JP2011504732A - 向上したピロリン酸分解活性化重合(pap)能力を有する変異dnaポリメラーゼ - Google Patents

向上したピロリン酸分解活性化重合(pap)能力を有する変異dnaポリメラーゼ Download PDF

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Abstract

対応する非改変ポリメラーゼと比較して伸長速度が向上している変異DNAポリメラーゼを開示する。当該変異ポリメラーゼは、開示される様々なプライマー伸長方法において有用である。また、例えば変異DNAポリメラーゼの作製に有用である、組み換え核酸、ベクター、及び宿主細胞を含む関連組成物を開示する。

Description

本発明は、DNAポリメラーゼの分野、及び様々な応用におけるその使用、例えばピロリン酸分解活性化重合等の分野に属する。
ピロリン酸分解活性化重合(PAP)は、(1又は複数の)プライマーが、伸長可能となる前に、ピロリン酸分解により除去されるべき伸長ターミネーターとなるPCR法である。「ピロリン酸分解」は、DNAポリメラーゼによりプライマー鋳型(primed template)の伸長の単なる逆行である(すなわち、当該プライマー鎖へのdNMP残基の付加)。「順方向」反応(すなわち、プライマー鋳型の伸長)においては、ピロリン酸が作製され、dNTPが消費され、dNMPが、当該プライマーの3’末端へ付加される。「逆方向」反応(すなわち、ピロリン酸分解)においては、ピロリン酸が消費され、dNMPが当該プライマー鎖の3’末端から除去されると、dNTPが作製される。伸長できない残基(「ターミネーター」)になってしまっているプライマー鋳型は、ポリメラーゼが当該ターミネーターを取り込むことができ、且つピロリン酸が存在する場合に、ピロリン酸分解を受けると予想される。PAPにおいて、これらのブロックプライマー(blocked primer)の使用では、ターミネーター除去を最大速度で行うために、ピロリン酸分解が完全に一致したプライマー:鋳型複合体を必要とするため、希少対立遺伝子(rare allele)検出を考慮する。
本発明は、対応する非改変DNAポリメラーゼと比較して、ピルビン酸分解活性化重合が向上したDNAポリメラーゼを提供する。本明細書で記載されるDNAポリメラーゼは、3’末端にターミネーターヌクレオチドを含むプライマーを用いるポリヌクレオチド鋳型の逆転写又は増幅において有用である。本発明のポリメラーゼは、例えば、組換えDNA研究、及び希少対立遺伝子検出を必要とする疾患の医療診断において用途がある。ある実施態様によれば、DNAポリメラーゼは、アミノ酸配列、R−X1−X2−X3−K−L−X4−X5−X6−Y−X7−X8−X9−X10−X11(配列番号1)を含んでなり、ここで、X1−X5、及びX7−X11は、任意のアミノ酸であり、X6はTではない。本発明の好ましい実施態様によれば、X2は、(L)、(I)、又は(Y)であり;X4は、(K)、(R)、又は(Q)であり;X5は、(N)、(S)、又は(G)であり;X6は(T)以外の任意のアミノ酸であり;X8は、(D)又は(E)であり;X10は、(L)又は(I)であり;及びX11は、(P)又は(L)である(配列番号36)。ある実施態様によれば、ポリメラーゼは、X6がTであり他の部分は同一のポリメラーゼと比較して、ブロックプライマーの核酸伸長速度が向上している。本発明の好ましい実施態様によれば、X1は、(E)、(Q)、(G)、(K)、又は(T);X3は、(T)、(M)、(D)、(S)、(G)、(A)、(Q)、又は(L);X7は、(V)、(I)、(L)、(A)、又は(T);及びX9は、(P)、(A)、(G)、(K)、(T)、又は(S)である(配列番号37)。ある実施態様によれば、X8は、(G)、(A)、(L)、(M)、(F)、(W)、(K)、(Q)、(E)、(S)、(P)、(V)、(I)、(C)、(Y)、(H)、(R)、(N)、及び(D)である(配列番号38)。好ましい実施態様によれば、X8はSである(配列番号39)。
ある実施態様によれば、DNAポリメラーゼは、アミノ酸配列、X1−X2−X3−X4−−K−X5−X6−X7−X8−X9−X10−X11−X12−X13−X14−X15−X16(配列番号2)を含んでなり、ここで、X1−X9及びX11−X15は、任意のアミノ酸であり、X10は、T又はAではない。ある実施態様によれば、X1は、R又はL;X3は、L、I、又はY;X5は、R又はL;X6は、I又は欠損;X7は、G又は欠損;X8は、K、R、又はQ;X9は、N、S、又はG;X10は、T又はA以外の任意のアミノ酸;X11は、Y又はE;X13は、D又はE;X15は、L、I、又はA;及びX16は、P、L、又はWである(配列番号40)。ある実施態様によれば、ポリメラーゼは、X10がT又はAであり他の部分は同一であるDNAポリメラーゼと比較して、核酸伸長速度が向上している。ある実施態様によれば、X2は、(E)、(Q)、(G)、(K)、(T)、又は(M);X4は、(T)、(M)、(D)、(S)、(G)、(A)、(Q)、又は(L);及びX12は、(V)、(I)、(L)、(A)、(T)、又は(G);及びX14は、(P)、(A)、(G)、(K)、(T)、又は(S)である(配列番号41)。ある実施態様によれば、X10は、(G、(L)、(M)、(F)、(W)、(K)、(Q)、(E)、(S)、(P)、(V)、(I)、(C)、(Y)、(H)、(R)、(N)、及び(D)からなる群から選択される(配列番号42)。本発明の好ましい実施態様によれば、X10はSである(配列番号43)。
ある実施態様によれば、本発明のDNAポリメラーゼは、非改変ポリメラーゼの改変版である。その非改変体で当該ポリメラーゼは、一般的に、DNA鋳型と完全に一致する場合、3'末端にターミネーターヌクレオチドを有するブロックプライマーを伸長させるPAP能を有し、且つ以下のモチーフ:R−X1−X2−X3−K−L−X4−X5−X6−Y−X7−X8−X9−X10−X11(配列番号24)(ここで、X1−X5、及びX7−X11は任意のアミノ酸であり、且つX6はTである)を有するアミノ酸配列を含む。ある実施態様によれば、ポリメラーゼが配列番号24において示されるモチーフを有する場合、X2は、(L)、(I)、又は(Y);X4は、(K)、(R)、又は(Q);X5は、(N)、(S)、又は(G);X6は、(T);X8は、(D)又は(E);X10は、(L)又は(I);及びX11は、(P)又は(L)である(配列番号44)。
ポリメラーゼの改変体は、その非改変体と比較して、少なくともX6の位置にアミノ酸置換を含み、且つその非改変体と比較して、ブロックプライマーの核酸伸長速度が向上していることをさらなる特徴とする。ある実施態様によれば、X1は、(E)、(Q)、(G)、(K)、又は(T);X3は、(T)、(M)、(D)、(S)、(G)、(A)、(Q)、又は(L):X7は、(V)、(I)、(L)、(A)、又は(T);及びX9は、(P)、(A)、(G)、(K)、(T)、又は(S)である(配列番号45)。ある実施態様によれば、位置X6のアミノ酸は、(G)、(A)、(L)、(M)、(F)、(W)、(K)、(Q)、(E)、(S)、(P)、(V)、(I)、(C)、(Y)、(H)、(R)、(N)、及び(D)からなる群から選択される(配列番号46)。他の実施態様によれば、位置X6のアミノ酸は、(S)である(配列番号47)。
ある実施態様によれば、その非改変体のDNAポリメラーゼは、以下のモチーフ:X1−X2−X3−X4−K−X5−X6−X7−X8−X9−X10−X11−X12−X13−X14−X15−X16(配列番号25)を有するアミノ酸配列を含み、ここで、X1−X9及びX11−X16は、任意のアミノ酸であり、X10は、T又はAである。ある実施態様によれば、X1は、R、又はL;X3は、L、I、Y;X5は、R、又はL;X6は、I又は欠損;X7は、G又は欠損;X8は、K、R、又はQ;X9は、N、S、又はG;X10は、T又はA;X11は、Y又はE;X13は、D又はE;X15は、L、I、又はA;及びX6は、P、L、又はWである(配列番号47)。
ポリメラーゼの改変体は、非改変体と比較して、少なくともX10の位置にアミノ酸置換を含み、ここでポリメラーゼの改変体は、その非改変体と比較して、ブロックプライマーの核酸伸長速度が向上していることをさらなる特徴とする。ある実施態様によれば、X2は、(E)、(Q)、(G)、(K)、(T)、又は(M);X4は、(T)、(M)、(D)、(S)、(G)、(A)、(Q)、又は(L);及びX12は、(V)、(I)、(L)、(A)、(T)、又は(G);及びX14は、(P)、(A)、(G)、(K)、(T)、又は(S)である(配列番号49)。ある実施態様によれば、X10は、(G)、(L)、(M)、(F)、(W)、(K)、(Q)、(E)、(S)、(P)、(V)、(I)、(C)、(Y)、(H)、(R)、(N)、及び(D)からなる群から選択される(配列番号50)。他の実施態様によれば、X10はSである(配列番号51)。
本発明による変異の影響を受け易いDNAポリメラーゼは多様である。特に好適なものには、熱安定性DNAポリメラーゼであり、好熱性細菌の様々な種由来の野生型又は天然型の熱安定性ポリメラーゼ、及びアミノ酸置換、挿入、欠失、又は他の改変による、野生型又は天然型の酵素等に由来する熱安定性ポリメラーゼがる。ポリメラーゼの例示的非改変体には、例えば、CS5もしくはCS6 DNAポリメラーゼ、又はそれと少なくとも90%の配列同一性を有する機能的DNAポリメラーゼがある。他の好適な非改変ポリメラーゼには、例えば、以下の好熱性細菌種のいずれかに由来するDNAポリメラーゼ(又は、当該ポリメラーゼと少なくとも90%の配列同一性を有する機能的DNAポリメラーゼ)があり、その種としては、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)、サーマス・カルドフィルス(Thermus thermophilus)、サーマス種Z05、サーマス・アクアティクス(Thermus aquaticus)、サーマス・フラバス(Thermus flavus)、サーマス・フィリフォルミス(Thermus filiformis)、サーマス種sps17、サーモトガ・マリチマ(Thermotoga maritima)、サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)、サーモシフォ・アフリカヌス(Thermosipho africanus)がある。本発明の原理を有する変異体に適するさらなるポリメラーゼには、逆転写酵素活性を有するポリメラーゼ又はPAP能を有するポリメラーゼがある。
ある実施態様によれば、ポリメラーゼの非改変体は、キメラポリメラーゼを含んでなる。ある実施態様によれば、例えば、キメラポリメラーゼの非改変体は、CS5 DNAポリメラーゼ(配列番号20)、CS6 DNAポリメラーゼ(配列番号21)、又はCS5 DNAポリメラーゼもしくはCS6 DNAポリメラーゼと少なくとも90%の配列同一性を有するポリメラーゼである。特定の変形においては、キメラポリメラーゼの非改変体には、配列番号20又は配列番号21と比較して、1又は複数のアミノ酸置換があり、それは、G46E、L329A、Q601R、D640G、I669F、S671F、及びE678Gから選択される。例えば、変異ポリメラーゼの非改変体を、G46E;G46E L329A;G46E E678G;G46E L329A E678G;G46E S671F;G46E D640G;G46E Q601R;G46E I669F;G46E D640G S671F;G46E L329A S671F;G46E L329A D640G;G46E L329A Q601R;G46E L329A I669F;G46E L329A D640G S671F;G46E S671F E678G;又はG46E D640G E678Gとしてもよい。例示的な実施態様によれば、これらの非改変体は、T606Sを有する変異ポリメラーゼを提供するように置換される。例えば、変異キメラDNAポリメラーゼは、G46E T606S;G46E L329A T606S;G46E T606S E678G;G46E L329A T606S E678G;G46E T606S S671F;G46E T606S D640G;G46E Q601R T606S;G46E T606S I669F;G46E T606S D640G S671F;G46E L329A T606S S671F;G46E L329A T606S D640G;G46E L329A Q601R T606S;G46E L329A T606S I669F;G46E L329A T606S D640G S671F;G46E T606S S671F E678G;G46E T606S D640G E678G等のいずれか1つとすることができる。
様々な他の態様によれば、本発明は、本明細書に記載のDNAポリメラーゼをコードする組換え核酸、組換え核酸を含んでなるベクター、及び当該ベクターで形質転換された宿主細胞を提供する。特定の実施態様によれば、ベクターは、発現ベクターである。かかる発現ベクターを含んでなる宿主細胞は、組換え核酸の発現に適する条件下、宿主細胞を培養することによりポリメラーゼを作製する方法の発明において、有用である。
さらに別の態様によれば、ブロックプライマーを用いるプライマー伸長を行うための方法を提供する。当該方法は、一般的に、ターミネーターヌクレオチドの除去、及び当該プライマーの伸長に適する条件下で、本発明のDNAポリメラーゼを、3’末端にターミネーターヌクレオチドを有するプライマー、ポリヌクレオチド鋳型、ピロリン酸(PPi)及び遊離ヌクレオチドと接触させ、それによりピロリン酸分解活性化重合(PAP)を介して、伸長プライマーを作製することを含む。遊離ヌクレオチドは、例えばリボヌクレオチド及び/又は標識部分等の従来と異なるヌクレオチドを含んでもよい。さらに、当該プライマー及び/又は鋳型は、1又は複数の類似体を含んでもよい。ある変形においては、プライマー伸長方法は、ポリヌクレオチドの増幅のために適する条件下、本発明のDNAポリメラーゼを、プライマー対、ポリヌクレオチド鋳型、及び遊離ヌクレオチドと接触させることを含む、ポリヌクレオチド増幅のための方法である。
本発明はまた、PAP方法を行う際に有用なキットを提供する。一般的には、当該キットには、本明細書に記載される発明のDNAポリメラーゼを提供する、少なくとも1つの容器が含まれる。特定の実施態様によれば、当該キットには、1又は複数の追加の試薬を提供する、1又は複数の追加の容器がさらに含まれる。例えば、特定の変形においては、当該1又は複数の追加の容器は、遊離のヌクレオチド;PAPに適する緩衝剤;及び/又はPAP条件下で規定のポリヌクレオチド鋳型とハイブリダイズ可能なプライマーを提供する。ある実施態様によれば、当該プライマーは、3'末端に伸長不可能なターミネーターヌクレオチドを有する。
図1は、好熱性細菌及びバクテリオファージT7の様々な種由来の、例示的な熱安定性DNAポリメラーゼのポリメラーゼドメイン由来の領域のアミノ酸配列配列比較を示すものであり:サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)(Tth)(配列番号3)、サーマス・カルドフィルス(Thermus thermophilus)(Tca)(配列番号4)、サーマス種Z05(Z05)(配列番号5)、サーマス・アクアティクス(Thermus aquaticus)(Taq)(配列番号6)、サーマス・フラバス(Thermus flavus)(Tfl)(配列番号7)、サーマス・フィリフォルミス(Thermus filiformis)(Tfi)(配列番号8)、サーマス種sps17(sps17)(配列番号9)、デイノコッカス・ラディオデュランス(Deinococcus radiodurans)(Dra)(配列番号10)、ホット・スプリング・ファミリーB/クローン7(HspB7)(配列番号11)、バチルス・ステレオサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)(Bst)(配列番号12)、バチルス・ステレオサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)(Bca)(配列番号13)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)(配列番号14)、サーモトガ・マリチマ(Thermotoga maritima)(Tma)(配列番号15)、サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)(Tne)(配列番号16)、サーモシフォ・アフリカヌス(Thermosipho africanus)(Taf)(配列番号17)、ホット・スプリング・ファミリーA(HspA)(配列番号18)、キメラ熱安定性DNAポリメラーゼCS5(配列番号28)、キメラ熱安定性DNAポリメラーゼCS6(配列番号29)及びバクテリオファージT7(T7)(配列番号19)である。さらに、これらの例示的な配列の中でコンセンサスアミノ酸配列を示す配列(配列番号30)も含まれる。コンセンサス配列における下線を引いた残基は、各々の細菌種、及びバクテリオファージT7で保存され、一方、コンセンサス配列における残りの残基(すなわち、下線が引いてないもの)は、細菌種においては保存されるが、バクテリオファージT7では保存されていない。これらのモチーフは、CS5ポリメラーゼ配列で太字で強調される。本発明により変異の影響を受け易いアミノ酸位置は、アステリスク(*)で示す。
図2Aは、キメラ熱安定性DNAポリメラーゼCS5のアミノ酸配列(配列番号20)を示す。 図2Bは、キメラ熱安定性DNAポリメラーゼCS5をコードする核酸配列(配列番号22)を示す。 図2Bは、キメラ熱安定性DNAポリメラーゼCS5をコードする核酸配列(配列番号22)を示す。 図3Aは、キメラ熱安定性DNAポリメラーゼCS6のアミノ酸配列(配列番号21)を示す。 図3Bは、キメラ熱安定性DNAポリメラーゼCS6をコードする核酸配列(配列番号23)を示す。 図3Bは、キメラ熱安定性DNAポリメラーゼCS6をコードする核酸配列(配列番号23)を示す。 図4は、ブロックオリゴ二重鎖を有するM13鋳型のプライマー伸長の結果を示す。 図5は、変異ポリメラーゼが、親の野生型よりも、ブロックプライマーをより速く活性化できることを示す。 図6は、変異導入が、非ブロックプライマーを伸長させるポリメラーゼ能に悪影響を及ぼさなかったことを示す。 図7は、T606変異体が、1000−G2クローンにおけるブロックプライマーの活性の向上に関与したことを示す。 図8は、GLTDSE変異体が、ブロックプライマーを活性化において、その親クローンのいずれかよりも速いことを示す。
