JP2011516513A - 筋ジストロフィーの呼吸器疾患を治療するためのキノン誘導体2,3−ジメトキシ−5−メチル−6−(10−ヒドロキシデシル)−1,4−ベンゾキノン - Google Patents
筋ジストロフィーの呼吸器疾患を治療するためのキノン誘導体2,3−ジメトキシ−5−メチル−6−(10−ヒドロキシデシル)−1,4−ベンゾキノン Download PDFInfo
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Abstract
本発明は、特定の形態の筋ジストロフィーに付随する呼吸器疾患の治療及び予防の少なくともいずれかを行うための2,3−ジメトキシ−5−メチル−6−(10−ヒドロキシデシル)−1,4−ベンゾキノン(イデベノン)に関する。
【選択図】なし
【選択図】なし
Description
本発明は、特定の形態の筋ジストロフィーに関連する呼吸器疾患の治療及び予防の少なくともいずれかを行うための2,3−ジメトキシ−5−メチル−6−(10−ヒドロキシデシル)−1,4−ベンゾキノン(イデベノン)に関する。
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は、3,000人の男児当たり〜1人が罹患する劣性遺伝型進行性筋消耗疾患である。報告されている発生率は、世界中で生存男児出生100,000人当たり25人である。該疾患の最初の徴候は、男児が歩行をし始める頃に現れる。最初に近位筋群で後に遠位筋群で筋消耗が生じ、患者が10代になると歩行障害を引き起こす。ジストロフィン遺伝子の突然変異及びジストロフィンタンパク質の欠損は、主に呼吸器不全又は心不全により成人期早期においてDMD患者を最終的に死に至らしめる。生活の質を向上させるための臨床的手段としては、整形外科手術及び夜間換気が挙げられる。ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)は、同ジストロフィン遺伝子の異なる突然変異により引き起こされるが、臨床経過がより緩やかであり、DMD患者に比べて患者の平均余命は長い。DMD関連筋消耗の根底にある細胞過程は、骨格筋線維の喪失、並びにそれに付随する結合組織及び脂肪組織の侵襲を含む。骨格筋系の進行性衰弱、心臓合併症、及び呼吸不全は、DMD/BMD患者の早期罹患及び死亡につながる。
DMD及びBMDは両方共、ジストロフィン遺伝子の突然変異により引き起こされる。ジストロフィン遺伝子は、2,700kbpからなり、X染色体上に位置する(Xp21.2、ジェンバンクアクセッション番号:M18533)。14kbpの長さのmRNA転写産物は、骨格筋、心筋、及び平滑筋で主に発現し、脳では限定的に発現する。成熟ジストロフィンタンパク質は、〜427kDaの分子量を有し、タンパク質のスペクトリンスーパーファミリーに属する(非特許文献1)。DMDの原因となる突然変異は、ジストロフィンタンパク質の欠損につながり、BMD表現型が穏やかであるのは、切断型であることが多い異常な形態であるが機能は残存しているタンパク質を発現させる突然変異の結果である。
ジストロフィンのN末端部は、細胞骨格のアクチンフィラメントに結合し、一方、ジストロフィン分子のC末端部のドメインは、膜結合型β−ジストログリカンに結合する。したがって、ジストロフィンは、細胞骨格と筋細胞膜との間の分子リンカーとして、またいわゆるジストロフィン結合タンパク質複合体(DAPC)を介して細胞外マトリクスに対する分子リンカーとして間接的に機能する。ジストロフィンの既知の結合パートナーとしては、シントロフィン、ジストロブレビン、神経型一酸化窒素合成酵素(nNOS)、及びサルコグリカン−サルコスパン(SS)複合体も挙げられる。ジストロフィンタンパク質のカルボキシ末端領域及びアミノ末端領域の両方が関与するこれらタンパク質の相互作用は、収縮弛緩周期中の筋細胞膜の機械的安定性に寄与すると考えられている。DMD患者のジストロフィン欠損筋細胞において、DAPC複合体の多くの構成要素が筋細胞膜で減少又は欠損していることが示されているように、ジストロフィンは、DAPC複合体自体の集合又は完全性のためにも重要である。機能性ジストロフィンタンパク質が欠損すると、アクチン細胞骨格と筋細胞の筋細胞膜との間の機械的連結が崩壊し、それによって、筋管の変質及び筋肉衰弱が生じる(非特許文献1)。
