JP2011505148A - 商業的に価値のある化合物を産生するための生物学的システム - Google Patents

商業的に価値のある化合物を産生するための生物学的システム Download PDF

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Abstract

本発明は、酵母および他の生物による化合物の産生のためのシステムおよび方法に関する。1つのアプローチにおいて、商業的に価値のある化合物を産生するように操作された酵母を、セルロース系細菌と共に培養する。酵母は、細菌によって産生された代謝産物を炭素源として用いる。ハロゲン化メチルは、このプロセスによって産生されうる化合物の例である。本発明はまた、S-アデノシルメチオニン(SAM)依存性ハロゲン化メチルトランスフェラーゼを発現する遺伝子操作生物を用いた有機化合物の産生に関する。1つのアプローチにおいて、生物、ハロゲン化物、および炭素源を、ハロゲン化メチルが産生される条件下で培養培地においてインキュベートする。ハロゲン化メチルを収集し、かつ非ハロゲン化有機分子へと変換することができる。

Description

関連出願の相互参照
本出願は、米国特許仮出願第60/991,678号(2007年11月30日提出);第61/038,368号(2008年3月20日提出);第61/041,467号(2008年4月1日提出);および第61/098,221号(2008年9月18日提出)の恩典を主張する。これらの出願の各々は、全ての目的に関してその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
発明の分野
本発明は、ハロゲン化メチルトランスフェラーゼを発現する遺伝子改変生物の培養によるバイオ燃料および他のハロゲン化メチル誘導体の産生に関する。
背景
ハロゲン化メチルは、そこから広く多様な商業的に重要な有機産物を産生することができる反応性の一炭素化合物である。ハロゲン化メチルの工業的生産は化学法を用いて行われているが、これはしばしば大量のエネルギーを消費して、高温および高圧条件を伴う。例えば、ハロゲン化メチルを工業生産するための一般的な方法は、上昇した温度および少なくとも1 barの圧力下で酸化アルミニウム触媒の存在下でガス様塩化水素とメタノールの反応を伴う。例えばMcKetta, J., CHEMICAL PROCESSING HANDBOOK, 1993(非特許文献1)を参照されたい。
多くの植物および真菌は、ハロゲン化メチルを産生して、それらを環境に放出している。これらの生物は、塩素、臭素、またはヨウ素イオンを、代謝物であるS-アデノシルメチオニン(「AdoMet」または「SAM」)のメチル基と化合させて、ハロゲン化メチルとS-アデノシルホモシステインとを形成するハロゲン化メチルトランスフェラーゼを含有する。
McKetta, J., CHEMICAL PROCESSING HANDBOOK, 1993
発明の簡単な概要
本発明には、(i) S-アデノシルメチオニン(SAM)依存性ハロゲン化メチルトランスフェラーゼ(MHT)を含む生物、(ii) 塩素、臭素、およびヨウ素を含む群から選択されるハロゲン化物、ならびに(iii) 培養培地中の炭素源を、ハロゲン化メチルが産生される条件で混合する段階を含むプロセスが含まれる。任意でハロゲン化メチルを収集することができる。ハロゲン化メチルを、非ハロゲン化有機分子または非ハロゲン化有機分子の混合物へと変換することができ、これらも任意で収集することができる。プロセスは商業的規模、例えばリアクターにおいて行うことができる。本発明はまた、S-アデノシル-メチオニン(SAM)生合成経路への流れを増加させるように遺伝子改変されている、および/または細胞内ハロゲン化物濃度を増加させるように遺伝子改変されている、異種S-アデノシルメチオニン(SAM)依存性ハロゲン化メチルトランスフェラーゼ遺伝子を含む、遺伝子改変藻類、真菌、または細菌も提供する。
有用な生物には、藻類、酵母および細菌が含まれる。組換え型生物は、グラム陰性細菌、例えば大腸菌(E. coli)、サルモネラ(Salmonella)、ロドバクター(Rhodobacter)、シネクトシスチス(Synechtocystis)、またはエルウィニア(Erwinia)でありうる。他のグラム陰性細菌には、メチロコッカス(Methylococcaceae)科およびメチロシスチス(Methylocystaceae)科由来のメンバー;サーモトガ・ハイポゲア(Thermotoga hypogea)、サーモトガ・ナフトフィラ(Thermotoga naphthophila)、サーモトガ・サブテラネアン(Thermotoga subterranean)、ペトロトガ・ハロフィラ(Petrotoga halophila)、ペトロトガ・メキシカナ(Petrotoga mexicana)、ペトロトガ・ミオサーマ(Petrotoga miotherma)、およびペトロトガ・モビリス(Petrotoga mobilis)が含まれる。または、組換え型生物は、グラム陽性細菌、例えば枯草菌(B. subtilis)、またはクロストリジウム(Clostridium)でありうる。必要に応じて、組換え型生物は、出芽酵母(Saccharomyces cerevisae)、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、ヤロウイア・リポリチカ(Yarrowia lipolytica)、分裂酵母(Scizosacchromyces pombe)、もしくはトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)、またはサッカロミセス(Saccharomyces)、ピチア(Pichia)、ハンゼヌラ(Hansenula)、クルイベロミセス(Kluyveromyces)、ヤロウイア(Yarrowia)、トリコデルマ(Trichoderma)、もしくはシゾサッカロミセス(Scizosacchromyces)属の他の酵母の種などの真菌でありうる。組換え型生物は、藻類などの真核生物でありうる。藻類の例には、クラミドモナス(Chlamydomonas)が含まれる。
生物は任意で、異種MHTをコードする遺伝子を含む。MHTは、天然に存在するMHTまたは合成MHTでありうる。必要に応じて、異種MHTの発現は、誘導性プロモーターの制御下にありうる。有用なMHTには、例えばバチス・マリチマ(Batis maritima)、バークホルデリア・フィマツム(Burkholderia phymatum)、シネココッカス・エロンガツス(Synechococcus elongatus)、ブラッシカ・ラパ(Brassica rapa)、ブラッシカ・オレラセア(Brassica oleracea)、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、シロイヌナズナ、レプトスピリルム(Leptospirillum)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、イネ(Oryza sativa)、オストレオコッカス・タウリ(Ostreococcus tauri)、デクロロモナス・アロマチカ(Dechloromonas aromatica)、ウシグソヒトヨタケ(Coprinopsis cinerea)、ロビジニタレア・ボフィルマータ(Robiginitalea bofirmata)、マリカウリス・マリス(Maricaulis maris)、フラボバクテリア・バクテリウム(Flavobacteria bacterium)、ブドウ(Vitis vinifera)、またはハロロドスピラ・ハロフィラ(halorhodospira halophila)由来のMHTが含まれるがこれらに限定されるわけではない。他の有用なMHTには、B.ゼノボランス(B. xenovorans)、チンゲンサイ(B. rapa chinensis)、B.シュードマレイ(B. pseudomallei)、B.タイランデンシス(B. thailandensis)、海洋細菌HTCC2080、およびR.ピッケティ(R. picketti)由来のMHTが含まれる(しかしこれらに限定されるわけではない)。同様に以下の考察および図10Aを参照されたい。
S-アデノシル-メチオニン(SAM)生合成経路を通る流れを増加させるように、生物を遺伝子改変することができる。例えば、SAM生合成経路を通る流れを、SAMシンテターゼの発現または過剰発現によって増加させることができる。SAMシンテターゼは、大腸菌metK、リケッチアmetK、出芽酵母sam1p、または出芽酵母sam2pでありうる。SAMシンテターゼは、任意で大腸菌metKと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する。
必要に応じて、SAM生合成経路を通る流れは、少なくとも1つの遺伝子の発現および/または活性を消失させる、不活化する、または減少させることによって増加させることができる。適当な例において、遺伝子は、SAM利用経路、例えばコプロポルフィリノーゲンIIIオキシダーゼ、S-アデノシルメチオニンデカルボキシラーゼ、シスタチオニンβ-シンテターゼ、リブロース5-リン酸3-エピメラーゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、L-アラニントランスアミナーゼ、3',5'-二リン酸ヌクレオチダーゼ、グリシンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ、またはグリシンヒドロキシメチルトランスフェラーゼに関与していてもよい。
SAM生合成経路を通る流れはまた、メチオニン生合成経路を通る流れを増加させることによっても増加しうる。例えば、メチオニン生合成経路を通る流れは、大腸菌metL、metA、metB、metC、metE、および/またはmetH遺伝子の発現または過剰発現によって増加させることができる。必要に応じて、メチオニン生合成のリプレッサーをコードする遺伝子、例えば大腸菌metJを不活化することができる。
必要に応じて、Sam5p酵母ミトコンドリア遺伝子などのSAMトランスポータータンパク質を発現させることによって流れを増加させることができる。別の局面において、ハロゲン化メチルの産生は、ATPの細胞内濃度および/または利用率を増加させる遺伝子を発現させることによって、および/または例えばハロゲン化物トランスポータータンパク質遺伝子の過剰発現を通して細胞内ハロゲン化物濃度を増加させることによって増加しうる。ハロゲン化物トランスポーターは、大腸菌clcトランスポーターでありうるか、または大腸菌clcトランスポーターと少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を共有する遺伝子でありうる。
本発明において用いるためのハロゲン化物は、ハロゲン化物塩、例えば塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、およびヨウ化ナトリウムとして提供されうる。ハロゲン化物は、培養培地に0.05〜0.3 Mの濃度で存在しうる。培養培地は任意でメチオニンを含む。産生されるハロゲン化メチルは、塩化メチル、臭化メチル、および/またはヨウ化メチルでありうる。ハロゲン化メチルの他の産物への変換は、触媒による縮合の結果でありうる。有用な触媒には、ゼオライト触媒、例えばZSM-5、または臭化アルミニウム(AlBr3)が含まれる。触媒縮合段階によって、ハロゲン化物の産生が起こり、これは培養培地に戻って再利用されうる。本発明の方法は、アルカン、例えば、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、またはそれらの混合物を含む組成物を産生するために用いることができる。産生されうる他の有機分子には、オレフィン、アルコール、エーテル、および/またはアルデヒドが含まれるがこれらに限定されるわけではない。
生物は、多数の(例えば、2、3、4、5、または6個の)座で遺伝子改変されうる。各々の改変の効果は個々に、ハロゲン化メチルの産生を増加させることでありうる。
1つの局面において、本発明は、i)S-アデノシルメチオニン(SAM)依存性ハロゲン化メチルトランスフェラーゼ(MHT)をコードする異種遺伝子を含む組換え型酵母、ii)塩素、臭素、およびヨウ素を含む群から選択されるハロゲン化物、ならびにiii)炭素源を、ハロゲン化メチルが産生される条件下で培養培地において混合する段階を含む方法を提供する。方法は、ハロゲン化メチルを非ハロゲン化有機分子または非ハロゲン化有機分子の混合物へと変換する段階をさらに含みうる。いくつかの態様において、酵母は、サッカロミセス、ピチア、ハンゼヌラ、クルイベロミセス、ヤロウイア、トリコデルマ、およびシゾサッカロミセスから選択される属由来である。例えば、酵母は出芽酵母、ピチア・パストリス、ハンゼヌラ・ポリモルファ、クルイベロミセス・ラクチス、ヤロウイア・リポリチカ、トリコデルマ・リーゼイ、または分裂酵母であってもよい。いくつかの態様において、MHTは、バチス・マリチマ由来である。いくつかの態様において、炭素源は、セルロース分解微生物によるセルロース代謝によって産生されるアセテートおよび/またはエタノールである。セルロース分解微生物は、アクチノタレア・ファーメンタンス(Actinotalea fermentans)などの細菌であってもよい。いくつかの態様において、セルロースは、微結晶セルロースである。いくつかの態様において、セルロースは、細断または粉砕された供給原料(例えば、粉砕されたスイッチグラス、バガス、エレファントグラス、トウモロコシ茎葉(corn stover)、およびポプラ)である。
ある局面において、本発明は、酵母とセルロース系(cellulosic)細菌とを含む共培養システムを提供し、ここで、酵母は、少なくとも1つの異種タンパク質を発現する。共培養システムは、セルロースを含有してもよい。いくつかの態様において、共培養システムは、酵母1種と細菌1種とを含有する。
共培養システムのいくつかの態様において、酵母は、サッカロミセス、ピチア、ハンゼヌラ、クルイベロミセス、ヤロウイア、トリコデルマ、およびシゾサッカロミセスからなる群より選択される属由来の、例えば出芽酵母でありうる。
いくつかの態様において、共培養物の酵母および細菌は、培養において共生関係を有する。いくつかの態様において、細菌は、アクチノタレア・ファーメンタンスである。
ある局面において、本発明は、いずれの微生物も他方を圧倒しないように、種の集団の比較的一定の比率を維持しながら、共に好気的に増殖するように適合させた2つの微生物の共培養物を提供する。共培養物には、(i) セルロースを代謝し、かつ1つまたは複数の代謝産物を産生する第一の微生物成分;(ii) 異種タンパク質を発現するように組換えによって改変され、かつセルロースを代謝的に分解することができない第二の微生物成分であって、該第二の微生物が第一の微生物の代謝産物を炭素源として用いる、第二の微生物成分が含まれる。1つの態様において、第一の微生物は、セルロース系細菌であり、第二の微生物は酵母である。1つの態様において、酵母は、異種ハロゲン化メチルトランスフェラーゼを発現する。いくつかの態様において、酵母は出芽酵母であり、かつ細菌はアクチノタレア・ファーメンタンスである。
一定の態様において、異種遺伝子は、MHT配列と、該MHT配列を酵母の液胞に指向させるターゲティングペプチド配列とを含む融合タンパク質をコードする。ターゲティングペプチド配列は、カルボキシペプチダーゼYからのN末端ペプチドドメインでありうる。
1つの局面において、本発明は、セルロースを代謝し、かつ1つまたは複数の代謝産物を産生する第一の微生物と、セルロースを代謝せず、かつ異種ハロゲン化メチルトランスフェラーゼタンパク質を発現するように組換えによって改変されている第二の微生物とを共に、セルロースおよびハロゲン化物を含有する培地において、ハロゲン化メチルが産生される条件下で培養する段階を含む、ハロゲン化メチルを産生するための方法を提供する。いくつかの態様において、ハロゲン化物は、塩素、臭素、およびヨウ素である。
1つの態様において、本発明は、S-アデノシルメチオニン(SAM)依存性ハロゲン化メチルトランスフェラーゼ(MHT)をコードする異種遺伝子を含む組換え型酵母細胞を提供する。一定の態様において、MHTは、バチス・マリチマ、バークホルデリア・フィマツム、シネココッカス・エロンガツス、ブラッシカ・ラパ、ブラッシカ・オレラセア、シロイヌナズナ、シロイヌナズナ、レプトスピリルム、クリプトコッカス・ネオフォルマンス、イネ、オストレオコッカス・タウリ、デクロロモナス・アロマチカ、ウシグソヒトヨタケ、ロビジニタレア・ボフィルマータ、マリカウリス・マリス、フラボバクテリア・バクテリウム、ブドウ、またはハロロドスピラ・ハロフィラ由来である。一定の態様において、MHTは、B.ゼノボランス、チンゲンサイ、B.シュードマレイ、B.タイランデンシス、海洋細菌HTCC2080、およびR.ピッケティ由来である。一定の態様において、組換え型酵母細胞は、出芽酵母、ピチア・パストリス、ハンゼヌラ・ポリモルファ、クルイベロミセス・ラクチス、ヤロウイア・リポリチカ、トリコデルマ・リーゼイ、および分裂酵母から選択される。例えば、組換え型酵母細胞は、バチス・マリチマのハロゲン化メチルトランスフェラーゼタンパク質を発現する出芽酵母細胞でありうる。
いくつかの態様において、MHTは、タンパク質を酵母液胞に指向させるターゲティングペプチド配列を含む融合タンパク質として酵母細胞において発現される。1つの態様において、ターゲティングペプチド配列は、カルボキシペプチダーゼYからのN末端ペプチドドメインである。
別の局面において、本明細書には、培養培地、セルロース系細菌成分(該細菌は、セルロースを代謝し、かつ1つまたは複数の代謝産物を産生する)、および酵母成分(該酵母は、細菌の少なくとも1つの代謝産物を炭素源として用いる)を含む共培養システムが記述される。1つの態様において、細菌-酵母共培養物は、セルロースを代謝し、かつ1つまたは複数の代謝産物を産生するアクチノタレア・ファーメンタンス細菌と、細菌によって産生された少なくとも1つの代謝産物を炭素源として用いる出芽酵母とを含む。培養培地は、セルロースを含有してもよい。いくつかの態様において、酵母は、セルロースを代謝的に分解することができない。いくつかの態様において、代謝産物は、酵母にとっての単独のまたは主要な炭素およびエネルギー源である。
いくつかの態様において、酵母は、異種タンパク質を発現するか、または内因性タンパク質を過剰発現するように組換えによって改変されている。いくつかの態様において、酵母は、内因性タンパク質の発現をノックアウトするように組換えによって改変されている。いくつかの態様において、細菌および酵母は、いずれの微生物も他方を圧倒しないように種集団の比較的一定の比率を維持しながら共に増殖する。共培養システムは、実質的に好気性の条件下または実質的に嫌気性の条件下で維持されてもよい。
様々な態様において、酵母は、サッカロミセス、ピチア、ハンゼヌラ、クルイベロミセス、ヤロウイア、トリコデルマ、およびシゾサッカロミセスから選択される属由来である。ある態様において、酵母は出芽酵母である。様々な態様において、細菌は、アクチノタレア属(Actinotalea)またはセルロモナス属(cellulomonas)の種である。ある態様において、細菌は、アクチノタレア・ファーメンタンスである。ある態様において、酵母は出芽酵母であり、かつ細菌はアクチノタレア・ファーメンタンスである。いくつかの態様において、共培養物は、ただ1つの種の酵母とただ1つの種の細菌とを含む。いくつかの態様において、酵母および細菌は、培養において共生関係を有する。
