JP2011504488A - 翻訳後修飾蛋白質及び/又はペプチドの選択的富栄養化 - Google Patents

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Abstract

本発明は、複合試料から翻訳後修飾された蛋白質及び/又はペプチドの選択的富栄養化に関し、翻訳後修飾は、グリコシル化であり、特定蛋白質/ペプチド標識化プロトコルを、分析すべき翻訳後修飾された蛋白質及び/又はペプチドの特定の選択物と組み合わせることによるものである。

Description

本発明は、複合試料から翻訳後に修飾された蛋白質及び/又はペプチドの選択的富栄養化に関するものであり、かかる翻訳後修飾は、グリコシル化であり、分析すべき翻訳後修飾された蛋白質及び/又はペプチドの特定の選択と特定の蛋白質/ペプチド標識化プロトコルを組み合わせることによるものである。
複合試料からの特定の蛋白質又は蛋白質のサブセットの識別、分離及び分析は、どのようにして生物学的過程が分子レベルで生じるか、又は様々な細胞タイプの中又は生理学的状態の間でどの程度まで蛋白質が相違するかを解明するのに非常に貴重である。
近代生物学における大きな課題は、有機体により符号化される蛋白質の1セット全部の発現、機能及び調節の理解と、プロテオミクスとして一般に知られている技術分野とを指向するものである。しかしながら、蛋白質を増やすための実現例がないので、この分野の研究は、概して相当に退屈なものである。何故なら、比較的簡素な原核生物の細胞抽出物も、巨大な範囲の濃度を含む多数の蛋白質を含むからである。したがって、このような作業は、現在の単一の解析方法の能力を超えるものである。
したがって、方法の制約により、プロテオーム分析は、蛋白質を識別し定量化する方法だけでなく、(かなりの程度)それらの構造的及び/又は機能的特性に応じてそれらの正確かつ信頼性の高い分離を可能にしてこれらサブセットがさらになる分析に良好に利用しやすいものとした方法にも依拠する。
プロテオームは、外部の刺激又は細胞環境の変化に応じた、蛋白質合成の変化、活性化及び/又は翻訳後修飾による、動的性質のものである。したがって、プロテオームの固有の複雑性は、ゲノム又はトランスクリプトーム、細胞のmRNA補完のものを超える。
このようなプロテオミクスの研究において処理すべき顕著な量のデータのために、蛋白質/ペプチド識別プロセスは、途方もない分解能を必要とする。このような高複雑性の混合物を分解するために一般的に用いられる2つの方法は、2次元ゲル電気泳動(2D-GE;例えば、 O'Farrel, P.H. (1975) J. Biol. Chem. 250, 4007-4021参照)と、(2次元)液体クロマトグラフィ((2D)-LC;例えば、Lipton, M.S. et al. (2002) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99, 11049-11054参照)がある。2D−GE又は2D−LCによりアイソレートされたペプチド及び蛋白質は、大抵、質量分析法により又はアミノ酸組成又はアミノ酸配列を判定することにより識別される。
しかしながら、多くの用途に有用であるものの、これらの識別技術は、高い複雑性の試料が調査されるものとなっているプロテオミクスの研究に関して大きな欠点を有する。例えば、疎水性膜の蛋白質、高塩基性又は酸性蛋白質、巨大又は低分子蛋白質は、しばしば、2D−GEでは解像度が悪い。さらに、これらの方法の検出(感応性)限界や、標識化技術における短所は、例えば、異なる疾病グループ間、1つの疾病の異なる進行段階間、及びヘルシーコントロールに対する疾病段階間で相対蛋白質レベルを比較するため、又は高スループットスクリーニング分析を行うため、複数のサンプルの確実な分析を並行して行うことができない。
したがって、上記制限を克服し、複数の複雑なサンプルの処理を並行して可能にする手法を開発することは非常に望ましい。
広義には蛋白質分析及び狭義にはプロテオミクスの他の重要な一面は、翻訳後の蛋白質修飾を研究する実現性に関し、蛋白質の活動及び結合に影響を及ぼし、当該細胞内においてその役割を変えることができる(例えば、Pandey, A. and Mann, M. (2000) Nature 405, 837-846参照)。例えば、蛋白質の(可逆性)燐酸化は、G蛋白質結合レセプタシグナリング(G-protein-coupled receptor signaling)又はリン−チロシン・キナーゼシグナリング(photo-tyrosine kinase signaling)のような多くの信号変換カスケードの調整にとって非常に重要であり、蛋白質の糖化(グリコシル化)は、多細胞生物における細胞/細胞及び細胞/基質認識における支配的な役割を担うのに対し、ユビキチン化は、劣化について蛋白質を標識化する。
プロテオミクスの独特の特徴の1つは、翻訳後修飾を、よりグローバルなレベルで調査することができ、これにより特定の修飾を有するサブセット全体の蛋白質の分析を可能にすることである。単一の遺伝子の発現された生成物は、多量の微小不均一性を含む可能性がある蛋白質個体群を表し、各異なる状態(すなわち、翻訳後修飾されたアミノ酸残基の数が異なる類似蛋白質)は、多大な多様性をその蛋白質の発現プロフィールに加えることとなる。