定義
特に規定しない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する当該技術分野における通常の技能を有する者により、通常理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと本質的に類似する任意の方法及び原料は、本発明の実施又は試験において使用できるが、例示的な方法及び原料のみを記載する。本発明の目的に応じて、以下の用語を以下の通り定義する。
「1つの、その(a、an、及びthe)」なる用語には、文脈において明確にそうでないと指示しない限り、複数指示対象を含む。
本発明で使用される「ピロリン酸分解(pyrophosphorolysis)」なる用語は、ピロリン酸(PPi)の存在下で、核酸の3'末端から、1又は複数のヌクレオチドを除去し、1又は複数のヌクレオチド三リン酸を作製することを言う。
本明細書で使用される場合、「ピロリン酸分解活性化重合」又は「PAP」なる表現は、3'末端に伸長不可能なターミネーターヌクレオチドを有するプライマーを含んでなる方法のことを言う。ピロリン酸(PPi)、及び完全に一致する鋳型への、当該ブロックプライマーのハイブリダイゼーションの存在下で、本発明のDNAポリメラーゼは、プライマーの3'末端の伸長不可能なターミネーターヌクレオチドを除去することになる。その後、ポリメラーゼは、伸長不可能なターミネーターヌクレオチドの除去によって新たに創生された3'末端から、鋳型に沿ってプライマーを伸長させることになる。本発明の改変もしくは変異ポリメラーゼを用いるブロックプライマーの伸長速度が、同じ条件下で、変異もしくは改変を持たないポリメラーゼの伸長速度よりも統計的に高い場合、本発明のDNAポリメラーゼは、「向上したPAP能」を有すると判断される。ある実施態様によれば、向上したPAP能を有するポリメラーゼは、変異もしくは改変を持たないポリメラーゼに対して、ブロックプライマーの伸長速度を少なくとも20%増加させることになる。ある実施態様によれば、本発明のポリメラーゼは、ブロックプライマー伸長速度が、少なくとも50%増加することになる。ある実施態様によれば、本発明のポリメラーゼは、同じ条件下で、改変もしくは変異を持たない同じポリメラーゼに対し、ブロックプライマーの伸長速度が、少なくとも100%、又はそれ以上の増加をすることになる。
「アミノ酸」は、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質に組み込むことができる、任意のモノマー単位のことを言う。本明細書で使用される場合、「アミノ酸」なる用語には、以下の20個の天然又は遺伝子的にコードされるアルファ−アミノ酸が含まれ、アラニン(Ala又はA)アルギニン(Arg又はR)、アスパラギン(Asn又はN)、アスパラギン酸(Asp又はD)、システイン(Cys又はC)、グルタミン(Gln又はG)、グルタミン酸(Glu又はE)、グリシン(Gly又はG)、ヒスチジン(His又はH)、イソロイシン(Ile又はI)、ロイシン(Leu又はL)、リジン(Lys又はK)、メチオニン(Met又はM)、フェニルアラニン(Phe又はF)、プロリン(Pro又はP)、セリン(Ser又はS)、スレオニン(Thr又はT)、トリプトファン(Trp又はW)、チロシン(Tyr又はY)、及びバリン(Val又はV)がある。これらの20個の天然アミノ酸の構造は、例えば、Stryer et al., Biochemistry, 5th ed., Freeman及びCompany (2002)に示されている。セレノシステイン及びピロリジン等のさらなるアミノ酸も、(Stadtman (1996)”Selenocysteine," Annu Rev Biochem. 65 :83−100 and Ibba et al. (2002) ”Genetic code: introducing pyrrolysine," Curr Biol. 12(13):R464−R466)により、遺伝子的にコードすることができる。「アミノ酸」なる用語には、非天然アミノ酸、改変アミノ酸(例えば、改変した側鎖及び/又は骨格を有する)、及びアミノ酸類似体も含まれる。例えば、Zhang et al. (2004)"Selective incorporation of 5−hydroxytryptophan into proteins in mammalian cells," Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 101(24):8882−8887, Anderson et al. (2004)"An expanded genetic code with a functional quadruplet codon" Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 101(20):7566− 7571, Dceda et al. (2003)"Synthesis of a novel histidine analogue and its efficient incorporation into a protein in vivo," Protein Eng. Pes. SeI. 16(9):699−706, Chin et al. (2003)"An Expanded Eukaryotic Genetic Code,” Science 301(5635):964−967, James et al. (2001)"Kinetic characterization of ribonuclease S mutants containing photoisomerizable phenylazophenylalanine residues,” Protein Eng. Pes. Sel. 14(12):983−991, Kohrer et al. (2001)"Import of amber and ochre suppressor tRNAs into mammalian cells: A general approach to site−specific insertion of amino acid analogues into proteins," Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 98(25): 14310−14315, Bacher et al. (2001)"Selection and Characterization of Escherichia coli Variants Capable of Growth on an Otherwise Toxic Tryptophan Analogue," J. Bacteriol. 183(18):5414−5425, Hamano−Takaku et al. (2000)"A Mutant Escherichia coli Tyrosyl−tRNA Synthetase Utilizes the Unnatural Amino Acid Azatyrosine More Efficiently than Tyrosine," J. Biol. Chem. 275(51):40324−40328, 及び Budisa et al. (2001)"Proteins with β−(thienopyrrolyl)alanines as alternative chromophores and pharmaceutically active amino acids." Protein Sci. 10(7):1281−1292.を参照されたい。
さらに例示すると、アミノ酸は、置換もしくは未置換アミノ基、置換もしくは未置換カルボキシ基、及び1又は複数の側鎖もしくは基、又はこれらの基の任意の類似体を含む、典型的な有機酸である。例示的な側鎖には、例えば、チオール、セレノ、スルホニル、アルキル、アリール、アシル、ケト、アジド、ヒドロキシ、ヒドラジン、シアノ、ハロ、ヒドラジド、アルケニル、アルキニル、エーテル、ボレート、ボロネート、ホスホ、ホスホノ、ホスフィン、複素環、エノン、イミン、アルデヒド、エステル、チオ酸、ヒドロキシルアミン、又はこれらの基の任意の組み合わせがある。他の代表的なアミノ酸には、限定するものではないが、光活性化可能な架橋剤、金属結合アミノ酸、スピンラベルアミノ酸、蛍光アミノ酸、金属含有アミノ酸、新規な官能基を有するアミノ酸、他の分子、フォトケージ化(photocaged)及び/又は光異性化アミノ酸と共有的もしくは非共有的に相互作用するアミノ酸、放射性アミノ酸、ビオチンもしくはビオチン類似体を含むアミノ酸、糖化アミノ酸、他の炭水化物改変アミノ酸、ポリエチレンもしくはポリエーテルを含むアミノ酸、重原子置換アミノ酸、化学的開裂可能及び/又は光開裂可能なアミノ酸、C結合型糖含有アミノ酸、酸化還元活性アミノ酸、アミノチオ酸含有アミノ酸、及び1又は複数の毒性部分を含むアミノ酸がある。
本発明のDNAポリメラーゼとの関連で、「変異体」なる用語は、対応するDNAポリメラーゼの非改変体と比較して、1又は複数のアミノ酸置換、付加、又は欠失を含むように変換された、典型的には組換え体のポリペプチドを意味する。
本発明のDNAポリメラーゼとの関連で「改変体」又は「改変された変異体」なる用語は、少なくとも配列番号24において位置X6の残基がTでないか、配列番号25においてX10がTもしくはAでない機能性DNAポリメラーゼのことを言い、ここで当該ポリメラーゼは、このポリメラーゼの非改変体に対し、向上したPAP能を呈する。
本発明のDNAポリメラーゼとの関連で「非改変体」又は「非改変変異体」なる用語は、少なくとも配列番号24において位置X6の残基がTであるか、配列番号25においてX10がTもしくはAである機能性DNAポリメラーゼのことを言う。発明のDNAポリメラーゼの非改変体は、例えば、野生型及び/又は天然のDNAポリメラーゼである。DNAポリメラーゼの非改変体はまた、所望の機能性を提供するために、例えば、ジデオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、リボヌクレオチド類似体、色素標識ヌクレオチド、調節5'−ヌクレアーゼ活性、調節3'−ヌクレアーゼ(又はプルーフリーディング)活性等の取り込みを向上させるため、配列番号24における位置X6、又は配列番号25におけるX10以外の位置で意図的に変異導入した変異タンパク質であってもよい。ポリメラーゼの非改変体は、好ましくは、様々な好熱細菌、及び野生型もしくは天然の熱安定性ポリメラーゼと実質的に配列同一であるその機能的変種由来のDNAポリメラーゼ等の、熱安定性DNAポリメラーゼである。かかる変種には、例えば、キメラDNAポリメラーゼ、例えば、米国特許第6,228,628号及び米国特許出願第2004/0005599号に記載のキメラDNAポリメラーゼがあってもよい。特定の実施態様によれば、ポリメラーゼの非改変体は、ピロリン酸分解活性化重合(PAP)能を有する。
「熱安定性ポリメラーゼ」なる用語は、熱に対して安定であり、熱耐性があり、そして二本鎖核酸の変性を有効にするために必要な、経時的な温度上昇を受けた場合、次のプライマー伸長反応を有効にする十分な活性を残し、且つ不可逆的変性(不活性)状態にならない酵素のことを言う。核酸変性のために必要な加熱条件は、当該技術分野で周知であり、例えば、米国特許第4,583,202号、第4,683,195号、及び第4,985,188号等に例示される。本明細書で使用される場合、熱安定性ポリメラーゼは、ポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)等の温度連鎖反応における使用に適する。本明細書の目的で「付加逆的変性」は、酵素活性の恒久的且つ完全な損失のことを言う。熱安定性ポリメラーゼについて「酵素活性」は、鋳型核酸鎖に相補的であるプライマー伸長産物を形成させるための適切な手法でヌクレオチドの組み合わせの触媒のことを言う。非限定的、例示的な、好熱細菌由来の熱安定性DNAポリメラーゼには、例えば、サーモトガ・マリチマ、サーマス・アクアティクス、サーマス・サーモフィルス、サーマス・フラバス、サーマス・フィリフォルミス、サーマス種sps17、サーマス種Z05、サーマス・カルドフィルス、バチルス・カルドテナクス、サーモトガ・ネアポリタナ、及びサーモシフォ・アフリカヌス由来のDNAポリメラーゼがある。
本明細書で使用される場合、「キメラ」タンパク質は、そのアミノ酸配列が、少なくとも2つの異なるタンパク質由来のアミノ酸配列のサブ配列の融合産物であるタンパク質のことを言う。典型的にはキメラタンパク質は、アミノ酸配列の直接操作により作製されるのではなく、むしろ、キメラアミノ酸配列をコードする「キメラ」遺伝子から発現される。特定の実施態様によれば、例えば、本発明の変異DNAポリメラーゼの非改変体は、サーマス種DNAポリメラーゼ由来のアミノ末端(N−末端)領域と、Tma DNAポリメラーゼ由来のカルボキシ末端(C−末端)領域とからなるキメラタンパク質である。N末端領域とは、N末端(アミノ酸位置1)からある内部アミノ酸までに至る領域のことを言う。同様に、C末端領域とは、ある内部アミノ酸からC末端までに至る領域のことを言う。
変異DNAポリメラーゼに関連して、別の配列(例えば、領域、断片、ヌクレオチド、亜アミノ酸位置等)に対する「対応」は、ヌクレオチド又はアミノ酸位置番号に従って番号付けを行い、そして配列同一性の割合を最大化するような手法で当該配列を配列比較するという従来の方法に基づく。所与の「対応する領域」内の全ての位置が同一である必要はないので、対応する領域内の不一致の位置は「対応する位置」とみなしてもよい。したがって、本明細書で使用する場合、特定のDNAポリメラーゼの「アミノ酸位置[X]に対応するアミノ酸」という表現は、他の認められているDNAポリメラーゼ並びに構造的ホモログ及びファミリーにおける等価な位置をまとめた表現のことである。本明細書でさらに議論される通り、本発明の典型的な実施態様によれば、アミノ酸の「対応」は、コンセンサス配列のモチーフ(例えば、配列番号1)と比較し、ポリメラーゼのある領域に対して決定される。
本明細書で使用する場合「組換え体」は、組換え法により意図的に改変されたアミノ酸配列又はヌクレオチド配列のことを言う。本明細書で「組換え核酸」なる用語は、もともとはインビトロ(in vitro)で、一般的にエンドヌクレアーゼによる核酸の操作により形成される、天然には通常見いだされない形態の核酸を意味する。すなわち、直鎖状の単離された変異DNAポリメラーゼ核酸であるか、又は通常は加わらないライゲーションDNA分子によりインビトロで形成される発現ベクターは、両方とも本発明の目的の組換え体と考えられる。組換え核酸を作製して宿主細胞に再導入すると、非組換え的に、すなわちインビトロ操作よりもむしろ宿主細胞のインビボ(in vivo)細胞機構を用いて複製するはずであると解される。しかしながら、かかる核酸は、一度組換えによって作製されると、その後非組換え的に作製されるが、なお本発明の目的の組換え体と考えられる。「組換えタンパク質」は、組換え技術を用いて、すなわち上記の通り、組換え核酸の発現を介して作製されるタンパク質である。組換えタンパク質は、典型的には、少なくとも1又は複数の特性により天然のタンパク質と区別される。
「核酸」なる用語は、ヌクレオチド(例えば、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、2'−ターミネーターヌクレオチド、ジデオキシヌクレオチド等)、及びポリマー(例えば、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、DNA−RNAハイブリッド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、遺伝子、cDNA、アプタマー、アンチセンス核酸、干渉RNA(RNAi)、分子ビーコン、核酸プローブ、ペプチド核酸(PNA)、PNA−DNA接合体、PNA−PNA接合体等)のことを言い、これは、直鎖状又は分岐状のいずれかで、共に共有結合したヌクレオチドを含む。