ジストロフィン欠損DMD患者では、呼吸器疾患は、呼吸筋の衰弱から生じ、これは10代前半に顕在化し、10代又は20代に呼吸不全及び致命的肺感染症を引き起こす進行性拘束性肺症候群につながる(非特許文献2)。DMD患者では、進行性呼吸筋衰弱が呼吸不全の発現の主な要因である。実際、最大気道内圧の低下が、拘束性肺気量変化に先行する機能不全の最初の徴候であることが示されている(非特許文献2及び3)。
DMD及びBMDに関連する呼吸不全は、現在のところ、American Thoracic Societyにより推奨されているように、気道クリアランス、呼吸筋の訓練、非侵襲性夜間換気、非侵襲性日中換気、及び連続侵襲性換気により対症的に又は補助的に処置されているのみである。脊髄手術と夜間換気とを組み合わせると、生存期間の中央値が30年延びる。
DMDに付随する筋肉衰弱の治療に関する薬理学的な介入は、現在のところ、例えば、プレドニゾン又はデフラザコートなどのグルココルチコイドの使用に限定されている。DMDにおけるコルチコステロイドの使用に関する入手可能な証拠について最近検討した結論は以下の通りであった:プレドニゾン(0.75mg/kg/日)又はデフラザコート(0.9mg/kg/日)を治療のために提供すべきである、効果及び副作用をモニタすべきである、及びコルチコステロイドによる治療は潜在的リスクに関して様々な意見を取り入れた議論の上で行うべきである。それにもかかわらず、コルチコステロイド治療を開始する時期、及び長期に及ぶ場合の重篤な副作用の恐れなどの重要な疑問又は問題が残されている。
要約すると、DMDにおける呼吸不全の管理については近年進歩しているにもかかわらず、呼吸器合併症及び呼吸不全がDMDにおける主な死因である。したがって、ジストロフィンの欠損により生じる筋ジストロフィー(デュシェンヌ型筋ジストロフィー及びベッカー型筋ジストロフィー)における呼吸器の衰弱及び呼吸不全の更なる治療手段又はより効果の高い予防手段を提供することが、当該技術分野において強く求められている。前記目的は、DMD及びBMDに付随する呼吸器の衰弱及び呼吸不全の治療及び予防の少なくともいずれかを行う薬剤を調製するためのイデベノンを提供することにより達成される。
Brown S.C.,Lucy J.A.(eds),"Dystrophin",Cambridge University Press,1997
McDonald CM,Abresch RT,Carter GT,Fowler WM,Johnson ER,Kilmer DD,Sigford BJ. Am J Phys Med Rehabil 1995;74(Suppl):S70−92
Hahn A,Bach JR,Delaubier A,Renardel−Irani A,Guillou C,Rideau Y.Arch Phys Med Rehabil 1997;78:1−6
本発明は、筋ジストロフィー、具体的にはデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)及びベッカー型筋ジストロフィー(BMD)における呼吸器疾患(呼吸器の衰弱及び呼吸不全の少なくともいずれか)の予防及び治療の少なくともいずれかを行うためのイデベノン(2,3−ジメトキシ−5−メチル−6−(10−ヒドロキシデシル)−1,4−ベンゾキノン)に関する。イデベノンが呼吸器の衰弱又は呼吸不全を寛解させることができるという報告は、いずれの神経筋疾患においてもこれまでなされていなかったため、これは驚くべきことである。
イデベノンは、コエンザイムQ10(CoQ10)の合成類似体であり、CoQ10は、生細胞膜の抗酸化物質であり且つアデノシン三リン酸(ATP)を産生するミトコンドリア電子伝達鎖(ETC)の必須構成要素である。イデベノンは、低酸素圧状況下で作用する能力を有する。脂質の過酸化を阻害するその能力ゆえ、イデベノンは、細胞膜及びミトコンドリアを酸化的損傷から保護する(Zs.−Nagy I(1990)Chemistry,toxicology,pharmacology and pharmacokinetics of idebenone:a review.Arch.Gerontol.Geriatr.11:177−186)。その抗酸化性は、脳虚血及び中枢神経系における神経損傷を阻止する。またイデベノンは、ETCと相互作用し、虚血状況下におけるATP形成を維持する。この化合物は、向知性薬として既に使用されており、神経成長因子を刺激することが示されている。これはアルツハイマー病及び他の神経変性疾患の治療において重要である可能性がある特徴である。イデベノンは、武田薬品工業株式会社により出願された特公昭62−3134号明細書に記載されている。更に、イデベノンは鉄過剰症、具体的にはフリートライヒ運動失調に関連する疾患の治療に適用し得ることが示されている(米国特許第6,133,322号明細書)。
