JP2011246495A - 補体関連障害の予防および処置のためのCRIgポリペプチド - Google Patents

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Abstract

【課題】最近発見されたマクロファージ特異的受容体CRIg、ならびに、例えば、加齢性黄斑変性(AMD)および慢性脈絡膜新生血管(CNV)などの補体が関係している眼の症状を含む、補体が関係している障害の予防および処置におけるその使用を提供すること。
【解決手段】1つの態様においては、本発明は、補体が関係している眼疾患の予防または処置のための方法に関する。これには、その必要がある被験体に、予防有効量または治療有効量の補体阻害因子(例えば、代替補体経路の阻害因子(例えば、CRIgポリペプチドまたはそのアゴニスト))を投与する工程が含まれる。
【選択図】図49

Description

(発明の分野)
本発明は、最近発見されたマクロファージ特異的受容体CRIg(以前はSTIgMAと呼ばれていた)、ならびに、例えば、加齢性黄斑変性(AMD)および慢性脈絡膜新生血管(CNV)などの補体が関係している眼の症状を含む、補体が関係している障害の予防および処置におけるその使用に関する。
(発明の背景)
補体系は、通常は、不活性なプロ酵素の形態で存在している血清糖タンパク質のシリーズから構成される複雑な酵素のカスケードである。3つの主要な経路(古典補体経路と代替補体経路)が補体を活性化させることができ、これらはC3のレベルで統合され、ここでは2種類の類似しているC3転換酵素によって、C3が切断されて、C3aとC3bとなる。補体活性化のさらなる経路であるマンノース結合レクチン(MBL)経路もまた記載されている。
古典補体経路の成分は、Cと数字とで名前がつけられる(例えば、C1、C3)。これらが同定された順番の理由により、最初の4種類の成分は、C1、C4、C2、およびC3と番号が付けられている。代替補体経路の成分は、文字が付けられている(例えば、B、P、D)。切断断片は、補体の表記の後ろに小文字を伴って示される(例えば、C3aおよびC3bはC3の断片である)。不活性なC3bは、iC3bと示される。補体タンパク質のポリペプチド鎖は、成分の後にギリシャ文字を伴って示される(例えば、C3αおよびC3βは、C3のα鎖およびβ鎖である)。C3の細胞膜受容体は、CR1、CR2、CR3、およびCR4と短縮される。
補体系の古典補体経路は、ヒトの免疫応答の体液分岐(humoral branch)の主要なエフェクターである。古典補体経路およびMBL経路の活性化の要因は、標的細胞上の抗原またはレクチンに結合したIgGまたはIgM抗体のいずれかである。抗原への抗体の結合によって抗体上に1つの部位が露出し、これは、第1の補体成分であるC1に対する結合部位である。C1は少なくとも2つの抗原が結合した抗体の露出している領域に結合する。結果として、そのC1rおよびC1sサブユニットが活性化される。活性化されたC1sは次の2つの補体成分C4とC2とが関係している切断を担う。C4は2つの断片に切断される。そのうち、より大きいC4b分子は、すぐ近くの標的膜に付着し、一方、小さいC4a分子は遊離させられる。沈殿したC4b上の露出している部位は、次の補体成分であるC2と相互作用するために利用することができる。先の工程に見られるように、活性化されたC1sはC2分子を2つの断片へと切断し、そのうちC2aは残り、小さいC2b断片は遊離させられる。C4b2aはC3転換酵素としても知られており、これは、膜に結合したままとなる。このC3転換酵素によって、次の補体成分であるC3がその活性な形態へと変換される。
代替補体経路の活性化は、C3bが病原体の細胞壁および他の細胞成分に、そして/またはIgG抗体に結合すると始まる。次いで、B因子が細胞に結合したC3bと結合し、C3bBを形成する。その後、C3bBはB因子によってBbとBaとに分けられて、代替補体経路のC3転換酵素であるC3bBbを形成する。プロペルジン(血清タンパク質)が次いでC3bBbに結合して、C3転換酵素としての機能を担うC3bBbPを形成する。これによりC3分子がC3aとC3bとに酵素によって切断される。この時点で、別の補体系路が活性化される。C3bのいくつかはC3bBbに結合してC3bBb3bを形成する。これは、C5分子をC5aとC5bとに切断することができる。
代替補体経路は、自己増幅経路であり、これは、抗体が存在しない条件下での細菌および他の病原体のクリアランスおよび認識に重要である。この代替補体経路によってもまた、レクチンおよび/または古典補体経路のいずれかによる最初の補体の活性化後に、補体の活性化を増幅することができる。ヒトの代替補体経路の活性化における律速工程は、B因子を切断して代替補体経路のC3転換酵素であるC3bBbを形成するD因子の酵素作用である。(非特許文献1)。アジュバント誘発関節炎(AIA)、およびコラーゲン誘導関節炎(CIA)、ならびに種々の他の疾患および症状における補体の活性化と蓄積との役割については、有力な証拠がある。
最近、代替補体経路の制御の欠損が、溶血性尿毒症症候群(HUS)およびAMDを含む、腎臓疾患および眼疾患の発症と関係付けられた(非特許文献2、www.sciencedirect.comにおいてオンライン上で入手できる)。C3は、マウスにおいてはCNVの発症に不可欠であることが明らかにされている(非特許文献3)。
炎症症状と、関連する組織の損傷、自己免疫疾患、ならびに、補体が関係している疾患における補体系の役割もまた周知である
代替補体経路が、炎症において(非特許文献4)、虚血再潅流後の局所および離れた組織での傷害(Stahlら、前出);成人呼吸窮迫症候群(ARDS、非特許文献5);心肺バイパス手術の間の補体活性化(非特許文献6);皮膚筋炎(非特許文献7);ならびに天疱瘡(非特許文献8)において重要な役割を担っていることが示唆されている。代替補体経路はまた、自己免疫疾患(例えば、ループス腎炎、および結果として生じる糸球体腎炎、および脈管炎(例えば、非特許文献9を参照のこと);ならびに、関節リウマチ、例えば、若年性関節リウマチ(非特許文献10および非特許文献11))にも関係している。
補体の蓄積および活性化の局所的な増加は、疾患の重篤度と相関関係がある(非特許文献12)。C5a受容体アンタゴニスト(例えば、ペプチドおよび有機低分子)は、関節炎(非特許文献13)、および種々の他の免疫炎症性疾患(非特許文献14;非特許文献15の処置について試験されており;そして、複数の会社(例えば、Promics(オーストラリア))によって、同様の適応症におけるC5aアンタゴニストの有効性を試験するためのヒトでの臨床試験が行われている。C5aもまた、皮膚筋炎と天疱瘡とに関係している(非特許文献7)。抗C5aモノクローナル抗体は、心肺バイパス、および心臓麻痺によって誘導される冠動脈内皮機能不全を軽減し(非特許文献16)、コラーゲン誘導関節炎を予防し、そして確立されている疾患を緩和する(非特許文献17)ことが示されている。
オプソニン食作用(opsonophagocytosis)は、粒子の表面上での補体断片の蓄積とそれに続く食細胞による取り込みのプロセスであり、これは、免疫複合体、アポトーシス細胞または細胞破片と、病原体とを含む循環している粒子のクリアランスに重要である(非特許文献18)。組織常在性マクロファージは、補体によって媒介される循環からの粒子のクリアランスにおいて重要な役割を担っていることが知られている。その90%以上が組織常在性マクロファージから構成されているクップファー細胞は、肝門静脈からの血液に途切れることなく曝されており、オプソニン化されたウイルス、腫瘍細胞、細菌、真菌、寄生虫、および有害物質の、消化管からの効率のよいクリアランスのために肝洞様毛細血管に戦略的に配置されている。このクリアランスプロセスは、オプソニンとしての補体C3の存在に大部分が依存する(非特許文献19)。thoestherを介して細菌の表面に結合すると、C3は切断されて、代替補体経路を増幅する。この反応から、マクロファージ上の補体受容体のリガンドとして作用することができるC3断片の更なる蓄積が導かれる。この経路の重要性は、細菌およびウイルス感染に対して、C3を欠失しているヒトが非常に感染を起こしやすいことによって示される(参考文献)。
これまでに特性決定された補体受容体CR1、3、および4は、PKCの活性化またはFc受容体の刺激の後にのみ、C3bと食作用C3オプソニン化粒子とをインターナライズする(非特許文献20;非特許文献21;非特許文献22)。さらに、CR1はマウスのクップファー細胞の表面上では発現されない(非特許文献23)。循環している粒子の恒常的なクリアランスにおいてKCを助ける補体受容体は、これまでのところは記載されていない。
抗C3b(i)抗体は、補体の活性化、C3b(i)の蓄積、およびリツキシマブによるCD20細胞の死滅を促進することが報告されている(非特許文献24)。
Stahlら、American Journal of Pathology,2003年,第162巻,p.449−455 Zipfelら、Mol.Immunol.,2006年,第43巻,p.97−106 Boraら、J.Immunol.,2005年,第174巻,第1号,p.491−7 Mollnesら、Trends in Immunology,2002年,第23巻,p.61−64 Scheinら、Chest,1987年,第91巻,p.850−854 Fungら、J Thorac Cardiovasc Surg,2001年,第122巻,p.113−122 Kissel,JTら、NEJM,1986年,第314巻,p.329−334 Honguchiら、J Invest Dermatol,1989年,第92巻,p.588−592 Watanabeら、J.Immunol.,2000年,第164巻,p.786−794 Aggarwalら、Rheumatology,2000年,第29巻,p.189−192 Neumann E.ら、Arthritis Rheum.,2002年,第4巻,p.934−45 Atkinson,J Clin Invest,2003年,第112巻,p.1639−1641 Woodrufら、Arthritis & Rheumatism,2002年,第46巻,第9号,p.2476−2485 Shortら、Br J Pharmacol,1999年,第126巻,p.551−554 Finchら、J Med Chem,1999年,第42巻,p.1965−1074 Tofukujiら、J.Thorac.Cardiovasc.Surg.,1998年,第116巻,p.1060−1069 Wangら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1995年,第92巻,第19号,p.8955−8959 Gasque,P.,Mol Immunol.,2004年,第41巻,p.1089−1098 Fujitaら、Immunol.Rev.,2004年,第198巻,p.185−202 Carpentierら、Cell Regul,1991年,第2巻,p.41−55 Sengelov,Crit.Rev.Immunol.,1995年,第15巻,p.107−131 Sengelovら、J.Immunol.,1994年,第153巻,p.804−810 Fangら、J.Immunol.,1998年,第160巻,p.5273−5279 Kennedyら、Blood,2003年,第101巻,第3号,p.1071−1079
知られている、種々の疾患における補体カスケードの関与を考慮すると、補体が関係している疾患の予防および/または処置のための新規の薬剤の同定および開発が必要である。
(発明の要旨)
本発明は、補体系と相互作用する補体受容体ファミリーの新規のメンバー、および第1の免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーのメンバーの同定に基づく。
1つの態様においては、本発明は、補体が関係している眼疾患の予防または処置のための方法に関する。これには、その必要がある被験体に、予防有効量または治療有効量の補体阻害因子(例えば、代替補体経路の阻害因子(例えば、CRIgポリペプチドまたはそのアゴニスト))を投与する工程が含まれる。
補体が関係している眼の症状は、例えば、加齢性黄斑変性(AMD)、慢性脈絡膜新生血管(CNV)、ブドウ膜炎、糖尿病、および他の虚血に関係する網膜症、眼内炎、糖尿病黄斑浮腫(diabetic macula edema)、病的近視、フォン・ヒッペル・リンドウ病、眼のヒストプラスマ症(istoplasmosis)、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)、角膜血管新生、網膜血管新生であり得る。好ましくは、補体が関係している眼の症状は、AMDまたはCNVであり、これには、これらの症状の全ての段階が含まれる。
別の態様においては、本発明は、AMDの発症または進行の予防のための方法に関する。これには、少なくとも一方の眼においてAMDを発症するリスクがあるか、または少なくとも一方の眼においてAMDと診断された被験体に、有効量の補体阻害因子(例えば、代替補体経路の阻害因子(例えば、CRIgポリペプチドまたはそのアゴニスト))を投与する工程が含まれる。
なお別の態様においては、本発明は、滲出型AMD(乾式AMD(dry AMD))の処置のための方法に関する。これには、その必要がある被験体に、治療有効量の補体阻害因子(例えば、代替補体経路の阻害因子(例えば、CRIgポリペプチドまたはそのアゴニスト))を投与する工程が含まれる。
全ての実施形態においては、CRIgポリペプチドは、例えば、配列番号2、4、6、および8のCRIgポリペプチド、ならびにそのようなポリペプチドの細胞外ドメイン(ECD)から選択することができる。CRIgポリペプチド(全長のポリペプチドとそれらのECDが含まれる)は、免疫グロブリン配列(例えば、免疫グロブリン重鎖定常領域配列(例えば、Fc領域))に融合させることができ、得られる免疫接着物は、本発明の予防および処置方法においてCRIgアゴニストとして使用することができる。好ましくは、免疫グロブリンは、IgG(例えば、IgG−1またはIgG−2またはIgG−3またはIgG4)であり、より好ましくは、IgG−1またはIgG−3である。IgG1重鎖定常配列には、例えば、少なくとも、ヒンジ、CH1、CH2およびCH3領域、または、ヒンジ、CH2およびCH3領域が含まれ得る。
さらなる態様においては、本発明は、補体が関係している疾患または症状の予防または処置のための方法に関する。これには、その必要がある被験体に、予防有効量または治療有効量の補体阻害因子(例えば、代替補体経路の阻害因子(例えば、CRIgポリペプチドまたはそのアゴニスト))を投与する工程が含まれる。
別の態様においては、本発明は、哺乳動物の中でのC3b補体断片の生産の阻害のための方法に関する。これには、上記哺乳動物に、有効量の補体阻害因子(例えば、代替補体経路の阻害因子(例えば、CRIgポリペプチドまたはそのアゴニスト))を投与する工程が含まれる。
なお別の態様においては、本発明は、哺乳動物の代替補体経路の選択的阻害のための方法に関する。これには、上記哺乳動物に、有効量のCRIgポリペプチドまたはそのアゴニストを投与する工程が含まれる。
全ての態様において、CRIgポリペプチドは、例えば、配列番号2、4、6、8のCRIgポリペプチド、ならびにそのようなポリペプチドの細胞外領域からなる群より選択することができる。アゴニストは、好ましくは、本明細書中で上に記載されたようなCRIg−Ig融合タンパク質(免疫接着物)である。免疫グロブリン配列は、例えば、免疫グロブリン定常領域配列(例えば、免疫グロブリン重鎖の定常領域配列)であり得る。別の実施形態においては、免疫グロブリン重鎖定常領域配列は、配列番号2、4、6、または8のCRIgポリペプチドの細胞外領域に融合させられる。さらなる実施形態においては、免疫グロブリン重鎖定常領域配列は、IgG(例えば、IgG−1またはIgG−3)のものである。この場合、IgG−1重鎖定常領域配列には、例えば、少なくとも、ヒンジ、CH2およびCH3領域、またはヒンジ、CH1、CH2およびCH3領域が含まれ得る。
補体が関係している疾患は、例えば、炎症性疾患または自己免疫疾患であり得る。
1つの特異的な実施形態においては、補体が関係している疾患は、関節リウマチ(RA)、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、虚血再潅流後の離れた組織の傷害、心肺バイパス手術の間の補体活性化、皮膚筋炎、天疱瘡、ループス腎炎および結果として生じる糸球体腎炎および脈管炎、心肺バイパス手術、心臓麻痺によって誘導される冠動脈内皮機能不全、II型膜性増殖性糸球体腎炎、IgA腎症、急性腎不全、クリオグロブリン血症(cryoblobulemia)、抗リン脂質症候群、加齢性黄斑変性、ブドウ膜炎、糖尿病性網膜症、同種移植、超急性拒絶、血液透析、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、アルツハイマー病、アテローム性動脈硬化症、遺伝性血管浮腫、発作性夜間血色素尿症、および吸引性肺炎からなる群より選択される。
別の特異的な実施形態においては、補体が関係している疾患は、炎症性腸疾患(IBD)、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、若年性慢性関節炎、脊椎関節症、全身性硬化症(強皮症)、特発性炎症性筋疾患(皮膚筋炎、多発性筋炎)、シェーグレン症候群、全身性血管炎、サルコイドーシス、自己免疫性溶血性貧血(免疫性汎血球減少症、発作性夜間血色素尿症)自己免疫性血小板減少症(特発性血小板減少性紫斑病、免疫性血小板減少症)、甲状腺炎(グレーヴス病、橋本病甲状腺炎、若年性リンパ球性甲状腺炎、萎縮性甲状腺炎)、真性糖尿病、免疫性腎疾患(糸球体腎炎、尿細管間質性腎炎)、中枢神経系および末梢神経系の脱髄疾患(例えば、多発性硬化症、特発性多発性神経障害)、肝胆汁性疾患(例えば、感染性肝炎(A、B、C、D、E型肝炎、および他の非肝臓向性ウイルス))、自己免疫性慢性活動性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、肉芽腫性肝炎、および硬化性胆管炎、炎症性および繊維性肺疾患(例えば、嚢胞性線維症)、グルテン過敏性腸疾患、ウィップル病、自己免疫性または免疫性皮膚疾患(水胞性皮膚疾患、多形性紅斑、および接触皮膚炎が含まれる)、乾癬、肺のアレルギー性疾患(例えば、好酸球性肺炎、特発性肺線維症、および過敏性肺炎)、移植に伴う疾患(移植拒絶および移植片対宿主病が含まれる)からなる群より選択される。
なお別の特異的な実施形態においては、補体が関係している疾患は関節リウマチ(RA)、乾癬、または喘息である。
全ての実施形態においては、被験体は哺乳動物であり得、例えば、ヒト患者である。
さらなる態様においては、本発明は、被験体の加齢性黄斑変性(AMD)または慢性脈絡膜新生血管(CNV)の予防または処置のための方法に関する。これには、被験体に、有効量の補体阻害因子(例えば、代替補体経路の阻害因子(例えば、CRIgポリペプチドまたはそのアゴニスト))を投与する工程が含まれる。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
補体が関係している眼の症状の予防または処置のための方法であって、その必要がある被験体に、予防有効量または治療有効量の補体阻害因子を投与する工程を含む方法。
(項目2)
前記補体阻害因子が代替補体経路の選択的阻害因子である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記補体阻害因子がCRIgポリペプチドまたはそのアゴニストである、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記CRIgポリペプチドが、配列番号2、4、6、8のCRIgポリペプチド、および前記ポリペプチドの細胞外ドメイン(ECD)からなる群より選択される、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記CRIgポリペプチドが、配列番号2、4、6、または8のCRIgポリペプチドのECDである、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記CRIgポリペプチドが、配列番号4または6のCRIgポリペプチドのECDである、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記CRIgポリペプチドが免疫グロブリン配列に融合されている、項目3に記載の方法。
(項目8)
前記免疫グロブリン配列が免疫グロブリン定常領域配列である、項目7に記載の方法。
(項目9)
前記免疫グロブリン定常領域配列が免疫グロブリン重鎖のものである、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記免疫グロブリン重鎖定常領域配列が、CRIg−Ig融合タンパク質が生産されるように配列番号2、4、6、または8のCRIgポリペプチドの細胞外領域に融合されている、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記免疫グロブリン定常領域配列がIgGのものである、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記IgGがIgG−1またはIgG−3である、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記IgG−1重鎖定常領域配列に、少なくとも、ヒンジ、CH2、およびCH3領域が含まれている、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記IgG−1重鎖定常領域配列に、ヒンジ、CH1、CH2、およびCH3領域が含まれている、項目12に記載の方法。
(項目15)
前記CRIg−Ig融合タンパク質には、CRIg配列とIg配列との間にリンカーが含まれている、項目10に記載の方法。
(項目16)
前記CRIg−Ig融合タンパク質が、配列番号20、21、25、26、27、および28からなる群より選択される核酸によってコードされる、項目10に記載の方法。
(項目17)
前記補体が関係している眼の症状が、加齢性黄斑変性(AMD)、慢性脈絡膜新生血管(CNV)、ブドウ膜炎、糖尿病性網膜症および他の虚血が関係している網膜症、眼内炎、糖尿病黄斑浮腫、病的近視、フォン・ヒッペル・リンドウ病、眼のヒストプラスマ症、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)、角膜血管新生、および網膜血管新生からなる群より選択される、項目1に記載の方法。
(項目18)
前記補体が関係している眼疾患が、加齢性黄斑変性(AMD)または慢性脈絡膜新生血管(CNV)である、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記方法にCNVの予防が含まれる、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記方法にAMDの進行の予防が含まれる、項目18に記載の方法。
(項目21)
前記方法にAMDのCNVへの進行の予防が含まれる、項目20に記載の方法。
(項目22)
加齢性黄斑変性(AMD)の発症または進行の予防のための方法であって、少なくとも一方の眼においてAMDを発症するリスクがあるか、または少なくとも一方の眼においてAMDと診断された被験体に、有効量のCRIgポリペプチドまたはそのアゴニストを投与する工程を含む方法。
(項目23)
前記CRIgポリペプチドが、配列番号2、4、6、または8のポリペプチドの細胞外ドメインである、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記CRIgポリペプチドが、配列番号4または6のポリペプチドの細胞外ドメインである、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記アゴニストが、免疫グロブリン配列に融合されたCRIgポリペプチド配列を含む融合ポリペプチドである、項目22に記載の方法。
(項目26)
前記融合ポリペプチドに、免疫グロブリン重鎖定常領域配列に融合された、配列番号4または6のポリペプチドの細胞外ドメインが含まれている、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記融合ポリペプチドが、配列番号20、21、25、26、27、および28のヌクレオチド配列によってコードされる融合ポリペプチドからなる群より選択される、項目26に記載の方法。
(項目28)
前記被験体がヒトである、項目22〜27のいずれか1項に記載の方法。
(項目29)
前記ヒト被験体が、少なくとも一方の眼にAMDを有していると診断されている、項目28に記載の方法。
(項目30)
前記AMDが、カテゴリー3またはカテゴリー4の乾式AMDである、項目29に記載の方法。
(項目31)
前記被験体がCNVを発症するリスクがあると同定されている、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記被験体が遺伝的にCNVを発症するリスクがある、項目31に記載の方法。
(項目33)
前記ヒト被験体が、両方の眼にAMDを有していると診断されている、項目30に記載の方法。
(項目34)
前記ヒト被験体が両方の眼にカテゴリー3またはカテゴリー4のAMDを有している、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記投与によってAMDの進行が遅くなる、項目28に記載の方法。
(項目36)
前記投与によってAMDのCNVへの進行が遅くなる、項目28に記載の方法。
(項目37)
前記投与によってAMDのCNVへの進行が妨げられる、項目28に記載の方法。
(項目38)
前記ヒト被験体が一方の眼だけにAMDを有していると診断されている、項目29に記載の方法。
(項目39)
前記投与によって他方の眼のAMDの発症が遅れる、項目38の方法。
(項目40)
前記投与によって、他方の眼のAMDの発症が妨げられる、項目38の方法。
(項目41)
前記投与が硝子体内注射によって行われる、項目28に記載の方法。
(項目42)
AMDまたはCNVの予防または処置のためのさらなる薬剤の投与をさらに含む、項目28に記載の方法。
(項目43)
前記さらなる薬剤が抗VEGF−A抗体である、項目42に記載の方法。
(項目44)
乾式加齢性黄斑変性(AMD)の処置のための方法であって、その必要がある被験体に、予防有効量または治療有効量のCRIgポリペプチドまたはそのアゴニストを投与する工程を含む方法。
(項目45)
前記CRIgポリペプチドが、配列番号2、4、6、8のCRIgポリペプチド、および前記ポリペプチドの細胞外ドメイン(ECD)からなる群より選択される、項目44に記載の方法。
(項目46)
前記CRIgポリペプチドが、配列番号2、4、6、または8のCRIgポリペプチドの細胞外領域である、項目45に記載の方法。
(項目47)
前記CRIgポリペプチドが、配列番号4または6のCRIgポリペプチドの細胞外領域である、項目46に記載の方法。
(項目48)
前記CRIgポリペプチドが免疫グロブリン配列に融合されている、項目45に記載の方法。
(項目49)
前記免疫グロブリン配列が免疫グロブリン定常領域配列である、項目48に記載の方法。
(項目50)
前記免疫グロブリン定常ドメイン配列が免疫グロブリン重鎖のものである、項目49に記載の方法。
(項目51)
前記免疫グロブリン重鎖定常領域配列が、配列番号2、4、6、または8のCRIgポリペプチドの細胞外ドメイン(ECD)に融合されている、項目50に記載の方法。
(項目52)
前記免疫グロブリン定常領域配列がIgGのものである、項目51に記載の方法。
(項目53)
前記IgGがIgG−1またはIgG−3である、項目52に記載の方法。
(項目54)
前記IgG−1重鎖定常領域配列に、少なくともヒンジ、CH2、およびCH3領域が含まれている、項目53に記載の方法。
(項目55)
前記IgG−1重鎖定常領域配列に、ヒンジ、CH1、CH2、およびCH3領域が含まれている、項目53に記載の方法。
(項目56)
補体が関係している疾患または症状の予防または処置のための方法であって、そのような処置が必要である被験体を、予防有効量または治療有効量のCRIgポリペプチドまたはそのアゴニストで処置する工程を含む方法。
(項目57)
前記CRIgポリペプチドが、配列番号2、4、6、8のCRIgポリペプチド、およびそのようなポリペプチドの細胞外領域からなる群より選択される、項目56に記載の方法。
(項目58)
前記CRIgポリペプチドが免疫グロブリン配列に融合されている、項目57に記載の方法。
(項目59)
前記免疫グロブリン配列が免疫グロブリン定常領域配列である、項目58に記載の方法。
(項目60)
前記免疫グロブリン定常領域配列が免疫グロブリン重鎖のものである、項目59に記載の方法。
(項目61)
前記免疫グロブリン重鎖定常領域配列が、配列番号2、4、6、または8のCRIgポリペプチドの細胞外ドメイン(ECD)に融合されている、項目60に記載の方法。
(項目62)
前記免疫グロブリン重鎖定常領域配列がIgGのものである、項目61に記載の方法。
(項目63)
前記IgGがIgG−1およびIgG−3から選択される、項目62に記載の方法。
(項目64)
前記IgG−1重鎖定常領域配列に、少なくともヒンジ、CH2、およびCH3領域が含まれている、項目62に記載の方法。
(項目65)
前記IgG−1重鎖定常領域配列に、ヒンジ、CH1、CH2、およびCH3領域が含まれている、項目62に記載の方法。
(項目66)
前記補体が関係している疾患が炎症性疾患または自己免疫疾患である、項目56に記載の方法。
(項目67)
前記補体が関係している疾患が、関節リウマチ(RA)、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、虚血再潅流後の離れた組織の傷害、心肺バイパス手術の間の補体活性化、皮膚筋炎、天疱瘡、ループス腎炎および結果として生じる糸球体腎炎および脈管炎、心肺バイパス手術、心臓麻痺によって誘導される冠動脈内皮機能不全、II型膜性増殖性糸球体腎炎、IgA腎症、急性腎不全、クリオグロブリン血症、抗リン脂質症候群、加齢性黄斑変性、ブドウ膜炎、糖尿病性網膜症、同種移植、超急性拒絶、血液透析、慢性閉塞性肺窮迫症候群(COPD)、喘息、吸引性肺炎、蕁麻疹、慢性特発性蕁麻疹、溶血性尿毒症症候群、子宮内膜症、心原性ショック、虚血再潅流損傷、ならびに多発性硬化症(MS)からなる群より選択される、項目66に記載の方法。
(項目68)
前記補体が関係している疾患が、炎症性腸疾患(IBD)、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、若年性慢性関節炎、脊椎関節症、全身性硬化症(強皮症)、特発性炎症性筋疾患(皮膚筋炎、多発性筋炎)、シェーグレン症候群、全身性血管炎、サルコイドーシス、自己免疫性溶血性貧血(免疫性汎血球減少症、発作性夜間血色素尿症)自己免疫性血小板減少症(特発性血小板減少性紫斑病、免疫性血小板減少症)、甲状腺炎(グレーヴス病、橋本病甲状腺炎、若年性リンパ球性甲状腺炎、萎縮性甲状腺炎)、真性糖尿病、免疫性腎疾患(糸球体腎炎、尿細管間質性腎炎)、中枢神経系および末梢神経系の脱髄疾患(例えば、多発性硬化症、特発性多発性神経障害)、肝胆汁性疾患(例えば、感染性肝炎(A、B、C、D、E型肝炎、および他の非肝臓向性ウイルス))、自己免疫性慢性活動性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、肉芽腫性肝炎、および硬化性胆管炎、炎症性および繊維性肺疾患(例えば、嚢胞性線維症)、グルテン過敏性腸疾患、ウィップル病、自己免疫性または免疫性皮膚疾患(水胞性皮膚疾患、多形性紅斑、および接触皮膚炎が含まれる)、乾癬、肺のアレルギー性疾患(例えば、好酸球性肺炎、特発性肺線維症、および過敏性肺炎)、移植に伴う疾患(移植拒絶および移植片対宿主病が含まれる)、アルツハイマー病、発作性夜間血色素尿症、遺伝性血管浮腫、ならびにアテローム性動脈硬化症からなる群より選択される、項目66に記載の方法。
(項目69)
前記補体が関係している疾患が、関節リウマチ(RA)、乾癬、または喘息である、項目66に記載の方法。
(項目70)
前記被験体が哺乳動物である、項目57に記載の方法。
(項目71)
前記哺乳動物がヒトである、項目70に記載の方法。
(項目72)
哺乳動物でのC3b補体断片の生産の阻害のための方法であって、前記哺乳動物に有効量のCRIgポリペプチドまたはそのアゴニストを投与する工程を含む方法。
(項目73)
前記CRIgポリペプチドが、配列番号2、4、6、8のCRIgポリペプチド、およびそのようなポリペプチドの細胞外領域からなる群より選択される、項目72に記載の方法。
(項目74)
前記CRIgポリペプチドが免疫グロブリン配列に融合されている、項目73に記載の方法。
(項目75)
前記免疫グロブリン配列が免疫グロブリン定常領域配列である、項目74に記載の方法。
(項目76)
前記免疫グロブリン定常領域配列が免疫グロブリン重鎖のものである、項目75に記載の方法。
(項目77)
前記免疫グロブリン重鎖定常領域配列が、配列番号2、4、6、または8のCRIgポリペプチドの細胞外ドメイン(ECD)に融合されている、項目76に記載の方法。
(項目78)
前記免疫グロブリン重鎖定常領域配列がIgGのものである、項目76に記載の方法。
(項目79)
前記IgGがIgG−1およびIgG−3から選択される、項目78に記載の方法。
(項目80)
前記IgG−1重鎖定常領域配列に、少なくともヒンジ、CH2、およびCH3領域が含
まれている、項目79に記載の方法。
(項目81)
前記IgG−1重鎖定常領域配列に、ヒンジ、CH1、CH2、およびCH3領域が含まれている、項目79に記載の方法。
(項目82)
哺乳動物での代替補体経路の選択的阻害のための方法であって、前記哺乳動物に有効量のCRIgポリペプチドまたはそのアゴニストを投与する工程を含む方法。
図1A〜1Bは、321アミノ酸のヒトCRIgポリペプチドのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列(それぞれ、配列番号1および2)を示す。 図1A〜1Bは、321アミノ酸のヒトCRIgポリペプチドのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列(それぞれ、配列番号1および2)を示す。 図2A〜2Bは、自然界に存在しているヒトCRIgの399アミノ酸の全長形態(huCRIgまたはhuCRIg−long)のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列(それぞれ、配列番号3および4)を示す。 図2A〜2Bは、自然界に存在しているヒトCRIgの399アミノ酸の全長形態(huCRIgまたはhuCRIg−long)のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列(それぞれ、配列番号3および4)を示す。 図3A〜3Bは、自然界に存在しているヒトCRIgの305アミノ酸の短い形態(huCRIg−short)のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列(それぞれ、配列番号5および6)を示す。 図3A〜3Bは、自然界に存在しているヒトCRIgの305アミノ酸の短い形態(huCRIg−short)のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列(それぞれ、配列番号5および6)を示す。 図4A〜4Cは、280アミノ酸の自然界に存在しているマウスCRIg(muCRIg)のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列(それぞれ、配列番号7および8)を示す。 図4A〜4Cは、280アミノ酸の自然界に存在しているマウスCRIg(muCRIg)のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列(それぞれ、配列番号7および8)を示す。 図4A〜4Cは、280アミノ酸の自然界に存在しているマウスCRIg(muCRIg)のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列(それぞれ、配列番号7および8)を示す。 図5は、muCRIg(配列番号8)とともにアラインメントした、全長のhuCRIg(配列番号4)およびhuCRIg−short(配列番号6)のアミノ酸配列を示す。疎水性シグナル配列IgV、IgC、および膜貫通領域を示す。muCRIgは、推定される1つのN結合グリコシル化部位を170位(NGTG)に有している。ヒトCRIg遺伝子のエキソン−イントロン境界に由来すると推定されるIgドメインの境界を示す。 図6は、マウスの肝臓凍結切片でのCRIgのインサイチュハイブリダイゼーションを示す。 図7は、ヒトの肝臓凍結切片でのCRIgのインサイチュハイブリダイゼーションを示す。 図8は、活性化させられた結腸および副腎のマクロファージ、クップファー細胞、ならびに胎盤のホーフバウワー細胞でのCRIgのインサイチュハイブリダイゼーションを示す。 図9は、RA滑膜細胞でのCRIg mRNAのインサイチュハイブリダイゼーションを示す。 図10は、脳の小グリア細胞でのCRIg mRNAのインサイチュハイブリダイゼーションを示す。 図11は、ヒトの喘息にかかった組織に由来する細胞でのCRIg mRNAのインサイチュハイブリダイゼーションを示す。 図12は、ヒトの慢性肝炎組織に由来する細胞でのCRIg mRNAのインサイチュハイブリダイゼーションを示す。 図13は、副腎マクロファージでのCRIgの免疫組織化学的分析を示す。 図14は、肝臓のクップファー細胞でのCRIgの免疫組織化学的分析を示す。 図15は、脳の小グリア細胞でのCRIgの免疫組織化学的分析を示す。 図16は、胎盤のホーフバウワー細胞でのCRIgの免疫組織化学的分析を示す。 種々の組織の中でのhuCRIgの発現を示すノーザンブロット分析。1.5kbと1.8kbとの2種類の転写物が、CRIgを発現するヒト組織に存在していた。 (A)骨髄単核細胞株HL60およびTHP−1、ならびに分化したマクロファージの中でのhuCRIgの発現の増加を示すTAQMAN(登録商標)PCR分析。低レベルの発現がJurkat T細胞、MOLT3、MOLT4、およびRAMOS B細胞株で見られた。(B)インビトロでの単球の分化の間のhuCRIg mRNAの発現の増加。ヒトの末梢血から単離した単球を、7日間、プラスチックに接着させることによって分化させた。全RNAを、分化の間の様々な時点で抽出した。(C)単球からマクロファージへの分化の間のhuCRIgタンパク質の発現の増加。単球は(B)で示したように処理し、細胞溶解物の全てをゲル上で泳動させ、ニトロセルロース膜に移動させ、これをhuCRIgに対するポリクローナル抗体(4F7)とともにインキュベートした。ポリクローナル抗体は、48kDaおよび38kDaのバンドを認識し、おそらくこれらは,huCRIgの長い形態と短い形態とを示している。 細胞株でのhuCRIgタンパク質分子の特性決定。(A)huCRIg−gdを293E細胞で一時的に発現させ、抗gdで免疫沈降させ、ブロットを抗gdまたはCRIgの細胞外ドメインに対するポリクローナル抗体とともにインキュベートした。(B)293細胞で発現されたhuCRIgは単量体のN−グリコシル化タンパク質である。CRIgはHEK293細胞をパーバナデートナトリウム(sodium pervanadate)で処理してリン酸化されたチロシンであるが、Sykキナーゼは動員しない。リン酸化されたCRIgはリン酸化されていないCRIgと比較するとわずかに大きい分子量に移動した。 図20は、ヒト単球由来マクロファージ上でのhuCRIgの選択的発現。末梢血単核細胞を、B細胞、T細胞、NK細胞、単球に特異的な抗体、およびCRIgに対するALEXA(商標)A488結合モノクローナル抗体(3C9)で染色した。発現は、末梢血白血球の全て、ならびに単球由来の樹状細胞においては存在しなかったが、インビトロで分化させられたマクロファージで発現されていた。 CRIg mRNAおよびタンパク質発現は、IL−10およびデキサメタゾンによって増加した。(A)実時間PCRはIL−10での処理後のCRIg mRNAの発現の増加を示し、TGF−βがデキサメタゾンによっては大きく誘導されたが、LPS、IFNγ、およびTNFαでの処理によってはダウンレギュレートされた。(B)Ficollで分離した末梢血単核細胞を種々のサイトカインおよびデキサメタゾンで5日間処理し、抗CD14および抗CRIgで二重染色した。フロー分析は、デキサメタゾンで処理し、IL−10およびLPSで処理した後の、単球の表面上でのCRIgの発現の劇的な増加を示している。 CRIg mRNAおよびタンパク質発現は、IL−10およびデキサメタゾンによって増加した。(A)実時間PCRはIL−10での処理後のCRIg mRNAの発現の増加を示し、TGF−βがデキサメタゾンによっては大きく誘導されたが、LPS、IFNγ、およびTNFαでの処理によってはダウンレギュレートされた。(B)Ficollで分離した末梢血単核細胞を種々のサイトカインおよびデキサメタゾンで5日間処理し、抗CD14および抗CRIgで二重染色した。フロー分析は、デキサメタゾンで処理し、IL−10およびLPSで処理した後の、単球の表面上でのCRIgの発現の劇的な増加を示している。 単球由来マクロファージでのCRIgの細胞内局在化。単球を、マクロファージ分化培地で7日間培養し、アセトン中に固定し、ポリクローナル抗CRIg抗体6F1またはCD63および二次ヤギ抗ウサギFITCで染色した。細胞を、共焦点顕微鏡において試験した。CRIgは細胞質中に見られ、リソソーム膜タンパク質CD63と一緒に局在化していた。CRIgはまた、F−アクチンのパターンと同様のパターンでマクロファージの先頭および末の端でも発現されていた。目盛り棒=10μm。 慢性炎症性疾患におけるCRIg mRNAの局在化。インサイチュハイブリダイゼーションによって、肺炎患者(A、B)、または慢性喘息の患者(C、D)の組織から得た肺胞マクロファージでのCRIg mRNAの存在を示した。CRIg mRNAはまた、慢性肝炎の患者の肝臓生検によって得た組織中の肝臓クップファー細胞(E、F)においても発現されていた。 CRIg mRNAの発現は炎症を起こしている滑膜において増加していた。CRIg mRNAは、関節に炎症を起こしていない患者(A、C)のひざの代替手術によって得た関節の滑膜においては低いかまたは存在していなかったが、変形性関節症の患者(B、D)のパンヌスにおいては、細胞(おそらくは、滑膜細胞または滑膜マクロファージ)において高く発現されていた。 変形性関節疾患の患者の滑膜を内層している細胞でのポリクローナル抗体6F1を用いたCRIgタンパク質の検出(A、B、C)。CRIgの免疫組織化学的検出は対照の滑膜においては見られなかった(D)。 CRIgタンパク質は、組織常在性マクロファージのサブタイプで発現されており、その発現は慢性炎症性疾患において増加していた。(A)CRIgはCRIgを安定して発現するCHO細胞の膜上で発現されていた。CRIgタンパク質の高い発現が、慢性喘息の患者から得た組織の中の肺胞マクロファージ(B)で見られた。(C)ヒトの小腸の組織球でのCRIgの発現。切片は外科手術によって取り出した組織から得、これには腫瘍が含まれている可能性があった。(D)ヒトの出産予定日以前の胎盤のホーフバウワー細胞でのCRIgタンパク質の発現。マクロファージでのCRIgタンパク質の高い発現が、副腎の中(E)およびヒトの肝臓のクップファー細胞の中(F)に存在していた。染色を、5μmの厚さのアセトンで固定した切片についてDABを色原体として使用して行った。画像を、20×および40×の倍率で撮影した。 アテローム性動脈硬化症の患者から得た血管プラーク(vascular plaque)上でのCD68およびCRIgの免疫組織化学的染色。連続する切片を固定し、ヒトCD68に対するモノクローナル抗体(A、B)と、ヒトCRIgに対して惹起させたポリクローナル抗体6F1(C、D)とで染色した。CRIgは、アテローム性プラークの中に存在するマクロファージの集団およびphoam細胞の集団において明らかになり、連続する切片上での染色から判断するとCD68ポジティブマクロファージと重複していた。倍率:10×(A、C)および20×(B、D)。 心臓間質性マクロファージ上でのCRIgとCD68との同時染色。5μmの切片をヒトの心臓(死体解剖)から入手し、CRIgに対するモノクローナル抗体(3C9)と二次抗マウスFITC標識抗体とで染色した。CD68を、CD68に対するPE標識モノクローナル抗体での染色によって検出した。倍率:20×。 CRIg mRNAのレベルは、潰瘍性大腸炎、クローン病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、および喘息の患者から得た結腸組織で顕著に高かった。実時間PCRを種々の組織から抽出した全RNAについて行った。CRIgのmRNAは、潰瘍性大腸炎、クローン病、およびCOPDの患者から得た組織においては顕著に増大していた。統計分析を、マンホイットニーU検定を使用して行った。 ヒトCRIgを発現する細胞は、ヒト内皮細胞に対する接着の増加を示した。(A)CRIgはヒトJurkat T細胞株で安定に発現されていた。(B)細胞を蛍光色素BCECF(Molecular Probes,Oregon)とともにプレロードし、10ng/mlのTNFαで処理したかまたは処理しなかったヒトの臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の単層をコーティングした96ウェルプレートに添加した。3回の洗浄後、蛍光を、蛍光分光計でカウントし、これにより、HUVEC細胞に対して接着したままである細胞の数を明らかにした。グラフは、4回の独立する実験の典型的なものである。 muCRIg IgG−Fc融合タンパク質によるコラーゲン誘導関節炎(CIA)のマウスモデルの進行の阻害。(CIA)マウスの1つのグループ(n=7)に、100μgのmuCRIg IgG−Fc融合タンパク質(四角)を投与し、一方、CIAマウスの対照グループ(n=8)には、100μgのマウスIgG1(丸)を、6週間にわたって1週間に3回投与した。マウスを、炎症の兆候について毎日観察し、0〜16の尺度(実施例25に詳細に記載)でスコアし、そして結果をグラフにプロットした(平均±SD、スチューデントT検定 対照IgG1対試験muCRIgタンパク質については、p値=0.0004)。 図32は、DNA42257(コンセンサス配列)のヌクレオチド配列(配列番号9)である。 図33は、CRIg−Fcで処置したマウスの関節の腫れの軽減を示している。 図34は、muCRIgが関節の炎症を阻害することを示している。 図35は、muCRIg−Fcで処置したマウスの関節における皮質骨量の保存を示している。 図36は、CRIg−Fcでの処置によっては組織常在性マクロファージの数も形態も変化しないことを示している。 図37は、muCRIgでの処置によっては血清抗コラーゲン抗体力価に影響はないことを示している。 図38は、muCRIgはインビボでのT依存性B細胞応答を変化させないことを示している。 図39は、凍結した脱灰関節でのF4/80染色によって生じた、抗体誘導関節炎(AIA)後の関節におけるマクロファージの浸潤を示している。 図40は、CRIg−FcがBalb/cマウスの抗体誘導関節炎後の関節の腫れを防ぐことを示している。 図41は、muCIRgが抗体誘導関節炎における関節の炎症を阻害することを示している。 図42は、マウスCRIg−Fc融合タンパク質がC3オプソニン化ヒツジ赤血球(E−IgM)に結合することを示している。 図43は、E−IgMに対するヒトCRIg−Fcの結合がC3依存性であることを示している。 図44は、CRIgを発現するCHO細胞に対する血清オプソニン化粒子の結合を示している。 図45は、マウスCRIg−Fcが補体C3bおよびiC3bには結合するが、C2、C4、C3c、およびC3dには結合しないことを示している。 図46は、マウスおよびヒトCRIg−Fcが補体C3b、C3bi、およびC3cには結合するが、C1、C2、C4、C3a、およびC3dには結合しないことを示している。 図47Aは、マウスおよびヒトCRIg−FcがザイモサンのC3の蓄積を阻害することを示している。図47Bは、マウスCRIg−Fcが血清でのC3の活性化を阻害することを示している。 図48は、マウスCRIgが代替補体経路によって誘導される溶血反応は阻害するが、古典補体経路の溶血反応には影響を及ぼさないことを示している。 