JP2011507537A - インシュリン分解酵素結晶 - Google Patents
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Abstract
本発明は、インシュリン分解酵素(IDE)のアポ結晶および共結晶ならびに薬物開発におけるその使用を提供する。
Description
本発明は、アポ型でリガンドを有するインシュリン分解酵素(IDE)の結晶と、それに由来する三次元X線結晶構造とに関連する。
インシュリン分解酵素(IDE)は、分子量113 kDaのZn2+-メタロプロテアーゼである。IDEの活性部位サイン配列は、His-Glu-aa-aa-His(HEXXH)からなり、ここで2つのヒスチジンは亜鉛イオンの結合に配位し、グルタミン酸が触媒作用において必須の役割を果たしている。IDEは偏在的に発現しており、肝臓、精巣、筋肉、および脳で最も高い発現を示す。IDEはサイトゾルおよびペルオキシソームに豊富であり、粗面小胞体にも見られる。
IDEをコードする遺伝子は、ヒトの染色体10q23-q25に位置する。それは約120 kbに及び、24エキソンを含む。コード配列は、大腸菌(E. coli)からショウジョウバエ(Drosophila)、ヒトへの進化の過程で高度に保存されている。
IDEは、インビボでインシュリンの分解とクリアランスにおいて役割を担うことが示されてきた。さらにIDEは、いくつかのペプチド性ホルモンおよびアミロイド-?ペプチドに対して分解の可能性を示す。培養細胞内のIDEの過剰発現が、インシュリン分解速度を促進することが分かってきた。GKラットは、2型糖尿病の動物モデルである。IDE遺伝子の変異は、これらの動物において糖尿病の遺伝的原因である。これらのラットで発現しているIDEの変異型は、インシュリン分解の低下の結果としてインシュリンレベルを増加させ、ヒト2型糖尿病症候群に典型的な症状を引き起こす。
IDEはアミロイドβ(Aβ)を分解できることが示されてきた。Aβは神経毒性であり、それが蓄積した結果、アルツハイマー病の顕著な特徴であるアミロイド原線維形成および老人斑の生成がもたらされる。IDEは、脳および脳脊髄液(CSF)からのA?のクリアランスと、それによる老人斑形成の予防に関与することが示唆された。染色体10q23-q25へのIDE遺伝子のマッピングにより、それはアルツハイマー病-6遺伝子座に対する候補遺伝子となった。
2型糖尿病およびアルツハイマー病の病因におけるIDEの関与により、それは2型糖尿病およびアルツハイマー病の処置のための薬物の開発にとって有力な標的となった。
本発明の第一の目的は、インシュリン分解酵素(IDE)ポリペプチドのアポ結晶を提供することであり、この結晶は空間群P21に属する。ヒトIDE(hIDE)のDNA配列は、SEQ ID NO:1に記載され、ヒトIDEポリペプチドのアミノ酸配列はSEQ ID NO:2に記載される。
好ましい態様において、アポ結晶は、a = 78±3 A、b = 115±3 A、c = 124±3 A、β= 97±3°の単位格子寸法を有する。
第二の目的において、本発明は、IDEポリペプチドおよびアロステリックリガンドの共結晶に関連し、この結晶は空間群P21に属する。
好ましい態様において、共結晶は、a = 78±3 A、b = 115±3 A、c = 123±3 A、β= 97±3°の単位格子寸法を有する。
共結晶の別の好ましい態様において、アロステリックリガンドは1H-インドール-7-カルボン酸(3-クロロ−フェニル)-アミドである。
本発明のアポ結晶または共結晶の好ましい態様において、IDEポリペプチドは、SEQ ID NO:2のポリペプチドに少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、なおより好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは100%類似する配列を有するポリペプチドである。
本発明のアポ結晶または共結晶のさらに好ましい態様において、IDEポリペプチドは、SEQ ID NO:2のアミノ酸43〜1018を含む。
第四の目的において本発明は、IDEポリペプチドを結晶化する方法に関し、本方法は、IDEポリペプチドの水溶液を提供する段階と、蒸気拡散またはマイクロバッチにより、200Da〜10 kDaの平均分子量を有するPEG 5%〜30%(w/v)およびエチレングリコール5〜15%の緩衝リザーバー溶液を用いて結晶を成長させる段階とを含む。好ましくは、PEGはPEG 5000 MMEである。エチレングリコール濃度は好ましくは約10%(w/w)である。