現在、特異的修飾の有無により類似の蛋白質又はペプチドを基本的に見分けることのできる利用可能な幾つかの技術があり、例えば、質量分析法がある。しかしながら、これらの変化は、しばしば、検出に関する限られた感応性のためにグローバルなプロテオミクスの研究において観察されない。したがって、特異的翻訳後修飾を研究するため、大抵は或る種の形態の親和性精製によりそうした修飾のための試料を富栄養化すること及び/又は当該試料から修飾蛋白質の当該富栄養化されたサブセットを分離することは役に立つものと目される。しかしながら、一般的には、利用可能な方法は、蛋白質に適切な親和性タグをラベル付けする条件又は特定の抗体又はさらなる分析を妨げるかもしれない他の反応物を用いる必要性によって阻害される。したがって、親和性精製に基づいたこのような方法は、複数の試料を並行して処理するのに特に適さない。
加えて、取り込み又は親和性精製プロトコルに基づいて特定の修飾(例えば、チロシン・リン酸化蛋白質対セリン/スレオニン・リン酸化蛋白質又はN結合糖蛋白質対O結合糖蛋白質対グリコシルホスファチジルイノシトール固定タンパク質)を帯びた蛋白質及び/又はペプチドの異なるサブセットを区別するのは一般的に面倒なことである。
様々な分野の研究者が肝要な細胞機能がユビキタス翻訳後修飾のこのタイプにより調整されることが分かったので、蛋白質グリコシル化の研究は、近年指数関数的に成長してきている。
重要なのは、グリカン組成は、例えば種、組織、成長段階など、細胞の種類及び状態の違いを大きく反映することである。加えて、グリカンは、核酸及び蛋白質よりも、構造的多様性を奏する可能性が遥かに高い(Laine, R.A.(1994) Glycobiology 4, 759-767)。糖類成分の数は、例えば、グルコース、N−アセチルグルコサミン、マンノース、ガラクトース、N−アセチルガラクトサミン、L−フコース、L−キシロース、L−アラビノース及びN−アセチルノイラミン酸を含み比較的に少ないが、結合及び枝分かれの大きなばらつきにより、グリコシル化は、恐らくは最も複雑な翻訳後修飾となる。
さらに、細胞グリコシル化プロファイルは、腫瘍形成の間に大きく変化することが分かった(例えば、Caprioli, R. M. (2005) Cancer Res. 65, 10642-10645を参照)。よって、当該調査は、腫瘍診断法のための生体指標(biomarkers)として仕えることのできる腫瘍分泌の糖蛋白質に対して継続している。
したがって、複合試料から翻訳後修飾蛋白質及び/又はペプチドの選択的富栄養化を可能にする方法が継続的に必要である。特に、高い感応性を伴うだけでなく特定の反応物を必要とすることもなく、グリコシル化された蛋白質及び/又はペプチドの分離及び/又は区別のための方法を提供することが望ましい。さらに、多重化された分析を行うことを見越す方法を提供することも望ましいと思われる。
本発明の目的は、複合試料からの、翻訳後修飾されたペプチド及び/又は蛋白質、特にグリコシル化された蛋白質及び/又はペプチドの選択的富栄養化の新規なアプローチを提供することである。より詳しくは、本発明の目的は、このような分析の複数を並行して行う方法を提供することである。
本発明のさらなる目的は、翻訳後修飾された蛋白質及び/又はペプチドをそれらの修飾されていない対応物から分離すること及び/又はこれら修飾された蛋白質及び/又はペプチドの異なるサブセットの間の区別をすることを可能にする方法を提供することである。
これら目的及び以下に続く説明から明らかとなるその他の事項は、独立請求項の主題により得られる。本発明の好適実施例の幾つかは、従属請求項の主題により規定される。
一実施例において、本発明は、試料から翻訳後修飾された蛋白質及び/又はペプチドの選択的富栄養化及び/又は分離をなす方法であって、
(a)前記試料に含まれる蛋白質及び/又はペプチドの単一又は二重の化学的標識化を行うこと、
(b)分析すべき特定の翻訳後修飾を有する翻訳後修飾された蛋白質及び/又はペプチドのサブセットを取り込むこと、及び
(c)当該取り込まれたサブセットの翻訳後修飾された蛋白質及び/又はペプチドを分離すること、
を有する方法に関する。
他の実施例において、本方法は、前記ステップ(a)の前又はこれと同時に前記蛋白質をペプチドに劈開することをさらに有する。
本発明の方法の他の好適実施例において、前記二重の化学的標識化は、同位体及び同重体標識化を有する。特に好ましいのは、前記同位体標識化は、前記同重体標識化の前に行われるのが良い。
幾つかの実施例では、前記同位体標識化は、前記蛋白質をペプチドに劈開する前に行われる。
グリコシル化された蛋白質及び/又はペプチドの分析の場合、前記ステップ(b)は、通常、レクチン親和性取り込み及び糖蛋白質化学的取り込みのうち少なくとも1つを有する。
本発明の方法の他の好適実施例においては、前記ステップ(c)は、当該分離された翻訳後修飾蛋白質及び/又はペプチドの少なくとも第1のサブセットから当該翻訳後修飾を除去することを有する。通常は、前記翻訳後修飾は、化学的又は酵素的に除去される。
他の好適実施例において、当該分離された翻訳後修飾蛋白質及び/又はペプチドの前記第1のサブセットは、Nグリコシル化蛋白質及び/又はペプチドを有する。特に好ましいのは、前記グリコシル化は、ペプチド:NグリコシダーゼFにより酵素的に、当該Nグリコシル化蛋白質及び/又はペプチドから除去される。
本発明の方法の他の実施例において、前記ステップ(c)を行った後に、当該残りのサブセットの蛋白質分子は、前記ステップ(a)ないし(c)の他のサイクルにかけられ、前記ステップ(c)は、少なくとも第2のサブセットの当該蛋白質分子から当該翻訳後修飾を除去することを有する。
特定の実施例において、当該分離された翻訳後修飾蛋白質及び/又はペプチドの前記第2のサブセットは、Cグルコシル化された蛋白質及び/又はペプチドを有する。
他の実施例において、本方法は、質量分析法によって当該分離された蛋白質及び/又はペプチドを分析することをさらに有する。幾つかの実施例において、当該方法は、高スループットフォーマットにて行われる。