図48は、マウスCRIgが代替補体経路によって誘導される溶血反応は阻害するが、古典補体経路の溶血反応には影響を及ぼさないことを示している。 図49は、CRIg ECDがC3およびC5の代替補体経路の転換酵素を阻害することを示している。(A)CRIgはC1q欠損血清中のウサギ赤血球の溶血反応(代替補体経路)は阻害するが、fB欠損血清中のIgMオプソニン化ヒツジ赤血球の溶血反応(古典補体経路)は阻害しない。(B)CRIgは液相C3転換酵素活性を阻害する。(C)CRIgは、I因子によって媒介されるC3の切断の補因子としては機能しない。(D)CRIgはC3転換酵素のデコイの加速因子としては機能しない。(E)CRIg、はザイモシン粒子上に形成される代替補体経路のC5転換酵素を阻害する。 CRIgは組織常在性マクロファージのサブ集団上で選択的に発現される。(A)CRIgは、1つの(ヒトCRIg short(muCRIg(S))およびマウスCRIg(muCRIg)、または2つの(huCRIgL)免疫グロブリンドメインから構成されている膜貫通免疫グロブリンスーフパーファミリーの1つのメンバーである。左側のパネルの上部の尺度は、アミノ酸の大きさを示している。右側のパネルは、huCRIgとmuCRIgとが関節の接着分子−A(JAM−A)およびA33抗原と遠く関係していることを示している。右側のパネルの上部の目盛りは、アミノ酸の類似性の割合(%)を示している。(B)CRIgは、マクロファージでは発現されているが、単球では発現されていない。10%の自己血清および20%のウシ胎児血清で7日間培養したヒトCD14+単球とCD14+単球とを、抗ヒトCRIg MAb(3C9)を使用してフローサイトメトリーによってhuCRIg染色について分析した。マウスCD11b+およびF4/80+肝臓クップファー細胞は、抗muCRIg MAb(14G6)を使用してmuCRIg染色について分析した。(C)ヒトおよびマウスのマクロファージのウェスタンブロット分析。示した時間培養したヒトCD14+単球由来の溶解物またはマウスの末梢マクロファージを、還元性のSDS緩衝液中で沸騰させ、4〜10%のTris−グリシンゲル上にロードし、ポリクローナル抗CRIg抗体(6F1、左側のパネル)または抗muCRIgモノクローナル抗体(14C6、右側のパネル)とともにインキュベートした。プレ−免疫IgG(左側のパネル)およびラットIgG2b(右側のパネル)を、イソ型対照として使用した。左側のパネルの矢印は、57kDaと50kDaとのバンドの位置を示しており、これらはおそらく、huCRIg(L)とhuCRIg(S)とを示している。(D)肝臓クップファー細胞上でのCRIgとCD68の共局在。免疫染色を、ヒトおよびマウスの肝臓から得た切片について、モノクローナル抗CRIg(3C9ヒトおよび14G6マウス)、ならびにモノクローナル抗CD68抗体を使用して行った。 末梢血白血球上でのCRIgの発現のフローサイトメトリー分析、およびCRIgを発現するCHO細胞に対するC3断片C3オプソニン化粒子の結合の分析。(A)ヒトおよびマウスの、ヒト末梢白血球およびマウス末梢白血球上でのCRIgの発現についてのフローサイトメトリー分析。(B)マウスCRIgを発現するCHO細胞に対する可溶性C3断片または補体オプソニン化病原体の結合。JAM−2を発現するCHO細胞に対しては結合しない。懸濁液中の細胞をA488標識補体オプソニン化粒子と共に、室温で30分間、連続回転下でインキュベートした。細胞を3回洗浄し、粒子の結合を、フローサイトメトリー分析によってモニターした。結果は、3回の別々の実験の典型である。 可溶性CRIgおよび細胞表面で発現されたCRIgは溶液中または細胞表面に堆積したC3断片に結合する。(A)CRIg(L)でトランスフェクトしたJurkat細胞(Jurkat−CRIg)は、C3およびIgMオプソニン化ヒツジ赤血球(E−IgM)とロゼット(rosette)を形成するが、空のベクターでトランスフェクトしたJurkat細胞(Jurkat−対照)はこれを形成しない。柱状グラフ(左側のパネル)は、ヒトCRIg(L)で安定にトランスフェクトされたJurkat細胞上でのCRIgの発現を示している。C3欠損(C3−)血清またはC3十分(C3+)血清でオプソニン化したE−IgMを、CRIgまたは対照ベクターでトランスフェクトしたJurkatと共に1時間混合した。実験は、3回の別々の実験の典型である。(B)IgMオプソニン化ヒツジ赤血球(E−IgM)に対するCIg(L)−Fcの結合は血清中のC3の存在に依存している。E−IgMを、漸増濃度の精製したヒトC3を添加したC3枯渇ヒト血清でオプソニン化した。その後、E−IgMをhuCRIg(L)−Fcタンパク質と共にインキュベートし、続いてこれを、フローサイトメトリーによって検出した抗ヒトFcポリクローナル抗体で検出した。実験は、3回の別々の実験の典型である。(C)C3bおよびiC3bに対するCRIg(L)−FcおよびCRIg(S)−Fcの結合を示すELISA。漸増濃度のhuCRIg(L)−FcおよびhuCRIg(S)−Fc融合タンパク質を、精製したC3bおよびiC3bをコーティングしたmaxisorbプレートに添加した。結合は、HRPO結合抗huFc抗体を使用して検出した。示す結果は、融合タンパク質と精製した補体成分との異なるバッチを使用した4回の別々の実験の典型である。(D)huCRIg(L)−Fcに対する可溶性C3b二量体の結合を示す運動速度論的な結合データ。CRIg融合タンパク質に対するC3bの親和性は、表面プラズモン共鳴を使用して決定した。CRIgタンパク質をFc融合タグに対して指向させた抗体のアミンカップリングによってCM5センサーチップの上に捕捉した。その後、二量体C3bを、飽和に到達させるために十分な時間をかけて注入した。Kdは、濃度に対してプロットした、平衡時の応答を示す結合曲線から計算した。C3b二量体は、huCRIg(S)に対して44nMと計算された親和性で結合し、そしてhuCRIg(L)に対しては131nMの親和性で結合した。(E)細胞表面上で発現されたCRIgはA488標識C3b二量体(C3b)2)に結合するが、自然界に存在しているC3には結合しない。左側のパネルは、フローサイトメトリー分析による、トランスフェクトしたTHP−1細胞上でのhuCRIg(L)の発現レベルを示す。(C3b)2は、CRIgでトランスフェクトしたTHP−1細胞に対する飽和性結合を示す。THP−1 CRIgに対する(C3b)2の結合は、(C3b)2、C3b、およびCRIgの細胞外ドメイン(CRIg−ECD)と競合したが、C3とは競合しなかった。結果は、3回の別々の実験の典型を示す。 CRIg koマウスの作成と特性決定。(A)ES細胞での相同組換えに使用した標的化ベクターの作成。(B)wtマウスと交配させたキメラマウスに由来するヘテロ接合型の雌の子孫でのSRIg対立遺伝子の相同組換えのサザンブロットによる確認。(C)wtおよびkoの雄および雌のマウスの末梢血中の白血球数の比較。(D)KCではCR1、CR2、およびCD11cの発現がないことを示すFACS分析。(E)wt KCおよびko KCに対するC3−A488およびC3c−A488の結合のFACS分析。 クップファー細胞上でのCRIgの発現はC3bおよびiC3bの結合に不可欠である。(A)CRIgタンパク質はCRIg KOマウスから得たマクロファージ上には存在しない。CRIg wt、CRIg het、またはCRIg koマウスから得た末梢マクロファージを、抗muCRIg mAb(14G6:左側のパネル)とともにインキュベートした。CRIg wtおよびCRIg koマウスから得たクップファー細胞(KC)を抗体14G6とともにインキュベートし、フローサイトメトリーによって分析した。(B)CD11bおよびCD18、補体受容体3のα鎖およびβ鎖、ならびにCrryの発現レベルは、CRIg weマウスおよびCRIg koマウスから得たクップファー細胞については類似していた。CRIg wtまたはCRIg koマウスから単離したクップファー細胞をCD11b、CD18、およびCrryに対する抗体とともにインキュベートし、フローサイトメトリーによって分析した。(C)CRIg wtまたはkoマウスから単離したクップファー細胞を、活性化したマウス血清(37℃で30分間のインキュベーションによって活性化した)、C3b、(C3b)2、およびiC3bと共にインキュベートした。細胞表面に対する精製した補体成分の結合を、種々のC3由来の断片を認識するポリクローナル抗体で検出した。結果は4回の実験の典型である。(D)CRIg koマウスから単離したKCは、C3十分マウス血清中でオプソニン化したIgMでコーティングしたヒツジ赤血球(E−IgM)によって低いリセットを示した。CRIg wtおよびCRIg koマウスの肝臓から単離したKCを、補体C3オプソニン化E−IgMと共に、対照IgGまたは抗CR3ブロック抗体(M1/70)の存在下で、30分間インキュベートした。細胞を固定し、E−IgMと共にロゼットを形成したKCの数を数え、KCの総数の割合(%)として表した。=p<0.05。結果は、2回の別々の実験の典型である。 クップファー細胞上のCRIgのリサイクル(A) C3 wt(パネル1、3、4、および6)、またはC3 koマウス(パネル2、5)由来のクップファー細胞(KC)を、A488標識抗CRIg抗体(14G6)および(C3b)2と共に、4℃で1時間(パネル1〜3)、または37℃で10分間(パネル4〜6)インキュベートした。その後、細胞を4℃に移し、抗A488抗体(赤色の柱状図)とともに、または抗体を伴わずに(黒色の柱状図)インキュベートして、細胞表面で発現された抗CRIgまたはC3bに由来する細胞質を区別した。(B)CRIg wtでのCRIgとC3bとのインターナライゼーションおよび共局在。これは、CRIg ko、KCでは生じない。CRIg wtおよびCRIg koマウスの肝臓から単離したKCを、チャンバースライドで2日間培養しA455結合抗CRIg抗体およびA488結合C3bとともに、37℃で30分間インキュベートし、マウントし、そして写真を撮影した。(C)CRIg(Lamp1ではない)抗体は細胞表面上で再利用される。クップファー細胞を、A488結合抗muCRIg抗体または抗muLamp1抗体とともに、37℃で10分間かけてロードし、洗浄し、その後、抗A488停止抗体の存在下で、37℃で示した時間インキュベートした。示す結果は、3回の独立した実験の典型である。 CRIgは、粒子の取り込み部位に動員される再利用されているエンドソーム上で発現される。(A)細胞表面で発現されたCRIgは、F−アクチンポジティブ膜ラッフルに局在化される。単球由来マクロファージの7日間培養物を、A488結合抗CRIg A488mAb 3C9(A1、およびA3の中の緑色のチャネル)、およびAlexa 546−ファロイジン(A2、およびA3の中の赤色のチャネル)と共に、4℃でインキュベートした。矢印の先端は、CRIgおよびアクチンの染色の両方が細胞表面の残りの部分よりも強い膜ラッフルを示す(A3の中の重ね合わせた画像の中の黄色)。目盛り棒は20μmである。(B)CRIgおよびC3bは、再利用されているエンドソームでトランスフェリンと一緒に局在化している。マクロファージを、CRIg−A488(B1、B4の中の緑色のチャネル)またはC30A488(B2、B4の中の赤色のチャネル)と共に氷上で1時間インキュベートし、その後、A647−トランスフェリン(B3、B4の中の青色のチャネル)の存在下で、37℃で10分間、追跡した。目盛り棒=20μm。(C)CRIgは、phagocytic cupとファゴソーム膜とに動員される。マクロファージを、A647標識トランスフェリン(C2、6、および青色のチャネルC4、8)の存在下で、C3十分血清でオプソニン化したIgMをコーティングした赤血球と共に、37℃で10分間(C1〜4)または2時間(C5〜8)、インキュベートした。その後、細胞を固定し、透過化し、そして抗CRIgポリクローナル抗体(C1、2、およびC4、5の緑色のチャネル)およびLAMP−1に対するA555結合抗体(C3、7、およびC4、8の中の赤色のチャネル)で染色した。 ヒトの単球由来マクロファージでのCRIgの輸送(A)7日目のMDM上での、CRIgに対するC3b−A488の飽和性結合を示しているFACSプロット。(B)MDMを、10倍モル過剰のhuCRIg(L)−ECDの存在下で、抗CRIg抗体およびC3b−A488で、37℃で10分間パルスした。抗CRIg抗体の結合および取り込みはCRIgに特異的であった。なぜなら、これは、10倍モル過剰のCRIg−ECDとの抗体の同時インキュベーションによって回避することができ(パネル1)、一方、トランスフェリンの取り込みは完全なまま残すことができた(パネル2)からである。(C)MDMを、リソソームプロテアーゼ阻害因子の存在下37℃で20時間、その後、細胞を洗浄し、1%のPFAで固定し、取り込まれた抗体をCy3標識抗マウスIgGで検出した(Cパネル1、およびパネル3の中の赤色のチャネル)。細胞を、10μg/mlのウサギ抗CRIg 6F1で、その後、FITC抗ウサギで同時に染色して、全てのCRIgの分布を検出した(Cパネル2、およびCパネル3の中の緑色のチャネル)。取り込まれた抗体は、ほぼ完全に、内因性CRIgシグナルと重複しており(Cパネル3の中の重ね合わせた画像の中の黄色)、これは、抗体の取り込みがCRIgの輸送には影響を及ぼさないことを示している。目盛り棒は20μmであり、四角で囲んだ部分の4×の拡大挿入図においては5μmを各チャネルの右下に示した。Cパネル4では、ヒトマクロファージを、C3枯渇血清で13時間インキュベートし、その後、固定し、そしてウサギ抗CRIg F1およびFITC抗ウサギで標識した。CRIgの分布は、本質的にはC3十分血清での分布と同じであり、いずれもが、再利用されているエンドソームマーカーであるトランスフェリンとほぼ完全に重複していた(データは示さない)。目盛り棒は20μmである。(D)MDMを、1μg/mlの抗CRIg−A488(パネル1)、トランスフェリン−A647(パネル2)とともに、37℃で10分間インキュベートし、4%のPFA中で固定し、サポニン緩衝液で透過化し、マウス抗ヒトLamp−1−A555とともにインキュベートした(パネル3)。矢印は、再利用されている区画へのCRIgとトランスフェリンとの共局在を示している。(E)MDMを、1μg/mlの抗CRIg−A488(パネル1、パネル4の中の緑色のチャネル)、トランスフェリン−A647(パネル2、パネル4の中の青色のチャネル)とともに、37℃で30分間インキュベートし、洗浄し、そしてPKHで染色した区画C3オプソニン化ヒツジ赤血球(SRBC,パネル3、パネル4の中の赤色のチャネル)とともに、1:10のマクロファージ:SRBC比でインキュベートした。 CIRgを欠損しているマウスは、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria Monocytogenes:LM)に感染しやすい。(A)尾支脈への注射によって示した用量のLMに感染させた、雌のCRIg wtおよびCRIg koマウスの生存曲線(1グループあたりn=5〜7匹)。統計分析(Wilcoxon):wt対ko 2×10e4コロニー形成単位(CFU)についてはp<0.005、5×10e4および2×10e5 CFUについてはp<0.0001。(B)LM感染(2×10e7 CFU、1グループあたりn=5)の10分後の、心臓、肝臓、血液、および脾臓の中の細菌数の分析。統計分析(対応のあるt検定):**p<0.01、p<0.05。(C)LM感染の1日後のCRIg koマウスの血清中のサイトカインおよびケモカインの濃度の増大。統計分析(対応のないt検定):***p<0.001。(D)CRIg koマウスのKCにおけるLM−A488の取り込みの減少。マウスを2×10e7のLM−A488に感染させた。1時間後、肝臓を潅流させ、F4/80に対する抗体とともにインキュベートし、そしてフローサイトメトリーによって分析した。その後、F4/80ポジティブKCを、FACSによって選別し、蛍光顕微鏡による観察のためにポリ−リジンをコーティングしたスライドの上に回収した。インターナライズされたLM−A488の数を共焦点顕微鏡でカウントし、食作用指数を計算した。結果は、少なくとも2回の実験の典型である。(E)CRIgマウスは、循環からのLMのクリアランスが低下している。CRIgおよびC3二重または単独koマウスを、2×10e7 CFUのLMでi.v.注射した。血液中のCFUを感染の10分後にカウントした。C3の存在下では、CRIg koマウスは、循環からのLMの、有意に低いクリアランスを有していた(p<0.001)。C3が存在しない条件では、CRI wtマウスまたはCRIg koマウスにおいては、LMのクリアランスの有意な減少はなかった。 図59は、ヒトCRIg(short)−IgG融合体のヌクレオチド配列を示す(配列番号20)。 図60は、ヒトCRIg(long)−IgG融合体のヌクレオチド配列を示す(配列番号21)。 図61は、2種類の構築物の中のCRIg(STIgMA)−Fc結合部分を示している。これらはいずれも、pRK5ベクターの中にClaI−XbaI部位に挿入されている。 図62は、muCRIg−Fc融合タンパク質(対照Fc融合タンパク質はそうではない)が、wt(CRIg ko細胞ではそうではない)においては循環からのLMのクリアランスを阻害することを示している。CRIg wtマウスおよびCRIg koマウスを、12mg/kgのmuCRIg−Fcまたは対照−Fc融合タンパク質の2回の注射で、2×10 CFUのLMのi.v.での注射の24時間および16時間前に処置した。血液中のCFUを、注射の10分後にカウントした。muCRIg−Fcで処置したCRIg wtマウスは、対照−Fcで処置したwtマウスと比較すると、循環からのLMの、有意に低いクリアランスを有していた(p<0.001、対応のないスチューデントt検定)。CRIg koマウスでは、muCRIg−Fcでの処置によってはLMのクリアランスに影響はなかった。 huCRIg分子での補体によって媒介される免疫溶血反応の阻害。(A)hCRIg−shortおよびhCRIg−long融合タンパク質を使用したCyno血清RRBCの溶血反応の阻害。(B)hCRIg−long ECDを使用したcyno血清RRBCの溶血反応の阻害。 2種類の実験における、hCRIg−longを用いたヒト血清の溶血反応の阻害。 hCRIg−short−FcおよびhCRIg−long−Fc融合タンパク質を用いたヒト血清の溶血反応の阻害。 hCRIg−long−ECDおよびhCRIg−short−ECDをそれぞれ用いたヒト血清の溶血反応の阻害。 図67は、huCRIg−long−Fc(「無柄」の構築物)をコードする核酸配列を示す(配列番号25)。 図68は、CRIgの膜貫通ドメインとFc部分との間に「柄」が挿入されているhuCRIg−long−Fcをコードする核酸配列を示す(配列番号26)。 図69は、huCRIg−short−Fc(「無柄」の構築物)をコードする核酸配列を示す(配列番号27)。 図70は、CRIgの膜貫通ドメインとFc部分との間に「柄」が挿入されているhuCRIg−short−Fcをコードする核酸配列を示す(配列番号28)。 図71AおよびBは、実施例23に記載するマウスCNVの実験の結果を示す。
(好ましい実施形態の詳細な説明)
(I.定義)
用語「PRO362」、「JAM4」、「STIgMA」、および「CRIg」は同じ意味で使用され、自然界に存在している配列と改変体CRIgポリペプチドとを意味する。
「自然界に存在している配列」のCRIgは、その調製の形式とは無関係に、自然界に由来するCRIgポリペプチドと同じアミノ酸配列を有しているポリペプチドである。したがって、自然界に存在している配列のCRIgは、自然界から単離することができ、また、組換え手段および/または合成の手段によって生産することもできる。用語「自然界に存在している配列のCRIg」には、具体的に、自然界に存在している短縮型のCRIgまたは分泌型のCRIg(例えば、細胞外ドメイン配列)、自然界に存在している改変体形態(例えば、代替としてスプライシングされた形態)、ならびにCRIgの自然界に存在している対立遺伝子改変体が含まれる。自然界に存在している配列のCRIgポリペプチドには、具体的には、配列番号2の321個のアミノ酸の長いヒトCRIgポリペプチド(図1に示される)が含まれ、これには、N末端シグナル配列が含まれる場合もまた含まれない場合も、1位の開始メチオニンが含まれる場合もまた含まれない場合も、そして、配列番号2の約277位から307位のアミノ酸位置にある膜貫通ドメインの一部もしくは全てが含まれる場合もまた含まれない場合もある。自然界に存在している配列のCRIgポリペプチドには、さらに、配列番号4の全長の399アミノ酸の長いヒトCRIgポリペプチド(huCRIg、またはhuCRIg−long、図2および5に示される)が含まれ、これには、N末端シグナル配列が含まれる場合もまた含まれない場合も、1位の開始メチオニンが含まれる場合もまた含まれない場合も、そして、配列番号4の約277位から307位のアミノ酸位置にある膜貫通ドメインの一部もしくは全てが含まれる場合もまた含まれない場合もある。なおさらなる実施形態においては、自然界に存在している配列のCRIgポリペプチドは、ヒトCRIgの305アミノ酸の短い形態(huCRIg−short、配列番号6、図3に示される)であり、これには、N末端シグナル配列が含まれる場合もまた含まれない場合も、1位の開始メチオニンが含まれる場合もまた含まれない場合も、そして、配列番号6の約183位から213位の位置にある膜貫通ドメインの一部もしくは全てが含まれる場合もまた含まれない場合もある。異なる実施形態においては、自然界に存在している配列のCRIgポリペプチドは、配列番号8の280アミノ酸の長い全長のマウスCRIgポリペプチド(muCRIg、図4および5に示される)であり、これには、N末端シグナル配列が含まれる場合もまた含まれない場合も、1位の開始メチオニンが含まれる場合もまた含まれない場合も、そして、配列番号8の約181位から211位のアミノ酸位置にある膜貫通ドメインの一部もしくは全てが含まれる場合もまた含まれない場合もある。高等霊長類および哺乳動物を含むヒト以外の他の動物のCRIgポリペプチドが、具体的にこの定義に含まれる。
「CRIg改変体」は、自然界に存在している配列のCRIgポリペプチドに対して、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有している、以下に定義される活性なCRIgポリペプチドを意味する。これには、C末端短縮型の321アミノ酸のhuCRIg(配列番号2)、全長のhuCRIg(配列番号4)、huCRIg−short(配列番号6)、およびmuCRIg(配列番号8)が含まれるが、これらに限定はされない。これらのそれぞれには、N末端の開始メチオニンが含まれる場合もまた含まれない場合も、N末端シグナル配列が含まれる場合もまた含まれない場合も、膜貫通ドメインの全体もしくは一部が含まれる場合もまた含まれない場合も、そして、細胞内ドメインが含まれる場合もまた含まれない場合もある。特定の実施形態においては、CRIg改変体は、配列番号2の配列の成熟型の全長のポリペプチドと少なくとも80%のアミノ酸配列相同性を有する。別の実施形態においては、CRIg改変体は、配列番号4の成熟型の全長のポリペプチドと少なくとも約80%のアミノ酸配列相同性を有する。なお別の実施形態においては、CRIg改変体は、配列番号6の配列の成熟型の全長のポリペプチドと少なくとも約80%のアミノ酸配列相同性を有する。なおさらなる実施形態においては、CRIg改変体は、配列番号8の配列の成熟型の全長のポリペプチドと少なくとも約80%のアミノ酸配列相同性を有する。このようなCRIgポリペプチド改変体には、例えば、配列番号2、4、6、もしくは8の配列のN末端またはC末端に1つ以上のアミノ酸残基が挿入されている、N末端またはC末端の1つ以上のアミノ酸残基が置換されている、および/あるいは、N末端またはC末端の1つ以上のアミノ酸残基が欠失されているCRIgポリペプチドが含まれる。他の改変体には、示されたポリペプチド配列の膜貫通領域に1つ以上のアミノ酸が挿入されている、膜貫通領域の中で1つ以上のアミノ酸が置換されている、および/または膜貫通領域の中で1つ以上のアミノ酸が欠失されている。
通常、CRIg改変体は、配列番号2、4、6、もしくは8の成熟アミノ酸配列と、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、または少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性、または少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性、または少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性、または少なくとも約98%のアミノ酸配列同一性、または少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有するであろう。好ましくは、最大の配列同一性は細胞外ドメイン(ECD)で生じる(配列番号2または4の1位または約21位からX位のアミノ酸、ここでは、Xは271位から281位までの任意のアミノ酸残基である;あるいは、配列番号6の1位または約21位からX位のアミノ酸、ここでは、Xは178位から186位までの任意のアミノ酸残基である;あるいは、配列番号8の1位または約21位からX位のアミノ酸、ここでは、Xは176位から184位までの任意のアミノ酸残基である)。
CRIg(PRO362)「細胞外ドメイン」または「ECD」は、CRIgポリペプチドの1つの形態を意味する。これには、それぞれの全長分子の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインは原則として含まれない。通常、CRIg ECDには、このような膜貫通ドメインおよび/または細胞質ドメインの1%未満が含まれており、このようなドメインの0.5%未満しか含まれないことが好ましい。上記で議論されたように、場合により、CRIg ECDには、配列番号2、4、6、もしくは8の1位または約21位からX位のアミノ酸残基が含まれる。ここでは、Xは、配列番号2もしくは4の約271位から281位までの任意のアミノ酸、配列番号6の約178位から186位までの任意のアミノ酸、配列番号8の約176位から184位までの任意のアミノ酸である。
「アミノ酸配列同一性の割合(%)」は、本明細書中で同定されたCRIg(PRO362)配列に関しては、配列のアラインメント、および必要に応じた最大配列同一性の割合(%)を得るためのギャップの導入の後の、配列同一性の一部としての保存的置換を全く考慮しない、CRIg配列中のアミノ酸残基と同一である候補の配列中のアミノ酸残基の割合(%)として、それぞれ定義される。アミノ酸配列同一性の割合(%)を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の能力の範囲内である種々の方法で、例えば、BLAST、BLAST−2、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公に入手することができるコンピュータープログラムを使用して行うことができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを行うために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメーターを決定することができる。その後、配列同一性は、より長い配列と比較して計算される。すなわち、より短い配列がより長い配列の一部と100%の配列同一性を示した場合にもなお、全体的な配列同一性は100%未満である場合がある。
「核酸配列同一性の割合(%)」は、本明細書中で同定されたCRIg(PRO362)をコードする配列(例えば、DNA45416)に関しては、配列のアラインメント、および必要に応じた最大配列同一性の割合(%)を得るためのギャップの導入の後の、CRIgをコードする配列中のヌクレオチドと同一である候補の配列中のヌクレオチドの割合(%)として、それぞれ定義される。核酸配列同一性の割合(%)を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の能力の範囲内である種々の方法で、例えば、BLAST、BLAST−2、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公に入手することができるコンピュータープログラムを使用して行うことができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを行うために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメーターを決定することができる。その後、配列同一性は、より長い配列と比較して計算される。すなわち、より短い配列がより長い配列の一部と100%の配列同一性を示した場合にもなお、全体的な配列同一性は100%未満である場合がある。
「単離された」核酸分子は、同定され、そして核酸の自然界における供給源において通常は付随している少なくとも1つの混入している核酸分子から分離された核酸分子である。単離された核酸分子は、自然界で見られる形態または環境以外の状態である。したがって、単離された核酸分子は、自然界に存在している細胞中に存在している核酸分子とは異なる。しかし、単離された核酸分子には、コードされるポリペプチドを通常発現する細胞に含まれる核酸分子が含まれる。この場合、例えば、核酸分子は、自然界に存在している細胞とは異なる染色体位置にある。
「単離された」CRIgポリペプチドをコードする核酸分子は、同定され、そしてCRIgをコードする核酸の自然界での供給源において通常付随している少なくとも1つの混入している核酸分子から分離された核酸分子である。単離されたCRIgポリペプチドをコードする核酸分子は、自然界で見られる形態または環境以外の状態である。したがって、単離されたCRIgポリペプチドをコードする核酸分子は、自然界に存在している細胞中に存在しているコード核酸分子(単数または複数)とは異なる。しかし、単離されたCRIgをコードする核酸分子には、CRIgを通常発現する細胞に含まれるCRIgをコードする核酸分子が含まれる。この場合、例えば、核酸分子は、自然界に存在している細胞とは異なる染色体位置にある。
用語「補体が関係している疾患」は、本明細書中では最も広い意味で使用され、これには、その発症に、例えば、補体欠損などの補体系の活性化の異常が関係している全ての疾患および病理学的症状が含まれる。この用語には、具体的に、C3転換酵素の阻害が有効である疾患および病理学的症状が含まれる。この用語には、さらに、代替補体経路の阻害(選択的阻害を含む)が有効である疾患および病理学的症状が含まれる。補体が関係している疾患としては、炎症性疾患および自己免疫疾患、例えば、関節リウマチ(RA)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、虚血再潅流後の離れた組織の傷害、心肺バイパス手術の間の補体活性化、皮膚筋炎、天疱瘡、ループス腎炎および結果として生じる糸球体腎炎および脈管炎、心肺バイパス手術、心臓麻痺によって誘導される冠動脈内皮機能不全、II型膜性増殖性糸球体腎炎、IgA腎症、急性腎不全、クリオグロブリン血症、抗リン脂質症候群、皮膚の変性疾患および他の補体が関係している眼の症状、例えば、加齢性黄斑変性(AMD)、慢性脈絡膜新生血管(CNV)、ブドウ膜炎、糖尿病性網膜症および他の虚血が関係している網膜症、眼内炎、および他の眼内新生血管障害、例えば、糖尿病黄斑浮腫、病的近視、フォン・ヒッペル・リンドウ病、眼のヒストプラスマ症、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)、角膜血管新生、網膜血管新生、ならびに、同種移植、超急性拒絶、血液透析、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、および吸引性肺炎が挙げられるが、これらに限定はされない。
用語「補体が関係している眼の症状」は、本明細書中では最も広い意味で使用され、これには、その発症に、古典補体経路および代替補体経路を含み、特に、代替補体経路の補体が関係している全ての眼の症状および疾患が含まれる。具体的には、このグループには、その発現、発症、または進行を代替補体経路の阻害によって制御することができる、代替補体経路に関係している全ての眼の症状および疾患が含まれる。補体が関係している眼の症状としては、眼の変性疾患、例えば、加齢性黄斑変性(AMD)の全ての段階(乾式および湿式(非滲出形態と滲出形態)を含む)、慢性脈絡膜新生血管(CNV)、ブドウ膜炎、糖尿病性網膜症および他の虚血が関係している網膜症、眼内炎、および他の眼内新生血管障害、例えば、糖尿病黄斑浮腫、病的近視、フォン・ヒッペル・リンドウ病、眼のヒストプラスマ症、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)、角膜血管新生、ならびに、網膜血管新生が挙げられるが、これらに限定はされない。補体が関係している眼の症状の好ましいグループには、加齢性黄斑変性(AMD)(滲出型(湿式)AMDおよび非滲出型(乾式または萎縮性)AMDを含む)、慢性脈絡膜新生血管(CNV)、糖尿病性網膜症(DR)、および眼内炎が含まれる。
用語「炎症性疾患」および「炎症性障害」はほとんど同じ意味で使用され、哺乳動物の免疫系の成分が、哺乳動物の罹患率に寄与している炎症応答を引き起こす、媒介する、または別の方法でこれに関係している疾患または障害を意味する。炎症応答の減少によって疾患の進行に対して緩和作用を有する疾患もまた含まれる。この用語には、免疫性の炎症性疾患が含まれ、これには自己免疫疾患が含まれる。
用語「T細胞によって媒介される」疾患は、T細胞が哺乳動物の罹患率を直接もしくは間接的に媒介する、またはT細胞が別の方法で関係している疾患を意味する。T細胞によって媒介される疾患は、細胞によって媒介される効果、リンホカインによって媒介される効果などに関係している場合があり、そして、B細胞が、例えば、T細胞によって分泌されるリンホカインによって刺激される場合にはB細胞に関係している効果に関係している場合がある。
免疫性の疾患および炎症性疾患の例(そのいくつかはT細胞によって媒介される)としては、炎症性腸疾患(BD)、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、若年性慢性関節炎、脊椎関節症、全身性硬化症(強皮症)、特発性炎症性筋疾患(皮膚筋炎、多発性筋炎)、シェーグレン症候群、全身性血管炎、サルコイドーシス、自己免疫性溶血性貧血(免疫性汎血球減少症、発作性夜間血色素尿症)、自己免疫性血小板減少症(特発性血小板減少性紫斑病、免疫性血小板減少症)、甲状腺炎(グレーヴス病、橋本病甲状腺炎、若年性リンパ球性甲状腺炎、萎縮性甲状腺炎)、真性糖尿病、免疫性腎疾患(糸球体腎炎、尿細管間質性腎炎)、中枢神経系および末梢神経系の脱髄疾患(例えば、多発性硬化症、特発性多発性神経障害)、肝胆汁性疾患(例えば、感染性肝炎(A、B、C、D、E型肝炎、および他の非肝臓向性ウイルス))、自己免疫性慢性活動性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、肉芽腫性肝炎、ならびに硬化性胆管炎、炎症性および繊維性肺疾患(例えば、嚢胞性線維症)、グルテン過敏性腸疾患、ウィップル病、自己免疫性または免疫性皮膚疾患(水胞性皮膚疾患、多形性紅斑、および接触皮膚炎が含まれる)、乾癬、肺のアレルギー性疾患(例えば、好酸球性肺炎、特発性肺線維症、および過敏性肺炎)、移植に伴う疾患(移植拒絶および移植片対宿主病が含まれる)、アルツハイマー病、およびアテローム性動脈硬化症が挙げられるが、これらに限定はされない。
「腫瘍」は、本明細書中で使用される場合は、悪性であるかもしくは良性であるか、そして全てが前ガン細胞であるか組織であるかにはかかわらず、全ての新生物細胞の成長および増殖を意味する。
用語「ガン」および「ガン性」は、通常、調節されていない細胞増殖を特徴とする哺乳動物の生理学的症状を意味するか、またはこれを記載する。ガンの例としては、ガン腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病が挙げられるが、これらに限定はされない。このようなガンのさらに具体的な例としては、乳ガン、前立腺ガン、結腸ガン、扁平上皮細胞ガン、小細胞性肺ガン、非小細胞性肺ガン、消化管ガン、膵臓ガン、膠芽細胞腫、子宮頸ガン、卵巣ガン、肝臓ガン、膀胱ガン、肝ガン、結腸直腸ガン、子宮内膜ガン、唾液腺ガン、腎臓ガン、肝臓ガン、女性の外陰部のガン、甲状腺ガン、肝ガン、および種々のタイプの頭頸部ガンが挙げられる。
「処置」は、障害の発症の予防、または障害の病状を変化させる目的で行われる介入である。したがって、「処置」は、治療的処置と、予防的または防止的措置の両方を意味する。処置が必要なものとしては、すでに障害を有しているもの、ならびに障害を予防したいものが含まれる。免疫が関係している疾患の処置においては、治療薬によって、免疫応答の成分の応答の大きさが直接変化させられる場合も、また、他の治療薬(例えば、抗生物質、抗真菌剤、抗炎症薬、化学療法薬など)による処置に対して疾患の感度がさらに高められる場合もある。補体が関係している疾患の処置においては、処置によって、例えば、疾患の進行が妨げられる場合も、また、疾患の進行が遅らせられる場合もある。したがって、補体が関係している眼の症状の処置には、具体的には、症状の発症の予防、阻害、または遅延、あるいは、症状の1つの段階から別の段階への、より進行した段階への、またはより重篤な関連する症状への進行の予防、阻害、または遅延が含まれる。
疾患(例えば、補体が関係している疾患)の「病状」には、患者の満足な暮らしを危険にさらす全ての現象が含まれる。これには、異常なまたは制御不可能な細胞増殖(好中球、好酸球、単球、リンパ球細胞)、抗体の生産、自己抗体の生産、補体の生産、近隣の細胞の正常な機能の妨害、サイトカインまたは他の分泌産物の異常なレベルでの放出、任意の炎症応答または免疫学的応答の抑制または悪化、細胞空間への炎症性細胞(好中球、好酸球、単球、リンパ球)の浸潤、ドルーゼの形成、失明などが含まれるが、これらに限定はされない。
用語「哺乳動物」は、本明細書中で使用される場合は、哺乳動物として分類される任意の動物を意味する。これには、ヒト、ヒト以外の霊長類、家畜動物、および動物園の動物、競技用動物、またはペット動物、例えば、ウマ、ブタ、ウシ、イヌ、ネコ、およびフェレットなどが含まれるが、これらに限定はされない。本発明の好ましい実施形態においては、哺乳動物はヒトまたはヒト以外の霊長類であり、最も好ましくは、ヒトである。
1つ以上のさらなる治療薬「と組み合わせた」投与には、同時(併用)投与と任意の順序での連続投与とが含まれる。
用語「サイトカイン」は、細胞間メディエーターとして別の細胞に作用する、1つの細胞集団によって放出されるタンパク質についての一般的な用語である。このようなサイトカインの例は、リンホカイン、モノカイン、および従来のポリペプチドホルモンである。サイトカインの中には、成長ホルモン、例えば、ヒト成長ホルモン、N−メチオニルヒト成長ホルモン、およびウシ成長ホルモン、副甲状腺ホルモン、サイロキシン、インシュリン、プロインシュリン、リラキシン、プロリラキシン、糖タンパク質ホルモン、例えば、卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、および黄体形成ホルモン(LH)、肝臓増殖因子、線維芽細胞増殖因子、プロラクチン、胎盤ラクトゲン、腫瘍壊死因子−αおよび腫瘍壊死因子−β、ミュラー管抑制物質、マウス性腺刺激ホルモン関連ペプチド、インヒビン、アクチビン、血管内皮増殖因子、インテグリン、トロンボポエチン(TPO)、神経成長因子(例えば、NGF−β血小板増殖因子)、トランスフォーミング増殖因子(TGF)(例えば、TGF−αおよびTGF−β)、インシュリン様成長因子−Iおよびインシュリン様成長因子−II、エリスロポエチン(EPO)、骨誘導因子、インターフェロン(例えば、インターフェロン−α、インターフェロン−β、およびインターフェロン−γ);コロニー刺激因子(CSF)(例えば、マクロファージ−CSF(M−CSF)、顆粒球−マクロファージ−CSF(GM−CSF)、および顆粒球−CSF(G−CSF))、インターロイキン(IL)(例えば、IL−1、IL−1α、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−11、IL−12)、腫瘍壊死因子(例えば、TNF−αまたはTNF−β)、ならびにLIFおよびkitリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子が含まれる。本明細書中で使用される場合は、用語サイトカインには、自然界の供給源に由来するタンパク質、または組換え細胞の培養によるタンパク質、ならびに自然界に存在している配列のサイトカインの生物学的に活性な等価物が含まれる。
「治療有効量」は、状態、例えば、標的の疾患の病状または症状(例えば、補体が関係している(眼の)疾患または症状、あるいはガン)の測定可能な改善を得るために必要な、活性のあるCRIg、CRIgアゴニストおよびアンタゴニストの量である。
用語「制御配列」は、特定の宿主生物の中での、作動可能に連結されたコード配列の発現に必要なDNA配列を意味する。原核生物に適している制御配列には、例えば、プロモーター、場合によってはオペレーター配列、およびリボソーム結合部位が含まれる。真核生物細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、およびエンハンサーを利用することが知られている。
核酸は、これが別の核酸配列と機能的な関係になるように配置されている場合に「作動可能に連結されている」。例えば、プレ配列または分泌リーダーのDNAは、それがポリペプチドの分泌に関係するプレタンパク質として発現される場合には、ポリペプチドのDNAに作動可能に連結されている。プロモーターまたはエンハンサーは、それが配列の転写に影響を与える場合には、コード配列に作動可能に連結されている。あるいはリボソーム結合部位は、それが翻訳を促進するように配置されている場合には、コード配列に作動可能に連結されている。一般的には、「作動可能に連結されている」は、連結されたDNA配列が連続していることを意味し、そして分泌リーダーの場合には、連続しており、リーディングフレームの中にあることを意味する。しかし、エンハンサーは必ずしも連続してはいない。連結は、便利な制限部位での連結によって行われる。このような部位が存在しない場合には、合成のオリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーが、通常の実施方法に従って使用される。
ハイブリダイゼーション反応の「ストリンジェンシー」は、当業者が容易に決定することができ、そして通常は、プローブの長さ、洗浄温度、および塩濃度に応じて経験的に計算される。一般的には、より長いプローブには、適切なアニーリングのためにはより高い温度が必要であり、より短いプローブにはより低い温度が必要である。ハイブリダイゼーションは、通常、相補鎖がそれらの融点より低い環境で存在すると再アニーリングする変性されたDNAの能力を利用する。プローブとハイブリダイズ可能な配列との間での所望される相同性の程度が高ければ高いほど、使用することができる相対的な温度は高くなる。結果として、当然、相対温度が高ければ高いほど反応条件はよりストリンジェントになる傾向があり、一方、温度が低ければ低いほど、そのような傾向は小さいことになる。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーについてのさらなる詳細および説明については、Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology,Wiley Interscience Publishers,(1995)を参照のこと。
「ストリンジェントな条件」または「高いストリンジェンシーの条件」は、本明細書中で使用される場合は、以下のように同定することができる:(1)洗浄には、低いイオン強度と高温とを使用する、例えば、50℃で、0.015Mの塩化ナトリウム/0.0015Mのクエン酸ナトリウム/0.1%のドデシル硫酸ナトリウム;(2)ハイブリダイゼーションの間に変性剤(例えば、ホルムアミド)を使用する、例えば、42℃で、750mMの塩化ナトリウム、75mMのクエン酸ナトリウムを含む、0.1%のウシ血清アルブミン/0.1%のFicoll/0.1%のポリビニルピロリドン/50mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)を含む、50%(v/v)のホルムアミド;あるいは、(3)42℃で、50%のホルムアミド、5×SSC(0.75MのNaCl、0.075Mのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%のピロリン酸ナトリウム、5×デンハルト溶液、超音波処理したサケの精子DNA(50μg/ml)、0.1%のSDS、および10%のデキストラン硫酸を使用し、42℃で0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)で、そして55℃で50%のホルムアミドで洗浄し、その後、EDTAを含む0.1×SSCで55℃において高いストリンジェンシーで洗浄する。
「中程度のストリンジェンシーの条件」は、Sambrookら、Molecular
Cloning A Laboratory Manual,New York:Cold Spring Harbor Press,1989に記載されているように同定することができ、これには、上に記載されたものよりもストリンジェンシーが低い洗浄溶液およびハイブリダイゼーション条件(例えば、温度、イオン強度、および%SDS)の使用が含まれる。中程度にストリンジェントな条件の一例は、20%のホルムアミド、5×SSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト溶液、10%のデキストラン硫酸、および20mg/mLの変性させたせん断したサケの精子DNAを含む溶液中37℃で一晩のインキュベーション、その後、1×SSCで約37〜50℃でのフィルターの洗浄である。当業者は、プローブの長さなどの要因に適応させる必要に応じて、温度、イオン強度などを調節するための方法を認識しているであろう。
用語「エピトープタグ化」は、本明細書中で使用される場合は、「タグポリペプチド」に融合された本発明のポリペプチドを含むキメラポリペプチドを意味する。タグポリペプチドは、それに対する抗体を作成することができるエピトープを提供するために十分な残基であり、これは、融合されるポリペプチドの活性を妨害することがないようになおも十分に短い。タグポリペプチドは、好ましくは、抗体が他のエピトープと実質的に交差反応しないように極めて特異なものである。適切なタグポリペプチドは、一般的には、少なくとも6個のアミノ酸残基を有しており、通常は、約8個から50個の間のアミノ酸残基(好ましくは、約10個から20個の間のアミノ酸残基)を有している。
「活性な」または「活性」は、本発明のCRIgポリペプチドの改変体について、天然の、または自然界に存在している本発明のポリペプチドの生物学的活性および/または免疫学的活性を保持しているそのようなポリペプチドの形態(単数または複数)を意味する。好ましい生物学的活性は、C3bに結合する能力、および/または補体もしくは補体の活性化に影響を与える能力であり、具体的には、代替補体経路および/またはC3転換酵素を阻害する能力である。C3転換酵素の阻害は、例えば、コラーゲン誘導関節炎または抗体誘導関節炎の間の正常な血清でのC3の代謝回転の阻害を測定することによって測定することができるか、あるいは、C3の蓄積の阻害は関節炎の関節である。
「生物学的活性」は、CRIgの生物学的活性を模倣し、本明細書中に開示されるスクリーニングアッセイによって同定することができる抗体、ポリペプチド、または別の分子について、C3bに結合する能力、および/または補体もしくは補体の活性化に影響を与えるそのような分子の能力を一部意味し、具体的には、代替補体経路および/またはC3転換酵素を阻害するそのような分子の能力を意味する。
用語CRIg「アゴニスト」は最も広い意味で使用され、これには、自然界に存在している配列のCRIgポリペプチドの質的な生物学的活性(本明細書中で上記で定義されたような)を模倣する任意の分子が含まれる。このCRIgアゴニストには、具体的に、CRIg−Ig(例えば、CRIg−Fc融合ポリペプチド(免疫接着物))が含まれるが、少なくとも1つのCRIgの生物学的活性を模倣する低分子も含まれる。好ましくは、生物学的活性は、補体経路(特に、代替補体経路)のブロックである。