核酸は、典型的には、一本鎖又は二本鎖であり、一般的にホスホジエステル結合を含むことになるが、本明細書で概説するように、場合によって、核酸類似体が別の骨格を有するものを含み、これには、限定するものではないが、例えば、ホスホロアミド(Beaucage et al. (1993) Tetrahedron 49(10):1925)及びそれらの参考文献;Letsinger(1970) J. Org. Chem. 35:3800; Sprinzl et al. (1977) Eur. J. Biochem. 81:579;Letsinger et al (1986) Nucl. Acids Res. 14:3487; Sawai et al. (1984) Chem. Lett. 805; Letsinger et al. (1988) J.Am.Chem.Soc. 110:4470;及び Pauwels et al. (1986) Chemica Scripta 26: 1419)、ホスホロチオエート(Mag et al. (1991) Nucleic Acids Res. 19:1437; 米国特許第5,644,048号)、ホスホロジチオエート(Briu et al. (1989) J. Am. Chem. Soc. 111:2321)、O−メチルホスホロアミダイト結合(Eckstein, Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach, Oxford University Press (1992)を参照されたい)、及びペプチド核酸骨格と結合(Egholm (1992) L Am. Chem. Soc. 114:1895; Meier et al. (1992) Chem. Int. Ed. Engl. 31 :1008; Nielsen (1993) Nature 365:566; Carlsson et al. (1996) Nature 380:207、を参照されたい)がある。他の類似核酸には、正に帯電した骨格(Denpcy et al. (1995) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92: 6097);非イオン性骨格(米国特許第5,386,023号、第5,637,684号、第5,602,240号、第5,216,141号、及び第4,469,863号;Angew (1991) Chem. Intl. Ed. English 30: 423; Letsinger et al. (1988) J. Am. Chem. Soc. 110:4470; Letsinger et al. (1994) Nucleoside & Nucleotide 13:1597; Chapters 2 and 3, ASC Symposium Series 580, "Carbohydrate Modifications in Antisense Research”, Ed. Y. S. Sanghvi and P. Dan Cook; Mesmaeker et al. (1994) Bioorganic & Medicinal Chem. Lett. 4: 395; Jeffs et al. (1994) L Biomolecular NMR 34:17; Tetrahedron Lett. 37:743 (1996))、及び非リボース骨格、例えば、米国特許第5,235,033号及び第5,034,506号、及びChapters 6 and 7, ASC Symposium Series 580, Carbohydrate Modifications in Antisense Research, Ed. Y. S. Sanghvi and P. Dan Cook、に記載のものがある。1又は複数の炭素環糖を含有する核酸には、核酸の定義の範囲内のものも含まれる(Jenkins et al. (1995) Chem. Soc. Rev, pp 169− 176を参照されたい)。複数の核酸類似体も、例えば、Rawls, C & E News Jun. 2, 1997 35頁に記載されている。リボース−リン酸骨格のこれらの改変は、標識等の付加的部分の添加を促進するか、又は生理学的環境における当該分子の安定性及び半減期を変えるためになされる。
核酸(例えば、アデニン、グアニン、チミン、シトシン、及びウラシル)において典型的に見られるこれらの天然の複素環塩基に加え、核酸類似体にも、本明細書で記載されるもの、又は言及されていない多数のもので、非天然へテロ環塩基を有するものがある。特に、非天然の塩基は、例えば、Seela et al. (1991) Helv. Chim. Acta 74:1790, Grein et al. (1994) Bioorg. Med. Chem. Lett. 4:971−976, and Seela et al. (1999) Helv. Chim. Acta 82:1640、にさらに記載がある。さらに例示すると、融解温度(Tm)調節因子として作用するヌクレオチドにおいて使用される特定の塩基を任意に含む。例えば、これらには、7−デアザプリン(例えば、7−デアザグアニン、7−デアザアデニン等)、ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン、プロピニル−dN(例えば、プロピニル−dU、プロピニル−dC等)等がある。例えば、米国特許第5,990,303号を参照されたい。他の代表的な複素環塩基には、例えば、ヒポキサンチン、イノシン、キサンチン;2−アミノプリン、2,6−ジアミノプリン、2−アミノ−6−クロロプリン、ヒポキサチン、イノシン及びキサンチンの8−アザ誘導体;アデニン、グアニン、2−アミノプリン、2,6−ジアミノプリン、2−アミノ−6−クロロプリン、ヒポキサチン、イノシン及びキサンチンの7−デアザ−8−アザ誘導体;6−アザシトシン;5−フルオロシトシン;5−クロロシトシン;5−ヨードシトシン;5−ブロモシトシン;5−メチルシトシン;5−プロピニルシトシン;5−ブロモビニルウラシル;5−フルオロウラシル;5−クロロウラシル;5−ヨードウラシル;5−ブロモウラシル;5−トリフルオロメチルウラシル;5−メトキシメチルウラシル;5−エチニルウラシル;5−プロピニルウラシル等がある。
本明細書で使用される場合、「配列同一性の割合」は、比較ウィンドウにわたる2つの最適に整列させた配列を比較することにより決定され、ここで当該比較ウィンドウ中の配列部分は、2つの配列の最適な配列比較のための参照配列(付加又は欠失は含まない)と比較して、付加又は欠失(すなわちギャップ)含んでもよい。当該割合は、同じ核酸塩基又はアミノ酸残基が両方の配列に現れる位置の数を決定し、一致した位置の数を求め、比較ウィンドウにおける総位置数で、一致した位置数を除し、及びその結果に100を乗ずることにより計算され、配列同一性の割合が求められる。
2以上の核酸又はポリペプチド配列との関連で、「同一」又は「同一性」なる用語は、比較ウィンドウにわたって最大対応となるよう比較及び整列させる場合、又は以下の配列比較アルゴリズムの1つを用いて、もしくは手作業配列比較及び外観検査により測定されるよう指定する場合に、同じであるか、同じである(例えば、特定の領域にわたり、60%同一、任意に、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%同一である)ヌクレオチドもしくはアミノ酸残基の特定の割合を有する、2以上の配列もしくはサブ配列のことを言う。配列が互いに、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、又は少なくとも55%同一である場合、「実質的に同一」である。これらの定義は試験配列の総補体についても言う。任意に、長さが少なくとも約50ヌクレオチドの領域にわたり、又は典型的には長さが100〜500又は1000又はそれ以上の領域にわたり、同一が存在する。
2以上のポリペプチド配列との関連で「類似性」又は「類似割合」なる用語は、比較ウィンドウにわたって最大対応となるよう比較及び整列させる場合、又は以下の配列比較アルゴリズムの1つを用いて、もしくは手作業配列比較及び外観検査により測定されるよう指定する場合に、同じであるか、又は保存的アミノ酸置換により規定されるように類似する(例えば、特定領域にわたり、60%類似、任意に65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%類似である)アミノ酸残基の、特定割合を有する2以上の配列又はサブ配列のことを言う。配列が互いに、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、又は少なくとも55%類似である場合、「実質的に類似」である。任意に、長さが少なくとも約50ヌクレオチドの領域にわたり、又は典型的には長さが100〜500又は1000又はそれ以上の領域にわたり、類似が存在する。
配列比較では、典型的には1つの配列が、それと試験配列を比較する参照配列として機能する。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験及び参照配列をコンピュータに入力し、必要ならばサブ配列座標(coordinate)を設計し、そして配列アルゴリズムプログラムパラメータを設計する。一般的にデフォルトのプログラムパラメータを使用するが、別のパラメータを設計してもよい。その後、この配列比較アルゴリズムが、プログラムパラメータに基づき、参照配列と比較して、試験配列の配列同一性又は配列類似の割合を計算する。
本明細書で使用される場合「比較ウィンドウ」には、20〜600、通常約50〜約200、より通常には約100〜約150からなる群から選択される隣接位置数の、任意の1つのセグメントの参照が含まれ、ここで配列は、2つの配列を最適に整列させた後に、隣接位置の同数の参照配列と比較することができる。比較のための配列の配列比較方法は当該技術分野で周知である。比較のための最適な配列の配列比較は、例えば、Smith及びWatermanの局所ホモロジーアルゴリズム(Adv. Appl. Math. 2:482, 1970)、Needleman及びWunschのホモロジー配列比較アルゴリズム(J Mol. Biol. 48:443, 1970)、Pearson及びLipmanの類似性のためのサーチ方法(Proc. Natl. Acad. ScL USA 85:2444, 1988)、これらのアルゴリズムのコンピュータ化実行(例えば、Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,Wis.における、GAP,BESTFIT,FASTA、及びTFASTA)、又は手作業配列比較及び外観検査(例えば、Ausubel et al、Current Protocols in Molecular Biology(1995補充)を参照されたい)により、行うことができる。
配列同一性及び配列類似性の割合を決定するために適するアルゴリズムの例は、BLAST及びBLAST2.0アルゴリズムであり、これはそれぞれAltschul等(Nuc. Acids Res. 25ten3389−402, 1977)及びAltschul等(J. MoI. Biol. 215ten403−10, 1990)に記載されている。BLAST解析を行うためのソフトウェアは、米国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information)を介して一般に利用できる(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)。このアルゴリズムは、データベース配列における同じ長さの文字と配列比較した場合、正の値である閾スコアTと一致するかもしくはそれを満たす、クエリー配列における長さWの短い文字を識別することにより、初めに高スコア配列ペア(HSP)を識別することが必要である。Tは、隣接文字スコア閾値のことである(Altschul等、上記)。これらの初期の隣接文字ヒットは、これらを含むより長いHSPを見つけるためにサーチを開始するためのシードとして機能する。当該文字ヒットを、累積配列比較スコアが増加できる限り、各配列に沿って両方向に伸長させる。ヌクレオチド配列についての累積スコアは、パラメータM(一致残基の対に対する報酬(reward)スコア;常に>0)及びN(不一致残基に対するペナルティスコア;常に<0)を用いて計算される。アミノ酸残基については、スコア付けマトリクスは、累積スコアを計算するために使用される。各方向における文字ヒットの伸長は、以下の場合に停止する:累積配列比較スコアが、その最大到達値から、量Xまで落ちた場合;累積配列比較スコアが、1又は複数の負でスコア付けされる残基配列比較の累積により、ゼロ以下になった場合;又はいずれかの配列の末端に到達した場合、である。BLASTアルゴリズムパラメータW、T、及びXは、配列比較の感度と速度を決定する。(ヌクレオチド配列についての)BLASTプログラムは、文字長さ(W)を11、期待値(E)を10、M=5、N=4及び両鎖の比較をデフォルトとして使用する。アミノ酸配列について、BLASTPプログラムは、文字長さを3、期待値(E)を10、及びBLOSUM62スコア付けマトリクス(Henikoff and Henikoff、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915、1989を参照されたい)配列比較(B)を50、期待値(E)を10、M=5、N=−4、及び両鎖の比較をデフォルトとして使用する。
BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列間の相同性の統計的解析を行う(例えば、Karlin and Altschul, Proc.Natl. Acad. Sci. USA 90:5873−87,1993を参照されたい)。BLASTアルゴリズムにより提供される類似性の1つの測定は、2つのヌクレオチド又はアミノ酸配列間の一致が偶然発生するとして、その確率の指標を提供する、最小の合計確率(P(N))である。例えば核酸は、参照核酸に対する試験核酸の比較における最小の合計確率が、約0.2未満、典型的には約0.01未満、そして典型的には0.001未満である場合、参照配列に類似すると考えられる。
「ヌクレオシド」は、塩基又は塩基性基を含み(例えば、少なくとも1つの同素環、少なくとも1つの複素環、少なくとも1つのアリール基、及び/又はそれらに類するものを含み)、糖部分(例えば、リボース糖等)、糖部分の誘導体、又は糖部分の機能的等価物(例えば、炭素環等の類似体)と共有結合した、核酸成分のことを言う。例えば、ヌクレオチドが糖部分を含んでいる場合、当該塩基は、典型的に、糖部分の1'−位と結合される。上記の通り、塩基は、天然の(例えば、アデニン(A)もしくはグアニン(G)等のプリン塩基、チミン(T)、シトシン(C)、もしくはウラシル(U)等のピリミジン塩基)、又は非天然の(例えば、7−デアザプリン基、ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン基、プロピニル−dN塩基等)であってよい。例示的なヌクレオチドには、リボヌクレオシド、デオキシリボヌクレオシド、ジデドキシリボヌクレオシド、炭素環等がある。
「ヌクレオチド」は、ヌクレオシドのエステルのことを言い、例えば、ヌクレオチドのリン酸エステルである。例えば、ヌクレオチドは、そのヌクレオチドの糖部分の5'位と共有結合した1、2、3又はそれ以上のリン酸基を含むことができる。
「オリゴヌクレオチド」は、少なくとも2個のヌクレオチド、典型的には3個超のヌクレオチド、そしてより典型的には、10個超のヌクレオチドを含む核酸のことを言う。オリゴヌクレオチドの正確なサイズは、一般的に様々な因子に依存し、例えば、オリゴヌクレオチドの基本的機能又は使用に依存する。オリゴヌクレオチドは、任意の好適な方法、例えば適切な配列のクローニング及び制限酵素処理、又は以下の方法による直接化学合成により任意に調製される。化学合成法としては、当該技術分野で既知の他の方法の中でも、Narang等のホスホトリエステル法((1979) Meth. Enzvmol. 68:90−99);Brown等のホスホジエステル法((1979) Meth. Enzvmol. 68:109−151);Beaucage等のジエチルホスホロアミダイト法((1981) Tetrahedron Lett. 22:1859−1862);Matteucci等のトリエステル法((1981) J. Am. Chem. Soc. 103:3185−3191);自動合成法;又は米国特許第4,458,066号の固体支持法がある。
「プライマー核酸」は、典型的には、鋳型核酸とハイブリダイズでき、且つ核酸適切な反応条件下で熱安定性ポリメラーゼ等の、ヌクレオチドを取り込む生体触媒などを用いて、鎖伸長又はエロンゲーションをさせることができる核酸のことを言う。プライマー核酸は、典型的には、天然又は合成のオリゴヌクレオチド(例えば、一本鎖オリゴデオキシリボヌクレオチド等)である。他のプライマー核酸長が任意に利用されるが、これらは典型的に、15から35ヌクレオチドの範囲である。短いプライマー核酸は、一般的に、鋳型核酸との十分安定なハイブリッド複合体を形成するために、より低い温度で使用する。鋳型核酸のサブ配列と少なくとも部分的に相補的であるプライマー核酸は、典型的には、伸長を起こすための鋳型核酸と十分にハイブリダイズする。所望の場合は、プライマー核酸を、例えば、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、又は化学的方法により検出可能な標識を取り込むことにより、標識することができる。例示すると、有用な標識には、放射性同位体、蛍光色素、電子密度試薬、酵素(ELISAで一般的に使用されるような)、ビオチン、又はハプテン及び抗血清又はモノクローナル抗体が利用できるタンパク質がある。上記及び他の標識の多くは、本明細書にさらに記載され、及び/又はそうでなければ当該技術分野で既知である。さらに、プライマー核酸は、鋳型独自の手法で、生体触媒を取り込む核酸のための基質を単に提供することができる。
「伸長プライマー核酸」は、1又は複数の追加のヌクレオチドが添加されているか、そうでなければ取り込まれた(例えば、共有結合した)プライマーのことを言う。
「鋳型核酸」は、プライマー核酸がハイブリダイズし且つ伸長させることができる核酸のことを言う。したがって、鋳型核酸には、プライマー核酸に少なくとも部分的に相補的なサブ配列が含まれる。鋳型核酸は、本質的には任意の供給源由来とすることができる。例示すると、鋳型核酸は、例えば、培養微生物、非培養微生物、複雑な生物混合物、組織、血清、プール血清もしくは組織、複数種集団(multispecies consortia)、古代の、化石化した、もしくは他の生物の残骸、環境単離物、土壌、地下水、深海環境などに由来するか、そこから単離される。さらに、鋳型核酸は、任意で、例えば、個々のcDNA分子、cDNAのクローンセット、cDNAライブラリー、抽出されたRNA、天然のRNA、インビトロ転写されたRNA、同定済みまたは未同定のゲノムDNA、クローニングされたゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、酵素によって断片化されたDNAまたはRNA、化学的に断片化されたDNAまたはRNA、物理的に断片化されたDNAまたはRNAなどを含むか、これらに由来する。また、当該技術分野において周知の方法を用いて、鋳型核酸を化学合成することもできる。さらに、鋳型核酸は、任意に、遺伝子の少なくとも一部に対応するか、それと相補的である。本明細書で使用する場合、「遺伝子」は、生物機能に関連するDNAの任意のセグメントを意味する。したがって、遺伝子は、コード配列と、任意には、その発現に必要な調節配列とを含む。また、遺伝子は、任意に、例えば、他のタンパク質の認識配列を形成する非発現DNA部分も含む。
核酸は、追加のヌクレオチド(又は他の類似分子)が当該核酸に取り込まれると、「伸長」又は「エロンゲート」する。例えば、核酸を、典型的に、核酸の3'末端にヌクレオチドを追加するポリメラーゼ等のヌクレオチドを取り込む生体触媒により、任意に伸長させる。
