JP2011242624A - 帯電粒子搬送部材 - Google Patents

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Kosuke Minematsu
浩介 峰松
Yasuyuki Hayazaki
康行 早崎
Akihiko Kaji
明彦 加地
Atsushi Kobayashi
淳 小林
Wataru Takahashi
渉 高橋
Hitoshi Yoshikawa
均 吉川
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Abstract

【課題】帯電粒子に与えるストレスが小さく平滑な電極部を形成しやすい帯電粒子搬送部材を提供する。
【解決手段】電極部5を形成する導電膜は、エラストマーとフィラーとを有し、次の(A)または(B)である。(A)フィラーは第一異方性フィラーと第一塊状フィラーとを有する。(B)次の(b1)、(b2)を併有する。(b1)断面写真に描いた三本の直線各々について直線に交差する最長部の長さが2μm以上のフィラーの個数を数え、直線1μm当たりの基準個数を算出した場合に、三本の直線の基準個数の平均値が0.8(個/μm)以上である。(b2)断面写真に、2μm四方の単位領域が100個連なった測定領域を設け、単位領域ごとにエラストマーが占める面積を測定した場合に、エラストマーの面積割合が60%以上である単位領域の個数が、20個以上である。
【選択図】図3

Description

本発明は、例えば現像ロールや現像ベルトなどの帯電粒子搬送部材に関する。
複写機、プリンタ、ファクシミリなどの電子写真機器は、一例として、供給ロールと現像ロールと感光ドラムとを備えている。供給ロールは、トナーを現像ロールに供給している。現像ロールには、トナーの層厚を調整するドクターブレードが並設されている。
トナーは、供給ロールと現像ロールとの間を通過する際や、現像ロールとドクターブレードとの間を通過する際の摩擦により、帯電している。現像ロールは、周方向に並ぶ複数の電極を備えている。周方向に隣り合う電極間には、交番電界が形成されている。交番電界により、トナーは、電極間を繰り返し移動している。言い換えると、トナーは、現像ロールの外周面から、ホッピングを繰り返している。トナーのホッピングにより、現像ロールの外周面にはフレアが形成されている。
現像ロールは自身の軸周りに回転可能である。フレアを形成するトナーは、現像ロールの回転に伴い、感光ドラム付近まで搬送される。現像ロール外周面と感光ドラム外周面との電位差により、トナーは感光ドラムの潜像に付着する。このようにして、電子写真機器は、感光ドラムの潜像を現像している。
特許文献1に開示されている現像ロールは、アクリル樹脂製の筒体と、ニッケル製の電極とを、備えている。筒体および電極は、硬度が高い。このため、トナーに与えるストレスが大きい。したがって、トナーが劣化しやすい。また、画像に「かぶり」などの不具合が発生しやすい。
この点に鑑み、特許文献2に開示されている現像ロールは、ゴム弾性層と、導電性弾性塗膜製の電極とを、備えている。同文献記載の現像ロールによると、ゴム弾性層が弾性変形可能である。このため、トナーに与えるストレスを小さくすることができる。
特開2007−133387号公報 特開2009−276393号公報
しかしながら、特許文献2の現像ロールの場合、平滑な電極を形成しにくかった。すなわち、電極は、まずゴム弾性層の外周面に導電性弾性塗膜を塗布し、次に塗布した導電性弾性塗膜を乾燥させることにより、形成される。この際、導電性弾性塗膜に加熱処理が施される。
ここで、ゴム弾性層は導電性弾性塗膜よりも線膨張係数が高い。このため、導電性弾性塗膜の柔軟性が低いと、ゴム弾性層の熱変形に導電性弾性塗膜が追従できない。したがって、形成後の電極に「割れ」や「しわ」などが形成されやすかった。このように、従来の現像ロールの場合、製造時に加熱処理が施されるため、ゴム弾性層と導電性弾性塗膜との線膨張係数の差により、平滑な電極を形成しにくかった。
本発明の帯電粒子搬送部材は、上記課題に鑑みて完成されたものである。本発明は、帯電粒子に与えるストレスが小さく、平滑な電極部を形成しやすい帯電粒子搬送部材を提供することを目的とする。
(1)上記課題を解決するため、本発明の帯電粒子搬送部材は、単層または複層であって、ゴム弾性と絶縁性とを併有する絶縁部と、該絶縁部の外面に配置される、弾性を有する導電膜製の電極部と、を有する帯電粒子搬送部材であって、前記導電膜は、エラストマーと、該エラストマー中に充填される金属製のフィラーと、を有し、次の(A)または(B)であることを特徴とする(請求項1に対応)。
(A)該フィラーは、フレーク状または針状であって膜展開方向に配向する第一異方性フィラーと、該第一異方性フィラーよりも異方性が小さい第一塊状フィラーと、を有する。
(B)次の(b1)および(b2)の条件を満たす。
(b1)走査型電子顕微鏡により撮影された膜厚方向の断面写真に、膜厚方向に延びる三本の直線を膜展開方向に3μmずつ離間して描き、各々の該直線ごとに、該直線と交わる該断面写真における最長部の長さが2μm以上の該フィラーの個数を数えて、該個数を該直線の長さで除することにより該直線1μm当たりの基準個数を算出した場合に、三本の該直線における該基準個数の平均値が、0.8(個/μm)以上である。
(b2)走査型電子顕微鏡により撮影された膜厚方向の断面写真に、2μm四方の単位領域が100個連なって形成される測定領域を設け、該単位領域ごとに、該エラストマーが占める面積を測定した場合に、該エラストマーの面積割合が60%以上である該単位領域の個数が、20個以上である。
ここで、「金属製のフィラー」とは、少なくともその表面が金属製であるフィラーをいう。本発明の帯電粒子搬送部材の絶縁部を構成する層のうち、少なくとも一層は、ゴム弾性を有している。このため、絶縁部が弾性変形することにより、帯電粒子に与えるストレスを小さくすることができる。したがって、帯電粒子が劣化しにくい。
[(A)について]
本発明の帯電粒子搬送部材が(A)を満たす場合について説明する。この場合、導電膜のエラストマーに充填される金属製のフィラーには、第一異方性フィラーと、第一塊状フィラーと、が含まれている。第一異方性フィラーは、フレーク状(薄片状)または針状を呈している。第一塊状フィラーは、塊状を呈している。ここで、「塊状」には、球状、略球状(楕円球状、長円球状(一対の対向する半球を円柱で連結した形状)等)の他、表面に凹凸のある不定形状が含まれる。
第一異方性フィラーは、導電膜(つまり電極部)の膜展開方向に配向している。すなわち、第一異方性フィラーは、長手方向が膜展開方向と略平行になるように、エラストマー中に配置されている。このため、エラストマー中において、第一異方性フィラー同士は、互いに重なり合っている。したがって、第一異方性フィラー同士の接触面積は大きい。よって、電極部は、高い導電性を確保することができる。
また、(A)の場合、エラストマー中に、第一異方性フィラーのみならず、第一塊状フィラーが充填されている。第一塊状フィラーは、第一異方性フィラー間の隙間に入り込みやすい。このため、電極部が伸張する場合であっても、導通経路を確保することができる。したがって、電極部が伸張する場合であっても、電気抵抗が増加するのを抑制することができる。また、エラストマーに第一塊状フィラーを充填することにより、電極部の弾性率を小さくすることができる。このため、電極部の柔軟性を向上させることができる。
以下、(A)の場合の作用について、模式図を用いて説明する。図1に、(A)の場合の電極部の伸張前状態のフィラーの充填状態を示す。図2に、(A)の場合の電極部の伸張後状態のフィラーの充填状態を示す。なお、図1、図2は、フィラーの作用を説明するための模式図であり、第一異方性フィラーと第一塊状フィラーとの配合比、形状、数等を含めて、本発明の帯電粒子搬送部材の電極部を何ら限定するものではない。
図1に示すように、電極部100において、第一異方性フィラー102および第一塊状フィラー103は、エラストマー101中に分散している。第一異方性フィラー102は、フレーク状を呈している。第一異方性フィラー102は、電極部100の膜展開方向に配向している。第一塊状フィラー103は、球状を呈している。第一塊状フィラー103は、第一異方性フィラー102間の隙間に介在している。伸張前状態においては、任意の第一異方性フィラー102および第一塊状フィラー103が連なることにより、電極部100に導電経路が形成されている。
図2に示すように、伸張後状態においては(図2の点線は、図1の伸張前状態を示している。)、伸張前状態に対して、第一異方性フィラー102同士の相対的な位置関係が変化する。伸張方向(膜展開方向)に隣り合う第一異方性フィラー102同士は、互いに離間する。一方、膜厚方向に隣り合う第一異方性フィラー102同士は、互いに近接する。しかしながら、隙間には、第一塊状フィラー103が入り込んでいる。このため、伸張後状態においても、任意の第一異方性フィラー102および第一塊状フィラー103が連なることにより、電極部100に導通経路が形成されている。
このように、伸張前状態においても伸張後状態においても、任意の第一異方性フィラー102および第一塊状フィラー103が連なることにより、電極部100に導通経路を確保することができる。このため、電極部100が伸張する場合であっても、電気抵抗が増加するのを抑制することができる。