用語「アンタゴニスト」は最も広い意味で使用され、これには、自然界に存在しているポリペプチド(例えば、自然界に存在している配列のCRIgポリペプチド)の質的な生物学的活性を部分的または完全にブロックする、阻害する、または中和する任意の分子が含まれる。
適切なアゴニストまたはアンタゴニスト分子には、具体的には、本発明の自然界に存在しているポリペプチド、ペプチド、低分子(有機低分子を含む)のアゴニスト抗体もしくはアゴニスト抗体、または抗体断片、断片、融合体、またはアミノ酸配列改変体などが含まれる。
「低分子」は、約600ダルトン未満、好ましくは、約1000ダルトン未満の分子量を有すると本明細書中で定義される。
用語「抗体」は最も広い意味で使用され、これには具体的に、1つの抗CRIgモノクローナル抗体(アゴニスト、アンタゴニスト、および中和抗体を含む)、ならびに多エピトープ特異性を有している抗CRIg抗体組成物が含まれるが、これらに限定はされない。用語「モノクローナル抗体」は、本明細書中で使用される場合は、実質的に均質な抗体の集団(すなわち、集団に含まれる個々の抗体は主要ではない量で存在し得る自然界に存在している変異の可能性を除いて同一である)から得られる抗体を意味する。
「抗体」(Ab)および「免疫グロブリン」(Ig)は、同じ構造特性を有している糖タンパク質である。抗体は特定の抗原に対して結合特異性を示すが、免疫グロブリンには抗体と、抗原特異性を欠いている抗体様分子との両方が含まれる。後者の種類のポリペプチドは、例えば、リンパ系によっては低いレベルで、そして骨髄腫によっては高いレベルで生産される。用語「抗体」は最も広い意味で使用され、これには具体的に、完全なモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つの完全な抗体から形成された多特異的抗体(例えば、二重特異的抗体)、および抗体断片が、それらが所望の生物学的活性を示す場合には含まれるが、これらに限定はされない。
「自然界に存在している抗体」および「自然界に存在している免疫グロブリン」は、通常は、2つの同じ軽(L)鎖と2つの同じ重(H)鎖から構成されている、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。それぞれの軽鎖は1つのジスルフィド共有結合によって1つの重鎖に結合しているが、ジスルフィド結合の数は、異なる免疫グロブリンイソ型の重鎖の間では異なる。それぞれの重鎖および軽鎖はまた、一定の間隔の鎖内ジスルフィド結合をも有している。個々の重鎖は、一方の末端に、可変ドメイン(V)、これに続いて、多数の定常ドメインを有している。個々の軽鎖は、一方の末端に可変ドメイン(V)を、そしてその他方の末端に定常ドメインを有している。軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1定常ドメインと整列しており、そして軽鎖可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列している。特定のアミノ酸残基が、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの接触面を形成していると考えられている。
用語「可変」は、可変ドメインの特定の部分が抗体間の配列で広範囲に異なり、そしてその特定の抗原に対する個々の特定の抗体の結合および特異性に使用されるという事実を意味する。しかし、可変性は、抗体の可変ドメイン全体に均一に分布しているわけではない。これは、相補性決定領域(CDR)または超可変領域(いずれも、軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインに存在している)と呼ばれる3つのセグメントの中に集中している。可変ドメインのより高度に保存されている部分は、フレームワーク(FR)と呼ばれている。自然界に存在している重鎖および軽鎖の可変ドメインにはそれぞれ、3つのCDR(これらは主としてβ−シート構造をとっている。これらはループ結合を形成し、そしていくつかはβ−シート構造の一部を形成している場合もある)によってつながれた4つのFR領域が含まれている。それぞれの鎖のCDRは互いに、FR領域によって近接近して保たれており、他の鎖に由来するCDRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabatら、NIH Publ.No.91−3342,Vol.I、647−669頁(1991)を参照のこと)。定常ドメインは、抗原に対する抗体の結合に直接は関与していないが、種々のエフェクター機能(例えば、抗体依存性細胞傷害性における抗体の関与)を示す。
「抗体断片」には、完全な抗体の一部(好ましくは、完全な抗体の抗原結合領域または可変領域)が含まれる。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)、およびFv断片;ダイアボディー;直鎖抗体(Zapataら、Protein Eng.8(10):1057−1062(1995));単鎖抗体分子;ならびに、抗体断片から形成された多特異的抗体が挙げられる。具体的には、本発明の定義に含まれる抗体断片の例として、以下が挙げられる:(i)VL、CL、VH、およびCH1ドメインを有しているFab断片;(ii)CH1ドメインのC末端にある1つ以上のシステイン残基を有しているFab断片であるFab’断片;(iii)VHおよびCH1ドメインを有しているFd断片;(iv)VHおよびCH1ドメインと、CH1ドメインのC末端にある1つ以上のシステイン残基とを有しているFd’断片;(v)抗体の1つのアームのVLおよびVHドメインを有しているFv断片;(vi)VHドメインからなるdAb断片(Wardら、Nature 341,544−546(1989));(vii)単離されたCDR領域;(viii)F(ab’)2断片、ヒンジ領域でのジスルフィド結合によって連結された2つのFab’断片を含む二価の断片;(ix)単鎖抗体分子(例えば、単鎖Fv;scFv)(Birdら、Science 242:423−426(1988);およびHustonら、PNAS(USA)85:5879−5883(1988));(x)2つの抗原結合部位を有しており、同じポリペプチド鎖において軽鎖可変ドメイン(VL)に連結された重鎖可変ドメイン(VH)を含む「ダイアボディー」(例えば、EP 404,097;WO93/11161;およびHollingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444−6448(1993));(xi)タンデムFdセグメントを1対含む「直鎖抗体」(VH−CH1−VH−CH1)(これは、相補的な軽鎖ポリペプチドと共に抗原結合領域の対を形成する)(Zapataら、Protein Eng.8(10):1057−1062(1995);および米国特許第5,641,870号)。
抗体のパパインでの消化によって、「Fab」断片と呼ばれる2つの同じ抗原結合断片(それぞれ、1つの抗原結合部位を有している)と、残りの「Fc」断片とが生じる。名称「Fc」は、容易に結晶化する能力を反映している。ペプシンでの処理によって、2つの抗原結合部位を有し且つ抗原を架橋することができるF(ab’)断片が生じる。
「Fv」は、完全な抗原認識および結合部位を含む最小抗体断片である。この領域は、1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインとが硬く非共有的に会合している二量体から構成されている。この立体構造においては、個々の可変ドメインの3つのCDRが相互作用して、V−V二量体の表面に抗原結合部位の輪郭を形成する。まとめると、6個のCDRによって、抗体に対する抗原結合特異性が付与される。しかし、1つの可変ドメイン(または抗原に特異的なCDRを3つしか含まないFvの半分)もなお、完全な結合部位よりも親和性は低いが、抗原を認識し結合する能力を有している。
Fab断片にはまた、軽鎖の定常ドメインと重鎖の第1定常ドメイン(CH1)とが含まれる。Fab’断片は、抗体のヒンジ領域に由来する1つ以上のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に数個の残基が付加されていることによって、Fab断片とは異なる。Fab’−SHは、定常ドメインのシステイン残基(単数または複数)が遊離のチオール基を有しているFab’についての本明細書中での名称である。F(ab’)抗体断片はもともと、その間にヒンジシステインを有しているFab’断片の対として生産された。抗体断片の他の化学的カップリングもまた知られている。
任意の脊椎動物種に由来する抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、2つの明らかに異なるタイプ(カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる)の1つに分けることができる。
それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、免疫グロブリンは、様々なクラスに分けることができる。免疫グロブリンについては5つの主要なクラスがある:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgM。これらのいくつかは、さらにサブクラス(イソ型)(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、およびIgA2)に分けることができる。免疫グロブリンの様々なクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、γ、μ、δ、α、およびεと呼ばれる。免疫グロブリンの様々なクラスのサブユニット構造と三次元立体配置とは周知である。
用語「モノクローナル抗体」は、本明細書中で使用される場合は、実質的に均質な抗体の集団(すなわち、集団に含まれる個々の抗体は主要ではない量で存在し得る自然界に存在している変異の可能性を除いて同一である)から得られる抗体を意味する。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、1つの抗原性部位に対して指向される。さらに、従来の(ポリクローナル)抗体調製物(これには通常、種々の決定基(エピトープ)に対して指向された様々な抗体が含まれる)とは対照的に、個々のモノクローナル抗体は抗原における1つの決定基に対して指向される。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、それらが他の免疫グロブリンが混入していないハイブリドーマ培養物によって合成される点で有利である。改変語「モノクローナル」は、実質的に均質な抗体の集団から得られるという抗体の特徴を示しており、任意の特定の方法による抗体の生産が必要であるとは解釈されない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohlerら、Nature,256:495(1975)によって最初に記載されたハイブリドーマ方法によって作成することができ、また、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照のこと)によって作成することもできる。「モノクローナル抗体」はまた、例えば、Clacksonら、Nature,352:624−628(1991)およびMarksら、J.Mol.Biol.,222:581−597(1991)に記載されている技術を使用して、ファージ抗体ライブラリーから単離することもできる。米国特許第5,750,373号、同第5,571,698号、同第5,403,484号、および同第5,223,409号もまた参照のこと。これらには、ファージミドおよびファージベクターを使用した抗体の調製が記載されている。
本明細書中のモノクローナル抗体には、具体的に、重鎖および/または軽鎖の部分は特定の種に由来するかまたは特定の抗体のクラスもしくはサブクラスに属している抗体中の対応する配列と同じであるかまたはそれと相同であるが、鎖(単数または複数)の残りは別の種に由来するかまたは別の抗体のクラスもしくはサブクラスに属する抗体、ならびにそのような抗体の断片中の対応する配列と同じであるかまたはそれと相同である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)が、それらが所望の生物学的活性を示す限りにおいては含まれる(米国特許第4,816,567号;Morrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),81:6851−6855(1984))。
ヒト以外(例えば、マウス)の抗体の「ヒト化」形態は、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、またはヒト以外の免疫グロブリンに由来する最小配列を含むその断片(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)、または抗体の他の抗原結合サブ配列)である。大部分は、ヒト化抗体はヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であり、レシピエントの相補性決定領域(CDR)に由来するいくつかまたはすべての残基が、所望の特異性、親和性、および能力を有しているヒト以外の種(ドナー抗体)(例えば、マウス、ラット、もしくはウサギ)のCDRに由来する残基で置き換えられている。いくつかの例においては、ヒト免疫グロブリンの特定のFvフレームワーク領域(FR)の残基もまた、対応するヒト以外の残基で置き換えることができる。さらに、ヒト化抗体には、レシピエント抗体にも、輸入されたCDRまたはフレームワーク配列にも見られない残基が含まれる場合がある。これらの改変は、抗体の能力にさらに磨きをかけ、最大化するために行われる。一般的には、ヒト化抗体には、少なくとも1つ、通常は2つの可変ドメインの実質的に全体が含まれる。この場合、CDR領域の全てまたは実質的に全てはヒト以外の免疫グロブリンのものに対応し、そしてFR領域の全てまたは実質的に全てはヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体には、好ましくは、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部も含まれ、通常は、ヒト免疫グロブリンの少なくとも一部が含まれる。さらなる詳細については、Jonesら、Nature、321:522−525(1986);Reichmannら、Nature,332:323−329(1988);およびPresta,Curr.Op.Struct.Biol.,2:593−596(1992)を参照のこと。ヒト化抗体には、「霊長類化」抗体が含まれ、体の抗原結合領域は目的の抗原でアカゲザル(macaque monkey)を免疫化することによって生産される抗体に由来する。旧世界ザル(Old World monkey)に由来する残基を含む抗体もまた、おそらく本発明に含まれる。例えば、米国特許第5,658,570号;同第5,693,780号;同第5,681,722号;同第5,750,105号;および同第5,756,096号を参照のこと。
「単鎖Fv」または「sFv」抗体断片には、抗体のVドメインとVドメインとが含まれる。これらのドメインは1つのポリペプチド鎖に存在する。好ましくは、Fvポリペプチドにはさらに、sFvが抗原の結合に所望の構造を形成することを可能にする、VドメインとVドメインとの間のポリペプチドリンカーが含まれる。sFvの概要については、Pluckthun,The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore編.,Springer−Verlag,New York,269−315頁(1994)を参照のこと。
用語「ダイアボディー」は、2つの抗原結合部位を有している小さい抗体断片を意味する。この断片には、同じポリペプチド鎖において軽鎖可変ドメイン(V)に連結された重鎖可変ドメイン(V)が含まれる(V−V)。同じ鎖にある2つのドメインの間での対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用することにより、これらのドメインは別の鎖の相補的なドメインと対を形成するように向けられ、2つの抗原結合部位が生じる。ダイアボディーは、例えば、EP 404,097;WO93/11161;およびHollingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444−6448(1993)に完全に記載されている。
ヒトIgG Fc領域の「CH2ドメイン」(「Cg2」ドメインとも呼ばれる)は、通常、約231位のアミノ酸残基から約340位のアミノ酸残基まで伸びている。CH2ドメインは、これが別のドメインと密接に対合しない点で特有である。むしろ、2つのN結合した分岐している炭水化物鎖が、完全な自然界に存在しているIgG分子の2つのCH2ドメインの間に置かれている。炭水化物は、ドメイン−ドメインの対合の代わりを提供することができ、CH2ドメインの安定化を助けると推測されている。Burton,Molec.Immunol.22:161−206(1985)。本明細書中のCH2ドメインは、自然界に存在している配列のCH2ドメインまたは改変体CH2ドメインであり得る。
「CH3ドメイン」には、Fc領域中のCH2ドメインに対してC末端側の残基のストレッチ(すなわち、IgGの約341位のアミノ酸残基から約447位のアミノ酸残基まで)が含まれる。本明細書中のCH3領域は、自然界に存在している配列のCH3ドメインである場合も、また、改変体CH3ドメイン(例えば、その1つの鎖の中に「プロトロベランス(protroberance)」が導入されており、そしてその他方の鎖には対応する「孔(cavity)」が導入されているCH3ドメイン;引用により本明細書中に組み入れられる米国特許第5,821,333号を参照のこと)である場合もある。このような改変体CH3ドメインは、本明細書中に記載されるような多特異的(例えば、二重特異的)抗体を作成するために使用することができる。
「ヒンジ領域」は、一般的には、ヒトIgG1の約Glu216、または約Cys226から、約Pro230まで伸びていると定義されている(Burton,Molec.Immunol.22:161−206(1985))。他のIgGイソ型のヒンジ領域は、同じ位置で重鎖内S−S結合を形成している最初のシステイン残基および最後のシステイン残基の位置を決定することによって、IgG1配列と整列させることができる。本明細書中のヒンジ領域は、自然界に存在している配列のヒンジ領域である場合も、また改変体ヒンジ領域である場合もある。改変体ヒンジ領域の2つのポリペプチド鎖は、一般的には、1つのポリペプチド鎖について少なくとも1つのシステイン残基を保持しており、その結果、改変体ヒンジ領域の2つのポリペプチド鎖が2つの鎖の間でジスルフィド結合を形成することができる。本明細書中の好ましいヒンジ領域は、自然界に存在している配列のヒトヒンジ領域であり、例えば、自然界に存在している配列のヒトIgG1ヒンジ領域である。
「機能的なFc領域」は、自然界に存在している配列のFc領域の少なくとも1つの「エフェクター機能」を有している。例示的な「エフェクター機能」としては、C1q結合;補体依存性細胞傷害性(CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒体性細胞傷害性(ADCC);食作用;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体;BCR)のダウンレギュレーションなどが挙げられる。このようなエフェクター機能には、通常、結合ドメインと結合するFc領域(例えば、抗体の可変ドメイン)が必要であり、そして、このような抗体のエフェクター機能を評価するための当該分野で公知の種々のアッセイを使用して評価することができる。
「自然界に存在している配列のFc領域」には、自然界において見られるFc領域のアミノ酸配列と同じアミノ酸配列が含まれる。
「改変体Fc領域」には、少なくとも1つのアミノ酸の改変が原因で、自然界に存在している配列のFc領域のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列が含まれる。好ましくは、改変体Fc領域には、自然界に存在している配列のFc領域又はもとのポリペプチドのFc領域と比較して少なくとも1つのアミノ酸置換(例えば、自然界に存在している配列のFc領域またはもとのポリペプチドのFc領域において、約1個から約10個のアミノ酸置換、および好ましくは、約1個から約5個のアミノ酸置換)を有している。本明細書中の改変体Fc領域は、通常、例えば、自然界に存在している配列のFc領域および/またはもとのポリペプチドのFc領域と少なくとも約80%の配列同一性、あるいは、それらと少なくとも約90%の配列同一性、あるいはそれらと少なくとも約95%もしくはそれ以上の配列同一性を有する。
「親和性が成熟した」抗体は、それらの変化(単数または複数)を有していないもとの抗体と比較して、抗原に対する抗体の親和性に改善を生じる、1つ以上のそのCDRに1つ以上の変化を有している抗体である。好ましい親和性が成熟した抗体は、標的抗原に対してナノモルまたはさらにはピコモルの親和性を有するであろう。親和性が成熟した抗体は、当該分野で公知の手順によって生産される。Marksら、Bio/Technology 10:779−783(1992)には、VHドメインとVLドメインとのシャッフリングによる親和性の成熟が記載されている。CDRおよび/またはフレームワーク残基のランダム突然変異誘発は、Barbesら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,91:3809−3813(1994);Schierら、Gene 169:147−155(1995);Yeltonら、J.Immunol.155:1994−2004(1995);Jacksonら、J Immunol.154(7):3310−9(1995);およびHawkinsら、J.Mol.Biol.,226:889−896(1992)に記載されている。
「可撓性リンカー」は、本明細書中では、ペプチド結合(単数または複数)によって連結され、連結された2つのポリペプチド(例えば、2つのFd領域)に対してさらなる回転自由度を提供する、2つ以上のアミノ酸残基を含むペプチドを意味する。このような回転自由度により、2つ以上の抗原結合部位が可撓性リンカーによって連結されて、それぞれがより効率よく標的抗原(単数または複数)にアクセスできるようになる。適切な可撓性リンカーペプチド配列の例として、gly−ser、gly−ser−gly−ser、ala−ser、およびgly−gly−gly−serが挙げられる。
「単鎖Fc」または「sFv」抗体断片には、抗体のVドメインとVドメインとが含まれる。これらのドメインは1つのポリペプチド鎖中に存在している。一般的には、FvポリペプチドにはさらにVドメインとVドメインとの間にポリペプチドリンカーが含まれ、これによって、sFvが抗原への結合のための所望の構造を形成することが可能になる。sFvの概要については、Pluckthun、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore編.,Springer−Verlag,New York,269−315頁(1994)を参照のこと。
「単離された」ポリペプチド(例えば、抗体)は、同定され、分離され、そして/または、その自然界での環境の成分から回収されているものである。その自然界での環境の混入している成分は、抗体の診断用途または治療用途を妨害する物質であり、これには、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性の溶質もしくは非タンパク質性の溶質が含まれ得る。好ましい実施形態においては、ポリペプチド(抗体を含む)は、(1)Lowry法によって決定した場合に95重量%を超える抗体、最も好ましくは、99重量%を超える抗体となるように、(2)回転式シークエネーター(spinning cup sequenator)の使用によってN末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15個の残基を得るために十分な程度にまで、あるいは(3)クマシーブルー染色、または好ましくは、銀染色を使用して還元または非還元条件下でのSDS−PAGEによって均質になるまで、精製されるであろう。単離された化合物(例えば、抗体または他のポリペプチド)には、組換え細胞中のインサイチュの化合物が含まれる。なぜなら、化合物の自然界での環境の少なくとも1つの成分は存在しないからである。しかし、通常は、単離された化合物は、少なくとも1回の精製工程によって調製されるであろう。
用語「標識」は、本明細書中で使用される場合は、化合物(例えば、抗体またはポリペプチド)に直接または間接的に結合し、その結果、「標識された」化合物が生じる、検出可能な化合物または組成物を意味する。標識は、それ自体が検出可能である場合(例えば、放射性同位元素標識または蛍光標識)、または、酵素標識の場合には、検出可能な基質化合物もしくは組成物の化学的変化を触媒する場合もある。
「固相」については、本発明の化合物が付着することができる非水性マトリックスが意味される。固相の例には、本明細書中では、ガラス(例えば、制御された孔を有しているガラス)、多糖類(例えば、アガロース)、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、およびシリコンから一部または全体が形成されているものが含まれる。特定の実施形態においては、状況に応じて、固相にアッセイプレートのウェルが含まれ得る。他の実施形態においては、固相は精製カラム(例えば、アフィニティークロマトグラフィーカラム)である。この用語にはまた、離れた粒子の不連続な固相も含まれ、例えば、米国特許第4,275,149号に記載されているものである。
「リポソーム」は、種々のタイプの脂質、リン脂質、および/または界面活性剤から構成される小さいベシクルであり、これは哺乳動物への薬剤(例えば、本明細書中に開示される抗ErbB2抗体、および場合により化学療法薬)の送達に有用である。リポソームの成分は、一般的には、生体膜の脂質配置と同様に、二重層の形態に配置されている。
用語「免疫接着物」は、本明細書中で使用される場合には抗体様分子を示し、これは、免疫グロブリン定常ドメインのエフェクター機能とともに異種タンパク質(「接着物」)の結合特異性を兼ね備えている。構造的には、免疫接着物には、抗体の抗原認識および結合部位以外の所望の結合特異性を有しているアミノ酸配列(すなわち、これは「異種」である)と、免疫グロブリン定常ドメインの配列との融合体が含まれる。免疫接着物分子の接着部は、通常、受容体またはリガンドの結合部位を少なくとも含む連続しているアミノ酸配列である。免疫接着物の免疫グロブリン定常ドメイン配列は、任意の免疫グロブリン(例えば、IgG−1、IgG−2、IgG−3、またはIgG−4サブタイプ、IgA(IgA−1およびIgA−2を含む)、IgE、IgD、またはIgM)から得ることができる。
「抗原性因子または抗原性物質」は、血管の発達を刺激する(例えば、血管形成、内皮細胞の増殖、血管の安定性、および/または脈管形成などを促進する)成長因子である。例えば、血管形成因子としては、例えば、VEGFおよびVEGFファミリーのメンバー、PIGF、PDGFファミリー、線維芽細胞増殖因子ファミリー(FGF)、TIEリガンド(アンギオポエチン)、エフェリン、ANGPTL3、ANGPTL4などが挙げられるが、これらに限定はされない。これには、治癒を促進する因子、例えば、成長ホルモン、インシュリン様成長因子−I(IGF−I)、VIGF、表皮成長因子(EGF)、CTGFおよびそのファミリーのメンバー、ならびにTGF−αおよびTGF−βもまた含まれる。例えば、Klagsbrun and D’Amore,Annu.Rev.Physiol.,53:217−39(1991);Streit and Detmar,Oncogene,22:3172−3179(2003);Ferrara & Alitalo,Nature Medicine 5(12):1359−1364(1999);Toniniら、Oncogene,22:6549−6556(2003)(例えば、血管形成因子が列挙されている表1);ならびに、Sato Int.,J.Clin.Oncol.,8:200−206(2003)を参照のこと。
「抗血管形成物質」または「血管形成阻害因子」は、血管形成、脈管形成、または望ましくない血管透過性を直接または間接的に阻害する、低分子量物質、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、単離されたタンパク質、組換えタンパク質、抗体、またはそれらの結合体もしくは融合タンパク質を意味する。例えば、抗血管形成物質は、上記で定義された血管形成物質に対する抗体または他のアンタゴニストであり、例えば、VEGFに対する抗体、VEGF受容体に対する抗体、VEGF受容体による情報伝達をブロックする低分子(例えば、PTK787/ZK2284、SU6668)である。抗血管形成物質にはまた、自然界に存在している血管形成阻害因子(例えば、アンギオスタチン、エンドスタチンなど)も含まれる。例えば、Klagsbrun and D’Amore,Annu.Rev.Physiol.,53:217−39(1991);Streit and Detmar,Oncogene,22:3172−3179(2003)を参照のこと。
用語「有効量」は、哺乳動物の疾患または障害を処置(予防を含む)するために有効な薬剤の量を意味する。したがって、加齢性黄斑変性(AMD)または慢性脈絡膜新生血管(CNV)の場合には、有効量の薬剤によって失明を軽減するまたは予防することができる。AMD治療については、インビボでの効力は、例えば、以下の1つ以上によって測定することができる:所望の時間までのベースラインからの最高矯正視力(BCVA)の平均変化を評価すること、ベースラインと比較して所望の時点の視力における、15文字未満を失った被験体の割合を評価すること、ベースラインと比較して所望の時点での視力における、15文字以上を獲得した被験体の割合を評価すること、所望の時点で、20/2000またはそれよりも悪いvisual−acuity Snellen等量を有している被験体の割合を評価すること、NEI Visual Functioning Questionnaireを評価すること、蛍光眼底血管造影によって評価される、所望の時点でのCNVの大きさとCNVの漏出量とを評価すること。適応症が乾式AMDから湿式AMDへの進行、またはAMDからCMVへの進行の予防である場合には、有効量の薬剤によって、このような進行を阻害、遅延、または部分的もしくは完全にブロックすることができる。この場合、有効量の決定には、疾患の段階付け、疾患の進行の経時的なモニタリング、および所望の結果を得るために必要な投与量の調整が含まれる。
(II.詳細な説明)
本発明は、A33抗原およびJAM1に対して相同性を有している新規マクロファージ関連受容体の使用に関する。これは、胎児の肺のライブラリーからクローニングされ、そして1つの膜貫通Igスーパーファミリーのメンバーのマクロファージ関連(single transmembrane Ig superfamily member macrophage associated)(STigMA)ポリペプチド、または免疫グロブリンファミリーの補体受容体(Complement Receptor of the Immunoglobulin family)(CRIg)ポリペプチドとして同定された。自然界に存在しているヒトCRIgは、2種類のスプライシングされた改変体として発現され、一方は、N末端IgV様ドメインとC末端IgC2様ドメインとを含んでおり、スプライシングされた形態はC末端ドメインを欠失している(それぞれ、配列番号4および6)。いずれの受容体も、1つの膜貫通ドメインと細胞質ドメインとを有しており、これには、インビトロではマクロファージにおいて構成的にリン酸化されるチロシン残基が含まれている。マウスのホモログは、ヒトCRIg(配列番号8)に対して67%の配列相同性を有していることが明らかになった。全長のヒトCRIgポリペプチドにはまた、N末端セグメントが失われている短いバージョンも有する(配列番号2)。
以下の実施例に示すように、CRIgは補体C3bに結合し、C3転換酵素を阻害する。CRIgは、組織常在性マクロファージ上で選択的に発現され、その発現は、デキサメタゾンおよびIL−10によってアップレギュレートされ、LPSおよびIFN−γによってダウンレギュレートされ、そして、B細胞応答またはT細胞応答とは独立してコラーゲン誘導関節炎および抗体誘導関節炎を阻害する。
加えて、CRIgはクップファー細胞にて高度に発現され、C3bおよびiC3bオプソニンに結合し、そして循環中の病原体の迅速なクリアランスに必要であることが明らかにされている。構造的には、CRIgは、これが、CR1およびCR2中の結合したC3b−およびC4b結合の短いコンセンサス反復配列、ならびに、C3およびCR4中に存在しているインテグリン系(integring−line)ドメインを欠いている点で、既知の補体受容体とは異なる。補体受容体CR1〜4は、広範囲の様々な細胞タイプで発現されるが、CRIg発現は、肝臓のクップファー細胞を含む組織常在性マクロファージに限られる。
枯渇実験によって、感染の初期の間のリステリア(Listeria)の迅速なC3依存性クリアランスにおけるクップファー細胞の役割が確立されている(Kaufmann,Annu Rev.Immunol.11:129−163(1993);Gregoryら、J.Immunol.168:308−315(2002))が、このプロセスに関与する受容体はこれまでのところは同定されていない。以下の実施例に示す実験は、マクロファージによって発現されたCRIgが、病原体の表面に蓄積したC3bおよびiC3bに結合することを明らかにしている。C3bおよびiC3bに対するこの二重結合活性が原因で、CRIgは、C3分解成分の両方でオプソニン化されたリステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes:LM)の効率的なクリアランスに必要である。
C3オプソニン化粒子の迅速な肝臓でのクリアランスにおけるCRIgの重要性は、循環からC3−オプソニン化LMを効率よくクリアランスするために、CRIgノックアウト(ko)マウスの障害によってさらにサポートされる。これによって、種々の臓器における病原体の負荷量の増加および死亡率の増大が生じる。C3が存在しない場合には、CRIg ko野生型(wt)マウスは、リステリア(Listeria)を同様に十分にクリアランスし、このことは、C3の存在に対するCRIg機能の依存性を示している。
肝臓のクップファー細胞によるLMのクリアランスにおける補体受容体C1〜4の役割は十分には確立されていない。CR1およびCR2は、組織常在性マクロファージには存在せず、そして濾胞樹状細胞およびB細胞にて主に発現され、ここではこれらは、T細胞応答およびB細胞応答を調節する役割を担っている(Krych−Goldber and Atkinson,Immunol.Rev.180:112−122(2001);Molinaら、J.Exp.Med.175:121−129(1992)、および実施例)。CR3は、KCでは低いレベルで発現されているが、CR3とCR4との両方に共通しているCD18 β鎖を欠失しており、その結果、非機能性の受容体を生じるkoマウスは、感染しやすくなるのではなく、感染しにくくなることが示されている(Wuら、Infect.Immun.71:5986−5993(2003))。したがって、CRIgはC3−オプソニン化粒子の迅速なクリアランスにおける細網内皮食作用系の主要な成分を示す。
肝臓のクップファー細胞におけるその発現に加えて、CRIgは種々の組織(腹膜、心臓、肺、副腎、および腸を含む)中のマクロファージのサブ集団に存在する。これらのマクロファージは、死亡した細胞および細胞の破片の食作用において中心的な役割を担っていることが知られている(Almeidaら、Ann.N.Y.Acad.Sci.1019:135−140(2004);Castellucci and Zaccheo,Prog.Clin.Biol.Res.296:443−451(1989);Taylorら、Annu.Rev.Immunol.23:901−944(2005))。これらの常在性マクロファージでのCRIgの発現によって、種々の粒子の補体依存性オプソニン食作用(opsonophagocytosis)が媒介され得る。このことは、CRIg koマウスは、循環MLの負荷量が増加するにもかかわらず、それらの心臓および肝臓組織においてLMの低下を示すという知見によって支持される。したがって、CRIgは、組織マクロファージで発現される新規の受容体を提示し、これは、補体でオプソニン化された病原体の迅速なクリアランスについてkep portalとしての役割を担っている。
以下の実施例に示される結果は、再利用されているベシクルの細胞内プールにてCRIgが発現され、それによって、C3オプソニン化粒子への結合のための細胞表面でのCRIgの持続的な供給が確実になることをさらに示している。加えて、CRIgを発現するエンドソームは、粒子の接触部位に迅速に動員され、これらは、膜がファゴソームを形成するように誘導されることを助けることができる。C3オプソニン化粒子の食作用におけるCRIgの重要性は、CRIgを欠失しているKCがC3bおよびiC3bに結合することができず、それによってC3オプソニン化リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes:LM)の食作用の減少が生じることによって示される(実施例を参照のこと)。
CRIgの細胞内局在化および細胞内輸送は、既知の補体C3受容体とは異なる。CRIgは構造的に再利用されているエンドソームに局在化させられるが、CR1、CR3、およびCR4は、分泌ベシクルに存在しており、これは、細胞がサイトカインで刺激されると血漿膜と結合し(Sengelovら、J.Immunol.153:804−810(1994);およびSengelovら、Crit.Rev.Immunol.15:107−131(1995))、そして受容体の架橋後にのみ、微飲作用のプロセスによってリガンドをインターナライズする(Carpentierら、Cell Regul.2:41−55(1991);Brownら、Curr.Opin.Immunol.3:76−82(1991))。結果として、細胞表面でのCRIgの発現は細胞の刺激の後にダウンレギュレートされ、一方、CR1およびCR3の細胞表面での発現は刺激の後に増加する。この増加は、結合および食作用の重要な工程を担っており、CRIgと同様に、CR3は、phagocytic cupおよびファゴソームに周辺のC3オプソニン化粒子を集める(Aderem and Underhill,Annu.Rev.Immunol.17:593−623(1999))。休止しているマクロファージにおけるCRIgによるリガンドの構造的な再利用およびエンドサイトーシスは、炎症応答の前の細菌感染の初期の間の補体でオプソニン化された粒子の結合における役割(例えば、活性化された食細胞の動員)、ならびに、炎症が起こっていない条件下での循環からの粒子の除去の間の補体でオプソニン化された粒子の結合における役割を最初に有している。
補体は、体の防御において、そして免疫系の他の成分とともに、体内への病原体の侵襲から個体を防御することにおいて重要な役割を担っている。しかし、適切に活性化または制御されないと、補体は、宿主組織に対して損傷を生じる可能性もある。補体の不適切な活性化は、補体が関係している疾患または障害(例えば、免疫複合体病および自己免疫疾患、ならびに種々の炎症性疾患(補体によって媒介される炎症組織の損傷を含む))と呼ばれる種々の疾患の発病に関係している。補体が関係している疾患の病状は様々であり、長期間または短期間の補体の活性化、カスケード全体の活性化、カスケードの1つ(古典補体経路、または代替補体経路)のみの活性化、カスケードのいくつかの成分のみの活性化などが含まれ得る。いくつかの疾患においては、補体断片の補体の生物学的活性によって組織の損傷および疾患が生じる。したがって、補体の阻害因子が、高い治療可能性を有する。代替補体経路の選択的阻害因子が特に有用である。なぜなら、古典補体経路による血液からの病原体および他の生物のクリアランスは不完全なままであるからである。
C3bは体に侵襲する微生物の表面を共有結合によってオプソニン化し、食細胞に存在している補体受容体のリガンドとして作用し、最終的には病原体の食作用を導くことが知られている。上記で列挙されたような多くの病理学的状況においては、補体は、血管壁、関節の軟骨、肝臓の糸球体、本来備わっている補体阻害因子を欠いている細胞を含む細胞の表面で活性化される。補体の活性化によってアナフィラトキシンC3aとC5aとの化学走化特性によって引き起こされる炎症が生じ、そして膜攻撃複合体が生じることによって自己細胞に対する損傷が引き起こされ得る。いずれの特定の理論にもとらわれることなく、C3bの結合によって、CRIgはC3転換酵素を阻害し、それによって、補体によって媒介される疾患(その例は上記に列挙されている)を予防または軽減すると考えられる。
(本発明の化合物)
(1.自然界に存在している配列のCRIgポリペプチドと改変体CRIgポリペプチド)
自然界に存在しているCRIg分子(それらの核酸配列およびポリペプチド配列を伴う)の調製は上記で議論されている。実施例1は、配列番号4の全長のhuCRIgのクローニングを示す。CRIgポリペプチドは、CRIg核酸を含むベクターで形質転換またはトランスフェクトされた細胞を培養することによって生産することができる。もちろん、当該分野で周知である別の方法を使用してCRIgを調製できることが予想される。例えば、CRIg配列またはその一部は、固相技術を使用する直接のペプチド合成によって生産することができる(例えば、Stewartら、Solid−Phase Peptide Synthesis,W.H.Freeman Co.,San Francisco,CA(1969);Merrifield,J.Am.Chem.Soc.,85:2149−2154(1963)を参照のこと)。インビトロでのタンパク質合成は、手作業による技術を使用して、または自動で行うことができる。自動による合成は、例えば、Applied Biosystems Peptide Synthesizer(Foster City,CA)を製造業者の説明書にしたがって使用して行うことができる。CRIgの種々の部分を別々に化学合成し、化学的または酵素的方法を使用して結合させて全長のCRIgとすることもできる。
CRIg改変体は、自然界に存在している配列のCRIgポリペプチドをコードするDNA内に適切なヌクレオチド変化を導入することによって、または、所望のCRIgポリペプチドの合成によって調製することができる。当業者は、アミノ酸の変化によってCRIgの翻訳後プロセスを変化させることができる、例えば、グリコシル化部位の数または位置を変化させるか、あるいは、膜結合特性を変化させることができることを十分に理解しているであろう。
例えば、本明細書中に記載される自然界に存在している配列のCRIgポリペプチドにおけるバリエーションは、例えば、米国特許第5,364,934号に示されている、保存的および非保存的変異についての任意の技術および指針を使用して作成することができる。バリエーションは、自然界に存在している配列のCRIgまたは改変体CRIgをコードする1つ以上のコドンの置換、欠失、または挿入であり得、これによって、対応する自然界に存在している配列のCRIgまたは改変体CRIgと比較してそのアミノ酸配列において変化が生じる。場合により、バリエーションは、自然界に存在している配列のCRIgポリペプチドの1つ以上のドメインにおいて、任意の他のアミノ酸を少なくとも1つのアミノ酸で置換することによるものである。所望の活性に悪影響を生じることなくどのアミノ酸残基を挿入、置換、または欠失させることができるかを決定する指針は、CRIgの配列を相同である既知のタンパク質分子の配列と比較し、相同性が高い領域で作成されるアミノ酸配列変化の数を最小にすることによって捜し出すことができる。
アミノ酸置換は、類似する構造および/または化学特性を有している別のアミノ酸での1つのアミノ酸の置き換え(例えば、セリンでのロイシンの置き換え)、すなわち、保存的なアミノ酸置換の結果であり得る。挿入または欠失は、場合により1個から5個のアミノ酸の範囲であり得る。許容されるバリエーションは、配列の中にアミノ酸の挿入、欠失、または置換を体系的に作成し、そして、得られる改変体を以下の実施例に記載されるインビトロアッセイにおいて活性について試験することによって決定することができる。
バリエーションは、オリゴヌクレオチドによって媒介される(部位特異的)突然変異誘発、アラニンスキャン、およびPCR突然変異誘発などの、当該分野で公知の方法を使用して作成することができる。部位特異的突然変異誘発(Carterら、Nucl.Acids Res.,13:4331(1986);Zollerら、Nucl.Acids Res.,10:6487(1987))、カセット突然変異誘発(Wellsら、Gene,34:315(1985))、制限選択突然変異誘発(Wellsら、Philos.Trans.R.Soc.London SerA,317:415(1986))、または他の公知の技術を、クローニングされたDNAに対して行って、CRIg改変体DNAを得ることができる。
スキャンアミノ酸分析もまた、連続している配列に沿って変化され得る1つ以上のアミノ酸を同定するために使用することができる。中でも、好ましいスキャンアミノ酸は比較的小さい中性のアミノ酸である。このようなアミノ酸としては、アラニン、グリシン、セリン、およびシステインが挙げられる。通常、アラニンがこのグループの中でも好ましいスキャンアミノ酸である。なぜなら、これによってβ−炭素を超える側鎖が排除され、改変体の主鎖の立体構造が変わる可能性は低いからである。アラニンは一般的にも好ましい。なぜなら、これは最も一般的なアミノ酸であるからである。さらに、これは、埋もれている位置および露出している位置の両方で頻繁に見られる(Creighton,The
Proteins,(W.H.Freeman & Co.,N.Y.);Chothia,J.Mol.Biol.,150:1(1976))。アラニン置換によって十分な量の改変体が得られない場合には、異性体(isoteric)アミノ酸を使用することができる。
膜貫通領域および/または細胞質領域の全体または一部の除去あるいは不活化によってはCRIgの生物学的活性が損なわれることはないことが明らかになっている。したがって、膜貫通領域および/または細胞質領域が欠失/不活化されているCRIg改変体が、本明細書中の範囲に具体的に含まれる。同様に、huCRIgの生物学的に活性な自然界に存在している短い形態とマウスホモログとの存在によって明らかであるように、IgC2領域を、生物学液活性を損なうことなく除去することができる。
自然界に存在している配列のCRIgポリペプチドおよび改変体CRIgポリペプチドの共有結合による改変が本発明の範囲に含まれる。共有結合による改変の1つのタイプには、CRIgの標的化されるアミノ酸残基を、CRIgポリペプチドの選択された側鎖またはN末端残基もしくはC末端残基と反応させることができる有機誘導体化剤と反応させることが含まれる。二官能性物質での誘導体化は、例えば、水不溶性支持マトリックスまたは表面へのCRIgの架橋のために、例えば、抗CRIg抗体を精製するための方法での使用に有用である。一般的に使用されている架橋剤として、例えば、1,1−ビス(ジアゾアセチル)−2−フェニルエタン、グルタルアルデヒド、N−ヒドロキシコハク酸エステル、例えば、4−アジドサリチル酸のエステル、ホモ二官能性イミドエステル(3,3’−ジチオビス(プロピオン酸スクシンイミジル)などのジスクシンイミジルエステルを含む)、二官能性マレイミド、例えば、ビス−N−マレイミド−1,8−オクタン、ならびに、メチル−3−[(p−アジドフェニル)ジチオ]プロピオン酸イミドなどの物質が挙げられる。
他の改変として、グルタミニル残基およびアスパラギニル残基の、それぞれ対応するグルタミル残基およびアスパルチル残基への脱アミド化、プロリンおよびリジンのヒドロキシル化、セリル残基またはスレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リジン、アルギニン、およびヒスチジン側鎖のα−アミノ基のメチル化(T.E.Creighton,Proteins:Structure and Molecular Properties,W.H.Freeman & Co.,San Francisco,79−86頁(1983))、N末端アミンのアセチル化、ならびに任意のC末端カルボキシル基のアミド化が挙げられる。