第五の目的において本発明は、IDEポリペプチドをリガンドと共結晶化するための方法に関し、本方法は、ポリペプチドの水溶液を提供する段階と、ポリペプチドの水溶液にモル過剰のリガンドを添加する段階と、蒸気拡散またはマイクロバッチにより、200Da〜5kDaの平均分子量を有するPEG 0%〜30%(w/v)およびエチレングリコール5〜15%の緩衝リザーバー溶液を用いて結晶を成長させる段階とを含む。好ましくは、約20%のPEG1500および約4%のPEG400を用いて、IDEポリペプチドをリガンドと共結晶化させる。
IDEポリペプチドを結晶化する方法またはIDEポリペプチドをリガンドと共結晶化するための方法の好ましい態様において、IDEポリペプチドは、SEQ ID NO:2のポリペプチドに少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、なおより好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは100%類似する配列を有するポリペプチドである。本発明の方法で使用するための好ましいIDEポリペプチドは、SEQ ID NO:2のアミノ酸43〜1018を含む。
第六の目的において本発明は、以下の段階を含むIDEポリペプチドのアロステリック部位に結合できる化合物を同定するための方法を提供する:
a)IDEポリペプチドの三次元モデルから、図2の原子座標±最大2Åの該アミノ酸の骨格原子からの根平均二乗偏差を用いて、IDEポリペプチドのアロステリック部位を決定する段階、および
b)コンピュータフィッティング解析を実行してIDEアロステリック部位に結合できる化合物を同定する段階。
a)IDEポリペプチドの三次元モデルから、図2の原子座標±最大2Åの該アミノ酸の骨格原子からの根平均二乗偏差を用いて、IDEポリペプチドのアロステリック部位を決定する段階、および
b)コンピュータフィッティング解析を実行してIDEアロステリック部位に結合できる化合物を同定する段階。
好ましい態様において、本方法は、残基L201、F202、Q203、L204、K205、T208、Y302、I304、Y314、V315、T316、F317、E364、I374、N376、R472、V478、A479、V481の図2の相対構造データ座標±最大2Åの該アミノ酸の骨格原子からの根平均二乗偏差を用いて、IDEのアロステリック部位の三次元モデルを生成する段階と、コンピュータフィッティング解析を実行してIDEアロステリックリガンドを同定する段階とを含む。
第七の目的において、本発明は、任意で2.0Å未満のrmsdだけ異なる図1または図2の座標によって定義される構造を有するIDEポリペプチドのアポ結晶または共結晶を提供する。
本発明の結晶は、回分晶析、蒸気拡散(シッティングドロップ法またはハンギングドロップ法のいずれかによる)を含む多くの技術、およびマイクロダイアリシスによって成長させることができる。場合によっては、X線品質の結晶を得るために結晶のシーディングを必要とする。したがって、結晶の標準的なマイクロシーディングおよび/またはマクロシーディングを用いてもよい。
本発明の好ましい態様において、結晶は蒸気拡散によって成長する。本方法では、ポリペプチド溶液を、結晶を作製するのに最適な沈殿剤濃度を有する大容量の水性リザーバーを含む密封容器内で平衡にする。一般に、実質的に純粋なポリペプチド溶液の約10 1未満を、リザーバー溶液と同容量または類似の容量と混合して、結晶化に必要とされる約半分の沈殿剤濃度にする。この溶液をカバーガラスの下で液滴として懸濁し、これをリザーバーの上で密閉する。密閉された容器を、一日から一年、通常約2〜6週間、結晶が成長するまで静置する。
原子構造座標と同様に、本明細書に記載する結晶の三次元構造を得るための方法は、当技術分野において周知である(例えばD. E. McRee, Practical Protein Crystallography, Academic Press, San Diego (1993)およびそこに引用されている参考文献を参照されたい)。
本発明の結晶および特にそこから得られる原子構造座標には、多くの用途がある。例えば、本明細書に記載の結晶および構造座標は特に、新規の治療薬の開発に向けたアプローチとして、IDEタンパク質に結合する化合物の同定に有用である。
