JP2011505134A - 新規な小麦アレルゲン - Google Patents

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Abstract

本発明は、IgE媒介アレルギー、特に、パン屋喘息のごとき職業性喘息の技術分野に関する。より詳細には、本発明は、新規な小麦アレルゲンの同定、およびそのIgE媒介アレルギーの治療および診断におけるその使用に関する。さらに、本発明は、治療および診断における公知のペプチドおよびタンパク質のその使用を提供する。また、本発明は、哺乳動物におけるIgE媒介アレルギーの診断および治療のための方法に関する。

Description

本発明は、IgE媒介アレルギー、特に、パン屋喘息のごとき職業性喘息の技術分野に関する。より詳細には、本発明は、新規な小麦アレルゲンの同定、ならびにその治療および診断におけるその使用に関する。また、本発明は、哺乳動物におけるIgE媒介アレルギーの診断および治療のための方法に関する。
小麦(トリーティクム・アエスティウム(Triticum aestivum))からのアレルゲンは、3つの区別されるIgE媒介アレルギー、すなわち、小麦粉の吸入による呼吸アレルギー、小麦製品の摂取による食物アレルギー、および草花粉アレルギーの群に属する小麦花粉アレルギーを惹起しかねない。小麦粉成分に対するアレルギー感作は、職業性喘息の最も頻繁な原因の1つであり、パン職人の約1〜10%が発症し、従って、それはパン屋喘息と呼ばれる。これらのパン職人は、小麦粉アレルゲンに対するIgE抗体、ならびに小麦粉誘発喘息および/または鼻炎を発生する。パン屋喘息が真の職業病であるという仮説の支持は、パン関連アレルゲンに対する感作の有病率が、小麦粉曝露がない対照集団に比較して、小麦粉で曝露した人において、約10倍高いという所見によってもたらされる。さらに、感作した人において気管支喘息を惹起することが知られている小麦粉についての閾値を確立することが可能であった。小麦粉アレルギーに対する最初の体系的調査は、Baggoeによって既に1933年に実施された。他の早期の報告は、パン屋喘息のケースの記載に注目し、作用機序的研究がパン屋喘息におけるIgE媒介メカニズムの重要性を示した。それ以来、いくつかの試みが、免疫化学的方法、RAST技術、免疫ブロット法および、最近では、分子クローニング技術によって疾病を誘発する小麦粉アレルゲンを特徴付けるためになされた。
トリーティクム・アエスティウムはイネ科の重要なメンバーである。すべてのアレルギーの個人の40%までが、草花粉アレルゲンと反応する血清IgE抗体を保有する。いくつかの研究は、小麦粉および草花粉のタンパク質中の共通のIgEエピトープにより小麦粉および草花粉間の交差反応性を報告している。草花粉アレルゲンおよび小麦種子アレルゲン間の交差反応性が記載され、パン屋喘息および小麦に対するIgE媒介食物アレルギーに苦しむ患者が、パン屋喘息、小麦粉に対する食物アレルギーおよび草花粉アレルギーの鑑別診断に用い得る異なるアレルゲンを認識し得るという証拠が存在する。しかしながら、可溶性の小麦粉アレルゲンの大多数はまだ同定されていない。今日、ほんの少数の小麦粉アレルゲンが同定および特徴付けられ、それらは、アルファアミラーゼインヒビターファミリー、アシルCoAオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、フルクトル(fructore)−二リン酸アルドラーゼおよび、最近ではチオレドキシンのメンバーを含む。
小麦粉抽出物に基づいた診断は、小麦に対する呼吸アレルギーまたは食物アレルギーに苦しむ患者を区別しない。従って、正確な診断は、依然として、小麦粉に対する呼吸アレルギーの場合には特定の吸入負荷、および食物アレルギーが疑われる場合には二重盲検プラセボ比較の食物負荷(DBPCFC)に依拠し、パン屋喘息、食物アレルギーおよび花粉症のごときアレルギーの種々の小麦誘発の徴候の選択的な診断および治療に用いることができるアレルゲンを同定することが可能であるかどうかの質問は、確定してない。かくして、呼吸アレルギーに苦しむ患者と、食物アレルギーおよび/または草花粉アレルギーに苦しむ患者とを識別するために、新規な小麦アレルゲンを同定し、かつ呼吸アレルギー、例えば、パン屋喘息のごときIgE媒介アレルギーに苦しむ患者を特に同定する方法および診断テストを確立するための必要性が存在する。さらに、かかる新規な小麦アレルゲンを、IgE媒介アレルギーの治療における使用に用いる必要性が存在する。本発明は、新規な小麦アレルゲン、および治療および診断におけるその使用を提供することにより、これらの必要性に対処する。さらに、本発明は、治療および診断における公知のペプチドおよびタンパク質の使用を提供する。これらのペプチドのうちのいくらかは、Gennaro S.D.ら、Biological Chemistry, April 2005, 386:383-389;UNIPROT受入番号P82977;UNIPROT受入番号Q6W8Q2;米国第7,214,786号および米国2006/0107345号から知られている。
前記のごとく、同定および特徴付けされたわずかな小麦粉アレルゲンは、アルファアミラーゼインヒビターファミリー、アシルCoAオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、フルクトル−二リン酸アルドラーゼおよびチオレドキシンのメンバーを含む。これまで、パン屋喘息、食物アレルギーおよび花粉症のごときアレルギーの種々の小麦誘発の徴候の選択的な診断および治療に用いることができるアレルゲンは同定されていない。これは、本発明者に、さらなる、まだ同定されてない小麦アレルゲンを探索させる。
本発明は、哺乳動物におけるIgE媒介アレルギーの診断および治療のための新規な小麦アレルゲンおよび方法を提供することにより、先行技術の必要性を少なくとも部分的に満たす。
第1の態様において、本発明は、小麦から単離されたかまたは組換え生成された新規な小麦アレルゲン、あるいは抗体についてのエピトープを共有する断片または変異体を表わすポリペプチドに関する。単離されたポリペプチドは、クローン番号10、番号112もしくは番号126のアミノ酸配列を含む。
第2の態様において、本発明は、本発明のポリペプチドをコードする核酸に関し、その核酸は、クローン番号10、番号112もしくは番号126のヌクレオチド配列を有する。
もう一つの態様において、本発明は、治療または診断、好ましくは、小麦粉に対する呼吸アレルギー、例えば、パン屋喘息のごときIgE媒介アレルギーの治療および診断に用いられる、クローン識別番号10、番号38、番号112もしくは番号126を有するポリペプチドに関する。さらに、本発明は、治療または診断、好ましくは、小麦粉に対する呼吸アレルギー、例えば、パン屋喘息のごときIgE媒介アレルギーの治療および診断に用いられるクローン番号37のアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドに関する。
なおもう一つの態様において、本発明は、クローン識別番号10、番号38、番号112、番号126もしくは番号37を有するポリペプチド、またはそのIgE結合応答を抑止もしくは減弱するように改変された低アレルギー性形態、ならびに所望により、医薬上許容される賦形剤、担体、緩衝剤および/または希釈剤を含む医薬組成物を提供する。クローン識別番号10、番号38、番号112、番号126もしくは番号37を有するポリペプチドの低アレルギー性形態は、分子の断片化、トランケーションまたはタンデム化、内部セグメントの欠失、ドメイン再構成、アミノ酸残基の置換、ジスルフィド架橋の崩壊によって改変し得る。
さらなる態様において、本発明は、クローン識別番号10、番号38、番号112、番号番号126もしくは番号37を有するポリペプチドを「添加した」アレルゲン組成物に関する。かかるアレルゲン組成物は、アレルゲン抽出物であっても、あるいは本発明のポリペプチドを有しないかまたはその低含量を有する精製または組換えアレルゲン成分の混合物であってもよく、そのポリペプチドは、IgEがその組成物中の他のアレルゲン成分に結合しないかまたは貧弱に結合する患者からのIgEを結合するように添加される。また、本発明のこの態様は、かかる組成物を生成する方法に関し、その方法は、クローン識別番号10、番号38、番号112、番号126もしくは番号37を有するポリペプチドを、アレルゲン抽出物(所望により、他の成分を添加してもよい)または精製された天然のもしくは組換えアレルゲンの成分の混合物のごときアレルゲン組成物に添加する工程を含む。
さらなる態様において、本発明は前記方法によって入手できるアレルゲン組成物に関する。
さらに、本発明は、クローン識別番号10、番号38、番号112、番号126もしくは番号37を有するポリペプチドに接触させて、小麦粉に対する呼吸アレルギー、例えば、パン屋喘息のごときIgE媒介アレルギーを有することが疑われる哺乳動物から血液、血漿または血清試料のごとき体液試料をもたらし、次いで、本発明のポリペプチドに特異的に結合するIgE抗体の試料中の存在を検出する工程を含む、IgE媒介アレルギーのin vitro診断のための方法に関する。クローン識別番号10、番号38、番号112、番号126もしくは番号37を有するポリペプチドに特異的に結合するかかる抗体の存在は、IgE媒介アレルギーを示す。かかる方法の1つの具体例は、マイクロアレイ分析によってその方法を実施することを含む。
さらなる態様において、本発明は、小麦粉に対する呼吸アレルギー、例えば、パン屋喘息のごときIgE媒介アレルギーのin vitro診断方法を行なうための診断キットを提供し、該キットは、クローン識別番号10、番号38、番号112、番号126もしくは番号37を有するポリペプチド、および固体支持体のごとき該ポリペプチドに結合するIgEを検出するための手段、例えば、それに結合したクローン識別番号10、番号38、番号112、番号126もしくは番号37を含むポリペプチドを有するニトロセルロース膜またはマイクロアレイを含む。