イデベノンが投与される投与量範囲は、5mg/kg/日〜60mg/kg/日が好ましく、5mg/kg/日〜40mg/kg/日がより好ましく、10mg/kg/日〜30mg/kg/日が最も好ましい。
更に、イデベノンは、筋力の初期寛解、心機能の向上、及び心臓の解剖学的構造の正常化を観察するために、好ましくは少なくとも3ヶ月間、より好ましくは少なくとも6ヶ月間、最も好ましくは6ヶ月間〜12ヶ月間、1日間に少なくとも1回、好ましくは1日間に複数回投与されることが好ましい。治療効果を持続させるために、長期間の処置が推奨され、終生処置を続けることが好ましい。
投与方法は、経口、i.p.、i.v.、i.m.、i.c.、非経口、鼻腔内、及び経皮が好ましく、経口投与及び口内粘膜投与が最も好ましい。
有効投与量のイデベノンを哺乳動物、特にヒトに提供するために、任意の好適な投与経路を使用してもよい。更なる投与方法としては、直腸投与、局所投与、眼内投与、経肺投与、又は経鼻投与が挙げられる。剤形としては、例えば、錠剤、トローチ剤、分散剤、懸濁剤、液剤、カプセル剤、クリーム剤、軟膏剤、及びエアロゾル剤が挙げられ、錠剤が好ましい。
1つの好ましい剤形は、イデベノンを送達するための速崩経口フィルム形態製品と定義されるいわゆる「オブラート」、又はイデベノンを含有している口腔内崩壊錠剤(ODT)である。
用いられる活性成分の有効投与量は、用いられる具体的な化合物、投与方法、治療される状態、及び治療される状態の重篤度によって変化し得る。当業者は、かかる投与量を容易に確認することができ、好ましい投与量については上述されている。本発明の状況で使用されるイデベノンは、投与前に剤形に製剤されることが好ましい。したがって、イデベノンは、任意の好適な医薬担体と組み合わせてもよい。本発明に従って使用するための医薬調製品は、周知かつ容易に入手可能な成分を用い、通常の手順によって調製することができる。製剤の作製において、通常イデベノンは、担体と混合されるか、担体によって希釈されるか、又は担体に封入され、カプセル剤、カシェ剤、紙、又はその他の内包体の形態をとり得る。担体が希釈剤として機能するとき、該担体は、固形、半固形、又は液体物質であってもよく、活性成分に対するビヒクル、賦形剤、又は媒体として作用する。組成物は、錠剤、丸剤、粉剤、ロゼンジ剤、サシェ剤、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、液剤、シロップ剤、エアロゾル剤(固体として又は液体媒体中で)、軟質ゼラチンカプセル剤、硬質ゼラチンカプセル剤、坐剤、無菌注射液剤、無菌包装粉剤、口腔内崩壊錠剤、及び経口オブラートの形態であってもよい。
好適な担体、賦形剤、及び希釈剤の幾つかの例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水性シロップ、メチルセルロース、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、及び鉱油が挙げられる。製剤は、潤滑剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤、甘味剤、及び着香剤の少なくともいずれかを更に含んでもよい。本発明の組成物は、患者への投与後に、活性成分の急速放出、持続放出、又は遅延放出を提供するよう製剤してもよい。
イデベノンは毒性の面で安全であり、これは、イデベノンが薬剤中の医薬活性薬剤として使用可能であることを意味する。
イデベノンは、賦形剤、充填剤、溶媒、希釈剤、染料、及び結合剤の少なくともいずれかと組み合わせてもよい。補助物質及びその使用量の選択は、薬剤が口腔粘膜を介して経口投与されるか、静脈内投与されるか、腹腔内投与されるか、皮内投与されるか、筋内投与されるか、鼻腔内投与されるか、口腔投与されるか、又は局所投与されるかに依存する。経口適用の場合、好適な調製品は、錠剤、糖衣丸剤、カプセル剤、顆粒粉剤、滴剤、ジュース剤、及びシロップ剤の形態であり、一方非経口適用、局所適用、及び吸入適用の場合、好適な形態は、液剤、懸濁剤、容易に再構成可能な乾燥調製品、及び噴霧剤である。イデベノンは、持続放出物質として、溶解された形態で、又は任意的に皮膚への浸透を促進する剤が添加された硬膏剤として投与してもよく、経皮適用調製品に適している。経口的又は経皮的に使用され得る調製品の形態は、化合物を遅延放出し得る。イデベノン製剤は、幾つかの特許、例えば、国際公開第99/07355号、特開平11−116470号、及び国際公開第2008/019769号に記載されている。
