JP2011219316A - カーボンナノチューブ配向集合体の製造装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】触媒基板10上に原料ガスを供給してカーボンナノチューブ配向集合体を成長させる成長炉3aと、成長炉3a内のガスを排気する排気管23と、を備えるカーボンナノチューブ配向集合体の製造装置において、前記原料ガスと化学反応を起こすことで前記排気管内23に付着する炭素固形物を低減する反応ガスを噴射する反応ガス噴射部16、17を備えている。
【選択図】図2
Description
を備えるカーボンナノチューブ配向集合体の製造装置において、前記原料ガスと化学反応を起こすことで前記排気管内に付着する炭素固形物を低減する反応ガスを噴射する反応ガス噴射部を備えていることを特徴とする。
本発明において製造されるカーボンナノチューブ配向集合体(以下、「CNT配向集合体」ということもある。)とは、基材から成長した多数のCNTが特定の方向に配向した構造体をいう。CNT配向集合体の好ましい比表面積は、CNTが主として未開口のものにあっては、600m2/g以上であり、CNTが主として開口したものにあっては、1300m2/g以上である。比表面積が600m2/g以上の未開口のもの、若しくは1300m2/g以上の開口したものは、金属などの不純物、若しくは炭素不純物を重量の数十パーセント(40%程度)より低く抑えることができるので好ましい。
1.CNTの長手方向に平行な第1方向と、第1方向に直交する第2方向とからX線を入射してX線回折強度を測定(θ−2θ法)した場合に、第2方向からの反射強度が、第1方向からの反射強度より大きくなるθ角と反射方位とが存在し、且つ第1方向からの反射強度が、第2方向からの反射強度より大きくなるθ角と反射方位とが存在すること。
基材はその表面にカーボンナノチューブの触媒を担持することのできる部材であればよく、400℃以上の高温でも形状を維持できるものが好ましい。CNTの製造に実績のある材質としては、例えば、鉄、ニッケル、クロム、モリブデン、タングステン、チタン、アルミニウム、マンガン、コバルト、銅、銀、金、白金、ニオブ、タンタル、鉛、亜鉛、ガリウム、インジウム、ガリウム、ゲルマニウム、砒素、インジウム、燐、及びアンチモンなどの金属、並びにこれらの金属を含む合金及び酸化物、又はシリコン、石英、ガラス、マイカ、グラファイト、及びダイヤモンドなどの非金属、並びにセラミックなどが挙げられる。金属材料はシリコン及びセラミックと比較して、低コストであるから好ましく、特に、Fe−Cr(鉄−クロム)合金、Fe−Ni(鉄−ニッケル)合金、Fe−Cr−Ni(鉄−クロム−ニッケル)合金などは好適である。
この基材の表面及び裏面の少なくともいずれか一方には、浸炭防止層が形成されてもよい。もちろん、表面及び裏面の両面に浸炭防止層が形成されていることが望ましい。この浸炭防止層は、カーボンナノチューブの生成工程において、基材が浸炭されて変形してしまうのを防止するための保護層である。
基材、若しくは浸炭防止層上には、触媒が担持されている。触媒としては、例えば、CNTの製造に実績のあるものを適宜用いてもよく、具体的には鉄、ニッケル、コバルト、モリブデン、並びに、これらの塩化物及び合金、またこれらが、さらにアルミニウム、アルミナ、チタニア、窒化チタン、酸化シリコンと複合化、また層状になっていてもよい。例えば、鉄−モリブデン薄膜、アルミナ−鉄薄膜、アルミナ−コバルト薄膜、及びアルミナ−鉄−モリブデン薄膜、アルミニウム−鉄薄膜、アルミニウム−鉄−モリブデン薄膜などを例示することができる。触媒の存在量としては、例えば、これまでのCNTの製造に実績のある範囲で使用してもよく、鉄を用いる場合、製膜厚さは、0.1nm以上100nm以下が好ましく、0.5nm以上5nm以下がさらに好ましく、0.8nm以上2nm以下が特に好ましい。
還元ガスは、一般的には、触媒の還元、触媒のCNTの成長に適合した状態の微粒子化促進、触媒の活性向上の少なくとも一つの効果を持つ、成長温度において気体状のガスである。還元ガスとしては、例えば、CNTの製造が可能なものを用いればよく、典型的には還元性を有したガスであり、例えば水素ガス、アンモニア、水蒸気及びそれらの混合ガスを適用することができる。また、水素ガスをヘリウムガス、アルゴンガス、窒素ガスなどの不活性ガスと混合した混合ガスでもよい。還元ガスは、フォーメーション工程で用いてもよく、適宜成長工程に用いてもよい。
