JP2011245497A - 金属片の連続鋳造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】金属片9を連続鋳造するに際して、非定常バルジングが生じるのを抑制する方法を提供する。
【解決手段】いずれのセグメント(11〜19)で非定常バルジングが生じたかを推定し、非定常バルジングが生じたと推定したセグメントよりも下流側あるいはさらに非定常バルジングが生じたと推定したセグメントの駆動ロールの周速を、上流側よりも速める。
【選択図】図1

Description

本発明は、金属片の連続鋳造方法に関し、金属片を連続鋳造する際に非定常バルジングが生じるのを抑制する、金属片の連続鋳造方法に関する。
図10は、鋼の連続鋳造機の一例について、その概略を示した図である。100は連続鋳造機全体を示す。
連続鋳造操業に際しては、取鍋(図示せず)からタンディッシュ1内に溶鋼5を注湯し、次いで、タンディッシュ1内の溶鋼5を、浸漬ノズル2を介して鋳型3内に注湯する。溶鋼5は鋳型3内で冷却されて凝固シェル8を形成し、凝固シェル8は、ガイドロール4に支持されながら鋳型3の下方に引き抜かれ、鋼片9となる。なお、6は溶鋼5の湯面、7は鋼片9内の未凝固層(未凝固の溶鋼)を示す。
鋼片9を挟んで一対のガイドロール4は、鋼片9が引き抜かれる方向(以下、引抜方向)に複数列設されてセグメントを構成し、さらに複数のセグメントが引抜方向に列設されて連続鋳造機100全体を構成する。図10の例では、鋳型3の直下から、第1セグメント11、第2セグメント12、・・・、第9セグメント19の順になる。
図10の例ではまた、第1セグメント11から第9セグメント19の範囲は、二次冷却帯と呼ばれる冷却ゾーンになっており、図示しないエアーミストスプレーノズルや水スプレーノズルなどが設置されていて、ミストや冷却水が鋼片9に向け噴射されるしくみになっている。
なお、図10の例では9つのセグメントが配置されているが、セグメント数は、各連続鋳造機毎に機長に応じて異なってくる。
鋼に代表される金属片の連続鋳造に際しては、溶融金属が水冷式の鋳型内で一次冷却され、凝固シェルが形成される。その後、水スプレーやミストスプレーなどによる二次冷却が行われ、凝固シェルが厚く成長していくが、完全凝固するまでは、凝固シェルの内部は未凝固のままである。
凝固シェルは、鋳造されつつある金属片(以下、鋳片とも称す)の内部から溶融金属の自重による圧力(静圧)を受けるため、凝固シェルには、ガイドロール対どうしの間で、図11中左上に誇張して示すように、バルジングと呼ばれる膨らみ状の変形が生じる場合がある。このバルジングは、凝固シェル8が薄い場合や、ガイドロール4のピッチ(引抜方向に隣接する2つのガイドロール4の間隔(中心どうしの間隔))が大きい場合に、大きくなる。
今仮にここで、鋳造速度(以下、鋳片の引抜速度、鋳片引抜速度、あるいは単に引抜速度とも称す)が上昇し、鋳片の冷却が弱まるなどして、凝固が遅れると、図11中右上に示すようにバルジングが拡大する。
すると、凝固シェル8と、ガイドロール4との接触長が長くなり、その分、凝固シェル8がガイドロール4に冷却される作用が増す。
そうなると、凝固シェル8の剛性が増し、凝固シェル8が波打った形状のまま固化してガイドロール4の対を構成する二つのロールの間を通過する。
以上のようにして、図11中右下に示すように凝固シェル8どうしが波打った形状のまま挟圧されて鋳片内部の未凝固の溶融金属(未凝固層7)が上方に押し出され、鋳型内では溶融金属面の高さが変動する。
このように、バルジングした凝固シェル8どうしをガイドロール4の対で挟圧することで溶融金属が上方に押し出される現象を、非定常バルジングと呼ぶ。
非定常バルジングが生じると、鋳型内での溶融金属面の高さの変動は、鋳片がガイドロールピッチ分引き抜かれるのに要する時間を周期として生じる。
