JP2011506960A - 光学的特性を用いたセンサ応用のための基板製造方法およびそれによる基板 - Google Patents

光学的特性を用いたセンサ応用のための基板製造方法およびそれによる基板 Download PDF

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Abstract

分析用センサ基板の製造方法およびそれにより調製された基板が開示される。本発明によるセンサ応用基板の製造方法は、(a)予め意図した特定のナノメートル水準の大きさを有するナノ粒子を有機官能基で表面改質することにより、揮発性有機溶媒に安定性のあるナノ粒子の分散溶液を調製する工程;(b)上記ナノ粒子の分散溶液を用いて、ラングミュア−ブロジェット法に基づいて、有機官能基で表面改質されたナノ粒子の単層膜を界面上に調製し、上記ナノ粒子の単層膜を基板上に転移させる工程;および(c)上記ナノ粒子の単層膜が転移された基板を真空蒸着法によって金属薄膜でコーティングし、次いで必要に応じてナノ粒子を除去することにより、光学的特性を用いた分析用センサとして用いられるナノ構造物を製造する工程を含むことを特徴とする。上記のような本発明によるセンサ応用基板の製造方法によれば、ラングミュア−ブロジェット法を使用して、10×10cmを上回る大領域の固体基板上にナノ粒子を均一に固定することができ、そしてこのような方法により、ナノ粒子のサイズ、距離および形状が調整され、分析用センサとして用いられるナノ構造物を製造することができ、再生産と大量生産が可能になる。分析用センサとして用いられる、このように製造されたナノ構造物基板を用いてセンサの感度特性を分析した場合、感度が大幅に向上することが確認できる。

Description

本発明は、光学的特性を用いた分析用センサの基板製造方法およびそれにより製造された基板に関する。より詳しくは、本発明は、ラングミュア−ブロジェット(Langmuir-Blodgett:LB)法を用いた分析用センサの基板製造方法およびそれにより製造された基板に関する。
「光学的特性を用いた分析用センサ」のための基板とは、表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance:以下、「SPR」という)用基板、表面強化ラマン散乱基板、光学バイオセンサ基板、電気化学センサ基板、機械的センサ基板およびSPM(走査型プローブ顕微鏡)センサ基板などをいう。以下、「分析用センサ」と略称する。
その中で、分析用センサチップとして主に使用される表面プラズモン(surface plasmon)は、金属薄膜と誘電体との界面に沿って進行する電子密度の振動現象を指す用語である。金属と誘電体との境界面に沿って進行する電磁波である表面プラズモンは、その波ベクトル(wave vector)の大きさが誘電体内部で進行する光のベクトルより大きいため、誘電体内部には伝達されず、表面にのみ存在する。そのため、表面プラズモンを励起させるためには、波ベクトルを大きくする必要がある。
波ベクトルを大きくする方法として、高い屈折率のプリズムを用いる全反射減衰法が用いられる。それは、プリズムおよびプリズムに被せられた金属薄膜を用い、金属薄膜は、プリズムへの入射光子が金属薄膜を通過できるように薄いものでなければならない。入射光子が、全反射角より大きい角度で金属薄膜を通してプリズムに入射した場合にのみ、表面プラズモンが励起され得る。
全反射角で大きく入射した光子は、表面プラズモン共鳴により特定の角度で金属薄膜と誘電体との境界面ですべて吸収される。表面プラズモン共鳴は、金属薄膜と誘電体との境界面で強い電場を発生させ、この電場は表面でのみ制御されるが、指数関数で垂直に減衰する。この際の電場の強さは、表面プラズモンが励起しない場合の強さの10から100倍大きい値を有する。
このような表面プラズモンは、金属薄膜と接している誘電体の形状および屈折率によって大きく変わるため、このような性質は、周期的構造を有する誘電体と平坦な金属薄膜との境界面による表面プラズモンバンドギャップの研究に利用される。この応用の例として、回折格子を使用するセンサはプリズムを使用するセンサと比べて測定パラメータが強く制限される。このような制限を補完するために、回折格子周期が徐々に大きくなるように入射光を表面方向に移動させることによって、入射角が小さくなり得ることがわかる。
一方、表面プラズモン共鳴は入射角に非常に敏感で、そのため、小さい回折格子構造でも使用することができる。このような研究は、情報貯蔵素子、または、光学顕微鏡などの光学センサに広く利用されることが期待される。
