JP2011254722A - 不透水面上に敷設された緑化地盤の潅水システム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】電磁弁又は電動弁213を開閉制御することで緑化地盤200に対して潅水を実行可能な、不透水面上に敷設された緑化地盤200の潅水システムにおいて、潅水対象である当該緑化地盤200と離隔した管理部100には、当該緑化地盤200での降水量を一ファクタとして当該緑化地盤200の土壌水分量をシミュレーションにより算出し、当該算出結果に基づいて潅水タイミング及び/又は潅水量を決定する潅水内容決定手段と、潅水内容決定手段が決定した内容に基づき、遠隔操作で電磁弁又は電動弁213を起動する潅水制御手段とが備えられていることを特徴とする潅水システム210。
【選択図】図1
Description
潅水対象である当該緑化地盤と離隔した管理部には、
当該緑化地盤での降雨量を一ファクタ(他の好適ファクタとして、例えば、当該緑化地盤の総迅速有効水分量、当該緑化地盤における計画日消費水量)として当該緑化地盤の土壌水分量をシミュレーションにより算出(推定)し、当該算出(推定)結果に基づいて潅水タイミング及び/又は潅水量を決定する潅水内容決定手段と、
潅水内容決定手段が決定した内容に基づき、遠隔操作で電磁弁又は電動弁を起動する潅水制御手段と
が備えられていることを特徴とする潅水システムである。
潅水制御手段は、シミュレーションにより算出された土壌水分量が、当該緑化地盤における植栽植物が正常に生育する上で必要とする量以下{成長阻害水分点、即ちpF値で3.0前後以上(例えば3.0以上)}であり且つ該植栽植物が枯死しない量以上(永久しおれ点、即ちpF値で4.2以下)の土壌水分量を維持できるよう、潅水タイミング及び/又は潅水量を決定する(以下、減水潅水と呼ぶ)、前記発明(1)の潅水システムである。
潅水システムは、
電磁弁又は電動弁の開放時間を計測するタイマ
を更に有しており、
潅水制御手段は、タイマに開放時間をセットすることで潅水量を設定する、前記発明(1)又は(2)の潅水システムである。
緑化地盤側には、
フローセンサ、流量計及び水圧計から選択される一種以上である潅水実行状況確認手段と、
潅水実行状況確認手段による確認結果に関する情報を管理部側に送信する管理部側情報送信手段と
が備えられている、前記発明(1)〜(3)のいずれか一つの潅水システムである。
まず、本発明に係る屋上緑化潅水システムは、複数の緑化地盤における潅水を一元的に管理する管理部と、管理部からの制御に従い潅水を実行する緑化地盤部と、から構成される。以下、図1及び図2を参照しながら順に説明する。
まず、管理部100は、本システムを実行して各種制御を行うためのCPU101と、本システムの実行に係るプログラム等が記憶されているROM102と、本システムを実行する際に必要な情報を一時記憶するためのRAM103と、から構成されている。このような管理部100としては、一般に市販されているパーソナルコンピュータが使用可能である。ここで、管理部100は、電話回線(携帯電話等の無線電話を含む)、インターネット回線、有線等を介して、外部との情報の送受信が可能な情報送受信部104を更に有している。ここで、RAM103には、後述する演算を実行して潅水タイミング及び/又は潅水量を決定し且つ当該決定に基づいて潅水制御するために必要な情報が一時記憶されている。尚、どのような情報が一時記憶されるかに関しては後述する。
次に、緑化地盤部200は、緑化地盤が配されている場所である。ここで、本最良形態で対象とする場所は、典型的にはマンションやビル等の、コンクリート地盤を有する建造物の屋上や屋根である。ここで、コンクリート地盤上には、以下で列記する要素が配置又は設置されている。