鋳型内での溶融金属面の高さの変動が生じると、鋳型からの溶融金属のオーバーフローが生じたり、不均一な凝固シェルの成長に伴ってブレークアウトが生じたり、鋳型と溶融金属の溶着防止を目的に溶融金属面上に供給したモールドパウダーが鋳片表層に巻き込まれて鋳片の表面品質が低下したりするなど、さまざまな問題が生じる。
オーバーフローやブレークアウトが生じた場合は、復旧のために相当の時間、連続鋳造操業の停止を余儀なくされる。また、鋳片の品質低下は、製品歩留まりの低下につながる。
非定常バルジングが生じるのを抑制するには、通常、鋳造速度を低下させる方法がとられるが、その分、生産性が低下する問題がある。
その他、ガイドロールピッチを小さくしたり、鋳片を冷却する能力を向上したりするよう設備を改造したり、湯面レベル制御(溶融金属面の高さが一定に近づくことを目標に制御すること)や鋳片引抜速度制御(鋳造速度が適正となることを目標に制御すること)の精度を向上したりする方法などがとられているが、満足のいく成果には至っていない。
例えば、特許文献1には、バルジング量および鋳型内での溶融金属面の高さを検知し、その検知信号に基づいてピンチロールの鋳片引抜速度および鋳型への溶融金属注入速度を調節して、バルジング量を制御するとともに、鋳型内での溶融金属面の高さを制御する方法が記載されている。
しかしながら、検知した値と基準値との偏差をどのようにして小さくするのか、具体的な方法については記載されていない。
また、特許文献2には、バルジング量を常時測定し、この測定値に基づいて鋳造速度を制御し、鋳型内での溶融金属面の高さを調整する方法が記載されている。しかしながら、鋳造速度をどのように制御するのか、具体的な方法については記載されていない。
非特許文献1には、±5%の鋳造速度変動により非定常バルジングが発生し、鋳造速度が低下したときにバルジング量が大きくなり、鋳造速度が上昇したときにバルジング量が小さくなるか又は逆に凹む(バルジング量が負となる)ことが計算により示される旨、記載されている。
特許文献3は、非定常バルジングを検知し、鋳片引抜速度を非定常バルジングの周期に同調させて周期的に変動させ、非定常バルジングが大きいときには鋳片引抜速度を速くし、非定常バルジングが小さいかまたは負のときには鋳片引抜速度を遅くする、通常とは反対の操業方法を提案している。それにあたっては、非特許文献1の知見を利用している。
しかしながら、この特許文献3が利用した非特許文献1の発表から20年以上経過した今日では、当時と比べて鋳造速度が上昇している。その結果、非定常バルジングの周期が短くなり、制御遅れや、駆動ロールと鋳片との間のスリップの問題がある点で、周期に同調して鋳片引抜速度を変化させるのが困難になっている。
図12に、従来技術によった場合の鋼の連続鋳造における鋳型内湯面変動および鋳造速度の一例を示す(鋼の場合、溶融金属に相当する溶鋼のことを湯という場合がある)。図12において、鋳造領域Aでは鋳型内の湯面変動は小さく、湯面レベルは安定しているが、鋳造領域Bでは周期的な湯面変動が発生しており、それに応じて鋳造速度を低下させていることがわかる。
この鋳型内湯面変動の周期は数秒〜十数秒であり、その振幅は数mm〜数十mmに達する場合もある。図12より、大きな湯面変動を検知し、その対策として鋳造速度を低下させても、必ずしも湯面変動が小さくならず、さらなる鋳造速度低下を行っても、その効果が即座に見られないことがわかる。
なお、後述の、発明を実施するための形態での説明の関係で、特許文献4に言及しておくと、特許文献4では、湯面の上方の異なる位置に、二個の距離計を設けて湯面の高さの変動を測定し、周波数解析装置にて解析することで、溶鋼の表面波動の伝播速度と周波数を求めることができる、としている。
A. Yoshii & S. Kihara, "Analysis of Bulging in Continuously Cast Slabs by Bending Theory of Continuous Beam", Trans. ISIJ, pp. 891-894, 1986