本発明に従って使用するのに好ましい製剤は、ラクトース、セルロース、クロスカルメロースナトリウム、PVP(Plasdone(登録商標)K25)、ステアリン酸マグネシウム(植物源)、及びコロイド状二酸化ケイ素を含有するフィルムコート錠中に45mg、60mg、又は150mgのイデベノンを含有する。
他の好ましい製剤は、イデベノンを送達するための速崩経口フィルム形態製品として定義されるイデベノン含有オブラート、又はイデベノンを含有する口腔内崩壊錠剤(ODT)である。
更に好ましい態様では、イデベノンは、第2の治療剤と組み合わせて投与されてもよく、該第2の治療剤は、6a−メチルプレドニゾロン−21コハク酸ナトリウム(solumedrol(登録商標))又はデフラザコート(calcort(登録商標))などのグルココルチコステロイドから選択されることが好ましく、これらは炎症及び筋肉の衰弱の治療のためにDMD患者に慣用的に使用されている。同様に、イデベノンは、ACE阻害剤、β遮断剤、及び利尿剤などのDMD関連心筋症を治療するためにDMD患者に使用される任意の薬剤と組み合わせて投与してもよい。
イデベノン及び更なる活性剤は、疾患症状を治療又は予防するために、同時に、別個に、又は連続して使用してもよい。2つの活性剤は、単一剤形で提供されてもよく、又は各々が2つの活性剤のうちの少なくとも1つを含有する別個の製剤で提供されてもよい。
以下の実施例は、本発明をさらに解説する。
(実施例1)
1つの臨床施設において実施された二重盲検プラセボ対照無作為化並行群間臨床試験により、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)患者における呼吸器パラメータに対するイデベノンの効果を評価した。52週間に亘って8歳から16歳のDMD患者をイデベノン又はプラセボで処理した。患者及び患者の保護者/法定後見人から書面によるインフォームドコンセントを得た後、プロトコル適格基準を満たす患者を研究施設に受け入れ、イデベノン毎日処理群(150mg、1日3回;合計1日用量450mg)又はプラセボ処理群(1日3回)に無作為に割り付けた。ベースライン時、26週目、及び52週目に効果を評価した。
1つの臨床施設において実施された二重盲検プラセボ対照無作為化並行群間臨床試験により、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)患者における呼吸器パラメータに対するイデベノンの効果を評価した。52週間に亘って8歳から16歳のDMD患者をイデベノン又はプラセボで処理した。患者及び患者の保護者/法定後見人から書面によるインフォームドコンセントを得た後、プロトコル適格基準を満たす患者を研究施設に受け入れ、イデベノン毎日処理群(150mg、1日3回;合計1日用量450mg)又はプラセボ処理群(1日3回)に無作為に割り付けた。ベースライン時、26週目、及び52週目に効果を評価した。
合計21人の患者が参加し、そのうち13人の患者をイデベノン処理群に、8人をプラセボ処理群に無作為に割り付けた。
組み入れ基準及び除外基準は、スクリーニング時に評価し、1回目の試験薬剤投与前の1回目の来診(ベースライン来診)時に確認した。以下の組み入れ基準及び除外基準を用いて、患者が研究に参加するのに適格であるかどうかを決定した。
組み入れ基準は、以下の通りであった。
・参加時に8歳〜16歳である患者
・男性
・左心室(LV)の下外側壁における異常な最大収縮期歪みにより定義される心臓合併症/機能不全を有する
・DMDの確定診断を受けている(筋肉生検においてジストロフィン遺伝子の読み枠のずれる欠失又はジストロフィンタンパク質の欠損/5%未満への減少;典型的なDMDに合致する臨床像)
・DMD(又は任意の他の疾患)に対して慢性的にグルココルチコステロイド治療を受けている場合(即ち併用薬):組み入れ前6ヶ月間の投与量が安定していなければならない(変化していてはならない)
・DMD関連心筋症に対して慢性的に薬剤(β遮断剤、利尿剤)が投与されている場合:組み入れ前3ヶ月間の投与量が安定していなければならない(変化していてはならない)