本最良形態に係る緑化地盤用土壌としては、例えば屋上緑化の場合であれば、一般的に屋上緑化に用いられている自然土壌、人工土壌のいずれでもよい。例えば、パーライト、バーミキュウライト、ピートモス、バーク堆肥、チャフコン、木質腐朽有機物、ゼオライト、下水或いは浄水場から発生する汚泥、或いは汚泥の焼却灰等を挙げることができる。
本最良形態に係る植物は、特に限定されず、例えば屋上緑化の場合であれば、一般的に屋上緑化に用いられているものであればよい。
図1に示すように、本最良形態に係る潅水システム210は、水を供給可能な水道又は貯水タンク(例えば雨水を貯水するタンク)211と、水道等からの水を緑化地盤まで導く水管212と、水管212に設けられた電磁弁又は電動弁213と、電磁弁又は電動弁213の開閉を駆動する弁駆動手段(例えばソレノイド)214と、を有している。ここで、水道の場合はもともと加圧された状態で送られているので不要であるが、貯水タンクから水を導く場合には送液ポンプを取り付けることが好適である。また、図1では電磁弁等は一つしか表示されていないが、実際には複数(例えば10個)備えられているものとする。
土壌中の水分量が減少し植物が正常に生育する上で必要とする量(成長阻害水分点)以下になると、植物には気孔を閉じるなどして自身の消費水量を減らし自己の生存を図ろうとする性質がある。植物の種類によってこの性質の強さは異なるが、芝はこの性質が強いことで知られている。芝の例でみると、水分が不足してくると葉の色が瑞々しさを失い葉が丸まって尖ってくる、更に乾燥すると葉の色が更に悪くなる。この時点で降雨等により水分が与えられると芝は瑞々しい緑を回復する。更に乾燥が進むと葉が枯れる。しかしこの時点では芝の根は生きており、降雨等により水分が与えられるとすぐに新芽が出て緑を回復する。更に乾燥が進むと(永久しおれ点)芝はついに完全に枯死してしまう。水分量が不足すると、芝はこのような過程を通して自身の消費水量を減らし自己生存を図るわけである。この性質(自然現象)を利用して植物が枯死しない範囲で、土壌水分量が成長阻害水分点以下になるまで潅水しないことにより更に潅水量を減らす試みが減水潅水である。尚、減水潅水は植物の性質(自然現象)を利用した新しい潅水方式であって潅水量低減効果も大きく、最適潅水とは異なる潅水方式といえる。
潅水タイミングと潅水量を決定するに際しては、最適潅水方式、減水潅水方式とも植栽土壌の水分量に即して潅水を実施する方式であるため、植栽土壌の水分量を正確に(潅水実施の判定を下すために必要十分な精度で)知る必要がある。ここで、植栽土壌の水分量を正確に知るためには、該植栽土壌中に水分センサを設置して土壌水分量を測定する方法(水分センサ方式)と、過去の気象情報を基に現在の土壌水分量をシミュレーションして求める方式(シミュレーション方式)が想定される。これらの内、水分センサを採用した場合には前述した問題を招くため、本最良形態では後者を採用している。以下、本最良形態で採用するシミュレーション手法を一例として挙げる。
緑化地盤の総迅速有効水分量は、土壌厚さと有効水分量及び底面貯水量を調べて決定する。尚、自然地盤での有効水分量はpF1.5〜1.8とpF3.0との間の水分量であるが、一般的な屋上緑地の厚さは薄いのでpF1.0〜pF3.0の間の水分量とする。ここで、pF値とは、土壌の湿潤状態を測定する土壌水分吸引力計(pF計)で測定された値である。これは、土壌から水分を引き離すのに必要な力を水柱の高さ(cm)の対数で表したものである。そして、pF値は、0〜7の範囲で0は飽和状態で、数字が大きくなるほど水分が少なくなる。
本最良形態で利用する降雨量データとしては、気象庁等が発表している日毎の地点降雨量のうち該緑化地に最も近い地点のものを利用する。この場合、隣接地域のデータより極めて多量な降雨量が記載されている場合、計測地点周辺のみに集中的に降雨した可能性があるので、少ない降雨量を採用する。
1日当たりの消費水量として計画日消費水量を用いる。計画日消費水量は農林水産省構造改善局制定の「土地改良事業計画設計基準」に準拠し、屋上緑化地盤の土壌特性及び水分調査に基づき決定する。