図1に、一般的なSPRシステムの構造を示す。図1を参照すると、表面プラズモンは金属薄膜100の表面で生じる電子の集団的な振動現象であり、これにより発生した表面プラズモン波は、金属薄膜100と、これに隣接した誘電体104との境界面に沿って進行する表面電磁波の一種である。表面プラズモン共鳴のための配列において、金属薄膜100とプリズム102との境界面でエバネッセント(Everdesont)波の波ベクトルと表面プラズモンの波ベクトルとが一致する特定の入射角度で表面プラズモン共鳴が生じる。
ナノメートルの厚みを持つ金属薄膜100上の誘電体の厚みおよび特性による表面プラズモン共鳴の特性の変化をSPRセンサに利用する。したがって、SPRセンサをバイオセンサとして利用するために、金属薄膜を生理活性物質でコーティングし、金属薄膜上に生理学的特異反応が生じるように誘導する。このような生体物質でコーティングされた金属薄膜基板を、SPRセンサチップという。この際、SPRセンサの感度を向上させるために、多様な形状の金属薄膜が調製される。従来は、シリカナノ粒子を固体基板上に配列するための方法として、スピンコーティング、分散溶液を撒いた後乾燥させるドロッピング法などを含む方法が用いられた。しかしながら、このような従来の方法には、単にシリカナノ粒子を固体基板上に配列することにより薄膜を調製することができるが、短時間に大領域で薄膜を大量生産するための手順としては使用されにくく、高い感度を有する均一な基板を調製することが難しいという問題がある。
より具体的に、スピンコーティングによる基板製造において、多様な工程条件、例えば、スピンの速度、時間、分散溶液中の気泡の存在などの条件に応じて、多層膜または単層膜が生じ、均一性の再現性の問題があるだけでなく、粒子のサイズおよび溶液の粘度に応じて実験条件を毎回調整するのに困難性があった。
スピンコーティングを用いる一つの方法によると、例えばスピンコーティング法を用いてポリスチレンナノ球としてナノ球リソグラフィマスクが調製される場合、このように調製された基板のうち、一部の領域のみ単層膜(一層)で形成され、そして基盤の残りの部分は多層膜(二層)で形成される。したがって、大領域で大量生産できる均一な基板を製造するのは難しいことがわかる(John C. Hulteen、David A. Treichel、Matthew T. Smith、Michelle L. Duval、Traci R. Jensen、およびRichard P. Van Duyne、“Nanosphere Lithography:Size-Tunable Silver Nanoparticle and Surface Cluster-Arrays”、(J. Phys. Chem. B 1999年、103号、3854-3863頁))。
ドロッピング法によって基板を製造する場合は、スピンコーティング法を用いた場合と比べてより問題が多い。したがって、ドロッピング法がほとんど用いられていないことは、この技術分野に属する通常の知識を有する者には周知である。
より効果的な最新の方法としては、乾燥時に製造される制限移流集積法(confined convective assembly)という方法が知られている(Mun Ho Kim、Sang Hyuk In、およびO Ok Park、“Rapid Fabrication of Two- and Three-Dimensional Colloidal Films via Confined Convective Assembly”、Adv. Funct. Mater. 2005年、15号、1329-1335頁)。この方法は、一定の間隔、例えば100μmの距離で置かれた基板の間の間隙に分散溶液を入れて、片側の固体基板を上げるとともにその基板上に分散溶液粒子の膜を形成する方法である。しかし、この方法によれば、基板を引き上げる速度、分散溶液の濃度などによって膜の厚みが調整されるが、単層膜を製造する際に、水の蒸発とともに自然に生じる力によって粒子の膜が形成されるため、部分的に生じる多層膜および空隙を調整するための余地がなくなる。したがって、この方法によっても、大領域の均一な単層膜を大量に形成することは困難である。
