JP2011252888A - リガンド分析方法 - Google Patents

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倫子 瀬山
Nahoko Kasai
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Abstract

【課題】実際の生体内の状態により近い状態で、リガンドの分析ができるようにする。
【解決手段】ステップS104で、抗体固定化基板の観察領域にリガンド候補混合膜画分を配置した試料基板を作製する。ステップS105で、GTP結合タンパク質(Gプロテイン)を試料基板の観察領域に供給し、GPCRに結合したGプロテインの量の時間変化を測定する。この後、ステップS106で、測定した結果より膜画分におけるGタンパク質共役受容体に対してリガンドとなるリガンド候補の物質を分析する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、Gタンパク質共役受容体と作用するリガンドとなるリガンド候補物質を分析するリガンド分析方法に関するものである。
レセプタ(受容体)は、生体内の調節に関わる重要なタンパク質であり、現在、市場に出回る薬剤の約半数は、レセプタを作用対象としている。このようなレセプタを作用対象とする新薬開発や種々の疾患原因の追究のためは、レセプタに特異的に作用する物質であるリガンドの分析が重要となる。このリガンドの分析では、一般には、候補物質とレセプタとの作用の有無を確認(検出)することが行われている。このため、リガンドの候補となる多くの物質の分析を行うためには、多くのレセプタが必要となる。レセプタを大量に採取できる方法としては、細胞に遺伝子を導入し、レセプタを強制的に発現する手法が一般的となっている。
また、レセプタに対するリガンドの作用の状態の観測は、まず、レセプタを発現する遺伝子にカルシウムイオンに対する蛍光応答に対応する遺伝子を付帯させ、これらを所定の細胞内に導入する。このように作製した観察用細胞において、レセプタのリガンドとの結合により蛍光発光が得られるので、この発光を観測することで分析が行える。ただし、リガンドとレセプタとの結合反応から蛍光発光までには、数段階の細胞内反応が関与するため、これらの反応が正確に発現されるような観察用の細胞を作製するためには、高度が技術が必要とされる。
上述した細胞内での反応の観察に対し、レセプタとリガンドの結合をより直接的に分析するために、GTP(グアノシン三リン酸)結合タンパク質(Gプロテイン)類の吸着と置換反応を利用した分析手法がある。Gプロテインは、Gタンパク質共役受容体(GPCR)に結合して働く物質であるが、GPCRにリガンドが結合するとレセプタの構造変化が起こり、Gプロテイン類の吸着定数も変化する。この吸着定数の変化によるGプロテイン類の吸着に関連したグアノシン二リン酸、グアノシン三リン酸の交換反応を利用し、GPCRのリガンド結合の定性・定量が行われている。このような分析では、標識として同位体元素や蛍光物質が用いられている(非特許参考文献1)。
また、表面プラズモン共鳴測定原理を使い、GPCRとリガンドとの相互作用を評価する報告がある(非特許参考文献2,3)。この報告では、測定基板上に脂質膜を形成し、ここに目的のレセプタを強制発現させた細胞から精製したレセプタを埋めこんで測定している。リガンドと結合したレセプタが、Gプロテインのサブユニットと吸着する様子を屈折率変化として観察することで、原理的にはリガンドの分析が可能になる。
上記のように表面プラズモン共鳴測定法も含まれる全反射光学系を用いた表面分析装置を用いる手法には、GPCRとリガンドとの相互作用により生じる屈折率変化を直接的かつリアルタイムにモニタ(観測)できる利点がある。
特許第3356212号公報
W.Thomsen, J.Frazer, D.Unett, "Functional assays for screening GPCR targets", Current Opinion in Biotechnology, VOL.16, pp.655-665, 2005. D.Alve, Z.Salomon, E.Verga, H.I.Yamamura, G.Tollin, V.J.Hruby, "Direct Observation of G-protein Binding of the Human delta-Opioid Receptor Using Plasmon-Waveguide Resonance Spectroscopy", The Journal of Biological Chemistry, vol.278, no.49, pp.48890-48897, 2003. Stenlund,G.J.Babcock, J.Sodroski, D.G.Myszka, "Capture and reconstitution of G protein-coupled receptors on a biosensor surface", Analytical Biochemistry, vol.316, pp.243-250, 2003.