なおさらなる態様において、本発明は、呼吸アレルギー、例えば、パン屋喘息のごとき哺乳動物におけるIgE媒介アレルギーの治療のための方法を提供する。1つの具体例において、その方法は、クローン識別番号10、番号38、番号112、番号126もしくは番号37を有するポリペプチド、または抗体についてのエピトープを共有するその断片または変異体をかかる治療に感受性の個体に投与することを含む。もう一つの具体例において、その方法はかかる治療に感受性の個体に先の態様による医薬組成物を投与することを含む。
図1は、クローン10由来アレルゲン(配列番号:1)のヌクレオチドおよび推定アミノ酸配列を示す。 図2は、精製されたセリンプロテイナーゼインヒビター様アレルゲンのキャラクタリゼーションを示す。 図3は、パン屋喘息、花粉アレルギーおよび食物アレルギーに苦しむ患者のIgE反応性を示す。 図4は、クローン10由来アレルゲンに対するIgGサブクラス反応性のボックスプロット表示である。 図5は、クローン10由来アレルゲンのアレルゲン活性を示す。 図6は種子成熟の間の種子中のセリンプロテイナーゼインヒビター様アレルゲンの発現を示す。 図7は、小麦花粉および種子抽出物中でのクローン10由来アレルゲンの同定を示す。 図8は、小麦種子、米、トウモロコシ、豆およびジャガイモからの抽出物中のセリンプロテイナーゼインヒビター様アレルゲンの検出を示す。 図9は、小麦種子中の透過型免疫金電子顕微鏡検査によってクローン10由来アレルゲンの局在を示す。 図10.パン屋喘息に苦しむ患者のIgEドットブロット。 図11.小麦に対する食物アレルギーおよび花粉アレルギーに苦しむ患者のIgEドットブロット。 図12.アレルゲンマイクロアレイ。A、マイクロ配置されたタンパク質および小麦花粉抽出物の適用スキーム。 図13.小麦種子タンパク質、小麦花粉抽出物および草花粉アレルゲンに対するIgE反応性の有病率。
(定義)
Figure 2011505134
本発明のポリペプチドの変異体および断片は、少なくとも10個のアミノ酸、より好ましくは少なくとも25個、さらにより好ましくは少なくとも50または75個のアミノ酸残基の長さ、および少なくとも50%、好ましくは、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%を超える該ペプチドに対する配列同一性を持つタンパク質またはペプチドを意味すると解釈されるべきである。
改変されたポリペプチドは、本発明の文脈において、化学的または遺伝子的に改変して、例えば、本発明の免疫療法の態様に関連して例示されたその免疫学的特性を変更したポリペプチドを意味すると解釈されるべきである。
当該ポリペプチドと抗体用エピトープを共有するポリペプチドの変異体および断片は、本発明のポリペプチドで感作された代表的な患者の血清試料からのIgE抗体の結合がそのポリペプチドによりかなり阻害できるそれらの断片および変異体であると解釈されるべきである。かかる阻害アッセイは、例えば、実施例4に開示されたプロトコールによって行ない得る。
低アレルギー性の改変ポリペプチドまたはポリペプチドの変異体もしくは断片は、例えば、実施例1によるプロトコールにより決定される代表的なポリペプチド感作患者の血清試料からの該ポリペプチドに反応性のIgE抗体を結合できないか、あるいは好塩基性のヒスタミン放出アッセイのごとき細胞活性化により決定される生物学的アレルゲン活性がないことを示すかまたはかなり低下した生物学的アレルゲン活性を示す、改変されたポリペプチドまたはポリペプチドの変異体もしくは断片であると解釈されるべきである。
(表および図の簡単な説明)
テーブルIは、パン屋喘息に苦しむ患者の個体群統計学的、臨床的および血清学的特徴を示す。
テーブルIIは、小麦に対する食物アレルギーに苦しむ患者(F1〜F4)および草花粉アレルギーに苦しむ患者(G1〜G4)の個体群統計学的、臨床的および血清学的特徴を示す。
テーブルIIIは、クローン10由来アレルゲンおよび相同蛋白質の間の百分率アミノ酸配列同一性を示し、ここに、1〜30と番号付けされたタンパク質は下記のとおりである:1.gi|122065237(トリーティクム・アエスティウム)、2.gi|66356278(トリーティクム・アエスティウム)、3.gi|124122(オオムギ亜種vulgare(Hordeum vulgare subsp. vulgare))、4.gi|48093360(ブタモロコシ(Zea diploperennis))、5.gi|48093418(イースタンガマグラス(Tripsacum dactyloides))、6.gi|75994161(トウモロコシ(Zea mays subsp. parviglumis))、7.gi|58396945(イネ・日本晴(Oryza sativa [japonica cultivar-group]))、8.gi|115649132(ムラサキウニ(Strongylocentrotus purpuratus))、9.gi|37904392(ミナトカモジグサ (Brachypodium distachyon))、10.gi|26224744(グレープフルーツ(Citrus x paradise))、11.gi|224447(ソラマメ(Vicia faba))、12.gi|124395862(ヨツヒメゾウリムシ (Paramecium tetraurelia))、13.gi|50262213(西洋カボチャ (Cucurbita maxima))、14.gi|547743(ニコチアナ・シルベストリス (Nicotiana sylvestris))、15.gi|54610713(ミミズ(Lumbricus terrestris))、16.gi|169491(ジャガイモ(Solanum tuberosum))、17.gi|218290(キダチタバコ×ニコチアナ・ラングスドルフィ (Nicotiana glauca x Nicotiana langsdorffii))、18.gi|124121(アズキ(Vigna angularis))、19.gi|603890(セイヨウニワトコ(Sambucus nigra))、20.gi|14718445(サツマイモ(Ipomoea batatas))、21.gi|114950(ニガウリ(Momordica charantia))、22.gi|109138554(ソバ(Fagopyrum esculentum))、23.gi|18404883(シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana))、24.gi|27734408(ハマナタマメ (Canavalia lineate))、25.gi|37901103(パラゴムノキ(Hevea brasiliensis))、26.gi|92874842(タルウマゴヤシ (Medicago truncatula))、27.gi|13959383(アマ(Linum usitatissimum))、28.gi|22759723(ヒャクニチソウ (Zinnia elegans))、29.gi|37359345(ブドウ(Vitis vinifera))および30.gi|6453287(アマランサス (Amaranthus hypochondriacus))。
テーブルIVは、実施例2のパン屋喘息患者についての臨床データを示す。
テーブルVは、実施例2の食物および草花粉アレルギーの患者についての臨床データを示す。
テーブルVIは、クローン番号10、番号38、番号112、番号123、番号126および番号37についてのcDNAの増幅に用いたPCRプライマーを示す。
テーブルVII.パン屋喘息に苦しむ患者の個体群統計学的、臨床的および血清学的特徴。
テーブルVIII.草花粉アレルギーに苦しむ患者の個体群統計学的、臨床的および血清学的特徴。
テーブルIX.小麦に対する食物アレルギーに苦しむ患者の個体群統計学的、臨床的および血清学的特徴。
図1は、クローン10由来アレルゲン(配列番号:1)のヌクレオチドおよび推定アミノ酸配列を示す。コードおよび非コード領域は、各々、上部および下部の文字列にあり、開始(ATG)および停止コドンが下線強調される。ジャガイモインヒビターIファミリーサイン(potato inhibitor I family signature)のアミノ酸は灰色背景で印刷される。左側の数は、ヌクレオチドについてのもので、右側の数は、アミノ酸についてのものである。その配列は受入番号(EU051824)下、GenBankに提出した。
図2は、精製されたセリンプロテイナーゼインヒビター様アレルゲンのキャラクタリゼーションを示す。A、精製されたクローン10由来アレルゲンを含有するクーマシーブリリアントブルー染色したSDS−PAGE。分子量マーカー(kDa)は左側に示される。B、精製されたクローン10由来アレルゲンの質量分析(MS)。質量/電荷比はX軸に示され、強度は、調べた質量範囲内で得られた最も強いシグナルの百分率としてY軸に表示される。C、精製されたクローン10由来アレルゲンの遠紫外線円偏光二色性(CD、Far-ultraviolet circular dichroism)分析。スペクトルは、平均残基楕円率(θ、mean residue ellipticities)(Y軸)として表現され、所与の波長(X軸)での25℃(太線)、95℃(通常の線)および冷却後の25℃(点線)で表されている。
図3は、パン屋喘息、花粉アレルギーおよび食物アレルギーに苦しむ患者のIgE反応性を示す。精製されたクローン10由来アレルゲン、HSA、rPhl p 1、rPhl p 5、rPhl p 7、rPhl p 12、小麦花粉抽出物および小麦種子抽出物をニトロセルロースの膜片上に点在させて、22名のパン屋喘息患者(1〜22)、4名の草花粉アレルギーの患者血清(G1〜G4)、小麦に対する食物アレルギーに苦しむ患者からの4血清(F1〜F4)、非アレルギー性の個体からの1血清(NC)、および血清添加のない緩衝液(B)とインキュベートした。結合したIgE抗体は125I標識した抗ヒトIgE抗体で検出し、オートラジオグラフィによって視覚化した。
