JP2011228227A - 有機elディスプレイの製造方法、及び有機elディスプレイ - Google Patents
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Abstract
【課題】有機層に異物が混入した場合、異物をレーザで除去し、レーザで除去した部分のみに局所的に有機層を形成し、他の有機層への影響を与えずに有機層中に混入した異物による欠陥の修復を図ることが可能な、有機ELディスプレイの製造方法を提供すること。
【解決手段】有機層中に混入した異物に対して、レーザで異物を照射して異物を除去するとき、レーザ除去部の外周部に凸状の盛り上がりを形成する。その後、有機材料を非接触で塗布針を用いてレーザ除去部に再塗布するとき、レーザ除去による外周部の盛り上がりによって、有機材料が広がらず、局所的に有機層を再形成することが可能となる。
【選択図】図1
【解決手段】有機層中に混入した異物に対して、レーザで異物を照射して異物を除去するとき、レーザ除去部の外周部に凸状の盛り上がりを形成する。その後、有機材料を非接触で塗布針を用いてレーザ除去部に再塗布するとき、レーザ除去による外周部の盛り上がりによって、有機材料が広がらず、局所的に有機層を再形成することが可能となる。
【選択図】図1
Description
本発明は、有機ELディスプレイの製造方法、及び有機ELディスプレイに関するものである。特に、有機ELディスプレイの製造工程において、有機層中に異物が混入した場合や、有機層表面に異物が付着した場合など、当該異物により生じた有機層の欠陥を修復する有機ELディスプレイの製造方法に関する。
近年、有機EL素子を利用した自発光型の有機ELディスプレイが、次世代のディスプレイとして期待されている。有機ELディスプレイは、明るく鮮明な画質であり、視野角が広く、薄型で広動作温度範囲などの優れた特徴を備えたディスプレイであり、将来的には大画面テレビ等への利用が有望視されている。
有機ELディスプレイを構成する有機EL素子は、マトリックス状にガラス基板上に第1の電極と第2の電極を有しており、第1の電極および第2の電極との間には、有機層が配置されている。有機層は蛍光体分子を含む発光層と、該発光層を挟むホール電導性の薄膜および電子電導性の薄膜とから形成されている。有機EL素子の第1の電極を陽極とし第2の電極を陰極として、この電極間に電圧を印加すると、陽極からホール電導性の薄膜にホールが注入され、陰極から電子電導性の薄膜に電子が注入され、発光層内でホールと電子とが結合して発光層が発光する。有機EL素子は、保護層により外気に対して保護されている。
有機ELディスプレイの製造においては、有機層の積層膜の形成が重要となる。その理由は、有機層の状態が、有機ELディスプレイの発光効率、及び、消費電力に大きな影響を与えるからである。有機層の形成については、幾つか方法があるが、有機材料を溶媒に溶解させ、この溶解した溶液をインクジェット法などの塗布(印刷)工法によって形成する方法が知られる。インクジェット法を用いた場合、有機材料を溶媒で溶解した溶液を必要な箇所に塗布し、乾燥させることで溶液中の溶媒を蒸発させ有機層を形成する。有機材料ごとに塗布、及び、乾燥を繰り返すことで、有機層の積層膜を形成することができる。このように、印刷で一括して有機層を形成することが可能であるため、有機材料の使用効率も良く、大型のディスプレイを比較的容易に形成することを可能とする。また、インクジェット法は、低コストでの製造にも向いている。
有機ELディスプレイの製造方法は、厚さ数nmの精度で有機層の厚みを制御しながら積層を行う必要がある。この積層工程は、クリーンルーム内で行われ、有機層中への異物が混入しないように積層を行っている。しかしながら、有機材料を塗布するための装置や周辺環境からパーティクルなどの異物が有機層に混入してしまうことがあり、有機層に異物を完全に混入しないようにすることは困難である。有機層中に異物が混入した状態で、第1の電極と第2の電極との間に電圧を印加すると、異物を通して電流が電極間をリークしてしまう。電流がリークすると有機ELディスプレイの発光効率が低下し、消費電力の上昇につながる。また、異物が存在する画素においては、異物による電流リークにより、当該画素における有機層(発光層)に流れる電流量が減少する。そのため、その画素全体における発光層の輝度が低下する。更には、異物が存在する画素があると、有機層に電流が流れなくなり、発光しなくなる場合も起こり得る。