本明細書に記載の構造座標を、IDEポリペプチドと結合リガンドとの共結晶の構造と同様に、さらなる天然または変異の結晶構造を決定する際にフェージングモデルとして使用することができる。例えばNMRによって得られるものなど、天然または変異IDEポリペプチドの溶液に基づく構造の評価を補助するために、構造座標およびそこから得られる三次元構造のモデルを用いることもできる。
用語「根平均二乗偏差」とは、偏差の二乗の算術平均の平方根を意味する。これは、傾向または対象物からの偏差または変動を表現する手段である。本発明の目的のため、「根平均二乗偏差」は、本明細書に記載のIDEポリペプチドの構造座標によって定義されるIDEポリペプチドまたはその活性結合部位の骨格からのタンパク質の骨格における変動を定義する。
大きな化合物データベースと公知のまたはモデル化された三次元構造の標的タンパク質との分子ドッキングは、新しいリード化合物の同定において現在よく使われるアプローチである。この「仮想スクリーニング」アプローチは、リガンド結合モードの早くて正確な概算およびリガンド親和性の概算に依る。典型的には、化合物の大きなデータベースを、現実または仮想のいずれでも、標的構造にドッキングさせて、最も可能性のあるリガンドのリストを作成する。このランキングは、活性化合物について十分充実しているはずであり、これらをその後さらなる実験検証に供してもよい。
リガンド結合モードの算出は、リガンドを柔軟な様式でタンパク質構造にドッキングできる分子ドッキングプログラムによって行ってもよい。リガンド親和性の推定は、典型的に別個のスコアリング関数の使用によって行われる。これらのスコアリング関数には、分子力学力場を算出するエネルギーベースアプローチと、構造情報の適したデータベースの分析に由来する経験則を用いるルールベースアプローチとが含まれる。コンセンサススコアリングには、複合スコアリング関数による各リガンドの再スコアリング、およびその後これらのランキングの組み合わせを用いてヒットリストを作成することが含まれる。
実施例1:アポヒトIDEの結晶構造
方法:
DNA 操作および配列解析
DNAプローブの調製、制限エンドヌクレアーゼによる消化、DNAライゲーション、および大腸菌株の形質転換を、記載の通り実施した(Sambrook, J., Fritsch, E.F. & Maniatis, T. (1989). Molecular Cloning: A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press: Cold Spring Harbor, NY)。StratageneのQuikChange Multi Kitを用いて変異誘発を実施した。DNA配列決定のため、ABI PRISM BigDye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction KitおよびABI PRISM 310 Geneticアナライザーを使用した。PCRは、T3 Thermocycler(Whatman Biometra)においてiProofポリメラーゼ(Biorad)を用いて実施した。
方法:
DNA 操作および配列解析
DNAプローブの調製、制限エンドヌクレアーゼによる消化、DNAライゲーション、および大腸菌株の形質転換を、記載の通り実施した(Sambrook, J., Fritsch, E.F. & Maniatis, T. (1989). Molecular Cloning: A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press: Cold Spring Harbor, NY)。StratageneのQuikChange Multi Kitを用いて変異誘発を実施した。DNA配列決定のため、ABI PRISM BigDye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction KitおよびABI PRISM 310 Geneticアナライザーを使用した。PCRは、T3 Thermocycler(Whatman Biometra)においてiProofポリメラーゼ(Biorad)を用いて実施した。
クローニングおよび精製
ヒトIDE遺伝子(SEQ ID NO:1)であるSEQ ID NO:2のアミノ酸43〜1018を、PCRによってcDNAクローンから増幅した。本発明者らは、オーバーラッピングエクステンションPCRを利用して、2つの内部NdeI部位を除去した。オリゴヌクレオチド
および
による第二のPCRにおいて、N末端にNdeI部位およびC末端にNotI部位を導入した。得られたDNA断片をベクターpET28にクローニングして、N末端のHisタグとの融合物を作製した。pER1-hIDE(43-1018)を大腸菌株Bl21(DE3)に形質転換し、20℃で発現させた。