本発明の範囲に含まれるCRIgポリペプチドの別のタイプの共有結合による改変には、ポリペプチドの自然界でのグリコシル化パターンの変更が含まれる。「自然界でのグリコシル化パターンの変更」は、本明細書中での目的について、自然界に存在している配列のCRIgにおいて見られる1つ以上の炭水化物部分を欠失させること、ならびに/あるいは、自然界に存在している配列のCRIgには存在しない1つ以上のグリコシル化部位を付加すること、ならびに/または、グリコシル化部位(単数または複数)に結合させる糖残基の比および/もしくは組成を変化させることを意味するように意図される。マウスCRIgの予想される自然界でのグリコシル化部位は、170位において配列NGTGに見られる。
ポリペプチドのグリコシル化は、通常、N結合またはO結合のいずれかである。N結合グリコシル化は、アスパラギン残基の側鎖に対する炭水化物部分の結合を意味する。トリペプチド配列(アスパラギン−X−セリンおよびアスパラギン−X−スレオニン、式中、Xはプロリン以外のアミノ酸である)は、アスパラギン側鎖に対する炭水化物部分の酵素的結合のための認識配列である。O結合グリコシル化は、糖類であるN−アセチルガラクトサミン、ガラクトース、またはキシロースの1つの、ヒドロキシアミノ酸(最も一般的には、セリンまたはスレオニン)に対する結合を意味するが、5−ヒドロキシプロリンまたは5−ヒドロキシリジンもO結合グリコシル化に含まれる場合がある。自然界に存在している配列のCRIgはわずかな量しかN−グリコシル化を有していない。CRIgポリペプチドへのグリコシル化部位の付加は、アミノ酸配列を変化させることによって行うことができる。この変化は、例えば、自然界に存在している配列のCRIgへの1つ以上のセリンもしくはスレオニン残基の付加、または1つ以上のセリンもしくはスレオニン残基での置換によって(O結合グリコシル化部位について)、あるいは、N結合グリコシル化については認識配列の付加によって作成することができる。CRIgアミノ酸配列は、場
合により、DNAレベルでの変化によって、特に、所望のアミノ酸に翻訳され得るコドンが生じるように予め選択された塩基でCRIgポリペプチドをコードするDNAを変異させることによって、変更することができる。
CRIgポリペプチド上の炭水化物部分の数を増加させる別の手段は、ポリペプチドに対するグリコシドの化学的または酵素的カップリングによる。このような方法は、当該分野、例えば、1987年9月11日に公開されたWO87/05330に、そしてAplin and Wriston,CRC Crit.Rev.Biochem.,259−306頁(1981)に記載されている。
CRIgポリペプチドに存在している炭水化物部分の除去は、グリコシル化の標的となるアミノ酸残基をコードするコドンの、化学的もしくは酵素的置換、または変異による置換によって行うことができる。化学的な脱グリコシル化技術は当該分野で公知であり、例えば、Hakimuddin,ら、Arch.Biochem.Biophys.,259:52(1987)、およびEdgeら、Anal.Biochem.,118:131(1981)に記載されている。ポリペプチド上の炭水化物部分の酵素による切断は、Thotakuraら、Meth.Enzymol.,138:350(1987)に記載されているように、種々のエンドグリコシダーゼおよびエキソグリコシダーゼの使用によって行うことができる。
CRIgの別のタイプの共有結合による改変には、例えば、米国特許第4,640,835号;同第4,496,689号;同第4,301,144号;同第4,670,417号;同第4,791,192号;または同第4,179,337号に記載されている様式での、種々の非タンパク質性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、またはポリオキシアルキレン)の1つへのCRIgポリペプチドの連結が含まれる。
本発明の自然界に存在しているCRIgおよび改変体CRIgはまた、別の異種ポリペプチドまたはアミノ酸配列に融合されたCRIgの断片を含む、CRIgを含むキメラ分子を形成させるための方法で改変される場合もある。1つの実施形態においては、このようなキメラ分子には、抗タグ抗体が選択的に結合することができるエピトープを提供するタグポリペプチドとのCRIgの融合体が含まれる。エピトープタグは、一般的には、CRIgポリペプチドのアミノ末端またはカルボキシル末端に配置される。このようなエピトープタグ化形態のCRIgポリペプチドの存在は、タグポリペプチドに対する抗体を使用して検出することができる。また、エピトープタグの供給により、CRIgポリペプチドを、抗タグ抗体またはエピトープタグに結合する別のタイプの親和性マトリックスを使用する親和性精製によって容易に精製できるようになる。種々のタグポリペプチドおよびそれらのそれぞれの抗体は当該分野で周知である。例として、ポリ−ヒスチジン(poly−his)タグまたはポリ−ヒスチジン−グリシン(poly−his−gly)タグ;flu HAタグポリペプチドおよびその抗体12CA5(Fieldら、Mol.Cell.Biol.,8:2159−2165(1988);c−mycタグおよびそれに対する8F9、3C7、6E10、G4、B7、および9E10抗体(Evanら、Molecular and Cellular Biology,5:3610−3616(1985));ならびに、単純ヘルペスウイルス糖タンパク質D(gD)タグとその抗体(Paborskyら、Protein Engineering,3(6):547−553(1990))が挙げられる。他のタグポリペプチドとして、Flag−ペプチド(Hoppら、BioTechnology,6:1204−1210(1988));KT3エピトープペプチド(Martinら、Science,255:192−194(1992));およびα−チューブリンエピトープペプチド(Skinnerら、J.Biol.Chem.,266:15163−15166(1991));ならびに、T7遺伝子10タンパク質ペプチドタグ(Lutz−Freyermuthら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87:6393−6397(1990))が挙げられる。
別の実施形態においては、キメラ分子には、免疫グロブリンまたは免疫グロブリンの特定の領域とのCRIgポリペプチドまたはその断片の融合体が含まれ得る。二価の形態のキメラ分子については、このような融合は、IgG分子のFc領域に対する融合であり得る。これらの融合ポリペプチドは抗体様分子であり、これは、免疫グロブリン定常ドメインのエフェクター機能と異種タンパク質の結合特異性(接着)とを兼ね備えており、そして多くの場合には、免疫接着物と呼ばれる。構造的には、免疫接着物には、抗体の抗原認識および結合部位以外の所望の結合特異性を有しているアミノ酸配列(すなわち、異種)と、免疫グロブリン定常ドメイン配列との融合体が含まれる。免疫接着物分子の接着部は、通常、受容体またはリガンドの結合部位を少なくとも含む連続しているアミノ酸配列である。免疫接着物の免疫グロブリン定常ドメイン配列は、任意の免疫グロブリン(例えば、IgG−1、IgG−2、IgG−3、またはIgG−4サブタイプ、IgA(IgA−1およびIgA−2を含む)、IgE、IgD、またはIgM)から得ることができる。
適切な免疫グロブリン定常ドメイン配列(免疫接着物)に連結された受容体配列から構築されたキメラは当該分野で公知である。文献で報告されている免疫接着物には、T細胞レセプターの融合体(Gascoigneら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84:2936−2940(1987));CD4の融合体(Caponら、.,Nature 337:525−531(1989);Trauneckerら、Nature,339:68−70(1989);Zettmeisselら、DNA Cell Biol.USA,9:347−353(1990);Byrnら、Nature,344:667−670(1990));L−セレクチン(ホーミング受容体)の融合体(Watsonら、J.Cell.Biol.,110:2221−2229(1990);Watsonら、Nature,349:164−167(1991));CD44の融合体(Aruffoら、Cell,61:1303−1313(1990));CD28およびB7の融合体(Linsleyら、J.Exp.Med.,173:721−730(1991));CTLA−4の融合体(Lisleyら、J.Exp.Med.174:561−569(1991));CD22の融合体(Stamenkovicら、Cell,66:1133−11144(1991));TNF受容体の融合体(Ashkenaziら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:10535−10539(1991);Lesslauerら、Eur.J.Immunol.,27:2883−2886(1991);Peppelら、J.Exp.Med.,174:1483−1489(1991));NP受容体の融合体(Bennettら、J.Biol.Chem.266:23060−23067(1991));ならびに、IgE受容体αの融合体(Ridgwayら、.,J.Cell.Biol.,115:abstr.1448(1991))が挙げられる。
最も単純であり、最も直接的な免疫接着物の構造では、「接着」タンパク質の結合領域(単数または複数)が、免疫グロブリン重鎖のヒンジ領域およびFc領域と組み合わされる。通常、本発明のCRIg−免疫グロブリンキメラを調製する場合には、CRIgポリペプチドまたはCRIgポリペプチドの細胞外ドメインをコードする核酸が、免疫グロブリン定常ドメイン配列のN末端をコードする核酸に対して、C末端で融合される。しかし、N末端での融合も可能である。
通常、このような融合体においては、コードされるキメラポリペプチドは、免疫グロブリン重鎖のヒンジ領域、ならびに定常領域のCH2ドメインおよびCH3ドメインを保持している。融合はまた、定常ドメインのFc部分のC末端に対して、また、重鎖のCH1に対してすぐN末端に、もしくは軽鎖の対応する領域に対して行うこともできる。
融合が行われる正確な部位は重要ではない。特定の部位が周知であり、CRIg−免疫グロブリンキメラの生物学的活性、分泌または結合特性を最適化するように選択することができる。
いくつかの実施形態において、CRIg−免疫グロブリンキメラは、単量体として、またはヘテロ二量体もしくはホモ多量体として、そして具体的には、WO91/08298に本質的に記載されている二量体または四量体としてアセンブリされる。
好ましい実施形態において、自然界に存在している配列のヒトCRIgポリペプチド(例えば、huCRIg(long)(配列番号4)またはhuCRIg(short)(配列番号6)の配列、あるいは、CRIg細胞外ドメインの配列(huCRIg(long)およびhuCRIg(short)のECDを含む)が、免疫グロブリン(例えば、免疫グロブリンG(IgG1))のエフェクター機能を含む抗体(具体的には、Fcドメイン)のC末端部分のN末端に融合される。CRIgまたはCRIg細胞外ドメイン配列に対して重鎖定常領域全体を融合させることができる。しかし、より好ましくは、パパイン切断部位(これによってIgG Fcが化学的に定義される;216位の残基、重鎖定常領域の最初の残基を114または他の免疫グロブリンの同様の部位とする)のすぐ上流にあるヒンジ領域で始まる配列が融合に使用される。特に好ましい実施形態において、CRIgのアミノ酸配列が、ヒンジ領域およびCH2およびCH3に、またはIgG1、IgG2、もしくはIgG3重鎖のCH1、ヒンジ、CH2およびCH3ドメインに融合される。融合が行われる正確な部位は重要ではなく、最適な部位は日常的に行われる実験によって決定することができる。特異的なCRIg−Ig免疫接着物の構造が図59〜61に示される。
いくつかの実施形態において、CRIg−免疫グロブリンキメラは、多量体として、そして具体的には、ホモ二量体またはホモ四量体としてアセンブリされる。一般的には、これらのアセンブリされた免疫グロブリンは公知の単位構造を有するであろう。基本的な4つの鎖の構造単位は、その中にIgG、IgD、およびIgEが存在している形態である。4つの単位はより大きな分子量の免疫グロブリンで繰り返される。IgMは、一般的には、ジスルフィド結合によって共に保たれる基本的な4単位の五量体として存在し、IgAグロブリン(および場合によってはIgGグロブリン)もまた血清中では多量体形態で存在し得る。多量体の場合には、個々の4つの単位が同じである場合も、異なる場合もある。
あるいは、CRIgまたはCRIg細胞外ドメインの配列を、免疫グロブリン重鎖配列と軽鎖配列との間に挿入することができ、その結果、キメラ重鎖を含む免疫グロブリンが得られる。この実施形態において、CRIg配列は、ヒンジドメインとCH2ドメインとの間、またはCH2ドメインとCH3ドメインとの間のいずれかに、免疫グロブリンのそれぞれのアームの免疫グロブリン重鎖の3’末端に融合される。同様の構造が、Hoogenboomら、Mol.Immunol.,28:1027−1037(1991)によって報告されている。
免疫グロブリン軽鎖の存在は本発明の免疫接着物においては必要ないが、免疫グロブリン軽鎖は、CRIg免疫グロブリン重鎖融合ポリペプチドに共有結合されて、またはCRIg細胞外ドメインに直接融合されて存在する場合がある。前者の場合には、通常は、免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAは、CRIg−免疫グロブリン重鎖融合タンパク質をコードするDNAと一緒に発現する。分泌されると、ハイブリッドの重鎖と軽鎖とが共有結合して、2つのジスルフィド結合した免疫グロブリン重鎖−軽鎖対を含む免疫グロブリン様構造が提供される。このような構造の調製に適している方法は、例えば、1989年3月28日に発行された米国特許第4,816,567号に開示されている。
本発明の特定のCRIg−Ig融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、図59、60、および67〜70に示される。図67〜70に示すように、例えば、融合タンパク質には、CRIgと免疫グロブリン配列との間にリンカー(例えば、短いペプチド配列(例えば、DKTHT))が含まれる場合がある。加えて、いくつかの構築物の中では、CRIg膜貫通(TM)領域と免疫グロブリン(Fc)領域との間の配列(本明細書中では「ストーク(stalk)」配列と呼ばれる)を欠失することができる。図67〜70に示す種々のCRIg構築物中のリンカーが始まるアミノ酸位置は、以下のとおりである:huCRIg−long−Fc+stalk;267位;huCRIg−long−Fc−stalk:233位;huCRIg−short−Fc+Stalk:173位;huCRIg−short−Fc−stalk:140位。
(2.自然界に存在している配列のCRIgポリペプチドおよび改変体CRIgポリペプチドの調製)
自然界に存在している配列のCRIgポリペプチドをコードするDNAは、CRIg mRNAを有し、且つ検出可能なレベルでこれを発現すると考えられる組織から調製されたcDNAライブラリーから得ることができる。したがって、ヒトCRIg DNAは、実施例1に記載するように、ヒト組織から調製されたcDNAライブラリーから得ることが好都合であり得る。CRIgをコードする遺伝子はまた、ゲノムライブラリーから、または、オリゴヌクレオチドの合成によって得ることもできる。
ライブラリーは、目的の遺伝子またはそれによってコードされるタンパク質を同定するために設計されたプローブ(例えば、CRIgに対する抗体、または少なくとも約20〜80塩基のオリゴヌクレオチド)でスクリーニングすることができる。cDNAまたはゲノムライブラリーの選択されたプローブでのスクリーニングは、Sambrookら、Molecular Cloninig:A Laboratory Manual(New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)に記載されている標準的な手順を使用して行うことができる。CRIgをコードする遺伝子を単離するための別の手段は、PCR方法を使用することである(Sambookら、前出;Dieffenbachら、PCR Primer:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1995))。
実施例1に、cDNAライブラリーのスクリーニングのための技術を記載する。プローブとして選択されるオリゴヌクレオチド配列は、擬陽性が最小になるように十分な長さ且つ十分な明白性のものでなければならない。オリゴヌクレオチドは、それがスクリーニングされるライブラリー中のDNAにハイブリダイズすると検出できるように標識されることが好ましい。標識方法は当該分野で周知であり、これには、32P標識ATPのような放射性同位元素標識、ビオチニル化、または酵素標識の使用が含まれる。中程度のストリンジェンシーおよび高いストリンジェンシーを含むハイブリダイゼーション条件は、Sambrookら(前出)において提供されている。
このようなライブラリーのスクリーニング方法において同定された配列は、GenBankなどの公のデータベースまたは他の個人的な配列のデータベースに蓄積されており、入手することができる他の既知の配列と比較し、整列させることができる。分子の定義された領域での、または全長の配列にわたる配列同一性(アミノ酸レベルまたはヌクレオチドレベルのいずれか)は、相同性を測定するために様々なアルゴリズムを使用する、BLAST、BLAST−2、ALIGN、DNAstar、およびINHERITなどのコンピューターソフトウェアプログラムを使用する配列アラインメントによって決定することができる。
タンパク質をコードする配列を有している核酸は、選択されたcDNAまたはゲノムライブラリーを、最初に、本明細書中に開示される推定されるアミノ酸配列を使用してスクリーニングし、そして必要に応じて、Sambrookら(前出)において記載されているような従来のプライマー伸長手順を使用して、cDNAに逆転写されていない可能性があるmRNAの前駆体およびプロセシング中間体を検出することによって得られる場合もある。
宿主細胞は、CRIgの生産のために、本明細書中に記載される発現ベクターまたはクローニングベクターでトランスフェクトまたは形質転換され、プロモーターの誘導、形質転換体の選択、または所望の配列をコードする遺伝子の増幅に適切であるように改変された従来の栄養培地の中で培養される。培養条件(例えば、培地、温度、pHなど)は、過度の実験を行うことなく当業者であれば選択することができる。一般的には、細胞培養物の生産性を最大にするための原理、プロトコール、および実践的技術は、Mammalian Cell Biotechnology:A Practical Approach,M.Butler編(IRL Press,1991)およびSambrookら(前出)に見ることができる。
トランスフェクションの方法は当業者に公知であり、例えば、CaPO4およびエレクトロポレーションである。使用される宿主細胞に応じて、形質転換が、そのような細胞に適切な標準的な技術を使用して行われる。Sambrookら(前出)に記載されているような塩化カルシウムを使用するカルシウム処理、またはエレクトロポレーションが、通常は、原核生物、または実質的な細胞壁バリアを含む他の細胞に使用される。アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)での感染は、Shawら、Gene,23:315(1983)および1989年6月29日に公開されたWO89/05859に記載されているように、特定の植物細胞の形質転換に使用される。そのような細胞壁を有さない哺乳動物細胞については、Graham
and von der Eb,Virology,52:456−457(1978)のリン酸カルシウム沈殿法を使用することができる。哺乳動物細胞宿主システムの形質転換の一般的な態様は、米国特許第4,399,216号に記載されている。酵母への形質転換は、通常、Van Solingenら、J.Bact.,130:946(1977)およびHsiaoら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),76:3829(1979)の方法にしたがって行われる。しかし、細胞にDNAを導入するための他の方法(例えば、核マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、完全な細胞との細菌プロトプラストの融合、またはポリカチオン(例えば、ポリブレン、ポリオルニチン)による)もまた使用することができる。哺乳動物細胞を形質転換するための種々の技術については、Keownら、Methods in Enzymology,185:527−537(1990)およびMansourら、Nature,336:348−352(1988)を参照のこと。
本明細書中のベクターにおけるDNAのクローニングまたは発現に適している宿主細胞として、原核生物、酵母、または高等真核生物細胞が挙げられる。適切な原核生物として、真性細菌(例えば、グラム陰性菌またはグラム陽性菌、例えば、大腸菌(E.coli)などの腸内細菌科(Enterobacteriaceae))が挙げられるがこれらに限定はされない。種々の大腸菌(E.coli)株(例えば、E.coliK12株MM294(ATCC31,446);E.coli X1776(ATCC31,537);E.coli株W3110(ATCC27,325)、およびK5772(ATCC53,635))を公に入手することができる。
原核生物に加えて、真核微生物(例えば、糸状菌または酵母)が、CRIgをコードするベクターに適しているクローニング宿主または発現宿主である。サッカロマイセス・セレビッシェ(Saccharomyces cerevisiae)は、一般的に使用されている下等真核宿主微生物である。
グリコシル化されたCRIgの発現に適している宿主細胞は、多細胞生物に由来する。無脊椎動物細胞の例として、ショウジョウバエ(Drosophila)S2およびヨウトガ(Spodoptera)Sf9などの昆虫細胞、さらには、植物細胞が挙げられる。有用な哺乳動物宿主細胞株の例として、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞およびCOS細胞が挙げられる。さらに特異的な例として、SV40で形質転換されたサル腎臓CV1細胞(COS−7、ATCC CRL 1651);ヒト胚性腎臓細胞(293、または懸濁培養での増殖のためにサブクローニングされた293細胞、Grahamら、J.Gen.Virol.,36:59(1977));チャイニーズハムスター卵巣細胞/−DHFR(CHO、Urlaub and Chasin、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4216(1980));マウスセルトリ細胞(TM4、Mather,Biol.Reprod.,23:243−251(1980));ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝臓細胞(Hep G2、HB 8065);およびマウスの乳腺腫瘍細胞(MMT 060562、ATCC CCL51)が挙げられる。適切な宿主細胞の選択は、当業者の能力の範囲内とみなされる。
CRIgをコードする核酸(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)は、クローニング(DNAの増幅)のため、または発現のために複製可能なベクターに挿入することができる。種々のベクターは公に入手することができる。ベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、ウイルス粒子、またはファージの形態であり得る。適切な核酸配列を、種々の手順によってベクターに挿入することができる。一般的には、DNAは、当該分野で公知の技術を使用して、適切な制限エンドヌクレアーゼ部位(単数または複数)に挿入される。ベクター成分には、通常、1つ以上のシグナル配列、複製起点、1つ以上のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、および転写終結配列が含まれるが、これらに限定はされない。これらの成分の1つ以上を含む適切なベクターの構築には、当業者に公知である標準的な連結技術が使用される。
CRIgポリペプチドは、組換えによって直接的に生産することができるだけではなく、成熟タンパク質またはポリペプチドのN末端に特異的な切断部位を有しているシグナル配列または他のポリペプチドであり得る異種ポリペプチドとの融合ポリペプチドとしても生産することができる。一般的には、シグナル配列は、ベクターの成分であり得るか、またはベクターに挿入されるCRIg DNAの一部であり得る。シグナル配列は、例えば、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、lpp、または熱安定性エンテロトキシンIIリーダーのグループから選択される原核生物のシグナル配列であり得る。酵母での選択については、シグナル配列は、例えば、酵母のインベルターゼリーダー、α因子リーダー(サッカロマイセス(Sacchromyces)およびクルイベロマイセス(Kluyveromyces)の“−因子リーダーを含む、後者は、米国特許第5,010,182号に記載されている)、または酸性ホスファターゼのリーダー、カンジダ・アルビカンス(C.albicans)グルコアミラーゼのリーダー(1990年4月4日に公開されたEP 362,179)、または1990年11月15日に公開されたWO90/13646に記載されているシグナルであり得る。哺乳動物細胞での発現においては、哺乳動物のシグナル配列を、タンパク質の分泌を指示するために使用することができ、例えば、同じ種または関連する種の分泌型ポリペプチドに由来するシグナル配列、ならびにウイルスの分泌リーダーであり得る。
発現ベクターおよびクローニングベクターのいずれにも、ベクターが1つ以上の選択された宿主細胞の中で複製することを可能にする核酸配列が含まれる。このような配列は、種々の細菌、酵母、およびウイルスについて周知である。プラスミドpBR322に由来する複製起点は、グラム陰性細菌に適している。2:プラスミド起点が酵母に適しており、そして種々のウイルスの起点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、SV、またはBPV)が哺乳動物細胞中のクローニングベクターに有用である。
発現ベクターおよびクローニングベクターには、通常、選択遺伝子が含まれ、これは選択マーカーとも呼ばれる。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質または他の毒素に対する耐性を付与するタンパク質(例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセート、またはテトラサイクリン)、(b)栄養要求性の欠損を補うタンパク質、あるいは(c)複合培地から得ることができない重要な栄養素を供給するタンパク質をコードし、例えば、バシラス(Bacilli)のD−アラニンラセミ化酵素をコードする遺伝子である。
哺乳動物細胞に適切な選択可能なマーカーの例は、CRIg核酸を取り込む細胞の能力を同定することができるものであり、例えば、DHFRまたはチミジンキナーゼである。適切な宿主細胞は、野生型DHFRが使用される場合には、Urlaubら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4216(1980)に記載されているように調製され、増殖された、DHFR活性が欠損しているCHO細胞である。酵母での使用に適している選択遺伝子は、酵母のプラスミドTRp7中に存在しているtrp1遺伝子である(Stinchcombら、Nature、282:39(1979);Kingsmanら、Gene,7:141(1979);Tschemperら、Gene,10:157(1980))。trp1遺伝子によって、トリプトファン中で増殖する能力が欠失している酵母の変異株(ATCC No.44076またはPEP4−1)についての選択マーカーが提供される(Jones,Genetics,85:12(1977))。
発現ベクターおよびクローニングベクターには、通常、mRNAの合成を指示するための、CRIg核酸配列に作動可能に連結されたプロモーターが含まれる。種々の可能性のある宿主細胞によって認識されるプロモーターが周知である。原核生物宿主との使用に適しているプロモーターとして、□−ラクタマーゼおよびラクトースプロモーターシステム(Changら、Nature,275:615(1978);Goeddelら、Nature,281:544(1979))、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーターシステム(Goeddel,Nucleic Acids Res.,8:4057(1980);EP 36,776)、およびtacプロモーターなどのハイブリッドプロモーター(deBoerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,80:21−25(1983))が挙げられる。細菌システムで使用されるプロモーターにはまた、CRIgをコードするDNAに作動可能に連結されたシャイン・ダルガノ配列(Shine−Dalgarno(S.D.))配列も含まれるであろう。
酵母宿主での使用に適しているプロモーター配列の例として、3−ホスホグリセレートキナーゼ(Hitzemanら、J.Biol.Chem.,255:2073(1980))または他の解糖酵素(Hessら、J.Adv.Enzyme Reg.,7:149(1968);Holland,Biochemistry,17:4900(1978))が挙げられ、例えば、エノラーゼ、グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース−6−ホスフェートイソメラーゼ、3−ホスホグリセレートムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースホスフェートイソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、およびグルコキナーゼがある。
他の酵母のプロモーターは、増殖条件によって制御される転写のさらなる利点を有している誘導性プロモーターであり、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソチトクロームC、酸性ホスファターゼ、窒素代謝に関係している分解酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ、およびマルトースとガラクトースとの利用を担う酵素である。酵母での発現に使用される適切なベクターおよびプロモーターは、EP 73,657にさらに記載されている。
哺乳動物宿主細胞におけるベクターからのCRIgの転写は、例えば、ウイルス(例えば、ポリオーマウイルス、ニワトリポックスウイルス(1989年7月5日に公開されたUK 2,211,504)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス2)、ウシパピローマウイルス、鳥類肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、およびシミアンウイルス40(SV40))のゲノムから得られるプロモーターによって、異種哺乳動物のプロモーター(例えば、アクチンプロモーターまたは免疫グロブリンプロモーター)によって、および熱ショックプロモーターによって、このようなプロモーターが宿主細胞システムと適合するという条件で制御される。
より高等な真核生物によるCRIgポリペプチドをコードするDNAの転写は、ベクターへのエンハンサー配列の挿入によって増大させることができる。エンハンサーは、DNAのシス作用エレメントであり、通常は、約10から300bpであり、その転写を増大させるようにプロモーターに対して作用する。哺乳動物遺伝子(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α−フェトタンパク質、およびインシュリン)に由来する多くのエンハンサー配列が現在公知である。しかし、通常は、真核生物細胞のウイルスに由来するエンハンサーが使用されるであろう。例として、複製起点の後ろ側(late side)にあるSV40エンハンサー(bp100〜270)、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後ろ側にあるポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーが挙げられる。エンハンサーは、ベクターの中に、CRIgをコードする配列に対して5’または3’の位置にスプライシングされ得るが、好ましくは、プロモーターから5’の位置に配置される。
真核生物宿主細胞(酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト、または他の多細胞生物に由来する有核細胞)で使用される発現ベクターにはまた、mRNAの転写の終結および安定化に必要な配列も含まれるであろう。このような配列は、一般的には、真核生物またはウイルスのDNAまたはcDNAの5’および場合によっては3’非翻訳領域から入手できる。これらの領域には、CRIgをコードするmRNAの非翻訳部分にポリアデニル化された断片として転写されるヌクレオチドセグメントが含まれる。
組換え脊椎動物細胞培養物中でのCRIgの合成への適用に適しているなお他の方法、ベクター、および宿主細胞は、Gethingら、Nature,293:620−625(1981);Manteiら、Nature,281:40−46(1979);EP 117,060;およびEP 117,058に記載されている。
遺伝子の増幅および/または発現は、例えば、mRNAの転写を定量化するための従来のサザンブロッティング、ノーザンブロッティング(Thomas,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:5201−5205(1989))、ドットブロッティング(DNA分析)、または本明細書中で提供される配列に基づく適切に標識されたプローブを使用するインサイチュハイブリダイゼーションによって、直接試料中で測定することができる。あるいは、特異的な二本鎖(DNA二本鎖、RNA二本鎖、およびDNA−RNAハイブリッド二本鎖を含む)またはDNA−タンパク質二本鎖を特異的に認識することができる抗体を使用することができる。次いで、抗体が標識され得、アッセイが行われ得る。ここでは、二本鎖が表面に結合し、その結果、表面に二本鎖が形成すると、二本鎖に結合した抗体の存在を検出することができる。
あるいは、遺伝子の発現を、免疫学的方法(例えば、細胞または組織切片の免疫組織化学的染色、および細胞培養物または体液のアッセイ)によって測定して、遺伝子産物の発現を直接定量化することができる。免疫組織化学的染色および/または試料液体のアッセイに有用な抗体はモノクローナルまたはポリクローナルのいずれかであり得、これは任意の哺乳動物で調製することができる。通常、抗体は、自然界に存在している配列のCRIgポリペプチドに対して、または本明細書中で提供されるDNA配列に基づいた合成のペプチドに対して、または、CRIg DNAに融合され且つ特異的な抗体エピトープをコードする外因性の配列に対して調製され得る。
CRIg形態を、培養培地または宿主細胞溶解物から回収することができる。膜に結合している場合には、これは、適切な界面活性剤溶液(例えば、Triton−X 100)を使用して、または酵素による切断によって、膜から切り離すことができる。CRIgの発現に使用される細胞は、種々の物理的または化学的手段(例えば、凍結融解サイクル、超音波処理、機械的な破壊、または細胞溶解剤)によって破壊することができる。
組換え細胞タンパク質またはポリペプチドからCRIgを精製することが望まれる場合もある。以下の手順は、適切な精製手順の例である:イオン交換カラムでの分画;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカまたは陽イオン交換樹脂(例えば、DEAE)でのクロマトグラフィー;クロマト分画;SDS−PAGE;硫酸アンモニウム沈殿;ゲル濾過(例えば、Sephadex G−75を使用する);IgGなどの混入物質を除去するプロテインA Sepharoseカラム;ならびに、CRIgポリペプチドのエピトープタグ化形態に結合する金属キレート化カラムによる。種々のタンパク質精製方法を使用することができる。このような方法は当該分野で公知であり、例えば、Deutscher,Methods in Enzymology,182(1990);Scopes,Protein Purification:Principles and Practice,Springer−Verlag,New York(1982)に記載されている。選択される精製工程(単数または複数)は、例えば、使用される生産プロセスの性質、および生産される特定のCRIgに応じて様々であろう。
(3.CRIgポリペプチドのアゴニスト)
CRIgポリペプチドのアゴニストは、自然界に存在している配列のCRIgポリペプチドの質的な生物学的活性を模倣し得る。好ましくは、生物学的活性は、C3bに結合する能力、補体または補体の活性化に影響を与える能力であり、具体的には、代替補体経路および/またはC3転換酵素を阻害する能力である。アゴニストとして、例えば、免疫接着物、ペプチド模倣物、および自然界に存在しているCRIgの質的な生物学的活性を模倣する非ペプチドである有機低分子が挙げられる。
CRIg−Ig免疫接着物は上記で議論されている。
CRIgアゴニストの別のグループは、自然界に存在している配列のCRIgポリペプチドのペプチド模倣物である。ペプチド模倣物には、例えば、化合物が本明細書中に記載されるCRIgの生物学的活性を保持しているとの条件で、自然界には存在しないアミノ酸を含むペプチドが含まれる。同様に、ペプチド模倣物および類似体には、本発明のCRIgポリペプチドの重要な構造的エレメントの構造を模倣し、そしてCRIgの生物学的活性を保持している、非アミノ酸化学構造が含まれ得る。用語「ペプチド」は、本明細書中では、約50未満のアミノ酸残基、好ましくは、約40未満のアミノ酸残基の拘束された(すなわち、βターンまたはβプリーツシートを開始する、または例えば、ジスルフィド結合されたCys残基の存在によって環化されるアミノ酸の存在などの、いくつかの構造エレメントを有している)、あるいは、拘束されていない(例えば、直鎖の)アミノ酸配列を意味し、これには、その二量体またはそれらの間での二量体などの多量体が含まれる。約40未満のアミノ酸残基のペプチドのうち、約10個から約30個の間のアミノ酸残基、特に、約20個のアミノ酸残基のペプチドが好ましい。しかし、本開示を読めば、当業者であれば、ペプチドを識別するものが、特定のペプチドの長さではなく、C3bに結合し、C3転換酵素を阻害するその能力、特に、代替補体経路のC3転換酵素を阻害するその能力であることを容易に理解するであろう。
ペプチドは、通常は、固相ペプチド合成を使用して調製することができる(Merrifield,J.Am.Chem.Soc.85:2149(1964);Houghten,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82:5132(1985))。固相合成は、推定されるペプチドのカルボキシル末端で、不活性な固体支持体に対して保護されたアミノ酸をカップリングさせることによって開始される。不活性な固体支持体は、最初のアミノ酸のC末端についてアンカーとして作用することができる任意の巨大分子であり得る。通常、巨大分子の支持体は、Stewart and Young(前出)の2〜4ページの図1−1および1−2に示されているような、架橋されたポリマー樹脂(例えば、ポリアミド樹脂またはポリスチレン樹脂)である。1つの実施形態において、C末端アミノ酸は、ポリスチレン樹脂にカップリングされてベンジルエステルが形成する。巨大分子の支持体は、ペプチドアンカーの連結が、ペプチド合成の間にブロックされたアミノ酸のα−アミノ基を脱保護するために使用される条件下で安定であるように選択される。塩基不安定性のα−保護基が使用される場合には、ペプチドと固体支持体との間に酸不安定性の連結を使用することが所望される。例えば、酸不安定性のエーテル樹脂は、Stewart and Young(前出)の16頁に記載されているように、塩基不安定性のFmoc−アミノ酸ペプチド合成に有効である。あるいは、酸分解に対して様々な不安定性を示すペプチドアンカーの連結およびα−保護基を使用することができる。例えば、アミノメチル樹脂(例えば、フェニルアセトアミドメチル(Pam)樹脂)は、Stewart and Young(前出)の11〜12頁に記載されているように、Boc−アミノ酸ペプチド合成と組み合わせて十分に機能する。
最初のアミノ酸が不活性な固体支持体に結合した後、最初のアミノ酸のα−アミノ保護基は、例えば、塩化メチレン中のトリフルオロ酢酸(TFA)で除去され、そして例えば、トリエチルアミン(TEA)で中和される。最初のアミノ酸のα−アミノ基の脱保護の後、合成の際に次のα−アミノおよび側鎖が保護されたアミノ酸が付加される。残っているα−アミノ酸、必要に応じて側鎖が保護されたアミノ酸が、その後、所望の順序で縮合によって連続して結合され、固体支持体に結合された中間体化合物が得られる。あるいは、いくつかのアミノ酸は、所望されるペプチドの断片が形成されるように互いに結合され、その後、固相ペプチド鎖の成長のためにペプチド断片が付加される。
2つのアミノ酸、またはアミノ酸とペプチド、またはペプチドとペプチドとの間での縮合反応は、axide方法、混合酸無水物法、DCC(N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド)、またはDIC(N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド)法、活性エステル法、p−ニトロフェニルエステル法、BOP(ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート)法、N−ヒドロキシコハク酸イミドエステル法など、ならびにWoodward試薬K法などの通常の縮合方法にしたがって行うことができる。
ペプチドの化学合成においては、適切な保護基でアミノ酸の任意の反応性側鎖基が保護されることが一般的である。最終的には、これらの保護基は所望されるポリペプチド鎖が連続的にアセンブリされた後に除去される。アミノ酸またはペプチド断片のα−アミノ基の保護もまた一般的であるが、アミノ酸またはペプチド断片のC末端カルボキシル基は、生長しつつある固相ポリペプチド鎖の遊離N末端アミノ基と反応し、その後、α−アミノ基が選択的に除去されて、固相ポリペプチド鎖に対する次のアミノ酸またはペプチド断片の付加が可能となる。したがって、ポリペプチドの合成においては、ペプチド鎖において所望の配列に配置されているアミノ酸残基のそれぞれを含む中間体化合物が生産されることが一般的である。この場合、個々の残基は、側鎖保護基をなおも有している。これらの保護基は、固相からの除去の後に、所望のポリペプチド産物が生じるように実質的に同時に除去することができる。
α−およびε−アミノ側鎖は、ベンジルオキシカルボニル(Zと略される)、イソニコチニルオキシカルボニル(iNOC)、o−クロロベンジルオキシカルボニル(Z(2Cl))、p−ニトロベンジルオキシカルボニル(Z(NO))、p−メトキシベンジルオキシカルボニル(Z(OMe))),t−ブトキシカルボニル(Boc)、t−アミルオキシカルボニル(Aoc)、イソボルニルオキシカルボニル、アダマンチルオキシカルボニル、2−(4−ビフェニル)−2−プロピルオキシカルボニル(Bpoc)、9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、メチルスルホニルエトキシカルボニル(Msc)、トリフルオロアセチル、フタリル、ホルミル、2−ニトロフェニルスルフェニル(NPS)、ジフェニルホスフィノチオイル(Ppt)、およびジメチルホスフィノチオイル(Mpt)基などで保護することができる。
カルボキシル官能基についての保護基は、ベンジルエステル(OBzl)、シクロヘキシルエステル(Chx)、4−ニトロベンジルエステル(ONb)、t−ブチルエステル(Obut)、4−ピリジルメチルエステル(Opic)などによって例示される。多くの場合には、アミノ基およびカルボキシル基以外の官能基を有している特異的なアミノ酸(例えば、アルギニン、システイン、およびセリン)が、適切な保護基によって保護される。例えば、アルギニンのグアニジノ基は、ニトロ、p−トルエンスルホニル、ベンジルオキシカルボニル、アダマンチルオキシカルボニル、p−メトキシベンズスルホニル、4−メトキシ−2,6−ジメチルベンゼンスルホニル(Nds)、1,3,5−トリメチルフェニルスルホニル(Mts)などで保護することができる。システインのチオール基は、p−メトキシベンジル、トリチルなどで保護することができる。
上に記載されたブロックされたアミノ酸の多くは、市販の供給源(例えば、Novabiochem(San Diego,Calif)、Bachem CA(Torrence,Calif)、またはPeninsula Labs(Belmont,Calif)から入手することができる。
Stewart and Young(前出)によって、ペプチドを調製するための手順に関する詳細な情報が提供される。α−アミノ基の保護は、14〜18頁に記載されており、側鎖のブロックは18〜28頁に記載されている。アミン、ヒドロキシル、およびスルフヒドリル機能についての保護基の表は、149〜151頁に記載されている。
所望のアミノ酸配列が完成した後、ペプチドを固相支持体から切り離し、回収し、そして精製することができる。ペプチドは、ペプチド−固相の結合を破壊することができ、且つ場合によりペプチド上のブロックされた側鎖官能基を脱保護することができる試薬によって、固体支持体から切り離される。1つの実施形態において、ペプチドは、液体のフッ化水素(HF)での酸分解によって固相から切り離される。これによってはまた、任意の残っている側鎖保護基も除去される。好ましくは、ペプチド中の残基のアルキル化(例えば、メチオニン、システイン、およびチロシン残基のアルキル化)を回避するために、酸分解反応混合物には、チオ−クレゾールおよびクレゾールスカベンジャーが含まれる。HFでの切断の後、樹脂は、エーテルで洗浄され、遊離ペプチドが、酢酸溶液での連続洗浄によって固相から抽出される。混合された洗浄液が凍結して、ペプチドが精製される。
(4.CRIgポリペプチドのアンタゴニスト)
自然界に存在している配列のCRIgポリペプチドのアンタゴニストは、過剰な補体の活性化が有効である症状の処置(腫瘍の処置を含む)において有用性が見出されている。
アンタゴニストの好ましいグループには、自然界に存在しているCRIgに特異的に結合する抗体が含まれる。例示的な抗体として、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、二重特異的抗体、およびヘテロ結合体抗体が挙げられる。
ポリクローナル抗体を調製する方法が当業者に公知である。ポリクローナル抗体は、例えば、免疫化剤と、所望によりアジュバントの1回以上の注射によって、哺乳動物において惹起させることができる。通常は、免疫化剤および/またはアジュバントは、複数回の皮下注射または腹腔内注射によって哺乳動物に注射されるであろう。免疫化剤として、本発明のCRIgポリペプチドまたはその断片もしくは融合タンパク質が挙げられ得る。免疫化される哺乳動物において免疫原性であることが既知であるタンパク質に免疫化剤を結合させることが有用である場合もある。このような免疫原性タンパク質の例として、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、および大豆トリプシン阻害因子が挙げられるが、これらに限定はされない。使用することができるアジュバントの例として、フロイトの完全なアジュバントおよびMPL−TDMアジュバント(モノホスホリルリピッドA、合成のトレハロースジコリノミコレート)が挙げられる。免疫化プロトコールは、当業者により過度の実験を行うことなく選択され得る。