ところで、細胞で強制発現させたレセプタを用いたリガンドの分析では、実際の生物細胞と同様に機能しているかという点が問題となる場合がある。例えば、新薬を探索する場合、強制発現させた細胞と実際の生物細胞との間で、リガンドとレセプタとの反応系に違いがあった場合、このリガンドは薬剤としては副反応が存在することになる。また、強制発現させたレセプタを精製し、このレセプタを基板上の脂質膜中に再構築して分析に用いる場合、レセプタ構造の安定性やレセプタの本来の応答を促す細胞内物質やその他の環境が、本来の生物細胞内での構造とは異なっている恐れもある。
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、実際の生体内の状態により近い状態で、リガンドの分析ができるようにすることを目的とする。
本発明に係るリガンド分析方法は、分析対象の動物細胞を破砕して動物細胞の膜画分を分取する第1ステップと、膜画分にリガンド候補の物質を加えたリガンド候補混合膜画分を作製する第2ステップと、目的のGタンパク質共役受容体に対する抗体を基板の観察領域に固定して抗体固定化基板を作製する第3ステップと、抗体固定化基板の観察領域にリガンド候補混合膜画分を配置した試料基板を作製する第4ステップと、リガンドと反応している目的のGタンパク質共役受容体に結合するGTP結合タンパク質を試料基板の観察領域に供給し、Gタンパク質共役受容体に結合したGTP結合タンパク質の量の時間変化を測定する第5ステップと、測定した結果より膜画分におけるGタンパク質共役受容体に対してリガンドとなるリガンド候補の物質を分析する第6ステップとを少なくとも備える。
上記リガンド分析方法において、第6ステップでは、Gタンパク質共役受容体に結合したGTP結合タンパク質の量の時間変化により、Gタンパク質共役受容体に対するリガンドの特性を分析するようにすればよい。また、第5ステップでは、GTP結合タンパク質の供給による観察領域における屈折率の変化により、Gタンパク質共役受容体に結合したGTP結合タンパク質の量の時間変化を測定してもよい。また、第5ステップでは、表面プラズモン共鳴測定により、観察領域における屈折率の変化を測定すればよい。
以上説明したように、本発明によれば、Gタンパク質共役受容体に結合したGTP結合タンパク質の量の時間変化を測定するようにしたので、実際の生体内の状態により近い状態で、リガンドの分析ができるようになるという優れた効果が得られる。
図1は、本発明の実施の形態におけるリガンド分析方法を説明するためのフローチャートである。 図2は、抗体固定化基板の構成を示す平面図である。 図3Aは、抗体固定化基板の作製工程を説明する工程図である。 図3Bは、抗体固定化基板の作製工程を説明する工程図である。 図3Cは、抗体固定化基板の作製工程を説明する工程図である。 図3Dは、抗体固定化基板の作製工程を説明する工程図である。 図3Eは、抗体固定化基板の作製工程を説明する工程図である。 図4Aは、抗体固定化基板の構成を示す断面である。 図4Bは、表面プラズモン共鳴測定を行う装置の構成を示す構成図である。 図5は、表面プラズモン共鳴測定により吸着による屈折率(SPR角度)の変化を観測した結果を示す特性図である。 図6は、表面プラズモン共鳴測定により吸着による屈折率(SPR角度)の変化を観測した結果を示す特性図である。 図7は、表面プラズモン共鳴測定により吸着による屈折率(SPR角度)の変化を観測した結果を示す特性図である。 図8は、表面プラズモン共鳴測定により吸着による屈折率(SPR角度)の変化を観測した結果を示す特性図である。 図9は、表面プラズモン共鳴測定により吸着による屈折率(SPR角度)の変化を観測した結果を示す特性図である。 図10は、実験に用いる基板の構成例を示す構成図である。
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態におけるリガンド分析方法を説明するためのフローチャートである。このリガンド分析方法は、まず、ステップS101で、分析対象の動物細胞を破砕して動物細胞の膜画分を分取する。例えば、ポッター型のホモジナイザーを用いてホモジナイズすることで、細胞より膜画分を得ることができる。次に、ステップS102で、得られた膜画分にリガンド候補の物質を加えた(混合した)リガンド候補混合膜画分を作製する。
次に、ステップS103で、目的のGタンパク質共役受容体(GPCR)に対する抗体を基板の観察領域に固定して抗体固定化基板を作製する。例えば、得られた膜画分に含まれているGPCRを予め特定しておき、特定したGPCRの抗体を基板の観察領域に固定する。次に、ステップS104で、抗体固定化基板の観察領域にリガンド候補混合膜画分を配置した試料基板を作製する。例えば、観察領域にリガンド候補膜画分を滴下すればよい。