図4は、クローン10由来アレルゲンに対するIgGサブクラス反応性のボックスプロット表示である。クローン10由来アレルゲンに対するIgG1−4サブクラス反応性をパン屋喘息に苦しむ患者(n=22)につきELISAによって決定し、50%の値がボックス内にあり、非外れ値は、バー間にあるボックスプロットとして表示されている。そのボックス内の線は中央値を示し、円は外れ値、星印は極値を示す。
図5は、クローン10由来アレルゲンのアレルゲン活性を示す。3名のパン屋喘息患者(番号2、番号4、番号12)からの血清IgEまたは非アレルギー性の患者(NC)の血清をRBL細胞に負荷し、次いで、組換えクローン10由来アレルゲンまたはオオアワガエリ花粉アレルゲンrPhl p 1を負荷した。平均β−ヘキソサミニダーゼ放出を自発的放出についての百分率の減算後の合計放出の百分率としてY軸に示す。
図6は種子成熟の間の種子中のセリンプロテイナーゼインヒビター様アレルゲンの発現を示す。未成熟(第7、10、15、20、25、30および35日)および成熟(M)の小麦種子からのニトロセルロース−ブロットした小麦抽出物をクローン10由来アレルゲンに特異的なウサギ抗体で、また、対照目的で、対応する前免疫血清で調査した。分子量はキロダルトン(kDa)で左側に示す。
図7は、小麦花粉および種子抽出物中でのクローン10由来アレルゲンの同定を示す。ニトロセルロース−ブロットした抽出物を、クローン10由来アレルゲンに特異的なウサギ抗体(20)、小麦プロフィリン(I 番号123)に特異的な抗体、ダニアレルゲン(NC)に特異的な抗体、またはウサギ抗体の添加がない緩衝液(B)で調査した。対応する前免疫血清は、P番号10およびP番号123として各々参照される。結合したIgG抗体は125I標識したロバ抗ウサギ抗体で検出し、オートラジオグラフィによって視覚化した。分子量マーカー(kDa単位)は左側に示される。
図8は、小麦種子、米、トウモロコシ、豆およびジャガイモからの抽出物中のセリンプロテイナーゼインヒビター様アレルゲンの検出を示す。A、小麦(W)、米(R)およびトウモロコシ(M)、一般的な豆(B)およびジャガイモ(P)からの抽出物を含有するクマシーブルー染色ゲル。B、ニトロセルロース−ブロットした抽出物をウサギ前免疫血清に、およびC、クローン10由来アレルゲンに特異的なウサギ抗体に曝露した。分子量(kDa)は左側に示される。
図9は、小麦種子中の透過型免疫金電子顕微鏡検査によってクローン10由来アレルゲンの局在を示す。AおよびB、低倍率(A)および高倍率(B)の小麦粒の断面。Aは、果実および種皮(C)、デンプン層(AL)およびデンプン質胚乳(SE)の始まりを示す。Aにおける長方形は、Bに示される領域に匹敵する面積、すなわち、デンプン層およびデンプン質胚乳間の境界を示す。Bにおける長方形は、C、DおよびE、Fにおいて高倍率で各々示される領域を示す。CおよびD、ウサギ抗クローン10由来Ig(C)または免疫前Ig(D)で調査された小麦種子デンプン細胞の詳細。EおよびF、ウサギ抗クローン10由来Ig(E)または免疫前Ig(F)で小麦タンパク質10の免疫金局在化後のデンプン質胚乳の高倍率顕微鏡写真。結合したウサギ抗体は、金標識したヤギ抗ウサギIg抗血清で検出した(金粒子=黒色ドット)。矢印はコロイド状金粒子を示す。バーは、A、20μm;B、5μm;C〜F、0.5μmを示す。AG、デンプン粒;AL、デンプン層;C、多層の果実および種皮;CY、細胞質物質;L、脂肪体;M、糸粒体;SE、デンプン質胚乳;SG、デンプン粒;W、細胞壁。
図10.パン屋喘息に苦しむ患者のIgEドットブロット。
図11.小麦に対する食物アレルギーおよび花粉アレルギーに苦しむ患者のIgEドットブロット。
図12.アレルゲンマイクロアレイ。A、マイクロ配置されたタンパク質および小麦花粉抽出物の適用スキーム。組換え小麦タンパク質は、10、37、38、112、123、126と指定され;WP:小麦花粉抽出物;組換えオオアワガエリ花粉アレルゲン:Phl p 1、Phl p 5、Phl p 7およびPhl p 12と指定される。底部のボックス中の数は、位置マークを示す。BおよびC、血清でのインキュベーション後のマイクロアレイの画像、およびフルオロフォア標識した抗IgE抗体でのIgE反応性スポットの検出。B、非アレルギー患者からの血清でインキュベーション後の画像。C、パン屋喘息(1:B4)、小麦誘発食物アレルギー(2:F26)、草花粉アレルギー(3:G16)に苦しむ代表的な患者からの血清とのインキュベーション後の画像。スライドの底部のドットは、フルオロフォア標識した抗IgE抗体で検出した精製IgE抗体である位置マークを示す。
図13.小麦種子タンパク質、小麦花粉抽出物および草花粉アレルゲンに対するIgE反応性の有病率。IgE反応性の患者の百分率を、Y軸にパン屋喘息(A)(n=23)、小麦に対する食物アレルギー(B)(n=38)および草花粉アレルギー(C)(n=17)につき示す。X軸は、テストされた組換え小麦タンパク質番号10、番号37、番号38、番号112、番号123および番号126、小麦花粉抽出物、組換え草花粉アレルゲンPhl p 1、Phl p 5、Phl p 7およびPhl p 12、全ての組換え小麦タンパク質を含む「小麦ミックス」、IgE反応性を測定するために用いた小麦粉およびオオアワガエリCAPを示す。
(発明の詳細な記載)
下記の実施例は、本発明のポリペプチドの単離および使用を含む本発明を例示する。その実施例は単に例示であり、添付された特許請求の範囲によって定義される本発明の制限と考えられるべきでない。実施例に言及したクローン番号123は、例えば、米国第7,214,786号から公知のプロフィリンである。
実施例1:新規な小麦アレルゲンクローン番号10
実施例1は、他のプロテアーゼインヒビターと一緒に、病変形成関連タンパク質(PR)のファミリーPR6と呼ばれるセリンプロテアーゼインヒビターのあるファミリーのジャガイモインヒビターファミリーに属する、新規な小麦種子アレルゲンのクローン番号10の同定およびキャラクタリゼーションを示す。クローン番号10は、PR6ファミリーにつき同定および記載された最初のアレルゲンである。さらに、実施例1は、組換えクローン10由来アレルゲンの発現および精製を示す。
クローン番号10は、パン屋喘息の患者から血清IgEによって特異的に認識されたが、小麦に対する食物アレルギー、セリアック病または草花粉アレルギーに苦しむ患者からの血清でテストされた場合にIgE反応性を示さなかった。従って、クローン10由来アレルゲンを他の小麦アレルゲンと一緒に用いて、IgE媒介パン屋喘息に苦しむ患者を特異的に同定し、かつこれらの患者と食物または花粉アレルギーのアレルギー患者とを識別することを可能にする診断テストを確立し得る。
技術
生体物質、患者の血清および抗体
トリーティクム・アエスティウム栽培品種マイケルからの小麦種子をOsterreichische Agentur fur Gesundheit und Ernahrungssicherheit GmbHから得て、温室で植えた。未成熟種子は、受粉開始7、10、15、20、25、30および35日後に直接的に液体窒素に収集し、使用まで−80℃で貯蔵した。小麦花粉はAllergon (Valinge, Sweden)から得た。米、トウモロコシ、豆およびジャガイモは地方市場で購入した。組換えPhl p 1、Phl p 5、Phl p 7およびPhl p 12は、BIOMAY (Vienna, Austria)から、ヒト血清アルブミン(HSA)は、Behring (Marburg, Germany)から購入した。血清はパン屋喘息に苦しむ22名の患者から得た。パン屋喘息は、陽性の病歴、CAP−FEIA System (Phadia, Uppsala, Sweden)による小麦およびライ麦粉に特異的なIgE、および臨床的に関連する感作の確認のために含まれた特定の吸入負荷試験に基づいて診断された(1)。これらの患者の個体群統計学的、臨床的によび血清学的データをテーブルIに要約する。加えて、非アレルギー性の個体からの血清、小麦に対する食物アレルギーに苦しむ4名の患者からの血清、およびパン屋喘息はないが、小麦およびライ麦粉に対する血清IgEがある4名の草花粉アレルギー患者からの血清を実験に含んだ(テーブルII)。草花粉アレルギー患者からの血清をCAP-FEIA System (Phadia)により合計の血清IgEレベルおよびIgE特異的オオアワガエリ花粉につき分析し、小麦に対する食物アレルギーを持つ患者を従前に記載されたように特徴付けした(2)。パン屋喘息についてのクローン10由来アレルゲンの特異性は、セリアック病患者からのさらなる20の血清、食物アレルギーの患者からの119、草花粉アレルギー患者からの23の血清、およびパン屋喘息患者からの25の血清をチップ分析(Constantinら、未発表)によりテストすることにより確認した。クローン10由来アレルゲンに対する特異的なウサギ抗体は、1回のフロイト完全アジュバントおよび2回のIFA(Charles River, Kisslegg, Germany)を用いて、精製したクローン10由来アレルゲン(1注入当たり200μg)で毎月の間隔でウサギの免疫処置により産生させた。前免疫血清は免疫処置前にウサギから得た。対照目的では、イエダニ・アレルゲンに特異的なウサギ免疫血清、および小麦プロフィリンに特異的なウサギ抗血清を用いた。
小麦種子からのλgt11 cDNAライブラリーの構築