本発明のポリペプチドを認識して結合するか、またはそれに対するアンタゴニストとして作用する抗体は、代替的には、モノクローナル抗体である場合もある。モノクローナル抗体は、Kohler and Milstein,Nature,256:495(1975)に記載されている方法のようなハイブリドーマ法を使用して調製することができる。ハイブリドーマ法においては、マウス、ハムスター、または他の適切な宿主動物が、通常、免疫化剤に特異的に結合する抗体を生産するまたは生産することができるリンパ球を誘発させるために免疫化剤で免疫化される。あるいは、リンパ球は、インビトロで免疫化され得る。
免疫化剤として、典型的には、本発明のCRIgポリペプチド、その抗原性断片または融合タンパク質が挙げられるであろう。一般的には、末梢血リンパ球(「PBL」)のいずれかが、ヒト起源の細胞が所望される場合に使用され、また、脾臓細胞もしくはリンパ節細胞が、ヒト以外の哺乳動物である供給源が所望される場合に使用される。リンパ球は、その後、適切な融合剤(例えば、ポリエチレングリコール)を使用して不死化細胞株と融合されて、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding.Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press,(1986)、59−103頁)。不死化細胞株は通常、形質転換された哺乳動物細胞であり、具体的には、齧歯類、ウシ、およびヒト起源の骨髄腫細胞である。通常は、ラットまたはマウスの骨髄腫細胞株が使用される。ハイブリドーマ細胞は適切な培養培地のなかで培養することができ、これには、融合されていない不死化細胞の増殖または生存を阻害する1つ以上の物質が含まれていることが好ましい。例えば、もとの細胞が酵素であるヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠失している場合には、ハイブリドーマの培養培地には通常は、ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジンが含まれるであろう(「HAT培地」)。これらの物質は、HGPRT欠損細胞の増殖を妨げる。
好ましい不死化細胞株は、効率よく融合し、選択された抗体生産細胞による抗体の安定な高レベルでの発現をサポートし、そしてHAT培地などの培地に対して敏感に反応する細胞株である。より好ましい不死化細胞株は、マウスの骨髄腫株であり、これは例えば、Salk Institute Cell Distribution Center,San Diego,California、およびアメリカンタイプカルチャーコレクション,Rockville,Marylandから入手することができる。ヒト骨髄腫およびマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞株もまた、ヒトモノクローナル抗体の生産について記載されている(Kozbor,J.Immunol.,133:3001(1984);Brodeurら、Monoclonal Antibody Production
Techniques and Applications,Marcel Dekker,Inc.,New York,(1987),51−63頁)。
ハイブリドーマ細胞が培養される培養培地は、その後、本発明のポリペプチドに対して指向されるか、または本発明のポリペプチドと同様の活性を有しているモノクローナル抗体の存在についてアッセイすることができる。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって生産されたモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降によって、またはインビトロでの結合アッセイによって、例えば、放射免疫アッセイ(RIA)または酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって決定される。このような技術およびアッセイは当該分野公知である。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、Munson and Pollard,Anal Biochem.,107:220(1980)のScatchard分析によって決定することができる。
所望のハイブリドーマ細胞が同定された後、クローンは、限界稀釈手順によってサブクローニングされ、標準的な方法(Goding,前出)によって増殖され得る。この目的に適している培養培地として、例えば、ダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium)およびRPMI−1640培地が挙げられる。あるいは、ハイブリドーマ細胞は、哺乳動物の腹水のように、インビボで増殖することができる。
サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体は、従来の免疫グロブリン精製手順(例えば、プロテインA−セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、またはアフィニティークロマトグラフィー)によって、培養培地あるいは腹水から、単離または精製することができる。
モノクローナル抗体はまた、組換えDNA方法(例えば、米国特許第4,816,567号に記載されている方法)によっても作成することができる。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)容易に単離し、配列決定することができる。本発明のハイブリドーマ細胞は、そのようなDNAの好ましい供給源となる。一旦単離されると、DNAは発現ベクターの中に配置され得、その後、別の方法で免疫グロブリンタンパク質を生産することがない、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または骨髄腫細胞などの宿主細胞にトランスフェクトされて、組換え宿主細胞でのモノクローナル抗体の合成が得られる。DNAはまた、例えば、相同であるマウス配列の代わりに、ヒト重鎖および軽鎖定常ドメインのコード配列で置換することによって(米国特許第4,816,567号;Morrisonら(前出))、または、免疫グロブリンコード配列全体もしくは免疫グロブリン以外のポリペプチドのコード配列の一部に共有結合することによって、改変され得る。このような免疫グロブリン以外のポリペプチドは、本発明の抗体の定常ドメインで置き換えることができ、また、本発明の抗体の抗原結合部位の可変ドメインで置き換えることができ、キメラの二価抗体を生成することができる。
抗体は、好ましくは、一価の抗体である。一価の抗体を調製する方法は当該分野で周知である。例えば、1つの方法には、免疫グロブリン軽鎖と改変された重鎖との組換えによる発現が含まれる。重鎖は、一般的には、重鎖の架橋を防ぐためにFc領域中の任意の部位で短縮される。あるいは、関連するシステイン残基が別のアミノ酸残基で置換されるか、または架橋を防ぐために欠失される。
インビトロでの方法は、一価の抗体の調製にも適している。抗体のその断片(特に、Fab断片)を生じさせるための消化は、当該分野で公知の日常的な技術を使用して行うことができる。
本発明の抗体には、さらに、ヒト化抗体またはヒト抗体が含まれる場合がある。ヒト以外の(例えば、マウス)抗体のヒト化形態は、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、またはその断片(例えば、Fv、Fab、Fab’、f(ab’)、または抗体の他の抗原結合サブ配列)であり、これには、ヒト以外の免疫グロブリンに由来する最小配列が含まれる。ヒト化抗体にはヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)が含まれ、レシピエントの相補性決定領域(CDR)に由来する残基が、所望の特異性、親和性、および能力を有するマウス、ラット、またはウサギなどのヒト以外の種(ドナー抗体)のCDRに由来する残基で置き換えられる。いくつかの例においては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基が、対応するヒト以外の残基によって置き換えられる。ヒト化抗体には、レシピエント抗体にも、さらには輸入されたCDR配列にもフレームワーク配列にも見られない残基が含まれる場合もある。一般的に、ヒト化抗体には、少なくとも1つ、通常は2つの可変ドメインの実質的に全てが含まれ、ヒト以外の免疫グロブリンのものに対応するCDR領域の全てまたは実質的に全て、およびFR領域の全てまたは実質的に全ては、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。ヒト化抗体には、最適には、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部も含まれ、これは通常、ヒト免疫グロブリンのものである(Jonesら、Nature,321:522−525(1986);Riechmannら、Nature,332:323−329(1988);およびPresta,Curr.Op.Struct.Biol.,2:593−596(1992))。
ヒト以外の抗体をヒト化するための方法は当該分野で周知である。一般的には、ヒト化抗体には、ヒト以外の供給源に由来する1つ以上のアミノ酸残基がその中に導入されている。これらのヒト以外のアミノ酸残基は、多くの場合、「輸入」残基と呼ばれ、通常、「輸入」可変ドメインから得られる。ヒト化は、原則として、Winterおよび共同研究者らの方法に従って(Jonesら、Nature,321:522−525(1986);Riechmannら、Nature,332:323−327(1988);Verhoeyenら、Science,239:1534−1536(1988))、齧歯類CDRまたはCDR配列をヒト抗体の対応する配列で置換することによって行うことができる。したがって、このような「ヒト化」抗体はキメラ抗体である(米国特許第4,816,567号)。この場合、実質的には全体よりも小さいヒト可変ドメインが、ヒト以外の種に由来する対応する配列で置換される。実際、ヒト化抗体は通常は、いくつかのCDR残基と可能性のあるいくつかのFR残基とが齧歯類抗体の中の同様の部位に由来する残基で置換されているヒト抗体である。
ヒト抗体もまた、ファージディスプレイライブラリー(Hoogenboom and
Winter,J.Mol.Biol.,227:381(1991);Marksら、J.Mol.Biol.,222:581(1991))を含む、種々の当該分野で公知の技術を使用して生産することができる。Coleら、およびBoernerらの技術もまた、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用することができる(Coleら、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,77頁(1985);Boernerら、J.Immunol.,147(1):86−95(1991);U.S.5,750,373)。同様に、ヒト抗体は、トランスジェニック動物(例えば、マウス)中にヒト免疫グロブリン遺伝子座を導入することによって作成することができる。この場合、内因性の免疫グロブリン遺伝子は、部分的に不活化させられるか、または完全に不活化させられる。チャレンジされると、ヒト抗体の生産が観察される。これは、遺伝子の再配置、アセンブリ、および抗体のレパートリーを含む全ての態様において、ヒトで見られるものと非常に似ている。このアプローチは、例えば、米国特許第5,545,807号;同第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,661,016号;ならびに以下の科学出版物:Marksら、Bio/Technology 10,779−783(1992);Lonbergら、Nature 368:856−859(1994);Morrison,Nature 368,812−13(1994);Fishwildら、Nature Biotechnology 14,845−51(1996);Neuberger,Nature Biotechnology 14,826(1996);Lonberg and Huszar,Intern.Rev.Immunol.13:65−93(1995)に記載されている。
二重特異的抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対して結合特異性を有しているモノクローナル抗体であり、好ましくは、ヒト抗体またはヒト化抗体である。この場合、結合特異性の1つは、本発明のポリペプチドに対するものであり得、他方は任意の他の抗原(好ましくは、細胞表面タンパク質または受容体もしくは受容体サブユニット)に対するものである。
二重特異的抗体を作成するための方法は当該分野で公知である。従来的には、二重特異的抗体の組換えによる生産は、2つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖の対の同時発現に基づく。この場合、2つの重鎖は異なる特異性を有する(Milstein and Cuello,Nature,305:537−539(1983))。免疫グロブリン重鎖と軽鎖とのランダムな組み合わせが原因で、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10種類の異なる抗体分子の混合物を生じる可能性があり、そのうちの1つだけが正確な二重特異的構造を有している。正確な分子の精製は、通常は、アフィニティークロマトグラフィー工程によって行われる。同様の手順が、1993年5月13日に公開されたWO93/08829、およびTrauneckerら、EMBO J.,10:3655−3659(1991)に開示されている。
所望の結合特異性(抗体−抗原結合部位)を有している抗体の可変ドメインは、免疫グロブリン定常ドメインの配列に融合させることができる。融合は、好ましくは、ヒンジ、CH2、およびCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとの融合である。融合体の少なくとも1つに存在している軽鎖の結合に必要な部位を含む第1重鎖定常領域(CH1)を有することが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合体、および所望により、免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAは、別の発現ベクターに挿入され、そして、適切な宿主生物に同時にトランスフェクトされる。二重特異的抗体の作成についてのさらなる詳細は、例えば、Sureshら、Methods in Enzymology,121:210(1986)を参照のこと。
ヘテロ結合体抗体は、2つの共有結合された抗体から構成される。このような抗体は、例えば、望ましくない細胞に対して免疫系の細胞を標的化させるために(米国特許第4,676,980号)、そしてHIV感染の処置のために(WO91/00360;WO92/200373;EP03089)提案されている。抗体は、合成タンパク質化学において公知の方法(架橋剤を含む方法が含まれる)を使用してインビトロで調製できることが想定される。例えば、免疫毒素は、ジスルフィド交換反応を使用して、またはチオエーテル結合を形成することによって構築することができる。この目的に適している試薬の例としては、イミノチオレートおよびメチル−4−メルカプトブチルイミデート、ならびに米国特許第4,676,980号に開示されているものが挙げられる。
エフェクター機能に関して、例えば、免疫が関係している疾患の処置における抗体の有効性を高めるために、本発明の抗体を改変することが所望される場合がある。例えば、システイン残基(単数または複数)をFc領域に導入することができ、それによって、この領域に鎖間ジスルフィド結合を形成することができる。このように作成されたホモ二量体抗体は、改善されたインターナライゼーション能力、および/または高い補体媒介性の細胞死滅と抗体依存性の細胞傷害性(ADCC)とを有する可能性がある。Caronら、J.Exp.Med.176:1191−1195(1992)およびShopes,B.,J.Immunol.148:2918−2922(1992)を参照のこと。高い抗腫瘍活性を有するホモ二量体抗体もまた、Wolffら、Cancer Research 53:2560−2565(1993)に記載されているように、ヘテロ二官能性架橋剤を使用して調製することができる。あるいは、抗体は、これが二重のFc領域を有し、それによって高い補体溶解能力とADCC能力とを有し得るように操作することができる。Stevensonら、Anti−Cancer Drug Design,3:219−230(1989)を参照のこと。
本発明はまた、細胞傷害性物質(例えば、化学療法薬、毒素(例えば、細菌、真菌、植物、もしくは動物起源の酵素活性のある毒素、またはそれらの断片)あるいは、放射性同位元素(すなわち、放射性結合体))に結合された抗体を含む免疫結合体にも関する。
このような免疫結合体の生成に有用な化学療法薬は上に記載されている。使用できる酵素活性のある毒素およびその断片として、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、エクソトキシンA鎖(シュードモナス・アエルギノーサ(Pseudomonas
aeruginosa)由来)、リシンA、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α−サルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP−S)、ゴーヤ(momordica charantia)阻害因子、クルシン、クロチン、sapaonaria officinalis阻害因子、ゲロニン、ミトゲロニン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、およびトリコテセンが挙げられる。種々の放射性核種が、放射性結合抗体の生産に有用である。例として、212Bi、131I、131In、90Y、および186Reが挙げられる。
抗体と細胞傷害性物質との結合体は、様々な二官能性タンパク質カップリング試薬(例えば,N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオール)プロピオン酸(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、ジメチルアジピミデートHCL)、活性エステル(例えば、ジスクシンイミジルスベレート)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス−アジド化合物(例えば、ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス−ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トリレン2,6−ジイソシアネート)、およびビス−活性フッ素化合物(例えば、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン))を使用して作成される。例えば、リシン免疫毒素は、Vitettaら、Science 238:1098(1987)に記載されているように調製することができる。炭素−14−標識1−イソチオシアネートベンゾイル−3−メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX−DTPA)が、抗体への放射性核種の結合のための例示的なキレート化剤である。WO94/11026を参照のこと。
別の実施形態において、抗体は、組織のプレ標的での利用のための「受容体」(例えば、ストレプトアビジン)に結合することができる。この場合、抗体−受容体結合体は、患者に投与され、続いて、キレート化剤を使用して循環から結合していない結合体が除去され、その後、細胞傷害性物質(例えば、放射性核種)に結合された「リガンド」(例えば、アビジン)が投与される。
(5.標的疾患)
(5.1 補体が関係している疾患および症状)
本発明のCRIgポリペプチドおよびそれらのアゴニスト(特に、CRIg−Ig免疫接着物)については、補体が関係している疾患および病状の予防および/または処置において有用性が見出されている。このような疾患および症状として、炎症性疾患および自己免疫性疾患が挙げられるが、これらに限定はされない。
補体が関係している疾患の特異的な例として、関節リウマチ(RA)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、虚血再潅流後の離れた組織の傷害、心肺バイパス手術の間の補体活性化、皮膚筋炎、天疱瘡、ループス腎炎および結果として生じる糸球体腎炎および脈管炎、心肺バイパス手術、心臓麻痺によって誘導される冠動脈内皮機能不全、II型膜性増殖性糸球体腎炎、IgA腎症、急性腎不全、クリオグロブリン血症、抗リン脂質症候群、皮膚の変性疾患および他の補体が関係している眼の症状、例えば、加齢性黄斑変性(AMD)、慢性脈絡膜新生血管(CNV)、ブドウ膜炎、糖尿病性網膜症および他の虚血が関係している網膜症、眼内炎、および他の眼内新生血管障害、例えば、糖尿病黄斑浮腫、病的近視、フォン・ヒッペル・リンドウ病、眼のヒストプラスマ症、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)、角膜血管新生、網膜血管新生、ならびに、同種移植、超急性拒絶、血液透析、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、および吸引性肺炎が挙げられるが、これらに限定はされない。
(5.2 補体が関係している眼の疾患)
CRIgポリペプチドおよびそれらのアゴニスト(特に、CRIg−Ig免疫接着物)は、補体が関係している眼の症状(その発症に、古典補体経路および代替補体経路を含み、特に、代替補体経路の補体が関係している全ての眼の症状および疾患が含まれる、例えば、眼の変性疾患、例えば、加齢性黄斑変性(AMD)の全ての段階(乾式および湿式(非滲出形態と滲出形態)を含む)、慢性脈絡膜新生血管(CNV)、ブドウ膜炎、糖尿病性網膜症および他の虚血が関係している網膜症、眼内炎、および他の眼内新生血管障害、例えば、糖尿病黄斑浮腫、病的近視、フォン・ヒッペル・リンドウ病、眼のヒストプラスマ症、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)、角膜血管新生、ならびに、網膜血管新生)の予防および/または処置に特に有用である。補体が関係している眼の症状の好ましいグループには、加齢性黄斑変性(AMD)(滲出型(湿式)AMDおよび非滲出型(乾式または萎縮性)AMDを含む)、慢性脈絡膜新生血管(CNV)、糖尿病性網膜症(DR)、および眼内炎)が含まれる。
AMDは眼の加齢に伴う変性であり、これは、60歳を超えた個体での不可逆的な視力障害の主原因である。AMDには2つのタイプが存在しており、非滲出型(乾式)AMDと湿式(滲出型)AMDとがある。乾式、すなわち非滲出型には、根底にある中心網膜の網膜色素上皮(RPE)の萎縮性および肥大性の変化(斑)、ならびにRPEの蓄積(ドルーゼ)が含まれる。非滲出型のAMD患者は、湿式、すなわち、滲出型のAMDに進行する可能性があり、この場合、脈絡膜新生血管(CNVM)と呼ばれる異常な血管が網膜下で生じ、体液および血液の漏出を生じ、最終的には、網膜内および網膜下に痛みが激しい円盤状の瘢痕が生じる。非滲出型AMDは、通常は、滲出型AMDの前兆であり、より一般的である。非滲出型AMDの症状は様々である;硬いドルーゼ、柔らかいドルーゼ、PREの地理的萎縮、および色素凝集が発症し得る。補体成分は、AMDの初期にRPEに蓄積し、ドルーゼの主要な構成成分である。
本発明は特に、高リスクのAMDの処置に関する。これには、カテゴリー3およびカテゴリー4のAMDが含まれる。カテゴリー3のAMDは、いずれの眼にも進行したAMDはなく、少なくとも一方の眼が20/32以上の視力を有しているか、または少なくとも1つの大きなドルーゼ(例えば、125μm)、広範囲の(ドルーゼの面積によって測定した場合)中程度のドルーゼ、または地理的萎縮(GA)(斑の中心は含まれない)を有しているか、あるいはこれらの任意の組み合わせを特徴とする。カテゴリー3のAMD(「乾式」AMDとも考えられる)は、脈絡膜新生血管(CNV)に転換するリスクが高い。
カテゴリー4の高リスクのAMD(「湿式」AMDと分類される)は、20/32以上の視力を有しており、眼指数(index eye)において進行したAMD(斑の中心、または脈絡膜新生血管の特徴を含むGA)を有していないことを特徴とする。他眼は、進行したAMD、またはAMD黄斑変性症による20/32未満の視力を特徴とする。通常、高リスクのAMDは、処置されなければ、カテゴリー1または2(高リスクではない)のAMDの進行速度よりも約10〜30倍早い速度で、脈絡膜新生血管(CNV)へと迅速に進行する。
CRIgおよびそのアゴニスト(例えば、CRIg−Ig免疫接着物)は、AMD(特に、カテゴリー3またはカテゴリー4のAMDにおいて)のCNVへの進行の予防、ならびに/あるいは、罹患していない他眼またはひどくは罹患していない他眼のAMDまたはCNVの発症/進行の予防において特定の有用性が見出されている。これに関連して、用語「予防」は、疾患の進行の完全または部分的なブロックおよび遅延、ならびに、疾患のより重篤な形態への悪化の遅延を含めて、最も広い意味で使用される。高リスクのAMD(カテゴリー4)またはCNVの発症またはそれらへの進行のリスクが高い患者には、本発明のこの態様が特に有効である。
補体因子H(CFH)多形がAMDおよび/またはCNVを発症する個体のリスクに関係していることは知られている。CFHの変異は、補体を活性化することができ、これは次いで、AMD/CNVを導き得る。AMDのリスクの50%が補体因子H(CFH)多形に原因があることが、最近報告されている(Kleinら、Science 308:385−9(2005))。CFHの一般的なhalpotype(HF1/CFH)は、個体を加齢性黄斑変性にかかりやすくすることが明らかにされている(Hagemanら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,102(2):7227−7232(2003))。AMDは、常染色体優性形質として分離されており、約3.20の最大ロッドスコアで、染色体1q25−q31に、マーカーであるD1S466とD1S413との間に(Kleinら、Arch Opthalmol.116(8):1082−9(1998);Majewskiら、Am.J.Hum.Genet.73(3):540−50(2003);Seddonら、Am.J.Hum.Genet.73(4):780−90(2003);Weeksら、Am.J.Ophtalmol.132(5):682−92(2001);Iyengarら、Am.J.Hum.Genet.74(1):20−39(2004));2.32/2.03の最大ロッドスコアで、染色体2q3/2q32に、マーカーであるD12S1319とD2S1384との間に(Seddonら、前出);2.19の最大ロッドスコアで、染色体3q13に、マーカーであるD12S1300とD12S1763との間に(Majewskiら、前出;Schickら、Am.J.Hum.Genet.72(6):1412−24(2003));3.59/3.17の最大ロッドスコアで、染色体6q14に、マーカーであるD6S1056とDS249のと間に(Kniazevaら、Am.J.Ophthlmol.130(2):197−202(2000));2.06の最大ロッドスコアで、染色体9q33に、マーカーであるD9S934に(Mejwskiら、前出);3.06の最大ロッドスコアで、染色体10q26に、マーカーD10S1230に(Majewskiら、前出、Iyengarら、前出;Kenealyら、Mol.Vis.10:57−61(2004);3.16の最大ロッドスコアで、染色体17q25に、マーカーD17S928に(Weeksら、前出);そして2.0の最大ロッドスコアで、染色体22q12に、マーカーD22S1045に(Seddonら、前出)マッピングされている疾患遺伝子座を有する。したがって、遺伝子スクリーニングは、予防的処置(例えば、AMDからCNVへの進行などのより重篤な形態への疾患の進行の予防を含む)について特に良好な候補である患者の同定の重要な部分である。
加えて、補体の活性化と加齢性黄斑変性(AMD)との関連についての強力な証拠を考慮すると、本発明により、補体の阻害による(特に、代替補体経路を阻害することによる)CNVおよびAMDの予防および処置のための新規の方法が提供される。CRIg以外の代替補体経路の阻害因子としては、融合タンパク質(例えば、免疫接着物)、アゴニスト抗CRIg抗体、ならびにペプチドおよび非ペプチド低分子が挙げられる。
(5.3 炎症症状と自己免疫疾患)
補体が関係している疾患の例としての炎症症状のより広範囲に及ぶリストには、例えば、炎症性腸疾患(IBD)、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、若年性慢性関節炎、脊椎関節症、全身性硬化症(強皮症)、特発性炎症性筋疾患(皮膚筋炎、多発性筋炎)、シェーグレン症候群、全身性血管炎、サルコイドーシス、自己免疫性溶血性貧血(免疫性汎血球減少症、発作性夜間血色素尿症)、自己免疫性血小板減少症(特発性血小板減少性紫斑病、免疫性血小板減少症)、甲状腺炎(グレーヴス病、橋本病甲状腺炎、若年性リンパ球性甲状腺炎、萎縮性甲状腺炎)、真性糖尿病、免疫性腎疾患(糸球体腎炎、尿細管間質性腎炎)、中枢神経系および末梢神経系の脱髄疾患(例えば、多発性硬化症、特発性多発性神経障害)、肝胆汁性疾患(例えば、感染性肝炎(A、B、C、D、E型肝炎、および他の非肝臓向性ウイルス))、自己免疫性慢性活動性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、肉芽腫性肝炎、および硬化性胆管炎、炎症性および繊維性肺疾患(例えば、嚢胞性線維症)、グルテン過敏性腸疾患、ウィップル病、自己免疫性または免疫性皮膚疾患(水胞性皮膚疾患、多形性紅斑、および接触皮膚炎が含まれる)、乾癬、肺のアレルギー性疾患(例えば、好酸球性肺炎、特発性肺線維症、および過敏性肺炎)、移植に伴う疾患(移植拒絶および移植片対宿主病が含まれる)が含まれる。
全身性エリテマトーデスにおいては、疾患の中心的な媒介因子は、自己タンパク質/組織に対する自己反応性抗体の生産と、それに続く免疫によって媒介される炎症の発生である。抗体は、直接または間接のいずれかで、組織の損傷を媒介する。Tリンパ球は、組織の損傷に直接関係していることは示されていないが、Tリンパ球は、自己反応性抗体の発生に必要である。したがって、疾患の発生はTリンパ球に依存している。腎臓、肺、骨格筋システム、皮膚粘膜、眼、中枢神経系、心臓血管系、消化管、骨髄、および血液を含む複数の臓器およびシステムが、臨床的に影響を受ける。
関節リウマチ(RA)は、慢性的な全身性の自己免疫性炎症性疾患であり、これには、結果としての関節軟骨の損傷を伴う、複数の関節の滑膜が主に関係している。発症はTリンパ球依存性であり、自己IgGに対する自己抗体であるリウマトイド因子の生産、結果として生じる、滑液および血液中で高いレベルに達する免疫複合体の形成が関係している。関節におけるこれらの複合体は、滑膜への顕著なリンパ球および単球の浸潤を誘導することができ、続いて、顕著な滑液の変化を誘導することができる。関節空間/流体は同様の細胞によって浸潤され、これには多数の好中球の付加が伴う。罹患組織は主に関節であり、多くの場合には対称のパターンである。しかし、関節以外の疾患もまた、2つの主要な形態において生じる。1つの形態は、進行中の関節疾患、ならびに、肺線維症、脈管炎、および皮膚の潰瘍の典型的な病変を有している関節以外の病変の発生である。関節以外の疾患の第2の形態はいわゆるフェルティ症候群であり、これは、RA疾患の経過において遅延を引き起こし、しばしば関節疾患後に沈静期になり、好中球減少症、血小板減少症、および脾腫の存在が関係している。これは、梗塞症、皮膚の潰瘍、および壊疽が形成されている複数の臓器において脈管炎を伴い得る。患者は、多くの場合には、罹患した関節に重なる皮下組織においてリウマチ結節も発症し;結節の後期段階には、混合された炎症性細胞の浸潤によって取り囲まれた壊死中心を有する。RAにおいて起こり得る他の症状としては、心膜炎、胸膜炎、冠動脈炎、肺線維症を伴う間質性肺炎、乾性角結膜炎、およびリウマチ結節が挙げられる。
若年性慢性関節炎は慢性の特発性炎症性疾患であり、これは、多くの場合には、16歳未満で発祥する。この表現形はRAといくつかの類似点がある;リウマトイド因子ポジティブである一部の患者は、若年性関節リウマチと分類される。この疾患は、以下の3つの主要なカテゴリーに下位分類される:pauciarticular型、polyarticular型、および全身型。この関節炎は重篤であり得、そして通常は破壊的であり、関節の強直と遅れた成長を導く。他の症状として、慢性的な前部ブドウ膜炎および全身性アミロイドーシスを挙げることができる。
脊椎関節症は、いくつかの共通する臨床的特徴と、HLA−B27遺伝子産物の発現との共通する関係を有している障害のグループである。この障害には、強直性脊椎炎、ライター症候群(反応性関節炎)、炎症性腸疾患に伴う関節炎、乾癬にともなう脊椎炎、若年型脊椎関節症、および未分化脊椎関節症が含まれる。際立った特徴として、脊椎炎を伴うまたは伴わない仙腸骨炎;炎症性の非対称関節炎;HLA−B27との会合(クラスI MHCのHLA−B遺伝子座の血清学的に定義された対立遺伝子);眼の炎症、および他のリウマチ疾患を伴う自己抗体が存在しないことが挙げられる。この疾患の誘導の鍵として最も考えられる細胞は、CD8+Tリンパ球であり、これは、クラスI MHC分子によって提示される抗原を標的とする細胞である。CD8+T細胞は、これがMHCクラスI分子によって発現される外来ペプチドであるかのように、クラスI MHC対立遺伝子HLA−B27に対して反応し得る。HLA−B27のエピトープが、細菌または他の微生物の抗原性エピトープを模倣し得、したがって、CD8+T細胞応答を誘導し得るとの仮説が立てられている。
全身性硬化症(強皮症)はその病因は明らかになっていない。この疾患の特徴は、活発な炎症プロセスによっておそらく誘導される皮膚の硬化である。強皮症は、限局性である場合も、また全身性である場合もある;血管の病変が一般的であり、微小血管系の内皮細胞の損傷が、全身性硬化症の発症における初期の重要な事象である;血管の損傷は免疫によって媒介され得る。免疫学的根拠は、多くの患者における皮膚の病変への単核細胞の浸潤の存在と抗核抗体の存在とによって暗示される。ICAM−1は、多くの場合、皮膚の病変における線維芽細胞の細胞表面でアップレギュレートされ、このことは、T細胞のこれらの細胞との相互作用が、この疾患の病因において役割を有している可能性があることを示唆している。関係している他の臓器として、消化管:異常な蠕動運動/運動性を生じる平滑筋の萎縮および線維化;腎臓:腎臓皮質の血流の減少を結果として生じる小さい弓状動脈および葉間動脈に影響を及ぼす集中的な内皮下血管内膜細胞の増殖は、タンパク尿、高窒素血症、および高血圧を生じる;骨格筋;萎縮症、腸線維症;炎症;肺:間質性肺炎および間質性線維症;ならびに心臓:収縮帯の壊死、瘢痕化/繊維化が挙げられる。
皮膚筋炎、多発性筋炎などを含む特発性炎症性筋疾患は、筋肉の衰弱を生じる病因がわかっていない慢性的な筋肉の炎症の障害である。筋肉の損傷/炎症は、多くの場合、全身性であり進行性である。自己抗体がほとんどの形態に関係している。これらの筋炎特異的自己抗体は、タンパク質合成に関与している成分、タンパク質、およびRNAに対して指向され、そしてその機能を阻害する。
シェーグレン症候群は、免疫性の炎症と、それに続く涙腺および唾液腺の機能の破壊とが原因である。この疾患は、炎症性の結合組織疾患に付随する場合も、また、この疾患に炎症性の結合組織疾患が付随する場合もある。この疾患は、RoおよびLa抗原に対する自己抗体の生産と関係している。これらの抗原はいずれも、小さいRNA−タンパク質複合体である。病変は、乾性角結膜炎、口腔乾燥症を生じ、これには、胆汁性肝硬変(bilary cirrhosis)、末梢および感覚神経障害、ならびに明白な紫斑を含む他の兆候または関連が伴う。
全身性脈管炎には、主な病変が炎症およびその後の血管の損傷であり、これによって、いくつかの場合には、罹患した血管によって供給される組織の虚血/壊死/変性と、最終的には標的器官の機能障害とが生じる。脈管炎はまた、二次的な病変として生じる場合も、また、他の免疫性−炎症性疾患(例えば、関節リウマチ、全身性硬化症など(特に、免疫複合体の形成が関係している疾患において))の続発症として生じる場合もある。原発性の全身性硬化症のグループの疾患として:全身性の壊死性血管炎:結節性多発性動脈炎、アレルギー性血管炎および肉芽腫症、多発性血管炎;ヴェーゲナー肉芽腫症;リンパ腫様肉芽腫症;および巨細胞性動脈炎が挙げられる。多岐にわたる脈管炎として、粘膜皮膚リンパ節症候群(MLNSまたは川崎病)、単離されたCNS脈管炎、ベーチェット病、閉塞性血栓血管炎(バージャー病)、および皮膚の壊死性細静脈炎が挙げられる。列挙された脈管炎のタイプのほとんどの病理学的機構は、主に、血管壁での免疫グロブリン複合体の蓄積、および、それに続く、ADCC、補体の活性化、またはそれらの両方のいずれかによる炎症性応答の誘導に起因すると考えられる。
サルコイドーシスは、その病因が明らかになっていない症状であり、体内のほぼ全ての組織における類上皮肉芽腫の存在を特徴とする;肺が含まれることが最も一般的である。病因として、疾患の部位での活性化されたマクロファージおよびリンパ細胞の持続、それに続く、これらのタイプの細胞によって放出される局所的および全身的な活性産物の放出の結果として生じる慢性的な続発症が挙げられる。
自己免疫性溶血性貧血、免疫性汎血球減少症、および発作性夜間血色素尿症を含む自己免疫性溶血性貧血は、赤血球(およびいくつかの場合には、血小板などを含む他の血液細胞)の表面で発現される抗原と反応する抗体の生産の結果であり、そして、補体媒介性の溶解および/またはADCC/Fc受容体によって媒介される機構によるそのような抗体がコーティングされている細胞の除去の反映である。
血小板減少性紫斑病を含む自己免疫性血小板減少症、および他の臨床状況における免疫性の血小板減少症、血小板破壊/除去は、血小板に対する抗体または補体のいずれかの付着、およびその後の補体溶解、ADCC、またはFc−受容体によって媒介される機構による除去の結果として生じる。
グレーヴス病、橋本甲状腺炎、若年性リンパ球性甲状腺炎、および萎縮性甲状腺炎を含む甲状腺炎は、甲状腺に存在し、多くの場合には甲状腺に特異的であるタンパク質と反応する抗体の生産を伴う、甲状腺抗原に対する自己免疫反応の結果である。自然発生したモデル:(ラット(BUFおよびBBラット)およびニワトリ(肥満体のニワトリ株));誘導性モデル:(サイログロブリン、甲状腺ミクロソーム抗原(甲状腺ペルオキシダーゼ)のいずれかでの動物の免疫化)を含む複数の実験モデルが存在している。
I型真性糖尿病またはインシュリン依存性糖尿病は、膵島β細胞の自己免疫による破壊である。この破壊は、自己抗体および自己反応性T細胞によって媒介される。インシュリンまたはインシュリン受容体に対する抗体はまた、インシュリン非反応性の表現形を生じる可能性もある。
免疫性の腎疾患(糸球体腎炎および尿細管間質性腎炎を含む)は、抗体またはTリンパ球によって媒介される腎臓組織の損傷の結果であり、腎臓抗原に対する自己反応性抗体もしくはT細胞の生産の結果として直接、あるいは、他の腎臓以外の抗原に対して反応する腎臓の中での抗体および/または免疫複合体の蓄積の結果として間接的のいずれかである。したがって、免疫複合体の形成を生じる他の免疫性の疾患もまた、間接的な続発症として免疫性の腎疾患を誘導する可能性がある。直接および間接的な免疫機構のいずれもが、臓器機能の不全、いくつかの場合には、腎不全の進行を伴う、腎臓組織内での病変の発生をもたらす/誘導する炎症性応答を生じる。体液性免疫機構および細胞性免疫機構の両方が、病変の発症に関係し得る。
中枢神経系および末梢神経系の脱髄疾患(多発性硬化症、特発性多発性神経障害、またはギラン・バレー症候群を含む)および慢性炎症性脱髄性多発神経障害は、自己免疫に理由があると考えられており、そして乏突起膠細胞またはミエリンの損傷の直接の結果として神経の脱髄を生じる。MSにおいては、疾患の誘導と進行がTリンパ球依存していることを示唆している証拠が存在している。多発性硬化症は、Tリンパ球依存性であり、再発寛解型の経過または慢性的な進行性の経過のいずれかを有している脱髄疾患である。病因はわかっていない。しかし、ウイルス感染、遺伝的な素因、環境、および自己免疫の全てが関係している。病変には、主にTリンパ球によって媒介されるミクログリア細胞および浸潤性マクロファージの浸潤が含まれる。CD4+Tリンパ球は、病変で最も優性な細胞のタイプである。乏突起膠細胞の死滅およびそれに続く脱髄の機構はわかっていないが、おそらくは、Tリンパ球によって駆動される。
炎症および繊維性肺疾患(好酸球性肺炎、特発性肺線維症、および過敏性肺炎を含む)には、脱調節された免疫性の炎症応答が関与している可能性がある。その応答の阻害は、治療上有効である。
自己免疫性または免疫性の皮膚疾患(水疱性皮膚疾患、多形性紅斑、および接触皮膚炎を含む)は、自己抗体によって媒介される。その発症はTリンパ球依存性である。
乾癬は、Tリンパ球によって媒介される炎症性疾患である。病変には、Tリンパ球、マクロファージ、および抗原処理細胞、ならびに場合によっては好中球の浸潤が含まれる。アレルギー性疾患(喘息;アレルギー性鼻炎;アトピー性皮膚炎;食物過敏症;および蕁麻疹を含む)は、Tリンパ球依存性である。これらの疾患は、Tリンパ球によって誘導される炎症、IgEによって媒介される炎症、または両方の組み合わせによって主に媒介される。
移植に関係する疾患(移植片拒絶および移植片対宿主病(GVHD)を含む)は、Tリンパ球依存性であり;Tリンパ球機能の阻害は改善的である。
(6.処置方法)
補体が関係している(免疫性の)疾患の予防、処置、または重篤度の低下のために、適切な投与量の本発明の化合物は、上記に定義されたような処置される疾患のタイプ、疾患の重篤度および経過、薬剤が予防目的のために投与されるのか、もしくは治療目的のために投与されるのか、事前の治療、患者の病歴、および化合物に対する反応、ならびにかかりつけの医師の判断に応じて様々であろう。化合物は、患者に、1回の処置、または一連の処置で適切に投与される。好ましくは、用量応答曲線および本発明の薬学的組成物を、最初にインビトロで、その後、ヒトでの試験の前に有用な動物モデルで決定することが所望される。
例えば、疾患のタイプおよび重篤度に応じて、約1μg/kg〜15mg/kg(例えば、0.1〜20mg/kg)のポリペプチドが、例えば、1回以上の別々の投与によるかまたは持続注入によるかにはかかわらず、患者への投与のための最初の候補となる投与量である。典型的な一日量は、上記の要因に応じて、約1μg/kg〜100mg/kgまたはそれ以上の範囲であり得る。症状に応じた数日間またはそれ以上の期間にわたる反復投与については、処置は、疾患の症状の所望の抑制が生じるまで維持される。しかし、他の投与レジュメも有用であり得る。この治療の進行は、従来技術およびアッセイによって容易にモニターされる。
眼の疾患または症状の予防または処置のための本発明の化合物は、通常、眼注射、眼内注射、および/または硝子体内注射によって投与される。他の投与方法もまた使用され、これには、局所、非経口、皮下、腹腔内、肺内、鼻腔内、および病変内投与が含まれるが、これらに限定はされない。非経口注入として、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下投与が挙げられる。
眼、眼内および/または硝子体内への投与のための処方物は、当該分野で公知の方法によって、当該分野で公知の成分を使用して調製することができる。効率的な処置のための主な用件は、眼を介した適切な浸透である。薬剤を局所投与することができる眼の前面の疾患とは異なり、網膜の疾患には、さらに部位特異的なアプローチが必要である。点眼薬および軟膏は、眼の裏側に浸透することは稀であり、血液−眼球バリアによって、全身投与された薬剤の眼球組織への浸透は阻まれる。したがって、通常は、網膜の疾患(例えば、AMDおよびCNV)を処置するための薬物の送達に選択される方法は、直接の硝子体内注射である。硝子体内注射は、通常、患者の症状、ならびに投与される薬剤の特性および半減期に応じた間隔で繰り返される。眼内への(例えば、硝子体内への)浸透については、通常、小さい分子が好ましい。CRIgの場合には、huCRIgの短い形態および長い形態のECD、それらのIg(Fc)融合体、全長のhuCRIgの長い形態および短い形態、ならびにそれらのIg(Fc)融合体を含む全ての形態が、全て、眼内(硝子体内)投与に適している。
補体が関係している眼の症状(例えば、AMDまたはCNV)の処置効率は、眼内疾患を評価することに一般的に使用されている種々の評価項目によって測定することができる。例えば、失明を評価することができる。失明は、例えば、ベースラインから所望される時点までの最高矯正視力(BCVA)の平均変化を測定すること(例えば、この場合、BCVAはEarly Treatment Diabetic Retinopathy
Study(ETDRS)視力チャートおよび4メートルの試験距離での評価に基づく)、ベースラインと比較して所望される時点の視力における、15文字未満を失った被験体の割合を測定すること、ベースラインと比較して所望される時点での視力における、15文字以上を獲得した被験体の割合を測定すること、所望される時点で、20/2000またはそれよりも悪いvisual−acuity Snellen等量を有している被験体の割合を測定すること、NEI Visual Functioning Questionnaireを測定すること、例えば、蛍光眼底血管造影によって評価される、所望される時点でのCNVの大きさとCNVの漏出量を評価することなどによって評価することができるが、これらに限定はされない。眼の評価は、例えば、眼の検査を行うこと、眼内圧を測定すること、視力を評価すること、slitlamp pressureを測定すること、眼内の炎症を評価することなどを含むがこれらに限定はされない方法で行うことができる。
CRIgアンタゴニスト(例えば、CRIgに対する抗体)は、腫瘍(ガン)の処置のための免疫アジュバント療法に使用することができる。T細胞がヒト腫瘍特異的抗原を認識することが現在十分に確立されている。遺伝子のMAGE、BAGE、およびGAGEファミリーによってコードされる腫瘍抗原の1つのグループは、全ての成体の正常組織においてはサイレントであるが、腫瘍(例えば、黒色腫、肺腫瘍、頭頸部腫瘍、および膀胱ガン)においては有意な量で発現されている。DeSmet,C.ら、(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93:7149。T細胞の同時刺激によって腫瘍の抑制と抗腫瘍応答が誘導されることは、インビトロおよびインビボの両方で示されている。Melero,I.ら、Nature Medicine(1997)3:682;Kwon,E.D.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1997)94:8099;Lynch,D.H.ら、Nature Medicine(1997)3:625;Finn,O.J.and Lotze,M.T.,J.Immunol.(1998)21:114。本発明のCRIgアンタゴニストは、アジュバントとして、単独で、または増殖調節因子、細胞傷害性物質、または化学療法薬と共に、T細胞の増殖/活性化および腫瘍抗原に対する抗腫瘍応答を刺激するために投与することができる。増殖調節物質、細胞傷害性物質、または化学療法薬は、公知の投与レジュメを使用して従来用いられている量で投与され得る。本発明のCRIgアンタゴニストによる免疫刺激活性により、増殖調節物質、細胞傷害性物質、または化学療法薬の量を減少させることができ、それによって、患者に対する毒性を減少させることができる。
いくつかのマクロファージは腫瘍の根絶に関与しているが、多くの固形腫瘍は、腫瘍の増殖をサポートするマクロファージを含むことが知られている(Bingleら、J.Pathol 196:254−265(2002);Mantovaniら、Trends Immunol.23:549−555(2002))。これらのマクロファージには、それらの表面にCRIgが含まれ得る。補体の活性化を阻害するCRIgの能力をブロックする抗体は、腫瘍細胞上の補体を活性化させ、補体によって媒介される溶解による腫瘍の根絶を助けるために使用することができる。このアプローチは、CRIgポジティブマクロファージを含む腫瘍において特に有用である。