以上説明したように、(A)の場合、互いに形状の異なる、第一異方性フィラーと第一塊状フィラーとを併用することにより、伸張時においても導電性が高い電極部を作製することができる。また、柔軟な電極部を作製することができる。このため、上記絶縁部が弾性変形することとも相俟って、帯電粒子に与えるストレスを小さくすることができる。また、絶縁部に電極部を形成する際、絶縁部の方が導電膜よりも線膨張係数が高い場合であっても、絶縁部の熱変形に導電膜が追従することができる。このため、形成後の電極部に「割れ」や「しわ」などが形成されにくい。したがって、平滑な電極部を形成しやすい。
[(B)について]
本発明の帯電粒子搬送部材が(B)を満たす場合について説明する。まず、条件(b1)について説明する。図3に、(B)の場合の条件(b1)を説明するための電極部の断面写真の模式図を示す。図3は、条件(b1)の基準個数の算出手順を説明するための模式図である。図3は、フィラーの大きさ、形状、数、配置、および電極部の厚さ等を含めて、本発明の帯電粒子搬送部材の電極部(つまり導電膜)を何ら限定するものではない。
断面写真110は、電極部の膜厚方向断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により撮影したものである。多数のフィラー112は、エラストマー111中に分散している。フィラー112は、電極部の膜展開方向に配向している。隣接するフィラー112同士は、互いに接触している。複数のフィラー112が連なることにより、エラストマー111中に、導電経路が形成されている。
条件(b1)の充足性を判断する場合は、まず、断面写真110の中央部分に、上下方向(電極部の膜厚方向)に延びる三本の直線α、β、γを描く。三本の直線α、β、γの左右方向の間隔は、各々3μmである。また、三本の直線α、β、γの長さは、Lμmである。次に、三本の直線α、β、γの各々について、直線α、β、γと交わり、かつ断面写真110における最長部の長さが2μm以上のフィラー112の個数を数える。ここでは、当該フィラー112の個数を、直線αについてはx個、直線βについてはy個、直線γについてはz個とする。続いて、各個数を、直線の長さLμmで除することにより、各直線1μm当たりの基準個数を算出する。ここでは、各直線における基準個数は、x/L(個/μm)、y/L(個/μm)、z/L(個/μm)となる。最後に、三つの基準個数の平均値[(x+y+z)/(3L)]を、算出する。そして、得られた平均値が0.8(個/μm)以上であるか否かを、判断する。このようにして、条件(b1)の充足性を判断する。
条件(b1)において、基準個数の平均値が0.8(個/μm)以上であるということは、導電経路の数が多いことを示す。つまり、電極部は導電性が高いといえる。また、基準個数の平均値が大きくなる程、伸張されても導電経路を確保しやすい、つまり伸張時においても導電性が高い、と考えられる。このように、条件(b1)は、導電性の指標となる。
次に、条件(b2)について説明する。図4に、(B)の場合の条件(b2)を説明するための電極部の断面写真の模式図を示す。図5に、図4の単位領域の一つを拡大した模式図を示す。なお、説明の便宜上、図4においては、エラストマーおよびフィラーを省略して示す。また、図4、図5は、条件(b2)の単位領域および測定領域を説明するための模式図である。図4、図5は、フィラーの大きさ、形状、数、配置、および電極部の厚さ等を含めて、本発明の電極部を何ら限定するものではない。
条件(b2)の充足性を判断する場合は、まず、図4に示すように、電極部の膜厚方向断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により撮影した断面写真100において、20μm四方の正方形の測定領域Mを設ける。測定領域Mは、10個×10個(=100個)の単位領域Eにより、区画されている。単位領域Eは2μm四方の正方形である。図5に示すように、単位領域Eにおいては、エラストマー111とフィラー112とが観察される。次に、単位領域Eごとに、エラストマー111が占める面積を測定する。それから、図4にハッチングで示すように、エラストマー111の面積割合が60%以上である単位領域Eの個数を数える。そして、当該個数が、20個以上であるか否かを判断する。このようにして、条件(b2)の充足性を判断する。
ここで、単位領域の配置の仕方は、特に限定されない。しかし、フィラーの充填状態を、膜厚方向および膜展開方向について均等に検出するという観点から、単位領域を、膜厚方向および膜展開方向に同数(10個×10個)配置して、測定領域を20μm四方の正方形とすることが望ましい(図4参照)。しかし、電極部の厚さが20μm未満の場合等、10個の単位領域を膜厚方向に揃えて配置できない場合も考えられる。この場合には、膜厚方向に配置できない残りの単位領域を、膜展開方向に加えて配置すればよい。
条件(b2)において、エラストマーの面積割合が60%以上の単位領域の個数が20個以上あるということは、エラストマー成分が多い、あるいはエラストマー成分が連続して存在する領域が多いことを示す。つまり、電極部は柔軟であるといえる。このように、条件(b2)は、柔軟性の指標となる。
以上まとめると、上記条件(b1)、(b2)を共に充足する電極部には、所望の導電性を得るための導電経路が、効率的に形成されているといえる。すなわち、より少量のフィラーで、高い導電性が確保されているといえる。このように、上記条件(b1)、(b2)を共に充足するフィラーの充填状態を実現することにより、導電経路を制御し、フィラーを偏在させることができる。このため、柔軟で、伸張時においても導電性が高い電極部を得ることができる。
このように、(B)の場合、条件(b1)、(b2)を共に充足することにより、伸張時においても導電性が高い電極部を作製することができる。また、柔軟な電極部を作製することができる。このため、上記絶縁部が弾性変形することとも相俟って、帯電粒子に与えるストレスを小さくすることができる。また、絶縁部に電極部を形成する際、絶縁部の方が導電膜よりも線膨張係数が高い場合であっても、絶縁部の熱変形に導電膜が追従することができる。このため、形成後の電極部に「割れ」や「しわ」などが形成されにくい。したがって、平滑な電極部を形成しやすい。
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、前記エラストマーは、水素結合可能な官能基を有し、ガラス転移温度(Tg)が10℃以下である構成とする方がよい(請求項2に対応)。本明細書では、Tgとして、JIS K7121(1987)に準じて測定した中間点ガラス転移温度を採用する。
水素結合可能な官能基は、フィラーとの親和性が高い。このため、エラストマーとフィラーとの界面剥離が起こりにくい。したがって、伸長された場合でも、導電膜つまり電極部にクラックが発生しにくい。また、電気抵抗が増加しにくい。
水素結合可能な官能基としては、例えば、エステル基、ウレタン結合、ウレア結合、ハロゲン基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、スルホン酸基、エーテル結合等が挙げられる。なかでも、エステル基を有するものが好ましい。
また、エラストマーのTgは、10℃以下である。Tgが10℃以下のものは、常温でゴム弾性を有し、柔軟性が高い。また、Tgが低くなると、結晶性が低下するため、エラストマーの破断伸びが大きくなる。つまり、より伸張しやすくなる。このような観点から、エラストマーのTgは、−10℃以下、−20℃以下、さらには−35℃以下であることが好ましい。
(3)好ましくは、上記(2)の構成において、前記エラストマーは、アクリルゴム、ウレタンゴム、ヒドリンゴムから選ばれる一種類以上である構成とする方がよい(請求項3に対応)。
エラストマーとしては、一種類を単独で用いてもよく、二種類以上を混合して用いてもよい。なかでも、アクリルゴムは、結晶性が低く分子間力が弱い。このため、他のゴムと比較してTgが低い。したがって、柔軟で伸びがよく、電極部に好適である。
アクリルゴムとしては、炭素数4以上のアルキル基を有するアクリル酸エステルモノマー単位を50mol%以上含むものが望ましい。アルキル基が大きい(炭素数が多い)と、結晶性が低下するため、アクリルゴムの弾性率がより小さくなる。
(4)好ましくは、上記(1)ないし(3)のいずれかの構成において、前記(A)の前記第一異方性フィラーの平均粒子径は2.5μm以上15μm以下であり、アスペクト比は5以上35以下である構成とする方がよい(請求項4に対応)。
第一異方性フィラーの平均粒子径を2.5μm以上としたのは、2.5μm未満の場合、第一異方性フィラー同士が重なり合う面積が小さくなるからである。すなわち、伸張時に電気抵抗が増加しやすいからである。一方、第一異方性フィラーの平均粒子径を15μm以下としたのは、15μm超過の場合、導電膜つまり電極部の柔軟性が低下するからである。
第一異方性フィラーのアスペクト比を5以上としたのは、5未満の場合、第一異方性フィラー同士が重なり合う面積が小さくなるからである。すなわち、伸張時に電気抵抗が増加しやすいからである。一方、第一異方性フィラーのアスペクト比を35以下としたのは、35超過の場合、導電膜つまり電極部の柔軟性が低下するからである。ここで、アスペクト比は、フィラーの最短部の長さに対する最長部の長さの比(最長部の長さ/最短部の長さ)である。