総RNAを小麦種子からYeh(3)により抽出し、受粉開始25日後に収集して−80℃で貯蔵した。次いで、RNAペレットをイソチオシアン酸グアニジニウム緩衝液(4Mイソチオシアン酸グアニジニウム、0.83%v/v 3M酢酸ナトリウム、pH 6、11mM β−メルカプトエタノール)に溶解し、塩化セシウム密度勾配超遠心(4)によって精製した。ポリARNAは、オリゴ−dTセルロース・アフィニティークロマトグラフィー(Nucleo Trap mRNA; Machery-Nagel)によって単離し、二本鎖cDNAをcDNA合成キット(cDNA synthesis System; Roche Diagnostics, Mannheim, Germany)で合成した。EcoRIメチラーゼ(New England Biolabs, Beverly, MA)でメチル化後、EcoRIリンカー(New England Biolabs)をcDNAに加えた。リンカーcDNAをEcoRI(Roche Diagnostics)で消化した。消化したリンカーをNickカラム(Pharmacia Biotech, Uppsala, Sweden)で取り出し、そのcDNAをλgt11アーム(Stratagene, La Jolla, CA, USA)に連結した。連結反応生成物をin vitroにて充填し(Gigapack III Gold Cloning Kit, Stratagene)、その結果、2.43×10PFUでλgt11発現cDNAライブラリーを得た。
小麦種子cDNAライブラリーからのIgE反応性クローンの単離およびキャラクタリゼーション
E.coli Y1090を、組換えファージの7×10 PFUに感染させ、記載のごとく、パン屋喘息に苦しむ4名の患者(番号1、番号2、番号4、番号12)の血清IgEで免疫スクリーニングした(5)。15個のIgE反応性のファージクローンをさらなる再クローニングのために選択し、それらのDNAをλgt11プライマーでPlatinum PCR Supermix (Invitrogen, Life Technolgies)を用いてPCR増幅し、配列決定(MWG, Ebersberg, Germany)した。得られた配列は、全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI, National Center for Biotechnology Information)のGenBankデータベースに提出された配列と比較した。複数配列アラインメントをNCBIのGenBankデータベースを用いて行なった。アミノ酸配列同一性について、Clustal Wの複数配列ツールを用いた。モチーフ探索はExPASyプロテオミクスサーバーのPROSITEツールで行い、アミノ酸組成については、ExPASyのProtParamツールを用いた。溶媒露出度および二次構造の予測は、コロンビア大学バイオインフォマティクス・センター(Columbia University Bioinformatics Center)からのPROTソフトウェアを用いて計算した。系統樹は、分子遺伝学用のMax Planck Institute for Molecular Geneticsによって提供された「Multiple Alignment and Phylogenetic Tree Reconstruction」ソフトウェアを用いて、クローン10由来アレルゲンおよび相同蛋白質のアミノ酸配列に基づいて再構築した。
クローン10由来組換えアレルゲンの発現および精製
クローン10cDNAのコード領域を以下のプライマー対:
Figure 2011505134
を用いてPCRによって増幅した。PCR生成物は、NdeI(斜体)、EcoRI(下線強調)制限部位およびヘキサヒスチジンタグコード配列(太字)を含んでいた。PCR生成物は、AccepTor Vector (Novagen, Madison, WI)にサブクローンし、再び配列決定(MWG)した。次いで、挿入断片を、NdeIおよびEcoRI(Roche Diagnostics)でAccepTor Vectorから切り取られ、ゲル精製(Promega, Madison, WI, USA)し、発現プラスミドpET 17b(Novagen)にサブクローンした。DNA配列は双方のDNA鎖を配列決定することにより確認した(Microsynth, Balgach, CH)。pET 17b−クローン10構築体をE.coli BL21(DE3)(Stratagene)に形質転換し、100mg/lのアンピシリンを含有するLuria Broth(17)培地中で0.8〜1のOD(600nm)まで37℃で増殖させた。タンパク質発現は、0.5mMの最終濃度までのイソプロピルβ−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)の添加によって誘導し、次いで、さらに3時間細菌を増殖させた。細菌は遠心によって収集し、Ultraturrax (IKA, Stauffen, Germany)で、25mMイミダゾール、pH7.5、0.1%(v/v)トリトンX−100中でホモジナイズした。DNAをDNase Iの添加により消化し、20℃にてさらに10分間撹拌し、その反応を200μlの5M NaClで停止させ、次いで、4℃(6000×g、20分間)で遠心した。クローン10由来アレルゲンの大部分は、細菌抽出物の不溶性画分中で見い出された。クローン10由来アレルゲンは、QIAexpressionist handbook (QIAGEN, Hilden, Germany)に従い、Ni−NTA樹脂アフィニティカラムを用いて、変性条件下、封入体含有ペレットから精製した。組換えアレルゲンを含有する画分をプールし、10mM NaHPO pH7.5に対して透析した。タンパク濃度は、Micro BCA Protein Assay Kit (Pierce, Rockford, IL)で測定した。
ELISA
クローン10由来アレルゲンを、5μg/mlの濃度でPBSに溶解し、ELISAプレート(Nunc Maxisorb, Roskilde, Denkmark)上に被覆した。PBS、0.05%(v/v)のTween20(PBST)中の1%(w/v)のBSAでブロックした後、プレートは、(6)記載のごとく、IgG、IgG、IgGおよびIgGの測定のために、PBST、0.5%(w/v)のBSA中で1:50に希釈した血清とインキュベートした。従前に(2)記載のごとく、結合した抗体を、最初にPBST、0.5%(w/v)BSA中で1:1000に希釈したモノクローナルマウス抗ヒトIgGサブクラス抗体(BD Biosciences, Franklin Lakes, NJ)で、次いで、PBST、0.5%(w/v)BSA中で1:2000に希釈したホースラディシュ・ペルオキシダーゼ結合ヒツジ抗マウス抗血清(GE Healthcare, Little Chalfont, UK)でインキュベートすることにより検出した。全ての測定は、2連として行い、結果を平均値として示す。
タンパク質抽出物、SDS−PAGEおよび免疫ブロット
成熟および未成熟小麦種子、米(Oryza sativa)、トウモロコシ(Zea mays)、一般的な豆(Phaseolus vulgaris)およびジャガイモ(Solanum tuberosum)からのSDSタンパク質抽出物を32mlの試料緩衝液(6)中の3グラムの組織のホモジナイズ、引き続いて、10分間煮沸により調製した。不溶性粒子を除去するために、抽出物を4℃にて10分間10,000×gで遠心し、上清を−20℃のアリコートとして貯蔵した。加えて、小麦種子からのPBSタンパク質抽出物を従前に(2)記載のごとく調製した。トリーティクム・アエスティウム花粉(500mg)を5mlのPBS、2mM EDTA、1mM PMSF中で一晩4℃で抽出した。13,000×g、4℃の1時間の遠心後、上清のタンパク濃度をMicro BCA Protein Assay Kit (Pierce)で測定し、アリコートを使用まで−20℃で貯蔵した。等量のSDSタンパク質抽出物を14%分取用SDSポリアクリルアミドゲルによって分離した(7)。タンパク質分子量マーカー(Rainbow Marker, GE Healthcare; Precision Plus Protein Standard, BioRad, Herkules, CA; Page Ruler Pre-stained Protein Ladder, Fermentas, Burlington, Ontario)を標準として用いた。電気泳動分離の後、タンパク質をクーマシーブリリアントブルーで染色するか、またはニトロセルロース膜(Schleich & Schuell, Dassel, Germany))上にブロットした(8)。膜を緩衝液A(50mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.4、0.5%w/v BSA、0.5%v/vTween−20、0.05%w/v NaN)中で10分間で2回および30分間で1回ブロックし、クローン10由来アレルゲンに特異的なウサギ抗血清、対応する前免疫血清、および対照目的のために、無関係の抗原に特異的なウサギ血清または緩衝液単独と4℃にて一晩インキュベートした。ウサギ血清を緩衝液A中で1:50,000に希釈した。結合した抗体を、緩衝液A中で1:2000に希釈した125I標識したロバからの抗ウサギ抗体(GE Healthcare)で2時間室温にて検出し、−70℃で増感紙(Kodak, Heidelberg, Germany)でKodak XOMATフィルムに視覚化した。
IgEドットブロット実験について、100ngの組換えクローン10由来アレルゲンおよび組換え草花粉アレルゲン、Phl p 1、Phl p 5、Phl p 7およびPhl p 12、ならびに3μgの小麦花粉抽出物および2μgの成熟した小麦種子PBS抽出物をニトロセルロース膜上に点在させた。ニトロセルロース片を緩衝液Aでブロックし、4℃にて一晩緩衝液A中で1:10希釈の患者血清に曝露した。結合したIgE抗体は、緩衝液A中で1:20に希釈した125I標識した抗ヒトIgE抗体 (RAST RIA, Demeditec Diagnostics, Germany) で室温にて一晩検出し、−70℃にて増感紙 (Kodak) を含む Kodak XOMATフィルムを用いてオートラジオグラフィによって視覚化した。
組換えクローン10のMSおよびCD分析