本発明においてCNTの生成に用いる原料としては、例えば、これまでのCNTの製造に実績のあるものを適宜用いてもよく、一般的には、成長温度において原料炭素源を有するガスである。なかでもメタン、エタン、エチレン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンプロピレン、及びアセチレンなどの炭化水素が好適である。この他にも、メタノール、エタノールなどの低級アルコール、及び、アセトン、一酸化炭素などの低炭素数の含酸素化合物でもよい。これらの混合物も使用可能である。またこの原料ガスは、不活性ガスで希釈されていてもよい。
不活性ガスとしては、CNTが成長する温度で不活性であり、触媒の活性を低下させず、且つ成長するCNTと反応しないガスであればよく、例えば、これまでのCNTの製造に実績のあるものを適宜用いてもよく、ヘリウム、アルゴン、窒素、ネオン、クリプトン、水素、及び塩素など、並びにこれらの混合ガスを例示でき、特に窒素、ヘリウム、アルゴン、及びこれらの混合ガスが好適である。原料ガスの種類によっては水素と化学反応を生じる場合がある。その場合にはCNTの成長が阻害されない程度に水素量を低減する必要が生じる。例えば、原料ガスとしてエチレンを用いる場合、水素濃度は1%以下が好ましい。
CNTの成長工程において、触媒賦活物質を添加してもよい。触媒賦活物質の添加によって、カーボンナノチューブの製造効率及び純度をより一層改善することができる。ここで用いる触媒賦活物質としては、例えば酸素を含む物質であり、成長温度でCNTに多大なダメージを与えない物質が好ましく、水の他に、例えば、硫化水素、酸素、オゾン、酸性ガス、酸化窒素、一酸化炭素、及び二酸化炭素などの低炭素数の含酸素化合物、あるいはエタノール、メタノールなどのアルコール類、テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトンなどのケトン類、アルデヒドロ類、エステル類、酸化窒素、並びにこれらの混合物が、より有効である。この中でも、水、酸素、二酸化炭素、及び一酸化炭素、あるいはテトラヒドロフランなどのエーテル類が好ましく、特に水が好適である。
高炭素濃度環境とは、全流量に対する原料ガスの割合が2〜20%程度の成長雰囲気のことをいう。触媒賦活物質を用いない化学気相成長法では、炭素濃度を高くするとCNTの合成過程で発生する炭素系不純物が触媒微粒子を被覆し、触媒が容易に失活し、CNTが効率良く成長できないので、全流量に対する原料ガスの割合が0.1〜1%程度の成長雰囲気(低炭素濃度環境)で合成を行う。
炉内圧力としては102Pa以上、107Pa(100気圧)以下が好ましく、104Pa以上、3×105Pa(3大気圧)以下がさらに好ましい。
CNTを成長させる反応温度は、金属触媒、原料炭素源、及び反応圧力などを考慮して適宜に定められるが、触媒失活の原因となる副次生成物を排除するために触媒賦活物質を添加する工程を含む場合は、その効果が十分に発現する温度範囲に設定することが望ましい。つまり、最も望ましい温度範囲としては、アモルファスカーボン、グラファイトなどの副次生成物を触媒賦活物質が除去し得る温度を下限値とし、主生成物であるCNTが触媒賦活物質によって酸化されない温度を上限値とすることである。
フォーメーション工程とは、基材に担持された触媒の周囲環境を還元ガス環境とすると共に、触媒又は還元ガスの少なくとも一方を加熱する工程である。この工程により、触媒の還元、触媒のCNTの成長に適合した状態の微粒子化促進、触媒の活性向上の少なくとも一つの効果が現れる。例えば、触媒がアルミナ−鉄薄膜である場合、鉄触媒は還元されて微粒子化し、アルミナ層上にナノメートルサイズの鉄微粒子が多数形成される。これにより触媒はCNT配向集合体の製造に好適な触媒に調製される。この工程を省略してもCNTを製造することは可能であるが、この工程を行うことでCNT配向集合体の製造量及び品質を飛躍的に向上させることができる。