(5)好ましくは、上記(1)ないし(4)のいずれかの構成において、前記(A)の前記第一塊状フィラーの平均粒子径は0.1μm以上8.0μm以下であり、アスペクト比は1以上5以下である構成とする方がよい(請求項5に対応)。
第一塊状フィラーの平均粒子径を0.1μm以上としたのは、0.1μm未満の場合、比表面積が大きくなり、導電膜に対する補強性が大きくなるからである。すなわち、導電膜つまり電極部の柔軟性が低下するからである。一方、第一塊状フィラーの平均粒子径を8.0μm以下としたのは、8.0μm超過の場合、第一塊状フィラーが第一異方性フィラー間の隙間に入り込みにくくなり、導通経路の形成が難しくなるからである。すなわち、伸張時に電気抵抗が増加しやすいからである。
なお、第一塊状フィラーの平均粒子径が小さい程、より少量で所望の導電性を確保することができる。よって、第一塊状フィラーの充填量が少ない程、導電膜の柔軟性が向上する。
第一塊状フィラーのアスペクト比を5以下としたのは、5超過の場合、第一塊状フィラーが第一異方性フィラー間の隙間に入り込みにくくなり、導通経路の形成が難しくなるからである。すなわち、伸張時に電気抵抗が増加しやすいからである。加えて、導電膜の柔軟性も低下するからである。
(6)好ましくは、上記(1)ないし(5)のいずれかの構成において、前記(A)の前記フィラーの充填量は、前記エラストマーの100質量部に対して150質量部以上1500質量部以下である構成とする方がよい(請求項6に対応)。
フィラーの充填量を150質量部以上としたのは、150質量部未満の場合、エラストマー中で導電経路を充分に形成することができず、導電性が低下してしまうである。一方、フィラーの充填量を1500質量部以上としたのは、1500質量部超過の場合、エラストマー体積中のフィラー割合が大きくなることによる、弾性率の増加や物性の低下が起こるからである。400質量部以上1000質量部以下とするとより好適である。
(7)好ましくは、上記(1)ないし(6)のいずれかの構成において、前記(A)の前記第一異方性フィラーと前記第一塊状フィラーとの配合比は、質量比で(該第一塊状フィラー/該第一異方性フィラー)=1/30〜5/1である構成とする方がよい(請求項7に対応)。
配合比を1/30以上としたのは、1/30未満の場合、第一異方性フィラーの間に入る第一塊状フィラーの数が少なくなるために、伸張した際の電気抵抗が増加してしまうからである。一方、配合比を5/1以下としたのは、5/1超過の場合、第一異方性フィラーの割合が少ないため、導電性に劣るからである。
好ましくは、配合比を1/1、または第一塊状フィラーよりも第一異方性フィラーの方がやや多くなるように配合するとよい。
(8)好ましくは、上記(1)ないし(3)のいずれかの構成において、前記(B)の前記フィラーは、厚さが1μm以下のフレーク状または針状であって、膜展開方向に配向する第二異方性フィラーを有する構成とする方がよい(請求項8に対応)。
第二異方性フィラーは、導電膜(つまり電極部)の膜展開方向に配向している。つまり、第二異方性フィラーは、長手方向が膜展開方向と略平行になるように、エラストマー中に配置されている。このため、エラストマー中において、第二異方性フィラー同士は、互いに重なり合っている。したがって、第二異方性フィラー同士の接触面積は大きい。よって、電極部は、高い導電性を確保することができる。
また、第二異方性フィラーは、フレーク状(薄片状)または針状である。このため、第二異方性フィラー同士の接触面積を大きくすることができる。したがって、この点においても、電極部は、高い導電性を確保することができる。
フレーク状の第二異方性フィラーの厚さを1μm以下としたのは、以下の理由による。すなわち、フレーク状の第二異方性フィラーを用いて、エラストマー中に導電経路を形成するためには、エラストマーに所定の数以上の第二異方性フィラーを充填することが必要である。
ここで、フレーク状の第二異方性フィラーの厚さを薄くすると、同じ数だけ第二異方性フィラーを使用しても、充填される第二異方性フィラーの総質量は減少する。また、エラストマー中に占める第二異方性フィラーの体積割合も低下する。したがって、その分、エラストマーの体積割合が増加して、導電膜つまり電極部の柔軟性を向上させることができる。このような理由から、フレーク状の第二異方性フィラーの厚さを、1μm以下とした。より好適には、0.5μm以下である。
(9)好ましくは、上記(8)の構成において、前記(B)の前記フィラーは、さらに、前記第二異方性フィラーよりも異方性が小さく、平均粒子径が0.1μm以上1.5μm以下の第二塊状フィラーを含む構成とする方がよい(請求項9に対応)。ここで、「塊状」には、球状、略球状(楕円球状、長円球状(一対の対向する半球を円柱で連結した形状)等)の他、表面に凹凸のある不定形状が含まれる。
第二塊状フィラーは、第二異方性フィラー間の隙間に入り込みやすい。このため、導電膜つまり電極部が伸張する場合であっても、導通経路を確保することができる。したがって、電極部が伸張する場合であっても、電気抵抗が増加するのを抑制することができる。
また、フィラーとして第二異方性フィラーだけを使用する場合、電極部が伸張する際、互いに接触している第二異方性フィラー同士が、互いの接触面から剪断力を受ける。このため、電極部の柔軟性が低下するおそれがある。この点、第二異方性フィラーと第二塊状フィラーとを併用した場合には、第二塊状フィラーが第二異方性フィラー間に入り込む。そして、第二異方性フィラーを偏在させる。これにより、第二異方性フィラー同士が受ける剪断力を小さくすることができる。したがって、電極部の柔軟性が低下しにくい。
第二塊状フィラーの平均粒子径を0.1μm以上としたのは、0.1μm未満の場合、比表面積が大きくなり、電極部に対する補強性が大きくなるからである。すなわち、電極部の柔軟性が低下するからである。なお、0.2μm以上がより好適である。一方、第二塊状フィラーの平均粒子径を1.5μm以下としたのは、1.5μm超過の場合、第二塊状フィラーが第二異方性フィラー間の隙間に入り込みにくくなり、導通経路の形成が難しくなるからである。すなわち、伸張時に電気抵抗が増加しやすいからである。
(10)好ましくは、上記(8)または(9)の構成において、前記(B)の前記フィラーの充填量は、前記導電膜の体積を100vol%とした場合の45vol%未満である構成とする方がよい(請求項10に対応)。
充填量を45vol%未満としたのは、45vol%以上の場合、エラストマー中に占めるフィラー体積増加による弾性率の増加や、ポリマー体積減少による物性の低下が起こるためである。
(11)好ましくは、上記(9)または(10)の構成において、前記(B)の前記第二異方性フィラーと前記第二塊状フィラーとの配合比は、質量比で(該第二塊状フィラー/該第二異方性フィラー)=1/50〜1/2である構成とする方がよい(請求項11に対応)。
配合比を1/50以上としたのは、1/50未満の場合、第二異方性フィラーの間に入る第二塊状フィラーの数が少なくなるために、伸張した際の導電性の変化が大きくなるからである。一方、配合比を1/2以下としたのは、1/2超過の場合、エラストマー中に占める第二塊状フィラーの体積が大きくなり、弾性率の増加を招くからである。
(12)好ましくは、上記(1)ないし(11)のいずれかの構成において、前記絶縁部は、円筒状または円柱状であって、絶縁層を有し、前記電極部は、該絶縁層の外周面に所定のピッチで周方向に並設される複数の電極を有し、隣り合う該電極間に異相電圧を印加することにより電界を発生させ、帯電したトナーを該電界により浮動させ、潜像担持体の潜像に該トナーを付着させることにより該潜像を現像する構成とする方がよい(請求項12に対応)。
本構成は、本発明の帯電粒子搬送部材を、複写機、プリンタ、ファクシミリなどの電子写真機器の現像ロールとして用いるものである。電極部は、複数の電極を有している。隣り合う電極間に異相電圧を印加すると、電界が発生する。当該電界を利用して、帯電粒子であるトナーを搬送する。
(13)好ましくは、上記(1)ないし(11)のいずれかの構成において、前記絶縁部は、円筒状または円柱状であって、絶縁層と、該絶縁層の径方向内側に配置される導電層と、を有し、前記電極部は、該絶縁層の外周面に所定のピッチで周方向に並設される複数の電極を有し、該電極と該導電層との間に異相電圧を印加することにより電界を発生させ、帯電したトナーを該電界により浮動させ、潜像担持体の潜像に該トナーを付着させることにより該潜像を現像する構成とする方がよい(請求項13に対応)。
本構成は、本発明の帯電粒子搬送部材を現像ロールとして用いるものである。電極部の電極と導電層との間に異相電圧を印加すると、電界が発生する。当該電界を利用して、帯電粒子であるトナーを搬送する。
本発明によると、帯電粒子に与えるストレスが小さく、平滑な電極部を形成しやすい帯電粒子搬送部材を提供することができる。