本発明の方法は、定性的及び/又は定量的なプロテオーム分析を行うために用いることができる。
本発明の他の実施例は、以下の詳細な説明から明らかとなる。
グリコシル化ペプチド(グリコ・ペプチド)の選択的富栄養化のための本発明の好適実施例の概略図。最初に、与えられた試料に含まれる蛋白質は、アイソトープ符号化親和性タグ技術(ICAT;Isotope-coded Affinity Tag Technology)を用いて同位体で標識化され酵素消化される。そして、結果として得られるペプチドの個々のプールは、相対的及び絶対的計量(iTRAQ;Isobaric Tag for Relative and Absolute Quantitation)技術のための同重体タグを用いて同重体的に標識化される。標識化されたグリコシル化ペプチドは、陽イオン交換クロマトグラフィにより合成され捕捉される。最後に、グリコシル化されたICAT/iTRAQペプチド及びグリコシル化されたiTRAQペプチドは、それらの非グリコシル化の対応物から分離される。 グリコシル化されたペプチドの選択的富栄養化のための本発明の他の好適実施例の概略図。試料に含まれる蛋白質は、16Oか又は18Oの標識化された水(同位体ラベル付け)の存在下で酵素消化される。そして、結果として得られるペプチドの個々のプールは、iTRAQを用いて同重体的に標識化される。標識化されたグリコシル化ペプチドは、陽イオン交換クロマトグラフィにより合成され捕捉される。最後に、グリコシル化された16O/18O標識化/iTRAQペプチドは、それらの非グリコシル化の対応物から分離される。 グリコシル化されたペプチドの選択的富栄養化のための本発明の他の好適実施例の概略図。蛋白質は、図1において説明されるのと同じ標識化プロトコルと、図1及び図2において説明されるようなICATペプチド(すなわちシステイン含有ペプチド)の親和性選択及び陽イオン交換クロマトグラフィを含む2重取込/選択処理にかけられる。そして、グリコシル化されたICAT/iTRAQペプチドは、それらの非グリコシル化された相手から分離される。
本発明は、特定の蛋白質/ペプチドプロトコルを、分析すべき翻訳後修飾された蛋白質及び/又はペプチドの特定の選択と組み合わせることにより、複合試料からの迅速かつ高度な選択的富栄養化及び/又は当該修飾蛋白質の分離を可能とするという意外な結果に基づいている。さらに、反応条件を適合させることにより、同じ方法は、特定の翻訳後修飾を呈する蛋白質の異なるサブセットを区別するのにも適している。
以下に例示して説明する本発明は、ここで具体的に開示しない1つ又は複数の要素、1つ又は複数の限定事項を欠いても適切に実施されうるものである。
本発明を特定の実施例及び特定の図面について説明するが、本発明は、これらに限定されず、請求項によってのみ限定されるものである。
提示の図面は、概略的なものに過ぎず、限定するものではない。図面において、要素の幾つかのサイズは、誇張されることがあり、図示の目的上一律の尺度で描かれていない。
「有する」なる文言は、この詳細な説明及び請求項において用いられる場合、それは他の要素又はステップを排除しない。本発明の目的のため、「からなる」なる文言は、「有する」なる文言に係る好適な実施例とみなされる。以下において基が少なくとも或る特定の数の実施例を有するよう規定される場合、これも、好ましくはこれら実施例によってのみ構成される基を開示するものと解されるべきである。
例えば「1つの」、「1の」、「その」といった単数名詞を引用するときに用いられる表現は、何か他のものが特別に述べられていない限り、その名詞の複数を含むものである。
本発明の内容における「約」なる文言は、当業者が当該特徴の技術的効果を依然として確保するものと理解することになる精度の間隔を意味する。この文言は、通常、±10%、好ましくは±5%の表示数値からの偏差を示す。
さらに、詳細な説明及び請求項における第1、第2、第3などの文言は、同様の要素を区別するために用いられ、必ずしも発生順又は時系列的順番を示すためのものではない。このように用いられる文言は、適切な状況の下で交換可能でありここで説明される本発明の実施例は、ここで説明したもの又は図示したもの以外のシーケンスにおいて動作可能である。
用語の他の定義は、当該各用語が用いられるところの状況において以下に示されることになる。
一実施例において、本発明は、試料から翻訳後修飾された蛋白質及び/又はペプチドの選択的富栄養化及び/又は分離をなす方法であって、
(a)前記試料に含まれる蛋白質及び/又はペプチドの単一又は二重の化学的標識化を行うこと、
(b)分析すべき特定の翻訳後修飾を有する翻訳後修飾された蛋白質及び/又はペプチドのサブセットを取り込むこと、及び
(c)当該取り込まれたサブセットの翻訳後修飾された蛋白質及び/又はペプチドを分離すること、
を有する方法に関する。
ここで用いられるような用語「蛋白質」は、ペプチド結合を介して接続された複数の天然又は修飾アミノ酸を有する自然発生的な又は合成の(例えば、化学合成又は組み換えDNA技術により生成される)巨大分子を指す。このような分子の長さは、2千から数千のアミノ酸までの幅を持ちうる(したがって、この用語は、広くオリゴペプチドと称されるものも含む)。
通常、この用語「蛋白質」は、20のアミノ酸を超える長さを有する分子に関する。したがって、本発明において分析すべき蛋白質は、約30から約2500のアミノ酸、約50から約1000のアミノ酸、又は約100から約1000のアミノ酸の長さを有しうる。