ヒトIDE遺伝子(SEQ ID NO:1)であるSEQ ID NO:2のアミノ酸43〜1018を、PCRによってcDNAクローンから増幅した。本発明者らは、オーバーラッピングエクステンションPCRを利用して、2つの内部NdeI部位を除去した。オリゴヌクレオチド
および
による第二のPCRにおいて、N末端にNdeI部位およびC末端にNotI部位を導入した。得られたDNA断片をベクターpET28にクローニングして、N末端のHisタグとの融合物を作製した。pER1-hIDE(43-1018)を大腸菌株Bl21(DE3)に形質転換し、20℃で発現させた。
精製
細胞を、50 mM Tris/HCl pH 7.8、500 mM NaCl、2 mM TCEP、10 % グリセリン2 mM MgCl2、および2 mM DFP中で再懸濁した。10 ml細胞懸濁液それぞれに、Roche Complete Protease阻害剤ミックスを1タブレットおよび0.2 mgのDNAse Iを追加した。次いで細胞を、800バールで細胞ホモジナイザーにより破壊し、34000×g、4℃で90分間遠心分離する。上清を0.22μmメンブレンを通して濾過し、陰イオン交換クロマトグラフィーによってさらに精製したHis選択カラムにアプライした。3つのピークが得られ、これらを別々に濃縮して、50 mM Tris/HCl pH 7.8、100 mM NaCl、3 mM TCEP、および10%グリセロールで平衡化したサイズ排除クロマトグラフィーによってSuperose 6カラム上でさらに精製した。得られた3つのプールは、90%を超える純度を有するが、単分散度および特異的活性において異なった。最も低い塩濃度(50 mM)で溶出したhIDEは単分散であり、最も高い特異的活性を示す。最も高い塩濃度(250 mM)で溶出したhIDEは、プール1の特異的活性の約半分のみを示し、分析用超遠心に関して多分散である。3つのプール全ては、HPLC、SDS-PAGE、およびIEFで仮想的に同定した。
細胞を、50 mM Tris/HCl pH 7.8、500 mM NaCl、2 mM TCEP、10 % グリセリン2 mM MgCl2、および2 mM DFP中で再懸濁した。10 ml細胞懸濁液それぞれに、Roche Complete Protease阻害剤ミックスを1タブレットおよび0.2 mgのDNAse Iを追加した。次いで細胞を、800バールで細胞ホモジナイザーにより破壊し、34000×g、4℃で90分間遠心分離する。上清を0.22μmメンブレンを通して濾過し、陰イオン交換クロマトグラフィーによってさらに精製したHis選択カラムにアプライした。3つのピークが得られ、これらを別々に濃縮して、50 mM Tris/HCl pH 7.8、100 mM NaCl、3 mM TCEP、および10%グリセロールで平衡化したサイズ排除クロマトグラフィーによってSuperose 6カラム上でさらに精製した。得られた3つのプールは、90%を超える純度を有するが、単分散度および特異的活性において異なった。最も低い塩濃度(50 mM)で溶出したhIDEは単分散であり、最も高い特異的活性を示す。最も高い塩濃度(250 mM)で溶出したhIDEは、プール1の特異的活性の約半分のみを示し、分析用超遠心に関して多分散である。3つのプール全ては、HPLC、SDS-PAGE、およびIEFで仮想的に同定した。
結晶化および構造決定:
hIDEを前記のように精製した。このタンパク質を11mg/mlまで濃縮し、結晶化の準備の前に、20000xgで10分間遠心分離した。蒸気拡散ハンギングドロップ実験において、タンパク質溶液1.5μlをリザーバー0.5μlおよび種原液(seed stock solution)0.3μlと混合することによって、結晶化用小滴を4℃で準備した。1日後に、結晶は、100mM Tris/HCl pH8.5、200mM酢酸アンモニウム、25%PEG5000 MME、および10%エチレングリコールから現われ、3日以内に0.2x0.1x0.05mmの最終サイズまで成長した。種晶は結晶化溶液中に直接調製した。
hIDEを前記のように精製した。このタンパク質を11mg/mlまで濃縮し、結晶化の準備の前に、20000xgで10分間遠心分離した。蒸気拡散ハンギングドロップ実験において、タンパク質溶液1.5μlをリザーバー0.5μlおよび種原液(seed stock solution)0.3μlと混合することによって、結晶化用小滴を4℃で準備した。1日後に、結晶は、100mM Tris/HCl pH8.5、200mM酢酸アンモニウム、25%PEG5000 MME、および10%エチレングリコールから現われ、3日以内に0.2x0.1x0.05mmの最終サイズまで成長した。種晶は結晶化溶液中に直接調製した。