いくつかの態様において、細菌によって産生される炭素源は、例えばエタノール、アセテート、ラクテート、スクシネート、シトレート、ホルメート、またはマレートなどの、炭素原子1〜6個を含む分子である。
いくつかの態様において、酵母は、異種タンパク質を発現する。例えば、異種タンパク質は、例えば患者の処置のために用いられるヒトタンパク質などの哺乳動物タンパク質であってもよい。いくつかの態様において、異種タンパク質は、酵母における合成経路の1段階を触媒する酵素などの酵素である。ある態様において、異種タンパク質は、ハロゲン化メチルトランスフェラーゼである。いくつかの態様において、酵母は、商業的に価値のある小分子化合物を産生するように遺伝子操作されている。他の態様において、酵母は、天然に存在する株であるか、または組換えによって改変されていない培養株である。
別の局面において、本明細書には、セルロースまたはセルロース源の存在下、培養培地において、セルロース系細菌と酵母とを共に、(i) 細菌がセルロースを代謝し、かつ1つまたは複数の代謝産物を産生する条件下、および(ii) 酵母成分が細菌の少なくとも1つの代謝産物を炭素源として用いる条件下で培養する段階を含む、酵母培養方法が記述される。通常、培養培地は液体である。1つの態様において、セルロースは微結晶セルロースである。
いくつかの態様において、セルロース源は、スイッチグラス、バガス、エレファントグラス、トウモロコシ茎葉、およびポプラ(それらの各々は粉砕されていてもよい)などの、しかしこれらに限定されないバイオマス、ならびにこれらおよび他のバイオマス材料の混合物である。
いくつかの態様において、培養物は、好気性条件下で維持される。いくつかの態様において、培養物は嫌気性条件下で維持される。いくつかの態様において、酵母および細菌は、培養において共生関係を有する。いくつかの態様において、酵母は、セルロースを代謝的に分解することができない。いくつかの態様において、細菌によって産生された炭素源は、例えばエタノール、アセテート、ラクテート、スクシネート、シトレート、ホルメート、またはマレートなどの炭素原子1〜6個を含む分子である。
様々な態様において、共培養物における酵母は、サッカロミセス、ピチア、ハンゼヌラ、クルイベロミセス、ヤロウイア、トリコデルマ、およびシゾサッカロミセスから選択される属由来である。ある態様において、酵母は出芽酵母である。様々な態様において、細菌は、アクチノタレア属またはセルロモナス属の種である。ある態様において、細菌はアクチノタレア・ファーメンタンスである。ある態様において、酵母は出芽酵母であり、かつ細菌はアクチノタレア・ファーメンタンスである。いくつかの態様において、共培養物は、ただ1つの種の酵母とただ1つの種の細菌とを含む。いくつかの態様において、酵母および細菌は、培養において共生関係を有する。
いくつかの態様において、酵母は、異種タンパク質を発現するように組換えによって改変されている。例えば、異種タンパク質は、例えば患者の処置のために用いられるヒトタンパク質などの哺乳動物タンパク質であってもよい。いくつかの態様において、異種タンパク質は酵素である。ある態様において、異種タンパク質は、ハロゲン化メチルトランスフェラーゼである。いくつかの態様において、酵母は、商業的に価値のある小分子化合物を産生するように遺伝子操作されている。他の態様において、酵母は、天然に存在する株であるか、または組換えによって改変されていない培養株である。
いくつかの態様において、酵母は、内因性タンパク質の発現をノックアウトするように組換えによって改変されている。他の態様において、酵母は、天然に存在する株であるか、または組換えによって改変されていない培養株である。
いくつかの態様において、方法は、酵母によって産生された産物を培養培地から回収する段階を含む。回収されうる産物の例には、酵母によって発現された組換え型タンパク質、酵母細胞によって合成された小分子、薬物、食品、アミノ酸、補助因子、ホルモン、タンパク質、ビタミン、脂質、アルカン、芳香族化合物、オレフィン、アルコール、またはバイオ燃料中間体が含まれるがこれらに限定されるわけではない。ある態様において、産物はハロゲン化メチルである。いくつかの態様において、産物の合成は、酵母における異種タンパク質の発現を必要とする。いくつかの態様において、合成は、酵母において過剰発現される内因性タンパク質の発現、または酵母の1つもしくは複数の内因性遺伝子の欠失を必要とする。
1つの局面において、本発明は、セルロースを代謝し、かつ1つまたは複数の代謝産物を産生するセルロース系細菌と、セルロースを代謝せず、かつ異種ハロゲン化メチルトランスフェラーゼタンパク質を発現するように組換えによって改変されている酵母とを共に、セルロース源およびハロゲン化物を含有する培地において、ハロゲン化メチルが産生される条件下で培養する段階を含む、ハロゲン化メチルを産生するための方法を提供する。ハロゲン化物は、塩素、臭素、およびヨウ素であってもよい。
ある局面において、本発明は、i)S-アデノシルメチオニン(SAM)依存性ハロゲン化メチルトランスフェラーゼ(MHT)をコードする異種遺伝子を含む組換え型酵母、ii)塩素、臭素、およびヨウ素を含む群から選択されるハロゲン化物;ならびにiii)セルロースの代謝によって炭素源を産生するセルロース分解細菌を、ハロゲン化メチルが産生される条件下で培養培地において混合する段階を含む方法を提供する。いくつかの態様において、炭素源は、エタノール、アセテート、ラクテート、スクシネート、ホルメート、シトレート、またはマレートなどの炭素原子1〜6個を含む分子である。いくつかの態様において、方法は、培養培地からハロゲン化メチルを回収する段階、およびハロゲン化メチルを非ハロゲン化有機分子または非ハロゲン化有機分子の混合物へと変換する段階を含む。いくつかの態様において、酵母は出芽酵母であるか、または本明細書において以下に記述される別の酵母である。
いくつかの態様において、細菌は、アクチノタレア・ファーメンタンスであるか、または本明細書において以下に記述される別のセルロース系細菌である。いくつかの態様において、MHTはバチス・マリチマ由来であるか、または本明細書において以下に記述される別のMHTである。1つの態様において、酵母は、出芽酵母であり、細菌は、アクチノタレア・ファーメンタンスであり、かつMHTはバチス・マリチマ由来である。
IPTG誘導性プロモーターから発現される組換え型ハロゲン化メチルトランスフェラーゼ(MHT)遺伝子を含有する細菌による、ハロゲン化メチル産生。 IPTGを培地に添加した後の、IPTG誘導性プロモーターから発現される組換え型MHT遺伝子を含有する細菌からのハロゲン化メチル産生の時間経過。 ハロゲン化メチル産生に対する、細菌の増殖期の効果。 ハロゲン化メチル産生に対する、培養培地におけるハロゲン化物塩濃度の効果。 ハロゲン化メチル産生に対する、異なるハロゲン化物の効果。 MHT以外の遺伝子、例えばmetKを過剰発現する細菌からのハロゲン化メチル産生。 様々な生物に由来する様々な異種MHTを発現する細菌によって達成されたハロゲン化メチル産生。 有機化合物を産生するためのバイオリアクターシステムの概略図。 図9A〜C:微生物共培養物を用いたセルロース系供給原料からのCH3I産生。図9A:共培養のダイヤグラム。A.ファーメンタンスは、セルロース系供給原料をアセテートおよびエタノールへと発酵させ、それで出芽酵母は、炭素(およびエネルギー)源として呼吸することができる。図9B、左のパネル:共培養における酵母の増殖。単独の炭素源としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)上に、酵母をA.ファーメンタンスの存在下および非存在下で接種した。増殖をコロニー形成単位として測定した。図9B、右のパネル:共培養における細菌の増殖。図9C:セルロース系供給原料からのCH3I産生。共培養物を低密度で播種して、単独の炭素源として表記の供給原料(20 g/L)と共に36時間増殖させた。ヨウ化ナトリウムを添加して、CH3I産生を、先に記述したようにGC-MSによって測定した。CH3Iの収率を、培養物1 mLあたりのCFUによって正規化した、グラム/L/日として報告する。アセテート、CMC、スイッチグラス、トウモロコシ茎葉、およびポプラにおけるA.ファーメンタンス-出芽酵母共培養の収率を示す。A.ファーメンタンスの非存在下で増殖させた培養物は、ヨウ化メチル活性を示さなかった。 ハロゲン化メチル活性に関するMHTライブラリのスクリーニング。大腸菌におけるMHTライブラリのハロゲン化メチル活性。MHT遺伝子の起源である生物を左に示す。細菌を赤色フォントで示し、植物を緑色、真菌を青色、および古細菌を紫色で示す。CH3I、CH3Br、およびCH3Clの産生を示す。CH3I活性によって遺伝子の順位を決定する。 ハロゲン化メチル活性に関するMHTライブラリのスクリーニング。大腸菌におけるMHTライブラリのハロゲン化メチル活性。MHT遺伝子の起源である生物を左に示す。細菌を赤色フォントで示し、植物を緑色、真菌を青色、および古細菌を紫色で示す。CH3I、CH3Br、およびCH3Clの産生を示す。CH3I活性によって遺伝子の順位を決定する。 ハロゲン化メチル活性に関するMHTライブラリのスクリーニング。大腸菌におけるMHTライブラリのハロゲン化メチル活性。MHT遺伝子の起源である生物を左に示す。細菌を赤色フォントで示し、植物を緑色、真菌を青色、および古細菌を紫色で示す。CH3I、CH3Br、およびCH3Clの産生を示す。CH3I活性によって遺伝子の順位を決定する。 ハロゲン化メチル活性に関するMHTライブラリのスクリーニング。MHTライブラリのサブセットについてのハロゲン化メチル活性のアッセイ。測定は、1試料あたり3回ずつ行い、標準偏差を示す。 組換え型出芽酵母におけるヨウ化メチル産生。CH3I産生経路。B.マリチマMHTは、N末端液胞ターゲティングタグと共に発現される。ATP依存性MHTは、メチルドナーとしてSAMを用いてヨウ化物イオンをメチル化する。 組換え型出芽酵母におけるヨウ化メチル産生。経時的に培養のヘッドスペースで測定されたCH3I。グルコース増殖細胞における活性を示す。 組換え型出芽酵母におけるヨウ化メチル産生。グラム/L培養物/日でのCH3I収率。培養可能な紅藻類E.ムリカタ(E. muricata)に関する値を文献から得る。B.マリチマMHT発現大腸菌および出芽酵母の収率を、標準曲線との比較によって計算する。 組換え型出芽酵母におけるヨウ化メチル産生。酵母におけるCH3I毒性。指数期の培養物をOD600が0.05となるまで希釈して、市販のCH3Iを添加した。OD600を増殖の24時間目に測定した。W303a lab株を■で示し、DNAメチル化感受性RAD50Δ変異体を□で示す。 N末端融合CPYシグナルを用いてB.マリチマMHTを酵母液胞にターゲティングすることによるヨウ化メチル産生の改善。時間あたりのヨウ化メチル計数値を各培養物について示す。液胞標的化MHT(CPY-MHT)および細胞質MHTを、W303株および液胞形成がないVPS33欠失を有するW303株において発現させた。
詳細な説明
1.緒言
ハロゲン化メチルは、石油化学工業において一般的に行われているゼオライト触媒を用いて、有用化学物質およびガソリンを含む液体燃料へと変換されうる。ハロゲン化メチルトランスフェラーゼ(MHT)酵素は、遍在する代謝物であるS-アデノイルメチオニン(SAM)からのメチル基を、ATP依存的にハロゲン化物イオンへと転移させる。バイオインフォマティクスおよびメールで注文したDNA合成を用いて、本発明者らは、植物、真菌、細菌、および同定されていない生物から推定のMHT遺伝子89個のライブラリを同定してクローニングした。ライブラリを大腸菌においてスクリーニングして、CH3Cl、CH3Br、およびCH3I産生速度を同定したところ、ライブラリの56%が塩素について活性であり、85%が臭素について活性であり、および69%がヨウ素について活性であった。出芽酵母における最大のMHT活性の発現およびその後の操作によって、産物の収率は、グルコースおよびスクロースから4.5 g/L-日となり、培養可能な天然に存在する供給源よりも4桁上回った。操作された酵母とセルロース分解細菌であるアクチノタレア・ファーメンタンスとの共生的共培養を用いて、本発明者らは、未加工のスイッチグラス(パニカム・ビルガツム(Panicum virgatum))、トウモロコシ茎葉、およびポプラからのハロゲン化メチル産生を達成することができた。様々な生物学的に再生可能な資源から産生されたハロゲン化メチルは、化学工業においてアルカン、芳香族化合物、オレフィン、およびアルコールを産生するための1-炭素前駆体として用いられうる。
1つの局面において、本発明は、有用化学物質および燃料を産生するための方法を提供する。本発明は、バイオ燃料および他の商業的に価値のある有機産物を産生するための方法を提供する。1つの局面において、ハロゲン化メチルトランスフェラーゼ酵素(MHT)を発現する組換え型細菌、真菌、または植物細胞を、炭素源(例えば、農業バイオマスまたは廃棄物バイオマス、培養培地、石油、天然ガス適用メタン)の存在下、ハロゲン化メチルガスが産生される条件下で培養する。1つの態様において、MHTは異種である。ハロゲン化メチルは、長鎖アルカン、オレフィン、アルコール、エーテル、およびアルデヒドなどの非ハロゲン化有機化合物へと変換される。1つの態様において、有機化合物はバイオ燃料として用いるために適している。ハロゲン化メチルの他の有機分子への変換は、任意の手段によって達成されることができ、特定の機序に限定されない。1つの態様において、MHT発現生物はまた、ハロゲン化メチルをメタノールなどの別の有機分子へと変換する酵素(内因性または異種性)を発現する。1つの態様において、MHT発現生物は、ハロゲン化メチルを放出して、次にこれは異なる生物(天然または組換え型)によって別の有機分子へと変換される。1つの態様において、ハロゲン化メチルは、周知の化学合成法(例えば、触媒的縮合)によって収集および変換される。ハロゲン化メチルを非ハロゲン化有機分子または非ハロゲン化有機分子の混合物へと変換した後、非ハロゲン化有機分子をその後の使用のために収集および/または梱包してもよい。
本発明にはまた、異種ハロゲン化メチルトランスフェラーゼ酵素を発現し、かつ少なくとも1つの他の遺伝子改変を有する生物が含まれる。該少なくとも1つの他の遺伝子改変により、生物は、該改変を欠く生物よりも多くのハロゲン化メチルを産生する。MHT発現細胞におけるハロゲン化メチルの収率の増加は、様々な様式で、例えば操作されたSAM過剰産生、ATPの濃度および/または利用率の増加、ハロゲン化物イオンインポーターの発現によって容易にすることができる。様々な代謝経路における遺伝子の操作によって、セルロース、糖、廃棄物材料、またはCO2からの炭素をハロゲン化メチルガスへと効率よく変換することができる生物の作製が可能となる。
本発明はまた、セルロース分解細菌と、異種タンパク質を発現する酵母細胞とが共に培養される共培養システムを提供する。このシステムにおいて、細菌はセルロースを代謝して、酵母の炭素源として役立つ産物を産生する。いくつかの例において、培養培地における産物の蓄積は細菌にとって毒性である。酵母細胞による産物の消費は産物を除去するために役立ち、それによって細菌および酵母は共生関係を有する。
2.ハロゲン化メチルトランスフェラーゼ発現細胞
内因性のハロゲン化メチルトランスフェラーゼ(MHT)を発現する細胞および異種MHTを発現するように改変された細胞を含む、多様なタイプの細胞または生物を本発明の実践において用いることができる。好ましくは、生物は、1日あたり約1〜1000 mg/L、しばしば1日あたり約10〜100 mg/L、例えば約20〜60 mg/L、例えば約30〜50 mg/L、または約40 mg/Lなどのハロゲン化メチルを産生することができる。本明細書において用いられるように、「異種」という用語は、細胞ゲノムにおいて通常存在しない遺伝子、例えば異なる種からの遺伝子または天然において見いだされない遺伝子、または異種遺伝子によってコードされるタンパク質を指す。野生型細胞ゲノムにおいて見いだされる遺伝子または細胞において通常発現されるタンパク質は、「内因性」と呼ばれうる。内因性遺伝子の追加のコピー(構成的または誘導性プロモーターの制御下)を、内因性の酵素レベルを増加させるために宿主細胞に導入することができる。
原則的に、ほとんどのいかなる細胞タイプも、本発明の方法での使用のために改変されうるが、実際に、細胞または生物は、商業的規模の生物産生、例えば典型的には単細胞および/または急速な増殖に適しているべきである。単純にするために、「細胞」という用語は、本明細書においてMHT発現単細胞生物および多細胞生物のMHT発現細胞の双方を包含するために用いられる。適した細胞は真核細胞であっても、または原核細胞であってもよい。例には、細菌、真菌、藻類、および高等植物細胞が含まれる。
内因性のMHTを発現する細胞を用いてもよい。そのような場合、細胞は通常、高レベルで内因性のMHTを発現するように選択または改変されるか、および/または以下に考察されるようにハロゲン化メチル産生に影響を及ぼす他の座で選択または改変される。前駆体の変異誘発を伴うまたは伴わない選択を用いてもよいが、組換え技術は、最終的な細胞表現型を上回る、より大きい制御を可能とすることから、組換え技術が通常好ましい。
組換え型細胞を用いる場合、それらは異種MHTを発現してもよく、改変内因性MHTを発現してもよく、野生型細胞より高いレベルで内因性のMHTを発現してもよく、MHT遺伝子以外の1つもしくは複数の座で改変されてもよく(以下で考察される)、またはこれらの改変の組み合わせであってもよい。最も好ましくは、細胞は異種MHTを発現し、かつハロゲン化メチル産生に影響を及ぼす少なくとも1つの他の座で改変される。
1つの局面において、組換え型生物は、大腸菌ではない。別の局面において、異種酵素はバチスMHTではない。別の局面において、組換え型生物は、バチスMHTを含有する大腸菌ではない。
2.1 内因性のMHTを発現する細胞
広く多様な植物、真菌、および細菌が内因性のMHTを発現するが、これらを本発明の方法に従って用いることができる。加えて、MHT発現細胞は、大腸菌などの異種宿主に移入されうるMHT遺伝子源である。MHTを発現する生物には、原核細胞、例えば細菌または古細菌が含まれる。本発明に従ってMHTを産生するために用いることができる細菌の例には、土壌細菌およびプロテオバクテリア(Proteobacteria)、メチロバクテリウム・クロロメタニカム(Methylobacterium chloromethanicum)、およびハイフォミクロビウム・クロロメタニカム(Hyphomicrobium chloromethanicum)が含まれる。プロテオバクテリア門には、シュードモナス(Pseudomonas)およびバークホルデリアなどの属が含まれる。バークホルデリアの例には、有機塩素系殺虫剤およびポリ塩化ビフェニル(PCB)を分解できることで知られるバークホルデリア・ゼノボランス(Burkholderia xenovorans)(これまでシュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)、次にB.セパシア(B. cepacia)およびB.フンゴルム(B. fungorum)と呼ばれていた)が含まれる。他のバークホルデリア属の種には、B.マレイ(B. mallei)、B.シュードマレイ(B. pseudomallei)、およびB.セパシア(B. cepacia)が含まれる。細菌のほかに、古細菌などの他の原核生物を、改変を行ってまたは改変を行わずに、MHTを産生するために用いることができる。古細菌の例には、S.アシドカルダリウス(S. acidocaldarius)、S.イスランディカス(S. islandicus)、S.メタリカス(S. metallicus)、S.ネオゼアランディカス(S. neozealandicus)、S.シバタエ(S. shibatae)、S.ソルファタリカス(S. solfataricus)、またはS. sp. AMP12/99などのスルホロブス(Sulfolobus)が含まれる。