・QMT上肢スコアが最初の評価スコアの15%以内で再現可能に繰り返される能力(1回目の来診/1日目対スクリーニング来診)
・参加時に8歳〜16歳である患者
・男性
・左心室(LV)の下外側壁における異常な最大収縮期歪みにより定義される心臓合併症/機能不全を有する
・DMDの確定診断を受けている(筋肉生検においてジストロフィン遺伝子の読み枠のずれる欠失又はジストロフィンタンパク質の欠損/5%未満への減少;典型的なDMDに合致する臨床像)
・DMD(又は任意の他の疾患)に対して慢性的にグルココルチコステロイド治療を受けている場合(即ち併用薬):組み入れ前6ヶ月間の投与量が安定していなければならない(変化していてはならない)
・DMD関連心筋症に対して慢性的に薬剤(β遮断剤、利尿剤)が投与されている場合:組み入れ前3ヶ月間の投与量が安定していなければならない(変化していてはならない)
・QMT上肢スコアが最初の評価スコアの15%以内で再現可能に繰り返される能力(1回目の来診/1日目対スクリーニング来診)
除外基準は以下の通りであった。
・症候性心筋症又は心不全
・ベースライン(スクリーニング)評価時に無症候性であるが重篤な心機能不全を有する:短縮率(FS)20%未満及び駆出率(EF)40%未満の少なくともいずれか
・アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤の使用
・心室性不整脈(孤立性心室性期外収縮以外)の既往歴;スクリーニング時に心室性不整脈を示す
・DMDに関する任意の他の治験への参加歴(6ヶ月以内)
・最近6ヶ月間以内にコエンザイムQ10、イデベノン、クレアチン、グルタミン、オキサトミド、又は任意の漢方薬を使用
・重大な併発疾患、重大な腎機能障害、又は重大な肝機能障害の既往歴(血清クレアチニン及びGGTが患者の年齢及び性別における上限の1.5倍超)
・イデベノンに対する過敏症であることが分かっている
・症候性心筋症又は心不全
・ベースライン(スクリーニング)評価時に無症候性であるが重篤な心機能不全を有する:短縮率(FS)20%未満及び駆出率(EF)40%未満の少なくともいずれか
・アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤の使用
・心室性不整脈(孤立性心室性期外収縮以外)の既往歴;スクリーニング時に心室性不整脈を示す
・DMDに関する任意の他の治験への参加歴(6ヶ月以内)
・最近6ヶ月間以内にコエンザイムQ10、イデベノン、クレアチン、グルタミン、オキサトミド、又は任意の漢方薬を使用
・重大な併発疾患、重大な腎機能障害、又は重大な肝機能障害の既往歴(血清クレアチニン及びGGTが患者の年齢及び性別における上限の1.5倍超)
・イデベノンに対する過敏症であることが分かっている
以下の患者の除外基準は、以下の通り定義された。
・研究期間中、試験薬剤以外のいずれかの治験薬を使用
・ACE阻害剤の投与
・治験中進行性心筋症であり、症候性心不全を発現している患者
・治験中進行性心筋症であり、無症候性であるが短縮率(FS)が20%未満、又は駆出率(EF)が40%未満に有意に低下している患者
・研究期間中、試験薬剤以外のいずれかの治験薬を使用
・ACE阻害剤の投与
・治験中進行性心筋症であり、症候性心不全を発現している患者
・治験中進行性心筋症であり、無症候性であるが短縮率(FS)が20%未満、又は駆出率(EF)が40%未満に有意に低下している患者
イデベノンは、丸みを帯びた両凸形状のオレンジ色のフィルムコート錠剤として製剤され、該錠剤の直径は10mmであり、150mgのイデベノンと、賦形剤としてラクトース一水和物、微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、ポビドン(Plasdone(登録商標)K25)、ステアリン酸マグネシウム、及び二酸化ケイ素とを含有していた。錠剤は、高剪断造粒機を用いて実施される湿式造粒プロセスに付し、次いで回転打錠機で圧縮し、穿孔パンコーターで核をフィルムコーティングすることにより製造される。プラセボの組成は、150mgのフィルムコート錠剤の組成に基づく。原体及び賦形剤を、ラクトース一水和物及び微結晶性セルロースの混合物に置換した。コーティングの組成は変更しなかった。プラセボ錠剤は、直接圧縮し、次いでフィルムコーティングすることにより製造される。
イデベノン(150mg)及び対応するプラセボは、両方共経口錠剤として投与された。患者は、12ヶ月間(52週間)、食事と共に1日3回1錠を服用した。