特開昭63−104767号公報 特開平01−166873号公報 特許第3506195号公報 特許第2720611号公報
本発明は、従来技術の上述のような問題を解決するためになされたものであり、非定常バルジングが生じるのを抑制する方法を提供することを目的とする。とくに、特許文献3のような方法が有効に適用できない高速鋳造の条件下においても、非定常バルジングが生じるのを抑制する方法を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、以下の通りである。なお、先述の引抜方向にみて上流側を単に上流側、同下流側を単に下流側と称す。
(1)金属片を連続鋳造するに際して、
いずれのセグメントで非定常バルジングが生じたかを推定し、
前記非定常バルジングが生じたと推定したセグメントよりも下流側あるいはさらに前記非定常バルジングが生じたと推定したセグメントの駆動ロールの周速を、
上流側よりも速める
ことを特徴とする金属片の連続鋳造方法。
(2)金属片を連続鋳造するに際して、
バルジング量を検知し、
該バルジング量が許容値を超えたことをもって、非定常バルジングが生じたことを検知するようにし、
該非定常バルジングが生じたことを検知した場合に、
いずれのセグメントで前記非定常バルジングが生じたかを推定し、
前記非定常バルジングが生じたと推定したセグメントよりも下流側あるいはさらに前記非定常バルジングが生じたと推定したセグメントの駆動ロールの周速を、
上流側よりも速める
ことを特徴とする金属片の連続鋳造方法。
(3)金属片を連続鋳造するに際して、
溶融金属面の高さの変動を測定するとともにバルジング量を検知し、
溶融金属面の高さの変動周期と前記金属片の引抜速度との積に最も近い、ガイドロールピッチを有するセグメントにて、非定常バルジングが生じたものと推定するとともに、
前記非定常バルジングが生じたセグメントを推定できた場合に、前記非定常バルジングが生じたことを検知し、
前記非定常バルジングが生じたことを検知した時点で、
前記非定常バルジングが生じたと推定されたセグメントのすぐ下流側のバルジング量センサにて、非定常バルジングが生じたと推定するための、バルジング量の許容値を、
前記時点にて前記バルジング量センサにて検知したバルジング量に更新設定し、
以降、前記非定常バルジングが生じたと推定したセグメントよりも下流側あるいはさらに前記非定常バルジングが生じたと推定したセグメントの駆動ロールの周速を、
上流側よりも速める
ことを特徴とする金属片の連続鋳造方法。
(4)前記非定常バルジングが生じたと推定したセグメントよりも下流側あるいはさらに前記非定常バルジングが生じたと推定したセグメントの中で、
下流側セグメントの駆動ロールの周速を、
上流側よりも速める
ことを特徴とする(1)ないし(3)のいずれかに記載の金属片の連続鋳造方法。
(5)前記非定常バルジングが生じたと推定したセグメントよりも上流側にて、
前記金属片の冷却を、
下流側よりも強める
ことを特徴とする(1)ないし(4)のいずれかに記載の金属片の連続鋳造方法。
本発明によれば、非定常バルジングが生じるのを効果的に抑制できる。
また、従来技術では不明確であった鋳片引抜速度を制御する方法を具体的に示すことで、非定常バルジングが生じるのを効果的に抑制できる。
そして、とくに、従来、鋳造速度と非定常バルジングの周期の関係という点で制御が難しかった、高速鋳造の条件下にても、非定常バルジングが生じるのを効果的に抑制できる。
さらに、本発明は、既存設備に容易に適用できるとともに、鋳型内での溶融金属面の高さを、狭い範囲内に高精度に制御することができる。
以上により、本発明によれば、オーバーフローやブレークアウトが生じるのを効果的に抑制できるとともに、モールドパウダーの巻き込みなどに伴う品質不良が生じるのも抑制して、高品質の金属片を製造することができ、生産能率の向上と製造コストの低減に寄与する金属片の連続鋳造方法を提供できる。