他の特に有用なタイプの生物には、海洋藻類(例えば、植物プランクトン、ジャイアントケルプ、および海藻)、高等植物(例えば、塩性植物、ブラッシカ・オレラセア(TM1またはTM2)およびシロイヌナズナ(TM1またはTM2)などのアブラナ科)、および真菌(例えば、酵母)が含まれる。特定の種には、バチス・マリチマ、バークホルデリア・フィマツムSTM815、シネココッカス・エロンガツスPCC 6301、チンゲンサイ;レプトスピリルム属の種グループII UBA(Leptospirillum sp. Group II UBA);クリプトコッカス・ネオフォルマンス変種ネオフォルマンスJEC21(Cryptococcus neoformans var. neoformans JEC21);イネ(ジャポニカ栽培品種グループ(japonica cultivar-group));オストレオコッカス・タウリ;デクロロモナス・アロマチカRCB;ウシグソヒトヨタケ岡山(Coprinopsis cinerea okayama);ロビジニタレア・ボフィルマータHTCC2501;マリカウリス・マリスMCS10;フラボバクテリア・バクテリウムBBFL7;ブドウ;ハロロドスピラ・ハロフィラSL1;フェリナス・ポマセウス(Phellinus pomaceus)(白腐敗菌(white rot fungus))、エンドクラジア・ムリカタ(Endocladia muricata)(海洋紅藻)、アイスプラント(Mesembryanthemum crystallium)、P.ピングイス(P. pinguis)およびP.ギランス(P. gyrans)などのパブロバ属(Pavlova)の種、クロモ(Papenfusiella kuromo)、アカモク(Sargassum horneri)、およびラミナリア・ディギタータ(Laminaria digitata)が含まれる。例えば、Wuosmaa et al., 1990, Science 249:160-2;Nagatoshi et al., 2007, Plant Biotechnology 24, 503-506を参照されたい。なお他の種が本明細書において開示される。
2.2 異種MHTを発現する細胞
いくつかの態様において、本発明において用いられる細胞は、内因性のMHTを発現しないが、異種MHTを発現するように改変される。または、異種MHTを発現するように改変されるが、同様に内因性のMHTも発現する細胞を用いてもよい。異種MHTを発現する細胞を用いることは、いくつかの長所を有する。第一に、本明細書において記述される方法を用いて、生物の望ましい特性(培養の容易さ、特定の供給原料の代謝能、他の座の組換え操作に対する適合性)を、MHT遺伝子の望ましい特性(例えば、高い酵素活性)と組み合わせることが可能である。
異種MHTを発現するように遺伝的に改変することができる細胞には、植物、真菌、およびその他などの原核細胞および真核細胞が含まれる。例示的な原核細胞には、大腸菌(例えば、MC1061、BL21、およびDH10B)、サルモネラ(例えば、SL1344)、ロドバクター、シネクトシスチス、リケッチア、およびエルウィニアなどのグラム陰性細菌ならびに枯草菌およびクロストリジウムなどのグラム陽性細菌が含まれる。例示的な植物には、藻類(例えば、クラミドモナス、クロレラ(Chlorella)、およびプロトテカ(Prototheca))が含まれる。例示的な真菌には、トリコデルマ・リーゼイ、アスペルギルス(Aspergillus)および酵母(例えば、出芽酵母およびピチア)が含まれる。他の細胞タイプが本明細書において開示され、当技術分野において公知である。他の例示的な細菌には、スルホボルス・スルファチカリカス(Sulfobolus sulfaticaricus)、およびマリカウリス・マリスなどのカウロバクター属(Caulobacter)の種が含まれる。
特定の炭素源を効率よく代謝する生物を、利用可能な供給原料にマッチするように選択することができる。例えば、セルロース系材料を炭素源として用いる場合、エルウィニア、大腸菌、ピチア、クロストリジウム、およびクロコウジカビ(Aspergillus Niger)などの生物を用いることができる。大腸菌およびサッカロミセスは、デンプンおよびサトウキビを代謝するために用いることができる生物の例である。同様に、藻類(例えば、クロレラおよびプロトテカ)などの光合成生物は、CO2などの炭素源を代謝することができる。
2.3 ハロゲン化メチルトランスフェラーゼ
本発明の文脈において、「ハロゲン化メチルトランスフェラーゼ(MHT)」は、S-アデノシルメチオニンのメチル基をハロゲン化物へと転移させるタンパク質である。先に述べたように、ハロゲン化メチルトランスフェラーゼは、自然界に遍在する。例示的な天然に存在するハロゲン化メチルトランスフェラーゼには、本明細書において記述されるものが含まれるがこれらに限定されるわけではない。他の天然に存在するハロゲン化メチルトランスフェラーゼは、タンパク質データベース(例えば、NCBIタンパク質配列データベース、http://www.に続けてncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez?db=protein)および科学文献を参照することによって同定されうる。
以下の表1は、MHTを有することが知られる生物のいくつかを記載する。同様に図面、表4および6、ならびに実施例8および9を参照されたい。
Figure 2011505148
MHT遺伝子は、宿主において用いるために適したプロモーターの制御の下、宿主生物にクローニングおよび導入されうる。または、遺伝子におけるコドン使用を宿主にとって最適となるようにする、望ましいMHT配列をコードする遺伝子を合成することができる。プロモーターは、構成的または誘導性でありうる。異種MHT遺伝子は、宿主染色体に組み入れられてもよく(例えば、安定なトランスフェクション)、またはエピソームとして維持されてもよい。
適したMHTは、天然に存在する遺伝子によってコードされるタンパク質に限定されない。例えば、定方向に進化させる技術を用いて、メチルトランスフェラーゼ活性を有する新規またはハイブリッド遺伝子産物を産生することができる。加えて、天然に存在するMHTの触媒的に活性な断片および変種を用いることができる。遺伝子シャッフリング、ファミリーシャッフリング、スタッガード伸長プロセス(StEP)、一過性の鋳型上でのランダムキメラ形成(RACHITT)、ハイブリッド酵素を作製するための繰り返し切断(ITCHY)、切断された鋳型上での組換え伸長(RETT)等を含む、定向進化のための当技術分野において公知の技術によって、酵素などの部分的または全合成MHTがインシリコで設計または産生される(
Figure 2011505148
を参照されたい)。
MHTが宿主生物においてS-アデノシルメチオニンからのメチル基のハロゲン化物(すなわち、塩素、ヨウ素、および/または臭素)への転移に影響を及ぼしうる限り、多様な天然のおよび天然に存在しないハロゲン化メチルトランスフェラーゼを本発明の方法において用いることができることは、明白であると考えられる。MHT酵素活性は、当技術分野において公知の様々なアッセイを用いて測定されうる。アッセイは、精製または部分精製タンパク質の活性を測定することができる。例えば、Ni and Hager, 1999, Proc. Natl. Acad. Sci USA 96:3611-15およびNagatoshi and Nakamura, 2007, Plant Biotechnology 24:503-506を参照されたい。または、そうでなければMHTを発現する細胞においてタンパク質を発現させることができ、測定されたハロゲン化メチル産生は、以下の実施例においておよび他の当技術分野において公知のアッセイにおいて記述される。1つのアッセイにおいて、MHTタンパク質をコードする配列を有する発現ベクターを細菌(例えば、大腸菌)宿主細胞に導入して形質転換体を選択する。クローンをチューブまたはフラスコ中の増殖培地(例えば、NaCl、NaI、またはNaBrを含有するLB培地)において振とうさせながら37℃で4〜22時間インキュベートする。MHTコード配列が誘導性プロモーターの制御下にある場合、誘導物質を含める。チューブまたはフラスコを密封する(例えば、パラフィルムおよびアルミニウムホイルをゴムバンドで締めることによって)。インキュベーション期間終了後、ヘッドスペースの気体中のMeXレベルを、例えばガスクロマトグラフィーによって決定する。
以下の実施例8において証明されるように、本発明の実践において用いられうるMHT配列にはかなりの変動がある。細菌または真菌細胞において異種発現される場合には、ハロゲン化メチルを産生するために、互いに29%もの少ない配列同一性を有する配列が用いられている。その上、実施例8において示されるように、多様なハロゲン化メチルトランスフェラーゼが大腸菌において機能しうる。
一定の態様において、本発明には、本発明において公知のSAM依存性ハロゲン化メチルトランスフェラーゼ(本明細書において記述されるMHTなどの)と少なくとも約25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または少なくとも99%の同一性を有する酵素的に活性なポリペプチドを用いることが含まれる。本明細書において用いられるように、「配列同一性のパーセンテージ」は、比較ウィンドウに対して2つの最適に整列させた配列を比較することによって決定された値を意味し、比較ウィンドウにおけるポリヌクレオチド配列の部分は、2つの配列を最適に整列させた場合に参照配列(付加または欠失を含まない)と比較して付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含んでもよい。パーセンテージは、同一のアミノ酸残基が双方の配列において出現する位置の数を決定して、マッチした位置の数を得る段階、マッチした位置の数を比較ウィンドウにおける位置の総数で除する段階、および結果に100を乗じて配列同一性のパーセンテージを得る段階によって計算される。
3.ハロゲン化メチル産生に影響を及ぼす他の遺伝子改変
MHT遺伝子の導入および操作に加えて、ハロゲン化メチル産生効率を増加させるために、または産生されたハロゲン化メチルの量を増加させるために、他の遺伝子改変を作出することができる。これらの変化には、ハロゲン化物およびS-アデノシルメチオニン(同様に「SAM」または「AdoMet」とも呼ばれる)などの反応基質の細胞内濃度を増加させる段階が含まれる。SAMの細胞内レベルは、SAM生合成速度を変化させること(例えば、SAM前駆体のレベルを上昇させること)、SAM消費を低減させること等によって増加させることができる。ハロゲン化物の細胞内レベルは、ハロゲン化物の細胞への輸送を刺激すること、ハロゲン化物を細胞外環境に添加すること等によって増加させることができる。一般的に、代謝操作技術を用いて、ハロゲン化メチルの産生を最大限にすることができる。
3.1 SAM代謝経路
ハロゲン化メチル産生は、SAM生合成経路、メチオニン生合成経路、SAM利用または分解経路、およびSAM再生経路などのSAMレベルに影響を及ぼす代謝経路を通る流れを操作することによって増加させることができる。S-アデノシルメチオニンは、メチルの移動を伴う多数の代謝経路に関与する遍在する代謝物である。そのような1つの経路を以下に示す。
Figure 2011505148
3.1.1 SAMシンテターゼの過剰発現
SAMは、ATPおよびメチオニンから合成されるが、この反応は酵素S-アデノシルメチオニンシンテターゼ(SAMシンテターゼ、EC 2.5.1.6;Cantano, 1953, J. Biol. Chem. 1953, 204:403-16)によって触媒される。本発明の1つの局面において、MHT発現細胞は、内因性のSAMシンテターゼの過剰発現または異種SAMシンターゼの導入によってSAMシンターゼ活性を増加させるように改変される。SAMシンテターゼ(SAMS)遺伝子には、大腸菌などの原核細胞におけるmetK(アクセッション番号NP_289514.1)、および出芽酵母のsam1p(アクセッション番号NP_010790.1)もしくはsam2p、またはシロイヌナズナのMTO3(アクセッション番号NP_188365.1)が含まれる。SAMSは、構成的または誘導性プロモーターの制御下に、異種SAMS遺伝子を導入することによって、または宿主生物のSAMS遺伝子の追加のコピーを導入することによって細胞において過剰発現されうる。例えば、Yu et al., 2003, Sheng Wu Hua Xue Yu Sheng Wu Wu Li Xue Bao (Shanghai) 35:127-32は、出芽酵母SAMシンテターゼ2遺伝子のピチア・パストリスにおける過剰発現によるSAMの産生の増強を記述した。以下に考察されるように(3.8章)、特定の遺伝子に対する言及は説明のためであって限定のためではない。遺伝子の名称は生物によって変化し、遺伝子の名称に対する上記の言及は、限定的であるとは意図されず、同じ酵素活性を有するホモログ、オルソログ、および変種を包含することが意図されると理解される。
3.1.2 SAM再生の増加
先に示したように、ハロゲン化メチルトランスフェラーゼは、SAMのS-アデノシル-ホモシステインへの変換を触媒する。S-アデノシル-ホモシステインは、SAM生合成経路によってSAMへと再び「再生」される。このようにSAMの産生またはレベルは、経路における酵素のレベルおよび/または活性を増加させることによって増加しうる。そのような酵素の例には、SAM依存性メチラーゼ(EC 2.1.1)、メチオニンシンターゼ(EC 2.1.1.13またはEC 2.1.1.14)、およびN5-メチル-テトラヒドロプテロイルトリグルタメート-ホモシステインメチルトランスフェラーゼ(例えば、酵母MET6)が含まれる。メチル化代謝の重要な酵素であるS-アデノシル-L-ホモシステインヒドロラーゼ(SAH1)は、全てのAdoMet依存性メチルトランスフェラーゼの強い競合的阻害剤として作用するS-アデノシル-L-ホモシステインを異化する。
遺伝子の名称は生物によって変化し、遺伝子の名称に対する上記の言及は限定的であるとは意図されず、同等の活性を有するホモログを包含することが意図されると理解される。
3.1.3 SAM利用経路の減損
ハロゲン化メチル産生生物内の様々な代謝経路が、遊離のSAMの細胞内レベルの減少を引き起こす(SAM利用経路)。ハロゲン化メチル産生を容易にするまたは増加させるために、SAM利用経路に関与する1つまたは複数の酵素の含有量および/または生物活性を減少させることができる。
SAM利用を低減させるために阻害することができる遺伝子の例には、S-アデノシルメチオニンデカルボキシラーゼ(大腸菌遺伝子speDに対応する)が含まれる。さらなる例には、出芽酵母遺伝子CYS4、Rpe1、Zwf1、Alt、Met22、Shm 1-m、およびShm 2に対応する、シスタチオニンβ-シンテターゼ、リブロース5-リン酸3-エピメラーゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、L-アラニントランスアミナーゼ、3',5'-二リン酸ヌクレオチダーゼ、グリシンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ(可逆的、微生物)、グリシンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ(可逆的)が含まれる。
遺伝子の名称は生物によって変化し、遺伝子の名称に対する上記の言及は限定的であるとは意図されず、同等の活性を有するホモログを包含することが意図されると理解される。
3.1.4 SAM輸送遺伝子の過剰発現
1つのアプローチにおいて、SAMの細胞外環境から細胞内への輸送に関与するSAM輸送タンパク質が、細胞において発現または過剰発現される。例には、酵母からのSam5pタンパク質、ならびにGenBank ID番号BC037142(ハツカネズミ(Mus musculus))、AL355930(アカパンカビ(Neurospora crassa))、AE003753(キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster))、Z68160(線虫(Caenorhabditis elegans))、およびSLC25A26(ヒト)などのホモログが含まれる。Marrobio et al., 2003, EMBO J. 22:5975-82;およびAgrimi et al., 2004, Biochem. J. 379:183-90を参照されたい。
遺伝子の名称は生物によって変化し、遺伝子の名称に対する上記の言及は限定的であるとは意図されず、同等の活性を有するホモログを包含することが意図されると理解される。
3.2 メチオニン生合成経路
SAM生合成、および次にハロゲン化メチル産生は、メチオニン合成に関して増加した効率を有する微生物を用いることによって増加させることができる。一般的に、メチオニン合成に至る基本的な代謝経路が周知である(例えば、Voet and Voet, 1995, Biochemistry, 2nd edition, Jon Wiley & Sons, Inc.;Ruckert et al., 2003, J. of Biotechnology 104, 2 13-228;およびLee et al., 2003, Appl. Microbiol. Biotechnol., 62:459-67を参照されたい)。これらの経路は一般的に、フィードバック制御などの多様な機序による厳密な調節下にある(例えば、Neidhardt, 1996, E. coli and S. lyphimurium, ASM Press Washingtonを参照されたい)。したがって、関連遺伝子の発現もしくは抑制、または対応する遺伝子産物のレベルおよび/もしくは活性の増加によってメチオニン産生の増加が起こりうる。
3.2.1 メチオニン生合成酵素
発現またはアップレギュレートされうる遺伝子には、メチオニン生合成に関与する遺伝子が含まれる。その全体が参照により本明細書に組み入れられるPCT公開番号WO 02/10209は、産生されるメチオニン量を増加させるために一定の遺伝子の過剰発現または抑制を記述する。メチオニン生合成酵素の例には、O-アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼ(metY)およびO-スクシニル-ホモセリンスルフヒドリラーゼ(metZ)が含まれる。他の遺伝子には、メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ(metF);アスパラギン酸キナーゼ(lysC);ホモセリンデヒドロゲナーゼ(horn);ホモセリンアセチルトランスフェラーゼ(metX);ホモセリンスクシニルトランスフェラーゼ(metA);シスタチオニンγ-シンテターゼ(metB);シスタチオニンβ-リアーゼ(metC);ビタミンB12依存性メチオニンシンターゼ(metH);ビタミンB12非依存性メチオニンシンターゼ(metE);N5,10-メチレン-テトラヒドロ葉酸レダクターゼ(metF);およびS-アデノシルメチオニンシンターゼ(metK)が含まれる。