「伸長可能なヌクレオチド」は、伸長可能なヌクレオチドがヌクレオチドポリマーに取り込まれると、例えば、ヌクレオチドを取り込む生体触媒により触媒される反応において、少なくとも1つの他のヌクレオチドを、付加するか又は共有結合させることができるヌクレオチドのことを言う。伸長可能なヌクレオチドの例には、デオキシリボヌクレオチド及びリボヌクレオチドがある。典型的には、伸長可能なヌクレオチドを、伸長可能なヌクレオチドの糖部分の3'位に、別のヌクレオチドを付加することにより伸長させる。
「伸長不可能な」ヌクレオチドは、核酸に取り込まれると、例えば、少なくとも1つのヌクレオチドを取り込む生体触媒により、核酸がさらも伸長することを阻害する、ヌクレオチドのことを言う。本発明の使用に適する例示的な伸長不可能なヌクレオチドは、2'−ターミネーターヌクレオチドである。
「2'−ターミネーターヌクレオチド」は、ヌクレオチドの糖部分の2'位に保護基(BG)を含んでなるヌクレオチド類似体のことを言う。「保護基」は、典型的に核酸の伸長を阻害する化学的基又は部分のことを言う(すなわち2'−ターミネーターヌクレオチドは、典型的に、1又は複数のヌクレオチドを取り込む生体触媒によって伸長不可能である)。つまり、2'−ターミネーターヌクレオチドが(例えば、当該核酸の3’末端で)核酸に取り込まれると、保護基は、例えばG46E E678G CS5ポリメラーゼ、G46E E678G CS6ポリメラーゼ、ΔZ05Rポリメラーゼ、E615G Taq DNAポリメラーゼ、TFL サーマス・フラバスポリメラーゼ、TMA−25ポリメラーゼ、TMA−30ポリメラーゼ、Tth DNAポリメラーゼ、サーマスSPS−17ポリメラーゼ、E615G Taqポリメラーゼ、サーマス Z05Rポリメラーゼ、T7 DNAポリメラーゼ、Kornberg DNAポリメラーゼI、Klenow DNAポリメラーゼ、Taq DNAポリメラーゼ、Micrococcal DNAポリメラーゼ、アルファ DNAポリメラーゼ、逆転写酵素、AMV逆転写酵素、M−MuLV逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、E.coli RNAポリメラーゼ、SP6 RNAポリメラーゼ、T3 RNAポリメラーゼ、T4DNAポリメラーゼ、T7 RNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼII、ターミナトランスフェラーゼ、ポリヌクレオチドホスホリラーゼ、リボヌクレオチド取り込みDNAポリメラーゼ、及び/又は類するもの、から選択される、少なくとも1つのヌクレオチドを取り込む生体触媒により、核酸のさらなる伸長が阻害される。例示的な保護基はリン酸基である。他の代表的な保護基も本明細書に記載される。例示的な2'−ターミネーターヌクレオチドには、2'−一リン酸−3'−ヒドロキシ−5'−三リン酸ヌクレオチド及び2'−一リン酸−3'−ヒドロキシ−5'−二リン酸ヌクレオチドがある。他の2'−ターミネーターヌクレオチドも、本明細書、及び例えば、米国特許出願第20070154914号及び第20050037398号にさらに記載されている。
「部分」又は「基」は、分子等が分割される部分の1つのことを言う(例えば、官能基、置換基等)。例えば、ヌクレオチドは、典型的には、塩基性基(例えば、アデニン、チミン、シトシン、グアニン、ウラシル、又は塩基性基の類似体)、糖部分(例えば、糖環又はその類似体)、及び1又は複数のリン酸基を含んでなる。
核酸は、それが別の核酸配列と機能的関係におかれる場合、「作動的に結合する」。例えば、プロモーター又はエンハンサーは、それが配列の転写に影響を及ぼす場合、コード配列に作動的に結合され、あるいはリボソーム結合部位は、それが翻訳を促進するように位置する場合、コード配列に作動的に結合される。
「宿主細胞」なる用語は、単細胞の原核生物及び真核生物の両方(例えば、細菌、酵母、及び放線菌等)、及び細胞培養物において増殖する場合、より高等な植物又は動物由来の単細胞のことを言う。
「ベクター」なる用語は、典型的には二本鎖DNAのことを言い、これは外来DNAに挿入されたものでもよい。ベクターは、例えばプラスミド起源であってもよい。ベクターは、宿主細胞におけるベクターの自動複製を促進する「レプリコン」ポリヌクレオチド配列を含有する。外来DNAは、異種接合型DNAと定義され、これは宿主細胞において生来見いだされないDNAであり、例えば、ベクター分子を複製するか、選択可能もしくはスクリーニング可能なマーカーをコードするか、又はトランス遺伝子をコードする。当該ベクターは、外来又は異種接合型DNAを、好適な宿主細胞に移入するために使用する。宿主細胞においては、ベクターが宿主染色体DNAから独立して、もしくはそれと同時に複製でき、ベクター及びその挿入DNAの複数のコピーを作ることができる。さらに、ベクターは、挿入DNAのmRNA分子への転写を可能にするか、そうでなければ挿入DNAをRNAの複数コピーに複製させるのに必要な要素を含有することもできる。発現ベクターの中には、発現したmRNAの半減期を増加させ、そして/又はタンパク質分子へのmRNAの翻訳を可能にする、挿入DNAに隣接する配列要素をさらに含有するものもある。すなわち、mRNA分子及び挿入DNAによりコードされるポリペプチドの多くを、速やかに合成できる。
「核酸伸長速度」なる用語は、生体触媒(例えば、ポリメラーゼ、リガーゼ等の酵素)が、核酸に1又は複数のヌクレオチドを(例えば共有的に)付加することにより、鋳型依存的又は鋳型非依存的に、核酸(例えば、プライマー又は他のオリゴヌクレオチド)を伸長させる速度のことを言う。例示すると、本明細書に記載の特定の変異DNAポリメラーゼは、所与の反応条件下で、この非改変体より速い速度でプライマーを伸長させることができるように、このDNAポリメラーゼの非改変体と比較して、核酸伸長速度を向上させている。
「混合物」は、2以上の異なる成分の組み合わせのことを言う。「反応混合物」は、所与の反応に参加でき、そして/又はそれを促進できる分子を含む混合物のことを言う。例えば、「DNA配列決定反応混合物」は、DNA配列決定反応のために必要な成分を含む反応混合物のことを言う。すなわち、DNA配列決定反応混合物は、当該配列決定反応の開始が、その使用者により制御されるように、当該反応混合物は当初は不完全であってもよいが、鋳型又は標的核酸の核酸配列を決定するためのDNA配列決定法における使用に適する。この手順においては、酵素等の最終成分が添加されると、完全なDNA配列決定混合物が提供され、反応が開始してもよい。典型的には、DNA配列決定反応は、重合活性に適する緩衝液、伸長可能なヌクレオチド、及び少なくとも1つの2'−ターミネーターヌクレオチドを含有することになる。当該反応混合物は、ポリメラーゼ酵素により、鋳型核酸上での伸長に適するプライマー核酸を含有してもよい。プライマー核酸か、1つのヌクレオチドのいずれかは、一般的に蛍光標識等の検出可能な部分で標識される。一般的には、当該反応は、4つの伸長可能なヌクレオチドと、少なくとも1つの2'−ターミネーターヌクレオチドを含む混合物である。典型的には、ポリメラーゼは、熱安定性DNAポリメラーゼであり(例えば、G46E E678G CS5 DNAポリメラーゼ、G46E E678G CS6 DNAポリメラーゼ、E615G Taq DNAポリメラーゼ、ΔZ05R DNAポリメラーゼ、G46E L329A E678G CS5 DNAポリメラーゼ等)、そして2'−ターミネーターヌクレオチドは、2'−一リン酸−3'−ヒドロキシ−5'−三リン酸ヌクレオチドである。
発明の詳細な説明
I.緒言
本発明は、ピロリン酸分解活性重合(PAP)能が向上した新規なDNAポリメラーゼを提供する。本発明のDNAポリメラーゼは、プライマーが伸長可能となる前に、ピロリン酸により除去されるべき伸長ターミネーターヌクレオチドとなるプライマーを急速に活性化及び伸長させる能力を有する。典型的には、複数のパラメータを、PAP反応において使用される各プライマー対について最適化するべきである。典型的に最適化される共通のパラメータには、ポリメラーゼ濃度、PPi濃度、伸長時間及び温度がある。本発明の新規なDNAポリメラーゼは、完全に一致した鋳型に結合する場合、現在利用できるポリメラーゼで必要とされる最適化工程を用いることなく、様々なブロックプライマーを急速に活性化することができる。したがって、DNAポリメラーゼは、ポリヌクレオチド鋳型のプライマー伸長又は増幅に必要な様々な応用において有用であり、例えば、組換えDNA研究、及び希少対立遺伝子検出が必要な疾患の医療診断における応用において有用である。
本発明の実質的な態様(例えば、改変酵素の作製、増幅反応の実行等)によれば、分子生物学及び組換えDNAにおける多くの従来技術が、任意に利用される。これらの技術は、周知であり、例えば、Current Protocols in Molecular Biology, Volumes I, II、及び III, 1997(F.M.Ausubel ed.);Sambrook et al, 2001, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N. Y.; Berger and Kimmel, Guide to Molecular Cloning Techniques, Methods in Enzymology volume 152 Academic Press, Inc., San Diego, CA (Berger), DNA Cloning: A Practical Approach, Volumes land II, 1985 (D. N. Glover ed.); Oligonucleotide Synthesis, 1984 (M. L. Gait ed.); Nucleic Acid Hybridization, 1985, (Hames and Higgins); Transcription and Translation, 1984 (Hames and Higgins eds.); Animal Cell Culture, 1986 (R. I. Freshney ed.); Immobilized Cells and Enzymes, 1986 (IRL Press); Perbal, 1984, A Practical Guide to Molecular Cloning; the series, Methods in Enzymology (Academic Press, Inc.); Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells, 1987 (J. H. Miller及びM. P. Calos eds., Cold Spring Harbor Laboratory); and Methods in Enzymology Vol. 154 and Vol. 155 (それぞれWu及びGrossman、及び Wu, eds.)、で説明される。
II.向上したPAP能を有する改変DNAポリメラーゼ
ある実施態様によれば、本発明のDNAポリメラーゼは、以下のアミノ酸モチーフを含んでなる。
Figure 2011504732
(本明細書では、R−X1−X2−X3−K−L−X4−X5−X6−Y−X7−X8−X9−X10−X11として1文字コードで表記もする)(配列番号1)ここで、X6はTではなく、当該ポリメラーゼは、X6がTであり他の部分は同一であるDNAポリメラーゼと比較して、核酸伸長速度が向上している。
ある実施態様によれば、X1−X5、及びX7−X11は任意のアミノ酸である。
ある実施態様によれば、
2は、Leu(L)、Ile(I)、Tyr(Y)であり、
4は、Lys(K)、Arg(R).Gln(Q)であり、
5は、Asn(N),Ser(S)、Gly(G)であり、
6は、Thr(T)以外の任意のアミノ酸であり、
8は、Asp(D)又はGlu(E)であり、
10は、Leu(L)又はIle(I)であり、
11は、Pro(P)又はLeu(L)である(配列番号36)。
ある実施態様によれば、位置X6のアミノ酸は、(G)、(A)、(L)、(M)、(F)、(W)、(K)、(Q)、(E)、(S)、(P)、(V)、(I)、(C)、(Y)、(H)、(R)、(N)、及び(D)からなる群から選択される(配列番号38)。ある実施態様によれば、X6はSである(配列番号39)。
配列番号1のある実施態様によれば、X1−X5、及びX7−X11は、任意のDNAポリメラーゼにおける対応する位置において見出される、任意のアミノ酸である。限定のない例示的なDNAポリメラーゼには、サーマス・サーモフィルス、サーマス・カルドフィルス、サーマス種Z05、サーマス・アクアティクス、サーマス・フラバス、サーマス・フィリフォルミス、サーマス種sps17、デイノコッカス・ラディオデュランス、ホット・スプリング・ファミリーB/クローン7、バチルス・ステレオサーモフィルス、バチルス・カルドテナクス、エシェリア・コリ、サーモトガ・マリチマ、サーモトガ・ネアポリタナ、サーモシフォ・アフリカヌス、及びホット・スプリング・ファミリーAがある。
ある実施態様によれば、X1は、Glu(E),Gln(Q)、Gly(G)、Lys(K)、及びThr(T)からなる群から選択される(配列番号52)。ある実施態様によれば、X3は、Thr(T)、Met(M)、Asp(D)、Ser(S)、Gly(G)、Ala(A)、Gln(Q)、及びLeu(L)からなる群から選択される(配列番号53)。ある実施態様によれば、X7は、Val(V)、Ile(I)、Leu(L)、Ala(A)、Thr(T)からなる群から選択される(配列番号54)。ある実施態様によれば、X9は、Pro(P)、Ala(A)、Gly(G)、Lys(K)、Thr(T)、Ser(S)からなる群から選択される(配列番号55)。
他の実施態様によれば、本発明のDNAポリメラーゼは、以下のアミノ酸モチーフを含んでなる。
Figure 2011504732
(本明細書では、X1−X2−X3−X4−−K−X5−X6−X7−X8−X9−X10−X11−X12−X13−X14−X15−X16として1文字コードで表記もする)(配列番号2)、ここで、X10はT又はAでなく、当該ポリメラーゼは、X10がT又はAであり他の部分は同一であるDNAポリメラーゼと比較して、核酸伸長速度が向上している。
ある実施態様によれば、X1−X9、及びX11−X16は任意のアミノ酸である。
ある実施態様によれば、
1は、R又はLであり、
3は、L、I、又はYであり、
5は、R又はLであり、
6は、I又は欠損であり、
7は、G又は欠損であり、
8は、K、R、又はQであり、
9は、N、S、又はGであり、
10は、T又はAであり、
11は、Y又はEであり、
13は、D又はEであり、
15は、L、I、又はAであり、
16は、P、L、又はWである(配列番号40)。
ある実施態様によれば、位置X10のアミノ酸は、(G)、(L)、(M)、(F)、(W)、(K)、(Q)、(E)、(S)、(P)、(V)、(I)、(C)、(Y)、(H)、(R)、(N)、及び(D)からなる群から選択される(配列番号42)。ある実施態様によれば、X10はSである(配列番号43)。
ある実施態様によれば、配列番号2のX2、X4、X12、及びX14は、任意のDNAポリメラーゼにおいて対応する位置において見出される任意のアミノ酸である。DNAポリメラーゼには、例えば、サーマス・サーモフィルス、サーマス・カルドフィルス、サーマス種Z05、サーマス・アクアティクス、サーマス・フラバス、サーマス・フィリフォルミス、サーマス種sps17、デイノコッカス・ラディオデュランス、ホット・スプリング・ファミリーB/クローン7、バチルス・ステレオサーモフィルス、バチルス・カルドテナクス、エシェリア・コリ、サーモトガ・マリチマ、サーモトガ・ネアポリタナ、サーモシフォ・アフリカヌス、及びホット・スプリング・ファミリーA、及びバクテリオファージT7がある。
ある実施態様によれば、X2は、Glu(E)、Gln(Q)、Gly(G)、Lys(K)、Thr(T)、及びMet(M)からなる群から選択される(配列番号56)。ある実施態様によれば、X4は、Thr(T)、Met(M)、Asp(D)、Ser(S)、Gly(G)、Ala(A)、Gln(Q)、及びLeu(L)からなる群から選択される(配列番号57)。ある実施態様によれば、X12は、Val(V)、Ile(I)、Ala(A)、Thr(T)、及びGly(G)からなる群から選択される(配列番号58)。ある実施態様によれば、X14は、Pro(P)、Ala(A)、Gly(G)、Lys(K)、Thr(T)、及びSer(S)からなる群から選択される(配列番号59)。
本発明による変異の影響を受け易いDNAポリメラーゼの非改変体(配列番号24等に示されるような)は、以下のアミノ酸モチーフを含んでなる機能性ポリメラーゼドメインを有するものである。
R−X1−X2−X3−K−L−X4−X5−X6−Y−X7−X8−X9−X10−X11(配列番号24)(ここで、X6はTである)
ある実施態様によれば、X1−X5、及びX7−X11は任意のアミノ酸である。
ある実施態様によれば、
2は、L、I、又はYであり、
4は、K、R、又はQであり、
5は、N、S、又はGであり、
6は、Tであり、
8は、D又はEであり、
10は、L又はIであり、
11は、P又はLである(配列番号44)。
本発明による変異の影響を受け易いDNAポリメラーゼの非改変体(配列番号25等に示されるような)は、以下のアミノ酸モチーフを含んでなる機能性ポリメラーゼドメインを有するものである。
その非改変体のDNAポリメラーゼは、以下のモチーフ:X1−X2−X3−X4−K−X5−X6−X7−X8−X9−X10−X11−X12−X13−X14−X15−X16(配列番号25)を有するアミノ酸配列を含み、ここで、X10は、T又はAである。
ある実施態様によれば、X1−X9及びX11−X16は、任意のアミノ酸である。
ある実施態様によれば、
1は、R、又はLであり、
3は、L、I、Yであり、
5は、R、又はLであり、
6は、I又は欠損であり、
7は、G又は欠損であり、
8は、K、R、又はQであり、
9は、N、S、又はGであり、
10は、T又はAであり、
11は、Y又はEであり、
13は、D又はEであり、
15は、L、I、又はAであり、
6は、P、L、又はWである(配列番号48)。