(A)の場合の電極部の伸張前状態のフィラーの充填状態を示す模式図である。 (A)の場合の電極部の伸張後状態のフィラーの充填状態を示す模式図である。 (B)の場合の条件(b1)を説明するための電極部の断面写真の模式図である。 (B)の場合の条件(b2)を説明するための電極部の断面写真の模式図である。 図4の単位領域の一つを拡大した模式図である。 第一実施形態の現像ロールが配置された電子写真機器の模式図である。 同現像ロールの斜視図である。 図7のVIII−VIII方向断面図である。 図7のIX−IX方向展開図である。 図9のX−X方向断面図である。 (a)はX相電極群に印加される交流電圧の模式図である。(b)はY相電極群に印加される交流電圧の模式図である。 第二実施形態の現像ロールの径方向断面図である。 第三実施形態の現像ロールの斜視図である。 図13のXIV−XIV方向展開図である。 図14のXV−XV方向断面図である。 実施例1の現像ロールの外周面の写真である。 比較例1の現像ロールの外周面の写真である。 ヘタリ導通性の測定装置の透過斜視図である。 図18のXIX−XIX方向断面図である。
以下、本発明の帯電粒子搬送部材を電子写真機器の現像ロールとして具現化した実施の形態について説明する。なお、本発明の帯電粒子搬送部材の実施の形態は、以下の形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
《第一実施形態》
<現像ロールの配置および構成>
まず、本実施形態の現像ロールの配置について説明する。図6に、本実施形態の現像ロールが配置された電子写真機器の模式図を示す。図6に示すように、電子写真機器1は、供給ロール80と、現像ロール2と、感光ドラム81と、ドクターブレード82と、トナーケース83とを備えている。現像ロール2は、本発明の帯電粒子搬送部材に含まれる。感光ドラム81は、本発明の潜像担持体に含まれる。
トナーケース83の内部には、供給ロール80と、現像ロール2とが並設されている。供給ロール80、現像ロール2は、各々、自身の軸周りに回転する。供給ロール80と現像ロール2とは、同じ方向に回転する。また、トナーケース83の内部には、トナーTが収容されている。ドクターブレード82は、現像ロール2の外周面に摺接している。感光ドラム81は、トナーケース83の外部に配置されている。感光ドラム81は、現像ロール2に並設されている。感光ドラム81は、自身の軸周りに回転する。感光ドラム81は現像ロール2に対して、逆方向に回転する。
次に、本実施形態の現像ロール2の構成について説明する。図7に、本実施形態の現像ロールの斜視図を示す。図8に、図7のVIII−VIII方向断面図を示す。図9に、図7のIX−IX方向展開図を示す。なお、図7においては、電極部5にハッチングを施して示す。図7〜図9に示すように、現像ロール2は、軸部3と絶縁部4と電極部5と被膜6とを備えている。なお、現像ロール2を構成する各部の材料、現像ロール2の製造方法等については後述する。
軸部3は、丸棒状を呈している。絶縁部4は、弾性層40と絶縁層41とを備えている。弾性層40は、円筒状を呈している。弾性層40は、軸部3の外周面に積層されている。絶縁層41は、円筒状を呈している。絶縁層41は、弾性層40の外周面に積層されている。電極部5は、絶縁層41の外周面に積層されている。電極部5は、X相電極群50XとY相電極群50Yとを備えている。X相電極群50Xは、多数の帯状のX相電極500Xを備えている。Y相電極群50Yは、多数の帯状のY相電極500Yを備えている。X相電極500XおよびY相電極500Yは、軸方向に延在している。X相電極500XおよびY相電極500Yは、任意のX相電極500Xと任意のY相電極500Yとが周方向に隣り合うように、周方向に並設されている。図8に示すように、被膜6は、電極部5および絶縁部4を、径方向外側から覆っている。
次に、本実施形態の現像ロール2の電極部5の構成について詳しく説明する。図10に、図9のX−X方向断面図を示す。図11(a)に、X相電極群に印加される交流電圧の模式図を示す。図11(b)に、Y相電極群に印加される交流電圧の模式図を示す。
図10に示すように、多数のX相電極500Xは、電源84Xに電気的に接続されている。多数のY相電極500Yは、電源84Yに電気的に接続されている。図11(a)に示すように、多数のX相電極500Xには、電源84Xから、同相(X相)の交流電圧が印加されている。図11(b)に示すように、多数のY相電極500Yには、電源84Yから、同相(Y相)の交流電圧が印加されている。X相の交流電圧とY相の交流電圧とは、周期Vt、最大電圧と最小電圧との電位差ΔV、平均電位Vaが互いに一致している。また、X相の交流電圧とY相の交流電圧とは、互いに逆位相である。X相の交流電圧とY相の交流電圧とにより、周方向に隣り合うX相電極500XとY相電極500Yとの間には、電界が経時的に変化する、交番電界が形成されている。
<現像ロールの動き>
次に、トナーT搬送時の現像ロール2の動きについて説明する。図6に示すように、供給ロール80と現像ロール2との間には、電位差が確保されている。このため、現像ロール2には、供給ロール80を介して、トナーTが運ばれる。トナーTは、供給ロール80と現像ロール2との間を通過する際や、現像ロール2とドクターブレード82との間を通過する際の摩擦により、帯電する。図10に示すように、周方向に隣り合うX相電極500XとY相電極500Yとの間には、交番電界が形成されている。このため、帯電したトナーTは、電界の方向に応じて、X相電極500XからY相電極500Yに、あるいはY相電極500YからX相電極500Xに、繰り返し移動する。すなわち、トナーTは、被膜6の外周面から、ホッピングを繰り返している。トナーTのホッピングにより、被膜6つまり現像ロールの外周面には、フレアが形成されている。現像ロール2の回転に応じて、トナーTは、周方向に移動する。具体的には、図6に示すように、供給ロール80側から感光ドラム81側まで移動する。現像ロール2と感光ドラム81の潜像との間には、電位差が確保されている。当該電位差により、トナーTは感光ドラム81の潜像に付着する。そして、感光ドラム81に所定のトナー像を形成する。このようにして、現像ロール2はトナーTを搬送する。
<現像ロール2を構成する各部の材料>
次に、各部の材料について説明する。
[軸部3]
軸部3の材料は特に限定しない。導電性を有していればよい。例えば、鉄、ステンレス、アルミニウムなどの金属製としてもよい。また、軸部3の外周面だけが導電性を有していてもよい。例えば、樹脂製の軸体の外周面に金属をめっきすることにより、導電性を確保してもよい。また、軸部3は、円柱状(中実状)でも円筒状(中空状)でもよい。
[絶縁部4]
(弾性層40)
弾性層40の層数は特に限定しない。好ましくは、弾性層40は一層である方がよい。こうすると、絶縁部4、延いては現像ロール2を小径化することができる。また、弾性層40は、ソリッド層、発泡層いずれでもよい。
弾性層40の材料は特に限定しない。例えば、ゴム弾性材料、ゴム弾性材料と樹脂材料との混合物などが挙げられる。ゴム弾性材料としては、例えば、シリコーンゴム、EPDM、NBR、ヒドリンゴム、BR、IR、ウレタンゴムなどが挙げられる。弾性層40は、これらのゴム弾性材料を一種類、または二種類以上含んでいてもよい。好ましくは、シリコーンゴムを用いる方がよい。こうすると、弾性層40の耐ヘタリ性が向上する。
ゴム弾性材料と混合する樹脂材料としては、例えば、ウレタン樹脂、ウレタンシリコーン樹脂、ウレタンフッ素樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、アクリルフッ素樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、PVDF、ポリイミド樹脂などが挙げられる。混合物は、これらの樹脂材料を一種類、または二種類以上含んでいてもよい。
弾性層40は、必要に応じて、導電剤(電子導電剤、イオン導電剤)、架橋剤、架橋促進剤、軟化剤(オイル)、発泡剤等の各種の添加剤を、一種類または二種類以上含んでいてもよい。
弾性層40の径方向厚さ(弾性層が複数層ある場合は、全層の径方向厚さ)は、特に限定しない。好ましくは、0.2mm以上とする方がよい。こうすると、充分な柔軟性を確保することができる。同様の理由から、より好ましくは、0.5mm以上とする方がよい。
また、弾性層40の径方向厚さは、好ましくは、6mm以下とする方がよい。こうすると、ロール振れ精度が低下するのを抑制することができる。同様の理由から、より好ましくは、4mm以下とする方がよい。
(絶縁層41)
絶縁層41の層数は特に限定しない。好ましくは、絶縁層41は一層である方がよい。こうすると、絶縁部4、延いては現像ロール2を小径化することができる。
絶縁層41の材料は特に限定しない。例えば、ゴム弾性材料、樹脂材料、ゴム弾性材料と樹脂材料との混合物などが挙げられる。ゴム弾性材料および樹脂材料としては、上記弾性層40に用いた、ゴム弾性材料および樹脂材料を用いることができる。
絶縁層41は、必要に応じて、架橋剤、カップリング剤、レベリング剤等の各種の添加剤を一種類または二種類以上含んでいてもよい。
絶縁層41の径方向肉厚は特に限定しない。絶縁層41の径方向肉厚は、1mm以下とする方がよい。こうすると、電界発生を妨げにくい。同様の理由から、より好ましくは、0.5mm以下とする方がよい。
[電極部5]
(X相電極群50X、Y相電極群50Yのパターン形状)