本発明の実施例について説明するための図 本発明の実施例について説明するための図 本発明の実施例について説明するための図 本発明の実施例について説明するための図 本発明の実施例について説明するための図 本発明の実施例について説明するための図 本発明の実施例について説明するための図 本発明の実施例について説明するための図 本発明の実施形態について説明するための図 連続鋳造について説明するための図 従来技術の問題について説明するための図 従来技術の問題について説明するための図
(第1の実施形態)
本実施形態では、金属片を連続鋳造するに際して、いずれのセグメントで非定常バルジングが生じたかを推定し、非定常バルジングが生じたと推定したセグメントよりも下流側あるいはさらに非定常バルジングが生じたと推定したセグメントの駆動ロールの周速を、上流側よりも速めるようにする。
本実施形態においては、いずれのセグメントで非定常バルジングが生じたかを推定する方法は、後述の実施例1に示す、溶融金属面の高さの変動を測定し、変動周期と金属片の引抜速度の積に最も近い、ガイドロールピッチを有するセグメントを特定するような方法や、後述の実施例2に示す、バルジングレベル計のようなバルジング量センサを用いてバルジング量を検知し、許容値を超えた場合にすぐ上流側のセグメントで非定常バルジングが生じたことを検知するような方法などがあるが、これらの方法に限られるものではない。
いずれにしても、本実施形態では、いずれのセグメントで非定常バルジングが生じたかを推定し、非定常バルジングが生じたと推定したセグメントよりも下流側あるいはさらに非定常バルジングが生じたと推定したセグメントの駆動ロールの周速を速めるようにする。
なお、本実施形態では、いずれのセグメントで非定常バルジングが生じたかを推定できた場合に、非定常バルジングが生じたことを検知したこととする。
駆動ロールの周速を速めるようにすることで、図9に示すように凝固シェル8をたぐり寄せてバルジングを抑制し、結果的に鋳型内の溶融金属面の高さの変動を抑制することができる。
駆動ロールは、後出の図2に符号24で示すように各セグメントに少なくとも一対設けられ(各セグメントの他のガイドロールは非駆動)、駆動ロールの本数は、連続鋳造機内でできるだけ多い方が好ましいものの、駆動ロールを新たに増やすことは、駆動モータの設備費や、駆動ロールを金属片に押付ける設備の設備費などが高額となり、また、制御系も複雑化してその制作費も高額となることから、各セグメントに一対の駆動ロールを配置するのが好ましい。
次に、周速をどれだけ速めるかについては、金属片と駆動ロールとの間のスリップに起因するスリ疵などの品質不良が生じない限度において、非特許文献1より、上流側に対する下流側の速度の増分を5%以内とすること、を一応の目安とするが、これに限られるものではない。
(第2の実施形態)
本実施形態では、金属片を連続鋳造するに際して、バルジング量を検知し、バルジング量が許容値を超えたことをもって、非定常バルジングが生じたことを検知するようにし、非定常バルジングが生じたことを検知した場合に、いずれのセグメントで非定常バルジングが生じたかを推定し、非定常バルジングが生じたと推定したセグメントよりも下流側あるいはさらに非定常バルジングが生じたと推定したセグメントの駆動ロールの周速を、上流側よりも速めるようにする。
すなわち、本実施形態では、上記第1の実施形態にて、非定常バルジングが生じたのを検知するのに、バルジング量を検知できる検知手段(バルジング量センサ)を用いるものである。
バルジング量センサについては、原理的に、バルジング量を検知でき、本実施形態に適用することで、非定常バルジングに起因した鋳型内での溶融金属面の高さの変動を抑制できるものであれば何でもよい。
バルジング量の定義は、先述の図11に示した通りである。
しかしながら、バルジング量の検知は、水蒸気が蔓延する環境中で行われるため、測定精度の確保と維持は容易ではない。
