JP2011523667A - 抗菌性ナノ粒子 - Google Patents

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Abstract

共有結合したアンモニウム基を含むカチオン性ナノ粒子を含む第一の成分と、アニオン性ポリエーテル化合物を含む第二の成分と、を含む重合性組成物が記載されている。第一の成分がエチレン性不飽和重合性基を更に含むか、第二の成分がエチレン性不飽和重合性アニオンを更に含むか、あるいはその両者である。この重合性組成物を物品の表面に適用することを含む、物品の製造方法も記載されている。

Description

水性環境における微生物(バクテリア又はカビなど)の増殖を制御できない可能性があり得る。微生物の増殖は、例えば水性媒体の微生物汚染、水性媒体に露出した表面の生物膜の形成、又はこれらの両方をもたらす可能性がある。生物膜は、接触している無菌又は滅菌済み水性環境を汚染できる微生物だめとして役立ち得る。工業設備(水処理設備並びにパルプ製造設備及び製紙設備など)並びに医療設備及び装置(カテーテル及び電極など)等の多くの表面は、生物膜形成を受けやすい可能性がある。例えば、飲料水処理施設並びにパルプ製造設備及び製紙設備の表面では、微生物の増殖は、汚染、並びに洗浄及び修理を要する表面での生物膜形成をもたらす可能性がある。例えば、カテーテル又は電極等の医療機器の表面において、生物膜の形成はその医療機器の除去又は交換を必要にする場合がある。
水性環境における微生物の増殖、水性環境に露出する表面での生物膜形成、又はこれら両方を制御又は除去するアプローチとして、その水性環境の滅菌、又は微生物及び生物膜の接着を阻害する面の使用が挙げられてきた。
抗菌面を調製するために、抗菌性ナノ粒子及びそれらを含む組成物が必要とされている。
一態様において、提供される重合性組成物は、
i)カチオン性共有結合したアンモニウム基、及び
ii)必要に応じて共有結合したエチレン性不飽和重合性基、を含む第一のカチオン性ナノ粒子成分a)と、
i)アニオン性ポリエーテル化合物、及び
ii)必要に応じてエチレン性不飽和重合性アニオン性化合物、を含む第二のアニオン性成分b)と、を含み、
前記重合性組成物が、少なくとも1つのa)ii)又はb)ii)を含む、重合性組成物。
別の態様では、コーティングされた物品の製造方法が提供される。本方法は、表面を有する物品を供し、その表面に対して重合可能な組成物を供し、その組成物を重合することを含む。また別の態様において、その表面に重合された組成物がコーティングされており、それによって、そこに抗菌性面を提供する、コーティングされた物品が提供される。
本出願の幾つかの箇所で、実施例の一覧として説明を提供するが、実施例は各種組み合わせにて使用することが可能である。それぞれの事例において、列挙される一覧は代表的な群としてのみ与えられるのであって、限定的な一覧として解釈されるべきではない。
端点による数の範囲の任意の列挙には、その範囲内に包含されるすべての数が含まれる(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5等)。
用語「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つの」及び「1つ以上の」は、交換可能に使用される。したがって、例えば、「カチオン性ナノ粒子」とは、「1つ又はそれ以上の」カチオン性ナノ粒子を意味すると解釈できる。
「ナノ粒子」という用語は、200ナノメートル以下の粒子直径又は粒径を有する無機粒子を意味する。
「粒子直径」及び「粒径」という用語は、粒子の最大断面寸法を意味する。粒子が凝集物の形で存在する場合、「粒子直径」および「粒径」という用語は凝集物の最大断面寸法を意味する。
「カチオン性ナノ粒子」という用語は、ナノ粒子に共有結合で結合するカチオン基を含む表面を有するナノ粒子を意味する。
「アルコキシ」という用語は、化学式−−ORで表される基を意味し、Rはアルキル基である。
「アルキル」という用語は、アルカンから水素原子を引き抜いて形成された一価部分を意味する。アルキルは、直鎖状構造、分枝状構造、環状構造、又はそれらの組み合わせを有することができる。シクロアルキルは、環状のアルキルであり、アルキル基の部分集合である。
「アルキレン」という用語は、アルカンから2個の水素原子を引き抜いて形成された二価部分を意味する。アルキレンは、直鎖状構造、分枝状構造、環状構造、又はそれらの組み合わせを有することができる。
「アリール」という用語は、1個〜5個の結合環、複数の縮合環、又はこれらの組み合わせを有する炭素環芳香族化合物の一価部分を意味するいくつかの実施形態において、アリール基は、4個の環、3個の環、2個の環、又は1個の環を有する。例えば、アリール基はフェニルになり得る。
「アリーレン」という用語は、1個〜5個の結合環、複数の縮合環、又はそれらの組み合わせを有する炭素環芳香族化合物の二価部分を指す。いくつかの実施形態において、アリーレン基は、4個の環、3個の環、2個の環、又は1個の環を有する。例えば、アリーレン基は、フェニレンであることができる。
「ハロ」という用語は、塩素、臭素、又はフッ素を意味する。
「ヘテロアルカン」という用語は、1つ又はそれ以上の炭素元素が硫黄、酸素、又はNRで置換されたアルカンを意味し、Rはハロゲン又はアルキルである。ヘテロアルカンは、直鎖状構造、分枝状構造、環状構造、又はそれらの組み合わせを有することができる。いくつかの実施形態においては、ヘテロアルカンは、20個以下の炭素原子、10個以下の炭素原子、8個以下の炭素原子、6個以下の炭素原子、又は4個以下の炭素原子を含む。エーテル類及びポリエーテル類は、ヘテロアルカンに属する小区分である。
「ヘテロアルキル」という用語は、ヘテロアルカンから1個の水素原子を引き抜いて形成された一価部分を意味する。
「ヘテロアルキレン」という用語は、ヘテロアルカンから2個の水素原子を引き抜いて形成された二価部分を意味する。
「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレート及びメタクリレート基の両方を意味する。
共有結合したアンモニウム基を含むカチオン性ナノ粒子を含む第一の成分を含む、重合性組成物が提供される。
カチオン性ナノ粒子は、非金属の酸化物、金属の酸化物、又は両方を含むことができる。非金属の酸化物として、例えばケイ素又はゲルマニウムの酸化物が挙げられる。金属の酸化物として、例えば、チタン、セリウム、アルミニウム、又はジルコニウムの酸化物が挙げられる。好適なナノ粒子として、米国イリノイ州NapervilleのNalcoから市販されているNalco 2326等のコロイド状シリカナノ粒子、及び例えば米国特許第7,241,437号(Davidsonら)に記載のもの等のジルコニアナノ粒子が挙げられる。