そこで、有機層に異物が混入した場合の解決方法として、有機層中、或いは、有機層表面にある異物を除去し、除去した部分に再塗布することで、有機層の欠陥を修復する方法が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1において、有機層を形成した後、有機層中、或いは、有機層の表面に混入した異物を検出する。検出した異物に対してレーザを照射して有機層に混入した異物をレーザによって除去する。レーザで除去した部分に対して、インクジェット法や針塗付法などの塗布工法を用いて有機材料を塗布することで、有機層に混入した異物による欠陥に有機層を再形成する。このようにして特許文献1によれば、有機層中や有機層表面に付着した異物による欠陥を修復することができるので、歩留まりの改善や有機ELディスプレイの品質改善を図ることができるとされている。
しかしながら、特許文献1に示すような、従来の有機ELディスプレイの製造方法おいては、有機層中、或いは、有機層表面の付着した異物が非常に小さい場合、レーザで微小異物を除去した後、レーザで除去した部分のみに有機層を形成するのが困難となる。また、レーザで異物を除去した後、例えば、インクジェット法にてレーザ除去部に有機材料を塗布する場合、インクジェット法で吐出する有機材料の液滴量がレーザ除去体積に対して多いため、レーザ除去部以外の広い範囲にわたって有機材料が付着する。インクジェット法で吐出する有機材料は溶剤が含まれるため、レーザで除去した部分以外の広い範囲における正常な有機層を溶解し、有機層の表面を荒らしてしまい、新たな欠陥を生じてしまう場合がある。また、塗布量が多いため、塗布した部分において山型に有機層が盛り上がって形成されてしまうため、再形成した有機層上へ形成する電極や封止層の形成に欠陥が生じてしまう場合がある。
インクジェット法に比べ、塗布量を少なくできる針塗布法を用いた場合についても、有機材料が付着した塗布針をレーザ除去部に押し付けて塗布するため、レーザ除去部の外周部に対して、同じように有機材料が広がって塗布される。また、針塗布の場合は、レーザ除去部へ塗布針を押し付けるため、レーザ除去部内へ塗布される有機材料がレーザ除去部の外周部へ押し出されるので、再塗布部の形状の凹凸が大きくなる。そのため、有機層を再形成した部分上に形成する電極や封止層の形成に欠陥を生じる場合がある。
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、欠陥領域が微小な面積の場合(有機層中に混入、或いは、有機層表面に付着した異物が微小であった場合)についても、異物除去後に有機層を再形成する際、レーザで有機層を除去した部分以外への有機材料の濡れ広がりを抑制でき、局所的な有機層の再形成を可能とする、有機ELディスプレイの製造方法、及び有機ELディスプレイを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の有機ELディスプレイの製造方法は、
基板と、前記基板上にマトリクス状に配置された複数の有機EL素子とを有し、前記有機EL素子は、前記基板上に配置された第1の電極、前記第1の電極上に配置された有機層、及び、前記有機層上に配置された第2の電極を含む、有機ELディスプレイを製造する方法であって、
(1)有機層を規定するバンクを基板上に形成する工程と、
(2)前記バンクにより規定された領域に有機層を塗布形成する工程と、
(3)前記有機層に混入した異物や前記有機層表面に付着した異物を検出する工程と、
