JP2011246808A - 電子ビーム溶接継手及び電子ビーム溶接用鋼材とその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】洋上風力発電用鉄塔の基礎部分を建設するのに最適な、母材、熱影響部、及び、溶融金属部の破壊靱性が適度にバランスした電子ビーム溶接用鋼材と、該鋼材に形成した電子ビーム溶接継手を提供する。
【解決手段】所定の鋼成分を有し、下記(1)式で定義する電子ビーム溶融部焼入れ性指標CeEBWが0.42〜0.65であり、かつ、インサートメタルを溶接部に挟持して形成した電子ビーム溶接継手の溶融金属部のCTOD値δWM、熱影響部のCTOD値δHAZ、及び、母材のCTOD値δBMが、下記(2)式と(3)式を満足することを特徴とする電子ビーム溶接用鋼材。CeEBW=C+1/4Mn+1/15Cu+1/15Ni+1/5Cr+1/5Mo+1/5V・・・(1)、0.8≦δBM/δWM≦1.25・・・(2)、0.3≦δHAZ/δWM≦1.1・・・(3)
【選択図】図4

Description

本発明は、インサートメタルを挟持した被溶接部に、電子ビームが照射され、溶接される電子ビーム溶接用鋼材とその製造方法、さらに、該鋼材によってインサートメタルを挟持した被溶接部に電子ビームを照射して形成した電子ビーム溶接継手に関するものである。
近年、地球環境の温暖化の一因であるCO2ガスの削減や、石油等の化石燃料の将来的な枯渇に対処するため、再生可能な自然エネルギーの利用が積極的に試みられている。風力発電も、有望視されている再生可能エネルギーの一つであり、大規模な風力発電プラントが建設されつつある。
風力発電に最も適している地域は、絶えず強風を期待できる地域であり、そのため、洋上風力発電が、世界的な規模で計画され、実現されている(特許文献1〜4、参照)。
洋上に風力発電用鉄塔を建設するためには、海底の地盤に、鉄塔の基礎部分を打ち込む必要がある。海水面から、風力発電用のタービンの翼高を十分に確保するためには、基礎部分も十分な長さが必要である。
そのため、鉄塔の基礎部分の構造は、板厚が50mm超、例えば、100mm程度、直径が4m程度の大断面を有する鋼管構造となり、鉄塔の高さは80m以上に達する。そして、近年、風力発電用鉄塔のような巨大な鋼構造物を、建設現場近くの海岸にて、電子ビーム溶接で、簡易に、しかも、高能率で組み立てることが求められている。
即ち、板厚100mmにも及ぶ極厚鋼板を、建設現場で、しかも、高能率で溶接するという、従来にない技術的要請がなされるようになった。
一般に、電子ビーム溶接、レーザービーム溶接などの高エネルギー密度ビーム溶接は、効率的な溶接である。しかし、レーザービームで溶接できる板厚には限度があり、従来の電子ビーム溶接は高真空状態に維持して真空チャンバー内で行う必要があった。そのため、従来、高エネルギー密度ビーム溶接で溶接することができる鋼板の板厚や大きさは、溶接装置の能力や真空チャンバー内の大きさによって制限されていた。
これに対し、近年、被溶接部の近傍を減圧し、板厚100mm程度の極厚鋼板を、効率よく、現地で溶接することができる電子ビーム溶接方法が提案されている。例えば、英国の溶接研究所では、低真空下で施工が可能な溶接方法(RPEBW:Reduced Pressured Electron Beam Welding:減圧電子ビーム溶接)が開発されている(特許文献5、参照)。
減圧電子ビーム溶接(RPEBW)を用いれば、風力発電塔用鉄塔のような大型構造物を建設する場合にも、溶接する部分を、局所的に真空状態におき、効率的に溶接することができる。RPEBW法では、真空チャンバー内で溶接する方法に比べ、真空度が低い状態で溶接する溶接方法であるが、従来のアーク溶接に比べ、溶融金属部(WM)の靭性の向上が期待できる。
一般に、溶接構造物の安全性を定量的に評価する指標として、CTOD(Crack Tip Opening Displacement:亀裂端開口変位)試験で求められる、破壊力学に基づく破壊靭性値δcが知られている。破壊靭性には試験片のサイズが影響するので、従来のVノッチシャルピー衝撃試験のような小型試験で良好な結果が得られても、大型鋼構造物の溶接継手に対するCTOD試験で、良好な破壊靭性値δcが得られるとは限らない。
また、電子ビーム溶接法は、電子ビームの持つエネルギーにより、溶接部の母材を一旦溶融し、凝固させて溶接する方法であり、通常、溶接部の成分組成は母材とほぼ同等である。そのため、エレクトロガス溶接等の大入熱アーク溶接法のように、溶接ワイヤー等により、溶融金属部の硬さや、破壊靭性値δcなどの機械特性を、調整することは難しい。
そこで、電子ビーム溶接継手の破壊靭性値δcを向上させるために、溶融金属部(WM)の硬さや清浄度を適正化する方法が提案されている(例えば、特許文献6、7、参照)。特許文献6には、溶融金属部の硬さを、母材の硬さの110%超220%以下とし、かつ、溶融金属部の幅を母材部の板厚の20%以下とすることが提案されている。また、特許文献7には、溶接金属中のOの量が20ppm以上とし、粒径2.0μm以上の酸化物の量を10個/mm2以下とすることが提案されている。
特開2008−111406号公報 特開2007−092406号公報 特開2007−322400号公報 特開2006−037397号公報 国際公開99/16101号パンフレット 特開2007−21532号公報 特開2008−88504号公報
洋上風力発電用鉄塔の建設においては、鋼材を突き合わせて溶接した後、溶接部に熱処理を施すことなく、そのまま使用するので、溶融金属部(WM)及び熱影響部(HAZ)には、優れた靭性が要求される。電子ビーム溶接の場合、溶接ワイヤーを使用しないので、母材の成分組成を調整して、溶融金属部及び熱影響部の靭性を制御することになる。
従来、溶融金属部における介在物、溶融金属部の硬さと母材の硬さの関係、又は、溶融金属部の幅を制御する方法が提案されているが、熱影響部の靭性が不十分であると、溶接部の破壊靭性は低下する。
なお、板状又は箔状のNi(インサートメタル)を溶接面に張付けて電子ビーム溶接を行い、溶融金属部(WM)の靭性を、母材の靭性以上に高めることができる。しかし、この場合も母材の成分組成が適正でないと、溶融金属部の硬さと熱影響部の硬さの差が顕著となり、溶接部において、靭性が大きくばらつくことになる。
また、本発明者らの検討によれば、電子ビーム溶接継手においては、インサートメタルを用いない場合であっても、靱性向上のための成分組成が、溶融金属部と熱影響部(母材)とで、必ずしも一致しない。そのため、従来のアーク溶接用高HAZ靭性鋼に、そのまま、電子ビーム溶接を施しても、溶融金属部で、高い靱性は得られない。一方、電子ビーム溶接により形成される溶融金属部の靱性を考慮して、アーク溶接用鋼材の成分組成を最適化しても、熱影響部で高靱性は得られない。
即ち、電子ビーム溶接とアーク溶接は、溶接手法及び形成される継手構造の点で基本的に異なるから、電子ビーム溶接に係る課題は、アーク溶接に係る課題解決手法で解決することはできない。