X相電極群50X、Y相電極群50Yのパターン形状の形成方法は、特に限定しない。例えば、レーザー加工や印刷法により形成してもよい。印刷法としては、例えば、インクジェット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、パッド印刷、リソグラフィー等が挙げられる。
なかでも、スクリーン印刷法は特に好適である。その理由は、高粘度の導電塗料(導電膜の原料)が使用でき、膜厚の調整が容易だからである。また、フィラーが配向しやすいからである。
導電塗料を絶縁部4に塗布した後、加熱により導電塗料を乾燥させてもよい。この場合、加熱時に、エラストマー分の架橋反応を進行させてもよい。
また、導電塗料を塗布する際、配向方向に流動させてもよい。また、成膜後の導電膜に対して、ホットプレス、延伸等の加工を施したりしてもよい。こうすると、導電膜中のフィラーの配向性を向上させることができる。
また、X相電極群50X、Y相電極群50Yのパターン形状は、凹凸形成工程と絶縁塗料塗布工程と導電塗料塗布工程と研磨工程とからなる方法により、形成することができる。凹凸形成工程においては、弾性層40の外周面に凹凸を形成する。なお、凹凸は、レーザー加工により形成することができる。また、凹凸は、弾性層40を成形する金型の型面に凹凸を形成し、成形時に当該凹凸を弾性層40に転写することにより、形成することができる。また、凹凸は、凹凸未形成の現像ロールと、外周面に凹凸を有する凹凸ロールとを、圧接させながら、共に回転させることにより、形成することができる。絶縁塗料塗布工程においては、凹凸が形成された弾性層40の外周面に、絶縁塗料を塗布する。そして、弾性層40の外周面に、絶縁層41を形成する。絶縁層41の外周面には、弾性層40の凹凸形状が現れる。導電塗料塗布工程においては、凹凸を有する絶縁層41の外周面に、導電塗料を塗布する。そして、絶縁層41の外周面に、導電層を形成する。研磨工程においては、導電層の表面を研磨する。そして、絶縁層41の外周面のうち、凸部分を表出させる。ここで、絶縁層41の外周面のうち、凹部分は研磨されない。このため、凹部分には、導電層が充填されたままである。当該導電層の形状がX相電極群50X、Y相電極群50Yのパターン形状になる。以上のような方法により、X相電極群50X、Y相電極群50Yのパターン形状を形成してもよい。
X相電極500X、Y相電極500Yのライン幅(周方向幅)、および隣り合うX相電極500XとY相電極500Yとの間のスペース幅(周方向幅)は特に限定しない。好ましくはトナー平均粒径の2〜30倍、より好ましくはトナー平均粒径の3〜20倍の範囲内にある方がよい。また、X相電極群50X、Y相電極群50Yに印加する交流電圧のパターンも特に限定しない。矩形波でも正弦波でもよい。
(導電膜の特性)
導電膜の弾性率は、好ましくは、100MPa以下とする方がよい。こうすると、トナーTに与えるストレスを小さくすることができる。また、絶縁部4に電極部5を形成する際、絶縁部4の熱変形に導電膜が追従することができる。このため、形成後の電極部5に「割れ」や「しわ」などが形成されにくい。したがって、平滑な電極部5を形成しやすい。同様の理由から、より好ましくは、30MPa以下とする方がよい。
導電膜の延伸率は、好ましくは、10%以上とする方がよい。こうすると、トナーTに与えるストレスを小さくすることができる。また、絶縁部4に電極部5を形成する際、絶縁部4の熱変形に導電膜が追従することができる。このため、形成後の電極部5に「割れ」や「しわ」などが形成されにくい。したがって、平滑な電極部5を形成しやすい。同様の理由から、より好ましくは、30%以上とする方がよい。
導電膜の体積抵抗率は、好ましくは、10−3Ω・cm以下とする方がよい。こうすると、隣り合うX相電極500X、Y相電極500Y間に電界が発生しやすい。同様の理由から、より好ましくは、5.90×10−4Ω・cm以下とする方がよい。
導電膜の20%延伸時の電気抵抗は、好ましくは、10−1Ω・cm以下とする方がよい。こうすると、伸張時においても、電極部5の導電性を確保することができる。同様の理由から、より好ましくは、2.90×10−2Ω・cm以下とする方がよい。
電極部5の径方向肉厚は特に限定しない。ただし、電極部5の径方向肉厚がフィラーの厚みに対して充分に大きくないと、径方向の導電経路が形成しにくくなり、電気抵抗の低下を招くおそれがある。このような理由から、電極部5の径方向肉厚は、0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは5μm以上とする方がよい。また、電極部5の径方向肉厚は、製造コストを抑えるために、50μm以下、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは10μm以下とする方がよい。
なお、導電膜は、必要に応じて、架橋剤、カップリング剤、レベリング剤等の各種の添加剤を一種類または二種類以上含んでいてもよい。
(エラストマー)
エラストマーの種類は特に限定しない。アクリルゴム、ウレタンゴム、ヒドリンゴム、NBR、天然ゴム、IR等を用いてもよい。また、エラストマーは、可塑剤、加工助剤、架橋剤、架橋促進剤、架橋助剤、老化防止剤、軟化剤、着色剤等の添加剤を含んでいてもよい。例えば、可塑剤を添加すると、エラストマーの加工性が向上すると共に、柔軟性をより向上させることができる。可塑剤としては、公知のフタル酸ジエステル等の有機酸誘導体、リン酸トリクレジル等のリン酸誘導体、アジピン酸ジエステル、塩素化パラフィン、ポリエーテルエステル等を使用すればよい。
また、架橋反応に寄与する架橋剤、架橋促進剤、架橋助剤等については、エラストマーの種類等に応じて、適宜決定すればよい。例えば、架橋剤に硫黄が含まれていると、フィラーが硫化されるおそれがある。これにより、フィラーの表面の電気抵抗が増加して、導電性が低下するおそれがある。したがって、架橋剤等としては、硫黄を含まない化合物を用いることが望ましい。
(フィラー)
フィラーの種類は、特に限定しない。導電性がカーボンブラックより高く、腐食しにくいという観点から、例えば、銀、金、銅、ニッケル、ロジウム、パラジウム、クロム、チタン、白金、鉄、およびこれらの合金等から適宜選択すればよい。なかでも銀は、電気抵抗が低いため好適である。
また、金属以外の粒子の表面を金属で被覆したものを使用してもよい。この場合、金属だけで構成する場合と比較して、フィラーの比重を小さくすることができる。よって、塗料化した場合に、フィラーの沈降が抑制されて、分散性が向上する。また、粒子を加工することにより、様々な形状のフィラーを容易に製造することができる。また、フィラーの製造コストを低減することができる。被覆する金属としては、先に列挙したフィラーとして好適な金属を、用いることができる。また、金属以外の粒子としては、グラファイトやカーボンブラック等の炭素材料、炭酸カルシウム、二酸化チタン、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム等の金属酸化物、シリカ等の無機物、アクリルやウレタン等の樹脂等を用いればよい。
なお、フィラーの平均粒子径は、例えば、日機装(株)製「マイクロトラック粒度分布測定装置 Microtrac MT3000」により測定することができる。
[被膜6]
被膜6の層数は特に限定しない。また、被膜6の材料は特に限定しない。好ましくは、トナーTを摩擦帯電しやすい材料製とする方がよい。こうすると、トナーTを安定的に帯電させることができる。また、被膜6は、ゴム弾性を有している方がよい。こうすると、トナーストレスを小さくすることができる。被膜6の材料としては、例えば、ゴム弾性材料、ゴム弾性材料と樹脂材料との混合物などが挙げられる。ゴム弾性材料および樹脂材料としては、弾性層40に用いた、ゴム弾性材料および樹脂材料を用いることができる。また、樹脂材料としては、紫外線硬化型樹脂など、光硬化型樹脂を用いることができる。
被膜6は、必要に応じて、架橋剤、カップリング剤、レベリング剤等の各種の添加剤を一種類または二種類以上含んでいてもよい。被膜6の径方向厚さ(被膜6が複数層ある場合は、全層の径方向厚さ)は、特に限定しない。好ましくは、0.01mm以上とする方がよい。こうすると、耐摩耗性を確保することができる。同様の理由から、より好ましくは0.005mm以上、さらに好ましくは0.01mm以上とする方がよい。
また、被膜6の径方向厚さは、好ましくは、0.05mm以下とする方がよい。こうすると、電界の発生を阻害するおそれが小さくなる。同様の理由から、より好ましくは0.03mm以下、さらに好ましくは0.02mm以下とする方がよい。
<作用効果>
次に、本実施形態の現像ロール2の作用効果について説明する。本実施形態の現像ロール2の電極部5を形成する導電膜は、金属製のフィラーを備えている。導電膜は、前記(A)または(B)の条件を満たしている。導電膜が(A)の条件を満たす場合、フィラーには、第一異方性フィラーと、第一塊状フィラーと、が含まれている。互いに形状の異なる、第一異方性フィラーと第一塊状フィラーとを併用することにより、伸張時においても導電性が高い電極部5を作製することができる。また、柔軟な電極部5を作製することができる。このため、絶縁部4が弾性変形することとも相俟って、トナーTに与えるストレスを小さくすることができる。また、絶縁部4に電極部5を形成する際、絶縁部4の方が導電膜よりも線膨張係数が高い場合であっても、絶縁部4の熱変形に導電膜が追従することができる。このため、形成後の電極部5に「割れ」や「しわ」などが形成されにくい。したがって、平滑な電極部5を形成しやすい。