メチオニンによるフィードバック阻害に対して抵抗性であるこれらの酵素の変種はさらに、ハロゲン化メチル産生を増加させることができる。いくつかのそのような変種は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、WO 07/011939、およびPark et al., 2007, Metab Eng. 9:327-36において記載されている。例として、ハロゲン化メチル産生は、metY、metA、metB、metC、metE、および/もしくはmetHなどの遺伝子を過剰発現させることによって、またはそうでなければその遺伝子産物のレベルもしくは活性を増加させることによって、大腸菌およびコリネバクテリウム(Corynebacterium)などの原核細胞において増加させることができる。同様に、リプレッサータンパク質遺伝子のレベルを減少させるまたは活性を減損させることによっても、ハロゲン化メチル産生を増加させることができる(例えば、metB、metL、およびmetFなどのメチオニン合成関連遺伝子を抑制する、metJまたはmetD(McbR)遺伝子によってコードされるリプレッサー)。その各々の全体が参照により本明細書に組み入れられる、Rey et al., 2003, J. Biotechnol., 103:1-65;Nakamori et al., 1999, Applied Microbiology and Biotechnology 52:179-85;WO 02/097096を参照されたい。
遺伝子の名称は生物によって変化し、遺伝子の名称に対する上記の言及は限定的であるとは意図されず、同等の活性を有するホモログを包含することが意図されると理解される。
3.2.2 メチオニン生合成前駆体
メチオニン合成はまた、追加の前駆体を提供する経路への流れを改変することによって増加させることができ、その例には、異なる酸化状態のイオウ原子、アンモニアなどの還元状態の窒素、セリン、グリシン、およびホルメートなどのCl-炭素源を含む炭素前駆体、メチオニンの前駆体、ならびにN5および/またはN10で炭素に置換されたテトラヒドロ葉酸の代謝物が含まれる。加えて、NADH、NADPH、またはFADH2などの還元当量の形でのエネルギーが、メチオニンに至る経路に関与しうる。
例えば、ハロゲン化メチル産生は、スルフェートの同化、システイン生合成およびオキサロ酢酸のアスパラギン酸セミアルデヒドへの変換に関与する遺伝子産物のレベルおよび/または活性を増加させることによって増加しうる。遺伝子の例には、L-システインシンターゼ(cysK)、NADPH依存性亜硫酸レダクターゼ(cysI)、およびアルカンスルホネートモノオキシゲナーゼ(ssuD)が含まれる。
セリンレベルを増加させることによっても同様に、メチオニン産生の増加が起こりうる。このように、生物を、セリン代謝または輸送に関与するタンパク質に関して改変することができる。セリン合成に関与する酵素には、D-3-ホスホグリセレートデヒドロゲナーゼ(SerA)、ホスホセリンホスファターゼ(SerB)およびホスホセリンアミノトランスフェラーゼ(SerC)が含まれる。その全体が参照により本明細書に組み入れられるWO 07/135188を参照されたい。セリン合成に関与する酵素は、セリンによるフィードバック阻害を低減または予防するように改変されうる。
同様に、セリンのメチル-テトラヒドロ葉酸への変換に関与する1つまたは複数の酵素のレベルおよび/または生物活性も増加させることができる。そのような遺伝子には、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ(SHMT)およびメチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ(metF)が含まれる。
同様に、セリンのピルベートへの分解(例えば、セリンデヒドラターゼ、sdaA)または細胞からのセリン輸出(例えば、ThrE)に関与する1つまたは複数の酵素の含有量および/または生物活性を減少させることができる。
遺伝子の名称は生物によって変化し、遺伝子の名称に対する上記の言及は限定的であるとは意図されず、同等の活性を有するホモログを包含することが意図されると理解される。
3.2.3 メチオニンの取り込み
細胞におけるメチオニン取り込みを制御する遺伝子を、ハロゲン化メチル産生を増加させるために改変することができる。例えば、大腸菌におけるMetD座は、ATPアーゼ(metN)、メチオニンパーミアーゼ(metI)および基質結合タンパク質(metQ)をコードする。これらの遺伝子の発現は、メチオニンレギュロンの共通の抑制物質であるL-メチオニンおよびMeJによって調節される。オルソログが、サルモネラ、エルシニア(Yersinia)、ビブリオ(Vibrio)、ヘモフィルス(Haemophilus)、アグロバクテリウム(Agrobacterium)、リゾビウム(Rhizobium)およびブルセラ(Brucella)などの多くの他の種において公知である。例えば、Merlin et al., 2002, J. Bacteriology 184:5513-17. et al., 2003, EMBO J. 22:5975-82;およびAgrimi et al., 2004, Biochem. J. 379:183-90を参照されたい。
遺伝子の名称は生物によって変化し、遺伝子の名称に対する上記の言及は限定的であるとは意図されず、同等の活性を有するホモログを包含することが意図されると理解される。
3.3 細胞内ハロゲン化物濃度の増加
ハロゲン化メチル産生はまた、MHT発現細胞において細胞内ハロゲン化物濃度を増加させることによって増加しうる。これは、様々な様式で、例えば1つまたは複数のハロゲン化物トランスポーターのレベルおよび/または活性を導入または増加させることによって、および/または培地中のハロゲン化物の濃度を増加させることによって達成されうる。例には、出芽酵母のGef1、大腸菌のEriC(P37019)、およびシネコシスチス(Synechocystis)(P74477)が含まれる。
遺伝子の名称は生物によって変化し、遺伝子の名称に対する上記の言及は限定的であるとは意図されず、同等の活性を有するホモログを包含することが意図されると理解される。
3.4 ATPレベルの増加
ハロゲン化メチル産生はまた、ATPの細胞内濃度および/または利用率を増加させることによって増加するハロゲン化メチル合成活性によって、増加させることができる。
遺伝子の名称は生物によって変化し、遺伝子の名称に対する上記の言及は限定的であるとは意図されず、同等の活性を有するホモログを包含することが意図されると理解される。
3.5 ハロゲン化メチル利用の減損
ハロゲン化メチル利用酵素の活性および/またはレベルを減少させることができる。これらには、cmuC、cmuA、orf146、paaE、およびhutIなどのcmu遺伝子クラスタの酵素が含まれる。他の酵素には、細菌の10-ホルミルH4葉酸ヒドロラーゼ、5,10-メチレン-H4葉酸レダクターゼおよびpurU、ならびにハロメタン:二硫化物(bisulfide)/ハロゲン化物イオンメチルトランスフェラーゼなどのコリノイド酵素が含まれる。
遺伝子の名称は生物によって変化し、遺伝子の名称に対する上記の言及は限定的であるとは意図されず、同等の活性を有するホモログを包含することが意図されると理解される。
3.6 MHTを発現する組換え型酵素
本発明者らは、MHT発現細胞として酵母を用いることによってハロゲン化メチルの特に高い収率が得られることを観察した。実施例10を参照されたい。1つの局面において、本発明は、S-アデノシルメチオニン(SAM)依存性ハロゲン化メチルトランスフェラーゼ(MHT)をコードする異種遺伝子を含む組換え型酵母細胞を提供する。酵母において発現させることができるMHTタンパク質の例には、本明細書において他所で考察されているように、バチス・マリチマ、バークホルデリア・フィマツム、シネココッカス・エロンガツス、ブラッシカ・ラパ、ブラッシカ・オレラセア、シロイヌナズナ、シロイヌナズナ、レプトスピリルム、クリプトコッカス・ネオフォルマンス、イネ、オストレオコッカス・タウリ、デクロロモナス・アロマチカ、ウシグソヒトヨタケ、ロビジニタレア・ボフィルマータ、マリカウリス・マリス、フラボバクテリア・バクテリウム、ブドウ、またはハロロドスピラ・ハロフィラ由来のものが含まれる。適した組換え型酵母細胞の例には、本明細書において他所で考察されているように、出芽酵母、ピチア・パストリス、ハンゼヌラ・ポリモルファ、クルイベロミセス・ラクチス、ヤロウイア・リポリチカ、トリコデルマ・リーゼイ、分裂酵母、およびその他が含まれる。酵母を培養および遺伝子操作するための方法は当技術分野において周知である。
3.7 酵母における産生を増加させるためのターゲティングドメインの使用
出芽酵母における異種ハロゲン化メチルトランスフェラーゼ(例えば、バチス・マリチマMCT)の発現によってハロゲン化メチル(例えば、ヨウ化メチル)が産生される。酵素を液胞に指向させるためにペプチドシグナルを用いることによって、収率は有意に増加する。以下の考察を参照されたい。特定の機序に限定されることを意図しないが、産生の増加は、(i) 液胞に細胞のSAMの大部分が隔離されること(Farooqui et al., 1983, Studies on compartmentation of S-adenosyl-L-methionine in Saccharomyces cerevisiae and isolated rat hepatocytes. Biochim Biophys Acta 757:342-51);および(ii) ハロゲン化物イオンが液胞に隔離されること(Wada et al., 1994, Chemiosmotic coupling of ion transport in the yeast vacuole: its role in acidification inside organelles. J Bioenerg Biomembr 26: 631-7)に起因すると考えられる。
1つのペプチドシグナルは、ペンダントタンパク質を酵母液胞に指向させることが知られているカルボキシペプチダーゼYからのN末端ペプチドドメインであるが、他のターゲティングペプチドを用いてもよい。例えば、その全てが参照により本明細書に組み入れられる、Valls et al., 1990, Yeast carboxypeptidase Y vacuolar targeting signal is defined by four propeptide amino acids. J Cell Biol 111:361-8;およびTague et al.,1987, "The Plant Vacuolar Protein, Phytohemagglutinin, Is Transported to the Vacuole of Transgenic Yeast", J. Cell Biology, 105: 1971-1979;Tague et al., 1990, "A Short Domain of the Plant Vacuolar Protein Phytohemagglutinin Targets Invertase to the Yeast Vacuole", The Plant Cell, 2:533-546、および米国特許第6054637号を参照されたい。
説明のためであって限定ではない1つのアプローチにおいて、B.マリチマの塩化メチルトランスフェラーゼ(MCT)のコード配列を合成して、tet-抑制性CYCプロモーターの制御の下、高コピーベクターにクローニングする(プラスミドpCM190、Gari et al, 1997, Yeast 13:837-48)。MCTコード配列を、ペンダントタンパク質を酵母液胞に指向させることが知られているカルボキシペプチダーゼYからのN末端ペプチドドメインに融合させる(アミノ酸配列:KAISLQRPLGLDKDVL、Valls et al., 1990, J Cell Biol. 111:361-8)。この発現システムを出芽酵母株W303aに形質転換する。MCT発現ベクターを有する酵母を、凍結保存液(15%グリセロール)からのウラシルドロップアウトプレート上に画線して48時間増殖させる。個々のコロニーを合成完全ウラシルドロップアウト培地2 mLに接種して、30℃で終夜増殖させる。次に、培養物に新鮮な合成完全ウラシルドロップアウト培地100 mLを接種して24時間増殖させる。細胞を遠心沈澱させて、2%グルコースおよび100 mMヨウ化ナトリウム塩を有する新鮮なYP培地において高い細胞密度(OD 50)に濃縮する。この濃縮培養物10 mLを14 mL培養チューブに分注して、ゴム栓によって密封する。培養物を250 rpmで振とうさせながら30℃で増殖させて、ヨウ化メチル産生を明記された間隔でGC-MSによってアッセイする。GC-MSシステムは、モデル6850 Series II Network GCシステム(Agilent)およびモデル5973 Network質量選択システム(Agilent)からなる。オーブンの温度を50℃(1分)から60℃(10℃/分)までプログラムする。培養物のヘッドスペースの100μLをシリンジを備えたゴム栓を通して採取して、GC-MSに手動で注入してヨウ化メチル産生を測定する。
以下に考察されるように(実施例10)、上記の方法を用いて本発明者らは、カルボキシペプチダーゼYペプチドを用いてB.マリチマMHTを出芽酵母株W303a液胞に指向させ、グルコースからのヨウ化メチル産生をアッセイした(図9A)。酵母は、天然供給源の数日という倍加時間と比較して、グルコース上で高い活性(図9B)および正常な増殖速度(およそ90分の倍加時間)を示した。グルコースからのヨウ化メチルの収率は、標準と比較することによって4.5 g/L-日で測定され、これは最善の天然供給源をおよそ10,000倍上回る(図9C)。
より一般的には、代謝プロセスに関与する他の酵素の液胞へのターゲティングを用いて産生を増加させることができることが認識されると考えられる。特に、基質がSAMおよび/またはハロゲン化物である反応からの収率を、そのようなターゲティングによって増加させることができる。例えばエチレンを、SAMを用いる代謝経路によって産生してもよい(例えば、参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,416,250号を参照されたい)。1-アミノシクロプロパン-1カルボン酸(ACC)シンターゼ(Wilson et al., 1993, Apple ripening-related cDNA clone pAP4 confers ethylene-forming ability in transformed Saccharomyces cerevisiae. Plant Physiol. 102:783-8を参照されたい)およびエチレン形成酵素(EFE、McGarvey et al., 1992, Characterization and kinetic parameters of ethylene-forming enzyme from avocado fruit. J Biol Chem. 267(9):5964-7を参照されたい)を発現する酵母(例えば、出芽酵母)において、酵素を液胞にターゲティングすることによって、エチレン産生を増加させることができる。
3.7 組み合わせ
一般的に、本発明のプロセスは、ハロゲン化メチル産生を増加させるために、多数の(例えば、少なくとも2個、時に少なくとも3個、時に少なくとも4個、および時に5個または5個より多い)異なる座で選択または改変された細胞を利用する。細胞は、特定の供給原料に対するその増殖を容易にするために、抗生物質抵抗性を提供するために、およびこれらに類する目的のために、追加の遺伝子改変を有してもよい。いくつかの態様において、異なる目的のために開発された株を、本発明の要求を満たすようにさらに改変してもよい。例えば、He et al., 2006, "A synergistic effect on the production of S-adenosyl-L-methionine in Pichia pastoris by knocking in of S-adenosyl-L-methionine synthase and knocking out of cystathionine-beta synthase" J Biotechnol. 126:519-27を参照されたい。Park et al., 2007, "Characteristics of methionine production by an engineered Corynebacterium glutamicum strain" Metab Eng. 9:327-36は、メチオニン産生を増加させるためのC.グルタミクム(C. glutamicum)株の遺伝子操作を記述した。株は、トレオニンによるホモセリンデヒドロゲナーゼのフィードバック阻害を消失させるために、調節が解除されたhom遺伝子を有し、かつトレオニン合成を消失させるために、thrB遺伝子の欠失を有する。同様に考察されるように、改変された株は、組換え技術の代わりに選択プロセスによって得ることができ、この場合生物を変異誘発させて、メチオニンの過剰産生に関してスクリーニングすることができる。大腸菌および酵母が含まれる多くの生物において、高い産生株が単離されている。例えば、Alvarez-Jacobs et al., 2005, Biotechnology Letters, 12:425-30;Dunyak et al., 1985, 21:182-85;Nakamori et al., 1999, Applied Microbiology and Biotechnology 52:179-85を参照されたい。
説明するためであって限定するためではなく、以下の例示的な組み合わせを用いてもよい。特定の改変を明記しても、それは追加の改変の存在を除外しない。
a)S-アデノシル-メチオニン(SAM)生合成経路を通る流れを増加させるための遺伝子改変および異種MHTの発現。1つの態様において、SAM生合成経路を通る流れは、SAMシンテターゼ(これは異種性であっても、または内因性であってもよい)の発現を増加させることによって増加する。1つの態様において、metK遺伝子またはホモログが過剰発現される。1つの態様において、sam1pおよび/またはsam2p遺伝子またはホモログが過剰発現される。上記の3.1.1章を参照されたい。
b)「SAM」再生経路を通る流れを増加させるための遺伝子改変および異種MHTの発現。1つの態様において、SAM依存性メチラーゼ、メチオニンシンターゼ、S-アデノシル-L-ホモシステインヒドロラーゼ(例えばSAH1)およびN5-メチルテトラヒドロプテロイル-トリグルタメート-ホモシステインメチルトランスフェラーゼ(例えば、MET6)の活性が増加する。上記の3.1.2章を参照されたい。
c)SAM利用経路を通る流れを阻害するための遺伝子改変および異種MHTの発現。1つの態様において、コプロポルフィリノーゲンIIIオキシダーゼ、コプロポルフィリノーゲンIIIオキシダーゼ、S-アデノシルメチオニンデカルボキシラーゼ、シスタチオニンβ-シンテターゼ、リブロース5-リン酸3-エピメラーゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、L-アラニントランスアミナーゼ、3',5'-二リン酸ヌクレオチダーゼ、グリシンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ、またはグリシンヒドロキシメチル-トランスフェラーゼが阻害される。1つの態様において、CYS4、Rpe1、Zwf1、Alt、Met22、Shm 1-m、Shm 2、HEM 13、またはhemF遺伝子が阻害される。上記の3.1.3章を参照されたい。
d)メチオニン生合成を増加させるための遺伝子改変および異種MHTの発現。上記の3.2.1章を参照されたい。