本発明は、このような実情に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、洋上風力発電用鉄塔の基礎部分を構成する板厚45mm以上の鋼材であって、インサートメタルを挟持した被溶接部に電子ビームを照射し、高強度で、かつ、溶融金属部(WM)、熱影響部(HAZ)、母材(BM)の破壊靱性値が適度にバランスした溶接継手を形成することができる電子ビーム溶接用鋼材とその製造方法、さらに、該鋼材によってインサートメタルを挟持した被溶接部に電子ビームを照射して形成した電子ビーム溶接継手を提供することである。
本発明は、インサートメタルを挟持した被溶接部に電子ビームを照射し、溶接される電子ビーム溶接用鋼材において、Mnを1.5%質量以上添加して、焼入れ性を確保するとともに、強力な脱酸元素であるMg及び/又はCaを同時に添加して、Mgを含む微細な酸化物を生成させ、粒成長を抑制するピンニング粒子や、粒内変態の生成核として利用し、母材部(BM)、熱影響部(HAZ)、及び、溶融金属部(WM)の破壊靭性値を適度にバランスさせることを基本思想とする。
特に、溶接ワイヤーを使用せず、WM幅及びHAZ幅が狭く、入熱量が低い電子ビーム溶接においては、溶融金属部(WM)及び熱影響部(HAZ)に、Mgを含む微細な酸化物を分散させることが、熱影響部(HAZ)におけるオーステナイト粒の粗大化を抑制するとともに、粒内フェライトの生成に顕著に寄与し、溶接部における破壊靱性の向上に貢献する。
そして、本発明においては、新たに導入した電子ビーム溶融部焼入れ性指標CeEBWを制御して、母材(BM)、溶融金属部(WM)、及び、熱影響部(HAZ)の破壊靱性を、適度にバランスさせ、インサートメタルを使用して形成した電子ビーム溶接継手において、所要の破壊靱性を確保する。さらに、本発明においては、焼入れ性を高めるために、Mn量を増大し、一方で、Cr、Mo、Cu、Ni、及び/又は、Nbの各量を低減し、電子ビーム溶接用鋼材の製造コストを低減する。
電子ビーム溶融部焼入れ性指標CeEBWは、インサートメタルを用いて形成する電子ビーム溶接継手の破壊靭性の向上のため、本発明者らが、新規に導入した指標である。指標CeEBWの技術的意義については、併せて導入した指標(比)“C/CeEBW”(C:C含有量)の技術的意義と併せて後述する。
本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)鋼材の被溶接部にNiを含むインサートメタルを介在させ、電子ビームを照射して形成する電子ビーム溶接継手であって、上記鋼材が、質量%で、C:0.02〜0.1%、Si:0.05〜0.30%、Mn:1.5〜2.5%、P:0.015%以下、S:0.010%以下、Ti:0.005〜0.015%、N:0.0020〜0.0060%、O:0.0010〜0.0045%を含有し、Al、Nb、及び/又は、Vを、Al:0.015%以下、Nb:0.020%以下、V:0.030%以下に制限し、Mg:0.0003〜0.0027%、Ca:0.0003〜0.0027%を、
0.0006%≦Mg+Ca≦0.0040%
を満足するように含有し、残部が鉄及び不可避的不純物からなり、さらに、下記(1)式で定義する電子ビーム溶融部焼入れ性指標CeEBWが0.42〜0.65であることを特徴とする電子ビーム溶接継手。
CeEBW=C+1/4Mn+1/15Cu+1/15Ni
+1/5Cr+1/5Mo+1/5V ・・・(1)
ここで、C、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、及び、Vは、それぞれ、鋼材成分の含有量(質量%)である。
(2)前記電子ビーム溶融部焼入れ性指標CeEBWに対するC量の比(C/CeEBW)が0.15以下であることを特徴とする上記(1)に記載の電子ビーム溶接継手。
(3)前記鋼材が、さらに、質量%で、Cr:0.50%以下、Mo:0.50%以下、Cu:0.25%以下、及び、Ni:0.50%以下の1種又は2種以上を含有することを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の電子ビーム溶接継手。
(4)前記電子ビーム溶接継手の溶融金属部が、質量%で、C:0.02〜0.1%、Si:0.05〜0.30%、Mn:1.2〜2.4%、P:0.015%以下、S:0.010%以下、Ni:1.0〜2.3%、Ti:0.005〜0.015%、N:0.0020〜0.0060%、O:0.0004〜0.0041%を含有し、Al、Nb、及び/又は、Vを、Al:0.015%以下、Nb:0.020%以下、V:0.030%以下に制限し、Mg:0.0003〜0.0027%、Ca:0.0003〜0.0027%を、
0.0006%≦Mg+Ca≦0.0040%
を満足するように含有し、残部が鉄及び不可避的不純物からなり、さらに、下記(1)式で定義する電子ビーム溶融部焼入れ性指標CeEBWが0.56〜0.73であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の電子ビーム溶接継手。
(5)前記溶融金属部が、さらに、Cr:0.50%以下、Mo:0.50%以下、Cu:0.25%以下の1種又は2種以上を含有することを特徴とする上記(4)に記載の電子ビーム溶接継手。
(6)前記鋼材の厚さが45〜150mmであることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の電子ビーム溶接継手。
(7)前記電子ビーム溶接継手において、10Pa以下の真空度で溶接した後の溶融金属部のCTOD値δWM、熱影響部のCTOD値δHAZ、及び、母材のCTOD値δBMが、下記(2)式と(3)式を満足することを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載の電子ビーム溶接継手。
0.8≦δBM/δWM≦1.25 ・・・(2)
0.3≦δHAZ/δWM≦1.1 ・・・(3)
ただし、δWM、δHAZ、及び、δBMは、0℃で三点曲げCTOD試験を6回行ったときのCTOD値の最低値である。
(8)上記(1)に記載の電子ビーム溶接継手を形成する鋼材であって、質量%で、C:0.02〜0.1%、Si:0.05〜0.30%、Mn:1.5〜2.5%、P:0.015%以下、S:0.010%以下、Ti:0.005〜0.015%、N:0.0020〜0.0060%、O:0.0010〜0.0045%を含有し、Al、Nb、及び/又は、Vを、Al:0.015%以下、Nb:0.020%以下、V:0.030%以下に制限し、Mg:0.0003〜0.0027%、Ca:0.0003〜0.0027%を、
0.0006%≦Mg+Ca≦0.0040%
を満足するように含有し、残部が鉄及び不可避的不純物からなり、さらに、下記(1)式で定義する電子ビーム溶融部焼入れ性指標CeEBWが0.42〜0.65であることを特徴とする電子ビーム溶接用鋼材。