導電膜が(B)の条件を満たす場合、つまり(b1)および(b2)を共に充足する場合、電極部5には、所望の導電性を得るための導電経路が、効率的に形成されているといえる。すなわち、より少量のフィラーで、高い導電性が確保されている。このように、上記条件(b1)、(b2)を共に充足するフィラーの充填状態を実現することにより、導電経路を制御し、フィラーを偏在させることができる。このため、伸張時においても導電性が高い電極部5を作製することができる。また、柔軟な電極部5を作製することができる。このため、絶縁部4が弾性変形することとも相俟って、トナーTに与えるストレスを小さくすることができる。また、絶縁部4に電極部5を形成する際、絶縁部4の方が導電膜よりも線膨張係数が高い場合であっても、絶縁部4の熱変形に導電膜が追従することができる。このため、形成後の電極部5に「割れ」や「しわ」などが形成されにくい。したがって、平滑な電極部5を形成しやすい。
《第二実施形態》
本実施形態の現像ロールと第一実施形態の現像ロールとの相違点は、絶縁部が絶縁層単層から形成されている点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。図12に、本実施形態の現像ロールの径方向断面図を示す。なお、図8と対応する部位については同じ符号で示す。図12に示すように、絶縁部4は、単一の絶縁層41により形成されている。絶縁層41は、ゴム弾性を有している。
本実施形態の現像ロール2は、構成が共通する部分については、第一実施形態の現像ロールと同様の作用効果を有する。本実施形態の現像ロール2のように、絶縁層41がゴム弾性を有すれば、弾性層を配置しなくてよい。このため、絶縁部4、延いては現像ロール2の構成が簡単になる。
《第三実施形態》
本実施形態の現像ロールと第一実施形態の現像ロールとの相違点は、電極部が全て同相の電極を有している点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。
図13に、本実施形態の現像ロールの斜視図を示す。なお、図7と対応する部位については同じ符号で示す。図14に、図13のXIV−XIV方向展開図を示す。なお、図9と対応する部位については同じ符号で示す。図15に、図14のXV−XV方向断面図を示す。なお、図10と対応する部位については同じ符号で示す。
図13〜図15に示すように、電極部5は、X相電極群50Xを備えている。X相電極群50Xは、多数のX相電極500Xを備えている。絶縁部4の弾性層40は、導電性を有している。X相電極群50Xには、X相の交流電圧が印加されている。弾性層40には、Y相の交流電圧が印加されている。X相の交流電圧とY相の交流電圧とにより、X相電極500Xと弾性層40との間には、交番電界が形成されている。
本実施形態の現像ロール2は、構成が共通する部分については、第一実施形態の現像ロールと同様の作用効果を有する。本実施形態の現像ロール2のように、X相電極500Xと弾性層40との間で交番電界を形成してもよい。
《その他》
上記実施形態においては、本発明の帯電粒子搬送部材を現像ロール2として具現化したが、無端環状の現像ベルトとして具現化してもよい。すなわち、無端環状の絶縁部4の外周面に電極部5を形成してもよい。そして、現像ベルトの移動に伴って、トナーTを搬送してもよい。
以下、現像ロールに対して行った実験について説明する。
<現像ロールを構成する各部の材料>
まず、現像ロールの軸部、絶縁部(弾性層、絶縁層)、電極部、被膜を構成する材料について説明する。
[軸部]
軸部は、以下の二種類を用意した。
(軸部a)
軸部aは、鉄製であって、外径8mm、軸方向全長267mmの長軸円柱状を呈している。軸部aの表面には、Niめっきが施されている。
(軸部b)
軸部bは、鉄製であって、外径15mm、軸方向全長267mmの長軸円柱状を呈している。軸部bの表面には、Niめっきが施されている。
[絶縁部(弾性層、絶縁層)]
弾性層は、以下に示す弾性層形成材料製である。
(弾性層形成材料a)
弾性層形成材料aは、導電性シリコーンゴム(信越化学工業(株)製「KE−1950−20A/B」)100質量部と、導電剤(電気化学工業(株)製「電化アセチレンブラック」)20質量部とを、ニーダーで混練りすることにより、調製した。
絶縁層は、以下に示す絶縁層形成材料製である。
(絶縁層形成材料a)
絶縁層形成材料aは、アクリル樹脂(根上工業(株)製「パラクロンW−248E」)100質量部と、架橋剤(日本ポリウレタン(株)製「コロネートL」)10質量部とを、溶剤(MEK(メチルエチルケトン))に溶解することにより、調製した。
(絶縁層形成材料b)
絶縁層形成材料bは、導電性シリコーンゴム(信越化学工業(株)製「KE−1950−20A/B」)100質量部とを、ニーダーで混練りすることにより、調製した。
[電極部]
電極部つまり導電膜は、以下に示す電極形成材料製である。表1に、後述する実施例1〜13、比較例1〜3の現像ロールの導電膜を形成する、電極形成材料a〜fの配合、および特性を示す。
表1中の銀粉末P1、P2、P3としては、以下のフィラーを使用した。
・銀粉末P1:DOWAエレクトロニクス(株)製「FA−D−4」(フレーク状、平均粒子径約15μm、厚さ約0.9μm)。
・銀粉末P2:DOWAエレクトロニクス(株)製「FA−2−3」(フレーク状、平均粒子径約6μm、厚さ約0.3μm)。
・銀粉末P3:DOWAエレクトロニクス(株)製「AG2−1C」(球状、平均粒子径約0.5μm)。
(電極形成材料a)
電極形成材料aは、以下のような手順で調製した。まず、ウレタンゴムポリマー(日本ポリウレタン工業(株)製「ニッポラン(登録商標)5230」)100質量部を、溶剤のブトキシエチルアセテート400質量部に溶解させ、エラストマー溶液を調製した。次に、このエラストマー溶液に銀粉末P2、P3を添加し、三本ロールで混練りして電極形成材料aとした。ウレタンゴムポリマーのTgは、−33℃であった。
(電極形成材料b)
電極形成材料bは、以下のような手順で調製した。まず、三種類のモノマーを懸濁重合して、アクリルゴムポリマーを製造した。モノマーとしては、n−ブチルアクリレート(BA)、アリルグリシジルエーテル(AGE)を用いた。モノマーの配合割合は、BAを98質量%、AGEを2質量%とした。得られたアクリルゴムポリマーの重量平均分子量を、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定したところ、約90万であった。また、アクリルゴムポリマーのTgは、−46℃であった。
続いて、製造したアクリルゴムポリマー100質量部と、加工助剤のステアリン酸(花王(株)製「ルナック(登録商標)S30」)1質量部と、安息香酸ナトリウム(大内新興化学(株)製「バルノックAB−S」)1重量部をロール練り機にて混合し、エラストマー組成物を調製した。
それから、調製したエラストマー組成物を、溶剤のブトキシエチルアセテート400質量部に溶解させ、エラストマー溶液を調製した。最後に、このエラストマー溶液に銀粉末P2、P3を添加し、三本ロールで混練りして電極形成材料bとした。
(電極形成材料c)
電極形成材料cは、以下のような手順で調製した。まず、電極形成材料bと同様の手順で、エラストマー組成物を調製した。次に、調製したエラストマー組成物を、溶剤のブトキシエチルアセテート500質量部に溶解させ、エラストマー溶液を調製した。それから、このエラストマー溶液に銀粉末P1、P2を添加し、三本ロールで混練りして電極形成材料cとした。
(電極形成材料d)
電極形成材料dは、以下のような手順で調製した。まず、電極形成材料bと同様の手順で、エラストマー組成物を調製した。次に、調製したエラストマー組成物を、溶剤のブトキシエチルアセテート350質量部に溶解させ、エラストマー溶液を調製した。それから、このエラストマー溶液に銀粉末P2、P3を添加し、三本ロールで混練りして電極形成材料dとした。
(電極形成材料e)
電極形成材料eは、以下のような手順で調製した。まず、市販のウレタンゴムポリマー(東洋紡(株)製「バイロン(登録商標)UR3500」)100質量部を、溶剤のブトキシエチルアセテート400質量部に溶解させ、エラストマー溶液を調製した。次に、このエラストマー溶液に銀粉末P1、P3を添加し、三本ロールで混練りして電極形成材料eとした。ウレタンゴムポリマーのTgは、10℃であった。
(電極形成材料f)
電極形成材料fは、市販の銀ペースト(藤倉化成(株)製「ドータイト(登録商標)FA−353N」)である。
[被膜]
被膜は、以下に示す被膜形成材料製である。
(被膜形成材料a)
被膜形成材料aは、アクリル樹脂(根上工業(株)製「パラクロンW−248E」)100質量部と、架橋剤(日本ポリウレタン(株)製「コロネートL」)10質量部とを、溶剤(MEK)に溶解することにより、調製した。
<現像ロールの製造方法>
次に、現像ロールの製造方法について説明する。表2に、実施例1〜13、比較例1〜3の現像ロールの材料、および特性を示す。