e)スルフェート同化、システイン生合成、および/またはオキサロ酢酸のアスパラギン酸セミアルデヒドへの変換に関与する遺伝子産物の活性を増加させるための遺伝子改変および異種MHTの発現。いくつかの態様において、L-システインシンターゼ(例えば、cysK)、NADPH依存性亜硫酸レダクターゼ(例えば、cysI)、またはアルカンスルホン酸モノオキシゲナーゼ(例えば、ssuD)が過剰発現される。上記の3.2.2章を参照されたい。
f)細胞内ATPレベルを増加させるための遺伝子改変および異種MHTの発現。上記の3.4章を参照されたい。
g)細胞内セリンレベルを増加させるための遺伝子改変および異種MHTの発現。上記の3.2.2章を参照されたい。
h)メチオニン取り込みを増加させるための遺伝子改変および異種MHTの発現。上記の3.2.3章を参照されたい。
i)細胞内ハロゲン化物濃度を増加させるための遺伝子改変および異種MHTの発現。上記の3.3章を参照されたい。
j)ハロゲン化メチルの合成のため以外のハロゲン化物利用を低減させる遺伝子改変および異種MHTの発現。上記の3.5章を参照されたい。
k)a+b、a+c、a+d、a+e、a+f、a+g、a+h、a+i、a+j、b+c、b+d、b+e、b+f、b+g、b+h、b+i、b+j、c+d、c+e、c+f、c+g、c+h、c+i、c+j、d+e、d+f、d+g、d+h、d+i、d+j、e+f、e+g、e+h、e+i、e+j、f+g、f+h、f+i、f+j、g+h、g+i、g+j、h+i、またはh+jなどの(a)〜(j)の組み合わせ。
l)細胞が異種MHTよりむしろ内因性のMHTを発現または過剰発現すること以外は、上記の(a)〜(k)に提示の改変。
3.8 ホモログ、オルソログ、および変種
遺伝子の名称は生物によって変化し、遺伝子の名称に対する上記の言及は限定的であるとは意図されず、同等の活性を有するホモログを包含することが意図されると理解される。その上、方法が活性の過剰発現を必要とする場合、過剰発現されるタンパク質が適切な活性を有して、宿主において発現されうる限り、コードされるタンパク質は、天然に存在する型と同一である必要はない。一定の態様において、本発明には、本明細書において先に記述した公知のタンパク質と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%の同一性を有する酵素的に活性なポリペプチドを用いることが含まれる。
4.組換え技術
遺伝子改変は、遺伝子操作技術、または化学もしくはUV変異誘発およびその後の選択などの古典的な微生物技術を用いて達成されうる。組換えの改変および古典的選択技術の組み合わせを用いて関心対象生物を産生してもよい。組換え技術を用いて、それによって生物内または培養物においてハロゲン化メチルの収率が増加するように、核酸分子を導入、欠失、阻害、または改変することができる。原核細胞および真核細胞の遺伝子操作法は、当技術分野において非常に周知である。したがって、方法をごく簡単に記述する。いくつかの培養および遺伝子操作技術は、例えばその各々が全ての目的に関して参照により本明細書に組み入れられる、
Figure 2011505148
において一般的に開示されている。
研究および工業規模の双方において組換え型細胞によって産生された組換え型タンパク質または産物の発現および採取は周知であり、文献において広く考察されている。工業レベルでの産生では、大きいバイオリアクターを用いてもよい(例えば、
Figure 2011505148
を参照されたい)。
4.1 組換え型遺伝子の発現
ハロゲン化メチル産生に関与する遺伝子の発現、および/または対応する遺伝子産物(mRNAおよび/またはタンパク質)の存在、レベル、および/または活性を達成または増加させることができる。過剰発現は、宿主細胞における遺伝子産物の発現を指示する組換え型構築物を導入することによって、または内因性の遺伝子産物の基礎発現レベルを変更することによって、例えば、その転写を誘導するかもしくは抑制解除することにより、もしくはmRNAおよび/もしくはタンパク質などの遺伝子産物の輸送、安定性、および/もしくは活性を増強することにより、達成されうる。非内因性の核酸配列のコドン最適化も同様に、翻訳効率を増加させることができる。
クローニングされた遺伝子の安定な導入は、例えば複製するベクターにおいてクローニングされた遺伝子を維持することによって、またはクローニングされた遺伝子を産生生物のゲノムに組み入れることによって達成されうる。例には、マルチコピープラスミド、トランスポゾン、ウイルスベクター、またはYACが含まれる。ベクターは、PSC101、BAC、p15a、もしくはColE1(原核細胞)またはARS(酵母)もしくはSV40開始点(真核細胞)を含有しうる。
所望のタンパク質を産生するために用いることができる発現ベクターは、(1)宿主細胞において発現ベクターを維持するための開始点をコードするDNAエレメント;(2)プロモーターなどの転写開始を制御するDNAエレメント;(3)転写ターミネーターなどの転写物のプロセシングを制御するDNAエレメント;および(4)任意で、抗生物質抵抗性などの選択可能なマーカーをコードする遺伝子の、機能的な連結を含みうる。
発現される配列を、所望の原核細胞または真核細胞生物において機能的であるプロモーターの制御下に置くことができる。極めて広く多様なプロモーターが周知であり、特定の応用に応じて用いることができる。誘導性および構成的プロモーターはいずれも本発明によって包含される。誘導性プロモーターには、アラビノース(PBAD);IPTG(PTRC);ハロゲン化物塩(例えば、塩化ナトリウム)、浸透圧、糖、デンプン、セルロース、または光によって誘導されるプロモーターが含まれる。
実施例4において示されるように、細菌においてIPTG誘導性プロモーターを用いるハロゲン化メチル産生は、発現誘導後1〜2.5時間以内にピークレベルまで増加する。
遺伝子の発現は、ネイティブのまたは異種の転写制御エレメントに遺伝子を機能的に連結させることによって増加させることができる。これは、合成オペロン、リボソーム結合部位、転写終止部位等によって行うことができる。様々な原核および真核細胞発現制御配列が当技術分野において公知である。例えば、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、WO 06/069220号を参照されたい。組換え型リボソーム結合部位をコードする配列の例は
Figure 2011505148
である。
生物の翻訳システムにとって好ましくないクローニングされた遺伝子内の任意のコドンを、合成されたタンパク質のアミノ酸配列を変化させることなく好ましいコドンに変化させることによって、組換え型配列を、特定の宿主種におけるタンパク質発現にとって最適化することができる。コドン最適化は、組換え型遺伝子の翻訳を増加させることができる。任意で、遺伝子のDNA配列を、例えば宿主細胞の調節タンパク質によって遺伝子が調節される可能性を回避するために、野生型DNA配列との差を最大限にするように変化させることができる。
4.2 遺伝子の抑制、阻害、または欠失
ハロゲン化メチルの産生、または対応する遺伝子産物(mRNAおよび/またはタンパク質)の存在、レベル、および/もしくは活性を制限する、調節する、または減少させる傾向がある遺伝子の発現を消失または減少させることができる。遺伝子および/または遺伝子産物の発現および/または機能の減少をもたらす遺伝子改変は、遺伝子の完全または部分的な不活化、抑制、欠失、妨害、遮断、またはダウンレギュレーションを通して起こりうる。これは、例えば遺伝子の「ノックアウト」、不活化、変異、欠失、またはアンチセンス技術によって達成されうる。遺伝子のノックアウトは、「TargeTron gene knockout system」(Sigma-Aldrich)などの市販のキットを含む当技術分野において公知の方法を用いて達成されうる。個々の遺伝子ノックアウトを有する大腸菌株は、大腸菌ゲノムプロジェクト(www.genome.wisc.edu)から得ることができる。本発明には、同じ生物における多数のノックアウト、例えば遺伝子2〜6個のノックアウトが含まれる。本発明にはまた、遺伝子の導入、欠失、または改変の任意の組み合わせが含まれる。
5.培養/発酵培地および条件
「培養」および「発酵」という用語は、本明細書において、ハロゲン化メチルが産生される条件(好気性または嫌気性のいずれか)で液体培地におけるMHT発現細胞の培養を指すために互換的に用いられる。ハロゲン化メチルを産生するために用いられる増殖培地は、主として宿主生物に依存すると考えられる。実験または工業の状況において一般的に用いられる、適した増殖条件、多くの原核細胞および真核細胞が公知であり、科学文献において記述されている。例えば、その各々が全ての目的に関して参照により本明細書に組み入れられる、
Figure 2011505148
を参照されたい。培養条件を最適化する方法は、当技術分野において公知の技術を用いて決定されてもよい。
栄養または培養培地には、炭素源、ハロゲン化物源のみならず栄養が含まれると考えられる。培地はまた、例えば1つまたは複数のスルフェート(例えば、硫酸アンモニウム)および/またはチオスルフェートの形で適量の窒素およびイオウ源を含有すべきである。培地はまた、ビタミンB12などのビタミンを含有することができる。大腸菌などの細菌にとって適した1つの培地は、ルリア-ベルターニ(LB)ブロスである。
炭素含有基質は代謝されて、ハロゲン化メチルのメチル部分を供給する。炭素化合物も同様に代謝されて、ハロゲン化メチル産生を駆動するためにエネルギーを提供することができる。基質には、石油および/または天然ガス、選ばれた生物によって代謝されうる形で炭素が存在する炭水化物などの炭素含有化合物が含まれる。炭水化物の例には、単糖類、グルコース、フルクトース、またはスクロースなどの糖、オリゴ糖、デンプンまたはセルロースなどの多糖類、および供給原料の形で提示される一炭素基質またはその混合物が含まれる。二酸化炭素も同様に、特に藻類などの光合成生物を用いる場合には、炭素源として用いることができる。用いることができる一般的な炭素含有原料には、ウッドチップ、野菜、バイオマス、排泄物、動物廃棄物、オートムギ、コムギ、トウモロコシ(例えば、トウモロコシ茎葉)、オオムギ、ミロ、ミレット、コメ、ライムギ、モロコシ、ジャガイモ、テンサイ、タロイモ、キャッサバ、果実、果汁、およびサトウキビが含まれるがこれらに限定されるわけではない。特に有用であるのは、スイッチグラス(パニカム・ビルガツム)、エレファントグラス(ミスカンサス・ギガンテウス(Miscanthus giganteus))、バガス、ポプラ、トウモロコシ茎葉、および他の専用のエネルギー用作物が含まれるがこれらに限定されるわけではない。基質の最適な選び方は、生物の選び方に応じて変化すると考えられる。先に記したように、セルロース系材料を炭素源として用いる場合、エルウィニア、大腸菌、ピチア、クロストリジウム、およびクロコウジカビなどの生物を用いることができる。大腸菌およびサッカロミセスは、デンプンおよびサトウキビを代謝するために用いることができる生物の例である。同様に、藻類(例えば、クロレラおよびプロトテカ)などの光合成生物は、CO2などの炭素源を代謝することができる。Schmid, R. D., 2003, POCKET GUIDE TO BIOTECHNOLOGY AND GENETIC ENGINEERING John Wiley & Sonsを参照されたい。任意でセルロース系原料は、培養物に加える前にブレンドまたは粉砕してもよい。
様々な遺伝子改変に加えて、ハロゲン化メチル産生は、増殖培地の組成を最適にすることによって増加させることができる。記したように、ハロゲン化メチルの収率はまた、ハロゲン化物、メチオニン、SAM、およびSAM生合成における中間体などの1つまたは複数の反応体または前駆体の細胞内濃度を増加させることによって増加しうる。メチオニン、セリン、および/またはハロゲン化物に富む培地の使用は、ハロゲン化メチル産生を増加させうる。一定の態様において、培地におけるメチオニン濃度は約0.5 g/L〜約10 g/Lである。他の態様において、培地中のセリン濃度は約0.5 g/L〜約10 g/Lである。
ハロゲン化物塩の培地への添加は、細胞内ハロゲン化物濃度を増加させうる。ハロゲン化物塩には、ナトリウム、カリウム、マグネシウム等の塩化物、ヨウ化物、または臭化物が含まれる。実施例5において以下に示されるように、ハロゲン化メチル産生はハロゲン化物の原子量と共に増加する。このように一定の状況において、ヨウ化物は、臭化物より良好な収率を与えることができ、次に臭化物は塩化物より良好な収率を与える傾向がある。実施例5において示されるように、ハロゲン化メチル産生は、培地中のハロゲン化物の濃度を調整することによって増加させることができる。培地の最適な浸透圧は、しばしば約0.01〜1 Mであり、しばしば約0.05〜0.3 M、例えば約0.1 Mなどである。選ばれたハロゲン化物塩の最適な濃度は、本開示によって案内される当業者によって経験的に決定されうる。例としてNaClを用いると、本発明は、約0.01〜0.1 M、しばしば約0.05〜0.5 M、例えば約0.1 M、例えば0.085 MなどでNaClを用いることを企図する。ルリア-ベルターニ(LB)ブロス(0.171 M NaCl)などの培地が適している。LBブロスはまた、最大約0.16 Mに作製された様々な対イオンと共に調製することができる。例えば、5 g/L酵母抽出物、10 g/Lトリプトンおよび0.5 g/L NaClのLBブロス調製物に、16.7 g/L NaBrまたは24.4 g/L NaIを補充することができる。
例えばセリンに富む栄養源を提供することによってセリンレベルを増加させることによっても同様に、メチオニン産生の増加が起こりうる。その全体が参照により本明細書に組み入れられる、WO 07/135188を参照されたい。
生物は、ハロゲン化メチル産生の助けとなる条件下で維持または培養されうる。ヘッドスペース比、増殖期、および酸素レベルなどの多くのパラメータがハロゲン化メチル産生に影響を及ぼしうる。
本発明は、生物が静止期または指数(対数)期に存在する培養条件を企図する。静止期はしばしば、ハロゲン化メチル産生にとって適している。同様に、本発明はまた、培養物の好気性および嫌気性増殖の双方を包含する。時に、好気性増殖が適切である。時に、細胞密度を増加させることができ(および栄養物濃度もそれに対応して増加させることができ)、それでもハロゲン化メチル産生に減損を及ぼさない。いくつかの宿主細胞は、撹拌しながら上昇した温度で(例えば、37℃)維持される。1つのアプローチにおいて、固体発酵が用いられる(Mitchell et al., SOLID-STATE FERMENTATION BIOREACTORS, 2006, Springerを参照されたい)。好気性または嫌気性条件は、部分的に生物および株に応じて選択されてもよい。
ヘッドスペースの気体(空気)対液体培養物の体積の比率は、ヘンリーの法則を用いて本発明に従って最適化されうる。最適な比率は、一般的に約0.5:1〜4:1、例えば約2:1であると決定されている。
本発明の方法を用いて産生されたハロゲン化メチルおよび非ハロゲン化有機分子は通常、工業規模で、例えば石油代用物として適したバイオ燃料を産生するために産生される。したがって、S-アデノシルメチオニン(SAM)依存性ハロゲン化メチルトランスフェラーゼ(MHT)を含む生物は、いくつかの態様において、少なくとも10リットル、少なくとも50リットル、少なくとも100リットル、または少なくとも500リットルの液体容量を有するバイオリアクターにおいて培養されてもよい。しばしば、バイオリアクターは、例えば少なくとも1000リットル、少なくとも5,000リットル、または少なくとも10,000リットルの液体容量を有する。しばしば、本発明の培養における培養培地の体積は、少なくとも10リットル、少なくとも25リットル、少なくとも50リットル、少なくとも100リットル、少なくとも500リットル、少なくとも1,000リットル、または少なくとも5,000リットルである。培養は、バッチ発酵として、連続培養バイオリアクターにおいて、または当技術分野において公知の他の方法を用いて行われてもよい。
5.1 酵母およびセルロース分解細菌の共培養
別の局面において、本発明は、単独のまたは主要な炭素源としてセルロース系供給原料を用いて任意の多様な生物または有機産物を産生するための方法を提供する。方法に従って、葉肉セルロース分解細菌(例えば、アクチノタレア・ファーメンタンス)と組換え型酵母(例えば、出芽酵母)とを含む共培養物を調製する。セルロース(例えば、セルロース、微結晶セルロース、Avicel、セルロース系供給原料)は、共培養物に対するエネルギー源として提供される。本明細書においてセルロースについて言及する場合、一定の態様においてヘミセルロースおよび/またはリグニン(他のバイオマス成分)を、セルロースに加えてまたはその代わりに用いてもよいと企図される。しばしば、本明細書において記述されるように、未処理または部分的に処理されたセルロース系供給原料を用いる。次に、セルロースは細菌によって代謝されて、酵母の炭素源として役立つ産物を産生する。このように、組換え型酵母はセルロースを与えた共培養物において代謝プロセスを実行することができる。いくつかの態様において、細菌-酵母共培養物は好気性条件下で維持される。いくつかの態様において、細菌-酵母共培養物は、嫌気性条件下で維持される。
いくつかの態様において、共培養は、共生的共培養である。共生的共培養は、酵母が炭素(すなわち、細菌の代謝老廃物である化合物の形で)に関して細菌に依存し、かつ細菌が毒性の老廃物の代謝に関して酵母に依存する培養である。すなわち、酵母共生体の非存在下での細菌の老廃物の蓄積は、細菌の増殖または生存能を阻害する。このように、例えば(a)セルロースを代謝してエタノールを産生し、かつ(b)エタノールによる増殖阻害に供されるセルロース分解細菌を、エタノールを代謝する酵母との共生的共培養において用いてもよい。別の例として、(a)セルロースを代謝してアセテートを産生し、かつ(b)アセテートによる増殖阻害に供されるセルロース分解細菌を、アセテートを代謝する酵母との共生的共培養において用いてもよい。別の例として、(a)セルロースを代謝してラクテートを産生し、かつ(b)ラクテートによる増殖阻害に供されるセルロース分解細菌を、ラクテートを代謝する酵母との共生的共培養において用いてもよい。これらの例は説明のためであり、本発明を限定しない。その上、本発明の文脈において、「依存性」という用語は、必ずしも絶対的な依存を意味するのではなく、共培養において生物の増殖または生存能がより高いまたは安定であることを意味しうる。共生的な細菌-酵母共培養は、各々の生物が生存に関して他に依存する相互必須(mutually obligatory)の協調的なシステムとして記述されうる。