本発明の処置方法においては、本明細書中の組成物は、標的である疾患または症状の予防または処置のための1つ以上のさらなる処置様式と組み合わせることができる。したがって、例えば、目的が、補体が関係している眼の症状の予防または処置である場合には、CRIgの投与(全ての形態と、それらのEC領域および/またはIg融合体を含む)を、抗VEGF−A抗体ラニビズマブ(Lucenitis(商標)、Genentech,Inc.)の投与と組み合わせる、またはCRIgの投与によって抗VEGF−A抗体ラニビズマブの投与を補うことができる。抗VEGF−A抗体ラニビズマブは、AMDの処置については臨床開発の段階にある。最近行われたIII相臨床試験では、湿式AMDの患者での視力の維持についての研究の主要な効力の最終目標を満たすことに加えて、0.3mgのLucentisで処置した患者の25%(59/238)、および0.5mgのLucentis(商標)で処置した患者の34%(81/240)においては、Early Treatment of Diabetic Retinopathy(ETDRS)視力チャートによって測定した場合には、対照グループの患者のおよそ5%(11/238)と比較して、15文字以上の獲得により視力が改善した。Lucentis(商標)で処置した患者のおよそ40%は、対照グループの11パーセント(26/238)と比較して、12ヶ月で20/40またはそれ以上の視力スコアに達した。12ヶ月では、Lucentis(商標)で処置した患者は、実験の開始時と比較して視力において平均で7文字を獲得し、一方、対照グループは平均で10.5文字を失った。
目的が、補体が関係している炎症または自己免疫疾患の処置である場合には、CRIg(すべての形態を含む)の投与は、このような適応症についての他の治療と組み合わせることができる。したがって、例えば、標的が関節リウマチ(RA)である場合には、他の関節炎用の医薬品(例えば、salicialate(例えば、アスピリン)、従来の非ステロイド系抗炎症分子(NSAID)(例えば、Asaid、Arthrotec,Cataflam,イブプロフェン、Naproxenなど)、COX−2阻害因子(例えば、Celebrex、Vioxx)である。これに関連して、「組み合わせ」は、任意の順序、そして任意の投与形態で、同じまたは異なる投与経路での、同時または連続する投与を意味する。
(7.スクリーニングアッセイおよび動物モデル)
CRIgおよびCRIgアゴニスト(CRIgおよびCRIg ECDのIg融合体を含む)は、補体が関係している疾患または症状の種々の細胞をベースとするアッセイおよび動物モデルにおいて評価することができる。
したがって、例えば、関節炎の予防および/または処置の効率は、以下の実施例7に示すように、コラーゲン誘導関節炎のモデルにおいて評価することができる(Teratoら、Brit.J.Rheum.35:828−838(1966))。可能性のある関節炎の予防薬/治療薬もまた、Teratoら、J.Immunol.148:2103−8(1992);Teratoら、Autoimmunity 22:137−47(1995)、および以下の実施例8に記載するように、4種類のモノクローナル抗体の混合物の静脈内注射によって誘導された抗体によって媒介される関節炎のモデルにおいてスクリーニングすることができる。関節炎の予防および/または処置の候補は、トランスジェニック動物モデル(例えば、TNF−αトランスジェニックマウス(Taconic))においても実験することができる。これらの動物は、ヒトの関節リウマチの病因に関係しているサイトカインである、ヒト腫瘍壊死因子(TNF−α)を発現する。これらのマウスでのTNF−αの発現は、前脚および後脚に重篤な慢性関節炎を生じ、炎症性関節炎の単純なマウスモデルを提供する。
ここ数年の間に、乾癬の動物モデルもまた提供された。したがって、Asebia(ab)、パサパサした(flaky)皮膚(fsn)、および慢性の増殖性皮膚炎(cpd)は、乾癬様の皮膚の変化を伴う自然発生的なマウスの変異である。皮膚でサイトカイン(例えば、インターフェロン−γ、インターロイキン−1α、ケラチノサイト増殖因子、トランスフォーミング増殖因子−α、インターフェロン−6、血管内皮増殖因子、または骨形態形成タンパク質−6)が過剰発現されるトランスジェニックマウスもまた、インビボでの乾癬の研究に、そして乾癬の処置のための治療薬の同定に使用することができる。乾癬様の病変は、PL/J株に戻し交配したβ−インテグリンハイポモルフ(hypomorphic)マウスにおいて、β−インテグリントランスジェニックマウスにおいて、CD4/CD45RBhi Tリンパ球を用いて再構築したscid/scidマウスにおいて、ならびにHLA−B27/hβmトランスジェニックラットにおいても記載されている。免疫不全マウスに移植したヒトの皮膚を使用する異種移植モデルもまた知られている。したがって、本発明の化合物は、Schon,M.P.ら、Nat.Med.(1997)3:183に記載されているscid/scidマウスモデルにおいて試験することができる。この場合、マウスは、乾癬と似た組織病理学的皮膚病変を示す。別の適切なモデルは、Nickoloff,B.J.ら、Am.J.Path.(1995)146:580に記載されているように調製されるヒト皮膚/scidマウスキメラである。さらなる詳細については、例えば、Schon,M.P.,J.Invest Dermatology 112:405−410(1999)を参照のこと。
組換え体(トランスジェニック)動物モデルは、トランスジェニック動物の作成のための標準的な技術を使用して、目的の動物のゲノムに目的の遺伝子のコード部分を導入することによって操作することができる。トランスジェニック操作の標的とすることができる動物として、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ヒツジ、ヤギ、ブタ、および
ヒト以外の霊長類(例えば、ヒヒ、チンパンジー、および他のサル)が挙げられるが、これらに限定はされない。このような動物にトランス遺伝子を導入するための当該分野で公知の技術としては、pronucleicマイクロインジェクション(Hoppe and Wanger,米国特許第4,873,191号);生殖系へのレトロウイルス媒介遺伝子導入(例えば、Van der Puttenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82,6148−615(1985));胚性幹細胞内での遺伝子標的化(Thompsonら、Cell 56.313−321(1989));胚のエレクトロポレーション((Lo,Mol.Cell.Biol.3:1803−1814(1983));精子媒介遺伝子導入(Lavitranoら、Cell 57,717−73(1989))が挙げられる。概要については、例えば、米国特許第4,736,866号を参照のこと。
本発明の目的について、トランスジェニック動物として、それらの細胞の一部にだけトランス遺伝子を有している動物(「モザイク動物」)が挙げられる。トランス遺伝子は、1つのトランス遺伝子として、またはコンカタマー(concatamer)(例えば、頭対頭、または頭対尾のタンデム)としてのいずれかで組み込まれ得る。特定の細胞のタイプへのトランス遺伝子の選択的導入は、例えば、Laskoら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89,623−636(1992)の技術にしたがって行うこともできる。
トランスジェニック動物の中でのトランス遺伝子の発現は、標準的な技術によってモニターすることができる。例えば、サザンブロット分析またはPCR増幅を、トランス遺伝子の組み込みを確認するために使用することができる。その後、mRNAの発現のレベルを、インサイチュハイブリダイゼーション、ノーザンブロッティング分析、PCR、または免疫細胞化学などの技術を使用して分析することができる。
動物はさらに、例えば、特定の組織への免疫細胞の浸潤を決定するための組織学的実験によって、免疫疾患の病状の兆候について試験され得る。ブロッキング実験もまた行うことができ、この場合は、トランスジェニック動物は、補体および補体の活性化(伝統的な軽度と代替補体経路を含む)、またはT細胞の増殖に対する影響の程度を決定するために、CRIgまたは候補のアゴニストで処置される。これらの実験では、本発明のポリペプチドに結合するブロッキング抗体が動物に投与され、目的の生物学的効果がモニターされる。
あるいは、CRIgが欠損している、またはCRIgをコードする別の遺伝子を有している「ノックアウト」動物を、CRIgポリペプチドをコードする内因性遺伝子と動物の胚細胞に導入された同じポリペプチドをコードする別のゲノムDNAの間での相同組換えの結果として、構築することができる。例えば、CRIgをコードするcDNAは、確立されている技術にしたがって、CRIgをコードするゲノムDNAをクローニングするために使用することができる。CRIgをコードするゲノムDNAの部分は、欠失させることも、または別の遺伝子(例えば、組み込みをモニターするために使用することができる選択マーカーをコードする遺伝子)で置き換えることもできる。通常、数キロベースの変化していない隣接DNA(5’末端と3’末端との両方)がベクターに含まれる(例えば、相同組換えベクターの記載については、Thomas and Capecchi,Cell,51:503(1987)を参照のこと)。ベクターは、胚性幹細胞株に導入され(例えば、エレクトロポレーションによって)、そして導入されたDNAが内因性のDNAと相同組換えされた細胞が選択される(例えば、Liら、Cell,69:915(1992)を参照のこと)。選択された細胞は、その後、動物(例えば、マウスまたはラット)の未分化胚芽細胞に注入されて、キメラの集団が形成される(例えば、Bradley,Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells:A Practical Approach,E.J.Robertson,編.(IRL,Oxford,1987),113−152頁を参照のこと)。キメラ胚は、その後、適切な偽妊娠させた雌の里親動物に移植することができ、「ノックアウト」動物を作成するための胚が得られる。それらの生殖系細胞の中に相同組換えされたDNAを有している子孫は、標準的な技術によって同定することができ、動物の全ての細胞に相同組換えされた細胞が含まれている動物を繁殖させるために使用することができる。ノックアウト動物は、例えば、それらの特定の病理学的症状に対する防御能力について、およびそれらのCRIgポリペプチドが存在しないことが原因である病理学的症状の発症について特性決定することができる。
したがって、CRIgまたはその可能性のあるアゴニストの生物学的活性は、以下の実施例7に記載するように、マウスCRIgノックアウトマウスにおいてさらに試験することができる。
抗原によって誘導される気道の過敏反応、肺好酸球増多増加症、および炎症がオボアルブミンでの動物の感作、およびその後のエアゾールによって投与される同じタンパク質での動物のチャレンジによって誘導される、喘息のモデルが記載されている。いくつかの動物モデル(モルモット、ラット、ヒト以外の霊長類)は、エアゾール抗原でチャレンジすると、ヒトにおいてはアトピー性喘息と同様の症状を呈する。マウスモデルは、ヒトの喘息の特徴の多くを有する。CRIgおよびCRIgアゴニストを、活性および喘息の処置における有効性について試験するための適切な手順は、Wolyniec,W.W.ら、Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.(1998)18:777およびその中で引用されている参考文献に記載されている。
接触過敏症は、細胞によって媒介される免疫機能の簡単なインビボでのアッセイである。この手順においては、表皮細胞が外因性のハプテンに曝され、これによって遅延型の過敏反応が生じ、これが測定され、定量される。接触過敏症には、最初に感作期があり、その後に誘発期が含まれる。誘発期は、表皮細胞が、それらが以前に接触したことがある抗原に遭遇すると生じる。腫れおよび炎症が生じ、それによってこれがヒトのアレルギー性接触皮膚炎の優れたモデルとなる。適切な手順は、Current Protocols
in Immunology,J.E.Cologan,A.M.Kruisbeek,D.H.Margulies,E.M.Shevach and W.Strober,編,John Wiley & Sons,Inc.,1994,unit 4.2に詳細に記載されている。Grabbe,S.and Schwarz,T.Immun.Today 19(1):37−44(1998)もまた参照のこと。
移植片対宿主病は、免疫応答性細胞が免疫抑制されている患者または寛容患者に移植されると生じる。ドナー細胞は、宿主抗原を認識し、これに応答する。応答は、生命を脅かすほどの重症の炎症から、下痢および体重の減少の穏やかな症状まで様々であり得る。移植片対宿主病のモデルによっては、MHC抗原および主要ではない移植抗原に対するT細胞の反応性を評価する手段が提供される。適切な手段は、Current Protocols in Immunology,前出,unit 4.3に詳細に記載されている。
皮膚の同種移植片拒絶の動物モデルは、インビボでの組織の崩壊を媒介するT細胞の能力を試験する手段であり、これは、抗ウイルスおよび抗腫瘍免疫におけるそれらの役割の指標であり尺度でもある。最も一般的であり受け入れられているモデルでは、マウスの尾−皮膚移植が使用される。反復実験は、皮膚の同種移植片拒絶が、T細胞、ヘルパーT細胞、およびキラーエフェクターT細胞によって媒介され、抗体によっては媒介されないことを示している。Auchincloss,H.Jr.and Sachs,D.H.,Fundamental Immunology,第2版,W.E.Paul編.,Raven Press,NY,1989,889−992。適切な手順は、Current
Protocols in Immunology,前出,unit 4.4に詳細に記載されている。CRIgおよびCRIgアゴニストを試験するために使用することができる他の移植拒絶モデルは、Tanabe,M.ら、Transplantation(1994)58:23およびTinubu,S.A.ら、J.Immunol.(1994)4330−4338に記載されている同種心臓移植モデルである。
遅延型過敏症の動物モデルによって、細胞媒介性免疫機能のアッセイが十分に提供される。遅延型過敏反応は、抗原でのチャレンジの後に一定の時間が経過するまで、ピークに達することのない炎症を特徴とする、T細胞によって媒介されるインビボでの免疫応答である。これらの反応はまた、組織特異的自己免疫疾患、例えば、多発性硬化症(MS)および実験用の自己免疫脳脊髄炎(EAE、MSのモデル)においても生じる。適切な手順は、Current Protocols in Immunology,前出,unit 4.5に詳細に記載されている。
EAEは、T細胞および単核細胞の炎症、ならびにそれに続く中枢神経系の軸索の脱髄を特徴とする、T細胞によって媒介される自己免疫疾患である。EAEは、一般的には、ヒトのMSについての関連する動物モデルと考えられている。Bolton,C.,Multiple Sclerosis(1995)1:143。急性および再発性の両方の寛解型モデルが開発されている。CRIgならびにそのアゴニストおよびアンタゴニストは、上記のCurrent Protocols in Immunology,unit 15.1および15.2に記載されているプロトコールを使用して免疫媒介性の脱髄疾患に対するT細胞の刺激または阻害活性について試験することができる。乏突起膠細胞またはSchwann細胞が、Duncan,I.D.ら、Molec.Med.Today(1997)554−561に記載されているような中枢神経系に移植されるミエリン疾患ついてのモデルもまた参照のこと。
加齢性黄斑変性(AMD)の動物モデルは、Ccl−2またはCcr−2遺伝子にヌル変異を有しているマウスから構成される。これらのマウスは、AMDの心臓の特徴を生じ、これには、網膜の色素上皮(RPE)でのリポフスチンの蓄積とその真下のドルーゼ、光受容体の萎縮、および脈絡膜血管新生(CNV)が含まれる。これらの特徴は、6ヶ月齢を超えてから発症する。CRIgとCRIgアゴニストとは、ドルーゼの形成、光受容体の萎縮、および脈絡膜血管新生について試験することができる。
CNVは、レーザーによって誘導される脈絡膜血管新生の種々のモデルにおいて試験することができる。したがって、例えば、CNVは、脈絡膜血管新生を生じる強いレーザー光凝固術により、ラットおよびカイクイザルにおいて誘導することができる。この症状の進行および処置は、例えば、様々な時間の間隔で、処置前および処置後の動物から回収した血清の、フルオレセイン血管造影法、組織病理学的および免疫組織化学的評価、ならびに薬物動態、溶血、抗体スクリーニング、および補体活性化アッセイによって評価することができる。予防的投与の効率は、フルオレセイン血管造影法、レーザー焼却部位での補体の蓄積の阻害、眼の試験、眼の写真撮影、硝子体および網膜組織を採ることなどによって、血管の漏れをモニターすることを含む同様の方法によってモニターすることができる。さらなる詳細は、以下の実施例に提供する。
心筋の虚血再潅流のモデルは、マウスまたはラットで行うことができる。動物は気管切開され、小動物用の人工呼吸器で酸素供給される。ポリエチレンカテーテルが、平均動脈血圧の測定のために、内部頚動脈と外頸静脈とに挿入される。心筋の虚血再潅流は、6−O縫合での左下行前動脈(LAD)の結紮によって開始される。虚血は、血管を完全に閉塞させるためにLADの周辺の可逆的な結紮を縫合することによって生じさせた。結紮は、30分後に取り除き、そして心臓を4時間潅流させた。CRIgおよびCRIgアゴニストは、心臓の梗塞の大きさ、心臓のクレアチンキナーゼの活性、ミエロペルオキシダーゼ活性、および抗C3抗体を使用する免疫組織化学を測定することによってそれらの効力について試験することができる。
糖尿病性網膜症のモデルには、ストレプトゾトシンでのマウスまたはラットの処置が含まれる。CRIgおよびCRIgアゴニストは、小静脈の拡張、網膜内微小血管の異常、ならびに、網膜および硝子体腔の新血管形成に対するそれらの影響について試験することができる。
膜増殖性糸球体腎炎のモデルは以下のように確立することができる:雌のマウスを、CFA中の0.5mgの対照のウサギIgGによりi.p.で免疫化する(−7日目)。7日後(0日目)、1mgのウサギ抗マウス糸球体基底膜(GBM)抗体を、尾静脈を介してi.v.注射する。血清中の抗ウサギIgG抗体の増加はELISAによって測定される。24時間の尿試料が代謝ケージの中でマウスから採取され、マウスの腎機能が血液尿窒素に加えて、尿タンパク質の測定によって評価される。
(7.薬学的組成物)
本発明の活性のある分子(ポリペプチドおよびそれらのアゴニストを含む)、ならびに、上記で開示されたスクリーニングアッセイによって同定される他の分子は、炎症性疾患の処置のために、薬学的組成物の形態で投与することができる。
活性のある分子(好ましくは、本発明のCRIgポリペプチドまたはCRIアゴニスト)の治療用形態は、所望の純度の活性のある分子を最適な薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤と、凍結乾燥処方物または水溶液の形態で混合することによって、保存用に調製される(Reminogton’s Pharmaceutical Sciences 第16版,Osol,A.編(1980))。許容される担体、賦形剤、または安定剤は、使用される投与量および濃度ではレシピエントに対して毒性はなく、これには、リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;保存剤(例えば、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンズアルコニウム;塩化ベンズトニウム;フェノール、ブチルアルコールまたはベンジルアルコール;アルキルパラベン(例えば、メチルパラベンまたはプロピルパラベン);カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール:3−ペンタノール;およびm−クレゾール);低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド;タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン);親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン);アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジン);単糖類、ニ糖類、および他の炭水化物(グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む);キレート化剤(例えば、EDTA);糖類(例えば、スクロース、マンニトール、トレハロース、またはソルビトール);塩を形成する対イオン(例えば、ナトリウム);金属錯体(例えば、Zn−タンパク質複合体):ならびに/あるいは、非イオン性界面活性剤(例えば、TWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、またはポリエチレングリコール(PEG))が挙げられる。
本発明のスクリーニングアッセイによって同定された化合物は、同様の様式で、当該分野で周知の標準的な技術を使用して処方することができる。
リポフェクションまたはリポソームもまた、細胞にポリペプチド、抗体、または抗体断片を送達するために使用することができる。抗体断片が使用される場合は、標的タンパク質の結合ドメインに特異的に結合する最も小さい断片が好ましい。例えば、抗体の可変領域配列に基づいて、標的タンパク質配列に結合する能力を保持しているペプチド分子を設計することができる。このようなペプチドは、化学的に合成することができ、そして/または組換えDNA技術によって生産することもできる(例えば、Marascoら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90,7889−7893(1993)を参照のこと)。
本明細書中の処方物にはまた、処置される特定の適応症について不可欠な1つ以上の活性化合物が含まれる場合もあり、好ましくは、互いに有害な影響を及ぼすことのない相補活性を有しているものである。あるいは、または加えて、組成物には、細胞傷害性物質、サイトカインまたは成長阻害因子が含まれる場合がある。このような分子は、意図される目的について有効である量での組み合わせで適切に存在する。
活性分子は、例えば、コアセルベーション技術によって、または界面重合によって調製されたマイクロカプセル(例えば、コロイド状の薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ−粒子およびナノカプセル)またはマイクロエマルジョン中の、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセル、およびポリ−(メチルメタクリレート)マイクロカプセル)に捕捉させることもできる。このような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,第16版,Osol,A.編,(1980)に開示されている。
インビボでの投与に使用される処方物は無菌でなければならない。これは、滅菌濾過膜を通した濾過によって容易に行うことができる。
徐放調製物が調製される場合がある。徐放調製物の適切な例として、抗体を含む固体の疎水性ポリマーの半透性マトリックスが挙げられる。このマトリックスは、成形された物質(例えば、膜またはマイクロカプセル)の形態である。徐放マトリックスの例として、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリ乳酸(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸と□エチルL−グルタミン酸とのコポリマー、非分解性エチレン酢酸ビニル、分解性乳酸−グリコール酸コポリマー(例えば、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸−グリコール酸コポリマーおよび酢酸ロイプロリドからなる注射可能なマイクロスフェア)、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が挙げられる。ポリマー(例えば、エチレン−酢酸ビニルおよび乳酸−グリコール酸)は100日間を超えて分子を放出できるが、特定のヒドロゲルは、より短い時間の間しかタンパク質を放出できない。カプセル化された抗体が長時間体内にとどまる場合には、これらは、37℃の水分に曝された結果として変性または凝集する場合があり、これによって、生物学的活性の消失、および免疫原性の変化の可能性が生じる。関与している機構に応じた安定化のための合理的方法を考えることができる。例えば、凝集機構が、チオ−ジスルフィド交換による分子間S−S結合の形成であることが発見されると、安定化は、スルフヒドリル残基を改変すること、酸溶液からの凍結乾燥、水分量の制御、適切な添加剤の使用、および特異的なポリマーマトリックス組成物の開発によって行うことができる。
眼内投与については、典型的な注射用処方物が使用され、通常、約6週間の間隔で投与される。眼はそれぞれの注射の前に麻酔される。
しかし、硝子体内での放出のために、CRIgまたはアゴニスト(例えば、CRIg−IgまたはCRIg ECD−Ig融合体)の徐放処方物の移植を使用することもまた可能である。
以下の実施例は、説明の目的だけのために提供され、そしていかなる方法でも本発明の範囲を限定するようには意図されない。
本明細書中で引用される全ての特許および学術参考文献は、それらの全体が引用により本明細書中に組み入れられる。
実施例で言及される市販の試薬は、他の場所で特に明記しない限りは、製造業者による説明書にしたがって使用した。これらの細胞の供給源は、以下の実施例において、そして本明細書を通じて、ATCC登録番号によって(ATCC登録番号は、American
Type Culture Collection,10801,University Boulevard,Manassan,VA20110−2209である)特定する。
(実施例1)
(ヒトCRIgをコードするcDNAクローン(PRO362)の単離)
Swiss−Protの公のタンパク質データベースによる約950個の既知の分泌型タンパク質の細胞外ドメイン(ECD)の配列(存在する場合には、分泌シグナルを含む)を使用して、発現される配列タグ(EST)データベースを検察した。ESTデータベースには、公のESTデータベース(例えば、GenBank)と私有のEST DNAデータベース(LIFESEQ(登録商標),Incyte Pharmaceuticals,Palo Alto,CA)とが含まれる。検索は、コンピュータープログラムBLASTまたはBLAST−2(例えば、Altshulら、Methods in Enzymology 266:460−480(1996))を使用して、EST配列の6つのフレームの翻訳物に対するECDタンパク質の比較として行った。既知のタンパク質をコードしない70(またはいくつかの場合には90)以上のBLASTスコアを生じたこれらの比較を集め、そしてプログラム「phrap」(Phil Green,University of Washington,Seattle,Washington.)を用いてコンセンサスDNAにアセンブリした。
コンセンサスDNA配列を、phrapを使用して他のEST配列と比較してアセンブリした。このコンセンサス配列を本明細書中ではDNA42257(配列番号9)と命名した(図32を参照のこと)。図32に示したDNA42257(配列番号9)コンセンサス配列に基づいて、オリゴヌクレオチドを、1)目的の配列を含むcDNAライブラリーをPCRによって同定するために、そして2)CRIgの全長のコード配列のクローンを単離するためのプローブとして使用するために合成した。正方向および逆方向PCRプライマーは、一般的には20から30ヌクレオチドの範囲であり、多くの場合には、約100〜1000bpの長さのPCR産物を生じるように設計する。プローブ配列は、通常、40〜55bpの長さである。いくつかの場合において、コンセンサス配列が約1〜1.5kbpよりも長い場合には、さらなるオリゴヌクレオチドを合成する。全長クローンについていくつかのライブラリーをスクリーニングするために、ライブラリー由来のDNAを、Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biologyにしたがって、PCRプライマーの対を用いてPCR増幅によってスクリーニングした。その後、ポジティブライブラリーを使用し、プローブオリゴヌクレオチドと一対のプライマーとを使用して目的の遺伝子をコードするクローンを単離した。
PCRプライマー(正方向および逆方向)を合成した:
正方向PCRプライマー1(42257.f1)
Figure 2011246495
(配列番号10)
正方向PCRプライマー2(42257.f2)
Figure 2011246495
(配列番号11)
逆方向PCRプライマー1(42257.r1)
Figure 2011246495
(配列番号12)
逆方向PCRプライマー2(42257.r1)
Figure 2011246495
(配列番号13)。
さらに、合成のオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションプローブを、コンセンサスDNA42257配列から構築した。これは以下のヌクレオチド配列を有していた:
ハイブリダイゼーションプローブ(42257.p1)
Figure 2011246495
(配列番号14)
全長クローンの供給源についていくつかのライブラリーをスクリーニングするために、ライブラリーに由来するDNAを、上記のPCRプライマーの対を用いたPCR増幅によってスクリーニングした。その後、ポジティブライブラリーを使用して、プローブオリゴヌクレオチドと一対のPCRプライマーとを使用してCRIg遺伝子をコードするクローンを単離した。
cDNAライブラリーの構築のためのRNAを、ヒトの胎児の脳組織(LIB153)から単離した。cDNAクローンの単離に使用したcDNAライブラリーを、Invitrogen,San Diego,CAによる試薬などの市販の試薬を使用して標準的な方法によって構築した。cDNAを、SalIへミキナーゼアダプターに対して平滑末端で連結したNotI部位を含むオリゴdTでプライムし、NotIで切断し、ゲル電気泳動によって適切な大きさにし、そして定義された方向で適切なクローニングベクター(例えば、pRKBまたはpRKD:pRK5BはpRK5Dの前駆体であり、SfiI部位を含まない;Holmesら、Science 253:1278−1280(1991))中に、特有のXhoIおよびNotI部位においてクローニングした。
記載したように単離したクローンのDNA配列によって、単離したRIgポリペプチドのDNA配列を得た(本明細書中では、UNQ317(DNA45416−1251)と指定した(配列番号1))。
UNQ317(DNA45416−1251)の全体のヌクレオチド配列を図1に示す(配列番号1)。クローンUNQ367(DNA45416−1251)(配列番号1)は、ヌクレオチド位置1082〜1084に明らかな翻訳開始部位を有している1つのオープンリーディングフレームを含む(図1、配列番号1)。推定されるポリペプチド前駆体は321アミノ酸の長さである(図1、配列番号2)。図1に示すCRIgタンパク質は、約35,544ダルトンの推定分子量と、約8.51のpIとを有する。図1に示すような321アミノ酸のCRIgポリペプチド(配列番号2)の分析によって、約149位のアミノ酸から約152位のアミノ酸までのグリコサミノグリカン結合部位と、約276位のアミノ酸から約306位のアミノ酸までの膜貫通ドメインの存在が明らかになった。クローンUNQ317(DNA45416−1251)を、ATCC寄託番号209620で寄託した。
JAMファミリーのメンバーと同様に、CRIg(PRO362)(より最近は、CRIgと呼ばれる)は、1型膜貫通分子であり、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーである。ヒトCRIgの長い形態(huCRIg(L))の細胞外ドメインは、V型とC2型との両方の末端Igドメインをコードするが(Smith and Xue,J.Mol.Biol.,274:530−545(1997))、短い形態(huCRIg(S))は、1つのV型Igだけをコードし、マウスCRIg(muCRIg)と似ている(図42A)。ヒトおよびマウスCRIgのC末端細胞質ドメインは、コンセンサスAP−2インターナライゼーションモチーフ(YARLおよびDSQALI、それぞれ、Bonafacino & Traub Ann Rev Biochem 72,p395(2003))を含む。huCRIgおよびmuCRIgは、67%の全体的な配列相同性を有しており、IgVドメインにおいては83%の相同性がある。JAMファミリーのメンバーの間では、huCRIgは、JAM−Aに最も近く関係している。配列類似性によって、Igドメインの折り畳みを形成する残基のストレッチが保存されていることを確認した(図42A)。ヒトおよびマウスCRIgはいずれも、X染色体上のXq12位置に存在しており、これらは、hephaestinとmoesinとが隣接している染色体上にシンテニー位置を有していた。
(実施例2)
(タンパク質の生産および精製)
huCRIgおよびmuCRIgの細胞外ドメインを、CRIg配列の下流にヒトまたはマウスのIgG1 Fc領域をコードする改変されたpRK5発現ベクターにクローニングした。マウスIgG1のFc部分は二重変異(D265A、N297A)を含み、これによってFc受容体の結合を妨げる(Gongら、J.Immunol.174:817−826(2005)。これを、Fc受容体の調節を制御するために使用した。ヒトIREM−1およびマウスCLM−1 Fc融合タンパク質またはマウス抗gp120 IgG抗体を対照として使用した。LFHタグ化CRIgを、酵母のロイシンジッパー、Flag、およびC末端(6)ヒスチジンに対してCRIgのECDを融合することによって作成した。タンパク質を、一時的なトランスフェクションによってCHO細胞中で過剰発現させた。細胞を、F−12/ダルベッコ改変イーグル培地をベースとする、Ultra−Low IgG血清(Invitrogen)とPrimatone HS(Sigma)とを補充した培地を使用して全自動バイオリアクターで増殖させた。培養を、回収するまで7〜12日間維持した。Fc融合タンパク質をプロテインAアフィニティークロマトグラフィーによって、その後、Sephacryl S−300ゲル濾過によって精製した。LFH融合タンパク質をニッケルカラムで精製した。ヒトCRIg−ECDタンパク質を、モノクローナル抗体3C9を吸着させたMillipore Glyceryl−CPG(173700404)カラムで親和性精製した。タンパク質を、pH3.0で溶出させ、そして,huCRIg−HISとmuCRIg−HISを、C末端(6)ヒスチジンを含むバキュロウイルス発現ベクターにCRIg ECDをクローニングすることによって作成した。プラスミドDNAをSf9細胞にトランスフェクトし、上清を使用してH5細胞を感染させ、そしてタンパク質をニッケルカラムで精製した。全ての精製したタンパク質の実体を、N末端配列分析によって確認し、リポ多糖濃度は、ヒトまたはマウスCRIg調製物について<5Eu/mgであった。
(実施例3)
(抗体の調製)
ポリクローナル抗体を、完全なフロイトアジュバント中の200μgのhuCRIg(L)−HisでのNew Zealandウサギの免疫化、これに続く最初の免疫化の6週間後の追加免疫によって生成した。muCRIgおよびhuCRIgに対するモノクローナル抗体を、脚パッドへの注射による50μgのhisタグ化CRIg融合タンパク質でのWistarラットおよびBalb/cマウスの免疫化によって生成した。クローンを、ヒトおよびマウスCRIg−ECDとの反応性に基づいて、ELISA、FACS、ウェスタンブロット、および免疫組織化学によって選択した。他の場所で明記しない限り、得られた抗体を続く試験に使用した。
(実施例4)
(モルモットの皮膚への炎症性細胞の浸潤)
以下の実施例は、モルモットの皮膚への炎症性細胞(すなわち、好中球、好酸球、単球、またはリンパ球)の浸潤を刺激するという点で、huCRIg(PRO362)がプロ炎症性であることを示す。本明細書中に記載するアッセイによって、モルモットの皮膚への炎症性細胞の浸潤を誘導するこのタンパク質の能力をモニターする。炎症性の浸潤を刺激する化合物は、炎症応答の増強が有効である場合に、治療的に有用である。リンパ球の増殖を阻害する化合物は、炎症応答の抑制が有効である場合に、治療的に有用である。治療薬は、例えば、マウス−ヒトキメラ、CRIgに対するヒト化またはヒト抗体、低分子、ペプチドなど(CRIgの生物学的活性を模倣する)、CRIg融合タンパク質、CRIg細胞外領域などの形態であることができる。
350グラム以上の体重の無毛のモルモット(Charles River Labs)を、筋肉内で、ケタミン(75〜80mg/kg体重)およびキシラジン(5mg/kg体重)により麻酔した。huCRIgタンパク質および対照タンパク質のタンパク質試料を、1つの注射部位について100μlの容量で、それぞれの動物の背中に皮内注射した。1匹の動物について、およそ16〜24箇所の部位に注射した。1mLのEvans
blue色素(1%の生理緩衝食塩水)を、心内膜に注射した。動物を6時間後に麻酔し、個々の皮膚注射部位を生検し、ホルマリン中に固定した。皮膚を、組織病理学的評価のために準備した。それぞれの部位を、皮膚への炎症性細胞の浸潤について評価した。生存性の炎症性細胞を有している部位をポジティブとスコアした。炎症性細胞の浸潤を誘導する試料を、プロ炎症性物質としてスコアした。試験したCRIgはこのアッセイではポジティブであり、これは、抗炎症活性を示している。
(実施例5)
(CRIg(PRO362)mRNAおよびポリペプチドの発現)
(A.インサイチュハイブリダイゼーションおよび免疫組織化学)
CRIg mRNAの発現を、インサイチュハイブリダイゼーション、免疫組織化学、およびRT−PCRによって、種々の組織のタイプで評価した。
インサイチュハイブリダイゼーションのために、組織を固定し(4%のホルマリン)、パラフィンに包埋し、切片化し(3〜5μmの厚み)、脱パラフィン化し、プロテイナーゼKで徐タンパク(20μg/ml)(37℃で15分間)し、そしてインサイチュハイブリダイゼーションのために処理した。本発明のポリペプチドに対するプローブをPCRによって作成した。プライマーにはT7またはT3 RNAポリメラーゼ開始部位を含めて、増幅した産物からのセンスまたはアンチセンスプローブのインビトロでの転写を可能にした。33P−UTPで標識したセンスおよびアンチセンスプローブを一晩ハイブリダイズし(55℃)、洗浄し(0.1×SSC、55℃で2時間)、NBT2核トラックエマルジョン(Eastman Kodak,Rochester,NY)に浸し、焼き付け(4℃で4〜6週間)、そして現像して、ヘマトキシリンとエオシンとで対比染色した。代表的な対の明視野画像と暗視野画像とを典型的に示す。
免疫組織化学的染色を、DAKO Autostainerを使用して5mmの厚さの凍結切片について行った。内因性のペルオキシダーゼ活性を、KirkegaardおよびPerry Blocking Solution(1:10、20℃で4分間)でブロックした。TBS/0.05%のTween−20中の10%のNGS(DAKO)を、希釈およびブロッキングに使用した。MAb 4F722.2抗CRIg(抗PRO362)またはマウスIgGは0.13mg/mlで使用した。ビオチニル化ヤギ抗マウスIgG(Vector Labs,Burlingame,CA)を1:200で使用し、Vector Labs Standard ABC Elite Kit(Vector Labs,Burlingame,CA)で検出した。スライドを、Pierce金属増強ジアミノベンジジン(metal−enhanced diaminobenzidine)(Pierce Chemicals,Rockford,IL)を使用して現像した。CRIg(PRO362)とCD68との発現についての二重免疫組織化学を、マクロファージについてCRIgの発現の局在化を明らかにするために、凍結切片について行った。(DAKO)によるmAb 4F7.22.2抗CRIgおよび抗CD68 mAb KP−1を利用し、それぞれ、フィコエリスリンおよびFITCマーカーによって検出した。
発現を、ヒトおよび他の哺乳動物に由来する広範囲の種々の組織および細胞のタイプにおいて試験した。
(a.正常組織)
試験した正常なヒトの成体組織には、扁桃腺、リンパ節、脾臓、腎臓、尿、膀胱、肺、心臓、大動脈、冠状動脈、肝臓、胆嚢、前立腺、胃、小腸、結腸、膵臓、甲状腺、皮膚、副腎、胎盤、子宮、卵巣、精巣、網膜、および脳(小脳、脳幹、大脳皮質)を含めた。E12−16週齢の脳、脾臓、腸、および甲状腺を含む正常なヒトの胎児の組織もまた試験した。さらに、マウスの肝臓での発現も調べた。
(b.炎症組織)
インサイチュハイブリダイゼーションによって試験した炎症組織には、慢性喘息、慢性気管支肺炎、慢性気管支炎/慢性閉塞性肺疾患による肺、慢性リンパ球性間質性腎炎による腎臓、ならびに慢性的な炎症および慢性的なC型肝炎感染、自己免疫性肝炎またはアルコール性肝硬変が原因である肝炎による肝臓などの、慢性的な炎症性疾患を有している組織を含めた。
(c.原発性新生物)
PRO362の発現についてインサイチュハイブリダイゼーションによって試験した原発性のヒトの新生物には、乳ガン、肺扁平細胞ガン、肺腺ガン、前立腺ガン、および結腸腺ガンを含めた。
(2.結果)
CRIg(PRO362)は、マウスの肝臓の凍結切片(図6)、ヒトの肝臓の凍結切片(図7)、および多数の組織マクロファージ様細胞(結腸マクロファージ(図8A)、クップファー細胞(図8B)、副腎マクロファージ(図8C)、ホーフバウワー細胞(図8D)、滑膜細胞(図9)、肺胞マクロファージ、腸の固有層での常在性マクロファージ、ならびに多くの組織での間質性マクロファージを含む)で発現していることが明らかになった。CRIgはまた、脳の小神経膠細胞の中でも有意に発現されていた(図10)。CRIgの発現は、新生物または炎症性疾患(関節リウマチ(図9)、炎症性腸疾患、慢性肝炎(図12)、肺炎、慢性喘息(図11)、神経膠腫、および気管支炎を含む)の存在によって活性化されると、これらの組織で有意に増加した。
CRIgの発現をさらに試験するために、免疫組織化学的染色を、種々の組織タイプについて行った。CRIgおよびCD68についての二重免疫組織化学的染色を、組織マクロファージ(副腎マクロファージ、肝臓のクップファー細胞、脳の小神経膠細胞、胎盤のホーフバウワー細胞を含む)について行い、CRIgとCD68とが同じ組織で発現されているかどうかを判定した。
CRIgは、副腎マクロファージ(図13)、肝臓のクップファー細胞(図14)、脳の小神経膠細胞(図15)、および胎盤のホーフバウワー細胞(図16)でCD68と同時発現していることが明らかになった。
(実施例6)
(慢性の炎症におけるCRIg(PRO362)の関与)
A33抗原およびJAM1に対して相同性を有している新規のマクロファージ関連受容体を、実施例1および以下に記載するようにクローニングし、これを、1つの膜貫通Igスーパーファミリーのメンバーのマクロファージ関連ポリペプチドとして同定した(CRIgまたはPRO362)。
CRIgは、2種類のスプライシングされた改変体として発現する。1つの改変体は、N末端IgV様ドメインとC末端IgC2様ドメインとを含む399アミノ酸のポリペプチドであり、huCRIgまたはhuCRIg−longと呼ばれる(配列番号4)。スプライシングされた形態(これは355アミノ酸の長さであり、C末端ドメインが欠失している)は、huCRIg−shortと呼ばれる(配列番号6)。いずれの受容体も、1つの膜貫通ドメインと、そしてインビトロでマクロファージにおいて構造的にリン酸化されるチロシン残基を含む細胞質ドメインを有している。
本研究によって、CRIgが組織常在性マクロファージのサブセットで選択的に発現し、慢性的な炎症と関係していることが明らかになった。
(材料および方法)
(細胞)
血液を、健常な成人のボランティアから、インフォームドコンセント後に静脈穿刺によって得、製造業者の説明書にしたがってFicoll−Paque PLUS(Amersham Pharmacia Biotech)を使用して分離した。PBMCを界面から得、冷却したPBSで洗浄し、0.2%のNaClで30分間溶解させ、そして1.6%のNaClで中和した。細胞をカウントし、使用するまで氷上で維持した。末梢血サブセットを単離するために、未使用のMACSキット(Miltenyi Biotech,Auburn,CA)を製造業者の説明書にしたがって使用した。マクロファージ表現形への分化を、10%(v/v)の自己のヒト血清、20%のウシ胎児血清、および10mMのL−グルタミン、ペニシリン、およびストレプトマイシンを含むHG−DMEM培地で最大2週間、CD14単球を培養することによって誘導した。5日目に培地を交換した。フローサイトメトリー分析のために、細胞を、氷冷した細胞解離溶液(Sigma)を使用して培養皿から解離させた。ウェスタンブロット分析のための溶解物を、0.5mlの溶解緩衝液をウェルに直接添加することによって調製した。溶解物を、SDSとβ−メルカプトエタノールとを含む試料緩衝液と混合し、Tris−Glycineゲルで泳動させ、そしてニトロセルロース膜に移した。細胞の生存性は、トリパンブルー色素排除法によって評価した。
(フローサイトメトリー)
フローサイトメトリー分析に使用するための細胞を、2%のウシ胎児血清と5μg/mlのヒトIgGとを含むPBS(Calbiochem,San Diego,CA)で、4℃で30分間ブロックした。次に、細胞を3C9(抗CRIg(抗PRO362)モノクローナル抗体)とともにインキュベートした。PBSでの洗浄後、細胞を、Pharmingenから入手したCD11b、CD14、CD163、CD15、CD68に対するフィコエリスリン(PE)結合抗体で染色した。
(細胞−細胞接着実験)
全長のCRIgを含むpRK発現ベクターを、別の場所に記載したように、ネオマイシン選択と自動クローン選別(autoclone sorting)とを使用して、ヒトJurkat T細胞株で安定して発現させた。細胞を、蛍光色素BCECF(Molecular Probes,Oregon)とともにプレロードし、10ng/mlのTNFαで処理したまたは処理していないヒトの臍静脈内皮細胞(HUVEC)の単層をコーティングした96ウェルMaxisorbプレート(CORNIG(商標))に添加した。細胞は、一般的には、インキュベーション緩衝液(10mMのCaCl、10mMのマグネシウム、および1.5mMのNaClを含むHBSS)をウェルにロードすること、その後、ブロッティング紙片上にプレートをさかさまにして置くことによって、穏やかに洗浄した。3回の洗浄の後、蛍光を蛍光分光計でカウントした。蛍光の読取は、HUVEC細胞に対して付着したままである細胞の数を表している。
(ノーザンブロット分析)
多組織ノーザンブロット(CLONTECH)を、製造業者の推奨にしたがってAmbionキットを使用してランダムプライムした全長のCRIg cDNAの32Pで標識したプローブでプローブした。ブロットを、22℃で4時間、phosphorimagingスクリーンに感光させた。ブロットを細片にし、ヒトまたはマウスのβ−アクチンに対する市販のプローブ(Clontech)でプレプローブして、個々のレーンでのRNAのロードと量とを評価し、Storm(登録商標)phosphorImager(Molecular Dynamics,Sunnyvale,CA)で分析した。
(実時間RtPCR分析)
定量的PCR分析(TAQMAN(商標))のために、ヒト組織または初代細胞に由来する全mRNA(100ng)が、CRIgのコード配列に基づくプライマーとともに推奨されている(PerkinElmer Life Sciences)。
(FcおよびHis融合タンパク質の生産)
ヒトCRIgを、バキュロウイルス発現ベクターpHIF(Pharmingen)にクローニングした。HISタグ化CRIg融合タンパク質は、8個のヒスチジンに融合されたCRIgの細胞外ドメインから構成されている。HISタグ化融合タンパク質を、ニッケルアフィニティー樹脂を使用して懸濁液中で増殖させたバキュロウイルス感染昆虫細胞の上清から精製した。
