JP2011226393A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】モデルを用いて制御量の目標値からアクチュエータの操作量を決定するとともに、逆モデルを用いて制御量の実現値の推定精度を向上させる。
【解決手段】モデルAを用いて制御量の目標値を内燃機関の状態量の目標値に変換し、モデルBを用いて状態量の目標値をアクチュエータ操作量の指令値に変換する。また、モデルBの逆モデルであるモデルB′を用いてアクチュエータ動作量の実現値から状態量の推定実現値を算出し、モデルAの逆モデルであるモデルA′を用いて状態量の推定実現値から制御量の推定実現値を算出する。所定の学習条件が満たされた場合には、目標値と推定実現値との差分に基づいてモデルBを構成するパラメータの値を学習する。また、制御量の目標値をモデルAによって変換し、さらにその変換値をモデルA′によって再変換する。得られた値と制御量の目標値との差分を算出し、その差分によって制御量の推定実現値を補正する。
【選択図】図1
【解決手段】モデルAを用いて制御量の目標値を内燃機関の状態量の目標値に変換し、モデルBを用いて状態量の目標値をアクチュエータ操作量の指令値に変換する。また、モデルBの逆モデルであるモデルB′を用いてアクチュエータ動作量の実現値から状態量の推定実現値を算出し、モデルAの逆モデルであるモデルA′を用いて状態量の推定実現値から制御量の推定実現値を算出する。所定の学習条件が満たされた場合には、目標値と推定実現値との差分に基づいてモデルBを構成するパラメータの値を学習する。また、制御量の目標値をモデルAによって変換し、さらにその変換値をモデルA′によって再変換する。得られた値と制御量の目標値との差分を算出し、その差分によって制御量の推定実現値を補正する。
【選択図】図1
Description
本発明は、内燃機関の制御装置に関し、特に、モデルを用いて制御量の目標値からアクチュエータの操作量を決定するとともに、前記モデルの逆モデルを用いて制御量の実現値を推定する機能を有する制御装置に関する。
自動車用の内燃機関の制御では、トルク、空燃比、排気エミッション値などのパラメータが制御量として用いられる。そして、例えばドライバビリティ、排気ガス性能、燃料消費率といった内燃機関の性能に関する要求に基づいて、制御量の目標値が設定される。内燃機関の制御装置は、設定された制御量の目標値を達成すべく、各種のアクチュエータを操作して内燃機関を制御している。
内燃機関の制御においては、内燃機関の機能や特性をモデル化した各種のモデルが用いられている。ここでいうモデルには、物理モデル、統計モデル及びそれらの複合モデル等、各種のモデルが含まれる。そのようなモデルの具体例としては、スロットル開度と吸入空気量との関係を関数で規定したエアモデルをあげることができる。また、点火時期を決定する点火時期マップ等の各種のマップやマップ群もモデルの1つの例としてあげることができる。つまり、モデルの表現形式としては関数でもよく、適合データをマッピングしたマップでもよい。
また、内燃機関の制御に用いられるモデルには、内燃機関の機能や特性を因果関係において順方向にモデル化した順モデルと、逆方向にモデル化した逆モデルとが含まれる。内燃機関の逆モデルによれば、例えば、制御量の目標値からアクチュエータ操作量を決定することが可能となる。また、内燃機関の順モデルによれば、アクチュエータ操作量から制御量の実現値を推定することが可能となる。
内燃機関の制御において前記の順モデルと逆モデルの両方を用いるものとしては、例えば、特開2009−299666号公報に開示された内燃機関の制御装置が公知である、この公報に開示されている内燃機関の制御装置は、目標トルクからスロットル開度を決定する過程において2種類の逆モデルを用いている。その1つがトルク−KLマップであり、もう1つがエア逆モデルである。トルク−KLマップを用いて目標トルクが目標吸入空気量に変換され、さらに、エア逆モデルを用いて目標吸入空気量が目標スロットル開度に変換される。また、点火時期を決定するために必要な推定トルクの演算過程において、前記の逆モデルに対応する2種類の順モデルが用いられている。まず、エアモデルの順モデルを用いて実際のスロットル開度から推定吸入空気量が算出され、さらに、KL−トルクマップを用いて推定吸入空気量から推定トルクが算出される。