(4)前記有機層中に混入した異物や有機層表面に付着した異物をレーザで除去すると同時に、レーザで除去した有機層外周部に対しレーザによる凸形状の盛り上がりを形成する工程と
(5)前記異物を除去した領域に、有機材料を非接触で塗布し、再び有機層を再形成する工程と、を有することを特徴とするものである。本構成によって、レーザで除去した部分に対して、局所的に有機層を再形成することができる。
基板と、前記基板上にマトリクス状に配置された複数の有機EL素子とを有し、前記有機EL素子は、前記基板上に配置された第1の電極、前記第1の電極上に配置された有機層、及び、前記有機層上に配置された第2の電極を含む、有機ELディスプレイを製造する方法であって、
(1)有機層を規定するバンクを基板上に形成する工程と、
(2)前記バンクにより規定された領域に有機層を塗布形成する工程と、
(3)前記有機層に混入した異物や前記有機層表面に付着した異物を検出する工程と、
(4)前記有機層中に混入した異物や有機層表面に付着した異物をレーザで除去すると同時に、レーザで除去した有機層外周部に対しレーザによる凸形状の盛り上がりを形成する工程と
(5)前記異物を除去した領域に、有機材料を非接触で塗布し、再び有機層を再形成する工程と、を有することを特徴とするものである。本構成によって、レーザで除去した部分に対して、局所的に有機層を再形成することができる。
また、本発明の有機ELディスプレイは、第1の電極、前記第1の電極上に配置された有機層、及び、前記有機層上に配置された第2の電極を含む有機EL素子を基板上にマトリクス状に備える、有機ELディスプレイであって、前記有機層の一部には盛り上がり部が環状に形成され、前記盛り上がり部で形成される領域内に有機材料を塗布して有機層としてなることを特徴とする。この構成により、発光ムラの発生を抑制することが可能な有機ELディスプレイを提供できる。
本発明の有機ELディスプレイの製造方法によれば、有機層中に混入した異物や有機層表面に付着した異物をレーザによって除去したとき、レーザを照射した有機層の外周部に凸形状の盛り上がりを形成する。レーザで除去した部分に再度、有機材料を非接触で塗布して有機層を形成するとき、この盛り上がりによって、有機材料の濡れ広がりが防げるので、レーザ除去部以外に有機材料の濡れ広がりをさせずにレーザで除去した部分のみに局所的に有機層を形成することができる。
以下、本発明の有機ELディスプレイの製造方法について図面を参照しながら説明する。
<本発明の有機ELディスプレイ構造について>
本発明の製造方法により製造される有機ELディスプレイは、少なくとも基板と、前記基板上にマトリクス状に配置された有機EL素子とを有する。
本発明の製造方法により製造される有機ELディスプレイは、少なくとも基板と、前記基板上にマトリクス状に配置された有機EL素子とを有する。
有機EL素子は、基板上に配置された第1の電極と、第1の電極上に配置された有機層と、有機層上に配置された第2の電極を有する。有機層は少なくとも有機発光層を含むが、更に正孔注入層や正孔輸送層、電子輸送層などを含んでもよい。また、有機EL素子はカラーフィルタや封止膜などの任意の構成部材を有していても良い。
<本発明の有機ELディスプレイの製造方法について>
本発明の有機ELディスプレイの製造方法は、図1に示すように、有機層を規定するバンクを基板上に形成する第1のステップ(S1)と、第1のステップで形成したバンクにより規定された領域に有機材料を塗布し有機層を形成する第2のステップ(S2)と、第2のステップ(S2)で形成した有機層中に混入されている異物や有機層表面に付着している異物を検出する第3のステップ(S3)と、第3のステップ(S3)で検出した異物およびその周囲の有機層をレーザによって除去するとともに、レーザ照射部外周部に凸状の盛り上がりを形成する第4のステップ(S4)と、第4のステップ(S4)によりレーザで除去した領域のみに非接触で有機層を再び塗布形成する第5のステップ(S5)を有する。