CeEBW=C+1/4Mn+1/15Cu+1/15Ni
+1/5Cr+1/5Mo+1/5V ・・・(1)
ここで、C、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、及び、Vは、それぞれ、鋼材成分の含有量(質量%)である。
(9)前記電子ビーム溶融部焼入れ性指標CeEBWに対するC量の比(C/CeEBW)が0.15以下であることを特徴とする上記(8)に記載の電子ビーム溶接用鋼材。
(10)前記鋼材が、さらに、質量%で、Cr:0.50%以下、Mo:0.50%以下、Cu:0.25%以下、Ni:0.50%以下の1種又は2種以上を含有することを特徴とする上記(8)又は(9)に記載の電子ビーム溶接用鋼材。
(11)前記鋼材の厚さが45〜150mmであることを特徴とする上記(8)〜(10)のいずれかに記載の電子ビーム溶接用鋼材。
(12)上記(8)〜(11)のいずれかに記載の電子ビーム溶接用鋼材の製造方法であって、上記(8)〜(10)のいずれかに記載の成分組成を有する鋼材を、950〜1150℃に加熱し、その後、加工熱処理を施すことを特徴とする電子ビーム溶接用鋼材の製造方法。
電子ビーム溶接継手において、所定のCTOD値(破壊靭性値)を確保するためには、母材部(BM)、溶融金属部(WM)、及び、熱影響部(HAZ)の破壊靱性値を、適度にバランスさせることが重要である。
即ち、母材部と破壊靱性と熱影響部の破壊靱性が優れていても、溶融金属部の破壊靱性が劣っていると、溶融金属部が破壊の起点となり、溶接継手としての破壊靱性が劣化する。また、溶融金属部の破壊靱性が優れていても、熱影響部の破壊靭性が劣っていると、熱影響部を起点として破壊が進行する。
大入熱溶接を適用した降伏強度355MPa級の鋼材の溶接部(溶融金属部及び熱影響部)での脆性破壊は、旧オーステナイト周辺に生成する粗大な粒界フェライトや、旧オーステナイト内部にラス状に生成する上部ベイナイトやフェライトサイドプレート等が破壊の起点になって発錆する。
そして、上部ベイナイトや旧オーステナイト粒界から生成した粗大なフェライトが起点となって脆性破壊するときの破面単位は、旧オーステナイトの粒径に依存する。したがって、析出物によるピンニング効果や粒内変態を利用して、溶融金属部及び熱影響部における旧オーステナイトの粒径を小さくすることにより、溶接部の破壊靭性を改善することができる。
そこで、本発明においては、極めて強力な脱酸元素であるMg及びCaを同時に鋼に添加して、母材だけでなく、Niを含むインサートメタルを介在させて電子ビーム溶接した溶接部の溶融金属部及び熱影響部の旧オーステナイト粒内に、Mgを含む微細な酸化物を分散させる。入熱量が低い電子ビーム溶接では、熱影響部(HAZ)に、Mgを含む微細な酸化物が残存して、粒成長を抑制するピンニング粒子として機能するので、熱影響部における粒成長が抑制されて、破壊靭性が向上する。
また、微細なMg含有酸化物は、粒内変態の生成核となり、熱影響部に、粒内フェライトを生成させる。その結果、特に熱影響部の組織が微細になり、母材部、熱影響部、及び、溶融金属部の破壊靭性が向上するとともに、これら3つの破壊靱性のバランスが向上する。
本発明によれば、降伏強度355MPa級の鋼材の溶接部に、Niを含むインサートメタルを介在させて電子ビーム溶接して形成した電子ビーム溶接継手において、溶融金属部及び熱影響部における破壊靭性の劣化を抑制することができ、母材部、熱影響部、及び、溶融金属部の破壊靭性が適度にバランスした電子ビーム溶接継手を提供し、かつ、該溶接継手を形成し得る鋼材を低コストで提供することができる。
鋼材の強度及び靭性と金属組織との関係を定性的に示す図である。 焼入れ性と他の指標との関係を定性的に示す図である。(a)に、焼入れ性と溶融金属部の結晶粒径との関係を定性的に示し、(b)に、焼入れ性と熱影響部の高炭素マルテンサイト量との関係を定性的に示す。 母材の硬さに対する溶融金属部の硬さの比と溶融金属部及び熱影響部の破壊靭性との関係を定性的に示す図である。 CeEBと溶融金属部及び熱影響部の破壊靭性値(δc)の関係を定性的に示す図である。 熱影響部の破壊靭性値とC/CeEBとの関係を定性的に示す図である。 ノッチを導入した試験片を示す図である。
洋上風力発電用鉄塔の建設においては、鋼材を、溶接後、継手部に熱処理を施すことなく、そのまま使用するので、溶融金属部及び熱影響部には、優れた靭性が要求される。本発明においては、溶融金属部の靭性を母材と同等にまで高めるため、溶接部に、Niを含むインサートメタルを介在させて電子ビーム溶接を行う。
従来、電子ビーム溶接は、CrやMoを含有する高強度鋼(Cr−Mo高強度鋼)やステンレス鋼など、溶融金属部の酸化物の生成が問題とされる鋼材に適用されてきた。これは、ステンレス鋼の熱影響部には脆化相が生成せず、Cr−Mo高強度鋼の熱影響部の組織は、図1に定性的に示したように靭性に優れる下部ベイナイトとなり、溶融金属部の酸化物の制御によって、靭性が顕著に向上するためである。
一方、洋上風力発電用鉄塔などに使用される鋼材は、YPが約355MPaの構造用鋼であり、Cr−Mo高強度鋼に比べて強度が低く、熱影響部の組織は、図1に定性的に示したように靭性が低い上部ベイナイトになる。このような鋼材を電子ビーム溶接すると、特に、熱影響部では、粒界フェライトや上部ベイナイトなどの粗大な組織が発達し、高炭素マルテンサイトが生成しやすい。したがって、構造用鋼を電子ビーム溶接する場合、熱影響部の靭性の確保は容易ではない。
組織と靭性との関係については、結晶粒径の微細化が特に溶融金属部の靭性の向上に有効であること、高炭素マルテンサイトが特に熱影響部の靭性を低下させることが知られている。また、成分と組織との関係については、焼入れ性指標Ceqを大きくすると、図2aに示すように溶融金属部の粒径が微細になること、図2bに示すように熱影響部の高炭素マルテンサイトが増加することが知られている。
また、溶融金属部及び熱影響部の靭性を高めるには、溶融金属部の硬さと母材の硬さのバランスが重要である。すなわち、図3に示したように、母材の硬さに対して、溶融金属部の硬さを高めると、溶融金属部の靭性は向上するものの、熱影響部の靭性は、溶融金属部の硬化の影響によって低下する。したがって、靭性の劣る上部ベイナイトの生成を防止するために焼入れ性を高めると、溶融金属部の硬化の影響によって、熱影響部の靭性が損なわれるという問題が生じる。
このように、鋼の焼入れ性とWMの結晶粒径やHAZの高炭素マルテンサイトとの関係、母材の硬さに対するWMの硬さの比と溶接継手の靭性との関係は、定性的には公知であった。しかし、従来、鋼材の成分によって溶接継手の破壊靭性のバランスを制御するという考え方は存在しなかった。そのため、例えば、焼入れ性を高めた母材を電子ビーム溶接すると、WMの靭性は向上するものの、HAZの靭性が著しく低下するなどの問題が生じた。