不凍剤として20%エチレングリコールを用いて結晶を回収し、次いで、100K N2流に入れて急速冷凍した。Swiss Light SourceのビームラインX10SAにおいて100Kの温度で回折画像を集め、プログラムMOSFLMおよびSCALA(CCP4)で処理して、2.3Å分解能までデータを得た。位相情報を入手し、MAD実験によって構造を決定する代わりとして、セレノメチオニン標識タンパク質をP21結晶の形で結晶化し、SLS(17.12.2005)において1個の結晶から3つの波長でデータを収集した。プログラムautoSHARPを用いることによって、46個のセレン部位のうち45個の位置を決定することができた。得られた電子密度は質が良く、3.5Åまで及んだ。この密度まで、1個の単量体のポリアラニンモデルを構築した。次いで、この不完全なモデルを用いて、さらに高い分解能(2.3Å)に及ぶ天然結晶のデータセットに対して分子置換を行った。この構造を完成するためには、ArpWarpによる自動モデル構築および約500個のアミノ酸からなる手作業による再構築が必要であった。分子置換による構造決定および精密化のために、CCP4ソフトウェアスイートの標準的な結晶学プログラムを使用した(CCP4(Collaborative Computational Project, N. The CCP4 suite: programs for protein crystallography. Acta Crystallogr. D 50, 760-763(1994))。精密化およびモデル構築サイクルは、それぞれ、REFMACおよびMOLOCを用いて行った(表1)。
結果:
結晶は空間群P21に属し、格子軸はa=78.5Å、b=115.9Å、c=124.0Å、β=97.9°であり、2.3Å分解能まで回折された。非対称単位はIDE二量体によって形成される。IDEは4個のドメインに折り畳まれ、ドメイン1が活性部位を含む。4個のドメインは、直径約40Åの空洞を取り囲んでいる。2個のヒスチジンおよび2個のグルタミン酸の側鎖ならびに1個の水分子がZn2+イオンと配位結合し、空洞の内壁に位置する活性部位を形成する。
結晶は空間群P21に属し、格子軸はa=78.5Å、b=115.9Å、c=124.0Å、β=97.9°であり、2.3Å分解能まで回折された。非対称単位はIDE二量体によって形成される。IDEは4個のドメインに折り畳まれ、ドメイン1が活性部位を含む。4個のドメインは、直径約40Åの空洞を取り囲んでいる。2個のヒスチジンおよび2個のグルタミン酸の側鎖ならびに1個の水分子がZn2+イオンと配位結合し、空洞の内壁に位置する活性部位を形成する。
(表1)アポhIDEについてのデータ収集および構造精密化統計値
1 括弧内の値は、最高分解能のビン(highest resolution bins)を指す。
2 Rmerge=I-<I>/I。式中、Iは回折強度である。
3 Rcryst=Fo-<Fc>/Fo。式中、Foは構造因子の大きさ(structure factor amplitude)の観測値であり、Fcは構造因子の大きさの計算値である。
4 Rfreeは、精密化の間に省かれた、全データの5%に基づいて計算した。
5 PROCHECK[Laskowski, R.A., MacArthur, M.W., Moss, D.S. & Thornton, J.M. PROCHECK: a program to check the stereochemical quality of protein structure. J. Appl. Crystallogr. 26, 283-291(1993)]を用いて計算した。
1 括弧内の値は、最高分解能のビン(highest resolution bins)を指す。
2 Rmerge=I-<I>/I。式中、Iは回折強度である。
3 Rcryst=Fo-<Fc>/Fo。式中、Foは構造因子の大きさ(structure factor amplitude)の観測値であり、Fcは構造因子の大きさの計算値である。
4 Rfreeは、精密化の間に省かれた、全データの5%に基づいて計算した。