本発明の有機ELディスプレイの製造方法は、図1に示すように、有機層を規定するバンクを基板上に形成する第1のステップ(S1)と、第1のステップで形成したバンクにより規定された領域に有機材料を塗布し有機層を形成する第2のステップ(S2)と、第2のステップ(S2)で形成した有機層中に混入されている異物や有機層表面に付着している異物を検出する第3のステップ(S3)と、第3のステップ(S3)で検出した異物およびその周囲の有機層をレーザによって除去するとともに、レーザ照射部外周部に凸状の盛り上がりを形成する第4のステップ(S4)と、第4のステップ(S4)によりレーザで除去した領域のみに非接触で有機層を再び塗布形成する第5のステップ(S5)を有する。
具体的には、第1のステップ(S1)では、有機層を規定するバンクを基板上に形成する。ここで「バンクを基板上に形成する」とは、基板上に直接バンクを形成するだけでなく、基板上に形成された別の部材(例えば、第1の電極など)の上にバンクを形成することも含む。基板の種類は、絶縁性を有し、かつ所望の透明性および機械的特性を有するものであれば特に限定されない。一般的には、ガラス板などが用いられることが多い。基板は、プラズマ処理やUV処理などの表面処理が施されていてもよい。バンクなどにより規定される有機EL素子のサイズおよび形状は、求める特性(例えば、ディスプレイの解像度など)に応じて自由に設定され得る。
バンクは、有機EL素子ごとに有機層を規定していても良いし、ライン状に配列された複数の有機EL素子を含む区域を規定しても良い。ライン状に配列された複数の有機EL素子は、同一色(赤、緑または青)の光を発する。バンクの材料は、特に限定されないが、絶縁性、有機溶剤耐性、プロセス耐性(プラズマ処理、エッチング処理、ベーク処理に対する耐性)の点から、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂などが好ましい。また、フッ素系樹脂(アクリル系フッ素樹脂やポリイミド系フッ素樹脂)であってもよい。バンクは、プラズマ処理やUV処理などの表面処理が施されていてもよく、表面処理を行うことでバンク表面の親液性や撥液性が調整され得る。
第2のステップ(S2)では、第1のステップ(S1)で形成したバンクにより規定された領域に有機材料を含む溶液を塗布して、有機層を形成する。有機層を形成する方法は、塗布法であれば特に限定されない。塗布法の例には、インクジェット法、ディスペンサ法、塗布針などが含まれる。また、バンク内に塗布される有機材料、及び、溶媒の種類は、有機層の種類や求める特性などに応じて自由に選択すれば良い。発光層を構成する有機材料の例には、ポリフルオレン系の高分子有機材料が含まれる。
有機EL素子は、電極および有機層の薄膜を積層することで形成される。それぞれの薄膜は、数10nmレベルで膜厚が制御されている。製造環境を厳密に管理し、かつ製造設備を十分にメンテナンスしていても製造している環境や設備から、有機材料を含む溶液を塗布した部分に微小な異物が混入してしまうことがある。この微小異物の混入により、有機層に欠陥が生じてしまう。
図2は、有機層3に異物10が混入したときの斜視図を示している。なお、図2において符号11はバンクを示す。有機層3に異物10が混入した状態で、有機EL素子を製造したときの有機EL素子の断面図を図3に示す。
図3に示すように、有機EL素子は、基板5、基板5上に配置された第1の電極4、第1の電極4上に配置された有機層3、有機層3上に配置された第2の電極8、第2の電極8上に配置された封止膜9とを有する。図3に示すように、異物10は第1の電極4、及び、第2の電極8と接触しているので、異物10が電流のリークパスとなってしまう(第1の電極4と第2の電極8とがショートしてしまう。)。このため、第1の電極4と第2の電極8との間に電圧を印加すると、異物10を通して、第1の電極4から第2の電極8に電流がリークし、その結果、消費電力の増大や、異物周囲での発光輝度低下による発光ムラが生じ、更に発光自体がしなくなるという不良現象が発生することになる。