そこで、本発明者らは、インサートを介在させて形成した電子ビーム溶接において、優れた靭性を確保するため、電子ビーム溶接に適した焼入れ性を表示する指標を検討し、新たに“電子ビーム溶融部焼入れ性指標CeEBW”を考案し導入した。即ち、下記(1)式で定義する“電子ビーム焼入れ性指標CeEBW”は、電子ビーム溶接継手の破壊靭性をより高めるに、組織の形成に大きく影響する焼入れ性に着目し、所要の組織の生成を確実に確保することを考慮した新たな指標である。
CeEBW=C+1/4Mn+1/15Cu+1/15Ni
+1/5Cr+1/5Mo+1/5V ・・・(1)
ここで、C、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、及び、Vは、それぞれ、鋼材成分の含有量(質量%)である。
上記(1)式で定義するCeEBWは、硬さと相関する公知の炭素当量Ceq(=C+1/6Mn+1/15Cu+1/15Ni+1/5Cr+1/5Mo+1/5V)を基に、Mnが、電子ビーム溶接の際に蒸発して減少し、焼入れ性が低下することを考慮して考案した指標である。なお、インサートメタルを介在させて形成する電子ビーム溶接継手において、経験的に得られた、Mnの減少に起因する焼入れ性の低下の度合いに基づいて、Mnの係数を1/4(>1/6)とした。
指標CeEBWは、電子ビーム溶接継手の溶融金属部において焼入れ性を所要の範囲で確保し、溶融金属部において、微細なフェライトの生成を促進し、かつ、熱影響部において、靭性を低下させる上部ベイナイトや高炭素マルテンサイトなどの生成を抑制するための指標である。
図4に、電子ビーム溶接継手における溶融金属部(WM)及び熱影響部(HAZ)の破壊靱性値(δc)とCeEBWとの関係を定性的に示す。実線の曲線は溶融金属部の破壊靭性値(δcmn)であり、破線の曲線は熱影響部の破壊靭性値(δcha)である。二点鎖線の曲線は、WMの硬さの変化を無視した仮想的な熱影響部の破壊靭性値(HAZ靭性の予測値)である。このようなHAZ靭性の予測値は、HAZの熱履歴を模擬した熱処理を施した試験片を用いて破壊靭性試験を行った場合などに得られる破壊靭性値である。
WMの破壊靭性値(δcwm)は、インサートメタル(Ni箔)を使用することにより、母材と同等にまで向上する。指標CeEBWが大きくなると、HAZでは高炭素マルテンサイトの増加とHAZの硬化によってHAZ靭性の予測値が低下する。また、CeEBWが大きくなるとWMの硬化の影響を受けて、δchaはHAZ靭性の予測値よりも低下する。なお、Ni箔を使用する場合、CeEBWが低くても靭性には問題ないが、強度が低下するため、下限値を定める必要がある。
このように、指標CeEBWによって溶融金属部及び熱影響部の破壊靭性を総合的に評価することが可能になり、指標CeEBWを適正範囲に定めれば、熱影響部の破壊靱性値を一点鎖線で示す目標値以上にすることができる。後述するピンニング粒子や粒内変態をを活用する場合は、効果に応じてδchaが向上することになる。
次に、本発明者らは、母材のC量及びCeEBWと、母材、溶融金属部、及び、熱影響部の靭性の関係について検討した。その結果、母材のC量とCeEBWとの比“C/CeEBW” の上限を制限することが好ましいことが解った。以下に、比“C/CeEBW”の技術的意義について説明する。
比“C/CeEBW”は、熱影響部の焼入れ性が極端に偏らないようにするための指標である。本発明では、インサートメタルを使用するので、C/CeEBWの低下による溶融金属部の焼入れ性の低下は、Niによって補うことができる。図5に、CeEBWと熱影響部の破壊靭性値との関係を示す。
CeEBWは焼入れ性の指標であるから、CeEBWが大きくなると、熱影響部では高炭素マルテンサイトの生成が促進されて破壊靭性値が低下する。そのため、図5に示すように、破壊靭性値を確保するには、C/CeEBを制限することが好ましい。
本発明者らは、Niを含むインサートメタルを介在させて電子ビーム溶接した溶接継手の溶融金属部の適正な成分組成についても検討した。溶融金属部には、Niを含むインサートメタルからNiが添加されるので、溶融金属部において靭性を確保するうえで、適正なNi量とCeEBWを明確にする必要がある。
さらに、本発明者らは、溶融金属部の破壊靭性値と熱影響部の破壊靱性値のバランスを改善する手法について検討した。その結果、適量のMg及びCaを同時に添加し、ピンニング粒子及び粒内変態の生成核として機能するMgを含む微細な酸化物を生成させると、インサートメタルを挟持して形成した電子ビーム溶接継手の熱影響部及び溶融金属部の靭性が向上することが解った。
本発明は、母材のC量、CeEBW、C/CeEBWを適正な範囲内に制御し、適量のMg及び/又はCaを添加し、溶接部にNiを含むインサートメタルを挟持して電子ビーム溶接した際に、母材の破壊靭性値に対する溶融金属部及び熱影響部の破壊靭性値の比を向上させ、破壊靱性値δcのばらつきを極力抑制した電子ビーム溶接継手と、該溶接継手を形成することができる鋼材である。
本発明の鋼材は、質量%で、C:0.02〜0.1%、Si:0.05〜0.30%、Mn:1.5〜2.5%、P:0.015%以下、S:0.010%以下、Ti:0.005〜0.015%、N:0.0020〜0.0060%、O:0.0010〜0.0045%を含有し、Al、Nb、及び/又は、Vを、Al:0.015%以下、Nb:0.020%以下、V:0.030%以下に制限し、Mg:0.0003〜0.0027%、Ca:0.0003〜0.0027%を、
0.0006%≦Mg+Ca≦0.0040%
を満足するように含有し、残部が鉄及び不可避的不純物からなる。
上記鋼材の溶接部に、Niを含むインサートメタルを挟持して電子ビーム溶接した場合、溶融金属部においては、Mn及びOが減少し、Niを増加するので、溶融金属部は、質量%で、C:0.02〜0.1%、Si:0.05〜0.30%、Mn:1.2〜2.4%、P:0.015%以下、S:0.010%以下、Ni:1.0〜2.3%、Ti:0.005〜0.015%、N:0.0020〜0.0060%、O:0.0004〜0.0041%を含有し、Al、Nb、及び/又は、Vを、Al:0.015%以下、Nb:0.020%以下、V:0.030%以下に制限し、Mg:0.0003〜0.0027%、Ca:0.0003〜0.0027%を、
0.0006%≦Mg+Ca≦0.0040%
を満足するように含有し、残部が鉄及び不可避的不純物からなる。
以下、各元素の添加理由及び添加量について説明する。なお、%は質量%を意味する。
Cは、強度の向上に寄与する元素である。溶接構造体としての強度を確保するため、0.02%以上添加する。好ましい下限は0.03%であり、より好ましくは0.04%である。一方、Cが0.1%を超えると焼入性が増大し、靭性が低下するので、上限は0.1%とする。好ましい上限は0.08%であり、より好ましくは0.06%である。
Siは、脱酸元素であり、鋼板の強度を確保するためにも有効な元素である。そのため、0.05%以上添加する。しかし、Siを過剰に添加すると、島状マルテンサイトが多量に生成し、特に、溶融金属部及び熱影響部の靭性が低下するので、上限を0.30%とする。好ましい上限は0.20%であり、より好ましくは、0.15%である。