次に、ステップS105で、GTP結合タンパク質(Gプロテイン)を試料基板の観察領域に供給し、GPCRに結合したGプロテインの量の時間変化を測定する。この後、ステップS106で、測定した結果より膜画分におけるGタンパク質共役受容体に対してリガンドとなるリガンド候補の物質を分析する。
Gプロテインは、リガンドと反応(結合)しているGPCRに結合する。例えば、Gプロテインのαサブユニットを含む溶液を流し、Gプロテインのαサブユニットが、リガンドと反応しているGPCRに結合する。従って、測定領域のGPCRに結合するGプロテインが観察(検出)されれば、観察領域に配置されているリガンド候補混合膜画分には、リガンドが結合しているGPCRが存在していることになる。また、リガンドとGPCRの結合の状態が、GPCRに結合するGプロテインの量に対応している。
ここで、このようにGPCRに結合するGプロテインは、例えば、分取した膜画分中に存在する様々な物質の影響を受け、GPCRより分離する場合もある。従って、上述したようなGPCRに対するGプロテインの結合量は、特定の時間経過の後に測定しても、正確な結果を得られない。これに対し、GPCRに結合したGプロテインの量の時間変化を測定することで、GPCRに対するGプロテインの結合状態を分析することが可能となる。また、GPCRに対するGプロテインの結合状態により、GPCRに対するリガンドの特性を分析することができる。
このGPCRに結合したGプロテインの量の時間変化は、観察領域における屈折率の経時的な変化を測定することで得ることができる。このような屈折率変化の測定は、例えば、よく知られた表面プラズモン共鳴測定により行うことができる(特許文献1参照)。
以上に説明したように、本実施の形態によれば、動物細胞を破砕して得られた膜画分を用いるので、実際の生体内の状態により近い状態での分析となる。また、膜画分中のGPCRに結合したGプロテインの量の時間変化を測定するようにしたので、GPCRに対するリガンドの特性が分析できるようになる。また、異なるリガンド候補物質と同一膜画分とを混合して得られた複数のリガンド候補混合膜画分を、同じ基板の上に配列固定し、これら各々とGプロテインとの結合状態を測定することで、リガンド種類により、レセプタとの結合後にレセプタに与える構造変化の違いの度合いを評価することができる。
以下、実施例を用いてより詳細に説明する。以下では、GPCRに結合したGプロテインを、表面プラズモン共鳴法による屈折率の変化により測定する場合について説明する。
[膜画分作製方法]
ラットから摘出した脳の細胞を、ポッター型のホモジナイザーを用いて粉砕する。次に、粉砕した試料より、遠心分離を行って膜画分を取り出し、さらに、プロテアーゼ・インヒビターを含む溶解緩衝溶液に溶出した後、さらに遠心分離をかける。次に、緩衝剤と界面活性剤を加えて膜画分サンプルとした。次に、所定の基板上に膜画分サンプルより、レセプタ抗体(anti-δOpioid Receptor;Anti-OpiR)を用いてレセプタの存在を確認する。Anti-OpiRにより「δOpioid Receptor」の存在が確認されたサンプルを、膜画分Aとする。なお、この膜画分Aには、「δOpioid Receptor」以外の様々なレセプタおよび細胞膜を構成する脂質膜が混在し、また、Gプロテインが含まれている場合もある。
[抗体固定化基板作製方法]
図2の平面図に示すように、膜厚50nmの金薄膜202を形成した透明基板201を用意する。透明基板201は、例えば、ガラスあるいは透明なプラスチックから構成されていればよい。また、透明基板201は、板厚1mm程度とすればよい。次に、図3Aに示すように、紫外線を照射することによるUVオゾン処理により、金薄膜202を洗浄する。次に、図2および図3Bに示すように、金薄膜202の上に、所定の間隔でブロック部203を形成する。例えば、よく知られたスポッター装置を用いてブロッキング剤をスポットすることで、ブロック部203を形成する。このブロック部203の間を、観察領域204として用いればよい。
次に、観察領域204にプロテインA溶液を塗布し、10分静置して水洗浄することで、図3Cに示すように、観察領域204にプロテインA302を配置する。この後、GPCRに対する抗体の溶液を塗布し、図3Dに示すように、プロテインA302に抗体303を固定する。プロテインA302は、黄色ブドウ球菌由来のタンパク質である。このプロテインA302は、抗体303が「whole IgG」の場合、「whole IgG」のFc部分304に選択的に結合する。