成長工程とは、フォーメーション工程によってCNT配向集合体の製造に好適な状態となった触媒の周囲環境を原料ガス環境とすると共に、触媒及び原料ガスの少なくとも一方を加熱することにより、CNT配向集合体を成長させる工程である。
冷却工程とは、成長工程後にCNT配向集合体、触媒、基材を冷却ガス下に冷却する工程である。成長工程後のCNT配向集合体、触媒、基材は高温状態にあるため、酸素存在環境下に置かれると酸化してしまうおそれがある。それを防ぐために冷却ガス環境下でCNT配向集合体、触媒、基材を例えば400℃以下、さらに好ましくは200℃以下に冷却する。冷却ガスとしては不活性ガスが好ましく、特に安全性、コストなどの点から窒素であることが好ましい。
炭素固形物とは、原料ガスを加熱することで発生する炭化水素の環化物のことである。エチレン10%を含む原料ガスを1s程度800℃加熱した場合に発生する炭素固形物は分子量300〜900あたりにピークを持つブロードな分子量分布を持ち、低分子成分としてはナフタレン、ビフェニレン、フルオレン、フェナントレン、アントラセン、ピレンなどを含んでいる。炭素固形物は空気中で700℃以上に加熱することで、ガス化することができる。
図1〜3に本発明に係るCNT配向集合体製造装置の一実施形態を示す。図1は、製造装置100の構造を模式的に示す図である。図2は、製造装置100における成長炉3a内を模式的に示す図である。図3は、製造装置100における成長炉3aが炭素固形物付着防止手段を備える形態の構造を模式的に示す図である。
入口パージ部1とは基材入口から製造装置100の有する炉内へ外気が混入することを防止するための装置一式のことである。製造装置100内に搬送された触媒基板10(表面に触媒を担持した基材)の周囲環境をパージガスで置換する機能を有する。具体的には、パージガスを保持するための炉又はチャンバ、パージガスを噴射するための噴射部などが設けられている。パージガスは不活性ガスが好ましく、特に安全性、コストなどの点から窒素であることが好ましい。ベルトコンベア方式など触媒基板10の入口が常時開口している場合は、パージガス噴射部としてパージガスを上下からシャワー状に噴射するガスカーテン装置とし、装置入口から外気が混入することを防止することが好ましい。後述するガス混入防止手段11のみでも炉内への外気混入を防止することは可能であるが、装置の安全性を高めるために入口パージ部1を備えていることが好ましい。
フォーメーションユニット2とは、フォーメーション工程を実現するための装置一式のことであり、触媒基板10の表面に形成された触媒の周囲環境を還元ガス環境とすると共に、触媒と還元ガスとの少なくとも一方を加熱する機能を有する。具体的には、還元ガスを保持するためのフォーメーション炉2a、還元ガスを噴射するための還元ガス噴射部2b、フォーメーション炉2a内のガスを排気するための排気フード2d、触媒及び還元ガスの少なくとも一方を加熱するためのヒーター2cなどが挙げられる。ヒーター2cとしては400℃から1100℃の範囲で加熱することができるものが好ましく、例えば、抵抗加熱ヒーター、赤外線加熱ヒーター、電磁誘導式ヒーターなどが挙げられる。
成長ユニット3とは、成長工程を実現するための装置一式のことであり、フォーメーション工程によってCNT配向集合体の製造に好適な状態となった触媒の周囲環境を原料ガス環境とすると共に、触媒及び原料ガスの少なくとも一方を加熱することでCNT配向集合体を成長させる機能を有する。具体的には、原料ガス環境を保持するための成長炉3a、原料ガスを噴射するための原料ガス噴射部3b、成長炉3a内のガスを排気するための排気フード3d、触媒と原料ガスの少なくとも一方を加熱するためのヒーター3cなどが挙げられる。原料ガス噴射部3b及び排気フード3dはそれぞれ少なくとも1つ以上備えられており、全ての原料ガス噴射部3bから噴射される全ガス流量と、全ての排気フード3dから排気される全ガス流量は、ほぼ同量又は同量であることが好ましい。このようにすることが、原料ガスが成長炉3a外へ流出すること、及び成長炉3a外のガスを成長炉3a内に流入させることを防止する。