Mnは、靭性を確保し、かつ、焼入れ性を高めて鋼板の強度を確保するのに有効な元素である。1.5%未満では、鋼材の靭性、強度、及び、焼入れ性を十分に確保できないし、また、電子ビーム溶接時、Mnが溶融金属部から蒸発して、溶融金属部の焼入れ性が低下する。したがって、鋼材の靭性、強度、及び、焼入れ性、さらに、溶融金属部の焼入れ性を確保するため、1.5%以上のMnを添加する。
Mnの好ましい下限は1.7%であり、より好ましくは1.8%である。ただし、Mnが2.5%を超えると、焼入れ性が増大し、特に熱影響部の靭性が低下するので、上限を2.5%とする。好ましい上限は2.4%であり、より好ましくは2.3%である。
Pは、不純物であり、母材(BM)、溶融金属部(WM)、及び、熱影響部(HAZ)の靭性に悪影響を及ぼす。特に、熱影響部(HAZ)の靭性を確保するためには、Pは少ないことが好ましく、0.015%以下に抑える。好ましくは0.010%以下である。製造コストの観点から、Pは0.001%以上が好ましい。
Sは、MnSを形成する元素である。Mnは、微細なTiNや、Mgを含む酸化物を核として析出し、Mn希薄領域を形成して、粒内フェライトの生成(粒内変態)を促進するためには、Sを0.0001%以上含有させることが好ましい。好ましい下限は0.001%である。一方、Sを過剰に含有すると、特に、熱影響部(HAZ)の靭性が低下するので、0.010%以下に抑える。好ましくは、0.005%以下とする。
Tiは、Nと結合して、結晶粒の微細化に寄与する微細な窒化物(TiN)を形成する元素である。入熱量が低い電子ビーム溶接継手においては、熱影響部(HAZ)に微細なTiNが残存して、粒内変態の生成核として作用する。
粒成長の抑制や粒内変態により、特に熱影響部(HAZ)の靭性を向上させるために、Tiを0.005%以上添加する。好ましくは0.007%以上添加する。一方、Ti量が過剰であると、粗大なTiNが生成し、かえって靭性が劣化するので、上限を0.015%とする。好ましい上限は0.012%である。
Nは、Tiと結合して微細な窒化物を形成する元素である。母材の結晶粒の微細化や、ピンニング効果による熱影響部における粒径の粗大化の防止や、粒内変態による粒径の微細化によって、特に熱影響部(HAZ)の靭性を高めるため、下限を0.0020%とする。好ましい下限は0.0030%である。
一方、Nが過剰であると、母材部及び熱影響部の靭性に悪影響を及ぼすので、上限を0.0060%とする。好ましい上限は0.0050%である。
Oは、Mgを含む微細な酸化物を生成する元素である。添加効果を得るため、0.0010%以上添加する。電子ビーム溶接で形成される溶融金属部のO量は、母材部のO量より少なくなるので、0.0015%以上の添加が好ましい。より好ましくは0.0020%以上である。
しかし、Oが過剰であると、酸化物が粗大になり、破壊の起点となって、母材部や熱影響部の靭性に悪影響を及ぼすので、上限を0.0045%とする。好ましい上限は0.0045%である。
Mgは、本発明において極めて重要な元素である。Mgは、微細な酸化物を形成し、粒内変態の促進に寄与する。Mg酸化物をピンニング粒子として利用するために、0.0003%以上添加する。粒内変態を促進するには、0.0005%以上の添加が好ましい。
一方、0.0027%を超えてMgを添加すると、粗大な酸化物が生成し易くなり、母材部及び熱影響部の靭性が低下するので、上限を0.0027%とする。より好ましい上限は0.0025%である。
Caは、強力な脱酸元素であり、Mg酸化物の粗大化を抑制して、微細なMgの酸化物を確保するため、0.0003%以上を添加する。また、Caは、CaSを生成し、圧延方向に伸長したMnSの生成の抑制にも有用である。鋼材の板厚方向の特性、特に、耐ラメラティアー性を改善するためには、0.0005%以上のCa添加が好ましい。
一方、Caが0.0027%を超えると、粗大な酸化物が生成し易くなり、母材部及び熱影響部の靱性が低下する。したがって、Caの上限を0.0027%とする。より好ましい上限は0.0025%である。
本発明では、Mg及びCaを同時に添加する。これは、Caの添加によって脱酸を強化し、Mg酸化物の粗大化を抑制するためである。即ち、CaはMgよりも優先的に酸化物を形成するので、Mg酸化物の粗大化が抑制されて、Mg含有微細酸化物の生成が促進される。
微細なMg酸化物は、ピンニング粒子及び粒内変態核として作用し、TiNの生成核にもなる。旧オーステナイト粒内のフェライトの核生成を補強し、旧オーステナイト粒内組織の微細化を図り、粗大オーステナイトの生成を抑制するため、MgとCaを、合計で0.0006%以上添加する。
一方、MgとCaの合計量が過剰であると、酸化物が凝集し、粗大化して、母材部及び熱影響部の靭性に悪影響を及ぼすので、合計量の上限は0.0040%とする。MgとCaの合計量の上限は0.0030%が好ましく、さらに好ましくは0.0025%である。
本発明の鋼材は、さらに、Al、Nb、及び/又は、Vを、以下の理由で、一定限度内で含有してもよい。
Alは、脱酸、及び、ミクロ組織の微細化により、母材の靭性を向上させる元素であるので、必要に応じて添加する。添加効果を得るためには、0.001%以上の添加が好まし。より好ましくは0.003%以上である。
ただし、Al酸化物は、フェライト変態核生成能力が小さく、粒内変態にほとんど寄与しないので、Alは0.015%以下とする。Al酸化物が粗大になると、破壊の起点になるので、好ましい上限は0.012%である。より好ましくは0.010%以下である。
Nbは、焼入れ性を向上させて、鋼板の強度を高めるのに有効な元素であり、必要に応じて、0.001%以上添加する。好ましくは0.003%以上を添加する。ただし、Nbを過剰に添加すると、特に熱影響部(HAZ)の靭性が低下するので、上限を0.020%とする。好ましい上限は0.012%であり、より好ましくは0.010%である。
Vは、少量の添加で、焼入れ性及び焼戻し軟化抵抗を高める効果を有する元素であり、必要に応じて添加する。添加効果を得るために、0.005%以上を添加する。好ましくは0.010%以上を添加する。ただし、Vを過剰に添加すると、特に熱影響部(HAZ)の靭性が低下するので、上限を0.030%とする。好ましい上限は0.025%であり、より好ましくは0.020%である。
本発明の鋼材は、必要に応じ、さらに、Cr、Mo、Cu、及び、Niの1種又は2種以上を含有してもよい。これらの元素は、靭性の向上に有効な元素であり、Cr、Mo、Cu、及び/又は、Niを、0.05%以上添加する。
しかし、Cr、Mo、Cu、及び、Niは、高価であるので、経済的観点から、Cr:0.50%以下、Mo:0.50%以下、Cu:0.25%以下、Ni:0.50%以下とする。特に、Mn量を高めた本発明の鋼材では、これらの元素を過剰に添加すると、焼入れ性が高くなりすぎて、靭性のバランスを損なうことがある。したがって、好ましくは、Cr、Mo、Cu、及び/又は、Niの合計量を0.70%以下とし、さらに好ましくは0.50%以下とする。