実施例1〜5、比較例1は、図8に示す第一実施形態の現像ロール同様の層構造を有している。この層構造を「層構造I」とする。実施例6〜9、比較例2は、図12に示す第二実施形態の現像ロール同様の層構造を有している。この層構造を「層構造II」とする。実施例10〜13、比較例3は、図12に示す第二実施形態の現像ロールから、被膜を排除した層構造を有している。この層構造を「層構造III」とする。
以下、層構造I〜IIIごとに分けて、現像ロールの製造方法を説明する。
[層構造I]
層構造Iの現像ロールの製造方法は、弾性層形成工程と、絶縁層形成工程と、電極部形成工程と、被膜形成工程とを、備えている。
(弾性層形成工程)
弾性層形成工程においては、まず、軸部aの外周面に接着剤を塗布した。次に、弾性層成形用の金型のキャビティに軸部aをセットした。それから、弾性層形成材料aをキャビティに注入し、金型を180℃で5分間加熱した後、冷却した。このようにして、軸部aの周囲に、ゴム弾性を有する弾性層を形成した。なお、弾性層形成材料a製の弾性層の体積抵抗率は、5×10(Ω・cm)だった。
(絶縁層形成工程)
絶縁層形成工程においては、まず、ロールコート法により、弾性層の外周面に絶縁層形成材料aをコーティングした。次に、絶縁層形成材料aを乾燥させ、150℃で30分間加熱した。このようにして、弾性層の周囲に、径方向肉厚が0.02mmの絶縁層を形成した。なお、絶縁層形成材料a製の絶縁層の体積抵抗率は、1×1014(Ω・cm)だった。
(電極部形成工程)
後述する表2の「画像のかぶり」を評価するための現像ロールを製造する場合は、スクリーン印刷法により、所定のパターン形状で、絶縁層の外周面に電極を形成した。具体的には、まず、電極のパターン形状と同じパターンの孔が穿設されたマスクの下方に絶縁層(詳しくは、絶縁層と弾性層と軸部との積層体)を、上方にスキージを、それぞれ配置した。また、マスクの上面に、電極形成材料a〜fのいずれかを載置した。次に、スキージと絶縁層とを同期して水平方向に移動させた。ただし、絶縁層は転動させた。それから、電極形成材料a〜fが転写された絶縁層を、約150℃の乾燥炉内に約30分間静置して、電極形成材料a〜fを乾燥させると共に、架橋反応を進行させた、そして、絶縁層の外周面に、径方向肉厚が8μmの電極を形成した。なお、電極のパターン形状のライン幅およびスペース幅は、共に0.1mmだった。
なお、後述する表2の「ロール表面性」、「ヘタリ導通」、「ヘタリ導通判定」を評価するための現像ロールを製造する場合は、スクリーン印刷法により、絶縁層の外周面全体に、径方向肉厚が8μmの電極を形成した。
(被膜形成工程)
被膜形成工程においては、まず、ロールコート法により、電極部の径方向外側から被膜形成材料aをコーティングした。次に、被膜形成材料aを乾燥させ、150℃で30分間加熱した。このようにして、電極部を覆うように、径方向肉厚が0.01mmの被膜を形成した。なお、被膜形成材料a製の被膜の体積抵抗率は、1×1014(Ω・cm)だった。このようにして、層構造Iの現像ロールを製造した。
なお、後述する表2の「ロール表面性」、「ヘタリ導通」、「ヘタリ導通判定」を評価するための現像ロールを製造する場合は、体積抵抗率を測定するために、電極部の軸方向両端に、被膜を形成しなかった。すなわち、電極部の軸方向両端を露出させた。
[層構造II]
層構造IIの現像ロールの製造方法は、絶縁層形成工程と、電極部形成工程と、被膜形成工程とを、備えている。
(絶縁層形成工程)
絶縁層形成工程においては、まず、軸部bの外周面に接着剤を塗布した。次に、絶縁層成形用の金型のキャビティに軸部bをセットした。それから、絶縁層形成材料bをキャビティに注入し、金型を180℃で5分間加熱した後、冷却した。このようにして、軸部bの周囲に、ゴム弾性を有する絶縁層を形成した。なお、絶縁層形成材料b製の絶縁層の体積抵抗率は、2×1014(Ω・cm)だった。
(電極部形成工程、被膜形成工程)
これらの工程は、いずれも層構造Iの現像ロールを製造する場合と同様である。したがって、説明を割愛する。このようにして、層構造IIの現像ロールを製造した。
[層構造III]
層構造IIIの現像ロールの製造方法は、絶縁層形成工程と、電極部形成工程と、備えている。層構造IIIの現像ロールの製造方法は、層構造IIの現像ロールの製造方法から、被膜形成工程を撤去したものである。したがって、説明を割愛する。
<評価方法および評価結果>
[表1について]
まず、表1の評価項目について説明する。
(弾性率)
導電膜の弾性率は、導電膜に対して引張試験を行うことにより測定した。すなわち、導電膜に、JIS K7127(1999)に準じた引張試験を行った。試験片の形状は、試験片タイプ2とした。得られた応力−伸び曲線から、導電膜の弾性率を算出した。表1に示すように、電極形成材料a〜e(実施例1〜13に使用)の方が、電極形成材料f(比較例1〜3に使用)よりも、弾性率が小さいことが判った。
(延伸率)
導電膜の延伸率は、以下の式(I)により測定した。
延伸率(%)=(ΔL/L)×100・・・(I)
[L:試験片の標線間距離、ΔL:試験片の標線間距離の延伸による増加分]
表1に示すように、電極形成材料a〜e製の導電膜(実施例1〜13に使用)の方が、電極形成材料f製の導電膜(比較例1〜3に使用)よりも、延伸率が大きいことが判った。
(自然状態の体積抵抗率)
導電膜の自然状態(延伸していない状態)の体積抵抗率は、JIS K6271(2008)の平行端子電極法に準じた測定方法により、測定した。この際、導電膜(試験片)を支持する絶縁樹脂製支持具として、市販のブチルゴムシート(タイガースポリマー(株)製)を用いた。
表1に示すように、電極形成材料a〜e製の導電膜は、電極形成材料f製の導電膜と、同等の体積抵抗率を有していることが判った。
(20%延伸時の体積抵抗率)
導電膜の20%延伸時の体積抵抗率は、自然状態の体積抵抗率と同様の方法により測定した。なお、延伸率は、上記式(I)による値である。
表1に示すように、20%延伸しても、電極形成材料a〜e製の導電膜は、体積抵抗率が増加しにくいことが判った。つまり、高い導電性を確保できることが判った。
(条件(b1))
条件(b1)の充足性は、導電膜の膜厚方向断面のSEM写真により評価した。まず、導電膜をエポキシ樹脂で包埋し、ミクロトームにより膜厚方向の断面を切り出した。次に、当該断面のSEM写真を撮影した(倍率1000〜5000倍)。それから、SEM写真の略中央部分に、膜厚方向に延びる長さ10mμmの三本の直線を、3μm間隔で描いた。続いて、各々の直線ごとに、直線と交わり、かつ最長部の長さが2μm以上のフィラーの個数を数えた。そして、得られた個数を直線の長さで除して、各々の直線ごとに、基準個数を算出した。最後に、三つの基準個数の平均値を算出した。表1に示すように、電極形成材料a〜e製の導電膜は、1μm当たり0.8個以上のフィラーを有していることが判った。
(条件(b2))
条件(b2)の充足性は、導電膜の膜厚方向断面のSEM写真により評価した。まず、条件(b1)同様に、SEM写真を撮影した(倍率1000〜5000倍)。次に、SEM写真に、20μm四方の正方形の測定領域を設けた。それから、測定領域を、2μm四方の正方形の単位領域100個(10個×10個)に分割した。続いて、バイナリ画像解析ソフトを用いて、各単位領域を白黒のビットマップに変換した。そして、単位領域ごとに、エラストマーおよびフィラーの画素数から、エラストマーの占める面積割合を算出した。表1に示すように、電極形成材料a〜e製の導電膜は、電極形成材料f製の導電膜よりも、エラストマーの面積割合が60%以上の単位領域の個数が、多いことが判った。
[表2について]
次に、表2の評価項目について説明する。
(ロール表面性)
ロール表面性は、現像ロールの表面状態を目視することにより、評価した。図16に、実施例1の現像ロールの外周面の写真を示す。図16に示すように、実施例1の現像ロールの外周面は平滑だった。このような表面状態を「○」と評価した。
図17に、比較例1の現像ロールの外周面の写真を示す。図17に示すように、比較例1の現像ロールの外周面には多数の「しわ」が確認された。このような表面状態を「×」と評価した。
表2に示すように、比較例1〜3のロール表面性が「×」であるのに対して、実施例1〜13のロール表面性は「○」だった。つまり、現像ロール製造時の電極部材形成工程や被膜形成工程において、加熱、冷却処理が施されているにもかかわらず、実施例1〜13の現像ロールの外周面は平滑だった。
(ヘタリ導通性および導通性判定)
まず、ヘタリ導通性の測定装置について説明する。図18に、ヘタリ導通性の測定装置の透過斜視図を示す。図19に、図18のXIX−XIX方向断面図を示す。図18、図19に示すように、測定装置9は、底板90と、頂板91と、支柱92と、一対のヘタリ治具93L、93Rと、一対の端子94U、94Dと、テスター95とを備えている。
底板90と頂板91とは、上下方向に離間して配置されている。支柱92は、底板90と頂板91とを連結している。軸部3下端が底板90上面の凹部に、軸部3上端が頂板91下面の凹部に、それぞれ収容されることにより、現像ロール2は、底板90と頂板91との間に固定されている。
ヘタリ治具93Lは、絶縁樹脂製であって、断面五角形の柱状を呈している。ヘタリ治具93Lは、現像ロール2の左側に配置されている。ヘタリ治具93Lの右端には、鋭角の圧入部930Lが形成されている。ヘタリ治具93Lは、左右方向に移動可能である。ヘタリ治具93Rの構成は、ヘタリ治具93Lの構成と同じである。ヘタリ治具93Rの配置は、ヘタリ治具93Lの配置と、現像ロール2を挟んで、左右対称である。