後で述べるガス混入防止手段12を併用することによって、原料ガス及び/又は触媒賦活物質の触媒基板10上における濃度分布、流速分布、及び成長炉3a内におけるガスの流れパターンは、成長ユニット3の原料ガス噴射部3b及び排気フード3dの設計によって如何様にも制御することが可能になる。よって、CNT配向集合体の連続製造に好適な製造装置を実現できる。ヒーター3cとしては400℃から1100℃の範囲で加熱することができるものが好ましく、例えば、抵抗加熱ヒーター、赤外線加熱ヒーター、電磁誘導式ヒーターなどが挙げられる。さらに成長炉3a内に触媒賦活物質を添加するための触媒賦活物質添加手段を備えているとよい。
触媒賦活物質添加手段(図示せず)は触媒賦活物質を成長炉3a内に添加するものであり、例えば、原料ガス中に添加したり、あるいは成長炉3a内の空間にある触媒の周囲環境に触媒賦活物質を直接添加したりするための装置一式のことである。触媒賦活物質の供給手段としては、特に限定されることはないが、例えば、バブラーによる供給、触媒賦活物質を含有した溶液を気化しての供給、気体そのままでの供給、及び固体触媒賦活物質を液化・気化しての供給などが挙げられ、気化器、混合器、攪拌器、希釈器、噴霧器、ポンプ、及びコンプレッサなどの各種の供給機器を用いた供給システムを構築することができる。触媒賦活物質添加手段は成長ユニット3に設けられており、かかる供給機器を介して成長炉3aと接続されている。また、触媒賦活物質の供給管などに触媒賦活物質濃度の計測装置を設けていてもよい。この出力値を用いてフィードバック制御することにより、経時変化の少ない安定な触媒賦活物質の供給を行うことができる。
搬送ユニット6とは、少なくともフォーメーションユニット2から成長ユニット3まで触媒基板10を搬送するために必要な装置一式のことである。具体的には、ベルトコンベア方式におけるメッシュベルト6a、減速機付き電動モータを用いたベルト駆動部6bなどが挙げられる。
ガス混入防止手段11、12、13とは、外気と製造装置100の炉内のガスとが相互に混入すること、又は製造装置100内の炉(例えば、フォーメーション炉2a、成長炉3a、冷却炉4a)間でガス同士が相互に混入することを防止する機能を実現するための装置一式のことであり、触媒基板10の搬送のための出入口近傍、又は製造装置100内の空間と空間とを接続する接続部7、8、9に設置される。このガス混入防止手段11、12、13は、各炉における触媒基板10の入口及び出口の開口面に沿ってシールガスを噴出するシールガス噴射部11b、12b、13bと、主に噴射されたシールガス(及びその他近傍のガス)を各炉内に入らないように吸引して製造装置100の外部に排気する排気部11a、12a、13aとを、それぞれ少なくとも1つ以上を備えている。シールガスが炉の開口面に沿って噴射されることで、シールガスが炉の出入り口を塞ぎ、炉外のガスが炉内に混入することを防ぐ。また、当該シールガスを製造装置100外に排気することにより、当該シールガスが炉内に混入することを防ぐ。シールガスは不活性ガスであることが好ましく、特に安全性、コストなどの点から窒素であることが好ましい。シールガス噴射部11b、12b、13bと排気部11a、12a、13aの配置としては、1つのシールガス噴射部に隣接して1つの排気部を配置してもよいし、メッシュベルトを挟んでシールガス噴射部に対面するように排気部を配置してもよいが、ガス混入防止手段の全体の構成が、炉長方向に対称な構造となるようにシールガス噴射部及び排気部を配置することが好ましい。例えば、図1に示すように、1つの排気部の両端にシールガス噴射部を2つ配置し、排気部を中心にして炉長方向に対称な構造とするとよい。また、シールガス噴射部11b、12b、13bから噴射される全ガス流量と排気部から排気される全ガス流量はほぼ同量であることが好ましい。これによって、ガス混入防止手段11、12、13を挟んだ両側の空間からのガスが相互に混入することを防止するとともに、シールガスが両側の空間に流出することも防止することが可能になる。このようなガス混入防止手段12、13を成長炉3aの両端に設置することで、シールガスの流れと成長炉3a内のガスの流れが相互に干渉することを防止できる。よって、原料ガス及び/又は触媒賦活物質の触媒基板10上における濃度分布、流速分布、及び成長炉3a内におけるガスの流れパターンは、成長ユニット3の原料ガス噴射部3b及び排気フード3dの設計によって如何様にも制御することが可能になる。また、シールガスの成長炉3a内流入によるガス流れの乱れも防止されている。よって、CNT配向集合体の連続製造に好適な製造装置100を実現できる。