多数のセルロース分解細菌が、共培養における使用に適している。セルロース分解細菌に関する考察に関しては、例えば、Lynd et al., 2002, Microbial cellulose utilization: fundamentals and biotechnology. Microbiol Mol Biol Rev. 66:506-77を参照されたい。いくつかの態様において、セルロース分解細菌は、セルロモナス属またはアクチノタレア属の種である。説明するためであって限定するためではないが、例示的なセルロース分解細菌には、トリコデルマ・ハルジアナム(Trichoderma harzianum)、トリコデルマ・リーゼイ、セルロモナス・ウダ(Cellulomonas uda)、セルロモナス・フラビゲナ(Cellulomonas flavigena)、セルロモナス・セルロリチカム(Cellulomonas cellulolyticum)、シュードモナス属(Pseudomonas)の種およびサーモモノスポラ属(Thermomonospora)の種が含まれる。セルロースをエタノール、アセテート、またはラクテートに好気的に発酵することができる細菌も同様に、共培養にとって十分に適している。同様に、セルロースをスクシネート、シトレート、ホルメート、またはマレートに好気的に発酵することができる細菌も共培養にとって十分に適している。いくつかの態様において、セルロースをエタノール、アセテート、ラクテート、スクシネート、シトレート、ホルメート、またはマレートに嫌気的に発酵することができる細菌を用いる。セルロース系細菌は、組換えによって改変されてもよい(例えば、薬物抵抗性マーカーを組み入れるために、細胞における合成経路を改変するために等)。いくつかの態様において、セルロース分解細菌は、セルロースの細菌代謝産物による増殖阻害(例えば、エタノール、アセテート、ラクテート、スクシネート、シトレート、ホルメート、またはマレートによる増殖阻害)に基づいて選択される。そのような増殖阻害を示す細菌は共生的共培養にとって特に有用であることが認識されると考えられる。そのような増殖阻害を示すセルロース分解細菌は、科学文献を参照することによって同定されてもよく、または研究室において同定もしくは選択されてもよい。いくつかの態様において、組換え技術は、細菌の特定のタイプまたは株をそのような阻害に対して感受性にするために用いられる。他の望ましい特性には、急速な増殖、好気性または嫌気性条件のいずれかでの増殖能、およびセルロースに由来する炭素のかなりの部分の分泌能(例えば、好気性および嫌気性条件の一方または双方で、少なくとも約20%、好ましくは少なくとも約40%、最も好ましくは少なくとも約50%)が含まれる。いくつかの態様において、細菌は、乳酸桿菌属(Lactobacillus)の種ではない。いくつかの態様において、細菌は、ラクトバシラス・ケフィラノファシエンス(Lactobacillus kefiranofaciens)ではない。
1つの態様において、細菌は、アクチノタレア・ファーメンタンスである。A.ファーメンタンスは、American Type Culture Collection(ATCC 43279)から入手可能であり、これまでセルロモナス・ファーメンタンス(Cellulomonas fermentans)と呼ばれていた(
Figure 2011505148
を参照されたい。同様に
Figure 2011505148
も参照されたい)。A.ファーメンタンスはセルロースを代謝して、アセテートおよびエタノールを産生する。
同様に、多様な酵母の株および種を用いてもよい。1つの態様において、酵母は、出芽酵母(例えば、出芽酵母W303a)である。他の態様において、別の酵母種(例えば、ピチア・パストリス、ハンゼヌラ・ポリモルファ、クルイベロミセス・ラクチス、ヤロウイア・リポリチカ、サッカロミセス、および分裂酵母)が用いられる。
共培養物は、セルロースの細菌代謝産物が、酵母によってエネルギーおよび炭素源として用いられうる限り、セルロース分解細菌および酵母の任意の組み合わせを含んでもよい。1つの態様において、細菌によるセルロースの代謝は、分泌型のアセテートおよび/またはエタノールを産生する。セルロース系細菌の他の最終産物には、分泌型のラクテート、スクシネート、シトレート、マレート、ホルメート、および他の有機分子(典型的には炭素原子1〜6個を有する)が含まれる。
1つの態様において、セルロース系細菌はA.ファーメンタンスであり、かつ酵母は出芽酵母である。
通常、酵母は、組換えによって操作されて、関心対象産物を産生する。例えば、バチス・マリチマのMHTを発現するように出芽酵母を改変してもよい。MHTを発現するように操作された酵母との共培養を用いて、実施例において記述されるようにハロゲン化メチルを産生してもよい。しかし、共培養は他の多くの応用に適用されてもよい。すなわち、いかなる酵母であっても関心対象産物を産生するように組換えによって改変されれば、セルロース源と酵母が該産物を産生するために必要な任意の基質との存在下で、酵母とセルロース系細菌との共培養を用いて該産物を産生することができる。酵母の産物は、薬物、食品、アミノ酸、補助因子、ホルモン、タンパク質、ビタミン、脂質、工業酵素等であってもよい。組換え型酵母によって産生される産物の例には、小分子薬物(例えば、Ro et al., 2006 "Production of the antimalarial drug precursor artemisinic acid in engineered yeast" Nature 440(7086):940-3を参照されたい);石油化学構成要素(petrochemical building block)(例えば、Pirkov et al., 2008, "Ethylene production by metabolic engineering of the yeast Saccharomyces cerevisiae" Metab Eng. 10(5):276-80を参照されたい);商業的または医学的に有用なタンパク質(例えば、Gerngross et al., 2004, "Advances in the production of human therapeutic proteins in yeasts and filamentous fungi" Nat Biotechnol ;22(11):1409-14を参照されたい)が含まれる。例示的な医学的に有用なタンパク質には、インスリン、B型肝炎抗原、デシルジン、レピジュリン(lepidurin)、およびグルカゴンが含まれる。他の例に関しては、Porro et al., 2005, "Recombinant protein production in yeasts" Mol Biotechnol. 31(3):245-59を参照されたい。本発明の共培養において酵母によって産生される可能性がある商業的に価値のある化合物の他の例には、1,4-二酸(コハク酸、フマル酸、およびリンゴ酸);2,5-フランジカルボン酸;3-ヒドロキシプロピオン酸;アスパラギン酸;グルカル酸;グルタミン酸;イタコン酸;レブリン酸;3-ヒドロキシブチロラクトン;グリセロール;ソルビトール;キシリトール/アラビニトール;グルコン酸;乳酸;マロン酸;プロピオン酸;三酸(クエン酸およびアコニット酸);キシロン酸(xylonic acid);アセトイン;フルフラル;レボグルコサン(levoglucosan);リジン;セリン;トレオニン、バリン、およびS-アデノシルメチオニンが含まれるがこれらに限定されるわけではない。なお他には3-グリセロール、3-ヒドロキシプロピオン酸、乳酸、マロン酸、プロピオン酸、セリン;4-アセトイン、アスパラギン酸、フマル酸、3-ヒドロキシブチロラクトン、リンゴ酸、コハク酸、トレオニン;5-アラビニトール、フルフラル、グルタミン酸、イタコン酸、レブリン酸、プロリン、キシリトール、キシロン酸;アコニット酸、クエン酸、および2,5-フランジカルボン酸が含まれるがこれらに限定されるわけではない。Department of Energy Washington D. C.によって出版されたWerpy et al., 2004, 「TOP VALUE ADDED CHEMICALS FROM BIOMASS VOLUME I - RESULTS OF SCREENING FOR POTENTIAL CANDIDATES FROM SUGARS AND SYNTHESIS GAS」を参照されたい。同様に、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、http://www1.に続けてeere.energy.gov/biomass/publications.HtmlのBiomass Document Databaseを参照されたい。所望の産物を産生するように酵母を遺伝子改変する方法は、当技術分野において公知であるか、または開発されてもよい。
1つの局面において、本発明には、酵母細胞によって産生された関心対象産物を収集または採取する段階がさらに含まれる。1つの態様において、関心対象産物は、分子量1000未満を有する小分子化合物である。
典型的におよび最も簡便に、共培養の細菌および酵母成分は液体培養培地において共に増殖する(混合される)。しかし、いくつかの態様において、共培養された生物は、例えば代謝物および他の分子を複数の区画の間に拡散させる透過性の膜によって隔てられた、バイオリアクターの個々の区画において維持されうる。広く多様な適したバイオリアクターが当技術分野において公知である。
添加されうるセルロース、ヘミセルロース、リグニン、バイオマス、供給原料等のほかに、共培養において用いるための培養または増殖培地には、例えば1つまたは複数のスルフェート(硫酸アンモニウムなどの)および/またはチオスルフェートの形での適切な量の窒素およびイオウ源が含まれると考えられる。培地はまた、ビタミンB12などのビタミンを含有しうる。YP培地(Bacto-酵母抽出物(Difco)10 g、Bacto-ペプトン(Difco)20 g、ddH2Oによって900 mLにする)を用いてもよい。培養条件を最適にする方法は、当技術分野において公知の技術を用いて決定されてもよい。例えば、
Figure 2011505148
を参照されたい。
本発明は、細菌がセルロースを代謝し、かつ1つまたは複数の代謝産物を産生し、酵母が細菌の代謝産物を炭素源として用いる、細菌-酵母共培養物を提供する。いくつかの態様において、微生物は、いずれの微生物も他方を圧倒しないように種集団の比較的一定の比率を維持しながら共に増殖するように適合させた。5.1章において以下に記述されるタイプの細菌-酵母共培養物において、本発明者らは典型的には、酵母に対して細菌の100倍過剰量を観察した(1mLあたり、生存酵母細胞およそ100万個に対して生存細菌細胞1億個)。
5.1.1 MHT発現出芽酵母およびアクチノタレア・ファーメンタンスの共培養
酵母におけるヨウ化メチル産生は、工業プロセスとの適合性を含む、既存の構成要素分子に対していくつかの長所を提供する。しかし、農作物由来の砂糖(トウモロコシおよびサトウキビなどの)からのバイオ燃料およびバイオに基づく構成要素の産生は、地球規模の食糧不足の直接的な一因となる可能性がある。これらの問題を緩和するために、ヨウ化メチル(および他のバイオに基づく分子)は、セルロース系供給原料に由来しなければならず、これにはスイッチグラス(パニカム・ビルガツム)およびエレファントグラス(ミスカンサス・ギガンテウス)などの「エネルギー作物」のみならず、トウモロコシ茎葉などの農業廃棄物が含まれる。これらの現実世界のバイオマス源の発酵可能な糖および産物への変換は、微生物消化に対するリグノセルロース系材料の扱いにくさのために問題がある。
本発明者らは、MHT発現酵母(先に記述した)と、葉肉セルロース分解細菌であるアクチノタレア・ファーメンタンスとの共培養を構築した。A.ファーメンタンスは、セルロースを好気的にアセテートおよびエタノールに発酵させて、出芽酵母はこれを炭素源として利用することができる。重要なことは、A.ファーメンタンスの増殖はアセテートおよびエタノールの蓄積により阻害され、これは、共同体における代謝相互依存を作り出し、出芽酵母は炭素に関してA.ファーメンタンスに依存して、A.ファーメンタンスは毒性の廃棄物の代謝に関して出芽酵母に依存する(図9A)。本発明者らは、単独の炭素源としてカルボキシメチルセルロースを含有する培地においてA.ファーメンタンスと共に出芽酵母を接種して、経時的な酵母および細菌のコロニー形成単位(CFU)の変化を測定した。共培養において36時間増殖させた酵母は、106 cuf/mLまで増加するが、セルロース分解パートナーを有しない酵母は、ほとんど増殖を示さない(図9B、左のパネル)。酵母の存在はまた、毒性成分を消費することによって、細菌の増殖速度を増加させる(図9B、右のパネル)。この相互作用は共生関係を証明している。
本発明者らは次に、セルロース供給原料のヨウ化メチルへの共培養変換を試験した。本発明者らは、単独の炭素源として粉砕した乾燥スイッチグラスを含有する培地において、共培養物を低密度で接種した。接種の36時間後、ヨウ化ナトリウムを培地に加えて、ヨウ化メチル産生を誘導した。スイッチグラス、トウモロコシ茎葉、およびポプラを含む様々なセルロース源に対するヨウ化メチルの収率を図9Cに示す。アセテートは、非発酵炭素源の参照として含められ、カルボキシメチルセルロース(CMC)はセルロース標準物質として含められている。スイッチグラスなどのエネルギー作物は、必要な農業的投入量がより少ないこと、畑の辺縁部で増殖すること、または並外れた増殖もしくは遺伝子の扱いやすさ(例えば、ポプラ)を示すことによって、従来の作物に対していくつかの長所を提供する。トウモロコシ(Zea mays)の茎葉などの農業残余物は、別のセルロース炭素源であり、毎年、米国においておよそ200 mgの茎葉が産生される。結果は、ヨウ化メチルが、多様なセルロース炭素源から産生されうることを示している。
このように、本発明は、セルロースを代謝し、かつ1つまたは複数の代謝産物を産生する第一の微生物と、セルロースを代謝せず、かつ異種ハロゲン化メチルトランスフェラーゼタンパク質を発現するように組換えによって改変されている第二の微生物とを共に、セルロースおよびハロゲン化物(例えば、塩素、臭素、およびヨウ素)を含有する培地において、ハロゲン化メチルが産生される条件下で培養する段階を含む、ハロゲン化メチルを産生する方法を提供する。
6.ハロゲン化メチルの収集および精製
ハロゲン化メチルは揮発性であり、液体培養物より上の蒸気の中に逃げる。生産規模では、このことは、必要に応じて行われるハロゲン化メチルの精製に対して、比較的少ない余分のエネルギーしか必要とされないことから、例えば他のバイオ燃料中間体より有利である。1つの態様において、ハロゲン化メチルを、1つまたは複数の非ハロゲン化有機分子へと変換させる前に収集することができる。別の態様において、例えばハロゲン化メチルを産生する生物と同じ生物が同様にハロゲン化メチルを有機分子へと変換する場合には、収集段階は省略される。
培養、ハロゲン化メチルの収集、および/またはハロゲン化メチルからの高分子量化合物(以下)などの有機化合物への変換は、1つのリアクターシステムにおいて行うことができる。化学処理の方法およびバイオリアクターシステムは当技術分野において公知であり、本発明に容易に適合させることができる。説明のためであって限定的ではないが、指針は科学および工学の文献、例えばその各々が参照により本明細書に組み入れられる、
Figure 2011505148
において見いだされる。説明であって限定的ではないが、1つのリアクターシステムを図9に示す。ガス様形状で産生されたハロゲン化メチルを凝縮器(condenser)に移すことによって、揮発性のハロゲン化メチルを、任意の公知の方法によって発酵器から収集することができる。凝縮器において、ハロゲン化メチルを含むガスの温度を低下させることができ、例えばそれによってハロゲン化メチルの液化が起こるが他のガス様成分は液化せず、容易な精製が得られる。触媒による縮合または他の反応がリアクターにおいて起こりうる。縮合反応の副産物として生成されたハロゲン化物塩を、例えば、発酵器に戻すことによって再利用することができる。
ガス相の産生は、例えば、産生されたハロゲン化メチル分子の数を決定するガスクロマトグラフィー質量分析によって容易に測定されうる。産生されたハロゲン化メチルの全量は、ヘンリーの法則を用いて計算することができる。
7.ハロゲン化メチルの有機分子への処理
ハロゲン化メチルを、アルコール、アルカン(エタン-オクタン、またはより長いアルカン)、エーテル、アルデヒド、アルケン、オレフィン、およびシリコンポリマーなどの有機産物へと変換することができる。次にこれらの産物を、時に「バイオ燃料」と呼ばれる非常に広範囲の石油化学製品を作出するために用いることができる。より複雑な有機化合物の産生において、ハロゲン化メチルを含むハロゲン化アルキルを用いることは、従来の石油化学工業において公知である。例えば、Osterwalder and Stark, 2007, Direct coupling of bromine-mediated methane activation and carbon-deposit gasification, Chemphyschem 8: 297-303;Osterwalder and Stark, 2007, "Production of saturated C2 to C5 hydrocarbons" 欧州特許出願第EP 1 837 320号を参照されたい。
変換は、生物学的変換(例えば、1つまたは複数の酵素の作用を通してハロゲン化メチルを非ハロゲン化有機分子に変化することができる生物学的有機体を用いることによって)を含む多様な公知の方法によって達成されうる。必要に応じて、変換は、ハロゲン化メチルを産生する生物が維持されているものと同じリアクターまたは容器において行われうる。変換は、ハロゲン化メチルを産生する生物と同じ生物によって、または同じリアクターに存在するもしくは異なる区画もしくはリアクターに分離されている異なる生物によって、行われうる。生物は、非改変生物より早い速度または大きい程度でハロゲン化メチルを産生または変換(または産生および変換の両方)するように改変されうる。変換が、ハロゲン化メチルを産生する生物と同じ生物によって達成される場合、ハロゲン化メチルの収集を任意で省略することができる。産生および変換はいずれも、任意で同じ容器またはリアクターにおいて行うことができる。
ハロゲン化メチルを、化学触媒を用いることによって、様々な有機分子へと変換することができる。基質の選び方(用いられる化学触媒および/またはハロゲン化メチル)のみならず、温度、(分)圧、および触媒の前処置などの異なる変数の調整に応じて、様々な有機産物を得ることができる。例えば、金属酸化物触媒を用いることによって、高級アルカンを産生することができる。AlBr3触媒を用いることによって、プロパンの産生が起こりうる。望ましい産物がアルコール、エーテル、またはアルデヒドである場合、望ましい官能基(すなわち、アルコール、エーテル、またはアルデヒド)を産生するようにその選択性に基づいて選択される特定の金属酸化物の上に、ハロゲン化メチルを通過させることができる。望ましい産物の選択性が、モノハロゲン化アルキルと金属酸化物との反応中に存在する水の量によって影響を受ける場合、アルキルモノブロミド原料に水を適切なレベルまで添加することができる。