ここで用いられるような用語「ペプチド」は、1つ以上のペプチド結合の劈開の後に得られる上記「蛋白質」の断片を指している。本発明において用いられるようなペプチドは、そのサイズ又は特性に関していずれの態様においても限定されない。通常、本発明において分析すべきペプチドは、約2から約20のアミノ酸、約3から約18のアミノ酸又は約5から約15のアミノ酸の長さを有しうる。
ここで用いられるような用語「翻訳後修飾」(post-translational modification)は、蛋白質及び/又はペプチドに含まれている翻訳後修飾の数及び/又は種類に関して限定されないものと解すべきである。したがって、所与の蛋白質は、同じタイプ又は異なるタイプ(以下参照)のものとすることができる2以上のグリコシル化されたアミノ酸をその順序において有することができる。
ここで用いられるような、用語「グリコシル化蛋白質」(ここでは、「糖蛋白質」とも称される)と「グリコシル化ペプチド」(ここでは「糖ペプチド」とも称される)は、それらの一次配列において1つ又は複数のグリコシル化アミノ酸残基を有する蛋白質及び/又はペプチドを示し、当該グリコシル化は、Nグリコシル化、Oグリコシル化又はグリコシルホスファチジルイノシトール・アンカリング(glycosylphosphatidylinisotol-anchoring)とすることができる。ここで用いられるような用語「Nグリコシル化」(ここでは「N結合型糖鎖合成」とも称される)は、アスパラギンアミノ酸残基のアミド窒素に対する何らかのサッカリド成分(すなわち、グルコース又はガラクトースのような単糖類、マルトースおよびサッカロースのような二糖類及びオリゴ糖類又は多糖類を含む炭水化物又は糖成分)の酵素誘導的かつ部位特異的付加を示すとともに、ここで用いられるような用語「Oグリコシル化」(ここでは「O結合型糖鎖合成」とも称される)は、セリンのハイドロキシ酸素又はトレオニンアミノ酸残基に対する糖成分の酵素誘導的かつ部位特異的付加を示す。最後に、ここで用いられるような用語「グリコシルホスファチジルイノシトール・アンカリング」(ここでは「GPIアンカリング」とも称される)は、蛋白質及び/又はペプチドのC末端アミノ酸に対するリンカ(linker)(ホスホリルエタノールアミン残基に結合したグルコサミン及びマンノースなど)を含む炭水化物を経て結合した疎水性ホスファチジルイノシトール基の付加を示し、当該ホスファチジルイノシトール基内の2つの脂肪酸は、蛋白質を細胞膜に固定させる。本発明の範囲内において、アミノ酸グリコシル化は、体内での翻訳後蛋白質修飾により、又は体内での特定グリコシル転移酵素の使用により、発生する可能性がある。
糖蛋白質及び/又はペプチドは、かかる分子を有する試料から、好ましくは生体試料から、本発明の方法によって富栄養化及び/又は分離される。ここで用いられる「試料」なる文言は、本発明の方法の実行前の何らかの処理ステップを必然的に包含又は除外することを意図するものではない。これら試料は、未処理の(天然のままの)試料、抽出蛋白質留分、精製蛋白質留分などとすることができる。例えば、使用される試料は、豊富な蛋白質の1つ以上のサブセットの免疫低下により予め処理されるようにしてもよい。適切な試料は、原核生物(例えば、細菌性、ウィルス性試料)起源又は真原核生物起源(例えば、菌類、酵母、植物、無脊椎動物、哺乳類及び特には人間の試料)を含む。
ここで用いられるような「複雑な試料」なる文言は、本発明の方法を用いて分析される試料は、通常は、異なる濃度で存在する多数の異なる蛋白質及び/又はペプチド(又はこのような蛋白質及び/又はペプチドの異なる変異体)を含むことを意味している。例えば、本発明における複合試料は、少なくとも約500、少なくとも約1000、少なくとも約5000又は少なくとも約10000の蛋白質及び/又はペプチドを含むものとしてもよい。本発明において用いられる代表的複合試料は、とりわけ、原核生物又は真原核生物起源の細胞抽出物又は溶解物や、全血、血清、血漿試料などの人又は人以外の体液を含む。
ここで用いられるような「化学的標識化」なる文言は、本発明において用いられる蛋白質及び/又はペプチドへの1つ又は複数の検出可能マーカ(又は「ラベル」)の付着又は組み込みを意味している。ここで用いられるような「検出可能マーカ」なる文言は、化学的、物理的又は酵素的な反応において検出可能な化合物又は信号を直接又は間接的に生成する1つ又は複数の適切な化学物質又は酵素を有する化合物を指している。ここで用いられているように、この文言は、標識自体(すなわち、蛋白質及び/又はペプチドに結合する化合物又は成分)及び標識試薬(すなわち、ペプチド又は蛋白質に結合する前の化合物又は成分)の双方を含むものと解すべきである。本発明において用いられる標識は、共有結合又は非共有結合により蛋白質及び/又はペプチドのアミノ酸残基に付けられるようにしてもよい。通常は、当該結合は、共有結合である。これら標識は、とりわけ、同位体標識、同重体標識、酵素標識、着色された標識、蛍光標識、色原体標識、ルミネセンス標識、放射性標識、ハプテン、ビオチン、金属錯体、金属及びコロイド金から選ぶことができ、ここでは等浸透圧標識及び同重体標識を特に好適なものとしている。標識のこれらタイプの全ては、当該技術において定着したものである。
ここで用いられるような「単一標識化」なる文言は、唯一のタイプの標識、例えば同重体標識の1つ又は複数の検出可能マーカで蛋白質及び/又はペプチドを標識化することを意味している。ここで用いられるような「二重標識化」なる文言は、2つの異なるタイプの標識、例えば同位体標識及び同重体標識の1つ以上の検出可能マーカで蛋白質及び/又はペプチドを標識化することを意味している。