原料ガスがフォーメーション炉2a内空間に混入すると、CNTの成長に悪影響を及ぼす。フォーメーション炉2a内還元ガス環境中の炭素原子個数濃度を5×1022個/m3以下、より好ましくは1×1022個/m3以下に保つように、ガス混入防止手段11、12により原料ガスのフォーメーション炉2a内への混入を防止すると良い。ここで炭素原子個数濃度は、還元ガス環境中の各ガス種(i=1、2、・・・)に対して、濃度(ppmv)をD1、D2・・・、標準状態での密度(g/m3)をρ1、ρ2・・・、分子量をM1、M2・・・、ガス分子1つに含まれる炭素原子数をC1、C2・・・、アボガドロ数をNAとして下記数式(1)で計算している。
各ユニットの炉内空間を空間的に接続し、触媒基板10がユニットからユニットへ搬送される時に、触媒基板10が外気に曝されることを防ぐための装置一式のことである。具体的には、触媒基板10の周囲環境と外気を遮断し、触媒基板10をユニットからユニットへ通過させることができる炉又はチャンバなどが挙げられる。
冷却ユニット4とは、CNT配向集合体が成長した触媒基板10を冷却するために必要な装置一式のことである。成長工程後のCNT配向集合体、触媒、基材の酸化防止と冷却とを実現する機能を有する。具体的には、冷却ガスを保持するための冷却炉4a、水冷式の場合は冷却炉内空間を囲むように配置した水冷冷却管4c、空冷式の場合は冷却炉内空間に冷却ガスを噴射する冷却ガス噴射部4bなどが挙げられる。また、水冷方式と空冷方式とを組み合わせてもよい。
出口パージ部5とは触媒基板10の出口から装置炉内へ外気が混入することを防止するための装置一式のことである。触媒基板10の周囲環境をパージガス環境にする機能を有する。具体的には、パージガス環境を保持するための炉又はチャンバ、パージガスを噴射するための噴射部などが挙げられる。パージガスは不活性ガスが好ましく、特に安全性、コストなどの点から窒素であることが好ましい。ベルトコンベア方式など触媒基板10の出口が常時開口している場合は、パージガス噴射部としてパージガスを上下からシャワー状に噴射するガスカーテン装置とし、装置出口から外気が混入することを防止することが好ましい。ガス混入防止手段13のみでも炉内への外気混入を防止することは可能であるが、装置の安全性を高めるために出口パージ部5を備えていることが好ましい。
還元ガス、原料ガス、触媒賦活物質の噴射部として、触媒基板10の触媒形成面を臨む位置に設けられた複数の噴出孔を備えるシャワーヘッドを用いてもよい。臨む位置とは、各噴出孔の、噴射軸線が触媒基板10の法線と成す角が0以上90°未満となるように設けられている。つまりシャワーヘッドに設けられた噴出孔から噴出するガス流の方向が、触媒基板10に概ね直交するようにされている。
フォーメーションユニット2及び成長ユニット3の排気フード2d、3dとしては、還元ガス、又は原料ガス及び触媒賦活物質を、触媒基板10上から均一に排気することができる構造であることが好ましい。具体的には、炉の両側壁に複数の排気孔を設けて、各排気孔から排気されるガスを1つの排気管へと集約するような排気フードを炉の両側面外側に設置してもよい。その場合、各排気孔から排気されるガス流量が炉長方向に均一になるように、排気フードの構造を設計することが好ましい。これによって、触媒基板10上のガスを均一に且つ速やかに排気することが可能になり、CNT配向集合体の連続製造に好適な製造装置を実現できる。