このため、バルジング量の許容値については、ここでは詳説しないが、例えば、経験的に決めるなどするのが好ましい。
(第3の実施形態)
溶融金属面の高さの変動を測定するとともにバルジング量を検知し、溶融金属面の高さの変動周期と金属片の引抜速度との積に最も近い、ガイドロールピッチを有するセグメントにて、非定常バルジングが生じたものと推定するとともに、非定常バルジングが生じたセグメントを推定できた場合に、非定常バルジングが生じたことを検知し、非定常バルジングが生じたことを検知した時点で、非定常バルジングが生じたと推定されたセグメントのすぐ下流側のバルジング量センサにて、非定常バルジングが生じたと推定するための、バルジング量の許容値を、前記時点にて前記バルジング量センサにて検知したバルジング量に更新設定し、以降、非定常バルジングが生じたと推定したセグメントよりも下流側あるいはさらに非定常バルジングが生じたと推定したセグメントの駆動ロールの周速を、上流側よりも速めるようにする。
このようにすると、多くの場合、経験的にしか決められない、バルジング量センサにて、非定常バルジングが生じたと推定するためのバルジング量の許容値を、自動的に決めることができるとともに、経時的な同許容値の変化の傾向にも追随でき、同許容値を人手により決める煩わしさがなくなる。
(第4の実施形態)
上記第1ないし第3の実施形態のいずれかにおいて、非定常バルジングが生じたと推定したセグメントよりも下流側あるいはさらに非定常バルジングが生じたと推定したセグメントの中で、下流側セグメントの駆動ロールの周速を、上流側よりも速めるようにするのも好ましい。
非定常バルジングが生じたと推定したセグメントよりも下流側あるいはさらに非定常バルジングが生じたと推定したセグメントの中でも、図9に示すように凝固シェル8をたぐり寄せてバルジングが生じるのを抑制し、鋳型内の溶融金属面の高さの変動を抑制する作用を得た方が、非定常バルジングとそれに伴う溶融金属面の高さの変動が生じるのを、より効果的に抑制できるからである。
(第5の実施形態)
上記第1ないし第4の実施形態のいずれかにおいて、非定常バルジングが生じたと推定したセグメントよりも上流側にて、金属片の冷却を、下流側よりも強めるようにするのも好ましい。
非定常バルジングが生じたと推定したセグメントよりも上流側にて、金属片の冷却を、下流側よりも強めると、上流側では、凝固シェルが、冷却を強めた分、バルジングが拡大する前に硬化して、凝固シェル8が波打った形状になっていくのを抑制することができるからである。
いずれにしても、上記各実施形態ほかの本発明により、ひとたび駆動ロールの周速を速めるように制御が行われ、非定常バルジングが生じるのを抑制できる限りにおいて、その後に駆動ロールの周速を原設定に戻すなどの処理を行うことは、本発明において何らこれを妨げるべき事情はない。
図1は、本発明を適用するのに好適な鋼の連続鋳造機の一例について、その概略を示した図である。先述の図10にあるものの基本的な構成を踏襲している。
各セグメント長は、図1に示す連続鋳造機100の例では、鋼片9の厚み1/2線の長さにして1.8から1.9mの長さであり、ガイドロールピッチ長と、ガイドロール4の対の数から1を引いた数との積になる。
図1中、10は溶融金属面に相当する湯面6の上下動を検知する溶鋼湯面レベル計であり、湯面レベル(溶融金属面の高さ)を周波数解析装置20に入力し、求められた変動周期(周波数の逆数)を制御装置21に入力することで、各セグメント11から19の駆動ロール24の周速または冷却の強弱あるいはそれら両方を制御する。
[実施例1]
特許文献4に記載されたことを応用すると、湯面6の高さの変動を測定し、周波数解析装置20により解析を行うことで、変動のピーク値の間隔、すなわち変動周期が求まり、この変動周期と金属片の引抜速度との積を算出し、その値に最も近い、ガイドロールピッチを有するセグメントにて、非定常バルジングが生じたものと推定することができる。