レーザー脱離質量スペクトルは、TOF Compact MALDI II instrument (Kratos, Manchester, UK; piCHEM, Research and Development, Graz, Austria)で線形モードで取得した。試料を10%アセトニトリル(0.1%トリフルオロ酢酸)に溶解し、α−シアノ−4ヒドロキシ桂皮酸(60%アセトニトリル、0.1%トリフルオロ酢酸に溶解した)をマトリックスとして用いた。試料調製のために、タンパク質およびマトリックス溶液の1/1の混合物を標的上に沈着させ、空気乾燥した。
CD測定は、0.2cmの路長の長方形水晶キュベットを用いた、Jasco J-810分光偏光計(Tokyo, Japan)で、0.1mg/mlのタンパク質濃度の精製したクローン10由来アレルゲン(HO中)で行った。遠紫外線CDスペクトルは、50nm/分間の走査速度で0.5nmの分解能で190nm〜260nmで記録し、3つの走査の平均に起因した。結果は所与の波長で平均残基楕円率(θ)として表す。温度走査は逐次走査手順によって行い、ここで、試料は2℃/分の加熱速度で25℃から95℃まで加熱し、同一速度にて25℃に戻し冷却した。5℃毎に、連続的な波長スペクトルを指定したパラメーターで記録した。加えて、温度走査を0.5℃のステップレゾリューションで215nmにて記録した。結果を所与の波長でのモル平均残基楕円率(θMRE)として表した。最終スペクトルは同一条件下で得た対応するベースラインスペクトルを減じることにより修正した。クローン10由来アレルゲンの二次構造量を二次構造評価プログラムCDSSTR(9)を用いて計算した。
ヒト・ラット好塩基性白血病(huRBL)アッセイ
IgE Ab媒介即時型反応の定量化のために、huRBL細胞媒介物質放出アッセイを行った。ヒトFcεRI(10)でトランスフェクトしたRBL細胞(クローンRBL−703/21)を、5% FCS、4mM L−グルタミンおよび1mg/mlのG418硫酸塩を補足したRPMI 1640中で培養した。細胞は、トリプシン/EDTAでインキュベーション後に収集し、洗浄し、培地に再懸濁させ、細胞濃度を2×10細胞/mlに調節した。細胞溶液の50μlのアリコートを、96ウェルの平底マイクロプレートのウェルに添加した(細胞密度/ウェルは1×10細胞であった)。ヒト血清を培地中で1:10に希釈し、細胞に添加し、37℃、7% CO、95%相対湿度で一晩インキュベートした。培地を除去し、プレートをタイロード緩衝液+0.1% BSAの200μl/ウェルで3回洗浄した。IgE架橋では、50%のDOおよび0.1%(w/v)のBSAを含有するタイロード緩衝液中で希釈した100μlのクローン10由来アレルゲンまたはrPhl p 1(0.3μg/ml)を細胞に添加した。自発的な放出のために、タンパク質を含まないタイロード緩衝液をウェルに添加した。合計の放出は、10%トリトンX−100を含有するタイロード緩衝液の添加によって決定した。37℃、7% CO、95%相対湿度での1時間のインキュベーション後に、細胞を遠心により収集し、50μlの上清を新しいプレートに移し、ウェル当たり50μlのアッセイ溶液(0.1Mクエン酸またはクエン酸ナトリウム、pH4.5および160μM 4−メチルウンベリフェリル−N−アセチル−β−D−グルコサミニドグルコサミニド)を添加した。さらにもう1時間のインキュベーション後、反応は、各ウェルに100μlグリシン緩衝液(0.2Mグリシン、0.2% NaCl、pH10.7)を添加することにより停止させた。蛍光をλex:360/λem:465で蛍光マイクロプレート・リーダで測定した。自発的な放出をトリトンX−100により溶解しなかった対照ウェルから決定した。特定の放出は、式:(試料−自発的/合計−自発的)×100を用いて計算した。
免疫金電子顕微鏡検査
小麦の乾燥粒を鋭いカミソリ刀を用いて小片(約0.5mmサイズの立方体)に切った。細胞の乾燥状態を保存するために、その立方体をアクロレイン蒸気中で室温にて5日間無水的に固定した。それらは、いずれの残存する水も除去するために室温にて1日ジメトキシプロパン(DMP)に移し、中間体段階として、上昇系列のDMP:エタノールおよびエタノール:単量体Lowicryl K4Mを用いて、Lowicryl K4M樹脂に組み込んだ。重合は−35℃で行った。
超薄切片は、辺縁および中央の穀粒組織からカットし、免疫標識手順のための銀グリッドに配置した。
クローン10由来アレルゲンについての標識は、以下のとおり室温にて湿室(PBS緩衝液+1%(w/v)BSA、pH7.4、トリス緩衝液+1%(w/v)BSA、pH8.2)で行った:PBS緩衝液中の1.5% (w/v)BSA、15分間;2.PBS緩衝液中で1:35に希釈したウサギ抗小麦タンパク質10抗体および前免疫抗体、2時間;3.PBS緩衝液、5分間、トリス緩衝液、2×5分間;4.トリス緩衝液中で1:20に希釈した10nmのサイズのコロイド状金粒子(BioCell, Plano, Wetzlar, Germany)に結合したヤギ抗ウサギIgG抗体;5.トリス緩衝液、1×5分間、蒸留水、2×5分間。
切片は、酢酸ウラニル(5分間)およびクエン酸鉛(10秒間)を用いて染色した。
試料は、透過電顕EM 410(FEI, Eindhoven, The Netherlands)において分析した。
結果
セリンプロテイナーゼインヒビター様アレルゲンをコードする小麦cDNAの単離およびキャラクタリゼーション
小麦種子cDNA発現ライブラリーをパン屋喘息に苦しむ4名の患者からのIgE抗体でスクリーニングした。IgE反応性クローン10のcDNAの読み取り枠は、84個のアミノ酸のポリペプチドをコードする262個のヌクレオチドを含んでいた(図1)。9.4kDaの分子量および6.08の等電点(pI)が、クローン10由来アレルゲンにつき推定されたアミノ酸配列によって計算された。アミノ酸組成の分析は、高含量のバリン残基(15.5%)およびシステイン残基の不存在を示した。コンピューター支援二次構造分析により、クローン10由来アレルゲンは、主として、ランダムコイルおよびベータシート、および1つのアルファヘリックス領域から成る。溶媒露出度計算によれば、ほぼ80%のアミノ酸が溶媒露出される。配列モチーフの検索は、1つの潜在的なカゼインキナーゼIIリン酸化部位(アミノ酸32)、2つのN末端ミリストイル化部位(アミノ酸11および55)および1つのジャガイモインヒビターIファミリーサイン(図1:アミノ酸25〜36が箱で囲まれる)の存在を明らかにした。
NCBIデータベースに寄託された配列とのクローン10由来アミノ酸配列の比較は、そのアレルゲンが、トリーティクム・アエスティウムサブチリシン−キモトリプシンインヒビターWSCI前駆体(受入番号gi│122065237)およびT.aestivum WSCIプロテイナーゼインヒビター(受入番号gi│66356278)にほぼ同一であることを示し、動植物に生じるある群のセリンプロテイナーゼインヒビターとかなりの配列相同性を示す。これらのセリンプロテイナーゼインヒビターは、ジャガイモインヒビターIと指定されたファミリーを構成し、それらのタンパク質の各々に保存される典型的なコンセンサス配列パターンにより特徴付けられる。ジャガイモインヒビターIファミリーに属するセリンプロテイナーゼインヒビターは、ジスルフィド結合を欠く60〜90個のアミノ酸の小さなタンパク質であり、単一の阻害部位だけを含んでいる。小麦セリンプロテイナーゼインヒビターの配列は、大麦(Hordeum vulgare)、トウモロコシ(Zea mays, Zea diploperennis)、ガマグラス(gamma grass)(Tripsacum dactyloides)および米(Oryza sativa)のごとき他の単子葉植物、双子葉植物および虫のプロテイナーゼインヒビターに対して、かなりの程度の配列保存を示す(テーブルIII)。テーブルIIIは、セリンプロテイナーゼインヒビターの各々の間の配列同一性の百分率を表示する。
セリンプロテイナーゼインヒビター様アレルゲンの発現、精製および物理化学的キャラクタリゼーション
クローン10由来アレルゲンは、C末端ヘキサヒスチジンタグを用いてE.coli BL21(DE3)中で発現した。セリンプロテイナーゼインヒビター様アレルゲンの約25mg/Lの液体培養物をニッケルクロマトグラフィーによって精製できた(図2A)。精製した組換えタンパク質10のMALDI−TOF分析は、9970.8Daの質量ピークを生じた(図2B)。精製した組換えクローン10由来アレルゲンの遠紫外線CDスペクトル(図2C)は、タンパク質が折り畳まれ、相当な量のβ−シートおよび低いα−ヘリックス含量を含むことを示す。そのスペクトルは、204nmでの極小および190nmでの極大により特徴付けられる。参照データセット7でプログラムCDSSTRを用いる二次構造分析は、8%のα−ヘリックス、23%のβ−シート、14%のβ−折返しおよび53%のランダムコイルを与えた。0.033のNRMSD値は、計算したものと実験的に誘導したスペクトル間の良好な適合を示した。95℃への加熱に際して、極小のCDスペクトルのわずかなシフト(204nmから201nmまで)を観察し、これは、タンパク質の部分変性を示す。25℃への冷却に際して、タンパク質は再び折り畳まれた(図2C)。しかしながら、204nmの極小は加熱前より低く、これは、β−シート−の転位を示唆する。要約すると、温度走査中に観察されたスペクトルは、クローン10由来アレルゲンの高い熱安定性を示す。
組換えクローン10由来アレルゲンは小麦からの新規なセリンプロテイナーゼインヒビター様アレルゲンである
