JP2011246948A - 複合鉄筋を用いる鉄筋挿入工の施工構造 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】グラウトを充填する削孔1内に鉄筋2を挿入することにより地山を安定させる鉄筋挿入工の施工構造において、鉄筋2を鉄筋2よりも短い長さに形成された中空管状体(鋼管等)4内に挿入し、貫通させて複合鉄筋5を形成し、複合鉄筋5を削孔1内に挿入する、複合鉄筋を用いる鉄筋挿入工の施工構造を提供する。そして、鉄筋2よりも短い長さに形成された棒状体6が、中空管状体4内に挿入される。中空管状体4は、施工地盤の表層すべり土塊7の表層からすべり面よりも深部までの長さに形成され、複合鉄筋5が、削孔1内に挿入された時、中空管状体4は、表層すべり土塊7の表層からすべり面よりも深部まで配設され、表層すべり土塊7の移動や亀裂発生などの変形を抑制するように構成される。
【選択図】図1
Description
図7(a)に示す如く、岩盤では、主に移動岩塊31のすべり面32にせん断力が作用し、挿入した鉄筋33によって十分な抵抗力が得られる。しかし、図7(b)に示す如く、集中的なせん断力ではなく、移動土塊34からの分布荷重が作用する軟弱な地層での表層すべりにおいては、せん断応力だけでなく曲げ応力も発生する。
鉄筋挿入工の抵抗メカニズムは、最初に曲げ抵抗が発生し、その後、引張り抵抗に移行するのであるが、岩盤ではこの曲げ抵抗は小さいため一般に無視されている。
一方、軟弱な地層では、移動土塊34の引き抜き抵抗が小さいため、鉄筋挿入工の効果は移動土塊34内の抵抗力で決定される。よって、より多数の施工が必要となり不経済となっている。
図7(c)は、軟弱な地層において、地すべりで採用されている頭部固定くいと同様な条件を付加した鉄筋挿入工35を用いる方法である。
以上のことから、軟質な地盤における鉄筋挿入工においては曲げ剛性の大きな抵抗体を採用するとより効果が高い対策工になることがわかる。この発明は、この点に着目したものである。
請求項1に係る発明は、グラウトを充填する削孔内に鉄筋を挿入することにより地山を安定させる鉄筋挿入工の施工構造において、前記鉄筋を前記鉄筋よりも短い長さに形成された中空管状体内に挿入し、貫通させて複合鉄筋を形成し、前記複合鉄筋を前記削孔内に挿入することを特徴とする複合鉄筋を用いる鉄筋挿入工の施工構造を提供するものである。
さらに、補強した老朽化モルタル吹付工の部分にモルタルの吹付を行い一体化することで、より効果的な老朽化モルタル吹付補修工を行うことができる。
図1及び図2は、本発明の複合鉄筋を用いる鉄筋挿入工の施工構造を示し、本発明の複合鉄筋を用いる鉄筋挿入工の施工構造は、φ40mm〜φ90mm程度の削孔径に形成され、セメントペーストなどのグラウトを充填する削孔1内に、鉄筋2を挿入することにより地山3を安定させる鉄筋挿入工の施工構造において、鉄筋2を鉄筋2よりも短い長さに形成された中空管状体(鋼管等)4内に挿入し、貫通させて複合鉄筋5を形成し、複合鉄筋5を削孔1内に挿入する鉄筋挿入工の施工構造である。
これによって、くいとアンカーの両方の機能が発揮される複合構造となるのである。
施工地盤への削孔1作業終了後、注入パイプを削孔1の孔底まで挿入し、先端よりセメントペースト等のグラウトを注入して削孔1の孔口まで充填した後、削孔1内に前記複合鉄筋5を挿入する。これにより、中空管状体4内部にもグラウトが充填される。この時、削孔1及び中空管状体4から溢れたグラウトは落下する。
グラウトが所定の強度を発現したことを確認したら、グラウトが固まることによってできた窪みをモルタルで埋めてプレート9を設置し、ナット10を用いて緩みがないようにプレート9を締め付けることで施工が終了する。
この場合の構成材料は次のとおりである。
鉄筋:主鉄筋D−19、補助鉄筋D−13
鋼管:SGP−32(外径φ42.7内径φ35.7)
即ち、前記中空管状体4など、鋼管などの剛性付加材料を組み合わせた複合鉄筋5とすることにより、表層すべり土塊7等の表面付近の軟質部の剛性を高めることで変形の発生を抑制し、曲げあるいはせん断抵抗力を大きくして鉄筋挿入工の効果を高めるものである。つまり、鉄筋挿入工の効果を硬質地盤と類似させることで抵抗力を増加させるものである。
表層すべりに対して、地すべり対策で用いられる抑止くいやアンカーを適用すると不経済な設計となる。このため最近は、鉄筋挿入工が多く採用されている。然しながら、軟弱な地層の表層すべりでは、設計上多数の鉄筋挿入工が必要となるのが欠点である。