5 PROCHECK[Laskowski, R.A., MacArthur, M.W., Moss, D.S. & Thornton, J.M. PROCHECK: a program to check the stereochemical quality of protein structure. J. Appl. Crystallogr. 26, 283-291(1993)]を用いて計算した。
実施例2:1H-インドール-7-カルボン酸(3-クロロ-フェニル)-アミドを有するヒトIDEの結晶構造
精製:
精製については、最初の実施例を参照されたい。
精製:
精製については、最初の実施例を参照されたい。
結晶化および構造決定:
hIDEを前記のように精製した。濃度1Mのタンパク質を5Mリガンドとインキュベートした。結晶化の準備の前に、タンパク質を12mg/mlまで濃縮し、20000xgで10分間遠心分離した。蒸気拡散ハンギングドロップ実験において、タンパク質溶液1.5μlをリザーバー0.5μlおよび種原液0.5μlと混合することによって、結晶化用小滴を4℃で準備した。1日後に、結晶は、100mM Bis-Tris pH6.5、200mM酢酸アンモニウム、20%PEG1500、4%PEG400および10%エチレングリコールから現われ、3日以内に0.2x0.1x0.05mmの最終サイズまで成長した。種晶は結晶化溶液中に直接調製した。
hIDEを前記のように精製した。濃度1Mのタンパク質を5Mリガンドとインキュベートした。結晶化の準備の前に、タンパク質を12mg/mlまで濃縮し、20000xgで10分間遠心分離した。蒸気拡散ハンギングドロップ実験において、タンパク質溶液1.5μlをリザーバー0.5μlおよび種原液0.5μlと混合することによって、結晶化用小滴を4℃で準備した。1日後に、結晶は、100mM Bis-Tris pH6.5、200mM酢酸アンモニウム、20%PEG1500、4%PEG400および10%エチレングリコールから現われ、3日以内に0.2x0.1x0.05mmの最終サイズまで成長した。種晶は結晶化溶液中に直接調製した。
不凍剤として20%エチレングリコールを用いて結晶を回収し、次いで、100K N2流に入れて急速冷凍した。Swiss Light SourceのビームラインX10SAにおいて100Kの温度で回折画像を集め、プログラムMOSFLMおよびSCALA(CCP4)で処理して、1.7Å分解能までデータを得た。
CCP4ソフトウェアスイートの標準的な結晶学プログラムを用いて、構造決定および精密化を行った(CCP4 (Collaborative Computational Project, N. The CCP4 suite: programs for protein crystallography. Acta Crystallogr. D 50, 760-763(1994))。精密化およびモデル構築サイクルは、それぞれ、REFMACおよびMOLOCを用いて行った(表2)。
結果:
アロステリックポケットは活性部位から約10Å離れた位置にある。アロステリックポケットにはインドールカルボキサミドクラスのインドールが結合し、アミドは水分子を介したIDEとの水素結合に関与し、Cl-置換基点を有する芳香環は内部空洞に、恐らく基質に向いている。アロステリック結合部位は、残基L201、F202、Q203、L204、K205、T208、Y302、I304、Y314、V315、T316、F317、E364、I374、N376、R472、V478、A479、V481によって形成される。
アロステリックポケットは活性部位から約10Å離れた位置にある。アロステリックポケットにはインドールカルボキサミドクラスのインドールが結合し、アミドは水分子を介したIDEとの水素結合に関与し、Cl-置換基点を有する芳香環は内部空洞に、恐らく基質に向いている。アロステリック結合部位は、残基L201、F202、Q203、L204、K205、T208、Y302、I304、Y314、V315、T316、F317、E364、I374、N376、R472、V478、A479、V481によって形成される。
(表2)1H-インドール-7-カルボン酸(3-クロロ-フェニル)-アミドを有するhIDEについてのデータ収集および構造精密化統計値
1 括弧内の値は、最高分解能のビンを指す。
2 Rmerge=I-<I>/I。式中、Iは回折強度である。
3 Rcryst=Fo-<Fc>/Fo。式中、Foは構造因子の大きさの観測値であり、Fcは構造因子の大きさの計算値である。
4 Rfreeは、精密化の間に省かれた、全データの5%に基づいて計算した。