精製したクローン10由来アレルゲンを、ドットブロット分析によってパン屋喘息、草花粉アレルギーおよび小麦に対する食物アレルギーに苦しむ患者からの血清を用いて、IgE反応性につきテストした(図3)。組換えクローン10由来アレルゲンは、パン屋喘息に苦しむ22名の患者のうち3名の患者(番号1、番号4、番号12)(13.6%)からのIgE抗体と反応した。主な小麦アレルゲン、アルファアミラーゼインヒビターに特異的なIgEの低レベルだけを有した患者番号1は、セリンプロテイナーゼインヒビター様アレルゲンに対する強力なIgE反応性を示した。注目すべきことには、クローン10由来アレルゲンは、パン屋喘息の患者からのIgE抗体によって専ら認識されたが、小麦に対するIgE媒介食物アレルギーに苦しむ患者または草花粉アレルギーに苦しむ患者からのものでは認識されなかった。3つの各患者群からのいくつかの血清は、草花粉に対する共同感作により組換えオオアワガエリ花粉アレルゲンに対するIgE反応性を示した。パン屋喘息患者によるクローン10由来アレルゲンの特異的なIgE反応性は、セリアック病患者からのさらなる20の血清、食物アレルギーの患者からの119の血清、草花粉アレルギーの患者からの23の血清、およびパン屋喘息患者からの25の血清を用いて、チップ分析で確認した(Constantinら、未発表、データを示さず)。
パン屋喘息患者の群におけるクローン10由来アレルゲンに対するIgGサブクラス反応性の分析は、Th応答を示す、アレルゲン特異的なIgGの存在および低い範囲のアレルゲン特異的なIgGレベルを示したが、そのクローン10由来アレルゲンに特異的な関連するIgGおよびIgGの反応性は検出されなかった(図4)。
セリンプロテイナーゼインヒビター様アレルゲンに特異的なIgE抗体のアレルギーの活性を試験するために、特異的なIgE抗体を持つおよび持たない患者からの血清IgEをヒトFcεRIを発現するRBL細胞に負荷し、引き続いて、そのアレルゲンに曝露させた(図5)。患者番号1からの血清IgEを負荷したRBL細胞は、アレルゲン曝露に際して最も強い脱顆粒を示した(51%の合計のβ−ヘキソサミニダーゼ放出)。より低い脱顆粒は、患者番号4および12(各々、22%および19%)からのIgEを負荷したRBL細胞で得、それはドットブロットにおけるIgE認識の強度と対応した(図3)。RBL細胞に非アレルギー性の人からの血清(図5:NC)が負荷される場合、ほとんど脱顆粒は観察されなかった。主要なオオアワガエリ花粉アレルゲンrPhl p 1は、患者番号12からの血清IgEを負荷したRBL細胞中で強力な脱顆粒を誘導し、RBL細胞に患者番号1および4からの血清を負荷した場合には、穏やかな脱顆粒が誘導された(図5)。また、実際には、患者番号1、番号4および番号12は花粉アレルギーに苦しんだ(テーブルI)。
セリンプロテイナーゼインヒビター様アレルゲンは成熟中に小麦種子に蓄積する
クローン10由来アレルゲンに特異的なウサギ抗体を用いて、小麦種子成熟中のタンパク質の発現を調べた(図6)。種子成熟の異なる時点で採取された小麦種子からの抽出物を含有するニトロセルロースシートを、特異的なウサギ抗体および前免疫Igで探索した。クローン10−特異抗体は、セリンプロテイナーゼインヒビター様アレルゲンの四量体を表わす40kDaのタンパク質と反応した(図6)(11)。そのタンパク質の発現は、15日齢の種子において検出できるようになり、種子のさらなる成熟中に増加し続けた(図6)。ブロットが、同じウサギからの前免疫Igとインキュベートされた場合には、免疫反応性は見い出されなかった(図6)。
セリンプロテイナーゼインヒビター様アレルゲンは、小麦種子において優先的に検出される
花粉および種子を比較した場合、発明者らはセリンプロテイナーゼインヒビター様アレルゲンが、種子中で優先的に発現される(図7)が、弱いシグナルだけが小麦花粉抽出物中の約65kDaにて得られることを見い出した。汎アレルゲンプロフィリンは、小麦種子および花粉中のウサギ抗小麦種子プロフィリン抗体で検出した(図7:番号123)。前免疫Igで反応性は見い出されなかった(図7)。
次に、発明者らは、セリンプロテイナーゼインヒビター様アレルゲン特異抗体を用いて、相同タンパク質が、50%(豆)、49%(トウモロコシ、米)および33%(ジャガイモ)の配列同一性と記載されている米、トウモロコシ、一般的な豆およびジャガイモにおける交差反応性の構造を探索した(テーブルIII)。セリンプロテイナーゼインヒビター様アレルゲンは、小麦種子において四量体として再び検出し、比較可能な量の各抽出物をSDS−PAGEに付した(図8A)が、約23kDaのバンドは米において検出し、しかしながら、トウモロコシ、一般的な豆またはジャガイモにおいて反応性は見い出されなかった(図8C)。ブロットを前免疫Igとインキュベートした場合、反応性は観察されなかった(図8B)。
免疫金電子顕微鏡検査による小麦穀粒のデンプン層中およびデンプン粒間のセリンプロテイナーゼインヒビター様アレルゲンの局在
図9Aは、透過型電子顕微鏡における低倍率での小麦穀粒を介する超薄切片を示す。穀粒の主要な3つの形態成分:穀粒の外部の多層の果実および種皮(C)、デンプン層(AL)および多数の内部の始まり、デンプン質胚乳(SE)が明らかである。長方形は、B中に示された領域に匹敵する領域をマークする。図9Bは、より高倍率でのデンプン細胞および隣接するデンプン質胚乳の間の境界を示す。デンプン細胞は、小さな脂質小胞(L)に囲まれたデンプン穀粒(AG)(タンパク質液胞)で満たされる。双方の成分は細胞の細胞質基質に埋め込まれている。デンプン質胚乳は、無定形の細胞質物質の小さな間隙をまさに残して緊密に充填された可変サイズのデンプン穀粒から成る。長方形は、各々、C、DおよびE、Fにおける高倍率で示された領域を示す。図9Cは、小麦タンパク質10に対して産生されたAbsを用いてデンプン細胞中のクローン10由来アレルゲンの局在を示す。金粒子(矢印)は、細胞小器官間の細胞マトリックス中であるが、脂質小胞(L)の末梢部中での小麦タンパク質10の存在を主に示す。デンプン領域において、小麦タンパク質10は、デンプン粒(SG)間の無定形の細胞質物質(CY)と関連する(図9E)。免疫前Absでの対照実験は、非常に低い程度の非特異性の標識化を示した(図9、DおよびF)。
実施例2:組換えアレルゲンの発現および精製
実施例2は、クローン番号10、番号37、番号38、番号112、番号123および番号126と命名された6種のIgEの反応性小麦種子アレルゲンの同定およびキャラクタリゼーションを示す。さらに、実施例2は、前記のクローンの組換えアレルゲンの発現および精製のための方法を示す。
生体物質、患者血清
トリーティクム・アエスティウム栽培品種マイケルからの小麦種子をOsterreichische Agentur fur Gesundheit und Ernahrungssicherheit GmbHから得て、温室で植えた。未成熟種子を受粉開始までの25日の期間の後に直接的に液体窒素に収集し、使用まで−80℃で貯蔵した。血清は、パン屋喘息に苦しむ24名の患者から得た(テーブルIV)。パン屋喘息は、CAP−FEIAシステム(Phadia, Uppsala, Sweden) により、特定の吸入負荷試験(1)後に、病歴、合計の血清IgEレベル、小麦およびライ麦に特異的なIgEに基づき診断した(図10)。草花粉アレルギー患者からの血清をCAP−FEIAシステム(Phadia)による合計血清IgEレベルおよびIgE特異的なオオアワガエリ花粉につき分析し、小麦に対する食物アレルギー患者を従前に記載のごとく特徴付けした(2)(図11)。これらの患者の臨床データをテーブルVにまとめる。対照目的のために、非アレルギー性の個体からの血清を実験に含めた。
小麦種子からのλgt11 cDNAライブラリーの構築
Yeh[3]に従い、総RNAを−80℃で貯蔵した小麦種子から抽出した。次いで、RNAペレットをイソチオシアン酸グアニジニウム緩衝液(4Mイソチオシアン酸グアニジニウム、0.83%v/v 3M酢酸ナトリウム、pH6、0.11Mβ−メルカプトエタノール)に溶解し、塩化セシウム密度勾配超遠心によって精製した。ポリARNAは、オリゴ−dTセルロース・アフィニティークロマトグラフィー(Nucleo Trap mRNA; Machery-Nagel)によって分離し、二本鎖cDNAはcDNA合成キット(cDNA synthesis System; Roche Diagnostics, Mannheim, Germany)を介して合成した。EcoRIメチラーゼ(New England Biolabs, Beverly, MA)でのメチル化の後、EcoRIリンカー(New England Biolabs)をcDNAで消化した。リンカーcDNAは、EcoRI(Roch Diagnostics)で消化した。消化したリンカーは、Nickカラム(Pharmacia Biotech, Uppsala, Sweden)で取り出し、cDNAをλgt11アーム(Stratagene, La Jolla, CA, USA)に連結した。連結反応生成物をin vitroにて充填し(Gigapack III Gold Cloning Kit, Stratagene)、その結果、2.43×10PFU(プラーク形成単位)のλgt11発現cDNAライブラリーを得た。
小麦種子cDNAライブラリーからのIgE反応性クローンの単離およびキャラクタリゼーション
E.coli Y1090を組換えファージの7×10PFUで感染させ、記載のごとくパン屋喘息に苦しむ4名の患者(番号1、番号2、番号5、番号13)の血清IgEで免疫スクリーニングした[5]。6つのIgE反応性ファージクローンをさらなる再クローニングのために選択し、それらのDNAをλgt11プライマーでのPlatinum PCR Supermix (Invitrogen, Life Technolgies)を用いてPCR増幅し、配列決定した(MWG, Ebersberg, Germany)。得られた配列は、全米バイオテクノロジー情報センター (NCBI)でのGenBankデータベースに提出された配列と比較した。
組換えアレルゲンの発現および精製