鉄筋挿入工の工費のほとんどは削孔費が占めており、施工本数を減らすことが、より経済的となる。施工本数を減ずるためには、移動土塊(表層すべり土塊7)と鉄筋2との付着抵抗を増加する必要があるが削孔径を大きくすると不経済である。そこで、鉄筋挿入工の設計体系では小さいため無視されている曲げ抵抗を評価可能な大きさに増大させ、抑止杭的な効果を実現させるために部分的に曲げ剛性を高めた複合鉄筋5を発明したのである。部分的な複合構造としたのは、鉄筋挿入工のアンカー的な抑止効果を残すことにある。
複合鉄筋5を採用することで移動土塊における曲げ抵抗やせん断抵抗が大きくなる。その効果を通常の鉄筋挿入工の設計に付加させることにより施工本数を減じることが可能となった。
各条件等は次のとおりである。
必要抑止力Pr=100N/mとする場合の検討例
すべり層厚It=2m:計算条件→曲げ抑え杭
地盤条件:N値50の不動地山に定着
表2の鉄筋挿入工の頭部変位量と比較してみる。D−19単体と同じ配置とした場合には、結果的に荷重が1/4になることから、頭部変形が1/3なので1/12の変形量に低減できることになる。このことから地山の変形を抑制する効果が顕著であることがわかる。
これは、地山のゆるみが少ない状態で抑止効果が発揮される構造になったことを示している。地山変形を抑制することで施工後に起こるであろう地山亀裂の発生による風化の進行が防止できるため、将来的に不安定化する要素が軽減され、法面全体のトータルライフサイクルコストを減ずることができる工法であるということができる。
鉄筋の腐食に悪影響を与える可能性が大きい移動土塊内部に、防食処理をした中空管状体(鋼管等)を挿入することで、もっとも腐食が懸念される部位の鉄筋に二重防食機能を付加したことになる。これにより、耐久性能が向上する。
この場合、中空管状体4は、施工地盤の老朽化モルタル吹付表層21から地山風化ゾーン22底部を越える長さに形成され、複合鉄筋5が、削孔1内に挿入された時、中空管状体4は、老朽化モルタル吹付表層21から地山風化ゾーン22底部を越える範囲に配設される。変形防止機能が高いため、施工中の安全が確保される。下部のモルタル除去部には透水コンクリート吹付工24が施工され、モルタルの延命化対策が終了する。
この場合、中空管状体4は、老朽化モルタル吹付表層21から地山風化ゾーン22底部を越える長さに形成され、複合鉄筋5が、削孔1内に挿入された時、中空管状体4は、老朽化モルタル吹付表層21から地山風化ゾーン22底部を越える範囲に配設され、老朽化モルタル吹付工の補強を行う。
老朽化モルタルと風化地盤を未風化地盤と一体化することで安定化させるものであるが、通常の鉄筋挿入工よりもせん断抵抗を大きくでき、かつ変形も防止できる構造となる。
従来、老朽化モルタルの変形を防止するため、吹付法枠工+鉄筋挿入工が採用されるが、本発明の複合鉄筋を用いる鉄筋挿入工の施工構造に於ける複合鉄筋を挿入することで老朽化モルタルの変形の発生を防止できることから吹付法枠工を併用しなくても良く、経済的な対策工となる。
2 鉄筋
3 地山
4 中空管状体
5 複合鉄筋
6 棒状体
7 表層すべり土塊
8 すべり面
21 老朽化モルタル吹付表層
22 地山風化ゾーン
24 透水コンクリート吹付工
Claims (4)
- グラウトを充填する削孔内に鉄筋を挿入することにより地山を安定させる鉄筋挿入工の施工構造において、前記鉄筋を前記鉄筋よりも短い長さに形成された中空管状体内に挿入し、貫通させて複合鉄筋を形成し、前記複合鉄筋を前記削孔内に挿入することを特徴とする複合鉄筋を用いる鉄筋挿入工の施工構造。
- 前記鉄筋よりも短い長さに形成された棒状体が、前記中空管状体内に挿入されることを特徴とする請求項1記載の複合鉄筋を用いる鉄筋挿入工の施工構造。
- 前記中空管状体は、軟質な施工地盤の表層すべり土塊の表層からすべり面よりも深部までの長さに形成され、前記複合鉄筋が、前記削孔内に挿入された時、前記中空管状体は、前記表層すべり土塊の表層からすべり面よりも深部まで配設され、前記表層すべり土塊の表層すべりを抑制するように構成されたことを特徴とする請求項1又は2記載の複合鉄筋を用いる鉄筋挿入工の施工構造。
- 老朽化モルタル吹付補修工事において、前記中空管状体は、施工地盤の老朽化モルタル吹付表層から地山風化ゾーン底部を越える長さに形成され、前記複合鉄筋が、前記削孔内に挿入された時、前記中空管状体は、前記老朽化モルタル吹付表層から前記地山風化ゾーン底部を越える範囲に配設され、老朽化モルタル吹付工の施工中の落下防止や補修・補強を行うように構成されたことを特徴とする請求項1又は2記載の複合鉄筋を用いる鉄筋挿入工の施工構造。
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