JP2011503277A - ポリマーの一つのグレードから他のグレードへ変える時の遷移状態を最適化する方法 - Google Patents

ポリマーの一つのグレードから他のグレードへ変える時の遷移状態を最適化する方法 Download PDF

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Abstract

スラリー・ループ反応装置でのオレフィン・モノマーの重合方法と、ポリマーの一つのグレードから他のグレードへ変える時に必要な運転条件を変えかつ変化を最適化する方法。

Description

本発明は、スラリー・ループ反応装置でのオレフィン・モノマーの重合方法に関するものである。
本発明は特に、ポリマーの一つのグレードから他のグレードへ変える時に必要な運転条件のを変え且つ変化を最適化する方法に関するものである。
高密度ポリエチレン(HDPE)は、始めは得られるポリマーの溶剤である液体中で実行される添加重合で作られていた。この方法はチーグラーまたはフィリップス触媒を用いたスラリー条件下での重合に直ぐに取って代わられた。より詳しくは、スラリー重合はパイプ・ループ反応装置で連続的に実行された。この重合で形成される重合流は一般に反応希釈剤と未反応モノマーである液体媒体中に懸濁したポリマーの固体微粒子のスラリーである(特許文献1の実施例参照)。このポリマーを不活性希釈剤と未反応モノマーとから成る液体媒体から分離する必要があるが、液体媒体を最少または未精製の状態で液体媒体を汚染せずに重合帯域へ再循環する必要がある。特許文献2に記載のように、ポリマーと液体媒体とのスラリーはスラリー・ループ反応装置の一つまたは複数の沈澱レグ(沈澱脚)に集められ、この沈澱レグからスラリーはバッチで回収され、定期的にフラッシュ室へ排出される。
ダブルループ・システムは、各反応装置を異なる重合条件にする、一般には一つの反応装置での水素およびコモノマーの量を他の反応装置と変えることによって極めてテーラーメードでポリオレフィンを製造できるという点で極めて望ましい。さらに、ダブルループ・システムはシングル反応装置系より反応域中での触媒の滞在時間を長くでき、それによって触媒収率を改善できる。ポリマー製品は1つまたは複数の移送ラインを介して第1のループ反応装置から第2のループ反応装置へ送られる。
ポリマー製品が必要なグレード条件を満たすようにするためには運転中に所定時間間隔で定期的に排出されるポリマーの密度とメルトフローインデックスとを測定する必要がある。ポリマーをサンプリングした時とその特徴が実験室の測定で得られる時との間には約90分の時間の遅れがある。従って、仕様から離れたポリマーができた場合には、数時間の間、製品のクラスが下がることになる。それに加えて、運転条件を変える必要がある。さらに、加えるべき修正度合いおよび/または修正を必要とする変数の種類も不明である。それに加えて、密度のような1つのグレート関係特性を変えると他の特性、例えばメルトインデックスも変わってしまう。正しい条件を修正せずに仕様外れを訂正する重合条件のコヒレントな変更(アセス)法には長い試行錯誤が必要である。
さらに、正しい仕様が得られるまで正しい運転条件のサーチをするため、この作業は更に遅くなる。さらに、ポリマーの仕様を変えて、一つのグレードから所望の新しいグレードへ変えることが必要になったときに運転条件を変える操作は極めて面倒であり、正しい仕様に達したことを確認できるまでに約90分の遅延が生じる。
特許文献3(国際特許第WO01/49751号公報)には水素、酸素、不活性希釈剤およびクロム触媒の存在下で高密度ポリエチレンまたは直鎖低密度ポリエチレンを気相反応装置で製造する方法と、そのオンライン制御プロセス変量および得られた樹脂の物性とが記載されている。この方法では物理特性および連続的には測定していないプロセス変量を参照するモデルと、上記特性およびプロセスの運転条件を制御するのに関連するモデルとを使用し、プロセス変量を制御することで生産速度を最大化し触媒の生産性を最大化している。
特許文献4(国際特許第WO00/22489号公報)にはポリプロピレンおよびそのコポリマーの化学特性をオンラインで推論および制御するシステムが記載されている。このシステムでは物理特性と連続的には測定していない化学的特性とを推論するモデルと関連したモデルとを使用して上記物理特性、反応媒体の密度、その他重要なプロセス変量とを制御する。この制御システムを用いることで生産速度と触媒収率を最大化することができる。
特許文献5(国際特許第WO97/26549号公報)にはオンライン核磁気共鳴(NMR)システムと、一つまたは複数のポリマー特性の予測方法とが記載されている。ポリマー特性を予測するためNMR出力の他にプロセス変量を相関させたモデルを用いたニューロネットワーク(神経回路網)を使用する。他の実施例では最少二乗法を用いてモデルの精度を改良している。ニューロネットワークまたは最少二乗法のいずれもマルチモデルまたは最適モデルの選抜シェーマと一緒に使用される。ポリマーはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンまたはエチレン‐プロピレンゴムの中から選択できる。