ナノ粒子は、200nm以下、150ナノメートル以下、100ナノメートル以下、75ナノメートル以下、50ナノメートル以下、25ナノメートル以下、20ナノメートル以下、15ナノメートル以下、又は10ナノメートル以下の平均粒径を有することができる。このカチオン性ナノ粒子は、少なくとも100ナノメートル、少なくとも70ナノメートル、少なくとも50ナノメートル、少なくとも25ナノメートル、少なくとも15ナノメートル、少なくとも5ナノメートル、少なくとも2ナノメートル、又は少なくとも1ナノメートルの、平均粒径を有することができる。
好ましくは、無機ナノ粒子は、水性又は水/有機溶媒混合物中のシリカナノ粒子であり、40ナノメートル以下の、好ましくは20ナノメートル以下、より好ましくは10ナノメートル以下の平均一次粒子径を有する。平均粒子径は、透過型電子顕微鏡を使用して測定されてもよい。
水性媒質中のコロイド状シリカナノ粒子は、当該技術分野で周知であり、市販されている。水又は水−アルコール溶液の中でのシリカゾルは、ラドックス(LUDOX)(米国デラウェア州WilmingtonのE.I.duPont de Nemours and Co., Inc.により製造)、NYACOL(米国マサチューセッツ州AshlandのNyacolCo.から市販)又はNALCO(米国イリノイ州Oak BrookのOndea Nalco Chemical Co.により製造)等の商標で市販されている。有用なシリカゾルの1つとして、平均粒子サイズが5ナノメートル、pH10.5、及び固形分が15重量%のシリカゾルとして入手可能なNalco 2326がある。その他の市販されているシリカナノ粒子として、NALCO Chemical社から市販されている「NALCO 1115」及び「NALCO 1130」、Remet社から市販されている「Remasol SP30」、及びE.I.Du Pont de Nemours社から市販されている「LUDOX SM」が挙げられる。
カチオン性ナノ粒子は、共有結合したアンモニウム基を含む。この共有結合したアンモニウム基は、化学式Iであり得る。
Figure 2011523667
〔式中、R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル又はヘテロアルキル基、アリール基、又はR及びRは共に環を形成し、R、R、及びRの2つ以下が水素原子であり、Zは二価のスペーサ基である。〕
いくつかの実施形態において、R、R、及びRは、それぞれ独立して、1〜20個の炭素原子を有するアルキル又はヘテロアルキル基であり、あるいはR及びRが共に環を形成している。R、R、及びRの基は、それぞれ独立して、少なくとも1個の炭素原子、少なくとも2個の炭素原子、少なくとも3個の炭素原子、少なくとも4個の炭素原子、少なくとも6個の炭素原子、少なくとも8個の炭素原子、少なくとも10個の炭素原子、少なくとも12個の炭素原子、少なくとも14個の炭素原子、又は少なくとも16個の炭素原子を有するアルキル又はヘテロアルキル基とすることができる。R、R、及びRの基は、それぞれ独立して、20個以下の炭素原子、18個以下の炭素原子、16個以下の炭素原子、14個以下の炭素原子、又は10個以下の炭素原子を有するアルキル又はヘテロアルキル基とすることができる。このアルキル又はヘテロアルキル基は、独立して、直鎖状、分岐状、又は環状構造を含むことができる。アルキル基の非限定例として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルブチル、2−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、イソトリデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、及びエイコシル基が挙げられる。いくつかの実施形態において、R、R、及びRのうちの少なくとも1つはメチル基である。いくつかの実施形態において、R、R、及びRのうち少なくとも2つが、それぞれ独立した、少なくとも10個の炭素原子を有するアルキル基である。ヘテロアルキル基の非限定例として、メトキシエチル、エトキシエチル、メトキシブチル、エトキシヘキシル、ポリ(エチレンオキシド)、及びポリ(プロピレンオキシド)基が挙げられる。
、R、及びRの基は、それぞれ独立して、少なくとも6個の炭素原子、少なくとも7個の炭素原子、少なくとも8個の炭素原子、又は少なくとも9個の炭素原子を有するアリール基である場合がある。アリール基の非限定例として、非置換のフェニル及び置換フェニルが挙げられる。
二価のスペーサ基Zは、アルキレン基、ヘテロアルキレン基、又はアリーレン基を含むことができる。いくつかの実施形態において、この二価のスペーサ基Zは、少なくとも3個の炭素原子を含む。二価のスペーサ基Zの非限定例として、プロピレン基、ブチレン基、へキシレン基、オクチレン基、デシレン基、ドデシレン基、テトラデシレン基、ヘキサデシレン基、オクタデシレン基、及びフェニレン基が挙げられる。
共有結合したアンモニウム基は、化学式IIのピリジニウム基を含むことができる。
Figure 2011523667
〔式中、Zは上述の通りであり、それぞれのR11は独立して水素原子、アルキル基、又はハロゲン基であり、xは1〜5の整数である。〕いくつかの実施形態において、R11は水素原子であり、xは5である。いくつかの実施形態において、R11はメチル基であり、xは1〜5の整数である。いくつかの実施形態において、R11はメチル基であり、xは1(例えば、共有結合したアンモニウム基は2−メチルピリジニウム基又は4−メチルピリジニウム基)である。
このアンモニウム基は、ナノ粒子上の任意の原子(例えば、非金属原子、金属原子、又は酸素原子)と、アンモニウム基上の任意の原子(例えば、炭素原子、酸素原子、ケイ素原子、又は窒素原子)との間での共有結合を介して、ナノ粒子に共有結合される場合がある。好ましい実施形態において、これらのナノ粒子はシリカナノ粒子であり、アンモニウム基はシロキサン結合(Si−O−)により共有結合されている。
いくつかの実施形態において、カチオン性ナノ粒子は、無機ナノ粒子と表面改質化合物との反応生成物である。この表面改質化合物は、ナノ粒子の表面にある基(OH基など)と反応して、ナノ粒子とその表面改質化合物との間で共有結合(Si−O結合など)を形成するような、トリアルコキシシラン基(トリメトキシシラン基又はトリエトキシシラン基など)を含むことができる。
別の実施形態において、この表面改質化合物は、化学式IIIの共有結合したアンモニウム基とすることができる。
Figure 2011523667