なお、いずれのセグメントで非定常バルジングが生じたかを推定できた場合に、非定常バルジングが生じたことを検知したこととする。
第iセグメントの駆動ロール24の回転速度(周速)をVRi、変動周期をT、第iセグメントのガイドロールピッチ長をLiとすると、下記(1)式で表される残差εが最も小さい第n番目のセグメントが、非定常バルジングが生じたセグメントと推定される。
ε=|Li−VRi×T| ・・・(1)
そして、rを5%以下の定数として、第n番目よりも下流側のセグメントについて、駆動ロール24の回転速度(周速)が、下記(2)式で表されるVRirefとなるような指令値を、制御装置21から、第n番目よりも鋼片9の下流側のセグメントに指令する。
VRiref(i>n)=(1+r/100)×VRi ・・・(2)
あるいは、第n番目のセグメントも含めて、下記(2)’式のようにしてもよい。
VRiref(i≧n)=(1+r/100)×VRi ・・・(2)’
なお、ノイズ防止のため、変動周期の逆数(変動周波数)には適宜ローパスフィルタ、ハイパスフィルタなどにより閾値を設けてもよい。
連続鋳造機100にて鋼の試験鋳造を行う場合を例に、先述の特許文献4に示すような湯面レベル変動の周波数解析を行った場合を例にとり、第5セグメント15のガイドロールピッチに最も近い値が算出され、第6セグメント16とそれ以降の駆動ロール24の周速を速めるように制御を行う場合について説明する。
ここでは、具体的に、図2中に示した駆動ロール24について、第6セグメント16とそれ以降のセグメントにて、周速を2.35m/min.から2.46m/min.へと速めるように制御を行うようにする。この制御のフローチャートを図3に示す。
すると、図4に示すように、湯面6の変動量(湯面変動量)が低減する効果が現れる。単に鋳造速度を低下させるだけの従来技術よりも早く安定状態に達する傾向が確認できる。
[実施例2]
次に、バルジング量を検知するようにした場合について説明する。図5に示すように、各セグメントのすぐ下流側に配置したバルジングレベル計22(バルジング量センサ)を用い、各セグメントのすぐ下流側におけるバルジング量をバルジングレベル評価装置23に入力し、過大なバルジングが発生したセグメントを特定する信号を、制御装置21に入力することで、各セグメント11から19の駆動ロール24の周速または冷却の強弱あるいはそれら両方を制御する。
バルジングレベル計22を用いて測定した、第iセグメントのバルジング量をBi、バルジング量の許容値をBciとすると、下記(3)式が成立した第n番目のバルジングレベル計22に対し、すぐ上流側のセグメントで非定常バルジングが生じたことを検知する。
Bi>Bci ・・・(3)
そして、rを5%以下の定数として、第n番目よりも下流側のセグメントについて、駆動ロール24の回転速度(周速)が、下記(4)式で表されるVRirefとなるような指令値を、制御装置21から、第n番目よりも下流側のセグメントに指令する。
VRiref(i>n)=(1+r/100)×VRi ・・・(4)
あるいは、第n番目のセグメントも含めて、下記(4)’式のようにしてもよい。
VRiref(i≧n)=(1+r/100)×VRi ・・・(4)’
第1〜第6セグメントにおけるバルジング量の測定結果の例を図6に示す。
このとき、図6から、第5セグメント15のバルジング量が突出して大きいことがわかり、そのため、第6セグメント16を含むそれ以降の駆動ロールの周速を速めるように制御する。
ここでは、具体的に、先述の図2中に示す駆動ロール24について、第6セグメント16とそれ以降のセグメントにて、周速を2.35m/min.から2.38m/min.へと速めるように制御を行うようにする。
その場合のフローチャートを示すと、図7の点線部分を除いたものになる。
結果は、第6セグメント16では若干のバルジング量増加が見られるものの、第5セグメント15およびその上流側において、バルジング量が減少する。
[実施例3]