前記公報に開示された制御装置のシステム構成をより一般化すると図4のようになる。図4における“入力”は制御量の目標値である。制御量の目標値はモデルAに入力される。モデルAは制御量と内燃機関の特定の状態量との関係を規定したモデルである。ここでいう特定の状態量とは、アクチュエータの操作によって直接的に制御可能な状態量である。制御量の目標値は、モデルAによって特定状態量の目標値に変換される。次に、特定状態量の目標値はモデルBに入力される。モデルBは特定状態量とアクチュエータ操作量との関係を規定したモデルである。特定状態量の目標値は、モデルBによってアクチュエータ操作量の指令値に変換される。そして、この指令値が内燃機関(エンジン)に入力されて、指令値に従ったアクチュエータの操作が行われる。
以上のアクチュエータ操作によって実際に実現された動作量は、センサによって取得することができる。取得したアクチュエータ動作量の実現値はモデルB′に入力される。モデルB′はモデルBの逆モデルである(モデルBはモデルB′の逆モデルである)。モデルB′によれば、アクチュエータ動作量の実現値から特定状態量の推定実現値が算出される。次に、特定状態量の推定実現値はモデルA′に入力される。モデルA′はモデルAの逆モデルである(モデルAはモデルA′の逆モデルである)。モデルA′によれば、特定状態量の推定実現値から制御量の推定実現値が算出される。このようにして算出された制御量の推定実現値が図4における“出力”であり、これは内燃機関の制御用のパラメータとして使用される。
制御量が目標値どおりに実現されている状況では、制御量の推定実現値は目標値に一致していることが望ましい。制御量の推定実現値をパラメータとして内燃機関の制御が行われる場合、制御量が目標値どおりに実現されているにも関わらず、推定実現値と目標値との間にずれが生じる場合には、内燃機関の制御状態も最適な状態からずれてしまうおそれがある。この点に関し、図4に示す構成によれば、入力(すなわち制御量の目標値)と出力(すなわち制御量の推定実現値)とは、理論的には一致するはずである。
ところが、実際には、図4に示す入力と出力との間にはずれが生じる場合がある。これにはモデルとその逆モデルとの間の設計誤差が影響している。例えば、モデルA′はモデルAの逆モデルであるので、モデルAで変換した値をモデルA′で再変換すれば元の値に戻るはずである。しかし、制御装置に実装されるモデルA′は、制御装置の演算能力やメモリ容量の制約から、必ずしもモデルAの真の逆モデルにはなっていない。このため、モデルAで変換した値をモデルA′で再変換したときに必ず元の値に戻るとは限らない。同様に、モデルBで変換した値をモデルB′で再変換した値が必ず元の値と一致するとは限らない。
ここで、モデルとその逆モデルとの間の設計誤差がどのようにして生じるのか、図5を用いて説明する。図5に示す例では、モデルはマップによって表現されているものとする。(a)に示すマップが順マップである。順マップではx軸が等間隔に刻まれ、間隔ごとに座標点が決定されている。順マップのx−y関係は非線形な特性を示しているため、逆マップにおいて順マップと同じ座標点を取ると、逆マップのx軸は不等間隔になってしまう。そこで、通常は、順マップにおけるy軸を等間隔に刻んで座標点を取り直し、x軸とy軸を反転したものが逆マップとされる。(b)に示すマップがその逆マップである。(c)は逆マップを順マップ(破線で示す)と重ねて表示した図である。上述のように座標点の取り直しが行なわれた結果、順マップと逆マップとの間には誤差が生じている。これらの順マップと逆マップが制御装置に実装された場合には、(c)に示す誤差の影響によって、入力と出力との間にずれが生じることになる。
本発明は上述のような課題に鑑みなされたもので、モデルを用いて制御量の目標値からアクチュエータの操作量を決定するとともに、前記モデルの逆モデルを用いて制御量の実現値を推定する場合において、モデルとその逆モデルとの間の設計誤差の影響を排除することによって、制御量の実現値の推定精度を向上させることを目的とする。