一方、ナノ物質を有機溶媒に安定的に分散し、得られた分散液からナノ物質からなるラングミュア−ブロジェット膜を形成した後、このLB膜のナノ物質をホルダーに移して付着させるナノ物質の付着方法が、大韓民国登録特許第10−0597280号に開示されている。上記特許には、ラングミュア−ブロジェット法(LB法)を用いてカーボンナノチューブLB膜をホルダーに移して付着する方法によって、一般の半導体工程で製造可能なカーボンナノチューブが付着したナノ構造物が製造でき、多様な物理的、化学的および生物学的信号を検出することができるSPM(走査型プローブ顕微鏡)プローブの製造を可能にすることが記載されている。ラングミュア−ブロジェット(LB)膜とは、一定領域を有する水面上に水不溶性物質が液相に分散されて形成される薄膜をいい、この現象は、ベンジャミン・フランクリン(Benjamin Franklin)によって初めて発見された。この原理は、いわゆる両親媒性物質の特性、すなわち、一方は疎水性官能基を有し、他方は親水性官能基を有する特性に基づいて、該物質を水表面上(水−空気界面)に一定の配向に整列させ、分子水準が薄膜を製造することができるということである。上記登録特許では、このようなLB膜を用いてカーボンナノチューブをSPMプローブに付着させている。
しかし、上記のような登録特許によるラングミュア−ブロジェット法を用いたナノ物質の付着方法は、分析用センサチップの調製に用いるために必要なナノ構造物に転移される金属薄膜については何ら言及していない。加えて、ラングミュア−ブロジェット法を適用する場合、分析用センサチップの調製に用いるためのナノ粒子を、基板上に単層として転移させることが難しいという問題がある。したがって、分析用センサチップの調製に用い得る金属薄膜を含むナノ構造物基板を大領域で大量生産できる方法が依然として必要とされている。
本発明は、従来の技術に伴う上記の問題を解決するためのものである。本発明により達成される技術的事項は、大領域で大量生産でき、かつ均一な分析用センサに用いられる基板製造方法およびそれにより製造された基板を提供することである。
本発明をより容易に説明するために、本明細書および図面では分析用センサの例としてSPR用基板について記載しているが、表面強化ラマン散乱基板、光学バイオセンサ基板、電気化学センサ基板、機械的センサ基板およびSPM(走査型プローブ顕微鏡)センサ基板などのための基板も本発明の範囲に含まれることは当業者にとって自明である。
また、本発明では、LB膜を形成するための例としてシリカ粒子を挙げているが、シリカ粒子の代わりに、ナノ粒子として用いられる、半導体物質粒子、ポリスチレンなどの高分子物質、各種金属、例えば、金、銀、銅、アルミニウムおよびプラチナ、ならびに無機材料の粒子もまた用いられ得ることは当業者にとって自明である。
さらに、テンプレートとは、シリカ粒子の単層膜が転移され、次いでその上に金属薄膜が形成された基板から、シリカ粒子を除去したものまたは除去しなかったものによって形成された両方ともを通称する。
また、チオール基で表面改質したという表現は、シラン、アミンなどのような有機官能基も含まれるものとして理解されるべきである。
最後に、クロロホルムは、一般の有機溶媒も含む意味で理解されるべきである。
上述の技術的事項を達成するための分析用センサ基板製造方法は、(a)ナノ粒子に有機官能基を固定することにより行われる表面改質によって、揮発性有機溶媒に安定的に分散されるナノ粒子の分散溶液を調製する工程、(b)該ナノ粒子の分散溶液を用いて、ラングミュア−ブロジェット法に基づいて水−空気界面に特定の構造を有する整列したナノ粒子の単層膜を調製し、次いで、該ナノ粒子の単層膜を基板上に転移させる工程、および(c)該ナノ粒子の単層膜が転移された基板を真空蒸着法によって金属薄膜でコーティングし、ナノ構造物(ナノ膜)を形成する工程を含むことを特徴とする。この方法は、金属薄膜をコーティングした後、シリカ粒子を除去する工程をさらに含み得る。上述したように、ナノ粒子としては、半導体物質、ポリスチレンなどの高分子物質、各種金属、例えば、金、銀、銅、アルミニウムおよびプラチナ、ならびに無機材料の粒子が一般に用いられ得る。好ましくはシリカ粒子である。
有機官能基は、シラン、アミンおよびチオール基である。好ましくはチオール基である。
本発明において、分析用センサとしては、表面プラズモン共鳴センサ、表面強化ラマン散乱センサ、光学バイオセンサ、電気化学センサ、機械的センサおよびSPM(走査型プローブ顕微鏡)センサなどが挙げられる。好ましくは表面プラズモン共鳴センサである。
揮発性有機溶媒は、当該技術分野に属する通常の知識を有する者に一般的に理解される溶媒であって、好ましくはクロロホルムである。
真空蒸着法は、好ましくは電子ビーム蒸着法である。
上記金属薄膜は、好ましくは金薄膜である。
上記のようにナノ粒子を除去する工程を含む方法によって製造されたナノ膜は、これをテンプレートとして用い、例えば、表面プラズモン共鳴測定用基板として使用され得るナノ構造物(ナノ膜)を製造することができる。また、シリカ粒子を除去しなかったナノ構造物は、これをテンプレートとして、例えば、表面強化ラマン散乱基板として用いられ得る。本発明者らは、本発明によって大領域、例えば10×10cm、またはそれ以上の均一な基板を製造し得ることを見出した。