上記のモチーフ(例えば、配列番号24及び配列番号25)は、多くのファミリーA型DNA依存DNAポリメラーゼ、特に、好熱細菌(配列番号24)及びバクテリオファージT7(配列番号25)由来の特に熱安定性DNAポリメラーゼの、3/Aサブドメイン内に存在する。例えば、図1は、複数の細菌種:サーマス・サーモフィルス、サーマス・カルドフィルス、サーマス種Z05、サーマス・アクアティクス、サーマス・フラバス、サーマス・フィリフォルミス、サーマス種sps17、デイノコッカス・ラディオデュランス、ホット・スプリング・ファミリーB/クローン7、バチルス・ステレオサーモフィルス、バチルス・カルドテナクス、エシェリア・コリ、サーモトガ・マリチマ、サーモトガ・ネアポリタナ、サーモシフォ・アフリカヌス、及びホット・スプリング・ファミリーA、及びバクテリオファージT7、由来の3/Aサブドメインからの領域の核酸配列の配列比較を示す。図1に示されるアミノ酸配列の配列比較には、代表的なキメラ熱安定性DNAポリメラーゼも含まれる。示されるように、配列番号24及び配列番号25のモチーフは、ポリメラーゼのこの領域について保存された機能を示すこれらのポリメラーゼの各々において存在する。
したがって、ある実施態様によれば、DNAポリメラーゼの非改変体は、野生型又は天然のDNAポリメラーゼであり、例えば、上記列挙された任意の細菌種から選択されるポリメラーゼ等がある。本発明のある実施態様によれば、サーマス属の種由来である。本発明の他の実施態様によれば、非改変ポリメラーゼは、サーマス以外の好熱種由来である。多数の熱安定性DNAポリメラーゼについての完全長核酸及びアミノ酸の配列は、容易に利用可能であり、且つ当該技術分野における通常の技能を有する者に既知である。例えば、サーマス・アクティクス(Taq)、サーマス・サーモフィルス(Tth)、サーマス種Z05、サーマス種sps17、サーモトガ・マリチマ(Tma)、及びサーモシフォ・アフリカヌス(Taf)ポリメラーゼの各配列が、PCT国際特許公報WO92/06200で公開されている。サーマス・フラバス由来のDNAポリメラーゼの配列は、Alhmetzjanov及びVakhitov(Nucleic Acids Research 20:5839, 1992)で公開されている。サーマス・カルドフィルス由来のDNAポリメラーゼの配列は、EMBL/GenBank登録番号U62584である。サーマス・フィリフォルミス由来の熱安定性DNAポリメラーゼの配列は、ATCC寄託番号42380から、例えば、米国特許第4,889,818号に記載の方法、及びそこに記載の配列情報を用いて、回復させることができる。サーモトガ・ネアポリタナDNAポリメラーゼの配列は、GeneSeq Patent Data Base登録番号R98144及びPCT WO 97/09451による。バチルス・カルドテナクス由来の熱安定性DNAポリメラーゼの配列は、例えば、Uemori等(JBiochem (Tokyo) 113(3):401−410, 1993;(Swiss−Protデータベース登録番号Q05957並びにGenBank登録番号D12982及びBAA02361も参照されたい)に記載がある。バチルス・ステレオサーモフィルス由来のDNAポリメラーゼの配列は、米国特許第6,066,483号で公開されている。本明細書に記載の通りに改変できる、DNAポリメラーゼの非改変体の例は、例えば、米国特許第6,228,628号、第6,346,379号、第7,030,220号、第6,881,559号、第6,794,177号、第6,468,775号、及び米国特許出願第20040005599号、第20020012970号、第20060078928号、第20040115639号にも記載されている。
ある実施態様によれば、ポリメラーゼの非改変体は、事前に変異導入されており(例えば、アミノ酸置換、付加、又は欠失により)、これが配列番号24又は25のアミノ酸モチーフを保持する場合、機能性DNAポリメラーゼである。すなわち、好適な非改変DNAポリメラーゼには、野生型又は天然のポリメラーゼの機能的変種も含まれる。かかる変種は、典型的には、野生型又は天然のポリメラーゼと、実質的に配列同一又は類似であることになり、典型的には、少なくとも80%配列同一、そしてより典型的には少なくとも90%、95%、又は98%配列同一である。特定の実施態様によれば、当該非改変DNAポリメラーゼは、ピロリン酸分解活性化重合能(PAP)を有する。
好適なポリメラーゼには、例えば、2以上の酵素由来のポリペプチド領域を含んでなる、特定のキメラDNAポリメラーゼも含まれる。当該キメラDNAポリメラーゼの例は、例えば、米国特許第6,228,628号に記載のものがある。特に好適なものは、キメラCS−ファミリーDNAポリメラーゼであり、これには、CS5(配列番号20)及びCS6(配列番号21)ポリメラーゼ、及び配列番号20又は配列番号21と実質的に同一又は類似する配列(典型的には、少なくとも80%配列同一、そしてより典型的には少なくとも90%配列同一)を有するその変種が含まれる。CS5及びCS6DNAポリメラーゼは、サーマス種Z05及びサーモトガ・マリチマ(Tma)DNAポリメラーゼ由来のキメラ酵素である。これらは、サーマス酵素のN−末端5'−ヌクレアーゼドメイン及び、C−末端3'−5'エキソヌクレアーゼ、及びTma酵素のポリメラーゼドメインを含んでなる。これらの酵素は、有効な逆転写活性を有し、ヌクレオチド類似体含有プライマーを伸長させることができ、並びに、アルファ−ホスホロチオエートdNTP、dUTP、dITP、及びフルオレセイン色素及びシアニン色素ファミリー標識化dNTPを取り込むことができる。CS5及びCS6のポリメラーゼは、有効なMg2+活性化PCR酵素でもある。CS5及びCS6ポリメラーゼをコードする核酸配列を、それぞれ図2B及び3Bに示す。CS5及びCS6キメラポリメラーゼは、例えば米国特許公報第20040005599号にさらに記載されている。
ある実施態様によれば、DNAポリメラーゼの非改変体は、いくつかの選択的利点を与えるように、典型的には組換え手法により、事前に変異導入されているポリメラーゼである。かかる改変には、例えば、CS5 DNAポリメラーゼ、CS6 DNAポリメラーゼ、又のポリメラーゼにおける対応する(1又は複数の)変異体における、アミノ酸置換G46E、L329A、及び/又はE678Gがある。したがって、ある実施態様によれば、DNAポリメラーゼの非改変体は、以下の1つである(各々は、指定された(1又は複数の)置換を以外は、配列番号20又は配列番号21のアミノ酸配列を有する):G46E、G46E L329A;G46E E678G;又はG46E L329A E678G。E678G置換は、例えば、リボヌクレオチド及び他の2'−改変ヌクレオチドの取り込ができるが、この変異は、プライマー鋳型を伸長させる不正常な能力をもたらすようでもある。特定の実施態様によれば、変異ポリメラーゼの伸長速度をより速くする本発明による変異は、E678Gのプライマー鋳型を伸長させる不正常な能力を改善する。
本発明のDNAポリメラーゼの改変体は、ポリメラーゼの非改変体と比較して、すなわち、配列番号24のX6又は配列番号25のX10の位置に、1又は複数のアミノ酸置換を含んでなる。この位置でのアミノ酸置換は、配列番号24の位置X6にT、又は配列番号25のX10の位置にTもしくはAを含む以外は、その他は同一である対応するDNAポリメラーゼと比較して、向上した(例えばより速い)核酸伸長速度と共に、向上したPAP能を有するDNAポリメラーゼを提供する。
DNAポリメラーゼの非改変体は唯一であるため、配列番号24のX6、又は配列番号25のX10に対応するアミノ酸位置は、典型的に、各変異ポリメラーゼについて区別される。アミノ酸及び核酸配列の配列決定プログラムは、容易に利用でき(例えば、上記を参照されたい)、そして本明細書で確認される特別のモチーフがあれば、本発明による改変のための正確なアミノ酸(及び対応するコドン)の同定の補助に役立つ。配列番号24のX6、又は配列番号25のX10に対応するアミノ酸位置を、代表的なキメラ熱安定性DNAポリメラーゼ、及び例示的な好熱種由来の熱安定性DNAポリメラーゼについて、表1に示す。
Figure 2011504732
既に議論した通り、ある実施態様によれば、本発明の変異DNAポリメラーゼは、CS5 DNAポリメラーゼ(配列番号20)、CS6 DNAポリメラーゼ(配列番号21)、又はこれらのポリメラーゼの変種(例えば、G46E;G46E L329A;G46E E678G;G46E L329A E678G等)。上記の通り、CS5 DNAポリメラーゼにおいて、変異導入可能な位置X6は、位置606のThr(T)に対応する。すなわち、本発明の特定の変種において、ポリメラーゼの改変体は、他は同一であるCS5 DNAポリメラーゼ又はCS6 DNAポリメラーゼと比較して、位置X6に、アミノ酸置換を含んでなる。例示的な改変CS5 DNAポリメラーゼ及びCS6 DNAポリメラーゼの変異体には、アミノ酸置換T606を含んでなるものがある。すなわち、本発明の特定の変種では、ポリメラーゼの改変体は、他は同一であるCS5 DNAポリメラーゼ又はCS6 DNAポリメラーゼと比較して、位置X6にアミノ酸置換を含んでなる。例示的なCS5 DNAポリメラーゼ及びCS6 DNAポリメラーゼには、アミノ酸置換T606Sを含んでなるものがある。他に、例示的な改変CS5 DNA及びCS6 DNAポリメラーゼ変異体には、以下のものがある(各々は、指定したアミノ酸置換以外は、配列番号20又は配列番号21のアミノ酸配列を有する)。
Figure 2011504732
A.ブロックプライマーの相対的伸長速度決定のための方法
本発明の改変(又は変異)DNAポリメラーゼが、向上した2’−PO4−ブロックプライマー活性化速度を有するかを決定するために、伸長アッセイを行う。伸長アッセイのある実施態様によれば、予備アニーリンングしたオリゴ二重鎖物質を、プライマーM13鋳型に置換する。ある実施態様によれば、当該プライマー鎖は、配列:CGCCTGGTCTGTACACCGTTCE(配列番号34)(ここで、E=2’PO4−dAである)を有し、そして鋳型鎖は、配列:CAACTTTGAAAGAGGACAGATGAACGGTQTACAQACCAQGCGP(配列番号35)(ここで、Q=7−デアザ−dG、及びP=3’PO4である)を有する。鋳型鎖における7−デアザ−dG残基は、バックグラウンド蛍光を低減させることになる。ある実施態様によれば、オリゴ二重鎖を、反応混合物(0.5mM ピロリン酸、100mM トリシン pH8.0、20mM KOAc、3mMMg(OAc)2、2.5%酵素保存緩衝液、IX SYBRグリーン(Molecular Probes)、並びに0.1mMの各dATP、dCTP、dGTP、及びdTTP)に添加する。「酵素保存緩衝液」は、20mM Tris pH8.0、100mM KCl、0.1mM EDTA、1mM DTT、0.5% Tween20、及び50%v/vグリセロールからなり、100nMである。DNAポリメラーゼがブロックプライマーを活性化できる速度は、バックグラウンド控除後、蛍光の変化速度により推定される。バックグラウンド蛍光から伸長由来蛍光を消すために、反応マスターミックスからヌクレオチドを除去することにより、プライマー鎖伸長を阻害する、併発反応が含まれてもよい。本発明の各ポリメラーゼについて、バックグラウンド控除後、蛍光の増加速度から活性が推定でき、その後、M13鋳型における活性と比較することができる。その後、これらの2つの速度の比率(各ポリメラーゼについて)を、改変(又は変異)DNAポリメラーゼが相対的に高い2’−PO4−ブロックプライマー活性化活性を有するかを決定するために使用する。このアッセイは、実施例1でより詳細に記載する。
6がTではない(配列番号1)か、又はX10がTもしくはAではない(配列番号2)である本発明の改変DNAポリメラーゼが、X6がTである(配列番号24)か、又はX10がTもしくはAであり(配列番号25)、他は同一のDNAポリメラーゼと比較して、ブロックプライマーを伸長させる能力が向上しているかを決定するために、鋳型としてM13mp18を用いるモデル系で、PAP−PCRを行う。当該モデル系での使用のためのプライマーは、以下の配列を有する。
KAB77:CGCCTGGTCTGTACACCGTTCE(配列番号26)、ここでE=2’PO−dAであり、
KAB71:GGAACGAGGGTAGCAACGGCTACE(配列番号27)、ここでE=2’PO−dAである。
2つのプライマーは共に、M13鋳型から342bpのアンプリコンを作ることが期待される。この両プライマーは、3’末端を2’PO基でブロックされ、末端dA残基のピロリン酸分解によりその基が除去されるまで伸長できないことに留意されたい。別の2’PO−ブロックプライマーのピロリン酸分解により活性化速度が変化すること、及びKAB77活性化は比較的遅く、高効率のアンプリコンを得るため、PCRにおいて最大5分の長い伸長時間を要することが、従来の観察で示唆されている。
ポリメラーゼを試験するために使用される反応条件は、50mM トリシン(pH7.5)、80mM KOAc(pH 7.5)、2.5% v/v 酵素保存緩衝液+ 0.5% Tween 20、0.2X SYBRグリーンI(DMSO中20X溶液);5% v/vグリセロール、dNTP 0.2mM 各 d(AGC)TP及び0.4mM dUTP、 0.02U/μl UNG、2.75mM Mg(OAc)、0.2mM ピロリン酸、10nM DNAポリメラーゼ、1E5コピーM13mp18DNA/20μl 反応物;及び0.2μM 各プライマーKAB77/KAB71である。「酵素保存緩衝液」の組成は、20mM Tris pH8.0、100mM KCl、0.1mM EDTA、1mM DTT、0.5% Tween20、及び50%v/vグリセロールである。
上記の反応混合物は変化させることができる。非限定的な変形には、例えば、KOAc濃度を20−120mMの範囲、ピロリン酸濃度を0.15−0.3mMの範囲、及びMg(OAc)濃度を2−4mMの範囲とすることができる。全ての反応は、二重に行われる。サイクル条件は、50℃で2分(UNG滅菌させる);92℃で1分;その後92℃で15秒を46サイクル、そして62℃で35秒アニーリング/伸長、とする。
その後、上記の条件を用いて、アンプリコン形成を、相対的蛍光の増加により検出する。ブロックプライマーの高効率な活性化を有するポリメラーゼを使用する場合、非効率的なポリメラーゼよりも少ないサイクルで、アンプリコンの検出が起きることになる。伸長342bpアンプリコンだけが、これらの条件下で作製された検出可能な産物であることを確認するために、アガロースゲル分析を使用できる。
同じ実施態様によれば、DNAポリメラーゼがブロックプライマーを活性化できる速度は、バックグラウンド控除の後、蛍光の変化割合により推定される。バックグラウンド蛍光から伸長由来蛍光を消すために、反応マスターミックスからヌクレオチドを除去することにより、プライマー鎖伸長を阻害する、併発反応が含まれてもよい。本発明の各改変又は変異ポリメラーゼについて、バックグラウンド控除後、蛍光の増加速度から活性が推定でき、その後、同じ反応条件を用いて、位置X6がTである(配列番号24)か、又は位置X10がTもしくはAであり(配列番号25)、他は同一のDNAポリメラーゼと比較する。
B.DNAポリメラーゼを改変又はそれに変異導入するための方法
向上したPAP能又は他の所望の特性を有する、改変又は変異酵素の作製は、部位特異的変異導入、化学的修飾等の様々なプロセスにより達成されてよい。より具体的には、部位特異的変異導入は、部位特異的なプライマー特異的変異導入により一般的に達成される。この技術は、典型的には、所望の変異を表す限定される不一致を以外、変異導入される一本鎖ファージDNAに相補的な合成オリゴヌクレオチドプライマーを用いて行われる。端的に言えば、当該合成オリゴヌクレオチドは、プラスミド又はファージに相補的な鎖の合成を指示するプライマーとして使用され、得られた二本鎖DNAは、ファージ補助性の宿主細菌に形質転換される。得られる細菌は、例えば、所望の変異遺伝子配列を有するこれらのプラークを確認する、DNA配列解析又はプローブはハイブリダイゼーションにより評価することができる。ある実施態様によれば、ポリメラーゼの非改変体をコードする核酸分子は、当該技術分野の当業者に周知である、様々なポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により変異導入することができる。(例えば、PCR Strategies(M.A.Innis、D.H.Gelfand、及びJ.J.Sninsky eds.、1995、Academic Press、San Diego、CA) at Chapter 14;PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications (M.A.Innis、D.H Gelfand、 J.J.Sninsky、及びT.J.White eds.、Academic Press、NY、1990、を参照されたい。)
非限定的な例によれば、Clontech製のトランスフォーマ部位特異的変異導入キットで使用される2つのプライマーシステムを、ポリメラーゼの非改変体をコードするポリヌクレオチドに、部位特異的変異を導入するために使用できる。このシステムにおいて、標的プラスミドの変性の後、2つのプライマーを、同時にプラスミドにアニーリングさせ、これらのプライマーの一方は、所望の部位特異的変異を含み、他方は、プラスミドから制限部位の排除させることになる別の位置の変異を含む。その後、これら2つの変異体を緊密に結合する第二の鎖合成が行われ、得られるプラスミドは、E.coliのmutS種に形質転換される。プラスミドDNAは、当該形質転換された細菌から単離され、関連する制限酵素で制限酵素処理され(それにより、非変異プラスミドを直線化する)、そして、E.coliに再び形質転換する。このシステムは、一本鎖ファージミドのサブクローニング又は作製の必要性がなく、発現プラスミドに直接変異を作製させることができる。2つの変異体の緊密な結合、及びその後の非変異プラスミドの直線化により、変異効率が高くなり、最小限のスクリーニングが可能となる。初期制限部位プライマーの合成の後、この方法では、変異部位当たり1つのみの新規なプライマー型の使用を要する。各位置変異を別々に調製するよりも、「設計した縮重」オリゴヌクレオチドプライマーセットは、所与の部位で全ての所望の変異を同時に導入するために合成することができる。形質転換体は、変異導入領域にわたってプラスミドDNAを配列決定することによりスクリーニングし、変異クローンを識別し且つ分類することができる。その後、各変異DNAを制限処理し、例えば、変異決定向上ゲル(Mutation Detection Enhancement gel)(Mallinckrodt Baker,Inc.製 Phillipsburg,NJ)等を用いて電気泳動により分析し、(非変異導入コントロールと比較したバンドシフトにより)当該配列において他の変更が発生していないかを確認することができる。あるいは、全DNA領域を配列決定し、さらなる変異事象が標的領域の外で発生していないかを確認することができる。