反応ガスとは、成長炉3a内のガスを排気する排気管23内に付着する炭素固形物を低減するガスのことであり、例えば、原料ガスを低級アルカン類、一酸化炭素、二酸化炭素に変化させることで、排気管中に付着する炭素固形物の生成を抑制する機能を有するガスである。反応ガスとしては、水素原子及び/又は酸素原子を含むものであることが好ましく、具体例としては、水素、アンモニア、酸素、オゾン、水蒸気などが挙げられるが、取扱いの容易さ及び炭素固形物抑制効果の大きさから水素または酸素が好ましい。原料ガスと反応ガスとの化学反応を効率良く進めるために、混合後の原料ガスと反応ガスの温度を高温に保つ、反応ガスを高濃度にする、金属触媒を用いる等をしてもよい。混合後の原料ガスと反応ガスの温度を高温に保つ場合、その温度は400℃以上、より好ましくは600℃以上がよい。反応ガスの濃度としては排気ガス全量に対する体積分率(標準状態換算)として、5%以上、より好ましくは9%以上になるように原料ガス中に供給する反応ガス量を制御するのがよい。反応ガスとして酸素を用いる場合は爆発の危険を回避するため、使用する原料炭素源に応じて決定される限界酸素濃度以下に供給量を抑えなければならない。また、酸素原子を含むガス(酸素、オゾン、水)以外のガスを用いる場合は100%より小さくするとよい。また、金属触媒としてニッケル、ルテニウム、パラジウム、白金などを用いてもよい。この反応ガスは不活性ガスで希釈されていてもよい。
排気管23内の原料ガスに反応ガスを噴射する反応ガス噴射部16、17としては、反応ガスが触媒およびCNT成長に使われる前の原料ガスと接触しないように、且つCNT成長に使われた後の原料ガスとはよく混合されて排気されるように設計される必要がある。例えば、図2に示すように、成長炉3a内の触媒基板10の下方に炉長方向に伸びた管を設置し、管の両側面に等間隔で開けた穴から反応ガスが均等に噴射するように反応ガス噴射部16を設計する。さらには、成長炉3a両側壁の排気孔から排気される原料ガスを集約する排気フード内に直接反応ガスを噴射するように反応ガス噴射部17を設計して、噴射部が複数あってもよい。原料ガスと反応ガスの混合ガスが高温である程、排気ガスと反応ガスの化学反応が進み炭素固形物の生成を防止することができるので、反応ガスを予め高温に加熱してもよい。
排気流量安定化部20とは、成長炉3aを含む炉内のガスを排気する排気管に備えられ、長時間製造による排気管内への炭素固形物付着が生じたとしても、排気管からの排気流量を経時的に安定化することができる装置のことである。少なくとも、排気管内の排気流量を測定するための排気流量測定手段14と、排気管内の排気流量を可変するための排気流量可変手段15を備えている。また、炭素固形物付着防止手段をさらに備えていてもよい(例えば図3に示す炭素固形物付着防止手段18)。
排気流量測定手段14とは、製造装置100内のガスを排気する排気管に備えられ、排気管から排気されるガスの排気流量を測定するための装置のことである。例えば、排気管内の離れた少なくとも2箇所の圧力差を測定することで、排気管内の排気流量を測定する機能を有していてもよく、排気管内のガス温度を測定する機能をも有していることが好ましい。具体的には、圧力差を測定するための差圧計、ガス温度を測定するための熱電対などが挙げられる。現状市販されている差圧計で精度良く測定できる圧力差は0.1Pa以上、より好ましくは1Pa以上であるため、排気流量の測定範囲で生じる圧力差が0.1Pa以上、より好ましくは1Pa以上になるように、測定する2箇所を十分に離すか、測定可能な圧力損失を生じさせるための圧力損失部を測定区間中に挿入することが必要である。また、流量測定精度を向上させるなどを目的として、圧力測定箇所を3箇所以上に増やしても良い。圧力測定箇所は距離が近すぎると圧力差が正確に測定できない。経験上、圧力測定区間は排気管内径をDとして0.5D以上離して測定することが好ましい。
排気流量可変手段15とは、製造装置100内のガスを排気する排気管に備えられ、排気管から排気されるガス流量を可変するための装置のことである。排気流量可変手段15は、排気管ごとに排気される流量を可変できる機能を有している。また、排気流量可変手段15は、排気流量測定手段14が測定した結果に基づいて、排気管内の排気流量を可変する。排気流量可変手段15として、具体的には、ガスを吸引するためのブロアー、ポンプ、エジェクターなどのガス吸引装置、ボールバルブ、シリンジバルブ、ゲートバルブなどの流量調整弁等が挙げられる。また、排気流量可変手段15として、ガス(空気、窒素などが好ましい)を駆動流体としたエジェクターを用いて、駆動流体の流量をマスフローコントローラーで制御することでエジェクターの吸引力を制御する方法を用いるものであれば、排気流量の変動が抑えられるため、CNT配向集合体の製造に、より好ましい。