本発明の方法の好適な実施例において、蛋白質及び/又はペプチドは二重標識化される。特に好ましいのは、蛋白質及び/又はペプチドの二重標識化は、同位体標識化及び同重体標識化を有することであり、すなわち、それぞれ、分析すべき蛋白質及び/又はペプチドに対する同位体標識及び同重体標識の1つ又は複数の各々の付着又は組み込みである。本発明の範囲内において、2つの標識化ステップは、順番に又は同時に行うことができる。但し、本発明の方法の代表的実施例においては、同位体標識化は、同重体標識化に先行する。安定した標識は、例えば、成長細胞の代謝標識化(例えば、市販のSILAC(stable isotope labeling with amino acids in cell culture)技術を用いるもの)、無傷蛋白質の標識化(例えば、ICAT標識化)、標識(例えば、16O又は18O標識化された水)の存在におけるタンパク質消化及び消化ペプチドの標識化(例えばiTRAQ標識化)によって、試料調製の様々な段階において蛋白質及び/又はペプチドに導入されることが可能である。
ここで用いられるような「同位体標識化」なる文言は、同じ化学式を有するものの、1つ又は複数の原子に存在する同位体の数及び/又はタイプが互いに異なる2つ以上の標識のセットを用いた標識化イベントであって、例えば質量分析法により検出可能な標識化された蛋白質及び/又はペプチドの質量の差をもたらすこととなるものを指している。換言すれば、異なる同位体標識により標識化されたまた別の同一蛋白質及び/又はペプチドは、それ自体、質量の差に基づいて見分けられることが可能である。原理的に同重体標識(以下参照)は特定のタイプの同位体標識を構成するが、本発明の内容においては、同位体標識なる用語は、同重体ではない標識を指すために用いられることとなるが、それ自体は、それらの分子量に基づいて区別が可能である。
本発明による同位体標識の例は、とりわけ、16O又は18O標識化された水又は同位体符号化親和性タグ(Isotope-Coded Affinity Tag;ICAT)標識を含む(Gygi, S.P. et al. (1999) Nat. Biotechnol. 17, 994-999参照)。このICAT反応物は、3つの機能要素を用いる。すなわち、還元されたシステインアミノ酸残基の選択的標識化のためのチオール反応基、標識化されたペプチドの選択的アイソレーションを見越すためのビオチン親和性タグ、及び2つの同位体形態、「軽」(非同位体)形態及び「重」(例えばH又は13Cを用いる)形態で合成される同位体タグを用いる。本発明の範囲内で、同位体標識化は、(例えば、16O又は18O標識化された水の存在において分析すべき試料に含まれる蛋白質を劈開することにより)ペプチドレベルにおいて、又は例えば市販のICAT反応物(Applied Biosystems, Foster City, CA, USA)を使うことにより直接蛋白質レベルで行うことができる。
ここで用いられるような用語「同重体標識化」は、同じ構造及び同じ質量を有する1組の2つ以上の標識であって、分裂により(同重体標識内の同位体の特異的分布に起因して)同じ構造であるが質量の異なる特定のフラグメントを解放する標識を用いた標識化イベントを指している。同重体標識は、通常、質量分光分析において衝突誘起解離(CID。すなわち、フラグメント放出)により強いシグニチャイオン(signature ion)を発生するレポータ基と、或る特定の補償数の同位体を有するバランス基であって、当該レポータ基及び当該バランス基の合成質量が異なる同重体標識に対して一定であることを保証するようにしたバランス基と、を有する。このバランス基は、CIDにより当該標識から放出されてもよいし放出されなくともよい。
本発明による同重体標識の例は、とりわけ、相対的及び絶対的定量化同重体タグ(iTRAQ;Isobaric Tag for Relative and Absolute Quantitation)を含む(Ross, P.L. et al. (2004) Mol. Cell. Proteomics 3, 1154-1169を参照)。このアプローチは、4つの異なるiTRAQ反応物を使っており、各々が、レポータ基と、バランス基と、第1級アミン基(例えば、リジンアミノ酸残基のεアミノ基)に反応するペプチド反応基とを含む。レポータ基は、各反応物における12C/13C及び16O/18Oのディファレンシャル同位体組み合わせに応じて、114,115,116又は117Daの質量を有する。バランス基は、レポータ基及びバランス基の合成質量が4つの反応物に対して一定(145Da)のままであることを保証するよう31から28Daに質量が変わる。したがって、これら反応物の各々による同じペプチドの標識化は、例えば液体クロマトグラフィにおいて、同重体であり故に共溶出しこれに伴いクロマトグラフ的に互いに区別がつかないものとなるペプチドをもたらす。但し、質量分析の間、少なくとも当該それぞれのレポータ基は、CIDにより放出され、114ないし117Daの明確な質量を示す。これらフラグメントの強度は、個々の蛋白質及び/又はペプチドの定量化のために単一で用いられることが可能である。
本発明は特に、複数の分析を並行して、例えば2,4,8又は16の並行した試料において行うためのものである多重蛋白質分析のための同位体標識及び同重体標識の組み合わせ使用に関するものである。特に、このような組み合わせ標識法は、異なる試料間の相対蛋白質レベルの比較も可能にする。同位体及び同重体標識化の組み合わせは、こうしたペプチドしか、例えば、差次的発現レベルが観察されこれにより、より高速かつより簡単な試料分析をもたらすことになるMALDI−MS/MS分析又はiTRAQ定量化により、具体的に分析される必要性がないという利点を有しうる。
