。
  36. 化学予防剤が、前癌性細胞を有する個体に投与される、請求項34記載の方法。
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