第3のステップ(S3)では、第2のステップで形成した有機層に、形成不良部が存在するか否かを検出する。有機層3に混入した異物10を検出する方法は、特に限定されないが、顕微鏡を用いた外観検査による方法や画像検査方法やパターン検査方法などがある。画像検査方法やパターン検査方法には、隣接する素子同士を比較することで異物を検出する「Die to Die検査方式」や素子と設計データとを比較することで異物を検出する「Die to Database検査方式」が含まれる。異物が検出された場合は、後述する第4ステップに進み、異物10と、異物10の周辺の有機層3を除去することで、有機層3中に混入、或いは、有機層3の表面に付着した異物10を有機層3から除去する。
第4のステップ(S4)は、前述の第3のステップ(S3)で検出された有機層3中に混入、或いは、有機層3の表面に付着した異物10を有機層から除去する工程である。
図4は、図2に示すような有機層3中に混入した異物10を除去したときの斜視図を示す。
形成不良部を除去する方法は、レーザ照射による方法(レーザアブレーション)を適用する。異物除去に対してレーザを用いれば、有機層3中に混入した異物10の周囲のみを局所的に除去することができるためである。ここで「異物およびその周囲にレーザを照射する」とは、異物またはその周囲の有機層の近傍に焦点を合わせてレーザを照射することを意味する。図4は、発光層3の一部にレーザを照射することで、異物10が除去されたレーザ除去部6を形成する状態を示す。なお、レーザ光源の種類は、特に限定されないが、例えばフラッシュランプ励起Nd:YAGレーザを用いると良い。フラッシュランプ励起Nd:YAGレーザを用いた場合、レーザの波長を1064nm(基本波長)、532nm(第二高調波)、355nm(第三高調波)、266nm(第四高調波)から選択することができる。
形成不良部に照射するレーザの波長は、有機層(形成不良部)が吸収し得る波長であれば特に限定されないが、1100nm以下であることが好ましく、400nm以下であることが特に好ましい。すなわち、フラッシュランプ励起Nd:YAGレーザであれば、第三高調波(355nm)、又は、第四高調波(266nm)を照射することが好ましい。レーザの波長が小さい方が、有機層3の下にある層(基板5や第1の電極4、別の有機層など)に与える影響が小さいからである。なお、形成不良部に照射するレーザのエネルギ密度は、有機層の材料や厚さなどによって適宜設定され得る。また、レーザの照射面積は、有機層3に混入した異物10や、有機層3の表面に付着した異物10のサイズよりやや大きめの面積に合わせて調整する必要がある。レーザの照射面積は、レーザ照射装置にスリットを設け、このスリットの開口面積などを制御することで調整する。
図5は、予備実験としてYAGレーザのエネルギ密度(0.08〜0.32J/cm2)と有機層の除去量(深さ)との関係を調べた結果を示すグラフである。
この実験では、ガラス基板上に形成された有機発光層(ポリフルオレン系高分子有機材料;膜厚200nm)に、第3高調波(355nm)の波長のレーザを様々なエネルギ密度で照射した。レーザ光源には、QuickLaze−50ST2(YAGレーザ、ニューウェーブリサーチ社製)を用いた。有機層表面におけるレーザの照射面積は20μmとし、パルス幅は3〜5ナノ秒とした。また、レーザ照射はシングルショットで行った。図5から、レーザの波長が355nmであれば、レーザ照射エネルギ密度を制御して有機層の除去量を数10nmレベルで調整できることがわかる。QuickLaze−50ST2(波長355nm、パルス幅3〜5nm)にて有機層を除去したとき、レーザで照射したエリアの外周部にレーザによる熱や有機層の除去後のバリによって、レーザを照射した領域の外周部に盛り上がりが形成される。
図6は、レーザ除去部6の外周部に盛り上がり部2が形成された有機層の断面図を示す。また、図7は、レーザ照射エネルギ密度(0.12〜0.21J/cm2)とレーザ照射エリアの外周部に形成される盛り上がり部の高さとの関係を示すグラフである。