シミュレーションを簡便に実行するため、土壌水分量は土壌中の水分量を水柱mmで考える。すなわち、植栽地盤1m2当たりに1Lの水を加えた時の土壌水分量を1mmとする。これに合わせ、総迅速有効水分量,降雨量,計画日消費水量,潅水量も水柱mmで表すものとする。降雨又は下記により潅水が発生すると、土壌水分量はその時点の土壌水分量に降雨量又は潅水量を加えた値になる。この時、地盤の総迅速有効水分量とその時点での土壌水分量との差以上の降雨量があると地盤は総迅速有効水分量となりそれ以上の水は排水される。それ以降無降雨の日が続くと、土壌水分量は毎日計画日消費水量に相当する水量だけ減少していく。計算上の土壌水分量が0mm以下(負数)になると、その程度に従って1日当たりの土壌水分量の減少量は低減する。尚、ここでいう土壌水分量0mmとは前述のとおりあくまでも計算上のものであり、成長阻害水分点に相当すると考えられる。
最適潅水においては、上記土壌水分量シミュレーションにて計算上の土壌水分量が0mmとなった時点を潅水タイミングとする。減水潅水においては、上記土壌水分量シミュレーションにて計算上の土壌水分量が0mm以下(例えば−10mm)となった時点を潅水タイミングとする。この場合潅水タイミングの判定基準となる土壌水分量の数値(負数、上記の例では−10mm)は、植栽する植物の種類及び許容される成長阻害症状の発生程度により定められる数値であり、実験によって決定される。
一回の潅水量(総潅水量を減らすため一回の潅水量を減らすとよい)は、年間総潅水量を少なくしつつ、屋上で良好に植物を生育させ続けることができる量とする。屋上緑化地盤への潅水量を少なくする上で考慮しなければならない点は、屋上緑化地盤はコンクリートの上に薄い地盤を盛って作られているため、総迅速有効水分量が少ないことと総迅速有効水分量以上の水を一時に潅水するとコンクリート表面を通って余剰水として排水されてしまうこと、一時に多量の潅水をすると潅水後すぐに雨が降った場合潅水が無駄になる点である。しかし、一回当たり潅水量を少なくしすぎると、潅水点周辺のみが濡れ全体に水が行き渡らない。このため地盤中で少なくとも10〜20cmの範囲内に濡れている土壌があるように土壌を濡らすことができる水量を潅水する必要がある。
次に、図3〜図6を参照しながら、本潅水システムでの処理例を説明する。尚、以下で示す処理は一例に過ぎず、本発明は当該処理に限定されない。ここで、図3〜図5は、本潅水システムの、管理部100側で実行される処理であり、図6は、本潅水システムの、緑化地盤200側で実行される処理である。以下、まず、管理部100側で実行される処理から説明する。
本最良形態に示したシステムを用い、下記条件にて実際に自動潅水を実施した。その結果を図7に示す。ここで、図7上段は、潅水レベル(灌水を起動する土壌水分量)を0mmとした場合(最適灌水)、また、図7中段は、潅水レベルをより低く−15mmと設定した場合(減水灌水)、図7下段は、潅水レベルを更に低く−28mmと設定した場合の結果である。ここで、図7上段及び図7中段は、潅水が適切にされたために芝が枯れなかった例であり、図7下段は、潅水が適切にされなかったために芝が枯れてしまった例である。このように、図7上段の場合だと、ほぼ無降雨であった8月〜9月初めにかけて潅水7回しか実施しないにも拘わらず芝が枯れることを防止でき、図7中段の場合だと、この期間にわずか潅水4回しか実施しないにも拘わらず芝が枯れることを防止できることが確認された。
実施場所:東京渋谷
実施期間:2007年の1年間
緑化地盤:ヤシ成型型平板状人工土壌(ガーデンマット)
植物:高麗芝