〔式中、R、R、R、及びZは上述の通りであり、それぞれのRは独立して、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシル基、アシロキシ基、ハロゲン基、及びポリエーテル基からなる群から選択され、Xは、カルボキシレート、スルホネート、又ハロゲン化物等の一価のアニオンである。〕いくつかの実施形態において、それぞれのRは独立して、ヒドロキシ、メトキシ、エトキシ、アセチル、又はアセトキシルである。いくつかの実施形態において、Xは、塩化物又は臭化物である。化学式IIIの非限定化合物は、米国ペンシルバニア州MorrisvilleのGelest Inc.から市販されている、N,N−ジデシル−N−メチル−N−(3−トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドである。無機ナノ粒子と化学式IIIの表面改質化合物との反応生成物は、シロキサン結合を介して、ナノ粒子に共有結合されたアンモニウム基を含むことができる。
いくつかの実施形態において、カチオン性ナノ粒子は、化学式IVのアミノ基を含む表面改質化合物の反応生成物である場合がある。共有結合したアミン基をもたらすこの反応生成物は、続いて、アルキル化剤と反応して、共有結合したアンモニウム基をもたらす。
Figure 2011523667
ここでR及びR10は、それぞれ独立してアルキル又はヘテロアルキル基、アリール基、又はR及びR10は共に環を形成し、Z及びRは上述のとおりである。いくつかの実施形態において、R及びR10はそれぞれ独立して、1〜20個の炭素原子を有するアルキル又はヘテロアルキル基、又はR及びR10は共に環を形成することができる。R及びR10の基はそれぞれ独立して、少なくとも1個の炭素原子、少なくとも2個の炭素原子、少なくとも3個の炭素原子、少なくとも4個の炭素原子、少なくとも6個の炭素原子、少なくとも8個の炭素原子、少なくとも10個の炭素原子、少なくとも12個の炭素原子、少なくとも14個の炭素原子、又は少なくとも16個の炭素原子を有するアルキル又はヘテロアルキル基とすることができる。R及びR10の基はそれぞれ独立して、20個以下の炭素原子、18個以下の炭素原子、16個以下の炭素原子、14個以下の炭素原子、又は10個以下の炭素原子を有するアルキル又はヘテロアルキル基とすることができる。
アルキル又はヘテロアルキル基は独立して、直鎖状、分岐状、又は環状構造を含むことができる。アルキル基の非限定例として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルブチル、2−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、イソトリデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、及びエイコシル基が挙げられる。ヘテロアルキル基の非限定例として、メトキシエチル、エトキシエチル、メトキシブチル、エトキシヘキシル、ポリ(エチレンオキシド)、及びポリ(プロピレンオキシド)基が挙げられる。いくつかの実施形態において、カチオン性ナノ粒子は、アルキル化剤と、無機ナノ粒子と化学式IVの化合物との反応化合物、との反応化合物である。
アルキル化剤の非限定例として、臭化メチル、ヨウ化メチル、臭化エチル、トリフルオロメタンスルホン酸メチル、ヨウ化ブチル、臭化ヘキシル、トルエンスルホン酸ヘキシル、臭化デシル、臭化ドデシル、及び臭化テトラデシルが挙げられる。化学式IVの非限定的化合物は、米国ミズーリ州St.LouisのSigma Aldrich Co.から市販されている、3−アミノプロピルトリメトキシシランである。無機ナノ粒子と化学式IVの表面改質化合物との反応(それに続く、例えばアルキル化剤との反応後)は、シロキサン結合を介して共有結合されたアンモニウム基を含むことができる。
カチオン性ナノ粒子は、エチレン性不飽和重合性基を含むことができる。このエチレン性不飽和重合性基は、ナノ粒子に共有結合され得る。エチレン性不飽和重合性基は、任意のエチレン性不飽和重合性基、例えばビニル基、又は(メタ)アクリレート基とである場合がある。カチオン性ナノ粒子がエチレン性不飽和重合性基を更に含む実施形態において、エチレン性不飽和重合性基は、カチオン性ナノ粒子に共有結合され得る。エチレン性不飽和重合性基は、ナノ粒子上の任意の原子(例えば、非金属原子、金属原子、又は酸素原子)とエチレン性不飽和重合性基上の任意の原子(例えば、炭素原子、酸素原子、ケイ素原子、又は窒素原子)との間で、共有結合を介してカチオン性ナノ粒子に共有結合され得る。
いくつかの実施形態において、エチレン性不飽和重合性基を更に含むカチオン性ナノ粒子は、カチオン性ナノ粒子と、エチレン性不飽和重合性基を有する表面改質化合物との反応生成物である。エチレン性不飽和重合性基を有する表面改質化合物は、ナノ粒子の表面上の基(OH基など)と反応して、ナノ粒子とその表面改質化合物との間に共有結合を形成する、トリアルコキシシロキサン基(トリメトキシシラン基又はトリエトキシシラン基など)を含むことができる。エチレン性不飽和重合性基を含む表面改質化合物の非限定例として、ビニルトリメトキシシラン及び3−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシランが挙げられる。このような表面改質化合物は、以下の一般式を有する、
(RSi−Z−R12(VI)
〔式中、それぞれのRは独立して、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシル基、アシロキシ基、ハロゲン基、及びポリエーテル基からなる群より選択される。
は、二価のスペーサ基であり、Zはアルキレン基、ヘテロアルキレン基、又はアリーレン基を含むことができる。〕いくつかの実施形態において、二価のスペーサ基Zは、少なくとも3個の炭素原子を含む。二価のスペーサ基Zの非限定例として、プロピレン基、ブチレン基、へキシレン基、オクチレン基、デシレン基、ドデシレン基、テトラデシレン基、ヘキサデシレン基、オクタデシレン基、及びフェニレン基が挙げられ、
12は、(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリルアミド、又はビニル基等のエチレン性不飽和の重合性基である。
カチオン性ナノ粒子については、共有結合した、化学式Iのアンモニウム基の量は、ナノ粒子の表面上にある利用可能な官能基の80〜100%がアンモニウム基で官能化され、利用可能な表面基の0〜20%(好ましくは1〜5%)が共有結合されたエチレン性不飽和重合性基で官能化されるようなものである。
言い換えると、ナノ粒子は、無機ナノ粒子上の利用可能な官能基の80〜100%と反応するのに十分な量(例えば、シリカナノ粒子上の利用可能なヒドロキシル官能基の数)で反応された、式(III)及び/又は(IV)の化合物である。官能基の数は、全ての利用可能な反応部位が表面修飾剤で官能化されるように、多量のナノ粒子を過剰量の表面改質剤と反応させ、実験的に決定される。次いでその結果から、より低い割合の官能化が計算される。同様に、ナノ粒子は、化合物VIの化合物と、無機ナノ粒子上の利用可能な官能基の0〜20%(好ましくは1〜5%)と反応させるに十分な量で反応させてもよい。