図7から、0.12〜0.16J/cm2のレーザ照射エネルギ密度であれば、高さ50〜80nmの凸状の盛り上がり部を形成することが分かる。発明者は、0.12J/cm2より小さなレーザ照射密度で有機層3にレーザを照射した場合には、レーザ照射部外周に盛り上がり部を形成することが出来ないことを確認した。加えて、0.08J/cm2より小さいレーザ照射エネルギの場合、有機層3の除去すら行うことが出来ないことを確認した。また、0.16J/cm2より大きなレーザ照射エネルギを有機層に照射した場合、図7のように、盛り上がり部の高さにばらつきが生じていることがわかる。なお、0.17 J/cm2のエネルギーで照射した場合は、レーザ照射エリアの外周に形成される盛り上がり部がほとんど形成されなかった。これはレーザのパワーが強いため、レーザ照射エリア外周部に形成される盛り上がり部が破壊されるためと推察される。
また、レーザ照射エネルギを高くした0.25J/cm2の場合盛り上がり部の高さが180nmと極端に高くなった。これは、レーザ照射エリアの有機層に対して、局所的に大きなエネルギーが掛かり、レーザ照射エリアの外周部での有機層が極端に大きく盛り上がるためである。
従って、レーザ照射エネルギ密度(0.12〜0.16J/cm2)の範囲において、レーザ照射エネルギ密度を調整して、有機層中に混入した異物、或いは、有機層表面に付着した異物を除去する必要がある。レーザ照射時には、異物除去部周囲に集塵機を設置して、レーザによって除去された異物の破片を集塵しても良い。
第5のステップ(S5)では、前述の第4のステップにて有機層が除去された領域(レーザ除去部6)に有機材料を含む溶液を再塗布して、塗布後、有機層3を再度形成する。有機材料を含む溶液をレーザにより除去された領域(レーザ除去部6)に再塗布するとき、レーザで除去された発光層の外周部には凸状の盛り上がり部2が形成されているので、図8に示すように、レーザ除去部6の外周部の盛り上がり部2によって塗布領域が規制されレーザで除去された微小領域のみに有機層3の再形成をすることができる。なお、図8の断面図は、レーザ除去部6に有機材料を再塗布し、その後、有機材料を乾燥させた後の形状を示す。以下、有機層3の再形成後の形状は、有機材料を塗布後、乾燥させたときの有機層の形状を示す。
なお、図9に示すように、有機層3をレーザで除去した後、レーザ除去部6の外周部が盛り上がりがない場合(盛り上がり部2が形成されない場合)、このレーザ除去部6に有機材料1を再塗布すると、例えば図10に示すように、有機材料1が正常な有機層3の領域に広がってしまう。有機材料を含む溶液がレーザで除去した領域以外に広がると、再形成した有機層3が厚くなる領域が広がるため、有機層3を再形成した領域は正常な部分に対して膜厚が大きいため発光状態が変化し、発光ムラを生じることになる。よって、再形成した有機層の領域が広がると、発光ムラの大きな有機EL素子となってしまい、品質低下を招くことに繋がり、レーザで除去した領域、つまり、盛り上がりが形成された内部のみ溶液を塗布し、有機層を再形成する必要がある。
有機層除去部に有機層を再形成する方法は、インクジェット法、ディスペンサ法、針塗布法などの塗布工法などがある。インクジェット法やディスペンサ法など溶液を吐出させて塗布する場合、レーザで除去する体積に対して溶液の吐出量が多くなってしまう。図11はレーザで除去した領域(レーザ除去部6)に対して、インクジェット法で有機材料を再塗布したときの断面図を示す。同図に示すように、レーザ除去部6に対して広く溶液が広がってしまう。また、溶液の塗布量が多いため再塗布した部分の膜厚が厚く、大きな凹凸形状の有機層3が形成されることで、再形成した有機層3上へ形成する電極や封止層の形成に欠陥が生じてしまう場合がある。