好適実施例において、本方法は、さらに、蛋白質及び/又はペプチドの標識化の前又はそれと同時に、当該蛋白質を劈開させてペプチドとすることを有する。幾つかの実施例において、蛋白質劈開は、蛋白質の同位体標識化の後(但し同重体標識化の前)に行われる。このような蛋白質劈開は、化学的に(例えば、シアン臭化物、2−(2´−ニトロフェニルスルホニル)−3−メチル−3−ブロモ−インドールナイン(BNPS)、ギ酸、ヒドロキシルアミン、ヨード安息香酸、及び2−ニトロ−5−チオシアンベンゾイン酸などの化学物質を使った酸又は塩基処理により)、又は当該技術において周知のプロテアーゼ(とりわけ、トリプシン、ペプシン、トロンビン、パパイン、及びプロテイナーゼKを含む)により酵素的に、行うことができる。
ここで用いられるような用語「取り込み」は、適切な結合部分(例えば適切な基質又は樹脂。以下を参照されたい)に対して糖蛋白質及び/又は糖ペプチドの当該サブセットを共有結合又は非共有結合にて付着する(そしてこれにより不動化する)ことによって分析すべき糖蛋白質及び/又は糖ペプチドの特定のサブセットの識別及び後続の富栄養化及び/又は選択のための処理を意味するものであり、取り込まれた翻訳後修飾蛋白質及び/又はペプチドのそれらの非標識化の対応物からのさらなる分離を見越している。オプションとして、当該結合部分は、表面、例えば常磁性ポリスチレン粒子又はラテックスビーズの表面のような固体支持体に付着されることができ、当該不動化は、取り込まれたサブセットの蛋白質及び/又はペプチドの後続の分離を容易にする。
通常、取込ステップは、少なくとも1つの親和性精製又は親和性クロマトグラフィステップを有し、すなわちこれは、選択すべき蛋白質及び/又はペプチドのサブセットの特定の結合活動を有する結合部分に対する翻訳後修飾された蛋白質及び/又はペプチドのサブセットの付着(すなわち取り込み)である。但し、この取込ステップは、イオン交換クロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ及び/又は逆相クロマトグラフィのうちの1つ又は複数に依拠するものとすることもできる。本発明の範囲内においては、同じタイプか又は異なるタイプの2つ以上の取込ステップ、例えば、2つの親和性クロマトグラフィステップ(同じタイプの基質又は異なるタイプのものを用いたもの)又は親和性精製ステップ及びイオン交換クロマトグラフィを組み合わせることもできる。
好適実施例において、この取込ステップは、レクチン親和性取り込み及び糖蛋白質化学的取り込みのうちの少なくとも一方を有する。ここで用いられるような用語「レクチン親和性取り込み」は、結合部分としてレクチンを使う取込プロトコルを意味する。ここで用いられるような用語「レクチン」は、植物、バクテリア、真菌、及び特定のオリゴ糖成分を結合するものと知られている動物にみられる蛋白質の類を指している(例えば、in Lis, H., and Sharon, N. (1998) Chem. Rev. 98, 637-674を参照されたい)。抗原抗体結合親和性とは異なり、多くのレクチンに対する単糖及びオリゴ糖の結合のための親和性定数は、低ミクロモル範囲にあるが、ミリモルの範囲内とすることもできる。親和性取り込みの目的のため、これは、オリゴ糖と、これら相互作用をクロマトグラフィ分離のために有益なものとするレクチン自体との双方の多価性質(multivalent nature)である。適切なレクチンの例には、とりわけ、αサルシン(α-sarcin)、リジン(rizin)、コンカバリンA(concavalin A)、カルネキシン(calnexin)がある。レクチン親和性取り込みのための幾つかのプロトコルは、当該技術において知られている(例えば、Kaji, H. et al. (2003) Nat. Biotechnol. 21, 667-672; Hirabayashi, J. (2004) Glycoconj. J. 21, 35-40; Drake, R.R. et al. (2006) Mol. Cell. Proteomics 5, 1957-1967を参照されたい)。
ここで用いられるような用語「糖蛋白質化学的取り込み」は、レクチンの使用を含まずに糖蛋白質に対する化学的取込処理を指している。これら処理の多くは、イオン交換クロマトグラフィステップを含むものである。幾つかのプロトコルは、当該技術において定着している(例えば、Zhang, H. et al. (2003) Nat. Biotechnol. 21, 660-666; Sun, B. et al. (2007) Mol. Cell. Proteomics 6, 141-149)。
通常、これら化学的取込処理においては、分析すべき蛋白質は、例えばトリプシン又は他のプロテアーゼを用いることによって、単一又は二重の化学的標識化がなされ複数のペプチドに劈開される。消化されたペプチドは、結合緩衝剤(100mM酢酸ナトリウム、150mMのNaCl、pH5.5)において2mg/100μl緩衝剤の最終濃度で溶解された。溶解しない固体は、遠心分離によって除去される。浮遊物は、後続の反応のために用いられる。炭水化物のシス−ジオール基は、10mMの過ヨウ素酸ナトリウム(最終濃度)を付加し回転とともに30分間室温で暗状態で当該試料を保温することにより、先ずは酸化させられてアルデヒドとされる。次に、20mMの亜硫酸ナトリウム(最終濃度)をクエンチングのために加えられ、当該試料は、過剰な酸化剤を不活性化するように室温で10分間保温させられる。