重合性組成物は、アニオン性ポリエーテル化合物を含む、第二のアニオン性成分を含む。アニオン性ポリエーテル化合物は、化学式Vの化合物を含んでもよい。
Figure 2011523667
〔式中、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアルカリール基、又はエチレン性不飽和重合性基を含み、各Rは、独立して、水素原子又はメチル基、あるいはエチレン性不飽和重合性基を含み、Rgは、アルキレン基又はアリーレン基、Qは、カルボキシレート、スルホネート、ホスフェート、及びホスホネートからなる群から選択されるアニオン性基であり、nは1〜100の整数である。〕
の基は、任意のアルキル基、任意のアリール基、任意のアラルキル基、又は任意のアルカリール基とすることができ、あるいは任意のエチレン性不飽和重合性基を含んでもよい。いくつかの実施形態において、Rは1〜20個の炭素原子を有するアルキル基である。Rの基は、少なくとも1個の炭素原子、少なくとも2個の炭素原子、少なくとも3個の炭素原子、少なくとも4個の炭素原子、少なくとも6個の炭素原子、少なくとも8個の炭素原子、少なくとも10個の炭素原子、少なくとも12個の炭素原子、少なくとも14個の炭素原子、又は少なくとも16個の炭素原子、を有するアルキル基である場合がある。Rの基は、20個以下の炭素原子、18個以下の炭素原子、16個以下の炭素原子、14個以下の炭素原子、又は10個以下の炭素原子、を有する、アルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアルカリール基とすることができる。アルキル基は直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状構造を含み得る。
アルキル基の非限定例として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、2−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、イソトリデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、及びエイコシル基が挙げられる。いくつかの実施形態において、Rは、20個以下の炭素原子を含む、アリール基、アラルキル基、又はアルカリール基である。R基は、18個以下の炭素原子、16個以下の炭素原子、14個以下の炭素原子、12個以下の炭素原子、10個以下の炭素原子、又は8個以下の炭素原子を含む、アリール基、アラルキル基、又はアルカリール基でもよい。R基は、少なくとも6個の炭素原子、少なくとも8個の炭素原子、少なくとも10個の炭素原子、又は少なくとも12個の炭素原子を含む、アリール基、アラルキル基、又はアルカリール基とすることができる。アリール基の非限定例としてフェニルが挙げられる。アラルキル基の非限定例としてベンジルが挙げられる。アルカリール基の非限定例として、4−メチルフェニル、2−メチルフェニル、4−ブチルフェニル、4−オクチルフェニル、4−ノニルフェニル、4−デシルフェニル、2−ブチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、及び3,5−ジメチルフェニル等のアルキルフェニル基が挙げられる。
基は、任意のアルキレン又は任意のアリーレン基でもよい。例えば、R基は、少なくとも1個の炭素原子、少なくとも2個の炭素原子、少なくとも3個の炭素原子、少なくとも4個の炭素原子、少なくとも6個の炭素原子、少なくとも8個の炭素原子、又は少なくとも10個の炭素原子を有する、アルキレン基とすることができる。R基は、14個以下の炭素原子、10個以下の炭素原子、8個以下の炭素原子、6個以下の炭素原子、又は4個以下の炭素原子を有する、アルキレン基である場合がある。いくつかの実施形態において、Rはエチレン基である。いくつかの実施形態において、Rはプロピレン基である。
基は、少なくとも6個の炭素原子、少なくとも8個の炭素原子、又は少なくとも10個の炭素原子を含む、アリーレン基である場合がある。R基は、14個以下の炭素原子、12個以下の炭素原子、10個以下の炭素原子、又は8個以下の炭素原子を含む、アリーレン基である場合がある。いくつかの実施形態において、R7は、フェニレン基を含む。
アニオン性ポリエーテル化合物は、重合性アニオン性化合物を含んでもよい。化学式Vにおいて、R及びR基は独立して、(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリルアミド基、又はビニル基等のエチレン性不飽和重合性基でもよい。いくつかの実施形態において、アニオン性ポリエーテル化合物は、1つを以上のエチレン性不飽和重合性基を有する。いくつかの実施形態において、アニオン性ポリエーテル化合物は、1つのエチレン性不飽和重合性基を有する。いくつかの実施形態において、アニオン性ポリエーテル化合物は、エチレン性不飽和重合性基を含まない。
化学式Vにおいて、nは、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、又は少なくとも70、の整数である。化学式Vにおいて、nは、100以下、90以下、80以下、70以下、50以下、30以下、25以下、20以下、又は10以下の整数である。
重合性組成物は、それぞれが異なるnの整数値を有する、化学式Vのアニオン性ポリエーテル化合物の混合物を含む第二の成分を含んでもよい。このような混合物は、整数又は非整数の平均値のnを有してもよい。
いくつかの実施形態において、アニオン性ポリエーテル化合物は化学式Vの化合物である、〔式中、Rは4−アルキルフェニル基、Rは水素原子、Rは1〜4個の炭素原子を有するアルキレン基、Qはカルボキシレート又はスルホネート、nは10〜30の平均値を有する整数である。〕いくつかの実施形態において、アニオン性ポリエーテル化合物は化学式Vの化合物である、〔式中、Rは4−ノニルフェニル基、Rは水素原子、Rはプロピレン基、Qはスルホネート、nは平均値20の整数である。〕
第二のアニオン性成分は、エチレン性不飽和重合性アニオンを含んでもよい。第二の成分は、任意のエチレン性不飽和重合性アニオンを含むことができる。エチレン性不飽和重合性アニオンは、エチレン性不飽和重合性基と、アニオン性基とを含む。このエチレン性不飽和重合性基は、任意のエチレン性不飽和重合性基、例えば、ビニル基、(メタ)アクリルアミド基、又は(メタ)アクリレート基でもよい。アニオン性基は、任意のアニオン性基、例えば、カルボキシレート基、スルホネート基、ホスフェート基、又はホスホネート基でもよい。エチレン性不飽和重合性アニオンの非限定例として、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム及びアクリル酸ナトリウムが挙げられる。このようなモノマーは、以下の一般式を有してもよい。
13−Z−Q1−(VII)