インクジェット法やディスペンサ法に比べ、微小量の溶液を塗布することのできる塗布工法として針塗布法がある。数10〜数100μmの極細の塗布針に液滴を付着させ、塗布針先端とワークとを接触させることで、針先端に付着した液滴のみを転写させて微小量のみを塗布することができる。しかしながら、針塗布法を用いた場合には、図12に示すように、塗布針7を有機層3の表面に押し付けるので、針先端の材料が針接触部の外周へ押し出される。そのため、レーザで除去した有機層の外周部に形成した盛り上がりが潰され、塗布した溶液を規制できなくなると共に、針先端が接触することによって、針先端の外周部に溶液が広がってしまうことになる。
よって、針塗布で有機層を再形成する場合、図10に示すように塗布領域が広がってしまうと共に、レーザで除去した部分の膜厚はへこみ、レーザで除去した領域の周囲は盛り上がり、レーザで除去した領域周囲が盛り上がるような凹凸のある形状となってしまう。そこで、本発明においては、非接触の針塗布法の方式により塗布材料を塗布する。塗布針を有機層3の表面に接触させるのではなく、塗布材料を付着させた塗布針の先端と有機層3の表面とのギャップを近づけることにより、非接触で塗布材料を有機層表面に転写させる方法である。
塗布針先端と有機層3の表面とのギャップは、塗布針先端に付着した溶液の厚み以下の距離に設定する必要がある。この非接触の針塗布を行うには、例えば、株式会社アプライド・マイクロシステムのニードル式ディスペンサなどを用いれば良い。この装置を使用すれば、塗布針の位置を任意に変えることができるため、非接触での針塗布が可能である。図13に示すように、有機層を除去した除去部に対して、非接触の針塗布を用いて溶液を塗布することで、除去部の外周に形成された盛り上がり部2により溶液が規制されるため、レーザで除去した有機層の領域のみに有機層を再形成することができる。
有機層除去部に塗布される溶液の種類は、前述の第2のステップで塗布した溶液(有機材料および溶剤)と同じものを塗布すれば良い。但し、有機材料以外にも、レジストなどの絶縁性を有する材料を塗布しても良い。溶媒に対する有機材料の濃度は、第2のステップで塗布した溶液と同じであっても良いがより高くしても良い。有機材料の濃度を高くすることで、塗布する量が少なくなり、より微量な材料を局所的に塗布することが出来るので、レーザで除去した領域に対して精度良く、局所的に有機層の再形成ができる。
<盛り上がり部の特徴>
図14は、YAGレーザ(QuickLaze−50ST2、ニューウェーブリサーチ社製;波長355nm、パルス幅3〜5nm)を用いて、有機発光層(ポリフルオレン系高分子有機材料)を除去したときの断面図を示す。図14において横の1目盛は10μmであり、縦の1目盛は50nmである。
図14は、YAGレーザ(QuickLaze−50ST2、ニューウェーブリサーチ社製;波長355nm、パルス幅3〜5nm)を用いて、有機発光層(ポリフルオレン系高分子有機材料)を除去したときの断面図を示す。図14において横の1目盛は10μmであり、縦の1目盛は50nmである。
レーザパワー密度は、0.14J/cm2の条件でレーザを1パルスで照射した。レーザで除去した断面深さは80nmであり、レーザで除去した幅は15μmである。図14(a)は、レーザ照射後、再度、0.08J/cm2の条件にて、除去加工した穴よりやや大きめの面積でレーザを照射して意図的にバリを除去した断面図である。図14(b)は、レーザ照射後のままの断面図である。図14の(b)でレーザ照射によって形成された盛り上がりの高さは50nmである。
図15は、レーザで除去した有機層に対して、非接触の針塗布法にて塗布した後の断面図を示すものである。同図において、横の1目盛は10μmであり、縦の1目盛は50nmである。
塗布装置としては、株式会社アプライド・マイクロシステムのニードル式ディスペンサを使用して塗布を行った。塗布材料は、有機発光層(ポリフルオレン系高分子有機材料)とし、針径50μmの塗布針を用い、発光層表面と塗布針表面とのギャップを10μm接近させて塗布を行った。図15(a)には、レーザ除去部の外周に盛り上がり部2が無い場合の塗布後の断面、図15(b)には、レーザ除去部の外周に盛り上がり部2がある場合の断面を示す。