肺機能試験は、最新式の設備及び方法を用いて、神経筋疾患に罹患している小児の評価について積年の専門知識を有する1人の臨床評価者(理学療法士)により実施された。試験は、患者が座っている状態で、標準化された試験順序により行われた。肺気量(FVC、FEV1)は、手持ち式Koko肺活量計(PDS Instrumentation,Louisville,USA)を用いて測定された。
最大吸気圧(MIP)及び最大呼気圧(MEP)は、マウスピースに接続されているMagnehelic(登録商標)圧力計(Dwyer Instrument,Michigan City Ind,USA)を用いて測定された。最大呼気流(PEF)測定は、携帯用呼気流計(Mini−Wright peak flow meter,Clement Clarke International)を用いて実施された。American Thoracic Society(ATS)により公開されている基準に従って、全てのパラメータについて、3回連続して記録した結果のうちの最高値を用いた(American Thoracic Society.Am J Respir Crit Care Med 1994;152:1107−1136)。
肺機能試験では以下のパラメータを用いた。
・努力肺活量(FVC)[L]
・努力肺活量(予測%)
・1秒間努力呼気容量(FEV1)[L]
・FEV1(予測%)
・最大呼気流(PEF)[L/分]
・最大呼気流(予測%)
・最大吸気圧(MIP)[cmH2O]
・最大吸気圧(予測%)
・努力肺活量(FVC)[L]
・努力肺活量(予測%)
・1秒間努力呼気容量(FEV1)[L]
・FEV1(予測%)
・最大呼気流(PEF)[L/分]
・最大呼気流(予測%)
・最大吸気圧(MIP)[cmH2O]
・最大吸気圧(予測%)
最大呼気流について、公知の刊行物(Godfrey S et al.(1970)Lung volumes and airway resistance in normal children aged 5to18years.Br J Dis Chest;64(1):15−24;Quanjer PH,et al.(1989)Compilation of reference values for lung function measurements in children.Eur Respir J Suppl 4:184S−261S)に従って以下の等式を用いて測定値(リットル)を「予測%」に変換した。
「最大呼気流−422.8+5,288×高さ」(高さの単位はcm)
「最大呼気流−422.8+5,288×高さ」(高さの単位はcm)
最大吸気圧(MIP)について、公知の刊行物(Domenech−Clar R,et al.(2003)Maximal static respiratory pressures in children and adolescents.Pediatr Pulmonol.35(2):126−32)に従って以下の等式を用いて測定値(cmH2O)を「予測%」に変換した。
「MIP−27,020−(4,132×年齢)−(0.003×高さ×体重)」(年齢:年、高さ:身長(cm)、体重:kg)
「MIP−27,020−(4,132×年齢)−(0.003×高さ×体重)」(年齢:年、高さ:身長(cm)、体重:kg)
イデベノンの効果は、ベースラインと処理の終わり(52週目)との間の上記パラメータの変化として判定し、イデベノン処理対象とプラセボ処理対象との間で比較を行った。
上記臨床試験により、イデベノン処理の結果としてのDMD患者における呼吸器パラメータの改善をいずれもモニタすることが可能になる。
(実施例2)
イデベノンは、DMD患者における機能的呼吸器パラメータを改善する
DMDにおける呼吸不全の初期徴候を改善するイデベノンの効果を評価するために、ベースラインと52週目(処理の終わり)との間の最大呼気流(PEF)及び最大吸気圧(MIP)の変化を測定し、イデベノン処理群の変化とプラセボ処理群の変化とを比較した。表1に示すように、イデベノン処理群の患者では、驚くべきことに両方のパラメータが改善されていた。具体的には、イデベノン処理群の患者の最大呼気流は、ベースラインに比べて52週目の方が高く(呼吸機能の改善を示す)、一方プラセボ処理群の患者の最大呼気流は、研究期間に亘って低下していた(呼吸機能の悪化を示す)。イデベノン処理群とプラセボ処理群との、ベースラインから52週目までの変化の差は、統計的に有意であった。