(モノクローナルおよびポリクローナル抗体の生産)
本実験のために、BALBc雌を、Ghilardiら、J.Biol.Chem.277:16831−16836(2002)に以前に記載されたように、脚パッドへの注射によって、10μgのCRIg−His8で、免疫化と追加免疫とを行った。シングルクローンを、ELISAによってCRIg−Hisに対してスクリーニングした。選択したクローンを、JAMファミリーのメンバーおよびヒトIgG Fcに対して試験した。クローンを、1細胞の密度になるように滴定し、プレスクリーニングした。クローン3C9(IgG1)がCRIgに対して選択的に反応性であることが明らかになった。複数のクローンを、腹水を生じさせるために使用し、そしてプロテインG(Amersham Pharmacia Biotech)で精製した。タンパク質の濃度をPierce BCA試薬(Pierce,Rockford,IL)を使用して決定した。
ポリクローナル抗体を、New Zealand Rabbitに150μgのCRIg−Hisを注射することによって作成した。血清の力価をELISAによって決定した。血清を、循環IgGレベルのピークで回収し、プロテインAカラム上で精製した。
(インサイチュハイブリダイゼーション)
PCRプライマー(上流プライマー:
Figure 2011246495
(配列番号18)、および下流プライマー:
Figure 2011246495
(配列番号19))を、huJAM4の700bpの断片を増幅するように設計した。プライマーには、T7またはT3 RNAポリメラーゼ開始部位を含め、これによって、それぞれ、増幅産物からセンスプローブまたはアンチセンスプローブがインビトロで転写されるようにした。正常なヒト組織には、扁桃腺、リンパ節、脾臓、腎臓、肺、および心臓を含めた。慢性的な炎症性疾患を有している組織には、慢性喘息、慢性気管支炎による肺、慢性的なC型肝炎感染が原因で慢性的な炎症および肝炎を有している肝臓を含めた。組織を、4%のホルマリン中に固定し、パラフィンで包埋し、切片とし(3〜5μmの厚み)、脱パラフィン化し、20μg/mlのプロテイナーゼKで徐タンパクし(37℃で15分間)、別に記載したようにインサイチュハイブリダイゼーションのために処理した。
(免疫組織化学)
ヒトの肝臓は、Ardais Corporation,Lexington,MAから入手した。免疫組織化学的染色を、DAKOオートスタイナーを使用して5〜6μmの厚みの凍結した肝臓切片について行った。内因性ペルオキシダーゼの活性を、Kirkegaard and Perryブロッキング溶液(1:10、20℃で4分間)でブロックした。TBS/0.05%のTween−20中の10%の正常なヤギ血清(NGS)を、希釈およびブロッキングに使用した。Mab 3C9は1μg/mlで使用した。スライドを、金属増強ジアミノベンジジン(metal−enhanced diaminobenzidine)(Pierce Chemicals)を使用して現像した。
切片の免疫蛍光染色のために、切片を、PBS/10%のNGSでブロックし、mAb
3C9とともに20℃で1時間インキュベートした。FITSに結合させたウサギ抗マウスFITC標識二次抗体を検出試薬として使用した。続いて、二重染色の手順のために、切片を、ヒトCD68に対するPE結合モノクローナル抗体で染色した。
(結果)
実施例1に記載したように,huCRIgを、ヒトJAM1の保存されているIgドメインを認識する縮重プライマーを使用してヒト胎児のcDNAライブラリーからクローニングした。いくつかのクローンの配列決定によって、321アミノ酸のオープンリーディングフレーム(図1、配列番号2)が明らかになった。Blast検索によってZ39Ig(1型膜貫通タンパク質)に対する類似性を確認した(Langnaeseら、Biochim Biophys Acta 1492:522−525(2000))。この321アミノ酸のタンパク質は、いくつかのC末端アミノ酸残基を欠失していることが後に明らかになった。全長のhuSIgMAタンパク質は、図2に示すように、399アミノ酸残基を有すると判定されている(配列番号4)。CRIgの細胞外領域は、2つのIg様ドメインから成り、N末端V−setドメインとC末端C2−setドメインとを含んだ。3’プライマーと5’プライマーとを使用して、CRIgのスプライシング改変体であるCRIg−short(305アミノ酸、図3、配列番号6)(これは、膜近接IgGドメインが欠失している)をクローニングした。
(ヒトCRIgと比較したマウスCRIgのクローニングおよび配列)
マウスの発現される配列タグ(EST)データベースを、huCRIgの全長のオープンリーディングフレームと、tblastnアルゴリズムとを使用して検索した。3つのクローンのDNA配列決定によって、同一の完全な280アミノ酸のオープンリーディングフレームを得た。3プライム領域に対するプライマーを使用して、マウスの脾臓ライブラリーから全長の転写物をクローニングした。マウスのクローンは、C末端Ig様ドメインを欠失している点で、huCRIgのスプライシング形態と似ていた。細胞外IgVドメインは、ヒトの受容体とマウスの受容体との間でよく保存されており、93%の同一性を有していた。マウスの細胞質ドメインはあまり保存されておらず、そのヒトの対応物よりも20アミノ酸短く、そして40%の同一性であった。マウスCRIg(muCRIg)をコードする核酸と推定されるアミノ酸配列とを図4に、それぞれ、配列番号7および8として示す。
(CRIgは、様々な組織中の常在性マクロファージのサブセットで発現し、その発現は炎症において増大している)
huCRIgのノーザンブロット分析は、1.5kbと1.8kbとの2種類の転写物(図17)を示し、副腎、肺、心臓、および胎盤において最も高い発現を有しており、他の臓器(例えば、脊髄、甲状腺、乳腺、およびリンパ節)においては低い発現を有していた。全ての組織において、1.8kbの転写物が最も豊富に発現される転写物であり、これはおそらく、CRIgの長い形態をコードする。約1.4kbの1つの転写物は、マウスの肝臓および心臓で検出された。
(TAOMAN(商標)実時間PCR分析)
CRIgを発現する特異的な細胞株を同定するために、実時間定量的PCR、およびN末端Igドメインに特異的なプライマー/プローブを使用した。低いが、検出可能なmRNAの発現が、PMAで処理した骨髄性細胞株HL−60および単球細胞株THP−1において見られた。発現は、B細胞株およびT細胞株には存在していなかった(図18A)。
(分化した単球でのCRIgの発現)
CRIgが分化している単球/マクロファージで発現される際の詳細を確立するために、本発明者らは、ヒトの自己血清の存在下で分化するように誘導した非接着性の単球および接着性の単球の中でのCRIg mRNAのレベルを決定した。CRIg mRNAレベルは時間と共に段階的に上昇し、そしてプレーティング後7日で最大レベルに達した(図18B)。この分化段階では、mRNAレベルは、未分化の単球の中でのmRNAのレベルよりも100倍高かった。
単球/マクロファージの溶解物のウェスタンブロッティングは、CRIg mRNAの発現の増加と平行してCRIgタンパク質の発現の増大を示し(図18C)、これは、CRIgが、単球がマクロファージを形成するように分化する際に発現することを示している。48kDaのバンドと40kDaのバンドとがブロット上で明らかになり、これらはおそらく、ヒトCRIgの長い形態と短い形態とを示している。
(CRIgの分子の特性決定)
CRIgは、還元条件および非還元条件下で同様に移動し、このことは、これが単量体として発現されていることを示している(図19A)。CRIgをPNGase Fを使用して脱グリコシル化した場合にも、移動パターンにはごくわずかな変化しか観察されず、これは、N−グリコシル化が重要ではないことを示している。CRIgは、CRIgを過剰発現する細胞をパーバナデート(pervanadate)で処理した場合には、リン酸化されていた(図19B)。リン酸化されたCRIgは、わずかに大きいMwのタンパク質(55kDa)として移動した。ヒトHEK293細胞においては、チロシンリン酸化CRIg細胞質ドメインはSykキナーゼを動員することはない(結果は示さない)。
(末梢血単核細胞でのCRIgの発現のフローサイトメトリー分析)
循環している白血球中のCRIgの発現パターンを決定するために、フローサイトメトリー分析を、モノクローナル抗ヒトCRIg抗体3C9を使用して健常なドナー由来の血液から単離したリンパ球について行った。抗体は、Balb/Cマウスをocta−Hisタグ化ヒトCRIg細胞外ドメインで免疫化することによって作成した。抗体は、ALEXA(商標)A488と直接結合したアセトンで固定した凍結切片中の自然界に存在しているタンパク質を検出するために使用することができる非ブロッキング抗体である。対比染色を、いくつかの免疫細胞表面抗原に対するPE結合抗体を用いて行った。CRIgは全ての白血球(B細胞、T細胞、NK細胞、単球、および顆粒球を含む)の表面には存在しなかった(図20)。しかし、CRIgはマクロファージ分化培地で7日間培養した単球で発現していた。
(単球でのCRIgの発現の調節)
CRIgの発現の調節を研究するために、7日間、マクロファージを、種々のプロ炎症性サイトカインおよび抗炎症性サイトカインの存在下で培養し、CRIgの発現レベルを実時間PCRまたはフロー分析によって決定した。CRIg mRNAの発現は、IL−10およびTGF−βでの2日間のマクロファージでの処理後に増大し、IL−4、IL13、およびLPSによってダウンレギュレートされた(図21A)。デキサメタゾンでの処理によっては、対照の未処理のマクロファージと比較して発現が5倍に増大した。細胞表面で発現されるCRIgの調節を決定するために、フローサイトメトリーを、種々のサイトカインとデキサメタゾンで5日間処理した末梢血単球について行った。CRIgを、ALEXA(商標)A488に結合されたモノクローナル抗体クローン3C9を使用して検出した。細胞を、抗CD14抗体で同時染色した。CRIgの高い表面発現は、IL−10およびLPSでの5日間の単球の処理の後で見られた(図21B)。表面でのCRIgの発現の劇的な増大は、デキサメタゾンでの処理後に見られた。
(CRIgの細胞内分布)
CRIgの細胞内分布を研究するために、単球由来マクロファージ(MDM)を15日間培養物中で維持し、その後、これらを固定し、そしてモノクローナル抗体(クローン3C9)またはポリクローナル抗体4F7で、その後、FITC結合二次抗体およびPE標識抗CD63抗体で染色した。共焦点顕微鏡は、特定の細胞質の中でのCRIgの高い発現を示し、これは、リソソーム膜タンパク質CD63の発現と重なっていた(図22)。CRIgは、その染色パターンがCD63の染色パターンとは重複していないマクロファージの先端および末端でも発現していた。
(正常組織および疾患組織でのCRIgの発現)
組織常在性マクロファージでのCRIgの発現および慢性炎症性疾患の組織でのその発現を研究した。インサイチュハイブリダイゼーションを使用して、CRIg mRNAの発現の変化を、パラホルムアルデヒドで固定したヒト組織のパネルについて決定した。高い発現レベルが、肺炎または慢性喘息を有している患者の肺の剖検によって得られた肺胞マクロファージで見られた(図23、A、B、C、およびD)。高いmRNAの発現は、慢性肝炎の患者の肝臓の中のクップファー細胞の中で見られた(図23、EおよびF)。
以前の研究(Walker,Biochimicaら、Biophysica Acta 1574:387−390(2002))およびライブラリーの電気的スクリーニングにおいては、CRIg mRNAの高い発現が、関節リウマチの患者の滑膜において見られた。したがって、関節リウマチ、変形性関節症、および変性骨疾患の患者から得られた滑膜でのCRIgの発現パターンを研究した。CRIg mRNAの高い発現が、変形性関節症の患者から得られた滑膜細胞の中で見られた(図24,B)。表層の滑膜細胞は、最も高いCRIgの発現を有していた(図24、D)。加えて、ポリクローナル抗体6F1を、関節リウマチの患者から得られたヒトの滑膜の凍結切片の中でのCRIgの発現を研究するために使用した。CRIgは、滑膜細胞のサブセット(20〜40%)および滑膜での組織マクロファージにおいて発現していた(図25、A、B、C)。これらの細胞は、A型マクロファージ様滑膜細胞である可能性が最も高かった。染色は、対照の滑膜には存在しなかった(図25D)。
CRIgタンパク質の発現は、多数の種々の組織中のマクロファージで見られた。CRIgを安定に発現するCHO細胞から調製した凍結切片は、CRIgの膜局在化を示した(図26A)。CRIgタンパク質は、肺胞マクロファージ(図26、B)、小腸の固有層中の組織球(図26、C)、胎盤のホーフバウワー細胞(図26、D)、副腎のマクロファージ(図26、E)、および肝臓のクップファー細胞(図26、F)中で見られた。
アテローム性プラークは、多数のマクロファージまたはマクロファージ泡沫細胞を含み、大動脈の内腔壁に堅く接着していた。マクロファージ−内皮の接着におけるCRIgの役割を考慮して、アテローム性プラークにおけるCRIgの発現を研究した。プラークの別の切片を、抗CD63(図27、AおよびB)または抗CRIg(図27、CおよびD)で染色した。抗CD63とCRIgとの染色パターンの重複が血管壁と並行している泡沫細胞で見られ、これはアテローム性動脈硬化症におけるCRIgの役割を示している。
CRIgがマクロファージで選択的に発現するかどうかを決定するために、二重免疫蛍光染色を、心臓の間質マクロファージについて行った(図28)。重ね合わせ(図28、3つ目のパネル)に示したように、CRIgについてポジティブである間質マクロファージのほとんどは、CD68についてもポジティブであった。全てのCD68ポジティブマクロファージがCRIgについてもポジティブであるわけではなく、これは、CRIgポジティブマクロファージが、組織常在性マクロファージのサブタイプに特異的であることを示している。
炎症性腸疾患(IBD)症候群におけるmRNAの発現レベルを定量的に決定するために、mRNAを、潰瘍性大腸炎の患者、クローン病の患者、またはIBDを発症していない患者から得た結腸組織から抽出した。実時間PCRを、CRIgに特異的なプライマーを使用して行って、相対的な発現レベルを測定した。発現レベルは、対照組織と比較して、潰瘍性大腸炎の患者においては16倍高く、クローン病の患者においては5倍高かった(図29、A)。同様に、相対的なRNA等量を肺組織中で決定し、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者に由来する組織中で最も高い(正常な組織の14倍)ことを明らかにしたが、喘息の患者においては、正常な組織と有意な差はなかった(図29、B)。
Igスーパーファミリーの分子は、細胞表面認識および細胞−細胞接着を媒介することが周知である。CRIgの発現は、血管と平行する間質マクロファージにおいて高かったので、マクロファージ−内皮細胞の接着におけるCRIgの関与を研究した。全長のCRIg−longで安定にトランスフェクトしたJurkat細胞株(図30A)を、蛍光色素BCECFとともにロードし、96ウェルmaxisorbプレートのウェルに添加し、HUVEC細胞の単層を培養した。接着を、3回の穏やかな洗浄の後に保持されている蛍光の量によって測定した。CRIgを発現するJurkat細胞は、対照プラスミドで安定にトランスフェクトされたJurkat細胞と比較して、対照の内皮細胞およびTNFαで刺激した内皮細胞の両方に対してより接着性であった(図30B)。
(考察)
本研究では、最初に、新規のIgスーパーファミリーのメンバーであるCRIg/Z39Igの組織分布、発現の調節、および分子特性決定について記載し、組織常在性マクロファージにおけるその選択的発現を確認した。
CRIgの発現は、完全に分化した表現形を有している常在性マクロファージで見られた。その発現は、関節リウマチおよび炎症性腸疾患のような慢性の炎症を有している組織において増大していた。これらの疾患(多くの場合は、Th2型疾患として特徴づけられる)におけるCRIgの発現の増加は、インビトロでのTh2サイトカインによるその発現の調節と一致している可能性がある。この高い発現がCRIgポジティブマクロファージの存在の増加が原因であるか、または炎症性マクロファージでの発現の増大が原因であるかは、未だに決定されていない。
CRIgは、ヒトマクロファージのエフェクター機能の1つを媒介することができ、細菌の認識、食作用、抗原提示、およびサイトカインの放出を含む。これらの結果は、血管の内皮細胞壁に対するマクロファージの接着、およびおそらくは、運動性におけるCRIgの役割を示している。
CRIgの発現は、潰瘍性大腸炎および慢性閉塞性肺疾患(COPD)のような非微生物性の炎症性疾患においては増大していたが、LPS、またはリポタイコ酸もしくは細菌のリポタンパク質のような他の細菌壁成分で処理した場合には、単離したマクロファージでダウンレギュレートされた。LPSでの2日間の長期にわたる処理によっては、CRIgの発現の増加が生じた。これは、LPSで刺激したマクロファージによって分泌されるIL−10の自己分泌効果が原因であり得る。mRNAレベルとタンパク質レベルとの両方での著しいCRIgのアップレギュレーションが、デキサメタゾンで単球またはマクロファージを処理した場合に観察された。少数の単球/マクロファージ表面受容体は、デキサメタゾンで処理すると発現が増加することが明らかになっている。一例はCD163であるが、デキサメタゾンによるその誘導はそれほど劇的ではない。CRIgの抗炎症性サイトカインIL10およびTGFβによるアップレギュレーションは相当な興味であり、CRIgがグルココルチコイドの抗炎症の役割を媒介し得ることを示している。
本明細書中で記載したように、CRIgは、活性化されたマクロファージを提示することができるCD68ポジティブマクロファージのサブセットで発現された。CRIgおよびCRIg−Fc融合タンパク質に対するブロッキング抗体および活性化抗体を使用して、マクロファージエフェクター機能、接着、および移動におけるその役割、ならびに、慢性炎症性疾患におけるその役割を研究し、そして実施例7に記載した。
わずか数種類の表面マーカーが、CD68およびCD163などの分化したマクロファージで特異的に発現されていた。CD68は全てのヒトマクロファージ集団で明確に発現されたが、抗原もまた他の骨髄細胞で検出することができ、そして特定の非骨髄細胞でも検出できた。したがって、CRIgは、間質の成熟マクロファージのサブセットで選択的に発現された第1の細胞表面抗原を提示する。
(実施例7)
(DBA−1Jマウスのコラーゲン誘導関節炎(CIA)におけるCRIg融合タンパク質)
本実験は、CIA(コラーゲン誘導関節炎、関節リウマチの実験用動物モデルシステム)の疾患の発症および進行において、対照マウスIgG1に対してCRIg融合タンパク質を比較することを目的とした。
実施例4で議論したように、CRIgは、マクロファージのサブセットにおいて高度に、そして特異的に発現されており、慢性の炎症を有している組織において増加する。マウスCRIgは、マクロファージにおいて、およびコラーゲン誘導関節炎のマウスの炎症を起こしている関節の滑膜細胞において高く発現されている。インビトロでの実験は、CRIgが内皮細胞に対するマクロファージの接着に関係していることを示していた。CRIg−Fc融合タンパク質は、組織マクロファージの特性に影響を与えることによって、または他の細胞(例えば、T細胞、B細胞、上皮細胞、内皮細胞)の免疫応答に影響を与えることのいずれかによって、自己免疫疾患(この場合は、マウスのコラーゲン誘導関節炎)の経過に影響を与える。これによって、関節の炎症、腫れ、および長期にわたる骨の目減りの軽減が生じ得る。
muCRIg−Fc融合タンパク質を、マウスIgG1のヒンジ、CH2、およびCH3ドメインをマウスCRIgの細胞外ドメイン(aa1〜200)に融合させることによって作成した。Fc受容体の結合を防ぐための二重変異を含む融合体を使用し、Fc受容体の調節についての対照とした。muCRIg−Fc融合タンパク質のヌクレオチド配列を配列番号17に示す。(類似しているhuCRIg−IgおよびhuCRIg−short−Igのコード配列は、それぞれ、配列15および16に示す)。タンパク質は、プラスミドDNAの一時的なトランスフェクションによってCHO細胞中で生産させた。プロテインAカラムに細胞上清をのせ、その後、イオン交換クロマトグラフィーを行って、凝集物を除去することによって融合タンパク質を精製した。血清半減期は、単回用量の4mg/kgのCRIg−FcのC57B6マウスへの注射、その後の特定の時間の間隔でのマウスからの血清の採取によって概算した。マウスCRIg−Fcの血清レベルを、CRIgの細胞外ドメイン上の種々のエピトープを認識する抗CRIg mAbを使用して、サンドイッチELISAによって決定した。
動物モデル種:マウス
株(単数または複数):DBA−1J
供給業者(単数または複数):JACKSON
年齢の範囲:7〜8週齢
コラーゲン誘導関節炎(CIA)が炎症性多発性関節炎であり、ヒトの関節リウマチ(RA)と類似している臨床的および病理学的特徴を有しているので、マウスを、CIAを研究するための種として選択した。この動物モデルは多くの研究室で使用されており、CIAの組織病理学は、パンヌスの形成、軟骨の変性/崩壊、および周辺部分の骨の目減り、その後の関節の変形に進行する滑液の増殖を伴う、RAにおいて見られるものと似ている。また、マウスは、系統発生学的に最も下等な哺乳動物である。加えて、RAの複雑な多元的病因を真似るために利用することができるインビトロモデルは存在していない。
(実験の設計)
処置グループ:
1)200μlの生理食塩水中の6mg/kgのmIgG1イソ型を、皮下(SC)で3回/週を7週間(n=8)。
2)100μlの生理食塩水中の4mg/kgのmuCRIgを、SCで3回/週を7週間(n=8)。
マウスを、CFS(Difco)中に乳化させたウシCII(100μg、Sigma,St Louis)で、皮内で免疫化した。マウスを、21日後にIFA(Difco)中のCIIで再度チャレンジした。24日目に開始して、1つのグループのマウス(n=7)に、100μgのmuCRIg(PRO362)Fcを1週間に3回、6週間投与した。第2のグループ(n=8)には、100μgのマウスIgG1を、対照として投与した。マウスを関節の炎症の兆候について毎日試験し、以下のようにスコアした:0、正常;1、踵の関節に限定される紅斑と軽度の腫れ;2、踵から中足骨および中手骨の関節までに広がる紅斑と軽度の腫れ;3、踵から中足骨および中手骨の関節までに広がる紅斑ならびに中度の腫れ;4、踵から指までに広がる紅斑および重症の腫れ。1つの足についての関節炎のスコアの最高は4であり、1匹のマウスについての最高スコアは16であった(図31)。
全てのマウスを、100μlの完全なフロイトアジュバント(CFA)中の100μgのウシII型コラーゲンで、0日目に免疫化した。CFA中のII型コラーゲンを、尾の右側の基部に皮内注射した。21日目に、100μlの不完全なフロイトアジュバント中の100μgのウシII型コラーゲンで2回目の免疫化を、尾の左側にi.d.投与した。動物を、研究員に毎日(M−F)チェックさせた。Nestletsを、パワー系統(enrichment device)として使用し、動物にさらなるパッド(extra padding)を提供した。必要に応じて、湿らせた餌をケージの底に提供した。衰弱した動物を、獣医であるスタッフとの相談の後で屠殺した。Terminal faxitron X−RayおよびmicroCTを、実験の終わりに撮影し、関節の病変/目減りを評価した。加えて、動物を、処置前および終了時に体重測定した。
35日目および実験の終了時には、グループ1から8のマウスを血清pKのために採血し、そして抗II型コラーゲン抗体力価を決定した(100μlの眼窩の血液)。
70日目に、全てのマウスを、最終的に、最後のヘモグラムのために、種々の白血球のカウントのために、および血清pK(G3)の評価のために、3%のイソフルラン下で心臓内から採血した。
マウスを、関節炎の誘導後70日目に安楽死させた。全ての4本の四肢について、レントゲン写真、5CT、および組織病理学を集めた。
(結果)
CRIg融合タンパク質であるmuCRIg−Fcの、コラーゲン誘導関節炎のマウス(関節リウマチの動物モデル)への全身的な注射は、IgG1を投与したマウスの対照グループ(丸)に対して、CRIg融合タンパク質を投与したマウスの試験グループ(四角)においては、CIAの進行の有意な(図31を参照のこと;p値=0.0004)減少を示した。コラーゲン誘導関節炎は、完全なフロイトアジュバント中に乳化させたウシII型コラーゲンの注射によって誘導した。追加免疫を、最初の免疫化の21日後に投与した。動物を、マウスCRIg−FC融合タンパク質、または抗gp120 IgG1のいずれかで1週間に3回処置した。投与量は、100μlのPBS中で4mg/kgで、皮下であった。処置は21日目に開始し、70日目まで続けた。マウスを、関節炎の兆候としての後肢の腫れについて毎日観察した。関節炎の重篤度は、以下のように1〜16のスケールで段階付けした:0=紅斑および腫れの兆候がない、1=足根骨または踵に限られた紅斑および軽度の腫れ、2=踵から足根骨までに広がる紅斑と軽度の腫れ、3=踵から中足関節までに広がる紅斑と中度の腫れ、4=踵、足、および指を含む紅斑および重症の腫れ。
(反復実験)
上記のプロトコールを繰り返すように改良し、コラーゲン誘導関節炎(CIA)モデルにおける以前の実験の結果を確認した。改良したプロトコールには、疾患および発症の進行についてのインビボでのmicroCT画像撮影の結果としての放射線照射の潜在的効果の研究を含んだ。
70匹のDBA1/J7マウス(7〜8週齢、Jackson Laboratories)を5つの処置グループに分け、2つのグループ(G1とG3)には1つのグループについて15匹のマウスを、2つのグループ(G4とG5)には1つのグループについて10匹のマウスを、そして1つのグループ(G2)には20匹のマウスを含んだ。
処置グループ
G1:100μlの生理食塩水中の4mg/kgのMuIgG1イソ型をs.c.で1週間に3回、7週間(n=15)。
G2:100μlの生理食塩水中の4mg/kgのMuCRIg−IgG1をs.c.で1週間に3回、7週間(n=20)。
G3:100μlの生理食塩水中の4mg/kgのMuTNFRII−IgG1イソ型をs.c.で1週間に3回、7週間(n=15)。
G4:100μlの生理食塩水中の4mg/kgのMuIgG1イソ型をs.c.で1週間に3回、7週間、インビボmicroCTで麻酔(n=10)。
G5:100μlの生理食塩水中の4mg/kgのMuTNFRII−IgG1をs.c.で1週間に3回、7週間、インビボmicroCTで麻酔(n=10)。
TNFは、単核食細胞、Agで刺激したT細胞、NK細胞、および肥満細胞によって分泌されるサイトカインである。これは、正常な炎症応答および免疫応答に関係している。TNF−αは関節リウマチ(RA)の病因において重要な役割を担っている。高いレベルのTNFは、RA患者の滑液で見られた。このプロトコールにおいては、mTNFRII−Fcをポジティブ対照として使用して、TNFとその細胞表面受容体との間での相互作用をブロックした。
G1からG5までの全てのマウスを、)日目に100μlの完全なフロイトアジュバント中の100μgのウシII型コラーゲンで免疫化した。CFA中のII型コラーゲンを、尾の右側の基部に皮内注射した。21日目に、100μlの不完全なフロイトのアジュバント中の100μgのウシII型コラーゲンで2回目の免疫化を、尾の左側に皮内投与した。
動物を毎日チェックした。G4〜5グループのマウスをイソフルランで麻酔し、インビボmicroCTを毎週行った。Terminal faxitron X−RayおよびmicroCTを実験の終わりに撮影し、関節の病変/目減りを評価した。加えて、動物を、処置前および終了時に体重測定した。
35日目および実験の終了時には、G1〜5のマウスを血清pKのために採血し、抗II型コラーゲン抗体力価を決定した(100μlの眼窩の血液)。70日目に、全てのマウスを、最終的に、最後のヘモグラムのために、種々の白血球のカウントのために、および血清pK(G3)の評価のために、3%のイソフルラン下で心臓内から採血した。
マウスを、関節炎の誘導後70日目に安楽死させた。全ての4本の四肢について、レントゲン写真、microCT、および組織病理学を集めた。
図33は、CRIg−Fcで処置したマウスにおいて関節の腫れが有意に減少したことを示している。
70日目にmuCRIg−Fcで処置した動物から得られた、ホルマリンで固定し且つパラフィンに包埋した組織について行った免疫組織化学(H&E染色)は、処置の結果としての関節の炎症の阻害を示している。図34は、II型コラーゲンでの免疫化の70日後の、DBA1/Jマウスの、中足骨の関節のH&E染色切片を示している。A.大量の炎症性細胞の浸潤が、腱鞘周辺の領域および関節腔周辺の領域で見られる;B.Aの詳細;C.CRIg−Fcで処置したマウスの関節の中での低い程度の炎症の浸潤。わずかな炎症性細胞が、腱鞘周辺の領域および関節腔周辺の領域で見られた;D.Bの詳細。
図35は、皮質骨の容積が、muCRIg−Fcで処置したマウスの関節において保たれたことを示している。対照IgG−FcおよびCRIg−Fcで処置したグループのマウスを、コラーゲンの注射の70日後に屠殺し、関節をμCTによってスキャンした。CRIg−Fcグループと対照のIgGグループとの典型的なマウスの関節における骨の目減りおよび骨密度の低下を、muIgG1で処置した動物と比較して、左側の図に示す。皮質骨の容積の保存は、muCRIg−Fcで処置した動物においては有意に大きかった。画像は、Analyze画像分析ソフトウェアを使用してμCTデータから作成した三次元表面レンダリングである。
図36は、CRIg−Fcでの処置が組織常在性マクロファージの数も形態も変化させなかったことを示している。抗gp120 IgG1(左側の図)またはCRIg−Fc(右側の図)のいずれかで処置したマウスに由来する肝臓と肺を取り出し、ホルマリン中で固定し、パラフィンワックスに包埋した。7ミクロンの切片を、F4/80に対する抗体を使用して染色した。切片の注意深い試験は、両方の処置グループにおいて等しい数のF4/80ポジティブマクロファージを示している。加えて、マクロファージの形態に差は観察されなかった。
図37は、muCRIg−Fcでの処置が血清抗コラーゲン抗体力価に影響しなかったことを示している。抗コラーゲン抗体の血清力価を、免疫化の70日後に決定した。gp120で処置した動物に対して、CRIg−Fcで処置した動物においては、抗体のIgG1、IgG2、およびIgMサブクラスの血清力価に差は見られなかった。これは、CRIg−Fcは、II型コラーゲンで免疫化したマウスにおいては抗体応答に影響を与えないことを意味する。図38は、muCRIg−Fcが循環している炎症性マクロファージの数を減少させることを示している。末梢血を、免疫化の70日後にCRIg−Fcおよび抗gp−120で処置した動物から得、炎症性および非炎症性の単球についてのマーカーを使用してフローサイトメトリーによって分析した。CRIg−Fcで処置した動物は、抗gp120で処置したグループと比較して、炎症性単球の数の有意な増加および非炎症性の単球の数の減少を示した。
結論として、本実施例に記載した実験の結果は、muCRIg−Fc融合タンパク質がコラーゲン誘導関節炎を阻害することを示している。具体的には、これらの結果は、CRIg−Fcが関節の腫れを阻害し、炎症を阻害し、関節の皮質骨の容積を保ち、そして循環している炎症性マクロファージの数を減少させることを示している。
他の実験は、CRIg−Fcは、インビボではB細胞応答またはT細胞応答に影響を与えないことを示している。
(実施例8)
(マウスの抗体誘導CIAにおけるCRIg融合タンパク質)
抗体誘導関節炎は、抗原(ウシII型コラーゲン)の注射の代わりに、II型コラーゲンを認識する抗体を注射する点で、コラーゲン誘導関節炎とは異なる。この方法では、順応性のあるB細胞応答およびT細胞応答が、Fc受容体および補体によって媒介される活性化によって、マクロファージおよび好中球に対するエフェクター機能を直接誘導するように回避される。
抗体誘導CIAは、Arthrogen−CIA(登録商標)マウスB−ハイブリドーマ細胞株によって作成された4種類のモノクローナル抗体の混合物のi.v.注射によって誘導することができる(Teratoら、J.Immunol.148:2103−8(1992))。モノクローナル抗体のうちの3種類は、84アミノ酸残基の断片であるCB11のLyC2(II型コラーゲンの最少の関節炎を発症させる断片)内でクラスター形成した自己抗原性エピトープを認識し、4番目のモノクローナル抗体はLyC1と反応する。4種類の抗体は全て、種々のII型コラーゲンの種が共有している保存されているエピトープを認識し、同種II型コラーゲンおよび異種II型コラーゲンと交差反応する(Teratoら、(前出);Teratoら、Autoimmunity 22:137−47(1995))。Arthrogen−CIA(登録商標)関節炎を誘導するモノクローナル抗体の混合物は市販されている(Chemicon International.Inc.,Temecula,CA,カタログ番号90035)。
(プロトコール)
4〜5週齢の10匹のBALB−cマウス(CR/Hollister)を2つのグループに分け、それぞれのグループに5匹のマウスを含んだ。
動物を、抗体混合物の注射の前日(−1日目)に開始して、100μgのmuCRIg−Fcまたは100μgの対照−Fc(抗gp120 IgG1)で毎日処置し、14日目まで続けた。14日目に、動物を少なくとも1日に2回チェックし、書面に観察を記録し続けた。疾患の程度を、目視検査によってスコアした。
目視によるスコアシステム:
0=紅斑および腫れの兆候がない
1=足根骨に限られた紅斑および軽度の腫れ
2=踵から足根骨までに広がる紅斑および軽度の腫れ
3=踵から中足関節までに広がる紅斑および中度の腫れ
4=踵、足、および指を含む紅斑および重症の腫れ。
Nestletsを、パワー系統(enrichment device)として使用し、動物にさらなるパッド(extra padding)を提供した。
全ての動物を14日目に屠殺し、関節を免疫組織化学的染色またはヘマトキシリン−エオシン染色のために回収した。血液を、血液学的分析のためにサンプリングした。
(結果)
図39は、脱灰していない凍結した関節でのF4/80染色によって作成した、抗体誘導関節炎(AIA)後の関節におけるマクロファージの浸潤を示す。雌のBalb/Cマウスを、2mgの抗コラーゲン抗体(arthrogen)をi.v.で注射し、その3日後に、25μgのLPSをi.p.で注射した。抗体の注射の14日後、マウスを安楽死させ、足を回収し、ポリビニルアルコールに包埋した。凍結した関節を7μmの厚みの切片に切り、マウスCRIgに対する抗体とマクロファージ特異的マーカーであるF4/80に対する抗体とで染色した。
図40は、muCRIgがBalb/cマウスの抗体誘導関節炎後の関節の腫れを防ぐことを示している。関節炎は、Teratoおよび共同研究者らの方法(Teratoら、(1992),前出;Teratoら、(1995),前出)の方法によって、II型コラーゲン上の保存されているエピトープを認識する4種類のモノクローナル抗体の混合物(Chemicon)を使用して誘導した。雌のBalb/Cマウス(6週齢)に、2mgの抗CII抗体をi.v.で注射し、その3日後、25μgのLPSをi.p.注射で注射した。動物をマウスCRIg−Fc融合タンパク質または対照−Fc融合タンパク質でのいずれかで毎日処置した。投与量は、100μlのPBS中4mg/kgで、皮下であった。処置は抗コラーゲン抗体の注射の前日に開始し、マウスを14日目に安楽死させるまで続けた。マウスを、関節炎の兆候としての後肢の腫れについてLPSの注射後に毎日観察した。関節炎の重篤度は、以下のように1〜16のスケールで段階付けした:0=紅斑および腫れの兆候がない、1=足根骨または踵に限られた紅斑および軽度の腫れ、2=踵から足根骨までに広がる紅斑および軽度の腫れ、3=踵から中足関節までに広がる紅斑および中度の腫れ、4=踵、足、および指を含む紅斑および重症の腫れ。
治療的処置を、−1日目ではなく4日目で処置を開始したことを除いて予防的処置と同様に行った。muCRIg−Fcでの処置によって、AIAマウスの足における炎症性サイト系ンのレベルが低下した。関節炎の後脚におけるサイトカイン、C3aおよびC5aの濃度の測定は、Kagariら、J.Immuol.169:1459−66(2002)の方法に従って行った。手短に説明すると、抗体誘導関節炎の誘導後の示した時点で、足を回収し、液体窒素で凍結させた。続いて、足を、液体窒素で冷却した金属プレート上で粉砕し、そして0.1%のPMSF(Sigma)を含む氷冷したPBS中に分散させた。試料を、Vitatron(NL)ホモジナイザーを用いて氷上でホモジナイズし、不溶性部分を14000gで10分間回転させ、上清を回収することによって除去した。上清の中のサイトカインを、BD PharmingenによるサイトカインELISAを使用して測定した。
muCRIg−Fcでの処置は補体C3の蓄積を阻害したが、AIAの軟骨上のIgG2aの蓄積は阻害しなかった。雌のBalb/Cマウスに、2mgの抗コラーゲン抗体(arthrogen)をi.v.で注射し、その3日後に、25μgのLPSをi.p.で注射した。抗体の注射の14日後、マウスを安楽死させ、足を回収し、ポリビニルアルコールに包埋し、ドライアイス上でイソペンタン(ispenthane)中で凍結させた。凍結した関節を7μmの厚みの切片に切り、マウスC3に対するFITC結合ポリクローナル抗体(Calbiochem)およびマウスIgG2aに対するポリクローナルA594結合抗体(Jackson Immunoresearch)で染色した。Leitz蛍光顕微鏡で切片の写真を撮影した。
H&E染色を用いて行った免疫組織化学の結果を図41に示す。対照で処置したマウス(muIgG1)は、中度から重症の関節炎を有していた(左側のパネル)。muCRIgで処置したマウスは、ごくわずかな関節炎を有しているから関節炎を有していないまでであった(右側のパネル)。結果は、muCRIgが抗体誘導関節炎における関節の炎症を阻害することを示している。
結論として、マウスCRIg−Fcで処置した動物は、抗gp120 IgG1で処置した動物と比較すると、有意に低下した臨床スコアを有していた。CRIgは、この動物モデルにおいては、予防効力と治療効力との両方を示した。関節炎の重篤度の低下はまた、関節の炎症性細胞(特に、好中球)の減少によっても反映されていた。循環においては好中球の数が増加しており、これはおそらく、関節への好中球の移動の減少を反映している。muCRIg−Fcは、RAの臨床症状と平行して、局所的なIL−1βおよびIL−6の生産を阻害した。muCRIgでの処置は、免疫複合体の蓄積には影響を与えなかったが、軟骨上での補体C3の蓄積を阻害した。エフェクター機能は、Fc受容体の結合に依存することが明らかになった。huCRIg−short−Fcもまた、有意な予防活性を有していることが明らかになった。
(実施例9)
(マウスCRIg−Fcは、C3オプソニン化ヒツジ赤血球(E−IgM)に結合する)
SRBC(MP Biomedicals,ICN/Cappel)を、ラットIgM(E−IgM)(Forssman Ag,Pharmingen)でコーティングした。E−IgMを、正常なマウスの血清とC3ノックアウトマウスに由来する血清とでオプソニン化した。オプソニン化E−IgMを、種々の濃度のマウスCRIg−Fcとともにインキュベートした。E−IgMに対する融合タンパク質の結合を、融合タンパク質のFc部分に対するFITC標識抗体を使用してフローサイトメトリーによってモニターした。
図42に示すように、マウスCRIgは正常なマウスの血清でオプソニン化したE−IgMに対して容量依存的に結合したが、C3欠損血清でオプソニン化したE−IgMに対しては結合しなかった。これは、マウスC3またはC3の断片に対するCRIgの選択的な結合を示している。
(実施例10)
(E−IgMに対するヒトCRIgの結合はC3依存性である)
SRBC(MP Biomedicals,ICN/Cappel)を、ラットIgM(E−IgM)(Forssman Ag,Pharmingen)でコーティングした。E−IgMを、C3欠損またはC5欠損のヒト血清でオプソニン化した。オプソニン化E−IgMを、種々の濃度のヒトCRIg−Fcとともにインキュベートした。E−IgMに対する融合タンパク質の結合を、融合タンパク質のFc部分に対するFITC標識抗体を使用してフローサイトメトリーによってモニターした。
図43に示すように、ヒトCRIgはC5欠損血清でオプソニン化したE−IgMに対して容量依存的に結合したが、C3欠損血清でオプソニン化したE−IgMに対しては結合しなかった。これは、ヒトC3またはC3の断片に対するCRIgの選択的結合を示している。同様の結果が、ヒトCRIg ECDを用いても得られた。
(実施例11)
(CRIgを発現するCHO細胞に対する血清オプソニン化粒子の結合)
50μlの新しいC57B6雌の血清+20μg/mlのmCRIg−mFc(PUR5270−B)またはmPIGR−mFc(4699)を一緒に混合した。A488粒子、ザイモサン、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、または大腸菌(E.coli)(Molecular Probesによる)を、PBS/0.2%のゼラチン/0.18%のグルコース/1mMのMgCl2(PBSgg++)中で37℃で60分間かけて添加した。オプソニン化粒子を、PBSで2回洗浄し、そしてマウスCRIgを発現するCHO細胞(クローン5C10)またはヒトJAM2を発現するCHO細胞に対して、CRIg−Fcもしくは対照−Fcタンパク質の存在下、またはそれらが存在しない条件下で、37℃で30分間かけて添加した。細胞を、PBSで2回洗浄し、FACS Caliberにおいて細胞表面に対する粒子の結合について分析した。
図44に示すように、C3十分血清でオプソニン化した粒子は、CRIgを発現するCHO細胞に結合したが、JAM2を発現するCHO細胞には結合しなかった。結合は、CRIg−Fc融合タンパク質の存在下では撤回されたが、対照−Fc融合タンパク質の存在下ではそうではなかった。これは、C3bに対するCRIgの結合部位が細胞外ドメインに存在することを示している。
(実施例12)
(muCRIg FcはC3bに結合する)
実時間でモニターした表面プラズモン共鳴アッセイを、Biocore(登録商標)−2000機器を使用して行い、データを、BiaEvaluation 3.0ソフトウェア(Biacore AB,Uppsala,Sweden)を使用して分析した。カルボキシル化デキストランチップ(センサーチップCM5、Biacore ABによる研究用等級)を、全てのアッセイに使用した。CM5チップのフローセルを、標準的なアミンカップリング手順に使用したか、または工程の間にいずれのタンパク質を添加することもない標準的な活性化−失活手順を使用することによるC3bの直接の酵素的カップリングのために調製したかのいずれかを行った。活性化工程は、N−ヒドロキシスクシンイミドとN−エチル−N’−(ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミドを含む新しい溶液を用いて行い(Biacore AB,5μl/分の流速での7〜15分間の注入)、そしてその後、エタノールアミン−HCl(1.0M、pH8.5)(Biacore AB、7〜15分間の注入)で失活させた。Hepes緩衝化生理食塩水(Biagrade,Biacore AB)またはVBSを、その間中、フロー緩衝液として使用した。これらの最初の工程の後、VBSまたはVBSを、5μl/分の持続的なフロー緩衝液として使用し;脱気しただけの緩衝液を使用した。
Biacore(登録商標)チップ上へのタンパク質のアミンカップリング−C3b、iC3b、C3c、およびC3dを、製造業者によって推奨されている標準的なアミンカップリング手順を使用してCM5チップ上にカップリングさせた。カップリングさせるタンパク質を、10mMの酢酸緩衝液(pH 5.0〜5.7)に対して透析して、アミンカップリングのための正味の負電荷を得た。簡単に説明すると、チップの表面を、N−エチル−N’−(ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミドで活性化し(7〜15分間の注入、5μl/分)、そして、いずれかの精製したC3b(50μg/ml、20μl)、C3c(70μg/ml、30μl)、またはC3d(130μg/ml、20μl)を、結合実験のために適しているカップリングのレベル(すなわち、1,000〜5,000共鳴単位)(RU)に達するまで注入した。その後、フロー細胞を、上記のように失活させた。実験の前に、フロー細胞を、VBSおよび10mMの酢酸緩衝液中の3MのNaCl(pH4.6)で十分に洗浄した。
Biacore(登録商標)を使用する結合アッセイ−本発明者らは、アミンをカップリングさせたC3b、C3c、およびC3dに対するCRIg−Fcの結合を試験した。Biacore(登録商標)の注入のために、試薬をVBSに対して透析し、VBSで希釈し、そして濾過(0.20μm、Minisart(登録商標),Sartorius
Corp.,Edgewood,NY)または遠心分離(14,000×gで10分間)した。透析した試薬のタンパク質濃度を、BCA Protein Assay(Pierce)を使用して測定した。融合タンパク質を、対照のフロー細胞(いずれのカップリングさせたタンパク質を使用することもなく活性化させ、そして失活させたフロー細胞、「ブランクチャンネル」)を通じて、そして22℃で5μl/分の流速を使用して、カップリングさせたタンパク質と共にフロー細胞を介して別々に注入した。結合アッセイは全て、別々に調製したセンサーチップを使用して少なくとも2連で行った。
図45に示すように、マウスCRIg−Fcは、センサーチップに対するC3bの特異的結合を示し、計算された250nMのKdを用いた。
(実施例13)
(マウスおよびヒトCRIg−Fcは補体C3bに結合する)
Maxisorbプレートに、PBS中の3μg/mlのC1、C3a、b、c、d、C4、C6をコーティングした。プレートを、PBS+4%のBSA中で2時間ブロックし、種々の濃度のマウスまたはヒトCRIg−Fc融合タンパク質と共に、PBS+4%のBSA+0.1%のTween中、室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄し、ペルオキシダーゼに結合させたヤギ抗マウスFc抗体またはヤギ抗ヒトFc抗体と共にインキュベートした。洗浄後、プレートをTNB基質とともにインキュベートし、プレートリーダーでODを読み取った。
図46に示す結果は、C3b、C3c、およびC3biに対するマウスおよびヒトCRIgの結合の濃度依存性の増加と、C1、C2、C4、C3a、およびC3dに対する結合の不在とを示している。
(実施例14)
(マウスおよびヒトCRIg−FcはザイモサンでのC3の蓄積を阻害する)
代替補体経路の阻害を、ザイモサンA粒子(Sigma)でのC3の蓄積のフローサイトメトリー分析を利用する方法を使用して研究した(Quiggら、J.Immunol.160:4553−4560(1998))。簡単に説明すると、10mlの0.15MのNaCl中の50mgのザイモサン粒子を、最初に、60分間沸騰させることによって活性化させ、その後、PBSで2回洗浄した。個々の代替補体経路のアッセイ条件において、2×10個の粒子を、10mMのEGTAおよび5mMのMgClの最終濃度を含む反応チューブに添加した。その後、10mMのEDTA(ネガティブ対照)または漸増量のマウスCRIg−Fcのいずれかを含む、テキストに記載されている試料を添加した。10μlのBALB/c血清を補体の供給源として添加し、全ての試料を、PBSにより100μlとした。試料を37℃で20分間インキュベートし、反応を、10mMのEDTAを添加することによって停止させた。粒子を遠心分離し、そして上清を除去し、そして後の分析のために凍結させた。その後、粒子を冷却PBS、1%のBSAで2回洗浄し、その後、FITC結合ヤギ抗マウスC3(Cappel,Durham,NC)と共に氷上で1時間インキュベートした。その後、試料を、冷却PBS、1%のBSAで2回洗浄し、PBSに再度懸濁させ、その後、EPICSサイトメーター(Coulter,Hialeah,FL)を使用してフローサイトメトリーによって分析した。阻害の割合(%)を、式:[1−[試料の平均チャンネル蛍光−バックグラウンド(10mMのEDTAの条件)/ポジティブ対照の平均チャンネル蛍光(Crry−Igなし)−バックグラウンド]]×100を使用して計算した。