上記の目的を達成するため、第1の発明の内燃機関の制御装置は、
内燃機関の特定の状態量をアクチュエータの操作によって制御し、それにより前記状態量に相関する特定の制御量を間接的に制御するとともに、前記制御量の実現値を推定し、その推定実現値を制御用のパラメータとして使用する制御装置において、
前記制御量の目標値を取得する制御量目標値取得手段と、
前記制御量と前記状態量との関係を規定したモデル(以下、第1のモデル)を用いて、前記制御量の目標値を前記状態量の目標値に変換する状態量目標値設定手段と、
前記状態量と前記アクチュエータの操作量との関係を規定したモデル(以下、第2のモデル)を用いて、前記状態量の目標値を前記アクチュエータの操作量の指令値に変換する操作量指令値設定手段と、
前記操作量の指令値に従って前記アクチュエータを操作する操作手段と、
前記アクチュエータの操作によって実際に実現された前記アクチュエータの動作量を取得する動作量実現値取得手段と、
前記第2のモデルの逆モデルを用いて、前記動作量の実現値から前記状態量の推定実現値を算出する状態量推定実現値算出手段と、
前記第1のモデルの逆モデルを用いて、前記状態量の推定実現値から前記制御量の推定実現値を算出する制御量推定実現値算出手段と、
所定の学習条件が満たされた場合、前記状態量の目標値と前記状態量の推定実現値との差分を算出し、その差分に基づいて前記第2のモデルを構成するパラメータの値を学習する学習手段と、
前記制御量の目標値と、前記制御量の目標値を前記第1のモデルによって変換し、さらにその変換値を前記第1のモデルの逆モデルによって再変換して得られる値との差分を算出し、その差分によって前記制御量の推定実現値を補正する制御量推定実現値補正手段と、
をさらに備えることを特徴としている。
内燃機関の特定の状態量をアクチュエータの操作によって制御し、それにより前記状態量に相関する特定の制御量を間接的に制御するとともに、前記制御量の実現値を推定し、その推定実現値を制御用のパラメータとして使用する制御装置において、
前記制御量の目標値を取得する制御量目標値取得手段と、
前記制御量と前記状態量との関係を規定したモデル(以下、第1のモデル)を用いて、前記制御量の目標値を前記状態量の目標値に変換する状態量目標値設定手段と、
前記状態量と前記アクチュエータの操作量との関係を規定したモデル(以下、第2のモデル)を用いて、前記状態量の目標値を前記アクチュエータの操作量の指令値に変換する操作量指令値設定手段と、
前記操作量の指令値に従って前記アクチュエータを操作する操作手段と、
前記アクチュエータの操作によって実際に実現された前記アクチュエータの動作量を取得する動作量実現値取得手段と、
前記第2のモデルの逆モデルを用いて、前記動作量の実現値から前記状態量の推定実現値を算出する状態量推定実現値算出手段と、
前記第1のモデルの逆モデルを用いて、前記状態量の推定実現値から前記制御量の推定実現値を算出する制御量推定実現値算出手段と、
所定の学習条件が満たされた場合、前記状態量の目標値と前記状態量の推定実現値との差分を算出し、その差分に基づいて前記第2のモデルを構成するパラメータの値を学習する学習手段と、
前記制御量の目標値と、前記制御量の目標値を前記第1のモデルによって変換し、さらにその変換値を前記第1のモデルの逆モデルによって再変換して得られる値との差分を算出し、その差分によって前記制御量の推定実現値を補正する制御量推定実現値補正手段と、
をさらに備えることを特徴としている。
第2の発明の内燃機関の制御装置は、第1の発明の内燃機関の制御装置において、
前記制御量推定実現値補正手段は、前記学習手段による前記パラメータ値の学習が完了している場合に前記制御量の推定実現値の補正を実行することを特徴としている。
前記制御量推定実現値補正手段は、前記学習手段による前記パラメータ値の学習が完了している場合に前記制御量の推定実現値の補正を実行することを特徴としている。