先述の実施例1の非定常バルジングが生じたことの検知と、上記実施例2のバルジング量の検知をあわせて行うことにより、非定常バルジングが生じた時点でのバルジング量、すなわち、バルジング量の許容値を設定することが可能となる。
それにはまず、湯面6の高さの変動を測定し、周波数解析装置20により解析を行うことで、変動のピーク値の間隔、すなわち変動周期が求まり、この変動周期と金属片の引抜速度との積を算出し、その値に最も近い、ガイドロールピッチを有するセグメントにて、非定常バルジングが生じたものと推定する、実施例1の制御と、バルジング量を検知し、バルジング量が許容値を超えたことをもって、非定常バルジングが生じたことを検知するとともに、非定常バルジングが生じたことを検知した場合に、いずれのセグメントで非定常バルジングが生じたかを推定する、実施例2の制御と、を同時並行的に行うようにする。
そして、実施例1の制御にて非定常バルジングが生じたことを検知した時点での、実施例2の制御にて検知されるバルジング量を、実施例1の制御にて非定常バルジングが生じたと推定されたセグメントのすぐ下流側のバルジングレベル計(バルジング量センサ)22におけるバルジング量の許容値として制御装置21内で更新設定し、以降、実施例1の制御と、実施例2の制御と、を同時並行的に行うようにする。
その場合のフローチャートを図8に示す。
[実施例4]
実施例2を踏襲し、加えて、非定常バルジングが生じたと推定したセグメントよりも下流側あるいはさらに非定常バルジングが生じたと推定したセグメントの中で、下流側セグメントの駆動ロールの周速を、上流側よりも速める場合について説明する。
制御にあたっては、非定常バルジングが生じたセグメントよりも、下流側のセグメント群に相当する、第6セグメント16以降第9セグメント19までを、さらに前半と後半に分け、前半に相当する第6セグメント16以降第7セグメント17までと、第8セグメント18と第9セグメント19までと、で先述の(4)式中のrを値の異なる定数とする。
ここでは、第6セグメント16と第7セグメント17にて、周速を2.35m/min.から2.38m/min.へと速め、第8セグメント18と第9セグメント19にて、周速を2.35m/min.から2.46m/min.へと速めるように制御を行う。
結果は、第6セグメント16では若干のバルジング量増加が見られるものの、第5セグメント15およびその上流側において、バルジング量が減少する。
[実施例5]
実施例2を踏襲し、加えて、非定常バルジングが生じたと推定したセグメントよりも上流側にて、金属片の冷却を、下流側よりも強めるようにする場合について説明する。
ここでは、冷却ノズル25について、第3セグメント13および第4セグメント14にて噴射する冷却水の流量密度を79リットル/分/m2から82リットル/分/m2へと増やし、同時に、第1セグメント11にて噴射する冷却水の流量密度を253リットル/分/m2から263リットル/分/m2へと増やすよう制御を行う。
その場合のフローチャートを示すと、図7の点線部分も含んだものになる。
第6セグメント16では若干のバルジング量増加が見られるものの、第5セグメント15およびその上流側において、バルジング量が減少する結果が得られる。
以上の通りであるが、本発明は、以上説明した実施形態や実施例の態様にて実施されるものに限られるわけではない。例えば、実施例1を踏襲し、加えて、非定常バルジングが生じたと推定したセグメントよりも上流側にて、金属片の冷却を、下流側よりも強めるようにしてもよい。また、今回の実施例1では、(1)式によって非定常バルジング発生セグメントを特定できたが、状況によっては、ほぼ同レベルの残差を有する候補セグメントが複数あると判定される場合がある。その際には、候補セグメントのうち最下流側のセグメント、すなわち、最も大きいiを選択し、図3に示すフローで制御を実施すればよい。
あるいはまた、例えば、以上説明した実施例では、全て鋼の連続鋳造を対象としているが、アルミニウムなど、その他の金属の連続鋳造を対象としてももちろんよい。