5 PROCHECK[Laskowski, R.A., MacArthur, M.W., Moss, D.S. & Thornton, J.M. PROCHECK: a program to check the stereochemical quality of protein structure. J. Appl. Crystallogr. 26, 283-291(1993)]を用いて計算した。
1 括弧内の値は、最高分解能のビンを指す。
2 Rmerge=I-<I>/I。式中、Iは回折強度である。
3 Rcryst=Fo-<Fc>/Fo。式中、Foは構造因子の大きさの観測値であり、Fcは構造因子の大きさの計算値である。
4 Rfreeは、精密化の間に省かれた、全データの5%に基づいて計算した。
5 PROCHECK[Laskowski, R.A., MacArthur, M.W., Moss, D.S. & Thornton, J.M. PROCHECK: a program to check the stereochemical quality of protein structure. J. Appl. Crystallogr. 26, 283-291(1993)]を用いて計算した。
Claims (14)
- 空間群P21に属する、インシュリン分解酵素(IDE)ポリペプチドのアポ結晶。
- a=78±3Å、b=115±3Å、c=124±3Å、β=97±3°の単位格子寸法を有する、請求項1記載のアポ結晶。
- 空間群P21に属する、IDEポリペプチドとアロステリックリガンドとの共結晶。
- a=78±3Å、b=115±3Å、c=123±3Å、β=97±3°の単位格子寸法を有する、請求項3記載の共結晶。
- アロステリックリガンドが1H-インドール-7-カルボン酸(3-クロロ-フェニル)-アミドである、請求項3または4記載の共結晶。
- IDEポリペプチドが、SEQ ID NO:2のポリペプチドと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の類似度を有する配列を含むポリペプチドである、請求項1もしくは2記載の結晶または請求項3〜5のいずれか一項記載の共結晶。
- IDEポリペプチドがSEQ ID NO:2のアミノ酸43〜1018を含む、請求項6記載の結晶または共結晶。
- a)IDEポリペプチドの水溶液を準備する工程、
b)0%〜30%(w/v)PEGおよび5〜15%エチレングリコールの緩衝リザーバー溶液を用いて、蒸気拡散またはマイクロバッチによって結晶を成長させる工程であって、PEGの平均分子量が200Da〜20kDaである、工程
を含む、IDEポリペプチドを結晶化する方法。 - a)ポリペプチドの水溶液を準備する工程、
b)モル過剰量のアロステリックリガンドをポリペプチドの水溶液に加える工程、および
c)0%〜30%(w/v)PEGおよび5〜15%エチレングリコールの緩衝リザーバー溶液を用いて、蒸気拡散またはマイクロバッチによって結晶を成長させる工程であって、PEGの平均分子量が200Da〜20kDaである、工程
を含む、リガンドと共にIDEポリペプチドを共結晶化するための方法。 - 請求項8または9記載の方法によって得られた、アポ結晶または共結晶。
- a)図2の原子座標±最大2Åの該アミノ酸の骨格原子からの根平均二乗偏差を用いて、IDEポリペプチドの三次元モデルからIDEポリペプチドのアロステリック部位を決定する工程;および
b)コンピュータフィッティング分析を行って、IDEアロステリック部位に結合することができる化合物を同定する工程
を含む、IDEポリペプチドのアロステリック部位に結合することができる化合物を同定するための方法。 - a)残基L201、F202、Q203、L204、K205、T208、Y302、I304、Y314、V315、T316、F317、E364、I374、N376、R472、V478、A479、V481の図2の相対構造データ座標±最大2Åの該アミノ酸の骨格原子からの根平均二乗偏差を用いて、IDEのアロステリック部位の三次元モデルを作成する工程;および
b)コンピュータフィッティング分析を行って、IDEのアロステリックリガンドを同定する工程
を含む、請求項11記載の方法。 - 任意で2.0Å未満のrmsdだけ異なる、図1または図2の座標によって規定される構造を有するIDEポリペプチドのアポ結晶または共結晶。
- 実質的に前記で述べた、特に前記実施例に関して述べた、ポリペプチド、結晶、および方法。
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