第1の発明の内燃機関の制御装置によれば、特定状態量の目標値とその推定実現値との差分に基づいて第2のモデルを構成するパラメータの値が学習されることにより、第2のモデルとその逆モデルとの間の設計誤差は補正される。これにより、特定状態量の目標値とその推定実現値とを一致させることが可能となる。特定状態量の目標値とその推定実現値とが一致している状況では、制御量の目標値を第1のモデルによって変換し、さらにその変換値を第1のモデルの逆モデルによって再変換して得られる値は、制御量の推定実現値に等しい。したがって、この値と制御量の目標値との差分を算出し、その差分によって制御量の推定実現値を補正することにより、制御量の目標値と推定実現値との間のずれを解消することが可能となる。このように、第1の発明の内燃機関の制御装置によれば、制御量の実現値の推定精度を向上させることができる。
第2の発明の内燃機関の制御装置によれば、第2のモデルを構成するパラメータ値の学習が完了していることを条件にして、すなわち、特定状態量の目標値とその推定実現値とが一致していることを条件にして、制御量の推定実現値の補正が行われる。これによれば、補正による効果を確実なものにしつつ、無駄な補正処理を無くして制御装置の演算負荷を抑えることができる。
本発明の実施の形態について図1乃至図3の各図を参照して説明する。
本発明の実施の形態の制御装置は、自動車用の内燃機関に適用される制御装置である。適用される内燃機関の種別には限定はなく、火花点火式エンジン、圧縮着火式エンジン、4ストロークエンジン、2ストロークエンジン、レシプロエンジン、ロータリーエンジン、単気筒エンジン、多気筒エンジン等、様々な種別の内燃機関に適用することができる。本実施の形態の制御装置は、そのような内燃機関に備えられる1以上のアクチュエータ、例えばスロットル、点火装置或いはインジェクタを制御量の目標値に従って制御する。制御量としては例えばトルク、空燃比、排気エミッション値等のパラメータが用いられ、内燃機関の性能に関する種々の要求に基づいてその目標値が設定される。
[制御装置のシステム構成]
図1は本実施の形態の制御装置のシステム構成を示すブロック図である。本制御装置は、それが有する機能別に、図1にブロックで示す各要素10,12,14,16,18,20,22,24,26に分けることができる。各要素は、それぞれが専用のハードウェアで構成されていてもよいし、ハードウェアは共有してソフトウェアによって仮想的に構成されるものでもよい。
図1は本実施の形態の制御装置のシステム構成を示すブロック図である。本制御装置は、それが有する機能別に、図1にブロックで示す各要素10,12,14,16,18,20,22,24,26に分けることができる。各要素は、それぞれが専用のハードウェアで構成されていてもよいし、ハードウェアは共有してソフトウェアによって仮想的に構成されるものでもよい。
図1における“入力”は制御量の目標値である。制御量の目標値は、状態量目標値設定部10において特定状態量、すなわち、アクチュエータの操作によって直接的に制御可能な状態量の目標値に変換される。その変換に用いられるのが、制御量と特定状態量との関係を規定したモデルAである。モデルAの表現形式は関数でもよいし、マップでもよい。
次に、特定状態量の目標値は、操作量指令値設定部12においてアクチュエータ操作量の指令値に変換される。その変換に用いられるのが、特定状態量とアクチュエータ操作量との関係を規定したモデルBである。モデルBの表現形式は関数でもよいし、マップでもよい。設定された操作量指令値は内燃機関(エンジン)2に入力され、その操作量指令値に従ってアクチュエータの操作が行われる。
本制御装置による操作によって実際に実現されたアクチュエータの動作量は、内燃機関に取り付けられたセンサ4によって取得される。状態量推定実現値算出部14は、取得したアクチュエータ動作量の実現値から特定状態量の推定実現値を算出する。その計算に用いられるのが、モデルB′すなわちモデルBの逆モデルである。次に、制御量推定実現値算出部16において、特定状態量の推定実現値から制御量の推定実現値が算出される。その計算に用いられるのが、モデルA′すなわちモデルAの逆モデルである。
以上の要素10,12,14,16からなる構成は、図4に示す従来の制御装置のシステム構成に相当する。本制御装置において特徴的なのは、次に説明する要素18,20,22,24,26からなる構成である。