そして、結合反応は、最終濃度の20mg/mlでクエンチング処理された試料の中へ、ヒドラジド樹脂(市販のビーズの形態のもの)を導入することによって開始させられる。炭水化物のアルデヒド基は、共有結合ヒドラゾン結合を形成することによりヒドラジン樹脂に結合される。1:5の固体対液体比を保証するため、結合緩衝剤の適切な量が当該試料に付加される。結合反応は、前転により37℃で一夜の間に行われる。
その後、当該樹脂は、2度、それぞれミリQ精製水、1.5MのNaCl、メタノール、及びアセトニトリルにより徹底的かつ順次に洗浄される。洗浄の後は、最終濃度の100mMのNHHCOを調整するための緩衝剤交換ステップ(すなわち、陽イオン交換クロマトグラフィステップ)が続く。
最後に、取り込まれた翻訳後修飾蛋白質及び/又はペプチド(すなわち、結合部分、オプションとしてはこれと個体支持体とに付着するもの)は、例えば、磁性ビーズが使われる場合において、遠心分離又は磁気分離により当該試料から分離される。
本発明の好適実施例において、この分離ステップは、当該分離され翻訳後修飾された蛋白質及び/又はペプチドの少なくとも第1のサブセットから当該翻訳後修飾を除去することを有し、これがさらなる分離を容易にし、また、当該分離された翻訳後修飾蛋白質及び/又はペプチドの異なるサブセット間の区別をも可能にし、その際に、除去すべき当該翻訳後修飾がグリコシル化であるとしている。
ここで用いられるような文言「当該分離された翻訳後修飾蛋白質及び/又はペプチドの少なくとも第1のサブセット」は、それが、存在し又はその特定の一部である当該分離された翻訳後修飾蛋白質及び/又はペプチドの全部に関係しうるような態様で理解されるべきである。
ここで用いられるような用語「除去」は、例えば、化学的劈開又は酵素反応(以下の説明も参照されたい)により、分析すべき翻訳後修飾の完全な排除を意味する。したがって、当該分離された翻訳後修飾蛋白質及び/又はペプチドの少なくとも1サブセットから当該翻訳後修飾を除去することは、結合部分(及びオプションとしては当該固体支持体)からそれらの放出をももたらすこととなる。
好ましくは、翻訳後修飾は、化学的に(例えば、β排除により)又は特定のグリコシダーゼにより酵素的に除去される。
本発明の方法の好適実施例において、当該少なくとも第1のサブセットの当該分離された糖蛋白質及び/又はペプチドは、Nグリコシル化された蛋白質及び/又はペプチドを有する。
当該蛋白質及び/又はペプチドからのN結合グリコシル修飾の除去は、好ましくは、ペプチド:NグリコシダーゼF(PNGase F)を用い、天然の蛋白質の2〜6mg当たり500U(1μl)PNGase Fの濃度で一夜において37℃で当該グリコシル成分からN結合ペプチドの酵素劈開によって達成するのが良い。PNGase Fは、最も内側のGlcNAcと高マンノースでハイブリッドかつ複合のオリゴ糖とをN結合グリコール蛋白質から劈開するアミダーゼである。放出されたデ・グリコシル化ペプチドを含む浮遊物は、遠心分離法により収集可能である。したがって、この処理は、グリコ蛋白質及び/又はペプチドの他のタイプ(すなわち、それぞれOグリコシル化及びGPI固定型蛋白質及び/又はペプチド)からのNグリコシル化蛋白質及び/又はペプチドの選択的区別を見越すものである。
PNGase Fデ・グリコシル化は、グリコペプチドから糖成分を除去するものの、糖鎖付加部位は、依然として、質量分析により検出可能である。何故なら、PNGase Fデ・グリコシル化は、いずれのアスパラギンに対してもアスパラギン酸をもたらすからである。(+1Daの質量差に対応する)
他の代表的実施例において、本発明の方法、特に分離ステップは、さらに、ステップ(c)を行った後に残りの1又は複数のサブセットの蛋白質分子をステップ(a)ないし(c)の他のサイクルにかけることをさらに有し、ステップ(c)は、蛋白質分子の少なくとも第2のサブセットからの翻訳後修飾を除去することを有する。本発明の方法の他の好適実施例において、分離された糖蛋白質及び/又はペプチドの当該少なくとも第2のサブセットは、Oグリコシル化蛋白質及び/又はペプチドを有する。
結合グリコシル修飾の当該蛋白質及び/又はペプチドからの除去は、特定のグリコシダーゼを使った酵素劈開により、又はβ脱離(すなわち、当該技術において定着している一種の脱離反応であり、原子又は原子団は、π結合を形成しつつ当該基質の2つの隣接原子から除去されるもの)によるなど化学的に達成可能である。
他の実施例において、本方法は、さらに、質量分析法、イオンの質量対電荷比を測定するために用いられる分析技術により、当該分離された翻訳後修飾蛋白質及び/又はペプチドを分析することを有する。適用される特定の質量分析は、種々の試料において定められる蛋白質及び/又はペプチド発現のレベルに応じたものとすることができる。幾つかの実施例において、本発明の方法は、高スループットフォーマットにおいて行われる。
他の実施例において、本発明は、ここで説明されているような方法であって、定性的及び定量的プロテオーム解析を行うための方法の使用方法に関する。
上記本発明は、その好適実施例の幾つかについて説明したが、これが本発明の範囲を限定することは決してない。当業者であれば、依然として本発明の範囲内にある前述の実施例に対して他の実施例及び改変例に明確に気づくものである。
[具体例]
分析すべき試料に含まれる蛋白質の同位体及び同重体標識化は、当該製造元の支持に従い、それぞれ市販の反応物ICAT及びiTRAQを用いて行われた。ICAT標識化を行った後、iTRAQ反応物を加える前に蛋白質が酵素的にペプチドへと劈開させられた。或いは、同位体標識化ステップは、当該試料に存在するペプチドのC末端へのプロテアーゼ媒介16O又は18O導入により当該試料の半分を標識化することにより行われた。