以下に、不透水面上に設置された総迅速有効水分量25mmの緑化地盤に芝を植栽する場合について一般のタイマ潅水、最適潅水、減水潅水の差(シミュレーション)を、概略数値を挙げて説明する。説明を簡便にするため夏季の1日当りの計画日消費水量を5mm/日、1回の潅水量を計画日消費水量に合わせて5mm/回と仮定し、初期土壌水分量25mm、夏季に30日間無降雨のケースを考える。尚、最適潅水、減水潅水とも、基本的には降雨を有効に利用することにより潅水量を減らす方式であるため、長期間無降雨の当該ケースはこれらの潅水方式にとって最も厳しい(タイマ潅水との差がでにくい)条件である。
タイマ潅水は、土壌水分量とは無関係に潅水を実行するため、常に計画日消費水量に見合うだけの潅水を行う必要があり、30日間に毎日5mm潅水を30回、即ち、30回×5mm/回=150mmの潅水が必要である。ただし当潅水法においては、安全を見込んで1日の潅水量として最大計画日消費水量(例えば夏季には7mm/日)とするべきであろう。したがって実際の必要潅水量はこれよりも多くなる。
最適潅水では、初期土壌水分量25mmが植栽植物の水分消費により5mm/日ずつ減少していき、25mm/5mm/日=5日後には土壌水分量は0mmとなり、最初の潅水が発生する。降雨が無いため、以後タイマ潅水と同様毎日の蒸発散量に見合うだけの潅水が必要になり、30日間には 30日−5日=25日間、毎日5mm潅水を25回、即ち、25回×5mm/回=125mmの潅水が必要である。
減水潅水については、夏季に土壌水分量が−10mmになった時点で潅水するものとすると(この程度の乾燥度になると芝の葉は色が悪くなり丸まって尖ってくる。土壌水分量0mmから更に無降雨3〜4日後の状態と推定され、この時点における芝の消費水量は通常の1/2と仮定する)、最初の潅水は5日+3日=8日後、それ以降は潅水が必要になるが芝からの
日消費水量が通常の1/2(夏季で5mm/日 / 2=2.5mm/日)に減っているから、1回の潅水で 5mm/回 / 2.5mm/日=2日もつことになる。したがって、この30日間の潅水は(30日−8日)/2日=11回、即ち、11回×5mm/回=55mmの潅水量で済むことになる。
101 CPU
102 ROM
103 RAM
200 緑化地盤部
210 潅水システム
211 水道又は貯水タンク
212 水管
213 電磁弁又は電動弁
214 弁駆動手段
215 弁駆動制御手段
216 潅水実行状況確認手段
218 制御情報送受信手段
Claims (5)
- 電磁弁又は電動弁を開閉制御することで緑化地盤に対して潅水を実行可能な、不透水面上に敷設された緑化地盤の潅水システムにおいて、
潅水対象である当該緑化地盤と離隔した管理部には、
当該緑化地盤での降雨量を一ファクタとして当該緑化地盤の土壌水分量をシミュレーションにより算出し、当該算出結果に基づいて潅水タイミング及び/又は潅水量を決定する潅水内容決定手段と、
潅水内容決定手段が決定した内容に基づき、遠隔操作で電磁弁又は電動弁を起動する潅水制御手段と
が備えられていることを特徴とする潅水システム。 - 潅水制御手段は、シミュレーションにより算出された土壌水分量が、当該緑化地盤における植栽植物が正常に生育する上で必要とする量以下(成長阻害水分点、即ちpF値で3.0前後以上)であり且つ該植栽植物が枯死しない量以上(永久しおれ点、即ちpF値で4.2以下)の土壌水分量を維持できるよう、潅水タイミング及び/又は潅水量を決定する、請求項1記載の潅水システム。
- 潅水システムは、
電磁弁又は電動弁の開放時間を計測するタイマ
を更に有しており、
潅水制御手段は、タイマに開放時間をセットすることで潅水量を設定する、請求項1又は2記載の潅水システム。 - 緑化地盤側には、
フローセンサ、流量計及び水圧計から選択される一種以上である潅水実行状況確認手段と、
潅水実行状況確認手段による確認結果に関する情報を管理部側に送信する管理部側情報送信手段と
が備えられている、請求項1〜3のいずれか一項記載の潅水システム。 - 屋上緑化潅水システムである、請求項1〜4のいずれか一項記載の潅水システム。
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