本制御装置は、パラメータ学習部18を備えている。パラメータ学習部18は、状態量目標値設定部10において設定された特定状態量の目標値と、状態量推定実現値算出部14で算出された特定状態量の推定実現値との差分を算出する。そして、その差分に基づいて操作量指令値設定部12が具備するモデルBのパラメータの値を学習する。学習では、特定状態量の推定実現値を目標値に一致させるのに必要なパラメータの値が再計算され、その計算値が学習値として記憶される。或いは、パラメータの値が学習値に更新される。学習が実施されるのは、所定の学習条件が満たされた場合に限られ、学習は内燃機関の運転条件ごとに行われる。学習条件には、学習が完了していない運転条件であることと、定常状態であること(過渡状態ではないこと)が少なくとも含まれている。なお、学習されるパラメータは、モデルBが関数で表現される場合には関数に含まれる定数(係数)であり、モデルBがマップで表現される場合には個々のマップデータである。
パラメータ学習部18によってモデルBのパラメータの学習が進むことにより、特定状態量の目標値とその推定実現値とのずれは全運転条件において縮小されていく。そして、全ての運転条件において学習が完了したとき、特定状態量の目標値と推定実現値とは一致するようになる。この状態における本制御装置のシステム構成は、図2に示すシステム構成と等価となる。すなわち、状態量目標値設定部10と制御量推定実現値算出部16との間に内燃機関2が存在せず、それら2つの要素10,16が直接結合されたシステムと等価であるとみなすことができる。
図1及び図2に示すように、本制御装置では、制御量の目標値は要素20と要素24にも取り込まれている。要素20は制御量−状態量変換部である。制御量−状態量変換部20は、制御量の目標値を特定状態量に変換する。その変換には、状態量目標値設定部10で用いられるのと同じモデルAが用いられる。制御量の目標値から変換された特定状態量の値は、次に、状態量−制御量変換部22において制御量に変換される。その変換には、制御量推定実現値算出部16で用いられるのと同じモデルA′が用いられる。つまり、制御量の目標値はモデルAで変換され、さらにその逆モデルであるモデルA′で再変換される。再変換して得られた値は、オリジナルの制御量の目標値とともに要素24に取り込まれる。
要素24はモデル誤差算出部であって、オリジナルの制御量の目標値と、それをモデルA及びモデルA′で変換して得られた値との差分が算出される。この差分は、モデルAとその逆モデルであるモデルA′との間の設計誤差に相当する。モデルA′が真の逆モデルであるならば、モデル誤差算出部24で算出される差分はゼロとなる。しかし、制御装置に実装される現実的なモデルA,A′の設計精度では、この差分をゼロにすることは難しい。
そこで、本制御装置は、モデル誤差算出部24で算出された差分によって制御量の推定実現値を補正する。その補正はモデル誤差補正部26で行われる。モデル誤差補正部26は、制御量推定実現値算出部16で算出された制御量の推定実現値に、モデル誤差算出部24で算出された差分、すなわちモデルAとモデルA′との間の設計誤差を加算する。その結果、図2に示す等価なシステム構成から分かるように、制御量の推定実現値に含まれる誤差分は相殺され、制御量の目標値に相当する成分のみが残ることになる。図1及び図2における“出力”は、この補正後の制御量の推定実現値であり、それは制御量の目標値すなわち“入力”に一致する。
以上述べたように、本制御装置によれば、制御量の目標値と推定実現値との間のずれを解消し、制御量の実現値の推定精度を向上させることができる。なお、モデル誤差補正部26における制御量の推定実現値の補正は、パラメータ学習部18によるモデルBの学習が完了していることを条件とすることが望ましい。このような条件を設けることで、補正による効果を確実なものにしつつ、無駄な補正処理を無くして制御装置の演算負荷を抑えることができる。
[制御装置の具体的実施例]
次に、本制御装置の具体的な実施例について説明する。図3はその具体的な実施例を示すブロック図である。この実施例では制御量としてトルクが用いられ、トルクを制御するアクチュエータとしてスロットルが用いられる。