米国特許第US-A-2285721号明細書 米国特許第US-A-3152,872号明細書 国際特許第WO01/49751号公報 国際特許第WO00/22489号公報 国際特許第WO97/26549号公報
従って、現在のポリマーの仕様を変え且つ制御するために、運転条件に手動で加える変更の正確な予測値をリアルタイムで得る必要があるというニーズがある。
本発明の目的は、重合開始前に、密度およびメルトインデックスが運転条件に対してどのように関係するかを予測するモデルを開発することにある。
本発明の他の目的は、最短時間でポリマーの特性を変えるのに必要な運転条件および変化速度の変化の大きさ(振幅)を決定するのに用いるモデルを提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、強い非直線性、強く連結された変数および反応装置中での製品混合に起因する動的効果を十分に組み込むことが可能なモデルを設計することにある。
本発明のさらに他の目的は、ポリマーの一つのグレードから他のグレードへ変えるのに必要な時間を短縮させ、ポリマー生産を最適化する方法を提供することにある。
本発明の上記の目的の中の少なくとも一部は本発明によって達成される。
本発明は、下記(a)〜(h)の工程から成ることを特徴とする、ダブルループ・スラリー反応器でチーグラー‐ナッタ触媒またはメタロセン触媒系を用いてオレフィン・モノマーからホモポリマーまたはコポリマーを製造する際に、一つのグレードから他のグレードへ仕様を変える間の遷移時間と仕様外れポリマーの量とを減らす方法を提供する:
(a) 反応装置条件にリンクされて、nを選ぶことは、変数を入力した、
(b) 一般的な形の強制的な神経回路網モデルを定義すること
C1=1/(1+exp(-(a11*X1+a12X2+a13X3+...+b1)))、
C2=1/(1+exp(-(a21*X1+a22XI2+a23X3+...+b2)))、
C3=1/(1+exp(-(a31*X1+a32XI2+a33X3+...+b3)))、
...
Res=1/(1+exp(-(a(n+1)1*C1+a(n+1)2*C2+a(n+1)3*3C3+...+b(n+1)))
(ここで、Xiはn個の正規化した(normalised)入力変数であり、aijおよびbiは数値 (numerical) 係数であり、Ciは中間関数(intermediate functions)であり、Resは得られたスケール化されたポリマー特性予想値である)
(c) 適当な拘束条件下でのResのエラーを最小にするように階段(b)の(n+1)2aijと(n+1)biパラメータを調節し、上記の拘束条件はResまたはResの任意次数の任意の部分導関数(partial derivative)に一様性または非一様性によって科せられ、あるいは、aij、bi、Xi、Ciまたはこれの組合せに科せられ、部分導関数は一つ且つ唯一の変数が無限小階段(infinitesimal step)で変化した時の式で得られる結果の変動を測定し、
(d) 階段(b)の式のn個の入力変数(必要な場合には動的ステップレスポンス(dynamic step responses)が入力条件を変えるものを含む)の時間的変化から反応装置を出るポリマーの密度およびメルトフローインデックスをリアルタイムで予測し
(e) 分かっている他の(n-2)変数、例えば例えば温度およびC2オフガスと所望の密度値およびメルトインデックス値とから、2つの入力変数XiとXj、例えば例えば1-ヘキセンおよびH2の任意の組合せに対して適当な値を推定し、
(f) 2つの製品の様に対応する2つの静的状態条件の間のn個の入力変数の時間的変化に関する所定規則から、少なくとも一つのポリマーの特性が第1のポリマーグレードの製品仕様から離れる時間と、その少なくとも一つのポリマー特性が第2のポリマーグレードの製品仕様へ達する時間とを計算し、
(g) 階段(f)で計算した2つの時間の差を計算して仕様外れが生産される時間を計算し、
(h) プロセス限界(process limitation)を適用して、n個の入力変数の変化法則を修正して階段(g)の仕様外れ生産時間を最小にする。
の[図1a]は重合条件を少しづつ変えて一つのグレードから他のグレードへ変えたときのモデル化されたメルトインデックス(dg/分)およびモデル化された密度(g/cc)の時間を関数とする変化を表す図であり、[図1b]の最上部の曲線は本発明モデルで計算したポリマーの膨潤温度を表し、中間の曲線の安全性温度は膨潤温度より少なくとも5℃低く、下側の曲線は「科した」温度プロフィルである。
密度とメルトインデックスのために別々にニューロンシステムが構築される。従って、階段(c)はこれらの変数の各々に対して繰り返される。
各反応装置の入力条件(または運転条件)は一般に重合温度、反応装置内の圧力、モノマー、コモノマー、水素、触媒、活性化剤または反応添加剤、フード中または反応装置中のバルクの濃度、触媒を特徴付けるパラメータ、生産速度、固形物濃度および固形物滞在時間の中から選択される。
本発明では一つのグレードから他のグレードへの変更が開始される前に全ての入力パラメータが決定され、これらのパラメータは手動でセットアップされる。