端子94Uは、ヘタリ治具93Rの後面上部に配置されている。端子94Dは、ヘタリ治具93Rの前面下部に配置されている。図19に示すように、ヘタリ治具93L、93Rが現像ロールに圧入されると、圧入部930L、930Rにより、現像ロールの外周面が、略180°ずつ、二つの区間96f、96rに仕切られる。端子94Uは区間96rに、端子94Dは区間96fに、それぞれ接触している。なお、図18に示す現像ロール2の軸方向両端には、被膜が形成されておらず、電極部が露出している。端子94U、94Dは、それぞれ電極部に接触している。テスター95は、端子94U、94Dと電気的に接続されている。
次に、ヘタリ導通性の測定方法について説明する。まず、ヘタリ治具93L、93Rを移動させることにより、現像ロール2の外周面に、圧入部930L、930Rを圧入させた。そして、現像ロール2の外径(直径)が圧入前の60%になるまで、現像ロール2を変形させた。それから、区間96f、96r間の体積抵抗率(Ω・cm)を、テスター95により測定した。
測定の結果、表2の「ヘタリ導通」欄に記載されている体積抵抗率が、1×10−3(Ω・cm)以下の場合を「◎」と、1×10−3〜1×10−2(Ω・cm)の場合を「○」と、1×10−2(Ω・cm)以上の場合を「×」と、それぞれ評価した。
表2に示すように、比較例1〜3の現像ロールには、ヘタリ治具93L、93Rの押圧力により「割れ」が発生した。このため、ヘタリ導通(体積抵抗率)を測定することができなかった。これに対して、実施例1〜13の現像ロールには、「割れ」が発生しなかった。実施例1〜13のヘタリ導通判定結果は、「◎」または「○」だった。
(画像のかぶり)
画像のかぶりは、マクベス濃度により評価した。まず、現像ロールを、市販の実機(キヤノン(株)製、「レーザーショット LBP−2510」)の現像ロール周辺部材を模したベンチ試験機に組み込んだ。そして、高温高湿(32℃、85%RH)の環境下で、30000枚相当のベンチ耐久試験(30時間空回転)を行った。次に、耐久トナーを回収し、実機(キヤノン(株)製、「レーザーショット LBP−2510」)のトナーと入れ替えた。それから、白画像を画出し、感光ドラム表面上のトナーをテープに転写し、その濃度をマクベス濃度計を用いて測定した。
測定の結果、マクベス濃度が0.11未満のものはかぶり現象(上記感光ドラム表面の白地部へのトナー付着)がほとんど発生していないとして「◎」 、マクベス濃度が0.11以上0.20未満のものは少しかぶり現象が発生したとして「○」 、マクベス濃度が0.20以上のものは明確なかぶり現象が発生したとして「×」と、それぞれ評価した。
表2に示すように、比較例1〜3が「×」であるのに対して、実施例1〜13は「◎」または「○」だった。
[まとめ]
表1から、実施例1〜13に用いられた電極形成材料a〜eは、比較例1〜3に用いられた電極形成材料fよりも、柔軟であることが判った。また、自然状態において、電極形成材料a〜eは、電極形成材料fに対して、遜色ない導電性を有することが判った。また、電極形成材料a〜eは、延伸状態と自然状態とで、導電性が変化しにくいことが判った。
表2から、実施例1〜13は、比較例1〜3よりも、現像ロールの外周面に「しわ」や「割れ」が発生しにくいことが判った。また、実施例1〜13によると、現像ロールが変形しても、導電性を確保できることが判った。また、実施例1〜13によると、画像にかぶり現象が発生しにくいことが判った。
1:電子写真機器、2:現像ロール(帯電粒子搬送部材)、3:軸部、4:絶縁部、5:電極部、6:被膜、9:測定装置。
40:弾性層、41:絶縁層、50X:X相電極群、50Y:Y相電極群、80:供給ロール、81:感光ドラム、82:ドクターブレード、83:トナーケース、84X:電源、84Y:電源、90:底板、91:頂板、92:支柱、93L:ヘタリ治具、93R:ヘタリ治具、94D:端子、94U:端子、95:テスター、96f:区間、96r:区間。
100:電極部、101:エラストマー、102:第一異方性フィラー、103:第一塊状フィラー、110:断面写真、111:エラストマー、112:フィラー、500X:X相電極、500Y:Y相電極、930L:圧入部。
E:単位領域、M:測定領域、T:トナー、ΔV:電位差、Va:平均電位、Vt:周期。

Claims (13)

  1. 単層または複層であって、ゴム弾性と絶縁性とを併有する絶縁部と、
    該絶縁部の外面に配置される、弾性を有する導電膜製の電極部と、
    を有する帯電粒子搬送部材であって、
    前記導電膜は、エラストマーと、該エラストマー中に充填される金属製のフィラーと、を有し、次の(A)または(B)であることを特徴とする帯電粒子搬送部材。
    (A)該フィラーは、フレーク状または針状であって膜展開方向に配向する第一異方性フィラーと、該第一異方性フィラーよりも異方性が小さい第一塊状フィラーと、を有する。
    (B)次の(b1)および(b2)の条件を満たす。
    (b1)走査型電子顕微鏡により撮影された膜厚方向の断面写真に、膜厚方向に延びる三本の直線を膜展開方向に3μmずつ離間して描き、各々の該直線ごとに、該直線と交わる該断面写真における最長部の長さが2μm以上の該フィラーの個数を数えて、該個数を該直線の長さで除することにより該直線1μm当たりの基準個数を算出した場合に、三本の該直線における該基準個数の平均値が、0.8(個/μm)以上である。
    (b2)走査型電子顕微鏡により撮影された膜厚方向の断面写真に、2μm四方の単位領域が100個連なって形成される測定領域を設け、該単位領域ごとに、該エラストマーが占める面積を測定した場合に、該エラストマーの面積割合が60%以上である該単位領域の個数が、20個以上である。
  2. 前記エラストマーは、水素結合可能な官能基を有し、ガラス転移温度(Tg)が10℃以下である請求項1に記載の帯電粒子搬送部材。
  3. 前記エラストマーは、アクリルゴム、ウレタンゴム、ヒドリンゴムから選ばれる一種類以上である請求項2に記載の帯電粒子搬送部材。
  4. 前記(A)の前記第一異方性フィラーの平均粒子径は2.5μm以上15μm以下であり、アスペクト比は5以上35以下である請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の帯電粒子搬送部材。
  5. 前記(A)の前記第一塊状フィラーの平均粒子径は0.1μm以上8.0μm以下であり、アスペクト比は1以上5以下である請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の帯電粒子搬送部材。
  6. 前記(A)の前記フィラーの充填量は、前記エラストマーの100質量部に対して150質量部以上1500質量部以下である請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の帯電粒子搬送部材。
  7. 前記(A)の前記第一異方性フィラーと前記第一塊状フィラーとの配合比は、質量比で(該第一塊状フィラー/該第一異方性フィラー)=1/30〜5/1である請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の帯電粒子搬送部材。
  8. 前記(B)の前記フィラーは、厚さが1μm以下のフレーク状または針状であって、膜展開方向に配向する第二異方性フィラーを有する請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の帯電粒子搬送部材。
  9. 前記(B)の前記フィラーは、さらに、前記第二異方性フィラーよりも異方性が小さく、平均粒子径が0.1μm以上1.5μm以下の第二塊状フィラーを含む請求項8に記載の帯電粒子搬送部材。
  10. 前記(B)の前記フィラーの充填量は、前記導電膜の体積を100vol%とした場合の45vol%未満である請求項8または請求項9に記載の帯電粒子搬送部材。
  11. 前記(B)の前記第二異方性フィラーと前記第二塊状フィラーとの配合比は、質量比で(該第二塊状フィラー/該第二異方性フィラー)=1/50〜1/2である請求項9または請求項10に記載の帯電粒子搬送部材。
  12. 前記絶縁部は、円筒状または円柱状であって、絶縁層を有し、
    前記電極部は、該絶縁層の外周面に所定のピッチで周方向に並設される複数の電極を有し、
    隣り合う該電極間に異相電圧を印加することにより電界を発生させ、帯電したトナーを該電界により浮動させ、潜像担持体の潜像に該トナーを付着させることにより該潜像を現像する請求項1ないし請求項11のいずれかに記載の帯電粒子搬送部材。
  13. 前記絶縁部は、円筒状または円柱状であって、絶縁層と、該絶縁層の径方向内側に配置される導電層と、を有し、
    前記電極部は、該絶縁層の外周面に所定のピッチで周方向に並設される複数の電極を有し、
    該電極と該導電層との間に異相電圧を印加することにより電界を発生させ、帯電したトナーを該電界により浮動させ、潜像担持体の潜像に該トナーを付着させることにより該潜像を現像する請求項1ないし請求項11のいずれかに記載の帯電粒子搬送部材。
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