〔式中、Zは二価のスペーサ基であり、Zはアルキレン基、ヘテロアルキレン基、又はアリーレン基を含んでもよい。いくつかの実施形態において、二価のスペーサ基Zは、少なくとも3個の炭素原子を含む。二価のスペーサ基Zの非限定例として、プロピレン基、ブチレン基、へキシレン基、オクチレン基、デシレン基、ドデシレン基、テトラデシレン基、ヘキサデシレン基、オクタデシレン基、及びフェニレン基が挙げられ、
13は、(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリルアミド基、又はビニル基等のエチレン性不飽和の、重合性基であり、
1−は、カルボキシレート、スルホネート、ホスフェート、及びホスホネートからなる群から選択されるアニオン性基である。〕
重合性組成物は、エチレン性不飽和モノマーを含む第三の成分を更に含んでもよい。この第三の成分は、任意のエチレン性不飽和モノマーを含んでもよい。エチレン性不飽和モノマーは、任意のエチレン性不飽和重合性基(例えば、ビニル基、(メタ)アクリルアミド基、又は(メタ)アクリレート基)とすることができる、エチレン性不飽和重合性基を含む。
エチレン性不飽和モノマーの非限定例として、単官能性(メタ)アクリレートモノマー及びスチレン系モノマーが挙げられる。単官能性(メタ)アクリレートモノマーとして、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、及びアラルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートとして、少なくとも1つの直鎖状、分岐状、又は環状構造が挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートの非限定例として、メチルメタクリル酸、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸ネオペンチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸イソオクチル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸イソトリデシル、メタクリル酸テトラデシル、メタクリル酸ヘキサデシル、メタクリル酸オクタデシル、メタクリル酸エイコシル、メタクリル酸ベヘニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸ネオペンチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸イソトリデシル、アクリル酸テトラデシル、アクリル酸ヘキサデシル、アクリル酸オクタデシル、アクリル酸エイコシル、及びアクリル酸ベヘニルが挙げられる。アリール(メタ)アクリレートの非限定例として、メタクリル酸フェニル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸4−メチルフェニル、アクリル酸4−メチルフェニル、メタクリル酸1−ナフチル、アクリル酸1−ナフチル、メタクリル酸2−ナフチル、及びアクリル酸ナフチルが挙げられる。
アラルキル(メタ)アクリレートの非限定例として、メタクリル酸ベンジル及びアクリル酸ベンジルが挙げられる。単官能性スチレン系モノマーの非限定例として、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、及び4−メチルスチレンが挙げられる。エチレン性不飽和モノマーの非限定例として、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、トリメチロプロパントリメタクリレート、トリメチロプロパントリアクリレート、及びペンタエリスリトールトリアクリレートを含む二又は多官能性(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
重合性組成物はa)共有結合したアンモニウム基を含むカチオン性ナノ粒子を含む第一の成分を調製すること、b)アニオン性ポリエーテル化合物を含む第二の成分を調製すること、c)第一の成分と第二の成分とを組み合わせること、とを含む工程で調製してもよい。第一の成分がエチレン性不飽和重合性基を更に含むか、第二の成分がエチレン性不飽和重合性アニオンを更に含むか、又はこれら両者である。いくつかの実施形態において、シリカゾルを脱イオン水で希釈し、化学式IIIの化合物とエチレン性不飽和重合性基を有する表面改質化合物とを混合する。この混合物(共有結合したアンモニウム基とエチレン性不飽和重合性基とを含むカチオン性ナノ粒子を含む第一の成分)は、固体として単離でき、その後、水とエタノールですすぎ、それから乾燥器内で乾燥させてもよい。この乾燥固体を、脱イオン水とエチレン性不飽和重合性アニオン(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウムなど)とに混合し、混合物を加熱及び攪拌することができる。化学式Vの化合物の水溶液は、続いて混合物(アルカリ金属カチオン又はアンモニウムカチオンのようなカチオンを更に含む化学式Vの化合物)に加えて、その結果得られる混合物を加熱及び攪拌することができる。いくつかの実施形態において、反応生成物(共有結合したアンモニウム基を含むカチオン性ナノ粒子を含む第一の成分と、アニオン性ポリエーテル化合物を含む第二の成分と、を含む重合性組成物であり、カチオン性ナノ粒子と第二の成分は独立して、エチレン性不飽和重合性基を更に含む)を、脱イオン水ですすぎ室温で乾燥できる別個の液体層として、水性混合物から分離する。
重合性組成物は、室温(すなわち、約20℃)で液体であってもよい。あるいは、重合性組成物は、25℃以下、30℃以下、40℃以下、又は50℃以下の融点を有してもよい。
重合性組成物は、実質上、水に不溶性(すなわち、10重量%以下、1重量%以下、5重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、又は0.5重量%以下の水への溶解度を有する場合がある)であってもよい。この重合性組成物は、水に不溶性であってもよい。あるいは、重合性組成物は、水に可溶性(すなわち、10重量%を超える、20重量%を超える、30重量%を超える、又は40重量%を超える、水への溶解度を有する場合がある)であってもよい。
コーティングされた物品を製造する方法が提供される。本方法は、表面を有する物品を供し、共有結合したアンモニウム基を含むカチオン性ナノ粒子を含む第一の成分と、アニオン性ポリエーテル化合物を含む第二の成分とを含む重合性組成物を供する工程とを含み、第一の成分がエチレン性不飽和重合性基を更に含むか、第二の成分がエチレン性不飽和重合性アニオンを更に含むか、あるいはこれらの両方である。