「部分導関数(partial derivatives)」は従来の定義に従い、これは一つの変数に関する導関数体で、他の全ての変数は一定に維持しておく。
典型的な拘束条件((constraints)は下記から来る:
(1)各製品の特性(例えば低メルトインデックスのホモポリマーの密度)を科(imposed)すること、
(2)メルトインデックスが一定の場合、ポリマーの密度は正の第2部分導関数以外にはコモノマー濃度に関しては負の第1部分導関数であることを科すること、
(3)数値安定性を得るために、aijとbiの二乗和は一定値を維持するように科すること、
(4)測定値とモデル化した値と間の回帰(regression)の傾き(slope)は1、切片(intercept)は0であることを科すること、
あまいは、
典型的な動的レスポンス(dynamical response)は、モデルの単一の変数の階段一時変異に応答して、各モデル化された変数のこの世の進化を観測することにより決定されることができる。一般に、大抵の変数は一次のリニアーな動的レスポンスを有するが、永久作用を有する変数、例えば触媒毒の変化は二次のリニアーな動的レスポンスで近似できる総合レスポンスを有する。
典型的な動的レスポンス(dynamical response)はモデルの単一の変数の一つのステップ変化に応答してモデル化された各変数が一次的に変化するのを観測するで決定できる。一般に、大抵の変数は一次の直線的な動的レスポンスを有するが、永久作用を有する変数、例えば触媒毒の変化は二次の直線的な動的レスポンスで近似できる総合レスポンスを有する。
反応装置を出るポリマーの密度およびメルトインデックスを予測するために混合規則(mixing rules)を適用する。この混合規則には、別の反応装置で作られた製品が予言モデルを用いた反応装置から出た製品の特性を予測する反応装置に入る状態が含まれる。この混合則は各反応装置が完全に混合されたと仮定し、過去の各瞬間での反応装置内に存在する状態の適当な平均値を計算し、且つ反応装置内での滞在時間を考慮して決定される。任意の時間での状態には局所的に合成されたポリマー製品および/またはその反応装置に上流の反応装置から送られてきたポリマーが含まれる。
本発明方法の階段(h)のプロセス限界(process limitation)は系の形態と物理的または化学的環境によって科せられる任意の限界である。例えば反応装置の温度を変えることになる速度は熱的な制約を考慮に入れなければならない。さらに、再循環1−ヘキセンが戻ってくることは不可避であるので、任意の一つの反応装置中の1−ヘキセンの存在を即座に無しにすることはできない。同様に、濃度も即座に増加させることはできない。変化速度は吹込み装置の特性に依存する。
モノマーはエチレンで、任意成分のコモノマーは1-ヘキセンであるのが好ましい。
好ましい入力変数は重合温度、エチレン濃度、水素量およびフード中の1−ヘキセン量、生産速度、固形物濃度および滞在時間である。
実施例1
単一ループ・スラリー反応器で下記条件下にエチレンを重合した:
温度=85℃
エチレン圧力=5.5バール
2=72g/トンC2
C6=70kg/トンC2
得られたポリエチレンの密度は0.934g/ccで、メルトインデックスは8dg/分であった。
ポリエチレンの新しい標的仕様を密度=0.940g/cc、メルトインデックス=4dg/分に設定した。
本発明のモデルを用いることで新しい仕様に達するのに必要な最適な新しい運転条件を予測することができた。以下のように変化するように計算した。
時間0からヘキセンのフィード速度は27kg C6/トンC2/hのフィード速度に達するまで、6kg C6/トンC2/hに下げなければならない。その後、4kg C6/トンC2/hの速度の時に31kg C6/トンC2/hのフィード速度に増加しなければならない。
時間2時間40分から水素のフィード速度を60g H2/トンC2/hの値に達するまで、5g H2/トンC2/hに減らさなければならない。
時間4時間から、温度を0.4℃/時の速度で上げ、最終温度を87℃に上げなければならない。
密度モデルが0.02g/ ccだけターゲットから外れた時またはメルトインデックスモデルが1.6dg/分だけターゲットから外れた時にポリエチレンの仕様外れ(off-spec)を宣言しなければならない。
製品は3時間38分間、最初の仕様のままにし、遷移開始後、6時間15分で新しい仕様に入った。従って、仕様外れ(off-spec)は2時間37分であった。
さらに、本発明方法を用いることで反応装置の温度を常にポリマーの膨潤温度と互換性を維持させることができた。「膨潤温度」とは下記文献の第9頁、第26行目〜第10頁、第29行目および請求項1〜10に記載のものである。
欧州特許第EP07119993.9号公報
これはコモノマーの濃度とポリマーの数平均分子量との関数として計算される。さらに固体含有率と樹脂の分子量分布も考慮に入れる。
この例は[図1 b]に示してある。この図の最も上側の曲線は本発明モデルから計算されたポリマーの膨潤温度を表し、中間の曲線は安全性温度で、膨潤温度より少なくとも5℃低く、下側の曲線は「科した(imposed)」温度プロフィルである。