イデベノンは、DMD患者における機能的呼吸器パラメータを改善する
DMDにおける呼吸不全の初期徴候を改善するイデベノンの効果を評価するために、ベースラインと52週目(処理の終わり)との間の最大呼気流(PEF)及び最大吸気圧(MIP)の変化を測定し、イデベノン処理群の変化とプラセボ処理群の変化とを比較した。表1に示すように、イデベノン処理群の患者では、驚くべきことに両方のパラメータが改善されていた。具体的には、イデベノン処理群の患者の最大呼気流は、ベースラインに比べて52週目の方が高く(呼吸機能の改善を示す)、一方プラセボ処理群の患者の最大呼気流は、研究期間に亘って低下していた(呼吸機能の悪化を示す)。イデベノン処理群とプラセボ処理群との、ベースラインから52週目までの変化の差は、統計的に有意であった。
同様に、イデベノンの驚くべき改善効果は、「予測値」の割合として表される、「最大呼気流」のベースライン時から52週目までの変化でも検出することができた。イデベノン処理群におけるこのパラメータの変化の差は、プラセボ処理群とは統計的に差があった。
更に、イデベノン処理群の患者では、52週間の処理に亘って最大吸気圧(MIP)が増加し(負の数が大きくなることにより表される)、これはイデベノンで処理されたDMD患者がより大きな吸気力を発揮することを示す。この変化は、プラセボ処理群とは明らかに異なっていた(表1)。MIPを予測値の割合として表したとき、イデベノン処理群の患者では4.8±13.0%増加したが、プラセボ処理群の患者では0.8±7.3%低下し、これは機能的呼吸器パラメータに対するイデベノンの治療効果を明らかに示す。
イデベノン処理によるFVC、FVC(予測%)、FEV1、及びFEV1(予測%)の変化は、プラセボ処理群と差がなかった。実際、両方の群のベースラインにおいて、これらパラメータ(拘束性肺気量)の受けた影響は、最大流及び気道内圧の受けた影響よりも明らかに少なかった。これは、DMD疾患の過程において肺気量の変化が呼吸強度の低下のより直接的な測定における変化よりも後で生じることを示す以前の報告と一致する(Hahn A,Bach JR,Delaubier A,Renardel−Irani A,Guillou C,Rideau Y.Arch Phys Med Rehabil 1997;78:1−6;McDonald CM, Abresch RT,Carter GT,Fowler WM,Johnson ER,Kilmer DD,Sigford BJ.Am J Phys Med Rehabil 1995;74(Suppl):S70−S92)。
Claims (11)
- 筋ジストロフィーにおける呼吸器疾患(呼吸器の衰弱及び呼吸不全の少なくともいずれか)の予防及び治療の少なくともいずれかを行うためのイデベノン。
- 筋ジストロフィーがデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)である請求項1に記載のイデベノン。
- 筋ジストロフィーがベッカー型筋ジストロフィー(BMD)である請求項1に記載のイデベノン。
- イデベノンが5mg/kg/日〜60mg/kg/日の投与量で投与される請求項1から3のいずれかに記載のイデベノン。
- イデベノンが少なくとも3ヶ月間に亘って毎日1回以上投与される請求項1から4のいずれかに記載のイデベノン。
- イデベノンの投与方法が経口、i.p.、i.v.、i.m.、i.c.、非経口、鼻腔内、経皮、又は口内粘膜を介する投与方法から選択される請求項1から5のいずれかに記載のイデベノン。
- イデベノンが錠剤の形態で投与される請求項1から5のいずれかに記載のイデベノン。
- イデベノンが医薬成分を送達するための速崩経口フィルム形態製品である経口オブラート、又は口腔内崩壊錠剤(ODT)により投与される請求項1から5のいずれかに記載のイデベノン。
- イデベノンが第2の治療剤と併用投与され、該第2の治療剤は、グルココルチコステロイド及びDMD関連心筋症を治療するための治療剤から選択されることが好ましい請求項1から8のいずれかに記載のイデベノン。
- グルココルチコステロイドが6α−メチルプレドニゾロン−21コハク酸ナトリウム及びデフラザコートから選択される請求項9に記載のイデベノン。
- DMD関連心筋症を治療するための治療剤がACE阻害剤、β遮断剤、及び利尿剤から選択される請求項9に記載のイデベノン。
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