ゼオライト触媒を用いることによってオレフィンの産生を得ることができる。ゼオライトの例には、アミサイト(Amicite)、方沸石、バレル沸石(Barrerite)、ベルバーガイト(Bellbergite)、ビキタイト(Bikitaite)、ボグザイト(Boggsite)、ブリュースター沸石(Brewsterite)、菱沸石、斜プチロル沸石(Clinoptilolite)、コウルス沸石(Cowlesite)、ダキアルディ沸石(Dachiardite)、エディントン沸石(Edingtonite)、剥沸石(Epistilbite)、エリオン沸石(Erionite)、フォージャサイト(Faujasite)、フェリエ沸石(Ferrierite)、ガロン沸石(Garronite)、ギスモンド沸石(Gismondine)、グメリン沸石(Gmelinite)、ゴビンス沸石(Gobbinsite)、ゴナルド沸石(Gonnardite)、グースクリーカイト(Goosecreekite)、重十字沸石(Harmotome)、ヘルシェライト(Herschelite)、輝沸石(Heulandite)、濁沸石(Laumontite)、レビ沸石(Levyne)、マリコパ石(Maricopaite)、マザイト(Mazzite)、メルリーノ沸石(Merlinoite)、中沸石、モンテソンマ沸石(Montesommaite)、モルデン沸石、ソーダ沸石、オフレット沸石(Offretite)、パラナトロライト(Paranatrolite)、ポーリング沸石(Paulingite)、ペンタシル(Pentasil)、ペルリアライト(Perlialite)、フィリップサイト、ポルサイト、スコレス沸石、ソーダダキアルディ沸石(Sodium Dachiardite)、ステラ沸石(Stellerite)、束沸石、テトラソーダ沸石(Tetranatrolite)、トムソン沸石(Thomsonite)、チェルニカイト(Tschernichite)、ワイラケ沸石(Wairakite)、灰重十字沸石、ウィルヘンダーソン沸石(Willhendersonite)、および湯河原沸石(Yugawaralite)などの天然に存在するゼオライトが含まれる。合成ゼオライトも同様に用いることができる。ハロゲン化メチルから生成するためのゼオライトの使用は、当技術分野において周知である。エテン、プロペンおよびブテンなどのアルケンのみならず、エチルベンゼンおよび高級芳香族化合物を含む炭化水素型の産物を産生するためにゼオライトを用いることを考察する、いずれもその全体が参照により本明細書に組み入れられる、例えばSvelle et al., 2006, Journal of Catalysis, 241:243-54、およびMillar et al., 1995、米国特許第5,397,560号を参照されたい。
有機分子の商業的製造における有用な中間体であるほかに、ハロゲン化メチルは、例えばブチルゴムの製造および石油精製における溶媒として、有機化学におけるメチル化剤および/またはハロゲン化剤として、油脂、油、および樹脂の抽出剤として、ポリスチレンフォーム生産における噴射剤および吹きつけ剤として、局所麻酔剤として、薬物製造における中間体として、低温重合における触媒担体として、温度測定および恒温装置の液体として、ならびに除草剤としての様々な他の用途を有する。
8.実施例
以下の実施例は、説明する目的に限られ、限定的であるとは意図されない。
実施例1:大腸菌におけるバチス・マリチマMHT cDNAの発現
バチス・マリチマMHT cDNA(Genbankアクセッション番号AF109128またはAF084829)を人工的に合成して、発現ベクターpTRC99aにクローニングした。
IPTG誘導性プロモーターの制御下にバチス・マリチマMHTをコードする発現構築物を含む得られた大腸菌(株DH10B)を「大腸菌-MHTBatis」株と呼ぶ。
実施例2:ハロゲン化メチル産生の測定
ハロゲン化メチル産生は、ガスクロマトグラフィーによって測定されうる。以下に記述される実験において、Agilentガスクロマトグラフィー/質量分析(GC/MS)システムを用いた。たいていの場合「AIR.U」チューンファイルは、電離電圧1341を用いる。いくつかの実験において、電離電圧約1250を用いた。溶媒の遅れを0に設定して、スキャンパラメータを15〜100 MWに設定した。注入口およびカラムを50℃にプリセットした。試験される試料を数秒間振とうさせることによって混合した。ヘッドスペースの気体100μLを気密性のシリンジによって抽出した。試料ガスをGCMS注入口に手動で注入した。GCMSプログラムを以下の設定で開始した:50℃で1:00;10℃/分で70℃までのランプ(試料は典型的には〜52℃で使用可能であった);70℃で1:00。次にカラムを洗浄した(240℃までの2分間のランプ)。試料のピークは、50 MW(-0.3、+0.7)に対応するGCピークを抽出することによって同定された。このピークを積分して「GC 50MW」データを産生した。
実施例3:バチス・マリチマハロゲン化メチルトランスフェラーゼを発現する組換え型大腸菌によるハロゲン化メチル産生
大腸菌(株DH10B、BL21、またはMC1061)およびサルモネラ(SL1344)を、実施例1において記述されるように、バチス・マリチマ由来のコドン最適化塩化メチルトランスフェラーゼ遺伝子MCTをコードするプラスミドによって形質転換した。1 mM IPTGを有するLB培地10 mLを、16 mL培養チューブにおいて平板培養細胞の1つのコロニーと共に接種した。チューブをパラフィルムおよびアルミホイルでゴムバンドで締めて密封した。培養物を振とうさせながら37℃で4〜22時間インキュベートして、ハロゲン化メチル産生を測定した。株の各々が塩化メチルを産生した。
加えて、結果は、非常に再現性がよいことが見いだされた。大腸菌(株DH10B)における1つのバチス・マリチマMHT酵素の異なるクローン5個を用いた繰り返し試験によって、各々、ハロゲン化メチル産生の平均値の約12%の標準偏差を有する塩化メチル産生の結果が得られた。
実施例4:他のIPTG誘導構築物について認められる誘導曲線に従うハロゲン化メチルの産生
実施例1において記述されたバチス・マリチマ由来のコドン最適化塩化メチルトランスフェラーゼ遺伝子MCTをコードするプラスミドによって形質転換された大腸菌(株DH10B)を、誘導物質(IPTG)の存在下でインキュベートした。図1において示されるように、IPTGレベルの増加によって、塩化メチル産生の増加が起こった。
図2において示されるように、ハロゲン化メチル産生は、誘導後約1〜2.5時間まで誘導培地において時間と共に直線的に増加した。
図3において示されるように、静止期の細胞は、増殖期の細胞より多くのハロゲン化メチルを産生した。培養の密度を人工的に倍加させても、栄養物の濃度が増加しなければハロゲン化メチルの産生は増加しなかった。
ハロゲン化メチル産生を好気性培養条件と嫌気性培養条件の間で比較した。好気性条件によって、ハロゲン化メチル培養物のより高いレベルが得られた。
実施例5:培養培地における塩濃度の効果
大腸菌-MHTBatis細胞を、NaCl濃度を多様にした改変ルリア-ベルターニ(LB)培地において増殖させた。通常のLB培地は、5 g/L酵母抽出物、10 g/Lトリプトン、10 g/L NaCl(0.171 M NaCl)をpH 7で含有する。LBおよび0.85または0.017 M NaClを含有する改変LBにおける塩化メチル産生を試験した。結果を図4に要約する。0.085 M NaClは最善の結果を生じた。しかし、正常なLBはほぼ最適であった。
臭素またはヨウ素対イオンを有する改変ルリア-ベルターニ培地は、0.16 Mであり、表3において示されるように作出した。
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実施例6:異なるハロゲン化物の効果
異なるハロゲン化物塩を用いてハロゲン化メチル産生を比較するために、標準化アッセイを考案した。LB 20 mLを平板培養細胞の1つのコロニーと共に接種して、振とうさせながら37℃で約10〜14時間インキュベートした。細胞を沈降させて、LBに浮遊させた。等量のアリコートをIPTGと共にLB、LB-Br、またはLB-I培地 10 mLに加えて、1.5時間インキュベートした。ヘッドスペースの気体100μLを採取して、実施例2と同様に存在するハロゲン化メチルの量を測定した。
図5において示されるように、ハロゲン化物の分子量が大きくなればなるほどハロゲン化メチルの収率はより高くなり、ヨウ素イオンは最高の収率を与え、臭素イオンおよび塩素イオンの順であった。ヘンリーの法則を用いて、産生された総ガス(培養物に溶解してヘッドスペースに存在する)を計算したところ、ヨウ化メチルの産生速度は、約40(具体的に、43)mg/L/日であると計算された。
実施例7:異種MHTを発現し、かつ大腸菌metKを過剰発現する大腸菌細胞におけるハロゲン化メチル産生
一定のアクセサリータンパク質の過剰発現によるハロゲン化メチル産生に及ぼす効果を試験した。大腸菌-MHTBatis細胞株を、大腸菌metK、大腸菌clcA、または大腸菌vgb遺伝子をコードするプラスミドによって形質転換した。細胞を培養して、塩化メチル産生を測定した。図6において示されるように、metKの過剰発現は、塩化メチルの収率を改善した。用いた条件下で、vgbおよびclcAの発現は全般的な毒性を引き起こした。
実施例8:大腸菌における異種MHT発現の効果
様々な生物からのハロゲン化メチルトランスフェラーゼ遺伝子19個をコドン最適化して、大腸菌に導入した。臭化メチルおよびヨウ化メチルの産生を各々に関して決定した。表5において示されるように、遺伝子は、バチス・マリチマ、バークホルデリア・フィマツムSTM815、シネココッカス・エロンガツスPCC6301、チンゲンサイ;ブラッシカ・オレラセアTM1、ブラッシカ・オレラセアTM2、シロイヌナズナTM1;シロイヌナズナTM2;レプトスピリルム属の種グループII UBA;クリプトコッカス・ネオフォルマンス変種ネオフォルマンスJEC21;イネ(ジャポニカ栽培品種グループ);オストレオコッカス・タウリ;デクロロモナス・アロマチカRCB;ウシグソヒトヨタケ岡山;ロビジニタレア・ボフィルマータHTCC2501;マリカウリス・マリスMCS10;フラボバクテリア・バクテリウムBBFL7;ブドウ;およびハロロドスピラ・ハロフィラSL1に由来した。MHT配列を表4に示す。表5は、バチス・マリチマタンパク質とのアミノ酸同一性レベルを示す。
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細胞を以下のように培養した。
各々の株に関して1つのコロニーを採取して、30 mLガラス試験管においてLBミラー20 mL中で通気しながら(キャップをゆるめて)37℃および250 rpmで振とうさせながら終夜(10〜14時間)増殖させた。培養物をスイングバケット遠心器において3000×gで5分間遠心沈澱させた。細胞を、100μM IPTG誘導物質を含有する適切な培地(10 g/Lトリプトン、5 g/L酵母抽出物、165 mM NaX[式中X=Cl、Br、I])20 mLに浮遊させた。細胞をゴム栓およびパラフィルムによって密封して250 rpmで振とうさせながら37℃で1.5時間増殖させた。培養物をGC/MSに供して、ヘッドスペースの気体100μLを採取して、カラムに充填した。方法の実施はVOIGT.mであった。適切な質量(MeCl、MeBr、MeI)に関する計数を報告した。細胞は常に、30μg/mLクロラムフェニコールの存在下で増殖させた。
ハロゲン化メチル産生を先の実施例において記述されるように測定した。結果を図7に要約する。B.マリチマトランスフェラーゼは、最善の臭化メチル産生を与えることが見いだされたが、B.フィマツムトランスフェラーゼは、細菌において最善の臭化メチル産生を与えた。C.ネオフォルマンスJEC21は、最善の臭化メチルおよびヨウ化メチル産生を与えた。レプトスピリルムは、最善のヨウ化メチル産生を与えた。イネ、O.タウリ、D.アロマチカ、およびウシグソヒトヨタケからの酵素は、ヨウ化メチル産生に関して有意な特異性を示した。B.マリチマ、チンゲンサイ、およびB.オレラセアは、臭化メチル産生に関して有意な特異性を示す。表5における酵素RB、MM、AT-2、FB、VV、およびHHは、有意でない活性を示した。
実施例9A:新規ハロゲン化メチルトランスフェラーゼの同定
MHT活性を有するタンパク質(この活性を有することがこれまで知られていないタンパク質を含む)は、バチス・マリチマのMHTなどの公知のMHTと配列同一性を有するタンパク質に関するBLASTタンパク質-タンパク質検索を通して同定された。バチス・マリチマMHT配列とバークホルデリア・フィマツムMHT配列との間の29%の同一性に基づいて、〜28%の同一性というカットオフを割り当てた。各々の同定された配列をデータベースに対して再度BLASTに供して、新しい一覧を生成した。追加の配列が見いだされなくなるまでこれを繰り返した。表6は、これまでMHT活性を有すると認識されていなかったタンパク質を含む、MHT活性を有すると同定されている配列(および対応するGenBankアクセッション番号)を記載する。新たに同定されたタンパク質の多くはチオプリンs-メチルトランスフェラーゼである。
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上記の配列をコードするコドン最適化核酸を合成して、大腸菌、出芽酵母、および他の宿主細胞において活性である発現ベクターに挿入する。細胞を炭素およびハロゲン化物の存在下、かつハロゲン化メチルトランスフェラーゼが発現され、ハロゲン化メチルが産生される条件下で培養する。ハロゲン化メチルは任意で収集されて、非ハロゲン化有機分子へと変換される。
実施例9B:新規ハロゲン化メチルトランスフェラーゼの同定
実施例9Aにおいて記述されたように、組換え型宿主において高い活性を有するMHTをスクリーニングするために、本発明者らは、NCBI配列データベースから全ての推定のMHTを合成して、大腸菌においてハロゲン化メチル産生をアッセイした。本発明者らは最初に、公知のMHTと類似性を有する遺伝子89個の自己一貫した組(self-consistent set)を同定した
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。ライブラリは、顕著な程度の配列多様性を含有し、配列間のアミノ酸同一性の平均値は26%であった。ライブラリには、推定の、仮説上の、および誤注釈された遺伝子が含まれるのみならず、特徴付けされていない生物および環境試料からの遺伝子が含まれる。これらの遺伝子を、大腸菌および酵母の発現に関してコンピューターによってコドン最適化して、自動全遺伝子DNA合成を用いて構築した。これは、情報に基づくクローニングの例であり、この場合供給源となる生物と接触することなく、遺伝子データをデータベースから検索して、遺伝子を化学合成して、機能をアッセイした。
適切なハロゲン化物塩を増殖培地に添加することによって、ハロゲン化メチル活性を3つのイオン(塩素、臭素、およびヨウ素)に関してアッセイした。ハロゲン化メチル産生は、GC-MS(補足情報)を用いてヘッドスペースの気体を分析することによって試料採取した。本発明者らは、各々のイオンに関して活性の広い分布を見いだし、遺伝子の51%が塩素に対して活性を示し、遺伝子の85%が臭素に対して活性を示し、および遺伝子の69%がヨウ素に対して活性を示した(図10A)。特に、塩性植物であるバチス・マリチマのMHTは、各々のイオンに関して全ての遺伝子の中で最高の活性を示した。いくつかの遺伝子が所定のイオンに関して独自の特異性を示し(図10B)、この現象はまた、生物レベルでも観察されている(Rhew et al., 2003、前記)。ヨウ化メチルの最高の収率は、臭化メチルより約10倍高く、臭化メチルは塩化メチルより10倍高い。これは、これらの酵素について測定されたKMと一貫する:I-(8.5 mM)、Br-(18.5 mM)、およびCl-(155 mM)(Attieh et al., 1995、前記、Ni and Hager, 1999、前記)。
実施例10:出芽酵母におけるB.マリチマMHTの発現
本発明者らは、酵母である出芽酵母にB.マリチマMHT遺伝子を移入した(図11A)。真核細胞宿主において代謝を操作することの1つの長所は、酵素機能にとってより都合がよい環境である可能性がある特定の細胞区画に遺伝子産物を指向させることができることである。本発明者らは、B.マリチマMHTを酵母液胞にターゲティングすると、ヨウ化メチル収率を増加させることができるであろうという仮説を立てた:SAMの大部分は液胞に隔離されており(Farooqui et al., 1983, "Studies on compartmentation of S-adenosyl-L-methionine in Saccharomyces cerevisiae and isolated rat hepatocytes," Biochim Biophys Acta 757:342-51)、塩化物イオンも同様にそこに隔離されている(Wada and Anraku, 1994 "Chemiosmotic coupling of ion transport in the yeast vacuole: its role in acidification inside organelles," J Bioenerg Biomembr 26: 631-7)。本発明者らは、B.マリチマMHTを、先に記述したように、カルボキシペプチダーゼYからのアミノ酸16個のN末端タグを用いて酵母液胞にターゲティングした。
酵母は、グルコースまたはスクロースから高い産生速度(図11Bおよび11C)および正常な増殖速度を示した。グルコースからのヨウ化メチルの収率は、4.5 g/L-日で測定され、これは大腸菌から得られた値より10倍高く、最善の天然供給源に対しておよそ12,000倍高い(図11C)。速度に加えて、グルコースのヨウ化メチルへの炭素変換効率は、プロセスの実行可能性を決定するために重要なパラメータである。酵母に関して、本発明者らは、以下の平衡式からヨウ化メチルの最高理論的収率を0.66(モル画分)として決定した。
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グルコースからの最大炭素放出効率は、グルコースからエタノールの最大効率と同一である。グルコースのヨウ化メチルへの測定された炭素変換効率は、2.5%であり、炭素の流れをSAMに再度向けることによって収率を改善する余地があることを示している。
過剰産生された代謝物の毒性効果に対する宿主生物の応答は、統合された工業プロセスの開発にとって重要である。ハロゲン化メチルは、ssDNAおよびRNAにおいて細胞障害性病変を引き起こすことが知られているSN2メチル化物質である。本発明者らは、酵母が、ヨウ化メチルの有害なメチル化効果に対して高レベルまで抵抗性であることを見いだした(>5 g/L、図11D)。発酵は好気性であり、ヨウ化メチルは大きいヘンリー定数を有することから(Moore et al., 1995, Chemosphere 30:1183-91)、発酵器の排ガスからヨウ化メチルを回収することができる。DNA修復遺伝子を欠損する変異体株(RAD50ΔSymington et al., 2002, Microbiol Mol Biol Rev 66:630-70)は、ヨウ化メチルに対する感受性の増加を示し、細胞毒性におけるメチル化ストレスの役割を確認した。
実施例11:液胞標的化MHTによるヨウ化メチル産生
本発明者らは、酵母のカルボキシペプチダーゼYからのアミノ酸16個の液胞ターゲティングタグ(KAISLQRPLGLDKDVL)をB.マリチマMCTのN末端に融合させて、ベクターpCM190から酵素を発現させた。ヨウ化メチル産生アッセイにより、液胞に対するMCTのターゲティングによって、産生速度の50%の増加が起こることが示された(図12)。本発明者らは次に、機能的な液胞を形成することができないVPS33Δバックグラウンドにおいて、サイトゾルおよび液胞標的化酵素を発現させた。産生速度の差はVPS33D株において消失し、このことは完全に形成された液胞に対するMCTターゲティングが、ヨウ化メチル形成速度を増強するために必要であることを示している。
実施例12:材料および方法
この実施例は、先に考察した実施例において用いられた材料および方法を記述する。
株およびプラスミド
クローニングは、大腸菌TOP10細胞(Invitrogen)における標準的な技法を用いて行われた。プライマーを以下に記載する。MHTコード領域を、クロラムフェニコール抵抗性に関する遺伝子を有するpTRC99a誘導性発現ベクターにおいてDNA 2.0(Menlo Park, CA)によって合成した。構築物を、ハロゲン化メチル産生アッセイのためにDH10B株に形質転換した。酵母の発現に関して、B.マリチマMHTコード領域をベクターpCM190にクローニングした。