図15(a)の形態の場合、塗布部の幅22は41μmであったのに対し、図15(b)の場合は、レーザで形成された盛り上がり部の範囲内に有機材料が規制された塗布部の幅23は32μmであった。この結果より、盛り上がり部2を有する方が、有機材料塗布後の盛り上がりが少なく、レーザで除去した部分のみに有機層を再形成できることがわかる。
本発明の有機ELディスプレイの製造方法は、有機層が混入した欠陥部以外の領域に影響を与えずに局所的に欠陥部を修復することができるため、有機ELディスプレイの品質向上および歩留まり改善を図るのに有用である。
1 有機材料
2 盛り上がり部
3 有機層
4 第1の電極
5 基板
6 レーザ除去部
7 塗布針
8 第2の電極
9 封止膜
10 異物
11 バンク
20 レーザ除去幅
21 レーザ除去深さ
2 盛り上がり部
3 有機層
4 第1の電極
5 基板
6 レーザ除去部
7 塗布針
8 第2の電極
9 封止膜
10 異物
11 バンク
20 レーザ除去幅
21 レーザ除去深さ
Claims (3)
- 基板上にマトリクス状に配置された複数の有機EL素子を有し、
前記有機EL素子は、第1の電極、前記電極上に配置された有機層、及び、前記有機層上に配置された第2の電極を含む、有機ELディスプレイを製造する方法であって、
前記有機層を規定するバンクを基板上に形成する第1ステップと、
前記バンクにより規定された領域に有機材料を塗布する第2ステップと、
前記有機層に付着した異物を検出する第3ステップと、
前記異物及び前記異物の周囲にレーザを照射して前記有機層の一部を除去する第4ステップと、
前記第4ステップにおいて、除去された有機層の外周部に盛り上がり部が形成され、前記除去された領域に再び有機材料を塗布し、有機層を再形成する第5ステップと、を有する、有機ELディスプレイの製造方法。 - 前記有機層のうち異物を除去した領域に対して、塗布針を用いて非接触で有機材料を塗布し、再び有機層を形成する、請求項1記載の有機ELディスプレイの製造方法。
- 第1の電極、前記第1の電極上に配置された有機層、及び、前記有機層上に配置された第2の電極を含む有機EL素子を基板上にマトリクス状に備える、有機ELディスプレイであって、
前記有機層の一部には盛り上がり部が環状に形成され、前記盛り上がり部で形成される領域内に有機材料を塗布して有機層としてなる、有機ELディスプレイ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2010099484A JP2011228227A (ja) | 2010-04-23 | 2010-04-23 | 有機elディスプレイの製造方法、及び有機elディスプレイ |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN108110030A (zh) * | 2016-11-25 | 2018-06-01 | 三星显示有限公司 | 显示装置及其制造方法 |
-
2010
- 2010-04-23 JP JP2010099484A patent/JP2011228227A/ja active Pending
Cited By (3)
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CN108110030A (zh) * | 2016-11-25 | 2018-06-01 | 三星显示有限公司 | 显示装置及其制造方法 |
CN108110030B (zh) * | 2016-11-25 | 2023-06-02 | 三星显示有限公司 | 显示装置及其制造方法 |
US11925062B2 (en) | 2016-11-25 | 2024-03-05 | Samsung Display Co., Ltd. | Display device having film with protruding portion |
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