変異タンパク質の高レベルでの作製、及び標準的プロトコルでの精製のために、pET(又はその他の)過剰発現ベクターで確認された変異二重鎖を、例えばE.coli種BL21(DE3)pLysS等のE.coliを形質転換して使用することができる。FAB−MSマッピング法は、例えば、変異発現のフィデリティを迅速に確認するために使用することができる。この技術は、全タンパク質にわたり配列決定セグメントを提供し、且つ配列割当に必要な信頼度を提供する。このタイプのマッピング実験において、タンパク質はプロテアーゼで分解される(このセグメントは主要な注目の対象であり、且つ残りのマップは非変異導入タンパク質のマップと同一であるはずなので、その選択は、変異を受けた特定領域に依存するはずである)。切断断片のセットは、例えば、microbore HPLC(逆相又はイオン交換、また改変される特定領域に依存する)により分取され、各フラクションに複数のペプチドを提供するとともに、当該ペプチドの分子量を、FAB−MS等の標準的方法により決定する。その後、決定された各断片の質量を、予測配列の分解から期待されるペプチドの分子量と比較し、そして当該配列の正確性を迅速に確定する。このタンパク質改変に対する変異導入アプローチは方向性を有するため、MSデータが予測と一致する場合、変更されたペプチドの配列決定が必要でないはずである。変化した残基を確認する必要がある場合は、問題の混合物のペプチドを配列決定するために、CAD−タンデムMS/MSを使用することができ、又は標的ペプチドを、改変の位置に依存するサブトラクティブエドマン分解又はカルボキシペプチダーゼY分解のために精製することができる。
C.発現ベクター及び宿主細胞
したがって、本発明は、本明細書に記載の任意のDNAポリメラーゼをコードする組換え核酸も提供する。ある実施態様によれば、本発明は、本明細書に開示されるDNAポリメラーゼをコードする核酸を有するベクターを含んでなる。レプリコン、及び宿主細胞に適合する種由来のコントロール配列を含有する任意のベクターは、本発明の実施において使用することができる。一般的には、発現ベクターには、変異DNAポリメラーゼをコードする核酸に作動的に結合する、転移及び翻訳調整核酸領域が含まれる。「コントロール配列」なる用語は、特定の宿主生物において、作動的に結合したコード配列の発現のために必要なDNA配列のことを言う。原核生物に適するコントロール配列には、例えば、プロモーター、任意のオペレーター、及びリボース結合部位がある。さらに、ベクターは、転写されたmRNAの半減期を向上させるため、ポジティブ・レトロ制御要素(Positive Retroregulatory Element(PRE))を含んでもよい(Gelfand等、米国特許4,666,848号を参照されたい)。転写及び翻訳の制御核酸領域は、一般的にポリメラーゼを発現するために使用される宿主細胞にとって適切であるはずである。様々な宿主細胞について、当該技術分野では、多くの適切な発現ベクターのタイプ、及び好適な制御配列が既知である。一般に、転写及び翻訳の制御配列には、例えば、プロモーター配列、リボソーム結合部位、転写開始及び停止配列、翻訳開始及び停止配列、並びにエンハンサー又はアクチベーター配列があり得る。典型的な実施態様によれば、当該制御配列には、プロモーター、並びに転写開始及び停止配列がある。典型的には、ベクターも外来DNAの挿入のための複数の制限部位を含有するポリリンカー領域を含む。特定の実施態様によれば、「融合フラッグ」は、精製、及び所望の場合には、その後例えば「His-タグ」等のタグ/フラッグ配列の除去を促進させるために使用される。しかしながら、これらは一般的に、「熱ステップ」が使用される場合、中温性宿主(例えば、E.coli)由来の熱活性(thermoactive)及び/熱安定性タンパク質を精製する場合には、必要でない。DNAコード複製配列、制御配列、表現型選択遺伝子、及び注目の変異ポリメラーゼを含有する好適なベクター構築物は、標準的な組換えDNA手法を用いて調製される。単離プラスミド、ウイルス性ベクター、及びDNA断片を、当該技術分野で周知の方法により、切断し、仕立て(tailor)、及び所望のベクターを作製するため特定の順番で共にライゲーションする(例えば、Sambrook等、Molecular Cloningten A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, NY, 2nd ed. 1989)を参照されたい)。
特定の実施態様によれば、伸長ベクターは、形質転換宿主細胞の選択を可能にする、選択可能なマーカー遺伝子を含有する。選択遺伝子は、当該技術分野で周知であり、そして、使用される宿主細胞で変化するはずである。好適な選択遺伝子には、例えば、アンプリコン及び/又はこのベクターで形質転換された細胞を、この抗生物質の存在下で成長させるテトラサイクリン抵抗性をコードする遺伝子を含んでもよい。
本発明のある実施態様によれば、変異DNAポリメラーゼをコードする核酸は、単独か、ベクターとの組み合わせのいずれかで細胞に導入される。「導入される」又は本明細書で文法的同等表現は、核酸の続く統合、増幅、及び/又は発現に適する手法で、細胞に核酸が入ることを意味する。導入方法は、標的細胞型により主に決定される。例示的な方法には、CaPO沈殿、リポソーム融合、リポフェクチン(LIPOFECTIN)(登録商標)、エレクトロポレーション、ウイルス感染等がある。
原核生物は、典型的に、本発明の初期のクローニングステップのための宿主細胞として使用される。これらは、大量のDNAの急速な作製のため、部位特異的変異導入で使用される一本鎖DNA鋳型の作製のため、多数の変異体を同時にスクリーニングするため、及び作製された変異体のDNA配列決定のために、特に有用である。好適な原生生物宿主細胞には、E.coli K12種94(ATCC番号31,446)、E.coli種W3110(ATCC番号27,325)、E.coli K12種DG116(ATCC番号53,606)、E.coliX1776(ATCC番号31,537)、及びE.coli Bがあるが、E.coliの多くの多種、例えば、HB101、JM101、NM522、NM538、NM539、及び多くの多種、及びバチルス・サブチリス等の桿菌を含む原核生物の属、サルモネラ・ティピムリウム又はセラティア・マルセサンス等の他の腸内細菌科、及び様々なシュードモナス種は、全て宿主として使用できる。原核生物宿主細胞又は固い細胞壁を有する他の宿主細胞は、典型的に、上記のSambrook等の1.82章に記載の塩化カルシウム法を用いて形質転換される。あるいは、これらの細胞の形質転換のために、エレクトロポレーションを使用することができる。原核生物形質転換技術は、例えば、Dower, Genetic Engineering, Principles and Methods 12:275−296 (Plenum Publishing Corp. 1990);Hanahan等 Meth. Enzymol, 204ten63, 1991に記載がある。E.coliの形質転換のため典型的に使用されるプラスミドには、pBR322、pUCI8、pUCI9、pUCII18、pUC119、及びブルースクリプトM13があり、これらの全てが、上記のSambrook等の1.12−1.20章に記載されている。しかしながら、多くの他の好適なベクターも同様に利用可能である。
本発明のDNAポリメラーゼは、典型的には、変異DNAポリメラーゼの導入又は発現に適切な条件下で、変異DNAポリメラーゼをコードする核酸配列を含む発現ベクターで形質転換した宿主細胞を培養することにより作製される。タンパク質発現に適する条件下で形質転換した宿主細胞を培養する方法は、当該技術分野で周知である(例えば、上記、Sambrook等を参照されたい)。ラムダpLプロモーター含有プラスミドベクターからの変異ポリメラーゼの作製のための好適な宿主細胞には、E.coli種DG116(ATCC番号536060)がある(米国特許第5,079,352号及びLawyer F.C.等、PCR Methods and Applications 2:275−87, 1993を参照されたい)。発現後、当該変異ポリメラーゼを回収し単離することができる。熱安定性DNAポリメラーゼの精製のための方法は、例えば、上記Lawyer等に記載されている。
精製してから、変異DNAポリメラーゼのプライマー鋳型を伸長させる能力を、伸長を測定するための様々な既知のアッセイのいずれかにおいて試験する。例えば、プライマー鋳型分子(例えば、M13 DNA等)、適切な緩衝液、dNTPの完全なセット(例えば、dATP、dCTP、dGTP、及びdTTP)、及び金属イオンの存在下、DNAポリメラーゼは、プライマーを伸長させ、一本鎖DNA(ssDNA)を二本鎖DNA(dsDNA)へ変換させることになる。この変換は、例えばSYBRグリーンI等のdsDNA結合色素の添加により、検出及び定量することができる。動力学的熱サイクル(Watson等、Anal.Biochem.329:58−67、2004、並びに例えば、Applied Biosystems、Strategene、及びBioRadから入手も可能)を用いて、反応プレートのデジタル画像を取得することができ(例えば、10〜30秒間隔で)、それにより反応の進行を続けさせることができる。検出蛍光量は、容易に伸長速度に変換できる。かかる定常作業のアッセイを用いて、ポリメラーゼの非改変体と比較した変異体の伸長速度を決定することができる。
III.反応混合物
本発明のDNAポリメラーゼは、かかる酵素活性が必要であるか、又は所望される任意の目的のために使用してよい。ある実施態様によれば、本発明のポリメラーゼは、標的核酸の増幅のための様々なプライマー伸長方法において使用される。特定の実施態様によれば、当該プライマー伸長方法は、プライマー伸長の前に伸長不可能な3’−ヌクレオチドの除去(例えばPAP)を要する、ブロックプライマーの使用が必要である。プライマー伸長に適する条件は、当該技術分野で既知である(例えば、上記Sambrook等を参照されたい。Ausubel等、Short Protocols in Molecular Biology (4th ed、John Wiley & Sons 1999)も参照されたい)。一般的には、プライマーは、標的核酸にアニーリング、すなわちハイブリダイズし、プライマー−鋳型複合体を形成する。このプライマー−鋳型複合体を、好適な環境において、変異DNAポリメラーゼ及び遊離ヌクレオチドと接触させ、当該プライマーの3’末端に、1又は複数のヌクレオチドを付加させ、それにより標的核酸に相補的な伸長プライマーを作製する。プライマーには、1又は複数のヌクレオチド等が含まれてよい。さらに、遊離ヌクレオチドは、従来のヌクレオチド、非従来のヌクレオチド(例えば、リボヌクレオチド又は標識ヌクレオチド)、又はその混合物があり得る。ある変形によれば、当該プライマー伸長反応は、標的核酸の増幅を含んでなる。DNAポリメラーゼ及びプライマー対を用いる核酸増幅に適する条件も、当該技術分野で既知である(例えば、PCR増幅法)(例えば、上記Sambrook等、上記Ausubel等;PCR Applicationsten Protocols for Functional Genomics (Innis等. eds.、Academic Press 1999)を参照されたい)。他の互いに排除しない実施態様によれば、プライマー伸長反応は、RNA鋳型の逆転写(例えば、RT−PCR)を含んでなる。本発明の改変変異ポリメラーゼ(向上した伸長速度をもたらす)の使用は、例えば、比較的短時間のインキュベーションでプライマー伸長反応を行うこと、酵素濃度を低減させること、及び/又は生成収量を向上させることが可能である。
本発明はまた、広範に及ぶ応用、特に核酸からのターミネーターヌクレオチド(例えば、2’−ターミネーターヌクレオチド)の除去、ヌクレオチド重合、及び/又は核酸の増幅が所望される場合に使用できる、多くの異なる反応混合物を提供する。ある実施態様によれば、例えば、反応混合物は、同種接合増幅/検出アッセイ(例えば、リアルタイムPCRモニタリング)の実行、又は変異体の検出又は核酸の遺伝子型決定において利用される。特定の実施態様によれば、多数の形式が必要である応用における使用のために、多数のプライマー及び/又はプローブは、反応混合物に一緒に貯蔵される。これら多くの応用は、以下でさらに記載するか、又は他の方により本明細書で言及する。
本明細書に記載のDNAポリメラーゼに加え、反応混合物は、一般的に、PAP、ブロックオリゴヌクレオチドからのターミネーターヌクレオチドの除去(例えば、活性化又は伸長可能なオリゴヌクレオチドを作製するため)、ヌクレオチド重合、核酸増幅、及び反応検出(例えば、リアルタイムPCRモニタリング又は5’−ヌクレアーゼアッセイ)等を行うのに有用である様々な試薬を含む。これらの他の試薬の例示的なタイプには、例えば、鋳型もしくは標的核酸(例えば、本質的な任意の供給源から入手するか、それに由来する)、ピロリン酸、発光調節因子、緩衝液、塩、アンプリコン、グリセロール、金属イオン(例えば、Mg++等)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ポリrA(例えば、低いコピー数の標的のための担体核酸として)、ウラシル N−グリコシラーゼ(UNG)(例えば、担体過剰混入に対して保護するため)を含む。ある動力学的PCR−関連応用においては、反応混合物には、増幅産物の検出を促進するプローブも含まれる。これらのプロセスで使用されるプローブの例には、例えば、ハイブリダイゼーションプローブ、5’−ヌクレアーゼプローブ、及び/又はヘアピンプローブがある。核酸増幅及び検出、並びに他の方法は、以下でもさらに記載される。
反応混合物は、一般的に、上記の通り選択されたヌクレオチド、プライマー、及び/又はプローブを、選択された特定の応用を行うために十分な他の試薬量と組み合わせることにより作製される。所与の反応混合物に含まれる試薬量は、行われる選択された方法の観点から、当該技術分野の当業者にとって明らかなはずである。
IV.改変DNAポリメラーゼの使用方法
本発明は、本明細書に記載の改変ポリメラーゼを用いる方法を提供する。ある実施態様によれば、例えば、これらのポリメラーゼは、標的核酸の検出に必要なアッセイを行うために使用され、例えば、これらの標的が由来する対象についての、診断的、遺伝子的、又はその他の情報を提供する。これらの態様は、本明細書に記載の実施例においても例示する。
本明細書に記載のポリメラーゼは、核酸の3’末端から、例えば、ピロリン酸分解のプロセスを介するターミネーターヌクレオチドの除去を必要とする、本質的に、任意の応用における使用に、任意に使用されるか、又は適用される。応用の核酸関連タイプの例には、核酸の構造及びコンフォメーションの解析、リアルタイムPCRアッセイ、及びSNP検出(Myakishev等(2001)Genome Res 11:163−169;Lee等(1999)Biotechniques 27:342−349;Thelwell等 (2000) Nucleic Acids Res 28:3752−3761;Whitcombe 等 (1999) Nat. Biotechnol. 17:804−807, Heid 等 (1996) Genome Res. 6:986−994, Nazarenko 等 (1997) Nucleic Acids Res. 25:2516−2521);核酸ハイブリダイゼーションの検出(Parkhurst 等 (1995) Biochemistry 34:285−292: Tyagi 等 (1996) Nat Biotechnol 14:303−308: Tyagi 等 (1998) Nat Biotechnol 16:49−53: Sixou 等 (1994) Nucleic Acids Res 22:662− 668;及びCardullo 等 (1988) Proc Natl Acad Sci USA 85:8790−8794);変異検出のためのプライマー伸長アッセイ(Chen 等 (1997) Proc Natl Acad Sci USA 94:10756−10761);及び自動DNA配列決定(Woolley 等 (1995) Anal Chem 67:3676−3680, Hung 等 (1998) Anal Biochem 255:32−38、及びJu 等 (1995) Proc Natl Acad Sci USA 92:4347−4351)がある。改変酵素は、例えば、米国特許第7,033,763号;第6,534,269号;及び米国特許出願第10/798,844号に記載の、様々なピロリン酸活性化重合方法でも使用できる。
さらに例示すると、例えば、本発明の反応混合物における又はそれ由来の標的核酸を解析するための使用することができるか、又は解析のための使用に適合させることができる、核酸解析技術の一般的タイプの例には、様々な核酸増幅アッセイが含まれる。核酸増幅アッセイにおける一般的特徴は、それらが典型的に、検出される生物に特異的な核酸配列を増幅するよう設計されていることである。一般的に核酸増幅試験は、核酸解析に対する他のアプローチより感度が高くなっている。本明細書に記載のDNAポリメラーゼの使用によりさらに向上するこの感度は、典型的には、完全に一致したプライマー:鋳型複合体の単一コピーほど小さいものから、正のシグナルを作るその能力に起因する。標的核酸を任意に利用するか又はそれに適合させる増幅方法には、例えば、様々なポリメラーゼ、リガーゼ、又は逆転写酵素媒介型の増幅方法、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、及び/又は逆転写PCR(RT−PCR)がある。これら及び他の増幅方法、及びこれらのアッセイのためのサンプル調製のための様々なアプローチの使用に関するさらなる詳細は、任意の様々な標準的テキストに見出すことができ、例えば、上記の、Berger、Sambrook、Ausubel1及び2、並びにInnisがある。