本発明の鋼材においては、電子ビーム溶接した場合、溶融金属部のMn量及びO量が、母材部のMn量及びO量よりも少なくなる。これは、電子ビーム溶接を真空中で行う際に、溶融金属部では、Mnの一部が蒸発するとともに、酸化物が溶融金属部から浮上して排出されるからである。したがって、溶融金属部のMn量及びO量を、それぞれ、質量%で、Mn:1.2〜2.4%、及び、O:0.0004〜0.0041%とする。
本発明の鋼材において、電子ビーム溶接継手を形成する際、溶融金属部の靭性を高めるため、被溶接部(開先突合せ部)に、Niを含むインサートメタルを挟持し、溶融金属部にNiを添加する。溶融金属部の靭性を顕著に高め、好ましくは溶融金属部の破壊靭性値を母材の0.8倍以上にするには、溶融金属部のNiを1.0%以上にすることが必要である。
一方、Ni量が過剰になると、溶融金属部の硬度が上昇し、熱影響部の破壊靭性に悪影響を及ぼす。特に、熱影響部の靭性を確保するために、Ni量の上限を2.3%以下とする。なお、溶融金属部のNiが過剰であると、高炭素マルテンサイトが生成しやすくなり、溶融金属部の硬度が上昇し、破壊靭性が低下することがある。
ピンニング効果によって溶融金属部の靭性を高めるために添加するMgとCaの量が少ない場合、溶融金属部のNi量を増加することが好ましい。インサートメタルとしては、Ni合金や、純Niを使用することができる。純Niを使用すれば簡便である。
本発明の鋼材においては、上記成分組成のもとで、下記(1)式で定義する電子ビーム溶融部焼入れ性指標CeEBWを0.42〜0.65とする。
CeEBW=C+1/4Mn+1/15Cu+1/15Ni
+1/5Cr+1/5Mo+1/5V ・・・(1)
ここで、C、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、及び、Vは、それぞれ、鋼材成分の含有量(質量%)である。
電子ビーム溶融部焼入れ性指標CeEBWは、溶接部にNiを含むインサートメタルを挟持して形成した電子ビーム溶接継手の溶融金属部において、Ni量を1.0〜2.3%とすることを考慮した焼入れ性指標である。
CeEBWの下限は、母材部の強度を確保するため、0.42とする。CeEBWは、好ましくは0.45以上、より好ましくは0.48以上とする。一方、CeEBWが0.65を超えると、熱影響部の破壊靭性が不十分になるので、上限を0.65とする。好ましい上限は0.60であり、より好ましくは0.58である。
電子ビーム溶融部焼入れ性指標CeEBWに対するC量の比(C/CeEBW)は、溶融金属部の焼入れ性と、熱影響部と母材の焼入れ性のバランスを表する指標であり、0.15以下が好ましい。C量が、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、及び/又は、Vの量に対して過剰になり、C/CeEBWが0.15を超えると、熱影響部の破壊靭性が低下することがある。より好ましいC/CeEBWの上限は0.13であり、さらに好ましくは0.11である。
一方、Niを含むインサートメタルを溶接部に挟持して電子ビーム溶接を行う場合、母材のC/CeEBWの低下による溶融金属部の焼入れ性の低下は、Niで補うことができる。したがって、C/CeEBWの下限は規定しないが、C量が下限の値をとり、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、及び/又は、Vの量が上限の値をとる場合が、実質的にC/CeEBWの下限となり、本発明では0.02である。
なお、C量を増加し、Cu、Ni、Cr、Mo、及び/又は、Vの量を低減すると、合金コストを削減することができるので、C/CeEBWは、より好ましくは0.04以上、さらに好ましくは0.06以上とする。
溶接部にNiを含むインサートメタルを挟持して形成した電子ビーム溶接継手の溶融金属部のCeEBWは、0.56〜0.73とする。溶融金属部のCeEBWは、溶融金属部の焼入れ性を確保するために、0.56以上とする。溶融金属部のCeEBWの下限は、より好ましくは0.60とする。一方、溶融金属部のCeEBWが0.73を超えると、溶融金属部が硬化して、溶接継手の破壊靭性が不十分になる。溶融金属部のCeEBWの上限は、より好ましくは0.70である。
本発明の鋼材は、電子ビーム溶接で形成した溶接継手において、溶融金属部のCTOD値:δWM、熱影響部のCTOD値:δHAZ、及び、母材のCTOD値δBMが、下記(2)式と(3)式を満足することが好ましい。
0.8≦δBM/δWM≦1.25 ・・・(2)
0.3≦δHAZ/δWM≦1.1 ・・・(3)
ただし、δWM、δHAZ、及び、δBMは、0℃で三点曲げCTOD試験を6回行ったときのCTOD値の最低値である。
δBM/δWMが0.8未満、及び/又は、δHAZ/δWMが0.3未満であると、δBM、δWM、及び、δHAZのバランスが極端に悪くなり、溶接部の破壊靱性が大きく低下するので、δBM/δWMの下限は0.8とし、δHAZ/δWMの下限は0.3とする。δBM/δWMの上限は、δWMがδBMの0.8倍以上であることが好ましいので、1.25以下とする。
δWMはδBMとほぼ同等であることがより好ましく、δBM/δWMの好ましい上限は1.1である。同様に、δHAZはδWMとほぼ同等であることが好ましく、δHAZ/δWMの上限を1.1以下とする。
本発明のように、微細なMg含有酸化物を利用する鋼を電子ビーム溶接する場合は、HAZの破壊靭性を母材と同等にまで高めることは難しい。したがって、特に、母材及びWMの破壊靭性を高める必要がある場合、δHAZ/δWMの好ましい上限は0.6であり、より好ましくは0.5である。
即ち、本発明の鋼材によれば、電子ビーム溶接後の溶接継手における溶融金属部及び熱影響部の破壊靭性は、母材部の破壊靱性に比較して劣化が少なく、各部の破壊靭性が適度にバランスした溶接継手を得ることができる。
電子ビーム溶接は、簡易な設備で達成できる低真空度、例えば、10Pa以下の減圧下で行うことができる。真空度の下限は、設備の能力にもよるが、10-2Paが好ましい。溶接条件は、加速電圧130〜180V、ビーム電流100〜130mA、溶接速度100〜250mm/分の範囲内で、装置の性能や鋼材の厚さに応じて決定する。例えば、厚さ80mmの場合、加速電圧175V、ビーム電流120mA、溶接速度125mm/分程度が推奨される。
電子ビーム溶接を行う際、被溶接部(開先の突合せ部)にNiを含むインサートメタルを配置して挟持する。Niを含むインサートメタルとしては、Ni基合金箔、Ni−Fe合金箔、純Ni箔を使用することができる。
Ni箔を使用すると、鋼材のNi量と目標とする溶接金属中のNi量、及び、鋼材の寸法と溶融金属部の幅から、目標のNi量とするのに必要な、インサートメタルの厚さを簡便に計算することができる。純Ni箔は、必要な厚さの箔を準備してもよいが、薄い箔を必要な厚さになるように、複数枚重ねてもよい。