また、「whole IgG」は、図3Dに示すように、Fc部分304および抗体303の抗原認識サイトであるFab部分305を備える。このため、Fc部分304をプロテインA302に固定(吸着)した抗体303は、金薄膜202を下側として、Fab部分305を上側に配置する状態で固定化されるものと考えられる。この抗体固定化は、一般的に用いられる手法の一つである。
以上のように抗体の溶液を塗布して20分静置して抗体303を固定化し、これを水洗浄した後、透明基板201(金薄膜202)の上の観察領域204に、膜画分Aを滴下すれば、図3Eに示すように、抗体303にGタンパク質共役受容体306が固定化される。膜画分Aを滴下してから20分静置して水洗し、この後、乾燥しないように緩衝剤に浸漬しておく。なお、膜画分Aに含まれている脂質膜307などが、Gタンパク質共役受容体306に付帯している場合もある。
[表面プラズモン共鳴測定について]
まず、測定では、図4Aに示すように、透明基板201の上に流路シート401を挟んでカバー402を配置する。流路シート401には流路403が形成されており、カバー402の試料導入口404より導入した試料溶液は、金薄膜202に配置される流路403を流れて試料排出口405より排出される。
次に、表面プラズモン共鳴測定では、図4Bに示すような測定装置411を用いる。測定装置411は、発光ダイオードなどから構成されている光源412,プリズム413,光検出部414,およびフィルタ415を備える。透明基板201は、金薄膜202が形成されていない裏面側を、マッチングオイルなどを介してプリズム413の測定面に配置する。
この測定装置411では、光源412から特定の入射角でプリズム413に入射させ、入射させた光を金薄膜202に照射する。これにより金薄膜202で反射した光を、プリズム413を通し、フィルタ415を通して光検出部414で検出する。金薄膜202に入射した光は、金薄膜202の反射面でエバネッセント波となり、反射面では、金薄膜202の上に配置される試料の屈折率の関数で表される表面プラズモン波が生じる。このエバネッセント波と表面プラズモン波の波数とが一致する入射角で光源412からの光が入射したとき、エバネッセント波は、表面プラズモンの励起に使われ、光検出部414が検出する反射光の光量が減少する。
上記光の入射角は、表面プラズモン波を発生させる物質の屈折率に固有のものとなる。従って、光検出部414から出力される光電変換信号を情報処理部421で処理することで、金薄膜202の上に配置される試料における上記物質の存在を測定(定量)することができる。
[抗体に対する対象のGPCRの選択的な固定化とGプロテインとの応答]
次に、固定化のために用いた抗体に対して、目的のGPCRが選択的に固定化されている状態、およびこのような固定化におけるGプロテインとの応答(反応)について調査した結果について説明する。
この調査では、レセプタを構成する糖鎖に吸着するレクチンを利用し、レクチンおよび抗体に吸着する物質を測定する。レクチンは、様々な糖鎖を持つレセプタを吸着する物質であり、以下では、WGA(Wheat germ agglutinin)を用いる。前述したように作製した抗体固定化基板の一部のブロック部203の間に、WGAを塗布したテスト基板Aを作製する。テスト基板Aでは、Anti-OpiRに加えてWGAも存在する状態となる。
このテスト基板Aに、既知のリガンドを添加した膜画分Aを緩衝剤で希釈した試料液を流し、上述した表面プラズモン共鳴測定により吸着による屈折率(SPR角度)の変化を観測する。図5は、この観測の結果を示す特性図であり、(a)は、Anti-OpiRの部分、(b)は、WGAの部分の結果である。図5に示すように、両者に屈折率の変化が発生しており、両者に吸着が生じていることが観察される。しかしながら、Anti-OpiRにおける吸着量が、WGAにおける吸着量より小さいことがわかる。
前述したように、WGAの部分には、「δOpioid Receptor」以外の他のレセプタも吸着するが、Anti-OpiRの部分には、「δOpioid Receptor」が選択的に吸着する。このため、Anti-OpiRの部分への吸着量は、WGAの部分への吸着量より少なくなることになる。上述した測定結果は、これに対応しており、テスト基板Aにおいては、Anti-OpiRの部分に、膜画分A中の「δOpioid Receptor」が選択的に吸着していることを示している。
さらに、「δOpioid Receptor」がリガンドと反応している状態である場合に、「δOpioid Receptor」の末端のカルボニル基(C末)に吸着するGプロテインであるGiα(Calbiochem社製、ウシ脳由来)との反応性を評価する。この評価では、上記テスト基板AにGiαを含む緩衝溶液を供給し、屈折率の変化を観測することで行う。図6は、この観測の結果を示す特性図であり、(a)は、Anti-OpiRの部分、(b)は、WGAの部分の結果である。