クローニングは、大腸菌TOP10細胞(Invitrogen)において標準的な技法を用いて行った。B. マリチマMCTコード領域をDNA 2.0(Menlo Park, CA)によって合成して、製造元の説明書に従って、PfuUltra II(Stratagene)によって明記されたプライマーを用いて増幅した。PCR産物を、製造元の説明書に従ってZymo Gel抽出キットを用いて精製した。精製された発現ベクター(pCM190)およびコード領域インサートを制限酵素NotIおよびPstIによって37℃で終夜消化して、製造元の説明書に従ってPromega Wizard SVゲルキットを用いて、1%アガロースゲルにおいてゲル精製して抽出した。ベクターおよびインサートを定量して、T4リガーゼ(Invitrogen)によって室温で15分間ライゲーションして(ベクター10 fmol対インサート30 fmol)、化学的にコンピテントな大腸菌TOP10細胞(Invitrogen)に形質転換した。形質転換体をスクリーニングして、クローニングを確認するために、明記されたプライマーを用いてプラスミドをシークエンシングした。
構築物を標準的な酢酸リチウム技術を用いて出芽酵母W303aバックグラウンドに形質転換して、選択培地に平板培養した。簡単に説明すると、コンピテントW303a細胞を、水およびTris-EDTA緩衝液における100 mM酢酸リチウムによる連続洗浄によって調製した。プラスミド1□gを、PEG 4000 300□Lおよび担体として煮沸サケ精子DNA 5□gと共にコンピテント細胞50□Lと共に30℃で30分間インキュベートした。次に細胞に42℃で20分間熱ショックを与えた。細胞を遠心沈降させて、水100□Lに浮遊させて、合成完全ウラシルドロップアウトプレートにおいて平板培養した。プレートを30℃で48時間インキュベートして、陽性の形質転換体をウラシルドロップアウトプレート上に画線することによって確認した。
培地および増殖条件
MHT発現ベクターを有する細菌を、新しく画線したプレートから接種して、終夜増殖させた。細胞を、1 mM IPTGおよび100 mMの適切なハロゲン化ナトリウム塩を含有する培地に100倍希釈した。培養チューブをゴム栓で密封して37℃で3時間増殖させた。MHT発現ベクターを有する酵母を、凍結保存液(15%グリセロール)からウラシルドロップアウトプレート上に画線して、48時間増殖させた。個々のコロニーを合成完全ウラシルドロップアウトプレート2 mLに接種して、30℃で終夜増殖させた。培養物を次に新鮮な合成完全ウラシルドロップアウト培地100 mLに接種して、24時間増殖させた。細胞を遠心沈降させて、2%グルコースおよび100 mMヨウ化ナトリウム塩を有する新鮮なYP培地に高い細胞密度(OD 50)まで濃縮した。この濃縮培養物10 mLを14 mL培養チューブに分注してゴム栓によって密封した。培養物を250 rpmで振とうさせながら30℃で増殖させた。
ガスクロマトグラフィー-質量分析
GC-MSシステムは、モデル6850 Series II Network GCシステム(Agilent)およびモデル5973 Network質量選択システム(Agilent)からなった。オーブンの温度を50℃(1分)から70℃(10℃/分)までプログラムした。培養物のヘッドスペースの100□Lをシリンジを備えたゴム栓を通して採取して、GC-MSに手動で注入した。試料は、保持時間が1.50分であり分子量142である市販のヨウ化メチル(Sigma)との比較によって、ヨウ化メチルであると確認された。ヨウ化メチル産生を、YPDにおける市販のヨウ化メチルの標準曲線と比較した。標準物質を、2%グルコースを加えたYP培地10 mLにおいて0.1 g/L、0.5 g/L、1.0 g/L、および10 g/Lとして調製し、14 mL培養チューブに分注して、ゴム栓によって密封した。標準物質を30℃で1時間インキュベートして、ヘッドスペースにおけるハロゲン化メチルを上記のように測定した。ヘッドスペースの計数をヨウ化メチルに関連させるために標準曲線をデータに適合させた。
ヨウ化メチルの毒性アッセイ
個々のコロニーを2%グルコースを有するYP培地に接種して、終夜増殖させた。培養物をOD600が0.05となるまで希釈して、ヨウ化メチルを明記された量加えた。培養物を250 rpmで振とうさせながら30℃で24時間増殖させた。YP培地をブランクとして用いてOD600を分光法によって測定した。各データ点は、1試料あたり3個ずつ行った。RAD50Δ変異体は、サッカロミセスゲノム欠失プロジェクト(Invitrogen)から得た。
グルコースのヨウ化メチルへの変換効率
消費されたグルコース1 gあたりに産生された高エネルギー炭素のグラム数として効率を測定した。ヨウ化メチル産生を、培養物のヘッドスペースをGC-MSによって測定して、液相におけるヨウ化メチルの画分を標準曲線を用いて計算した。高エネルギー炭素(-CH3)のグラム数を、他の炭化水素産生技術との比較を与えるために、ハロゲン化物イオンの分子量を差し引くことによって計算する。消費されたグルコース量は、既定の時間(90分)の前後での増殖培地におけるグルコースを、製造元の説明書に従って、ヘキソキナーゼキット(Sigma)によって測定することによって計算して、標準物質グルコース曲線を用いて定量した。
累積ヨウ化メチル産生アッセイ
長時間(>2時間)のヨウ化メチル産生を、先に記述したように培養物を誘導する段階、ヨウ化メチルを1時間でアッセイする段階、および産物の抽出を模倣するために培養物を換気する段階によって測定した。次に、培養物を再度密封して、換気されたヨウ化メチルの量を決定するために、ヨウ化メチルを再度測定した。培養物を再度1時間増殖させて、測定して、換気した。毎時間の産生を合計することによって、データを本文において示す。
セルロース系原料における増殖およびヨウ化メチル産生
アクチノタレア・ファーメンタンスをATCC(43279)から得た。A.ファーメンタンスおよび出芽酵母細胞を、2%グルコースを加えたYP培地(出芽酵母用)または2%グルコースを加えたBH培地(A.ファーメンタンス用)のいずれかに接種して、終夜増殖させた。培養物を、単独の炭素源として20 g/Lセルロース系原料を有するYP培地50 mLにおいてOD600=0.05となるように希釈した。トウモロコシ茎葉およびポプラを、1 HP、1000 Wモーターを有する市販のブレンダーを用いて粉砕した。バガスを適切な乾燥重量に分注した後、温水によって3回洗浄して、土および残留糖を除去した。培養物を250 rpmで撹拌しながら30℃で36時間インキュベートした。培養物9 mLアリコートを、1 M塩化ナトリウム1 mLを有する14 mLチューブに入れて、ゴム栓によって密封した。ヘッドスペースの試料を、上記のようにGC-MS産生に関してアッセイした。A.ファーメンタンスおよび出芽酵母を以下に記述されるように定量した。
酵母および細菌の定量
出芽酵母およびA.ファーメンタンスを、選択培地に平板培養することによってセルロース系原料において増殖させた培養物から定量した。培養物を滅菌水に希釈して、100μLをアンピシリンを加えたYPDアガー(出芽酵母を定量するため)、または脳-心臓アガー(A.ファーメンタンスを定量するため)のいずれかにおいて平板培養した。プレートを30℃で48時間(YPDに関して)または16時間(BHに関して)のいずれかでインキュベートした。コロニーを手動で計数して、少なくとも4枚のプレートからの計数を平均した。スイッチグラスおよびトウモロコシ茎葉の増殖培養物において、いくつかの同定されないバックグラウンド培養物が出現したが、A.ファーメンタンスと識別可能な形態を示した。

大腸菌(Invitrogen TOP10)
[F- mcrA (mrr-hsdRMS-mcrBC) 80lacZM15 lacX74 recA1 ara139 (ara-leu)7697 galU galK rpsL (StrR) endA1 nupG]
出芽酵母W303a
(MATa leu2-3,112 trp1-1 can1-100 ura3-1 ade2-1 his3-11,15)
A.ファーメンタンス(ATCC 43279)
上記の実施例は、説明的であるに過ぎず、本発明の起こりうる全ての態様、出願、または改変の網羅的な一覧であることを意味しない。このように、本発明の記述の方法およびシステムの様々な改変および変更が当業者に明らかとなるであろうが、それらも本発明の範囲および趣旨に含まれる。本発明を、特定の態様に関連して記述してきたが、本発明は、請求される本発明が、そのような特定の態様に不当に限定されるべきではないと理解されるべきである。
先に引用した全ての参考文献および刊行物の開示は、各々が個々に参照により組み入れられるのと同じ程度にその全体が参照により本明細書に明白に組み入れられる。

Claims (69)

  1. (i) セルロースを代謝し、かつ1つまたは複数の代謝産物を産生するアクチノタレア・ファーメンタンス(Actinotalea fermentans)細菌;および
    (ii) 細菌によって産生された少なくとも1つの代謝産物を炭素源として用いる出芽酵母(S. cerevisiae)
    を含む、細菌-酵母共培養物。
  2. 培養培地、ならびに
    (i) セルロース系(cellulosic)細菌成分であって、該細菌がセルロースを代謝し、かつ1つまたは複数の代謝産物を産生する、セルロース系細菌成分、および
    (ii) 酵母成分であって、該酵母が細菌の少なくとも1つの代謝産物を炭素源として用いる、酵母成分
    を含む、共培養システム。
  3. セルロースを含む、請求項1または2記載の共培養物。
  4. 酵母がセルロースを代謝的に分解することができない、請求項1〜3のいずれか一項記載の共培養システム。
  5. 少なくとも1つの代謝産物が、酵母にとっての単独のまたは主要な炭素およびエネルギー源である、請求項1〜3のいずれか一項記載の共培養システム。
  6. 酵母が、異種タンパク質を発現するか、または内因性タンパク質を過剰発現するように組換えによって改変されている、請求項1〜3のいずれか一項記載の共培養システム。
  7. 酵母が、内因性タンパク質の発現をノックアウトするように組換えによって改変されている、請求項1〜3のいずれか一項記載の共培養システム。
  8. 細菌および酵母が、いずれの微生物も他方を圧倒しないように種集団の比較的一定の比率を維持しながら共に増殖する、請求項1〜3のいずれか一項記載の共培養システム。
  9. 好気性条件下で維持される、請求項1〜3のいずれか一項記載の共培養システム。
  10. 嫌気性条件下で維持される、請求項1〜3のいずれか一項記載の共培養システム。
  11. 酵母が、サッカロミセス(Saccharomyces)、ピチア(Pichia)、ハンゼヌラ(Hansenula)、クルイベロミセス(Kluyveromyces)、ヤロウイア(Yarrowia)、トリコデルマ(Trichoderma)、およびシゾサッカロミセス(Scizosacchromyces)からなる群より選択される属由来である、請求項1〜3のいずれか一項記載の共培養システム。
  12. 酵母が出芽酵母(S. cerevisiae)である、請求項11記載の共培養システム。
  13. 細菌が、アクチノタレア属(Actinotalea)またはセルロモナス属(Cellulomonas)の種である、請求項1〜3のいずれか一項記載の共培養物。
  14. 酵母が出芽酵母であり、かつ細菌がアクチノタレア・ファーメンタンスである、請求項13記載の共培養物。
  15. 炭素源が、炭素原子1〜6個を含む分子である、請求項1〜3のいずれか一項記載の共培養物。
  16. 炭素源が、エタノール、アセテート、ラクテート、スクシネート、シトレート、ホルメート、またはマレートである、請求項15記載の共培養物。
  17. 酵母の1つの種と細菌の1つの種とを含む、請求項1〜3のいずれか一項記載の共培養システム。
  18. 酵母および細菌が培養において共生関係を有する、請求項17記載の共培養システム。
  19. 酵母が、哺乳動物タンパク質である異種タンパク質を発現する、請求項6記載の共培養システム。
  20. 異種タンパク質が、患者の処置のために用いられるヒトタンパク質である、請求項6記載の共培養システム。
  21. 異種タンパク質が酵素である、請求項6記載の共培養システム。
  22. 異種タンパク質がハロゲン化メチルトランスフェラーゼである、請求項21記載の共培養システム。
  23. 酵素が、商業的に価値のある小分子化合物を産生するように遺伝子操作されている、請求項1〜3のいずれか一項記載の共培養システム。
  24. 酵母が、天然に存在する株であるか、または組換えによって改変されていない培養株である、請求項1〜3のいずれか一項記載の共培養システム。
  25. セルロースまたはセルロース源の存在下、液体培養培地において、セルロース系細菌と酵母とを共に、
    (i) 細菌がセルロースを代謝し、かつ1つまたは複数の代謝産物を産生する条件下、および
    (ii) 酵母成分が細菌の少なくとも1つの代謝産物を炭素源として用いる条件下
    で培養する段階を含む、酵母培養方法。
  26. セルロースが微結晶セルロースである、請求項25記載の方法。
  27. セルロース源がバイオマスである、請求項25記載の方法。
  28. バイオマスが、粉砕されたスイッチグラス、バガス、エレファントグラス、トウモロコシ茎葉(corn stover)、およびポプラから選択される粉砕された供給原料である、請求項27記載の方法。
  29. 培養物が好気性条件下で維持される、請求項25記載の方法。
  30. 培養物が嫌気性条件下で維持される、請求項25記載の方法。
  31. 酵母が、セルロースを代謝的に分解することができない、請求項25記載の方法。
  32. 酵母および細菌が培養において共生関係を有する、請求項25記載の方法。
  33. 酵母が、サッカロミセス、ピチア、ハンゼヌラ、クルイベロミセス、ヤロウイア、トリコデルマ、およびシゾサッカロミセスからなる群より選択される属由来である、請求項25記載の方法。
  34. 酵母が出芽酵母である、請求項25記載の方法。
  35. 酵母が、異種タンパク質を発現するように組換えによって改変されている、請求項25記載の方法。
  36. 異種タンパク質が哺乳動物タンパク質である、請求項35記載の方法。
  37. 異種タンパク質が、患者の処置のために用いられるヒトタンパク質である、請求項36記載の方法。
  38. 異種タンパク質が酵素である、請求項35記載の方法。
  39. 異種タンパク質がハロゲン化メチルトランスフェラーゼである、請求項38記載の方法。
  40. 酵母が、内因性タンパク質の発現をノックアウトするように組換えによって改変されている、請求項25記載の方法。
  41. 酵母が、天然に存在する株であるか、または組換えによって改変されていない培養株である、請求項25記載の方法。
  42. 酵母が出芽酵母であり、かつ細菌がアクチノタレア・ファーメンタンスである、請求項25記載の方法。
  43. 炭素源が、炭素原子1〜6個を含む分子である、請求項25記載の方法。
  44. 炭素源が、エタノール、アセテート、ラクテート、スクシネート、シトレート、ホルメート、またはマレートである、請求項43記載の方法。
  45. 細菌が、アクチノタレア属またはセルロモナス属の種である、請求項25〜44のいずれか一項記載の方法。
  46. 酵母が出芽酵母であり、かつ細菌がアクチノタレア・ファーメンタンスである、請求項25〜41および43〜44のいずれか一項記載の方法。
  47. 酵母によって産物が産生される培養培地から産物を回収する段階をさらに含む、請求項25〜44のいずれか一項記載の方法。
  48. 産物が、酵母によって発現される組換え型タンパク質である、請求項47記載の方法。
  49. 産物が、酵母細胞によって合成される小分子である、請求項47記載の方法。
  50. 合成が、酵母における異種タンパク質の発現を必要とする、請求項47記載の方法。
  51. 合成が、酵母において過剰発現される内因性タンパク質の発現、または酵母の1つもしくは複数の内因性遺伝子の欠失を必要とする、請求項47記載の方法。
  52. 産物がハロゲン化メチルである、請求項50記載の方法。
  53. 産物が、薬物、食品、アミノ酸、補助因子、ホルモン、タンパク質、ビタミン、脂質、アルカン、芳香族化合物、オレフィン、アルコール、またはバイオ燃料中間体である、請求項47記載の方法。
  54. セルロースを代謝し、かつ1つまたは複数の代謝産物を産生するセルロース系細菌と、セルロースを代謝せず、かつ異種ハロゲン化メチルトランスフェラーゼタンパク質を発現するように組換えによって改変されている酵母とを共に、セルロース源とハロゲン化物とを含有する培地において、ハロゲン化メチルが産生される条件下で培養する段階を含む、ハロゲン化メチルを産生するための方法。
  55. ハロゲン化物が、塩素、臭素、およびヨウ素からなる群より選択される、請求項54記載の方法。
  56. i)S-アデノシルメチオニン(SAM)依存性ハロゲン化メチルトランスフェラーゼ(MHT)をコードする異種遺伝子を含む組換え型酵母、
    ii)塩素、臭素、およびヨウ素を含む群から選択されるハロゲン化物、ならびに
    iii)セルロースの代謝によって炭素源を産生するセルロース分解細菌
    を、ハロゲン化メチルが産生される条件下で培養培地において混合する段階を含む方法。
  57. 炭素源が、炭素原子1〜6個を含む分子である、請求項56記載の方法。
  58. セルロース分解微生物が細菌であり、かつ炭素源が、エタノール、アセテート、ラクテート、スクシネート、ホルメート、シトレート、またはマレートである、請求項57記載の方法。
  59. 酵母が、サッカロミセス、ピチア、ハンゼヌラ、クルイベロミセス、ヤロウイア、トリコデルマ、およびシゾサッカロミセスからなる群より選択される属由来である、請求項56記載の方法。
  60. 酵母が、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、ヤロウイア・リポリチカ(Yarrowia lipolytica)、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)、および分裂酵母(Scizosacchromyces pombe)からなる群より選択される、請求項59記載の方法。
  61. 酵母が出芽酵母である、請求項60記載の方法。
  62. 細菌がアクチノタレア・ファーメンタンスである、請求項56記載の方法。
  63. MHTがバチス・マリチマ(Batis maritima)由来である、請求項61記載の方法。
  64. 細菌が、アクチノタレア・ファーメンタンスである、請求項54〜63のいずれか一項記載の方法。
  65. MHTがバチス・マリチマ由来である、請求項54〜63のいずれか一項記載の方法。
  66. 異種遺伝子が、MHT配列と、該MHT配列を酵母液胞に指向させるターゲティングペプチド配列とを含む融合タンパク質をコードする、請求項54または56記載の方法。
  67. ターゲティングペプチド配列が、カルボキシペプチダーゼYからのN末端ペプチドドメインである、請求項66記載の方法。
  68. 培養培地からハロゲン化メチルを回収する段階をさらに含む、請求項54〜63のいずれか一項記載の方法。
  69. ハロゲン化メチルを非ハロゲン化有機分子または非ハロゲン化有機分子の混合物へと変換する段階をさらに含む、請求項68記載の方法。
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