本発明の試薬及び方法の使用のために任意に適合させた、様々な市販の核酸増幅アッセイは、一般的にその増幅方法及びその標的核酸配列の点で異なる。これらの詩反応試験の例には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用する、ハイブリダイゼーションプローブアッセイ(例えば、LightCyclerシステム)及びAMPLICOR(登録商標)及びAMPLICOR(登録商標)アッセイ(Roche Diagnostics Corporation製、Indianapolis, IN, USA);リガーゼ連鎖反応(LCR)を使用する、LCx(登録商標)試験(Abbott Laboratories, Abbott Park, IL, USA);鎖置換増幅(SDA)を用いる、BDProbeTec(商標)ET試験(Becton, Dickinson and Company, Franklin Lakes, N.J.,USA);及び転写媒介増幅(TMA)を用いる、APTIMA(商標)アッセイ(Gen−Probe, Inc.,San Diego, CA, USA)がある。
特定の実施態様によれば、例えば、5'−ヌクレアーゼプローブは、様々な5'−ヌクレアーゼ反応において利用される。多くの5'−ヌクレアーゼアッセイは、当該技術分野における当業者に周知である。当該反応の例は、例えば、米国特許第6,214,979号、第5,804,375号、及び第5,210,015号に記載されている。
端的に例示すると、5'−ヌクレアーゼ反応において、標的核酸を、プライマー及びプローブ(例えば5'−ヌクレアーゼプローブ)と、当該プライマー及びプローブが標的核酸の鎖にハイブリダイズする条件下で接触させる。当該標的核酸、プライマー及びプローブも、5’から3’ヌクレアーゼ活性を有する核酸ポリメラーゼと接触させる。5’から3’ヌクレアーゼ活性を有する核酸ポリメラーゼは、プライマー下流の標的核酸にハイブリダイズするプローブを切断することができる。プライマーの3’末端は、ポリメラーゼのための最初の結合部位を提供する。結合したポリメラーゼは、当該プローブ上の5’末端で出会うとプローブから断片を切断する。
プライマー及びプローブは、標的核酸上でそれらが極めて近接してアニーリングするように設計することができ、これは、プライマー伸長が不存在下で、プライマーの3’末端への核酸ポリメラーゼの結合により、プローブの5’末端と接触させてそれを置くようにすることにより行う。「重合非依存性切断」なる用語は、このプロセスのことを言う。あるいは、当該プライマー及びプローブが当該標的核酸のより距離的に離れた領域とアニーリングする場合、典型的に、重合は、核酸ポリメラーゼがプローブの5’末端に出会う前に起きる。重合が連続する場合、ポリメラーゼは、プローブの5’末端から断片を徐々に切断する。この切断は、プローブの残りが鋳型分子から解離する程度に不安定化するまで継続する。「重合依存性切断」なる用語は、このプロセスのことを言う。
重合依存性切断に1つの利点は、核酸の増幅に必要な除去にある。プライマー及びプローブが隣接して核酸に結合すると、プローブアニーリングと断片の切断の連続的往復が発生し得る。すなわち、十分量の断片が作られ、重合の不存在下での検出が可能となる。
いずれのプロセスにおいても、標的核酸を含有すると考えられるサンプルが提供される。当該サンプルに含有される標的核酸は、必要ならば、最初にcDNAに逆転写され、その後、当該技術分野の当業者に既知である任意の好適な変性方法、例えば、物理的、化学的、又は酵素的方法を用いて変性されてもよい。鎖分離に有効な例示的な物理的アプローチには、核酸が完全に(>99%)変性するまでそれを加熱することが必要である。典型的な加熱変性には、約85℃〜約105℃(典型的には、約85℃〜約98℃、そしてより典型的には約85℃〜約95℃)の範囲の温度で、約1秒〜約10分(例えば、数秒〜約1分)の時間が必要である。
変性の別法としては、サンプルが一本鎖RNA又はDNAウイルスを含んでなる場合などは、サンプル中に核酸を一本鎖の状態で存在させてよい。
変性標的核酸鎖は、典型的には、プライマー及びプローブが標的核酸鎖に結合できるハイブリダイゼーション条件下で、プライマー及びプローブと共にインキュベートする。ある実施態様によれば、標的核酸を増幅するために2つのプライマーが使用できる。この2つのプライマーは、典型的には、標的核酸に沿ったそれらの相対位置が、伸長産物がその鋳型(相補鎖)から分離する場合、一方のプライマーから合成された伸長産物が、規定長さの複製鎖を作る、他のプライマーの伸長のための鋳型として機能するように選択される。
典型的に相補鎖はプローブ又はプライマーより長いので、当該鎖は、接触位置をより多く持つため、所与の期間にわって、互いへの結合の機会がより増加する。したがって、プローブ及びプライマーの高いモル過剰は、典型的に、鋳型鎖の再アニーリングよりも、プライマー及びプローブアニーリングにとって有利に利用される。多重形式においては、複数プローブは、典型的に、複数の標的核酸を同時に検出するための単一反応容器において使用される。
プライマーは一般的に、重合非依存性切断又は重合依存性切断の進行が可能である、選択された条件下で、それが選択的に標的核酸に結合するよう、十分な長さ及び相補性を有する。当該プライマーの正確な長さ及び組成は、多くの因子、例えば、アニーリング反応温度、プライマーの供給源及び組成、プライマーアニーリング部位とプローブアニーリング部位の近接性、及びプライマー:プローブ濃度比率等に依存するはずである。プライマーは、典型的に約15〜30ヌクレオチドを含むが、ヌクレオチドはそれより多くても、少なくてもよい。
プローブは一般的に、核酸ポリメラーゼが、標的核酸の相補的領域に出会う前に、プローブの相補的な標的核酸とアニーリングし、それにより、当該酵素の5’から3’ヌクレアーゼ活性により当該プローブから断片が切断される。ポリメラーゼがこのハイブリダイゼーション領域に到達する前に、プローブが標的核酸とアニーリングする可能性を向上させるため、様々な技術を利用することができる。例えば、短いプライマーは、一般的に、核酸と十分に安定なハイブリッド複合体を形成するために、より低温を必要とする。したがって、プローブがプライマーアニーリングと比較してより高温で標的核酸と優先的にアニーリングするように、プローブをプライマーより長く設計することができる。さらに例示すると、プローブのヌクレオチド組成は、G/C含量がより多いように選択でき、結果的に、プライマーより熱安定性が高くなる。非改変ヌクレオチドのみを有するプライマー又はプローブと比較して、熱安定性がより高いか、又はより低く作用するよう、プライマー又はプローブに、任意に、改変ヌクレオチドを組み込むことができる。ある実施態様によれば、プライマーは、3’末端にターミネーターヌクレオチドを含有する。熱サイクルパラメータは、プローブ及びプライマーの熱安定性の差の利点を活かすように変化させることもできる。例えば、熱サイクル変性ステップの後に、プローブを結合させるが、プライマーは結合させない、中間的温度を導入してもよい。その後、温度をさらに下げ、プライマーをアニーリングさせることができる。プライマーの前にプローブの結合を優先させるため、プライマー濃度に対してプローブの高いモル過剰を使用することもできる。かかるプローブ濃度は典型的に、一般的に約0.5〜5×10−7Mであるそれぞれのプライマー濃度の、約2〜約20倍の範囲である。
プライマーの鋳型依存性伸長は、十分量の塩、金属カチオン、及び緩衝液を含む反応混合物中に、十分量の4つのデオキシリボヌクレオシド三リン酸(dATP、dGTP、dCTP、及びdTTP)又は類似体存在下で、本明細書に記載のDNAポリメラーゼを用いて触媒することができる。反応混合物は、さらに上に記載される。これらのDNAポリメラーゼを用いるDNA合成触媒のための反応条件は、当該技術分野で周知である。ある実施態様によれば、向上したPAP能に加え、DNAポリメラーゼは、検出可能なシグナルが直接的又は間接的に発生するように、効率的にプローブを切断し、標識断片を放出させる5’−3’ヌクレアーゼ活性を有する。
当該合成産物は、一般的に、鋳型鎖及びプライマー伸長鎖を含む二重鎖分子である。この合成の副産物は、モノ、ジ、及びそれより大きなヌクレオチド断片の混合物を含む可能性のあるプローブ断片である。
変性、プローブ及びプライマーのアニーリング、並びにプライマー伸長及びプローブ切断の反復サイクルが、プライマーにより規定される領域の指数関数的累積、及び標識断片の指数関数的生成をもたらす。一般的にバックグラウンドシグナルより数オーダー大きい、検出可能なプローブ断片量に到達するよう、十分なサイクルが実行される。
特定の実施態様によれば、PCR反応は、本明細書に記載の熱安定性DNAポリメラーゼ酵素を利用する、自動化プロセスとして行われる。このプロセスにおいて、反応混合物は、変性ステップ、プローブ及びプライマーのアニーリングステップ、及びプライマー依存性鋳型伸長と同時に、切断と置換が発生する合成ステップを通って循環する。ある実施態様によれば、本明細書に記載の方法はシステムを用いて行われる。任意に、例えば、本発明のDNAポリメラーゼ等の熱安定性酵素を共に使用するよう設計された、Applied Biosystems(Foster City,CA,USA)製等の、市販の熱サイクル装置がある。
本質的には、本発明のDNAポリメラーゼ酵素は、標的核酸を検出し、且つ増幅させる任意の利用可能な方法と共に使用することができる。一般的なアプローチには、5’−ヌクレアーゼプローブ、ハイブリダイゼーションプローブ、又はヘアピンプローブ(例えば、分子ビーコン)でのリアルタイム増幅検出、増幅プライマー又は増幅核酸それら自身に組み込まれる標識の検出、例えば、未取り込み標識からの増幅産物の電気泳動分離、ハイブリダイゼーションに基づくアッセイ(例えば、アレイに基づくアッセイ)、及び/又は核酸に結合する二次試薬の検出、がある。これらの一般的アプローチも、例えば、上記Sambrook、及びAusubel1及び2に記載されている。
本明細書に記載の改変ポリメラーゼを用いる他の例示的な実施態様には、リアルタイム標的核酸検出に作用する標識プライマーの使用がある。
リアルタイム標的核酸検出に対するプライマーベースのアプローチで、本明細書に記載のDNAポリメラーゼを用いる使用に適合させることができるものは、例えば、Huang等(2004) Biotechnol Lett. 26(11):891−895, Asselbergs等(2003) Anal Biochem. 318(2):221−229, and Nuovo等(1999) J Histochem Cytochem. 47(3):273−280、に記載のものがある。
V.キット
本発明は、核酸伸長のためのキットも提供する。一般的には、当該キットは、本明細書に記載の、本発明のDNAポリメラーゼを提供する、少なくとも1つの容器を含む。特定の実施態様によれば、キットは、1又は複数の追加の試薬を提供する、1又は複数の追加の容器をさらに含む。例えば、特定の変形において、1又は複数の追加の容器は、遊離ヌクレオチド;PAPに適する緩衝液;及び/又はPAP条件下で規定のポリヌクレオチド鋳型にハイブリダイズ可能なプライマーを提供する。ある実施態様によれば、プライマーは、3’末端で伸長不可能なターミネーターヌクレオチドを有する。ある実施態様によれば、ターミネーターヌクレオチドは、少なくとも1つの標識(例えば、放射性同位体、蛍光色素、質量調整基等)を含む。ある実施態様によれば、キットは、1又は複数の伸長可能なヌクレオチドと、任意に、標識を含んでなる少なくとも1つの伸長可能なヌクレオチド(例えば、放射性同位体、蛍光色素、質量調整基等)をさらに含む。任意に、キットは、少なくとも1つのピロホスファターゼ(例えば、熱安定性ピロホスファターゼ)をさらに含む。典型的には、キットは、本明細書に記載のDNAポリメラーゼで、核酸を伸長させるための指示書のセットも含む。特定の実施態様によれば、キットは、プライマー核酸が鋳型核酸の少なくともサブ配列と相補的である、鋳型核酸及びプライマー核酸をさらに含む。任意に、当該鋳型核酸又は当該プライマー核酸は、個体支持体に取り付けられる。これらの実施態様のいくつかによれば、プライマーは、例えば、放射性同位体、蛍光色素、質量調整基等の標識を含んでなる。
以下の実施例は、例示の目的のために記載されており、いかなる手段によっても本発明の限定として解されることを意図するものではない。本明細書及び以下の実施例に開示される技術は、本発明の実施において十分機能するよう発明者等により開示される技術であるため、本発明の実施のための好ましい態様を表すと考えられることは、当該技術分野の当業者に理解されるはずである。しかしながら、当該技術分野の当業者は、本開示を考慮し、本明細書に開示される特定の実施態様に、多くの変更が可能であり、且つ本発明の思想又は範囲から逸脱しない同様な結果を得られることも、理解するはずである。
実施例1:変異DNAポリメラーゼの確認及び特性評価
この実施例は、2’−PO−ブロックプライマーの活性化が向上した変異DNAポリメラーゼの確認及び特性評価を示す。CSファミリーポリメラーゼにおける変異体は、プライマーがその完全に相補的な鋳型にアニーリングする場合、2’−リン酸化ブロックプライマーから保護基を除去する能力の向上をもたらすことが確認された。端的に言うと、このスクリーニングステップには、ライブラリー作製、発現及び変異酵素の部分的精製、所望の特性についての酵素のスクリーニング、配列決定精製、及び選択変異体のさらなる特性評価、並びに異なる遺伝子バックグラウンドの変異体の作製、精製、及び特性評価が含まれる。これらのステップの各々を、以下でさらに記載する。
このプロセスにより確認される変異体はT606Sであった。その後、この変異体は、関連するCDファミリーポリメラーゼ、G46E L329A E678G CS5(GLE−CS5)及びG46E L329A D640G S671F E678G CS5(GLDSE−CS5)等に分類された。得られた変異体ポリメラーゼを、一連の動力学熱サイクル(KTC)実験においてその機能を解析することにより特性評価を行った。
確認された変異体T606Sは、リボヌクレオチド及びその他の2'−改変ヌクレオチドの組み込みが可能であるが、プライマー鋳型を伸長させる不正常な能力ももたらすE678Gに対して、完全に一致した鋳型にアニーリングする場合、2’−PO−ブロックプライマーを活性化及び伸長させる能力を向上させる。S671F及びD640G、並びにQ601R,及びI669F変異体は、不正常なプライマー伸長能力のこの特性を改善する。
クローンライブラリー作製:CS5 E678G DNAポリメラーゼのポリメラーゼドメインは、BglII制限部位とHind III制限部位との間で変異性(error−prone)PCRを受けさせる。この増幅に使用されるプライマーは、以下のものである。
順方向プライマー:5’−GCAGCGAACTACTCCTGTGA−3’(配列番号31);及び
逆方向プライマー:5’−ACATCCACTTCGAGCGGCACTGA−3’(配列場号32)。
PCRは、変異速度の対応範囲を有するライブラリーを作製するため、Mg+2濃度を1.8〜3.5mMの範囲で使用して行った。緩衝液条件は、50mM バイシン(Bicine)pH8.2、115mM KOAc、8% w/vグリセロール、0.2mM各dNTP,o 0.2X SYBRグリーンIであった。GENEAMP(登録商標) AccuRT ホットスタートPCR酵素を0.1U/μlで使用した。直線化CS5 E678GプラスミドDNA/反応物50μlで、5×10コピーを用いて開始し、60℃のアニーリング温度で15秒、72℃の伸長温度で45秒、及び95℃の変性温度で15秒を用いて、増幅を30サイクル行った。
得られたアンプリコンを、Qiaquickスピンカラム(Qiagen, Inc., Valencia, CA, USA)を通して精製し、BglII及びHindIIIで切断し、その後再び精製した。BglII部位とHindIII部位との間のポリメラーゼドメインにおける大きな削除をもたらすG46E L329A CS5の改変である、ベクタープラスミドを、同じ2つの制限酵素で切断し、且つウシ腸ホスファターゼ(CIP)で処理することにより調製した。切断したベクター及び変異挿入物を異なる比率で混合し、そしてT4リガーゼを用い、15℃で一晩処理した。ライゲーション物を精製し、エレクトロポレーションによりE.coli種LK3に形質転換した。
各形質転換体における固有の形質転換体の数を決定するため、アンピシリン選択培地に分割量を播菌した。各変異導入率で最も固有の形質転換体を有する形質転換体を、凍結保護剤としてグリセロールの存在下、−70〜−80℃で保存した。
その後、各ライブラリーを、大きな形式のアンピシリン選択寒天プレートに広げた。個々のコロニーを、アンピシリン及び10%w/vグリセロール含有の1×Luriaブロスに、自動コロニーピッカー(QPix2, Genetix Ltd)を用いて、384ウェルプレートに移した。これらのプレートを、30℃で一晩インキュベートし、培養物を増殖させ、その後、−70〜−80℃で保存した。2×Luriaブロスに添加されたグリセロールは、培養増殖をさせるには十分低濃度であり、且つ凍結保護をもたらすには十分高濃度であった。この方法で、後の使用のために、複数の変異導入(Mg+2)レベルで数千個のコロニーを調製した。
抽出物ライブラリー調製パート1−発酵:上記のクローンライブラリーから、スクリーニング目的に適する部分的に精製された抽出物の対応ライブラリーを調製した。このプロセスの第一ステップは、各クローンの小スケール発現培養物を作製することであった。これらの培養物を96ウェル形式で増殖させ;したがって、各384ウェルライブラリープレートについて4つの発現培養プレートが存在した。次に、当該クローンライブラリープレートの各ウェルから0.5μlを、150μlの培地A(以下の表2を参照されたい)を含有する、96ウェルプレートの1つのウェルに移した。その後、このシードプレートを、iEMSプレートインキュベーター/シェイカー(ThermoElectron)中、30℃、1150rpmで一晩振とうした。その後、シード培養物を同じ培地に播種するために使用し、この時、大形式の96ウェルプレート(Nunc 番号267334)中、270μlの培地Aに2.5μl播種した。これらのプレートを37℃で一晩インキュベートした。発現プラスミドには、30℃ではなく37℃での発現させるための転写コントロール要素を含有させた。一晩インキュベーションした後、培養物は、典型的に、総細胞タンパク質の1〜10%でクローンタンパク質を発現した。これらの培養物からの細胞を、遠心分離により回収した。これらの細胞のいずれも、以下に記載するさらなる処理の前に、少なくとも2時間凍結した(−70℃)。