本発明の鋼材の製造方法について説明する。本発明の鋼材は、素材であるスラブ(鋼片)などの鋼材を加熱し、次いで、熱間圧延及び熱処理などの加工熱処理を施して製造される。鋼材(鋼片)の製造方法は、工業的には、連続鋳造法が好ましい。連続鋳造法によれば、鋳造後の冷却速度を高めて、生成する酸化物とTi窒化物を微細化することができるので、靭性向上の点から、連続鋳造法が好ましい。
一般に、高Mn鋼は、炭素鋼や低合金鋼に比較して熱間加工性が劣るので、適正な条件で、加工熱処理を施す必要がある。本発明においては、まず、前記成分組成の鋼材(鋼片)を、950〜1150℃に加熱する。加熱温度が950℃未満であると、熱間圧延時の変形抵抗が大きくなり、生産性が低下する。一方、1150℃を超えて加熱すると、鋼材(鋼片)のTi窒化物が粗大化して、鋼材(母材)や熱影響部の靱性が低下することがある。
鋼材(鋼片)を950〜1150℃に加熱した後、加工熱処理を施す。加工熱処理は、鋼材の強度及び靱性を高めるために有効で、例えば、(1)制御圧延(CR)、(2)制御圧延−加速冷却(ACC)、(3)圧延後直接焼入れ−焼戻し処理(QT)等の方法がある。本発明では、破壊靭性の向上の点で、(2)制御圧延−加速冷却法、及び、(3)圧延後直接焼入れ−焼戻し処理が好ましい。
未再結晶温度域(約900℃以下)で行う制御圧延は、鋼材の組織を微細化し、強度及び靭性の向上に有効である。本発明では、加工フェライトの生成を防止するため、制御圧延をAr3変態点以上の温度で終了することが好ましい。
特に、制御圧延を行う場合、引き続き、加速冷却を行うと、ベイナイトやマルテンサイトなどの硬質相が生成して、強度が向上する。強度及び靭性を確保するためには、加速冷却の停止温度は400〜600℃が好ましい。圧延後の直接焼入れは、制御圧延の温度域より高温の温度域で熱間圧延を行った後、水冷等によって焼入れる方法である。この方法によれば、通常、強度が上昇するので、焼戻しを行って靭性を確保する。焼戻し温度は400〜600℃が好ましい。
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
(実施例)
表1及び表2に示す成分組成の鋼材を用いて、表3及び表4に示す条件により、鋼材を製造した。鋼材から試験片を採取し、引張試験及びCTOD試験を行い、母材の引張強度及び破壊靭性値を測定した。母材の強度は、板厚1/2部から圧延方向を長手方向として試験片を採取し、JIS Z 2241に基づいて測定した。なお、降伏応力が355〜420MPaであるものを良好と評価した。
鋼材に電子ビーム溶接を施し、I開先の突合せ溶接継手を作製した。電子ビーム溶接は、RPEBW法を採用し、純Ni箔をインサートメタルとして使用し、1mbar程度の真空下で、電圧175V、電流120mA、溶接速度125mm/分程度の条件で行った。溶接ビード幅は3.0〜5.5mmである。溶融金属部から試料を採取し、成分組成を分析した。結果を表5及び表6に示す。
また、溶接継手から、(a)板厚60mm未満の場合は、t(板厚)×2tの試験片、(b)板厚60mm以上の場合は、t(板厚)×tの試験片を、各6本採取した。試験片に、ノッチとして、50%疲労亀裂を、溶融金属部(WM)の中央、融合部(FL)、及び、母材(BM)の各位置に導入した。ノッチを導入した試験片を図6に示す。
試験温度0℃で、CTOD試験を実施し、破壊靭性値δcを求めた。各ノッチ位置で、6本の最低値を、それぞれ、破壊靭性値δWM、δHAZ、δBMとした。なお、電子ビーム溶接継手では、熱影響部の幅が狭いので、融合部にノッチを導入した試験片を用いて熱影響部のCTOD値δHAZを測定した。
表7及び表8に、溶接継手の溶融金属部(WM)のCTOD値δWM、熱影響部(HAZ)のCTOD値δHAZ、母材(BM)のCTOD値δBMに基づくδEM/δBM、及び、δHAZ/δWMを示した。
Figure 2011246808
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Figure 2011246808
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Figure 2011246808
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表1、表5、及び、表7に示すように、発明例の継手No.1〜30は、母材部及び溶融金属部の成分組成、CeEBW、及び、C/CeEBWが、いずれも、本発明の範囲内にあるものであり、母材部(BM)、熱影響部(HAZ)、溶融金属部(WM)の破壊靭性値δcの比、δBM/δWM、及び、δHAZ/δWMが十分な値を示している。
これに対し、表2、表6、及び、表8に示すように、比較例の継手No.31は、C量が少なく、Mn量が多いため、CeEBWが高くなり、熱影響部(HAZ)のCTOD値δHAZが低下し、δHAZ/δWMが不十分である。
継手No.32(比較例)は、C量が多いため、熱影響部(HAZ)のCTOD値δHAZが低下し、δHAZ/δWMが不十分である。
継手No.34(比較例)は、鋼材のMn量が少なく、CeEBWが低いため、母材の強度が低く、溶融金属部(WM)のCTOD値(δWM)が低下し、δBM/δWM及びδHAZ/δWMが大きくなっている。
継手No.33(比較例)は、Si量が多く、熱影響部(HAZ)に脆化相が生成し、HAZのCTOD値δHAZが低く、δHAZ/δWMが不十分である。継手No.35(比較例)は、鋼材のMn量が多く、CeEBWが高いため、熱影響部(HAZ)のCTOD値δHAZが低くなり、δHAZ/δWMが不十分である。
継手No.36及び37(比較例)は、それぞれ、P量、S量が多いため、熱影響部(HAZ)のCTOD値δHAZが低く、δHAZ/δWMが不十分である。継手No.38及び39(比較例)は、それぞれ、Nb量、V量が多いため、熱影響部(HAZ)のCTOD値δHAZが低く、δHAZ/δWMが不十分である。
継手No.40(比較例)は、Ti量が多く、継手No.41(比較例)は、Al量が多く、継手No.42(比較例)は、N量が多い。そのため、酸化物や窒化物に起因して、熱影響部(HAZ)のCTOD値δHAZが低下し、δHAZ/δWMが不十分である。
継手No.43(比較例)は、鋼材のO量が少なく、継手No.44(比較例)は、鋼材のO量が多いため、熱影響部(HAZ)のCTOD値δHAZが低下し、δHAZ/δWMが不十分である。継手No.45〜49(比較例)は、Mg量、Ca量が不適切な例であり、熱影響部(HAZ)のCTOD値δHAZが低く、δHAZ/δWMが不十分である。
継手No.50(比較例)は、鋼材のCeEBWが低く、母材の強度が低下している。継手No.51(比較例)は、鋼材のCeEBWが高いため、熱影響部(HAZ)のCTOD値δHAZが低下し、δHAZ/δWMが不十分である。継手No.52(比較例)は、鋼材のC/CeEBWが高いため、熱影響部(HAZ)のCTOD値δHAZが低く、δHAZ/δWMが不十分である。