炭素固形物付着防止手段とは、前記排気管内を流通する前記原料ガスと前記反応ガスの混合ガスを高温に加熱及び/又は保温することで、前記排気管内に炭素固形物が付着することを防止するものであり、本実施形態においては、排気流量測定手段14によって圧力差が測定される区間における排気管内を高温に加熱及び/又は保温することで、前記区間の排気管内に炭素固形物が付着することを防止するための装置のことであり、図3に示すように成長ユニット3に接続している排気流量安定化部20及びそれにつながる排気管23に設けられているが(炭素固形物付着防止手段18)、他の炉等に接続している排気管、排気流量安定化部20に設けられていてもよい。炭素固形物付着防止手段を備えることによって、前記区間の排気管内に付着する炭素固形物が減少するので、長時間に亘って正確な排気流量の測定が可能になる。よって、CNT配向集合体の連続製造をより長時間に亘って安定的に保つことが可能になる。
製造装置100におけるフォーメーション炉2a、還元ガス噴射部2b、フォーメーションユニット2の排気フード2d、成長炉3a、原料ガス噴射部3b、成長ユニット3の排気フード3d、メッシュベルト6a、ガス混入防止手段11、12、13のシールガス噴射部11b、12b、13b及び排気部11a、12a、13a、接続部7、8、9の炉、排気流量安定化部20などの各部品は還元ガス又は原料ガスに曝される。それら部品の材質としては、高温に耐えられ、加工の精度と自由度、コストの点から耐熱合金が好ましい。耐熱合金としては、耐熱鋼、ステンレス鋼、ニッケル基合金などが挙げられる。Feを主成分として他の合金濃度が50%以下のものが耐熱鋼と一般に呼ばれる。また、Feを主成分として他の合金濃度が50%以下であり、Crを約12%以上含有する鋼は一般にステンレス鋼と呼ばれる。また、ニッケル基合金としては、NiにMo、Cr及びFeなどを添加した合金が挙げられる。具体的には、SUS310、インコネル600、インコネル601、インコネル625、インコロイ800、MCアロイ、Haynes230アロイなどが耐熱性、機械的強度、化学的安定性、低コストなどの点から好ましい。
比表面積とは液体窒素の77Kでの吸脱着等温線を測定し、この吸脱着等温曲線からBrunauer,Emmett,Tellerの方法から計測した値のことである。比表面積は、BET比表面積測定装置((株)マウンテック製HM model−1210)を用いて測定した。
G/D比とはCNTの品質を評価するのに一般的に用いられている指標である。ラマン分光装置によって測定されるCNTのラマンスペクトルには、Gバンド(1600cm−1付近)とDバンド(1350cm−1付近)と呼ばれる振動モードが観測される。GバンドはCNTの円筒面であるグラファイトの六方格子構造由来の振動モードであり、Dバンドは結晶欠陥由来の振動モードである。よって、GバンドとDバンドのピーク強度比(G/D比)が高いものほど、欠陥量が少なく品質の高いCNTと評価できる。
本実施例の製造装置図を図1に示す。製造装置100は入口パージ部1、フォーメーションユニット2、成長ユニット3、冷却ユニット4、出口パージ部5、搬送ユニット6、接続部7〜9、ガス混入防止手段11〜13から構成した。フォーメーション炉2a、成長炉3a、還元ガス噴射部2b、原料ガス噴射部3b、冷却ガス噴射部4b、排気フード2d、3d、ガス混入防止手段11、12、13の排気部11a、12a、13a及びシールガス噴射部11b、12b、13b、メッシュベルト6a、接続部7、8、9の各材質はSUS310とし、その表面は溶融アルミニウムめっき処理を施した。
・パージガス:窒素60sLm
フォーメーションユニット2
・炉内温度:830℃
・還元ガス:窒素11.2sLm、水素16.8sLm
・処理時間:28分
成長ユニット3
・炉内温度:830℃
・原料ガス:窒素16.04sLm、エチレン1.8sLm、