反応物の上清もまたウェスタンブロッティングによって分析して、C3の切断の程度を決定した。この分析では、5μlの上清を、10%の2−MEを含む等量のSDS−PAGEローディング緩衝液と混合した。試料を、7.5%のアクリルアミドゲル上のSDS−PAGEに供し、Hybond高感度ケミルミネッセンス(ECL)紙(Amersham,Arlington Heights,IL)に、0.19MのTris、0.025Mのグリシン、20%のメタノール緩衝液において一晩かけて移した。この後、膜を、10%の乳汁を含むPBS、0.1%のTweenで1時間ブロックした。その後、予め滴定した抗C3 mAb RmC11H9(Quiggら、前出)を、1%のBSAを含む同じ緩衝液中のブロットに添加した。洗浄後、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ラットIgG(Southern Biotechnology,Birmingham,AL)(マウスIgGに予め吸着させた)を1時間かけて添加し、その後、ブロットを洗浄し、高感度ケミルミネッセンス(ECL)システム(Amersham)を使用して現像した。
ザイモシン粒子でのCRIg−Fcによる補体の活性化の阻害をフローサイトメトリーによって分析して、表面に結合したC3(図47A)を検出し、または、ザイモシン反応上清のアリコートをウェスタンブロッティングによって分析した場合には、抗C3 mAbを使用して検出した(図47B)。B中の完全なC3およびC3’鎖の位置は、右側の矢印で示す。10mMのEDTAのレーンはネガティブ対照を示し、そしてレーン2から7の上部には、漸増用量のCRIg−Fcを示す。
(実施例15)
(CRIgはSRBCの代替補体経路の溶血を阻害する)
代替補体経路について、ウサギ赤血球(RRBC)を、0.1%のゼラチンを含むベローナル緩衝液(Bio Whittacker)で洗浄し、そしてGVB中に1×10e9細胞/mlとなるように再懸濁した。10μlの細胞懸濁液を、阻害因子を含む10μlのC1q枯渇血清に添加した。混合物を、震盪させながら温室で、37℃で35分間インキュベートした。10mMのEDTAを含む200μlのGVBを添加し、細胞を、2500rpmで5分間遠心分離し、そして100μlのアリコートを、412nmの波長で読み取った。
古典補体経路については、IgMでオプソニン化したヒツジ赤血球(E−IgM)を、fB欠損血清と共にインキュベートした。方法は、代替補体経路についての測定と同様である。
図48に示す結果は、マウスCRIgは代替補体経路によって誘導される溶血を阻害するが、古典補体経路の溶血には影響を与えないことを示している。同様の結果が、ヒトCRIgを用いた場合にも得られた。
(実施例16)
(CRIgは代替補体経路を選択的に阻害する)
(全血清を使用する溶血アッセイ)
代替補体経路を、Kostavasiliら、(J.Immunol.158:1763−71(1997))に記載されているように、ウサギ赤血球(Er)を使用して評価した。簡単に説明すると、Er(Colorado Serum,Denver,CO)を、GVBで3回洗浄し、そして1×109/mlになるように再懸濁した。10μlのErを10μlのGVB/EGTA(0.1MのEGTA/0.1MのMgCl2)、阻害因子、10μlのC1q枯渇ヒト血清に添加し、GVBで100μlになるように容量を調整し、その後、37℃で30分間インキュベートした。250μlのGVB/10mMのEDTAを添加して反応を停止させ、そして500×gで5分間遠心分離した。溶血を、200μgの上清の412nmでの吸光度によって決定した。溶解の割合(%)を、阻害因子が存在しない条件で生じる溶解と等しいものを100%の溶解とみなすことによって正規化した。
古典補体経路に対するCRIgの効果を決定するために、ErをE−IgMと置き換え、そしてアッセイを、GVB++中のfB欠損ヒト血清で行ったことを除いて、同様の手順を行った。
(C3のC3転換酵素によって媒介される切断の測定)
C3転換酵素(C3b.Bb)(Kostavasiliら、(前出))による液相でのC3の切断に対するCRIgの効果は、0.4μMの精製したC3を、GVB(20μlの容量)中のhuCRIg−long、huCRIg−short、muCRIg、またはH因子と共に、37℃で15分間インキュベートすることによって試験した。その後、0.4μMのB因子と0.04μMのD因子とを、50mMのMgEGTAの存在下で、30μlの全容量中で添加して、経路を活性化させた。37℃で30分の後、反応混合物を、2−MEを含む30μlのLaemmli’s試料緩衝液(BioRad)で停止させ、3分間沸騰させ、そして8%のSDS−PAGEゲル(Invitrogen)上で電気泳動した。タンパク質を、SimplyBlue染色(Invitrogen,Carlsbad,CA)でのゲルの染色によって視覚化した。ゲルをデンシトメトリー分析のためにスキャンし、そして切断されたC3の割合(%)を計算した。対照は、切断を阻害するためにGVBE(10mMのEDTAを含むGVB)にてインキュベートした。
代替補体経路DAAについてのマイクロタイタープレートアッセイを、記載されているように(Krych−Goldbergら、J.Biol.Chem.274:31160−8(1999))行った。マイクロタイタープレートを、リン酸緩衝化生理食塩水中の5μg/mlのC3b(Advanced Research Technologies)で一晩コーティングした。プレートを、1%のウシ血清アルブミンおよび0.1%のTween 20を含むリン酸緩衝化生理食塩水中37℃で2時間ブロックし、71mMのNaClと0.05%のTween 20とを含む2.5mMのベローナル緩衝液(pH7.4)中の10ngのB因子、1ngのD因子、および0.8mMのNiCl2とともに、37℃で15分間インキュベートした。同じ緩衝液を使用して、0.01〜1μgのCRIg−Fc、0.129μgのヤギ抗ヒトB因子抗体、および100μgの西洋ワサビペルオキシダーゼに結合させた抗ヤギ抗体の1:15,000希釈物(Jackson Immunoresearch Laboratories,West Grove,PA)と共に、連続する1時間のインキュベーションを行った。O−フェニレンジアミンで発色させた。このアッセイでは、DAFとH因子は、予想したとおり、デコイ加速活性の媒介因子として働き、そしてC3a放出をAmersham Pharmacia
Biotech des−Arg RIAキットを使用して検出した。
(C5転換酵素アッセイ)
C3bは、1×1010のザイモサン粒子を0.2mlの10mg/mlのC3に再度懸濁させ、そして5μgのトリプシンを添加し、その後、22℃で10分間インキュベーションすることによって、ザイモサンに蓄積させた。トリプシンによるC3bの蓄積を繰り返し、細胞を、5mlのGVBで6回洗浄した。ザイモサン粒子を、100μlのGVB中に再度懸濁させ、そして、B因子(35μg)とD因子(0.5μg)とを含む50μlのGVBおよび50μlの10mMのNiCl2と混合した。22℃で5分間のインキュベーションの後、5μlの0.2MのEDTAを添加した。結合したC3bを、50μlのC3(500μg)を添加し、そして22℃で30分間細胞をインキュベートすることによって増幅させた。C3bを有しているザイモサン粒子を洗浄し、そして増幅手順を、所望の数のC3b/ザイモサンが得られるまで繰り返した。
C5転換酵素の形成には1分もかからないので、酵素は、アッセイを行った同じ反応混合物中で形成させた。酵素速度を、上記のように、B因子およびD因子、そしてC6の飽和濃度下で、0.5mlのシリコン処理をした微量遠心チューブで決定した。アッセイ混合物には、種々の濃度のC5(凍結/融解によって生じたバックグラウンドのC5b,6様活性を排除するために、37℃で20分間プレインキュベートした)、B因子(1.2μg、516nM)、D因子(0.1μg、167nM)、C6(2.5μg、833nM)、および0.5mMのNiCl2を含めた。反応を、ZymC3b、ESC3b、またはERC3bの添加によって開始させた。1つの細胞あたりのC3bの密度に応じて、細胞の濃度を、25μgの最終的な容量の中にGVB中の9〜35ngの結合したC3bを有し、結果として、2〜8nMの酵素濃度となるように調整した。37℃で15分間のインキュベーションの後、C5のさらなる切断を、アッセイチューブを氷浴に移し、そして氷冷したGVBEを添加することによって防いだ。適切に希釈したアッセイ混合物を、C5b,6の形成について、ECを使用する溶血アッセイによって迅速に滴定した。C5b、6は、精製したC5b、6を用いて作成した検量線を使用して定量した。低温およびこの希釈が検出不可能なレベルにまで、次の工程の間にC5の切断を減少させるためには十分であったことを、対照によって確立した。ウサギ赤血球(ER)またはヒツジ赤血球(ES)の溶解は、終点としてECの溶解を使用して、C5b、6力価に対しては<2%を導くことが示された。
C5b、6を、ヒトC5b−9による溶血に対するECの感度を使用して溶血活性によって測定した。C5転換酵素アッセイによる希釈した試料のアリコート(25μl)に対して、1.2×107のECと、補体タンパク質C7〜C9の供給源としての5μlのプールした正常なヒト血清(NHS)との混合物を、225μlの最終容量のGVBE中で添加した。反応混合物を、37℃で10分間インキュベートし、その後、溶解していない細胞を、10,000×gで1分間の遠心分離によって除去した。放出されたヘモグロビンの量を、414nmでの分光高度によって定量した。100%の溶解を、2%のNonidet P−40中に溶解したECとして測定した。C5およびC6を含むが、C5転換酵素は含まない対照を、バックグラウンドとして引き算した。C5転換酵素を含むが、精製されたC5またはC6は含まない対照は、ECの溶解の間にC7〜9の供給源として使用したNHSからは有意な量のC5b、6が形成されなかったことを示していた。
(結果)
結果を、図49(A)〜(E)に示す。
図49(A)は、CRIgがC1q欠損血清中でのウサギ赤血球の溶血(代替補体経路)を阻害するが、fB欠損血清中でのIgMオプソニン化ヒツジ赤血球の溶血(古典補体経路)は阻害しないことを示した。これは、CRIgが代替補体経路を選択的に阻害することを示している。
図49(B)に示すように、CRIgは、液相でC3転換酵素活性を阻害する。ゲルは、漸増濃度のヒトCRIg−ECD(10〜100nM)でのC3の115kDaのα鎖の切断の阻害を示す。
図49(C)および(D)はCRIgがC3のI因子によって媒介される切断の補因子ンとして機能しないだけではなく、C3転換酵素の崩壊の促進因子としても機能しないことを示している。
図49(E)に示すデータは、CRIgが、ザイモサン粒子上に形成される代替補体経路のC5転換酵素を阻害することを示している。
(実施例17)
(CRIgは組織マクロファージのサブセットで発現される)
ヒトCRIgおよびマウスCRIgに特異的なモノクローナル抗体を作成し、実施例3に記載したように、CRIgの発現を定義するために利用した。CRIgは末梢血C14+単球には存在していなかったが、これは、フローサイトメトリーによって、単球由来マクロファージで容易に検出された(図50B)。huCRIgは、末梢血CD4およびCD8T細胞、CD19B細胞、CD56NK細胞、CD15顆粒球には存在しなかった(図51A)。huCRIgと同様に、muCRIgは、末梢血および脾臓の白血球(CD11b骨髄細胞を含む)には存在しなかったが、肝臓のクップファー細胞で検出された(KC、図50B)。huCRIg(L)および(S)タンパク質の発現は、マクロファージに分化した単球として、55Kおよび48KのMrのタンパク質として確認された(図50C)。同様に、マウスCRIgは、末梢マクロファージ(PM)中で48KのMrの糖タンパク質として検出された。muCRIgは、推定されるN結合グリコシル化部位を有していて、これはグリコシル化されており、ゲルにおける約5kDaの移動シフトの原因となる。
CRIg mRNAは肝臓において高度に検出されるので、肝臓でのCRIgの発現を免疫組織化学によってさらに分析した。CRIgは、ヒトおよびマウスの肝臓の中のCD68+KCで発現されていたが、副腎、胎盤、滑膜、腸、および腹膜のマクロファージでも検出された(データは示さない)。CRIgは、ヒトの脾臓マクロファージ、ランゲルハンス細胞、ミクログリア細胞、および骨髄由来マクロファージ、ならびに、種々のヒトおよびマウスのマクロファージ細胞株(THP−1、RAW275、PU1.1、J774;結果は示さない)には存在しなかった。まとめると、これらの結果は、CRIgが種々の組織の常在性マクロファージの集団において高度に発現されることを示している。
(実施例18)
(CRIgはC3bおよびiC3bに結合する)
(材料および方法)
(補体タンパク質)
ヒトおよびマウスのC3を、Hammerら、(J.Biol.Chem.256(8):3995−4006(1981))の方法にしたがって、混入しているIgGを除去するために別のプロテインAカラムを用いて単離した。hC3bを得るために、hC3を、CVF、hfB、ug、hfDと共に10:10:1のモル比で37℃で1時間、10mMのMgCl2の存在下でインキュベートした。hC3b断片を、続いて、強アニオン交換モノQ 5/50(Amersham Biosciences,Piscataway,NJ)およびSuperdex S−200 10/300 GLゲル濾過カラム(Amersham Biosciences,Piscataway,NJ)によって、クマシーブルー染色したゲルによって>95%の純度で単離した。C3b二量体を作成するために、上記のように調製したC3bを、メタノール中のビスマレイミドへキサン(Pierce)とともに、2.2:1のモル比で、PBS(pH 7.0)中で4℃で3日間反応させた。架橋を、チオエーテル結合を切断することにより遊離スルフヒドリル基を介して作成した。この手順を用いた場合には、収量は、50%を上回った。二量体を、Superdex S−200 10/300 GLゲル濾過カラム(Amersham
Biosciences,Piscataway,NJ)によって精製した。二量体は、クマシーブルー染色したゲルによれば95%の純度であった。加水分解したC3を、反応容量のなかで50mMの最終濃度のなるように、10mMのEDTAでPBS中のC3に対して2Mのメチルアミン(pH 7.0)を添加することによって生じさせた。反応は、37℃で4時間行い、その後、これをSuperdex S−200 10/300
GLゲル濾過カラム(Amersham Biosciences,Piscataway,NJ)、iC3bおよびC3c(Advanced Research Technologies)を、Superdex S−200 10/300 GLゲル濾過カラム上で精製し、二量体から単量体を分離した。C3d、B因子、D因子、およびP因子、補体成分C1〜9、抗体で感作したヒツジ赤血球およびコブラ毒因子は、Advanced Research Techologes(San Diego,CA)から入手した。
(結果)
高度な食細胞の集団上でのCRIgの発現によって、本発明者らは、CRIgがオプソニン化粒子の結合に関与しているかどうかを詳しく研究するように駆り立てられた。補体およびFc受容体は、食作用を媒介することが明らかにされている(Aderem and Underhill,Annu.Rev.Immunol.17:593−623(1999),Underhill and Ozinsky,Annu Rev.Immunol.20:825−852(2002)にまとめられている)。CRIgが補体C3に結合するかどうかを決定するために、ウサギIgG(E−IgG)またはマウスIgM(E−IgM)のいずれかでコーティングしたヒツジ赤血球を、C3またはC5欠損ヒト血清の存在下でCRIgLを発現するJurkat T細胞株とともにロゼット形成するそれらの能力について分析した。CRIg(L)を発現するJurkat細胞(しかし、対照Jurkat細胞はそうではない)はC3の存在下(C3+)でE−IgMとともにロゼットを形成したが、C3が存在しない条件(C3−)では形成しなかった(図52A)。IgGでオプソニン化したEsは、Jurkat CRIg細胞と共にロゼットを形成することはなかったので、CRIgは、Fc受容体によって媒介される結合には関係していないようであった(結果は示さない)。
CRIgが細胞表面上の補体成分に直接結合できるかどうかを試験するために、CRIgのECDがヒトIgG1のFc部分に融合されたヒトCRIgの可溶性形態を作成した。huCRIg−long−Fc融合タンパク質(しかし、対照Fc融合タンパク質はそうではない)は、C3の存在下ではオプソニン化されたE−IgMに結合したが、C3が存在しない条件では結合しなかった(図52B)。結合は、C3欠損血清を精製したヒトC3で再構成すると回復した。V型Igドメインが結合に十分であった。なぜなら、huCRIg(S)−FcとmuCRIg−Fcはいずれも、E−Igmに結合できたからである(結果は示さない)。
酵素反応のカスケードを誘導する補体活性化の結果として、C3は、その複数の崩壊産物C3b、iC3b、C3c、C3dg、およびC3d(これらのそれぞれがCRIgの結合パートナーとしての役割を担うことができる)に切断される。プレートに結合させたELISAを使用した場合には、huCRIg(L)およびhuCRIg(S)−Fcは(しかし、対照Fcはそうではない)C3bおよびiC3bに対する飽和性結合を示した(図52C)が、C3、C3a、C3c、またはC3dに対する結合は示さなかった(データは示さない)。同様の結合が、huCRIgL−ECD(Fc部分が欠失している)およびmuCRIg−Fcについても観察され、iC3bに対する結合はC3bに対する結合よりも大きかった(結果は示さない)。逆に、可溶性C3bはまた、プレートをコーティングしたhuCRIg(L)−Fcにも結合し、huCRIg(L)−ECDと競合した(結果は示さない)。したがって、CRIgは、溶液中で、または、C3bおよびiC3bが基質に結合している場合には、C3bおよびiC3bに結合することができる。C3bは、細胞表面に蓄積した場合には多量体形態として存在するので、人工的にアセンブリされたC3b二量体(C3b2)に対するCRIgの結合をさらに評価した。C3b2は、表面プラズモン共鳴によって測定すると、huCRIg(L)に対しては131nMのKdで(図52D)、そしてhuCRIg(S)に対しては44nMのKdで結合した(図52D)。
これらの生化学的研究を補うために、本発明者らは、C3に由来する産物に対する細胞表面CRIgの結合特異性を評価した。A488標識のC3b2の二量体形態は、CRIg+の表面に結合したが、CRIg−、THP−1細胞には結合しなかった(図52E)。結合は特異的であった。なぜなら、これは、可溶性の未標識のC3b2、C3b単量体、およびhuCRIG(L)−ECDの添加によって競合されたが、自然界に存在しているC3によっては競合されなかったからである。可溶性の補体断片に対する結合に加えて、CHO細胞株の表面で発現されたmuCIgはまた、C3十分血清中の(しかし、C3欠損血清ではそうではなかった)オプソニン化された種々の粒子にも結合した(図51B)。まとめると、これらの実験は、CRIgが細胞表面で発現されること、さらに、可溶性CRIg(CRIg−FC)がiC3bおよびC3bの受容体であることを示している。
(実施例19)
(クップファー細胞でのCRIgの発現は粒子に結合したC3断片の結合に不可欠である)
(材料および方法)
(1.CRIgノックアウト(ko)マウスの生成)
全ての動物を、滅菌した病原体を含まない条件で飼育し、そして動物実験は、Genentechの研究機関の動物管理使用委員会(institutional animal care and use committee)によって承認された。CRI gkoの胚性幹細胞を、ネイマイシン耐性遺伝子でエキソン1が置き換えられている直鎖状の標的化ベクター(図53A)の、C2B6胚性幹(ES)細胞へのエレクトロポレーションによって生成した。ネオマイシン耐性クローンを選択し、相同組換えをサザンブロッティングによって確認した。スクリーニングした100個のクローンのうちの7個が相同組換えについてポジティブであった。2つの標的化クローンを、C57VL/6胚盤胞に注入し、偽妊娠させた里親に移し、そして得られた雄のキメラマウスをC57BL/6雌と交配させて、+/−マウスを得た。生殖細胞系伝達を、F1子孫に由来する尾DNAのサザンブロット分析によって、クローニングした2ESについて確認した(図42B)。+/−マウスの異種交配を、−/−CRIgマウスを作成するために行った。2つのクローンの表現形は同じであった。PCR法による日常的に行われる遺伝子型分類のために、共通のセンスプライマー5’−CCACTGGTCCCAGAGAAAGT−3’(配列番号22)および野生型特異的アンチセンスプライマー(5’−CACTATTAGGTGGCCCAGGA−3’)(配列番号23)およびノックアウト特異的アンチセンスプライマー(5’−GGGAGGATTGGGAAGACAAT−3’)(配列番号24)を使用して、野生型対立遺伝子についての306bpの断片と、変異体対立遺伝子についての406bpの断片を増幅した。C3 koマウスの作成は以前に記載されている(Naughtonら、Immunol.156:3051−3056(1996))。CRIg/C3二重ノックアウトマウスを作成するために、混合s129/B6バックグラウンドを有しているC3 koマウス(F2)を、CRIg koマウスと交配させた。いずれの対立遺伝子についてもヘテロ接合型であるF1雌を、その後、CRIg対立遺伝子について半接合型のC3ヘテロ接合型の雄と交配させた。この交配による子孫を実験に使用した。フローサイトメトリーによるCRIgの発現の分析に使用したC57B6マウスは、Jackson Laboratories(Bar Harbor)から購入した。
(2.ウェスタンブロッティングと脱グリコシル化)
ヒトおよびマウスのマクロファージを、1%のSDS、0.1%のTriton X−100、およびプロテアーゼ阻害因子混合物(Boehringer)を含むPBS中で溶解させた。10,000gでの遠心分離の後、可溶性画分をSDSゲル上で泳動し、そしてニトロセルロース膜に移動させた。CRIgタンパク質を、抗CRIg抗体およびHRPO結合二次抗体を使用して視覚化し、その後、ECL(Amersham)によって結合した抗体の化学発光の検出を行った。CRIgのグリコシル化状態の決定のために、CRIg−gDを発現する細胞を、抗gD抗体で免疫沈降させ、製造業者の説明書(Biolabs,NE)にしたがってPNGase、O−グリコシダーゼ、およびノイラミニダーゼで処理し、そしてビオチニル化抗gD抗体を使用してウェスタンブロット分析を行った。
(結果)
CRIgの生物学的機能を研究するために、CRIg遺伝子にヌル変異を有しているマウスを、上記および図42Aに示したように、相同組換えによって作成した。欠失をサザンブロッティング(図53B)、抹消浸出細胞溶解物のウェスタンブロッティング(図54A)、およびフローサイトメトリー(図54B)によって確認した。マウスは予想されたメンデル比で生まれ、そして全体的な表現形または組織病理学的異常は示さなかった。種々のリンパ区画での免疫細胞の絶対数は、wt動物およびko動物に由来する血液、脾臓、およびリンパ節において同様であった(図53C)。加えて、フローサイトメトリーおよび免疫組織化学によってそれぞれ分析した場合にも、F4/80+KCおよび心臓マクロファージの数には差は見られなかった(結果は示さない)。CR3のα鎖およびβ鎖、ならびに、KCでの補体受容体関連遺伝子y(Crry)を含むタンパク質を含む他の成分の発現レベルは変わらなかった(図54C)。同様に、CR1、CR2、またはCD11c、CR4のβ鎖の低い発現または検出不可能な発現は、wt KCとko KCとの間では同等であった(図53D)。
次に、C3分解産物に対するCRIg wt KCおよびCRIg ko KCの結合能力を試験した。C3断片(C3b、C3b2、およびiC3b)は、CRIg wt KCの表面に容易に蓄積した(図54B)。対照的に、C3b、C3b2、iC3b、またはiC3b2の結合はCRIg ko KCでは検出されなかった。wt KCまたはko KCのいずれかに対するC3およびC3cのわずかな結合または結合がないことが検出された(図53E)。
可溶性C3断片の結合から細胞表面に結合したC3断片の結合までに分析を広げるために、C3オプソニン化IgMでコーティングした赤血球に結合するためのKCでのCRIgの役割を試験した。CRIg ko KCは、CRIg wt KCと比較すると、E−IgMのロゼット形成において約60%の減少を示した(図54D)。CR3は、ロゼットの形成におけるさらなる減少(<20%)が、CR3ブロッキング抗体を添加した場合に観察されたので、結合活性全体に対して小さい関与があった。したがって、CRIgの発現は、クップファー細胞に対するC3オプソニン化粒子およびC3分解産物の結合に不可欠である。
(実施例20)
(CRIgは再利用されているエンドソームにてインターナライズし且つ発現される)
その受容体に対するC3オプソニン化粒子の結合によって、それらのその後のエンドサイトーシスを誘発することができるので(Fearonら、J.Exp.Med.153:1615−1628(1981);Sengelov,Crit Rev.Immunol.15:107−131(1995))、Alexa488蛍光色素を抑えるポリクローナル抗体(Austinら、Mol.Biol.Cell 15:5268−5282(2004))を使用して、CRIgおよびC3bがKC中にインターナライズするかどうかを分析した。A488結合抗CRIg mAbを、KCとともに4℃でプレインキュベートした。4℃での抗A488抗体の添加によって、図47A、パネル1に示すように、表面に結合した抗CRIg抗体の蛍光が抑えられた。A488結合抗CRIg mAbをKCと共に37℃で30分間インキュベートし、その後、抗A488抗体とともにインキュベーションした場合には、蛍光は抑えられず(図55A、パネル4)、これは、4℃から37℃に細胞が移動すると抗CRIg抗体がインターナライズし、したがって、抑えられている抗A488抗体に接近することができなかったことを示している。同様の結果が、C3bについても見られた(図55A、パネル3および6)。抗CRIg抗体のインターナライゼーションは、C3の存在とは無関係であった。なぜなら、抗体の取り込みは、C3 koマウスから単離したKCで(図55A、パネル2および5)、および血清が存在しない条件下で(結果は示さない)起こったからである。免疫組織化学によって、さらに、CRIg wtマウス(しかし、koマウスはそうではない)に由来するKCの細胞質中での抗CRIg抗体およびC3bの存在を確認した(図55B)。長い時間をかけて、A488結合抗CRIg抗体でコーティングしたKCを、細胞外抗A488抗体の存在下でインキュベートし、経時的な蛍光の減少を観察した。これは、抗CRIg抗体が、細胞表面に再利用されて戻されることを示唆している(図55C)。再利用の時間経過もまた、C3とは無関係であった。なぜなら、抑制の速度論は、C3の存在下およびC3が存在しない条件と同様であったからである(データは示さない)。対照的に、リソソームタンパク質Lamp1に対する抗体は細胞内に留まったままであり、時間とともに減少することはなかった。これらの結果は、CRIgが、構造的に再利用されている膜のプール上に存在するC3bについての受容体としての役割を担っていることを示している。
CRIgが再利用される細胞内区画をさらに決定するために、ヒト単球由来マクロファージ(MDM)を、再利用されているエンドソームのマーカーとしてトランスフェリンを、そしてエンドソームのマーカーとしてLam1を使用して、デコンボリューション顕微鏡を使用して視覚化した。7日間培養したMDMは、huCRIg(L)の細胞外ドメインと競合することができるC3bの飽和結合を示す(図55A)細胞の60%の上でCRIgを発現していた(データは示さない)。4℃で抗CRIg抗体でコーティングしたマクロファージは、Fアクチンを多く含むfilopodialの伸張において局所的なCRIgの発現を示した(矢印の先、図56A、パネル1〜3)。加えて、CRIg抗体は、細胞表面にC3bと一緒に局在化していた(結果は示さない)。4℃から37℃への細胞の移動、その後の37℃で10分間のインキュベーション(図56B)によっては、CRIg抗体およびC3bの、細胞の周辺に存在しているトランスフェリンエンドソーム区画へ(図56B、パネル1〜4、矢印)、そして、Lamp1区画の縁(矢印、図57D,パネル1〜4)の迅速なインターナライゼーションが生じた。CRIgは、エンドソーム区画に局在化したままであり、24時間までの追跡時間の間にリソソーム中では分解されなかった(結果は示さない)。抗CRIg抗体とのマクロファージのインキュベーションによっては、CRIgの分布には影響はなかった。なぜなら、インターナライズしたCRIg抗体は、ポリクローナル抗体での固定後に検出されたCRIgの全てのプールと完全に重複しており(図57C、パネル1〜3)、そして、媒体中のC3の存在とは無関係であるからである(図57C、パネル4)。まとめると、これらの結果は、CRIgが再利用されている初期のエンドソームに存在していること、そしてCRIgのインターナライゼーションがリガンドまたは架橋抗体が存在しない条件下で起こることを示している。
C3bおよびiC3bの大部分は血清に曝された粒子上に蓄積したので(Brown,Curr.Opin.Immunol.3:76−82(1991))、次に、本発明者らは、C3オプソニン化粒子の食作用の間の、マクロファージでのCRIgポジティブエンドソームの局在化を研究した。iC3bオプソニン化ヒツジ赤血球(E−IgM)と遭遇すると、CRIgは迅速に(10分)、トランスフェリンポジティブベシクルから、飲み込まれた赤血球の周囲の環として見ることができるファゴソームを形成するように再分布する(図56C、パネル1および4、矢印)。C3オプソニン化粒子とのマクロファージのインキュベーションの2時間後、ファゴソームは、リソソーム区画へのそれらの移動によって示されるように十分に成長した(図56C、パネル5〜8)。CRIgは、C3オプソニン化粒子を取り囲むファゴソーム膜で高度に発現されており(図56C、パネル5および8、矢印)、そしてほとんどのマクロファージにおいては、もはや、トランスフェリンエンドソーム区画にはなかった。CRIgはリソソーム区画のファゴソームのサブセットに存在したままであったが、その発現は、LAMP−1と重複してはいなかった(図56C、パネル7および8、矢印の先)。LAMP−1膜にCRIgが存在しないことは、CRIgのリソソームの分解の結果の結果ではないようであった。なぜなら、プロテアーゼ阻害因子は、インキュベーションの間継続して存在していたからである。E−IgMを取り込んでいるが、CRIgファゴソームを欠失しているマクロファージのいくつかにおいては、CRIgはトランスフェリン区画と一緒に局在化しており(太い矢印、図56C5、パネル5および8、太い矢印)、これは、CRIgがリソソーム区画へのE−IgMの移動後に再利用される区画に戻ることを示唆している。
まとめると、これらの結果は、CRIgがエンドソームから粒子の飲み込み部位に動員され、そしてファゴソームの形成の最初の段階に関与していることを示しているが、ファゴソーム−リソソーム融合が生じるとファゴソームから脱出してエンドソーム区画に戻ることを示している。
(実施例21)
(CRIgを欠失しているマウスは、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)に感染しやすい)
(材料および方法)
(1.マウスの微生物感染、およびCFU数の決定によるリステリア(Listeria)増殖の評価)
感染性リステリア・モノサイトゲネス(L.monocytogenes(LM))(ATCC43251株)を全ての実験に使用した。細菌の病原性は、BALB/cマウスでの連続継代によって維持した。新しい単離物は感染させた脾臓から得、brain heart infusion(液体)またはbrain heart infusionプレート(Difco Laboratories,Detroit,MI)で増殖させた。細菌を繰り返し洗浄し、滅菌のリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中に再懸濁し、その後、40%のグリセロールを含むPBS中の小さいアリコートで−80℃で保存した。マウスには、種々の用量のリステリア・モノサイトゲネスを尾静脈に静脈内接種した。種々の臓器での細菌増殖の観察のために、本発明者らは、致死量ではない1×10のコロニー形成単位(CFU)のリステリアを、CRIg koマウスまたはCRIg wtマウスのいずれかに静脈内注射した。接種材料において、肝臓および脾臓のホモジネートにおいて、ならびに感染させた細胞において生存している細菌の数を、brain−heart infusion寒天(Difco Laboratories)プレート上に10倍段階稀釈物をプレーティングすることによって決定した。CFUの数を、37℃で24時間のインキュベーションの後でカウントした。
(2.クップファー細胞でのリステリア(Listeria)−A488の取り込みの決定)
生存しているリステリア・モノサイトゲネスを、製造業者の説明書(Molecular Probes,Oregon)にしたがってA−488標識キットで標識した。標識手順の後で生存しているリステリアの数を、コロニーカウントによって評価した。CRIg wtまたはCRIg koマウスに、1000万CFU LMを静脈内注射した。1時間後、肝臓を潅流させ、クップファー細胞を上記の方法にしたがって単離した。細胞を、F4/80に対するPE標識抗体で染色し、ポジティブ細胞を、抗PEビーズ(Miletnyi)を使用し、その後、MoFloフローサイトメーター(DakoCytomation,Ft.Collins,CO)を用いて選別することによって単離した。F4/80ポジティブ細胞をカバースライドにて回収し、インターナライズした標識細菌の数を、共焦点光学顕微鏡を使用して概算した。細胞あたりの細菌の数を、1枚のスライドについて4つの視野に由来する400個の細胞でカウントした。食作用指数を、少なくとも1つの細菌を含むクップファー細胞の割合と細胞あたりの細菌の平均数とを掛け算することによって計算した。結果は、4種類の動物から得た食作用指数の平均および標準偏差を示す。
(結果)
C3b/iC3bオプソニン化粒子に対するCRIgの結合に基づいて、インビボでの補体オプソニン化粒子の食作用におけるCRIgの役割を研究するために、CRIg wtマウスおよびCRIg KOマウスを、グラム陽性通性細菌である種々の用量のリステリア・モノサイトゲネス(LM)(これは、血清に曝されると、細菌表面上にC3bおよびiC3bを優先的に蓄積させる代替補体経路を活性化させる(Croizeら、Infec Immunol.61:5134−5139(1993)))に感染させた。CRIg KOマウスは、高い致死率に示されるように、明らかにLMに感染しやすかった(図58A)。逆に、CRIg−Ig融合タンパク質での事前の処置によっては、CRIg
wtマウスの感度が高くなったが、CRIg koマウスはそうではなかった(図62)。
補体C3オプソニン化粒子の結合および食作用におけるCRIgの役割と一致して、CRIg koマウスは、脾臓および肺での高いLM負荷を生じる、血液からのLMのクリアランスが減少していた(図58B)。感染したマウスの肝臓および心臓でのLM負荷もまた減少しており、これはおそらく、これらの組織でのCRIgを発現するマクロファージの存在を反映している(図58B)。炎症応答はCRIg koマウスにおいて上昇しており、これは、IFN−γ、TNF−α、およびIL−6の血清濃度の増加によって反映されていた(図58C)。O3オプソニン化粒子のクリアランスにおけるCRIgの必要性と一致して、CRIg ko KCは、CRIg wt KCと比較すると、LMの結合および食作用の有意な減少を示した(図58D)。最後に、CRIg koマウスの血液中で検出された高いリステリア負荷量は、C3 koマウスの感染によってCRIg
wtマウスに対するCRIg koマウスにおける細菌力価の差が撤回されるので、C3に依存していた(図58E)。興味深いことに、細菌の循環レベルは、C3十分マウスと比較するとC3 koマウスにおいては有意に低く、これはおそらく、C3 koマウスにおけるリステリアのクリアランスを担っているC3依存性機構の関与の増大を反映している。しかし、C3が存在しない条件下での迅速なクリアランスは、C3欠損マウスがグラム陽性細菌による感染後2日以内に死亡するので、長期間にわたる十分な病原体の排除は生じなかった(Cunnionら、J.Lab.Clin.Med.143:358−365(2004))。これらの結果は、肝臓のクップファー細胞で発現されたCRIgが、循環からの補体C3オプソニン化病原体の迅速なクリアランスにおいて重要な役割を担っていることを強く示している。
(実施例22)
(huCRIg分子での補体媒介性免疫溶血反応の阻害)
ウサギ赤血球が代替補体経路を特異的に活性化し、これによってC5b−9複合体による細胞の溶解を生じることは十分に確立されている(Polhill,ら、J.Immunol.121(1)、363−370(1978))。具体的には、ウサギ赤血球は、代替補体経路のカスケードを開始させ、そしてそれによって生じるMACの形成によってこれらの細胞の溶解を引き起こす。試験化合物が代替補体経路を阻害できる場合は、血清中でバッチ処理したウサギ赤血球に対する試薬の添加(この場合は、カニクイザルの血清中、またはヒトC1q枯渇血清中)は、細胞の溶解を妨げるはずである。これは、溶解された赤血球からのヘモグロビンの放出によって生じる412nmの波長での光の吸光度の変化をモニターすることによってアッセイすることができる。cyno血清実験では、血液をカニクイザルの大体静脈から回収した。抗凝固剤は使用しなかった。試料を室温で凝固させた。試料を遠心分離し、血清を回収し、そして−60〜−80℃を維持するうように設定した冷凍庫で保存した。ウサギ赤血球(RRBC)を、GVB(1×ベローナル緩衝液(Biowhittaker)、0.1%のゼラチン)で3回洗浄し、そしてGVB中に1×10/mlとなるように再度懸濁させた。GVB、huCRIg(short、long、またはlong ECD)を添加し、その後、10μlのGVB+/EGTA(GVB、0.1MのEGTA、0.1MのMgCl2)を添加した。10μlのcynoまたはC1q枯渇血清(Quidel)を添加し、その後、10μlのRRBCを添加し、混合物を指ではじくことによって混合した。震盪させながら温室にて37℃で45分間のインキュベーションの後、250μlのGVB/10mMのEDTAを添加し、混合物を2500rpmで5分間遠心分離した。250μlのアリコートを使用して412nmで読み取った。図63AおよびB(cyno血清)、ならびに図64〜66(ヒト血清)に示す結果は、試験したCRIg化合物が補体hST−L:ヒトCRIG−longを阻害したことを示している
hST−S:ヒトCRIg−short
hST−L ECD:ヒトCRIg−long ECD
hPIGR:ヒト多量体免疫グロブリン受容体
fH:補体因子H
(実施例23)
(脈絡膜血管新生のマウスモデルでのマウスCRIg−Fc融合タンパク質の試験)
脈絡膜血管新生(CNV)は、網膜にレーザーによる火傷を生じさせることによって、実験的に誘導することができる。本実験では、40匹のC57BL−6マウス(Charles River Laboratory)を2つの処置アームに分けた。
グループ1(対照):−1日目、1日目、3日目、および5日目に、12mg/kgのgp120 mIgG1をi.p.注射。
グループ2:−1日目、1日目、3日目、および5日目に、12mg/mlのマウスCIRg(mCRIg)をi.p.注射。
それぞれのアームにおいて、動物を、ケタミン(25mg/g)とキシラジン(1.28mg/g)との混合物の皮下(s.c.)注射によって麻酔した。瞳孔を、1滴の1%のトロピカミドを使用して広げた。その後、動物をプラスチック製の型に固定した。ダイオードレーザー(100μmの孔の大きさ)を使用して、OcuLight GL Diode Laser(532nm)、Zeiss 30Wスリットランプ、およびマイクロマニピュレーターを使用して、視神経の周囲に、眼の中に3個のレーザーをあてるスポットを作った。右目には、120mW、0.1秒、および100μmのスリットの大きさでレーザーを照射した。レーザースポットに生じた泡は、ブルーフ膜(Brach’s membrane)の破裂を示している。
レーザースポットを、レーザー処置の7日後に、共焦点顕微鏡を使用して評価した。この時点で、動物をイソフルランで麻酔し、50mg/mlのフルオレセイン標識デキストラン(Sigma)を含む0.5mlのPBSで心臓から潅流させた。眼を取り出し、10%のリン酸緩衝化ホルマリンに固定し、網膜を廃棄し、そして残ったアイカップ(eye cup)を、スライド上に平坦になるように固定した。組織病理学的試験には、補体断片およびエラスチンについての脈絡膜の平坦に固定したものの免疫組織化学染色と、共焦点顕微鏡によって眼のFITC−デキストラン染色された血管をモニターすることによるCNV複合体の大きさの分析とを含めた。
結果を、図71AおよびBに示す。ここでは、右目の火傷の孔を、それぞれ、0〜3および0〜5の目盛りでスコアした。
(実施例24)
(レーザーで誘導した網膜の損傷を受けたカニクイザルでのCRIg ECDおよびCRIg−Fc融合タンパク質の試験)
24匹のカニクイザル(雄または雌のいずれかであり、12匹の雄と12匹の雌)を、この実験で使用した。動物は、2〜7歳齢であり、2〜5kgであった。
Figure 2011246495
投与は、橈側皮静脈からの静脈内注射である。動物に、レーザー処理の前に少なくとも1回投与し、残りの実験の間には、1週間に3回投与した。用量は最近に記録された体重に基づき、10〜15mg/kgの範囲である。
4日目に、全ての動物のそれぞれの眼の斑点に、スリットランプ送達システムとKaufmann−Wallow(Ocular Instruments Inc,Bellevue,Wash)plan fundusコンタクトレンズとを使用して、532nmのダイオードグリーンレーザーバーン(diode green laser burns)(OcuLight GL,IRIDEX Corp Inc.Mountain
View,California)で、CORLによってレーザー処理を行った。レーザーおよび支持装置はCORLより供給された。動物を、ケタミンとキシラジンとで麻酔した。9個の領域を、それぞれの眼の斑点にて対称に配置した。レーザーのパラメーターには、75ミクロンの孔の大きさ、および0.1秒の持続期間を含めた。使用した電力(power)を、水疱および小さい出血を生じるそれらの能力によって評価した。出血が最初のレーザー処理によっては観察されない場合には、第2のレーザースポットを、同じレーザー手順にしたがって(ワット量を調整したことを除く)最初のスポットの近くに置いた。小さなくぼみに隣接していない領域については、最初の電力の設定を500mWとし、第2のスポットを置く場合には、電力を650mWに設定した。小さなくぼみに隣接している領域については、電力の設定を400mW(最初)および550mW(2回目)とした。網膜の外科的判断時に、電力の設定を、レーザー処置の時点での観察に基づいて調整した。
(臨床的な眼科的試験)
臨床的な眼科的試験を、処置の開始前に1回、そして8日目、15日目、22日目、および29日目に、それぞれの動物について行った。動物をケタミンで麻酔し、眼を散瞳薬で開かせた。両方の眼の付属器および前方部分を、スリットランプ生体顕微鏡(biomicroscope)を使用して試験した。両方の眼の眼底を、間接検眼鏡を使用して試験した。眼科医の判断で、眼を、他の適切な装置を使用して試験することができ、そして写真を撮影することができた。
(眼の写真)
眼の写真(OP)を、レーザーでの処理の1日目(レーザー処置の後)、投与期1については10日目、17日目、24日目、および31日目、ならびに、投与期2については6日目(死体解剖の日)に撮影した。投与期1の間にフルオレセイン血管造影を同時に行った際に、OPを初めに行った。
フルオレセイン血管造影と同時に行った場合は、動物をケタミンで麻酔し、イソフルラン麻酔で維持し、そして単独で行う場合には、ケタミンとキシラジンとで麻酔した(すなわち、以下のレーザー処置)。眼を散瞳剤で開かせた。カラー写真をそれぞれの眼について撮影し、これには、網膜と関連する眼の異常、後極の立体写真、および2つの中央の周辺視野の非立体写真を含めた(側頭部と鼻)。
(フルオレセイン血管造影法)
フルオレセイン血管造影法は、全ての動物について処置の開始前に1回、投与期1については、10日目、17日目、24日目、および31日目(レーザー照射後6日目、13日目、20日目、および27日目)に行った。
動物を、フルオレセイン血管造影の前に絶食させた。動物をケタミンで麻酔してイソフルランで維持し、そして眼を散瞳剤で開かせた。動物には、フルオレセインの注入後の嘔吐の可能性の理由から挿管した。動物に、フルオレセインの静脈内注射を投与した。フルオレセインの注射の開始時および終了時に写真を撮影した。フルオレセインの注射後、右眼の後極の一連の立体写真を迅速に撮影し、その後、1分以内に左目の後極の立体写真の対を撮影した。その後、それぞれの眼を、約1分から2分、および5分で撮影した。約2分から5分の間に、非立体写真を、それぞれの眼の2つの中央の周辺視野(側頭部と鼻)について撮影した。フルオレセインの漏れが5分の時点で観察された場合には、立体写真の対を約10分で撮影した。
フルオレセイン血管造影の評価を、過度の透過性(フルオレセインの漏れ)または任意の他の異常の証拠について以下の評点方式にしたがって行った。
Figure 2011246495
(材料の寄託)
以下の材料を、アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection),10801,University Boulevard,Manassan,VA20110−2209,USA(ATCC)に寄託した。
Figure 2011246495
この寄託は、特許手続きのための微生物寄託の国際認識に関するブダペスト条約とその規制(ブダペスト条約)の規定のもとで行った。これによって、寄託日から30年間の間、寄託した生存している培養物の維持が確実となる。寄託物は、ブダペスト条約の条項にしたがってATCCによって入手することができ、そしてGenentech,Inc.およびATCCの合意が得られる。これにより、該当する米国特許が発行されると、または任意の米国出願もしくは外国出願が出願公開されると、どれでも、まずそのような状態となりさえすれば、一般の人々が寄託された培養物の子孫を永久的に制限なく入手できることが確実となり、そして35 USC’122とそれに続く委員会の規則(37 CFR(米国特許法施行規則)§1.14を含む、特に、886 OG 638を参照のこと)にしたがってそれらに与えられる、米国特許庁長官によって決定されるものの子孫を確実に入手できるようになる。
本出願の指定代理人は、寄託された材料の培養物が、適切な条件下で培養されていても死滅してしまう、または失われてしまう、または破壊されてしまった場合には、通知されると速やかに、材料を同じ別のもので置き換えることに同意する。寄託された材料を利用できることは、その特許権にしたがっていずれかの関係官庁の当局のもとで、与えられた権利に違反して本発明を実施する許可とは解釈されない。
本明細書中に記載した上の内容は、当業者が本発明を実施できるために十分であると考えられる。本発明は、寄託した構築物によって範囲が限定されることはない。なぜなら、寄託した実施形態は、本発明の特定の態様の1つの説明と意図され、機能的に同等である任意の構築物が本発明の範囲に含まれるからである。本明細書中の材料の寄託は、本明細書中に含まれる記載がその最良の態様を含む本発明の任意の態様の実施を可能にするには不十分であり、そしてまた、それが示す特定の説明に対して特許請求の範囲の範囲を限定するようにも解釈されないことの了解を構成するものでもない。
実際、本明細書中に示され記載されるものに加えて、本発明の種々の改良が、上の記載から当業者に明らかとなり、添付される特許請求の範囲に含まれるであろう。
(配列表)
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Claims (1)

  1. 明細書に記載の発明。
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