継手No.53(比較例)は、溶融金属部(WM)に添加するNi量が少なく、継手No.54(比較例)は、溶融金属部(WM)のCeEBWが低いため、WMのCTOD値δWMが低く、δBM/δWMが大きくなっている。
継手No.55(比較例)は、溶融金属部(WM)に添加するNi量が多く、継手No.56(比較例)は、溶融金属部(WM)のCeEBWが高いため、熱影響部(HAZ)のCTOD値δHAZが低く、δHAZ/δWMが不十分である。
本発明によれば、降伏強度355MPa級の鋼材の電子ビーム溶接継手の溶融金属部及び熱影響部において、母材の破壊靱性に比較して、破壊靭性の劣化が少ないので、各部の破壊靭性が適度にバランスした電子ビーム溶接継手と、該溶接継手を形成でき、洋上風力発電用鉄塔の基礎部分の建設に適した鋼材を安価に提供することができる。よって、本件発明は、大型鋼構造物建設産業において利用可能性が高いものである。

Claims (12)

  1. 鋼材の被溶接部にNiを含むインサートメタルを介在させ、電子ビームを照射して形成する電子ビーム溶接継手であって、上記鋼材が、質量%で、C:0.02〜0.1%、Si:0.05〜0.30%、Mn:1.5〜2.5%、P:0.015%以下、S:0.010%以下、Ti:0.005〜0.015%、N:0.0020〜0.0060%、O:0.0010〜0.0045%を含有し、Al、Nb、及び/又は、Vを、Al:0.015%以下、Nb:0.020%以下、V:0.030%以下に制限し、Mg:0.0003〜0.0027%、Ca:0.0003〜0.0027%を、
    0.0006%≦Mg+Ca≦0.0040%
    を満足するように含有し、残部が鉄及び不可避的不純物からなり、さらに、下記(1)式で定義する電子ビーム溶融部焼入れ性指標CeEBWが0.42〜0.65であることを特徴とする電子ビーム溶接継手。
    CeEBW=C+1/4Mn+1/15Cu+1/15Ni
    +1/5Cr+1/5Mo+1/5V ・・・(1)
    ここで、C、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、及び、Vは、それぞれ、鋼材成分の含有量(質量%)である。
  2. 前記電子ビーム溶融部焼入れ性指標CeEBWに対するC量の比(C/CeEBW)が0.15以下であることを特徴とする請求項1に記載の電子ビーム溶接継手。
  3. 前記鋼材が、さらに、質量%で、Cr:0.50%以下、Mo:0.50%以下、Cu:0.25%以下、Ni:0.50%以下の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の電子ビーム溶接継手。
  4. 前記電子ビーム溶接継手の溶融金属部が、質量%で、C:0.02〜0.1%、Si:0.05〜0.30%、Mn:1.2〜2.4%、P:0.015%以下、S:0.010%以下、Ni:1.0〜2.3%、Ti:0.005〜0.015%、N:0.0020〜0.0060%、O:0.0004〜0.0041%を含有し、Al、Nb、及び/又は、Vを、Al:0.015%以下、Nb:0.020%以下、V:0.030%以下に制限し、Mg:0.0003〜0.0027%、Ca:0.0003〜0.0027%を、
    0.0006%≦Mg+Ca≦0.0040%
    を満足するように含有し、残部が鉄及び不可避的不純物からなり、かつ、前記電子ビーム溶融部焼入れ性指標CeEBWが0.56〜0.73であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子ビーム溶接継手。
  5. 前記溶融金属部が、さらに、Cr:0.50%以下、Mo:0.50%以下、Cu:0.25%以下の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項4に記載の電子ビーム溶接継手。
  6. 前記鋼材の厚さが45〜150mmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子ビーム溶接継手。
  7. 前記電子ビーム溶接継手において、10Pa以下の真空度で溶接した後の溶融金属部のCTOD値δWM、熱影響部のCTOD値δHAZ、母材のCTOD値δBMが、下記(2)式と(3)式を満足することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の電子ビーム溶接継手。
    0.8≦δBM/δWM≦1.25 ・・・(2)
    0.3≦δHAZ/δWM≦1.1 ・・・(3)
    ただし、δWM、δHAZ、及び、δBMは、0℃で三点曲げCTOD試験を6回行ったときのCTOD値の最低値である。
  8. 請求項1に記載の電子ビーム溶接継手を形成する鋼材であって、質量%で、C:0.02〜0.1%、Si:0.05〜0.30%、Mn:1.5〜2.5%、P:0.015%以下、S:0.010%以下、Ti:0.005〜0.015%、N:0.0020〜0.0060%、O:0.0010〜0.0045%を含有し、Al、Nb、及び/又は、Vを、Al:0.015%以下、Nb:0.020%以下、V:0.030%以下に制限し、Mg:0.0003〜0.0027%、Ca:0.0003〜0.0027%を、
    0.0006%≦Mg+Ca≦0.0040%
    を満足するように含有し、残部が鉄及び不可避的不純物からなり、さらに、下記(1)式で定義する電子ビーム溶融部焼入れ性指標CeEBWが0.42〜0.65であることを特徴とする電子ビーム溶接用鋼材。
    CeEBW=C+1/4Mn+1/15Cu+1/15Ni
    +1/5Cr+1/5Mo+1/5V ・・・(1)
    ここで、C、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、及び、Vは、それぞれ、鋼材成分の含有量(質量%)である。
  9. 前記電子ビーム溶融部焼入れ性指標CeEBWに対するC量の比(C/CeEBW)が0.15以下であることを特徴とする請求項8に記載の電子ビーム溶接用鋼材。
  10. 前記鋼材が、さらに、質量%で、Cr:0.50%以下、Mo:0.50%以下、Cu:0.25%以下、Ni:0.50%以下の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項8又は9に記載の電子ビーム溶接用鋼材。
  11. 前記鋼材の厚さが45〜150mmであることを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の電子ビーム溶接用鋼材。
  12. 請求項8〜11のいずれか1項に記載の電子ビーム溶接用鋼材の製造方法であって、請求項8〜10のいずれか1項に記載の成分組成を有する鋼片を、950〜1150℃に加熱し、その後、加工熱処理を施すことを特徴とする電子ビーム溶接用鋼材の製造方法。
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