そのクローンのコード領域は、テーブルVIにリストしたプライマーを用いるPCRによって増幅した。PCR生成物は、AccepTor Vector (Novagen, Madison, WI) にサブクローンし、再度で配列決定した(MWG)。次いで、挿入断片を含むAccepTorベクターをNdeIおよびEcoRI(Roche Diagnostics)で消化し、挿入断片をゲル精製(Promega, Madison, WI, USA)し、発現プラスミドpET 17b(Novagen)にサブクローンした。DNA配列は双方のDNA鎖を配列決定することにより確認した(Microsynth, Balgach, CH)。pET 17b−挿入断片構築体をE.coli BL21(DE3)(Stratagene)に形質転換し、0.8〜1のOD(600nm)まで、37℃で100mg/lのアンピシリンを含有するLuria Broth (LB)培地中で増殖させた。タンパク質発現は0.5mMの最終濃度までイソプロピルβ−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)の添加によって誘導し、さらに3時間細菌を増殖させた。次いで、細菌を遠心分離によって収集し、Ultraturrax (IKA, Stauffen, Germany)で25mMイミダゾール、pH7.5、0.1%(v/v)トリトンX−100中でホモジナイズした。DNAはDNアーゼIの添加によって消化し、20℃でさらに10分間撹拌し、200μlの5M NaClで停止し、次いで、4℃(6000g、20分間)で遠心した。クローン10由来アレルゲンは、QIAexpressionist handbook, protocol 17 (QIAGEN, Hilden, Germany)によるNi−NTA樹脂アフィニティカムでの変性条件下、封入体含有ペレットから精製した。組換えアレルゲンを含む画分をプールし、10mM NaHPO pH7.5に対して透析した。組換えタンパク質番号37、番号38、番号112、番号123および番号126を、QIAexpressionist handbook, protocol 12 (QIAGEN)によるNi−NTA樹脂アフィニティカムでの在来条件下で細菌可溶化液のペレットから精製した。組換えタンパク質を含有する画分をプールし、10mM NaHPO pH7.5に対して透析した。タンパク質試料は14%のSDS−PAGEゲル上での純度につき分析し、クーマシーブリリアントブルー染色によって視覚化した。タンパク濃度は Micro BCA Protein Assay Kit (Pierce, Rockford, IL)で決定した。
実施例3:アレルゲンアッセイ
実施例3は、実施例2に記載のごとく調製したその組換え小麦種子アレルゲンを明らかにするアレルゲンマイクロアッセイが、パン屋喘息患者からの血清IgEによって特異的に認識されるが、小麦に対する食物アレルギーまたは草花粉アレルギーの患者からのものでは特異的に認識されないことを示す。従って、組換えアレルゲンは小麦粉に対する呼吸アレルギーに特異的である。さらに、実施例3は、呼吸アレルギーのin vitro診断の改良のための配列におけるオオアワガエリ花粉のマーカーアレルゲンphl p1およびPhl p 5および小麦花粉の使用を示す、
技術
患者および血清
血清は、パン屋喘息に苦しむスペイン人患者(B1〜B23)、小麦誘発食物アレルギーに苦しむオーストリア人患者(F1〜F26)およびドイツ人患者(F27〜F38)ならびに草花粉アレルギーに苦しむオーストリア人患者(G1〜G17)から得た。患者は、陽性の病歴、パン屋喘息のケースにおける臨床的に関連する感作の確認のための特異的吸入負荷試験(1)、ならびに小麦に対する食物アレルギーの幼児患者における二重盲検プラセーボコントロールされた食物負荷(DBPCFC)によって選択した。すべての患者からの血清は、CAP−FEIAシステム(Phadia, Uppsala, Sweden)による合計の血清IgEレベルならびに小麦粉およびオオアワガエリ花粉に特異的なIgEにつき分析した。これらの患者の個体群統計学的、臨床的および血清学的なデータをテーブルVII、VIIIおよびIXに要約する。対照目的については、健康な個体からの血清をすべての実験に含めた。
生体物質
パン屋喘息患者からの血清でスクリーニングすることにより、cDNAライブラリーから誘導された組換え小麦タンパク質番号10、番号37、番号38、番号112、番号123および番号126をE.coli中で発現させ、記載のごとく精製した(12)。小麦花粉は、Allergon (Vallinge, Sweden)から購入し、組換えPhl p 1、Phl p 5、Phl p 7、Phl p 12は、BIOMAY (Vienna, Austria)から購入した。
タンパク質抽出物
トリーティクム・アエスティウム花粉(500mg)は5ml PBS、2mM EDTA、1mM PMSF中で4℃にて一晩抽出した。13,000×g 4℃にて1時間遠心分離後、上清のタンパク濃度をMicro BCA Protein Assay Kit (Pierce, Rockford, IL)で測定し、アリコートは使用まで−20℃で貯蔵した。
アレルゲンマイクロアレイ分析
小麦花粉抽出物、1〜1.5ng/スポット、組換えでかつ精製した小麦タンパク質および組換え草花粉アレルゲン、0.1〜0.15ng/スポットを、記載のごとく、顕微鏡スライドガラスに付けられたニトロセルロース膜上のNano Plotter NP2(Gesellschaft fuer Silizium-Mikrosysteme mbH, GroBerkmannsdorf, Germany)で点在させた(13)。精製したヒトIgEは、位置マーカーとして用いた(14)。点在させたマイクロアレイは、30μlのアッセイ緩衝液(弱リン酸緩衝液、pH7.5)で予め洗浄させ、アレルギー患者または対照からの30μlの希釈されていない血清とインキュベートした。30μlのアッセイ緩衝液での洗浄後、結合したIgE抗体を20μlのフルオロフォア結合抗IgE抗体で検出し、蛍光強度(FI)を635nm(GenePix 4000B fran Axon)の波長にて測定した。カットオフレベルは、ヒト血清アルブミンで得られた値に基づいてFI=300にセットした。
結果
患者の記載
発明者らは、パン屋喘息、小麦誘発食物アレルギーまたは草花粉アレルギーに苦しむ患者を分析した。パン屋喘息患者の群は、小麦粉に職業的に曝露する23名(4名の女性、19名の男性:平均年齢39歳、22〜60歳の範囲)から成った。パン屋喘息患者の91パーセントは、小麦粉の吸入による喘息に苦しみ、94%は鼻結膜炎の症状を訴えた。他の呼吸アレルゲン源(例えば、ネコ、ゴキブリ、イヌ、草花粉、ウマ、イエダニ、カビおよび/またはオリーブ花粉)に対する感作は、パン屋喘息患者の70%および草花粉アレルギーに苦しむ患者の48%に判明した(テーブルVII)。注目すべきことには、食物に対するアレルギーを示すパン屋喘息患者はなく、症状は呼吸徴候に制限された。
小麦誘発された食物アレルギーに苦しむ患者の群は、38名の個人(25名の女性、13名の男性:平均年齢13歳、0.5〜65歳の範囲)より成った(テーブルVIII)。再度、発明者らは、他の呼吸アレルゲン源(例えば、シラカバ花粉、草花粉、イエダニおよびヨモギ花粉)に71%が感作され、58%は、食物アレルゲン(例えば、ニンジン、牛乳、ヘーゼルナッツ、鶏卵、麦芽、ナッツ、オレンジ、プラム、米、大豆、セロリ、シーフード、エビおよび/または香辛料)に感作されたことを見出した(テーブルVIII)。草花粉に対するIgE媒介感作は、これらの患者の55%で見出された。これらの患者の症状は、呼吸器症状(例えば、喘息、気管支炎、咳、結膜炎、呼吸困難、鼻閉、鼻漏、鼻結膜炎)ないし胃腸症状(例えば、腹痛、下痢、鼓腸、咽喉痛および嘔吐)および皮膚症状(例えば、湿疹、そう痒症および蕁麻疹)(テーブルVIII)で変化した。
草花粉アレルギーの患者の群は、17名の患者(5名の女性、12名の男性:平均年齢13歳、0.5〜65歳の範囲)から成った。また、これらの患者の71パーセントは他の呼吸アレルゲン源(例えば、シラカバ花粉、ネコ、イヌ、イエダニ、ウサギおよびヨモギ花粉)に対するアレルギーに苦しんだ(テーブルIX)。血清学によれば、65%は小麦粉に対するIgE反応性を示し、23%は、他の食物アレルゲンに対するIgEを含んでいた。しかしながら、1名の患者だけが蕁麻疹に苦しみ、食物アレルギーの症状は、これらの患者につき記録することができなかった。喘息、結膜炎、呼吸困難、鼻結膜炎および鼻炎のごとき呼吸器症状は、草花粉でアレルギーの患者において優勢であった。
アレルゲンアレイの構成
番号10、番号37、番号38、番号112、番号123および番号126として指定した6つの組換え小麦種子アレルゲンを、ニトロセルロースをコーティングしたスライドガラスに点在させた(図12、A)。組換え小麦タンパク質は、記載のごときパン屋喘息患者からの血清で小麦種子cDNAライブラリーから分離したcDNAに基づいた大腸菌中で発現させた(15)。NCBIデータベースに配置した配列との相同性によれば、小麦アレルゲンは以下のように記載できる:番号10は、トリーティクム・アエスティウムサブチリシン−キモトリプシンインヒビターWSCI前駆体(受入番号gi│122065237)に対して96%の相同性を有し、番号37はT.aestivumチオレドキシンH(受入番号gi│27461140)であり、番号38はT.aestivumグルタチオントランスフェラーゼ(受入番号gi│20067419)であり、番号112は、T.aestivum 1−Cys−ペロキシレドキシン(受入番号gi│34539782)と99%の相同性を有し、番号123はT.aestivumプロフィリン(受入番号gi│1346803)と96%の相同性を有し、番号126は、オオムギデヒドリン(Hordeum vulgare dehydrin)11(受入番号gi│4105101)と69%の相同性を有する。