その後、二重標識化されたペプチドは、グリコールペプチド取込処理にかけられた。乾燥したトリプシンペプチドは、最終濃度2mg/100μlの緩衝剤で結合緩衝剤(100mMの酢酸ナトリウム、150mMのNaCl、pH5.5)に溶かされた。溶けていない固体は、遠心分離により除去された。上澄みは、後続の反応のために用いられた。
炭水化物のシス・ジオール基は、10mMの過ヨウ素酸ナトリウム(最終濃度)を付加し、前転により30分間室温中に暗状態で当該試料を保温することによって、先ずは酸化させられてアルデヒドとされた。次に、20mMの亜硫酸ナトリウム(最終濃度)が付加され、当該試料が、当該試料における過剰の酸化剤を不活性化するように室温にて10分間保温された。
当該結合反応は、20mg/mlの最終濃度で市販のヒドラジド樹脂(ビーズ)を当該クエンチ処理された試料へ導入することにより開始させられた。1:5の固体/液体比を確保するため、適切な量の結合緩衝剤が当該試料に加えられた。当該結合反応は、前転により37℃で一夜をかけて行われた。その後、当該樹脂は、ミリQ精製水、1.5MのNaCl、メタノール及びアセトニトリルをそれぞれ用いて、徹底的かつ順次に、2度洗浄された。洗浄の後は、最終濃度の100mMのNHHCOを調整するための緩衝剤交換ステップ(すなわち、陽イオン交換クロマトグラフィステップ)が行われた。
グリコシル成分からのN結合ペプチドの酵素劈開は、ペプチド:NグリコシダーゼF(PNGase F)を用いて天然の蛋白質の2〜6mg当たり500U(1μl)PNGase Fの濃度で37℃で一夜において行われている。PNGase Fは、最も内側のGlcNAcとN結合グリコール蛋白質からの高マンノース、ハイブリッドかつ複合のオリゴ糖のアスパラギン残基との間を劈開するアミダーゼである。当該放出されるデ・グリコシル化ペプチドを含む上澄みは、遠心分離により収集され80%アセトニトリル洗浄の上澄みと合成された。
その後、溶液が乾燥させられ、0.1%ギ酸において1%アセトニトリルにより復元され、質量分析(MS)にかけられた。この処理は、N結合グリコールペプチドのみを選択した。PNGase Fデ・グリコシル化は糖ペプチドから糖成分を除去するものの、糖鎖付加部位は、依然として質量分析方法により検出可能である。何故なら、PNGase Fデ・グリコシル化は、あらゆるアスパラギンに対してアスパラギン酸をもたらすからである。或いは、O結合グリコペプチドは、特定のOグリコシダーゼにより、又はβ脱離のような化学的劈開により選択的に劈開可能である。

Claims (15)

  1. 試料から翻訳後修飾された蛋白質及び/又はペプチドの選択的富栄養化及び/又は分離をなす方法であって、
    (a)前記試料に含まれる蛋白質及び/又はペプチドの単一又は二重の化学的標識化を行うこと、
    (b)分析すべき特定の翻訳後修飾を有する翻訳後修飾された蛋白質及び/又はペプチドのサブセットを取り込むこと、及び
    (c)当該取り込まれたサブセットの翻訳後修飾された蛋白質及び/又はペプチドを分離すること、
    を有する方法。
  2. 請求項1に記載の方法であって、前記ステップ(a)の前又はこれと同時に前記蛋白質をペプチドに劈開することをさらに有する方法。
  3. 請求項1又は2に記載の方法であって、前記二重の標識化は、同位体及び同重体標識化を有する、方法。
  4. 請求項3に記載の方法であって、前記同位体標識化は、前記同重体標識化の前に行われる、方法。
  5. 請求項3又は4に記載の方法であって、前記同位体標識化は、前記蛋白質をペプチドに劈開する前に行われる、方法。
  6. 請求項1ないし5のうちいずれか1つに記載の方法であって、前記ステップ(b)は、レクチン親和性取り込み及び糖蛋白質化学的取り込みのうち少なくとも1つを有する、方法。
  7. 請求項1ないし6のうちいずれか1つに記載の方法であって、前記ステップ(c)は、当該分離された翻訳後修飾蛋白質及び/又はペプチドの少なくとも第1のサブセットから当該翻訳後修飾を除去することを有する、方法。
  8. 請求項7に記載の装置であって、前記翻訳後修飾は、化学的又は酵素的に除去される、方法。
  9. 請求項7又は8に記載の方法であって、当該分離された翻訳後修飾蛋白質及び/又はペプチドの前記第1のサブセットは、Nグリコシル化蛋白質及び/又はペプチドを有する、方法。
  10. 請求項9に記載の方法であって、前記グリコシル化は、ペプチド:NグリコシダーゼFにより酵素的に除去される、方法。
  11. 請求項7ないし10のうちいずれか1つに記載の方法であって、前記ステップ(c)を行った後に、当該残りのサブセットの蛋白質分子は、前記ステップ(a)ないし(c)の他のサイクルにかけられ、前記ステップ(c)は、少なくとも第2のサブセットの当該蛋白質分子から当該翻訳後修飾を除去することを有する、方法。
  12. 請求項11に記載の方法であって、当該分離された翻訳後修飾蛋白質及び/又はペプチドの前記第2のサブセットは、Cグルコシル化された蛋白質及び/又はペプチドを有する、方法。
  13. 請求項1ないし12のうちいずれか1つに記載の方法であって、質量分析法によって当該分離された蛋白質及び/又はペプチドを分析することをさらに有する方法。
  14. 請求項1ないし13のうちいずれか1つに記載の方法であって、高スループットフォーマットにて行われる方法。
  15. 請求項1ないし14のうちいずれか1つに記載の方法の使用方法であって、定性的及び/又は定量的なプロテオーム分析を行うための使用方法。
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