物品の表面を含む、物品は、任意の材料を含むことができる。物品の表面を含む、物品は、例えば、セラミック、ケイ酸塩、金属、又はポリマー若しくはポリマー/木材複合物を含むことができる。セラミック製品として、例えば、セラミックタイル、セラミック調理器具、及びセラミック食品調理面が挙げられる。ケイ酸塩物品として、食品調理面、並びに食品及び/又は水保存容器等のガラス物品が挙げられる。金属物品として、金属パイプ、金属製保存容器(例えば、水保存容器又は食品保存容器)、金属(例えばステンレススチール)製食品調理面等の物品が挙げられる。
本方法は、重合性組成物を物品の表面に適用することを更に含む。上記のように、この重合性組成物は、エチレン性不飽和モノマーを含む第三の成分を更に含んでもよい。この重合性組成物は、任意の方法で、物品の表面に適用することができる。例えば、重合性組成物中に物品の全体又は一部を浸漬、物品の表面の重合性組成物をスプレー、刷毛、又はローラで塗布、又は重合性組成物で物品の表面を満たすことにより適用できる。
この方法は、上記組成物を重合させることを更に含む。この重合工程は、例えば、組成物を加熱したり、組成物に化学線を照射したりすることを含んでもよい。化学線として、250ナノメートル〜1200ナノメートルの範囲の1つ又はそれ以上の波長を含むことができる。
いくつかの実施形態において、重合性組成物は、組成物の重合を開始させるのに十分な量の重合開始剤を更に含む。いくつかの実施形態において、重合開始剤は、熱重合開始剤を含む。熱重合開始剤の非限定例として、有機過酸化物(例えば、過酸化ベンゾイル)及びアゾ化合物(例えば、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル))が挙げられる。通常、熱重合開始剤を含む組成物を加熱して、組成物の重合化を開始する、並びに組成物を重合させる。
いくつかの実施形態において、重合開始剤は、光化学重合開始剤、又は光化学重合開始剤系を含む。好適な光化学開始剤系として、例えば、米国特許第7,064,152号(Kalgutkarら)及び同第5,545,676号(Palazzottoら)、並びに米国特許出願公開第20030114553(Karimら)に記載のものが挙げられる。
有用な紫外線誘起重合開始剤として、ベンジル及びベンゾイン等のケトン、アシロイン、並びにアシロインエーテルが挙げられる。紫外線誘起重合開始剤として、IRGACURE 2959の商標で市販されている1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、IRGACURE 651の商標で市販されている2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、及び米国ニューヨーク州TarrytownのCibaから全て市販されているベンゾインメチルエーテル(2−メトキシ−2−フェニルアセトフェノン)が挙げられる。
有用な可視光誘起開始剤として、適切な水素供与体(例えば、エチル4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾエート、アミノアルデヒド、及びアミノシランなど)、及び必要に応じてジアリールヨードニウム単純塩又は金属錯体塩、発色団置換ハロメチル−s−トリアジン、又はハロメチルオキサジアゾールに組み合わせたカンファーキノンが挙げられる。特に好ましい可視光誘起光開始剤として、α−ジケトン、例えば、追加的な水素供与体を有するカンファーキノンと、必要に応じてジアリールヨードニウム塩、例えば、ジフェニルヨードニウムクロリド、ブロミド、ヨージド、又はヘキサフルオロホスフェートとの組み合わせが挙げられる。
好適な開始剤(開始系)の一種として、三成分系又は三元光開始剤系が挙げられる。このような系として、ヨードニウム塩、例えば、単純塩(例えば、Cl、Br、I、又はCSO 等のアニオンを含有するもの)又は金属錯体塩(例えば、SbFOH、又はAsF を含有するもの)であり得るジアリールヨードニウム塩が挙げられる。所望の場合、ヨードニウム塩の混合物が使用されてもよい。第二の成分は、約400nm〜約1200nmの波長の範囲で光吸収できる増感剤である。第三の成分は電子供与体であり、アミン(アミノアルデヒド及びアミノシランを含む)、アミド(ホスホルアミドを含む)、エーテル(チオエーテルを含む)、尿素(チオ尿素を含む)、フェロセン、スルフィン酸及びそれらの塩、フェロシアニドの塩、アスコルビン酸及びその塩、ジチオカルバミン酸及びその塩、ザンテートの塩、エチレンジアミン四酢酸の塩並びにテトラフェニルボロン酸の塩が挙げられる。
有用な可視光増感剤の非限定例として、カンファーキノン、グリオキサール、ビアセチル、3,3,6,6−テトラメチルシクロヘキサンジオン、3,3,7,7−テトラメチル−1,2−シクロヘプタンジオン、3,3,8,8−テトラメチル−1,2−シクロオクタンジオン、3,3,18,18−テトラメチル−1,2−シクロオクタデカンジオン、ジバロイル、ベンジル、フリル、ヒドロキシベンジル、2,3−ブタンジオン、2,3−ペンタンジオン、2,3−ヘキサンジオン、3,4−ヘキサンジオン、2,3−ヘプタンジオン、3,4−ヘプタンジオン、2,3−オクタンジオン、4,5−オクタンジオン、及び1,2−シクロヘキサンジオンが挙げられる。
また別の種類の光開始剤として、欧州特許出願第173567号(Ying)に記載のもの等のアシルホスフィンオキシドが挙げられる。好適なアシルホスフィンオキシドの非限定例として、例えば、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドが挙げられる。三級アミン還元剤を、アシルホスフィンオキシドと併用してもよい。有用な三級アミンとして、エチル−4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾエート及びN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートが挙げられる。
反応開始剤系は、所望の重合速度を提供するのに十分な量で存在させることができる。光開始剤について、この量は、光源に、化学線に曝露される重合性組成物の厚みに、及び光開始剤の吸光係数に、部分的に依存する。いくつかの実施形態において、反応開始剤系は、組成物の重量を基準として、少なくとも0.01重量%、少なくとも0.03重量%、又は少なくとも0.05重量%の総量で存在する。好ましくは、反応開始剤系は、組成物の重量を基準として、10重量%以下、5重量%以下、又は2.5重量%以下の総量で存在する。
重合された組成物は、実質的に水に不溶性(すなわち、水への溶解度が、10重量%以下、5重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、又は0.5重量%以下である場合がある)でもよい。重合された組成物は水に不溶性でもよい。