Claims (6)

  1. 下記(a)〜(h)の工程から成ることを特徴とする、ダブルループ・スラリー反応器でチーグラー‐ナッタ触媒またはメタロセン触媒系を用いてオレフィン・モノマーからホモポリマーまたはコポリマーを製造する際に、一つのグレードから他のグレードへ仕様を変える間の遷移時間と仕様外れポリマーの量とを減らす方法:
    (a) 反応装置条件にリンクされて、nを選ぶことは、変数を入力した、
    (b) 一般的な形の強制的な神経回路網モデルを定義すること
    C1=1/(1+exp(-(a11*X1+a12X2+a13X3+...+b1)))、
    C2=1/(1+exp(-(a21*X1+a22XI2+a23X3+...+b2)))、
    C3=1/(1+exp(-(a31*X1+a32XI2+a33X3+...+b3)))、
    ...
    Res=1/(1+exp(-(a(n+1)1*C1+a(n+1)2*C2+a(n+1)3*3C3+...+b(n+1)))
    (ここで、Xiはn個の正規化した(normalised)入力変数であり、aijおよびbiは数値 (numerical) 係数であり、Ciは中間関数(intermediate functions)であり、Resは得られたスケール化されたポリマー特性予想値である)
    (c) 適当な拘束条件下でのResのエラーを最小にするように階段(b)の(n+1)2aijと(n+1)biパラメータを調節し、上記の拘束条件はResまたはResの任意次数の任意の部分導関数(partial derivative)に一様性または非一様性によって科せられ、あるいは、aij、bi、Xi、Ciまたはこれの組合せに科せられ、部分導関数は一つ且つ唯一の変数が無限小階段(infinitesimal step)で変化した時の式にで得られる結果の変動を測定し、
    (d) 階段(b)の式のn個の入力変数(必要な場合には動的ステップレスポンス(dynamic step responses)が入力条件を変えるものを含む)の時間的変化から反応装置を出るポリマーの密度およびメルトフローインデックスをリアルタイムで予測し
    (e) 分かっている他の(n-2)変数と所望の密度値およびメルトインデックス値とから、2つの入力変数XiとXjの任意の組合せに対して適当な値を推定し、
    (f) 2つの製品の様に対応する2つの静的状態条件の間のn個の入力変数の時間的変化に関する所定規則から、少なくとも一つのポリマーの特性が第1のポリマーグレードの製品仕様から離れる時間と、その少なくとも一つのポリマー特性が第2のポリマーグレードの製品仕様へ達する時間とを計算し、
    (g) 階段(f)で計算した2つの時間の差を計算して仕様外れが生産される時間を計算し、
    (h) プロセス限界(process limitation)を適用して、n個の入力変数の変化法則を修正して階段(g)の仕様外れ生産時間を最小にする。
  2. モノマーはエチレンで、任意成分のコモノマが1-ヘキセンである請求項1に記載の方法。
  3. 入力変数が重合温度、エチレン濃度、水素量、フード中の1−ヘキセン量、生産速度、固形物濃度および滞在時間である請求項1または2に記載の方法。
  4. 上記の制約条件がXi、aij、bi、Ci、Resまたはこれらの組合せまたは任意次元のその部分導関数のいずれか一つに関連する同一性または非同一性である請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 混合則をさらに含み、この混合則は各反応装置が完全に混合されたと仮定し、過去の各瞬間での反応装置内に存在る状態の適当な平均値を計算し且つ反応装置内での滞在時間を考慮して決定される請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. ダブルループ・スラリー反応器中でオレフィンモノマーからポリマーを製造する際に一つのグレードから他のグレードへ変更するときのに必要な時間と仕様外れポリマーの量とを減らすための、請求項1〜6のいずれか一項に記載のモデルの仕様。
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