Figure 2011504732
抽出物ライブラリー調製パート2−抽出:発酵ステップからの細胞ペレットを、25μl溶解緩衝液(以下の表3)に再懸濁させた。当該緩衝液は、細胞溶解を支援するためのリゾチーム、及び抽出物からRNA及びDNAの両方を除去するためのヌクレアーゼ(「ベンゾナーゼ」)を含有することに留意されたい。プレートを1〜2時間、37℃、1150rpmで振とうさせた。硫酸アンモニウム(2M溶液を2μl)添加し、抽出物を384ウェルプレートに移した。当該プレートを−70℃で一晩凍結させた。その後、これらを、外因的に添加された酵素などの混入タンパク質を沈殿及び不活性化させるため、熱サイクル装置(ABI9700)中で、37℃で15分、その後75℃で15分、インキュベートした。当該プレートを3000×gで15分間遠心分離し、上清を新鮮な384ウェル熱サイクル装置プレートに移した。これらの抽出プレートを、後のスクリーニングでの使用のために−20℃で凍結した。各ウェルは、約0.5〜3μMの変異ポリメラーゼ酵素を含有していた。さらに、抽出プレートを、20mM Tris pH8.0,0.1mM EDTA,100mM KCl、及び0.2% Tween20からなる緩衝液中で10倍希釈した。その後、これらの希釈した抽出物を、以下に記載の通り、向上したPAP変異体のスクリーニングのために使用した。
Figure 2011504732
PAP変異体のためのスクリーニング抽出物ライブラリー:希釈した抽出物を、2つの別の伸長速度決定で使用した。第一のアッセイにおいて、以下の配列を有するオリゴヌクレオチドを持つプライマー化、M13mp18一本鎖DNA(M13 DNA)を鋳型として使用した。
5’−GGGAAGGGCGATCGGTGCGGGCCTCTTCGC−3'(配列番号33)
抽出物(0.5μl)を、384ウェルPCRプレート中の、1nMプライマーM13鋳型を含有する13μlの反応マスターミックスに添加した。プライマー鋳型の伸長を、修正動力学的熱サイクル装置において64℃で20分ごとに、CCDカメラを用いて観測した。反応マスターミックスは、100mM Tris pH8.0、20mM KOAc、3mM Mg(OAc)、2.5% 酵素保存緩衝液、1×SYBRグリーンI(Molecular Probes)、及び0.1mMの各dATP、dCTP、dGTP、及びdTTPであった(「酵素保存緩衝液」は、20mM Tris pH8.0、100mM KCl、0.1mM EDTA、1mM DTT、0.5% Tween20、及び50%v/vグリセロールからなる)。バックグラウンド蛍光から伸長由来の蛍光を区別するため、平行ウェルを実験に含め、ここでは反応マスターミックスからヌクレオチドを除去することによりプライマー鎖伸長を阻止した。各抽出物について、バックグラウンド控除の後、蛍光の増加速度からポリメラーゼ活性を推定した。
2’−PO−ブロックプライマーの活性化速度が向上した変異酵素を見出すため、第二セットの伸長アッセイを、各抽出物において行った。この第二セットのアッセイにおいて、予備アニーリングしたオリゴ二重鎖物質を、プライマーM13鋳型に置換した。プライマー鎖は以下の配列:CGCCTGGTCTGTACACCGTTCE(配列番号34)(ここで、E=2’PO4−dAである)を有し、そして鋳型鎖は、配列:CAACTTTGAAAGAGGACAGATGAACGGTQTACAQACCAQGCGP(配列番号35)(ここで、Q=7−デアザ−dG、及びP=3’PO4である)を有した。鋳型鎖における7−デアザ−dG残基は、バックグラウンド蛍光を低減させる。このオリゴ二重鎖を反応混合物に100nMで添加した。さらに、ピロリン酸を0.5mMまで添加した。物質の変化とピロリン酸の添加以外、条件は、上記のM13伸長反応と同一であった。抽出物がブロックプライマーを活性化できる速度を、バックグラウンドの控除の後、蛍光の変化速度により推定した。その後、この速度を、M13鋳型での活性と比較した。これら2つの速度の比率は、変異体が比較的高い2'−PO−ブロックプライマー活性化活性を有することを決定するために使用された。
数千の抽出物をこの手法でスクリーニングした。典型的な結果を図4に示す。「1AS−G2」と標識された1つの例外が、ブロックオリゴ二重鎖で高い活性を有するものとして際立った(図4を参照されたい)。「1000−G2」と再命名したこのクローンを、さらなる研究のために選択した。クローンライブラリー由来のクローンを回収後、当該クローンの変異領域のDNA配列を、サンガー配列決定により解析し、そして親配列と比較して3つの変異を有することがわかった。これらの変異、及び対応するアミノ酸配列の変化は、A7161G(K570R);A7268T(T606S);及びT7285(サイレント変異、アミノ酸変化なし)であった。並行研究において、高度に精製された酵素を、振とうフラスコ培養で作製し、そして濃度をゲルベース密度測定により決定した。この精製酵素を、親酵素であるG46E L329A E678G CS5、又は「GLE」と、スクリーニングにおいて使用された同じブロックオリゴ二重鎖の活性化能、及びプライマーM13の伸長能について比較した。これらのアッセイは、精度向上のため、これらが同一の酵素濃度及び複数複製物を用いてなされるという点を除いてスクリーニングで使用されたものと同様の条件下、二本鎖DNAのSYBRグリーンI検出を用いて行われた。伸長アッセイにより、当該変異体が親タイプよりも急速にブロックプライマーを活性化できることが示され(図5)、さらに、プライマーDNA鋳型の通常の伸長に影響を及ぼさないことが示された(図6)。
1000−G2における2つのアミノ酸変化が観察された表現型に寄与することを決定するために、当該2つの変異体を別々に、重複PCRを用いる親プラスミドのインビトロ変異導入により、親のバックグラウンドへ移した。遺伝子型、G46E L329A K570R E678G CS5(「GLKE)及びG46E L329A T606S E678G CS5(「GLTE」)を有する変異体を作製した。この変異体を精製して均一にし、定量し、そしてブロックオリゴ二重鎖アッセイに供した。結果(図7)は、当該変異T606Sが、基のスクリーニングにおけるクローン1000−G2で見られた2’−PO−ブロックプライマーの活性化向上に単独で寄与していることを示す。
CS5 DNAポリメラーゼにおける特定の他の変異は、特定の応用においてその酵素の特性を向上させることが発見されている。これら2つの変異体、D640G及びS671Fは、組み合わせる場合、特に当該ポリメラーゼがリボ組み込み変異E678Gの場合、PCR応用において顕著に速い伸長速度及び向上した機能をもたらす。GLTEの機能がこれらの伸長速度変異により向上されるかを見るために、遺伝子型、G46E L329A T606S D640G S671F E678G CS5(「GLTDSE」)を有するクローンを、ベクター固有の制限部位であるSpaI及びNdeIを用いて、「GLTEとGLQDSEとの間での単純な制限断片の取替えにより、作製した。精製/定量後、この酵素を上記のブロックオリゴ二重鎖アッセイにかけた。結果(図8)は、この2'−PO−ブロックプライマーオリゴ二重鎖の活性化において、GLTDSEはその親クローンのいずれよりも速いことを示唆した。
実施例2:PAP−PCRにおけるT606S変異体の使用
この実施例は、PAP−PCRにおけるT606S変異体の使用を示す。ここで「PAP−PCR」と呼ばれるピロリン酸分解活性化重合は、プライマーがピロリン酸により活性化される前に、ブロックプライマーが完全に一致した鋳型分子に結合することを要する、特異性を向上させるPCRプロセスの修正法である。この「特異性確認」は、エラーが起き、ピロリン酸分解が不一致プライマーを発生させる場合、得られる伸長産物は、伸長の続く回でなお不一致であるはずであり、それゆえ不一致アンプリコンは累積しないため、PCRの各サイクルで有効である。
我々は、M13mp18を鋳型として利用するモデルシステムにおいてPAP−PCRを行うため、我々のT606S変異体の1つの能力を試験した。使用したプライマーは以下の配列を有した。
KAB77:CGCCTGGTCTGTACACCGTTCE(配列番号26)、ここでE=2’PO―dAであり、
KAB71:GGAACGAGGGTAGCAACGGCTACE(配列番号27)、ここでE=2’PO−dAである。
2つのプライマーは共に、M13鋳型から342bpのアンプリコンを作ることが期待される。この両プライマーは、3’末端を2’PO基でブロックされ、末端dA残基のピロリン酸分解によりその基が除去されるまで伸長できないことに留意されたい。別の2’PO−ブロックプライマーのピロリン酸分解により活性化速度が変化すること、及びKAB77活性化は比較的遅く、高効率のアンプリコンを得るため、PCRにおいて最大5分の長い伸長時間を要することが、従来の観察で示唆されている。対照的に、GLTDSE CS5 DNAポリメラーゼ変異体を用いると、M13鋳型及び上記列挙したプライマーから急速且つ高効率にアンプリコンがもたらされることを、我々は見出した。
使用した反応条件を、以下の表4に列挙する。
Figure 2011504732
「酵素保存緩衝液」の組成は、実施例Iにおいて既に示した通りである。SYBRグリーンIにより、384ウェル動力学熱サイクル装置において、蛍光による産物累積の検出が可能であった。dUTP及びUNGの使用は、アンプリコン滅菌を可能にし、従来のPCR実験から混入を防ぐ。
実験は、KOAc濃度を20−120mMの範囲、ピロリン酸濃度を0.15−0.3mMの範囲、及びMg(OAc)濃度を2−4mMの範囲で変化させた反応混合物を用いて行った。全ての反応は、二重に行った。サイクル条件は、50℃で2分(UNG滅菌させる);92℃で1分;その後92℃で15秒を46サイクル、そして62℃で35秒アニーリング/伸長、とした。
我々は、上記の表で示した条件を用い、Ct21.4サイクルでの増加した相対蛍光によりアンプリコン形成を検出した。これは、その投入コピー数及び35秒のみの比較的短い伸長時間でも、非常に効率的な増幅が達成できたことを示す。アガロースゲル解析は、期待された342bpアンプリコンは、これらの条件下で作製された検出可能な産物のみであったことを示した。
さらに、我々は、Ctにおけるわずかなサイクル遅延だけで、反応条件がいくらか変えられることを見出した。例えば、1サイクル以下のCt遅延をさせるには、KOAc濃度を、60−100mMで変化させ;且つピロリン酸を0.15−0.3mMの間で変化させる;且つMg(OAc)を2.5−3.5mMの間で変化させてもよい。これは、GLDTSE CS5 DNAポリメラーゼが、適度に広範な反応条件下、これらのブロックプライマーを用いて、急速及び高効率なPAP−PCRを行うことができることを示す。

Claims (15)

  1. R−X1−X2−X3−K−L−X4−X5−X6−Y−X7−X8−X9−X10−X11
    式中、
    1は、E、Q、G、K、及びTからなる群から選択され、
    2は、L、I又はYであり、
    3は、T、M、D、S、G、A、Q、及びLからなる群から選択され、
    4は、K、R又はQであり、
    5は、N、S又はGであり、
    6は、Sであり、
    7は、V、I、L、A、Tからなる群から選択され、
    8は、D又はEであり、
    9は、P、A、G、K、T、及びSからなる群から選択され、
    10は、L又はIであり、
    11は、P又はLである;
    を含んでなるDNAポリメラーゼであって、
    6がTであり他は同一のポリメラーゼと比較して、ピロリン酸分解活性化重合(pyrophosphorolysis activated polymerization)(PAP)活性が向上している、DNAポリメラーゼ。
  2. 6がTであり他は同一のポリメラーゼと比較して、ブロックプライマーKAB77(配列番号27)を伸長させる速度がより速い、請求項1に記載のDNAポリメラーゼ。
  3. CS5 DNAポリメラーゼ(配列番号20)と、少なくとも90%の配列同一性を有するキメラポリメラーゼを含んでなる、請求項1に記載のDNAポリメラーゼ。
  4. 前記キメラポリメラーゼが、G46E、L329A、及びE678G、及びT606Sからなる群から選択される1又は複数のアミノ酸置換を有する、配列番号22を含んでなる、請求項3に記載のDNAポリメラーゼ。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の前記DNAポリメラーゼをコードする、組換え核酸。
  6. 請求項5に記載の組換え核酸を含んでなる、発現ベクター。
  7. 請求項6に記載の発現ベクターを含んでなる、宿主細胞。
  8. 変異DNAポリメラーゼであって、
    (i)その非改変体において、前記ポリメラーゼがピロリン酸分解活性化重合活性(PAP)を有し、且つ以下のコンセンサス配列、
    R−X1−X2−X3−K−L−X4−X5−X6−Y−X7−X8−X9−X10−X11(配列番号24)、
    ここで、X1、X3、X7及びX9は、任意のアミノ酸であり、
    2は、L、I又はYであり、
    4は、K、R又はQであり、
    5は、N、S又はGであり、
    6は、Tであり、
    8は、D又はEであり、
    10は、L又はIであり、
    11は、P又はLである;
    を有するアミノ酸配列を含んでなり、
    (ii)当該変異ポリメラーゼは、その非改変体と比較して、位置X6をSとするアミノ酸置換を有し、及びここで;
    (iii)当該ポリメラーゼは、X6がTであり、PAP活性を有する前記非改変体と比較して、PAP活性が向上している、変異DNAポリメラーゼ。
  9. 前記ポリメラーゼの非改変体が、
    (a)CS5 DNAポリメラーゼ
    (b)サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)
    (c)サーマス・カルドフィルス(Thermus thermophilus)
    (d)サーマス種Z05
    (e)サーマス・アクアティクス(Thermus aquaticus)
    (f)サーマス・フラバス(Thermus flavus)
    (g)サーマス・フィリフォルミス(Thermus filiformis)
    (h)サーマス種sps17
    (i)デイノコッカス・ラディオデュランス(Deinococcus radiodurans)
    (j)バチルス・ステレオサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)
    (k)バチルス・カルドテナクス(Bacillus caldotenax)
    (l)エシェリア・コリ(Escheria coli)
    (m)サーモトガ・マリチマ(Thermotoga maritima)
    (n)サーモシフォ・アフリカヌス(Thermosipho africanus)
    (o)サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)
    (p)ホット・スプリング・ファミリーA
    (q)(a)〜(p)のいずれか1つと少なくとも90%配列同一性を有するDNAポリメラーゼ、
    からなる群から選択される、請求項8に記載の変異DNAポリメラーゼ。
  10. 前記ポリメラーゼの非改変体が、キメラDNAポリメラーゼを含んでなり、ここで、当該キメラポリメラーゼは、CS5 DNAポリメラーゼ(配列番号20)と、少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項8に記載の変異DNAポリメラーゼ。
  11. 前記キメラポリメラーゼが、G46E、L329A、及びE678G、及びT606Sからなる群から選択される1又は複数のアミノ酸置換を有する配列番号22を含んでなる、請求項10に記載のDNAポリメラーゼ。
  12. ポリヌクレオチド鋳型、3'末端で伸長不可能なヌクレオチドを有する少なくとも1つのプライマー、及び請求項1〜4又は8〜11のDNAポリメラーゼを含んでなり、ここで、当該伸長不可能なヌクレオチドは、2'−ターミネーターヌクレオチドである、反応混合物。
  13. 請求項1〜4又は請求項8〜11に記載のDNAポリメラーゼを、プライマー、ポリヌクレオチド鋳型、及び遊離のヌクレオチドと接触させることを含んでなり、
    ここで当該プライマーの3'末端が、伸長不可能なヌクレオチドで遮断され、
    及び、当該プライマーの3'末端の伸長不可能なヌクレオチドのピロリン酸分解に適する条件下で、当該プライマーが伸長し、それにより、ピロリン酸分解活性化重合が達成される、ピロリン酸分解活性化重合を達成するための方法。
  14. 請求項1〜4又は請求項8〜11に記載のDNAポリメラーゼを、プライマー、ヌクレオチド鋳型、及び遊離ヌクレオチドと、当該プライマーの伸長に適する条件下で接触させ、それにより伸長プライマーを作製することを含んでなる、プライマー伸長を行うための方法。
  15. 請求項1〜4又は請求項8〜11に記載のDNAポリメラーゼを提供する少なくとも1つの容器と、以下の、
    (a)ピロリン酸分解活性化重合条件下、ポリヌクレオチド鋳型にハイブリダイズ可能なプライマーを提供する容器;
    (b)3'末端に伸長不可能なヌクレオチドを有し、ピロリン酸分解活性化重合条件下、前記ポリヌクレオチド鋳型にハイブリダイズ可能なプライマーを提供する容器;
    (c)遊離ヌクレオチドを提供する容器;
    (d)ピロリン酸分解活性化重合に適する緩衝剤を提供する容器、
    からなる群から選択される1又は複数の追加の容器とを含んでなる、ピロリン酸活性化重合を行うためのキット。
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