物品は、重合された組成物を含む表面を含む。この表面は、抗菌面を含んでもよい。本明細書において、「抗菌面」という用語は、表面が微生物の増殖が阻害又は防止されている面を意味する。例示的な微生物として、カビやバクテリアが挙げられる。例示的なバクテリアとして、ブドウ球菌、連鎖球菌、桿菌、及びクロストリジウム種等のグラム陽性菌が挙げられる。例示的なバクテリアとして、大腸菌、サルモネラ菌、アエロモナス、及びカンピロバクター種等のグラム陰性菌が挙げられる。いくつかの実施形態において、抗菌面は、その表面に堆積する部分的又は全てのバクテリアの増殖を阻害するか又は殺す。いくつかの実施形態において、抗菌面をASTM E2180−01(「高分子又は疎水性材料中に取り込まれた抗菌剤の活性を決定する標準試験」)の試験法に従って評価することができる。
この面は、防汚面を含んでもよい。本明細書において、「防汚面」という用語は、生物膜(例えば、バクテリアの生物膜)の形成又は増殖が阻害又は防止されている面を意味する。いくつかの実施形態において、バクテリアを含む成長培地にまず暴露した面を、滅菌済み成長培地に暴露するフローセルにより、防汚面を評価することができる。その後、生物膜の存在又は増殖を、その面上で任意の生物膜を染色(例えば、クリスタルバイオレットを使用)し、その表面を目視で検査して生物膜の存在を決定することで、評価できる。いくつかの実施形態において、生物膜の存在、又は比較的多くの生物膜の存在は、より濃い染色によって示される。本方法は、比較的にも、すなわち、2つ又はそれ以上の試料の生物膜形成の相対範囲を比較するのにも、使用できる。
特に記載のない限り、溶媒及び試薬は全て、米国ミズーリ州St.LouisのSigma Aldrich Co.から入手され、又は入手可能である。
準備的実施例1
重合性組成物の調製
シリカゾル(10.0g、米国イリノイ州NapersvilleのNalco Co.よりNALCO 2326の商標で市販されている16重量%水性ゾルとして入手)を脱イオン水(25mL)と混合した。3−(メタクリロイルオキシ)プロピルメトキシシラン(0.052g)とN,N−ジデシル−N−メチル−3−(トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロリド(米国ペンシルバニア州MorrisvilleのGelest Inc.から入手した、42%メタノール溶液の12.0mL)を希釈後のシリカゾルに加えた。この混合物を、室温で24時間にわたって容器を振とうすることで、定期的に混合した。その後、白色沈殿固体を単離し、脱イオン水で3回、エタノールで2回洗浄した。続いて、その固体をエタノール中に分散させ、この混合物を皿に注いだ。エタノールを蒸発させた後、中間生成物をもたらすように、固体を70℃16時間、オーブン中で乾燥させた。
中間生成物の一部(1.5g)を、ねじ口付きバイアル瓶中で脱イオン水(10mL)及び2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム(50%水溶液の0.75g)に混合した。このバイアル瓶を、振とう水浴中(約70℃、110rpm)に約20時間放置した。その後、ポリ(エチレングリコール)−4−ノニルフェニル−3−スルホプロピルエーテルナトリウム塩(1.25g)の脱イオン水(10mL)溶液を前述のバイアル瓶に加え、再び振とう水浴中に置いた。約48時間後、このバイアル瓶を水浴から取り出した。バイアル瓶中には、2つの液相があった。上側の不透明層をピペットで除去した。下側の黄色粘ちょう層を脱イオン水で5回すすぎ、その後、室温で数日間、大気に曝して放置して生成物を得た。
(実施例2)
重合された組成物の調製
光開始剤(0.01g、米国ニューヨーク州Tarrytown、CibaのIRGACURE 2959)を実施例1の生成物(約0.5g)と混合した。この混合物を、1枚が0.0254mm厚のポリ(エチレンテレフタレート(PET)フィルム上に置いた。混合物を一枚のシリコーン剥離ライナーで覆い、約25.8平方センチメートル(約4平方インチ)の面積を得るように、混合物をPETと剥離ライナーとの間に延ばした。その後、混合物に、Sylvania BL350F紫外線電球(米国マサチューセッツ州DanversのOsram Sylvaniaから市販)を用いて、波長350nmの光を15分間照射し、実施例2の重合された組成物を得た。
調製例3
シリカゾル(20.0g、米国イリノイ州NapersvilleのNalco Co.よりNALCO 2326の商標で市販されている16重量%水性ゾルとして入手)をねじ口付き瓶中で、脱イオン水(50mL)と混合した。2−[メトキシ(ポリエチレンオキシ)−プロピル]トリメトキシシラン(4.0g、米国ペンシルバニア州MorrisvilleのGelest,Inc.から入手)を上記瓶に加えた。瓶を約80℃のオーブンに約24時間入れた。その後、ホットプレートを用いて、混合物を約80℃〜約100℃に一晩加熱して水分を蒸発させ、生成物を得た。
比較例4
準備的実施例3の生成物(0.3g)をポリ(エチレングリコールジアクリレート)(0.2g、米国ペンシルバニア州ExtonのSartomer Co.よりSR−344の商標で入手)及びIRGACURE 2959に混合した。この混合物を1枚0.0254ミリメートル厚のポリ(エチレンテレフタレート(PET)フィルム上に置いた。この混合物を一枚のシリコーン剥離ライナーで覆い、約25.8平方センチメートル(約4平方インチ)の面積を得るように、混合物をPETと剥離ライナーとの間に延ばした。その後、混合物に、Sylvania BL350F紫外線電球(米国マサチューセッツ州DanversのOsram Sylvaniaから市販)を用いて、波長350nmの光を15分間照射し、比較例4の重合組成物を得た。
実施例5及び比較例6
抗菌活性の評価
実施例2の重合された組成物と比較例4の重合混合物のそれぞれの抗菌活性を、原則的にASTM E2180−01(高分子又は疎水性材料中に取り込まれた抗菌剤の活性を決定する標準試験」)に従って評価した。抗菌活性を、黄色ブドウ球菌ATCC番号6538と緑膿菌ATCC番号9027に対して評価した。
要約すると、1〜5×10バクテリア/mLをそれぞれ含む、0.6%寒天スラリーの一定分量、0.5mLをピペットで実施例2の重合された組成物及び比較例4の重合混合物のそれぞれに加えた。これらの接種した試料を37℃で約20時間インキュベートした。その後、これらの試料と寒天スラリーを、約1分間超音波分解した、10mLのDifco Dey Engley中性ブロス(NB)に加えた後、ボルテックスミキサーで約1分間混合した。NBの一定分量をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で希釈し、トリプシン大豆寒天培地(TSA)上に播いた。これらの寒天培地を37℃で約24時間インキュベートして、コロニーを計数し、試験試料上に残存する生存バクテリアを計算した。そして、生存バクテリアの%減少を計算した。結果を表1に示す。表1で、「CE4」は比較例4を意味し、「CE 6」は「比較例6」を意味する。