次に、本制御装置の具体的な実施例について説明する。図3はその具体的な実施例を示すブロック図である。この実施例では制御量としてトルクが用いられ、トルクを制御するアクチュエータとしてスロットルが用いられる。
トルクの目標値は、空気量目標値設定部30において吸入空気量の目標値に変換される。空気量はスロットルの操作によって直接的に制御可能な状態量である。その変換には、トルク−KLマップが用いられる。このマップは、トルクと吸入空気量とをエンジン回転数や点火時期等の機関情報をキーにして関連付けたマップである。
吸入空気量の目標値は、スロットル開度設定部32においてスロットル開度の指令値に変換される。その変換には、スロットル開度の変化と吸入空気量の変化との因果関係を逆方向にモデル化したエア逆モデルが用いられる。エア逆モデルは、より詳しくは、スロットルモデルの逆モデル、吸気管モデルの逆モデル、及び吸気弁モデルの逆モデルから構成されている。スロットル開度設定部32で設定されたスロットル開度指令値は内燃機関2に入力され、その指令値に従ってスロットルの操作が行われる。
スロットルの実際の開度はセンサ(スロットル開度センサ)4によって取得される。空気量推定実現値算出部34では、スロットル開度の実現値から吸入空気量の推定実現値が算出される。その計算には、スロットル開度の変化と吸入空気量の変化との因果関係を順方向にモデル化したエアモデルが用いられる。エアモデルは、スロットルモデルと吸気管モデルと吸気弁モデルとから構成されている。エアモデルと前述のエア逆モデルとでは、その基本となるモデル計算式は共通している。ただし、エアモデルには、エア逆モデルには無い機能が備えられている。その機能とは、エアフローメータ(図示略)の出力値によって、エアモデルを構成するスロットルモデルの流量係数を修正する機能である。スロットルモデルにより算出されるスロットル通過空気量を実際のスロットル通過空気量に一致させるように流量係数の修正が行われている。
吸入空気量の推定実現値は、トルク推定実現値算出部36においてトルクの推定実現値に変換される。その変換には、KL−トルクマップが用いられる。このマップは、トルクと吸入空気量とをエンジン回転数や点火時期等の機関情報をキーにして関連付けたマップであって、前述のトルク−KLマップの逆マップである。
図3に示す実施例においてもパラメータ学習部38が備えられる。パラメータ学習部38は、吸入空気量の目標値とその推定実現値との差分を算出する。そして、その差分に基づいてエア逆モデルのパラメータの値を学習する。詳しくは、スロットルモデルの逆モデルや吸気弁モデルの逆モデルの計算式に含まれる定数(係数)の値が学習される。学習は、内燃機関の運転状態が定常状態にあり、かつ、現在の運転条件において学習が完了していないことを条件として実行される。この学習が完了することで、定常状態で生じる吸入空気量の目標値とその推定実現値との誤差は解消され、両者は一致するようになる。
パラメータ学習部38による学習が完了していることを条件にして、トルクの目標値はトルク−KL変換部40に取り込まれる。トルク−KL変換部40では、前述のトルク−KLマップによってトルクの目標値が吸入空気量に変換される。さらに、次のKL−トルク変換部42では、前述のKL−トルクマップによって吸入空気量がトルクに変換される。KL−トルク変換部42で得られたトルクは、オリジナルのトルク目標値とともにマップ誤差算出部44に取り込まれ、両者の誤差が算出される。マップ誤差算出部44で算出されたトルク誤差は、トルク−KLマップとその逆マップであるKL−トルクマップとの間の設計誤差に相当する。
マップ誤差補正部46は、トルク推定実現値算出部36で算出されたトルクの推定実現値に、マップ誤差算出部44で算出されたトルク誤差を加算する。これにより、トルクの推定実現値に含まれるトルク誤差は相殺されて、定常状態でのトルクの目標値と推定実現値との間のずれは解消される。したがって、この実施例の制御装置によれば、トルクの実現値を高い精度で推定することができる。トルクの推定実現値は、例えば、点火時期を決定するためのパラメータとして用いることができる。また、ドライバビリティの判断にも用いることができる。