1 タンディッシュ
2 浸漬ノズル
3 鋳型
4 ガイドロール
5 溶鋼(溶融金属)
6 湯面(溶融金属面)
7 未凝固層
8 凝固シェル
9 金属片(鋳片)、鋼片
10 溶鋼湯面レベル計
11 第1セグメント
12 第2セグメント
13 第3セグメント
14 第4セグメント
15 第5セグメント
16 第6セグメント
17 第7セグメント
18 第8セグメント
19 第9セグメント
20 周波数解析装置
21 制御装置
21a 引抜速度制御用制御装置
21b 冷却制御用制御装置
22 バルジングレベル計(バルジング量センサ)
23 バルジングレベル評価装置
24 駆動ロール
25 冷却ノズル
100 連続鋳造機

Claims (5)

  1. 金属片を連続鋳造するに際して、
    いずれのセグメントで非定常バルジングが生じたかを推定し、
    前記非定常バルジングが生じたと推定したセグメントよりも下流側あるいはさらに前記非定常バルジングが生じたと推定したセグメントの駆動ロールの周速を、
    上流側よりも速める
    ことを特徴とする金属片の連続鋳造方法。
  2. 金属片を連続鋳造するに際して、
    バルジング量を検知し、
    該バルジング量が許容値を超えたことをもって、非定常バルジングが生じたことを検知するようにし、
    該非定常バルジングが生じたことを検知した場合に、
    いずれのセグメントで前記非定常バルジングが生じたかを推定し、
    前記非定常バルジングが生じたと推定したセグメントよりも下流側あるいはさらに前記非定常バルジングが生じたと推定したセグメントの駆動ロールの周速を、
    上流側よりも速める
    ことを特徴とする金属片の連続鋳造方法。
  3. 金属片を連続鋳造するに際して、
    溶融金属面の高さの変動を測定するとともにバルジング量を検知し、
    溶融金属面の高さの変動周期と前記金属片の引抜速度との積に最も近い、ガイドロールピッチを有するセグメントにて、非定常バルジングが生じたものと推定するとともに、
    前記非定常バルジングが生じたセグメントを推定できた場合に、前記非定常バルジングが生じたことを検知し、
    前記非定常バルジングが生じたことを検知した時点で、
    前記非定常バルジングが生じたと推定されたセグメントのすぐ下流側のバルジング量センサにて、非定常バルジングが生じたと推定するための、バルジング量の許容値を、
    前記時点にて前記バルジング量センサにて検知したバルジング量に更新設定し、
    以降、前記非定常バルジングが生じたと推定したセグメントよりも下流側あるいはさらに前記非定常バルジングが生じたと推定したセグメントの駆動ロールの周速を、
    上流側よりも速める
    ことを特徴とする金属片の連続鋳造方法。
  4. 前記非定常バルジングが生じたと推定したセグメントよりも下流側あるいはさらに前記非定常バルジングが生じたと推定したセグメントの中で、
    下流側セグメントの駆動ロールの周速を、
    上流側よりも速める
    ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の金属片の連続鋳造方法。
  5. 前記非定常バルジングが生じたと推定したセグメントよりも上流側にて、
    前記金属片の冷却を、
    下流側よりも強める
    ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の金属片の連続鋳造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN110548847A (zh) * 2019-09-20 2019-12-10 本钢板材股份有限公司 一种连铸机在中包快换期间扇形段自动躲接痕板坯的方法

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