また、上記工程(a)のナノ粒子、特にシリカ粒子は、触媒としてアンモニア水の存在下で、ケイ素を含む有機分子であるオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)を自己組立反応させて調製されたものであることが好ましい。
上記シリカ粒子を調製するための工程(a)では、シリカ粒子を、(a−1)触媒としてアンモニア水の存在下で、ケイ素を含む有機分子であるオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)を自己組立反応させてシリカ粒子を調製する工程;および(a−2)該工程(a−1)で調製されたシリカ粒子を遠心分離機で特定サイズの粒子のみ選別することを目的として遠心分離し、浸漬し、上清を捨て、次いで、相転移温度を上回る特定温度でベーキング時間乾燥する工程を含む手順によって調製し、そして(a−3)EDC(1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩)/NHS(N−ヒドロキシこはく酸イミド)物質と、アミン基およびチオール基を有する物質であるアミノベンゾチオール(ABT)とを超音波を加えながら反応させることにより、ABTをシリカ粒子の表面に固定し、ABTが固定されたシリカ粒子の分散溶液を調製する工程に供し;そして次いで(a−4)該工程(a−3)で調製されたABTが固定されたシリカ粒子の分散溶液を特定サイズの粒子のみ選別することを目的として、遠心分離手順によってエタノールおよびクロロホルムで洗浄し、ラングミュア−ブロジェット法に用いられる溶液として調製する。
また、上記工程(b)は、(b−1)チオール基を有する有機分子で表面が改質され、クロロホルムに分散された特定サイズのシリカナノ粒子の分散溶液を水面上に散布する工程;(b−2)該水面上にバリアを置き、特定の配列となるようにシリカ粒子を集めて薄膜を形成する工程;および(b−3)薄膜形態のシリカ粒子を、シリカ粒子の構造および配列が変わらないように、金基板に転移する工程を含むことが好ましい。チオール基で表面改質されたシリカ粒子は、片側が疎水性を有し、水面上に散布された時、均一な膜を形成することができる。この際、バリアに加えられる圧力は35〜45mN/mが好適である。
また、上記工程(c)は、(c−1)PR用カバーガラスのような固体基板上に真空蒸着方式を用いて厚み別に平らな金基板を形成し、この基板上にシリカ粒子を転移する工程;(c−2)シリカ粒子が転移された基板上に所要の厚みに金薄膜を蒸着することにより、金シリカ構造物が形成された基板を製造する工程;および(c−3)必要に応じて、超音波洗浄機を用いてシリカ粒子を除去する工程を含むことが好ましい。
図1は、一般的なSPRシステムの構造を示した図である。 図2は、本発明の好ましい実施例による分析用センサ基板の製造方法の主な工程を示したフロー図である。 図3は、図2の手順を説明するための図である。 図4は、転移圧力によるシリカ粒子転移状態を示す走査電子顕微鏡写真である。 図5は、稠密な単層に良く形成されたシリカ粒子転移状態を示す走査電子顕微鏡写真である。 11は、蒸着手順を説明するための模式図である。 12は、金蒸着後の走査電子顕微鏡写真である。 13は、本発明の実施例により真空蒸着方式で蒸着された金構造物の表面を原子間力顕微鏡(AFM)を用いて撮影した結果を示す。 14は、本発明の実施例により電子ビーム方式で蒸着された金構造物の表面を走査電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影した結果を示す。 15は、本発明の実施例により電子ビーム方式で蒸着された金構造物の断面構造を示した模式図である。 図6は、本発明の実施例により20nmおよび50nmの厚みに金を蒸着した場合に底金層の厚み変化によるSPRの共鳴曲線を示したグラフである。 図7は、本発明の実施例により20nmおよび50nmの厚みに金を蒸着した場合に底金層の厚み変化によるSPRの共鳴曲線を示したグラフである。 13は、100nmの厚みに金を蒸着した場合に底金層の厚み変化によるSPRの共鳴曲線を示したグラフである。 14は、50nmの厚みに蒸着したシリカ構造物基板に対する、底金の厚み別のSPR感度の比率を測定した結果を示したグラフである。 15は、20nmの厚みに蒸着したシリカ構造物基板に対する、底金の厚み別のSPR感度の比率を測定した結果を示したグラフである。