2 エンジン
4 センサ
10 状態量目標値設定部
12 操作量指令値設定部
14 状態量推定実現値算出部
16 制御量推定実現値算出部
18 パラメータ学習部
20 制御量−状態量変換部
22 状態量−制御量変換部
24 モデル誤差算出部
26 モデル誤差補正部
30 空気量目標値設定部
32 スロットル開度設定部
34 空気量推定実現値算出部
36 トルク推定実現値算出部
38 パラメータ学習部
40 トルク−KL変換部
42 KL−トルク変換部
44 マップ誤差算出部
46 マップ誤差補正部
4 センサ
10 状態量目標値設定部
12 操作量指令値設定部
14 状態量推定実現値算出部
16 制御量推定実現値算出部
18 パラメータ学習部
20 制御量−状態量変換部
22 状態量−制御量変換部
24 モデル誤差算出部
26 モデル誤差補正部
30 空気量目標値設定部
32 スロットル開度設定部
34 空気量推定実現値算出部
36 トルク推定実現値算出部
38 パラメータ学習部
40 トルク−KL変換部
42 KL−トルク変換部
44 マップ誤差算出部
46 マップ誤差補正部
Claims (2)
- 内燃機関の特定の状態量をアクチュエータの操作によって制御し、それにより前記状態量に相関する特定の制御量を間接的に制御するとともに、前記制御量の実現値を推定し、その推定実現値を制御用のパラメータとして使用する制御装置において、
前記制御量の目標値を取得する制御量目標値取得手段と、
前記制御量と前記状態量との関係を規定したモデル(以下、第1のモデル)を用いて、前記制御量の目標値を前記状態量の目標値に変換する状態量目標値設定手段と、
前記状態量と前記アクチュエータの操作量との関係を規定したモデル(以下、第2のモデル)を用いて、前記状態量の目標値を前記アクチュエータの操作量の指令値に変換する操作量指令値設定手段と、
前記操作量の指令値に従って前記アクチュエータを操作する操作手段と、
前記アクチュエータの操作によって実際に実現された前記アクチュエータの動作量を取得する動作量実現値取得手段と、
前記第2のモデルの逆モデルを用いて、前記動作量の実現値から前記状態量の推定実現値を算出する状態量推定実現値算出手段と、
前記第1のモデルの逆モデルを用いて、前記状態量の推定実現値から前記制御量の推定実現値を算出する制御量推定実現値算出手段と、
所定の学習条件が満たされた場合、前記状態量の目標値と前記状態量の推定実現値との差分を算出し、その差分に基づいて前記第2のモデルを構成するパラメータの値を学習する学習手段と、
前記制御量の目標値と、前記制御量の目標値を前記第1のモデルによって変換し、さらにその変換値を前記第1のモデルの逆モデルによって再変換して得られる値との差分を算出し、その差分によって前記制御量の推定実現値を補正する制御量推定実現値補正手段と、
をさらに備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。 - 前記制御量推定実現値補正手段は、前記学習手段による前記パラメータ値の学習が完了している場合に前記制御量の推定実現値の補正を実行することを特徴とする請求項1記載の内燃機関の制御装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2010097204A JP2011226393A (ja) | 2010-04-20 | 2010-04-20 | 内燃機関の制御装置 |
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Family Applications (1)
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2010
- 2010-04-20 JP JP2010097204A patent/JP2011226393A/ja active Pending
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