図6の(a)に示すように、Giαを供給すると、Anti-OpiRの部分では、吸着量の増加が観測され、Giαの吸着が確認される。これに対し、図6の(b)に示すように、Giαを供給しても、WGAの部分では、吸着量の減少が確認され、Giαの吸着は確認できない。WGAの部分にも「δOpioid Receptor」が存在しているものと考えられるが、「δOpioid Receptor」の周囲に存在してGiαと親和性のあるグアノシン類などが、WGAによる固定化部分によって失われる反応が優先して発生しているためと考えられる。
また、この結果から、膜画分として取り出してきたままの材料中には、Giαと親和性のあるコンフォメーションをとっている「δOpioid Receptor」が存在していることが判断できる。従って、目的とする「δOpioid Receptor」とリガンドとの反応性を評価するためには、「δOpioid Receptor」の状態を、リセットするプロセスが必要になるものと考えられる。
「他の抗体による膜画分からの固定化」
Anti-OpiRおよびアドレナリン・レセプタ抗体(anti-beta 2 Adrenergic Receptor;anti-b2AdR)を固定化した基板に、各々、膜画分Aを滴下して固定化したテスト基板Bを作製する。このテスト基板Bを用いてGiαとの反応性を観測する。総Gプロテイン濃度は2μg/mLに調整してある。図7は、この観測の結果を示す特性図であり、(a)は、Anti-OpiRの部分、(b)は、anti-b2AdRの部分の結果である。図7の(a)に示すように、Anti-OpiRを介して「δOpioid Receptor」を含む膜部分を固定化した領域においては、Giαの供給により吸着量の増加が観測され、Giαの吸着が確認できる。これに対し、図7の(b)に示すように、anti-b2AdRを固定化した領域においては、Giαの供給により反対に吸着量の減少が観測される。
上述したテスト基板Bには、膜画分A内のアドレナリン・レセプタ(b2AdR)が吸着している部分があるが、b2AdRはGプロテインのなかのGsαと吸着することが知られるレセプタである。よって、anti-b2AdRを固定化した部分にb2AdRを含む部分が優先的に吸着されていれば、Giαとの吸着はおこらないはずである。図7に示す結果は、この予想と一致したものであり、従って、基板側の抗体の選択性により、膜画分に含まれる測定対象とするレセプタが、周辺の脂質およびグアノシン類とともに固定化できることが確認できた。
なお、anti-b2AdRを固定化した部分においては、図6で示した結果と同様に、Giαと親和性のあるグアノシン類が吸着し、基板表面よりGiαが失われていったと考えられる。さらに、同一のテスト基板Bを用い、「δOpioid Receptor」とこれに対するアゴニストとしてのエンドルフィンとの吸着を確認した。この確認では、図8の(a)に示すように、Anti-OpiRの部分にはアゴニストの吸着が観測されたが、図の(b)に示すように、anti-b2AdRの部分ではアゴニストが吸着が観測されない。このことからも、抗体を用いた固定化により、レセプタとリガンドとの反応が阻害されることはなく、かつ、リガンド選択性を表すGプロテイン類の吸着も問題なく観測できることが確認される。
[リガンド特性の評価]
次に、リガンドの特性評価について説明する。まず、膜画分Aに「δOpioid Receptor」のアゴニストであるエンケファリンを混合した膜画分A1を作製する。また、膜画分Aに「δOpioid Receptor」のアンタゴニストであるナルトインドールを混合した膜画分A2を作製する。「δOpioid Receptor」は、エンケファリンとの結合によりGiαを吸着するコンフォメーションを取る。これに対し、「δOpioid Receptor」は、ナルトインドールと結合するとGiα吸着には向かないコンフォメーションを取ることが知られている。このように、レセプタはアンタゴニストとの結合(反応)により、レセプタとしての活動が抑制されるようになる。
次に、2箇所にAnti-OpiRを固定化したテスト基板Cを作製する。このテスト基板Cの、Anti-OpiRを固定化した2つの領域Aおよび領域Bの各々に、膜画分A1および膜画分A2を固定化する。このテスト基板Cにおける、Giαとの応答を観測する。図9は、この観測の結果を示す特性図であり、(a)は、領域Aの部分、(b)は、領域Bの部分の結果である。図9の(a)に示すように、膜画分A1から固定化した領域AにおけるGiαの吸着量の時間変化(時間変化量)は、膜画分A2から固定化した領域BにおけるGiαの吸着量の時間変化(時間変化量)より大きい。各々の時間変化の傾きを比較すると、領域Aは、領域Bに比較して、Giαに対する吸着量が60倍の能力を持つことが確認される。