以下、添付の図面を用いて本発明を実施するための好ましい実施例をさらに詳細に説明する。添付の図面は本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。
本発明では、表面プラズモン共鳴特性を向上させるためにSPRセンサチップ上にシリカ粒子を配列し、次いで、この粒子が良好なSPR感応特性とともに新しい形状を有する金属薄膜を製造し、これをテンプレートとして、ナノ構造物を製造するのに使用する。
表面プラズモン共鳴測定用基板を製造する手順において、ラングミュア−ブロジェット法は、上述のように、水面に外圧を与える条件下で水面上に存在する物質から均一な単層の形成を誘導する良い方法として知られている。本発明によれば、このようなラングミュア−ブロジェット法に基づいてシリカ粒子を基板上に固定する。また、ラングミュア−ブロジェット法を適用するために、シリカ粒子を疎水性および揮発性有機溶媒に分散しなければならない。このために、シリカ粒子の表面を所要の有機官能基で疎水性に改質させる。本発明者らは多様な有機官能基を用い、短い有機分子を有するチオール基で粒子を改質させるのが好ましいことを発見した。
図2には、本発明の好ましい実施例による表面プラズモン共鳴測定用基板の製造方法の主な工程をフロー図で示す。図3には、図2の手順を詳細に説明するための図を示す。図2は以下で度々参照される。
図2を参照すると、本発明の好ましい実施例による表面プラズモン共鳴測定用基板の製造方法では、まず、シリカ粒子をチオール基で表面改質することによって有機溶媒に安定性のあるシリカ粒子の分散溶液を調製する(工程S20)。有機官能基で表面改質することによって有機溶媒に安定性のあるシリカ粒子を調製する方法には多様な実施例があり、工程S20の手順の一例をさらに詳細に説明する。
まず、シリカ粒子を調製する手順を説明する。オルトケイ酸テトラエチル(TEOS:シリカ粒子の構造の構成用の単量体)を活性化するための触媒であるアンモニア水を、エタノールおよび水で希釈し、次いで、攪拌機によって攪拌しながらTEOS溶液を添加する。一定時間(例えば、2時間)攪拌すると、TEOSのエトキシ基がアンモニアと水とによって活性化されるとともに自己組立反応をし、これによりシリカ粒子が形成される。このように、触媒としてアンモニア水を用いて、ケイ素を含む有機物質であるTEOSから自己組立を通じてシリカ粒子を調製することができる。この際、以下の実施例からわかるように、使用されるTEOS、アンモニア水などの相対濃度、比率および反応条件を変えることによって粒子のサイズを調整することができる。
例えば、300nmサイズのシリカ粒子を合成するためには、エタノール40mlにアンモニア水8.3mlおよび蒸留水1.7mlを混合した溶液をフラスコ内で攪拌しながら、TEOS1mlを添加した後、2時間反応させる。その後、反応混合物を遠心分離して不純物を除去し、残った溶液をシリコンウエハー基板上に滴下した後、乾燥させて走査電子顕微鏡(SEM)でサイズを確認する。
また、130nmサイズのシリカ粒子を合成するためには、エタノール100mlにアンモニア水2mlおよび蒸留水18mlを混合した溶液をフラスコ内で攪拌しながら、TEOS9mlを添加した後、2時間反応させる。その後、反応混合物を遠心分離して不純物を除去し、残った溶液をシリコンウエハー基板上に滴下した後、乾燥させて走査電子顕微鏡(SEM)でサイズを確認する。
次に、上記で調製されたシリカ粒子を遠心分離機で遠心分離して浸漬させた後、上清を捨て、オーブン(Mitoshi)内で相転移温度を上回る特定温度(例えば100℃)で所要時間(例えば約12時間)乾燥させる。このような手順で、シリカ粒子のモノマー間の結合が安定化し、有機溶媒との化学反応における安定性が確保される。
上記のような手順を経て調製されたシリカ粒子にラングミュア−ブロジェット工程を適用するためには、粒子を有機溶媒相に分散させなければならない。しかし、上記手順で調製されたシリカ粒子は、TEOSによって表面に極性を持つヒドロキシル基を多く含んでいるため、有機溶媒相では十分に分散できない。したがって、粒子が有機溶媒で分散され得るように、シリカ粒子の表面を改質するための工程を行う必要がある。有機溶媒としては、クロロホルムを用いることが特に好適である。
表面改質は多様な方法で行われ得、その1つは、以下の手順で行われ得る。まず、上記で合成されたシリカ粒子溶液を、化学触媒として作用するために主に用いられるEDC/NHS物質、ならびにアミン基およびチオール基を有する物質であるアミノベンゾチオール(ABT)と、超音波を加えながら反応させることにより、その表面にABTが固定されたシリカ粒子が調製される。このようにして、有機溶媒にシリカ粒子が均一に分散された溶液、すなわち、チオール基を有する短い有機分子で表面が改質されたシリカ粒子が有機溶媒相に均一に分散された溶液が調製され得る。