また、組換え小麦アレルゲンに加えて、小麦花粉抽出物、組換えオオアワガエリ花粉アレルゲン(rPhl p 1、rPhl p 5、rPhl p 7およびrPhl p 12)(16〜19)およびIgEをスライド上に点在させた(図12、A)。血清とのインキュベーション後のアレルゲンマイクロアレイの代表的な画像を図12、B〜Cに示す。非アレルギー性の人からの血清で探索したチップ上では、いずれのアレルゲンとの反応性も検出できなく、点在したIgEマーカーだけが、抗IgE結合で検出したことが示された(図12、B)。図12において、Cは、パン屋喘息患者(1)、小麦誘発食物アレルギー患者(2)および草花粉アレルギー患者(3)からの血清とインキュベートしたマイクロアレイチップの代表的画像を示す。パン屋喘息患者(1:テーブルI:B4)は、組換え小麦アレルゲン番号10に強力なIgE反応性を示し、番号126および番号112に弱い反応性を示す。食物アレルギー患者(2:テーブルVIII:F26)については、小麦番号123およびオオアワガエリ花粉rPhl p 12からの組換えプロフィリンに対する強いIgE結合、ならびに小麦花粉抽出物およびrPhl p 1に対する弱い結合を観察した。花粉アレルギー患者(3:G16)からのチップの画像は、rPhl p 5およびrPhl p 12に強いシグナルを示し、小麦プロフィリン番号123、小麦花粉抽出物およびrPhl p 1でより弱いシグナルを示す。
パン屋喘息患者からのIgE抗体によって特異的に認識された小麦種子アレルゲンの同定
パン屋喘息患者の91パーセントは、小麦粉CAPにおいて陽性であった(テーブルVII)。点在した小麦アレルゲンを用いて、パン屋喘息患者の62%についてのIgE反応性プロフィールを確立した。アレルゲン番号126(30%)、番号10(26%)、番号123(22%)および番号122(17%)は、最も頻繁に検出した成分であったが、番号37および番号38は血清の4%だけで反応した(図13、A)。注目すべきことには、小麦粉CAPにおいて陰性であった2名の患者(B5、B18:テーブルVII)は、アレルゲン番号126と反応した。パン屋喘息患者の48パーセントはオオアワガエリ花粉抽出物に対するIgE反応性を示し、また、これらの患者の各々を点在したrPhl p 1およびrPhl p 5の組合せで診断した。組換えPhl p 12(35%)は常により強く、小麦プロフィリン番号123(22%)よりもよりしばしば認識された。交差反応性の花粉アレルゲンrPhl p 7は13%の血清と反応した。
パン屋喘息患者によって認識した組換え小麦種子アレルゲンは、小麦誘発食物アレルギーに苦しむ患者のIgE抗体についての標的ではない
小麦に対する食物アレルギーの患者のすべては小麦粉CAPにおいて陽性であるが、組換え小麦タンパク質は、ほとんど認識されなかった(5%)(図13、B)。また、交差反応性のオオアワガエリ花粉プロフィリンに陽性であった2名の患者は、マイクロアレイにおける小麦プロフィリン番号123に対して陽性のシグナルを有した。小麦誘発食物アレルギーの患者の55パーセントは、Phleum CAPにおいてIgE反応性を示し、まさに18%はそのチップ上の小麦花粉抽出物に陽性であり、点在させたrPhl p 1およびrPhl p 5の組合せ中では26%が陽性であった。点在させたrPhl p 1およびrPhl p 5単独は、各々、血清の18%および16%だけ認識され、交差反応性アレルゲンrPhl p 7およびrPhl p 12は、血清の13%および26%で反応した。
rPhl p 1およびrPhl p 5は、草花粉アレルギーについての診断マーカー・アレルゲンであるが、プロフィリンはパン屋喘息および小麦食物アレルギーの患者によって認識される。
草花粉アレルギー患者の65パーセントが小麦粉CAPに陽性であった。マイクロアレイ中でテストした組換え小麦タンパク質のうち、組換え小麦タンパク質番号123だけが23.5%の患者によって認識された(図13、C)。また、これらの各患者は、交差反応性オオアワガエリ花粉プロフィリンrPhl p 12に陽性であった。しかし、rPhl p 12は常により強力であり、番号123よりもしばしば(35%)認識された。花粉アレルギーに苦しむすべての患者は、オオアワガエリ花粉CAPに対して、および点在したrPhl p 1およびrPhl p 5の組合せにおいて陽性であった。組換えPhl p 1単独は、花粉アレルギーの患者によるrPhl p 5(88%)よりもよりしばしば認識された(94%)。小麦花粉抽出物は、82%の血清と、交差反応性rPhl p 7は、血清の29%と反応した。
草花粉アレルギー患者および草花粉アレルギーのパン屋喘息患者のすべてが、マイクロアレイにおけるrPhl p 1およびrPhl p 5の組合せおよびPhleum CAPにおいて陽性であった(図13、A;C)。これらの所見は、草花粉アレルギーをrPhl p 1およびrPhl p 5に対するIgE反応性によって診断できることを示す以前に公開されたデータに一致している(20、21)。しかしながら、小麦誘発食物アレルギーの患者のうち、26%だけが、マイクロアレイ中のrPhl p 1およびrPhl p 5と反応したが、2倍を超える多数(55%)が、Phleum CAPにおいて陽性であった(図13、B)。さらに、CAPシステムにおける草花粉抽出物およびマイクロアレイ中のオオアワガエリ花粉プロフィリン(rPhl p 12)と反応するそれらの患者も、植物プロフィリン(23)の交差反応性により小麦プロフィリン(22)に陽性であった。しかしながら、IgE認識の頻度および強度は、小麦プロフィリン(22)に対してよりもrPhl p 12に常により強力であった。
実施例4
分析物は、ImmunoCAP(Phadia, Uppsala, Sweden)のごとき固体担体に固定する。アレルゲンに感作され、そのアレルゲンにIgE反応性を示す少なくとも3つの代表的なヒト患者からの血清試料を、100μg/mLの最終濃度のアレルゲンと、ならびに平行して陰性対照として、緩衝液単独および大腸菌の非アレルギー性のマルトース結合タンパク質(MBP)と、室温にて3時間インキュベートする。 次いで、試料を固定化分析物を運ぶImmunoCAP (Phadia, Uppsala, Sweden)テストに対するIgE結合につき分析して、アレルゲンとの予めのインキュベーションがIgE結合を特異的に抑制するか、またはIgEを有意に低下させるかを試験する。
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Claims (15)

  1. 配列番号2、8または10に記載のアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチド。
  2. 小麦から単離された、または組換え生成された請求項1記載のポリペプチド。
  3. 請求項1または2に記載のポリペプチドをコードする、単離された核酸分子。
  4. 配列番号1、7または9に記載のヌクレオチド配列を有する請求項3記載の核酸分子。
  5. 治療または診断に用いる請求項1もしくは2に記載のポリペプチド、または抗体用エピトープを該ポリペプチドと共有するその断片もしくは変異体。
  6. IgE媒介アレルギーの治療または診断に用いる請求項1もしくは2に記載のポリペプチド、または抗体用エピトープを該ポリペプチドと共有するその断片もしくは変異体。
  7. 治療または診断に用いる配列番号4もしくは6に記載のアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチド、または抗体用エピトープを該ポリペプチドと共有するその断片もしくは変異体。
  8. IgE媒介アレルギーの治療または診断に用いる配列番号4もしくは6に記載のアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチド、または抗体用エピトープを該ポリペプチドと共有するその断片もしくは変異体。
  9. 配列番号2、4、6、8もしくは10に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド、またはそのIgE結合反応を抑止もしくは減弱するように改変された該ポリペプチドの低アレルギー性形態、ならびに所望による医薬上許容される賦形剤、担体、緩衝剤および/または希釈剤を含む医薬組成物。
  10. ポリペプチドの該低アレルギー性形態が、分子の断片化、トランケーションまたはタンデム化、内部セグメントの欠失、ドメイン再構成、アミノ酸残基の置換、ジスルフィド架橋の崩壊により改変される請求項9記載の医薬組成物。
  11. 配列番号2、4、6、8もしくは10に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド、または抗体用エピトープを該ポリペプチドと共有するその断片もしくは変異体を、アレルゲン抽出物および/または少なくとも1つの精製されたアレルゲン成分を含む組成物に添加する工程を含むことを特徴とする、アレルゲン組成物の生成方法。
  12. 請求項11記載の方法で得られたアレルゲン組成物。
  13. − IgE媒介アレルギーを有することが疑われる哺乳動物からの体液試料を、配列番号2、4、6、8もしくは10に記載のアミノ酸配列を有する少なくとも1つのポリペプチドと接触させ;次いで
    − 該ポリペプチドまたは複数の該ポリペプチドに特異的に結合しているIgE抗体のその試料中での存在を検出する
    工程を含み、ここに、該ポリペプチドまたは複数の該ポリペプチドに特異的に結合しているかかる抗体の存在は、IgE媒介アレルギーを示すことを特徴とする、IgE媒介アレルギーのin vitro診断のための方法。
  14. IgE媒介アレルギーが、小麦粉に対する呼吸アレルギーであることを特徴とする請求項13記載の方法。
  15. 配列番号2、4、6、8もしくは10に記載のアミノ酸を有するポリペプチド、もしくは抗体用エピトープを該ポリペプチドと共有するその断片もしくは変異体、または請求項9もしくは10に記載の組成物を含む、請求項13または14に記載の方法を行なうための診断キット。
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