以上のことより、アゴニストとの結合によりGiαを吸着するコンフォメーションを取った領域Aと、アンタゴニストと結合したためGiα吸着には向かないコンフォメーションとなった領域Bのレセプタで、明らかにGiαの吸着能力に差が生じたことを直接的に観察できたことになる。この試験においては、Giα以外の物質を測定系に添加していない。「δOpioid Receptor」がGiαと結合するためには、脂質膜中にとらわれた状態で、かつGβおよびGγも同時に吸着するヘテロ3量体である必要がある。GβおよびGγは、脂質膜との親和性が高く、脂質成分から除去し難い物質である。従って、上述した膜画分Aを抗体により基板に固定した状態では、レセプタ(δOpioid Receptor)がGiαと結合するために必要な脂質に加え、GβおよびGγも含まれた状態であるといえる。
また、Anti-OpiRと「Anti-Adrenergic Receptor」を、各々1箇所ずつ固定化した基板において、Anti-OpiRを固定化した領域に膜画分A1を滴下し、「Anti-Adrenergic Receptor」を固定化した領域に、アドレナリン・レセプタを強制発現させた膜のホモジナイズ品(市販品:膜画分B)を滴下し、各々固定化させた実験を実施した。この状態を図10に示す。領域204aが、Anti-OpiR303aを固定化した領域であり、領域204bが「Anti-Adrenergic Receptor」303bを固定化した領域である。
この実験の結果、膜画分A1固定化部分のみGiαの吸着が確認できた。異なる種類の膜画分を用いても、レセプタの特異性に対応したGプロテイン吸着反応が観測できると考えられる。これより、膜画分と混合した物質(リガンド候補物質)のリガンドとしての性能を、分析できることが示された。
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形が実施可能であることは明白である。

Claims (4)

  1. 分析対象の動物細胞を破砕して前記動物細胞の膜画分を分取する第1ステップと、
    前記膜画分にリガンド候補の物質を加えたリガンド候補混合膜画分を作製する第2ステップと、
    目的のGタンパク質共役受容体に対する抗体を基板の観察領域に固定して抗体固定化基板を作製する第3ステップと、
    前記抗体固定化基板の観察領域に前記リガンド候補混合膜画分を配置した試料基板を作製する第4ステップと、
    リガンドと反応している目的の前記Gタンパク質共役受容体に結合するGTP結合タンパク質を前記試料基板の観察領域に供給し、前記Gタンパク質共役受容体に結合した前記GTP結合タンパク質の量の時間変化を測定する第5ステップと、
    測定した結果より膜画分における前記Gタンパク質共役受容体に対してリガンドとなる前記リガンド候補の物質を分析する第6ステップと
    を少なくとも備えることを特徴とするリガンド分析方法。
  2. 請求項1のリガンド分析方法において、
    前記第6ステップでは、前記Gタンパク質共役受容体に結合した前記GTP結合タンパク質の量の時間変化により、前記Gタンパク質共役受容体に対するリガンドの特性を分析する
    ことを特徴とするリガンド分析方法。
  3. 請求項1または2記載のリガンド分析方法において、
    前記第5ステップでは、前記GTP結合タンパク質の供給による前記観察領域における屈折率の変化により、前記Gタンパク質共役受容体に結合した前記GTP結合タンパク質の量の時間変化を測定する
    ことを特徴とするリガンド分析方法。
  4. 請求項3記載のリガンド測定方法において、
    前記第5ステップでは、表面プラズモン共鳴測定により、前記観察領域における屈折率の変化を測定することを特徴とするリガンド分析方法。
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JP2003284573A (ja) * 2001-06-18 2003-10-07 National Institute Of Advanced Industrial & Technology グアノシン三リン酸結合タンパク質共役型の受容体
JP2005515402A (ja) * 2001-05-14 2005-05-26 コーニング インコーポレイテッド 生体膜のアレイおよびその製造方法と用途

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