次に、ABTが固定されたシリカ粒子の分散溶液を遠心分離手順によってエタノールおよびクロロホルムで洗浄することにより、ラングミュア−ブロジェット手順用として用いられる、特定サイズのシリカナノ粒子分散溶液が調製される。このようなプロセスを用いることは、反応手順が比較的単純であるだけでなく、上記のように、TEOSおよびアンモニア水の濃度および反応条件を調整することにより、多様な粒子サイズのシリカを合成することができるため、好ましい。
このようにして、上記のシリカ粒子分散溶液を用いて、有機官能基で表面改質されたシリカ粒子の単層膜を、ラングミュア−ブロジェット法に基づいて調製することができる(工程S22)。工程S22の手順の一例をより具体的に説明する。
まず、上記工程S20で調製されたシリカ粒子分散溶液を水面上に散布する。ここで、上記シリカ粒子分散溶液は、チオール基を有する有機分子でその表面が改質されたシリカ粒子が、クロロホルムに均一に分散された状態にある。この際、上記水面にバリアを置き、シリカ粒子が互いに集まる方向に動かして、シリカ粒子が浮んでいる領域を徐々に減少させることにより、シリカ粒子が薄膜形態に集められる。この手順において、シリカ粒子の配列状態および膜形成状態を変えることにより表面圧でシリカ膜の構造を調整し得る。バリアに加えられる圧力を転移圧力という。本発明者らは、この圧力が35mN/m〜45mN/mのときに、シリカ粒子が空になる空隙もシリカ粒子の多層も形成されない均一な層が生じ得ることを見出した。
次に、ディッパーに金基板を固定して基板を引き上げることにより、水面上に均一に配列した薄膜形態のシリカ粒子を金基板に付着させる。ここで、改質されなかったシリカ粒子は、有機溶媒に分散させて水面に撒くと、粒子の表面と水面との相互作用により不均一な薄膜を形成するか、水中に沈殿するのに対し、有機官能基で表面改質されたシリカ粒子の溶液は、非常に均一な単層薄膜を形成し得ることに注目すべきである。金基板は、真空蒸着によって、カバーガラス上に特定の厚み、例えば、20から100ナノメートルの厚みで、平らに金を蒸着することによって形成され得る。
これに関連して、図4は、走査電子顕微鏡(SEM)により得た転移圧力によるシリカ粒子の転移状態を示す写真である。図4の(a)を参照すると、転移圧力が35mN/m未満、例えば30mN/mでは、シリカ粒子のない空の空隙(400)が生じる。図4の(b)、(c)および(d)を参照すると、35〜45mN/m付近では、シリカ粒子が、粒子が空隙のない均一な2次元結晶形態を有する単層薄膜の形態で基板に転移されることがわかる。また、図4の(e)を参照すると、45mN/mを超過する圧力で、例えば、50mN/mの場合には、一部領域で単層シリカ膜が壊れ、不規則的な多層に形成される部分(402)が生じる。図4の(c)には、稠密な単層層に良く形成されたシリカ粒子の転移状態を示す走査電子顕微鏡写真を示す。
次に、シリカ粒子LB薄膜が転移された金基板上に、真空蒸着法、例えば、電子ビーム蒸着法により、再び別の金薄膜を成膜させる(工程S24)。より具体的には、この工程は、上記のように製造された金基板上に、直径約300nmの粒子サイズを有するシリカ粒子をLB法で転移する工程である。約300nmの粒子サイズに加えて、金基板上に形成されるナノ構造物のサイズおよび形状、および構造物間の距離などを体系的に調整するために、用いるシリカ粒子のサイズを異なるサイズ、例えば100、130、300および500nmに調整することができる。
金薄膜を成膜するために、電気化学的な還元法が用いられ得る。しかし、このような電気化学的な還元法には、不純物が混入される問題だけでなく、製造手順が複雑であるという問題がある。したがって、本発明の実施例によれば、金を蒸発源として用い、かつこの蒸発した金原子が予め調製しておいたシリカ粒子LB薄膜上に蒸着される方法を、手順が単純で、かつ汚染の恐れが少ない乾式成膜技法として用いる。この技術のために、真空蒸着として、電子ビーム蒸着法が好ましく用いられる。11は、蒸着手順を説明するための模式図である。プラズマ方式のイオン蒸着法を用いると、プラズマを発生させるための不活性気体がチャンバー内部に存在することとなり、イオン化された金粒子が気体との衝突により散乱しながら広がるように蒸着されるため、ナノスケールのリソグラフィパターンを形成することは容易ではない。その反面、電子ビームを用いた蒸着法は、金粒子が気体と衝突することなく累積的に蒸着されるため、シリカスケールのリソグラフィパターンを形成するのに好適である。12には、金蒸着後の走査電子顕微鏡により得た写真を示す。12を参照すると、導電性金属として金が蒸着された状態では、より高い倍率で、鮮明に写真を観察することが可能であることがわかる。