Figure 2011523667
実施例7及び比較例8
防汚活性の評価
ガラス製顕微鏡スライドの約半分を、実施例2に記載するように、重合性組成物とIRGACURE 2959の混合物でコーティングした。この組成物を1枚の剥離ライナーで覆い、その後、試料を波長350nmで15分照射して、顕微鏡スライドの約半分に重合された組成物を供した。別の顕微鏡スライドを、同様にして、比較例4に記載される重合性混合物を用いて調製した。顕微鏡スライドのそれぞれを平板フローセル(FC 81、米国モンタナ州BozemannoのBiosurface Technologies Corp)中に置いた。それぞれのフローセルを、脱イオン水を用いて一晩洗浄した。続いて、フローセルを70%エタノール水溶液に約30分間曝し、その後、滅菌済み脱イオン水で1時間洗浄して、装置及びスライドを殺菌した。その後、黄色ブドウ球菌株MN8の懸濁液(1:50にPBSで希釈したトリプシン大豆ブロス(TSB)1mL当り、約10細胞を含有)を、フローセルに約2時間通した。その後、黄色ブドウ球菌の懸濁液を、付着した黄色ブドウ球菌によって生物膜を形成させるため、約4日間それぞれのフローセルに通した、1:50にPBSで希釈したTSB滅菌済み成長培地の、リザーバに置換した。その後、これらのフローセルを、希釈したクリスタルバイオレット水溶液(約0.1%(w/v))に15分間曝し、続いて、過剰のクリスタルバイオレットが溶出液中に観察されなくなるまで、脱イオン水で洗浄した。流速を約1mL/分とし、インキュベーションは室温で行った。実施例7の顕微鏡スライド上で染色された生物膜の目視検査は、重合された組成物のコーティングを有する部分上に染色が少ないことを示した。比較例8の顕微鏡スライドの目視検査は、スライドの両方の部分(コーティングされた部分とコーティングされなかった部分)の染色の度合いが同等であることを示した。
本発明の範囲及び趣旨から逸脱しない本発明の様々な変更や改変は、当業者には明らかとなるであろう。本発明は、本明細書で述べる例示的な実施形態及び実施例によって不当に限定されるものではないこと、また、こうした実施例及び実施形態は、本明細書において以下に記述する特許請求の範囲によってのみ限定されることを意図する、本発明の範囲に関する例示のためにのみ提示されることを理解すべきである。

Claims (17)

  1. 重合性組成物であって、

    i)カチオン性共有結合したアンモニウム基、及び
    ii)必要に応じて共有結合したエチレン性不飽和重合性基、を含む第一のカチオン性ナノ粒子成分a)と、

    i)アニオン性ポリエーテル化合物、及び
    ii)必要に応じてエチレン性不飽和重合性アニオン性化合物、を含む第二のアニオン性成分b)と、を含み、
    前記重合性組成物が、少なくとも1つのa)ii)又はb)ii)を含む、重合性組成物。
  2. エチレン性不飽和(メタ)アクリレートモノマーを含む第三の成分を更に含む、請求項1に記載の組成物。
  3. i)カチオン性共有結合したアンモニウム基、及び
    ii)共有結合したエチレン性不飽和重合性基、
    を含む第一のカチオン性ナノ粒子成分a)と、

    i)アニオン性ポリエーテル化合物、及び
    ii)エチレン性不飽和重合性アニオン性化合物、
    を含む第二のアニオン性成分b)と、を含む、請求項1に記載の組成物。
  4. 前記第二の成分のアニオン性ポリエーテル化合物、及び前記第二成分のエチレン性不飽和重合性アニオンは、それぞれ独立して、カルボキシレート、スルホネート、ホスフェート、及びホスホネートからなる群から選択されるアニオン性基を含む、請求項3に記載の組成物。
  5. 前記エチレン性不飽和重合性基は、それぞれ独立して、(メタ)アクリレート基又は(メタ)アクリルアミド基を含む、請求項3に記載の組成物。
  6. 前記カチオン性ナノ粒子のアンモニウム基及びエチレン性不飽和重合性基が、シロキサン結合を介して、ナノ粒子に共有結合している、請求項1に記載の組成物。
  7. 前記共有結合したアンモニウム基が、化学式IIのピリジニウム基を含む、
    Figure 2011523667
    〔式中、Zは二価のスペーサ基、各R11は独立して、水素原子、アルキル基、又はハロゲン基であり、xは1〜5の整数である。〕請求項1に記載の組成物。
  8. 前記共有結合したアンモニウム基が、化学式Iで表される、
    Figure 2011523667
    〔式中、R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素原子、1〜20個の炭素原子を有するアルキル又はヘテロアルキル基、4〜10個の炭素原子を有するアリール基であり、或いは、R及びRは共に環を形成し、R、R、及びRのうちの2つ以下は水素原子であり、Zは二価のスペーサ基である。〕請求項1に記載の組成物。
  9. 前記アニオン性ポリエーテル化合物が、化学式Vで表される、
    Figure 2011523667
    〔式中、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアルカリール基であり、あるいはエチレン性不飽和重合性基を含み、
    各Rは独立して、水素原子又はメチル基であり、あるいはエチレン性不飽和重合性基を含み、
    は、アルキレン基又はアリーレン基であり、
    は、カルボキシレート、スルホネート、ホスフェート、及びホスホネートからなる群から選択されるアニオン性基であり、
    nは、1〜100の整数である。〕請求項1記載の組成物。
  10. コーティングされた物品の製造方法であって、
    a)表面を有する物品を提供する工程と、
    b)請求項1に記載の組成物を前記物品の表面に適用する工程と、
    c)前記組成物を重合する工程と、
    を含む、製造方法。
  11. 前記重合工程が、前記組成物に化学線を当てることを含む、請求項10に記載の方法。
  12. 前記組成物が、エチレン性不飽和(メタ)アクリレートモノマーを更に含む、請求項10に記載の方法。
  13. 前記物品が、セラミック、シリケート、金属、あるいはポリマー又はポリマー/木複合材を含む、請求項10に記載の方法。
  14. 請求項1に記載の重合された組成物が表面の少なくとも一部にコーティングされた基板を含み、前記表面の少なくとも一部は抗菌表面を含む、コーティングされた物品。
  15. 前記重合された組成物が、10重量%以下の水への溶解度を有する、請求項14に記載の物品。
  16. 前記カチオン性ナノ粒子が、共有結合されたエチレン性不飽和重合性基を更に含む、請求項14に記載の物品。
  17. 前記第二の成分が、エチレン性不飽和重合性アニオンを更に含む、請求項14に記載の物品。
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