水蒸気含有窒素0.15〜0.5sLm(水分量16000ppmv)
・処理時間:11分
冷却ユニット4
・冷却水温度:30℃
・不活性ガス:窒素10sLm
・冷却時間:30分
出口パージ部5
・パージガス:窒素50sLm
ガス混入防止手段11
・シールガス噴射部11b:窒素20sLm
ガス混入防止手段12
・シールガス噴射部12b:窒素25sLm
ガス混入防止手段13
・シールガス噴射部13b:窒素20sLm
反応ガス噴射部16
・反応ガス:水素0.2sLm
反応ガス噴射部17
・反応ガス:水素4.3sLm
還元ガス噴射部2b及び原料ガス噴射部3bで噴射するガス量は、炉の体積に比例させてCNT配向集合体の製造に好適なガス量に設定した。また、フォーメーション炉2aと成長炉3aのガスの相互混入を強く防止するため、3つのガス混入防止手段11〜13の中でガス混入防止手段12のシールガス量及び排気量は最も多く設定した。
・排気フード2d:25〜31sLm
成長ユニット3
・排気フード3d:16〜20sLm
ガス混入防止手段11
・排気部11a:18〜22sLm
ガス混入防止手段12
・排気部12a:23〜28sLm
ガス混入防止手段13
・排気部13a:18〜22sLm
原料ガスに添加する触媒賦活物質(水)の濃度については、CNT配向集合体の製造に好適になるように、およそ100〜500ppmの範囲で適宜調整を行った。
本実施例では実施例1と同様の製造装置を用い、反応ガスとして酸素を用いてCNT配向集合体を連続製造した。触媒基板の作製条件は実施例1と同様とし、装置操業条件は反応ガス噴射部16、17以外は実施例1と同様とした。反応ガス噴射部の各条件は以下のように設定した。
・反応ガス:酸素0.4sccm、窒素0.2sLm
反応ガス噴射部17
・反応ガス:酸素2sLm、窒素2.3sLm
本実施例によって製造される、CNT配向集合体の特性の平均値としては、密度:0.03g/cm3、平均外径:2.9nm(半値幅:2nm)、炭素純度:99.9%、ヘルマンの配向係数:0.7、収量:2.0mg/cm2、G/D比:6.3、BET比表面積:1100m2/gであった。
本実施例では実施例1と同様の製造装置に、図3に示すように炭素固形物付着防止手段18を追加してCNT配向集合体を連続製造した。図3に示すように成長炉から排気される原料ガスと反応ガスの混合ガスは、炭素固形物付着防止手段18によって400℃以上600以下に加熱・保温しながら排気した。触媒基板の作製条件および装置操業条件は実施例1と同様とした。
3a 成長炉
4a 冷却炉
10 触媒基板(表面に触媒を担持した基材)
14 排気流量測定手段
15 排気流量可変手段
15b マスフローコントローラー
16、17 反応ガス噴射部
18 炭素固形物付着防止手段
20 排気流量安定化部
23 排気管
100 製造装置(カーボンナノチューブ配向集合体の製造装置)
Claims (4)
- 表面に触媒を担持した基材上に原料ガスを供給してカーボンナノチューブ配向集合体を成長させる成長炉と、前記成長炉内のガスを排気する排気管と、
を備えるカーボンナノチューブ配向集合体の製造装置において、
前記原料ガスと化学反応を起こすことで前記排気管内に付着する炭素固形物を低減する反応ガスを噴射する反応ガス噴射部を備えていることを特徴とするカーボンナノチューブ配向集合体の製造装置。 - 前記反応ガスが水素原子及び/又は酸素原子を含むことを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブ配向集合体の製造装置。
- 前記排気管内を流通する前記原料ガスと前記反応ガスの混合ガスを加熱及び/又は保温することで、前記排気管内に炭素固形物が付着することを防止する炭素固形物付着防止手段を備えていることを特徴とする請求項2に記載のカーボンナノチューブ配向集合体の製造装置。
- 前記炭素固形物付着防止手段は、前記混合ガスを150℃以上700℃以下に加熱及び/又は保温するものであることを特徴とする請求項3に記載のカーボンナノチューブ配向集合体の製造装置。
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