次に、超音波処理によってシリカ粒子を除去することにより、シリカ構造の金構造物が作られる(工程S26)。シリカ粒子を除去する場合は、シリカ粒子が転移された基板上に再び電子ビーム蒸着法を用いて20nm、50nmおよび100nmの厚みに金薄膜を形成し、得られた基板を、エタノールが入った超音波洗浄機内で洗浄してシリカ粒子を除去することにより、金で形成されたナノ構造物が形成された基板が調製される。シリカ粒子が除去されなかった基板もまたテンプレートとして用いることができるため、この工程は省略することができる。
図8および図9には、本発明の実施例により電子ビーム方式で蒸着された金構造物の表面を、それぞれ原子間力顕微鏡(AFM)と走査電子顕微鏡(SEM)とを用いて撮影した写真により得た結果を示す。また、15は、本発明の実施例により電子ビーム方式で蒸着された金構造物の断面を示す模式図である。図8および図9を参照すると、電子ビーム蒸着法を用いる場合、金粒子が気体分子と衝突することなくシリカ粒子の間の間隙に入り込むため、シリカ粒子の間隙にのみ金が高く積もり、多様な蒸着条件下で粒子のサイズ、距離および配向を考慮して一定である大領域の基板を製造することによって、分析用センサを大量生産できることが確認できる。
次に、上記方法によって製造された金シリカ構造物が形成された基板をSPR装置に装着し、そこに蒸留水を入れて、SPR信号を測定した。図6および図7には20nmと50nmの厚みに金を蒸着した場合の、底金層の厚み変化によるSPRの共鳴曲線を示す。図6および図7を参照すると、20nmおよび50nmの厚みに金を蒸着した場合には、底金層の厚み変化によってSPRの共鳴曲線が変化することがわかる。また、底厚30、40および50nmの基板はすべて十分にSPR曲線模様を示したことを確認し、エタノール水溶液を通じて感度向上を測定した。
13には、100nmの厚みに金を蒸着した場合の、底金層の厚み変化によるSPRの共鳴曲線を示す。13を参照すると、100nmの厚みに金薄膜を再び蒸着した場合には、すべての厚みの底金層を有する基板でSPR曲線がみられない。したがって、金薄膜は100nm未満の厚みに形成することが好ましい。
蒸留水および20%(w/v)エタノール水溶液を用いるSPRによってシリカ粒子LB薄膜が転移された金基板上に20nmおよび50nm厚みの金を再び蒸着して製造されたシリカ構造物基板の屈折率差異による共鳴角のシフトを比較した結果を、図9および図10に示す。図9および図10に示された水平線は、シリカナノ粒子をテンプレートとして用いて、そしてその上に金ナノ構造物を蒸着することなく50m厚みの底金層についてSPR値を測定して得た結果を示し、信号変化率を0%に定めたものである。
300nmのシリカ粒子LB薄膜をテンプレートとして用いて、そしてその上に50nm厚みに金を蒸着した場合の信号向上を、50nm厚みの従来のSPR基板と比較して評価した。14には、底金の厚み別SPR感度の比率を50nm厚みに蒸着したシリカ構造物基板と比較して測定した結果をグラフで示す。14を参照すると、シリカLB薄膜をテンプレートとして用いて金ナノ構造物を製造した場合、40nm底厚の基板でのみ約31%の信号増加を示し、他の条件ではむしろ信号感度が低下している。
次に、300nmのシリカ粒子LB薄膜をテンプレートとして用いて、20nm厚みに金を蒸着した基板の条件における信号向上を評価した。15には、20nm厚みに蒸着したシリカ構造物基板に対し、底金の厚み別SPR感度の比率を測定した結果をグラフで示す。14の結果と比較すると、20nm厚みに金が蒸着された場合、信号が向上することが確認できた。図9および図10の結果によると、300nmのシリカ粒子LB薄膜をテンプレートとして用いて、20nm厚みに金が蒸着された基板の条件では、信号の増加効果が大きいことがわかる。これらのうち、50nm底金厚みに300nmのシリカ粒子LB薄膜をテンプレートとして用いて、20nm厚みに金を蒸着した基板は、約45%程度の信号増加を示し、そのような基板が、従来のSPR金基板の蒸留水および20%(w/v)エタノール水溶液におけるSPR曲線変化との比較を通して、信号の最も高い向上を付与する条件であることがわかった。
本発明によれば、ラングミュア−ブロジェット法を使用して、10×10cmを上回る大領域の固体基板上に、粒子間の距離、間隔、および配列が均一なナノ粒子を固定することができる。このように製造されたナノ膜は、分析用センサ基板として用いることができ、このように調製された分析用センサ基板を用いて分析感度特性を測定した場合、感度が大幅に向上することが確認できた。

Claims (17)

  1. 分析用センサ基板の製造方法であって、該方法が、
    (a)ナノ粒子を有機官能基で表面改質し、そのように表面改質されたナノ粒子を揮発性有機溶媒に分散させることによって、ナノ粒子の分散溶液を調製する工程、
    (b)該ナノ粒子の分散溶液を用いて、ラングミュア−ブロジェット法に基づいて、該有機官能基で表面改質されたナノ粒子の単層膜を調製し、次いで該ナノ粒子の単層膜を基板上に転移させる工程、および
    (c)該ナノ粒子の単層膜が転移された基板を真空蒸着法によって金属薄膜でコーティングする工程
    を含むことを特徴とする、方法。
  2. 真空蒸着法によって金属薄膜でコーティングする工程の後、ナノ粒子を除去する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の分析用センサ基板の製造方法。
  3. 前記ナノ粒子がシリカ粒子であることを特徴とする、請求項1または2に記載の分析用センサ基板の製造方法。
  4. 前記有機官能基がチオール基であることを特徴とする、請求項1または2に記載の分析用センサ基板の製造方法。
  5. 前記有機溶媒がクロロホルムであることを特徴とする、請求項1または2に記載の分析用センサ基板の製造方法。
  6. 前記金属薄膜が金薄膜であることを特徴とする、請求項1または2に記載の分析用センサ基板の製造方法。
  7. 前記真空蒸着法が電子ビーム蒸着法であることを特徴とする、請求項1または2に記載の分析用センサ基板の製造方法。
  8. 前記工程(a)のシリカ粒子が、触媒としてアンモニア水を用いて、ケイ素を含む有機分子であるオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)の自己組立によって調製されることを特徴とする、請求項3に記載の分析用センサ基板の製造方法。
  9. 前記工程(a)が、
    (a−1)触媒としてアンモニア水を用いて、ケイ素を含む有機分子であるオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)の自己組立によってシリカ粒子を調製する工程;および
    (a−2)該工程(a−1)で調製されたシリカ粒子を遠心分離機で遠心分離し、該粒子を浸漬し、上清を捨て、次いで相転移温度を上回る特定温度でベーキング時間該粒子を乾燥して、シリカ粒子を調製する工程;
    (a−3)EDC/NHS物質と、アミン基およびチオール基を有する物質としてアミノベンゾチオール(ABT)とを、超音波を加えながら反応させることにより、ABTをシリカ粒子の表面上に固定し、ABTが固定されたシリカ粒子の分散溶液を調製する工程;および
    (a−4)該工程(a−3)で調製されたABTが固定されたシリカ粒子の分散溶液を遠心分離手順によってエタノールおよびクロロホルムで洗浄し、ラングミュア−ブロジェット法に用いられる溶液を調製することによって、シリカ粒子を表面改質させる工程
    を含むことを特徴とする、請求項1に記載の分析用センサ基板の製造方法。
  10. 前記工程(b)が、
    (b−1)有機官能基を有する有機分子で表面が改質され、そして有機溶媒に分散されたシリカナノ粒子の分散溶液を、水面上に散布する工程;
    (b−2)該水面上にバリアを置き、シリカ粒子を集めて薄膜形態とする工程;および
    (b−3)該薄膜形態のシリカ粒子を金基板に転移する工程
    を含むことを特徴とする、請求項1に記載の分析用センサ基板の製造方法。
  11. 前記バリアに加えられる転移圧力が35〜45mN/mであることを特徴とする、請求項10に記載の分析用センサ基板の製造方法。
  12. 前記ナノ粒子がシリカ粒子であることを特徴とする、請求項9に記載の分析用センサ基板の製造方法。
  13. 前記有機官能基がチオール基であることを特徴とする、請求項9に記載の分析用センサ基板の製造方法。
  14. 前記有機溶媒がクロロホルムであることを特徴とする、請求項9に記載の分析用センサ基板の製造方法。
  15. 請求項1から14のいずれかに記載の分析用センサ基板の製造方法によって調製されたナノ膜。
  16. 請求項1から14のいずれかに記載の分析用センサ基板の製造方法によって調製されたナノ膜を用いて調製されたナノ構造物。
  17. 請求項1から14のいずれかに記載の分析用センサ基板の製造方法によって調製された表面プラズモン共鳴測定用基板。
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